以下、図面を参照し、本発明の一実施形態の固定構造を説明する。なお、以下の実施形態はあくまで一例であり、本発明の固定構造は、以下の実施形態に限定されるものではない。
図1に示されるように、本実施形態の固定構造1は、基体2と、取付部材3と、基体2に対して取付部材3を押圧する固定部材4とを備えている。
固定構造1は、基体2と取付部材3とを互いに固定する構造である。固定構造1は、固定部材4によって取付部材3を基体2に対して押圧することにより、基体2と取付部材3とが変形係合構造を形成する。変形係合構造は、基体2と取付部材3とのいずれか一方に第一係合部E1と第二係合部E2(図2参照)とを有し、他方に第三係合部E3(図3参照)を有している。変形係合構造については、後述する。以下の実施形態では、車両に用いられる窓ガラス昇降装置WRに設けられた固定構造1を例に挙げて説明するが、本発明の固定構造1は、窓ガラス昇降装置WR以外の装置、構造に適用されてもよい。
図1に示されるように、窓ガラス昇降装置WRは、駆動部Dと、窓ガラスWが取付けられるガラスホルダ(取付部材3の一例。以下、ガラスホルダ3とも呼ぶ)と、ガラスホルダ3が取付けられる移動部材(基体2の一例。以下、移動部材2とも呼ぶ)と、駆動部Dによって巻き取り繰り出しされることで移動部材2を移動させるケーブルC1、C2とを備えている。本実施形態では、移動部材2は、移動部材2を昇降方向に案内するガイドレールGに案内されている。窓ガラス昇降装置WRは、駆動部DによってケーブルC1、C2が巻き取り繰り出しされることによって、移動部材2をガイドレールGに沿って移動させ、移動部材2に取付けられたガラスホルダ3に支持された窓ガラスWを昇降させる。窓ガラス昇降装置WRの上述した構造は一例であり、図示した構造に限定されない。たとえば、窓ガラス昇降装置WRは、ガイドレールGを設けることなく移動部材2を移動させてもよいし、ケーブルC1、C2を用いずに、アームの揺動により移動部材2を移動させるアーム式の窓ガラス昇降装置であってもよい。なお、本実施形態では、移動部材2とガラスホルダ3との間の取り付けに固定構造1が用いられている。
基体2は、取付部材3の固定対象である。取付部材3は、固定部材4によって基体2に対して押圧されることにより基体2に固定される部材である。本実施形態では、固定部材4はボルト・ナットやネジ等の締結部材であり(図5参照)、締結部材を締結することによって基体2に対して取付部材3が押圧される。なお、本明細書において、「基体2に対して取付部材3を押圧する」とは、固定部材4によって、基体2と取付部材3との間で互いに対して押圧力が加わることを意味する。たとえば、基体2に向かって取付部材3が押圧されてもよいし、取付部材3に向かって基体2が押圧されてもよいし、基体2および取付部材3の両方が互いに押圧されてもよい。なお、固定部材4は締結部材に限定されず、基体2に対して取付部材3を固定するために押圧することができる部材であればよい。
本実施形態では、図1〜図3に示されるように、基体2は移動部材(キャリアプレート)であり、取付部材3はガラスホルダであるが、基体2と取付部材3との組み合わせは特に限定されない。基体2は、固定部材4による押圧によって取付部材3が取り付けられる固定対象であれば、基体2の形状、構造、大きさ等は特に限定されない。同様に、取付部材3は、固定部材4による押圧によって基体2に固定可能であればよく、取付部材3の形状、構造、大きさ等は特に限定されない。なお、基体2は、固定構造1が窓ガラス昇降装置の一部を構成する場合には、キャリアプレートに対応する部材であるが、図1〜図3において簡略化されて記載されている。キャリアプレートとしての基体2は、公知の構造を採用することができ、取付部材3の取付位置をガイドレールGに対して略対称となるような位置に2ヶ所設けたり、雨よけの庇を設けたり、異音防止のためのクッションを用いるなどの構成を目的に応じて適宜採用することができる。
基体2は、本実施形態では、図2に示されるように、取付部材3が取り付けられる被取付面21(図2における二点鎖線参照)を有している。図2において、被取付面21は取付面31に対応した領域として記載されているが、必ずしも取付部材3に対応する領域ではなくてもよい。取付部材3は、図3に示されるように、被取付面21と対向する取付面31を有している。被取付面21および取付面31は、基体2および取付部材3の間の取付時に互いに対向する部位である。本実施形態では、被取付面21と取付面31とが対向した状態で、固定部材4によって基体2に対して取付部材3が押圧されることにより、取付面31が被取付面21に接触して基体2と取付部材3とが互いに固定される。本実施形態では、基体2の被取付面21には、図2および図4に示されるように、第一係合部E1および第二係合部E2が設けられ、図3に示されるように、取付部材3の取付面31に後述する第三係合部E3が設けられている。第一係合部E1および第二係合部E2は、取付部材3(取付面31)に設けられてもよく、その場合、第三係合部E3は基体2(被取付面21)に設けられる。
基体2は、図2および図4に示されるように、固定部材4が取り付けられる基体側固定部22を有し、取付部材3は、図3に示されるように、固定部材4が取り付けられる取付部材側固定部32を有している。本実施形態では、基体側固定部22および取付部材側固定部32は、ボルト等の締結部材として示された固定部材4を挿通することが可能な貫通孔である。基体側固定部22および取付部材側固定部32は、基体2と取付部材3との取付時に連通し、固定部材4が挿通される。基体側固定部22は基体2の被取付面21に設けられ、取付部材側固定部32は取付部材3の取付面31に設けられている。しかし、基体側固定部22および取付部材側固定部32の位置は、固定部材4によって基体2に対して取付部材3を押圧することができれば、特に限定されない。たとえば、基体側固定部22は基体2の被取付面21以外の部位に設けられてもよいし、取付部材側固定部32は取付部材3の取付面31以外の部位に設けられてもよい。なお、基体側固定部22は、基体側の固定部材取付部であり、取付部材側固定部32は取付部材側の固定部材取付部である。
本実施形態では、図1に示されるように、基体は窓ガラス昇降装置WRに用いられる移動部材2(キャリアプレート)であり、取付部材は窓ガラス昇降装置WRに用いられるガラスホルダ3である。移動部材2は、図2に示されるように、上述した被取付面21および基体側固定部22に加え、ケーブルC1、C2の端部が接続されるケーブル接続部23を有している。ケーブルC1、C2の一端はケーブル接続部23に接続され、ケーブルC1、C2の他端は、駆動部Dに設けられたドラム(図示せず)に接続される。ケーブルC1、C2が、モータ等の駆動部Dによりドラムが作動され、ケーブルC1、C2がドラムに巻き取り繰り出しされることによって、移動部材2が昇降する。ガラスホルダ3は、図3に示されるように、取付面31および取付部材側固定部32に加え、窓ガラスWを支持するガラス支持部33を有している。ガラス支持部33は、取付面31に対して、窓ガラスWの昇降方向で上昇側に設けられている。
移動部材である基体2の被取付面21は、本実施形態では、図2に示されるように、第一係合部E1および第二係合部E2が設けられた、所定の長さを有する溝部24を有している。一方、取付部材3の取付面31には、図3に示されるように、取付面31から突出し、溝部24の長さに対応した突条34が設けられている。突条34のうち、第一係合部E1および第二係合部E2に対向する部位が第三係合部E3となる。詳細は後述するが、本実施形態では、被取付面21を取付面31に対向させた状態で、被取付面21を取付面31に近付けることによって突条34が溝部24に嵌り込み、第三係合部E3が第一係合部E1および第二係合部E2に係合する。なお、基体2および取付部材3の間の取付方法は、第一係合部E1および第二係合部E2と、第三係合部E3とが係合するものであれば特に限定されない。たとえば基体2に対して取付部材3をスライドさせて基体2と取付部材3とを取り付けてもよいし、他の方法で基体2と取付部材3とを取り付けてもよい。
移動部材2に設けられる溝部24の数は特に限定されず、1つであっても複数であってもよい。本実施形態では、溝部24は被取付面21に一対設けられている。取付部材3に設けられる突条34も溝部24に対応した数であればよく、1つであっても複数であってもよい。本実施形態では、突条34は取付面31に一対設けられている。本実施形態では、図2に示されるように、一対の溝部24は、基体側固定部22を挟んで略平行に配置されている。同様に、一対の突条34は、一対の溝部24と対応させて設けられ、図3に示されるように、取付部材側固定部32を挟むように略平行に配置されている。この場合、一対の溝部24および一対の突条34の間に固定部材4による押圧力が加わるので、固定部材4の両側に位置する一対の溝部24および一対の突条34の両方にほぼ均等に押圧力を加えることができる。
本実施形態では、溝部24および突条34は、窓ガラスWの昇降方向に対して略垂直な方向(水平方向)に延びるように設けられているが、溝部24および突条34は、窓ガラスWの昇降方向に平行な方向に延びるように設けられてもよいし、他の方向に延びるように設けられてもよい。
第三係合部E3は、取付部材3が基体2に対して押圧されたときに、第一係合部E1および第二係合部E2の両方と係合する。本実施形態では、第三係合部E3は、図5〜図7に示されるように、先細となる先端部を有する突条34の一部として構成されている。第三係合部E3の形状は、第一係合部E1および第二係合部E2とともに変形係合構造を構成することができれば、特に限定されない。たとえば、第三係合部E3は、基体2と取付部材3とが取り付けられたときに、第一係合部E1および第二係合部E2と係合する複数の突部から構成されていてもよい。
本実施形態では、第三係合部E3を有する突条34は、取付部材3の取付面31に対して略垂直に突出している。突条34は、溝部24に挿入できる大きさに形成される。突条34の取付面31からの突出長さは、基体2の溝部24の深さ(後述する第二方向D2)に沿った長さよりも短く、かつ、第三係合部E3が第一係合部E1および第二係合部E2に係合することができる長さである。
本実施形態では、上述したように、基体2と取付部材3とが変形係合構造を形成する。変形係合構造は、基体2と取付部材3とが互いに押圧され、基体2および取付部材3のうち少なくとも一方が変形することで係合関係を生じる構造である。変形係合構造は、基体2と取付部材3とのいずれか一方に第一係合部E1と第二係合部E2とを有し、他方に第三係合部E3を有している。本実施形態では、基体2に第一係合部E1および第二係合部E2が設けられ、取付部材3に第三係合部E3が設けられている。第一係合部E1および第二係合部E2は、第三係合部E3と係合する。第一係合部E1および第二係合部E2は、第三係合部E3と係合可能な位置に設けられる。
第三係合部E3は、第一係合部E1と第二係合部E2と共に、取付部材3が基体2に対して押圧されることによって、一方が変形して凹部R(図5参照)を形成して、他方が凹部Rに入り込んで係合する係合構造を形成する。第一係合部E1、第二係合部E2および第三係合部E3(以下、単にまとめて係合部Eと呼ぶ)の少なくともいずれかが変形して凹部Rを形成し、凹部Rは凹部Rに対向する部位との間で凹凸係合する。これにより、基体2と取付部材3との間の係合力が高まり、たとえば寸法公差が生じることによる基体2と取付部材3との間のガタツキを抑制することができる。
なお、係合部Eのうちいずれが変形するかは、用いられる材料や形状に応じて変わるが、第一係合部E1および第二係合部E2と、第三係合部E3とのうちの一方のみが変形してもよいし、第一係合部E1および第二係合部E2と、第三係合部E3とのうちの両方が変形してもよい。また、第一係合部E1と第二係合部E2とのうちの一方のみが第三係合部E3により変形し、第一係合部E1と第二係合部E2とのうちの他方が第三係合部E3を変形させてもよい。係合部Eの係合構造における凹部Rは、本実施形態では、第一係合部E1および第二係合部E2に、第三係合部E3の先端形状に沿って形成された凹部として示されている。しかし、図示された凹部Rの形状は例示に過ぎず、他の形状となる場合もある。
変形係合構造は、固定部材4による基体2と取付部材3との間の押圧によって、第一係合部E1および第二係合部E2と、第三係合部E3との少なくとも一方が塑性変形して(潰れて)互いに係合することが好ましい。この場合、たとえば、基体2および取付部材3のうち、少なくとも第一係合部E1および第二係合部E2が塑性変形可能な樹脂または金属により構成されてもよいし、少なくとも第三係合部E3が塑性変形可能な樹脂または金属により構成されていてもよい。なお、第一係合部E1、第二係合部E2および第三係合部E3は全て同一の材料により構成されていてもよいし、異なる材料により構成されていてもよい。
図6に示されるように、第一係合部E1は、細幅部E11と厚幅部E12とを有している。また、図4に示されるように、第二係合部E2は、細幅部E21と厚幅部E22とを有している。第一係合部E1と第二係合部E2との細幅部E11、E21は、図4および図6に示されるように、一方向(以下、第一方向D1という)において互いにオーバーラップするオーバーラップ部OLを有し、第一係合部E1と第二係合部E2との厚幅部E12、E22は、一方向においてオーバーラップ部OLとは反対側に位置している。
第一係合部E1は、第三係合部E3を所定の係合位置に案内する。第一係合部E1は、第三係合部E3の位置と重なる位置に第一係合部E1が存在する状態で基体2と取付部材とが固定されると、第三係合部E3と係合する。第一係合部E1は、図6に示されるように、第一方向D1に沿って幅が変化し、幅が細い細幅部E11と幅が厚い厚幅部E12とを有している。第一係合部E1の厚幅部E12は、主として第三係合部E3を所定の係合位置に案内する機能を有する。第一係合部E1の細幅部E11は、主として第三係合部E3との間で変形係合する機能を有する。本実施形態では、第一係合部E1の幅は、固定部材4によって第三係合部E3が第一係合部E1を押圧する方向(第二方向D2)の長さである。本実施形態では、第一係合部E1は、基体2の表面(被取付面21)に垂直な方向に幅方向を有している。なお、第一係合部E1の幅方向は、基体2の表面に垂直な方向に限定されず、第三係合部E3が第一係合部E1および第二係合部E2を押圧する方向に応じて適宜変更される。
厚幅部E12は、上述したように主として第三係合部E3が第一係合部E1と変形係合する過程で第三係合部E3を所定の係合位置に案内する。所定の係合位置は、オーバーラップ部OLおよびその周辺領域とすることができる。厚幅部E12は、細幅部E11に対して第三係合部E3の押圧方向(第二方向D2)で手前側に位置している。また、厚幅部E12は、第一方向D1において、オーバーラップ部OLを挟んで、第二係合部E2の厚幅部E22の反対側に位置している。第一方向D1において、オーバーラップ部OLの一方側に第一係合部E1の厚幅部E12が位置し、オーバーラップ部OLの他方側に第二係合部E2の厚幅部E22が位置している。第三係合部E3は、溝部24の長手方向(第三方向D3)において、第一係合部E1と第二係合部E2との両方が重なるオーバーラップ部OLを有する。第一係合部E1の厚幅部E12は、第三係合部E3と係合した際に、第二係合部E2と第三係合部E3との係合部分の接触面積が少ないので、厚幅部E12と第三係合部E3との係合部分の接触面積を多くするように、厚幅として形成されている。
図6および図7に示されるように、第一係合部E1の厚幅部E12は、細幅部E11に向って徐々に細化されている。厚幅部E12が細幅部E11に向って徐々に細化されていることにより、第三係合部E3と第一係合部E1との間で変形による係合が生じる過程で、第三係合部E3が厚幅部E12に沿って、係合および変形させるべき所定の係合位置まで第一方向D1で案内される。これにより、固定部材4によって、基体2に対して取付部材3が押圧されたときに、基体2と取付部材3との係合位置が容易に調整される。したがって、固定構造1において、基体2と取付部材3との間の所望の固定位置からの位置ずれが生じにくい。
なお、厚幅部E12が「徐々に細化される」とは、第三係合部E3が第一係合部E1に向かって第二方向D2に押圧されたときに、厚幅部E12から細幅部E11に向かって第三係合部E3が移動するように、厚幅部E12の幅(第二方向D2の長さ)が第一方向D1に沿って変化することをいう。たとえば、厚幅部E12に細幅部E11に向かって幅が細くなる傾斜や曲面が形成されていればよい。本実施形態では、第一係合部E1は、図6および図7に示されるように、第一方向D1に沿って傾斜する傾斜部E13を有している。厚幅部E12は、被取付面21から立設される第一係合部E1の高さ方向の幅が細幅部E11に向かって細くなるように設けられている。第三係合部E3は、締結部材(固定部材4)の締結の際に第一係合部E1の傾斜部E13を摺動して、第一係合部E1と係合する。傾斜部E13が設けられている場合、第三係合部E3が第一係合部E1に対して、所定の係合箇所へと容易に案内される。本実施形態では、傾斜部E13は厚幅部E12から細幅部E11にかけて設けられている。しかし、傾斜部E13は少なくとも厚幅部E12に形成されていればよく、第一係合部E1の第一方向D1に沿って全体に形成されている必要はない。なお、本実施形態においては、説明の便宜上、第一係合部E1のうち、幅が細い方の第一方向D1における半分の領域を細幅部E11とし、幅が厚い方の半分の領域を厚幅部E12としている。しかし、細幅部E11および厚幅部E12の「細幅」および「厚幅」は、互いに対する相対的な厚さの違いをいうものであり、図示する範囲に限定されるものではない。
第一係合部E1の細幅部E11は、第三係合部E3と変形により係合する。たとえば、本実施形態では、固定部材4により第三係合部E3から第一係合部E1に第二方向D2に押圧力が加わったときに、細幅部E11は第三係合部E3により押し潰されて変形し、第三係合部E3と係合する。これにより、固定部材4による基体2と取付部材3との間の固定に加えて、第一係合部E1と第三係合部E3との間の変形による係合により、基体2と取付部材3との間の係合が強まり、基体2と取付部材3との間のガタツキを抑制することができる。なお、本実施形態では、固定構造1は、細幅部E11側が主として変形するように構成されているが、第三係合部E3側が主として変形するように構成されていてもよい。
本実施形態では、第一係合部E1は、基体2の溝部24内に設けられ、溝部24の底部Bに対して略垂直(第二方向D2)に立設している。また、第一係合部E1は、図6および図7に示されるように、溝部24の長手方向(第三方向D3)に沿って延びる、溝部24の一方の側面S1から他方の側面S2に向かって延びている。第一係合部E1の第二方向D2での幅は、溝部24の一方の側面S1側から他方の側面S2側に向かって徐々に細くなっている。なお、本実施形態では、第一係合部E1は、略三角形状の板状体として示されているが、第一係合部E1の形状は図示する形状に限定されない。たとえば、本実施形態では、細幅部E11は、厚幅部E12と同様に徐々に細化されているが、細幅部E11は、第一方向D1に沿って段差状に幅が小さくなるように構成されていてもよいし、第一方向D1に沿って同じ幅であってもよい。また、第一係合部E1は、本実施形態では、第一方向D1および第二方向D2に垂直な方向(第三方向D3)の寸法が同一のものを例示している。しかし、第一係合部E1の第三方向D3における寸法は特に限定されず、たとえば、第一係合部E1は、細幅部E11の先端側に向かって細くなるように構成されていてもよい。
第二係合部E2は、第一係合部E1とともに、第三係合部E3と変形係合する。たとえば、本実施形態では、固定部材4により第三係合部E3から第二係合部E2に第二方向D2に押圧力が加わったときに、第二係合部E2は第三係合部E3により押し潰されて変形し、第三係合部E3と係合する。これにより、固定部材4による基体2と取付部材3との間の固定に加えて、第二係合部E2と第三係合部E3との間の変形による係合により、基体2と取付部材3との間の係合がさらに強まり、基体2と取付部材3との間のガタツキをさらに抑制することができる。なお、本実施形態では、固定構造1は、第三係合部E3に対して第二係合部E2側が主として変形するように構成されているが、第三係合部E3側が主として変形するように構成されていてもよい。
第二係合部E2は、図4に示されるように、細幅部E21と厚幅部E22とを有している。第一係合部E1と第二係合部E2との細幅部E11、E21は、図4および図6に示されるように、第一方向D1において互いにオーバーラップするオーバーラップ部OLを有している。第一係合部E1の厚幅部E12により案内された第三係合部E3は、第一係合部E1の細幅部E11と、第二係合部E2の細幅部E21とが第一方向D1においてオーバーラップしたオーバーラップ部OLを中心として、第一係合部E1および第二係合部E2と変形係合する。なお、オーバーラップ部OLは、細幅部E11と細幅部E21とがオーバーラップする領域を含んでいればよく、たとえば、細幅部E11と厚幅部E22とがオーバーラップする部分や、細幅部E21と厚幅部E12とがオーバーラップする領域を含んでいてもよい。
第二係合部E2は、第三係合部E3と第一係合部E1との間の変形係合時に第一係合部E1の第一方向D1における変形量の変化を補完する。第二係合部E2は、第一方向D1において、第二係合部E2の厚幅部E22から細幅部E21に向かう方向が、第一係合部E1の厚幅部E12から細幅部E11に向かう方向とは反対方向となるように設けられている。第一方向D1で第一係合部E1の細幅部E11が設けられた位置に第二係合部E2の細幅部E21が位置し、第一係合部E1の厚幅部E12に対する細幅部E11での変形量の減少を補完する。これにより、第一係合部E1および第二係合部E2と、第三係合部E3との間のトータルの変形量が、基体2と取付部材3との間でのガタツキを抑制するのに充分な変形量として確保される。
また、本実施形態では、第一係合部E1と第三係合部E3との間の変形量が小さくなる方向側に、第二係合部E2の厚幅部E22が位置し、第一係合部E1と第三係合部E3との間の変形量が大きくなる方向側に第二係合部E2の細幅部E21が位置する。したがって、所定の係合位置における第一係合部E1および第二係合部E2と、第三係合部E3との間の係合時の変形量と、第三係合部E3が所定の係合位置から第一方向D1でずれて係合した場合の変形量との差が小さくなる。すなわち、図8〜図11に示されるように、所定の係合位置から第一方向D1で第三係合部E3がずれて係合した場合の第一係合部E1と第三係合部E3との間の変形量(図10および図11の斜線部参照)は、所定の係合位置で第三係合部E3が係合した場合の第一係合部E1と第三係合部E3との間の変形量(図8および図9の斜線部参照)よりも小さくなる。一方、所定の係合位置から第一方向D1で第三係合部E3がずれて係合した場合の第二係合部E2と第三係合部E3との間の変形量(図10および図11の斜線部参照)は、所定の係合位置で第三係合部E3が係合した場合の第二係合部E2と第三係合部E3との間の変形量(図8および図9の斜線部参照)よりも大きくなる。したがって、第一係合部E1と第三係合部E3とが係合する位置が、第一方向D1において変動したとしても、第一係合部E1および第二係合部E2と、第三係合部E3との間の係合時の変形量が大きく変動しない。したがって、基体2と取付部材3との間の取付時に、第一方向D1でずれが生じたりしたとしても、変形係合時の第一係合部E1、第二係合部E2および第三係合部E3の変形量の合計を所定量確保することができる。
以上のように、本実施形態では、第一係合部E1の厚幅部E12が細幅部E11に向かって徐々に細化されていることにより、取付部材3の基体2に対する固定部材4による押圧時に第三係合部E3が第一係合部E1の細幅部E11側に向かって案内される。そのため、第三係合部E3が第一係合部E1および第二係合部E2の細幅部E11、E21がオーバーラップするオーバーラップ部OLに向かって案内される。よって、基体2と取付部材3との固定位置が所望の位置に容易に調整される。さらに、第一係合部E1の細幅部E11と第二係合部E2の細幅部E21とが第一方向D1でオーバーラップするオーバーラップ部OLを有しているため、第一係合部E1および第二係合部E2と、第三係合部E3との間の係合時にガタツキの抑制に必要となるトータルの変形量を容易に確保することができる。また、第一係合部E1と第三係合部E3とが係合する位置が、第一方向D1において変動したとしても、変形量の変動幅を第一方向D1に沿って小さくすることができる。そのため、たとえば、基体2と取付部材3との取付時に、第三係合部E3と第一係合部E1および第二係合部E2との係合位置が第一方向D1でずれたり、たとえば溝部24や突条34などに寸法公差が生じた場合であっても、製品間でほぼ同等の係合力を得ることが可能になる。
なお、第二係合部E2の細幅部E21および厚幅部E22の幅の方向は、第一係合部E1の第一方向D1における変形量の変化を補完するように設けられていれば特に限定されない。第一係合部E1と第二係合部E2の幅方向が異なる方向であってもよい。たとえば、本実施形態では、第一係合部E1の幅方向は、基体2の表面に垂直な方向(第二方向D2)であり、第二係合部E2の幅方向は、第一方向D1および第二方向D2に垂直な方向である第三方向D3である。たとえば、溝部24内に第一係合部E1および第二係合部E2が設けられる場合、第二係合部E2の幅を溝部24の深さ方向(第二方向D2)に変化させる必要がなく、溝部24の長手方向(第三方向D3)に沿って第二係合部E2の幅を広げることができる。そのため、第二係合部E2を設けるために、溝部24の深さを深くする必要がなく、溝部24を深くすることにより基体2が厚くなることが抑制される。また、溝部24の長手方向には充分なスペースがあるため、第二係合部E2の幅の確保が容易である。なお、第二係合部E2の幅は、厚幅部E22から細幅部E21に向かって、徐々に細化するように構成されていてもよいし、段差状に細くなってもよい。
本実施形態では、第二係合部E2の幅方向は、溝部24の長手方向となる第三方向D3であり、第二係合部E2の溝部24の底部Bからの第二方向D2に沿った高さを、第一係合部E1の高さよりも低くすることができる。そのため、第一係合部E1の厚幅部E12による第三係合部E3の所定の係合位置への移動が、第二係合部E2により阻害されにくい。また、第三係合部E3が所定の係合箇所に位置したときに、取付部材3の突条34の先端が、溝部24にある程度深く嵌った状態となる。そのため、基体2と取付部材3とを固定部材4により固定する際に、安定して固定することができる。
また、本実施形態では、図7に示されるように、第二係合部E2と第一係合部E1とは溝部24の長手方向(第三方向D3)で離間して配置されている。これにより、第三係合部E3が第一係合部E1および第二係合部E2と変形係合した際に、取付部材3の突条34が、第三方向D3(水平方向)に対するガタツキが抑制される。本実施形態では、1つの溝部24内に、一対の第一係合部E1の間に第二係合部E2が第三方向D3で互いに離間して設けられている。これにより、溝部24内の第一係合部E1および第二係合部E2に係合する、第三係合部E3を有する突条34のガタツキがより抑制される。