以下に、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。まず、図1〜図7を参照しながら、エンジン(エンジン装置)1の概略構造について説明する。なお、以下の説明では、出力軸3に沿う両側部(出力軸3に沿った両側部)を左右、冷却ファン9配置側を前側(一側部側)、フライホイル11配置側を後側、排気マニホールド7配置側を左側(一方の側部側)、燃料噴射ポンプ装置14配置側を右側(他方の側部側)と称し、これらを便宜的に、エンジン1における四方及び上下の位置関係の基準としている。
図1〜図7に示すように、例えば建設土木機械や農作業機といった作業機に搭載される原動機としてのエンジン1は、出力軸3(クランク軸)とピストン(図示省略)とを内蔵するシリンダブロック4を備える。シリンダブロック4上にシリンダヘッド5を搭載している。シリンダヘッド5の左側面に排気マニホールド7を配置する。シリンダヘッド5の上面に弁腕室一体型吸気マニホールド8(ヘッドカバー)を配置する。弁腕室一体型吸気マニホールド8は、左寄り部位に前後方向に延伸配置された吸気マニホールド部6と、右寄り部位に前後方向に延伸配置された弁腕室部90を備えている。すなわち、シリンダヘッド5上方において、エンジン1の出力軸3に対して、左側に吸気マニホールド部6が配置され、右側(排気マニホールド7寄り)に弁和室90が配置される。なお、弁腕室部90は、シリンダヘッド5上面部に設ける吸気弁及び排気弁(図示省略)などを覆っている。
エンジン1において出力軸3と交差する一側面、具体的にはシリンダブロック4の前面側に、冷却ファン9を設ける。シリンダブロック4の後面側にマウンティングプレート10を設ける。マウンティングプレート10に重なるようにフライホイル11を配置する。出力軸3にフライホイル11を軸支する。作業機の作動部に出力軸3を介してエンジン1の動力を取り出すように構成している。また、シリンダブロック4の下方にはオイルパン12が配置されている。オイルパン12内の潤滑油は、シリンダブロック4の右側面に配置されたオイルフィルタ13を介して、エンジン1の各潤滑部に供給される。オイルパン12は間座71を介してシリンダブロック4に連結されている。間座71は、シリンダブロック4の後端部からギヤケース54の下方まで延設されている。シリンダブロック4前面に連結されるギヤケース54は間座71とも連結されている。
シリンダヘッド5の上面の右側部位にインジェクタ(燃料噴射弁)15を設ける。本実施形態の例では、3気筒分のインジェクタ15を備えている。以下、本実施形態では、3気筒のエンジン1を例に挙げて説明するが、本願発明のエンジン装置における気筒数は3気筒に限定されるものではない。各インジェクタ15に、燃料噴射ポンプ装置14及び燃料フィルタ17を介して、作業機に搭載される燃料タンク(図示省略)を接続する。シリンダヘッド5の前面の左側部位に前側吊下げ金具55の基端部がボルト締結されている。前側吊下げ金具55は後述するオルタネータ23の支持部材を兼ねている。
シリンダブロック4の右側面のうちオイルフィルタ13の上方(吸気マニホールド部6の下方)に、シリンダブロック4内の燃焼室内に燃料を供給するための燃料噴射ポンプ装置14が取り付けられている。燃料噴射ポンプ装置14は、各インジェクタ15に燃料噴射管36を介して燃料を供給する噴射ポンプ本体32と、燃料噴射量を調節するガバナを収容したガバナ収容ケース33と、ガバナの動作を制御するアクチュエータ部34と、燃料を送液する燃料フィードポンプ35を備えている。ガバナ収容ケース33は噴射ポンプ本体32の後面に着脱可能にボルト締結される。アクチュエータ部34はガバナ収容ケース33の後面に着脱可能にボルト締結される。燃料フィードポンプ35は噴射ポンプ本体32の右側面に着脱可能にボルト締結されている。
燃料噴射ポンプ装置33は、噴射ポンプ本体32の前面がギヤケース54の後面に着脱可能にボルト締結され、ガバナ収容ケース33の後面がL字状のポンプ装置ブラケット41を介してシリンダヘッド5右側面の後側部位に着脱可能にボルト締結されて、エンジン1に取り付けられている。なお、シリンダブロック4前面の下側部位に取り付けられたギヤケース54にはクランクギヤ、カムギヤ、ポンプギヤ、アイドルギヤ等を含むギヤトレイン(図示は省略)が収容されている。
燃料フィードポンプ35の駆動にて、燃料タンク(図示は省略)内の燃料が燃料フィードポンプ35から燃料送り管37、燃料フィルタ17、燃料中継管38を介して噴射ポン
プ本体32に送り込まれる。そして、噴射ポンプ本体32から各インジェクタ15に燃料噴射管36を介して燃料が供給される。噴射ポンプ本体32と燃料フィルタ17の間に燃料戻り管39が接続されている。燃料戻り管39にはインジェクタ15の余剰燃料を戻す燃料戻り管40が噴射ポンプ本体32近傍位置で合流されている。エンジン1の余剰燃料は、燃料戻り管39,40や、燃料フィルタ17上部に設けられた燃料戻り管継手57等を介して燃料タンク(図示は省略)に戻される。シリンダヘッド5の後面の右側部位に後側吊下げ金具56の基端部がボルト締結されている。後側吊下げ金具56の上部右側面の燃料フィルタ17が着脱可能にボルト締結されている。
マウンティングプレート10にエンジン始動用スタータ18を設けている。エンジン始動用スタータ18のピニオンギヤはフライホイル11のリングギヤに噛み合っている。エンジン1を始動させる際は、エンジン始動用スタータ18の回転力にてフライホイル11のリングギヤを回転させることによって、出力軸3が回転開始する(いわゆるクランキングが実行される)。
シリンダヘッド5の前面側(冷却ファン9側)には、冷却水ポンプ21が冷却ファン9のファン軸と同軸状に配置されている。エンジン1の左側、具体的には冷却水ポンプ21の左側方に、エンジン1の動力にて発電する発電機としてのオルタネータ23が設けられている。出力軸3の回転にて、冷却ファン駆動用Vベルト22を介して、冷却ファン9と共に冷却水ポンプ21及びオルタネータ23が駆動する。作業機側に搭載されるラジエータ19内の冷却水が、冷却水ポンプ21の駆動によって、シリンダブロック4内部及びシリンダヘッド5内部に供給され、エンジン1を冷却する。冷却水ポンプ21からの冷却水の一部は、シリンダブロック4内通路、冷却水中継パイプ81,82を介して、オイルフィルタ13の根本に配置されたオイルクーラ83に流される。
図3及び図4に示すように、シリンダブロック4の左右側面の各下側部位には、2つのエンジンマウント取付部24が前後にそれぞれ設けられている。各エンジンマウント取付部24には、例えば防振ゴムを有するエンジンマウント(図示省略)をそれぞれボルト締結可能である。実施形態では、作業機における左右一対のエンジン支持シャーシ25にシリンダブロック4を挟持させ、エンジンマウント(図示省略)を介してエンジンマウント取付部24を各エンジン支持シャーシ25にボルト締結することによって、作業機の両エンジン支持シャーシ25がエンジン1を支持する。
なお、左右一対のエンジン支持シャーシ25には、ファンシュラウド20を背面側に取り付けたラジエータ19を、エンジン1の前面側に位置するように立設する。ファンシュラウド20は、冷却ファン9の外側(外周側)を囲っていて、ラジエータ19と冷却ファン9を連通させている。冷却ファン9の回転によって、冷却風はラジエータ19に吹き当たり、その後、ラジエータ19からファンシュラウド20を経由してエンジン1に向けて流れる。
吸気マニホールド部6の入口部には、吸気中継管66、ターボ過給機60のコンプレッサケース62、吸気管91,92等を介してエアクリーナ(図示省略)を連結する。エアクリーナに吸い込まれた新気(外部空気)は、エアクリーナにて除塵及び浄化された後、吸気管91,92、コンプレッサケース62(詳細は後述する)及び吸気中継管66を介して吸気マニホールド部6に送られ、エンジン1の各気筒に供給される。
上記の構成において、エアクリーナから吸気管91,92に新気を供給する一方、弁腕室一体型吸気マニホールド8に設けられたブローバイガス導出口67からブローバイガス戻し管68を介して第1吸気管91にブローバイガスが合流される。上述のように、弁腕室一体型吸気マニホールド8は、弁腕室一体型吸気マニホールド8左寄り部位に形成され
た吸気マニホールド部6と弁腕室一体型吸気マニホールド8右寄り部位に形成された弁腕室部90が一体成形されたものである。また、弁腕室部90の上面に、ブローバイガスから潤滑油を分離するブローバイガス還元装置69が突設されている。ブローバイガス還元装置69に設けられたブローバイガスを第1吸気管91に戻して再び燃焼室に送ることにより、排気ガスや未燃焼の混合気を含むブローバイガスが大気に放出されないようにしている。
シリンダヘッド5の左側方で排気マニホールド7の上方には、ターボ過給機60を配置する。ターボ過給機60は、タービンホイル内蔵のタービンケース61と、ブロアホイル内蔵のコンプレッサケース62と、タービンケース61とコンプレッサケース62の連結部分であるセンターハウジング63を備えている。センターハウジング63の上部に、シリンダブロック4内部の潤滑油送り通路79(図23参照)から分岐されてセンターハウジング63内の回転部品に潤滑油を注油する潤滑油送り管64(注油管)が連結されている。センターハウジング63の下部に、センターハウジング63内に注油された潤滑油をシリンダブロック4内部の潤滑油戻り通路(図示省略)に戻す潤滑油戻り管65が連結されている。
排気マニホールド7の排気ガス出口部にタービンケース61の排気側入口61aを連結する。すなわち、エンジン1の各気筒から排気マニホールド7に排出された排気ガスはターボ過給機60を経由して外部に放出される。なお、タービンケース61の排気側出口61bに排気管を介して例えば消音器やテールパイプを連結し、ターボ過給機60の排気側出口61bから消音器やテールパイプを介して排気ガスを外部に排出する。
コンプレッサケース62の吸気入口62a(過給機の吸気側入口)側は、第2吸気管92及び第1吸気管91等を介してエアクリーナ(図示省略)の新気流出側に接続される。コンプレッサケース62の吸気出口62b(過給機の吸気側出口)側は、吸気中継管66を介して弁腕室一体型吸気マニホールド8の吸気マニホールド部6に接続される。すなわち、エアクリーナにて除塵された新気は、コンプレッサケース62から吸気中継管66を介して吸気マニホールド部6に送られ、その後、エンジン1の各気筒に供給される。
次に、図8〜図14を参照して、弁腕室一体型吸気マニホールド8の構成について説明する。弁腕室一体型吸気マニホールド8は、上述のように、左寄り部位に前後方向に延伸配置された吸気マニホールド部6(吸気マニホールド)と、右寄り部位に前後方向に延伸配置された弁腕室部90(弁腕室)を備えている。弁腕室一体型吸気マニホールド8は、吸気マニホールド部6と弁腕室部90を隔壁101で仕切ることで、吸気マニホールド部6と弁腕室部90を互いに閉鎖した空間としている。
吸気マニホールド部6の上面は吸気蓋部102で覆われている。吸気蓋部102は吸気マニホールド部6の側壁上面に2箇所でビス止めされるとともに、吸気マニホールド部6を介してシリンダヘッド5に6箇所でボルト締結される。なお、弁腕室一体型吸気マニホールド8は、弁腕室部90側の周縁部位の3箇所でもシリンダヘッド5にボルト締結されている。
吸気蓋部102の上面に吸気入口103が上方に向けて突設されている。また、吸気マニホールド部6の底面に、シリンダヘッド5上面に設けられた3気筒分の吸気導入口に接続される3つの吸気出口104がエンジン1の前後方向に並んで形成されている。吸気マニホールド部6の右側面に、2つのインジェクタ設置用凹部125が設けられている。インジェクタ設置用凹部125は、隣り合う吸気出口104,104の間の位置に配置されている。すなわち、本実施形態の例では、吸気マニホールド8の吸気マニホールド部6において、エンジン1の出力軸3に沿う方向に、2つのインジェクタ設置用凹部125と3
つの吸気出口104とが交互に配置されている。
インジェクタ設置用凹部125は、吸気マニホールド部6の底面側部位を右側面から隔壁101まで切り欠いて形成されている。シリンダヘッド5とインジェクタ設置用凹部125により、右側方が開口したインジェクタ15設置用の空間が形成される。そして、インジェクタ設置用凹部125の下方において、インジェクタ15がシリンダヘッド5に挿入されている。インジェクタ設置用凹部125の右側方が開放されているため、シリンダヘッド5右側方に設置された燃料噴射ポンプ装置14及びインジェクタ15それぞれを連結する燃料噴射管36及び燃料戻り管39,40を短経路で配管できるとともに、その配管作業を簡単化できる。
弁腕室部90の上部に、ブローバイガスを吸気系に還元するブローバイガス還元装置69が突設されている。ブローバイガス還元装置69は、弁腕室一体型吸気マニホールド8の上面の一部が上方に向けて膨出されたガス導出部111を備えている。ガス導出部111の上面部にガス調圧弁112が配置されている。また、ガス導出部111の左側面にブローバイガス導出口67が設けられている。
ガス導出部111の内部に、一部分が圧力制御室を兼ねるガス導出通路111aと、ブローバイガス導出口67に繋がるガス導出通路111bが形成されている。ガス導出通路111aはガス導出部111の内部でガス導出部111の下方部位から上面部位へ延設されている。また、ガス導出通路111aの一部分は、ガス導出部111の上面部位でガス導出通路111bの開口の周囲を囲うように円環状に形成されて圧力制御室を兼ねている。ガス導出通路111bはガス導出部111の上面部位から下方側へ導かれた後、ガス導出部111の左側面側へ屈曲されてブローバイガス導出口67に接続されている。
ガス調圧弁112は弁ケース122と圧力制御用のダイアフラム123を備えている。弁ケース122はガス導出部111の上面部に配置されている。ダイアフラム123の弁体124は、圧力制御室を兼ねるガス導出通路111aとブローバイガス導出口67に繋がるガス導出通路111bの間に配置されている。ガス導出通路111aとガス導出通路111bの間の流通は、通常は弁体124により遮断されており、導出通路111a内の圧力が一定圧以上になるとダイアフラム123が上方へ押圧されて弁体124が上方へ移動して開弁し、導出通路111a,111bが繋がるように構成されている。
弁腕室部90内で、ガス導出部111の底部に、ガス導入室113と内部通路114が形成されている。ガス導入室113には、エンジン1の燃焼室などからシリンダヘッド5上面側に漏れ出たブローバイガスが取り込まれる。内部通路114はガス導出通路111aとガス導入室113の間を接続する。また、ガス導出部111の底部に遮蔽板115がビス117により固定されている。弁腕室部90の上面側に対してガス導入室113と内部通路114の底面側が遮蔽板115にて閉塞されている。
遮蔽板115に設けられたガス導入室113の底面側開口に筒状のガス導入部116が固着されている。ガス導入部116は弁腕室部90内で左側面内壁に近接されている。ガス導入部116のガス出口はガス導入室113内に配置されている。また、ガス導入部116のガス入口は弁腕室部90内でシリンダヘッド5寄りの位置に配置されている。ガス導入部116は、上端部に蓋部材を備え、シリンダヘッド5側から液状の潤滑油がガス導入室113に直接入るのを防止しながら、弁腕室部90内のブローバイガスを弁腕室部90内のシリンダヘッド5寄りの位置から上方のブローバイガス還元装置69のガス導入室113内に導入する。
ガス導出部111の底部には、ガス導入室113と内部通路114の間を仕切る仕切り
壁118が設けられている。仕切り壁118はブローバイガス還元装置69の周壁119と離間して設けられており、仕切り壁118と周壁119の間にガス導入室113と複数の内部通路114を形成する。複数の内部通路114は迷路状に配置されてラビリンス構造を形成する。
仕切り壁118と周壁119の間の2箇所に、ブローバイガス中のミスト状潤滑油を捕らえる例えばスチールウール等のオイルトラップ材120がそれぞれ配置されている。この実施形態では仕切り壁118を挟んでエンジン1前後方向にオイルトラップ材120がそれぞれ配置されている。オイルトラップ材120はガス導入室113と内部通路114との間に配置されている。
図9に示すように、ガス導入室113の内部上面に、下方へ垂れ下がって突設された梁状仕切り壁121がガス導入部116を挟んで2箇所に設けられている。梁状仕切り壁121は、オイルトラップ材120とガス導入室113との間でオイルトラップ材120よりも上方位置に架設されている。周壁119とオイルトラップ材120上面と梁状仕切り壁121で囲まれた空間はブローバイガスが流通する内部通路114の一部分を構成する。
弁腕室部90内のブローバイガスは、ガス導出部111からブローバイガス還元装置69内に導入され、ガス導入室113、迷路状の内部通路114、ガス導出通路111a、ダイアフラム123の弁体124及びガス導出通路111bを介して、各通路やオイルトラップ材120で潤滑油成分等が除去されながら、ブローバイガス導出口67に送られる。潤滑油成分等が除去されたブローバイガスは、ブローバイガス導出口67からブローバイガス戻し管68を介して吸気系に還元される(図6参照)。
この実施形態のエンジン1では、吸気マニホールド部6と弁腕室部90とで一体に構成された弁腕室一体型吸気マニホールド8がシリンダヘッド5上面に配置されているので、吸気マニホールド部6と弁腕室部90をコンパクトにレイアウトできる。さらに、ブローバイガス還元装置69が弁腕室部90上部に突設されるとともに、ブローバイガス還元装置69の側面に設けられたブローバイガス導出口67に接続したブローバイガス戻し管68(ガス管路)によりブローバイガスをターボ過給機60の吸気側入口62aに導出させるようにしたので、ターボ過給機60とブローバイガス還元装置69を近設配置してコンパクトにレイアウトできる。
さらに、ブローバイガス還元装置69の側面にブローバイガス導出口67を設けることにより、ブローバイガス導出口67に接続されるブローバイガス戻し管68の配置に自由度を与えることができる。さらに、ブローバイガス還元装置69が弁腕室部90上部に突設されていることにより、ブローバイガス還元装置69の配置により弁腕室部90内部の容積が小さくなることを抑制できる。これにより、弁腕室部90の容積、ひいては弁腕室一体型吸気マニホールド8の外形寸法を大幅には増加させることなく、ターボ過給機60の搭載に伴うブローバイガス増加に対して十分な弁腕室容積を確保できる。
さらに、ブローバイガス還元装置69の側面に設けられたブローバイガス導出口67とターボ過給機60を近接配置できることにより、ブローバイガス戻し管68のレイアウトが容易であるとともに配管長さを短くできる。ブローバイガス戻し管68の長さを短くすることにより、ブローバイガス戻し管68の凍結や折れ曲がり等によるブローバイガス戻し管68の閉塞状態を回避することができる。
また、この実施形態のエンジン1では、ブローバイガス還元装置69内の複数の内部通路114は迷路状のラビリンス構造を構成しているので、ブローバイガス還元装置69内
に上記ラビリンス構造を形成して、弁腕室部90の容積、ひいては弁腕室一体型吸気マニホールド8の外形寸法を大幅には増加させずにラビリンス構造をコンパクトな構成にできるとともに、ブローバイガスに含まれる潤滑油や未燃焼燃料等を上記ラビリンス構造により除去できる。
また、この実施形態のエンジン1では、ガス導入室113と内部通路114の間を仕切る仕切り壁118とブローバイガス還元装置69の周壁119の間にオイルトラップ材120が配置されているので、仕切り壁118を迂回してガス導入部116のガス出口から内部通路114へ流れるブローバイガスがオイルトラップ材120を通過するようにすることができ、ブローバイガスに含まれる潤滑油等をオイルトラップ材120により除去できる。
また、この実施形態のエンジン1では、オイルトラップ材120とガス導入室113との間でオイルトラップ材120よりも上方位置に架設された梁状仕切り壁121と、オイルトラップ材120上面と、周壁119とで囲まれた空間を内部通路114の一部としているので、ブローバイガスがガス導入部116のガス出口からガス導入室113及びオイルトラップ材120内部を通過してオイルトラップ材120上面側へ流通するようにすることができ、ブローバイガスに含まれる潤滑油等をオイルトラップ材120により除去できる。
次に、図15〜図19を参照して吸気管及びその周辺の構成について説明する。この実施形態のエンジン1において、エアクリーナ(図示省略)に一端(上流側)が接続される第1吸気管91は冷却ファン9とブローバイガス導出口67の間の位置に配置されている。具体的には、第1吸気管91はエンジン1前側(前後一側面側)において冷却水ポンプ21の上方位置に配置されている。第1吸気管91の一端は新気流入口91aを構成する。
第1吸気管91は例えば金属製であり、外観が略T字状を有している。第1吸気管91の新気流入口91aはエンジン1右側(左右他側面側)に向けて開口されている。新気流入口91aに対向して第1吸気管91の他端(下流側)に設けられた新気流出口91bはエンジン1左側(左右一側面側)に向けて開口されている。新気流入口91aと新気流出口92bの間の第1吸気管91の外観は直線状の略円筒形を有する。
第1吸気管91の外周面に、略円筒状の接続部91cが外側へ突出して一体成形されている。接続部91cは第1吸気管91中央部の新気流出口91b寄りの部位に設けられる。接続部91cの先端側のブローバイガス流入口91dはブローバイガス導出口67側(エンジン1後側)に向けて開口されている。ブローバイガス流入口91dに、ブローバイガス導出口67に一端が接続されたブローバイガス戻し管68の他端が接続される。
第1吸気管91の新気流出口91bは、第2吸気管92の一端に設けられた新気流入口92aに接続されている。第2吸気管92は例えば樹脂製であり、略L字状を有している。第2吸気管92の他端に設けられた新気流出口92bはターボ過給機60のコンプレッサケース62の吸気入口62aに接続されている。コンプレッサケース62の吸気入口62aは冷却ファン9側に向けて開口されている。第2吸気管92は、湾曲部に対して一端92a側が長く、他端92b側が短く形成されている。
このように、この実施形態のエンジン1では、ターボ過給機60の吸気入口62aに接続される第2吸気管92の上流側部分及び第1吸気管91が左右方向に配管されてエンジン1の右側面側へ延設されているので、ターボ過給機60に接続される吸気管91,92をエンジン1の前側面から突設させることなくコンパクトにレイアウトできる。
ところで、従来、例えば3気筒以下の小排気量のエンジンに過給機が搭載される場合、過給機の吸気側入口に直線状の吸気管を取り付けると、エンジンの前後一側面側に配置される冷却ファンやファンシュラウド、ラジエータなどのエンジン構成部品と、過給機の吸気側入口との間の空間が狭くなって吸気管の取付けが困難になるときがあった。この実施形態のエンジン1は、エンジン1の前側に配置される冷却ファン9やファンシュラウド20、ラジエータ19(図3及び図4参照)などのエンジン構成部品と、ターボ過給機60の吸気入口62aとの間の空間が狭い場合であっても、エアクリーナ(図示省略)につながる新気配管99(図17参照)を第1吸気管91に接続する空間を確保できるとともに、第1吸気管91への新気配管99の取付け作業及び取外し作業の簡便性が向上する。
また、図15〜図18に示すように、ブローバイガス戻し管68はブローバイガス導出口67からエンジン1の前側へ向けて延設されて第1吸気管91の接続部91cに接続されるとともに、第1吸気管91の接続部91c側に向かって上方に傾斜している。これにより、ブローバイガス戻し管68の内壁に付着した潤滑油や未燃焼燃料が第1吸気管91内へ流入するのを防止でき、エンジン1に供給される燃焼用空気(新気)への潤滑油等の混入や、ターボ過給機60のコンプレッサケース62等を含む吸気系経路内の潤滑油等による汚れを低減できる。さらに、一連の吸気管91,92の上流側部分が左右方向でエンジン1の右側面側へ延設されていることにより、第1吸気管91の接続部91cに接続されるブローバイガス戻し管68をブローバイガス導出口67から平面視で直線状に配置でき、ブローバイガス戻し管68のレイアウトが容易であるとともに配管長さを短くできる。ブローバイガス戻し管68の長さを短くすることにより、ブローバイガス戻し管68の凍結や折れ曲がり等によるブローバイガス戻し管68の閉塞状態を回避することができる。また、ブローバイガス戻し管68は弁腕室一体型吸気マニホールド8の直上に配置されているので、エンジン1の放熱によってブローバイガス戻し管68の凍結などによる閉塞状態を回避できる。また、ブローバイガス戻し管68の大部分が正面視で第1吸気管91と重なって配置されており、冷却ファン9に露出するブローバイガス戻し管68の面積が小さいので、冷却風に起因するブローバイガス戻し管68の凍結防止に寄与する。
図15〜図17に示すように、上面に吸気入口103を有する吸気マニホールド部6がシリンダヘッド5の上面に配置され、ターボ過給機60の吸気出口62bがエンジン1の右側面側へ斜め上方に向けて開口されている。吸気入口103と吸気出口62bは吸気中継管66により接続されている。吸気中継管66は、吸気出口62bからエンジン1の右側面側へ斜め上方に向けて延伸されてブローバイガス戻し管68の上方へ導かれ、ブローバイガス戻し管68の上方で水平方向に湾曲される。さらに、吸気中継管66は、吸気マニホールド部6の前寄り部位の上方へ導かれるとともにエンジン1の後側へ湾曲され、さらに吸気入口103の上方へ導かれるとともに下方へ湾曲されて吸気入口103に接続されている。これにより、吸気マニホールドがシリンダヘッド側面に配置されている構成例や吸気入口が吸気マニホールド側面に配置されている構成例と比較して、吸気中継管66の長さを短くして吸気抵抗を低減でき、ターボ過給機60で得られる過給圧を損なうことなく、燃焼用空気をエンジン1に導入できる。さらに、ターボ過給機60の吸気出口62bと吸気マニホールド部6の吸気入口103がともに上方(斜め上方)に向けて開口されているので、吸気中継管66のレイアウトが容易であるとともに、吸気中継管66の取付け作業の簡便性が向上する。
図5、図6及び図15〜図17に示すように、吸気中継管66は弁腕室一体型吸気マニホールド8の上方で、ブローバイガス戻し管68の上方を通っている。これにより、吸気中継管66をヘッドカバーから離してエンジン1の放熱に起因する燃焼用空気の温度上昇を抑制しながら、弁腕室一体型吸気マニホールド8上方の空間を有効利用して吸気中継管66及びブローバイガス戻し管68を配置できる。また、ブローバイガス戻し管68を直
線状に配置してブローバイガス戻し管68の配管長さを短くすることもできる。
図16及び図17に示すように、冷却水ポンプ21はサーモスタットを収容するサーモスタットケース85を備えている。サーモスタットケース85の上部に、ラジエータ19につながる冷却水パイプと接続される冷却水出口21bを有するサーモスタットカバー86が設けられている。サーモスタットカバー86は第1吸気管91の下方に配置されている。サーモスタットケース85及びサーモスタットカバー86は冷却水ポンプ21の一部分を構成している。
冷却水ポンプ21は、ラジエータ19(図3及び図4参照)に繋がる冷却水送り管87と冷却水戻り管88が接続される冷却水入口21aと冷却水出口21bを備えている。冷却水入口21aは冷却水ポンプ21の本体に設けられている。冷却水出口21bはサーモスタットカバー86に設けられている。冷却水入口21a及び冷却水出口21bは、ともにエンジン1右側面側に向けて開口されている。
図16に示すように、一連の吸気管91,92の上流側部分は、エンジン1左側面側からエンジン1右側面側に向かって上方へ傾斜している。これにより、ターボ過給機60の吸気入口62aの高さ位置、ひいてはターボ過給機60自体の高さ位置を高くすることなく、ターボ過給機60の高さ位置を抑えたコンパクトな構成でありながら、吸気管91,92の上流側部分の下方にエンジン1の他の構成部品、この実施形態では冷却水出口21bを有するサーモスタットカバー86の配置空間を確保できる。また、吸気管91,92の上流側部分に設けられる新気流入口91aとその下方に配置される他の構成部品、この実施形態ではサーモスタットカバー86の間の空間を大きくすることができ、エアクリーナ(図示省略)につながる新気配管99を第1吸気管91の新気流入口91aに着脱する作業の際に作業者が手を入れる空間を確保して作業の簡便性を向上できる。
また、この実施形態のエンジン1では、第1吸気管91の新気流入口91aと冷却水ポンプ21の冷却水入口21a及び冷却水出口21bはエンジン1の右側面側に向けて開口されている。これにより、新気流入口91aに接続される新気配管99、冷却水入口21aに接続される冷却水送り管87及び冷却水出口21bに接続される冷却水戻り管88の取付け作業やメンテナンス作業をエンジン1の同一側部側(この実施形態ではエンジン1右側面側)から行うことができ、これらの作業の効率が向上する。
図15及び図19に示すように、第1吸気管91の内部に隔壁91eが形成されている。隔壁91eは、新気流入口91aから新気流出口91bに向かって形成されており、第1吸気管91の内部空間を、新気流入口91aから新気流出口91bにつながる新気流通空間91fと、ブローバイガス流入口91dから新気流出口91bにつながるブローバイガス流通空間91gに分離している。第1吸気管91は、このような構造を有することから3方向弁とも呼ばれる。このような第1吸気管91の構造により、ブローバイガス流入口91dから第1吸気管91に導入されるブローバイガスの新気流入口91a側への逆流が抑制されている。
図15〜図17に示すように、本実施形態の例では、第1吸気管91には温度センサ93を取り付けるためのセンサ取付け座94が形成されている。温度センサ93は、センサ取付け座94に取り付けられるとともにセンサ部分が第1吸気管91内に挿入されて新気流通空間91f内を流通する空気温度を測定する。温度センサ93のセンサ部分は、ブローバイガス流通空間91gとは分離された新気流通空間91f内に配置されるので、ブローバイガスに含まれる潤滑油成分等によるセンサ部分の汚れが防止される。
次に、図20〜図23を参照して排気系部品及びその周辺の構成について説明する。排
気マニホールド7の上面に設けられた排気ガス出口130(排気側出口)に、ターボ過給機60の排気入口61aが連結されている。3気筒分の排気ガス入口131を有する排気マニホールド7はシリンダヘッド5の左側面に6本の取付けボルト132により固設されている。排気マニホールド7は、排気ガス入口131を上下方向で挟む2つのボルト挿通孔を排気ガス入口131の周囲部ごとに備えている。排気マニホールド7の底面側は排気ガス出口130の下方で前側分岐部位133と後側分岐部位134の二股状に形成されている。前側分岐部位133に1気筒分の排気ガス入口131が配置され、後側分岐部位134に2気筒分の排気ガス入口131が配置されている。
ターボ過給機60のセンターハウジング63に、潤滑油送り管64と潤滑油戻り管65が接続されている。潤滑油送り管64の一端はシリンダブロック4の右側面の中央部後方寄り部位で、シリンダブロック4内部の潤滑油送り通路79(図23参照)に潤滑油導入継手135により接続されている。潤滑油送り管64の他端は潤滑油導出継手136によりセンターハウジング63の上部に接続されている。
潤滑油送り管64は、潤滑油導入継手135から上方へ導かれた後、後ろ斜め上方向へ屈曲されてシリンダブロック4の右側面上端部後方寄り部位の近傍に導かれる。さらに、潤滑油送り管64は、シリンダブロック4の上端部に沿ってシリンダブロック4の右側面から後側面を介して左側面側へ導かれる。潤滑油送り管64の中途部は、シリンダヘッド5にボルト締結された配管係止部材137によりシリンダブロック4の後側面上端部に対向する位置で固定されている。シリンダブロック4の左側面側へ導かれた潤滑油送り管64は、排気マニホールド7の後ろ側で上方へ屈曲された後、シリンダヘッド5の上面よりも高い位置へ導かれて前方へ屈曲されている。さらに、潤滑油送り管64は、排気マニホールド7の後側分岐部位134の上方を通って排気ガス出口130と弁腕室一体型吸気マニホールド8の左側面の間の位置へ導かれ、そこから前斜め上方向へ導かれた後、左斜め上方向へ屈曲され、さらに略水平方向へ屈曲されて、ターボ過給機60のセンターハウジング63に取り付けられた潤滑油導出継手136に接続されている。
このように、潤滑油送り管64は、エンジン1の右側面から左側面に向かってエンジン1の後側面を迂回して配管されるとともに、エンジン1の左側面において排気マニホールド7の後側方から排気マニホールド7の外周を迂回して排気マニホールド7の上方に向けて配管されており、エンジン1側面に沿ってコンパクトに配置されている。さらに、潤滑油送り管64は排気マニホールド7の外周を迂回して配管されているので、潤滑油送り管64が潤滑油導入継手135及び配管係止部材137によりエンジン1に取り付けられた状態であっても、排気マニホールド7の取付け作業時に潤滑油送り管64が障害にならず、エンジン1の組立て作業の効率が向上する。
潤滑油戻り管65の一端は、センターハウジング63の下部にボルト締結される管フランジ部材138に接続され、他端は例えばゴム樹脂からなる弾性を有する弾性配管部材139を介して潤滑油戻し継手140に接続されている。潤滑油戻り管65は、管フランジ部材138から下方へ導かれた後、後ろ斜め下方向へ屈曲されて排気マニホールド7の左側方かつ排気ガス出口130の下方へ導かれている。さらに、潤滑油戻り管65は、排気マニホールド7の左側面に沿って前側分岐部位133と後側分岐部位134の分岐部位へ向かって右斜め下方向へ導かれ、排気マニホールド7の下方で右斜め前かつ右斜め下方向へ屈曲されてシリンダブロック4左側面近傍へ導かれ、さらに下方側へ屈曲されて弾性配管部材139の一端に接続されている。弾性配管部材139は円筒状であり、鉛直方向に配管されている。弾性配管部材139の他端は、シリンダブロック4の右側面中央部前寄り部位に配置された潤滑油戻し継手140に接続されている。潤滑油戻し継手140は左側方視でセンターハウジング63の下方に配置されている。
この実施形態のエンジン1では、ターボ過給機60からの潤滑油を抽出する潤滑油戻り管65が排気マニホールド7底面における二股部分に沿って下方に向けて配管されているので、潤滑油戻り管65をエンジン1の左側面に近接してコンパクトに配管できる。
ところで、近年、低燃費や低コスト化といった市場要求を背景に過給機追加による機関のコンパクト化が進み、小排気量過給機付機関の生産台数の大幅増加が見込まれる。これに対して、従来、小排気量産業用ディーゼルエンジンの過給機付仕様及び生産台数は少なく、当該エンジンに過給機を搭載する場合、過給機周辺部品の組立は自然吸気エンジンの延長として、排気マニホールド、過給機、潤滑油管と段階を踏むように設定されていた。したがって、過給機周辺部品の組立は、組立ラインから一旦過給機仕様用の別組立セルに入れて時間をかけて行われており、従来の組立方式では時間がかかるため要求される生産数に対応できない。
このような要求に対して、この実施形態のエンジン1では、排気マニホールド7、ターボ過給機60及び潤滑油戻り管65を仕組状態でエンジン1に組立できるように改善を施した。図20に示すように、排気マニホールド7、ターボ過給機60及び潤滑油戻り管65の部品レイアウトは、排気マニホールド7のシリンダヘッド5への取付を阻害せぬよう、エンジン1の左側方から見て取付けボルト132を露出させている。また、排気マニホールド7、ターボ過給機60及び潤滑油戻り管65を仕組状態で、排気マニホールド7のボルト締付作業を作業者が1人でできるように、潤滑油戻り管65は弾性配管部材139を介して潤滑油戻し継手140に接続されている。作業者は潤滑油戻し継手140を最初にシリンダブロック4に連結して、潤滑油戻り管65、弾性配管部材139及び潤滑油戻し継手140を組立中の支えの一つとできるとともに、弾性配管部材139が変形することにより潤滑油戻り管65の非可逆的な塑性変形を防止できる。
これにより、排気マニホールド7、ターボ過給機60及び潤滑油戻り管65を組み立てた組立部品を作業者が1人でエンジン1に組み付けることが容易になるとともに、排気系の当該組立部品を生産予定に合わせて予め組み立てておくことにより組立作業の集中化とライン作業のスムーズ化を図ることができる。さらに、過給機付仕様機関の自然吸気仕様からの組立工数増加をライン上で最小化でき、生産増に対応できる。さらに、過給機仕様専用の組立スペースで実施される組立工程を、排気マニホールド7、ターボ過給機60及び潤滑油戻り管65を組み立てた仕組部品や潤滑油送り管64などの排気系部品の取付け工程に限ることで、組立現場の省スペース化を図ることができる。
なお、本願発明における各部の構成は図示の実施形態に限定されるものではなく、本願発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能である。本願発明のエンジン装置は、例えば芝刈機、建設土木機械、農作業機及びエンジン発電機といった作業機に搭載される。