以下、図面を参照しながら、本開示の給湯機制御システム、給湯機の制御方法、および給湯機制御プログラムの実施形態について詳細に説明する。但し、本開示の給湯機制御システム、給湯機の制御方法、および給湯機制御プログラムは、以下で説明する実施形態に限定されない。また、以下で説明する複数の実施形態の各構成要素を選択的に組み合わせることは当初から想定されている。
以下では、給湯機30が設置される施設1として、戸建の住宅を例示する。但し、施設1は特に限定されず、マンション等の集合住宅、学校、図書館等の公共施設、店舗、オフィスなどであってもよい。
図1は、実施形態の一例である給湯機制御システム10の構成を示すブロック図である。給湯機制御システム10は、施設1に設置された貯湯式の給湯機30を制御するシステムである。給湯機制御システム10は、施設1の資源消費および資源消費量の少なくとも一方に関する情報を取得する取得部11と、給湯機30の沸き上げ運転または沸き増し運転を禁止するための運転禁止情報を出力する出力部12とを備える。出力部12は、施設1の資源消費および資源消費量の少なくとも一方に基づいて運転禁止情報を出力する。本実施形態において、出力部12は、施設1の資源消費または資源消費量が資源の料金に基づく所定の目標値を超えないように運転禁止情報を出力する。
ここで、資源とは、給湯機30の運転に使用されるエネルギーであって、一般的には電力またはガスである。本実施形態では、給湯機30が電気給湯機であり、給湯機30に供給される資源が電力であるものとする。すなわち、取得部11は消費電力および消費電力量の少なくとも一方に関する情報を取得する。本明細書では、瞬間的に消費される電力を消費電力と定義し、ある一定の期間に消費される電力の積算値を消費電力量と定義する。なお、消費電力には、消費電力量から算出される平均消費電力が含まれる。
施設1には、電力会社等の電力供給事業者から商用の交流電力が供給される。施設1で使用される電力の料金(電気料金)の一例は、契約電力に基づいて決定される基本料金と、使用量によって決定される電力量料金との合計である。契約電力は、例えば所定期間の消費電力量から算出される平均消費電力の最大値に基づいて決定される。
本明細書では、30分間の消費電力量から算出される平均消費電力を「30分デマンド値」とし、1ヶ月で最大の30分デマンド値である月間最大消費電力量を「デマンド値(一般的には、最大デマンド値またはピーク電力とも呼ばれる)」とする。平均消費電力を算出する時間の区切りは、デマンド時限と呼ばれる。デマンド時限は30分に限定されず、例えば国によって異なる。
本実施形態では、施設1の契約電力が、過去1年間の各月のデマンド値のうち、最も大きな値に基づいて算出されるものとする。契約電力は、デマンド値が大きくなるほど段階的に上昇するため、電気料金を低く抑えるにはデマンド値を下げることが重要である。給湯機制御システム10は、給湯機30の運転に起因してデマンド値が目標値を超えないように、給湯機30を制御するシステムである。ここで、目標値とは、ユーザーが任意に設定できる値であって、3kW、4kWなど、希望の契約電力に対応するデマンド値(以下、「目標デマンド値」とする)である。目標デマンド値は、給湯機制御システム10によって自動的に設定されてもよい。
施設1には、施設1に引き込まれる交流電源の幹線(1次幹線)が接続される電力量計20と、電力量計20から出た2次幹線を分岐する分電盤21とが設置されている。施設1には、電力を使用する電気機器として、給湯機30の他に、IHクッキングヒーター31、LDKエアコン32、寝室エアコン33等のエアコン、照明34、食洗機35、蓄電システム36などが設置されている。なお、施設1で使用される電気機器は、これらに限定されず、冷蔵庫、電子レンジ、テレビ、パソコン、洗濯機、ドライヤー、床暖房などが例示できる。
電力量計20は、施設1の消費電力および消費電力量を計測する装置である。本実施形態において、電力量計20は常時、消費電力を計測する。また、30分毎に消費電力量を計測して記憶すると共に、30分間の消費電力量から平均消費電力である30分デマンド値を算出して記憶する。電力量計20は、通信機能を有し、計測データを電力供給事業者の管理サーバーに送信してもよく、給湯機制御システム10に送信してもよい。給湯機制御システム10は、電力量計20から消費電力および消費電力量の少なくとも一方を取得することが好ましい。
分電盤21は、電力量計20から出た2次幹線が1次側に接続された主幹ブレーカーと、主幹ブレーカーの2次側に設けられた複数の分岐ブレーカーとを有する。分電盤21は、各分岐ブレーカーで分岐された複数の分岐回路の電流をそれぞれ計測する複数の分岐電流センサを有していてもよい。なお、主幹ブレーカーの1次側に電流センサ等の電力計測機を設置してもよく、この場合、給湯機制御システム10は当該計測機から計測データを取得してもよい。
施設1には、施設全体の消費電力量を監視し、各電気機器を制御するエネルギー管理システムが設置されていてもよい。エネルギー管理システムは、各分岐電流センサの計測データおよび電力量計20の計測データを取得し、施設1の消費電力または消費電力量が目標値を超えないように、IHクッキングヒーター31、照明34などの電気機器を制御する。エネルギー管理システムが設けられる場合、給湯機制御システム10は、当該管理システムの一部として構成されてもよい。
給湯機制御システム10の制御対象である給湯機30は、電気料金が安い時間帯に、1日に必要なお湯を沸かすための沸き上げ運転を行う貯湯式の給湯機である。給湯機30は、水を加熱する加熱装置、加熱装置で加熱されたお湯を貯留する貯湯タンク、給水配管、給湯配管、および制御装置等を備える。貯湯タンクは、施設1で使用される1日分のお湯を貯留可能な容量とされ、一般的に65℃〜90℃のお湯を貯留する。加熱装置の好適な一例は、圧縮機、水熱交換器、膨張弁、および空気熱交換器が冷媒回路で接続されたヒートポンプ装置である。
給湯機30の制御装置は、例えば過去2週間程度のお湯の使用量、およびユーザーによる運転状態の設定に基づき、自動で最適な沸き上げ湯量を決定している。しかし、気温の低下、ユーザーの活動パターンの変化などで、お湯の使用量がいつもより増加すると、お湯が足りなくなり沸き増しが必要となる場合がある。一般的に、給湯機30は、貯湯タンクの湯量が所定量まで減少したときに自動で沸き増し運転を実施し、湯切れの発生を防止するように構成されている。
給湯機30の沸き上げ運転とは、上述の通り、1日に必要なお湯を沸かすための運転であって、貯湯量の減少に伴って実施される沸き増し運転と区別される。沸き上げ運転が実施される時間帯の少なくとも一部は、通常、電力供給事業者が定める電力の料金単価が安い深夜から早朝にかけての時間帯である。一般的に、冬場は夏場よりも沸き上げ運転の時間が長くなり、この時間帯を超える場合がある。沸き増し運転は、1日のうち沸き上げ運転終了から長時間が経過した時間帯、例えば18時〜22時に実施されることが多い。
給湯機制御システム10は、上述のように、取得部11と、出力部12とを備え、施設1の消費電力または消費電力量が資源の料金に基づく所定の目標値を超えないように運転禁止情報を出力する。本実施形態では、施設1の30分デマンド値が目標デマンド値を超えないように、運転禁止情報が出力される。また、給湯機制御システム10は記憶部13を備える。記憶部13は、例えば電力量計20から取得した計測データ、後述の閾値等を含む制御パラメータ、給湯機制御プログラムなどを記憶している。
給湯機制御システム10は、給湯機30の運転状態、施設1の消費電力、消費電力量などを表示するための表示部14と、目標デマンド値、給湯機30の運転条件、制御条件などを設定するための入力部15とを備えることが好ましい。表示部14は、ランプ等であってもよいが、好ましくはディスプレイである。入力部15としては、ボタン、テンキー、キーボード等が例示でき、表示部14と一体化されたタッチパネルであってもよい。
また、給湯機制御システム10は、給湯機30の沸き上げ運転または沸き増し運転の運転禁止状態を継続する禁止期間を設定する禁止期間設定部16を備えることが好ましい。禁止期間は、施設1の消費電力および消費電力量の少なくとも一方に基づいて運転禁止情報が出力される度に設定されてもよく、特定の期間に予め設定されてもよい。
給湯機制御システム10は、例えばCPU、メモリ、入出力ポート等を含む1つまたは複数の機器を備えたコンピュータで構築される。図1に示す例では、取得部11、出力部12、記憶部13、表示部14、入力部15、および禁止期間設定部16が一体化されているが、これらは一体化されていなくてもよい。すなわち、給湯機制御システム10は、1つまたは複数の機器で構成される。表示部14および入力部15として、スマートホン、タブレット端末等を用いることもできる。また、給湯機制御システム10は、複数のコンピュータを用いて構築されてもよく、システムの一部がインターネット等のネットワークで接続された1つまたは複数のサーバーで構築されてもよい。
給湯機制御システム10は、例えば給湯機30の制御装置に対し、上記運転禁止情報として、給湯機30の沸き上げ運転または沸き増し運転を禁止するための信号である禁止指令を出力する。給湯機30の制御装置は、禁止指令を受信したときに、給湯機30の各構成要素を制御して沸き上げ運転または沸き増し運転を禁止する。本実施形態では、取得部11が電力量計20から施設1の消費電力および消費電力量の少なくとも一方に関する計測データを取得し、出力部12が当該計測データに基づいて運転禁止情報を出力する。
取得部11は、上記計測データとして、施設1の消費電力に関する情報を取得することが好ましい。給湯機制御システム10は、例えば無線通信機能を有し、取得部11は電力量計20との無線通信により計測データを取得する。取得部11は、電力量計20から常時、計測データを取得してもよく、10秒毎など所定の間隔で取得してもよい。また、給湯機30の沸き上げ運転中および沸き増し運転中にのみ、計測データを取得してもよい。
以下では、取得部11が施設1の消費電力を取得し、出力部12が当該消費電力に基づいて運転禁止情報等を出力するものとする。但し、取得部11は、施設1の消費電力量に関する情報、または消費電力と消費電力量の両方を取得するように構成されていてもよい。消費電力量を取得する場合は、5分毎などデマンド時限より十分短い期間の消費電力量を取得することが好ましい。
取得部11は、給湯機30の将来の沸き上げ運転による消費電力に関する情報を取得してもよい。また、取得部11は、給湯機30以外の電気機器の将来の消費電力が予測できる場合に、その情報を取得してもよい。すなわち、給湯機30およびその他の電気機器の少なくとも一方が将来の消費電力を予測する機能を有する場合、取得部11は給湯機30等が予測した値を取得してもよい。
なお、給湯機制御システム10は、給湯機30およびその他の電気機器の少なくとも一方から取得した情報に基づいて給湯機30等の将来の消費電力を予測する機能(予測部)を備えていてもよい。例えば、食洗機35がタイマー予約されている場合は、予約時間における食洗機35の消費電力を予測することが可能である。この場合、タイマー予約の情報を取得し、過去の消費電力履歴、仕様等から消費電力を予測することができる。
給湯機制御システム10には、給湯機30およびその他の機器の消費電力に関する情報が予め記憶されていてもよい。この場合、給湯機30およびその他の機器から運転予定時間の情報を取得すれば、その時間における各々の消費電力を求めることができる。取得部11または出力部12は、給湯機30およびその他の機器の消費電力の予測値を合計し、施設1の将来の消費電力を推定するように構成されていてもよい。
出力部12は、取得部11により取得された施設1の消費電力に基づき、運転禁止情報として禁止指令を給湯機30に出力することが好ましい。出力部12は、例えば施設1の消費電力から30分デマンド値を予測し、その予測値が目標デマンド値を超える時間を推定して、その時間よりも前に給湯機30に対して禁止指令を出力してもよい。図1に示す例では、給湯機30が無線通信機能を有しており、出力部12は給湯機30との無線通信により禁止指令を送信する。
給湯機30に出力される禁止指令は、沸き上げ運転または沸き増し運転を予め禁止するための信号であってもよく、給湯機30が沸き上げ運転中または沸き増し運転中である場合に、その運転を停止させるための信号であってもよい。なお、運転禁止情報は禁止指令に限定されず、沸き上げ運転の停止をユーザーに勧める注意喚起情報であってもよい。注意喚起情報は、例えば表示部14に出力される。
出力部12は、禁止指令を出力するか否かを判定するために、目標デマンド値に基づいて決定される所定の閾値(以下、「第1の閾値」とする)を用い、施設1の消費電力が第1の閾値を超えたときに禁止指令を出力することが好ましい。すなわち、出力部12は第1の閾値と施設1の消費電力とを比較し、禁止指令を出力するか否かを判定する機能を有する。この点に関し、出力部12は判定部であるといえる。閾値を用いて禁止指令を出力するか否かを判定することで、制御プロセスの簡略化を図ることができる。目標デマンド値は、ユーザーが希望する契約電力(電気料金)に基づき任意に設定でき、例えばユーザーによる入力部15の操作で設定される。
第1の閾値は、目標デマンド値と同じ値に設定されてもよく、目標デマンド値未満の値に設定されてもよい。目標デマンド値が4kWである場合に、第1の閾値は4kWに設定されてもよい。このように、第1の閾値を設定して給湯機30を制御することで、30分デマンド値が給湯機30の運転に起因して目標デマンド値を超えることを抑制できる。第1の閾値は、目標デマンド値に基づいて自動的に決定されてもよく、ユーザーにより手動で設定されてもよい。
出力部12は、通常、施設1の消費電力が第1の閾値を1回でも超えると禁止指令を出力するが、消費電力が第1の閾値を複数回超えた場合に禁止指令を出力するように構成されていてもよい。施設1の消費電力が第1の閾値を超えた後、同じデマンド時限中に1回または複数回、消費電力が第1の閾値を超えることを条件として、禁止指令を出力してもよい。
出力部12は、給湯機30が沸き上げ運転中または沸き増し運転中である場合に、施設1の消費電力が第1の閾値を超えたとき、給湯機30の運転状態と施設1の資源消費とに関する情報をユーザーに報知してもよい。出力部12は、給湯機30の運転状態に応じて異なる情報を提供してもよく、給湯機30が沸き増し運転中である場合にのみ、当該情報を提供してもよい。
具体的には、給湯機30が運転中であること、および施設1の消費電力が上昇していること、或いは電力の使用量を低く抑えなければ30分デマンド値が目標デマンド値を超える可能性が高いことなどの情報が表示部14に出力される。このとき、警告音または音声を併せて出力してもよく、給湯機30または他の特定の機器を指定して、その機器の使用停止を勧めてもよい。このような情報を確認したユーザーは、例えば給湯機30の沸き上げ運転を手動で停止させることができる。或いは、給湯機30が沸き増し運転中である場合は、当該運転を継続して他の機器の使用を控えることもできる。
出力部12は、施設1の消費電力に基づいて、禁止された給湯機30の沸き上げ運転または沸き増し運転を実行するための情報(以下、「解除情報」という)を出力する。出力部12は、解除情報を表示部14に出力してユーザーに報知してもよい。解除情報を確認したユーザーは、必要により、給湯機30を手動で運転させることができる。
出力部12は、解除情報として、運転禁止状態を解除するための信号である解除指令を給湯機30に出力することが好ましい。運転が禁止された給湯機30は、通常、解除指令を受信するまで運転禁止状態を継続するので、出力部12は施設1の消費電力が下がったときに解除指令を出力する。解除指令を受信した給湯機30は、沸き上げ運転または沸き増し運転を再開できる。
給湯機制御システム10では、禁止期間設定部16により禁止期間が設定されることが好ましい。禁止期間は、給湯機30の沸き上げ運転または沸き増し運転の禁止状態を継続する期間である。出力部12は、禁止期間設定部16により設定された禁止期間が経過したときに解除指令等の解除情報を出力する。
禁止期間設定部16は、禁止指令等の運転禁止情報が出力された後、一定の期間を禁止期間として設定してもよい。この場合、禁止期間の一例は、デマンド時限と同じ30分間、またはデマンド時限よりも長い時間(1時間、2時間など)である。禁止期間設定部16は、給湯機30およびその他の機器の使用により施設1の消費電力が上がる時間帯が推定できる場合に、その時間帯を禁止期間として予め設定することもできる。
なお、2時間〜10時間のように禁止期間を長く設定することで、沸き上げ時間の一部を大きくシフトさせることもできる。また、予め禁止期間を設定して将来の沸き上げ運転を禁止する場合は、沸き上げ運転を通常の実施予定時間よりも前にシフトさせることも可能である。給湯機制御システム10は、沸き上げ運転のタイムシフトによる電気料金の増加、および30分デマンド値が目標デマンド値を超えることによる電気料金の増加をそれぞれ算出して両者を比較し、料金が安くなる方の処理を実行してもよい。沸き上げ運転をタイムシフトした場合、当該シフトの実行をユーザーに報知することが好ましい。
出力部12は、解除指令等の解除情報を出力するか否かを判定するために、第1の閾値未満の値に設定される第2の閾値を用い、施設1の消費電力が第2の閾値を下回ったときに解除情報を出力するように構成されていてもよい。第2の閾値は、目標デマンド値に基づいて自動的に決定されてもよく、ユーザーにより手動で設定されてもよい。出力部12は、禁止指令の出力後、所定期間、施設1の消費電力が第2の閾値を下回っていることを条件として解除情報を出力してもよい。
出力部12は、給湯機30が沸き上げ運転中である場合に実行する第1処理と、給湯機30が沸き増し運転中である場合に実行する第2処理とをそれぞれ設定することが好ましい。そして、出力部12は、施設1の消費電力および給湯機30の運転状態に基づいて、第1処理または第2処理を実行する。給湯機制御システム10は、例えば給湯機30の制御装置から給湯機30の運転状態に関する情報を取得することができる。
第1処理および第2処理は、互いに異なる処理であることが好ましい。給湯機30の運転状態に応じて処理方法を変更することで、施設1の30分デマンド値が目標デマンド値を超えないように、かつ給湯機30の湯切れが発生しないように、効率良く給湯機30を運転してユーザーの利便性を向上させることが可能である。
第1処理は、例えば給湯機30の沸き上げ運転を禁止するための運転禁止情報を出力する処理であって、好ましくは給湯機30に禁止指令を出力する処理である。出力部12は、給湯機30が沸き上げ運転中である場合に、施設1の消費電力が第1の閾値を超えたとき、給湯機30に禁止指令を出力する。沸き上げ運転を停止しても直ちに湯切れは発生しないため、施設1の消費電力が第1の閾値を超えるような状況では沸き上げ運転を停止させることが好ましい。
第2処理は、第1処理と同様に、給湯機30の沸き増し運転を禁止するための運転禁止情報を出力する処理としてもよいが、好ましくは給湯機30以外の他の機器の消費電力量を抑制するための情報(以下、「抑制情報」という場合がある)を出力する処理である。出力部12は、給湯機30が沸き増し運転中である場合に、施設1の消費電力が第1の閾値を超えたとき、抑制情報を出力する。
出力部12は、上記抑制情報として、施設1の消費電力に関する情報(例えば、消費電力の上昇)を表示部14に出力し、給湯機30以外の他の機器の使用を控えるように促してもよい。また、抑制情報として、他の機器を停止させる、或いは出力を低減するといった動作状態を変更するための信号を他の機器に出力してもよい。例えば、蓄電システム36が充電動作中である場合に、充電動作を停止させてもよく、充電条件を変更して消費電力を抑えてもよい。沸き増し運転は、貯湯量が減少したときに実施されるため、この運転を禁止すると湯切れが発生する可能性が高くなる。このため、給湯機30が沸き増し運転中である場合は、給湯機30の運転を優先し、他の機器の消費電力量を抑制することが好ましい。
出力部12は、第1処理および第2処理の少なくとも一方について、ユーザーの承認操作に基づく承認信号を受信することを条件に処理を実行してもよい。この場合、施設1の消費電力が第1の閾値を超えたときに、第1処理または第2処理の実行予定をユーザーに報知することが好ましい。処理の実行予定をユーザーに知らせることで、例えば無駄な電力の使用を控えるように促すことができ、給湯機30の停止等を回避できる場合がある。出力部12は、第2処理を実行する場合にのみ、ユーザーの承認を求めてもよい。
出力部12は、処理の実行予定を表示部14に出力することで、ユーザーに報知することが好ましい。このとき、警告音または音声を併せて出力してもよい。処理の実行予定が表示部14に出力されると、この情報を確認したユーザーが処理の実行を承認するか否かを判断する。ユーザーの承認操作の一例は、入力部15の操作であって、この操作により承認信号が出力される。
出力部12は、第1処理および第2処理の少なくとも一方を実行したとき、処理の実行をユーザーに報知するように構成されていてもよい。特に、給湯機30を停止させる禁止指令が出力された場合は、表示部14を用いてユーザーに報知することが好ましい。処理の実行をユーザーに知らせることで、例えば給湯機30の停止を知らないことによる湯切れ等の不具合の発生を防止できる。
以下、図2のフローチャートを参照しながら、上記構成を備えた給湯機制御システム10による給湯機30の制御手順の一例について詳説する。以下では、図3および図4を適宜参照し、具体的な事例を交えて説明する。
図3および図4は、給湯機30の貯湯量および施設1の30分デマンド値を示す図である。30分デマンド値は30分毎に算出されるが、図面の明瞭化等の観点から、1時間単位で30分デマンド値を示している。EQは給湯機30、Lは電力の料金単価が安い時間帯、HはLよりも料金単価が高い時間帯をそれぞれ意味する。鎖線で示す湯量変化は、沸き上げ運転のシフト後の湯量変化である。給湯機30は、80℃のお湯を50L/時で沸かして貯湯タンクに貯留するものとする。
実施形態の一例である給湯機30の制御方法は、施設1の資源消費および資源消費量の少なくとも一方に関する情報を取得する第1ステップと、給湯機30の沸き上げ運転または沸き増し運転を禁止するための運転禁止情報を出力する第2ステップとを含む。運転禁止情報を出力する第2ステップでは、施設1の資源消費および資源消費量の少なくとも一方に基づいて運転禁止情報が出力される。
以下では、第1ステップで施設1の消費電力を取得するものとする。この場合、第2ステップでは、取得された施設1の消費電力に基づいて運転禁止情報等が出力される。また、第1の閾値は目標デマンド値と同じ値に設定されているものとする。
給湯機制御システム10は、例えば記憶部13に記憶された給湯機制御プログラムを読み出して実行することにより、取得部11、出力部12、および禁止期間設定部16の各機能を実現する。つまり、給湯機制御プログラムは、給湯機制御システム10による給湯機30の制御をコンピュータで実現するためのプログラムである。
図2に例示するように、本実施形態の制御手順では、まず初めに、施設1の消費電力に関する情報を取得する(S10)。S10は、取得部11の機能により実行される。取得部11は、電力量計20から常時または所定の間隔で消費電力を取得する。取得した消費電力は、計測日時と共に記憶部13に記憶してもよい。S10は、給湯機30の沸き上げ運転中および沸き増し運転中のみに実行されてもよい。
続いて、S10で取得された施設1の消費電力と第1の閾値とを比較し、施設1の消費電力が第1の閾値を超えているか否かを判定する(S11)。そして、S11で施設1の消費電力が第1の閾値を超えていると判定された場合に、禁止期間を設定し(S12)、運転禁止情報を出力する(S13)。S12とS13の順序は逆であってもよい。S11およびS13は出力部12の機能により実行され、S12は禁止期間設定部16の機能により実行される。なお、既に禁止期間が特定の期間等に設定されている場合は、S12を実行しなくてもよい。
S13では、例えば給湯機30が沸き上げ運転中である場合、運転禁止情報として、沸き上げ運転の停止をユーザーに勧める注意喚起情報が表示部14に出力されてもよいし、沸き上げ運転を停止させるための禁止指令が給湯機30に出力されてもよい。給湯機30は、禁止指令を受信したときに、沸き上げ運転を停止する。他方、S11で施設1の消費電力が第1の閾値を超えていると判定されなかった場合には、給湯機30の学習に基づく通常の沸き上げ運転が継続される。
図3に例示するように、給湯機30の沸き上げ運転の終了後に起床して朝食の準備をするA日のような活動パターンであれば、早朝の時間帯に30分デマンド値が目標デマンド値を超える可能性は低い。しかし、活動パターンが変化して、B日のように沸き上げ運転の終了前に朝食の準備がなされる場合、沸き上げ運転に起因して30分デマンド値が目標デマンド値を超える可能性がある。
図3に示す例では、給湯機30の沸き上げ運転中に、IHクッキングヒーター31、LDKエアコン32等の電気機器が使用されることで、B日の5時〜6時に施設1の消費電力が第1の閾値を超える状況となっている。このような状況を放置すると、30分デマンド値が目標デマンド値を超える可能性が高くなる。
そこで、本実施形態の制御手順では、施設1の消費電力が第1の閾値を超えたことを条件として、禁止指令等の運転禁止情報を出力し、給湯機30の沸き上げ運転を停止させている。沸き上げ運転を停止させることで、施設1の消費電力を第1の閾値未満に下げることができ、30分デマンド値が目標デマンド値を超えることを回避できる。
図2に例示するように、本実施形態の制御手順では、禁止期間が経過したときに(S14)、給湯機30の運転禁止状態を解除するための解除情報を出力する(S15)。S14およびS15は、出力部12の機能により実行される。出力部12は、S15において、解除指令を給湯機30に出力することが好ましい。給湯機30は、解除指令を受信したときに、沸き上げ運転を再開する。図3に示す例では、禁止期間が3時間に設定されているが、この場合は2時間〜6時間に設定してもよい。
なお、禁止期間を設定する代わりに、上述の第2の閾値を用いて解除情報を出力するか否かを判定してもよい。具体的には、施設1の消費電力を第2の閾値とを比較し、消費電力が第2の閾値を下回るときに、解除情報を出力する方法が挙げられる。また、禁止期間が経過したときに、直ちに解除情報を出力するのではなく、第2の閾値を用いた当該解除判定を実行することも可能である。また、禁止期間を設定した場合に、施設1の消費電力が所定の閾値を下回ることを条件として、禁止期間を解除してもよい。
図4は、夏場と冬場における給湯機30の貯湯量および施設1の30分デマンド値を示す。図4に例示するように、夏場であれば、給湯機30の沸き上げ運転時間が短く、食洗機35が使用される深夜1時〜2時の時間帯に沸き上げ運転は実施されないため、深夜の時間帯に30分デマンド値が目標デマンド値を超える可能性は低い。しかし、冬場は沸き上げ運転時間が長くなるため、沸き上げ運転と食洗機35の運転が重なる場合があり、沸き上げ運転に起因して30分デマンド値が目標デマンド値を超える可能性がある。
このような場合も、上述のように、施設1の消費電力が第1の閾値を超えたことを条件として禁止指令を出力し、給湯機30の沸き上げ運転を停止させることで、施設1の消費電力を下げて30分デマンド値が目標デマンド値を超えることを回避できる。図4に示す例では、沸き上げ運転が起床時間である朝6時まで続くので、食洗機35の運転と重なって禁止された時間分を、例えば禁止期間を8時間のように長く設定し、朝9時まで大きくシフトさせてもよい。一方、禁止期間を30分のように短く設定し、30分毎に禁止期間の解除判定を実行してもよい。
取得部11は、施設1の消費電力に関する情報として、食洗機35のタイマー予約情報を取得してもよい。そして、深夜1時〜2時の時間帯を予め禁止期間として設定し、将来の沸き上げ運転を禁止してもよい。将来の沸き上げ運転を禁止する場合は、禁止された時間分の沸き上げ運転を、その時間よりも前にシフトさせることもできる。
以下、図5のフローチャートを参照しながら、給湯機30の制御手順の他の一例について詳説する。以下では、図6を適宜参照して具体的な事例を交えながら、図2に示す制御手順と異なる点を主に説明する。
図5に例示する制御手順は、S22,S27,S28,S29の手順が追加されている点で、図2に例示する制御手順と異なる。図5に示す例では、S20で取得された施設1の消費電力が第1の閾値を超えていると判定されたときに(S21)、給湯機30の運転状態を判定する(S22,S27)。具体的には、S22で給湯機30が沸き上げ運転中か否かを判定し、沸き上げ運転中ではないと判定された場合に、S27で給湯機30が沸き増し運転中か否かを判定する。S22とS27の順序は逆であってもよい。S22およびS27は、出力部12の機能により実行される。
図5に例示する制御手順では、給湯機30の運転状態によって異なる処理を実行する。S22で給湯機30が沸き上げ運転中であると判定された場合は、図2に例示する制御手順(S12〜S15)と同様に、S23〜S26の第1処理を実行する。なお、S24では禁止指令を出力し、S26では解除指令を出力することが好ましい。他方、S27で給湯機30が沸き増し運転中であると判定された場合は、給湯機30および他の機器の消費電力量を抑制するための情報を出力する第2処理を実行する(S28)。S28は、出力部12の機能により実行される。
図6に示す例では、F日、G日において風呂と夕食の時間が重なり、IHクッキングヒーター31、LDKエアコン32、照明34など、多くの電気機器が使用される時間帯に、給湯機30の貯湯量の減少による沸き増し運転が実施されている。このような状況で、電子レンジ、テレビなど、他の電気機器がさらに使用されると、G日の19時〜20時のように30分デマンド値が第1の閾値を超える可能性が高くなる。
そこで、図5に例示する制御手順では、給湯機30が沸き増し運転中である場合に、施設1の消費電力が第1の閾値を超えたことを条件として第2処理を実行し、30分デマンド値が目標デマンド値を超えることを回避する。具体的には、施設1の消費電力が上昇していることを表示部14に出力して給湯機30および他の機器の使用を控えるように促してもよく、給湯機30および他の機器を停止させるための信号を出力してもよい。
このような情報を確認したユーザーの選択枝としては、給湯機30の沸き増し運転を停止する、沸き増し運転を停止せずに他の機器の使用を控える、或いは何もしないことが挙げられる。この場合、沸き増し運転を停止すると、湯切れが発生する可能性は高くなるが、契約電力の上昇は回避できる。給湯機30以外の他の機器の使用を控えることができれば、湯切れの発生および契約電力の上昇を回避できる。
S27において、給湯機30が沸き増し運転中ではないと判定された場合に、給湯機30以外の他の機器の消費電力量を抑制するための情報を出力する第2処理を実行してもよい(S29)。S29は、出力部12の機能により実行される。図5では、S28とS29とで異なる第2処理を実行する例を挙げたが、S28においてS29と同じ情報を出力してもよい。この場合は、給湯機30が沸き増し運転中か否かを判定する必要がない。すなわち、S22で給湯機30が沸き上げ運転中ではないと判定された場合に、給湯機30以外の他の機器の消費電力量を抑制するための情報を出力すればよい。
以下、図7のフローチャートを参照しながら、給湯機30の制御手順の他の一例について詳説する。図7では、図5に示す制御手順と同じ手順については同じ符号を用いている。以下では、図5に示す制御手順と異なる点を主に説明する。
図7に例示する制御手順は、S28の代わりに、S30,S31が設けられている点で、図5に例示する制御手順と異なる。図7に示す例では、S27で給湯機30が沸き増し運転中であると判定されたときに、給湯機30の運転状態と施設1の消費電力に関する情報をユーザーに報知する(S30)。出力部12は、例えば給湯機30が運転中であること、および施設1の消費電力が上昇していることを表示部14に出力する。
続いて、ユーザーの承認操作に基づく承認信号の有無を判定し(S31)、承認信号が受信されたことを条件として、第1処理と同じ処理(S23〜S26)を実行する。S30およびS31は、出力部12の機能により実行される。他方、S31で承認信号が受信されなかった場合は、沸き増し運転が継続され、例えば他の電気機器の使用が控えられる。なお、何も対策を講じなければ、30分デマンド値が目標デマンド値を超える可能性が高くなるが、ユーザーの選択肢としては、契約電力の上昇を容認することもあり得る。
以上のように、給湯機制御システム10および上述の制御方法によれば、施設1のデマンド値が給湯機30の運転に起因して上昇しないように、効率良く給湯機30を運転することが可能である。