以下、本発明の実施形態による帯域通過フィルタ、通信装置および共振器を、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1ないし図4は本発明の第1の実施形態による帯域通過フィルタ1を示している。帯域通過フィルタ1は、誘電体基板2、グランド導体6,7、共振器8,10、入出力線路13,14を備えている。
誘電体基板2は、互いに直交するX軸方向、Y軸方向およびZ軸方向のうち例えばX軸方向およびY軸方向に対して平行に広がる平板状に形成されている。誘電体基板2は、例えば低温同時焼成セラミックス多層基板(LTCC多層基板)によって形成されている。誘電体基板2は、第1の主面となる第1面2Aから第2の主面となる第2面2Bに向けてZ軸方向に積層した3層の絶縁層3〜5(図3、図4参照)を有している。各絶縁層3〜5は、1000℃以下の低温で焼成可能な絶縁性のセラミックス材料からなり、薄い層状に形成されている。
なお、誘電体基板2は、LTCC多層基板に限らず、例えば樹脂材料からなる絶縁層を積層した多層基板でもよい。誘電体基板2は、より低い誘電率を有する液晶ポリマー(Liquid Crystal Polymer:LCP)から構成される樹脂層を複数積層して形成された多層樹脂基板でもよい。誘電体基板2は、フッ素系樹脂から構成される樹脂層を複数積層して形成された多層樹脂基板でもよい。誘電体基板2は、LTCC多層基板以外のセラミックス多層基板でもよい。さらに、誘電体基板2は、可撓性を有するフレキシブル基板でもよく、熱可塑性を有するリジッド基板でもよい。
グランド導体6,7は、例えば銅、銀等の導電性金属材料を用いて形成されている。なお、グランド導体6,7は、アルミニウム、金またはこれらの合金を主成分とする金属材料によって形成してもよい。グランド導体6は、誘電体基板2の第1面2Aに設けられている。グランド導体7は、誘電体基板2の第2面2Bに設けられている。グランド導体6,7は、外部のグランドに接続される。グランド導体6,7は、誘電体基板2の全面を覆っている。
共振器8は、誘電体基板2の内部に設けられている(図1〜図4参照)。共振器8は、第1の共振器である。共振器8は、線状導体9を有している。線状導体9は、絶縁層3と絶縁層4との間に位置して、長さ方向となるX軸方向に延びた細長い帯状に形成されている。図2に示すように、線状導体9のX軸方向の長さ寸法D11は、例えば第1の共振周波数に対応した誘電体基板2内の波長の1/2に設定されている。線状導体9の第1端9Aは、X軸方向の第1端側に位置して、絶縁層3,4によって覆われている。線状導体9の第2端9Bは、X軸方向の第2端側に位置して、絶縁層3,4によって覆われている。線状導体9の第1端9Aおよび第2端9Bは、開放されている。これにより、共振器8は、半波長共振器かつ奇モード共振器を構成している。
なお、奇モード共振器とは、両端が開放され、共振器の長さが共振周波数で決まる波長の1/2であり、電圧が中心で0になり、入力端と出力端で極性が異なる共振器をいう。偶モード共振器とは、両端が短絡され、共振器の長さが共振周波数で決まる波長の1/2であり、電圧が両端でゼロになり、電圧が中央で最大または最小となる共振器をいう。
共振器10は、誘電体基板2の内部に設けられている(図1〜図4参照)。共振器10は、第2の共振器である。共振器10は、線状導体11を有している。線状導体11は、絶縁層3と絶縁層4との間に位置して、長さ方向となるX軸方向に延びた細長い帯状に形成されている。線状導体11は、線状導体9とY軸方向に離間している。線状導体11は、線状導体9と並行な状態で、X軸方向に延びている。
図2に示すように、線状導体11のX軸方向の長さ寸法D12は、例えば第2の共振周波数に対応した誘電体基板2内の波長の1/2に設定されている。長さ寸法D12は、ビア12Aの中心からビア12Bの中心までの長さ寸法である。なお、長さ寸法D12にビア12A,12Bの高さ寸法を加えた寸法が、第2の共振周波数に対応した誘電体基板2内の波長の1/2に設定されてもよい。線状導体11の長さ寸法D12は、線状導体9の長さ寸法D11と同じ値でもよく、異なる値でもよい。
線状導体11の長さ寸法D12が線状導体9の長さ寸法D11よりも小さい場合には、偶モードの共振周波数よりも奇モードの共振周波数が低い。この場合、図11に示すように、伝送零点(減衰極)の周波数は、通過帯域よりも高くなる。
一方、線状導体11の長さ寸法D12が線状導体9の長さ寸法D11よりも大きい場合には、偶モードの共振周波数よりも奇モードの共振周波数が高い。この場合、伝送零点(減衰極)の周波数は、通過帯域よりも低くなる。
線状導体11の第1端11Aは、X軸方向の第1端側に位置して、第1ビアとなるビア12Aによって誘電体基板2の第1面2Aのグランド導体6に接続されている。線状導体11の第2端11Bは、X軸方向の第2端側に位置して、第1ビアとなるビア12Bによって誘電体基板2の第1面2Aのグランド導体6に接続されている。ビア12A,12Bは、絶縁層3を貫通して誘電体基板2の厚さ方向(Z軸方向)に延びる柱状の導体によって形成されている。線状導体11の第1端11Aおよび第2端11Bは、グランド導体6に短絡されている。これにより、共振器10は、半波長共振器かつ偶モード共振器を構成している。
一対の入出力線路13,14は、2つの共振器8,10と外部回路とを接続し、2つの共振器8,10が並列接続されている(図1、図2参照)。入出力線路13は、第1の入出力線路である。入出力線路13は、X軸方向の第1端側に位置して、絶縁層4と絶縁層5との間に配置されている。入出力線路14は、第2の入出力線路である。入出力線路14は、X軸方向の第2端側に位置して、絶縁層4と絶縁層5との間に配置されている。
入出力線路13は、2つの共振器8,10の線状導体9,11のうち第2端9B,11Bよりも第1端9A,11Aに近い位置に配置されている。入出力線路13は、伝送線路部13A、第1結合部13Bおよび第2結合部13Cを備えている。伝送線路部13Aは、X軸方向に延びる細長い帯状に形成されている。第1結合部13Bは、伝送線路部13Aから分岐して共振器8に向けて延び、絶縁層4を挟んで線状導体9の第1端9Aと厚さ方向で対向している。第1結合部13Bは、線状導体9の第1端9Aに結合されている。このとき、入出力線路13の第1結合部13Bと線状導体9の第1端9Aとの結合は、容量結合が支配的である。
第2結合部13Cは、伝送線路部13Aから分岐して共振器10に向けて延び、線状導体9の第1端9Aよりも線状導体11の第1端11Aに近い位置に配置されている。第2結合部13Cは、第2ビアとなるビア15Aによって、誘電体基板2の第2面2Bのグランド導体7に接続されている。ビア15Aは、絶縁層5を貫通して誘電体基板2の厚さ方向(Z軸方向)に延びる柱状の導体によって形成されている。入出力線路13のビア15Aは、共振器10のビア12Aの近傍であって、ビア12AとY軸方向の異なる位置に配置されている。入出力線路13のビア15Aと共振器10のビア12Aとは、誘電体基板2の厚さ方向(Z軸方向)に対して逆方向に延びている(図1、図3、図4参照)。第2結合部13Cは、線状導体11の第1端11Aに結合されている。このとき、入出力線路13の第2結合部13Cと線状導体11の第1端11Aとの結合は、磁界結合が支配的である。
入出力線路14は、2つの共振器8,10の線状導体9,11のうち第1端9A,11Aよりも第2端9B,11Bに近い位置に配置されている。入出力線路14は、入出力線路13と同様に、伝送線路部14A、第1結合部14Bおよび第2結合部14Cを備えている。伝送線路部14Aは、X軸方向に延びる細長い帯状に形成されている。第1結合部14Bは、伝送線路部14Aから分岐して共振器8に向けて延び、絶縁層4を挟んで線状導体9の第2端9Bと厚さ方向で対向している。第1結合部14Bは、線状導体9の第2端9Bに結合されている。このとき、入出力線路14の第1結合部14Bと線状導体9の第2端9Bとの結合は、容量結合が支配的である。
第2結合部14Cは、伝送線路部14Aから分岐して共振器10に向けて延び、線状導体9の第2端9Bよりも線状導体11の第2端11Bに近い位置に配置されている。第2結合部14Cは、第2ビアとなるビア15Bによって、誘電体基板2の第2面2Bのグランド導体7に接続されている。ビア15Bは、絶縁層5を貫通して誘電体基板2の厚さ方向(Z軸方向)に延びる柱状の導体によって形成されている。入出力線路14のビア15Bは、共振器10のビア12Bの近傍であって、ビア12BとY軸方向の異なる位置に配置されている。入出力線路14のビア15Bと共振器10のビア12Bとは、誘電体基板2の厚さ方向(Z軸方向)に対して逆方向に延びている(図1、図4参照)。第2結合部14Cは、線状導体11の第2端11Bに結合されている。このとき、入出力線路14の第2結合部14Cと線状導体11の第2端11Bとの結合は、磁界結合が支配的である。
次に、図5ないし図8を参照して、共振器10のビア12A,12Bおよび入出力線路13,14のビア15A,15Bと、外部Qとの関係について説明する。
入出力線路13,14と偶モード共振器からなる共振器10とを主に磁界結合によって結合させる場合には、これらによる外部Qが大きくなり易い。この結果、帯域通過フィルタの比帯域幅が狭くなる傾向がある。
これに対し、本願発明者が鋭意検討した結果、共振器10のビア12A,12Bと入出力線路13,14のビア15A,15Bとを互いに異なるグランド導体6,7に接続することによって、外部Qを低下させることが可能であることが分かった。この効果を確認するために、図5および図6に示す逆方向のビアを備えた計算モデル101と、図7に示す同方向のビアを備えた計算モデル111について、外部Qを算出した。
ここで、計算モデル101は、誘電体基板102、グランド導体103,104、共振器105、入出力線路108を備えている。グランド導体103は、誘電体基板102の第1面102Aに設けられている。グランド導体104は、誘電体基板102の第2面102Bに設けられている。共振器105は、偶モード共振器であって、誘電体基板102の内部に設けられた線状導体106を備えている。線状導体106の両端(一方のみ図示)は、ビア107によってグランド導体103に接続されている。入出力線路108は、ビア107の近傍に位置して、誘電体基板102の内部に設けられている。入出力線路108は、ビア109によってグランド導体104に接続されている。このため、計算モデル101では、共振器105のビア107と入出力線路108のビア109とが誘電体基板102の厚さ方向に対して逆方向(互い違い)に向けて延び、逆方向ビアとなっている。
計算モデル111は、計算モデル101とほぼ同様に、誘電体基板102、グランド導体103,104、共振器112、入出力線路108を備えている。共振器112は、計算モデル101の共振器105と同様に、偶モード共振器であって、誘電体基板102の内部に設けられた線状導体113を備えている。但し、線状導体113の両端(一方のみ図示)は、ビア114によってグランド導体104に接続されている。このため、計算モデル111では、共振器112のビア114と入出力線路108のビア109とが誘電体基板102の厚さ方向に対して同方向に向けて延び、同方向ビアとなっている。
これらの計算モデル101,111について、共振器105,112の線状導体106,113と入出力線路108との間の隙間G1と外部Qとの関係を求めた。その結果を、図8に示す。
図8に示すように、同方向ビアを備えた計算モデル111では、隙間G1を変化させても外部Qは殆ど変化せず、例えば80以上になっている。これに対し、逆方向ビアを備えた計算モデル101では、隙間G1が小さくなるに従って、外部Qが小さくなることが分かる。特に、隙間G1が負の値となったとき、外部Qは10よりも低下する。隙間G1が負の値となる場合には、図9に示す第1の変形例による計算モデル115のように、線状導体106と入出力線路108とが重なり合う。これにより、計算モデル101では、帯域通過フィルタの比帯域幅を広げることができる。
なお、線状導体106と入出力線路108とは、直接的に重なり合う必要はない。例えば、図10に示す第2の変形例による計算モデル116のように、他の導体となる中間導体117を介して、線状導体106と入出力線路108とは、間接的に重なり合ってもよい。この場合、中間導体117は、誘電体基板102の厚さ方向に対して、線状導体106と入出力線路108との間に位置している。中間導体117は、線状導体106と重なり合うと共に、入出力線路108と重なり合っている。なお、中間導体117は、共振器の共振周波数あるいは阻止帯域の周波数相当の波長の1/2よりも小さい長さの導体である。即ち、中間導体117は、非共振電極であり、フィルタに要求されている通過帯域および阻止帯域の周波数では共振しない。
第1の実施形態による帯域通過フィルタ1も、計算モデル101と同様に、共振器10のビア12A,12Bおよび入出力線路13,14のビア15A,15Bとが誘電体基板2の厚さ方向に対して逆方向に延びている。このため、第1の実施形態による帯域通過フィルタ1でも、帯域通過フィルタの比帯域幅を広げることができる。
第1の実施形態による帯域通過フィルタ1の周波数特性を確認するために、SパラメータのS11(反射係数)とS21(透過係数)の周波数特性を求めた。その結果の一例を図11に示す。
図11に示すように、本実施形態の帯域通過フィルタ1では、通過帯域である25〜31GHz付近で、反射係数S11は0dBよりもマイナス方向に増加し、透過係数S21は0dBに近付いている。これにより、帯域通過フィルタ1は、例えば比帯域幅を15%以上の通過特性を有する帯域通過フィルタとなることを確認した。このとき、比帯域幅は、図11に示した帯域幅BWを中心周波数である28GHzで割ったものである。
かくして、第1の実施形態による帯域通過フィルタ1は、誘電体基板2と、誘電体基板2の第1面2Aおよび第2面2Bにそれぞれ設けられたグランド導体6,7と、誘電体基板2の内部に設けられた線状導体9を有する共振器8と、誘電体基板2の内部に設けられた線状導体11を有する共振器10と、共振器8および共振器10と外部回路とを接続し、共振器8と共振器10が並列接続された入出力線路13および入出力線路14と、を備えている。
これに加え、共振器8は、その線状導体9の両端が開放され、共振器10は、その線状導体11の両端を誘電体基板2の第1面2Aと第2面2Bのうち一方のグランド導体6にそれぞれ接続する一対のビア12A,12Bを備え、入出力線路13は、誘電体基板2の第1面2Aと第2面2Bのうちビア12A,12Bとは異なる他方のグランド導体7に接続するビア15Aを備え、入出力線路14は、誘電体基板2の第1面2Aと第2面2Bのうちビア12A,12Bとは異なる他方のグランド導体7に接続するビア15Bを備えている。
このように構成したことにより、共振器8は両端が開放された奇モード共振器になり、共振器10は両端がグランド導体6に接続された偶モード共振器になる。これらの奇モード共振器および偶モード共振器は、入出力線路13と入出力線路14との間に並列接続され、共振器並列結合フィルタを構成する。このとき、偶モード共振器(共振器10)のビア12A,12Bと入出力線路13,14のビア15A,15Bとは、誘電体基板2の厚さ方向に対して互いに逆方向(互い違い)に延び、互いに異なるグランド導体6,7に接続されている。この結果、共振器10のビア12A,12Bと入出力線路13,14のビア15A,15Bとが互いに同じグランド導体に接続された場合に比べて、共振器10の外部Qが小さくなり、帯域通過フィルタ1の比帯域幅を広げることができる。
次に、図12および図13を用いて、本発明の第2の実施形態について説明する。第2の実施形態の特徴は、2つの共振器の間に位置して誘電体基板を厚さ方向に貫通し、誘電体基板の第1面のグランド導体と誘電体基板の第2面のグランド導体とを接続する貫通ビアを備えたことにある。なお、第2の実施形態において、第1の実施形態と同一の構成要素は同一の符号を付し、その説明を省略する。
第2の実施形態による帯域通過フィルタ16は、第1の実施形態による帯域通過フィルタ1とほぼ同様に、誘電体基板2、グランド導体6,7、共振器8,10、入出力線路13,14を備えている。これに加え、帯域通過フィルタ16は、貫通ビア17を備えている。
貫通ビア17は、2つの共振器8,10の間に位置して誘電体基板2を厚さ方向に貫通し、誘電体基板2の第1面2Aのグランド導体6と誘電体基板2の第2面2Bのグランド導体7とを接続している。貫通ビア17は、例えばY軸方向に対して共振器8と共振器10との間の中間位置付近に配置されている。
かくして、このように構成された第2の実施形態においても、共振器25の外部Qが小さくなり、帯域通過フィルタ21の比帯域幅を広げることができる。
例えば、貫通ビア17を省いた場合には、キャビティに起因する不要な共振が発生することがある。これにより、図13中の破線に示すように、必要な周波数領域(例えば通過帯域の低周波側)に減衰極が生成されないという問題がある。これに対し、帯域通過フィルタ16は、2つの共振器8,10の間に位置して誘電体基板2を厚さ方向に貫通し、誘電体基板2の第1面2Aのグランド導体6と誘電体基板2の第2面2Bのグランド導体7とを接続する貫通ビア17を備えている。このように構成したことにより、帯域通過フィルタ16を含むパッケージ全体の不要な共振を抑制することができる。この結果、図13中の実線に示すように、必要な周波数領域に減衰極を配置することができ、所望な透過係数S21の周波数特性を得ることができる。これに加え、2つの共振器8,10と第1の入出力線路13および第2の入出力線路14との間の結合特性を安定させることができる。
次に、図14ないし図17を用いて、本発明の第3の実施形態について説明する。第3の実施形態の特徴は、誘電体基板の内部に設けられた線状導体を有し、偶モード共振器に結合される他の偶モード共振器を備えたことにある。なお、第3の実施形態において、第1の実施形態と同一の構成要素は同一の符号を付し、その説明を省略する。
第3の実施形態による帯域通過フィルタ21は、第1の実施形態による帯域通過フィルタ1とほぼ同様に、誘電体基板2、グランド導体6,7、共振器22,25、入出力線路28,29を備えている。これに加えて、帯域通過フィルタ21は、共振器25に結合される他の共振器31を備えている。
共振器22は、誘電体基板2の内部に設けられている(図14〜図17参照)。共振器22は、線状導体23を有している。線状導体23は、絶縁層4と絶縁層5との間に位置して、長さ方向となるX軸方向に延びた細長い帯状に形成されている。図15に示すように、線状導体23のX軸方向の長さ寸法D21は、例えば第1の共振周波数に対応した誘電体基板2内の波長の1/2に設定されている。線状導体23の第1端23Aは、X軸方向の第1端側に位置して、絶縁層4,5によって覆われている。線状導体23の第2端23Bは、X軸方向の第2端側に位置して、絶縁層4,5によって覆われている。線状導体23の第1端23Aおよび第2端23Bは、開放されている。これにより、共振器22は、半波長共振器かつ奇モード共振器を構成している。
線状導体23の第1端23Aは、絶縁層4を挟んで結合導体24Aと対向している。線状導体23の第2端23Bは、絶縁層4を挟んで結合導体24Bと対向している。結合導体24A,24Bは、絶縁層3と絶縁層4との間に位置して、Y軸方向に延びている。結合導体24Aは、線状導体23の第1端23Aに対向すると共に、入出力線路28の結合部28Bと対向している。結合導体24Bは、線状導体23の第2端23Bに対向すると共に、入出力線路29の結合部29Bと対向している。これにより、共振器22は、入出力線路28,29に結合されている。このとき、共振器22と入出力線路28,29との結合は、容量結合が支配的である。
共振器25は、誘電体基板2の内部に設けられている(図14〜図17参照)。共振器25は、線状導体26を有している。線状導体26は、絶縁層3と絶縁層4との間に位置して、長さ方向となるX軸方向に延びた細長い帯状に形成されている。線状導体26は、線状導体23とY軸方向に離間している。線状導体26は、線状導体23と並行な状態で、X軸方向に延びている。
図15に示すように、線状導体26のX軸方向の長さ寸法D22は、例えば第2の共振周波数に対応した誘電体基板2内の波長の1/2に設定されている。長さ寸法D22は、ビア27Aの中心からビア27Bの中心までの長さ寸法である。なお、長さ寸法D22にビア27A,27Bの高さ寸法を加えた寸法が、第2の共振周波数に対応した誘電体基板2内の波長の1/2に設定されてもよい。線状導体26の長さ寸法D22は、例えば線状導体23の長さ寸法D21よりも大きな値になっている。なお、線状導体26の長さ寸法D22は、線状導体23の長さ寸法D21よりも小さい値でもよく、同じ値でもよい。
線状導体26の長さ寸法D22が線状導体23の長さ寸法D21よりも小さい場合には、偶モードの共振周波数よりも奇モードの共振周波数が低い。この場合、伝送零点(減衰極)の周波数は、通過帯域よりも高くなる。
一方、線状導体26の長さ寸法D22が線状導体23の長さ寸法D21よりも大きい場合には、偶モードの共振周波数よりも奇モードの共振周波数が高い。この場合、伝送零点(減衰極)の周波数は、通過帯域よりも低くなる。
線状導体26の第1端26Aは、X軸方向の第1端側に位置して、第1ビアとなるビア27Aによって誘電体基板2の第1面2Aのグランド導体6に接続されている。線状導体26の第2端26Bは、X軸方向の第2端側に位置して、第1ビアとなるビア27Bによって誘電体基板2の第1面2Aのグランド導体6に接続されている。ビア27A,27Bは、絶縁層3を貫通して誘電体基板2の厚さ方向(Z軸方向)に延びる柱状の導体によって形成されている。線状導体26の第1端26Aおよび第2端26Bは、グランド導体6に短絡されている。これにより、共振器25は、半波長共振器かつ偶モード共振器を構成している。
一対の入出力線路28,29は、2つの共振器22,25と外部回路とを接続し、2つの共振器22,25が並列接続されている(図14、図15参照)。入出力線路28は、第1の入出力線路である。入出力線路28は、X軸方向の第1端側に位置して、絶縁層4と絶縁層5との間に配置されている。入出力線路29は、第2の入出力線路である。入出力線路29は、X軸方向の第2端側に位置して、絶縁層4と絶縁層5との間に配置されている。
入出力線路28は、2つの共振器22,25の線状導体23,26のうち第2端23B,26Bよりも第1端23A,26Aに近い位置に配置されている。入出力線路28は、伝送線路部28A、第1結合部28Bおよび第2結合部28Cを備えている。伝送線路部28Aは、X軸方向に延びる細長い帯状に形成されている。第1結合部28Bは、伝送線路部28Aから分岐して共振器22に向けて延び、絶縁層4を挟んで結合導体24Aと厚さ方向で対向している。第1結合部28Bは、結合導体24Aを介して線状導体23の第1端23Aに結合されている。このとき、入出力線路28の第1結合部28Bと線状導体23の第1端23Aとの結合は、容量結合が支配的である。
第2結合部28Cは、伝送線路部28Aから分岐して共振器25に向けて延び、線状導体23の第1端23Aよりも線状導体26の第1端26Aに近い位置に配置されている。第2結合部28Cは、第2ビアとなるビア30Aによって、誘電体基板2の第2面2Bのグランド導体7に接続されている。ビア30Aは、絶縁層5を貫通して誘電体基板2の厚さ方向(Z軸方向)に延びる柱状の導体によって形成されている。入出力線路28のビア30Aは、共振器25のビア27Aの近傍であって、ビア27AとY軸方向の異なる位置に配置されている。入出力線路28のビア30Aと共振器25のビア27Aとは、誘電体基板2の厚さ方向(Z軸方向)に対して逆方向に延びている(図14、図16、図17参照)。第2結合部28Cは、線状導体26の第1端26Aに結合されている。このとき、入出力線路28の第2結合部28Cと線状導体26の第1端26Aとの結合は、磁界結合が支配的である。
入出力線路29は、2つの共振器22,25の線状導体23,26のうち第1端23A,26Aよりも第2端23B,26Bに近い位置に配置されている。入出力線路29は、入出力線路28と同様に、伝送線路部29A、第1結合部29Bおよび第2結合部29Cを備えている。伝送線路部29Aは、X軸方向に延びる細長い帯状に形成されている。第1結合部29Bは、伝送線路部29Aから分岐して共振器22に向けて延び、絶縁層4を挟んで結合導体24Bと厚さ方向で対向している。第1結合部29Bは、結合導体24Bを介して線状導体23の第2端23Bに結合されている。このとき、入出力線路29の第1結合部29Bと線状導体23の第2端23Bとの結合は、容量結合が支配的である。
第2結合部29Cは、伝送線路部29Aから分岐して共振器25に向けて延び、線状導体23の第2端23Bよりも線状導体26の第2端26Bに近い位置に配置されている。第2結合部29Cは、第2ビアとなるビア30Bによって、誘電体基板2の第2面2Bのグランド導体7に接続されている。ビア30Bは、絶縁層5を貫通して誘電体基板2の厚さ方向(Z軸方向)に延びる柱状の導体によって形成されている。入出力線路29のビア30Bは、共振器25のビア27Bの近傍であって、ビア27BとY軸方向の異なる位置に配置されている。入出力線路29のビア30Bと共振器25のビア27Bとは、誘電体基板2の厚さ方向(Z軸方向)に対して逆方向に延びている(図14、図17参照)。第2結合部29Cは、線状導体26の第2端26Bに結合されている。このとき、入出力線路29の第2結合部29Cと線状導体26の第2端26Bとの結合は、磁界結合が支配的である。
共振器31は、誘電体基板2の内部に設けられている(図14〜図17参照)。共振器31は、線状導体32を有している。線状導体32は、絶縁層4と絶縁層5との間に位置して、長さ方向となるX軸方向に延びた細長い帯状に形成されている。線状導体32は、線状導体26とY軸方向に離間している。線状導体32は、線状導体26と並行な状態で、X軸方向に延びている。線状導体32は、誘電体基板2の厚さ方向で線状導体26と異なる位置に配置されている。この場合、Y軸方向の離間寸法を変えることなく、線状導体32と線状導体26との間の距離を大きくすることができるため、結合強度の調整が可能になる。なお、線状導体32は、誘電体基板2の厚さ方向で線状導体26と同じ位置、即ち絶縁層3と絶縁層4との間に配置されていてもよい。
線状導体32は、例えば線状導体26と同じ長さ寸法D22を有している。なお、線状導体32と線状導体26とは、異なる長さ寸法を有していてもよい。
線状導体32の第1端32Aは、X軸方向の第1端側に位置して、第3ビアとなるビア33Aによって誘電体基板2の第2面2Bのグランド導体7に接続されている。線状導体32の第2端32Bは、X軸方向の第2端側に位置して、第3ビアとなるビア33Bによって誘電体基板2の第2面2Bのグランド導体7に接続されている。ビア33A,33Bは、絶縁層5を貫通して誘電体基板2の厚さ方向(Z軸方向)に延びる柱状の導体によって形成されている。共振器31のビア33A,33Bは、共振器25のビア27A,27Bの近傍に配置されている。これに加え、共振器31のビア33A,33Bは、共振器25のビア27A,27Bを挟んでY軸方向で入出力線路28,29のビア30A,30Bとは反対側に配置されている。線状導体32の第1端32Aおよび第2端32Bは、グランド導体7に短絡されている。これにより、共振器25は、半波長共振器かつ偶モード共振器を構成している。
また、線状導体32は、線状導体26を挟んでY軸方向で線状導体23とは反対側に配置されている。このため、共振器31は、共振器22には結合せず、共振器25に結合する。さらに、共振器31のビア33A,33Bと共振器25のビア27A,27Bとは、誘電体基板2の厚さ方向(Z軸方向)に対して逆方向に延びている(図14、図16、図17参照)。
貫通ビア34は、2つの共振器22,25の間に位置して誘電体基板2を厚さ方向に貫通し、誘電体基板2の第1面2Aのグランド導体6と誘電体基板2の第2面2Bのグランド導体7とを接続している。貫通ビア34は、例えばY軸方向に対して共振器22と共振器25との間の中間位置付近に配置されている。
次に、図18ないし図20を参照して、共振器25のビア27A,27Bおよび共振器31のビア33A,33Bと、結合係数との関係について説明する。
偶モード共振器からなる2つの共振器25,31を結合させる場合には、これらの結合係数が小さくなり易い。この結果、帯域通過フィルタの比帯域幅が狭くなる傾向がある。
これに対し、本願発明者が鋭意検討した結果、共振器25のビア27A,27Bおよび共振器31のビア33A,33Bを互いに異なるグランド導体6,7に接続することによって、結合係数が増大可能であることが分かった。この効果を確認するために、図18に示す互いに結合する2つの共振器のビアが逆方向となった計算モデル121と、図19に示す互いに結合する2つの共振器のビアが同方向となった計算モデル131について、結合係数を算出した。
ここで、計算モデル121は、誘電体基板122、グランド導体123,124、2つの共振器125,128を備えている(図18参照)。グランド導体123は、誘電体基板122の第1面122Aに設けられている。グランド導体124は、誘電体基板122の第2面122Bに設けられている。共振器125は、誘電体基板122の内部に設けられた線状導体126を備えている。線状導体126の第1端126Aと第2端126Bは、ビア127A,127Bによってグランド導体123に接続されている。共振器128は、誘電体基板122の内部に設けられた線状導体129を備えている。線状導体129は、線状導体126と非接触な状態で、線状導体126と並行に延びている。線状導体129の第1端129Aと第2端129Bは、ビア130A,130Bによってグランド導体124に接続されている。このため、計算モデル121では、共振器125のビア127A,127Bと共振器128のビア130A,130Bとが誘電体基板122の厚さ方向に対して逆方向(互い違い)に向けて延び、逆方向ビアとなっている。
計算モデル131は、計算モデル121とほぼ同様に、誘電体基板122、グランド導体123,124、2つの共振器125,128を備えている(図19参照)。但し、線状導体126の第1端126Aと第2端126Bは、ビア132A,132Bによってグランド導体124に接続されている。このため、計算モデル131では、共振器125のビア132A,132Bと共振器128のビア130A,130Bとが誘電体基板122の厚さ方向に対して同方向に向けて延び、同方向ビアとなっている。
これらの計算モデル121,131について、共振器125,128の線状導体126,129の間の隙間G2と結合係数との関係を求めた。その結果を、図20に示す。
図20に示すように、同方向ビアを備えた計算モデル131では、隙間G2が小さくなるに従って結合係数が減少する傾向がある。これに対し、逆方向ビアを備えた計算モデル121では、隙間G2が小さくなるに従って、結合係数が大きくなることが分かる。特に、隙間G2が0.2mm以下になったとき、結合係数が10%よりも大きくなる。これにより、帯域通過フィルタの比帯域幅を広げることができる。
第3の実施形態による帯域通過フィルタ21も、計算モデル121と同様に、共振器25のビア27A,27Bおよび共振器31のビア33A,33Bとが誘電体基板2の厚さ方向に対して逆方向に延びている。このため、第3の実施形態による帯域通過フィルタ21でも、帯域通過フィルタの比帯域幅を広げることができる。
第3の実施形態による帯域通過フィルタ21のフィルタリング特性を確認するために、SパラメータのS11(反射係数)とS21(透過係数)の周波数特性を求めた。その結果の一例を図21に示す。
図21に示すように、本実施形態の帯域通過フィルタ21では、通過帯域である27〜30GHz付近で、反射係数S11は0dBよりもマイナス方向に増加し、透過係数S21は0dBに近付いている。これにより、帯域通過フィルタ21は、例えば比帯域幅を10%以上の通過特性を有する帯域通過フィルタとなることを確認した。
かくして、このように構成された第3の実施形態においても、共振器25の外部Qが小さくなり、帯域通過フィルタ21の比帯域幅を広げることができる。また、第3の実施形態では、誘電体基板2には共振器25に結合する他の共振器31を設けたから、3つの共振器22,25,31からなる3段のCul-de-Sac結合フィルタを構成することができる。3段のCul-de-Sac結合フィルタは、入力段と出力段に直接結合しない共振器を含む結合構成となっている。図15に示す帯域通過フィルタ21は、共振器31が入力段と出力段に直接結合されていない。このため、2つの共振器8,10からなる第1の実施形態による帯域通過フィルタ1に比べて、急峻な減衰特性を得ることができる。
さらに、共振器25は、その線状導体26の両端に接続して設けられ、誘電体基板2の第1面2Aのグランド導体6に接続されたビア27A,27Bを備え、共振器31は、その線状導体32の両端に接続して設けられ、誘電体基板2の第2面2Bのグランド導体7に接続されたビア33A,33Bを備えている。
このように構成したことにより、2つの共振器25,31は両端がグランド導体6,7に接続された偶モード共振器になる。このとき、共振器25のビア27A,27Bと共振器31のビア33A,33Bとは、誘電体基板2の厚さ方向に対して互いに逆方向に延び、互いに異なるグランド導体6,7に接続されている。この結果、共振器25のビア27A,27Bと共振器31のビア33A,33Bとが互いに同じグランド導体に接続された場合に比べて、2つの共振器25,31の結合係数が大きくなり、帯域通過フィルタ21の比帯域幅を広げることができる。
なお、共振器25のビア27A,27Bは、両方とも同じグランド導体6に接続されたが、互いに異なるグランド導体6,7に接続されてもよい。例えば、共振器25のビア27Aはグランド導体6に接続され、共振器25のビア27Bはグランド導体7に接続されてもよい。この場合、共振器31のビア33Aはグランド導体7に接続され、共振器31のビア33Bはグランド導体6に接続される。このような構成でも、帯域通過フィルタの比帯域幅を広げることができる。
また、帯域通過フィルタ21は、2つの共振器22,25の間に位置して誘電体基板2を厚さ方向に貫通し、誘電体基板2の第1面2Aのグランド導体6と誘電体基板2の第2面2Bのグランド導体7とを接続する貫通ビア34を備えている。このように構成したことにより、第2の実施の形態による帯域通過フィルタ16と同様に、帯域通過フィルタ21を含むパッケージ全体の不要な共振を抑制することができる。この結果、必要な周波数領域に減衰極を配置することができ、所望な透過係数S21の周波数特性を得ることができる。これに加え、2つの共振器22,25と入出力線路28,29との間の結合特性を安定させることができる。
次に、図22を用いて、本発明の第4の実施形態について説明する。第4の実施形態の特徴は、2つの偶モード共振器が結合すると共に、一方の偶モード共振器のビアと他方の偶モード共振器のビアとが互いに異なるグランド導体に接続されたことにある。なお、第4の実施形態において、第1の実施形態と同一の構成要素は同一の符号を付し、その説明を省略する。
第4の実施形態による帯域通過フィルタ41は、第1の実施形態による帯域通過フィルタ1とほぼ同様に、誘電体基板2、グランド導体6,7、共振器42,45、入出力線路48,49を備えている。
共振器42は、誘電体基板2の内部に設けられている。共振器42は、線状導体43を有している。線状導体43は、誘電体基板2の内部に位置して、長さ方向となるX軸方向に延びた細長い帯状に形成されている。線状導体43のX軸方向の長さ寸法は、例えば第1の共振周波数に対応した誘電体基板2内の波長の1/2に設定されている。線状導体43のX軸方向の長さ寸法は、例えばビア44Aの中心からビア44Bの中心までの長さ寸法である。
線状導体43の第1端43Aは、X軸方向の第1端側に位置して、第1面側ビアとなるビア44Aによって誘電体基板2の第1面2Aのグランド導体6に接続されている。線状導体43の第2端43Bは、X軸方向の第2端側に位置して、第1面側ビアとなるビア44Bによって誘電体基板2の第1面2Aのグランド導体6に接続されている。ビア44A,44Bは、誘電体基板2の厚さ方向(Z軸方向)に延びる柱状の導体によって形成されている。線状導体43の第1端43Aおよび第2端43Bは、グランド導体6に短絡されている。これにより、共振器42は、半波長共振器かつ偶モード共振器を構成している。
共振器45は、誘電体基板2の内部に設けられている。共振器45は、線状導体46を有している。線状導体46は、誘電体基板2の内部に位置して、長さ方向となるX軸方向に延びた細長い帯状に形成されている。線状導体46は、線状導体43とY軸方向に離間している。線状導体46は、線状導体43と並行な状態で、X軸方向に延びている。
線状導体46のX軸方向の長さ寸法は、例えば第2の共振周波数に対応した誘電体基板2内の波長の1/2に設定されている。線状導体46のX軸方向の長さ寸法は、例えばビア47Aの中心からビア47Bの中心までの長さ寸法である。線状導体46の長さ寸法は、線状導体43の長さ寸法と異なる値でもよく、同じ値でもよい。
線状導体46の第1端46Aは、X軸方向の第1端側に位置して、第2面側ビアとなるビア47Aによって誘電体基板2の第2面2Bのグランド導体7に接続されている。線状導体46の第2端46Bは、X軸方向の第2端側に位置して、第2面側ビアとなるビア47Bによって誘電体基板2の第2面2Bのグランド導体7に接続されている。ビア47A,47Bは、誘電体基板2の厚さ方向(Z軸方向)に延びる柱状の導体によって形成されている。線状導体46の第1端46Aおよび第2端46Bは、グランド導体7に短絡されている。これにより、共振器45は、半波長共振器かつ偶モード共振器を構成している。
一対の入出力線路48,49は、2つの共振器42,45と外部回路とを接続し、2つの共振器42,45が直列接続されている。一対の入出力線路48,49は、2つの共振器42,45を挟んでY軸方向の両側にそれぞれ配置されている。一方の入出力線路48は、Y軸方向の第1端側に位置している。他方の入出力線路49は、Y軸方向の第2端側に位置している。
入出力線路48は、第1の入出力線路である。入出力線路48は、共振器42の線状導体43のうち第2端43Bよりも第1端43Aに近い位置に配置されている。なお、入出力線路48は、共振器42の線状導体43のうち第1端43Aよりも第2端43Bに近い位置に配置してもよい。入出力線路48は、入出力に繋がる線路側ビアとなるビア50Aによって誘電体基板2の第2面2Bのグランド導体7に接続されている。入出力線路48のビア50Aと共振器42のビア44Aとは、誘電体基板2の厚さ方向(Z軸方向)に対して逆方向に延びている。入出力線路48は、共振器42を挟んで共振器45とは反対側に配置されている。これにより、入出力線路48は、共振器45とは結合せず、共振器42に結合している。
入出力線路49は、第2の入出力線路である。入出力線路49は、共振器45の線状導体46のうち第2端46Bよりも第1端46Aに近い位置に配置されている。なお、入出力線路49は、共振器45の線状導体46のうち第1端46Aよりも第2端46Bに近い位置に配置してもよい。入出力線路49は、入出力に繋がる線路側ビアとなるビア50Bによって誘電体基板2の第1面2Aのグランド導体6に接続されている。入出力線路49のビア50Bと共振器45のビア47Aとは、誘電体基板2の厚さ方向(Z軸方向)に対して逆方向に延びている。入出力線路49は、共振器45を挟んで共振器42とは反対側に配置されている。これにより、入出力線路49は、共振器42とは結合せず、共振器45に結合している。この結果、2つの共振器42,45は、一対の入出力線路48,49の間に直列接続されている。
かくして、第4の実施形態の帯域通過フィルタ41は、誘電体基板2と、誘電体基板2の第1面2Aおよび第2面2Bにそれぞれ設けられたグランド導体6,7と、誘電体基板2の内部に設けられた線状導体43を有する共振器42と、誘電体基板2の内部に設けられた線状導体46を有し、共振器42と結合する共振器45と、を備えている。
これに加え、共振器42は、その線状導体43の両端を誘電体基板2の第1面2Aのグランド導体6にそれぞれ接続する一対の第1面側ビア44A,44Bを備え、共振器45は、その線状導体46の両端を誘電体基板2の第2面2Bのグランド導体7にそれぞれ接続する一対の第2面側ビア47A,47Bを備えている。
このように構成したことにより、2つの共振器42,45は両端がグランド導体6,7に接続された偶モード共振器になる。このとき、共振器42のビア44A,44Bと共振器45のビア47A,47Bとは、誘電体基板2の厚さ方向に対して互いに逆方向に延び、互いに異なるグランド導体6,7に接続されている。この結果、例えば共振器42のビア44A,44Bと共振器45のビア47A,47Bとが互いに同じグランド導体に接続された場合に比べて、2つの共振器42,45の結合係数が大きくなり、帯域通過フィルタ41の比帯域幅を広げることができる。
また、帯域通過フィルタ41は、2つの共振器42,45と外部回路とを接続し、2つの共振器42,45が直列接続された入出力線路48および入出力線路49を備えている。このため、2つの共振器42,45は、入出力線路48と入出力線路49との間に直列接続され、共振器縦続接続フィルタを構成することができる。
入出力線路48は、線路側ビア50Aによって誘電体基板2の第2面2Bのグランド導体7に接続され、共振器42の線状導体43に結合されている。入出力線路49は、線路側ビア50Bによって誘電体基板2の第1面2Aのグランド導体6に接続され、共振器45の線状導体46に結合されている。入出力線路48と線状導体43との結合は、磁界結合が支配的である。入出力線路49と線状導体46との結合は、磁界結合が支配的である。
このとき、共振器42のビア44Aと入出力線路48のビア50Aとは、誘電体基板2の厚さ方向に対して互いに逆方向に延び、互いに異なるグランド導体6,7に接続されている。この結果、偶モード共振器である共振器42のビア44Aと入出力線路48のビア50Aとが互いに同じグランド導体に接続された場合に比べて、共振器42の外部Qが小さくなり、帯域通過フィルタ41の比帯域幅を広げることができる。この効果は、共振器45と入出力線路49との間でも、得ることができる。
なお、第4の実施形態では、入出力線路48,49は、共振器42,45の線状導体43,46と非接触であるものとした。本発明はこれに限らず、例えば、図23に示す第3の変形例による帯域通過フィルタ51のように、共振器42,45の線状導体43,46にそれぞれ接触した入出力線路52,53を備えていてもよい。即ち、第3の変形例では、入出力線路52は、第1の入出力線路であり、共振器42の線状導体43に直接的に接続されている。入出力線路53は、第2の入出力線路であり、共振器45の線状導体46に直接的に接続されている。第3の変形例による帯域通過フィルタ51でも、第4の実施形態と同様の効果を得ることができる。
次に、図24を用いて、本発明の第5の実施形態について説明する。第5の実施形態の特徴は、一方の偶モード共振器は、その線状導体の第1端が誘電体基板の第1面のグランド導体に接続され、その線状導体の第2端が誘電体基板の第2面のグランド導体に接続されており、他方の偶モード共振器は、その線状導体の第1端が誘電体基板の第2面のグランド導体に接続され、その線状導体の第2端が誘電体基板の第1面のグランド導体に接続されたことにある。なお、第5の実施形態において、第4の実施形態と同一の構成要素は同一の符号を付し、その説明を省略する。
第5の実施形態による帯域通過フィルタ54は、第4の実施形態による帯域通過フィルタ41とほぼ同様に、誘電体基板2、グランド導体6,7、共振器42,45、入出力線路48,49を備えている。
共振器42は、線状導体43を有している。線状導体43の第1端43Aは、第1面側ビアとなるビア55Aによって誘電体基板2の第1面2Aのグランド導体6に接続されている。線状導体43の第2端43Bは、第2面側ビアとなるビア55Bによって誘電体基板2の第1面2Aのグランド導体6に接続されている。
共振器45は、線状導体46を有している。線状導体46の第1端46Aは、他の第2面側ビアとなるビア56Aによって誘電体基板2の第2面2Bのグランド導体7に接続されている。線状導体46の第2端43Bは、他の第1面側ビアとなるビア56Bによって誘電体基板2の第1面2Aのグランド導体6に接続されている。
かくして、このように構成された第5の実施形態においても、2つの共振器42,45の結合係数が大きくなり、帯域通過フィルタ41の比帯域幅を広げることができる。
次に、図25を用いて、本発明の第6の実施形態について説明する。第6の実施形態の特徴は、帯域通過フィルタを用いて通信装置を構成したことにある。なお、第6の実施形態において、第1の実施形態と同一の構成要素は同一の符号を付し、その説明を省略する。
第6の実施形態による通信装置61は、アンテナ62、アンテナ共用器63、電力増幅器64、低雑音増幅器65、送信回路66、受信回路67を備えている。送信回路66は、電力増幅器64およびアンテナ共用器63を介して、アンテナ62に接続されている。受信回路67は、低雑音増幅器65およびアンテナ共用器63を介して、アンテナ62に接続されている。
アンテナ共用器63は、切替スイッチ63Aと、2つの帯域通過フィルタ63B,63Cとを備えている。切替スイッチ63Aは、アンテナ62に対して、送信回路66と受信回路67とのうちいずれか一方を選択的に接続する。切替スイッチ63Aは、通信装置61の送信状態および受信状態を選択的に切り替える。送信側の帯域通過フィルタ63Bは、切替スイッチ63Aと電力増幅器64との間に接続されている。受信側の帯域通過フィルタ63Cは、切替スイッチ63Aと低雑音増幅器65との間に接続されている。帯域通過フィルタ63B,63Cは、例えば第1の実施形態による帯域通過フィルタ1によって構成されている。なお、帯域通過フィルタ63B,63Cは、第2ないし第5の実施形態による帯域通過フィルタ16,21,41,54によって構成されてもよい。
かくして、このように構成された第6の実施形態においても、帯域通過フィルタ63B,63Cの比帯域幅を広げることができる。
なお、前記各実施形態では、共振器8,10,22,25,31,42,45の線状導体9,11,23,26,32,43,46は、直線状に形成されるものとしたが、湾曲形状や屈曲形状に形成されてもよい。
前記各実施形態は例示であり、異なる実施形態で示した構成の部分的な置換または組み合わせが可能であることは言うまでもない。
次に、上記実施形態に含まれる帯域通過フィルタ、通信装置および共振器として、例えば、以下に述べる態様のものが考えられる。
第1の態様としては、誘電体基板と、前記誘電体基板の第1面および第2面にそれぞれ設けられたグランド導体と、前記誘電体基板の内部に設けられた線状導体を有する第1の共振器と、前記誘電体基板の内部に設けられた線状導体を有する第2の共振器と、前記第1の共振器および前記第2の共振器と外部回路とを接続し、前記第1の共振器と前記第2の共振器が並列接続された第1の入出力線路および第2の入出力線路と、を備えた帯域通過フィルタであって、前記第1の共振器は、その線状導体の両端が開放され、前記第2の共振器は、その線状導体の両端を前記誘電体基板の第1面と第2面のうち一方の前記グランド導体にそれぞれ接続する一対の第1ビアを備え、前記第1の入出力線路は、前記誘電体基板の第1面と第2面のうち前記第1ビアとは異なる他方の前記グランド導体に接続する第2ビアを備え、前記第2の入出力線路は、前記誘電体基板の第1面と第2面のうち前記第1ビアとは異なる他方の前記グランド導体に接続する他の第2ビアを備えたことを特徴としている。
このように構成したことにより、第1の共振器は両端が開放された奇モード共振器になり、第2の共振器は両端がグランド導体に接続された偶モード共振器になる。これらの奇モード共振器および偶モード共振器は、第1の入出力線路と第2の入出力線路との間に並列接続され、共振器並列結合フィルタを構成する。このとき、偶モード共振器の第1ビアと入出力線路の第2ビアとは、誘電体基板の厚さ方向に対して互いに逆方向に延び、互いに異なるグランド導体に接続されている。この結果、偶モード共振器の第1ビアと入出力線路の第2ビアとが互いに同じグランド導体に接続された場合に比べて、偶モード共振器の外部Qが小さくなり、帯域通過フィルタの比帯域幅を広げることができる。
第2の態様としては、第1の態様において、前記誘電体基板の内部に設けられた線状導体を有し、前記第2の共振器に結合される第3の共振器を備え、前記第3の共振器は、その線状導体の両端を前記誘電体基板の第1面と第2面のうち前記第1ビアとは異なる他方の前記グランド導体にそれぞれ接続する一対の第3ビアを備えたことを特徴としている。このように構成したことにより、所謂Cul-de-Sac結合フィルタを構成することができる。
第3の態様としては、第1または第2の態様において、前記第1の共振器と前記第2の共振器との間に位置して前記誘電体基板を厚さ方向に貫通し、前記誘電体基板の第1面のグランド導体と前記誘電体基板の第2面のグランド導体とを接続する貫通ビアを備えたことを特徴としている。このように構成したことにより、帯域通過フィルタを含むパッケージ全体の不要な共振を抑制することができる。これに加え、2つの共振器と入出力線路との間の結合特性を安定させることができる。
第4の態様としては、第1ないし第3のいずれかの態様において、前記第2の共振器の線状導体と前記第1の入出力線路および前記第2の入出力線路とは、前記誘電体基板の厚さ方向に絶縁層を介して重なり合っていることを特徴としている。このように構成したことにより、偶モード共振器の外部Qが小さくなり、帯域通過フィルタの比帯域幅を広げることができる。
第5の態様としては、第4の態様において、前記第2の共振器の線状導体と前記第1の入出力線路および前記第2の入出力線路とは、他の電極、導体、あるいは線路を介することなく直接的に重なり合っていることを特徴としている。
第6の態様としては、第4の態様において、前記第2の共振器の線状導体と前記第1の入出力線路および前記第2の入出力線路とは、他の電極、導体、あるいは線路を介して間接的に重なり合っていることを特徴としている。
第7の態様としては、誘電体基板と、前記誘電体基板の第1面および第2面にそれぞれ設けられたグランド導体と、前記誘電体基板の内部に設けられた線状導体を有する第1の共振器と、前記誘電体基板の内部に設けられた線状導体を有し、前記第1の共振器と結合する第2の共振器と、を備えた帯域通過フィルタであって、前記第1の共振器は、その線状導体の両端を前記誘電体基板の第1面の前記グランド導体にそれぞれ接続する一対の第1面側ビアを備え、前記第2の共振器は、その線状導体の両端を前記誘電体基板の第2面の前記グランド導体にそれぞれ接続する一対の第2面側ビアを備えたことを特徴としている。
このように構成したことにより、第1の共振器と第2の共振器は両端がグランド導体に接続された偶モード共振器になる。このとき、偶モード共振器である第1の共振器の第1面側ビアと偶モード共振器である第2の共振器の第2面側ビアとは、誘電体基板の厚さ方向に対して互いに逆方向に延び、互いに異なるグランド導体に接続されている。この結果、2つの偶モード共振器のビアが互いに同じグランド導体に接続された場合に比べて、2つの偶モード共振器の結合係数が大きくなり、比帯域幅を広げることができる。
第8の態様としては、誘電体基板と、前記誘電体基板の第1面および第2面にそれぞれ設けられたグランド導体と、前記誘電体基板の内部に設けられた線状導体を有する第1の共振器と、前記誘電体基板の内部に設けられた線状導体を有し、前記第1の共振器と結合する第2の共振器と、を備えた帯域通過フィルタであって、前記第1の共振器は、その線状導体の第1端を前記誘電体基板の第1面の前記グランド導体に接続する第1面側ビアと、その線状導体の第2端を前記誘電体基板の第2面の前記グランド導体に接続する第2面側ビアと、を備え、前記第2の共振器は、その線状導体の第1端を前記誘電体基板の第2面の前記グランド導体に接続する他の第2面側ビアと、その線状導体の第2端を前記誘電体基板の第1面の前記グランド導体に接続する他の第1面側ビアと、を備えたことを特徴としている。
第9の態様としては、第7または第8の態様において、前記第1の共振器および前記第2の共振器と外部回路とを接続し、前記第1の共振器と前記第2の共振器が直列接続された第1の入出力線路および第2の入出力線路を備えたことを特徴としている。このため、第1の共振器と第2の共振器は、第1の入出力線路と第2の入出力線路との間に直列接続され、共振器縦続接続フィルタを構成することができる。
第10の態様としては、第9の態様において、前記第1の入出力線路は、一方の線路側ビアによって前記誘電体基板の第2面の前記グランド導体に接続され、前記第1の共振器の線状導体に結合され、前記第2の入出力線路は、他方の線路側ビアによって前記誘電体基板の第1面の前記グランド導体に接続され、前記第2の共振器の線状導体に結合されたことを特徴としている。
このとき、一方の共振器の第1面側ビアと一方の入出力線路の一方の線路側ビアとは、誘電体基板の厚さ方向に対して互いに逆方向に延び、互いに異なるグランド導体に接続されている。同様に、他方の共振器の第2面側ビアと他方の入出力線路の他方の線路側ビアとは、誘電体基板の厚さ方向に対して互いに逆方向に延び、互いに異なるグランド導体に接続されている。この結果、共振器(偶モード共振器)のビアと入出力線路のビアとが互いに同じグランド導体に接続された場合に比べて、共振器の外部Qが小さくなり、帯域通過フィルタの比帯域幅を広げることができる。
第11の態様としては、第9の態様において、前記一対の入出力線路のうち一方の入出力線路は、前記一方の共振器の線状導体に直接的に接続され、前記一対の入出力線路のうち一方の入出力線路は、前記他方の共振器の線状導体に直接的に接続されたことを特徴としている。これにより、2つの共振器に一対の入出力線路をそれぞれ直接的に結合させることができる。
第12の態様の通信装置は、第1ないし第11のいずれかの態様による帯域通過フィルタを備えている。
第13の態様としては、誘電体基板と、前記誘電体基板の第1面および第2面にそれぞれ設けられたグランド導体と、前記誘電体基板に設けられた第1の入出力線路および第2の入出力線路と、を備えた共振器であって、前記誘電体基板の内部に設けられた線状導体と、前記線状導体の両端を前記誘電体基板の第1面および第2面のうち一方の前記グランド導体にそれぞれ接続する一対の第1ビアと、を備え、前記第1の入出力線路は、前記誘電体基板の第1面と第2面のうち前記第1ビアとは異なる他方の前記グランド導体に接続する第2ビアを備え、前記第2の入出力線路は、前記誘電体基板の第1面と第2面のうち前記第1ビアとは異なる他方の前記グランド導体に接続する他の第2ビアを備えたことを特徴としている。