JP6870855B2 - フレキシブル多孔質金属箔およびフレキシブル多孔質金属箔の製造方法 - Google Patents

フレキシブル多孔質金属箔およびフレキシブル多孔質金属箔の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、焼結金属多孔質材およびその製造に関し、具体的には、フレキシブル多孔質金属箔およびフレキシブル多孔質金属箔の製造方法に関する。
本願は、本願の出願人により2014年10月31日に行われた、出願番号2014106089803、発明名称「フレキシブル多孔質金属箔およびその製造方法」の先の中国特許出願の明細書に記載されているDEフレキシブル多孔質金属箔およびその製造方法と技術的に関連する場合がある。また、該先の出願は本願の出願日の時点では未公開であったため、本明細書の記載内容には、公衆が本願包袋の閲覧の際に本発明のフレキシブル多孔質金属箔およびその製造技術をより全面的、明確に把握することが可能となるよう、該先の出願の内容の一部が含まれている。
焼結金属多孔質材は主に濾過材として用いられる。具体的な利用においては、焼結金属多孔質材を一定の形状および構造の濾過素子に作製し、その後、濾過素子を濾過装置の中に取り付ける必要がある。従来の焼結金属多孔質材からなる濾過素子は、基本的に剛性の管状または板状の構造になっているのがほとんどである。これらの製造原理は概ね類似しており、すなわち、専用の成形型を用い、該金属多孔質材を構成する原料粉を管状または板状の粗形品に加圧成形する工程(通常、イソタクチック成形技術を用いる)と、次に粗形品を焼結し、焼結後に製品を得る工程とに分けられる。
前記管状または板状の焼結金属多孔質材からなる濾過素子は、その形状や構造、および、濾過装置や濾過システムに対する付加的要求の影響を受け、使用範囲が制限されている。従来の濾過素子(例えば有機濾過膜)に比べ、焼結金属多孔質材からなる濾過素子は、耐食性、材料への不可逆な汚染に対する耐性、物理強度などの面において強い優勢を持つ。したがって、複数の分野において従来の濾過素子に取って代わる新規な、焼結金属多孔質材からなる濾過素子の開発は、重要な意義を持つ。
以上の背景に鑑み、本発明は、フレキシブル多孔質金属箔、すなわち、金属多孔質材から構成された比較的自由に湾曲、ないしは折り畳みが可能な薄片を先導的に提案する。
なお、論文「Ti−Al金属間化合物多孔質材の研究進展;江ぎょうら;中国の材料進展,第29巻,第3期,2010年3月」の第2.3節に、Ti−Al金属間化合物からなる紙状膜の製造プロセスが記載されているが、この紙状膜はTi−Al金属間化合物から構成されるため、結局は剛性の材料である。
本発明の目的は、まず、複数の種類のフレキシブル多孔質金属箔およびフレキシブル多孔質金属箔の製造方法を提供することにある。本発明の別の目的は、複数の種類の多孔質金属箔(フレキシブルまたは剛性)の製造方法を提供することにある。本発明の更なる目的は、前記方法に適用可能な製膜装置を提供することにある。
本発明が提供する第1のフレキシブル多孔質金属箔は、固溶体合金、面心立方格子構造の金属単体または体心立方格子構造の金属単体をマトリックス相とする金属多孔質材から構成された薄片であり、該薄片は、均質なフィルムを焼結してなるものであり、厚さが5〜200μm、平均孔径が0.05〜100μm、孔隙率が15〜70%である。具体的には、まず材料の成分に関して、該フレキシブル多孔質金属箔は、固溶体合金、面心立方格子構造の金属単体または体心立方格子構造の金属単体をマトリックス相とする金属から構成されることにより、該フレキシブル多孔質金属箔のフレキシブル性が確保される。次に、該フレキシブル多孔質金属箔を構成する金属材は多孔質材であり、その孔構造に関しては、平均孔径が0.05〜100μm、孔隙率が15〜70%である。これにより、フレキシブル多孔質金属箔は、濾過分離に対する幅広い要求を満たすことができる。また、フレキシブル多孔質金属箔(薄片)の厚さは、5〜200μmであり、通常10〜60μmである。更に重要なのは、該フレキシブル多孔質金属箔は1つの均質なフィルムを焼結してなるものである。いわゆる「均質」とは、フィルムの成分が概ね均一であることを意味し、すなわち、背景技術の「Ti−Al金属間化合物多孔質材の研究進展」に言及された、膜被覆処理を経た合成反応前のアルミ箔とは本質的に異なる。膜被覆処理を経た合成反応前のアルミ箔は、非対称状態の薄片と理解してよい。なお、「非対称」の含意は、焼結金属多孔質材の分野において共通している。本発明に言う「均質」は、「非対称」と区別するために用いる概念である。本発明に係るフレキシブル多孔質金属箔は、1つの均質なフィルムを焼結してなるものであるため、箔の孔径分布がより均一になっており、箔の平ら度がより優れている。
前記薄片は、全率固溶体合金をマトリックス相とする金属多孔質材から構成されてもよい。例えば、前記薄片は、Ag−Au固溶体、Ti−Zr固溶体、Mg−Cd固溶体またはFe−Cr固溶体をマトリックス相とする金属多孔質材から構成されてもよい。また、例えば、前記薄片は、Ni−Cu固溶体金属多孔質材から構成されることが好ましい。この場合、該多孔質材における数多くの孔隙のうち、75%以上の孔隙は、孔径差が70μm未満の範囲内に収まっていてもよい。また、Ni−Cu固溶体金属多孔質材は、フレキシブル性(複数回の折り畳みが可能)および化学的安定性などの面において良好であり、焼結成形した多孔質材の透過性においても優れるため、適用範囲が比較的広い。
また、前記薄片は、有限固溶体(limited solid solution)合金をマトリックス相とする金属多孔質材から構成されてもよい。例えば、前記薄片は、Cu−Al固溶体、Cu−Zn固溶体、Fe−C−Cr固溶体をマトリックス相とする金属多孔質材から構成されてもよい。また、前記薄片は、面心立方格子構造のAl、Ni、CuまたはPbをマトリックス相とする金属多孔質材から構成されてもよい。さらに、前記薄片は、体心立方格子構造のCr、W、VまたはMoをマトリックス相とする金属多孔質材から構成されてもよい。
本発明に係る前記フレキシブル多孔質金属箔は、例えば工業においては、紡織や製革産業における余熱交換、薬品回収、汚染抑制、食品加工業における浄化、濃縮、消毒、副産物回収、医薬や保健業における人造気管、放出制御、血液濾過、水浄化、車産業におけるフィルタなどに適用でき、民用においては、マスク上の粉塵濾過材、および静電気除塵機能付きのカーテン材などに適用でき、幅広い適用範囲を有する。
本発明に係る前記フレキシブル多孔質金属箔の製造方法は、分散剤およびバインダを用い、金属多孔質材を構成する原料粉を粘稠な懸濁液とするステップ(1)と、前記懸濁液を製膜装置の成形キャビティに注入して乾燥させ、均質なフィルムを形成するステップ(2)と、前記フィルムを該フィルムの外形に合致する焼結装置内に設置して拘束焼結を行い、焼結後、得られたフレキシブル多孔質金属箔を焼結装置内から取り出すステップ(3)とを含む。
フレキシブル多孔質金属箔がNi−Cu固溶体金属多孔質材から構成される場合、高性能のNi−Cuフレキシブル多孔質金属箔を製造するために、前記方法は、ステップ(1)において、Ni粉とCu粉とを、Cu粉の質量が原料粉の質量の30〜60%になるように均一に混合して該原料粉を形成しておき、次に、分散剤であるエタノールに、バインダであるPVBを、PVBとエタノールとの質量比が(0.5〜5):100の比率となるように添加してPVB溶液を調製し、その後、エタノール100mlあたり、原料粉20〜50gの比率となるように、原料粉をPVB溶液に添加、撹拌して原料粉を十分に均一分散させ、粘稠な懸濁液を得る。そして、ステップ(3)における焼結プロセスは、焼結温度を520〜580℃まで徐々に昇温して60〜180分間保温する第1焼結段階と、第1段階の後に、≧5℃/分の昇温速度でそのまま1130〜1180℃まで昇温して120〜300分間保温する第2焼結段階と、を含む。
前記方法に適用可能な製膜装置は、フィルムのエッジを成形するための型枠を備えた固定部と、フィルムの底面を型枠と共同で成形するための型板であって、該型板を型枠の深さ方向に移動させる調節装置と連結された該型板を備えた調節部と、型枠の上面に位置していると共に動作時に刃先が型枠の上面に平行に密着するスクレーパを備えた可動部と、を含む。該製膜装置は、フィルムの厚さを比較的正確に制御し、フィルム厚さの均一性およびフィルム表面の平ら度を確保することができる。
前記調節装置の具体的な一実施形態として、調節装置は、型枠上に相対的に固定されていると共に型板の底面における四隅とそれぞれ連結されている、独立に動作する高さ調節機構を備えている。これにより、型板の四隅の高さをそれぞれ調節し、型板全体と型枠の上面との平行を確保することができ、フィルムの厚さの均一性がより向上する。
また、前記型枠における成形面、および、前記型板における成形面上には、580℃下で揮発可能な潤滑剤塗層が設けられる。なお、潤滑剤塗層としては、具体的にワセリン(登録商標)塗層を用いてもよい。これにより、型への付着を防止し、成形されたフィルムの、製膜装置からのスムーズな取り出しを確保することができる。同時に、潤滑剤塗層の揮発性により、後に製造されるフレキシブル多孔質金属箔の成分への影響がなく、フレキシブル多孔質金属箔の孔隙率の向上にも寄与する。
成形されたフィルムを製膜装置からスムーズに取り出せるように、型枠における成形面、および、型板における成形面上に、PEプラスチックフィルムまたはPETプラスチックフィルムを敷いてもよい。成形面上にPEプラスチックフィルムまたはPETプラスチックフィルムを敷いて懸濁液を成形キャビティに注入して乾燥させることで成形されたフィルムは、製膜装置へ付着せず、離型しやすい。
前記方法に適用可能なフィルム焼結装置は、耐高温材製の上型、下型および側型を含み、前記上型、下型は、前記側型と共同で、内部のフィルムに合致する型キャビティを構成する。前記型キャビティには、焼結時の揮発物を排出するための排気構造が連結されている。前記排気構造は、上型と側型との嵌合部に予め設けた嵌合隙間、および/または、下型と側型との嵌合部に予め設けた嵌合隙間、および/または、上型、下型および側型のうち少なくとも1つに設けられた気孔である。該焼結装置によれば、フィルムに対して拘束焼結を行うことができ、焼結過程中のフィルムの変形を防止することができる。
上型、下型および側型の具体的な好ましい構造としては、前記側型が筐体であり、上型および下型がそれぞれ挟持板であり、前記筐体内に少なくとも3つの挟持板が設けられており、互いに隣接する何れか2つの挟持板の間が前記型キャビティとなっている。これにより、複数のフィルムの同時焼結が実現され、生産効率が向上すると共に、焼結の一様性が確保される。
また、前記上型、下型および側型における、フィルムと接触する表面には、酸化アルミニウム使用塗層が設けられている。酸化アルミニウムは、高温焼結の過程中に焼結装置自身の材料およびフィルムの材料における元素の相互拡散を遮断することができる。
前記上型、下型および側型のうち、少なくとも1つがグラファイト製であってもよい。グラファイトは良好な耐高温性を有し、その表面が滑らかであるため、焼結後の製品の離型にも有効である。
本発明が提供する第2のフレキシブル多孔質金属箔は、固溶体合金をマトリックス相とする金属多孔質材から構成された薄片であり、該薄片は、厚さが5〜200μm、平均孔径が0.05〜100μm、孔隙率が15〜70%である。具体的には、材料の成分に関して、該フレキシブル多孔質金属箔は、固溶体合金をマトリックス相とする金属から構成されることにより、該フレキシブル多孔質金属箔のフレキシブル性が確保される。次に、該フレキシブル多孔質金属箔を構成する金属材は、多孔質材であり、その孔構造に関しては、平均孔径が0.05〜100μm、孔隙率が15〜70%である。これにより、フレキシブル多孔質金属箔は、濾過分離に対する幅広い要求を満たすことができる。また、フレキシブル多孔質金属箔(薄片)の厚さは、5〜200μmであり、通常10〜60μmである。
前記薄片は、全率固溶体合金をマトリックス相とする金属多孔質材から構成されてもよい。例えば、前記薄片は、Ag−Au固溶体、Ti−Zr固溶体、Mg−Cd固溶体またはFe−Cr固溶体をマトリックス相とする金属多孔質材から構成されてもよい。また、例えば、前記薄片は、Ni−Cu固溶体金属多孔質材から構成されることが好ましい。Ni−Cu固溶体金属多孔質材は、フレキシブル性(複数回の折り畳みが可能)および化学的安定性などの面において良好であるため、適用範囲が比較的広い。
前記薄片は、有限固溶体合金をマトリックス相とする金属多孔質材から構成されてもよい。例えば、前記薄片は、Cu−Al固溶体、Cu−Zn固溶体、Fe−C−Cr固溶体をマトリックス相とする金属多孔質材から構成されてもよい。
本発明に係る前記第2のフレキシブル多孔質金属箔は、工業においては、紡織や製革産業における余熱交換、薬品回収、汚染抑制、食品加工業における浄化、濃縮、消毒、副産物回収、医薬や保健業における人造気管、放出制御、血液濾過、水浄化、車産業におけるフィルタなどに適用でき、民用においては、マスク上の粉塵濾過材、および静電気除塵機能付きのカーテン材などに適用できる。
本発明に係る第2のフレキシブル多孔質金属箔の製造方法は、フレキシブル多孔質金属箔を構成する金属多孔質材のうち1種または複数種の元素からなる箔である担持体を準備するステップ(1)と、分散剤およびバインダを用い、金属多孔質材を構成する残りの元素から生成された原料粉を粘稠な懸濁液とするステップ(2)と、担持体の表面に前記懸濁液を付着させて乾燥し、担持体の表面に付着した状態のフィルムを形成するステップ(3)と、フィルムが付着された担持体を、その外形に合致する焼結装置内に設置して拘束焼結を行い、焼結後、得られたフレキシブル多孔質金属箔を焼結装置内から取り出すステップ(4)と、を含む。
前記第2のフレキシブル多孔質金属箔の製造方法に適用可能な製膜装置は、フィルムのエッジを成形するための型枠を備えた固定部と、担持体を型枠と共同で格納するための型板であって、該型板を型枠の深さ方向に移動させる調節装置と連結された該型板を備えた調節部と、型枠の上面に位置していると共に動作時に刃先が型枠の上面に平行に密着するスクレーパを備えた可動部と、を含む。該製膜装置は、フィルムの厚さを比較的正確に制御し、フィルム厚さの均一性およびフィルム表面の平ら度を確保することができる。
前記調節装置の具体的な一実施形態として、調節装置は、型枠上に相対的に固定されていると共に型板の底面における四隅とそれぞれ連結されている、独立に動作する高さ調節機構を含む。これにより、型板の四隅の高さをそれぞれ調節し、型板全体と型枠の上面との平行を確保することができ、フィルムの厚さの均一性がより向上する。
同様に、成形されたフィルムを製膜装置からスムーズに取り出せるように、型枠における成形面、および、型板における成形面上に、PEプラスチックフィルムまたはPETプラスチックフィルムを敷いてもよい。成形面上にPEプラスチックフィルムまたはPETプラスチックフィルムを敷いて懸濁液を成形キャビティに注入して乾燥させることで形成されたフィルムは、製膜装置へ付着せず、離型しやすい。
前記第2のフレキシブル多孔質金属箔の製造方法に適用可能な焼結装置は、耐高温材製の上型、下型および側型を含み、前記上型、下型は、前記側型と共同で、フィルムが付着された担持体に合致する型キャビティを構成する。前記型キャビティには、焼結時の揮発物を排出するための排気構造が連結されている。前記排気構造は、上型と側型との嵌合部に予め設けた嵌合隙間、および/または、下型と側型との嵌合部に予め設けた嵌合隙間、および/または、上型、下型および側型のうち少なくとも1つに設けられた気孔である。該焼結装置によれば、フィルムが付着された担持体に対して拘束焼結を行うことができ、焼結過程中の変形を防止することができる。
上型、下型および側型の具体的な好ましい構造としては、前記側型が筐体であり、上型および下型がそれぞれ挟持板であり、前記筐体内に少なくとも3つの挟持板が設けられており、互いに隣接する何れか2つの挟持板の間が前記型キャビティとなっている。これにより、フィルムが付着された複数の担持体の同時焼結が実現され、生産効率が向上すると共に、焼結の一様性が確保される。
また、上型、下型および側型における、フィルムと接触する表面には、酸化アルミニウム使用塗層が設けられている。酸化アルミニウムは、高温焼結の過程中に焼結装置自身の材料および担持体やフィルムの材料における元素の相互拡散を遮断することができる。
前記上型、下型および側型のうち、少なくとも1つがグラファイト製であってもよい。グラファイトは良好な耐高温性を有し、その表面が滑らかであるため、焼結後の製品の離型にも有効である。
なお、前記第2のフレキシブル多孔質金属箔の製造方法に用いられる製膜装置および焼結装置は、前記第1のフレキシブル多孔質金属箔の製造方法に用いられる製膜装置および焼結装置とは、全く同様の構造であってもよい。両者の違いとしては、第2の方法に関する製膜装置を用いる場合には型板上に担持体を設置する必要があるのに対し、第1の方法に関する製膜装置を用いる場合には型板上に担持体を設置する必要がない。また、第2の方法に関する焼結装置の型キャビティ内にはフィルムが付着された担持体(非対称構造である)が格納されるのに対し、第1の方法に関する焼結装置の型キャビティ内には均質のフィルムが格納される。
本発明に係る第3のフレキシブル多孔質金属箔は、固溶体合金、面心立方格子構造の金属単体または体心立方格子構造の金属単体をマトリックス相とする金属多孔質材から構成された薄片であり、該薄片は、厚さが>200μm且つ≦1500μm、平均孔径が0.05〜100μm、孔隙率が15〜70%である。第3のフレキシブル多孔質金属箔は、前記第1のフレキシブル多孔質金属箔の製造方法によって製造(つまり、1つの均質なフィルムを焼結してなる)されてもよい。第3のフレキシブル多孔質金属箔が固溶体合金をマトリックス相とする金属多孔質材から構成された薄片である場合、当該第3のフレキシブル多孔質金属箔は、前記第2のフレキシブル多孔質金属箔の製造方法によって製造されてもよい。
第3のフレキシブル多孔質金属箔を構成する前記薄片は、全率固溶体合金をマトリックス相とする金属多孔質材から構成されてもよい。例えば、前記薄片は、Ag−Au固溶体、Ti−Zr固溶体、Mg−Cd固溶体またはFe−Cr固溶体をマトリックス相とする金属多孔質材から構成されてもよい。また、例えば、前記薄片は、Ni−Cu固溶体金属多孔質材から構成されることが好ましい。この場合、該多孔質材における数多くの孔隙のうち、75%以上の孔隙は、孔径差が70μm未満の範囲内に収まっていてもよい。また、Ni−Cu固溶体金属多孔質材は、フレキシブル性(複数回の折り畳みが可能)および化学的安定性などの面において良好であり、焼結成形した多孔質材の透過性においても優れるため、適用範囲が比較的広い。
第3のフレキシブル多孔質金属箔を構成する前記薄片は、有限固溶体合金をマトリックス相とする金属多孔質材から構成されてもよい。例えば、前記薄片は、Cu−Al固溶体、Cu−Zn固溶体、Fe−C−Cr固溶体をマトリックス相とする金属多孔質材から構成されてもよい。また、前記薄片は、面心立方格子構造のAl、Ni、CuまたはPbをマトリックス相とする金属多孔質材から構成されてもよい。さらに、前記薄片は、体心立方格子構造のCr、W、VまたはMoをマトリックス相とする金属多孔質材から構成されてもよい。
前記第1のフレキシブル多孔質金属箔および第2のフレキシブル多孔質金属箔に比べ、第3のフレキシブル多孔質金属箔は厚さがより厚い。したがって、第3のフレキシブル多孔質金属箔の強度は、第1のフレキシブル多孔質金属箔および第2のフレキシブル多孔質金属箔の強度よりも高いことが可能である。これにより、フレキシブル多孔質金属箔の使用において、より高い強度が要求される場合には、第3のフレキシブル多孔質金属箔がより好ましく適用される。典型的な一適用例として、第3のフレキシブル多孔質金属箔を濾過用濾過袋の製作に用いてもよい。濾過袋は、例えば濾過袋式の除塵機に幅広く使用されている。しかし、従来の濾過袋の袋本体は、基本的に有機繊維で織られるゆえに、「布袋」とも呼ばれ、耐高温性能が悪く濾過精度が高くないという欠点がある。本発明は、前記第3のフレキシブル多孔質金属箔から作製された袋本体を含む濾過用濾過袋を提供する。第3のフレキシブル多孔質金属箔は、比較的高い強度を有するため、濾過袋が使用される過程では、頻繁な吹き戻し等の要因による損傷が起こりにくく、さらに、その材料特性上、良好な耐高温性能を有する。
前記フレキシブル多孔質金属箔の製造方法以外に、本発明は、さらに、前記のフレキシブル多孔質金属箔の製造及びその他の多孔質金属箔の製造の両方にも用い得る下記幾つかの、多孔質金属箔の改良製造方法を提供する。すなわち、金属多孔質材からなる薄片である多孔質金属箔の改良製造方法は、分散剤およびバインダを用い、該金属多孔質材を構成する原料粉を粘稠な懸濁液とするステップ(1)と、前記懸濁液を製膜装置の成形キャビティに注入して乾燥させ、均質なフィルムを形成するステップ(2)と、フィルムを加圧成形し、フィルム内の粉末粒子の堆積緻密さを向上させるステップ(3)と、加圧成形されたフィルムを焼結した後、多孔質金属箔を得るステップ(4)とを含む。該方法は、前記第1のフレキシブル多孔質金属箔、第2のフレキシブル多孔質金属箔および第3のフレキシブル多孔質金属箔の製造に用いることができる。前記ステップ(3)の加圧成形(圧延機、型プレス機、イソタクチック機等で加圧成形することができる)により、フィルム内の粉末粒子の堆積緻密さを向上させることができるため、フレキシブル多孔質金属箔の平均孔径をより小さく且つより均一にすることができる。また、加圧成形の圧力を選択することにより、フレキシブル多孔質金属箔の平均孔径の大きさを制御することができる。
金属多孔質材からなる薄片である多孔質金属箔の別の改良製造方法は、分散剤およびバインダを用い、該金属多孔質材を構成する原料粉を泥状のペーストに調製するステップ(1)と、ペーストを加圧成形し、均質なフィルムを形成するステップ(2)と、加圧成形されたフィルムを焼結した後、多孔質金属箔を得るステップ(3)とを含む。該方法は、前記第1のフレキシブル多孔質金属箔、第2のフレキシブル多孔質金属箔および第3のフレキシブル多孔質金属箔の製造に用いることができる。前記ステップ(2)の加圧成形(圧延機、型プレス機、イソタクチック機等で加圧成形することができる)により、フィルム内の粉末粒子の堆積緻密さを向上させることができるため、フレキシブル多孔質金属箔の平均孔径をより小さく且つより均一にすることができる。また、加圧成形の圧力を選択することにより、フレキシブル多孔質金属箔の平均孔径の大きさを制御することができる。
金属多孔質材からなる薄片である多孔質金属箔の更なる別の改良製造方法は、フレキシブル多孔質金属箔を構成する金属多孔質材のうち1種または複数種の元素からなる箔である担持体を準備するステップ(1)と、分散剤およびバインダを用い、金属多孔質材を構成する残りの元素から生成された原料粉を粘稠な懸濁液とするステップ(2)と、担持体の表面に前記懸濁液を付着させて乾燥し、担持体の表面に付着した状態のフィルムを形成するステップ(3)と、フィルムが付着された担持体を加圧成形し、フィルム内の粉末粒子の堆積緻密さを向上させるステップ(4)と、加圧成形後の、フィルムが付着された担持体を焼結した後、多孔質金属箔を得るステップ(5)とを含む。該方法は、前記第2のフレキシブル多孔質金属箔および第3のフレキシブル多孔質金属箔の製造に用いることができる。前記ステップ(4)の加圧成形(圧延機、型プレス機、イソタクチック機等で加圧成形することができる)により、フィルム内の粉末粒子の堆積緻密さを向上させることができるため、フレキシブル多孔質金属箔の平均孔径をより小さく且つより均一にすることができる。また、加圧成形の圧力を選択することにより、フレキシブル多孔質金属箔の平均孔径の大きさを制御することができる。
なお、多孔質金属箔の前記幾つかの改良製造方法には、同様に前記製膜装置および焼結装置を使用することができる。さらに、フレキシブル多孔質金属箔の前記幾つかの改良製造方法において、前記加圧成形時に用いられる圧力が5〜300MPaであってもよく、通常10〜100MPaである。一般的に、加圧成形時の圧力が大きければ大きいほど、多孔質金属箔の平均孔径が小さく且つ均一になり、多孔質金属箔の一体性および強度も高くなるが、孔隙率が小さくなる。
以下、図面および具体的な実施形態に基づき、本発明をさらに説明する。本発明の他の態様および利点は以下の記載から示され、その一部は以下の記載によってさらに明白となり、または本発明の実例から理解される。
本発明の具体的な実施形態における矩形のフレキシブル多孔質金属箔の外形の模式図である。 図1に示すフレキシブル多孔質金属箔を製造する製膜装置の立体構造の模式図である。 図2のI−I方向における断面図である。 図1に示すフレキシブル多孔質金属箔を製造するフィルム焼結装置の構造の模式図。 図4のII−II方向における断面図である。
図1に示すフレキシブル多孔質金属箔100は、固溶体合金、面心立方格子構造の金属単体または体心立方格子構造の金属単体をマトリックス相とする金属多孔質材から構成された薄片であり、該薄片は、厚さHが5〜1500μm、平均孔径が0.05〜100μm、孔隙率が15〜70%である。なお、薄片の形状は、図1に示す矩形であってもよく、円形、楕円形など、別の平面状であってもよい。
該フレキシブル多孔質金属箔100の第1の製造方法(方法1)は、分散剤およびバインダを用い、金属多孔質材を構成する原料粉を粘稠な懸濁液とするステップ(1)と、前記懸濁液を製膜装置の成形キャビティに注入して乾燥させ、均質なフィルムを形成するステップ(2)と、前記フィルムを該フィルムの外形に合致する焼結装置内に設置して拘束焼結を行い、焼結後、得られたフレキシブル多孔質金属箔100を焼結装置内から取り出すステップ(3)と、を含む。
前記方法は、分散剤としてエタノール、エチルメチルケトン、トルエンなど、表面張力が小さく揮発が速く、乾燥し易い有機溶媒を用いてもよく、バインダとしてPVB、PVA、PVC、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール(低分子蝋系)、パラフィン、脂肪酸系、脂肪族アミド系、およびエステル系などを用いてもよい。
前記方法において、原料粉と分散剤との比率は、乾燥後のフィルムの表面品質の確保を原則とし、原料粉の具体的な成分に応じて決めてもよい。通常、原料粉の含量が高すぎると、乾燥後のフィルムの表面品質が悪くなり、亀裂などの現象が生じ易い虞がある。原料粉の含量が低すぎると、後に前記懸濁液を製膜装置の成形キャビティに注入する回数が増え、フレキシブル多孔質金属箔の製造サイクルが長くなる虞がある。
また、前記方法において、バインダと分散剤との比率は、乾燥後のフィルムの表面品質およびフィルム強度の確保を原則とし、原料粉の具体的な成分に応じて決めてもよい。通常、バインダの含量が高すぎると、懸濁液の流動性が悪くなり、乾燥後、収縮巣などの欠陥が生じ易く、焼結後の離型も困難になる虞がある。バインダの含量が低すぎると、原料粉の顆粒同士間の有効な結合ができなくなり、フィルム成形性やフィルム強度が低下し、取り出しも困難になる虞がある。
前記方法における拘束焼結とは、焼結装置を用いてフィルムの形状を保つという条件下で焼結し、焼結過程中のフィルム変形を防止することを言う。具体的な焼結方式は、原料粉の具体的な成分、および、所望される孔構造に応じて決定される。
前記方法に対する改良として、前記ステップ(2)とステップ(3)との間に、フィルムを加圧成形してフィルム内の粉末粒子の堆積緻密さを向上させるステップを追加し、該ステップの後に焼結を行ってもよい。なお、具体的には、圧延機、型プレス機、イソタクチック機等を用いて加圧成形することができる。加圧成形は、フィルム内の粉末粒子の堆積緻密さを向上させることができるため、最終的に製造されたフレキシブル多孔質金属箔の平均孔径をより小さく且つより均一にすることができる。また、加圧成形の圧力を選択することにより、フレキシブル多孔質金属箔の平均孔径の大きさを制御することができる。
前記方法におけるステップ2では、図2〜3に示すような製膜装置を用いる。具体的には、該製膜装置は固定部210、調節部220および可動部230を含み、前記固定部210はフィルムのエッジを成形するための型枠211を備え、該型枠211は、型枠211を支持する支持台座212上に設置されている(勿論、型枠211は他の形式で固定されていてもよい)。前記調節部220は、フィルムの底面を型枠211と共同で成形するための型板221を備え、前記型板221は、該型板221を型枠211の深さ方向に移動させる調節装置222と連結している。前記可動部230は、型枠211の上面に位置していると共に動作時に刃先が型枠211の上面に平行に密着するスクレーパ231を備えている。フレキシブル多孔質金属箔100の形状が図1のような矩形である場合、型枠211の内部キャビティも矩形であり、型板221は、該内部キャビティ内に位置し、矩形の内部キャビティと合致している。また、調節装置222は、具体的には、型枠211上に相対的に固定されていると共に型板221の底面における四隅とそれぞれ連結されている、独立に動作する高さ調節機構222a(例えば、型板221の底面における四隅の下方にそれぞれ位置するスクリュー昇降機構)を備えていてもよい。高さ調節機構222aを実装し易いように、型枠211の底部には、内部へ延伸した支持構造211aが設けられており、前記高さ調節機構222aは支持構造211aへ実装される。
前記製膜装置の使用方法としては、まず、各高さ調節機構222aを調節し、型板221を、所定の高さに調節すると共に型枠211の上面に対して平行にする。次に、型枠211における成形面、および、型板221における成形面上に、それぞれPETプラスチックフィルムを敷く。次に、型枠211と型板221とによって構成された型キャビティに、ステップ(1)で得られた懸濁液を注入する。その後、スクレーパ231を、その刃先と型枠211の上面との平行密着を保ちながら移動させることにより、型枠211の上面からはみ出た懸濁液をスクレーパ231で除去する。そして、懸濁液を乾燥する。乾燥後、懸濁液は均一な厚さに凝固されたフィルムとなる。最後に、フィルムを製膜装置から取り出せばよい。前記製膜装置は、フィルムの厚さを正確に制御し、フィルム厚さの均一性およびフィルム表面の平ら度を確保することができる。
前記方法のステップ3では、図4〜5に示すようなフィルム焼結装置を用いる。具体的には、該フィルム焼結装置は、グラファイト製の上型310a、下型310bおよび側型320を含み、前記上型310a、下型310bは、側型320と共同で、内部のフィルム100’に合致する型キャビティを構成する。具体的には、側型320は筐体321であり、上型310aおよび下型310bはそれぞれ挟持板310である。前記筐体321内には、複数の挟持板310が設けられており、互いに隣接する何れか2つの挟持板310の間は、前記型キャビティとなっている。また、各挟持板310と筐体321との嵌合部には、焼結時の揮発物を排出するための嵌合隙間が予め設けられている。フレキシブル多孔質金属箔100の形状が図1のような矩形である場合、前記筐体321の側部は、前板321a、後板321b、左板321cおよび右板321dによって構成された矩形構造となっている。
前記フィルム焼結装置の使用方法としては、まず、筐体321の内壁および各挟持板310の両側の壁上に酸化アルミニウム使用塗層を設け(例えば、まずエタノール、PVBおよび酸化アルミニウム粉末を混合して粘稠な酸化アルミニウム粉懸濁液とし、次に酸化アルミニウム粉懸濁液を筐体321の内壁および各挟持板310の両側の壁上に塗布し、酸化アルミニウム使用塗層を形成する)、次に、筐体321の底部に底層挟持板310を敷き、この挟持板310の上方にフィルム100’を設置し、該フィルム100’の上方に2層目の挟持板310を敷く。この要領にて、互いに隣接する何れか2つの挟持板310の間にフィルム100’が一枚ずつ挟まれるように全ての挟持板310を敷き、実装完了したフィルム焼結装置を焼結炉内に送り、焼結を行う。焼結後、得られたフレキシブル多孔質金属箔100をフィルム焼結装置内から取り出す。したがって、前記フィルム焼結装置によれば、複数のフィルム100’の同時拘束焼結が実現され、生産効率が向上すると共に、焼結の一様性が確保される。
前記フレキシブル多孔質金属箔の別の製造方法(方法2)は、フレキシブル多孔質金属箔を構成する金属多孔質材のうち1種または複数種の元素からなる箔である担持体を準備するステップ(1)と、分散剤およびバインダを用い、金属多孔質材を構成する残りの元素から生成された原料粉を粘稠な懸濁液とするステップ(2)と、担持体の表面に前記懸濁液を付着させて乾燥し、担持体の表面に付着した状態のフィルムを形成するステップ(3)と、フィルムが付着された担持体を、その外形に合致する焼結装置内に設置して拘束焼結を行い、焼結後、得られたフレキシブル多孔質金属箔を焼結装置内から取り出すステップ(4)と、を含む。該方法に対する改良として、同様に、前記ステップ(3)とステップ(4)との間に、フィルムが付着された担持体を加圧成形してフィルム内の粉末粒子の堆積緻密さを向上させるステップを追加し、該ステップの後に焼結を行ってもよい。なお、具体的には、圧延機、型プレス機、イソタクチック機等を用いて加圧成形することができる。加圧成形は、フィルム内の粉末粒子の堆積緻密さを向上させることができるため、最終的に製造されたフレキシブル多孔質金属箔の平均孔径をより小さく且つより均一にすることができる。また、加圧成形の圧力を選択することにより、フレキシブル多孔質金属箔の平均孔径の大きさを制御することができる。
前記方法は、分散剤としてエタノール、エチルメチルケトン、トルエンなど、表面張力が小さく揮発が速く、乾燥し易い有機溶媒を用いてもよく、バインダとしてPVB、PVA、PVC、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール(低分子蝋系)、パラフィン、脂肪酸系、脂肪族アミド系、およびエステル系などを用いてもよい。
前記方法において、原料粉と分散剤との比率は、乾燥後のフィルムの表面品質の確保を原則とし、原料粉の具体的な成分に応じて決めてもよい。通常、原料粉の含量が高すぎると、乾燥後のフィルムの表面品質が悪くなり、亀裂などの現象が生じ易い虞がある。原料粉の含量が低すぎると、後に前記懸濁液を製膜装置の成形キャビティに注入する回数が増え、フレキシブル多孔質金属箔の製造サイクルが長くなる虞がある。
また、前記方法において、バインダと分散剤との比率は、乾燥後のフィルムの表面品質およびフィルム強度の確保を原則とし、原料粉の具体的な成分に応じて決めてもよい。通常、バインダの含量が高すぎると、懸濁液の流動性が悪くなり、乾燥後、収縮巣などの欠陥が生じ易く、焼結後の離型も困難になる虞がある。バインダの含量が低すぎると、原料粉の顆粒同士間の有効な結合ができなくなり、フィルム成形性やフィルム強度が低下し、取り出しも困難になる虞がある。
前記方法における拘束焼結とは、焼結装置を用いてフィルムの形状を保つという条件下で焼結し、焼結過程中のフィルム変形を防止することを言う。具体的な焼結方式は、原料粉の具体的な成分、および、所望される孔構造に応じて決定される。該方法は「方法1」と同様のフィルム焼結装置を用いる。
前記方法のステップ3は、吹き付け塗りなどの方式にて担持体の表面への付着を行ってもよいが、前記図2〜3に示すような製膜装置を用いて、前記懸濁液を担持体の表面に付着させることがより好ましい。具体的な方法として、まず、各高さ調節機構222aを調節し、型板221を、所定の高さに調節すると共に型枠211の上面に対して平行にする。次に、型板221の上に担持体を設置し、型枠211と担持体とによって構成された成型キャビティに、ステップ(2)で得られた懸濁液を注入する。その後、スクレーパ231を、その刃先と型枠211の上面との平行密着を保ちながら移動させることにより、型枠211の上面からはみ出た懸濁液をスクレーパ231で除去する。そして、懸濁液を乾燥する。乾燥後、懸濁液は均一な厚さに凝固されたフィルムとなる。最後に、フィルムが付着された担持体を製膜装置から取り出せばよい。
前記フレキシブル多孔質金属箔の別の製造方法(方法3)は、分散剤およびバインダを用い、金属多孔質材を構成する原料粉を泥状のペーストに調製するステップ(1)と、ペーストを加圧成形し、均質なフィルムを形成するステップ(2)と、加圧成形されたフィルムを焼結した後、フレキシブル多孔質金属箔を得るステップ(3)とを含む。前記方法は、分散剤としてエタノール、エチルメチルケトン、トルエンなど、表面張力が小さく揮発が速く、乾燥し易い有機溶媒を用いてもよく、バインダとしてPVB、PVA、PVC、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール(低分子蝋系)、パラフィン、脂肪酸系、脂肪族アミド系、およびエステル系などを用いてもよい。「方法1」および「方法2」に比べると、前記の「方法3」はプロセスのステップ数が少なく、生産性が高く、且つ製造されたフレキシブル多孔質金属箔の品質もよい。なお、具体的には、圧延機、型プレス機、イソタクチック機等で加圧成形することができる。加圧成形は、フィルム内の粉末粒子の堆積緻密さを向上させることができるため、最終的に製造されたフレキシブル多孔質金属箔の平均孔径をより小さく且つより均一にすることができる。また、加圧成形の圧力を選択することにより、フレキシブル多孔質金属箔の平均孔径の大きさを制御することができる。該方法は、同様に「方法1」のフィルム焼結装置を用いる。
〔実施例1〕
Ni−Cu固溶体合金多孔質材から構成された厚さ(H)10μm、長さ160mm、幅125mm、平均孔径18.4μm、孔隙率58.37%の矩形薄片であるフレキシブル多孔質金属箔100の製造方法として、まず、Ni粉およびCu粉を均一混合して原料粉を形成した。なお、Cu粉の質量は原料粉の質量の30%とした。次に、エタノールを分散剤とし、PVBをバインダとし、PVBとエタノールとの質量比が2.5:100の比率となるようにPVBをエタノールに添加し、PVB溶液を調製した。続いて、エタノール100mlあたり、原料粉25gの比率となるように、原料粉をPVB溶液に添加、撹拌して原料粉を十分に均一分散させ、粘稠な懸濁液を得た。次に、前記懸濁液を図2〜3のような製膜装置の成形キャビティに注入し乾燥させ、均質なフィルム100’を形成した。次に、前記フィルム100’を図4〜5のようなフィルム焼結装置内に設置した。具体的な焼結プロセスとしては、まず、焼結温度を550℃まで徐々に昇温して90分間保温し(このプロセスの主な作用はバインダ、ワセリンなどの脱揮)、続いて、6℃/分の昇温速度でそのまま1130℃まで昇温して180分間保温した(Cuの融点を超えた1170℃まで速やかに昇温することで、溶融したCuの流動性を利用してNi粉の移動を促進し、Ni粉の結合が十分となり、焼結後のフレキシブル多孔質金属箔100の無欠性およびフレキシブル性が確保される)。焼結後、得られたフレキシブル多孔質金属箔100を焼結装置内から取り出した。
〔実施例2〕
Ni−Cu固溶体合金多孔質材から構成された厚さ(H)100μm、長さ200mm、幅130mm、平均孔径30μm、孔隙率61.68%の矩形薄片であるフレキシブル多孔質金属箔100の製造方法として、まず、Ni粉およびCu粉を均一混合して原料粉を形成した。なお、Cu粉の質量は原料粉の質量の60%とした。次に、エタノールを分散剤とし、PVBをバインダとし、PVBとエタノールとの質量が4:100の比率となるようにPVBをエタノールに添加し、PVB溶液を調製した。続いて、エタノール100mlあたり、原料粉40gの比率となるように、原料粉をPVB溶液に添加、撹拌して原料粉を十分に均一分散させ、粘稠な懸濁液を得た。次に、前記懸濁液を図2〜3のような製膜装置の成形キャビティに注入して乾燥させ、均質なフィルム100’を形成した。次に、前記フィルム100’を図4〜5のようなフィルム焼結装置内に設置した。具体的な焼結プロセスとしては、まず、焼結温度を550℃まで徐々に昇温して90分間保温し、続いて、8℃/分の昇温速度でそのまま1180℃まで昇温して180分間保温した。焼結後、得られたフレキシブル多孔質金属箔100を焼結装置内から取り出した。
〔実施例3〕
Ni−Cu固溶体合金多孔質材から構成された厚さ(H)60μm、長さ150mm、幅100mm、平均孔径54.1μm、孔隙率40.16%の矩形薄片であるフレキシブル多孔質金属箔の製造方法として、まず、純度99%以上、厚さ10μmのCu箔(担持体)の表面処理を行い、すなわち、質量濃度10%のNaOH溶液を用いてCu箔表面の汚れなどの不純物を洗い落とし、水洗した後、Cu箔を質量濃度10%のHSO溶液に投入して2分間酸洗浄し、Cu箔表面の酸化物および錆痕を除去した。アルカリ洗浄、酸洗浄を経たCu箔をアセトン溶液に浸漬し、8分間超音波洗浄した。最後に、真空オーブン内に設置して乾燥し、Cu箔の質量を記録した。次に、Ni単体の粉を原料とし、エタノールを分散剤とし、PVBをバインダとし、PVBとエタノールとの質量比が4:100の比率となるようにPVBをエタノールに添加し、PVB溶液を調製した。続いて、エタノール100mlあたり、Ni粉25gの比率となるように、Ni粉をPVB溶液に添加、撹拌してNi粉を十分に均一分散させ、粘稠な懸濁液を得た。次に、製膜装置の型板221の表面にCu箔を密着するように貼り付け、型板221の上面の高さを調整することで被膜厚さを制御した。その後、NiとCuとの質量比が1:1になるように前記懸濁液を製膜装置の成形キャビティに注入し、乾燥した。乾燥後の乾燥品を図4〜5のようなフィルム焼結装置内に設置し、実施例1と同様の焼結プロセスにて焼結を行った。
〔実施例4〕
Ni−Cu固溶体合金多孔質材から構成された厚さ(H)10μm、長さ160mm、幅125mm、平均孔径1.2μm、孔隙率が42.5%の矩形薄片であるフレキシブル多孔質金属箔100の製造方法として、まず、Ni粉およびCu粉を均一混合して原料粉を形成した。なお、Cu粉の質量は原料粉の質量の30%とした。次に、エタノールを分散剤とし、PVBをバインダとし、PVBとエタノールとの質量比が2.5:100の比率となるようにPVBをエタノールに添加し、PVB溶液を調製した。続いて、エタノール100mlあたり、原料粉25gの比率となるように、原料粉をPVB溶液に添加、撹拌して原料粉を十分に均一分散させ、粘稠な懸濁液を得た。次に、前記懸濁液を図2〜3のような製膜装置の成形キャビティに注入し乾燥させ、均質なフィルム100’を形成した。次に、フィルム100’を圧延機に設置し、10MPa下、600r/minの圧延速度(圧延ローラの回転速度)で圧延した。次に、圧延後のフィルム100’を図4〜5に示すようなフィルム焼結装置に設置した。具体的な焼結プロセスとしては、まず、焼結温度を550℃まで徐々に昇温して90分間保温し(このプロセスの主な作用はバインダ、ワセリンなどの脱揮)、続いて、6℃/分の昇温速度でそのまま1130℃まで昇温して180分間保温した(Cuの融点を超えた1170℃まで速やかに昇温することで、溶融したCuの流動性を利用してNi粉の移動を促進し、Ni粉の結合が十分となり、焼結後のフレキシブル多孔質金属箔100の無欠性およびフレキシブル性が確保される)。焼結後、得られたフレキシブル多孔質金属箔100を焼結装置内から取り出した。
〔実施例5〕
Ni−Cu固溶体合金多孔質材から構成された厚さ(H)60μm、長さ150mm、幅100mm、平均孔径25μm、孔隙率37%の矩形薄片であるフレキシブル多孔質金属箔の製造方法として、まず、純度99%以上、厚さ10μmのCu箔(担持体)の表面処理を行い、すなわち、質量濃度10%のNaOH溶液を用いてCu箔表面の汚れなどの不純物を洗い落とし、水洗した後、Cu箔を質量濃度10%のHSO溶液に投入して2分間酸洗浄し、Cu箔表面の酸化物および錆痕を除去した。アルカリ洗浄、酸洗浄を経たCu箔をアセトン溶液に浸漬し、8分間超音波洗浄した。最後に、真空オーブン内に設置して乾燥し、Cu箔の質量を記録した。次に、Ni単体の粉を原料とし、エタノールを分散剤とし、PVBをバインダとし、PVBとエタノールとの質量比が4:100の比率となるようにPVBをエタノールに添加し、PVB溶液を調製した。続いて、エタノール100mlあたり、Ni粉25gの比率となるように、Ni粉をPVB溶液に添加、撹拌してNi粉を十分に均一分散させ、粘稠な懸濁液を得た。次に、製膜装置の型板221の表面にCu箔を密着するように貼り付け、型板221の上面の高さを調整することで被膜厚さを制御した。その後、NiとCuとの質量比が1:1になるように前記懸濁液を製膜装置の成形キャビティに注入し、乾燥した。乾燥後の乾燥品を圧延械に設置し、15MPa下、300r/minの圧延速度(圧延ローラの回転速度)で圧延した。次に、図4〜5に示すようなフィルム焼結装置に設置し、実施例1と同様の焼結プロセスにて焼結を行った。
〔実施例6〕
Ni−Cu固溶体合金多孔質材から構成された厚さ(H)500μm、長さ160mm、幅125mm、平均孔径15.2μm、孔隙率51%の矩形薄片であるフレキシブル多孔質金属箔100の製造方法として、まず、Ni粉およびCu粉を均一混合して原料粉を形成した。なお、Cu粉の質量は原料粉の質量の30%とした。次に、エタノールを分散剤とし、PVBをバインダとし、エタノール100mlあたり、PVB30g、原料粉500gの比率となるように、泥状のペーストを調製した。次に、ペーストを圧延機に設置し、25MPa下、200r/minの圧延速度(圧延ローラの回転速度)で圧延した。次に、圧延後のフィルム100’を図4〜5に示すようなフィルム焼結装置に設置した。具体的な焼結プロセスとしては、まず、焼結温度を550℃まで徐々に昇温して90分間保温し、続いて、6℃/分の昇温速度でそのまま1130℃まで昇温して180分間保温した(Cuの融点を超えた1170℃まで速やかに昇温することで、溶融したCuの流動性を利用してNi粉の移動を促進し、Ni粉同士の結合が十分となり、焼結後のフレキシブル多孔質金属箔100の無欠性およびフレキシブル性が確保される)。焼結後、得られたフレキシブル多孔質金属箔100を焼結装置内から取り出した。
〔実施例7〕
実施例7は、薄片の厚さ(H)を300μmに増加させた以外、実施例1と同様に実施した。
〔実施例8〕
実施例8は、薄片の厚さ(H)を500μmに増加させた以外、実施例4と同様に実施した。
〔実施例9〕
実施例9は、薄片の厚さ(H)を800μmに増加させた以外、実施例5と同様に実施した。
実施例1〜9のフレキシブル多孔質金属箔の性能の比較結果は表1に示す。
Figure 0006870855
100 フレキシブル多孔質金属箔
100’ フィルム
210 固定部
211 型枠
211a 支持構造
212 支持台座
220 調節部
221 型板
222 調節装置
222a 高さ調節機構
230 可動部
231 スクレーパ
310 挟持板
310a 上型
310b 下型
320 側型
321 筐体
321a 前板
321b 後板
321c 左板
321d 右板

Claims (4)

  1. Ni−Cu固溶体をマトリックス相とする金属多孔質材から構成された薄片であるフレキシブル多孔質金属箔であり、
    前記Ni−Cu固溶体は、Ni 40〜70質量%およびCu 30〜60質量%からなり、
    該薄片は、厚さが>200μm且つ≦1500μm、平均孔径が0.05〜100μm、孔隙率が15〜70%であることを特徴とするフレキシブル多孔質金属箔。
  2. 請求項1に記載のフレキシブル多孔質金属箔から作製された袋本体を含むことを特徴とする、濾過用濾過袋。
  3. 請求項1に記載のフレキシブル多孔質金属箔の製造方法であり
    分散剤およびバインダを用い、前記金属多孔質材を構成する原料粉を粘稠な懸濁液とするステップ(1)と、
    前記懸濁液を製膜装置の成形キャビティに注入して乾燥させ、均質なフィルムを形成するステップ(2)と、
    フィルムを加圧成形し、フィルム内の粉末粒子の堆積緻密さを向上させるステップ(3)と、
    加圧成形されたフィルムを焼結した後、フレキシブル多孔質金属箔を得るステップ(4)と、を含むことを特徴とするフレキシブル多孔質金属箔の製造方法。
  4. 請求項1に記載のフレキシブル多孔質金属箔の製造方法であり
    分散剤およびバインダを用い、前記金属多孔質材を構成する原料粉を泥状のペーストに調製するステップ(1)と、
    ペーストを加圧成形し、均質なフィルムを形成するステップ(2)と、
    加圧成形されたフィルムを焼結した後、フレキシブル多孔質金属箔を得るステップ(3)と、を含むことを特徴とするフレキシブル多孔質金属箔の製造方法。
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