JP6875208B2 - 全固体リチウムイオン二次電池用負極原料、負極部材、及び、これらを用いる全固体リチウムイオン二次電池の製造方法 - Google Patents

全固体リチウムイオン二次電池用負極原料、負極部材、及び、これらを用いる全固体リチウムイオン二次電池の製造方法 Download PDF

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Description

本開示は、全固体リチウムイオン二次電池用負極原料、負極部材、及び、これらを用いる全固体リチウムイオン二次電池の製造方法に関する。
Siを含有する合金系活物質(Si合金系活物質)は、炭素系の負極活物質と比較して体積当たりの理論容量が大きいことから、Si合金系活物質を負極に用いたリチウムイオン電池が提案されている。
特許文献1には、Siを活物質として含む負極と、正極と、固体電解質を備えた固体電池の製造方法が開示されている。特許文献1の実施例では、正極、固体電解質、負極の貼り合わせの際に加圧成形する旨記載されている。
特開2013−069416号公報
しかしながら、本発明者らの検討によると、特許文献1で開示されている負極活物質原料としてSi単体を使用した全固体リチウムイオン二次電池で、高い容量を維持するためには、大型の拘束具を用いて電池に高い拘束圧を印加する必要があり、低拘束化しようとすると、容量維持率が低下してしまうという問題が生じることを知見した。
本開示は、上記実情に鑑み、負極活物質としてSiとLiとの合金を含む負極を有し、低い拘束圧でもサイクル特性が良好である全固体リチウムイオン二次電池の製造に適した負極原料、負極部材、及び、これらを用いる全固体リチウムイオン二次電池の製造方法を提供することを目的とする。
本開示の全固体リチウムイオン二次電池用負極原料は、負極活物質原料として密度が1.5g/cm以下であり細孔を有するSi単体を含有する。
本開示の全固体リチウムイオン二次電池用負極原料は、前記細孔を有するSi単体がHeガスを内包する閉気孔を有することが好ましい。
本開示の全固体リチウムイオン二次電池用負極部材は、負極活物質原料として密度が1.5g/cm以下であり細孔を有するSi単体を含有する。
本開示の全固体リチウムイオン二次電池用負極部材は、前記細孔を有するSi単体がHeガスを内包する閉気孔を有することが好ましい。
本開示の製造方法は、負極活物質としてSiとLiとの合金を含む負極を備える全固体リチウムイオン二次電池の製造方法であって、前記負極部材、正極部材、及び、固体電解質部材を備える電池部材を準備する工程と、前記電池部材に通電する通電工程と、を有する。
本開示の全固体リチウムイオン二次電池の製造方法において、前記全固体リチウムイオン二次電池が、更に、正極、固体電解質層、及び負極の配列方向に拘束圧を印加することができる拘束具を備え、前記負極部材と前記固体電解質部材の配列方向に、第1の圧力を印加して当該負極部材と当該固体電解質部材を圧着する工程と、前記拘束具の拘束圧を第1圧力より低い第2圧力に調整する工程と、を有することが好ましい。
本開示の全固体リチウムイオン二次電池の製造方法において、前記第2の圧力が7MPa以下であることが好ましい。
本開示によれば、低い拘束圧でサイクル特性が良好である全固体リチウムイオン二次電池の製造に適した負極原料、負極部材、及びこれらを用いる全固体リチウムイオン二次電池の製造方法を提供することができる。
実施例1で成膜されたSi単体膜断面のSEM画像である。 実施例1で成膜されたSi単体膜断面の選択箇所におけるEELSスペクトルである。 実施例1で成膜されたSi単体膜断面におけるHeガス分布を示す図である。 実施例1のサイクル特性評価用セルにおけるサイクル数と容量の関係を示したグラフである。 実施例2のサイクル特性評価用セルにおけるサイクル数と容量の関係を示したグラフである。 比較例1のサイクル特性評価用セルにおけるサイクル数と容量の関係を示したグラフである。 比較例2のサイクル特性評価用セルにおけるサイクル数と容量の関係を示したグラフである。 比較例3のサイクル特性評価用セルにおけるサイクル数と容量の関係を示したグラフである。 比較例4のサイクル特性評価用セルにおけるサイクル数と容量の関係を示したグラフである。
本開示の全固体リチウムイオン二次電池用負極原料は、負極活物質原料として密度が1.5g/cm以下であり細孔を有するSi単体を含有する。
負極活物質としてSiとLiとの合金を使用するリチウムイオン二次電池では、リチウムイオン二次電池の充電に伴い、負極において、下記式(1)に示すような、いわゆる電気化学的合金化反応が起こる。
式(1) xLi + xe + ySi → LiSi
また、リチウムイオン電池の放電に伴い、負極では、下記式(2)に示すように、前記SiとLiとの合金からLiイオンの離脱反応が起こる。
式(2) LiSi → xLi + xe + ySi
SiとLiとの合金を負極活物質として使用したリチウムイオン二次電池では、上記式(1)及び式(2)に示すLiの挿入・離脱反応に伴う体積変化が大きい。
そのため、電解質として流動性のある電解液ではなく固体電解質を使用する全固体リチウムイオン二次電池では、SiとLiとの合金を含有する負極自体の体積変化に追従可能な固体電解質層と負極の界面を形成することが困難で、当該界面に剥離等が生じる。そのため、主に負極(SiとLiとの合金)の収縮(放電)時に固体電解質と負極との間でLiイオンが移動しにくくなり、当該界面にリチウム金属が析出してしまう。
このような理由から、負極活物質としてSiとLiとの合金(以下、SiLi合金と称する場合がある。)を含有する全固体リチウムイオン二次電池では、低い拘束圧条件では、充放電サイクルを繰り返した場合に容量維持率が低くなると考えられる。
また、上述のように、電池に高い拘束圧を印加することで、負極活物質であるSiLi合金の体積変化による固体電解質層と負極の界面へ影響を低減することはできるが、大型の拘束具を用いる必要があるため、体積当たりの理論容量が大きいSi合金系活物質を使用しても電池全体としてのエネルギー密度を向上することができなかった。
本開示の全固体リチウムイオン二次電池用負極原料及び負極部材においては、負極活物質原料として使用する、密度が1.5g/cm以下であり細孔を有するSi単体が、内部に細孔を有するため、Liとの合金化反応に伴う体積膨張、及び、当該LiとSiの合金からLiが離脱する反応に伴う体積収縮が低減される。そのため、当該負極原料及び負極部材から製造された負極を備える全固体リチウムイオン二次電池では、充放電に伴う負極の体積変化、及び固体電解質層と負極の界面に与える影響を低減することができる。
このような理由から、本開示の負極原料及び負極部材から製造された負極を備える全固体リチウムイオン二次電池では、低い拘束圧であっても、容量維持率を高く保つことができると考えられる。
以下、本開示の負極原料、負極部材、及び、全固体リチウムイオン二次電池の製造方法の順に詳細に説明する。
1.負極原料
本開示の負極原料は、全固体リチウムイオン二次電池の製造に用いる負極原料であって、負極活物質原料として密度が1.5g/cm以下であり細孔を有するSi単体を含有するものであれば特に制限はない。
後述する通電工程において、上述の式(1)の反応により、本開示の負極原料から得られる負極部材中の前記細孔を有するSi単体がLiと合金化されることで、負極活物質としてSiとLiとの合金を含む負極が得られる。
内部に細孔を有さない中実なSi単体では、上記式(1)のLiイオンの挿入反応に伴い、体積は4倍にもなることが知られている。
本開示の負極原料は、負極活物質原料として細孔を有するSi単体を用いるため、Si単体の内部方向に体積膨張を誘導することによって、Liイオンの挿入反応に伴う体積変化を吸収することができるため、負極活物質原料である細孔を有するSi単体と負極活物質であるLiSi合金の体積の変化を低減することが可能となる。
本開示の負極原料が負極活物質原料として含有する前記細孔を有するSi単体は、密度が1.5g/cm以下である。密度が1.5g/cmを超えるSi単体では、細孔が少なすぎるため、合金化に伴う体積変化を充分に吸収することができない。そのため、負極活物質として密度が1.5g/cmを超えるSi単体を含有する負極原料から製造される全固体リチウムイオン二次電池では、充放電に伴う負極の体積変化、及び、固体電解質と負極の界面へ影響を低減することができず、低い拘束圧では、容量維持率を高く保つことができない。
また、エネルギー密度の観点から、前記細孔を有するSi単体は、密度が0.6g/cm以上であってもよいし、1.0g/cm以上であってもよい。
なお、細孔を有さない中実なSi単体の密度は約2.3g/cmである。
本開示において、密度とはSi単体に含まれる細孔(内部の空隙も含む)も体積として含んで計算された密度を指す。密度の測定方法に特に制限はないが、Si単体の質量を、細孔を含むSi単体の体積で割ることにより、算出することができる。例えば、Si単体が膜状である場合には細孔を含むSi単体の体積は、Si単体の面積×Si単体の厚さで算出することができ、Si単体の厚さは、SEMや触針式プロファイリングシステム(商品名:Dektak、BRUKER製)等で測定することができる。また、例えば、Si単体が粒状である場合にはビーズ置換法など、細孔を含むSi単体の体積を計測できる公知の方法で測定することができる。
本開示の負極原料が負極活物質原料として含有するSi単体は、細孔を有する。本開示において、細孔を有するSi単体とは、多数の細孔を有するSi単体であってもよい。
前記細孔のSi単体中における分布にも特に制限はないが、細孔がSi単体中に均一に分布していてもよい。また、前記細孔のサイズにも特に制限はないが、細孔の内径が0.001〜1μmであってもよく、0.001〜0.1μmであってもよい。
前記細孔は、閉気孔であっても開気孔であってもよい。また、前記細孔として、Heガスが内包される閉気孔を有していてもよい。Heガスが内包される閉気孔を有することにより、体積膨張に対する反発力が発生するため、充放電に伴う体積膨張を低減することが可能となる。
前記Si単体が、Heガスが内包される閉気孔を有するか否かの判断方法にも特に制限はないが、STEM−EELS(Scanning Transmission Electron Microscope−Electron Energy Loss Spectroscopy)観察により判断することができる。
本開示の負極原料が負極活物質原料として含有するSi単体の形状にも特に制限はなく、例えば、膜状、粒状等のSi単体があげられる。エネルギー密度の観点から、膜状であってもよい。
また、前記Si単体は、電子伝導性の観点から、Si以外の金属元素である微量のドーパントによりドープされていてもよい。
前記Si単体は、市販のものを使用しても良いし、製造して準備してもよい。当該Si単体の製造方法にも特に制限はないが、Heガスを含有する放電ガスを用いてスパッタ法により製造されたものであってもよい。
負極原料は、負極活物質原料以外に、必要に応じ、導電材、固体電解質、及び、結着剤などの他の原料を含むものであってもよい。
負極活物質原料として密度が1.5g/cm以下であり細孔を有するSi単体を含有する負極原料から製造された負極であれば充放電に伴う体積変化を吸収することができるため、他の成分を含む負極原料から製造された負極であっても、充放電に伴う体積の変化が低減されるためである。
前記導電材としては、アセチレンブラック、カーボンファイバー等の炭素材料を挙げることができる。
前記固体電解質としては、固体電解質結晶、非晶性固体電解質、固体電解質ガラスセラミックスのいずれであってもよく、後述する固体電解質部材の原料と同様のものを用いることができる。
前記結着材としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ブチレンゴム(BR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ポリビニルブチラール(PVB)、アクリル樹脂等を用いることができる。
負極活物質原料以外の成分が少ないほど、得られる電池のエネルギー密度が高くなることから、本開示の負極原料は、負極活物質原料のみを含むものであってもよいし、密度が1.5g/cm以下であり細孔を有するSi単体のみを含むものであってもよい。
また、負極原料は、前記細孔を有するSi単体を含む負極活物質原料、並びに、必要に応じ含有される、導電材、固体電解質、及び、結着剤の原料以外の成分を含んでいてもよく、さらに、後述の負極部材を形成する途中で除去される成分を含んでいてもよい。負極原料中に含まれるが、負極部材を形成する途中で除去される成分としては、溶剤や除去可能な結着剤が挙げられる。除去可能な結着剤としては、負極部材を形成するときには結着剤として機能するが、負極部材を得る工程で焼成することにより分解又は揮散等し除去され、結着剤を含まない負極部材とすることができる、結着剤を用いることができる。そのような除去可能な結着剤としては、ポリビニルブチルフラール、アクリル樹脂等が挙げられる。
2.負極部材
本開示の全固体リチウムイオン二次電池用負極部材は、負極活物質原料として密度が1.5g/cm以下であり細孔を有するSi単体を含有する。負極部材に含有される負極活物質やその他の原料、また好適組成については、1.負極原料において記載したため、記載を省略する。
負極部材を製造する方法にも、特に制限はない。負極活物質原料として使用する密度が1.5g/cm以下であり細孔を有するSi単体を用いた負極部材から製造される負極では、その製造方法に関わらず、充放電に伴う負極全体としての体積変化が小さくなると考えられるためである。
負極部材を形成する方法としては、例えば、前記負極原料の粉末を圧縮成形する方法が挙げられる。負極原料の粉末を圧縮成形する場合には、通常、1〜400MPa程度のプレス圧を負荷する。
また、除去可能な結着剤を含む負極原料の粉末を圧縮成形した後、焼成することにより結着剤を除去する方法や、溶剤及び除去可能な結着剤を含む負極原料の分散液を固体電解質部材の上又は集電体等の他の支持体の上に塗布、乾燥して負極部材の形状に形成した後、焼成することにより結着剤を除去する方法などが挙げられる。
また、本開示の負極部材が、負極活物質原料である密度が1.5g/cm以下であり細孔を有するSi単体膜のみを含むものである場合には、Heガスを含有する放電ガスを用いてスパッタ法により集電体等の他の支持体や後述する固体電解質部材上に成膜してもよい。
3.全固体リチウムイオン二次電池の製造方法
本開示の負極活物質としてSiとLiとの合金を含む負極を備える全固体リチウムイオン二次電池の製造方法は、前記負極部材、正極部材、及び固体電解質部材を備える電池部材を準備する工程と、前記電池部材に通電する通電工程と、を有する。
3−1.負極部材、正極部材、及び固体電解質部材を備える電池部材を準備する工程
負極部材については、2.で説明したため、以下、正極部材、固体電解質部材、及び電池部材の例について述べる。
3−1−1.正極部材
本開示の製造方法において、正極部材は、通常、Liを含有する正極活物質原料を含み、必要に応じ、結着材、固体電解質、及び導電材等の他の正極原料を含む。当該正極部材が、後述する通電工程を経て、全固体リチウム二次電池の正極となる。
本開示においてLiを含有する正極活物質原料は、負極活物質との関係で電池化学反応上の正極として機能し、Liイオンの移動を伴う電池化学反応を進行させる物質であれば、特に制限されず正極活物質原料として用いることができ、従来リチウムイオン電池の正極活物質として知られている物質も、本開示の製造方法において用いることができる。
正極活物質原料としては例えば、リチウム含有金属酸化物が挙げられる。リチウム含有金属酸化物としては、例えば、LiCoO、LiNiO、LiVO、LiNi1/3Co1/3Mn1/3等の岩塩層状型活物質、LiMn、Li(Ni0.5Mn1.5)O等のスピネル型活物質、LiFePO、LiMnPO、LiNiPO、LiCoPO等のオリビン型活物質等を挙げることができる。
前記正極活物質原料の形状は特に限定されないが、膜状であっても粒子状であってもよい。
正極原料中の正極活物質原料の割合は、特に限定されるものではないが、例えば50質量%以上であり、60質量%〜100質量%の範囲内であることが好ましく、70質量%〜100質量%の範囲内であることがより好ましい。
結着材、導電材、固体電解質の原料としては、負極原料で使用する原料と同様のものを用いることができる。
正極部材を形成するための正極原料は、さらに、正極部材を形成する途中で除去される成分を含んでいてもよい。正極原料中に含まれるが、正極部材を形成する途中で除去される成分としては、負極原料に含有させることができる溶剤や除去可能な結着材と同様の成分が挙げられる。
正極部材を形成する方法としては、負極部材を形成する方法と同様の方法が挙げられる。
3−1−2.固体電解質部材
本開示の製造方法において、固体電解質部材は、例えば、固体電解質を含み、必要に応じ、他の成分を含む。当該固体電解質部材が、後述する通電工程を経て、全固体リチウム二次電池の固体電解質層となる。
固体電解質としては、Liイオンの伝導度が高い酸化物系固体電解質、及び硫化物系固体電解質が好ましく用いられる。
前記酸化物系固体電解質としては、例えばLi6.25LaZrAl0.2512、LiPO、LiPON等が挙げられ、前記硫化物系固体電解質としては、例えば、Li11、LiPS、Li、Li13GeP16、Li10GeP12等が挙げられる。
固体電解質部材中の固体電解質の割合は、特に限定されるものではないが、例えば50質量%以上であり、60質量%〜100質量%の範囲内であることが好ましく、70質量%〜100質量%の範囲内であることがより好ましい。
固体電解質部材を形成する方法としては、固体電解質及び必要に他の成分を含む固体電解質層製造用原料の粉末を圧縮成形する方法が挙げられる。固体電解質層製造用原料の粉末を圧縮成形する場合には、通常、負極原料の粉末を圧縮成形する場合と同様に、1〜400MPa程度のプレス圧を負荷する。
また、他の方法としては、固体電解質及び必要に応じ他の成分を含有する固体電解質層製造用原料の溶液又は分散液を用いたキャスト成膜法などを行うことができる。
3−1−3.電池部材
本開示の製造方法において電池部材は、例えば、正極部材、固体電解質部材、及び、負極部材がこの順序で配列され、直接または他の材料からなる部分を介して接合しており、さらに、正極部材上の固体電解質部材が存在する位置とは反対側(正極合材の外方側)、及び、負極部材上の固体電解質部材が存在する位置とは反対側(負極合材の外方側)のうちの片方又は両方の側に、他の材料からなる部分が接合していてもよい配列構造を有する各部の集合体(正極部材−固体電解質部材−負極部材集合体)である。当該電池部材が、後述する通電工程を経て、全固体リチウムイオン二次電池となる。
前記電池部材は、正極部材側から固体電解質部材を経由して負極部材側に至る方向へ通電できる限り、他の材料からなる部分が付属していてもよい。正極部材と固体電解質部材の間には、例えば、LiNbO、LiTi12、LiPOのような被覆層が設けられていても良い。正極部材の外方側及び負極部材の外方側のいずれか一方又は両方の側には、例えば、集電体、外装体が付属していてもよい。
上記電池部材は、典型的には、正極部材、負極部材、及び、前記正極部材と前記負極部材の間に配置された固体電解質部材が直接接合し、且つ、正極部材の外方側及び負極部材の外方側のいずれにも他の材料からなる部分が接合していない配列構造を有する集合体である。
電池部材を作製する方法は、特に限定されるものではなく、例えば、粉体圧縮成形用の圧縮シリンダ内に、負極原料の粉末を投入し均一な厚みに堆積して負極原料粉末層を形成し、その負極原料粉末層の上に、固体電解質粉末及び必要に応じ他の成分を含む固体電解質層製造用原料の粉末を投入し均一な厚みに堆積して固体電解質層製造用原料粉末層を形成し、その固体電解質層製造用原料粉末層の上に、Liを含有する正極活物質を含む正極原料の粉末を投入し均一な厚みに堆積して正極原料粉末層を形成した後、このようにして形成された3層の粉末堆積層を有する粉末堆積体を一度に圧縮成形することにより、電池部材を作製してもよい。
また、固体電解質部材、負極部材、及び、正極部材は、粉体圧縮成形以外の手法で作製してもよい。具体的な方法は、本明細書中で上記したとおりである。例えば、固体電解質部材は、固体電解質を含む固体電解質層製造用原料の溶液又は分散液を用いたキャスト成膜法や、ダイコーターによる塗工法により成形してもよい。負極部材及び正極部材は、例えば、除去可能な結着剤を含む負極原料又は正極原料分散液を固体電解質部材の上に塗布することにより塗膜を形成した後、この塗膜を加熱して塗膜から結着剤を除去する方法や、あるいは、除去可能な結着剤を含む負極原料又は正極原料の粉末を圧縮成形して正極部材又は負極部材の形状とした後、この成形体を加熱して塗膜から結着剤を除去する方法により形成してもよい。負極部材及び正極部材については、電極密度を高めるため、圧縮成形前に予め緻密化プレスを行ってもよい。
また、負極部材及び正極部材は、固体電解質部材以外の支持体上に形成してもよい。その場合、当該支持体から負極部材及び正極部材を剥離し、剥離した負極部材又は正極部材を、固体電解質部材の上に接合する。
3−2.電池部材に通電する通電工程
本開示の製造方法は、正極部材側から固体電解質部材を経由して負極部材側に至る方向へ通電する工程を有する。すなわち、通電により、正極活物質中のLiイオンが、固体電解質部材を介して、負極部材中の前記Si単体に挿入される電気化学的合金化反応が進行し、負極部材が負極活物質としてSiとLiとの合金を含む負極となることで、全固体リチウムイオン二次電池を得ることができる。
前記電池部材に通電する方法にも特に制限はないが、効率よく上記式(1)に示すような、電気化学的合金化反応を進行させるため、電流密度を0.001〜10mA/cmの範囲としてもよいし、電圧を0.01〜0.1V(vs Li/Li)の範囲としてもよい。
3−3.拘束具を備える全固体リチウムイオン二次電池の製造方法
正極、固体電解質層、及び負極の配列方向に拘束圧を印加することができる拘束具を備える全固体リチウムイオン二次電池を製造する場合には、更に、少なくとも前記負極部材と前記固体電解質部材を重ねた状態で、第1の圧力を印加して当該負極部材と当該固体電解質部材を圧着する工程と、前記拘束具の拘束圧を第1の圧力より低い第2の圧力に調整する工程、を有していてもよい。
相対的に高い第1の圧力を印加して負極部材と固体電解質部材を圧着する工程により、予め強固な負極部材と固体電解質部材の界面を形成することによって、相対的に低い第2の圧力で全固体リチウムイオン二次電池を拘束した場合であっても、得られる全固体リチウムイオン二次電池の容量維持率を高く保つことが可能となる。
強固な負極部材と固体電解質部材の界面を形成できることから、前記第1の圧力は100MPa以上であってもよく、200MPa以上であってもよい。
前記拘束具の拘束圧を第1の圧力より低い第2の圧力に調整する工程は、前記電池部材に通電する通電工程の前であってもよいし、通電工程の後であってもよいが、負極活物質原料であるSi単体が、負極活物質であるSiとLiとの合金になる際の体積変化による、負極部材と固体電解質部材の界面への影響を低減することができることから、通電工程前であってもよい。
拘束具を小型化できることから、前記第2の圧力が7MPa以下であってもよい。
4.全固体リチウムイオン二次電池
二次電池として機能するものであれば本開示の負極原料及び負極部材より製造される全固体リチウムイオン二次電池の構成に特に制限はないが、典型的には、正極、負極、並びに、当該正極及び当該負極の間に配置される固体電解質層を備え、正極−固体電解質層−負極集合体として構成される。この正極−固体電解質層−負極集合体は、正極、固体電解質及び負極がこの順序で配列され、直接または他の材料からなる部分を介して接合していてもよく、さらに、正極上の固体電解質層が存在する位置とは反対側(正極の外方側)、及び、負極上の固体電解質層が存在する位置とは反対側(負極の外方側)のうちの片方又は両方の側に、他の材料からなる部分が接合していてもよい配列構造を有する各部の集合体である。
上記の正極−固体電解質層−負極集合体に、集電体等の他の部材を取り付けることにより、全固体電池の機能的単位であるセルが得られ、当該セルをそのまま全固体リチウムイオン電池として用いてもよいし、複数のセルを集積して電気的に接続することによりセル集合体として、本開示の全固体リチウムイオン電池として用いてもよい。
正極−固体電解質層−負極集合体の正極と負極それぞれの厚みは、通常0.1μm〜10mm程度であり、固体電解質の厚みは、通常0.01μm〜1mm程度である。
全固体リチウムイオン二次電池は拘束具を備えていてもよい。拘束具を用いて、第2圧力によって全固体リチウムイオン二次電池を拘束することにより、容量維持率を更に高くすることが可能となるが、拘束具を備えると電池が大型化するため、求める性能に応じて、拘束具の有無やサイズを決定すればよい。
4−1.負極
本開示の負極部材より製造される負極は、負極活物質としてSiとLiとの合金を含む。
前述のように電池部材に通電することによって、負極部材では、上記式(1)に示すSi単体に対するLiイオンの挿入反応が進行し、負極活物質としてSiとLiとの合金を含む負極を備える全固体リチウムイオン二次電池となる。
負極活物質原料として密度が1.5g/cm以下である多孔質Si単体使用しているため、Liの挿入量が少ない放電状態では、SiLi合金である負極活物質中には、負極活物質原料に由来する細孔が存在する。
SiLi合金である負極活物質中にLiイオンが挿入する充電反応では、体積膨張を負極活物質の細孔内に誘導することによって、充電に伴う負極の体積変化を低減することができる。
また、SiLi合金であるLiイオンが離脱する放電反応では、離脱したLiの体積に相当する細孔が負極活物質内に回復するため、放電に伴う負極を体積変化が低減することができる。
このように本開示の負極原料、及び、負極部材より製造される負極では充放電に伴う体積変化が少なく、負極と固体電解質層の界面の破損が抑制されるため、本開示の負極原料、及び、負極部材から製造された負極を備える全固体リチウムイオン二次電池では、低い拘束圧であっても、容量維持率を高く保つことができる。
負極活物質として含有するSiとLiとの合金は、Heガスが内包される閉気孔を有する物であってもよい。
SiとLiとの合金が、Heガスが内包される閉気孔を有するか否かの判断方法にも特に制限はないが、Si単体と同様にSTEM−EELS(Scanning Transmission Electron Microscope−Electron Energy Loss Spectroscopy)観察により判断することができる。
前記SiLi合金の形状にも特に制限はなく、例えば、粒子状、膜状の形状等が挙げられる。負極活物質であるSiLi合金は、当該合金以外の成分が無くても負極として機能することができることから、膜状の形状であってもよい。
負極には負極活物質以外に、必要に応じて、負極部材に含まれる、結着剤、導電材、固体電解質などの他の成分が含まれていてもよい。結着剤、導電材、固体電解質などの他の成分は、負極部材で使用する材料と同様である。
負極活物質以外の成分が少ないほど、エネルギー密度が高くなることから、負極は、負極活物質のみを含むものであってもよいし、負極活物質は、SiとLiとの合金のみからなるものであってもよい。
4−2.正極
前記正極は、全固体リチウムイオン二次電池の正極として機能するものであれば、特に制限はないが、通常、Liを含有する正極活物質を含み、必要に応じ、結着材、固体電解質、及び導電材等の他の成分を含む。
正極活物質、結着材、導電材、固体電解質としては、正極部材で使用する材料と同様である。
4−3.固体電解質層
固体電解質層も、全固体リチウム二次電池の固体電解質層として機能するものであれば、特に制限はないが、通常、固体電解質を含み、必要に応じ、他の成分を含む。
固体電解質、及び、他の成分としては、固体電解質部材で使用する材料と同様である。
4−4.拘束具
本開示の負極原料、及び、負極部材より製造される全固体リチウムイオン二次電池が必要に応じて備えてもよい拘束具は、正極、固体電解質層、及び負極の配列方向に拘束圧を印加することができるものであれば特に制限はないが、通常、ボルト締めにより、正極、固体電解質層、及び負極の配列方向に均一な拘束圧を印加することができる拘束具を用いる。
(固体電解質の合成)
出発原料として、LiS、及びPを用いた。これらの粉末をアルゴン雰囲気下のグローブボックス内で、化学量論組成(モル比で4:1)の組成となるように混合し、原料組成物を得た。次に、原料組成物1gを、ジルコニアボール(5mmφ、80個)とともに、ジルコニア製のポット(45ml)に入れ、ポットを完全に密閉した(アルゴン雰囲気)。このポットを遊星型ボールミル機(商品名:P7、フリッチュ・ジャパン株式会社製)に取り付け、台盤回転数500rpmで、20時間メカニカルミリングを行った。これにより、固体電解質としてLiの粉末を得た。
(サイクル特性評価用セルの準備)
[実施例1]
集電体であるステンレス板の表面に、負極原料であるSi単体の膜を、RF/DCマグネトロンスパッタ装置(商品名:SPAD−2240UM、AOV株式会社製)を用いて、放電ガスとしてHeガスを使用したスパッタ法により成膜し実施例1の負極部材を得た。なお、実施例1においては負極原料中には負極活物質原料以外の成分は含まれないため、負極活物質原料が負極原料である。
In箔(ニラコ社製、φ10mm、厚さ0.1mm)にLi箔(本庄ケミカル社製)を貼付した対極材料(LiIn箔)を用意した。
前記固体電解質の粉末150mgを、マコール製のシリンダに添加し、340MPa(3.5ton/cm)でプレスし固体電解質部材を得た。
当該固体電解質部材の一方の表面に、LiIn箔を配置し、100MPa(5ton/cm)でプレスした。
当該固体電解質部材の他方の表面に実施例1の負極部材を配置し、LiIn箔−固体電解質部材−負極合材集合体を得た。
このように得られた、LiIn箔−固体電解質部材−負極部材集合体に拘束具を設置し、LiIn箔、固体電解質部材、及び負極部材の配列方向に7MPaの拘束圧を印加して、0.1mA/cmの定電流で、電圧が2.5V(vs Li/Li)となるまで通電し、実施例1のサイクル特性評価用セルを得た。
[比較例1]
実施例1において、放電ガスをArガスに変更したこと以外は、実施例1と同様に比較例1の負極部材及びサイクル特性評価用セルを準備した。
[実施例2]
実施例1において、固体電解質部材の表面に実施例2の負極部材を配置した状態で100MPaの圧力を印加したこと以外は、実施例1と同様に実施例2の負極合材及びサイクル特性評価用セルを準備した。
[比較例2−4]
実施例2において、表4に示すように放電ガス種等のスパッタ条件を変更したこと以外は、実施例2と同様に比較例2−4の負極部材及びサイクル特性評価用セルを準備した。
[参考実施例1]
実施例2において、LiIn箔−固体電解質部材−負極部材集合体に拘束具を設置し、LiIn箔、固体電解質部材、及び負極部材の配列方向に100MPaと高い拘束圧を印加したこと以外は、実施例2と同様に参考実施例1の負極部材及びサイクル特性評価用セルを準備した。
[参考比較例1−3]
比較例2−4において、LiIn箔−固体電解質部材−負極部材集合体に拘束具を設置し、LiIn箔、固体電解質部材、及び負極部材の配列方向に100MPaと高い拘束圧を印加したこと以外は、比較例2−4と同様に参考比較例1−3の負極合材及びサイクル特性評価用セルを準備した。
(評価方法)
1.STEM−EELS観察
実施例及び比較例において成膜した負極活物質材料であるSi単体の膜に対するSTEM−EELS観察は、下記表1に記載した条件で原子分解能分析電子顕微鏡(商品名:JEM−ARM200F(HR)、日本電子株式会社製)を用いて行った。
Figure 0006875208
2.容量維持率の測定
サイクル特性評価用セルを用いて、0.1mA/cmの定電流で、電圧範囲を2.5V〜0.01(vs Li/Li)の範囲で充放電させる充放電サイクルを、100サイクルを目標として行った(容量維持率が低い場合には、100サイクルに到達する前に、充放電サイクルを終了した。)。最大のサイクル数における容量維持率を、最大のサイクル数における放電容量を1から最大サイクル中で確認された最大放電容量で除することにより算出した。
(結果)
STEM−EELS観察結果からHeガスが内包される閉気孔の有無を確認した方法について図1乃至3を参照しながら、説明する。
図1は実施例1において成膜したSi単体膜の断面のSEM画像である。図1のSEM画像に示すように、実施例1において成膜したSi単体膜には、全体に気孔が確認された。
図1に示した範囲の気孔に対して、表1の条件で、STEM−EELS観察を行なった結果、図2に示す、EELSスペクトルが得られた。図2のEELSスペクトルでは、Heガスの存在を示す22eV付近にエネルギー損失ピークが確認された。
以上の結果から、当該HeガスはSi単体膜をスパッタ法による成膜時に気孔内に内包されたものと考えられるため、図1で選択された範囲の気孔にはHeガスが存在すること、また、当該気孔が閉気孔であると判断することができる。
次に、図1の写真の全体に対してSTEM−EELS観察を行い、得られたEELSスペクトルについてバックグラウンドを除去した後に、EELS強度を積算した。得られたEELS強度積算値が高い箇所ほど(すなわちHeガス濃度が高い)ほど、白くなるように画像処理した実施例1のSi単体膜の断面の画像を図3に示す。
図3に示すように、全体にHeガスが包含される閉気孔が分布していることが確認された。
実施例1以外のSi単体膜についても、同様の手法で、Heガスが包含される閉気孔の有無を確認した。
まず、参考として100MPaで固体電解質部材と負極部材を圧着し、且つ、評価用セル自体に100MPaの拘束圧を印加した参考実施例1及び参考比較例1〜3のサイクル特性評価用セルの、容量維持率の測定結果等を表2に示す。
Figure 0006875208
表2に示すように、参考比較例3の負極部材が負極活物質原料として含有する、Arガスを放電ガスとして成膜したSi単体の膜は、膜密度が2.3g/cmであり、SEM観察では気孔が確認されず、STEM−EELS観察においてHeガスが内包される閉気孔も確認されなかったことから、ほぼ中実であると考えられる。100MPaで固体電解質部材と負極部材を圧着し、且つ、100MPaと高い拘束圧を印加する条件で、中実なSi単体の膜を負極活物質原料として使用した参考比較例3の100サイクル目の容量維持率は70%であった。
また、参考実施例1、参考比較例1、及び参考比較例2の負極部材が負極活物質原料として含有する、Heガスを含有する放電ガスを用いてスパッタ法により成膜したSi単体の膜は、膜密度が1.4〜2.2g/cmであり、SEM観察で気孔が確認され、STEM−EELS観察においてHeガスが内包される閉気孔が確認された。100MPaで固体電解質部材と負極部材を圧着し、且つ、100MPaと高い拘束圧を印加する条件で、このように、細孔を有するSi単体の膜を負極活物質原料として使用した参考実施例1、参考比較例1、及び、参考比較例2では、100サイクル目の容量維持率は91%以上であった。
次に、固体電解質部材と負極部材を圧着せずに製造し、拘束圧が7MPaと低い実施例1及び比較例1のサイクル特性評価用セルの、容量維持率の測定結果等を表3に示す。なお、実施例1のサイクル特性評価用セルにおけるサイクル数と容量の関係を示したグラフを図4に、比較例1のサイクル特性評価用セルにおけるサイクル数と容量の関係を示したグラフを図6に示した。
Figure 0006875208
比較例1の負極部材が負極活物質原料として含有する、Arガスを放電ガスとして成膜したSi単体の膜は、膜密度が2.3g/cmであり、SEM観察では気孔が確認されず、STEM−EELS観察においてHeガスが内包される閉気孔も確認されなかったことから、参考比較例3と同じくほぼ中実であると考えられる。
このように中実なSi単体の膜を負極活物質原料として含有する比較例1の負極部材より製造した比較例1のサイクル特性評価用セルでは、15サイクル時点での容量維持率が25%にまで低下し、15サイクル以上の充放電サイクルを実施することができなかった。
中実なSi単体の膜を負極活物質原料として用いる場合であっても、参考比較例3のように、100MPaで固体電解質部材と負極部材を圧着し、且つ、評価用セル自体に100MPaと高い拘束圧を印加することで、比較的高い容量維持率を保つことができるが、比較例1のサイクル特性評価用セルでは、固体電解質部材と負極部材を圧着することなく、また、拘束圧が7MPaと低いため、負極自体の体積変化の影響で固体電解質と負極の界面に剥離が生じためであると考えられた。
これに対して実施例1の負極部材が負極活物質原料として含有する、Heガスを放電ガスを用いてスパッタ法により成膜したSi単体の膜は、膜密度が1.5g/cmであり、上述のように、SEM観察で気孔が確認され、STEM−EELS観察においてHeガスが内包される閉気孔が確認された。
このように細孔を有するSi単体の膜を負極活物質原料として含有する実施例1の負極部材より製造した実施例1のサイクル特性評価用セルでは、50サイクル時点での容量維持率が59%と、比較例1のサイクル特性評価用セルと比較して、極めて高かった。
細孔を有するSi単体の膜を負極活物質材料とて使用したため、得られる負極の体積変化が抑制され、固体電解質部材と負極部材を圧着することなく、また、拘束圧が7MPaと低い状態でも、高い容量維持率を示したと考えられる。
続いて、固体電解質部材と負極合材を圧着して製造し、また、拘束圧が7MPaと低い実施例2及び比較例2〜4のサイクル特性評価用セルの、容量維持率の測定結果等を表4に示す。なお、実施例2のサイクル特性評価用セルにおけるサイクル数と容量の関係を示したグラフを図5に、比較例2〜4のサイクル特性評価用セルにおけるサイクル数と容量の関係を示したグラフを図7〜9に示した。
Figure 0006875208
比較例4の負極部材が負極活物質原料として含有する、Arガスを放電ガスとして成膜したSi単体の膜は、膜密度が2.3g/cmであり、SEM観察では細孔が確認されず、STEM−EELS観察においてHeガスが内包される閉気孔も確認されなかったことから、比較例1及び参考比較例3と同様にほぼ中実であると考えられる。
このように中実なSi単体の膜を負極活物質原料として含有する比較例4の負極部材を用いて、固体電解質部材と負極部材を100MPaで圧着して製造した比較例4のサイクル特性評価用セルでは、前記充放電サイクルを100サイクルまで行うことができたため、圧着工程を経ずに製造した比較例1のサイクル特性評価用セルよりも、サイクル特性に優れていると評価できる。しかし、同じ負極部材を使用して100MPaで固体電解質部材と負極部材を圧着し、且つ、評価用セル自体に100MPaと高い拘束圧を印加した参考比較例3のサイクル特性評価用セルでは、前記充放電サイクル100サイクル目の容量維持率が70%であったのに対し、比較例4のサイクル特性評価用セルでは、100サイクル目の容量維持率が4%と極めて低かった。中実なSi単体の膜を負極活物質原料では、評価用セル自体の拘束圧を低くすると、容量維持率を高く維持することが出来ないと考えられた。
比較例3の負極部材が負極活物質原料として含有する、ArとHeの混合ガスを放電ガスとして成膜したSi単体の膜は、膜密度が2.2g/cmであり、SEM観察では細孔が確認され、STEM−EELS観察においてHeガスが内包される閉気孔も確認されたことから、多孔質であると考えられる。
このように細孔を有するSi単体の膜を負極活物質原料として含有する比較例3の負極部材を用いて、固体電解質部材と負極部材を圧着して製造した比較例3のサイクル特性評価用セルでも、100サイクル目の容量維持率が4%と極めて低かった。
また、比較例2の負極部材が負極活物質原料として含有する、ArとHeの混合ガスを放電ガスとして成膜したSi単体の膜は、膜密度が2.1g/cmであり、SEM観察では細孔が確認され、STEM−EELS観察においてHeガスが内包される閉気孔も確認されたことから、多孔質であると考えられる。
このように細孔を有するSi単体の膜を負極活物質原料として含有する比較例2の負極部材を用いて、固体電解質部材と負極合材を圧着して製造した比較例2のサイクル特性評価用セルでも、100サイクル目の容量維持率が12%と低かった。
細孔を有するSi単体を負極活物質原料として使用した場合であっても、密度が2.1g/cm以上では、気孔が少なすぎるため、合金化に伴う体積変化を充分に吸収することができないため、評価用セル自体の拘束圧を低くすると、容量維持率を高くすることができないことが明らかとなった。
これらに対して実施例2の負極部材が負極活物質原料として含有する、Heガスを放電ガスとして用いてスパッタ法により成膜したSi単体の膜は、膜密度が1.4g/cmであり、SEM観察で気孔が確認され、STEM−EELS観察においてHeガスが内包される閉気孔が確認された。
このように膜密度が1.4g/cmであり細孔を有するSi単体の膜を負極活物質原料として含有する実施例2の負極部材を用いて、固体電解質部材と負極部材を圧着して製造し、また、拘束圧が7MPaと低い実施例2のサイクル特性評価用セルでは、100サイクル時点での容量維持率が83%と、比較例2〜4のサイクル特性評価用セルと比較して、極めて高かった。
密度が1.5g/cm以下である場合には、拘束圧を7MPaと低くしても、合金化に伴う体積変化を、気孔により吸収することができるためであると考えられる。
また、固体電解質部材と負極部材を圧着して製造した実施例2のサイクル特性評価用セルでは、圧着工程を経ずに製造した実施例1のサイクル特性評価用セルよりも、高い容量維持率を示した。負極部材と固体電解質部材を圧着したことにより、負極と固体電解質がより強く接合され、拘束圧が7MPaと低い状態でも、負極の体積変化に対する負極と固体電解質の界面への影響を低減することができたためであると考えられる。
高い拘束圧の条件下における参考実施例1、参考比較例1、及び、参考比較例2の結果では、膜密度が1.4〜2.2g/cmの範囲では、容量維持率は91〜96%と大きく違いがない。そのため、低い拘束圧条件下において、膜密度が1.5g/cmを超える範囲では容量を維持する効果はほとんどなく、1.5g/cm以下範囲とすることで容量を極めて高く維持することが可能となることを、予測することは極めて困難であるといえる。
以上の結果より、負極活物質原料として密度が1.5g/cm以下であり細孔を有するSi単体を含有する負極原料、及び、負極活物質原料として密度が1.5g/cm以下であり細孔を有するSi単体を含有する負極部材により、低い拘束圧でサイクル特性が良好である全固体リチウムイオン二次電池を製造することができることが明らかとなった。

Claims (5)

  1. 負極活物質原料として密度が1.5g/cm以下であり細孔を有するSi単体を含有し、
    前記細孔を有するSi単体がHeガスを内包する閉気孔を有する全固体リチウムイオン二次電池用負極原料。
  2. 負極活物質原料として密度が1.5g/cm以下である細孔を有するSi単体を含有し、
    前記細孔を有するSi単体がHeガスを内包する閉気孔を有する全固体リチウムイオン二次電池用負極部材。
  3. 負極活物質としてSiとLiとの合金を含む負極を備える全固体リチウムイオン二次電池の製造方法であって、
    請求項に記載の負極部材、正極部材、及び、固体電解質部材を備える電池部材を準備する工程と、
    前記電池部材に通電する通電工程と、を有する全固体リチウムイオン二次電池の製造方法。
  4. 前記全固体リチウムイオン二次電池が、更に、正極、固体電解質層、及び負極の配列方向に拘束圧を印加することができる拘束具を備え、
    少なくとも前記負極部材と前記固体電解質部材を重ねた状態で、第1の圧力を印加して当該負極合材と当該固体電解質部材を圧着する工程と、
    前記拘束具の拘束圧を第1圧力より低い第2圧力に調整する工程と、を有する請求項に記載の全固体リチウムイオン二次電池の製造方法。
  5. 前記第2の圧力が7MPa以下である、請求項に記載の全固体リチウムイオン二次電池の製造方法。
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