JP6876002B2 - 機能的要素を共有結合により係留させるための細胞透過性、細胞適合性、かつ開裂可能であるリンカー - Google Patents

機能的要素を共有結合により係留させるための細胞透過性、細胞適合性、かつ開裂可能であるリンカー Download PDF

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Description

関連出願の相互参照
本発明は、2015年6月5日に出願された米国仮特許出願第62/171,620号に対する優先権を主張するものであり、参照によりその全体が組み込まれる。
本明細書は、機能的要素(例えば、細胞相互作用要素及び捕捉要素)を係留(例えば、共有結合で)させるための、細胞透過性、細胞適合性があり、かつ/または官能基選択的(chemoselectively)に開裂可能なリンカー、ならびにそれを使用する(例えば、細胞内標的の細胞内結合と細胞外遊離)方法を提供する。
対象の細胞、タンパク質、及び分子の検出、単離、及び固定化は、多種多様な現代の生物学的用途(例えば、基礎分子生物学の研究、薬物の発見、臨床診断など)にとって不可欠な技術である。既存の技術に対し利点を提供する組成物及び方法が求められている。
本明細書は、機能的要素(例えば、細胞相互作用要素及び捕捉要素)を係留(例えば、共有結合で)させるための、細胞透過性、細胞適合性があり、かつ/または官能基選択的に開裂可能なリンカー、ならびにそれを使用する(例えば、細胞内標的の細胞内結合と細胞外遊離)方法を提供する。
いくつかの実施形態では、本明細書は、分子成分及び/または機能的要素(例えば、限定するわけではないが、細胞相互作用要素及び捕捉要素など)をつなぐための、官能基選択的に開裂可能なリンカー(例えば、アリル−ヘテロ原子リンカー(例えば、アリル−カルバマート−含有リンカー)、プロパルギル含有リンカーなど)を提供する。本明細書の多くの実施形態では、細胞相互作用要素と捕捉要素の連結について具体的に記載しているが、本明細書のいずれの実施形態も、そのように限定するものではない。本明細書に記載する官能基選択的に開裂可能なリンカーは、任意の2つの分子成分(例えば、タンパク質、低分子、核酸、その組み合わせなど)をつなぐ際に利用され得る。本明細書に記載するリンカー、及びそれらを含む化合物または組成物は、例えば、細胞内標的(例えば、標的タンパク質)の標識、検出、単離、及び/または固定化に利用される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載するリンカーは、タンパク質性、または高度にタンパク質性の環境(例えば、細胞環境、細胞溶解物、生化学組成物、試験管内など)において細胞適合性、細胞透過性があり、かつ/または官能基選択的に開裂可能である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載する構造における機能的要素(例えば、細胞相互作用要素及び捕捉要素)は、細胞適合性及び細胞透過性がある。いくつかの実施形態では、本明細書に記載するリンカーを含む構造(例えば、Z−Y−Q、式中、Zは細胞相互作用要素であり、Qは捕捉要素であり、及びYは官能基選択的に開裂可能なリンカーである)は、タンパク質性、または高度にタンパク質性の環境(例えば、細胞環境、細胞溶解物、生化学組成物、試験管内など)において細胞適合性、細胞透過性があり、かつ/または官能基選択的に開裂可能である。
いくつかの実施形態では、本明細書は、二重機能性(例えば、2つの分子成分の連結)、細胞透過性、細胞適合性があり、かつ/または官能基選択的に開裂可能な組成物を提供する。いくつかの実施形態では、二重機能性(例えば、2つの分子成分の連結)、細胞透過性、細胞適合性があり、かつ/または官能基選択的に開裂可能な組成物は、(a)第1の機能的要素、(b)第2の機能的要素、及び(c)第1の機能的要素を第2の機能的要素に共有結合により係留させる、官能基選択的に開裂可能な部分を含むリンカーを含む。いくつかの実施形態では、第1の機能的要素は第1の分子成分と化学的に相互作用(例えば、共有結合または非共有結合による)することができ、第2の機能的要素は、第2の分子成分と化学的に相互作用(例えば、共有結合または非共有結合による)することができる。いくつかの実施形態では、第1及び第2の分子成分は、構造及び/または機能において異なる。いくつかの実施形態では、第1及び第2の分子成分は、構造及び/または機能において同一であるかまたは類似している。いくつかの実施形態では、第1の機能的要素と第1の分子成分の化学的相互作用及び/または第2の機能的要素と第2の分子成分の化学的相互作用は選択的または非選択的であってよい。いくつかの実施形態では、第1の機能的要素及び/または第2の機能的要素は、レポーター機能(例えば、蛍光団、ルシフェラーゼ、抗体、核酸など)を含む。いくつかの実施形態では、第1の機能的要素及び/または第2の機能的要素は、表面(例えば、マイクロプレート、粒子)を含む。
いくつかの実施形態では、二重機能性(例えば、2つの分子成分の連結)、細胞透過性、細胞適合性があり、かつ/または官能基選択的に開裂可能な組成物は、(a)細胞相互作用要素、(b)捕捉要素、及び(c)細胞相互作用要素を捕捉要素に共有結合により係留させる、官能基選択的に開裂可能な部分を含むリンカーを含む。いくつかの実施形態では、細胞相互作用要素は低分子またはペプチドである。いくつかの実施形態では、細胞相互作用要素は、酵素もしくは細胞の表現型の阻害物質、酵素もしくは細胞の表現型の活性化物質、または酵素もしくは細胞の表現型の調節物質である。いくつかの実施形態では、捕捉要素は、基質または酵素阻害物質である。いくつかの実施形態では、捕捉要素は、特定のタンパク質(例えば、酵素または変異酵素)と特定の共有結合(例えば、共有結合性基質または自殺阻害物質)を形成する。いくつかの実施形態では、捕捉要素は、ハロアルカン基、ベンジルグアニン、ベンジルシトシン、またはニトロフェニルホスホン酸を含む。いくつかの実施形態では、捕捉要素は親和性要素である。いくつかの実施形態では、官能基選択的に開裂可能な部分は、遷移金属(例えば、周期表のdブロック元素)で開裂可能な官能基である。いくつかの実施形態では、官能基選択的に開裂可能な部分は、モリブデンで開裂可能な部分、タングステンで開裂可能な部分、イリジウムで開裂可能な部分、ロジウムで開裂可能な部分、ルテニウムで開裂可能な部分、白金で開裂可能な部分、ニッケルで開裂可能な部分、銅で開裂可能な部分、鉄で開裂可能な部分、コバルトで開裂可能な部分、パラジウムで開裂可能な部分、またはルテニウムで開裂可能な部分である。いくつかの実施形態では、官能基選択的に開裂可能な部分は、Pdで開裂可能であるか、またはRuで開裂可能な部分である。いくつかの実施形態では、官能基選択的に開裂可能な部分は、アリル−ヘテロ原子基、プロパルギル−ヘテロ原子基などからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、官能基選択的に開裂可能な部分は、アリルエーテル、アリルアミン、アリルエステル、アリルアミド、アリル尿素、アリルカルボナート、及びアリルカルバマートからなる群から選択されるアリル−ヘテロ原子基を含む。いくつかの実施形態では、官能基選択的に開裂可能な部分は、アリルカルバマート基を含む。いくつかの実施形態では、官能基選択的に開裂可能な部分は、プロパルギルエーテル、プロパルギルアミン、プロパルギルエステル、プロパルギルアミド、プロパルギル尿素、プロパルギルカルボナート、及びプロパルギルカルバマートからなる群から選択されるプロパルギル−ヘテロ原子基を含む。いくつかの実施形態では、組成物は式:Z−L1−Y−L2−Qを含み、式中、Zは細胞相互作用要素であり、Qは捕捉要素であり、L1とL2は、互いに独立して任意選択で存在する独立リンカー部分であり、Yは官能基選択的に開裂可能な部分である。
いくつかの実施形態では、本明細書は、(a)細胞相互作用要素、官能基選択的に開裂可能な部分、及び捕捉要素を含んでいる、二重機能性、細胞透過性、細胞適合性があり、かつ/または官能基選択的に開裂可能な組成物を細胞に投与する、(b)細胞相互作用要素を、対応する細胞内標的に結合させる、(c)前記細胞を溶解させて細胞溶解物を作製する、(d)捕捉要素を捕捉物質と接触させる、(e)官能基選択的に開裂可能なリンカーを対応する官能基選択性物質と接触させ、これにより、細胞相互作用要素及び結合した細胞内標的を捕捉物質から遊離させるという工程のうち1つ以上を含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、捕捉物質を、表面上に固定化する。
いくつかの実施形態では、本明細書は、(a)第1の機能的要素、官能基選択的に開裂可能な部分、及び第2の機能的要素を含んでいる、二重機能性、細胞透過性、細胞適合性があり、かつ/または官能基選択的に開裂可能な組成物と、(b)(i)細胞、細胞溶解物、もしくは他のタンパク質性の環境、及び/または(ii)官能基選択性物質のうちいずれか1つ以上とを含む系を提供する。いくつかの実施形態では、本明細書は、(a)細胞相互作用要素、官能基選択的に開裂可能な部分、及び捕捉要素を含んでいる、二重機能性、細胞透過性、細胞適合性があり、かつ/または官能基選択的に開裂可能な組成物と、(b)(i)細胞、細胞溶解物、または他のタンパク質性の環境、(ii)細胞内標的、(iii)表面に提示された捕捉物質、及び(iv)官能基選択性物質のうち1つ以上とを含む系を提供する。いくつかの実施形態では、細胞内標的は融合タンパク質である。いくつかの実施形態では、融合タンパク質は、細胞内標的とレポータータンパク質、例えば、NANOLUCルシフェラーゼとの融合体である。
いくつかの実施形態では、本明細書は、式Z−L1−Y−L2−Qの組成物を提供し、式中、Zは細胞相互作用要素(または他の機能的要素)であり、L1は第1のリンカー部分であり、Yは官能基選択的に開裂可能な部分であり、L2は第2のリンカー部分であり、Qは捕捉要素(または他の機能的要素)である。いくつかの実施形態では、L1は、Z及びYに直鎖状につながれた少なくとも1つの原子によってZとYを分離する。いくつかの実施形態では、L1は、ZとYを、1〜200(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、またはその間の任意の範囲(例えば、2〜20、5〜10、15〜35、25〜100など))の直鎖状につながれた原子によって分離する。いくつかの実施形態では、L2は、QとYを、Q及びYに直鎖状につながれた少なくとも1つの原子によって分離する。いくつかの実施形態では、L2は、QとYを、1〜200(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、またはその間の任意の範囲(例えば、2〜20、5〜10、15〜35、25〜100など))の直鎖状につながれた原子によって分離する。いくつかの実施形態では、L1は、ZとYを、2つ以上の直鎖状につながれた原子によって分離する。いくつかの実施形態では、L2は、QとYを、2つ以上の直鎖状につながれた原子によって分離する。いくつかの実施形態では、Zは、細胞成分と相互作用する(例えば、共有結合または非共有結合)分子成分である。いくつかの実施形態では、Qは、捕捉物質(例えば、抗体、変異体脱ハロゲン酵素、ストレプトアビジンなど)と相互作用する(例えば、共有結合または非共有結合)分子成分である。いくつかの実施形態では、Z及びQは、細胞適合性及び/または細胞透過性がある。いくつかの実施形態では、L1及びL2は、互いに独立して、C−、N、O−、S−、P−、及び/またはハロゲンを含有する官能基の1つ以上を含み得る、直鎖または分岐鎖の炭素系部分を含む。
いくつかの実施形態では、本明細書は、式Z−(L−Y)n−L−Qの組成物を提供し、式中、Zは細胞相互作用要素(または他の機能的要素)であり、各Lは互いに独立したリンカー部分であり、各Yは互いに独立した官能基選択的に開裂可能な部分であり、Qは捕捉要素(または他の機能的要素)であり、nは1〜20(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、またはその間の任意の範囲)である。いくつかの実施形態では、各Lは同一の化学部分である。いくつかの実施形態では、各Yは同一の化学部分である。いくつかの実施形態では、各Lは互いに独立して、本明細書に記載するL基から選択される。いくつかの実施形態では、各Yは互いに独立して、本明細書に記載するL基から選択される。
いくつかの実施形態では、本明細書は、ハロアルカン基質と機能的要素(例えば、タグ、ラベル、反応性基、ペプチド、標的タンパク質、抗体、核酸、表面、低分子、細胞相互作用要素など)とをつなぐための、官能基選択的に開裂可能なリンカー(例えば、アリル−ヘテロ原子リンカー(例えば、アリル−カルバマート−含有リンカー)、プロパルギル含有リンカーなど)を提供する。本明細書に記載する基質及びリンカーは、例えば、タンパク質、細胞、及び分子について、標識化、検出、相互作用の特性解析、位置の特定などを行う際に利用される。特定の実施形態では、本明細書で提供するリンカーは、化学的に開裂可能なユニット(例えば、アリルカルバマート)を含み、ハロアルカン基質と安定な共有結合を形成する脱ハロゲン酵素変異型が結合する基質内で利用される。
いくつかの実施形態では、本明細書は、式Z−Y−L1−M−L2−A−Xの化合物を提供し、式中、Zは細胞相互作用要素(または他の機能的要素)であり、Yは官能基選択的に開裂可能な部分、例えば、アリル−ヘテロ原子リンカー(例えば、アリル−カルバマート−含有リンカー)、プロパルギル含有リンカーなど)であり、L1は第1のリンカー部分であり、Mはアルキルカルバマート基であり、L2は第2のリンカー部分であり、Aはアルキル基であり、Xはハロゲンである。いくつかの実施形態では、L2−Aは、MとXを、直鎖状につながれた6〜18の原子によって分離する。いくつかの実施形態では、L1は、YとMを、2つ以上(例えば、2〜100(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、14、16、18、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、またはその間の任意の範囲)の直鎖状につながれた原子によって分離する。いくつかの実施形態では、Aは(CH26である。いくつかの実施形態では、L2−Aは、MとXを、2つ以上(例えば、2〜100(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、14、16、18、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、またはその間の任意の範囲)の直鎖状につながれた原子によって分離する。いくつかの実施形態では、L2はカルバマート基を含まない。いくつかの実施形態では、L2は、直鎖状につながれたCH2基及びO基を含む。いくつかの実施形態では、L2は、直鎖状につながれたCH2基及びO基からなる。いくつかの実施形態では、L2は((CH22O)xを含み、式中、x=0〜5である。いくつかの実施形態では、L2は((CH22O)2を含む。いくつかの実施形態では、L1は、直鎖状につながれたCH2基及びO基を含む。いくつかの実施形態では、L1は(CH22を含む。いくつかの実施形態では、L1はO(CH22を含む。
いくつかの実施形態では、本明細書は、式Z−G−A−Xの化合物を提供し、式中、Zは細胞相互作用要素(または他の機能的要素)であり、Aはアルキル基であり、Xはハロゲンであり、Gは、1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、またはその間の範囲)の官能基選択的に開裂可能な部分Y(例えば、アリル−ヘテロ原子リンカー(例えば、アリル−カルバマート−含有リンカー)、プロパルギル含有リンカーなど)、ならびに任意選択で1つ以上のリンカー部分L及び/または1つ以上のアルキルカルバマート基Mを含む。非限定的な例示的化合物には、例えば、Z−Y1−L1−M−L2−Y2−A−X、Z−Y−L1−M1−M2−L2−A−X、Z−Y−L1−M1−L3−M2−L2−A−X、Z−M−L1−Y−L3−Y−L2−A−X、Z−M−L1−Y1−Y2−L2−A−Xなどが含まれる。
いくつかの実施形態では、本明細書は、式Z−L3−Y−L1−M−L2−A−Xの化合物を提供し、式中、Zは細胞相互作用要素(または他の機能的要素)であり、L3は第3のリンカー部分であり、Yは官能基選択的に開裂可能な部分、例えば、アリル−ヘテロ原子リンカー(例えば、アリル−カルバマート−含有リンカー)、プロパルギル含有リンカーなど)であり、L1は第1のリンカー部分であり、Mはアルキルカルバマート基であり、L2は第2のリンカー部分であり、Aはアルキル基であり、Xはハロゲンである。いくつかの実施形態では、L3は、ZとYを、2つ以上(例えば、2〜200(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、またはその間の任意の範囲(例えば、2〜20、5〜10、15〜35、25〜100など)))の直鎖状につながれた原子によって分離する。いくつかの実施形態では、L3は、直鎖状につながれたCH2基を含む。いくつかの実施形態では、L3は、直鎖状につながれたCH2基及びO基を含む。いくつかの実施形態では、L2−Aは、MとXを、1〜200(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、またはその間の任意の範囲(例えば、2〜20、5〜10、6〜18、15〜35、25〜100など))の直鎖状につながれた原子によって分離する。いくつかの実施形態では、L1は、YとMを、2つ以上(例えば、2〜18)の直鎖状につながれた原子によって分離する。いくつかの実施形態では、Aは(CH26である。いくつかの実施形態では、L2−Aは、MとXを、12の直鎖状につながれた原子によって分離する。いくつかの実施形態では、L2はカルバマート基を含まない。いくつかの実施形態では、L2は、直鎖状につながれたCH2基及びO基を含む。いくつかの実施形態では、L2は、直鎖状につながれたCH2基及びO基からなる。いくつかの実施形態では、L2は((CH22O)xを含み、式中、x=0〜5である。いくつかの実施形態では、L2は((CH22O)2を含む。いくつかの実施形態では、L1は、直鎖状につながれたCH2基及びO基を含む。いくつかの実施形態では、L1は(CH22を含む。いくつかの実施形態では、L1はO(CH22を含む。
いくつかの実施形態では、本明細書は、式:Z−Y−A−X;Z−L1−Y−A−X;Z−Y−L2−A−X;及びZ−L1−Y−L2−A−Xのうちの1式の化合物を提供し、式中、Zは細胞相互作用要素(または他の機能的要素)であり、L1は、存在する場合は、第1のリンカー部分であり、Yは官能基選択的に開裂可能な部分、例えば、アリル−ヘテロ原子リンカー(例えば、アリル−カルバマート−含有リンカー)、プロパルギル含有リンカーなど)であり、L2は、存在する場合は、第2のリンカー部分であり、Aはアルキル基であり、Xはハロゲンである。いくつかの実施形態では、Aは(CH26である。いくつかの実施形態では、Y及びXは、少なくとも8個の直鎖状につながれた原子(例えば、8個の原子、9個の原子、10個の原子、11個の原子、12個の原子、13個の原子、14個の原子、15個の原子、16個の原子、17個の原子、18個の原子、19個の原子、20個の原子、またはそれ以上)によって分離される。いくつかの実施形態では、化合物は、L2を含み、L2はアルキルカルバマート基を含む。いくつかの実施形態では、L1及び/またはL2が存在し、直鎖状につながれたCH2基及びO基を含む。
いくつかの実施形態では、本明細書は、細胞相互作用要素(または他の機能的要素)と捕捉物質(例えば、変異体脱ハロゲン酵素、抗体、ストレプトアビジンなど)とを連結する方法を提供し、かかる方法は、細胞適合性及び細胞透過性がある、Z−L1−Y−L2−Q、Z−L1−Y−Q、Z−Y−L2−Q、Z−Y−L1−M−L2−Q、またはZ−L3−Y−L1−M−L2−Qを含む組成物と捕捉要素とを接触させることを含み、上記式中、Zは細胞相互作用要素(または他の機能的要素)であり、Yは官能基選択的に開裂可能な部分、例えば、アリル−ヘテロ原子リンカー(例えば、アリル−カルバマート−含有リンカー)、プロパルギル含有リンカーなど)であり、L1は第1のリンカー部分であり、Mはアルキルカルバマート基であり、L2は第2のリンカー部分であり、L3(存在する場合)は、第3のリンカー部分であり、Qは捕捉要素であり、ここで、捕捉物質は捕捉要素と特異的に結合(共有結合または非共有結合)する。
いくつかの実施形態では、本明細書は、細胞相互作用要素(または他の機能的要素)と変異体脱ハロゲン酵素とを共有結合させる方法を提供し、かかる方法は、Z−Ll−Y−L2−A−X、Z−L1−Y−A−X、Z−Y−L2−A−X、Z−Y−L1−M−L2−A−X、またはZ−L3−Y−L1−M−L2−A−Xを含む基質と変異体脱ハロゲン酵素とを接触させることを含み、上記式中、Zは細胞相互作用要素(または他の機能的要素)であり、Yは官能基選択的に開裂可能な部分、例えば、アリル−ヘテロ原子リンカー(例えば、アリル−カルバマート−含有リンカー)、プロパルギル含有リンカーなど)であり、L1は第1のリンカー部分であり、Mはアルキルカルバマート基であり、L2は第2のリンカー部分であり、Aはアルキル基であり、Xはハロゲンであり、L3(存在する場合)は、第3のリンカー部分であり、ここで、変異体脱ハロゲン酵素は、対応する野生型脱ハロゲン酵素に対し、少なくとも1つのアミノ酸置換を含み、ここで、かかる少なくとも1つのアミノ酸置換の結果、変異体脱ハロゲン酵素が基質(例えば、Z−Y−Ll−M−L2−A−X、Z−L3−Y−L1−M−L2−A−Xなど)と共有結合を形成する。いくつかの実施形態では、変異体脱ハロゲン酵素における少なくとも1つのアミノ酸置換は、対応する野生型脱ハロゲン酵素と基質の間に形成された結合を開裂させる水分子活性化に関連している、対応する野生型脱ハロゲン酵素のアミノ酸残基における置換である。いくつかの実施形態では、変異体脱ハロゲン酵素における少なくとも1つのアミノ酸置換は、基質とエステル中間体を形成する、対応する野生型脱ハロゲン酵素のアミノ酸残基における置換である。
いくつかの実施形態では、方法はさらに、捕捉物質(例えば、変異体脱ハロゲン酵素)と細胞相互作用要素(または他の機能的要素)の複合体を、官能基選択的に開裂可能な部分(Y)を開裂させる官能基選択性物質に曝露させることによって、細胞相互作用要素から捕捉物質を遊離させることを含む。
いくつかの実施形態では、官能基選択的に開裂可能な部分は、本明細書に記載するように、アリル含有部分またはプロパルギル含有部分である。いくつかの実施形態では、官能基選択性物質は、水溶性の遷移金属錯体(例えば、Pd、Ruなどを含むもの)を含むか、それを本質的な構成要素とするか、またはそれを構成要素とする。いくつかの実施形態では、遷移金属は、1つ以上の水溶性有機ホスフィン配位子によって錯体を形成する。いくつかの実施形態では、官能基選択性物質は、遷移金属塩と好適な配位子(例えば、水溶性有機ホスフィン配位子、窒素系配位子、N−ヘテロ環状カルベンなど。例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるShaughnessy,K.,H.Chem.Rev.2009,109,643.を参照のこと)との相互作用によって形成する。いくつかの実施形態では、パラジウム源として好適な遷移金属塩は、パラジウム(II)塩であり、これは酢酸パラジウム:Pd(OAc)2、トリフルオロ酢酸パラジウム:Pd(TFA)2、硝酸パラジウム:Pd(NO32、塩化パラジウム:PdCl2、臭化パラジウム:PdBr2、テトラクロロパラジウム酸ナトリウム:Na2PdCl4、テトラクロロパラジウム酸カリウム:K2PdCl4、テトラクロロパラジウム酸リチウム:Li2PdCl4、テトラブロモパラジウム酸ナトリウム:Na2PdBr4、及びテトラブロモパラジウム酸カリウム:K2PdBr4を含む群から選択されるが、これらに限定されるものではない。いくつかの実施形態では、水溶性Pd(II)予備官能基選択性物質は、図1に示すPd(OAc)2錯体のうちいずれかから選択される。図1に示す予備官能基選択性物質に類似する他のパラジウム塩の予備官能基選択性物質は、本明細書に記載する実施形態で使用される。いくつかの実施形態では、錯体ルテニウム官能基選択性物質について好適なルテニウム源は当技術分野のAi et al.Chem.Commun.,2010,46,5506−5508;Streu&Meggers.Angew.Chem.Int.Ed.2006,45,5645−5648;Sanchez et al.Chem.Sci.2014,5,1901−1907;Crochet&Cadierno.Dalton Trans.2014,43,12447−12462において理解されており、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。いくつかの実施形態では、遷移金属の配位に好適なホスフィン配位子には、単座ホスフィン及び二座ホスフィンが含まれる。好適なホスフィン配位子は、例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるShaughnessy,KH.Chem.Rev.2009,109,643に記載されている。本明細書の官能基選択性物質形成のための遷移金属の配位に利用されるホスフィンの例には、図2に示すものが挙げられるが、これに限定されるものではない。いくつかの実施形態では、遷移金属の配位に好適な配位子は、ハイブリッド配位子であり、窒素、リン、N−ヘテロ環状カルベン(例えば、Arduengo型カルベン)などを含有する。
いくつかの実施形態では、本明細書に記載する組成物及び方法により、タンパク質性または高度にタンパク質性の環境における効率的な官能基選択的な開裂が提供される。いくつかの実施形態では、タンパク質性または高度にタンパク質性の環境は、表面に結合しているかまたは表面に固定化されているタンパク質(例えば、磁性粒子)を含む。いくつかの実施形態では、系(例えば、細胞内標的)の成分を損傷させずに(または損傷が最小限である)効率的な開裂を可能にする条件が提供される(例えば、開裂剤濃度、緩衝、時間など)。いくつかの実施形態では、その後の質量分析法による試料分析を妨げずに効率的な開裂を可能にする条件が提供される(例えば、開裂剤濃度、緩衝、時間など)。
いくつかの実施形態では、本明細書は、細胞内標的(例えば、標的タンパク質)を同定、単離、または固定化する方法を提供し、かかる方法は、(a)官能基選択的に開裂可能な部分(例えば、Z−Y−Qまたは本明細書に記載する他の構造)によって捕捉要素(例えば、脱ハロゲン酵素基質)に係留された細胞相互作用要素を含む組成物と、試料(例えば、細胞)とを接触させること、(b)捕捉要素の捕捉物質(例えば、固体支持体上)と試料とを接触させることを含む。いくつかの実施形態では、方法は、ステップ(b)に先立つ細胞溶解を含む。いくつかの実施形態では、方法はさらに、試料と官能基選択性物質とを接触させて官能基選択的に開裂可能な部分を開裂させることを含む。いくつかの実施形態では、捕捉要素は、タンパク質または酵素と共有結合または他の安定な結合を形成する、親和性分子、阻害物質、または基質である。いくつかの実施形態では、捕捉要素はハロアルカンであり、捕捉物質は変異体脱ハロゲン酵素であり、ここで、変異体脱ハロゲン酵素は、対応する野生型脱ハロゲン酵素に対し、少なくとも1つのアミノ酸置換を含み、ここで、少なくとも1つのアミノ酸置換により、変異体脱ハロゲン酵素が、対応する野生型脱ハロゲン酵素と基質の間に形成される結合よりも安定な結合を基質と形成し、ここで、変異体脱ハロゲン酵素における少なくとも1つのアミノ酸置換は、対応する野生型脱ハロゲン酵素と基質の間に形成された結合を開裂させる水分子活性化に関連している、対応する野生型脱ハロゲン酵素のアミノ酸残基における置換であるか、または基質とエステル中間体を形成する、対応する野生型脱ハロゲン酵素のアミノ酸残基における置換であり、(c)標的分子を同定する。他の実施形態では、捕捉要素及び捕捉物質は、ビオチン/ストレプトアビジン、ベンジルグアニン/O6−アルキルグアニン−DNAトランスフェラーゼ、ベンジルシトシン/修飾O6−アルキルグアニン−DNAトランスフェラーゼ、クチナーゼ/ニトロフェニルホスホン酸、またはその変異型である。いくつかの実施形態では、細胞相互作用要素(例えば、対象化合物)は、薬物、薬物化合物、阻害物質、配位子、生体分子、または低分子である。いくつかの実施形態では、標的分子はタンパク質(例えば、酵素、受容体、転写因子など)である。いくつかの実施形態では、方法はさらに、変異体脱ハロゲン酵素と細胞内標的の複合体を、Y基を開裂させる官能基選択性物質と接触させることよって、変異体脱ハロゲン酵素から細胞内標的を遊離させることを含む。
いくつかの実施形態では、本明細書は、被験配位子の細胞における細胞内標的(例えば、分子またはタンパク質)を同定する方法を提供し、かかる方法は、(a)本明細書に記載するZ−Y−Q組成物(例えば、Z−L1−Y−L2−Q、Z−Y−L1−M−L2−A−X、Z−L3−Y−L1−M−L2−A−Xなど)を含む細胞を接触させ、上記式中、Zは被験配位子であり、Qは捕捉要素であり、かつYは官能基選択的に開裂可能な部分であり、ここで、被験配位子は細胞内標的と結合し、(b)細胞を溶解させて細胞溶解物を作製し、(c)細胞溶解物と表面または支持体に付着した捕捉物質(例えば、Qに対応するかまたは特異的)とを接触させ、(d)未結合の溶解物を洗い流し、(e)表面または支持体と官能基選択性物質(例えば、Yに対応するかまたは特異的)とを接触させて表面または支持体から細胞内標的を遊離させ、(f)細胞内標的を同定することを含む。いくつかの実施形態では、本明細書は、細胞における細胞内標的(例えば、分子またはタンパク質)の存在または量を検出する方法を提供し、かかる方法は、(a)本明細書に記載するZ−Y−Q組成物(例えば、Z−L1−Y−L2−Q、Z−Y−L1−M−L2−A−X、Z−L3−Y−L1−M−L2−A−Xなど)を含む細胞を接触させ、(b)細胞を溶解させて細胞溶解物を作製し、(c)細胞溶解物と表面または支持体に付着した捕捉物質(例えば、Qに対応するかまたは特異的)とを接触させ、(d)未結合の溶解物を洗い流し、(e)表面または支持体と官能基選択性物質(例えば、Yに対応するかまたは特異的)とを接触させ、(f)細胞内標的の存在または量を検出または決定することを含む。いくつかの実施形態では、対象分子と相互作用する細胞内部タンパク質を検出する方法を提供する。
いくつかの実施形態では、本明細書は、遷移金属で開裂可能なリンカーによって第2の分子成分に連結された第1の分子成分を含む、官能基選択的に開裂可能な構成体と、遷移金属イオン、または遷移金属イオンを放出できる官能基選択性物質とを、遷移金属イオンによって開裂可能なリンカーが開裂され、第1の分子成分が第2の分子成分から遊離される条件下で接触させることを含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、官能基選択的に開裂可能な部分は、アリル−ヘテロ原子基及びプロパルギル−ヘテロ原子基からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、官能基選択的に開裂可能な部分は、アリルエーテル、アリルアミン、アリルエステル、アリルアミド、アリル尿素、アリルカルボナート、及びアリルカルバマートからなる群から選択されるアリル−ヘテロ原子基を含む。いくつかの実施形態では、官能基選択的に開裂可能な部分はアリルカルバマート基を含む。いくつかの実施形態では、官能基選択的に開裂可能な部分は、プロパルギルエーテル、プロパルギルアミン、プロパルギルエステル、プロパルギルアミド、プロパルギル尿素、プロパルギルカルボナート、及びプロパルギルカルバマートからなる群から選択されるプロパルギル−ヘテロ原子基を含む。いくつかの実施形態では、遷移金属はPdまたはRuである。いくつかの実施形態では、条件は、タンパク質性または高度にタンパク質性の環境を含む。いくつかの実施形態では、タンパク質性の環境は細胞または細胞溶解物である。いくつかの実施形態では、タンパク質性の環境は、表面(例えば、磁性粒子)上に結合また固定化したタンパク質を含む。いくつかの実施形態では、第1の分子成分は、細胞相互作用要素であり、細胞内標的に結合している。いくつかの実施形態では、第2の分子成分は、捕捉要素であり、捕捉物質に結合している。いくつかの実施形態では、捕捉物質は表面に結合している。
いくつかの実施形態では、本明細書は、官能基選択的に開裂可能な部分(例えば、アリル−ヘテロ原子リンカー(例えば、アリル−カルバマート−含有リンカー)、プロパルギル含有リンカーなど)を使用して第1の分子成分と第2の分子成分(例えば、捕捉要素と細胞相互作用要素)を可逆的に連結することを提供する。いくつかの実施形態では、本明細書は、官能基選択性物質(例えば、遷移金属(例えば、Pd、Ruなど)を含む)を使用して、第1の分子成分と第2の分子成分(例えば、捕捉要素と細胞相互作用要素)を連結する官能基選択的に開裂可能な部分を開裂させることを提供する。
例示的な水溶性Pd(OAc)2錯体の構造を示す。 例示的な水溶性ホスフィンの構造を示す。 例示的な水溶性ホスフィンの構造を示す。 例示的な水溶性ホスフィンの構造を示す。 例示的な水溶性ホスフィンの構造を示す。 遷移金属塩及び配位する配位子から官能基選択性物質を形成させるための例示的な反応スキームを示す。 官能基選択性物質を用いてアリルカルバマートリンカーを開裂させる例示的な触媒サイクルを示す。 開裂されたアリルカルバマートとの反応の前(左)及び後(右)の例示的な求核剤を示す。 開裂されたアリルカルバマートとの反応の前(左)及び後(右)の例示的な求核剤を示す。 色素−クロロアルカン複合体とHALOTAGとの反応(左上)、その後のPd触媒によるアリルカルバマート複合体(PBI−5696)の官能基選択的な開裂を示す。 色素−クロロアルカン複合体とHALOTAGとの反応(左上)、その後のPd触媒によるアリルカルバマート複合体(PBI−5696)の官能基選択的な開裂を示す。 溶解物及び細胞におけるHALOTAGへのBIRB*クロロアルカン複合体の結合動態を示す。 溶解物及び細胞におけるHALOTAGへのBIRB*クロロアルカン複合体の結合動態を示す。 溶解物及び細胞におけるHALOTAGへのBIRB*クロロアルカン複合体の結合動態を示す。 細胞におけるHALOTAGへのBIRB796クロロアルカン複合体の結合動態、及びBIRB76複合体(PBI−5446及びPBI−5813)によるTHP−1細胞におけるTHFα分泌の阻害を示す。 細胞におけるHALOTAGへのBIRB796クロロアルカン複合体の結合動態、及びBIRB76複合体(PBI−5446及びPBI−5813)によるTHP−1細胞におけるTHFα分泌の阻害を示す。 細胞におけるHALOTAGへのBIRB796クロロアルカン複合体の結合動態、及びBIRB76複合体(PBI−5446及びPBI−5813)によるTHP−1細胞におけるTHFα分泌の阻害を示す。 PBI−5741で標識したHALOTAGまたはHALOTAG:NLSを安定発現しているU2OS細胞のイメージングを示す。 標識細胞のSDS−PAGE解析を示す。 各種溶離法を使用した内在性標的の富化を示す。 細胞溶解物及びHALOTAGコートしたビーズが及ぼすPd触媒による開裂効率に対する影響を示す。 細胞溶解物及びHALOTAGコートしたビーズが及ぼすPd触媒による開裂効率に対する影響を示す。 バッファー組成が及ぼすPd触媒による開裂効率に対する影響を示す。 バッファー組成が及ぼすPd触媒による開裂効率に対する影響を示す。 バッファー及びホスフィン配位子の性質が及ぼすPd触媒による開裂効率に対する影響を示す。 バッファー及びホスフィン配位子の性質が及ぼすPd触媒による開裂効率に対する影響を示す。 HALOTAGコートしたビーズに対する開裂効率ならびにバッファー、ホスフィン配位子の性質、及びPd−ホスフィンの比が及ぼす開裂効率に対する影響を示す。 HALOTAGコートしたビーズに対する開裂効率ならびにバッファー、ホスフィン配位子の性質、及びPd−ホスフィンの比が及ぼす開裂効率に対する影響を示す。 作製済みPd−ホスフィン錯体が及ぼす開裂効率に対する影響を示す。 作製済みPd−ホスフィン錯体が及ぼす開裂効率に対する影響を示す。 TMR−クロロアルカン複合体とHALOTAG(左上)との反応、その後のPd触媒によるアリルカルバマート複合体(PBI−5741及びPBI−6045)の官能基選択的な開裂を示す。 TMR−クロロアルカン複合体とHALOTAG(左上)との反応、その後のPd触媒によるアリルカルバマート複合体(PBI−5741及びPBI−6045)の官能基選択的な開裂を示す。 PBI−5741;PBI−6044;PBI−6045で標識したHALOTAGまたはHALOTAG:NLSを安定発現しているU2OS細胞のイメージングを示す。 標識細胞のSDS−PAGE解析を示す。 HALOTAGコートしたビーズ(磁性及び非磁性)が及ぼすPd触媒による開裂効率に対する影響を示す。 Pd触媒による開裂にホスフィンが与える影響を示す。 Pd触媒による開裂にホスフィンが与える影響を示す。 Pd触媒による開裂効率に求核剤の性質が与える影響を示す(例は、DANPHOS及びo−DANPHOSについてのものであり、Pdとホスフィンとの比は8:1に維持した)。 Pd触媒による開裂効率に求核剤の性質が与える影響を示す(例は、DANPHOS及びo−DANPHOSについてのものであり、Pdとホスフィンとの比は8:1に維持した)。 開裂効率にPd−DANPHOS比が与える影響を示す。 開裂効率にPd−DANPHOS比が与える影響を示す。 イブルチニブ−クロロアルカン複合体の構造を示す。 溶解物におけるHALOTAGへのイブルチニブ−クロロアルカンの結合動態を示す。 細胞におけるHALOTAGへのイブルチニブ−クロロアルカンの結合動態を示す。 さまざまなイブルチニブ−クロロアルカンを用いたイブルチニブ−CAによる、HALOTAGコートしたビーズ上のBTK:NLuc融合体の捕捉効率を示す。 ウエスタンブロット解析、TEVのタンパク質分解による開裂によるNANOLUC(Nluc)の遊離、Pd:DANPHOS比1:8における「Pd(DANPHOS)x」2mMによるBTK:Nluc融合体の遊離、及びPd:DANPHOS比1:8における「Pd(DANPHOS)x」0.66mMによるBTK:Nluc融合体の遊離を示す。 Ramos細胞からイブルチニブ−CA−T4E(PBI6132)で富化した標的の質量分析を示す。 タンパク質性の環境における開裂効率に触媒組成が与える影響を示す。 タンパク質性の環境における開裂効率に触媒組成が与える影響を示す。 タンパク質性の環境における開裂効率にPd/o−DANPHOSのモル比が与える影響を示す。 タンパク質性の環境における開裂効率にPd/o−DANPHOSのモル比が与える影響を示す。 タンパク質性の環境における開裂効率に保存条件が与える影響を示す。 タンパク質性の環境における開裂効率に保存条件が与える影響を示す。 タンパク質性の環境における開裂効率にパラジウム源が与える影響を示す。 BIRB796−クロロアルカン複合体の構造を示す。 溶解物中における、HALOTAGへのBIRB796−クロロアルカン複合体の結合動態にリンカーが与える影響を示す。 無傷細胞内における、HALOTAGへのBIRB796−クロロアルカン複合体の結合動態にリンカーが与える影響を示す。 BIRB796の力価にリンカーが与える影響を示す。 各種溶離法を使用したBIRB796複合体によるNLuc:MAPK9の富化にリンカーが与える影響を示す。NLuc抗体を用いたウエスタンによる解析。 CA−T1及びCA−T4Eにそれぞれ、競合的溶出及び化学的開裂を使用して結合させたBIRB796によってTHP−1細胞から富化した標的の質量分析を示す。 ポナチニブ−クロロアルカン複合体の構造を示す。 開裂可能なクロロアルカンタグの特性にカルバマート基が与える影響を示す。溶解物中におけるHALOTAGへのポナチニブ複合体の結合動態。 開裂可能なクロロアルカンタグの特性にカルバマート基が与える影響を示す。無傷細胞内におけるHALOTAGへのポナチニブ複合体の結合動態。 開裂可能なクロロアルカンタグの特性にカルバマート基が与える影響を示す。ポナチニブ複合体による精製ABL1の阻害。 開裂可能なクロロアルカンタグの特性にカルバマート基が与える影響を示す。ポナチニブ複合体による細胞内でのSTAT5レポーター発現阻害。
定義
本明細書において、用語「官能基選択的」及びその派生語(例えば、「官能基選択的に」)は、特定の官能基、部分、または一組の官能基に対する、薬剤(「官能基選択性物質」)の化学的に選択的な反応性または触媒作用を指す。「官能基選択的に開裂可能な基」は、適切な条件(例えば、適切な官能基選択性物質)に曝露した場合に切断される化学部分である。本明細書において、「細胞透過性がある」という用語は、化合物または他の組成物が生細胞の細胞膜を横断する能力を指す。本明細書において、「細胞適合性がある」という用語は、化合物、または他の組成物が、実質的に、分解(decomposing)または分解(degrading)を受けることなく細胞内部に留まる能力を指す。本明細書において、「タンパク質性の環境」という用語は、タンパク質濃度が0.1mg/mlより大きい局所条件を指す。「高度にタンパク質性の環境」は、タンパク質濃度が10mg/mlより大きい局所条件を指す。本明細書において、本明細書で「Z」基として示される「細胞相互作用要素」という用語は、細胞成分(例えば、タンパク質、ペプチド、脂質、核酸(例えば、特定の配列など)など)と相互作用する(例えば、共有結合または非共有結合で結合する)、または「被験細胞相互作用要素」の場合、細胞成分(例えば、タンパク質、ペプチド、脂質、核酸(例えば、特定の配列など)など)と相互作用する可能性のある、任意の分子部分(例えば、低分子(例えば、薬物、毒素、反応性基、ペプチドなど)など)を指す。本明細書において、本明細書で「Q」基として示される「捕捉要素」という用語は、対応する「捕捉物質」と、共有結合または安定な非共有結合で相互作用する分子成分を指す。本明細書において、「機能的要素」という用語は、本明細書の組成物、方法、及び系において、官能基選択的に開裂可能なリンカーによって連結されている「細胞相互作用要素」及び「捕捉要素」を指す。本明細書に記載する実施形態に利用され得る他のさらなる機能的要素は、「位置特定要素」、「検出要素」などを含む。
本明細書において、「直鎖状につながれた原子」という用語は、鎖またはポリマーの骨格原子を指すが、主鎖または骨格を形成しないペンダント鎖、側鎖、またはH原子は除く。
本明細書において、「野生型」という用語は、遺伝子または遺伝子産物、天然に生じる資源から単離された遺伝子または遺伝子産物の特徴を有する当該遺伝子または遺伝子産物を指す。野生型遺伝子は、母集団において最も高頻度で観察される遺伝子であることから、その遺伝子の「野生型」として指定される物を言う。対照的に、用語「変異体」とは、野生型の遺伝子または遺伝子産物と比較した場合に、配列及び/または機能特性における改変(例えば、改変された特徴)を提示する遺伝子または遺伝子産物を指す。天然に生じる変異体を単離することができ、これらは、野生型の遺伝子または遺伝子産物と比較した場合に改変された特徴を有していることで同定されるということに留意されたい。
本明細書において、用語「固体支持体」は、試薬、例えば基質、変異体タンパク質、薬物様分子、及び他の被験成分が付着する、もしくはし得る、任意の固体材料または固定材料に関して使用される。固体支持体の例には、顕微鏡スライド、マイクロタイタープレートのウェル、カバーガラス、ビーズ、粒子、樹脂、細胞培養フラスコ、ならびに他の多くの好適な物品が挙げられる。ビーズ、粒子、または樹脂は、磁性または常磁性であり得る。
本明細書において、用語「対象化合物」は、標的分子、例えば、タンパク質、核酸などに結合し得る薬物、薬物様化合物、生体分子、低分子、毒素、ペプチドなどを指すために使用される。いくつかの実施形態では、対象化合物を細胞相互作用要素または被験細胞相互作用要素として使用する。
本明細書に記載する組成物に言及する場合(特に明記しない限り)、全体を通して本文及び構造において以下の一文字表記を使用する。「A」は炭素2個以上のアルカンであり、
「D」は、「V」と反応した場合に共有結合を形成する反応性基であり、
「E」はヘテロ原子(例えば、N、O、S、P)であり、
「G」はY基、M基、及び/またはL基であり、
「L」はリンカー部分であり、
「M」はアルキルカルバマートであり、
「Q」は捕捉要素であり、
「R」は有機官能基であり、
「V」は、「D」と反応した場合に共有結合を形成する反応性基であり、
「X」はハロゲン(例えば、Cl、Br、F、Iなど)であり、
「Y」は、適切な官能基選択性物質(例えば、アリル−ヘテロ原子(例えば、アリルカルバマート)、プロパルギル−ヘテロ原子など)との相互作用によって開裂可能な、官能基選択的に開裂可能な部分であり、
「Z」は、細胞内標的と結合することができる細胞相互作用要素である。
本明細書は、機能的要素(例えば、細胞相互作用要素及び捕捉要素)を係留(例えば、共有結合で)させるための、細胞透過性、細胞適合性があり、かつ官能基選択的に開裂可能なリンカー、及びそれを使用する(例えば、細胞内標的の細胞内捕捉と細胞外遊離)方法を提供する。
I.構造
いくつかの実施形態では、一般分子式Z−Y−Qを含む組成物を提供し、式中、Zは細胞相互作用要素(または他の機能的要素)であり、Yは官能基選択的に開裂可能な基であり、Qは捕捉要素(または他の機能的要素)である。組成物は、1つ以上のリンカー部分(例えば、L1、L2など)をさらに含んでよく、一般分子式がZ−L−Y−Q、Z−Y−L−QまたはZ−L1−Y−L2−Qであってよい。組成物は、官能基選択的に開裂可能な部分を2つ以上含んでよい。いくつかの実施形態では、細胞相互作用要素、官能基選択的に開裂可能な基、捕捉要素、及び任意選択によるリンカー(複数可)を組み合わせたものは細胞透過性及び細胞適合性である。いくつかの実施形態では、官能基選択的に開裂可能な基は、官能基選択的な開裂物質の存在下、緩和な条件下(例えば、生理的条件、中性付近pH、室温付近など)で開裂可能である。
いくつかの実施形態では、基質は式:Z−Y−Qの化合物を最小限含み、式中、Zは細胞相互作用要素(または他の機能的要素)であり、ここで、Yはアリルカルバマート基(例えば、−NHCOOCH2CHCH−)であり、ここで、Qは捕捉要素(または他の機能的要素)である。いくつかの実施形態では、ZとYは、L(例えば、Z−L−Y−)によって分離されてよく、ここで、LはC、N、S、またはOを含む多原子の直鎖または分岐鎖である。いくつかの実施形態では、YとQは、M(例えば、−Y−M−A−)によって分離されてよく、ここで、Mはアルキルカルバマート基である。いくつかの実施形態では、YとMは、L(例えば、−Y−L−M−)によって分離されてよく、ここで、LはC、N、S、またはOを含む多原子の直鎖または分岐鎖である。いくつかの実施形態では、MとAは、L(例えば、−M−L−Q)によって分離されてよく、ここで、LはC、N、S、またはOを含む多原子の直鎖または分岐鎖である。好適な基質は、Z−Y−Q、R−L−Y−Q、R−Y−L2−Q、Z−L1−Y−L2−Q、Z−Y−M−A−X、R−L−Y−M−Q、R−L−Y−M−M−Q、R−L−Y−L−Y−M−Q、Z−L−Y−L−M−Q、Z−L−Y−M−L2−Q、Z−Y−L−M−Q、Z−Y−L−M−L−Q、Z−Y−M−L−Q、Z−L−Y−L−M−L−Q、Z−Y−L−Y−Q、R−L−Y−M−Y−L−Qなどを含む。
A.官能基選択的に開裂可能な基
いくつかの実施形態では、官能基選択的に開裂可能な基は、適切な官能基選択性物質に曝露した場合に化学的に開裂することができる任意の化学部分である。いくつかの実施形態では、官能基選択的に開裂可能な基は、リンカー(例えば、直鎖リンカー)として機能して、他の2つの部分(例えば、細胞相互作用要素及び捕捉要素)をつなぐことができる。いくつかの実施形態では、官能基選択的に開裂可能な基は2つの基を連結し、かかる官能基選択的に開裂可能な基が官能基選択的に開裂されると、2つの基は互いに遊離する。例えば、官能基選択的に開裂可能な基Yによって、細胞相互作用要素Zが捕捉物質Qに係留される(例えば、Z−Y−Q)。Yが化学的に開裂されてY1とY2になると、Z及びQの係留は解除される(例えば、Z1−Y1及びY2−Q)。
いくつかの実施形態では、官能基選択的に開裂可能な好適な基は細胞透過性である。いくつかの実施形態では、官能基選択的に開裂可能な好適な基は、それらが成分となっている組成物の細胞透過性を妨げない。いくつかの実施形態では、官能基選択的に開裂可能な好適な基は、それらが成分となっている組成物の細胞透過性に負の影響を及ぼさない。
いくつかの実施形態では、官能基選択的に開裂可能な好適な基は細胞適合性である。いくつかの実施形態では、官能基選択的に開裂可能な好適な基は、それらが成分となっている組成物の細胞適合性を妨げない。いくつかの実施形態では、官能基選択的に開裂可能な好適な基は、それらが成分となっている組成物の細胞適合性に負の影響を及ぼさない。官能基選択的に開裂可能な部分は本明細書に明確に記載されているものに限定するわけではないが、以下は、本明細書の実施形態に利用される官能基選択的に開裂可能な部分の例である。
1.アリル含有基
本明細書に記載する組成物及び方法に利用される、官能基選択的に開裂可能な基としてアリル−ヘテロ原子基が挙げられるが、これに限定されるものではない。例えば、官能基選択的に開裂可能な基は下記式のものであってよく、
Figure 0006876002
式中、Eは、ヘテロ原子(例えば、O、N、S(例えば、任意の好適な酸化状態)、P(例えば、任意の好適な酸化状態)、Se)であり、R1、R2、R3、R4、及びR5は各々、互いに独立して、H、アルキル(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、またはそれより長いかもしくは分岐した型(例えば、イソプロピル))、アリール、またはヘテロアリールを含み、R6は有機部分であり、例えば、アルキル(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、またはそれより長いかもしくは分岐した型(例えば、イソプロピル))、アリール、ヘテロアリール、アミド、エステル、カルバマート、カーボネート、尿素、チオ尿素、スルファミド、硫酸、亜硫酸、リン酸、ホスホン酸などから選択される。EがNまたはPである実施形態では、E基は、Hまたは本明細書に記載する他の有機官能基もしくは有機ヘテロ官能基でさらに置換されてよい。いくつかの実施形態では、R6は、
Figure 0006876002
を含む。
いくつかの実施形態では、官能基選択的に開裂可能な基はアリルエーテルであり、例えば、式
Figure 0006876002
[式中、R1、R2、R3、R4、及びR5は各々、互いに独立して、H、アルキル(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、またはそれより長いかもしくは分岐した型(例えば、イソプロピル))、アリール、またはヘテロアリールを含み、R6はアルキル(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、またはそれより長いかもしくは分岐した型(例えば、イソプロピル))、アリール、またはヘテロアリールを含む]で表されるものである。
いくつかの実施形態では、官能基選択的に開裂可能な基はアリルアミンであり、例えば、式
Figure 0006876002
[式中、R1、R2、R3、R4、R5、及びR7は各々、互いに独立して、H、アルキル(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、またはそれより長いかもしくは分岐した型(例えば、イソプロピル))、アリール、またはヘテロアリールを含み、R6はアルキル(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、またはそれより長いかもしくは分岐した型(例えば、イソプロピル))、アリール、またはヘテロアリールを含む]で表されるものである。
いくつかの実施形態では、官能基選択的に開裂可能な基は硫化アリルであり、例えば、式
Figure 0006876002
[式中、R1、R2、R3、R4、及びR5は各々、互いに独立して、H、アルキル(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、またはそれより長いかもしくは分岐した型(例えば、イソプロピル))、アリール、またはヘテロアリールを含み、R6はアルキル(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、またはそれより長いかもしくは分岐した型(例えば、イソプロピル))、アリール、またはヘテロアリールを含む]で表されるものである。いくつかの実施形態では、官能基選択的に開裂可能な基はアリルスルホキシドであり、例えば、式
Figure 0006876002
[式中、R1、R2、R3、R4、及びR5は各々、互いに独立して、H、アルキル(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、またはそれより長いかもしくは分岐した型(例えば、イソプロピル))、アリール、またはヘテロアリールを含み、R6はアルキル(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、またはそれより長いかもしくは分岐した型(例えば、イソプロピル))、アリール、またはヘテロアリールを含む]で表されるものである。
いくつかの実施形態では、官能基選択的に開裂可能な基はアリルスルホンであり、例えば、式
Figure 0006876002
[式中、R1、R2、R3、R4、及びR5は各々、互いに独立して、H、アルキル(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、またはそれより長いかもしくは分岐した型(例えば、イソプロピル))、アリール、またはヘテロアリールを含み、R6はアルキル(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、またはそれより長いかもしくは分岐した型(例えば、イソプロピル))、アリール、またはヘテロアリールを含む]で表されるものである。
いくつかの実施形態では、官能基選択的に開裂可能な基はアリルセレニド(allyl selenide)であり、例えば、式
Figure 0006876002
[式中、R1、R2、R3、R4、及びR5は各々、互いに独立して、H、アルキル(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、またはそれより長いかもしくは分岐した型(例えば、イソプロピル))、アリール、またはヘテロアリールを含み、R6はアルキル(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、またはそれより長いかもしくは分岐した型(例えば、イソプロピル))、アリール、またはヘテロアリールを含む]で表されるものである。
いくつかの実施形態では、官能基選択的に開裂可能な基はアリルエステルであり、例えば、式
Figure 0006876002
[式中、R1、R2、R3、R4、及びR5は各々、互いに独立して、H、アルキル(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、またはそれより長いかもしくは分岐した型(例えば、イソプロピル))、アリール、またはヘテロアリールを含み、R6はアルキル(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、またはそれより長いかもしくは分岐した型(例えば、イソプロピル))、アリール、またはヘテロアリールを含む]で表されるものである。
いくつかの実施形態では、官能基選択的に開裂可能な基はアリルアミドであり、例えば、式
Figure 0006876002
[式中、R1、R2、R3、R4、R5、及びR7は各々、互いに独立して、H、アルキル(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、またはそれより長いかもしくは分岐した型(例えば、イソプロピル))、アリール、またはヘテロアリールを含み、R6はアルキル(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、またはそれより長いかもしくは分岐した型(例えば、イソプロピル))、アリール、またはヘテロアリールを含む]で表されるものである。
いくつかの実施形態では、官能基選択的に開裂可能な基はアリル尿素であり、例えば、式
Figure 0006876002
[式中、R1、R2、R3、R4、R5、R7、及びR8は各々、互いに独立して、H、アルキル(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、またはそれより長いかもしくは分岐した型(例えば、イソプロピル))、アリール、またはヘテロアリールを含み、R6はアルキル(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、またはそれより長いかもしくは分岐した型(例えば、イソプロピル))、アリール、またはヘテロアリールを含む]で表されるものである。
いくつかの実施形態では、官能基選択的に開裂可能な基はアリルカルボナートであり、例えば、式
Figure 0006876002
[式中、R1、R2、R3、R4、及びR5は各々、互いに独立して、H、アルキル(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、またはそれより長いかもしくは分岐した型(例えば、イソプロピル))、アリール、またはヘテロアリールを含み、R6はアルキル(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、またはそれより長いかもしくは分岐した型(例えば、イソプロピル))、アリール、またはヘテロアリールを含む]で表されるものである。
いくつかの実施形態では、官能基選択的に開裂可能な基はアリルカルバマートであり、例えば、式
Figure 0006876002
[式中、R1、R2、R3、R4、R5、及びR7は各々、互いに独立して、H、アルキル(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、またはそれより長いかもしくは分岐した型(例えば、イソプロピル))、アリール、またはヘテロアリールを含み、R6はアルキル(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、またはそれより長いかもしくは分岐した型(例えば、イソプロピル))、アリール、またはヘテロアリールを含む]で表されるものである。
いくつかの実施形態では、官能基選択的に開裂可能な基はアリルビス−ヘテロ原子であり、例えば、式
Figure 0006876002
[式中、R2〜R9は各々、互いに独立して、H、アルキル(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、またはそれより長いかもしくは分岐した型(例えば、イソプロピル))、アリール、またはヘテロアリールを含み、二重結合の立体配置はEまたはZ、例えば、
Figure 0006876002
である]で表されるものである。
いくつかの実施形態では、E及びE’は、互いに独立して、N、S、及びOから選択され、E及びE’は同一または異なるヘテロ原子であってよい。いくつかの実施形態では、R6及びR7は、互いに独立して、
Figure 0006876002
を含む。
一般に、アリル−ヘテロ原子型(例えば、アリルカルバマート、アリルカーボナート、アリル尿素、アリルアミド、アリルエステル、アリルアミン、アリルエーテルなど)の官能基選択的に開裂可能な基は、アリル置換(例えば、PdまたはRuで触媒)によって開裂可能である。例えば、
Figure 0006876002
である。
いくつかの実施形態では、官能基選択的に開裂可能なアリル−ヘテロ原子リンカーを含む組成物をPdまたはRu触媒(例えば、他の生理学的または細胞内条件下で)に曝露させることにより、リンカーの開裂が生じる。
2.プロパルギル含有基
本明細書に記載する組成物及び方法に利用される、官能基選択的に開裂可能な基にはプロパルギル−ヘテロ原子基が挙げられるが、これに限定されるものではない。例えば、官能基選択的に開裂可能な基は下記式のものであってよく、
Figure 0006876002
式中、Eは、ヘテロ原子(例えば、O、N、S、P)であり、R1、R2、及びR3は各々、互いに独立して、H、アルキル(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、またはそれより長いかもしくは分岐した型(例えば、イソプロピル))、アリール、またはヘテロアリールを含み、R4は有機部分であり、例えば、アルキル(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、またはそれより長いかもしくは分岐した型(例えば、イソプロピル))、アリール、ヘテロアリール、アミド、エステル、カルバマート、カーボネート、尿素、チオ尿素、スルホンアミド、硫酸、亜硫酸、リン酸、ホスホン酸などから選択される。EがNまたはPである実施形態では、E基は、Hまたは本明細書に記載する他の有機官能基もしくは有機ヘテロ官能基でさらに置換されてよい。いくつかの実施形態では、R4は、
Figure 0006876002
を含む。
いくつかの実施形態では、官能基選択的に開裂可能な基はプロパルギルエーテルであり、例えば、式
Figure 0006876002
[式中、R1、R2、及びR3は各々、互いに独立して、H、アルキル(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、またはそれより長いかもしくは分岐した型(例えば、イソプロピル))、アリール、またはヘテロアリールを含み、R4はアルキル(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、またはそれより長いかもしくは分岐した型(例えば、イソプロピル))、アリール、またはヘテロアリールを含む]で表されるものである。
いくつかの実施形態では、官能基選択的に開裂可能な基はプロパルギルアミンであり、例えば、式
Figure 0006876002
[式中、R1、R2、R3、及びR4は各々、互いに独立して、H、アルキル(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、またはそれより長いかもしくは分岐した型(例えば、イソプロピル))、アリール、またはヘテロアリールを含み、R5はアルキル(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、またはそれより長いかもしくは分岐した型(例えば、イソプロピル))、アリール、またはヘテロアリールを含む]で表されるものである。
いくつかの実施形態では、官能基選択的に開裂可能な基はプロパルギルエステルであり、例えば、式
Figure 0006876002
[式中、R1、R2、及びR3は各々、互いに独立して、H、アルキル(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、またはそれより長いかもしくは分岐した型(例えば、イソプロピル))、アリール、またはヘテロアリールを含み、R4はアルキル(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、またはそれより長いかもしくは分岐した型(例えば、イソプロピル))、アリール、またはヘテロアリールを含む]で表されるものである。
いくつかの実施形態では、官能基選択的に開裂可能な基はプロパルギルアミドであり、例えば、式
Figure 0006876002
[式中、R1、R2、R3、及びR4は各々、互いに独立して、H、アルキル(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、またはそれより長いかもしくは分岐した型(例えば、イソプロピル))、アリール、またはヘテロアリールを含み、R5はアルキル(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、またはそれより長いかもしくは分岐した型(例えば、イソプロピル))、アリール、またはヘテロアリールを含む]で表されるものである。
いくつかの実施形態では、官能基選択的に開裂可能な基はプロパルギル尿素であり、例えば、式
Figure 0006876002
[式中、R1、R2、R3、R4、及びR5は各々、互いに独立して、H、アルキル(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、またはそれより長いかもしくは分岐した型(例えば、イソプロピル))、アリール、またはヘテロアリールを含み、R6はアルキル(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、またはそれより長いかもしくは分岐した型(例えば、イソプロピル))、アリール、またはヘテロアリールを含む]で表されるものである。
いくつかの実施形態では、官能基選択的に開裂可能な基はプロパルギルカルボナートであり、例えば、式
Figure 0006876002
[式中、R1、R2、及びR3は各々、互いに独立して、H、アルキル(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、またはそれより長いかもしくは分岐した型(例えば、イソプロピル))、アリール、またはヘテロアリールを含み、R4はアルキル(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、またはそれより長いかもしくは分岐した型(例えば、イソプロピル))、アリール、またはヘテロアリールを含む]で表されるものである。
いくつかの実施形態では、官能基選択的に開裂可能な基はプロパルギルカルバマートであり、例えば、式
Figure 0006876002
[式中、R1、R2、R3、及びR4は各々、互いに独立して、H、アルキル(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、またはそれより長いかもしくは分岐した型(例えば、イソプロピル))、アリール、またはヘテロアリールを含み、R5はアルキル(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、またはそれより長いかもしくは分岐した型(例えば、イソプロピル))、アリール、またはヘテロアリールを含む]で表されるものである。
一般に、プロパルギル−ヘテロ原子型の官能基選択的に開裂可能な基は、パラジウムまたは他の遷移金属による開裂によって開裂可能である。例えば、
Figure 0006876002
である。
いくつかの実施形態では、官能基選択的に開裂可能なプロパルギル−ヘテロ原子リンカーを含む組成物をPdまたはRu触媒(例えば、他の生理学的または細胞内条件下で)に曝露させることにより、リンカーの開裂が生じる(Li et al.Nat.Chem.2014,6,352.;参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。
B.リンカー部分
いくつかの実施形態では、リンカー部分(例えば、L1、L2など)、例えば、官能基選択的に開裂可能な基と細胞相互作用要素または捕捉要素とをつなぐリンカー部分は、本明細書の組成物の一部として提供される。いくつかの実施形態では、細胞相互作用要素または捕捉要素をつなぐ「リンカー」は、官能基選択的に開裂可能な部分(Y)及び0、1つ、2つ、またはそれ以上の「リンカー部分」(L1、L2など)を含む。いくつかの実施形態では、リンカー部分は、アルキル鎖、アルケニル鎖、またはアルキニル鎖の任意の組み合わせ、及び主鎖ヘテロ原子(例えば、O、S、N、Pなど)を含む、直鎖または分岐鎖である。いくつかの実施形態では、リンカー部分は、−O−、−S−、−CH=CH−、=C=、炭素−炭素三重結合、C=O、NH、SH、OH、CNなどから選択される1つ以上の骨格基を含む。いくつかの実施形態では、リンカー部分は、任意の好適な有機官能基を含む、1つ以上の置換基、ペンダント、側鎖などを含む。
いくつかの実施形態では、リンカーは、各元素/部分が他の要素/部分の存在による影響を受けずに機能できるよう、機能的要素と官能基選択的に開裂可能な部分との間に十分な距離を提供する。例えば、リンカーは、十分な距離を提供して、捕捉要素が捕捉物質と結合でき、細胞相互作用要素が細胞内標的と結合でき、かつ官能基選択的に開裂可能な部分が官能基選択性物質基質により開裂される(例えば、部分/要素間の障害がない、または障害が抑制されている)ようにする。
本明細書で使用するリンカー部分は単共有結合ではない(そのような単共有結合の連結は、例えば、Z−YまたはY−Qのように表される)。いくつかの実施形態では、リンカーは、第1と第2の機能的要素(例えば、Z、Q)を長さ約5オングストローム〜約1000オングストローム(両端の値を含む)で分離する。好適なリンカーは、第1と第2の機能的要素(例えば、Z、Q)を、約5Å、10Å、20Å、50Å、100Å、150Å、200Å、300Å、400Å、500Å、600Å、700Å、800Å、900Å、1000Å、及びそれらの任意の好適な範囲(例えば、5〜100Å、50〜500Å、150〜700Åなど)で分離する。いくつかの実施形態では、リンカーは、第1と第2の機能的要素(例えば、Z、Q)を約1〜200個の原子(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、120、140、160、180、200、またはそれら任意の好適な範囲(例えば、2〜20、10〜50など))で分離する。
特定の実施形態では、リンカー部分は、アルキルカルバマート基(例えば、(CH2nOCONH、(CH2nNHCOOなど)を含む。本明細書のいくつかの構造では、アルキルカルバマートはMで表される。いくつかの実施形態では、アルキルカルバマートは、NH末端が機能的要素(例えば、Z、Q)の方へ、またCOO末端が官能基選択的に開裂可能な部分の方へ向けて配される。いくつかの実施形態では、アルキルカルバマートは、COO末端が機能的要素(例えば、Z、Q)の方へ、またNH末端が官能基選択的に開裂可能な部分の方へ向けて配される。いくつかの実施形態では、リンカーまたはリンカー部分はアルキルカルバマート基を1つ含む。いくつかの実施形態では、リンカーまたはリンカー部分は、アルキルカルバマート基を2つ以上(例えば、2、3、4、5、6、7、8など)含む。
いくつかの実施形態では、リンカー部分は、Z基の機能性(例えば、捕捉要素(例えば、A−X、ビオチン、エピトープなど)と捕捉物質(例えば、変異体脱ハロゲン酵素、ストレプトアビジン、抗体)の間の相互作用)を最適化する距離で、機能的要素(例えば、ZまたはQ(例えば、A−X))とアリルカルバマート(Y)またはアルキルカルバマート(M)とを分離するように構成される。ある実施形態では、ZまたはQと、MまたはYは、1〜200の直鎖状につながれた原子(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、120、140、160、180、200、またはそれらの任意の好適な範囲(例えば、2〜20、10〜50、6〜18(例えば、(CH2)6O(CH22O(CH22、(CH26~18など)など)で分離される。組成物が−Y−L−A−Xまたは−M−L−A−X(かつ、LはMもYも含まない)を含むいくつかの実施形態では、AとLは合わせて1〜200の直鎖状につながれた原子を含む(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、120、140、160、180、200、またはそれらの任意の好適な範囲(例えば、2〜20、10〜50、6〜18))。いくつかの実施形態では、AとL2は、9〜15の直鎖状につながれた原子(例えば、9、10、11、12、13、14、15)を含む。いくつかの実施形態では、AとL2は12の直鎖状につながれたC原子、N原子、及び/またはO原子(例えば、(CH26O(CH22O(CH22、(CH26(CH23O(CH22、(CH26O(CH22(CH23など)を含む。
いくつかの実施形態では、リンカーは、官能基とカルバマートの間の相互作用を減弱させる距離で、Z基またはQ基と、最近位のカルバマート(例えば、MまたはY)とを分離するように構成される。いくつかの実施形態では、リンカー部分は、1超の直鎖状につながれたC原子、S原子、N原子、及び/またはO原子を含む。いくつかの実施形態では、リンカー部分は、1つ以上のアルキルカルバマート基を含む。いくつかの実施形態では、リンカー部分は、1つ以上のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基など)を含む。いくつかの実施形態では、リンカー部分は、O(CH22基または(CH2)O基を1つ以上(1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100)含む。いくつかの実施形態では、リンカー部分は、1〜200(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、120、140、160、180、200、またはそれらの任意の好適な範囲(例えば、2〜20、10〜50、6〜18))の直鎖状につながれた原子を含む。いくつかの実施形態では、リンカー部分は、1〜200(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、120、140、160、180、200、またはそれらの任意の好適な範囲(例えば、2〜20、10〜50、6〜18))の原子が直鎖状につながれた長さである。
C.機能的要素
本明細書は、本明細書に記載する組成物及び方法において有用な2つの機能的要素(例えば、捕捉要素(Q)及び細胞相互作用要素(Z))を含む組成物を提供する。機能的要素は、自身が付着している組成物に対して機能または潜在的機能を提供する分子成分または高分子成分である。そのような機能は、本明細書に記載する組成物またはタンパク質もしくはそれに結合している融合体の単離、精製、検出、位置の特定、固定化などを行う際に有用であり得る。いくつかの実施形態では、機能的要素は、細胞成分(例えば、細胞相互作用要素)と相互作用する。いくつかの実施形態では、機能的要素は、捕捉物質(例えば、捕捉要素)と結合する。本明細書の実施形態では、捕捉物質と細胞相互作用要素とをつなぐ、官能基選択的に開裂可能なリンカーとして、最も典型的な形態を記載しているが、実施形態をそのように限定するものではない。いくつかの実施形態では、本明細書に記載する官能基選択的に開裂可能なリンカーは、機能的要素の他の対(例えば、検出要素、細胞内位置特定要素など)をつなぐ。
いくつかの実施形態では、第1の機能的要素(例えば、細胞相互作用要素(Z))は、第2の機能的要素(例えば、捕捉要素(Q))に、官能基選択的に開裂可能な部分(Y)及び任意選択で1つ以上のリンカー部分(例えば、L、L1、L2など)を介して共有結合で連結される。本明細書で提供する範囲内である組成物の好適な配置には、例えば、Z−Y−Q、Z−L−Y−Q、Z−L1−Y−L2−Qなどが含まれる。いくつかの実施形態では、そのような組成物の場合、機能的要素はその機能特性(例えば、細胞内標的への結合、捕捉物質への結合など)を保持する。
いくつかの実施形態では、本明細書に記載する組成物は、細胞適合性であり、かつ/または細胞透過性である。したがって、好適な機能的要素(例えば、細胞相互作用要素、捕捉要素)は、そのような組成物において細胞適合性及び/または細胞透過性があるものである。いくつかの実施形態では、官能基選択的に開裂可能なリンカーによって連結されている機能的要素を含む組成物は、細胞外で加えた場合に、細胞膜を通過して細胞に侵入することができる(例えば、拡散、エンドサイトーシス、能動輸送、受動輸送などを介する)。いくつかの実施形態では、好適な機能的要素は、それらの特定の機能の他、細胞適合性及び細胞透過性に基づいて選択される。
1.細胞相互作用要素
いくつかの実施形態では、組成物は、官能基選択的に開裂可能なリンカーによって別の機能的要素(例えば、捕捉要素)に連結されている細胞相互作用要素を含む。細胞相互作用要素は、1つ以上の細胞の(例えば、細胞内の)成分と相互作用する生理学的かつ/または薬理学的に活性な物質である。いくつかの実施形態では、細胞相互作用要素には、低分子(例えば、薬物、薬物様分子、毒素、被験化合物など)、アミノ酸(例えば、天然に生じるアミノ酸または非天然アミノ酸)、ペプチド、核酸(例えば、DNA、RNA)などが含まれるが、これらに限定されるものではない。
いくつかの実施形態では、細胞相互作用要素は、細胞内条件下で細胞内標的と結合する(例えば、共有結合または非共有結合)。いくつかの実施形態では、細胞相互作用要素は、細胞内条件下で細胞内標的との安定な相互作用を形成し、そのような相互作用を緩和なプロセス条件及び分析条件下(例えば、中性付近pH(例えば、pH6.5、pH6.6、pH6.7、pH6.8、pH6.9、pH7.0、pH7.1、pH7.2、pH7.3、pH7.4、pH7.5、及びそれらの任意の好適な範囲のpH)、室温、低濃度の変性物質または他の不安定化分子など)で維持する。
いくつかの実施形態では、細胞内標的は、細胞相互作用要素(例えば、低分子、ペプチド、核酸、脂質など)に対する任意の好適な結合/相互作用のパートナー(例えば、受容体、酵素)を含む。特定の実施形態では、細胞内標的は、細胞相互作用要素に結合するか、そうでなければ細胞相互作用要素と相互作用する(例えば、安定に相互作用する)タンパク質である。より詳細な実施形態では、細胞内標的は、低分子細胞相互作用要素に結合するか、そうでなければ低分子細胞相互作用要素と相互作用する(例えば、安定に相互作用する)受容体タンパク質または酵素である。本明細書の実施形態は、細胞内標的の同一性、種類、またはクラスによって制限されるものではない。
いくつかの実施形態では、細胞内標的は、アッセイ実施対象の細胞の内在性細胞成分である。他の実施形態では、アッセイ実施対象の細胞に細胞内標的を発現させる。いくつかの実施形態では、細胞内標的を、かかる細胞内標的にとっての内因性レベルまたは近傍レベル(例えば、天然の存在量)で(例えば、細胞内標的の過剰発現はない)発現させる。いくつかの実施形態では、本明細書の方法により、細胞(または細胞溶解物)に存在する内在性の細胞内標的の捕捉が可能になる。いくつかの実施形態では、本明細書の方法により、天然または内在性の存在量またはその近傍存在量で細胞に存在する細胞内標的を捕捉し、これによりアッセイの生物学的関連性を最大限に引き出すことが可能になる。ある実施形態では、こうした方法により細胞内標的の内在性レベルでの捕捉が可能になることから、かかる方法は、細胞相互作用要素の不明標的を捕捉するのに有用である。
2.捕捉要素
いくつかの実施形態では、組成物は、官能基選択的に開裂可能なリンカーによって別の機能的要素(例えば、細胞相互作用要素)に連結されている捕捉要素を含む。捕捉要素は、非共有結合型相互作用によって安定な複合体を形成するか、または特定の捕捉物質と共有結合による連結を形成する分子成分である。
いくつかの実施形態では、捕捉要素はタンパク質(例えば、酵素)に対する基質であり、捕捉物質はそのタンパク質である。いくつかの実施形態では、捕捉要素は「共有結合性基質」または、反応対象のタンパク質または酵素と共有結合を形成するものである。基質は、酵素との相互作用時に酵素と共有結合を形成する反応性基(例えば、改変基質)を含み得るか、または酵素は、共有結合で結合している中間体を基質に一致させることができない変異体型であり得る。いくつかの実施形態では、基質は、かかる基質と共有結合を形成する変異体タンパク質(例えば、変異体脱ハロゲン酵素)によって認識される。そのような実施形態では、基質と野生型バージョンのタンパク質(例えば、脱ハロゲン酵素)とを相互作用させると生成物が形成され野生型タンパク質が再生されるが、基質(例えば、ハロアルカン)と変異体バージョンのタンパク質(例えば、脱ハロゲン酵素)とを相互作用させると、タンパク質と基質の間に安定な結合が形成される(例えば、共有結合の形成)。基質は、自身の基質と超安定な結合または共有結合を形成するよう改変されている任意の変異体タンパク質に対する任意の好適な基質であってよく、通常、かかるタンパク質による結合は一過性にすぎないであろう。いくつかの実施形態では、タンパク質は変異体加水分解酵素または脱ハロゲン酵素である。いくつかの実施形態では、タンパク質は変異体脱ハロゲン酵素であり、基質はハロアルカンである。いくつかの実施形態では、ハロアルカンは、末端をハロゲン(例えば、Cl、Br、F、Iなど)で封止されたアルカン(例えば、C2〜C20)を含む。いくつかの実施形態では、ハロアルカンは式A−Xで表され、式中、Xはハロゲン(例えば、Cl、Br、F、Iなど)であり、Aは2〜20個の炭素を含むアルカンである。ある実施形態では、Aは炭素2〜12個の直鎖セグメントを含む。ある実施形態では、Aは炭素2〜12個の直鎖セグメントである。いくつかの実施形態では、ハロアルカンは、変異体脱ハロゲン酵素との相互作用を妨げない、任意のさらなるペンダント基または置換基を含んでよい。
いくつかの実施形態では、捕捉物質はSNAPタグであり、捕捉要素はベンジルグアニンである(例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるCrivat G、Taraska JW(2012年1月).Trends in Biotechnology30(1):8−16.を参照のこと)。いくつかの実施形態では、捕捉物質はCLIPタグであり、捕捉要素はベンジルシトシンである(例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるGautier,et al.Chem Biol.2008 Feb;15(2):128−36.を参照のこと)。
自身の基質(例えば、ハロアルカン基質)と共有結合で結合する変異体タンパク質を含む系(例えば、変異体加水分解酵素(例えば、変異体脱ハロゲン酵素)は、例えば、米国特許第7,238,842号、米国特許第7,425,436号、米国特許第7,429,472号、米国特許第7,867,726号に記載されており、その各々は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
ある実施形態では、基質は、脱ハロゲン酵素、例えば、ハロアルカン脱ハロゲン酵素または脂肪族もしくは芳香族のハロゲン化基質における炭素−ハロゲン結合を開裂させる脱ハロゲン酵素に対する基質、例えばRhodococcus、Staphylococcus、Pseudomonas、Burkholderia、AgrobacteriumもしくはXanthobacterの脱ハロゲン酵素に対する基質であるか、またはセリン・ベータ−ラクタマーゼに対する基質である。いくつかの実施形態では、基質には、任意選択で、かかる基質の反応性基と1つ以上の官能基とを物理的に分離するリンカーが含まれる。例えば、基質には、その基質の1つ以上の官能基がタンパク質(例えば、脱ハロゲン酵素)と基質の反応性基(例えば、ハロアルカン)との相互作用を妨げないよう、長さ、構造、電荷、及び疎水性が十分であるリンカーが含まれ得る。
いくつかの実施形態では、捕捉要素は「親和性分子」であり、捕捉物質は、そのような親和性分子と選択的に相互作用する「受容体」(例えば、低分子、タンパク質、抗体など)である。そのような対には、捕捉物質としての抗体と捕捉要素としての抗原;捕捉要素としてのHisタグと捕捉物質としてのニッケルカラム;捕捉物質としてのタンパク質と捕捉要素としての高親和性低分子(例えば、ストレプトアビジンとビオチン)などが含まれると考えられる。したがって、親和性分子を含む組成物は、例えば、親和性分子と受容体(例えば、生物由来または生物由来ではない受容体分子)との選択的相互作用に基づいて細胞から分離される。受容体分子は、溶液中で遊離していても、または固体支持体に付着していてもよい。いくつかの実施形態では、親和性分子に連結されている細胞相互作用要素または他の機能的要素は、その後、官能基選択的に開裂可能なリンカーの官能基選択的な開裂によって受容体から遊離する(例えば、細胞の捕捉物質に結合している細胞内標的の検出または精製を可能にする)。
例えば、親和性分子が相互作用する特定の分子(受容体分子と呼ぶ)は、有機低分子、スルフヒドリル基(−SH)などの化学基、または親和性分子に対する抗体もしくは他の天然に生じるリガンドなどの生体高分子であろうと考えられる。結合は通常、化学的なものであり、共有結合もしくは非共有結合の形成またはイオン結合もしくは水素結合などの相互作用の形成を伴い得る。受容体分子は、溶液中で遊離しているか、または固体もしくは半固体の表面、ポリマーマトリックスに結合しているか、または固体もしくは半固体の基質上に存在し得るであろう。相互作用は、外部因子、例えば、光、温度、圧力、または触媒として作用する化学的もしくは生物学的分子の付加によって誘発されてもよい。親和性分子と受容体分子の間に相互作用(通常、一種の結合)が起きるために反応混合物から複合体が検出及び/または分離される。
親和性分子の例には、免疫原性分子(例えば、タンパク質、ペプチド、炭水化物、または脂質のエピトープ(例えば、その分子に特異的な抗体を調製するために有用な任意の分子));ビオチン、アビジン、ストレプトアビジン、及びその誘導体;金属結合分子;ならびにこれらの分子の断片及び組み合わせといった分子が含まれる。例示的な親和性分子には、His5(HHHHH)、HisX6(HHHHHH)、C−myc(EQKLISEEDL)、Flag(DYKDDDDK)、SteptTag(WSHPQFEK)、HAタグ(YPYDVPDYA)、チオレドキシン、セルロース結合ドメイン、キチン結合ドメイン、S−ペプチド、T7ペプチド、カルモジュリン結合ペプチド、C末端RNAタグ、金属結合ドメイン、金属結合反応性基、アミノ酸反応性基、インテイン、ビオチン、ストレプトアビジン、及びマルトース結合タンパク質が挙げられる。いくつかの実施形態では、親和性相互作用により、さまざまな表面に対する本明細書に記載の組成物の細胞外での(例えば、細胞溶解後)付着が促進される。好適な表面には、クロマトグラフィー分離用樹脂、組織培養表面または結合プレートのようなプラスチック、マイクロタイター皿及びビーズ、セラミックス及びガラス、磁性粒子などの粒子、ポリマー及び他のマトリックスが挙げられる。場合によっては、これらの材料は、光ファイバー、chemfet、及びプラズモン検出器などの生体分子検出装置の一部であってよい。
親和性分子の別の例はダンシルリジン(dansyllysine)である。ダンシル環と相互作用する抗体は市販されているが(Sigma Chemical;ミズーリ州セントルイス)、Antibodies:A Laboratory Manual(Harlow and Lane,1988)に記載のような公知のプロトコルを使用して調製することもできる。例えば、抗ダンシル抗体を、クロマトグラフィーカラムの充填材に固定化させる。この方法、すなわちアフィニティーカラムクロマトグラフィーでは、固定化された抗体との相互作用によりカラムに保持されるべき基質と変異体加水分解酵素との複合体が生じ、それ以外の分子はカラムを通過することにより、分離が達成される。その後、抗体−抗原間の相互作用の破壊によって複合体を遊離させる。特定のクロマトグラフィーカラム材料、例えば、イオン交換またはアフィニティー用Sepharose、Sephacryl、Sephadex及び他のクロマトグラフィー用樹脂が市販されている(Sigma Chemical;ミズーリ州セントルイス;Pharmacia Biotech;ニュージャージー州ピスカタウェイ)。ダンシルリジンは、その蛍光特性のため好都合に検出され得る。
抗体を受容体分子として用いる場合、免疫沈降法及びフィルターまたは他の表面、例えばビーズ、プレートもしくは樹脂への抗体の固定化といった他の生化学的分離法を介して分離を実施することもできる。例えば、組成物は、親和性分子特異的または他の機能的要素特異的な抗体を用いて磁性ビーズをコートすることによって単離され得る。ビーズは、磁場を用いて混合物から分離されることが多い。
親和性分子を有する複合体を検出及び/または単離する方法には、ゲル濾過液体クロマトグラフィー、高速(fast−pressure)液体クロマトグラフィーまたは高圧液体クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィー及びイオン交換クロマトグラフィーなどのクロマトグラフィー技術が挙げられる。タンパク質を分離する他の方法もまた、変異体加水分解酵素と基質の複合体の検出及びその後の単離に有用であり、例えば、電気泳動、等電点電気泳動及び質量分析法がある。
3.他の官能基
本明細書に記載する組成物は、官能基選択的に開裂可能な部分によって共に係留された2つの機能的要素を含む。本明細書に記載するほとんどの実施形態では、機能的要素は細胞相互作用要素及び捕捉要素であるが、本明細書で提供する範囲の実施形態のように限定されるものではない。むしろ組成物は、細胞相互作用要素または捕捉要素に係留されるかまたは互いに係留している、異なる機能を有する他の機能要素を含んでよい。本明細書に記載する実施形態に利用され得る他の例示的な機能的要素を以下に記載する。
いくつかの実施形態では、機能的要素には、低分子(例えば、薬物、薬物様分子、毒素、被験化合物など)、アミノ酸(例えば、天然に生じるアミノ酸または非天然アミノ酸)、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、核酸(例えば、DNA、RNA)、Hisタグ、FLAGタグ、Strepタグ、酵素、補因子、補酵素、酵素に対するペプチドまたはタンパク質基質、例えば、分岐ペプチド基質(例えば、Z−アミノベンゾイル(Abz)−Gly−Pro−Ala−Leu−Ala−4−ニトロベンジルアミド(nitrobenzyl amide)(NBA)、自殺基質、または受容体)、1つ以上のヌクレオチド(例えば、ATP、ADP、AMP、GTPまたはGDP)とその類似体、例えば、オリゴヌクレオチド、ある遺伝子またはその部分に対応する二本鎖または一本鎖DNA(例えば、転写因子のようなタンパク質と結合することができるDNA)、ある遺伝子に対応するRNA(例えば、終止コドンを欠くmRNA、またはその部分)、RNAiまたはそのためのベクターのための二本鎖RNA、糖タンパク質、多糖類、ペプチド−核酸(PNA)、脂質二重層などの脂質、薬物(例えば、ドキソルビシン、5−フルオロウラシル、またはcamptosar(CPT−11;イリノテカン)のような化学療法薬)、アミノアシル化された開始tRNAもしくはアミノアシル化されたアンバーサプレッサーtRNAのようなアミノアシル化tRNA、Ca2+と結合する分子、K+と結合する分子、Na+と結合する分子、pH感受性分子、放射性核種、電子顕微鏡観察で高電子密度の分子、造影剤(例えば、バリウム、ヨウ素または他のMRIもしくはX線用造影剤)、NOの存在下で蛍光を発するかまたは活性酸素に対して感受性を示す分子、ナノ粒子(例えば、イムノゴールド粒子、常磁性ナノ粒子、アップコンバージョンするナノ粒子、または量子ドット)、酵素に対するタンパク質以外の基質、酵素阻害物質(可逆性または非可逆性阻害物質)、キレート剤、架橋基(例えば、スクシンイミジルエステルまたはアルデヒド)、グルタチオン、ビオチンまたは他のアビジン結合分子、アビジン、ストレプトアビジン、cAMP、ホスファチジルイノシトール、ヘム、cAMPの配位子、金属、NTAが含まれるが、これらに限定されるものではなく、また一実施形態では、1つ以上の色素、例えば、キサンテン色素、カルシウム感受性色素、例えば、1−[2−アミノ−5−(2,7−ジクロロ−6−ヒドロキシ−3−オキシ−9−キサンテニル)−フェノキシ]−2−(2’−アミノ−5’−メチルフェノキシ)エタン−N,N,N’,N’−テトラ酢酸(Fluo−3)、ナトリウム感受性色素、例えば、1,3−ベンゼンジカルボン酸、4,4’−[1,4,10,13−テトラオキサ−7,16−ジアザシクロオクタデカン−7,16−ジイルビス(5−メトキシ−−6,2−ベンゾフランジイル)]ビス(PBFI)、NO感受性色素、例えば、4−アミノ−5−メチルアミノ−2’,7’−ジフルオレセイン(difluorescein)、または他の蛍光団(例えば、カルボキシローダミン類似体、例えば、米国特許第13/682,589号を参照のこと)が含まれる。いくつかの実施形態では、機能的要素は、ハプテンまたは免疫原性分子、例えば、その分子に特異的な抗体によって結合している分子である。いくつかの実施形態では、官能基は、放射性核種または放射性核種の配位子(coordinator)、例えば、3H、14C、35S、125I、131Iを含み、これには診断法に有用な分子が含まれる。
ある実施形態では、機能的要素は、それに結合している組成物及び/またはタンパク質もしくは融合体の検出を可能にする、検出可能な特性を有する。検出可能な機能的要素には、電磁スペクトル特性、例えば、放出もしくは吸収、磁力、電子スピン共鳴、電気容量、誘電率または電気伝導率が特徴的なもの、ならびに強磁性官能基、常磁性官能基、反磁性官能基、発光性官能基、電気化学発光性官能基、蛍光性官能基、リン光発光性官能基、色官能基、抗原性官能基、または特徴的質量を有する官能基が含まれる。機能的要素には、核酸分子(例えば、DNAまたはRNA(例えば、オリゴヌクレオチドまたはヌクレオチド)、タンパク質(例えば、発光タンパク質、ペプチド、造影剤(例えば、MRI造影剤)、放射性核種、親和性タグ(例えば、ビオチンまたはストレプトアビジン)、ハプテン、アミノ酸、脂質、脂質二重層、固体支持体、蛍光団、発色団、レポーター分子、放射性核種、電子顕微鏡観察で高電子密度の分子、MRI造影剤(例えば、マンガン、ガドリニウム(III)、または酸化鉄粒子)、またはその配位子(coordinator)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。特定の機能的要素を検出する方法、または特定の機能的要素及びそれに結合している任意の要素を含む組成物を単離する方法は当業者に公知である。
いくつかの実施形態では、官能基は固体支持体であるかまたは固体支持体を含む。好適な固体支持体には、沈降性粒子(磁性粒子、セファロース、またはセルロースビーズなど)、膜、ガラス(例えば、スライドガラス)、セルロース、アルギン酸塩、可塑性ポリマーもしくは合成により調製した他のポリマー(例えば、Eppendorfチューブまたはマルチウェルプレートのウェル)、自己組織化単分子膜、表面プラズモン共鳴チップ、または表面が電子伝導性の固体支持体などが挙げられる。
いくつかの実施形態では、機能的要素は光親和性標識基である。いくつかの実施形態では、機能的要素は、細胞内標的に付着するための、光(例えば、UV)で活性化され得る基(例えば、アジド基)を1つ以上有する細胞内標的に対する配位子である。
例示的な検出可能な機能的要素には、ハプテン(例えば、キーホールリンペットヘモシアニンのように免疫原性を増強させるために有用な分子)、開裂可能標識(例えば、光開裂性ビオチン)及び蛍光標識(例えば、N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)修飾クマリン及びスクシンイミドまたはスルホノスクシンイミド(sulfonosuccinimide)で修飾されたたBODIPY(UV及び/または可視光で励起した蛍光検出により検出可能)、ローダミン(R110、ロードール、CRG6、テキサスメチルレッド(TAMRA)、Rox5、FAM、またはフルオレセイン)、クマリン誘導体(例えば、7アミノクマリン、及び7−ヒドロキシクマリン、2−アミノ−4−メトキシナフタレン、1−ヒドロキシピレン、レソルフィン、フェナレノンまたはベンズフェナレノン(benzphenalenone)(米国特許第4,812,409号))、アクリジノン(米国特許第4,810,636号)、アントラセン、及びアルファナフトールとベータ−ナフトールの各誘導体、フッ素化されたフルオレセイン及びロードールなどのフッ素化キサンテン誘導体(例えば、米国特許第6,162,931号)、ならびに生物発光分子(例えば、ルシフェラーゼ(例えば、発光エビ由来ルシフェラーゼ(例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国出願第12/773,002号、米国出願第13/287,986号を参照のこと)またはGFPもしくはGFP誘導体)が挙げられる。蛍光性(または生物発光性)の機能的要素を使用してリン酸化のような系内変化をリアルタイムで感知してよい。金属イオンの化学センサーのような蛍光分子を利用して、組成物と結合するタンパク質を標識化してよい。生物発光性または蛍光性の官能基、例えば、BODIPY、ローダミングリーン、GFP、または赤外色素は機能的要素として利用され、例えば、相互作用研究(例えば、BRET、FRET、LRETまたは電気泳動を使用するもの)に利用され得る。
別のクラスの機能的要素には、電磁放射を用いて検出可能な分子が含まれ、これらには、キサンテン蛍光団、ダンシル蛍光団、クマリン及びクマリン誘導体、蛍光性アクリジニウム部分、ベンゾピレン系蛍光団、ならびに7−ニトロベンゾ−2−オキサ−1,3−ジアゾール、及び3−N−(7−ニトロベンゾ−2−オキサ−1,3−ジアゾール−4−イル)−2,3−ジアミノ−プロピオン酸が挙げられるが、これらに限定されるものではない。好ましくは、蛍光分子は、アミノ酸とは異なる波長における蛍光量子収量が高く、より好ましくは、スペクトルの可視光部分、またはUVと可視光の両方の部分で励起され得る蛍光量子収量が高い。あらかじめ選択した波長での励起時、分子は、目視でも、または従来の蛍光検出法を使用しても低濃度で検出可能である。電気化学発光分子、例えば、ルテニウムキレート及びその誘導体またはニトロキシドアミノ酸(nitroxide amino acid)及びその誘導体は、フェムトモル範囲及びそれ以下で検出可能である。
蛍光分子に加え、電磁場及び電磁放射に対する分子の相互作用と応答に基づく物性を有する多種多様な分子が、本明細書に記載する組成物及び方法に利用される。これらの特性には、電磁スペクトルのUV領域、可視光領域及び赤外領域における吸収、ラマン活性な発色団の存在が含まれ、これらはさらに共鳴ラマン分光法、電子スピン共鳴法による作用及び核磁気共鳴及び分子質量(例えば、質量分析法による)によって増強され得る。
II.系
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組成物は、系において1つ以上のさらなる要素、組成物、成分、デバイスなどと共に提供される。例えば、細胞透過性/適合性のある組成物(本明細書に記載のもの)は細胞と共に提供されるかまたは細胞に投与される。同様に、組成物は固体支持体と共に提供されてよく、それに対し組成物上の機能的要素が付着してよい。さらに、酵素基質(例えば、ハロアルカン)を含む組成物は、基質と共有結合を形成する変異体タンパク質(例えば、脱ハロゲン酵素)と共に提供されてよい。本明細書の範囲内でさまざまな系に利用される要素、組成物、成分、デバイスなどのいくつかを以下に記載する。
いくつかの実施形態では、系は固体支持体を含む。好適な固体支持体には、沈降性粒子(磁性粒子、セファロース、またはセルロースビーズなど)、膜、ガラス(例えば、スライドガラス)、セルロース、アルギン酸塩、可塑性ポリマーもしくは合成により調製した他のポリマー(例えば、Eppendorfチューブまたはマルチウェルプレートのウェル)、自己組織化単分子膜、表面プラズモン共鳴チップ、または表面が電子伝導性の固体支持体などが挙げられる。
いくつかの実施形態では、系は、本明細書に記載するような官能基選択的に開裂可能な組成物、及びタンパク質上の機能的要素と安定して相互作用できるタンパク質を含む。いくつかの実施形態では、タンパク質は、自身の基質と共有結合を形成するよう改変されている変異体バージョンの酵素である。いくつかの実施形態では、変異体タンパク質は、変異体タンパク質、加水分解酵素及び/または脱ハロゲン酵素であり、例えば、米国特許第7,238,842号、米国特許第7,425,436号、米国特許第7,429,472号、米国特許第7,867,726号に詳細が記載されており、その各々は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。いくつかの実施形態では、変異体タンパク質、加水分解酵素、及び/または脱ハロゲン酵素は、対応する野生型タンパク質、加水分解酵素または脱ハロゲン酵素に対し、少なくとも1つのアミノ酸置換を含む。変異体タンパク質(例えば、変異体脱ハロゲン酵素)は、組換え技術(例えば、部位特異的変異導入法または再帰的変異導入法)により調製されたものに限られるわけではなく、変異体タンパク質(例えば、変異体脱ハロゲン酵素)に、基質、例えば1つ以上の官能基を含む基質と安定した結合(例えば、共有結合)を形成できる能力を与える、1つ以上のアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態では、変異体タンパク質は変異体加水分解酵素である。ある実施形態では、変異体タンパク質は変異体脱ハロゲン酵素である。少なくとも1つのアミノ酸置換により、変異体タンパク質は基質と共に、対応する野生型タンパク質と基質との間で形成される結合よりも安定な結合を形成する(例えば、共有結合)。変異体タンパク質における少なくとも1つのアミノ酸置換は、対応する野生型タンパク質と基質の間に形成された結合を開裂させる水分子活性化に関連している、対応する野生型タンパク質のアミノ酸残基における置換であるか、または基質とエステル中間体を形成する、対応する野生型タンパク質のアミノ酸残基における置換である。いくつかの実施形態では、変異体タンパク質は、対応する野生型タンパク質に対して少なくとも2つのアミノ酸置換を含み、ここで、1つは、野生型タンパク質において水分子活性化に関連している残基か、または野生型タンパク質において、加水分解酵素に対する基質が求核攻撃することによってエステル中間体を形成する残基における置換であり、もう1つは、野生型タンパク質において、加水分解酵素の基質に対する結合部位(複数可)の残基またはその近傍の残基であるが、対応する野生型タンパク質において水分子活性化に関連している残基、または基質とエステル中間体を形成する残基ではない残基における置換である。一実施形態では、第2の置換は、野生型タンパク質において、基質がタンパク質の触媒ポケット内へ侵入するための部位(複数可)が並ぶ残基における置換である。好ましくは、さらなる置換(複数可)により、対応する野生型タンパク質の基質に結合するそれらの変異体の安定な共有結合形成の割合が増加する。タンパク質、加水分解酵素及び脱ハロゲン酵素の配列及び変異の詳細は、例えば、米国特許第7,238,842号、米国特許第7,425,436号、米国特許第7,429,472号、米国特許第7,867,726号に記載されており、その各々は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
いくつかの実施形態では、要素間の安定相互作用は、公知の捕捉/結合系、例えばSNAPタグ及び/またはCLIPタグの使用により達成される。
さまざまな実施形態では、系は、変異体タンパク質(例えば、変異体脱ハロゲン酵素)及び対象とするタンパク質またはペプチド(例えば、薬物標的、マーカータンパク質(例えば、選択可能マーカータンパク質、親和性タグ(例えば、ポリヒスチジン配列))、対象酵素(例えば、ルシフェラーゼ、RNasin、RNase、及び/またはGFP)、核酸結合タンパク質、細胞外マトリックスタンパク質、分泌タンパク質、抗体またはその一部(例えばFc)、生物発光タンパク質、受容体リガンド、調節タンパク質、血清タンパク質、免疫原性タンパク質、蛍光タンパク質、反応性システインを有するタンパク質、受容体タンパク質(例えば、NMDA受容体、チャネルタンパク質(例えば、HERGチャネルタンパク質など、ナトリウム、カリウムまたはカルシウムに感受性であるチャネルタンパク質のようなイオンチャネルタンパク質))、膜タンパク質、サイトゾルタンパク質、核タンパク質、構造タンパク質、リンタンパク質、キナーゼ、シグナル伝達タンパク質、代謝タンパク質、ミトコンドリアタンパク質、受容体関連タンパク質、蛍光タンパク質、酵素基質(例えば、プロテアーゼ基質)、転写因子、タンパク質不安定化配列、または輸送タンパク質(例えば、EAAT1−4グルタメート輸送体)、ならびに移行シグナル(例えば、ミトコンドリア局在化配列、核局在化シグナルまたはミリストイル化配列といった、変異体加水分解酵素を特定の位置へ輸送する、プラスチドを標的とするシグナル))のアミノ酸配列を含む融合タンパク質を含む。
ある実施形態では、融合タンパク質は、変異体タンパク質(例えば、変異体脱ハロゲン酵素)及び少なくとも1つの対象タンパク質をコードする組換えDNAから発現させるか、または化学合成により生成させる。対象タンパク質を、変異体タンパク質のN末端またはC末端に融合させてよい。いくつかの実施形態では、融合タンパク質は、変異体タンパク質(例えば、変異体脱ハロゲン酵素)のN末端に対象タンパク質を、C末端に別のタンパク質、例えば、異なるタンパク質を含む。例えば、対象タンパク質は蛍光タンパク質または抗体であってよい。任意選択で、融合体のタンパク質はコネクター配列(例えば、少なくとも2つのアミノ酸残基を有するもの、例えば13〜17のアミノ酸残基を有するもの)によって分離される。融合タンパク質内にコネクター配列が存在することにより、融合体のいずれかのタンパク質の機能がそれら個々のタンパク質の機能に対して改変されることは実質的にない。したがって、変異体脱ハロゲン酵素とルシフェラーゼ(例えば、ウミシイタケルシフェラーゼ、発光エビ−由来のルシフェラーゼ(例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国出願第12/773,002号、米国出願第13/287,986号を参照のこと))の融合体の場合、コネクター配列の存在により、変異体脱ハロゲン酵素とそれに対する基質の間に形成される結合の安定性またはルシフェラーゼの活性が改変されることは実質的にない。融合体のタンパク質のどのような特定の組み合わせでも、多種多様なコネクター配列を採り入れてよい。いくつかの実施形態では、コネクター配列は、酵素(例えば、開裂可能な配列(例えば、酵素で開裂可能な配列、化学的に開裂可能な配列、光開裂性配列など))によって認識される配列である。
III.方法
本明細書は、官能基選択的に開裂可能なリンカーによって連結された一対の機能的要素(例えば、捕捉要素及び細胞相互作用要素)を含む細胞適合性かつ細胞透過性である組成物を利用する方法を提供する。
いくつかの実施形態では、官能基選択的に開裂可能な二重機能性組成物(例えば、細胞相互作用と捕捉)を細胞または細胞集団に細胞外から導入する。組成物は、その細胞透過性により、適切な機序(例えば、受動輸送)によって細胞に侵入する。
いくつかの実施形態では、細胞は、官能基選択的に開裂可能なリンカーによって連結された2つの機能的要素(例えば、Z−Y−Q、Z−L−Y−Q、Z−L1−Y−L2−Qなど)を含む細胞適合性/透過性の組成物に対して、その組成物が細胞に侵入するような条件下で曝露される。組成物上に提示されている機能的要素の同一性にしたがって、組成物は、細胞内に局在化した1つ以上の細胞成分などと相互作用することになる。その後、官能基選択性物質への曝露と同時に、官能基選択性部分は開裂し、官能基の連結が解除される。いくつかの実施形態では、官能基選択的に開裂可能な組成物を官能基選択性物質に曝露する前に、組成物の機能要素を検出する工程、機能的要素を細胞成分と相互作用(例えば、結合)させる工程、細胞の溶解または透過化(例えば、無傷細胞に対する透過性がない細胞成分に対して)を行う工程、機能的要素を表面または固体支持体などに結合させる工程の1つ以上の工程を実施する。
いくつかの実施形態では、官能基選択的に開裂可能な二重機能性組成物は、細胞内標的(例えば、細胞内タンパク質)と相互作用するように構成された第1の機能的要素(例えば、細胞相互作用要素)、及び捕捉物質(例えば、変異体脱ハロゲン酵素、抗体、ストレプトアビジンなど)と結合するように構成された第2の機能的要素(例えば、捕捉要素)とを含み、これらは官能基選択的に開裂可能な部分(例えば、任意選択で、官能基選択的に開裂可能な部分と機能的要素の一方または両方とをつなぐリンカー部分を含む)によってつながれている。いくつかの実施形態では、官能基選択的に開裂可能な二重機能性組成物に細胞を曝露させると、組成物が細胞に侵入する(例えば、任意の好適な機序(例えば、受動拡散、能動輸送、エンドサイトーシスなど)による)。いくつかの実施形態では、第1の機能的要素が細胞成分と相互作用(例えば、共有結合または非共有結合)するための時間が許容される。いくつかの実施形態では、細胞を溶解させ、溶解物を捕捉物質(例えば、溶液、固体表面上など)に曝露させる。第2の機能的要素が捕捉物質に結合できるよう時間が与えられる。いくつかの実施形態では、細胞成分に結合した、捕捉された組成物を官能基選択性物質に曝露して官能基選択的に開裂可能な部分を開裂させると、捕捉物質から細胞成分が遊離する。いくつかの実施形態では、遊離した細胞内標的及び/または細胞相互作用要素の検出、特性解析、同定、分析などを行う。
組成物の機能的要素の1つが細胞相互作用要素である実施形態では、組成物を細胞内に適切な時間(例えば、1秒未満、1秒、2秒、5秒、10秒、20秒、30秒、1分、2分、5分、10分、20分、30分、45分、1時間、2時間、6時間、1日、2日、もしくはそれ以上、またはその間の任意の好適な範囲)存在させる。いくつかの実施形態では、細胞相互作用要素にとっての細胞内標的が細胞内に存在する場合、細胞内標的と細胞相互作用要素の間で相互作用(例えば、共有結合、非共有結合など)が起きることになる(例えば、適切な時間尺度、所与の適切な細胞条件(例えば、細胞周期の時期)、細胞内標的及び細胞相互作用要素の細胞内での所与の適正な局在化などで)。いくつかの実施形態では、細胞内標的と細胞相互作用要素の相互作用の後、細胞(複数可)を溶解させるか、またはさらに透過処理を行う(例えば、細胞内標的が細胞から出られるようにする)。組成物の機能的要素の1つが捕捉要素である実施形態では、細胞、組成物、及び/または細胞溶解物を捕捉物質(例えば、溶液状であるかまたは固体支持体に付着している)に曝露させる。いくつかの実施形態では、組成物の捕捉要素の捕捉により、細胞相互作用要素に結合した細胞内標的が固定化される。いくつかの実施形態では、捕捉(例えば、固定化)の後、結合しなかった細胞成分(例えば、細胞相互作用要素と相互作用しない成分)を洗い流すか、または除去する。いくつかの実施形態では、官能基選択的に開裂可能な部分の官能基選択的な開裂によって、捕捉物質(及び、例えば、固体支持体)から細胞相互作用要素(及び、例えば、存在する場合は、結合した細胞内標的)を遊離させる。いくつかの実施形態では、遊離した細胞内標的及び/または細胞相互作用要素の検出、特性解析、同定、分析などを行う。
ある実施形態では、細胞内における生物活性物質(例えば、低分子及び/または薬物様分子)の細胞内標的(例えば、タンパク質またはタンパク質複合体)の発見と検証を行う高感度法を本明細書で提供する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載する組成物の細胞相互作用要素(複数可)として生物活性物質またはそのライブラリーを用い、それを内在性タンパク質しか含まないかまたは対象細胞内標的を発現している細胞(複数可)に曝露させる。組成物及び方法により、生物活性物質、細胞内標的、及び/または正の相互作用(例えば、結合事象)を生じさせる生物活性物質と細胞内標的との対の、捕捉、精製/単離、遊離、及び特性解析が可能になる。いくつかの実施形態では、細胞複合体を遊離させるために緩和な条件を使用するため、プロセシング及び分析の間に細胞相互作用要素と細胞内標的の相互作用が妨げられることはない。
いくつかの実施形態では、方法は、表現型スクリーニングアッセイの一部として利用されるか、または該アッセイと併用される。例えば、表現型スクリーニングで所望の表現型応答をもたらす一組の低分子は、各々、官能基選択的に開裂可能なリンカーによって捕捉要素に(例えば、化学合成または酵素を用いた手段によって)係留される。細胞内標的(任意選択でレポーターと融合させる)と会合し、表現型応答を再び発生させるという二重機能(例えば、細胞相互作用及び相互作用後捕捉)で細胞を処理する。いくつかの実施形態では、その後、細胞を溶解させ、この時点では細胞相互作用要素に連結されている細胞内標的を、捕捉要素と捕捉物質(例えば、表面または基質に提示されている)の結合によって捕捉する。いくつかの実施形態では、捕捉物質は溶液状であり、捕捉要素の捕捉後、続いて固体表面に結合させる。他の実施形態では、捕捉物質を、捕捉要素との相互作用時に固体表面(例えば、ウェル、マイクロプレート、ビーズなど)に結合させる。
いくつかの実施形態では、方法は、内在性標的(例えば、生物活性物質の既知の標的と不明な標的)を捕捉または「プルダウン」するために提供される。いくつかの実施形態では、生物活性物質を細胞相互作用要素として用いる。そのような細胞相互作用要素を用いる官能基選択的に開裂可能な組成物を細胞に導入し、細胞内空間内に通過させる。内在性タンパク質(複数可)(または他の内在性標的)を細胞相互作用要素に結合させ、その後、典型的には細胞(複数可)を溶解させた後、捕捉物質(例えば、表面(例えば、ビーズ)に提示されている)によって捕捉(例えば、プルダウン)する。そのようなプルダウン法に続き、分析を行って捕捉された標的(例えば、タンパク質)を同定することができる。分析技術には、ウエスタンブロット法、ゲル電気泳動、質量分析法、核磁気共鳴分光法、機能解析などが含まれ得る。
いくつかの実施形態では、生物活性分子(例えば、細胞相互作用要素)を、官能基選択的に開裂可能な部分(及び任意選択で1つ以上のリンカー部分)を介して捕捉要素に付着させることにより、親生物活性分子の細胞透過性を維持している二重機能性組成物が作製される。いくつかの実施形態では、二重機能性組成物は、例えば、先にWO/2014093671及びWO/2014151282(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されるように、固体支持による捕捉を手段とする細胞からのタンパク質のプルダウンなど、さまざまな用途に利用される。本明細書に記載する組成物及びリンカーにより、捕捉された標的の官能基選択的な遊離が可能になる。この官能基選択的な開裂により、低分子とタンパク質間の相互作用とは独立した遊離形態が提供され、バックグラウンドを最小限に抑えて樹脂からタンパク質を効率的に遊離させることができる。開裂可能なリンカーの開裂速度は、生物活性低分子が標的タンパク質から解離する速度に影響されず、共有結合の場合でも、細胞相互作用要素からの細胞内標的の効率的な開裂を可能にする。捕捉された標的を樹脂から遊離させるこれまでの試みには、変性条件下での非特異的溶離及び競合による特異的溶離が含まれる。非特異的溶離のマイナス面は、標的タンパク質の変性すること、及び非特異的に結合したタンパク質が樹脂から遊離することである。非修飾生物活性化合物を使用する特定の溶離には、特異的に結合したタンパク質のみを遊離させるという変性面での利点はあるが、遊離効率は、各標的と結合した低分子の溶解度及び滞留時間に強く依存し、滞留時間の長さ、及び/または薬物溶解度の低さが、標的タンパク質の遊離を非効率的にしている。本明細書に記載する官能基選択的に開裂可能なリンカーは、これらの短所を克服している。いくつかの実施形態では、本明細書に記載するリンカーにより、薬物−タンパク質間の相互作用の種類を問わず、固体支持体から捕捉した細胞内標的を選択的に遊離させることが可能になる。系成分の溶解度または動態/熱力学にかかわらず、捕捉した標的を選択的に遊離させる能力は、既存の方法論に対する重要な利点となる。
いくつかの実施形態では、本明細書の組成物の第1の機能的要素は光親和性基である。そのようないくつかの実施形態では、方法は、(a)標的を含有している反応混合物、細胞、細胞溶解物などを、光親和性基、官能基選択的に開裂可能な部分、及び第2の官能基を含む二重機能性組成物に接触させること、(b)光親和性基(例えば、光への曝露による)を活性化させて、標的の結合を誘導すること、及び(c)官能基選択的に開裂可能な部分を官能基選択性物質に接触させて、第2の官能基から光親和性基及び結合した標的を遊離させることを含む。いくつかの実施形態では、方法はさらに、(b)と(c)の間に1つ以上の工程を含むか、または標的に結合した組成物の検出、単離、精製などを含む。
いくつかの実施形態では、本明細書の組成物の第1の機能的要素は固体表面であり、第2の機能的要素は細胞相互作用要素、捕捉要素、光親和性基、親和性要素、または標的と結合(共有結合または非共有結合)することができる他の基である。そのようないくつかの実施形態では、方法は、(a)固体表面、官能基選択的に開裂可能な部分、及び標的と結合(共有結合または非共有結合)することができる第2の機能的要素を含む二重機能性組成物を、標的を含んでいる反応混合物、細胞溶解物などに接触させること、(b)標的を第2の機能的要素に結合させること、及び(c)官能基選択的に開裂可能な部分を官能基選択性物質に接触させて、表面から第2の機能的要素及び結合した標的を遊離させることを含む。いくつかの実施形態では、方法はさらに、(b)と(c)の間に1つ以上の工程を含むか、または標的に結合した組成物の検出、単離、精製などを含む。
IV.アリルカルバマート構造
以下は、二重機能性、細胞透過性、細胞適合性があり、かつ官能基選択的に開裂可能な組成物質(compositor)の例示的なセットを提供するものである。官能基選択的に開裂可能な異なる基(例えば、プロパルギル基など)、捕捉要素(例えば、親和性分子)、及び/または細胞相互作用要素(Z)に代わる他の機能的要素(例えば、検出可能部分)を含む同様の組成物は、本明細書の実施形態の範囲内である。
本明細書は、ハロアルカン基質(A−X)と細胞相互作用要素(Z)とをつなぐリンカーを含有しているアリル−カルバマート(Y)を提供する。特に、本明細書で提供するリンカーは、化学的に開裂可能なアリルカルバマート単位を含み、自身のハロアルカン基質と共有結合を形成する脱ハロゲン酵素変異型に対する基質内部で利用される。本明細書は、例えば、2つの化学部分(例えば、官能基と脱ハロゲン酵素基質)をつなぐ際に利用される化学リンカーを提供する。いくつかの実施形態では、リンカーは、細胞透過性かつ化学的に開裂可能である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載するリンカーは、先に記載されているクロロアルカンカルバマート(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国公開第2014/0322794号)と特定の構造類似性がある。いくつかの実施形態では、本明細書に記載するリンカーは、米国公開第2014/0322794号に記載のリンカー同様、1つ以上のアルキルカルバマート構造モチーフを含む。ただし、アルキルカルバマートの存在如何にかかわらず、本明細書のいくつかの実施形態に記載のリンカーは、1つ以上のアリルカルバマート単位を含む。アリルカルバマートを含めることにより、かかるリンカー(及びそのようなリンカーを含む化合物または基質)は、細胞透過性と細胞適合性の両方を示すことができる。いくつかの実施形態では、アリルカルバマート基はさらに、リンカー(及びそのようなリンカーを含む化合物または基質)を官能基選択的に開裂可能にする。いくつかの実施形態では、本明細書に記載するリンカーは、細胞透過性リンカー、細胞内で安定なリンカー、非特異的結合がないリンカー、及び緩和な条件下で開裂するリンカーのうち1つ以上(例えば、すべて)である。
いくつかの実施形態では、アリルカルバマートリンカーの官能基選択的な開裂は、遷移金属錯体(例えば、配位したパラジウム(Pd)またはルテニウム(Ru))での処理時に生じる。いくつかの実施形態では、官能基選択性物質は、触媒活性状態にある遷移金属(例えば、Pd(0)、Ru(II)など)を安定化させる配位子(例えば、1つ以上の水溶性ホスフィン配位子)によって遷移金属(例えば、Pd、Ruなど)が遷移金属塩から配位することにより生成される(例えば、図3を参照のこと)。この機序(本明細書に記載する実施形態は、この機序に限定されない)では、触媒活性錯体Pd(TPPTS)2は、より安定であるが触媒活性に劣る水溶性錯体Pd(TPPTS)3と平衡状態で存在する。Pd(TPPTS)3は、水溶性有機ホスフィンとPd(II)塩の反応により生成する。ホスフィン(例えば、TPPTS)は、触媒活性のPd(0)種の生成において二重に作用する。最初に、1当量のTPPTSが犠牲になりPd(II)をPd(0)に還元させる。第2に、TPPTSは、触媒活性形態にあるPd(0)種の安定化に利用される。他のホスフィンは、Pd(II)を触媒活性Pd(0)に還元し、溶液中のPd(0)種を安定化させることができる。いくつかの実施形態では、別の還元剤(例えば、水素、CO、ギ酸など)によって還元が達成される。
遷移金属配位錯体によってアリルカルバマートリンカーが開裂される一般機序を図4に示すが、開裂は、いかなる特定の作用機序に限定されるものではなく、かかる作用機序についての理解は本明細書に記載する実施形態を実施するために必要というわけではない。図4において、R1部分とR2部分を連結しているアリルカルバマートは、Pd(TPPTS)2錯体(またはPd(II)から触媒活性Pd(0)への還元と溶液中のPd(0)種の安定化の両方をすることができる他の部分(例えば、ホスフィン))によって開裂されるが、図4に示す一般的スキームは、アリルカルバマートを含有する他のリンカー、化合物、及び基質ならびに他の官能基選択性物質(例えば、他の遷移金属(例えば、Ru)及び/または配位する他の配位子)にも当てはまる。図4に示される一般機序(本明細書に記載する実施形態は、かかる機序に限定されない)において、触媒活性錯体Pd(TPPTS)2はアリルカルバマート(ステップ1)を不安定化させ、かつ/または開裂中間体を安定化させ(ステップ2)本来ならば安定なアリルカルバマート基の開裂を誘導する。その後、カルバマート中間体をアミンとCO2に変換(ステップ3)する一方、求核剤との反応によりアリル中間体をトラップする(ステップ4)。開裂反応を完了させる好適な求核剤には、MOPS、MES、CAPS、HEPES、ベンゼンスルフィン酸、炭素求核剤(例えば、ジメドン、ジメチルバルビツル酸など)が挙げられるが、これらに限定されるものではない(図5)。
いくつかの実施形態では、組成物は式:Z−Y−L1−M−L2−A−Xの化合物を含み、式中、Zは細胞相互作用要素であり、Yはアリルカルバマート基(例えば、−NHCOOCH2CHCH−)であり、L1はC、N、S、またはOを含む多原子の直鎖または分岐鎖であり、Mはアルキルカルバマート基であり、L2はC、N、S、またはOを含む多原子の直鎖または分岐鎖であり、Aは炭素が少なくとも2個(例えば、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個など)のアルカンであり、Xはハロゲン(例えば、Cl、F、Br、Iなど)であり、かつ、A−Xは脱ハロゲン酵素に対する基質である。
いくつかの実施形態では、基質は、式:Z−L3−Y−L1−M−L2−A−Xの化合物を含み、式中、Zは細胞相互作用要素であり、L3はC、N、S、またはOを含む多原子の直鎖または分岐鎖であり、Yはアリルカルバマート基(例えば、−NHCOOCH2CHCH−)であり、L1はC、N、S、またはOを含む多原子の直鎖または分岐鎖であり、Mはアルキルカルバマート基であり、L2はC、N、S、またはOを含む多原子の直鎖または分岐鎖であり、Aは炭素が少なくとも2個(例えば、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個など)のアルカンであり、Xはハロゲン(例えば、Cl、F、Br、Iなど)であり、かつ、A−Xは脱ハロゲン酵素に対する基質である。
いくつかの実施形態では、基質は式:Z−Y−A−Xの化合物を最小限含み、式中、Zは細胞相互作用要素であり、Yはアリルカルバマート基(例えば、−NHCOOCH2CHCH−)であり、Aは炭素が少なくとも2個(例えば、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個など)のアルカンであり、Xはハロゲン(例えば、Cl、F、Br、Iなど)であり、かつ、A−Xは脱ハロゲン酵素に対する基質である。いくつかの実施形態では、ZとYは、L3によって分離されてよく(例えば、Z−L3−Y−)、ここで、L3はC、N、S、またはOを含む多原子の直鎖または分岐鎖である。いくつかの実施形態では、YとAは、M(例えば、−Y−M−A−)によって分離されてよく、ここで、Mはアルキルカルバマート基である。いくつかの実施形態では、YとMは、L1(例えば、−Y−L1−M−)によって分離されてよく、ここで、L1はC、N、S、またはOを含む多原子の直鎖または分岐鎖である。いくつかの実施形態では、MとAは、L2(例えば、−M−L2−A−)によって分離されてよく、ここで、L2はC、N、S、またはOを含む多原子の直鎖または分岐鎖である。好適な基質は、Z−Y−A−X、R−L1−Y−A−X、R−Y−L2−A−X、Z−L1−Y−L2−A−X、Z−Y−M−A−X、R−L1−Y−M−A−X、R−L1−Y−M−M−A−X、R−L1−Y−L−Y−M−A−X、Z−L1−Y−L2−M−A−X、Z−L1−Y−M−L2−A−X、Z−Y−L1−M−A−X、Z−Y−L1−M−L2−A−X、Z−Y−M−L1−A−X、Z−L1−Y−L2−M−L3−A−X、Z−Y−L−Y−A−X、R−L−Y−M−Y−L−A−Xなどを含む。
実験
実施例1
以下の例にて、パラジウム:TPPTS錯体によって触媒される官能基選択的な開裂を実証する。その化学構造においてアリル−カルバマート基を含有している、または欠いている、大きさが類似した複数のクロロアルカンリンカーを合成し、Cy3蛍光色素に結合させた(図6)。PBI−5696は、アリル−カルバマート基を含有し、PBI−5698及びPBI−5697はアルキル−カルバマート基を含有する。Cy3:クロロアルカン複合体を、固定化HALOTAGタンパク質(HALOTAGコートしたビーズ;Promega Corporation)と共にインキュベートし、複合体と固定化HALOTAGが共有結合した後、ビーズを2mMのパラジウム:TPPTS錯体で処理し、樹脂からのCy3色素遊離について調べた。これらの開裂条件下、アリル−カルバマート基(すなわち、PBI−5696)を含有するCy3:クロロアルカン複合体のみが開裂されて、ビーズからのCy3色素遊離が生じた(図6)。これらの結果は、パラジウム触媒による開裂はアリルカルバマート基に対して選択的であることを示している。
実施例2
以下の例で、クロロアルカンリンカーの化学構造へのアリルカルバマート基の挿入、及び、クロロアルカンリンカーの構造に対する障害を最小限にするための、この挿入の最適化について記載する。クロロアルカンリンカーを生物活性化合物に化学的に付着させ、それらが相互作用する細胞内標的タンパク質を選択的に単離できるようにすることができる。このクロロアルカンリンカーを、化合物の生物活性と細胞内透過性ならびにHALOTAGタンパク質への速やかな共有結合に対する影響が最小限になるよう最適化した。この例(図7A〜7C)では、クロロアルカンリンカーを、BIRB*に結合させ(PBI−4834)、アリルカルバマート基を3種の異なる立体配置でリンカーに組み込み、PBI−5646、PBI−5676及びPBI−5677を作製した。4つのBIRB*複合体を、細胞溶解物中の場合または生細胞内部にある場合のHALOTAGタンパク質に対する結合動態について比較した。HALOTAGに対する溶解物中での結合動態は、HALOTAG融合タンパク質を発現している細胞から最終濃度1μMで調製した溶解物にBIRB*−クロロアルカン複合体を加えることによって測定した。0〜60分のインキュベーションの後、異なる測定ポイントで採取した各反応物の一部(各々が異なるBIRB*複合体を含有)を除去し、HALGOTAG TMR蛍光リガンド(Promega Corporation)を加えて最終濃度1μMとし、HALOTAGタンパク質(未結合で残っているもの)に結合させた。各測定時点の画分をSDS−PAGEで分離し、Typhoon9400蛍光イメージ装置(GE Healthcare)で走査した。IMAGEQUANT(GE Healthcare)を使用してバンドを定量化し、各結合動態を、クロロアルキル化合物を加えていない時間ゼロに対する経時的結合率(%)として測定した。PBI−5676は、PBI−4834と同様のHALOTAG結合動態を示し、この立体配置において、HALOTAGに対するクロロアルカンの結合動態にアリルカルバマート基が与える障害は最小限であることが示された。
HALOTAGに対する細胞内部での結合動態は、HALOTAGタンパク質を発現している生細胞を、最終濃度10μMのBIRB*クロロアルカン複合体で処理することによって測定した。0〜120分のインキュベーションの各測定ポイントの後、培地を5μMのHALOTAG TMR蛍光リガンド含有培地と交換し、細胞をさらに15分インキュベートして、TMR蛍光リガンドをHALOTAGタンパク質(未結合で残っているもの)に結合させた。培地を除去した後、界面活性剤溶解バッファーを用いて細胞を溶解させ、各測定ポイントを上記のように分析した。PBI−5676は、PBI−4834と同様のHALOTAG結合動態を示し、この立体配置において、細胞内透過性に対するアリルカルバマート基の影響は最小限であることが示された。
これらの結果を総合すると、この例の結果は、最適化された立体配置において、クロロアルカンリンカー化学構造へのアリル−カルバマート基の組み込みがその特徴(例えば、HALOTAGに対する速やかな結合動態及び細胞内透過性に対する最小限の影響)に与える影響は最小限であることを実証している。
実施例3
以下の例で、アリル−カルバマート基によって与えられる、クロロアルカンリンカーの構造と特徴(例えば、HALOTAGへの結合動態、化合物の生物活性、及び細胞内透過性に対する影響が最小限であること)に対する障害が最小限であることの一般性をさらに実証する。BIRB796をクロロアルカンリンカー(PBI−5446)に結合させ、アリル−カルバマート基を上記で決定した最適化立体配置でリンカーに挿入し、PBI−5813を作製した(図8A〜8C)。両複合体を、生細胞内部でのHALOTAG結合動態及び生物活性について比較した。HALOTAGに対する細胞内部での結合動態は、HALOTAGタンパク質を発現している生細胞を、最終濃度10μMのBIRB796クロロアルカン複合体で処理することによって測定した。0〜120分のインキュベーションの各測定ポイントの後、培地を5μMのHALOTAG TMR蛍光リガンド含有培地と交換し、細胞をさらに15分インキュベートして、TMR蛍光リガンドをHALOTAGタンパク質(未結合で残っているもの)に結合させた。培地を除去した後、界面活性剤溶解バッファーを用いて細胞を溶解させ、さまざまな測定ポイントにおける試料をSDS−PAGEで分離し、画像をTyphoon9400蛍光イメージ装置で走査した。バンドを定量化し、各結合動態を、クロロアルキル化合物を加えていない時間ゼロに対する経時的結合率(%)として測定した。両複合体とも、生細胞内部で同様のHALOTAG結合動態を示し、最適化された立体配置におけるアリル−カルバマート基は、細胞内透過性及びHALOTAG結合動態に対し最小限の障害しか示さないことが示された(図8A〜8C)。
生物活性を、LPSで刺激したTHP−1細胞でのTNFα分泌阻害を介して測定した(図8A〜8C)。THP−1細胞を96ウェルプレートのウェルに100,000細胞/ウェルで播種し、BIRB796複合体の系列希釈で2時間処理し、その後、最終濃度250ng/mlのLPS(Sigma)で24時間刺激した。上清を、ヒトTNFα分泌についてELISA(R&D Systems)で分析した。両複合体とも同様のTNFα分泌阻害を示し、この立体配置でのアリル−カルバマート基の組み込みは、BIRB796の生物活性に対し全く影響を与えなかったことが示された。したがって、かかる組込みはクロロアルカンの特徴に最小限の影響しか与えない。
実施例4
以下の例で、アリルカルバマート基の細胞安定性を実証する。これらの実験では、最適化された立体配置でアリル−カルバマートを含有しているクロロアルカンをテトラメチルローダミン(TMR)に結合させた(PBI−5741)。それぞれ普遍的な発現及び核内発現を示すHALOTAG及びHALOTAG:NLS3を安定発現しているU2OS細胞を200nMのPBI−5741で24時間処理するか、または24時間増殖させた後、2.5μMのPBI−5741で15分処理した。その後、細胞を培地で3回洗浄してからNikon共焦点レーザー顕微鏡でイメージングした。イメージング後、細胞を採取して界面活性剤溶解バッファーで溶解させ、SDS−PAGEで分離し、画像をTyphoon9400蛍光イメージ装置で走査した。これらの標識処理により、TMR複合体のHALOTAGへの共有結合がもたらされた。アリルカルバマート基が細胞内開裂すれば色素の損失が伴うはずであるから、標識強度も失われるはずである。細胞イメージング及びゲル分析(図9)では、標識から24時間後と15分後で同様の標識強度が示され、アリル−カルバマート基の24時間にわたる細胞安定性を示している。
実施例5
本明細書に記載する実施形態を展開する過程で行った富化実験では、競合的薬物溶出による遊離よりもパラジウム触媒による標的遊離を使用した方が、滞留時間の長い内在性標的の富化が増強されることが実証された(図10)。自身の標的に対する解離速度が遅いBIRB796を、アリル−カルバマート基を含有しているクロロアルカンに結合させた、(PBI−5813)。この例では、150mm皿に2×107のHepG2細胞を播種し、16時間後、最終濃度20μMのBIRB796複合体(PBI−5813)を3皿に加え、対照3皿は未処理のままとした。2時間のインキュベーション後、培地を除去し、PBSで細胞をすばやく洗浄して界面活性剤溶解バッファー中で10分間溶解させ、3000×gで1分間遠心分離にかけた。その後、HALOTAGコートした静置ビーズ75ulに透明な溶解物を加え、振盪しながら15分インキュベートした。結合後、未結合部分を除去し、HALOTAGコートしたビーズを3回洗浄し、競合的溶出(400μMの非複合体化BIRB797)または化学的開裂(1mMまたは2mMのモル比1:2のパラジウム:TPPTS)によって捕捉した標的をビーズから特異的に遊離させた。遊離した標的を、抗MAPK14抗体(ABCAM)、抗MAPK11抗体(Cell signaling)、抗MAPK9抗体(Cell signaling)、及び抗MAPK13抗体(Thermo Fisher)を用いたウエスタンブロット法に供した(図10)。図10の結果は、競合的薬物溶出を利用した標的遊離に対し、化学的開裂による標的遊離を利用した方がBIRB796の既知標的の富化が増強されていることを示す。これらの結果は、長い滞留時間を示す標的を富化する場合、競合的薬物溶出に対し化学的開裂の方が有利であることを実証している。
実施例6
本明細書に記載する実施形態を展開する過程で行った実験で、タンパク質が豊富な環境(例えば、濃縮細胞溶解物またはタンパク質コートしたビーズ)では、パラジウム触媒による開裂の効率は有意に低下し、これはタンパク質濃度と直接相関することが実証された(図11)。溶液中でのパラジウム触媒による開裂に対してタンパク質濃度が与える影響を検討する実験では、漸増濃度のHEK293細胞溶解物に5μgのHALOTAGを添加した。HALOTAGを、4μMのPBI−5741(アリルカルバマート基含有クロロアルカンと複合体化したTMR)に30分共有結合で結合させ、その後、PdとTPPTSのモル比が1:2のPd(TPPTS)xを1mMまたは2mM用いて30分開裂させ、対照試料は未処理のままとした。試料をSDS−PAGEで分離してTyphoon9400蛍光イメージ装置で走査し、IMAGEQUANTを使用してバンドを定量化した。アリルカルバマート基が開裂すれば色素の損失が伴うはずであるから、HALOTAGタンパク質の標識強度も低下するはずである。開裂効率は、Pd(TPPTS)xで処理しなかった対照に対するシグナル損失の割合として決定した。結果は、細胞溶解物の濃度が漸増する場合の開裂効率は、バッファーでの開裂効率と比較して有意に低く、タンパク質濃度と直接相関したことを示す。
ビーズ上でのパラジウム触媒による開裂に対するタンパク質濃度の影響を検討する実験では、HALOTAGコートしたビーズの漸増量を20μMのPBI−5741と共に30分インキュベートし、対照試料はビーズとインキュベートしなかった。PBI−5741を固定化HALOTAGに共有結合させた後、ビーズを、PdとTPPTSのモル比が1:2のPd(TPPTS)xを2mM用いて30分処理した。アリルカルバマート基が開裂すればビーズからの色素遊離が伴うはずである。遊離色素の試料を対照色素と共にSDS−PAGEで分離してTyphoon9400蛍光イメージ装置で走査し、IMAGEQUANTを使用してバンドを定量化した。開裂効率は、ビーズと共にインキュベートしなかった対照色素に対する遊離色素の割合として決定した。結果は、開裂効率は固定化したタンパク質の量と直接相関し、タンパク質コートしたビーズの量を漸増させた場合に有意に低下したことを示す。
実施例7
この例は、特定のバッファー組成は、パラジウム触媒によるアリルカルバマート基の開裂に影響を及ぼし得ることを実証する(図12)。この例では、高濃度のHEK293細胞溶解物(150μg)にHALOTAGを添加し、その後、PBI−5741に30分共有結合で結合させた。その後、標識反応物を、異なるバッファーで調製した、PdとTPPTSのモル比が1:2のPd(TPPTS)xを2mM用いて30分処理し、対照試料は未処理のままとした。試料をSDS−PAGEで分離してTyphoon9400蛍光イメージ装置で走査し、IMAGEQUANTを使用してバンドを定量化した。アリルカルバマート基が開裂すれば色素の損失が伴うはずであるから、HALOTAGタンパク質の標識強度も低下するはずである。開裂効率は、Pd(TPPTS)xで処理しなかった対照に対するシグナル損失の割合として決定した。図12の結果は、バッファーの組成が、パラジウム触媒による開裂効率において極めて重要な役割を果たすことを示している。HEPES、MOPS、及びMESの各バッファーでは開裂は効率的であったが、CAPSバッファー及びTRISバッファーでは開裂が完全に抑制された。
実施例8
この例は、ホスフィンの性質及びバッファー組成がパラジウム触媒によるアリルカルバマート基の開裂に影響を及ぼし得ることを実証する(図13)。この例では、高濃度のHEK293細胞溶解物(150μg)にHALOTAGタンパク質を添加し、その後、PBI−5741に30分共有結合で結合させた。その後、標識反応物を、異なるバッファーで調製した、Pdとホスフィンのモル比が1:2のPd(ホスフィン)xを2mM用いて30分処理し、対照試料は未処理のままとした。試料をSDS−PAGEで分離してTyphoon9400蛍光イメージ装置で走査し、IMAGEQUANTを使用してバンドを定量化した。アリル−カルバマート基が開裂すれば、色素の損失が伴うはずであるから、HALOTAGタンパク質の標識強度も低下するはずである。開裂効率は、Pd(ホスフィン)xで処理しなかった対照に対するシグナル損失の割合として決定した。図13の結果は、ホスフィンの性質、及びバッファー組成は、パラジウム触媒による開裂効率において極めて重要な役割を果たすことを示している。電子が不足したホスフィンであるDANPHOSはいずれの被験バッファー(HEPES、MOPS、MES)においても他のホスフィンより効率が良く、TPPTSは、MOPSバッファーにおいてMESバッファー及びHEPESバッファーよりも高い開裂効率を示したが、TXPDS(電子が豊富なホスフィン)、Cy−Amphos(正電荷と電子豊富)、及びBDSPPB(二座配位子)は有意に低い開裂効率を示した(図13)。
実施例9
この例は、ホスフィンの性質及びバッファー組成が、ビーズ上でのアリルカルバマートの開裂効率に影響を及ぼし得ることを実証する(図14)。図14の実験は、2種類の異なる量のHALOTAGコートしたビーズ(固定化HALOTAGを225μgまたは450μg含有しているビーズ)で行われた。ビーズを60μMのPBI−5741と共に30分インキュベートし、対照試料はビーズとインキュベートしなかった。PBI−5741を固定化HALOTAGに共有結合させた後、異なるバッファーで調製した、Pdとホスフィンのモル比が1:2、1:4、及び1:8のPd(TPPTS)xを2mMまたはPd(DANPHOS)xを2mM用いてビーズを30分処理した。アリル−カルバマート基が開裂すれば、ビーズからの色素遊離が伴うはずである。遊離色素を対照色素と共にSDS−PAGEで分離してTyphoon9400蛍光イメージ装置で走査し、IMAGEQUANTを使用してバンドを定量化した。開裂効率は、ビーズと共にインキュベートしなかった対照色素に対する遊離色素の割合として決定した。結果は、樹脂上での開裂にはPd:ホスフィンのモル比を高くする必要があることを示している。さらに、DANPHOSは、被験バッファー(HEPES、MES、MOPS)いずれにおいてもTPPTSより効率が良かった。
実施例10
以下の例で、あらかじめ水で作製し、酸素欠乏条件下で保存したパラジウム:ホスフィン錯体は、バッファーで調製して直ちに使用された錯体よりも活性であることを実証する。これらの実験では(図15)、(固定化HALOTAG450μg)を含有しているHALOTAGコートしたビーズを60μMのPBI−5741と共に30分インキュベートし、対照試料はビーズとインキュベートしなかった。PBI−5741を固定化HALOTAGに共有結合させた後、Pdとホスフィンのモル比が1:8のPd(TPPTS)xまたはPd(DANPHOS)xを2mM用いてビーズを60分処理した。Pd−ホスフィン錯体は、異なるバッファーで調製し直ちに使用するか、またはあらかじめ4mM溶液として水で作製してから酸素欠乏条件下で保存するかのいずれかとした。あらかじめ作製した溶液は、同一バッファーに希釈して2mMの溶液とした後、直ちに使用した。アリルカルバマート基が開裂すればビーズからの色素遊離が伴うはずである。遊離色素を対照色素と共にSDS−PAGEで分離してTyphoon9400蛍光イメージ装置で走査し、IMAGEQUANTを使用してバンドを定量化した。開裂効率は、ビーズと共にインキュベートしなかった対照色素に対する遊離色素の割合として決定した。3種のバッファーいずれにおいても、あらかじめ作製したパラジウム:ホスフィン錯体によるアリルカルバマート基の高い開裂効率が観察された。これらの結果は、あらかじめ作製したPd−ホスフィン錯体は、高い開裂効率をもたらす高濃度の活性触媒を含有していたことを示している。さらに、結果は、3種の被験バッファー(HEPES、MES、MOPS)いずれにおいても、DANPHOSはTPPTSより効率が良かった。
実施例11
以下の例で、あらかじめ作製したパラジウム:TPPTS錯体(Pdとホスフィンのモル比1:8)によって触媒される官能基選択的な開裂を実証する。その化学構造においてアリル−カルバマート基を含有している、または欠いている、大きさが同様のクロロアルカンリンカーを複数合成し、TMR蛍光色素に結合させた(図16)。PBI−5741及びPBI−6045はアリル−カルバマート基を含有し、PBI−6044はアルキル−カルバマート基を含有していた。この例では、精製したHALOTAGタンパク質を、TMR−クロロアルカン複合体に30分共有結合で結合させた。その後、標識反応物を、PdとTPPTSのモル比が1:8であるPd(TPPTS)xを2mM、0.66mM、及び0.22mM用いて30分処理し、対照試料は未処理のままとした。試料をSDS−PAGEで分離してTyphoon9400蛍光イメージ装置で走査し、IMAGEQUANTを使用してバンドを定量化した。アリルカルバマート基が開裂すれば色素の損失が伴うはずであるから、HALOTAGタンパク質の標識強度も低下するはずである。開裂効率は、Pd(TPPTS)xで処理しなかった対照に対するシグナル損失の割合として決定した。図16の結果は、これらの開裂条件下では、アリル−カルバマート基を含有するTMRクロロアルカン複合体(例えば、PBI−5741及びPBI−6045)のみが開裂、開裂効率は時間と濃度に依存的であったことを示している。これらの結果は、パラジウム触媒による開裂はアリルカルバマート基に対して選択的であることを示している。
実施例12
以下の例で、アリルカルバマート基の細胞安定性を実証する。これらの実験では、HALOTAG:NLS3(核内発現を示す)を安定発現しているU2OS細胞を、200nMのTMRクロロアルカン複合体で24時間処理した。複合体のうち、PBI−5741及びPBI−6045の2つはアリルカルバマート基を含有し、PBI−6044はアルキル−カルバマート基を含有していた。細胞を培地で1回洗浄してからNikon共焦点レーザー顕微鏡でイメージングした。イメージング後、細胞を採取して界面活性剤溶解バッファーで溶解させ、SDS−PAGEで分離し、画像をTyphoon9400蛍光イメージ装置で走査した。これらの標識処理により、TMR複合体のHALOTAGへの共有結合がもたらされた。アリルカルバマート基が細胞内開裂すれば色素の損失が伴うはずであるから、標識強度の損失も伴うはずである。細胞イメージング及びゲル分析の結果(図17A〜17B)は、3つのすべての複合体で同様の標識強度を示しており、24時間を通したアリルカルバマート基の細胞安定性を示している。
実施例13
本明細書に記載する実施形態を展開する過程で行った実験で、タンパク質が豊富な環境(例えば、タンパク質コートしたビーズ)では、パラジウム触媒による開裂効率は有意に低下し、タンパク質濃度と直接相関することが実証された(図18)。これらの実験では、漸増量のHALOTAGコートした磁性または非磁性ビーズを20μMのPBI−5741と共に30分インキュベートし、対照試料はビーズとインキュベートしなかった。PBI−5741を固定化HALOTAGに共有結合させた後、ビーズを、PdとTPPTSのモル比1:8であらかじめ作製したPd(TPPTS)x錯体2mM、0.66mM、または0.22mMと共にHEPESバッファー中で30分処理した。アリルカルバマート基が開裂すればビーズからの色素遊離が伴うはずである。遊離色素の試料を対照色素と共にSDS−PAGEで分離してTyphoon9400蛍光イメージ装置で走査し、IMAGEQUANTを使用してバンドを定量化した。開裂効率は、ビーズと共にインキュベートしなかった対照色素に対する遊離色素の割合として決定した。結果は、開裂効率は固定化したタンパク質の量と直接相関し、タンパク質コートしたビーズの量を漸増させた場合に有意に低下したことを示す。
実施例14
この例は、ホスフィンの性質が、パラジウム触媒によるアリルカルバマート基の開裂に影響を及ぼし得ることを実証する(図19)。これらの実験では、HALOTAGコートした磁性ビーズ(固定化HALOTAGタンパク質400μgを含有)を、60μMのPBI−5741と共に30分インキュベートし、対照試料はビーズとインキュベートしなかった。PBI−5741を固定化HALOTAGタンパク質に共有結合させた後、ビーズを、モル比1:8であらかじめ作製したPd(ホスフィン)錯体2mMまたは0.66mMを用いてHEPESバッファー中で30分処理した。アリルカルバマート基が開裂すればビーズからの色素遊離が伴うはずである。遊離色素の試料を対照色素と共にSDS−PAGEで分離してTyphoon9400蛍光イメージ装置で走査し、IMAGEQUANTを使用してバンドを定量化した。開裂効率は、ビーズと共にインキュベートしなかった対照色素に対する遊離色素の割合として決定した。図19の結果は、ホスフィンの性質が、パラジウム触媒による開裂効率において極めて重要な役割を果たすことを示している。DANPHOS族由来の電子不足のホスフィン、特にDANPHOSとo−DANPHOSは他のホスフィンより効率が良かった。
実施例15
この例は、求核剤の性質がパラジウム触媒によるアリルカルバマート基の開裂に影響を及ぼし得ることを実証する(図20)。これらの実験では、HALOTAGコートした磁性ビーズ(固定化HALOTAGタンパク質400μgを含有)を、60μMのPBI−5741と共に30分インキュベートし、対照試料はビーズとインキュベートしなかった。PBI−5741を固定化HALOTAGタンパク質に共有結合させた後、ビーズを、Pdとホスフィンのモル比1:8であらかじめ作製したPd(DANPHOS)xまたはPd(o−DANPHOS)x錯体2mM、0.66mM、または0.22mMを用いて、複数のアミンバッファーまたは別の求核剤を含有する非アミンバッファー中で30分処理した。アリルカルバマート基が開裂すればビーズからの色素遊離が伴うはずである。遊離色素の試料を対照色素と共にSDS−PAGEで分離してTyphoon9400蛍光イメージ装置で走査し、IMAGEQUANTを使用してバンドを定量化した。開裂効率は、ビーズと共にインキュベートしなかった対照色素に対する遊離色素の割合として決定した。図20の結果は、求核剤の性質がパラジウム触媒による開裂効率において極めて重要な役割を果たすことを示している。さらに、ホスフィンと求核剤の組み合わせは非常に重要である。Pd−DANPHOS錯体の場合、最高開裂効率は、ジメチルバルビツル酸5mMを添加したPBSバッファーを使用して達成された。o−DANPHOSの場合は、最高開裂効率は、MOPSバッファーを使用して達成された。さらに、o−DANPHOSは、特に濃度0.22mMにおいてDANPHOSより効率が良かった。
実施例16
本明細書に記載する実施形態を展開する過程で行った実験で、パラジウム触媒による開裂効率は、あらかじめ作製したPd−ホスフィン溶液のモル比に依存することが実証された(図21)。これらの実験では、(固定化HALOTAGタンパク質400μg)を含有しているHALOTAGコートしたビーズを60μMのPBI−5741と共に30分インキュベートし、対照試料はビーズとインキュベートしなかった。PBI−5741を固定化HALOTAGタンパク質に共有結合させた後、ビーズを、PdとDANPHOSのモル比が1:4、1:6、1:8、1:10、1:12及び1:15のPd−DANPHOS錯体2mM、0.6mM、または0.22mMを用いて、PBS/ジメチルバルビツル酸中で30分処理した。アリルカルバマート基が開裂すればビーズからの色素遊離が伴うはずである。遊離色素を対照色素と共にSDS−PAGEで分離してTyphoon9400蛍光イメージ装置で走査し、IMAGEQUANTを使用してバンドを定量化した。開裂効率は、ビーズと共にインキュベートしなかった対照色素に対する遊離色素の割合として決定した。PdとDANPHOSのモル比を1:6以上であらかじめ作製したPd(DANPHOS)x溶液で高い開裂効率が観察された
実施例17
以下の例で、クロロアルカンリンカーの化学構造へのアリル−カルバマート基の挿入、及び、パラジウム触媒による開裂を効率的にし、クロロアルカンリンカーの特徴(例えば、HALOTAGに速やかに結合させること、及び化合物の細胞内透過性に対する障害を最小限に抑えること)に対する障害を最小限にするための、この挿入の最適化について記載する。クロロアルカンリンカーを生物活性化合物に化学的に付着させ、それらが相互作用する細胞内標的タンパク質を選択的に単離できるようにすることができる。この例では、クロロアルカンリンカーを、共有結合的キナーゼ阻害剤であるイブルチニブに結合させ、PBI−6040を作製した。アリルカルバマート基の挿入を最適化するため、立体配置が複数あるアリルカルバマート基を含有する、長さの異なるリンカーをさらに7つ作製し、イブルチニブに結合させた(図22)。これらのイブルチニブ複合体を、細胞溶解物中の場合または生細胞内部にある場合のHALOTAGタンパク質に対する結合動態(図23)、BTK:NLuc融合タンパク質(BTKはイブルチニブの標的である)の捕捉(図24A)、及びパラジウム触媒による開裂効率(図24B)について比較した。
HALOTAGに対する溶解物中での結合動態(図23A)は、HALOTAG融合タンパク質を発現している細胞から調製した溶解物を、最終濃度1μMのイブルチニブとクロロアルカンの複合体を用いて最高60分処理することによって測定した。特定のインキュベーション時間の後、一定分量を取り出し、最終濃度1μMのHALOTAG TMR蛍光リガンド(Promega Corporation)を用いて処理して残存する未結合HALOTAG融合タンパク質を標識化した。各分注をSDS−PAGEで分離し、Typhoon9400蛍光イメージ装置(GE Healthcare)で走査した。IMAGEQUANT(GE Healthcare)を使用してバンドを定量化し、結合動態を、クロロアルカンでタグ付けした化合物を加えていない時間ゼロに対する経時的結合率(%)として決定した。短いリンカーPBI−6041を除き、全リンカーともHALOTAGに対して良好な結合動態を示し、最も長いリンカーのPBI−6031とPBI−6032は比較的緩徐な結合を示した。これらの結果は、PBI−6041を除くすべての立体配置では、アリルカルバマート基の挿入は、HALOTAGタンパク質へのクロロアルカンの結合に対して何ら有意な障害とならないことを示している。
HALOTAGに対する細胞内部での結合動態(図23B)は、HALOTAG融合タンパク質を発現している生細胞を、最終濃度10μMのイブルチニブとクロロアルカンの複合体を用いて最高90分処理することによって測定した。その後、培地を、HALOTAG TMR蛍光リガンド5μMを含有する培地と交換し、細胞をさらに15分インキュベートして残存する未結合HALOTAG融合タンパク質を標識化した。その後、界面活性剤溶解バッファーで細胞を溶解させ、さまざまな測定ポイントにおける試料を上記のように分析した。複合体はいずれも同様のHALOTAG結合動態を示し、アリルカルバマート基の挿入が、細胞内透過性に対し最小限の障害しか示さなかったことが示された。さらに、これらのリンカーの長さも細胞内透過性に対し最小限の影響しか与えなかった。
相互作用する細胞内標的の捕捉効率を調べるため、イブルチニブの標的として既知であるBTKを遺伝子操作によりNANOLUC(NLuc)ルシフェラーゼレポーター(Promega Corporation)に融合させた。イブルチニブはBKTの共有結合阻害剤なので、BTKとNLucの間にTEV認識部位を組み込んでタンパク質分解によりNLucがビーズから遊離するようにした。細胞溶解物(BTK:NLuc融合体を発現している細胞由来)をイブルチニブとクロロアルカンの複合体1μM(最終濃度)で2時間処理した後、イブルチニブとクロロアルカンの複合体、及びそれらの相互作用標的BTK:NLucをHALOTAGコートした磁性ビーズ(Promega Corporation)に捕捉した。捕捉効率は、未処理の細胞溶解物に対する未結合画分中の生物発光損失の割合として決定した。図24Aの結果は、短いリンカーのPBI−6041、PBI−6025、及びPBI−6027の場合、アリルカルバマート基の挿入により、アリルカルバマート基を含有しないPBI−6040よりも捕捉効率が低下したことを示している。しかし、長いリンカーのPBI−6029、PBI−6030、PBI−6031、及びPBI−6032では、アリルカルバマート基挿入による捕捉効率に対する障害はなかった。
パラジウム触媒によるこれらのリンカーの開裂効率を調べるため、HALOTAGビーズに共有結合で捕捉されたBTK:NLuc融合体の遊離を2つの方法、すなわちi)TEVのタンパク質分解による開裂及びii)パラジウム触媒による開裂によって決定した(図24B)。TEVのタンパク質分解により融合体が開裂すればNLucの遊離がもたらされるはずであり、クロロアルカンリンカー内部でパラジウム触媒によりアリルカルバマート基が開裂すればBTK:NLucの遊離が伴うはずである。抗NLuc抗体を使用した遊離タンパク質のウエスタン分析により、TEVのタンパク質分解性開裂による有意なNLuc遊離が全被験リンカーで示された。ただし、短いリンカーのPBI−6041では、そのHALOTAG結合動態の低さ、及びそのBTK:Nluc捕捉の低さと一致した低遊離が観察された。Pd(DANPHOS)x処理による有意なBTK:NLuc遊離は、アリルカルバマート基を含有するリンカーでのみ検出された。さらに、高いパラジウム触媒による開裂効率が長いリンカーで観察された。PBI−6030及びPBI−6029はTEV及び2mMのPd(DANPHOS)xによる同様の遊離効率を示し、より長いPBI−6031及びPBI−6032はTEV及び2mM及び0.66mMのPd(DANPHOS)xによる同様の遊離効率を示した。
総合すると、これらの結果は、長いクロロアルカンリンカーへのアリルカルバマート基の組み込みはパラジウム触媒による効率的な開裂を可能にすると同時に、細胞透過性及びHALOTAG結合動態に対して最小限の障害しか示さなかったことを実証している。
実施例18
以下の例で、パラジウム触媒による溶離が、生物活性化合物と共有結合で相互作用する標的を富化する能力を実証する。イブルチニブはその主要標的であるBTKのATP結合ポケットでシステインに共有結合で結合する。さらに、イブルチニブは、ATP結合ポケット内の対応するシステインの存在に応じて、他のチロシンキナーゼと共有結合型相互作用または可逆的相互作用をすることが報告されている。Ramos細胞を、最終濃度20μMのイブルチニブ−CA−T4Eを用いて2.5時間処理した後(対照細胞は未処理のまま)、細胞を溶解させ、クロロアルカン複合体を、それらに結合した標的とと共にHALOTAGコートした磁性ビーズ(Promega Corporation)に捕捉した。その後、6mMパラジウム触媒によって標的を遊離させ、LC−MS/MS分析に供した(図25)。質量分析法により、共有結合で相互作用すると予測されたキナーゼ(すなわち、BTK、BLK及びTEC)を含め、複数のチロシンキナーゼの富化が示された。これらの結果は、パラジウム触媒による溶離は、他の溶離法では対処できない共有結合型相互作用に適用可能であることを実証している。
実施例19
以下の例(例えば、図27を参照のこと)で、ホスフィン及び求核剤の性質が、タンパク質性の環境でのパラジウム触媒によるアリル−カルバマート結合の開裂に影響を及ぼし得ることを実証する。これらの実験では、HALOTAGコートした磁性ビーズ(固定化HALOTAGタンパク質400μgを含有)を60μMのPBI−5741と共に30分インキュベートした。対照色素PBI−5741は、固定化HALOTAGタンパク質をまったく含有しないビーズと共にインキュベートした。PBI−5741を固定化HALOTAGタンパク質に共有結合させた後、ビーズを、モル比1:8であらかじめ作製したPd(ホスフィン)錯体2mM、0.66mM、または0.22mMを用いてHEPESまたはMOPSバッファー中で30分処理した。アリル−カルバマート基が開裂すれば、ビーズからの色素遊離が伴うはずである。遊離色素の試料を対照色素と共にSDS−PAGEで分離してTyphoon9400蛍光イメージ装置で走査し、IMAGEQUANTを使用してバンドを定量化した。開裂効率は、対照色素に対する遊離色素の割合として決定した。結果は、ホスフィン及び求核剤の性質がパラジウム触媒による開裂効率において極めて重要な役割を果たすことを示している。DANPHOS族由来の電子不足のホスフィン、特にDANPHOS及びo−DANPHOSは、一般に使用されるホスフィンであるTPPTSより効率が良かった。
実施例20
本明細書に記載する実施形態を展開する過程で行った実験で、パラジウム触媒による開裂効率はPd−ホスフィン溶液のモル比に依存することが実証された(例えば、図27を参照すると共に、DANPHOSに関する図21及び実施例16も参照のこと)。これらの実験では、HALOTAGコートしたビーズ(固定化HALOTAGタンパク質400μgを含有)を、60μMのPBI−5741と共に30分インキュベートし、対照色素PBI−5741は、固定化HALOTAGタンパク質を含有しないビーズと共にインキュベートした。PBI−5741を固定化HALOTAGタンパク質に共有結合させた後、ビーズを、Pdとo−DANPHOSのモル比が1:4、1:6、1:8、1:10、1:12、及び1:15のPd−O−DANPHOS錯体2mM、0.6mM、または0.22mMを用いて30分処理した。アリル−カルバマート結合が開裂すればビーズからの色素遊離が伴うはずである。遊離色素を対照色素と共にSDS−PAGEで分離してTyphoon9400蛍光イメージ装置で走査し、IMAGEQUANTを使用してバンドを定量化した。開裂効率は、対照色素に対する遊離色素の割合として決定した。Pdとo−DANPHOSのモル比が1:8〜1:10のPd−O−DANPHOS溶液で高い開裂効率が観察された。
実施例21
この例は、活性触媒は、密封ガラスアンプルに入れた溶液としても、または凍結乾燥形態でも保存可能であることを実証する(例えば、図28を参照のこと)。凍結乾燥の場合、パラジウムを十分に還元させてから凍結乾燥することが極めて重要である。これらの実験では、HALOTAGコートした磁性ビーズ(固定化HALOTAGタンパク質400μgを含有)を、60μMのPBI−5741と共に30分インキュベートし、対照色素PBI−5741は、固定化HALOTAGタンパク質を含有しないビーズと共にインキュベートした。PBI−5741を固定化HALOTAGタンパク質に共有結合させた後、溶液として、または凍結乾燥形態(調製後直ちに凍結乾燥したもの、または1時間後、3時間後、6時間後、22時間後、及び52時間後に凍結乾燥したもの)で保存した触媒から調製したPd/o−DANPHOSを0.66mM用いてビーズを30分処理した。アリル−カルバマート結合が開裂すればビーズからの色素遊離が伴うはずである。遊離色素の試料を対照色素と共にSDS−PAGEで分離してTyphoon9400蛍光イメージ装置で走査し、IMAGEQUANTを使用してバンドを定量化した。開裂効率は、対照色素に対する遊離色素の割合として決定した。結果は、溶液で保存した触媒または調製後6時間以上経ってから凍結乾燥した触媒がその活性を保持したことを示している。
実施例22
スキーム1:活性触媒の調製:
触媒溶液調製の基本手順:
Figure 0006876002
操作は、アルゴン雰囲気下(シュレンク管を用いる方法)で実施した。凍結脱気を3サイクル行って水を脱気した。
o−DANPHOS(188mg、0.32mmol、純度97%)を密封バイアルに入れ、撹拌子を装備した。空気を排気し、バイアルをアルゴンで充填した(3回繰り返し)。脱気水(9mL)をカニューレを介して加えると、澄明な溶液が形成された。別の密封バイアルに、Na2PdCl4(11.8mg、0.04mmol)を入れ、空気を排気し、バイアルをアルゴンで充填した(3回繰り返し)。脱気水(1mL)を固体Na2PdCl4に加えると、茶色の溶液が形成された。茶色の水溶液のNa2PdCl4(1mL、11.8mg/mL)溶液を、撹拌したホスフィン溶液に加えると、澄明な黄色の溶液が形成された。澄明な黄色溶液のPd−O−DANPHOS錯体を、アルゴン下で適切な長さの時間混合させた。十分な長さの時間が経過したら、黄色溶液を下記のように移した。
・ガラスアンプルに1mL分注し、アルゴン下または真空下で火炎密封(fire seal)した。溶液を遮光して4℃で保存した;
・ガラスアンプルに1mL分注し、アンプルをセプタで密封し、溶液を液体窒素上で慎重に凍結させ、凍結乾燥時、ガラスアンプルを火炎密封(fire seal)して遮光し−80℃で保存した;
・セプタで密封したガラスバイアルに1mL分注し、溶液を液体窒素またはドライアイス上で凍結させ、凍結乾燥させた。凍結乾燥残留物を密封ガラスバイアルに入れて−80℃で保存した。
スキーム2:Pd(OAc)2からの活性触媒の調製:
Pd(OAc)2からの触媒溶液調製の基本手順:
Figure 0006876002
Pd−DANPHOS(1:8)溶液4mMの例
DANPHOS(96mg、0.16mmol、純度97%)及びPd(OAc)2(4.5mg、0.02mmol)を撹拌子を装備した密封バイアルに入れた。空気を排気し、バイアルをアルゴンで充填した(3回繰り返し)。脱気水(5mL)をカニューレを介して加えて攪拌すると、澄明な溶液が形成された。(Pd(OAc)2が反応し、緩徐に溶解する)。澄明な黄色溶液のPd−DANPHOS錯体をアルゴン下で20時間混合させてからバイアルに包装する。
触媒の効率はPd源に依存「しない」。Na2PdCl4及びPd(OAc)2いずれも、同一条件下では双方ともに非常に類似した効率を示したことが実験で示されている。
実施例23
以下の例で、2つの異なるパラジウム塩源から調製した触媒に同様の反応性があることを実証する(例えば、図29を参照のこと)。HALOTAGコートしたビーズ(固定化HALOTAGタンパク質400μgを含有)を、60μMのPBI−5741と共に30分インキュベートし、対照色素PBI−5741は固定化HALOTAGタンパク質を含有しないビーズと共にインキュベートした。PBI−5741を固定化HALOTAGタンパク質に共有結合させた後、ビーズを、2種のパラジウム塩源Pd(OAC)2またはNa2PdCl4から調製した、Pdとホスフィンのモル比が1:8のPd/DANPHOS触媒2mMを用いて30分処理した。Pd/DANPHOS錯体をHEPESバッファーまたはMOPSバッファーに再構成した。アリル−カルバマート基が開裂すれば、ビーズからの色素遊離が伴うはずである。遊離色素を対照色素と共にSDS−PAGEで分離してTyphoon9400蛍光イメージ装置で走査し、IMAGEQUANTを使用してバンドを定量化した。開裂効率は、対照色素に対する遊離色素の割合として決定した。いずれのパラジウム塩源から調製した触媒でも、同様のアリル−カルバマート基開裂効率が観察された。
実施例24
以下の例で、クロロアルカンリンカーの化学構造へのアリル−カルバマート基の挿入、及び、パラジウム触媒による開裂を効率的にし、クロロアルカンリンカーの特徴(例えば、HALOTAGに速やかに結合させること、及び化合物の効力及び細胞内透過性に対する障害を最小限に抑えること)に対する障害を最小限にするための、この挿入の最適化について記載する。クロロアルカンリンカーを生物活性化合物に化学的に付着させ、それらが相互作用する細胞内標的を選択的に単離できるようにすることができる。この例では、クロロアルカンリンカーをBIRB796に結合させてBIRB796−CA−T1を作製した。アリルカルバマート基の挿入を最適化するため、立体配置が2種類あるアリルカルバマート基を含有する、長さの異なるリンカーをさらに7つ作製し、BIRB796に結合させた(図30)。複合体を、細胞溶解物中の場合と生細胞内部の場合のHALOTAGタンパク質に対する結合動態(図31)、BIRB796の力価に与える影響(図32)、及びパラジウム触媒によるリンカー開裂効率(図33)について比較した。
HALOTAGに対する溶解物中での結合動態(図31A)は、HALOTAG融合タンパク質を発現している細胞から調製した溶解物を、最終濃度1μMのBIRB796−クロロアルカン複合体で最高60分処理して測定した。特定のインキュベーション時間の後、一定分量を取り出し、最終濃度1μMのHALOTAG TMR蛍光リガンド(Promega Corporation)で処理して残存する未結合HALOTAG融合タンパク質を標識化した。各分注をSDS−PAGEで分離し、Typhoon9400蛍光イメージ装置(GE Healthcare)で走査した。IMAGEQUANT(GE Healthcare)を使用してバンドを定量化し、結合動態を、クロロアルカンでタグ付けした化合物を加えていない時間ゼロに対する経時的結合率(%)として決定した。トランス型二重結合を有するリンカー(すなわちCA−T2E、CA−T3E及びCA−T4E)は、シス型二重結合を有するそれぞれのリンカーよりも速いHALOTAG結合を示した。長いリンカーCA−T4Eの結合動態は、HALOTAGへの結合に対する影響が最小である開裂不可能なリンカーCA−T1に最も類似していた。
HALOTAGに対する細胞内部での結合動態(図31B)は、HALOTAG融合タンパク質を発現している生細胞を、最終濃度10μMのBIRB796−クロロアルカン複合体で最高90分処理して測定した。その後、培地を、HALOTAG TMR蛍光リガンド5μMを含有する培地と交換し、細胞をさらに15分インキュベートして残存する未結合HALOTAG融合タンパク質を標識化した。その後、界面活性剤溶解バッファーで細胞を溶解させ、さまざまな測定ポイントにおける試料を上記のように分析した。リンカーは、細胞内でも溶解物中でもHALOTAG結合動態に対して同様の相対的影響を示し、このことは、その長さにかかわらず、細胞内透過性がそれらの結合の制限因子とならなかったことを示している。
BIRB796がマイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)を阻害することによりTNFαなどの炎症誘発性サイトカインの産生が抑制される。LPS刺激したTHP−1細胞からのTNFα分泌の阻害について各種BIRB796複合体を比較し、リンカーがBIRB796の力価に与える影響を検討した(図32)。THP−1細胞を96ウェルプレートに100,000細胞/ウェルで播種し、BIRB796(Cayman Chemical)及びBIRB796−クロロアルカン複合体の系列希釈を用いて2時間処理した後、最終濃度250ng mL−1のLPS(Sigma)を用いて24時間刺激した。上清を、ヒトTNFαの分泌についてELISA(R&D systems)で分析した。結果は、開裂可能なクロロアルカンリンカーの長さとそれがBIRB796力価に与える影響との逆相関を示している。長いリンカーであるCA−T4ZとCA−T4Eのみが、開裂不可能なリンカーCA−T1と同様の力価を示した。
これらのリンカーのパラジウム触媒による開裂効率を調べるため、BIRB796の標的として既知であるMAPK9を遺伝子操作によりNANOLUC(NLuc)に融合させて(NLuc:MAPK9)HALOTAGビーズに捕捉し、MAPK9の遊離を2つの方法、すなわち、i)SDS及びii)パラジウム触媒による開裂によって決定した(図33)。細胞溶解物(NLuc:MAPK9融合体を発現している細胞由来)を、最終濃度1μMのBIRB796クロロアルカン複合体を用いて2時間処理した後、複合体とそれらに結合したNLuc:MAPK9をHALOTAGコートした磁性ビーズ(Promega Corporation)に捕捉した。その後、NLuc:MAPK9を、1%SDS、2mMのパラジウム触媒、または0.66mMのパラジウム触媒いずれかで処理して遊離させた。抗NLuc抗体を使用した遊離タンパク質のウエスタン分析により、そのHALOTAG結合動態の低さと一致したCA−T0を除いては、全被験リンカーでSDSによるNLuc:MAPK9の有意な遊離が示された。パラジウム触媒による有意なNLuc:MAPK9遊離は、長いリンカーでしか検出されなかった。
総合すると、これらの結果は、長いクロロアルカンリンカーへのアリルカルバマート結合の組み込みは、パラジウム触媒による効率的な開裂を可能にすると同時に、細胞透過性及びHALOTAG結合動態に対して最小限の障害しか示さなかったことを実証している。
実施例25
以下の例で、化合物が狙う長期滞留時間を示す標的を富化する場合、競合的溶離に対しパラジウム触媒による溶離の方が有利であることを実証する。THP−1細胞を、最終濃度20μMのBIRB796−CA−T1及びBIRB796−CA−T4Eを用いて2.5時間処理した後(対照細胞は未処理のまま)、細胞を溶解させ、クロロアルカン複合体を、それらに結合した標的と共にHALOTAGコートした磁性ビーズ(Promega Corporation)に捕捉した。その後、400μMのBIRB796または6mMのパラジウム触媒によって標的を遊離させ、LC−MS/MS分析に供した(図34)。質量分析法により、パラジウム触媒での溶離による内在性標的の高富化が示された。
実施例26
以下の例で、開裂可能なクロロアルカンリンカーの特徴に対しカルバマート基が寄与することを実証する。CA−T4Eは4つのカルバマート基を含有し、そのうちの1つはHALOTAGへの速やかな結合動態にとって必須である。2つのさらなるリンカーを作製し、1つは、他の3つのカルバマートをアミドで置換し、もう1つは、2つのアリルカルバマート基をアリルエーテル結合で置換した。3つのリンカーすべてをポナチニブに結合させ(図35)、それぞれポナチニブ−CA−T4E(6142)、ポナチニブ−トリ−アミド(S83)、及びポナチニブall−PEG(SL_0729)とした。リンカーを、HALOTAG及びABL1への結合に対するそれらの影響について生化学的アッセイ及び細胞アッセイで比較した。3つのリンカーはすべて、HALOTAGに対する溶解物中での結合動態は同様であり、精製ABL1の阻害は比較できるほどであることを示し、アミドまたはPEGへの変更は、両タンパク質への結合に対して影響を与えないことが示された(図36)。細胞アッセイでは、アミドにより、細胞内のHALOTAGに対する結合動態が低下し、ポナチニブの力価がCA−T4E及びall PEGリンカーに対して20倍減少したことから、細胞透過性に対する影響が大きいことを暗示している(図36B及び図36D)。これらの結果は、CA−T4Eが細胞透過性に対して最小限の影響しか与えないことにはカルバマートが寄与していることを示唆する。
実施例27
以下は、本明細書に記載する実施形態の範囲内の例示的な組成物であり、ここで、官能基選択的に開裂可能なリンカー部分はクロロアルカン機能的要素と4−ニトロフェニル機能的要素(及び開裂不可能なリンカーを含む対照組成物(PBI4440))とを連結する。
4−ニトロフェニルカルバマート−クロロアルカン:
Figure 0006876002
PBI4440の合成はACS Chem.Biol.2008,3,373−382に記載されている。

アリルカルバマートリンカー
Figure 0006876002
実施例28
リンカーの合成:
4−ニトロフェニルカルバマート合成の基本手順:
窒素下、ピリジン(1.35当量)及びクロロギ酸4−ニトロフェニル(1.05当量)を、撹拌したアルコールのDCM溶液0.25Mに加えた(反応スキームで示されるように、0℃または25℃にて)。得られる溶液/懸濁液を、25℃で放置するかまたは12時間かけて25℃まで昇温し(0℃から開始した場合)、その時点でTLCにより出発物質の消費が示された。反応混合物をシリカに吸着させ、シリカゲルクロマトグラフィー(EtOAc/ヘキサンまたはMeOH/DCM)によって精製した。
Figure 0006876002

Figure 0006876002
SL_0157を、Nelson,B.;Hiller,W.;Pollex,A.;Hiersemann,M.Org.Lett.2011,13,4438にしたがって合成した。
Figure 0006876002
窒素下、撹拌したSL_0157(710mg、3.51mmol)のDCM溶液(15mL)にピリジン(382μL、4.74mmol)及びクロロギ酸4−ニトロフェニル(743mg、3.68mmol)を0℃で加えた。得られる溶液を12時間かけて25℃まで昇温し、その時点でTLCにより出発物質の消費が示された。反応混合物をシリカに吸着させ、シリカゲルクロマトグラフィー(0→10% EtOAc/ヘキサン)で精製し、1.23g(収率95%)のSL_0160を澄明な油として得た。1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 8.28 (d, J= 9.0 Hz, 2H), 7.38 (d, J= 9.1 Hz, 2H), 5.84 (dt, J = 11.7, 5.7 Hz, 1H), 5.66 (dt, J= 11.7, 7.0 Hz, 1H), 4.90 (d, J=7.0Hz, 2H), 4.32 (d, J= 5.7 Hz, 2H), 0.91 (s, 9H), 0.09 (s, 6H). MS (ESI+) C1725NaNO6Si+に対する計算値[M+Na]+ 390.13,実測値390.1。
Figure 0006876002
SL_0160の溶液(400mg、1.09mmol)に、2−(2−((6−クロロヘキシル)オキシ)エトキシ)エチルアミン塩酸塩(312mg、1.20mmol)を加え、次いでEt3N(290μL、20.7mmol)を加えた。得られる黄色溶液を撹拌させたまま18時間放置し、その時点でTLCにより出発物質の消費が示された。反応混合物をシリカに吸着させ、シリカゲルクロマトグラフィー(0→30% EtOAc/ヘキサン)で精製し、395mg(収率80%)のSL_0161を澄明な油として得た。1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 5.71 (dt, J = 11.4, 5.7 Hz, 1H), 5.56 (dt, J= 11.3, 6.2 Hz, 1H), 5.19 (br. s, 1H), 4.63 (d, J= 6.2 Hz, 2H), 4.27 (d, J= 5.7 Hz, 2H), 3.67 − 3.50 (m, 8H), 3.47 (t, J= 6.6 Hz, 2H), 3.37 (q, 5.2 Hz, 2H), 1.78 (p, J=6.8Hz, 2H), 1.60 (p, J= 6.8 Hz, 2H), 1.44 − 1.32 (m, 4H), 0.90 (s, 9H), 0.07 (s, 6H)。
Figure 0006876002
SL_0161(395mg、874μmol)のMeOH溶液(20mL)に2N HCl(水溶液)3滴を滴下した。得られる澄明溶液を撹拌させたまま10分放置し、その時点でTLCにより出発物質の消費が示された。溶媒を減圧留去し、粗残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(0→5% MeOH/DCM)で精製し、263mg(収率98%)のSL_0163を澄明な油として得た。1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 5.87 (dt, J= 11.5, 6.3 Hz, 0H), 5.64 (dt, J= 10.8, 7.3 Hz, 0H), 5.24 (br. s, 1H), 4.67 (d,J = 7.3 Hz, 1H), 4.24 (d, J=6.3Hz, 1H), 3.65−3.51 (m, 8H), 3.46 (t, J=6.6 Hz, 2H), 3.36 (q, J= 5.0 Hz, 2H), 1.78 (p, J= 6.7 Hz, 2H), 1.60 (q, J= 6.9 Hz, 2H), 1.43 (m, 4H). MS (ESI+) C1529ClNO5 +に対する計算値[M+H]+ 338.17,実測値338.1。
Figure 0006876002
窒素下、撹拌したSL_0163(177mg、524μmol)のDCM溶液(15mL)にピリジン(57μL、0.7mmol)及びクロロギ酸4−ニトロフェニル(110mg、0.55mmol)を0℃で加えた。得られる溶液を16時間かけて25℃まで昇温し、その時点でTLCにより出発物質の消費が示された。反応混合物をシリカに吸着させ、シリカゲルクロマトグラフィー(0→50% EtOAc/ヘキサン)で精製し、159mg(収率60%)のSL_0165を澄明な油として得た。1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 8.28 (d, J= 9.1 Hz, 2H), 7.39 (d,J =9.1 Hz, 2H), 5.93 − 5.75 (m, 2H), 5.23 (br. s, 1H), 4.90 (d, J= 5.8 Hz, 2H), 4.71 (d,J= 5.3 Hz, 2H), 3.65 − 3.51 (m, 8H), 3.46 (t, J= 6.4 Hz, 2H), 3.38 (q, J= 4.9 Hz, 2H), 1.78 (p, J =6.6 Hz, 2H), 1.61 (p, J = 6.6 Hz, 2H), 1.50 − 1.34 (m, 4H). MS (ESI+) C2232ClN29 +に対する計算値[M+H]+ 503.18,実測値503.1。
Figure 0006876002

Figure 0006876002
SL_0166を、Konning,D.;Hiller,W.;Christmann,M.Org.Lett.2012,14,5258−5261にしたがって合成した。
Figure 0006876002
SL_0166(230mg、1.34mmol)のトルエン溶液(2mL)に、50%水溶性NaOH(2.5mL)を加え、次いでBu4NHSO4を22℃で加えた。激しく撹拌して得られる粘性混合物に、ブロモ酢酸tert−ブチル(0.59mL、4mmol)をゆっくりと加えた。得られる溶液を20時間以上かけて22℃で激しく撹拌したまま放置し、その時点でTLC分析により出発物質の消費が示された。5mLのH2Oを加え、25mLのジエチルエーテルで水層から分離し、25mLのジエチルエーテルで2回抽出した。有機層を合わせてMgSO4で乾燥させ、減圧下濃縮した。粗残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(0→30% EtOAc/ヘキサン)で精製し、357mg(収率93%)のSL_0203を澄明な油として得た。1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 5.76 (m, 2H), 4.62 (m, 1H), 4.27 (dd, J= 12.5, 4.4 Hz, 1H), 4.18 (d, J= 4.9 Hz, 2H), 4.09 (dd, J= 12.6, 5.4 Hz, 0H), 3.95 (s, 2H), 3.85 (m, 1H), 3.52 (m, 1H), 1.90 −1.70 (m, 2H), 1.62 − 1.51 (m, 4H), 1.48 (s, 9H)。
Figure 0006876002
撹拌子が装備された火炎乾燥した50mLフラスコに、窒素下、SL_0203(357mg、1.25mmol)のTHF溶液(10mL)を加え、溶液を0℃に冷却した。LiAlH4 1MのTHF溶液(6.2mL、6.2mmol)をシリンジを介してゆっくり加え、反応混合物を一晩かけて22℃に昇温した。16時間後、TLC分析により出発物質の完全消費が示され、反応混合物を冷却して0℃に戻し、激しく撹拌しながら30%ロッシェル塩水溶液(2mL)で反応を停止させた。30分後、白色沈殿をろ去し、ろ液をTHF(100mL)で洗浄した。THF溶液を合わせ、溶媒を減圧留去した。粗残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(0→60% EtOAc/ヘキサン)で精製し、197mg(収率73%)のSL_0206を澄明な油として得た。1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 5.79 − 5.72 (m, 2H), 4.66 (m, 1H), 4.30 − 4.20 (m, 1H), 4.19 − 4.05 (m, 3H), 3.90 − 3.83 (m, 1H), 3.76 − 3.71 (m, 2H), 3.59 − 3.46 (m, 3H), 1.91 − 1.47 (m, 6H, H2Oとオーバーラップ). MS (ESI+) C11204Li+に対する計算値 [M+Li]+ 223.15,実測値223.39。
Figure 0006876002
ピリジン(147μL、1.82mmol)およびクロロギ酸4−ニトロフェニル(275mg、1.37mmol)を、窒素下、撹拌したSL_0206(197mg、911μmol)のDCM溶液(20mL)に22℃で加えた。得られる溶液を22℃で16時間以上撹拌したまま放置し、その時点でTLCにより出発物質の消費が示された。反応混合物をシリカに吸着させ、シリカゲルクロマトグラフィー(0→30% EtOAc/ヘキサン)で精製し、307mg(収率88%)のSL_0209を澄明な油として得た。1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 8.28 (d,J= 9.2 Hz, 2H), 7.39 (d, J= 9.2 Hz, 2H), 5.76 (m, 2H), 4.63 (t, J= 3.5 Hz, 1H), 4.44 (m, 2H), 4.29 (dd, J= 12.8, 5.4 Hz, 1H), 4.17 (d, J= 5.5 Hz 2H), 4.10 (dd, J= 12.8, 5.8 Hz, 1H), 3.86 (ddd, J = 11.1, 7.6, 3.5 Hz, 1H), 3.74 (m, 2H), 3.52 (m, 1H), 1.88 − 1.66 (m, 2H), 1.61 − 1.47 (m, 4H,H2Oとオーバーラップ)。
Figure 0006876002
SL_0209(307mg、805μmol)のTHF溶液(20mL)にJ1454T(230mg、886μmol)に次いで、トリエチルアミン(340μL、2.41mmol)を加えたところ、白色沈殿を形成する(NEt3・HCl)。得られる懸濁液を撹拌したまま22℃で20時間放置し、その時点でTLC分析により出発物質の完全消費が示された。溶媒を減圧留去し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(0→60% EtOAc/ヘキサン)で精製し、280mg(収率75%)のSL_0210を澄明な油として得た。1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 5.82 − 5.66 (m, 2H), 5.29 (br. s, 1H), 4.63 (m, 1H), 4.31 − 4.19 (m, 3H), 4.14 − 4.04 (m, 3H), 3.89 − 3.79 (m, 1H), 3.65 − 3.50 (m, 11H), 3.49 − 3.44 (m, 2H), 3.40 − 3.33 (m, 2H), 1.84 − 1.72 (m, 3H,),1.54 − 1.57 (m, 6H,H2Oとオーバーラップ), 1.94 − 1.31 (m, 5H,H2Oとオーバーラップ). MS (ESI+) C2241ClNO7 +に対する計算値 [M+H]+ 466.25,実測値466.43。
Figure 0006876002
撹拌子が装備された20mLマイクロウェーブバイアルに、SL_0210(280mg、600μmol)、PPTS(15.1mg、60.0μmol)及びEtOH(10mL)を加えた。得られる溶液をマイクロウェーブで50℃にて60分加熱し、その時点で分析により出発物質の完全消費が示された。溶媒を減圧留去し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(0→10% MeOH/DCM)で精製し、220mg(収率96%)のSL_0213を澄明な油として得た。MS(ESI+) C1733ClNO6 +に対する計算値 [M+H]+382.20、実測値 382.57。
Figure 0006876002
ピリジン(93μL、1.2mmol)及びクロロギ酸4−ニトロフェニル(174mg、864μmol)を、窒素下、撹拌したSL_0213(220mg、576μmol)のDCM溶液(15mL)に22℃で加えた。得られる溶液を22℃で16時間以上撹拌したまま放置し、その時点でTLCにより出発物質の消費が示された。反応混合物をシリカに吸着させ、シリカゲルクロマトグラフィー(0→70% EtOAc/ヘキサン)で精製し、153mg(収率49%)のSL_0214を澄明な油として得た。1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 8.28 (d, J= 9.1 Hz, 2H), 7.39 (d,J= 9.1 Hz, 2H), 5.93 − 5.74 (m, 2H), 5.29 (br. s, 1H), 4.89 (d, J= 6.4 Hz, 2H), 4.23 (m, 2H), 4.18 (d,J= 5.7 Hz, 2H), 3.65 (m, 2H), 3.61 − 3.50 (m, 8H), 3.45 (t, J= 6.6 Hz, 2H), 3.37 (q, J= 5.3 Hz, 2H), 1.78 (p, J= 6.7 Hz, 2H), 1.60 (dt, J= 13.6, 6.5 Hz, 2H), 3.37 (q, J= 5.3 Hz, 2H), 1.78 (p, J= 6.7 Hz, 2H), 1.60 (dt, J= 13.6, 6.5 Hz, 2H,H2Oとオーバーラップ), 1.50 − 1.33 (m, 4H). MS (ESI+) C2436ClN210 +に対する計算値 [M+H]+ 547.21,実測値547.20。
Figure 0006876002

Figure 0006876002
SL_0226を、Konning,D.;Hiller,W.;Christmann,M.Org.Lett.2012,14,5258−5261にしたがって合成した。
Figure 0006876002
撹拌子が装備された炉乾燥済み250mL丸底フラスコにSL_0226(3.48g、20.5mmol)を投入した。SL_0226をトルエンで共沸乾燥した(3回)。N2下、乾燥THF(100mL)をカニューレを介して加え、撹拌溶液を氷浴で0℃に冷却した。Red−Al(7.12mL、25.6mmol、70%トルエン溶液)を撹拌溶液に15分かけて滴下した。反応混合物を撹拌したまま0℃で60分放置し、さらに60分22℃に昇温し、その時点でTLC分析により出発物質のほぼ完全な消失が示された。反応混合物を冷却して0℃に戻し、30%ロッシェル塩水溶液(50mL)で反応を停止させ、150mLのEt2Oで3回抽出してからMgSO4で乾燥させ、ろ過して濃縮した。粗残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(0→70% EtOAc/ヘキサン)で精製し、1.50g(収率42%)のSL_0462を澄明な油として得た。1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 5.98 − 5.79 (m, 2H), 4.65 (dd, J= 4.0, 2.8 Hz, 1H), 4.26 (ddq, J= 12.8, 4.9, 2.8 Hz, 1H), 4.19−4.16 (m, 2H), 4.00 (ddq, J= 12.0, 5.8, 1.2 Hz, 1H), 3.88 (m, 1H), 3.52 (m, 1H), 1.91 − 1.68 (m, 2H), 1.66 − 1.49 (m, 4H)。
Figure 0006876002
炉乾燥した100mLフラスコにNaH(358mg、60%、鉱油分散、8.94mmol)を投入し、次いでN2下、THF(25mL)を投入した。複数口のフラスコ内で、SL_0462(1.40g、8.13mmol)をトルエンで共沸乾燥し(3回)、THF(25mL)で希釈した。あらかじめ0℃に冷却したNaH/THF懸濁液に、カニューレを介してSL_0462の溶液を加えた。この茶色混合物を0℃で30分撹拌し、その時間の経過後、tBu−ブロモアセタート(tBu−bromoacetate)(1.38mL、9.35mmol)を滴下した。得られるスラリーを22℃に温め、18時間撹拌した。水(75mL)を加え、反応物をEt2O(75mL、3回)で抽出した。有機層を乾燥(MgSO4)させてから濃縮し、フラッシュクロマトグラフィー(0→50% EtOAc/ヘキサン)で精製し、574mg(収率25%)のSL_0464を澄明な油として得た。1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 5.99−5.76 (m, 2H), 4.68 (d, 5.7 Hz, 1H), 4.64 (t, J= 3.4 Hz, 1H), 4.31 − 4.22 (m, 1H), 4.11−4.07 (m, 1H), 4.03−3.82 (m, 4H), 3.55 − 3.47 (m, 1H), 1.92− 1.78 (m, 1H), 1.77− 1.66 (m, 1H), 1.66 − 4.51 (m, 4H), 1.48 (s, 9H). MS (ESI+) C15265Na+に対する計算値 [M+Na]+309.17,実測値309.22。
Figure 0006876002
SL_0464(570mg、1.99mmol)のTHF溶液(20mL)に0℃にてLiAlH4のエーテル溶液1M(10mL、10mmol)を加えた。反応混合物を22℃に昇温し、撹拌したまま22時間放置し、その時点で反応混合物を冷却して0℃に戻し、気体発生が停止するまで30%ロッシェル塩水溶性をゆっくり滴加して反応を停止させた。反応停止混合物を激しく撹拌したままさらに30分放置し、白色沈殿をセライトパッドにろ取した。セライトパッドを、別のTHF(50mL)で洗浄し、ろ液を濃縮してフラッシュクロマトグラフィー(0→100% EtOAc/ヘキサン)で精製し、195mg(収率45%)のSL_0466を澄明な油として得た。1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 5.91 − 5.97 (m, 2H), 4.64 (dd, J= 4.0, 2.9 Hz, 1H),4.30 − 4.22 (m, 1H), 4.06 − 4.03 (m, 2H), 4.03 − 3.96 (m, 1H), 3.95 − 3.83 (m, 1H), 3.77 −3.73(m, 2H), 3.58 − 3.48 (m, 3H), 1.91 − 1.50 (m, 6H,H2Oとオーバーラップ). MS (ESI+) C1120NaO4 +に対する計算値 [M+Na]+ 239.13,実測値239.13。
Figure 0006876002
ピリジン(111μL、1.38mmol)及びクロロギ酸4−ニトロフェニル(208mg、1.03mmol)を、窒素下、撹拌したSL_0466(149mg、689μmol)のDCM溶液(15mL)に22℃で加えた。得られる溶液を22℃で16時間以上撹拌したまま放置し、その時点でTLCにより出発物質の消費が示された。反応混合物をシリカに吸着させ、シリカゲルクロマトグラフィー(0→40% EtOAc/ヘキサン)で精製し、188mg(収率72%)のSL_0469を澄明な油として得た。1H NMR (300 MHz, DMSO−d6) δ 8.32 (d, J= 9.2 Hz, 2H), 7.57 (d, J = 9.2 Hz, 2H), 5.82 (dd, J= 15.7, 4.0 Hz, 1H), 5.74 (dd, J= 15.7, 4.3 Hz, 1H), 4.59 (m, 1H), 4.40−4.37 (m, 2H), 4.14 (dd, J= 12.9, 3.6 Hz, 1H), 4.01 (d, J= 3.7 Hz, 2H), 3.93 (dd, J = 12.8, 3.9 Hz, 1H), 3.77 − 3.71 (m, 1H), 3.70 − 3.661 (m, 2H), 3.46 − 3.39 (m, 1H), 1.78 −1.56 (m, 2H), 1.53 − 1.40 (m, 4H). MS (ESI+) C1823NaNO4 +に対する計算値 [M+H]+ 404.13,実測値404.1。
Figure 0006876002
SL_0469(104mg、273μmol)のTHF溶液(10mL)にJ1454T(78mg、300μmol)に次いで、トリエチルアミン(190μL、1.36mmol)を加えたところ、白色沈殿を形成する(NEt3・HCl)。得られる懸濁液を撹拌したまま22℃で5時間放置し、その時点でTLC分析により出発物質の完全消費が示された。溶媒を減圧留去し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(0→100% EtOAc/ヘキサン)で精製し、94mg(収率74%)のSL_0476を澄明な油として得た。1H NMR (300 MHz, DMSO−d6) δ 7.17 (t, J= 5.6 Hz, 1H), 5.82 − 5.67 (m, 2H), 4.58 (s, 1H), 4.12 (m, 1H), 4.05 (m, 2H), 3.97 − 3.87 (m, 3H), 373 (m, 1H), 3.62 (t, J= 6.6 Hz, 2H), 3.53 (m, 2H), 3.49 − 3.45 (m, 5H), 3.42 − 3.34 (m, 4H), 3.11 (q, J= 6.0 Hz, 2H), 1.75 − 1.57 (m, 3H), 1.54− 1.23 (m, 11H)。
Figure 0006876002
撹拌子が装備された10mLマイクロウェーブバイアルに、SL_0477(94.0mg、202μmol)、PPTS(5.1mg、20μmol)及びEtOH(5mL)を加えた。得られる溶液をマイクロウェーブで50℃にて60分加熱し、その時点で分析により出発物質の完全消費が示された。溶媒を減圧留去し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(0→10% MeOH/DCM)で精製し、67mg(収率87%)のSL_0477を澄明な油として得た。1H NMR (300 MHz, DMSO−d6) δ 7.17 (t, J= 5.7 Hz, 1H), 5.80 (dtd, J= 15.7, 3.7, 0.7 Hz, 1H), 5.64 (dtt, J= 15.7, 5.6, 1.3 Hz, 1H), 4.70 (t, J= 5.4 Hz, 1H), 4.05 (m, 2H), 3.93 (d, J= 4.4 Hz, 4H), 3.62 (t, J= 6.6 Hz, 2H),3.54 − 3.49 (m, 2H), 3.49 − 3.44 (m, 4H) 3.42−3.34 (m, 4H), 3.11 (q, J= 6.0 Hz, 2H), 1.71 (p, J= 6.6 Hz, 2H), 1.49 (p, J= 6.8 Hz, 2H), 1.41 − 1.26 (m, 4H)。
Figure 0006876002
ピリジン(28μL、350μmol)及びクロロギ酸4−ニトロフェニル(53mg、263μmol)を、窒素下、撹拌したSL_0477(67.0mg、175μmol)のDCM溶液(5mL)に22℃で加えた。得られる溶液を22℃で18時間以上撹拌したまま放置し、その時点でTLCにより出発物質の消費が示された。反応混合物をシリカに吸着させ、シリカゲルクロマトグラフィー(0→100% EtOAc/ヘキサン)で精製し、63mg(収率66%)のSL_0478を澄明な油として得た。1H NMR (300 MHz, DMSO−d6) δ 8.32 (d, J= 9.1 Hz, 2H), 7.57 (d, J= 9.1 Hz, 2H), 7.18 (t,J= 5.2 Hz, 1H), 6.01 − 5.81 (m, 2H), 4.77 (d,J = 5.2 Hz, 2H), 4.07 (m, 2H), 4.00 (d, J= 4.1 Hz, 2H), 3.61 (t, J= 6.6 Hz, 2H), 3.56 (m, 2H), 3.46 (m, 4H), 3.39 (m, 4H), 3.11 (q, J= 5.9 Hz, 2H), 1.70 (p, J= 6.7 Hz, 2H), 1.48 (p, J= 6.6 Hz, 2H), 1.41 − 1.23 (m,4H)。
Figure 0006876002

Figure 0006876002
SL_0160(269mg、732μmol)のMeCN溶液(10mL)に、2−(2−(2−アミノエトキシ)エトキシ)エタン−1−オール(109mg、732μmol)を加え、次いでNEt3(200μL、145μmol)を加えた。得られる黄色溶液を22℃で24時間放置し、その時点でTLC分析により出発物質の完全消費が示された。溶媒を減圧留去し、粗残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(0→100% EtOAc/ヘキサン)で精製し、220mg(収率80%)のSL_0483を澄明な油として得た。1H NMR (300 MHz, DMSO−d6) δ 7.15 (t, J= 5.4 Hz, 1H), 5.62 (dt, J= 11.4, 5.7 Hz, 1H), 5.49 (dt, J = 11.4, 6.5 Hz, 1H), 4.57 − 4.51 (m, 3H), 4.24 (d, J= 5.7 Hz, 2H) 3.51 − 3.46 (m, 6H),3.42 − 3.37 (m, 4H), 3.11 (q, J= 5.9 Hz, 2H), 0.87 (s, 9H), 0.05 (s, 6H). MS (ESI+) C1735NaNO6Si+に対する計算値[M+H]+ 400.21,実測値400.2。
Figure 0006876002
ピリジン(58μL、0.7mmol)及びクロロギ酸4−ニトロフェニル(113mg、0.56mmol)を、窒素下、撹拌したSL_0483(202mg、535μmol)のDCM溶液(15mL)に0℃で加えた。得られる溶液を20時間かけて25℃まで昇温し、その時点でTLCにより出発物質の消費が示された。反応混合物をシリカに吸着させ、シリカゲルクロマトグラフィー(0→40% EtOAc/ヘキサン)で精製し、147mg(収率51%)のSL_0486を澄明な油として得た。1H NMR (300 MHz, DMSO−d6) δ 8.32 (d, J= 9.2 Hz, 2H), 7.56 (d, J= 9.2 Hz, 2H), 7.16 (t, J=5.5 Hz, 1H), 5.61 (dtt, J= 11.5, 5.5, 1.3 Hz, 1H), 5.49 (dtt, J= 11.5, 6.2, 1.7 Hz, 1H), 4.52 (m, 2H), 4.36 (m, 2H), 4.23 (d, J= 5.8 Hz, 2H), 3.71 (m, 2H), 3.59 − 3.55 (m, 2H), 3.54− 3.50 (m, 2H), 3.41 (t, J= 6.0 Hz, 2H), 3.12 (q, J= 6.0 Hz, 2H), 0.86 (s, 9H), 0.04 (s, 5H)。
Figure 0006876002
SL_0486(134mg、247μmol)のTHF溶液(15mL)にJ1454T(71mg、272μmol)を加え、次いでトリエチルアミン(172μL、1.23μmol)を加えたところ、濁った溶液を形成する(NEt3・HCl沈殿)。得られる懸濁液を撹拌したまま22℃で5時間放置し、その時点でTLC分析により出発物質の完全消費が示された。溶媒を減圧留去し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(0→10% MeOH/DCM)で精製し、126mg(収率81%)のSL_0492を澄明な油として得た。1H NMR (300 MHz, DMSO−d6) δ 7.16 (m, 2H), 5.62 (dt, J= 11.2, 5.8 Hz, 1H), 5.49 (dt, J= 12.6, 6.4 Hz, 1H), 4.53 (d, J= 6.3 Hz, 2H), 4.24 (d, J= 5.6 Hz, 2H), 4.04 (m, 2H), 3.62 (t, J= 6.6 Hz, 2H), 3.55 (m, 2H), 3.52 − 3.45 (m, 8H), 3.42 − 3.34 (m, 6H), 3.11 (q, J= 5.6 Hz, 4H), 1.70 (p, J = 6.7 Hz, 2H), 1.49 (p, J= 6.8 Hz, 2H), 1.38 (m, 4H), 0.86 (s, 9H), 0.05 (s, 5H)。
Figure 0006876002
SL_0494(113mg、180μmol)のMeOH溶液(10mL)に2N HCl(水溶液)2滴を滴下した。得られる澄明溶液を撹拌させたまま25分放置し、その時点でTLCにより出発物質の消費が示された。溶媒を減圧留去し、粗残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(0→10% MeOH/DCM)で精製し、85mg(収率92%)のSL_0494を澄明な油として得た。1H NMR (300 MHz, DMSO−d6) δ 7.15 (m, 2H), 5.64 (dt, J= 11.8, 6.1 Hz, 1H), 5.46 (dt, J= 11.5, 6.5 Hz, 1H), 4.72 (t, J= 5.5 Hz, 1H), 4.52 (d,J= 6.6 Hz, 2H), 4.03 (m, 4H), 3.62 (t,J= 6.6 Hz, 2H), 3.55 (t, J= 4.8 Hz, 2H), 3.51 − 3.44 (m, 8H), 3.42 − 3.32 (m, 6H), 3.11 (m, 4H), 1.71 (m, 2H), 1.49 (p, J= 6.9 Hz, 2H), 1.41 − 1.25 (m, 4H)。
Figure 0006876002
ピリジン(37μL、460μmol)及びクロロギ酸4−ニトロフェニル(47mg、230μmol)を、窒素下、撹拌したSL_0494(79mg、150μmol)のDCM溶液(10mL)に22℃で加えた。得られる溶液を22℃で16時間以上撹拌したまま放置し、その時点でTLCにより出発物質の消費が示された。反応混合物をシリカに吸着させ、シリカゲルクロマトグラフィー(0→5% MeOH/DCM)で精製し、46mg(収率44%)のSL_0496を澄明な油として得た。1H NMR (300 MHz, DMSO−d6) δ 8.32 (d, J= 8.7 Hz, 2H), 7.57 (d, J= 8.7 Hz, 2H), 7.19 (m, 2H), 5.78 (m, 2H), 4.89 (d, J= 4.4 Hz, 2H), 4.60 (d, J= 4.3 Hz, 2H), 4.03 (t, J= 4.7 Hz, 2H), 3.61 (t, J= 6.8 Hz, 2H), 3.55 (t, J= 4.8 Hz, 2H), 3.52 − 3.44 (m, 8H), 3.42 − 3.32 (m, 6H), 3.12 (p, J= 5.8 Hz, 4H), 1.70 (p, J= 6.7 Hz, 2H), 1.48 (p, J= 6.8 Hz, 2H), 1.41 − 1.22 (m, 4H)。
Figure 0006876002

Figure 0006876002
SL_0496(40mg、59μmol)のMeCN溶液(15mL)に、2−(2−(2−アミノエトキシ)エトキシ)エタン−1−オール(8.8mg、59μmol)を加え、次いでNEt3(25μL、177μmol)を加えた。得られる黄色溶液を22℃で16時間放置し、その時点でTLC分析により出発物質の完全消費が示された。溶媒を減圧留去し、粗残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(0→30% MeOH/DCM)で精製し、37mg(収率91%)のSL_0501を澄明な油として得た。1H NMR (300 MHz, DMSO−d6) δ 7.22 − 7.15 (m, 3H), 5.65 − 5.61 (m, 2H), 4.60 − 4.50 (m, 5H), 3.62 (t, J= 6.6 Hz, 2H), 3.55 (dd, J= 4.0, 5.5 Hz, 2H), 3.52 − 3.45 (m, 14H), 3.43 −3.36 (m, 10 H), 3.15 − 3.07 (m, 6H), 1.70 (p, J= 6.5 Hz, 2H), 1.48 (p, J= 6.8 Hz, 2H),1.42 − 1.25 (m, 4H). MS (ESI+) C2955ClN313 +に対する計算値[M+H]+ 688.34,実測値688.3。
ピリジン(21μL、250μmol)及びクロロギ酸4−ニトロフェニル(21mg、100μmol)を、窒素下、撹拌したSL_0504(35mg、51μmol)のDCM溶液(10mL)に22℃で加えた。得られる溶液を22℃で16時間以上撹拌したまま放置し、その時点でTLCにより出発物質の消費が示された。反応混合物をシリカに吸着させ、シリカゲルクロマトグラフィー(0→5% MeOH/DCM)で精製し、29mg(収率67%)のSL_0504を澄明な油として得た。1H NMR (300 MHz, DMSO−d6) δ 8.32 (d, J= 8.7 Hz, 2H), 7.56 (d,J = 8.7 Hz, 2H), 7.21 − 7.13 (m, 3H), 5.65 − 5.60 (m, 2H), 4.57 − 4.53 (m, 4H), 4.38 − 4.35 (m, 2H), 4.05 − 4.01 (m, 2H), 3.72 − 3.69 (m, 2H), 3.62 (t, J= 6.5 Hz, 2H), 3.58 − 3.52 (m, 5H), 3.51 − 3.44 (m, 7H), 3.45 − 3.36 (m, 6H), 3.17 − 3.07 (m, 10H), 1.70 (p,J= 6.7 Hz, 2H), 1.48 (p, J= 6.8 Hz, 2H), 1.41 − 1.22 (m, 4H)。
Figure 0006876002

Figure 0006876002

Figure 0006876002
窒素下、撹拌したSL_0462(550mg、3.19mmol)のDCM溶液(15mL)に、ピリジン(348μL、4.31mmol)及びクロロギ酸4−ニトロフェニル(676mg、3.35mmol)を0℃で加えた。得られる溶液を16時間かけて25℃まで昇温し、その時点でTLCにより出発物質の消費が示された。反応混合物をシリカに吸着させ、シリカゲルクロマトグラフィー(0→30% EtOAc/ヘキサン)で精製し、0.72g(収率67%)のSL_0484を澄明な油として得た。1H NMR (300 MHz, DMSO−d6) δ 8.32 (d,J= 9.2 Hz, 2H), 7.57 (d, J= 9.2 Hz, 2H), 5.99 (dt, J= 15.6, 4.9 Hz, 1H), 5.87 (dt, J = 15.6, 5.8 Hz, 1H), 4.78 (m, 2H), 4.61 (s, 1H), 4.18 (ddd, J= 13.8, 4.6, 1.2 Hz, 1H), 3.98 (m, 1H), 3.74 (ddd, J= 11.4, 8.0, 3.3 Hz, 1H), 3.44 (dt, J= 10.7, 4.7 Hz, 1H), 1.80− 1.61 (m, 2H), 1.54 − 1.37 (m, 4H).MS(ESI+) C1619NaNO7 +に対する計算値[M+Na]+360.4、実測値 360.0。
Figure 0006876002
SL_0212(512mg、1.52mmol)のMeCN溶液(20mL)に、2−(2−(2−アミノエトキシ)エトキシ)エタン−1−オール(226mg、1.52mmol)を加え、次いでNEt3(424μL、3.04mmol)を加えた。得られる黄色溶液を22℃で22時間放置し、その時点でTLC分析により出発物質の完全消費が示された。溶媒を減圧留去し、粗残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(0→10% MeOH/DCM)で精製し、376mg(収率71%)のSL_0485を澄明な油として得た。1H NMR (300 MHz, DMSO−d6) δ 7.17 (t, J =5.7 Hz, 1H), 5.79 (m, 2H), 4.56 (m, 2H), 4.45 (d, J= 4.2 Hz, 2H), 4.13 (dd, J= 13.0, 3.9 Hz, 1H), 3.92 (dd, J= 13.0, 4.3 Hz, 1H), 3.72 (td, J= 9.5, 7.9, 3.4 Hz, 1H), 3.52 − 3.49 (m, 4H), 3.49 − 3.44 (m, 2H), 3.43 − 3.37 (m, 5H), 3.12 (q, J = 5.9 Hz, 2H), 1.75 − 1.57 (m, 2H), 1.55 − 1.1 (m, 2H)。
Figure 0006876002
ピリジン(57μL、0.7mmol)及びクロロギ酸4−ニトロフェニル(111mg、0.55mmol)を、窒素下、撹拌したSL_0485(182mg、524μmol)のDCM溶液(10mL)に0℃で加えた。得られる溶液を22時間かけて25℃まで昇温し、その時点でTLCにより出発物質の消費が示された。反応混合物をシリカに吸着させ、シリカゲルクロマトグラフィー(0→100% EtOAc/ヘキサン)で精製し、240mg(収率89%)のSL_0493を澄明な油として得た。1H NMR (300 MHz, DMSO−d6) δ 8.32 (d, J = 9.2 Hz, 2H), 7.56 (d, J= 9.2 Hz, 2H), 7.18 (t, J=5.5 Hz, 1H), 5.81 (dd, J= 15.3, 4.3 Hz, 1H), 5.73 (dd, J = 15.3, 4.9 Hz, 1H), 4.57 (m, 1H), 4.45 (d, J=4.0Hz, 2H), 4.36 (m, 2H), 4.13 (m, 1H), 3.91 (dd, J= 13.0, 4.3 Hz, 1H), 3.71 (m, 3H), 3.58 (m, 2H), 3.53 (m, 2H), 3.42 (t, J= 5.9 Hz, 3H), 3.13 (q, J= 5.9 Hz, 2H), 1.77− 1.56 (m, 2H), 1.53 − 1.41 (m, 4H). MS (ESI+) C2332NaN211 +に対する計算値[M+Na]+ 535.2,実測値535.2。
SL_0493(220mg、429μmol)のTHF溶液(15mL)にJ1454T(117mg、451μmol)を加えてからトリエチルアミン(120μL、859μmol)を加えたところ、濁った溶液を形成する(NEt3・HCl沈殿)。得られる懸濁液を22℃で撹拌したまま2時間放置し、その時点でTLC分析により出発物質の完全消費が示された。溶媒を減圧留去し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(0→100% EtOAc/ヘプタン)で精製し、164mg(収率64%)のSL_0495を澄明な油として得た。1H NMR (300 MHz, DMSO−d6) δ 7.17 (t,J= 5.6 Hz, 2H), 5.78 (m, 2H), 4.58 (m, 1H), 4.45 (m, 2H), 4.13 (dd, J= 13.1, 3.8 Hz, 1H), 4.04 (m, 2H), 3.91 (dd, J= 13.0, 4.3 Hz, 1H), 3.72 (ddd, J= 11.4,
Figure 0006876002
7.9, 3.4 Hz, 1H), 3.62 (t, J= 6.6 Hz, 2H), 3.55 (dd, J=5.6, 3.9 Hz, 2H), 3.52 − 3.44 (m, 8H), 3.43 − 3.34 (m, 7H), 3.12 (m, 4H), 1.78 − 1.58 (m, 4H), 1.55 − 1.42 (m, 6H), 1.42 − 1.25 (m, 4H). MS (ESI+) C2242ClN29 +に対する計算値[M − THP + H]+ 513.26,実測値513.2。
Figure 0006876002
撹拌子が装備された20mLマイクロウェーブバイアルに、SL_0495(150.0mg、251μmol)、PPTS(6.3mg、25μmol)及びEtOH(15mL)を加えた。得られる溶液をマイクロウェーブで50℃にて60分加熱し、その時点で分析により出発物質の完全消費が示された。溶媒を減圧留去し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(0→10% MeOH/DCM)で精製し、120mg(収率93%)のSL_0497を澄明な油として得た。1H NMR (300 MHz, DMSO−d6) δ 7.17 (d, J= 5.6 Hz, 1H), 7.12 (d, J= 5.7 Hz, 1H), 5.80 (dt, J= 15.6, 4.5 Hz, 1H), 5.68 (dt, J= 15.6, 5.7 Hz, 1H), 4.74 (t, J= 5.5 Hz, 1H), 4.44 (d, J= 5.2 Hz, 2H), 4.04 (m, 2H), 3.94 (m, 2H), 3.62 (t, J = 6.6 Hz, 2H), 3.55 (m, 2H), 3.52 − 3.43 (m, 8H), 3.43 − 3.34 (m, 6H), 3.11 (m, 4H), 1.70 (m, 2H), 1.49 (p, J= 6.8 Hz, 2H), 1.43 − 1.24 (m, 4H). MS (ESI+) C2242ClN29 +に対する計算値[M+H]+ 513.26,実測値513.2。

Figure 0006876002
ピリジン(87μL、1.1mmol)及びクロロギ酸4−ニトロフェニル(86mg、429μmol)を、窒素下、撹拌したSL_0497(110mg、214μmol)のDCM溶液(10mL)に22℃で加えた。得られる溶液を22℃で1時間以上撹拌したまま放置し、その時点でTLCにより出発物質の消費が示された。反応混合物をシリカに吸着させ、シリカゲルクロマトグラフィー(0→5% MeOH/DCM)で精製し、141mg(収率97%)のSL_0498を淡黄色の油として得た。1H NMR (300 MHz, DMSO−d6) δ 8.31 (m, 2H), 7.56 (m, 2H), 7.27 − 7.07 (m, 2H), 6.03 − 5.82 (m, 2H), 4.76 (m, 2H), 4.50 (m, 2H), 4.03 (s, 2H), 3.70 − 3.25 (m, 18H), 3.11 (q, J= 7.8 Hz, 4H), 1.76 − 1.61 (m, 2H), 1.54 − 1.43 (m, 2H), 1.42 − 1.26 (m, 2H). MS (ESI+) C2945ClN313 +に対する計算値[M+H]+ 678.26,実測値678.2。
Figure 0006876002

Figure 0006876002
SL_0498(120mg、177μmol)のMeCN溶液(15mL)に、2−(2−(2−アミノエトキシ)エトキシ)エタン−1−オール(26mg、177μmol)を加え、次いでNEt3(74μL、531μmol)を加えた。得られる黄色溶液を22℃で16時間放置し、その時点でTLC分析により出発物質の完全消費が示された。溶媒を減圧留去し、粗残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(0→10% MeOH/DCM)で精製し、106mg(収率87%)のSL_0503を澄明な油として得た。1H NMR (300 MHz, DMSO−d6) δ 7.22 − 7.12 (m, 3H), 5.79 (m, 2H), 4.55 (t, J= 5.5, 1H), 4.47 − 4.43 (m, 4H), 4.04 (t, J= 4.8 Hz, 2H), 3.62 (t, J= 6.6 Hz, 2H), 3.55 (t, J= 4.8 Hz, 2H), 3.52 − 3.45 (m, 14H), 3.44 − 3.36 (m, 10H), 3.16 − 3.06 (m, 6H), 1.70 (p, J= 6.7 Hz, 2H), 1.49 (p, J=6.9 Hz, 2H), 1.42 − 1.25 (m, 4H). MS (ESI+) C2955ClN313 +に対する計算値[M+H]+ 688.34,実測値688.3。
Figure 0006876002
ピリジン(59μL、727μmol)及びクロロギ酸4−ニトロフェニル(59mg、291μmol)を、窒素下、撹拌したSL_0503(100mg、145μmol)のDCM溶液(10mL)に22℃で加えた。得られる溶液を22℃で16時間以上撹拌したまま放置し、その時点でTLCにより出発物質の消費が示された。反応混合物をシリカに吸着させ、シリカゲルクロマトグラフィー(0→10% MeOH/DCM)で精製し、93mg(収率75%)のSL_0505を帯黄色の油として得た。1H NMR (300 MHz, DMSO−d6) δ 8.32 (d, J= 9.2 Hz, 2H), 7.56 (d,J= 9.2 Hz, 2H), 7.18 (m, 3H), 5.78 (s, 2H), 4.45 (s, 4H), 4.38 − 4.34 (m, 2H), 4.06 − 4.00 (m, 2H), 3.72 − 3.68 (m, 2H), 3.62 (t, J= 6.6 Hz, 2H), 3.58 − 3.52 (m, 6H), 3.52 − 3.45 (m, 8H), 3.44−3.33 (m, 8H), 3.17−3.07 (m, 6H), 1.70 (p, J=6.6Hz, 2H), 1.48 (p, J=6.9Hz, 2H), 1.42 − 1.25 (m, 4H). MS (ESI+) C3658ClN417 +に対する計算値[M+H]+ 853.35,実測値853.30。

イブルチニブ−クロロアルカンの合成:
Figure 0006876002

Figure 0006876002

SL_0460を、Turetsky,A.,Kim,E.,Kohler,R.H.,Miller,M.A.,Weissleder,R.Sci Rep.2014,4,4782にしたがって、市販の後半段階中間体である((R)−3−(4−フェノキシフェニル)−L−(ピペリジン−3−イル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−4−アミン)から合成した。

イブルチニブ−CA合成の基本手順:
SL_0460(10μmol)のDMF溶液(5mL)に、適切なクロロアルカンの4−ニトロフェニルカルバマート(10μmol)を加え、次いでEt3N(50μmol)を22℃で加えた。得られる黄色溶液を22℃で16時間放置し、その時点で溶媒を減圧留去し、粗残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(0→20% MeOH/DCM)で精製し、イブルチニブ−CA複合体を澄明な油として得た。
Figure 0006876002
HPLC純度(254nm)96%超。MS (ESI+) C4460ClN810 +に対する計算値[M+H]+ 895.41,実測値895.52。
Figure 0006876002


HPLC純度(254nm)99%超。MS (ESI+) C4254ClN88 +に対する計算値[M+H]+ 833.38,実測値833.28。
Figure 0006876002
HPLC純度(254nm)99%超。MS (ESI+) C4458ClN89 +に対する計算値[M+H]+ 877.40,実測値877.40。
Figure 0006876002
HPLC純度(254nm)99%超。MS (ESI+) C4458ClN89 +に対する計算値[M+H]+ 877.40,実測値877.64。
Figure 0006876002
HPLC純度(254nm)99%超。MS (ESI+) C4967ClN912 +に対する計算値[M+H]+ 1008.46,実測値1008.50。
Figure 0006876002
HPLC純度(254nm)99%超。MS (ESI+) C4967ClN912 +に対する計算値[M+H]+ 1008.46,実測値1008.50。
Figure 0006876002
HPLC純度(254nm)96%超。MS (ESI+) C5680ClN1016 +に対する計算値[M+H]+ 1183.54,実測値1183.50。
Figure 0006876002
HPLC純度(254nm)99%超。MS (ESI+) C5680ClN1016 +に対する計算値[M+H]+ 1183.54,実測値1183.97。
触媒溶液調製の基本手順:
Figure 0006876002
操作はすべてアルゴン雰囲気下で実施する。液体窒素での凍結脱気を3サイクル行って水を脱気した。

Pd−oDANPHOS(1:8)溶液4mMの例
o−DANPHOS(188mg、0.32mmol、純度97%)を密封バイアルに入れ、撹拌子を装備した。空気を排気し、バイアルにアルゴンを充填した(3回繰り返し)。脱気水(9mL)をカニューレを介して加えたところ、澄明溶液が生成された。別の密封バイアルにNa2PdCl4(11.8mg、0.04mmol)を入れて空気を排気し、バイアルにアルゴンを充填した(3回繰り返し)。脱気水(1mL)を固体Na2PdCl4に加えたところ、茶色の溶液が生成された。茶色の水溶液のNa2PdCl4(1mL、11.8mg/mL)溶液を、撹拌したホスフィン溶液に加えたところ、澄明な黄色溶液が生成された。澄明な黄色溶液のPd−o−DANPHOS錯体を30分混合し、アルゴン下、密封バイアルに(1mLずつ)移した。原液を遮光し室温で保存した。
実施例29
BIRB796複合体
Figure 0006876002
S31(Chem.Biol.Drug.Des.2009,74,547−559)(900mg、3.75mmol)のDCM溶液(100mL)と、水溶性飽和NaHCO3(100mL)との二相性混合物を激しく撹拌し、そこにホスゲン溶液(10.7mL、トルエン中15wt%、15.0mmol)を0℃で加えた。25分後、有機層を分離し、MgSO4で乾燥させ、濃縮した。得られる黄色油をTHF(50mL)に溶解させ、S33(J Med.Chem.2002,45,2994−3008)(1.26g、4.09mmol)とDIPEA(1.94mL、11.2mmol)とのTHF溶液(100mL)に22℃で加えた。窒素下、得られる溶液を22時間撹拌した。真空下で溶媒を除去し、粗反応混合物をシリカゲルクロマトグラフィー(0→20% MeOH/DCM)で精製し、1.41g(収率70%)のS34を白色固体として得た。1H NMR (300 MHz, DMSO−d6) δ 8.73 (s, 1H), 8.65 (s, 1H), 8.15 (dd, J= 7.0, 1.9 Hz, 1H), 8.06 (t, J= 1.8 Hz, 1H), 7.93 (ddd, J= 8.1, 2.3, 1.2 Hz, 1H) 7.87 (m, 1H), 7.84 (q, J = 1.4 Hz, 1H), 7.72 (t,J= 7.9 Hz, 1H), 7.58 − 7.48 (m, 2H), 7.48 (d, J= 8.4 Hz, 1H), 6.94 (d, J =8.4 Hz, 1H), 6.37 (s, 1H), 4.24 (t, J= 5.6 Hz, 2H), 3.65− 3.50 (m, 4H), 2.83 (t, .J=5.6 Hz, 2H), 2.53 (dd, J= 5.6, 3.7 Hz, 4H), 1.27 (s, 9H); 13C NMR (75 MHz, CD3OD) δ 164.3, 156.9, 154.5, 141.0, 138.7, 132.1, 132.0, 131.6, 130.2, 128.8, 128.1, 127.4, 126.9, 126.5, 125.25, 123.5, 123.1, 119.0, 114.3, 105.5, 100.3, 67.6, 67.2, 58.7, 55.2, 33.4, 30.6; MS (ESI+) C313563 +に対する計算値[M+H]+ 539.28,実測値539.29。
Figure 0006876002
窒素下、乾燥させた(トルエン(25mL)と3回共沸乾燥)S34(1.36g、2.52mmol)の乾燥THF溶液(100mL)を0℃(氷浴)で撹拌し、そこにLiAlH4(25.3mL、25.3mmol)のエーテル溶液1Mを加えた。得られる溶液を16時間かけて22Cに昇温し、その時点でHPLCにより出発物質の消費が示された。反応混合物を冷却して0℃に戻し、ゆっくりと0.2mLのH2Oに次いで15%KOH水溶液(2mL)を加え、最後にH2O(5mL)を加えて反応を停止させた。(H2発生に注意すること!)。得られる懸濁液を0℃で30分撹拌してろ過した。ろ過ケーキをさらなるTHF(5mL)で洗浄し、合わせた有機物をMgSO4で乾燥させて溶媒を真空下で除去し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(0→30% MeOH/DCM)で精製して、700mg(収率51%)のS35を黄色固体として得た。1H NMR (300 MHz, CD3OD) δ 8.45 − 8.10 (m, 1H), 7.86 − 7.66 (m, 1H), 7.59 − 7.44 (m, 4H), 7.43 − 7.33 (m, 3H), 6.82 (d, J= 8.3 Hz, 1H), 6.42 (s, 1H), 4.26 (t, J= 5.4 Hz, 2H), 3.83 (s, 2H), 3.80 −3.56 (m, 4H), 2.93 (t, J= 5.2 Hz, 1H) 2.75 − 2.47 (m, 4H), 1.33 (s, 9H); 13C NMR (75 MHz, CD3OD) δ 163.5, 156.0, 154.0, 145.1, 139.7, 138.9, 131.4, 130.6, 128.4, 127.9, 127.3, 127.0, 126.4, 125.6, 125.4, 124.2, 123.5, 122.9, 105.5, 97.1, 67.7, 67.2, 58.6, 55.2, 46.2, 33.3, 30.8; MS (ESI+) C313963 +に対する計算値[M+H]+ 543.31,実測値543.28。
Figure 0006876002
S35(14.0mg、25.8μmol)とNCT−TFP(20.2mg、28.4μmol)のDMF溶液(3mL)に、Et3N(18.0μL、129μmol)を加え、得られる溶液を22℃で12時間撹拌し、その時点でHPLC分析により出発物質の消費が示された。反応混合物をC18カラムに直接担持させ、分取HPLC(C18、5→95% MeCN/H2O、0.05%TFA)で精製した。溶媒を凍結乾燥によって除去し、30.0mgのBIRB796−NCT(S36)(収率107%)を濃青色固体として得た。1H NMR (300 MHz, CD3OD) δ 8.26 (d, J=8.2Hz, 2H), 8.15 (dd, J= 8.2, 1.8 Hz, 1H), 7.83 (d,J = 1.8 Hz, 1H), 7.77 (dd, J= 7.3, 2.1 Hz, 1H), 7.56−7.48 (m, 4H), 7.47 − 7.42 (m, 1H),7.43 − 7.33 (m, 2H), 6.91 (d, J= 8.4 Hz, 1H), 6.56 (s, 2H), 4.69 (s, 2H), 4.57 (dd, J= 5.8, 3.7 Hz, 2H), 3.93 (br. S, 4H), 3.79 (dd, J= 5.5, 4.0 Hz, 2H), 3.68 (dt, J= 8.8, 5.6 Hz, 4H), 3.52 (t, J = 5.7 Hz, 8H), 3.03 − 2.88 (m, 4H), 2.77 − 2.69 (m, 4H), 2.10 − 1.98 (m, 4H), 1.96 −1.85 (m, 4H), 1.82 − 1.71 (m, 4H), 1.30 (s, 9H); MS (ESI+) C667187 +に対する計算値[M+H]+ 1087.54,実測値1087.74。
BIRB796−CA合成の基本手順:
S35(10μmol)のDMF溶液(5mL)に、適切なクロロアルカンの炭酸4−ニトロフェニル(10μmol)を加え、次いでEt3N(50μmol)を22℃で加えた。得られる黄色溶液を22℃で16時間放置し、その時点で溶媒を真空下で除去し、粗残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(0→30% MeOH/DCM)で精製し、BIRB−CA複合体を澄明または(帯)黄色の油として得た。
Figure 0006876002
1H NMR (300 MHz, CD3OD) δ 8.29 − 8.25 (m, 1H), 7.86 − 7.70 (m, 1H), 7.60 − 7.25 (m, 7H), 6.89 (d, J= 8.3 Hz, 1H), 6.41 (s, 1H), 4.36 (s, 2H), 4.33 (t, J = 5.4 Hz, 2H), 4.17 − 4.07 (m, 4H), 3.76 − 3.70 (m, 4H), 3.66 − 3.58 (m, 4H), 3.58 − 3.49 (m, 10H), 3.49 − 3.39 (m, 3H), 3.24 (t, J= 5.5 Hz, 2H), 2.97 (t, J= 5.4 Hz, 2H), 2.74 − 2.55 (m, 4H), 1.74 (dq, J = 7.9, 6.5 Hz, 2H), 1.65 − 1.50 (m, 2H), 1.50 − 1.36 (m, 4H), 1.33 (s, 9H); 13C NMR (75 MHz, CD3OD) δ 163.6, 159.1, 158.9, 159.0, 154.2, 142.5, 139.7, 139.0, 131.6, 130.7, 128.3, 128.0, 127.3, 127.0, 126.5, 125.5, 125.4, 124.4, 123.5, 123.0, 105.6, 97.1, 72.2, 71.5, 71.2, 71.2, 70.9, 70.5, 67.7, 67.3, 65.3, 65.1, 58.7, 55.2, 45.7, 45.1, 41.7, 33.7, 33.7, 30.8, 30.5, 27.7, 26.5; MS (ESI+) C4971ClN711 +に対する計算値[M+H]+ 968.49,実測値968.74。
Figure 0006876002
1H NMR (300 MHz, CD3OD) δ 8.31 − 8.25 (m, 1H), 7.81 − 7.76 (m, 1H), 7.57 − 7.51 (m, 1H), 7.51 − 7.47 (m, 2H), 7.47 − 7.36 (m, 4H), 6.90 (d, J= 8.3 Hz, 1H), 6.40 (s, 1H), 5.69 − 5.58 (m, 2H), 4.62 (d, J = 4.4 Hz, 2H), 4.56 (d, J = 4.2 Hz, 2H), 4.41 − 4.25 (m, 4H), 3.77 −3.70 (m, 4H), 3.62−3.52 (m, 5H), 3.51 − 3.41 (m, 5H), 3.24 (t, J= 5.5 Hz, 2H), 3.00 (t, J = 5.4 Hz, 2H), 2.81−2.64 (m, 4H), 1.74 (dq, J=8.1, 6.6 Hz, 2H), 1.65−1.51 (m, 2H), 1.49− 1.35 (m, 4H), 1.33 (s, 9H); 13C NMR (75 MHz, CD3OD) δ 163.7, 158.9, 158.6, 156.1, 154.2, 142.5, 139.7, 139.0, 131.6, 130.7, 129.4, 129.2, 128.3, 128.0, 127.3, 127.1, 126.5, 125.6, 125.4, 124.5, 123.5, 123.0, 105.6, 97.3, 72.2, 71.2, 71.2, 70.9, 67.6, 67.2, 61.7, 61.5, 58.7, 55.2, 45.7, 45.2, 41.7, 33.7, 33.4, 30.8, 30.5, 27.7, 26.5; MS (ESI+) C4765ClN79 +に対する計算値[M+H]+ 906.45,実測値906.59。
Figure 0006876002
1H NMR (300 MHz, CD3OD) δ 8.31 − 8.24 (m, 1H), 7.83 − 7.77 (m, 1H), 7.57 − 7.31 (m, 7H), 6.90 (d, J = 8.3 Hz, 1H), 6.41 (s, 1H), 5.63 (m, 2H), 4.59 (d, J = 4.1 Hz, 2H), 4.36 (s, 2H), 4.34 (t, J = 5.5 Hz, 2H), 4.09 (t, J = 4.7 Hz, 2H), 4.01 (d, J = 3.9 Hz, 2H), 3.82 − 3.66 (m, 4H), 3.61 − 3.35 (m, 12H), 3.25 (t, J = 5.6 Hz, 2H), 2.98 (t, J = 5.4 Hz, 2H), 2.77 − 2.59 (m, 4H), 1.74 (dq, J = 8.0, 6.6 Hz, 2H), 1.66 − 1.51 (m, 2H), 1.51 − 1.35 (m, 4H), 1.33 (s, 9H); MS (ESI+) C4969ClN710 +に対する計算値[M+H]+ 950.48,実測値950.64。
Figure 0006876002
1H NMR (300 MHz, CD3OD) δ 8.30 − 8.25 (m, 1H), 7.89 − 7.70 (m, 1H), 7.61 − 7.30 (m, 7H), 6.90 (d, J = 8.3 Hz, 1H), 6.41 (s, 1H), 5.82 − 5.67 (m, 2H), 4.54 − 4.45 (m, 2H), 4.37 (s, 2H), 4.33 (t, J = 5.4 Hz, 2H), 4.16 − 4.09 (m, 2H), 3.96 − 3.90 (m, 2H), 3.75 − 3.67 (m, 4H), 3.60 − 3.52 (m, 7H), 3.53 − 3.38 (m, 5H), 3.25 (t, J = 5.5 Hz, 2H), 2.98 (t, J = 5.4 Hz, 2H), 2.77− 2.49 (m, 4H), 1.74 (dq, J = 7.9, 6.5 Hz, 2H), 1.56 (q, J = 6.8 Hz, 2H), 1.51 − 1.36 (m, 4H), 1.33 (s, 9H); MS (ESI+) C4969ClN710 +に対する計算値[M+H]+ 950.48,実測値950.88。
Figure 0006876002
1H NMR (300 MHz, CD3OD) δ 8.30 − 8.25 (m, 1H), 7.81 − 7.73 (m, 1H), 7.54 − 7.34 (m, 7H), 6.89 (d, J= 8.3 Hz, 1H), 6.41 (s, 1H), 5.68 − 5.59 (m, 2H), 4.65 − 4.58 (m, 2H), 4.58 −4.51 (m, 2H), 4.35 (s, 2H), 4.32 (t, J= 5.4 Hz, 2H), 4.16 − 4.12 (m, 2H), 3.75 − 3.70 (m, 4H), 3.67 − 3.62 (m, 2H), 3.61 − 3.53 ’(m, 9H), 3.53 − 3.46 (m, 5H), 3.44 (d, J= 6.5 Hz, 2H), 3.29 − 3.20 (m, 4H), 2.97 (t, J= 5.4 Hz, 2H), 2.71 − 2.63 (m, 4H), 1.74 (dq, J= 8.0, 6.6 Hz, 2H), 1.57 (p, J= 6.9 Hz, 2H), 1.50 − 1.36 (m, 4H), 1.33 (s, 9H); MS (ESI+) C5478ClN813 +に対する計算値[M+H]+ 1081.54,実測値1081.71。
Figure 0006876002
1H NMR (300 MHz, CD3OD) δ 8.30 − 8.23 (m, 1H), 7.87 − 7.71 (m, 1H), 7.59 − 7.33 (m, 7H), 6.89 (d, J= 8.3 Hz, 1H), 6.41 (s, 1H), 5.84 − 5.72 (m, 2H), 4.53 − 4.45 (m, 4H), 4.36 (s, 2H), 4.32 (t, J= 5.4 Hz, 2H), 4.14 (t, J= 4.8 Hz, 2H), 3.79 − 3.69 (m, 4H), 3.64 (t, J= 4.8 Hz, 2H), 3.61 − 3.53 ’(m, 9H), 3.53 − 3.46 (m, 5H), 3.44 (d, J= 6.5 Hz, 2H), 3.25 (td, J= 5.6, 2.2 Hz, 4H), 2.97 (t, J= 5.4 Hz, 2H), 2.78 − 2.56 (m, 4H), 1.74 (dq, J= 8.0, 6.6 Hz, 2H), 1.57 (p,J = 6.9 Hz, 2H), 1.50 − 1.36 (m, 4H), 1.33 (s, 9H); MS (ESI+) C5478ClN813 +に対する計算値[M+H]+ 1081.54,実測値1081.80。
Figure 0006876002
1H NMR (300 MHz, CD3OD) δ 8.30 − 8.24 (m, 1H), 7.83 − 7.74 (m, 1H), 7.61 − 7.25 (m, 7H), 6.89 (d, J = 8.3 Hz, 1H), 5.68 (s, 2H), 5.74 − 5.65 (m, 2H), 4.68 − 4.56 (m, 4H), 4.37 (s, 2H), 4.32 (t, J = 5.4 Hz, 2H), 4.23 − 4.03 (m, 4H), 3.78 − 3.68 (m, 4H), 3.68 − 3.39 (m, 27H),3.30 − 3.15 (m, 7H), 2.97 (t, J = 5.4 Hz, 2H), 2.74 − 2.56 (m, 4H), 1.75 (dq, J = 8.1, 6.6 Hz, 2H), 1.65 − 1.51 (m, 2H), 1.51 − 1.35 (m, 4H), 1.33 (s, 9H); MS (ESI+) C6191ClN917 +に対する計算値[M+H]+ 1256.82,実測値1256.96。
Figure 0006876002
1H NMR (300 MHz, CD3OD) δ 8.31 − 8.25 (m, 1H), 7.84 − 7.77 (m, 1H), 7.61 − 7.23 (m, 7H), 6.91 (d, J = 8.4 Hz), 6.41 (s, 1H), 5.82 (s, 2H), 4.50 (s, 4H), 4.38 (s, 2H), 4.34 (t, J = 5.4 Hz, 2H), 4.15 (t, J = 4.7 Hz, 4H), 3.81 − 3.70 (m, 4H), 3.70 − 3.37 (m, 27H), 3.29 − 3.16 (m, 6H), 2.98 (t, J = 5.3 Hz, 2H), 2.77 − 2.50 (m, 4H), 1.74 (dt, J = 7.9, 6.6 Hz, 2H), 1.57 (q, J = 6.8 Hz, 2H), 1.52 − 1.36 (m, 4H), 1.33 (s, 9H); MS (ESI+) C6191ClN917 +に対する計算値[M+H]+ 1256.82,実測値1256.96。
ポナチニブ複合体
修飾ポナチニブの合成(J.Med.Chem.2010,53,4701−4719から一部を修正した手順)。
Figure 0006876002

臭化塩(S55)8(685mg、2.41mmol)とS56(880mg、3.62mmol)のDCM溶液(25mL)を撹拌し、そこに炭酸カリウム(333mg、2.41mmol)を22℃で加えた。得られる懸濁液を22℃で60時間撹拌し、その時点でTLCにより出発物質の消費が示された。溶液を約20mLに濃縮してシリカに吸着させ、シリカゲルクロマトグラフィー(0→10% MeOH/DCM)で精製し、915mg(収率85%)のS57を帯黄色の油として得た。1H NMR (300 MHz, DMSO−d6) δ 8.52 (dd, J= 8.6, 2.4 Hz, 1H), 8.41 (d, J= 2.4 Hz, 1H), 8.08 (d, J= 8.6 Hz, 1H), 6.79 (s, 1H), 3.74 (m, 2H), 2.94 (m, 2H), 2.46 − 2.35 (m, 8H), 2.27 (m, 2H), 1.53 (m, 2H), 1.37 (s, 9H); MS (ESI+) C2030344 +に対する計算値[M+H]+ 447.22,実測値447.25。
Figure 0006876002
撹拌子を装備した250mLフラスコに、Pd/C(80mg、10wt%)を投入した。窒素雰囲気下、S57(840mg、1.88mmol)のMeOH溶液(75mL)をカニューレを介して加え、フラスコの排気/水素ガスの充填を行った(3回)。水素雰囲気下(H2バルーン)、懸濁液を50分激しく撹拌し、その時点でHPLCにより出発物質の消費が示された。反応混合物をセライトパッドを介してろ過し、ケーキを別のMeOH200mLで洗浄した。得られるメタノール溶液を濃縮し、735mg(収率94%)のS58を帯黄色の油として得た。1H NMR (300 MHz, DMSO−d6,メジャー回転異性体を報告) δ 7.28 (d, J= 8.3 Hz, 1H), 6.85 (d, J= 2.3 Hz, 1H), 6.81 − 6.72 (m, 2H), 5.43 (s, 2H), 3.38 (s, 2H), 2.91 (m, 2H), 2.40 − 2.8 (m, 10H), 1.58 − 1.45 (m, 2H), 1.37 (s, 9H); MS (ESI+) C2032342 +に対する計算値[M+H]+ 417.25、実測値417.66。
Figure 0006876002
3−ヨード−4−メチル安息香酸(1.28g、4.88mmol)をDCM(25mL)に懸濁させた。塩化オキサリル(420μL、4.9mmol)に次いで、DMF(1滴)を加えた。反応物を22℃で撹拌し、気体発生が約60分観察され、その時点でHPLC分析により出発物質のほぼ完全な消費が示された。溶媒を真空下で除去し、1.38g(収率101%)の橙色油として得た(保存時、凝脂)。この物質は、それ以上精製または特性解析を行わずに次工程で使用した。
S58(400mg、0.96mmol)、DMAP(11.7mg、96.0μmol)、及びDIPEA(214μL、1.20mmol)のTHF溶液(20mL)に、S59(270mg、0.96mmol)を加えた。得られる溶液を22℃で90分撹拌し、その時点でHPLCにより出発物質の消費が示された。真空下で溶媒を除去し、残渣をDCM(10mL)に再溶解させ、シリカゲルクロマトグラフィー(0→10% MeOH/DCM)で精製し、391mg(収率62%)のS59を帯黄色固体として得た。1H NMR (300 MHz, DMSO−d6) δ 10.49 (s, 1H), 8.42 (d, J= 1.8 Hz, 1H), 8.17 (d, J= 2.2 Hz, 1H), 8.04 (dd, J= 8.6, 2.2 Hz, 1H), 7.92 (dd, J= 7.9, 1.8 Hz, 1H), 7.70 (d, J= 8.5 Hz, 1H), 7.48 (d, J= 8.0 Hz, 1H), 6.80 (t, J= 6.0 Hz, 1H), 3.57 (s, 2H), 2.93 (q, J= 6.6 Hz, 2H), 2.50 − 2.30 (DMSO−d5とオーバーラップ, m, 12H), 1.54 (m, 2H), 1.37 (s, 9H); MS (ESI+) C28373IN43 +に対する計算値[M+H]+ 661.19,実測値661.27。
Figure 0006876002
S60(250mg、0.38mmol)、Pd(PPh34(21.9mg、19μmol)、CuI(5.4mg、28μmol)、及び3−エチニルイミダゾ[1,2−b]ピリダジン(S61)(J Med.Chem.2010,53,4701−4719)(70mg、0.49mmol)を、セプタで密封したバイアルに入れ、撹拌子を装備した。バイアルを排気し、アルゴンで充填した(3回)。乾燥DMF(5mL)に次いで、ジシクロヘキシルアミン(113μL、0.57mmol)を加えた。懸濁液を22℃で15時間撹拌し、その時点でHPLCにより出発物質の消費が示された。水(20mL)を加え、反応物をEtOAcで抽出した(25mL、3回)。有機層を合わせてNa2SO4で乾燥させ、ろ過して濃縮した。粗物質を分取HPLC(C18、3→97% MeCN/H2O、0.05% TFA)で精製し、208mg(収率81%)のS62を黄色の油として得た。1H NMR (300 MHz, DMSO−d6) δ 10.56 (s, 1H), 8.72 (dd, J= 4.4, 1.6 Hz, 1H), 8.26 (dd, J= 9.2, 1.6 Hz, 1H), 8.23 (s, 1H), 8.21 (d, J= 2.0 Hz, 2H), 8.07 (dd, J= 8.6, 2.2 Hz, 1H), 7.95 (dd, J= 8.0, 1.9 Hz, 1H), 7.70 (d, J= 8.5 Hz, 1H), 7.54 (d, J= 8.2 Hz, 1H), 7.39 (dd, J= 9.2, 4.5 Hz, 1H), 3.57 (s, 2H), 2.93 (q, J= 6.6 Hz, 2H), 2.61 (s, 3H), 2.48 − 2.35, (m, 7H), 2.35 − 2.20 (m, 3H), 1.54 (q, J= 6.9 Hz, 2H), 1.37 (s, 9H); 13C NMR (75 MHz, DMSO−d6,) δ 164.5, 155.5, 145.0, 143.5, 139.6, 138.2, 138.1 , 132.18, 132.0, 131.2, 130.1, 130.0, 128.5, 127.3 (q, J=32 Hz), 126.11, 126.07, 123.5, 122.5, 119.0, 117.2 (q, J= 6.5 Hz), 111.7, 96.4, 81.1, 77.3, 57.4, 55.3, 52.6, 38.3, 28.2, 26.5, 20.4; MS (ESI+) C3641373 +に対する計算値[M+H]+ 676.31,実測値676.30。
Figure 0006876002
S62(150mg、166μmol)を開裂カクテル(100:20:1のDCM:TFA:TiPS)15mLで1時間処理し、その時点でHPLCにより出発物質の消費及び単一生成物への変換が示された。溶媒を真空下で除去して140mg(収率92%)のS63を黄色固体として得、さらなる特性解析及び精製を行わずに次工程で使用した。
ポナチニブ−CA合成の基本手順:
S63(10μmol)のDMF溶液(5mL)に、適切なクロロアルカンの炭酸4−ニトロフェニル(CA−T1炭酸4−ニトロフェニル(S87)合成)3(10μmol)を加え、次いでEt3N(50μmol)を22℃で加えた。得られる黄色溶液を22℃で16時間放置し、その時点で溶媒を真空下で除去し、粗残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(0→30% MeOH/DCM)で精製し、ポナチニブ−CA複合体を澄明または(帯)黄色の油として得た。
Figure 0006876002
1H NMR (300 MHz, CD3OD) δ 8.63 (dd, J= 4.4, 1.5 Hz, 1H), 8.16 (dd, J = 6.6, 2.1 Hz, 2H), 8.10 (dd, J = 9.2, 1.6 Hz, 1H), 8.06 (s, 1H), 7.95 (dd, J = 8.5, 2.2 Hz, 1H), 7.90 (dd, J = 8.0, 2.0 Hz, 1H), 7.77 (d, J = 8.7 Hz, 1H), 7.48 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 7.36 (dd, J = 9.3, 4.6 Hz, 1H), 4.20 − 4.12 (m, 4H), 3.75 − 3.64 (m, 6H), 3.63 (s, 4H), 3.60 − 3.50 (m, 8H), 3.47 (t, J = 6.5 Hz, 2H), 3.35 − 3.26 (m, 2H, CD2HODとオーバラップ), 3.15 (t, J = 6.7 Hz, 2H), 2.66 (s, 4H), 2.63 − 2.54 (m, 6H), 2.50 (t, J = 7.7 Hz, 2H), 1.74 (h, J = 7.0 Hz, 4H), 1.58 (p, J = 6.8 Hz, 2H), 1.51 − 1.29 (m, 4H); MS (ESI+) C4965C1F389 +に対する計算値[M+H]+ 1001.45,実測値1001.57。
Figure 0006876002
1H NMR (300 MHz, CD3OD) δ 8.65 (dd, J = 4.5, 1.6 Hz, 1H), 8.19 (d, J = 2.0 Hz, 1H), 8.17 − 8.15 (m, 1H), 8.13 (dd, J = 9.2, 1.6 Hz, 1H), 8.10 (s, 1H), 8.03 (dd, J = 2.0, 8.5 Hz, 1H), 7.91 (dd, J = 8.0, 2.0 Hz, 1H), 7.77 (d, J = 8.5 Hz, 1H), 7.50 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 7.39 (dd, J = 9.5, 4.2 Hz, 1H), 5.85 (m, 2H), 4.53 (m, 5H), 4.22 − 4.11 (m, 5H), 3.79 (s, 3H), 3.73 − 3.65 (m, 5H), 3.65 − 3.56 (m, 14H), 3.55 − 3.49 (m, 9H), 3.49 − 3.43 (t, J = 6.5 Hz, 4H), 3.28−3.15 (m, 8H), 3.14−3.01 (m, 1H), 2.67 (s, 3H), 2.61−2.41 (m, 1H), 1.94 (m, 2H), 1.76 (p, J = 6.8 Hz, 2H), 1.60 (q, J = 6.9 Hz, 2H), 1.50 − 1.28 (m, 4H); (ESI+) C6185C1F31015 +に対する計算値[M+H]+ 1289.58,実測値1289.79。
ポナチニブとトリ−アミド−クロロアルカンの複合体
トリ−アミド−クロロアルカンリンカーの合成
Figure 0006876002

Figure 0006876002
tert−ブチル3−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ)プロパノアート(1.00g、4.27mmol)のDCM溶液(100mL)を撹拌し、そこにクロロギ酸4−ニトロフェニル(1.29g、6.40mmol)に次いでピリジン(1.72mL、21.3mmol)を加えた。得られる濁った溶液を22℃で20時間撹拌し、その時点でTLC分析により出発物質の完全な消費が示された。真空下、反応混合物を約20mLに濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィー(0→40% EtOAc/ヘプタン)で精製し、1.35g(収率79%)のS72を澄明な油として得た。1H NMR (300 MHz, DMSO−d6) δ 8.47 − 8.18 (m, 2H), 7.68 − 7.44 (m, 2H), 4.54 − 4.16 (m, 2H), 3.76 − 3.65 (m, 2H), 3.60 (t, J = 6.2 Hz, 2H), 3.58 − 3.46 (m, 4H), 2.42 (t, J = 6.2 Hz, 2H), 1.39 (s, 9H); 13C NMR (75 MHz, DMSO−d6) δ 170.4, 155.3, 152.0, 145.1, 125.4, 122.5, 79.7, 69.7, 69.6, 68.3, 67.9, 66.2, 35.8, 27.7; MS (ESI+) C1825NNaO9 +に対する計算値[M+Na]+ 422.1,実測値422.1。
Figure 0006876002
S72(820mg、2.05mmol)のMeCN溶液(20mL)に、2−(2−((6−クロロヘキシル)オキシ)エトキシ)エタン−1−アミン塩酸塩(S07)(588mg、2.26mmol)を加え、次いで、トリメチルアミン(1.43mL、10.3mmol)を加えた。得られる黄色溶液を18時間撹拌し、その時点でTLC分析により出発物質の完全消費が示された。反応混合物をほぼ真空下で濃縮してシリカゲルクロマトグラフィー(0→100% EtOAc/ヘプタン)で精製し、674mg(収率68%)のS73を澄明な油として得た。1H NMR (300 MHz, DMSO−d6) δ 7.16 (t, J = 5.5 Hz, 1H), 4.16 − 3.89 (m, 2H), 3.72 − 3.53 (m, 6H), 3.53 − 3.43 (m, 8H), 3.38 (m, 4H), 3.11 (q, J = 6.0 Hz, 2H), 2.41 (t, J = 6.2 Hz, 2H), 1.70 (dq, J = 8.0, 6.5 Hz, 2H), 1.58 − 1.44 (m, 2H), 1.39 (s, 13H); 13C NMR (75 MHz, DMSO−d6) δ 170.4, 156.2, 79.7, 70.2, 69.6, 69.5, 69.4, 69.1, 68.8, 66.2, 63.1, 45.3, 35.8, 32.0, 29.0, 27.7, 26.1, 24.9; MS (ESI+) C2242ClNNaO8 +に対する計算値[M+Na]+ 506.3,実測値506.2。
Figure 0006876002
S73(564mg、1.17mmol)のDCM溶液(20mL)に、TiPS(0.25mL)を加え、次いでTFA(5mL)を加えた。得られる溶液を5時間撹拌し、その時点でTLC分析により出発物質の完全な消費が示された。真空下で溶媒を除去し、粗S74を、それ以上精製せずに以降の工程で使用した。1H NMR (300 MHz, DMSO−d6) δ 7.18 (t, J = 5.5 Hz, 1H), 4.11 − 3.93 (m, 2H), 3.70 − 3.58 (m, 3H), 3.58 − 3.51 (m, 3H), 3.51 − 3.42 (m, 7H), 3.38 (qd, J = 6.8, 1.2 Hz, 5H), 3.11 (q, J = 5.9 Hz, 2H), 2.44 (t, J = 6.3 Hz, 2H), 1.69 (dt, J = 8.0, 6.5 Hz, 2H), 1.49 (p, J = 6.9 Hz, 2H), 1.42− 1.20 (m, 4H); MS (ESI+) C1835ClNO8 +に対する計算値[M+H]+ 428.21,実測値428.49。
Figure 0006876002
アルゴン下、S04(1.20g、6.95mmol)、NosNHBoc(2.10g、6.95mmol)及びPPh3(2.73g、10.4mmol)のTHF溶液(30mL)を0℃で撹拌し、そこにDIAD(2.33mL、11.1mmol、94%)を加えた。得られる黄色溶液を22℃に昇温して17時間撹拌し、その時点でTLC分析により出発物質の完全な消費が示された。真空下で溶媒を除去し、粗残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(0→50% EtOAc/ヘプタン)で精製し、2.3g(収率73%)のS75を黄色油として得た。1H NMR (300 MHz, DMSO−d6) δ 8.26 − 8.12 (m, 1H), 8.12 − 8.03 (m, 1H), 8.03 − 7.78 (m, 2H), 5.90 − 5.63 (m, 2H), 4.27 (m, 2H), 4.29 − 4.23 (m, 2H), 4.20 − 4.07 (m, 1H), 4.02 −3.86 (m, 1H), 3.72 (ddd, J= 11.4, 8.0, 3.2 Hz, 1H), 3.51−3.34 (m, 1H), 1.84− 1.54 (m, 2H),1.53 − 1.38 (m, 4H), 1.23 (s, 9H); 13C NMR (75 MHz, DMSO−d6) δ 149.5, 147.1, 135.5, 131.7, 131.4, 130.1, 126.6, 124.8, 97.2, 84.9, 65.9, 61.3, 48.1, 30.2, 27.2, 25.0, 19.1; MS (ESI+) C202928+に対する計算値[M+H]+ 457.16,実測値457.4。
Figure 0006876002
S75(690mg、1.51mmol)及び4−メルカプト安息香酸(466mg、3.02mmol)の溶液に、炭酸カリウム(836mg、6.05mmol)を加え、得られる懸濁液を40℃に昇温して20時間撹拌し、その時点でTLC分析により出発物質の完全な消費が示された。真空下で溶媒を除去し、粗残渣を水(50mL)とDCM(50mL)に分離させた。有機層を除去し、水層をさらなるDCM(50mL)で2回抽出した。有機層を合わせてMgSO4で乾燥させ、濃縮した。粗残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(0→40% EtOAc/ヘプタン)で精製し、219mg(収率53%)のS76を黄色油として得た。1H NMR (300 MHz, DMSO−d6) δ 6.98 (s, 1H), 5.80 − 5.44 (m, 2H), 4.58 (d, J = 4.0 Hz, 1H), 4.19 − 3.99 (m, 1H), 3.88 (dd, J = 12.7, 3.7 Hz, 1H), 3.72 (ddd, J = 11.4, 7.9, 3.3 Hz, 1H), 3.53 (s, 2H), 3.43 (dd, J= 11.0, 5.7 Hz, 1H), 1.85− 1.54 (m, 2H), 1.45 (d, J = 5.3 Hz, 4H), 1.37 (s, 9H); 13C NMR (75 MHz, DMSO−d6) δ 155.4, 129.9, 126.8, 97.1, 77.6, 66.3, 61.2, 41.1, 30.2, 28.2, 25.0, 19.1; MS (ESI+) C1425NNaO4 +に対する計算値[M+Na]+ 294.2,実測値294.0。
Figure 0006876002
S76(218mg、803μmol)のMeOH溶液(10mL)に、PPTS(20mg、80μmol)を加えた。反応混合物を45℃で90分維持し、その時点でTLC分析により出発物質の完全な消費が示された。真空下で溶媒を除去し、粗残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(0→70% EtOAc/ヘプタン)で精製し、150mg(収率99%)のS77を澄明な油として得た。1H NMR (300 MHz, DMSO−d6) δ 6.94 (m, 1H), 5.81 − 5.27 (m, 2H), 4.65 (s, 1H), 3.90 (s, 2H), 3.51 (m, 2H), 1.37 (s, 9H); 13C NMR (75 MHz, DMSO−d6) δ 155.5, 131.0, 126.8, 77.5, 60.9, 41.2, 28.3; MS (ESI+) C918NO3 +に対する計算値[M+H]+ 188.13,実測値188.17。
Figure 0006876002
S77(150mg、801μmol)のトルエン溶液(5mL)を0℃で撹拌し、そこにDPPA(270mg、961μmol)に次いでDBU(145μL、961μmol)を加えた。反応混合物を0℃で2時間維持し、その時点でTLC分析により出発物質の完全な消費が示され、反応混合物をシリカゲルカラムに直接担持させてシリカゲルクロマトグラフィー(0→50% EtOAc/ヘプタン)で精製し、100mg(収率59%)のS78を澄明な油として得た(1H NMRによる異性体の混合比、約5:1)。1H NMR (300 MHz, CD2Cl2,メジャー(直鎖型)異性体を報告) δ 5.95 − 5.51 (m, 2H), 4.70 (br. s, 1H), 3.76 (m, 4H), 1.43 (s, 9H); MS (ESI+) C183383 +に対する計算値[2M+H]+ 425.26,実測値425.45。
Figure 0006876002
THF(10mL)とH2O(2.5mL)の混合液に溶解させたS78(100mg、471μmol)の溶液を撹拌し、そこに樹脂に結合させたPPh3(1g、1.4〜2.00mmol/g)を加えた。反応混合物を22℃で18時間維持し、その時点でTLC分析により出発物質の完全な消費が示された。固体をろ去して溶媒を真空下で除去し、粗残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(0→90% MeOH/DCM)で精製し、21mg(収率24%)のS79を帯黄色固体として得た。1H NMR (300 MHz, DMSO−d6) δ 6.89 (m, 1H), 5.72 −5.51 (m, 1H), 5.51−5.31 (m, 1H), 3.48 (m, 2H), 3.08 (dd, J = 5.1, 1.5 Hz, 3H), 1.35 (s, 9H)。
Figure 0006876002
S79(20.0mg、107μmol)のDMF溶液(2mL)に、S74(57.4mg、134μmol)、HATU(51.0mg、134μmol)、及びEt3N(75μL、537μmol)のDMF溶液(4mL)を加えた。得られる黄色溶液を40℃で2時間撹拌し、その時点でTLC分析により出発物質の完全な消費が示された。真空下で溶媒を除去し、粗残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(0→30% MeOH/DCM)で精製し、50mg(収率78%)のS80を澄明な油として得た。1H NMR (300 MHz, DMSO−d6) δ 7.96 (t, J = 5.7 Hz, 1H), 7.19 (t, J = 5.7 Hz, 1H), 6.94 (t, J = 5.6 Hz, 1H), 5.50 − 5.44 (m, 2H), 4.02 (m, 2H), 3.69 − 3.44 (m, 16H), 3.42 − 3.34 (m, 4H), 3.11 (q, J = 5.8 Hz, 4H), 2.32 (t, J = 6.5 Hz, 2H), 1.70 (p, J = 6.8Hz, 2H), 1.49 (p, J = 6.9Hz, 2H), 1.37 (s, 9H), 1.35− 1.27 (m, 2H), 1.18 (t, J = 7.4 Hz, 2H); MS (ESI+) C2751ClN39 +に対する計算値[M+H]+ 596.33,実測値596.48。
Figure 0006876002
S80(50mg、84μmol)を開裂カクテル(100:10:1のDCM−TFA−TiPS)10mLに溶解させ、反応混合物を22℃で40分撹拌し、その時点でTLC分析により出発物質の完全な消費が示された。真空下で溶媒を除去し、粗残渣を精製し、Et2Oで洗浄して41mg(収率80%)のS81を澄明な油として得た。1H NMR (300 MHz, DMSO−d6) δ 8.08 (t, J = 5.9 Hz, 1H), 7.78 (s, 3H), 7.18 (t, J = 5.5Hz 1H), 6.85−5.71 (m, 1H), 5.62−5.45 (m, 1H), 4.04 (m, 2H), 3.71 (t, J = 5.5 Hz, 2H), 3.66 − 3.53 (m, 6H), 3.53 − 3.41 (m, 12H), 3.11 (q, J = 6.0 Hz, 4H), 2.33 (d, J = 6.4 Hz, 2H), 1.71 (p, J = 6.7 Hz, 2H), 1.49 (p, J = 6.8 Hz, 2H), 1.35 (m, 4H); MS (ESI+) C2243ClN37 +に対する計算値[M+H]+ 496.28,実測値496.36。
Figure 0006876002
ビス(2,5−ジオキソピロリジン−1−イル)3,3’−(エタン−1,2−ジイルビス(オキシ))ジプロピオナート(52.0mg、131μmol)及びNEt3(9μL、0.07mmol)のTHF溶液(20mL)を激しく撹拌し、そこにS81(20mg、33μmol)のTHF溶液(5mL)を15分かけて22℃で加えた。添加完了時、反応混合物をさらに40分反応させた。真空下で溶媒を除去して粗残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(0→30% MeOH/DCM)で精製し、MSで所望のm/zを与えた画分を採取し、22mg(収率86%)のS82を澄明な油として得た。MS (ESI+) C3458ClN414 +に対する計算値[M+H]+ 781.36,実測値781.53。
Figure 0006876002
S63(8.5mg、9.3μmol)、S82(22mg、28μmol)、及びEt3N(7μL、48μmol)のDMF溶液(3mL)を22℃で90分撹拌し、その時点でTLC分析により出発物質の完全な消費が示された。真空下で溶媒を除去して粗残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(0→100% MeOH/DCM)で精製し、5.5mg(収率48%)のS83を澄明な油として得た。1H NMR (300 MHz, CD3OD) δ 8.63 (dd, J = 4.3, 1.5 Hz, 1H), 8.16 (dd, J = 10.0, 2.1 Hz, 1H), 8.10 (dd, J = 9.2, 1.6 Hz, 1H), 8.06 (s, 1H), 7.94 (dd, J = 8.5, 2.2 Hz, 1H), 7.90 (dd, J =8.0, 2.0 Hz, 1H), 7.77 (d, J = 8.5 Hz, 1H), 7.49 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 7.36 (dd, J = 8.9, 4.1 Hz, 1H), 5.63 m, 2H), 4.15 (t, J = 4.8 Hz, 2H), 3.84 − 3.76 (m, 4H), 3.75 − 3.69 (m, 6H), 3.67 (m, 3H), 3.63 − 3.54 (m, 11H), 3.54 − 3.50 (m, 2H), 3.47 (t, J = 6.5 Hz, 2H), 3.28 (m, 2H), 3.26 − 3.16 (m, 2H), 2.66 (s, 3H), 2.51 (d, J = 25.9 Hz, 8H), 2.43 (td, J = 6.1, 4.4 Hz, 6H), 1.85 − 1.66 (m, 4H), 1.58 (p, J = 6.8 Hz, 2H), 1.50 − 1.33 (m, 4H); MS (ESI+) C6185C1F31012 +に対する計算値[M+H]+ 1241.60,実測値1241.81。
ポナチニブとall−PEGクロロアルカンの複合体の合成
all−PEGクロロアルカンリンカー(最適化していない)の合成
Figure 0006876002
2下、撹拌子が装備された炉乾燥済み500mLフラスコに、NaH(988mg、60%、鉱油分散、24.7mmol)に次いでTHF(100mL)を0℃で投入した。未希釈の2,2’−((オキシビス(エタン−2,1−ジイル))ビス(オキシ))ビス(エタン−1−オール)(4.0g、21mmol)を10分かけて滴下した後、(E)−1,4−ジブロモ−2−ブテン(2.20g、10.3mmol)含有THF(10mL)を1度に加えた。反応混合物を20時間かけて22℃に昇温し、1mLのAcOHを加えて反応混合物の反応を停止させた。反応混合物をセライトに吸着させ、溶媒を真空下で除去した。シリカゲルクロマトグラフィー(0→30% MeOH/DCM)による精製を実施した。ビス−アルキル化生成物(m/z=441.26 [M+H]+)で富化した画分を合わせて濃縮し、開始ジオール、モノアルキル化生成物及びビス−アルキル化生成物の混合物(SL_0718)として360mgの黄色油を得た。
混合物SL_0718(360mg)をDCM(25mL)に溶解させ、クロロギ酸4−ニトロフェニル(494mg、2.45mmol)、次いでピリジン(0.66mL、8.2mmol)で処理した。得られる溶液を22℃で撹拌したまま18時間放置した後、シリカゲルカラムに直接担持させた。シリカゲルクロマトグラフィー(0→10% MeOH/DCM)で精製した。少量画分から不純物のない(clean)27mgの生成物SL_0723を帯黄色油として得た。1H NMR (300 MHz, DMSO−d6) δ 8.44 − 8.12 (m, 2H), 7.78 − 7.30 (m, 2H), 5.71 − 5.68 (m, 2H), 4.53 (t, J = 5.4 Hz), 4.41 − 4.25 (m, 2H), 3.91 (m, 4H), 3.71 − 3.65 (m, 2H), 3.55 (m, 2H), 3.52 − 3.42 (m, 24H), 3.41 − 3.36 (m, 2H); MS (ESI+) C2743NNaO14 +に対する計算値[M+Na]+ 628.26,実測値628.24。
SL_0723(27mg、45μmol)のMeCN溶液(7mL)に、J1454T(13mg、50μmol)を加え、次いでNEt3(31μL、0.22mmol)を加えた。得られる黄色溶液を20時間反応させ、その時点でTLC分析により出発物質の完全消費が示された。真空下で溶媒を除去し、粗残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(0→10% MeOH/DCM)で精製し、26mg(収率85%)のSL_0725を黄色油として得た。1H NMR (300 MHz, DMSO−d6) δ 7.18 (t, J = 5.1 Hz, 1H), 5.74 −5.67 (m, 2H), 4.55 (t, J = 5.4 Hz, 1H), 4.07 − 4.01 (m, 2H), 3.99 − 3.84 (m, 4H), 3.62 (t, J = 6.6 Hz, 2H), 3.58 − 3.44 (m, 32H), 3.44 − 3.33 (m, 6H), 3.11 (q, J = 5.9 Hz, 2H), 1.70 (p, J = 6.7 Hz, 2H), 1.49 (p, J = 6.8 Hz, 2H), 1.43 − 1.22 (s, 4H); MS (ESI+) C3161ClNO1+に対する計算値[M+H]+ 690.38,実測値690.62。
SL_0725(26mg、38μmol)のDCM溶液(10mL)を撹拌し、そこにクロロギ酸4−ニトロフェニル(15mg、75μmol)を加えた後、ピリジン(15μL、0.19mmol)を加えた。得られる溶液を22℃で20時間撹拌し、その時点でTLC分析により出発物質の完全な消費が示された。真空下、反応混合物を約5mLに濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィー(0→10% MeOH/DCM)で精製して5mg(収率16%)のSL_0727を澄明な油として得た。1H NMR (300 MHz, DMSO−d6) δ 8.45 − 8.14 (m, 2H), 7.67 − 7.45 (m, 2H), 7.18 (t, J = 5.6 Hz, 1H), 5.72 (m, 2H), 4.47 − 4.27 (m, 2H), 4.03 (t, J = 4.8 Hz, 2H), 3.99 − 3.87 (m, 4H), 3.78 − 3.66 (m, 2H), 3.62 (t, J = 6.7 Hz, 2H), 3.58 − 3.42 (m, 30H), 3.42 − 3.33 (m, 4H), 3.10 (q, J = 6.0 Hz, 2H), 1.70 (p, J = 6.7 Hz, 2H), 1.47 (q, J = 6.9 Hz, 2H), 1.41 (s, 4H); MS (ESI+) C3864ClN217 +に対する計算値[M+H]+ 855.39,実測値855.54。
S63(5mg、6μmol)のDMF溶液(5mL)に、SL_0727(5mg、6μmol)を加えた後、1滴のNEt3を滴下した。得られる帯黄色溶液を22℃で撹拌したまま19時間放置し、その時点でHPLC分析により出発物質の完全な消費が示された。真空下、反応混合物を濃縮してシリカゲルクロマトグラフィー(0→30% MeOH/DCM)で精製し、5.5mg(収率74%)のSL_0729を澄明な油として得た。1H NMR (300 MHz, CD3OD) δ 8.63 (dd, J = 4.5, 1.6 Hz, 1H), 8.16 (dd, J = 7.7, 2.1 Hz, 2H), 8.09 (dd, J = 9.3, 1.6 Hz, 1H), 8.06 (s, 1H), 7.96 (dd, J = 8.5, 2.0 Hz, 1H), 7.90 (dd, J = 8.0, 2.0 Hz, 1H), 7.76 (d, J = 8.8 Hz, 1H), 7.48 (d, J = 8.2 Hz, 1H), 7.36 (dd, J = 9.2, 4.4 Hz, 1H), 5.79 (m, 2H), 4.34 − 4.07 (m, 4H), 4.07 − 3.86 (m, 4H), 3.71 − 3.59 (m, 28H), 3.59 − 3.50 (m, 12H), 3.50 − 3.43 (m, 2H), 3.27 (t, J = 5.5 Hz, 2H), 3.14 (q, J = 8.4, 7.5 Hz, 2H), 2.76 − 2.67 (br. S. 4H), 2.65 (s, 3H), 2.62 − 2.50 (m, 6H), 1.75 (p, J = 6.6 Hz, 4H), 1.58 (p, J = 6.7 Hz, 2H), 1.51 − 1.26 (m, 4H); MS (ESI+) C6391ClF3815 +に対する計算値[M+H]+ 1291.63,実測値1291.79。
本出願で言及されたすべての刊行物及び特許は、参照により本明細書に組み入れられたものとする。本発明の範囲及び趣旨から逸脱することなく、記載にある特徴及び実施例のさまざまな変更、再組合わせ、及び変形は当業者に明らかとなろう。具体的な実施形態が記載されてはいるが、主張される本発明がそのような具体的な実施形態に不当に限定されるべきではないことを理解されるべきである。事実、関連分野の当業者には明白である、記載されている様態及び実施形態に関する各種変更は、以下の請求項の範囲内であることが意図される。

本発明のまた別の態様は、以下のとおりであってもよい。
〔1〕二重機能性、細胞透過性、細胞適合性のある、官能基選択的に開裂可能な組成物であって、
(a)細胞相互作用要素と、
(b)捕捉要素と、
(c)前記細胞相互作用要素を前記捕捉要素に共有結合により係留させるリンカーとを含み、ここで、前記リンカーは、官能基選択的に開裂可能な部分を含む、前記組成物。
〔2〕前記細胞相互作用要素は、低分子またはペプチドである、前記〔1〕に記載の組成物。
〔3〕前記捕捉要素は、酵素に対する共有結合性基質である、前記〔1〕に記載の組成物。
〔4〕前記捕捉要素はハロアルカン基を含む、前記〔3〕に記載の組成物。
〔5〕前記捕捉要素は親和性要素である、前記〔1〕に記載の組成物。
〔6〕前記官能基選択的に開裂可能な部分は、アリル−ヘテロ原子基、プロパルギル−ヘテロ原子基からなる群から選択される、前記〔1〕に記載の組成物。
〔7〕前記官能基選択的に開裂可能な部分は、アリルエーテル、アリルアミン、アリルエステル、アリルアミド、アリル尿素、アリルカルボナート、及びアリルカルバマートからなる群から選択されるアリル−ヘテロ原子基を含む、前記〔6〕に記載の組成物。
〔8〕前記官能基選択的に開裂可能な部分は、アリルカルバマート基を含む、前記〔7〕に記載の組成物。
〔9〕前記官能基選択的に開裂可能な部分は、プロパルギルエーテル、プロパルギルアミン、プロパルギルエステル、プロパルギルアミド、プロパルギル尿素、プロパルギルカルボナート、及びプロパルギルカルバマートからなる群から選択されるプロパルギル−ヘテロ原子基を含む、前記〔6〕に記載の組成物。
〔10〕式
Z−L 1 −Y−L 2 −Q、
[式中、Zは細胞相互作用要素であり、Qは捕捉要素であり、ここで、L 1 とL 2 は、互いに独立して任意選択で存在する独立リンカー部分であり、Yは官能基選択的に開裂可能な部分である]を含む、前記〔1〕に記載の組成物。
〔11〕(a)前記〔1〕〜〔10〕のいずれか一項に記載の二重機能性、細胞透過性、細胞適合性のある、官能基選択的に開裂可能な組成物を細胞に投与すること、
(b)細胞相互作用要素を、対応する細胞内の細胞内標的に結合させること、
(c)前記細胞を溶解させて細胞溶解物を作製すること、及び
(d)前記捕捉要素を、表面に固定化された捕捉物質と接触させること
を含む、方法。
〔12〕(e)前記官能基選択的に開裂可能なリンカーを対応する官能基選択性物質と接触させ、これにより、前記細胞相互作用要素と前記結合した細胞内標的を、前記表面から遊離させることをさらに含む、前記〔10〕に記載の方法。
〔13〕(a)前記〔1〕〜〔10〕のいずれか一項に記載の二重機能性、細胞透過性、細胞適合性のある、官能基選択的に開裂可能な組成物と、
(b)(i)細胞、
(ii)細胞内標的、
(iii)表面に提示された捕捉物質、及び
(iv)官能基選択性物質の4つのうち1つ以上
とを含む、系。
〔14〕遷移金属で開裂可能なリンカーによって第2の分子成分に連結された第1の分子成分を含む、官能基選択的に開裂可能な組成物と、遷移金属イオン、または遷移金属イオンを放出できる官能基選択性物質とを、前記遷移金属イオンによって前記開裂可能なリンカーが開裂される条件下で接触させ、前記第1の分子成分を前記第2の分子成分から遊離させること
を含む、方法。
〔15〕前記官能基選択的に開裂可能な部分は、アリル−ヘテロ原子基及びプロパルギル−ヘテロ原子基からなる群から選択される、前記〔14〕に記載の方法。
〔16〕前記アリル−ヘテロ原子基は、アリルエーテル、アリルアミン、アリルエステル、アリルアミド、アリル尿素、アリルカルボナート、及びアリルカルバマートからなる群から選択される、前記〔15〕に記載の方法。
〔17〕前記アリル−ヘテロ原子基はアリルカルバマート基を含む、前記〔16〕に記載の方法。
〔18〕前記官能基選択的に開裂可能な部分は、プロパルギルエーテル、プロパルギルアミン、プロパルギルエステル、プロパルギルアミド、プロパルギル尿素、プロパルギルカルボナート、及びプロパルギルカルバマートからなる群から選択されるプロパルギル−ヘテロ原子基を含む、前記〔15〕に記載の方法。
〔19〕前記遷移金属はPdまたはRuである、前記〔14〕に記載の方法。
〔20〕前記条件はタンパク質性の環境を含む、前記〔14〕に記載の方法。
〔21〕前記タンパク質性の環境は細胞または細胞溶解物である、前記〔20〕に記載の方法。
〔22〕前記第1の分子成分は細胞相互作用要素であり、細胞内標的に結合している、前記〔14〕に記載の方法。
〔23〕前記第2の分子成分は捕捉要素であり、捕捉物質に結合している、前記〔14〕に記載の方法。
〔24〕前記捕捉物質は表面に結合している、前記〔23〕に記載の方法。
〔25〕(a)(i)相互作用要素と、
(ii)捕捉要素と、
(iii)官能基選択的に開裂可能な部分を含んでいる、前記相互作用要素を前記捕捉要素に共有結合で係留させるリンカーと
を含む組成物を、細胞溶解物または生化学組成物に投与すること、
(b)前記相互作用要素と対応する標的とが結合できるようにすること、
(c)前記捕捉要素を、表面に固定化された捕捉物質と接触させること
を含む、方法。
〔26〕(d)前記官能基選択的に開裂可能なリンカーを対応する官能基選択性物質と接触させ、これにより、前記相互作用要素と前記結合した標的を前記表面から遊離させることをさらに含む、前記〔10〕に記載の方法。

Claims (5)

  1. (a)二重機能性、細胞透過性、細胞適合性のある、官能基選択的に開裂可能な組成物を細胞に投与する工程ここで、前記組成物は
    (i)細胞標的タンパク質と非共有結合することができる相互作用要素と、
    (ii)ハロアルカン基を含む捕捉要素と、
    (iii)アリル−ヘテロ原子基、プロパルギル−ヘテロ原子基からなる群から選択される官能基選択的に開裂可能な部分を含む、前記相互作用要素を前記捕捉要素に共有結合により係留させるリンカーとを含む、
    (b)前記相互作用要素を、対応する細胞標的タンパク質に結合させる工程
    (c)前記細胞を溶解させて細胞溶解物を作製する工程、及び
    (d)前記捕捉要素を、表面に固定化された捕捉物質と接触させる工程
    を含む、方法。
  2. (e)前記官能基選択的に開裂可能なリンカーを対応する官能基選択性物質と接触させ、これにより、前記相互作用要素と前記結合した細胞標的タンパク質を、前記表面から遊離させる工程をさらに含む、請求項に記載の方法。
  3. (a)(i)細胞標的タンパク質と非共有結合することができる相互作用要素と、
    iiハロアルカン基を含む捕捉要素と、
    iiiアリル−ヘテロ原子基、プロパルギル−ヘテロ原子基からなる群から選択される官能基選択的に開裂可能な部分を含む、前記相互作用要素を前記捕捉要素に共有結合で係留させるリンカーとを含む組成物を、細胞又は細胞溶解物に投与する工程
    (b)前記相互作用要素を、対応する標的結合させる工程及び
    (c)前記捕捉要素を、表面に固定化された捕捉物質と接触させる工程
    を含む、方法。
  4. (d)前記官能基選択的に開裂可能なリンカーを対応する官能基選択性物質と接触させ、これにより、前記相互作用要素と前記結合した標的を前記表面から遊離させる工程をさらに含む、請求項に記載の方法。
  5. 前記官能基選択的に開裂可能な部分は、アリルカルバマート基を含む、請求項1又は3に記載の方法。
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