本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中の同一または相当部分については、同一符号を付してその説明は繰返さない。
<A.全体装置構成>
まず、本実施の形態に従う画像形成装置100の全体装置構成について説明する。以下では、典型例として、複合機(MFP:Multi-Functional Peripheral)として実装されるカラー画像形成装置である画像形成装置100について説明するが、カラー画像形成装置に限定されるわけではなく、モノクロ画像形成装置にも適用可能である。また、カラー画像を形成する機構として、タンデム方式を例示するが、サイクル方式(典型的には、4サイクル方式)にも適用可能である。
図1は、本実施の形態に従う画像形成装置100の全体構成を示す模式図である。図1を参照して、画像形成装置100は、プリントエンジン110と、原稿読取部120と、給紙部130とを含む。
プリントエンジン110は、電子写真方式の画像形成プロセスを実行する。図1に示す構成においては、フルカラーの印刷出力が可能である。印刷出力された媒体Sは、下流工程へ排出される。
原稿読取部120は、原稿を読み取って、その読み取り結果をプリントエンジン110に対する入力画像として出力する。より具体的には、原稿読取部120は、イメージスキャナー122と、原稿給紙台124と、原稿自動送り装置126と、原稿排紙台128とを含む。
イメージスキャナー122は、プラテンガラス上に配置された原稿をスキャンする。イメージスキャナー122は、主要な構成要素として、原稿に対して光を照射する光源と、光源から照射された光が原稿で反射して生じる画像を取得するイメージセンサーと、イメージセンサーから画像信号を出力するためのA/D(Analog to Digital:アナログデジタル)変換器と、イメージセンサーの前段に配置された結像光学系とを含む。
原稿自動送り装置126は、原稿給紙台124に配置された原稿を連続的にスキャンする。原稿給紙台124上に配置された原稿は、図示しない送出ローラーにより1枚ずつ送り出され、イメージスキャナー122または原稿自動送り装置126内に配置されたイメージセンサーによって順次スキャンされる。スキャン後の原稿は、原稿排紙台128へ排出される。
給紙部130は、媒体Sをプリントエンジン110へ順次供給する。より具体的には、給紙部130は、保持している媒体Sを送出ローラー30によって順次送り出すとともに、この送り出される媒体Sを搬送経路32に沿ってプリントエンジン110へ搬送する。
プリントエンジン110では、給紙部130から供給された媒体Sが搬送経路34に沿って排出口まで搬送される。媒体Sが搬送経路34に沿って搬送される過程において、定着装置20がトナー像を媒体Sへ転写および定着させる。定着装置20は、加圧ローラー22および加熱ローラー24を含み、中間転写体6上に形成されたトナー像を媒体Sへ転写する。
プリントエンジン110は、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)のそれぞれのトナー像を形成するイメージングユニット10C,10M,10Y,10K(以下、「イメージングユニット10」と総称することもある。)を含む。
図1には、それぞれのイメージングユニット10が形成したトナー像を、中間転写体を介して被転写部材である媒体Sに転写する構成を例示する。画像形成装置100は、中間転写体として、中間転写体駆動ローラー14,15,16により張架された中間転写体6を含む。中間転写体6は、中間転写体駆動ローラー14,15,16の回転駆動により、所定方向に回動される。中間転写体6としては、図1に示す中間転写ベルトに代えて、中間転写ローラーを採用してもよい。なお、図1には、トナー像を中間転写体に一旦転写した後、定着装置20によって媒体Sへ転写する構成について例示するが、感光体1上のトナー像を媒体Sに直接転写するようにしてもよい。
イメージングユニット10C,10M,10Y,10Kは、プリントエンジン110内に張架されて回転駆動される中間転写体6に沿って、その順序に配置される。イメージングユニット10の各々は、中間転写体6を挟んで対向配置される、感光体1および中間転写装置5を含む。感光体1の周囲には、帯電装置と、露光装置と、現像装置と、クリーニング装置とが配置されている。これらの装置の詳細については後述する。
プリントエンジン110は、画像形成装置100の全体制御を司る制御部50を含む。制御部50は、主たる構成要素として、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサ、DRAM(Dynamic Random Access Memory)等の揮発性メモリー、HDD(Hard Disk Drive)等の不揮発性メモリー、および、各種インターフェイスを含む。典型的には、プリントエンジン110では、プロセッサが不揮発性メモリーに格納されている各種プログラムを実行することで、画像形成装置100における画像形成に係る処理等が実行される。
制御部50としては、プロセッサがプログラムを実行することで実現されるが、これに代えて、その処理の全部または一部を専用のハードウェアを用いて実現してもよい。また、プロセッサがプログラムを実行する場合には、そのプログラムは、各種の記録媒体を介して不揮発性メモリーにインストールされ、あるいは、通信回線を介して図示しないサーバー装置等からダウンロードされてもよい。
<B.イメージングユニットおよび画像形成動作>
次に、本実施の形態に従う画像形成装置100のプリントエンジン110を構成するイメージングユニット10の構成、および、イメージングユニット10を用いた画像形成動作について説明する。
図2は、本実施の形態に従う画像形成装置100のイメージングユニット10の模式図である。図3は、図2に示すイメージングユニット10でのトナーおよび潤滑剤の挙動を説明する模式図である。図2および図3を参照して、感光体1の周囲には、図中A方向に沿って上流側から順に、帯電装置2と、露光装置3と、現像装置4と、クリーニング装置8(クリーニングブレード82)と、潤滑剤塗布装置72と、固定化機構(固定化ブレード78)とが配置されている。
感光体1は、トナー像を担持する像担持体であり、その表面に感光層が形成された感光体ローラーが用いられる。感光体1は、その表面にトナー像が形成されるように配置されるとともに、中間転写体6の回転方向に対応する方向に回転する。なお、像担持体としては、感光体ローラーに代えて、感光体ベルトを採用してもよい。感光体1には、露光装置3により静電潜像が形成されるとともに、現像装置4によって静電潜像が現像されてトナー像が形成される。
帯電装置2は、接触帯電方式の帯電チャージャとして機能し、像担持体である感光体1に接触する帯電ローラー21が採用されている。帯電ローラー21は、接触帯電部材に相当し、像担持体である感光体1に接触して感光体1を帯電させる。このような帯電ローラー21の動作によって、感光体1の表面を所定電位に一様に帯電する。
帯電装置2を構成する帯電ローラー21としては、例えば、金属製のシャフトに導電性ゴム弾性層を設けた構成を採用できる。導電性ゴム弾性層は、例えば、弾性材料に導電剤を混入したものを採用できる。弾性材料としては、例えば、エピクロルヒドリンゴム、ニトリルゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、天然ゴムなどを用いることができる。導電剤としては、ケッチェンブラックやアセチレンブラックなどのカーボンブラック、グラファイト、金属粉、導電性金属酸化物、イオン導電剤などを用いることができる。さらに、構成された構成された弾性層の表面に、数μm〜数十μmの平均粒子径となる有機微粒子または無機微粒子を含有する樹脂からなる表面層が形成されることで、所定の表面粗さが付与される。
さらに、帯電装置2の構成要素として、接触帯電部材である帯電ローラー21上の残留物を回収するクリーニング手段として、スポンジローラやブラシローラなどを設けてもよく、あるいはブレードを設けてもよい。このクリーニング手段は、帯電ローラー21上に付着するトナーなどを除去する。
露光装置3は、レーザー書き込み等により、指定された画像パターンに従って感光体1の表面を露光することで、感光体1上に静電潜像を形成する。典型的には、露光装置3は、レーザー光を発生するレーザダイオードと、主走査方向に沿ってレーザー光を感光体1の表面を露光させるポリゴンミラーとを含む。
現像装置4は、感光体1と現像領域を介して対向するように配置された現像スリーブ42を有しており、現像スリーブ42を用いて、感光体1上に形成された静電潜像をトナー像として現像する。現像スリーブ42には、例えば、帯電装置2の帯電極性と同極性の直流電圧に対して交流電圧を重畳した現像バイアスが印加されており、この現像バイアスによって、露光装置3によって形成された静電潜像にトナーが付着する。
現像装置4において用いられる現像剤としては、典型的には、トナーとトナーを帯電するためのキャリアとを含む二成分系の現像剤を用いることができる。トナーとしては、特に限定されることはなく、公知のトナーを用いることができる。例えば、バインダー樹脂中に着色剤、および、必要に応じて荷電制御剤および離型剤等を含有させた上で、外添剤を付加したものをトナーとして使用してもよい。外添剤としては、シリカやチタニアといった微粒子の金属酸化物を使用でき、30nmといった小粒径のものから、100nmといった比較的大きな粒径のものを使用してもよい。トナー粒径としては、特に限定されることはないが、例えば、3〜15μm程度のものを用いることができる。キャリアとしては、特に限定されることなく、公知のキャリアを用いることができる。例えば、バインダー型キャリア、コート型キャリア等を使用できる。キャリア粒径としては、特に限定されることはないが、例えば、15〜100μmのものを用いることができる。なお、二成分系の現像剤に限らず、一成分系の現像剤(トナー)を用いてもよい。
現像装置4により感光体1上に形成されたトナー像は、感光体1と中間転写装置5との間に形成される転写領域に運ばれる。中間転写装置5にはトナーの帯電極性とは逆極性の転写バイアスが印加されており、この転写バイアスによって、転写領域において、感光体1上のトナー像は中間転写体6へ転写される。中間転写装置5は、感光体1上で現像されたトナー像を転写する。
転写領域において中間転写体6へ転写されずに感光体1上に残ったトナーは、クリーニング装置8に搬送されて、クリーニング装置8で回収される。クリーニング装置8は、像担持体である感光体1上の残留物を回収するクリーニング手段であり、転写後に感光体1上に残留するトナーなどを除去する。さらに、クリーニング装置8により表面のトナーが回収された感光体1は、再び帯電装置2により帯電され、次の静電潜像およびトナー像が形成される。このような一連の画像形成動作が繰返される。
クリーニング装置8としては、一般的には、弾性体からなる平板状のクリーニングブレードを感光体1の表面に接触し、これにより感光体1上の残留トナーをするブレードクリーニング方式が採用される。より具体的には、クリーニング装置8は、クリーニングブレード82を含む。クリーニングブレード82は、典型的には、シート状に加工されたポリウレタンゴムなどから構成される。
図2および図3を参照して、潤滑剤塗布装置72は、像担持体である感光体1へ潤滑剤を供給する潤滑剤供給手段として機能し、典型的には、クリーニング装置8の下流側に配置される。潤滑剤塗布装置72は、感光体1に接触して回転する塗布ブラシ74と、塗布ブラシ74に圧接する固形潤滑剤75とから構成される。塗布ブラシ74が回転して、固形潤滑剤75の一部を削り取るとともに、固形潤滑剤75から削り取られた潤滑剤粉を感光体1に搬送することで、感光体1表面に供給する。感光体1に搬送された滑剤粉は、通常、その下流側に配置された固定化機構(図2および図3に示す例では、固定化ブレード78)により、感光体1上で引き伸ばされて製膜されることで、感光体1表面に潤滑剤被膜層が形成される。
塗布ブラシ74は、ロール状のブラシ部材であり、例えば、感光体1と逆方向に回転するように構成されている。固形潤滑剤75は、塗布ブラシ74に対して圧縮バネなどからなる押圧部材76により押圧保持されている。
固形潤滑剤75は、典型的には、金属石鹸の粉体を溶融整形したものを用いることができる。例えば、固形潤滑剤75は、ステアリン酸亜鉛などの金属石鹸を用いることができる。ステアリン酸亜鉛で形成された皮膜は離型性が高く(すなわち、純水接触角が高く)、摩擦係数が小さいことが特徴であり、転写性およびクリーニング性がよく、また感光体1の減耗も抑制されて長寿命化が達成できる。
固定化ブレード78は、クリーニングブレード82と同様に、シート状に加工されたポリウレタンゴムなどから構成される。固定化ブレード78の接触方向として、例えば、感光体1に対して引きずる方向に接触(トレーリング接触)するように構成される。
図3に示すように、感光体1上に存在する残留トナーは、クリーニング装置8のクリーニングブレード82によって回収されることになる。また、感光体1上に存在する潤滑剤の一部は、潤滑剤塗布装置72の塗布ブラシ74によって回収されるとともに、固形潤滑剤75から削り取られた潤滑剤粉と混ざって、再度、感光体1へ塗布されることになる。
図4は、本実施の形態に従う画像形成装置100の別のイメージングユニット10Aの模式図である。図4に示すイメージングユニット10Aは、図2に示すイメージングユニット10と主たる構成は同一である。但し、図2に示すイメージングユニット10においては、感光体1(像担持体)上に形成されたトナー像を中間転写体6へ転写後、定着装置20(図1)が、中間転写体6上のトナー像を媒体Sへ転写するとともに、媒体Sへ転写されたトナー像を定着する構成になっている。これに対して、図4に示すイメージングユニット10Aにおいては、感光体1上のトナー像を中間転写装置5にて媒体Sへ直接転写する構成となっている。
図2〜図4に示される構成において、潤滑剤塗布装置72は、中間転写装置5より下流側であって、クリーニング装置8の上流側に配置されてもよい。この場合には、固定化機構(固定化ブレード78)を省略してもよい。あるいは、潤滑剤塗布装置72に代えて、潤滑剤をトナーに添加してトナーと共に感光体1(像担持体)上に供給するように構成してもよい。さらに、必ずしも潤滑剤を感光体1(像担持体)上に塗布しなくてもよい。
<C.プレニップ部における異物の滞留>
次に、図2および図4に示すように、帯電装置2の帯電ローラー21(すなわち、接触帯電部材)が像担持体である感光体1に接触する部分の上流部の近傍(プレニップ部9)における異物の滞留について説明する。
プレニップ部9に溜まる異物(以下、「滞留物」とも称する。)としては、図2に示すイメージングユニット10においては、主として、潤滑剤および外添剤が想定される。図4に示すイメージングユニット10Aにおいては、主として、被転写材である媒体Sから生じる紙粉あるいは繊維や外添剤が想定される。つまり、滞留物は、感光体1(像担持体)へ供給される潤滑剤の一部を含む場合もあるし、感光体1(像担持体)上に形成されるトナー像が転写される媒体S(被転写材)の一部を含む場合もある。
このようなプレニップ部9において滞留物が生じる仕組みとしては、以下のように考えられる。帯電装置2を構成する帯電ローラー21は、通常、像担持体である感光体1の回転方向と同じ方向にほぼ等速で回転するように構成されるが、感光体1上にある付着物の付着力が弱かったり、感光体1または帯電ローラー21の付着物に対する搬送力が小さかったりすると、付着物は、感光体1と帯電ローラー21との間のニップ部を通過できずにプレニップ部9に留まってしまう。ローラー帯電方式を採用する帯電装置2では、ニップ部に比較して、プレニップ部9での放電が支配的であることから、プレニップ部9に滞留物が存在するようになると、放電時の電界が乱れて適正な帯電ができなくなる。
<D.本実施の形態に従う画像形成装置における処理の概要>
本実施の形態に従う画像形成装置100は、画像ノイズの発生を検知し、検知結果に基づいて、印加電圧を調整する処置を実施する。
図2および図4に示すようなローラー帯電方式の帯電装置2においては、帯電ローラー21が像担持体である感光体1と接触していることから、プレニップ部に異物が溜まることがある。このような事象が発生している場合、上述の先行技術に教示される方法に従うVppの調整または制御を行なったとしても、画像ノイズが発生する場合があるとの新たな課題を本願発明者らは見出した。すなわち、本願発明者らは、上述の先行技術には何ら教示されていない新たな課題が生じ得る事態があることを発見した。
Vppの調整または制御を行なったとしても画像ノイズを抑制できない理由としては、以下のようなものが推測できる。すなわち、交流方式の帯電装置2においては、帯電ローラー21に対して正負(プラス・マイナス)の電圧が交互に印加されることで、ニップ部の近傍にて、正規の極性の放電(以下、「帯電放電」とも称する。)と、逆極性の放電(以下、「除電放電」とも称する。)が生じる。例えば、感光体1を負側に帯電させる場合には、マイナス側の放電が帯電放電となり、プラス側の放電が除電放電となる。このような帯電放電と除電放電とが交互に繰返されることで、帯電ムラが低減して、帯電均一性を向上できる。
一方、プレニップ部に何らかの異物が滞留している場合には、その滞留している異物自身の帯電などの影響を受けて、一方の極性の放電が過剰に生じる。例えば、滞留している異物が逆極性側に帯電していた場合には、帯電放電が過剰となり、あるいは、除電放電が不足する。そのような場所において画像の白抜けが生じる。すなわち、電荷量や放電の電流量としては異物が存在しない場合と同様であっても、ノイズのある画像として出力されてしまう。すなわち、放電電流成分に注目すると、正負の放電のバランスが崩れる場合がある。
このようなメカニズムを考慮すると、上述したような課題については、放電のバランス状態を考慮に入れて印加電圧を調整しなければならないという新たな課題に本願発明者らは想到した。さらに、上述したような画像ノイズの発生は、感光体の表面電位を一般的な方法で測定しても、その測定された結果に変化としては現れず、検知することは困難であった。
上述したような先行技術文献においては、このような新たな課題に対する解決手段はおろか、その課題自体についても何ら教示するものではない。
上述したような新たに見出した課題を考慮した上で、本願発明者らは、放電電流の量だけではなく、正負の放電の関係性を考慮に入れた上で、帯電装置を介して感光体(像担持体)に印加される電圧/電流を適切に調整可能な構成を発見するに至った。
すなわち、本実施の形態に従う画像形成装置は、異物が滞留の有無にかかわらず、帯電条件を適切に設定し、画像ノイズを抑制することが可能である。さらに、画像ノイズを抑制しつつ、感光体の部材寿命を延長することも可能である。
<E.画像ノイズの検知および印加電圧の調整に係る処理手順>
次に、本実施の形態に従う画像形成装置100における画像ノイズの検知および印加電圧の調整に係る処理手順について説明する。
本実施の形態に従う画像形成装置100においては、像担持体である感光体1により形成される画像に生じる画像ノイズの発生有無を検知し、画像ノイズの発生が検知されると、当該画像ノイズを抑制するために、帯電装置2から像担持体に印加される電圧を調整する処理を実施する。
図5は、本実施の形態に従う画像形成装置100における画像ノイズの検知方法を実現するための構成を示す模式図である。図5を参照して、帯電装置2の帯電ローラー21には帯電用電源200が電気的に接続され、像担持体である感光体1のグランド側には電流計測部300が電気的に接続されている。電流計測部300は、接触帯電部材である帯電ローラー21から像担持体である感光体1に流れる電流を計測する。電流計測部300による計測値は制御部50へ出力される。制御部50は、演算処理部に相当し、本実施の形態に従う画像ノイズの検知処理を実施する。
本実施の形態に従う画像形成装置100においては、帯電装置2の帯電ローラー21に対して印加される正規の帯電極性をマイナス(すなわち、負極に帯電させる)として説明する。すなわち、マイナス電流成分が帯電電流に相当し、プラス電流成分が除電電流に相当する。なお、帯電装置2の帯電ローラー21からの帯電極性をプラスとすることも可能であり、その場合には、プラス電流成分が帯電電流に相当し、マイナス電流成分が除電電流に相当することになる。
帯電用電源200は、直流電圧発生部202と、交流電圧発生部204とを含む。直流電圧発生部202と交流電圧発生部204とが直列接続されることで、直流電圧に交流電圧を重畳した電圧を感光体1に印加することができる。
電流計測部300は、感光体1からグランドに流れる電流値に応じた信号を出力する電流計測回路302と、電流計測回路302からのアナログ出力を所定のサンプリング周波数でサンプリングしてデジタル出力するA/D(Analog/Digital)変換回路304とを含む。
制御部50および電流計測部300が連係することによって、画像ノイズの発生の有無を検知する画像ノイズ検知機能を実現する。感光体1を流れる電流の状態に基づく検知の詳細については、後述する。画像形成装置100は、画像ノイズ検知機能により画像ノイズが発生すると検知されたことに応じて、当該発生する画像ノイズを低減するための印加電圧の調整処理を実施してもよい。印加電圧の調整機能については、典型的には、制御部50が後述するような各部の動作を提供する制御により実現される。
図6は、本実施の形態に従う画像形成装置100における画像ノイズの検知および印加電圧の調整に係る処理手順を示すフローチャートである。図7は、図6に示すフローチャートに対応する信号処理結果の一例を示す図である。
図6を参照して、本実施の形態に従う画像ノイズの検知および印加電圧の調整は、以下の7つのステップ(ステップS1〜S7)によって構成される。
(1)ステップS1:感光体1(像担持体)を流れる電流の計測
(2)ステップS2:計測された電流波形の微分波形の算出
(3)ステップS3:算出された微分波形におけるゼロ交点の抽出
(4)ステップS4:基準充電電流波形の作成
(5)ステップS5:放電電流波形の算出
(6)ステップS6:放電状態の算出
(7)ステップS7:画像ノイズの有無の判定
(8)ステップS8:印加電圧の調整
ステップS1は、帯電ローラー21から感光体1に流れる電流を計測する処理に相当する。ステップS2〜S7は、計測された電流に含まれる放電成分を帯電成分および除電成分に分離するとともに、帯電成分と除電成分との関係性を解析する解析処理に相当する。ステップS2〜S7は、主として、図5に示す制御部50によって実行される。すなわち、制御部50は、計測された電流に含まれる放電成分を帯電成分および除電成分に分離するとともに、帯電成分と除電成分との関係性を解析する解析機能を提供する。ステップS8は、解析処理によって得られる、帯電成分と除電成分との関係性に基づいて、帯電ローラー21に対する印加電圧に含まれる交流成分を調整する調整処理に相当する。このステップS8は、主として、図5に示す制御部50および帯電用電源200によって実行される。
なお、図6および図7に示す、画像ノイズの検知処理の実施中においては、感光体1(像担持体)に対して電気的な影響を与えるものを可能な限り排除することが好ましい。例えば、感光体1(像担持体)に対する電圧の印加を停止するようにしてもよい。より具体的には、中間転写装置5により印加される転写バイアスを停止するとともに、可能であれば、中間転写装置5を中間転写体6から離間するようにしてもよい。また、露光装置3によるレーザー書き込み等を停止するようにしてもよい。このように、中間転写装置5および露光装置3の少なくとも一方の動作を停止した状態で、帯電ローラー21から感光体1に流れる電流を計測してもよい。
さらに、現像装置4による静電潜像の現像や現像バイアスの印加を停止するようにしてもよい。
このように、対象の画像形成装置100の装置構造上可能な範囲で、感光体1(像担持体)に対する電気的に影響を与える要因を排除した上で、帯電ローラー21から感光体1に流れる電流が計測されてもよい。このようなノイズを生じる要因を排除することで電流値を適切に検知することができる。
以下、各ステップにおける処理について説明する。
《ステップS1:感光体1(像担持体)を流れる電流の計測》
ステップS1においては、感光体1(像担持体)を回転駆動させた状態で、帯電ローラー21に接続している帯電用電源200から所定電圧を出力する。このときに感光体1からグランドに流れる電流を電流計測部300により計測する。電流計測部300からは、所定のサンプリング周波数でサンプリングされた計測値(電流値)が出力される。ステップS1によって、図7(a)に示すような電流値の時間波形を得ることができる。
《ステップS2:計測された電流波形の微分波形の算出》
サンプリング周波数で計測された計測値(電流値)の各々と、各計測値の前回計測値との差分を算出するとともに、各差分にサンプリング周波数を乗じることで、微分波形を逐次算出する。ステップS2によって、図7(b)に示すような微分波形を得ることができる。なお、図7(b)に示す破線は、図7(a)に示す電流値の時間波形を示す。
《ステップS3:算出された微分波形におけるゼロ交点の抽出》
図7(b)に示すような微分波形において、ゼロ交点が抽出される。基本的には、微分波形の1周期あたり2ポイントのゼロ交点が抽出されるが、4ポイントのゼロ交点が存在する場合もある。このような場合には、微分波形の1周期内の最大値から最初のゼロ交点と、微分波形の1周期内の最小値から最初のゼロ交点との2ポイントを抽出するようにしてもよい。ステップS3によって、図7(c)に示すような微分波形中のゼロ交点が抽出される。
《ステップS4:基準充電電流波形の作成》
帯電用電源200の交流電圧発生部204から出力される交流電圧波形と同一形状(同一周波数)の波形を用いて、基準充電電流波形を作成する。基準充電電流波形の位相は、ステップS3において抽出された1周期あたり2つのゼロ交点と同期させて、プラスからマイナスに移行するゼロ交点において最大の振幅となり、かつ、マイナスからプラスに移行するゼロ交点において最小の振幅となるように設定される。このような手順によって、周波数および位相を決定することで、充電電流波形が作成される。さらに、ステップS3において抽出されたゼロ交点に同期させて、ステップS1において計測された電流波形の振幅と一致するように、充電電流波形の振幅が調整される。ステップS4によって、図7(d)に示すような充電電流波形が作成される。なお、図7(d)に示す破線は、図7(c)に示す微分波形の時間波形を示す。
《ステップS5:放電電流波形の算出》
ステップS1において計測された電流波形からステップS4において算出された基準充電電流波形を減じることで、放電電流波形を算出する。ステップS5によって、図7(e)に示すような放電電流波形が算出される。
《ステップS6:放電状態の算出》
ステップS6においては、計測された電流波形から放電成分を帯電成分および除電成分が分離される。より具体的には、ステップS5において算出された放電電流波形について、1周期あたりの正規の極性側の電流成分の積算値(以下、「帯電電流量」とも称する。)、および、1周期あたりの逆極性側の電流成分の積算値(以下、「除電電流量」とも称する。)、ならびに、1周期あたりの正規の極性側の電流成分が生じている時間(以下、「帯電時間」とも称する。)、および、1周期あたりの逆極性側の電流成分が生じている時間(以下、「除電時間」とも称する。)をそれぞれ算出する。
帯電電流量は、帯電成分に相当する電流成分の1周期あたりの積算値を意味する。また、除電電流量は、除電成分に相当する電流成分の1周期あたりの積算値を意味する。
帯電時間は、計測された電流に帯電成分が存在する時間の長さを意味し、例えば、1周期において放電電流波形が正規の極性側に存在する時間の長さが採用される。また、除電時間は、計測された電流に除電成分が存在する時間の長さである除電時間を意味し、例えば、1周期において放電電流波形が逆極性側に存在する時間の長さが採用される。より具体的には、放電電流波形の絶対値が所定のしきい値以上となっている区間の長さを算出するようにしてもよい。なお、1回の放電あたりの半値幅を放電時間とみなしてもよい。
以下の説明においては、「帯電電流量」および「除電電流量」を「放電電流量」と総称することもある。同様に、「帯電時間」および「除電時間」を「放電時間」と総称することもある。
上述したように、正規の極性をマイナスに設定すると、帯電電流量はマイナス電流成分の積算値に相当し、除電電流量はプラス電流成分の積算値に相当する。また、帯電時間はマイナス電流波形についての時間を意味し、除電時間はマイナス電流波形についての時間を意味する。
《ステップS7:画像ノイズの有無の判定》
ステップS6において算出される、帯電電流量、除電電流量、放電時間、放電時間の全部または一部が所定条件を満たすときに、滞留物による異常放電に由来する画像ノイズが発生すると判定する。つまり、帯電成分と除電成分との関係性に基づいて、放電状態が推定される。具体的な判定方法および条件については、以下に詳述する。
《ステップS8:印加電圧の調整》
ステップS7において、滞留物による異常放電に由来する画像ノイズが発生すると判定されると、後述するような方法によって、帯電装置2から感光体1(像担持体)に対して印加される電圧が調整される。印加電圧を調整することで、帯電装置2から感光体1(像担持体)に流れる電流も変化することになる。
<F.画像ノイズの発生有無の判定方法>
次に、図5のステップS7における画像ノイズの発生有無を判定するいくつかの方法について説明する。
(1.放電電流量)
第1の判定方法として、帯電成分と除電成分との関係性を示す指標を放電電流量から算出し、当該関係性を示す指標に基づいて画像ノイズの発生有無を判定する方法について説明する。
図8は、図7(e)に示す放電電流波形についての放電総電流量と印加電圧との関係を示すグラフである。図8には、図6に示すステップS1〜S6までのプロセスを、印加する交流電圧を複数に異ならせて複数回実行した場合に得られた、帯電電流量と除電電流量の絶対値との合計(図8には、「放電総電流量」と記す。)をプロットしたものである。
ここで、帯電電流量(本実施の形態においては、マイナス電流成分の積算値に相当)は、図7(e)に示す放電電流波形において、基準レベル(電流値がゼロ)より下側の区間にある部分の面積(典型的には、1周期分)に相当する。同様に、除電電流量(本実施の形態においては、プラス電流成分の積算値)は、図7(e)に示す放電電流波形において、基準レベル(放電電流値がゼロ)より上側の区間にある部分の面積(典型的には、1周期分)に相当する。
また、図8に示すグラフの横軸は、帯電用電源200の交流電圧発生部204により印加される交流電圧の振幅(Vpp)を示す。
図8において、●印は滞留物がない場合の電流量を示し、黒三角印は滞留物がある場合の電流量を示す。図8に示すように、イメージングユニットのプレニップ部9に滞留物が存在すると、放電電流成分の総積算値(帯電電流量および除電電流量の絶対値同士の足し合わせ)にはあまり相違がなく、放電電流成分の総積算値を測定するのみでは、滞留物による異常放電に由来する画像ノイズの検知は難しいと判定できる。
図9は、図7(e)に示す放電電流波形についての成分別の放電電流量と印加電圧との関係を示すグラフである。図9には、図6に示すステップS1〜S6までのプロセスを、印加する交流電圧を複数に異ならせて複数回実行した場合に得られた、帯電電流量(マイナス電流成分の積算値)と除電電流量(プラス電流成分の積算値)とをそれぞれプロットしたものである。
また、図9に示すグラフの横軸は、帯電用電源200の交流電圧発生部204により印加されるVppを示す。
図9において、丸印(●印および○印)は滞留物がない場合の放電電流量を示し、三角印(黒三角印および△印)は滞留物がある場合の放電電流量を示す。塗りつぶし印(●印および塗りつぶし三角印)が帯電電流量(マイナス電流成分の積算値)を示し、白抜き印(○印および△印)が除電電流量(プラス電流成分の積算値)を示す。図9に示すように、プレニップ部9に滞留物があると、帯電電流量および除電電流量のいずれについても、滞留物がない場合に比較して、変化が生じていることが分かる。
図10は、図7(e)に示す放電電流波形についての放電電流量差と印加電圧との関係を示すグラフである。図10には、図6に示すステップS1〜S6までのプロセスを、印加する交流電圧を複数に異ならせて複数回実行した場合に得られた、帯電電流量の絶対値から除電電流量の絶対値を減算した値(以下、「放電電流量差」とも称する。)をプロットしたものである。本実施の形態においては、放電電流量差は「マイナス電流成分の積算値−プラス電流成分の積算値」を意味する。
また、図10に示すグラフの横軸は、帯電用電源200の交流電圧発生部204により印加されるVppを示す。
図10において、●印は滞留物がない場合の放電電流量差を示し、黒三角印は滞留物がある場合の放電電流量差を示す。図10に示すように、イメージングユニットのプレニップ部9に滞留物があると、放電電流量差は、滞留物がない場合に比較して増大していることが分かる。図10においては、Vppを増大させると、滞留物がない場合と滞留物がある場合との間において、放電電流量差の乖離が小さくなる傾向をみることができる。
図10に示すグラフにおいては、滞留物がない場合および滞留物がある場合のそれぞれについて、画像ノイズが発生したときのVppを併せて示す。この結果によれば、滞留物がある場合でも、滞留物がない場合に生じ得る放電電流量差に対する差が所定のしきい値以下となるように、Vppを増大させることで、画像ノイズを解消できることも分かる。
なお、図10において、滞留物がない場合であっても、Vppが低い場合には画像ノイズが発生するが、この現象は、滞留物による異常放電に由来する画像ノイズではなく、帯電不良に由来する画像ノイズである。
図10に示すように、帯電成分と除電成分との関係性を示す指標として、帯電電流量の絶対値と除電電流量の絶対値との差分である放電電流量差を算出するようにしてもよい。
図11は、図7(e)に示す放電電流波形についての放電電流量比と印加電圧との関係を示すグラフである。図11には、図6に示すステップS1〜S6までのプロセスを、印加する交流電圧を複数に異ならせて複数回実行した場合に得られた、帯電電流量と除電電流量との比率(以下、「放電電流量比」とも称する。)をプロットしたものである。この放電電流量比は、除電電流量を帯電電流量で除した値に相当する。本実施の形態においては、放電電流量比は「プラス電流成分の積算値/マイナス電流成分の積算値」を意味する。
また、図11に示すグラフの横軸は、帯電用電源200の交流電圧発生部204により印加されるVppを示す。
図11において、●印は滞留物がない場合の放電電流量比を示し、黒三角印は滞留物がある場合の放電電流量比を示す。図11に示すように、イメージングユニットのプレニップ部9に滞留物があると、放電電流量比は、滞留物がない場合に比較して減少していることが分かる。図11においては、Vppを増大させると、滞留物がない場合と滞留物がある場合との間において、放電電流量比の乖離が小さくなる傾向をみることができる。
図11に示すグラフにおいては、滞留物がない場合および滞留物がある場合のそれぞれについて、画像ノイズが発生したときのVppを併せて示す。この結果によれば、滞留物があることで画像ノイズが発生する場合には、放電電流量比が減少(すなわち、プラス電流成分が減少)していることが分かる。また、滞留物がある場合でも、滞留物がない場合に生じ得る放電電流量比に対する差分が所定のしきい値以下となるように、Vppを増大させることで、画像ノイズを解消できることも分かる。
図11に示すように、帯電成分と除電成分との関係性を示す指標として、帯電電流量と除電電流量との比率である放電電流量比を算出するようにしてもよい。
図8〜図11には、説明の便宜上、交流電圧発生部204により印加されるVppを複数に異ならせた場合に得られる計測値を用いて判定する例を示すが、現実の判定方法においては、画像形成時に用いられる特定の交流電圧、あるいは、予め設定した交流電圧といった、単一の交流電圧における計測結果に基づいて判定してもよい。
上述したように、第1の判定方法において、滞留物検知機能は、感光体1(像担持体に流れる電流波形から放電電流波形(例えば、図7(e)参照)を算出するとともに、その放電電流波形に含まれる放電電流量差(帯電電流量−除電電流量)または放電電流量比(帯電電流量/除電電流量)について、予め定められたしきい値またはしきい範囲から外れると、画像ノイズが発生すると判定できる。なお、プレニップ部9に滞留物が存在しているか否かを判定するための所定値(すなわち、しきい値)については、予め実験的に決定しておいた固定値を用いてもよいし、感光体1の劣化状態などに応じて、動的に決定または更新される変動値を用いてもよい。さらに、固定値を用いる場合であっても、画像形成装置100の動作状態や環境状態に応じて、予め定められた複数の値から適切な値を選択するようにしてもよい。
(2.放電時間)
第2の判定方法として、帯電成分と除電成分との関係性を示す指標を放電時間から算出し、当該関係性を示す指標に基づいて画像ノイズの発生有無を判定する方法について説明する。
図12は、図7(e)に示す放電電流波形についての放電時間と印加電圧との関係を示すグラフである。図12には、図6に示すステップS1〜S6までのプロセスを、印加する交流電圧を複数に異ならせて複数回実行した場合に得られた、帯電時間と放電時間とをそれぞれプロットしたものである。本実施の形態においては、帯電時間はプラス電流成分が存在している期間の長さを意味し、除電時間はマイナス電流成分が存在している期間の長さを意味する。すなわち、図7(e)に示す放電電流波形において、各放電において放電電流量の絶対値(正側および負側)がそれぞれ所定のしきい値以上となっている期間の長さを意味する。
また、図12に示すグラフの横軸は、帯電用電源200の交流電圧発生部204により印加されるVppを示す。
図12において、丸印(●印および○印)は滞留物がない場合の放電時間を示し、三角印(黒三角印および△印)は滞留物がある場合の放電時間を示す。白抜き印(○印および△印)が帯電時間(本実施の形態においては、マイナス電流成分が存在している期間の長さに相当)を示し、塗りつぶし印(●印および塗りつぶし三角印)が除電時間(本実施の形態においては、プラス電流成分が存在している期間の長さに相当)を示す。図12に示すように、プレニップ部9に滞留物があると、帯電時間および除電時間のいずれについても、滞留物がない場合に比較して、変化が生じていることが分かる。
より具体的には、滞留物がない場合には、放電時間の方が若干長いものの、帯電時間と除電時間とはほぼ同等であり、バランスよく放電していることが分かる。一方、滞留物がある場合には、帯電時間が長くなる一方で、除電時間が短くなっており、帯電電流の放電が過剰になっていることが分かる。また、Vppを増大させると、帯電時間と除電時間とが同等に近付くことが分かる。
図13は、図7(e)に示す放電電流波形についての放電時間差と印加電圧との関係を示すグラフである。図13には、図6に示すステップS1〜S6までのプロセスを、印加する交流電圧を複数に異ならせて複数回実行した場合に得られた、帯電時間から除電時間を減算した値(以下、「放電時間差」とも称する。)をプロットしたものである。本実施の形態においては、放電時間差は「マイナス電流成分の放電時間−プラス電流成分の放電時間」を意味する。
また、図13に示すグラフの横軸は、帯電用電源200の交流電圧発生部204により印加されるVppを示す。
図13において、●印は滞留物がない場合の放電時間差を示し、黒三角印は滞留物がある場合の放電時間差を示す。図13に示すように、イメージングユニットのプレニップ部9に滞留物があると、放電時間差は、滞留物がない場合に比較して増大していることが分かる。図13においては、Vppを増大させると、滞留物がない場合と滞留物がある場合との間において、放電時間差の乖離が小さくなる傾向をみることができる。
図13に示すグラフにおいては、滞留物がない場合および滞留物がある場合のそれぞれについて、画像ノイズが発生したときのVppを併せて示す。この結果によれば、滞留物がある場合でも、滞留物がない場合に生じ得る放電時間差に対する差分が所定のしきい値以下となるように、Vppを増大させることで、画像ノイズを解消できることも分かる。
なお、図13において、滞留物がない場合であっても、Vppが低い場合には画像ノイズが発生するが、この現象は、滞留物による異常放電に由来する画像ノイズではなく、帯電不良に由来する画像ノイズである。
図13に示すように、帯電成分と除電成分との関係性を示す指標として、帯電時間と除電時間との差分である放電時間差を算出するようにしてもよい。
図14は、図7(e)に示す放電電流波形についての電流時間比と印加電圧との関係を示すグラフである。図14には、図6に示すステップS1〜S6までのプロセスを、印加する交流電圧を複数に異ならせて複数回実行した場合に得られた、除電時間と帯電時間との比率(以下、「放電時間比」とも称する。)をプロットしたものである。この放電時間比は、除電時間を帯電時間で除した値に相当する。本実施の形態においては、放電電流量比は「プラス電流成分の放電時間/マイナス電流成分の積算値」を意味する。
また、図14に示すグラフの横軸は、帯電用電源200の交流電圧発生部204により印加されるVppを示す。
図14において、●印は滞留物がない場合の放電時間比を示し、黒三角印は滞留物がある場合の放電時間比を示す。図14に示すように、イメージングユニットのプレニップ部9に滞留物があると、放電時間比は、滞留物がない場合に比較して減少していることが分かる。図14においては、Vppを増大させると、滞留物がない場合と滞留物がある場合との間において、放電時間比の乖離が小さくなる傾向をみることができる。
図14に示すグラフにおいては、滞留物がない場合および滞留物がある場合のそれぞれについて、画像ノイズが発生したときのVppを併せて示す。この結果によれば、滞留物があることで画像ノイズが発生する場合には、放電時間比が減少(すなわち、プラス電流成分の放電時間が減少)していることが分かる。また、滞留物がある場合でも、滞留物がない場合に生じ得る放電時間比に対する差分が所定のしきい値以下となるように、Vppを増大させることで、画像ノイズを解消できることも分かる。
図14に示すように、帯電成分と除電成分との関係性を示す指標として、帯電時間と除電時間との比率である放電時間比を算出するようにしてもよい。
図12〜図14には、説明の便宜上、交流電圧発生部204により印加されるVppを複数に異ならせた場合に得られる計測値を用いて判定する例を示すが、現実の判定方法においては、画像形成時に用いられる特定の交流電圧、あるいは、予め設定した交流電圧といった、単一の交流電圧における計測結果に基づいて判定してもよい。
上述したように、第2の判定方法において、滞留物検知機能は、感光体1(像担持体に流れる電流波形から放電電流波形(例えば、図7(e)参照)を算出するとともに、その放電電流波形に含まれる放電時間差(帯電時間−除電時間)または放電時間比(除電時間/帯電時間)について、予め定められたしきい値またはしきい範囲から外れると、画像ノイズが発生すると判定できる。なお、プレニップ部9に滞留物が存在しているか否かを判定するための所定値(すなわち、しきい値)については、予め実験的に決定しておいた固定値を用いてもよいし、感光体1の劣化状態などに応じて、動的に決定または更新される変動値を用いてもよい。さらに、固定値を用いる場合であっても、画像形成装置100の動作状態や環境状態に応じて、予め定められた複数の値から適切な値を選択するようにしてもよい。
上述したように、本実施の形態に従う画像形成装置100においては、一例として、放電電流量および/または放電時間に基づいて、画像ノイズの発生有無を検知することができる。なお、放電電流量の変化に基づく検知方法においては、放電状態に依存して、スパイク状の電流波形が生じ得るため、電流成分の積算値に比較的大きな誤差が含まれる場合がある。一方、放電時間の変化に基づく検知方法においては、誤差が生じる可能性が低いので、ノイズが多い環境下においては、放電時間の変化に基づく検知方法の採用が好ましい。
<G.印加電圧の調整方法(放電条件の設定)>
次に、図5のステップS8における印加電圧を調整する方法の一例について説明する。すなわち、画像ノイズの発生有無を判定結果に基づいて、適切な放電条件が設定される。
本実施の形態に従う画像形成装置100においては、帯電装置2の帯電ローラー21(接触帯電手段)から感光体1(像担持体)に印加される電圧に含まれる交流成分(以下、「AC成分」とも称する。)を調整する。
(g1:第1の調整方法:印加電圧に含まれる交流電圧成分の調整)
第1の調整方法として、画像ノイズの発生の検知結果に基づいてAC成分を調整する方法について説明する。このAC成分の調整は、感光体1(像担持体)に対する正負(プラス・マイナス)の放電量に変化を生じさせるものであれば任意の手段を採用できる。
AC成分の調整の一例として、(1)Vppの変更、(2)デューティ比の変更、(3)放電電流量比の変更などが挙げられる。
上述したような第1の判定方法または第2の判定方法に従って、画像ノイズの発生が検知されると、AC成分の調整が実施される。以下の説明においては、一例として、(1)Vppの変更によって、AC成分を調整することで、画像ノイズを抑制する例を示す。すなわち、印加電圧に含まれるAC成分の振幅が調整される例について説明する。
Vppを変更する方法の一例として、上述したような知見に基づいて、放電電流量差(マイナス電流成分の積算値(除電電流量)とプラス電流成分の積算値(帯電電流量)との差)がしきい値以下となるように、Vppが調整される。このとき、プラス電流成分およびマイナス電流成分のうちいずれか一方の放電電流量がしきい値以上になるように調整するとよい。この理由を以下に説明する。
図15は、図10に示す放電電流量差と印加電圧との関係に基づくAC成分調整の方法を説明するための図である。図15を参照して、滞留物がある場合には、放電電流量差がしきい値以下であるVppの領域は2つ存在する(図15中の丸印参照)。このうち、Vppが低い側の領域では、画像ノイズが発生する。これは、放電電流量差については所定の放電条件(しきい値以下であること)を満たしているものの、除電電流量が不足して、画像ノイズが発生する状態である。このように、除電放電が不足(すなわち、帯電放電が過剰)になっている場合、放電電流量差のみで判定すると、画像ノイズが発生する領域を誤って選択してしまう可能性がある。そのため、放電電流量差だけではなく、帯電電流量または除電電流量の大きさに基づいてVppの大きさを調整することが好ましい。
上述の説明においては、放電電流量差がしきい値以下であることを放電条件として用いる方法を例示したが、放電電流量比(マイナス電流成分の積算値(除電流量)とプラス電流成分の積算値(帯電電流量)との比率)がしきい値以下となることを放電条件としてもよい。この場合においても、上述したのと同様の理由で、プラス電流成分およびマイナス電流成分のうちいずれか一方の放電電流量がしきい値以上になるように調整するとよい。
このように、上述した第1の調整方法においては、放電電流量(放電電流量差または放電電流量比)に基づいて、印加電圧に含まれる交流電圧成分が調整される。
(g2:第2の調整方法:印加電圧の帯電時間の調整)
第2の調整方法として、帯電装置2の帯電ローラー21(接触帯電手段)による帯電時間を変化させることでAC成分を調整する方法について説明する。より具体的には、第2の調整方法においては、画像ノイズの発生の検知結果に基づいて、帯電時間を変化させることでAC成分を調整する。但し、帯電時間によるAC成分を調整する方法としては任意の手段を採用できる。例えば、帯電時間を調整する手段の一例として、(1)Vppの変更、(2)デューティ比の変更、などが挙げられる。
上述したような第1の判定方法または第2の判定方法に従って、画像ノイズの発生が検知されると、AC成分の調整が実施される。以下の説明においては、一例として、(1)Vppの変更によって、帯電時間を調整することで、画像ノイズを抑制する例を示す。
第2の調整方法においては、Vppの大きさを変更することでAC成分を調整する。より具体的には、放電時間差(帯電時間と除電時間との差分)がしきい値以下となるようにVppを設定する。このようなAC成分の調整によって、図13に示すVppが相対的に高い領域にあるように、画像ノイズの発生を抑制できる。
なお、Vppを設定するにあたって、放電時間差分が第1のしきい値以下であり、かつ、帯電放電および除電放電のいずれか一方の放電時間が第2のしきい値以上となるように調整するとよい。この理由を以下に説明する。
上述の図13に示すグラフにおいては、複数のVppについて、マイナス電流成分についての放電時間からプラス電流成分についての放電時間を減算した値(放電時間差)がそれぞれプロットされている。図13に示す測定条件においては、滞留物がない場合、放電時間差は非常に小さい。このような場合に、帯電時間と除電時間との差分(放電時間差)のみで判定すると、以下のように誤判定を生じ得る。
図16および図17は、図13に示す放電時間差と印加電圧との関係に基づくAC成分調整の方法を説明するための図である。
図16を参照して、例えば、滞留物がある場合において、画像ノイズが発生しない放電時間差の大きさに応じて第1のしきい値を設定したとする。放電時間差がこの設定された第1のしきい値以下であることのみを放電条件とすると、第1のしきい値の設定によっては、滞留物がない場合、帯電不良の領域(Vppが相対的に低い領域)においても、放電状態が良好であると誤って判定される可能性がある。すなわち、図16に示すように、Vppが低いことで生じる帯電不良に由来する画像ノイズ(図16において「画像ノイズ」と示された領域)が発生する可能性がある。
図17を参照して、例えば、滞留物がない場合を基準としてしきい値を設定した場合には、滞留物がある場合の放電状態を適切に判定することができない場合がある。例えば、図17に示すような大きさに第2のしきい値を設定したとする。この第2のしきい値以下であることを放電条件とすると、滞留物がある場合においては、画像ノイズを解消できるVppよりもさらに高いVppを印加するように調整してしまう可能性がある。このような高いVppを印加することで、帯電放電が過剰になってしまう。
図16および図17に示すように、放電条件としては、放電時間差が第1のしきい値以下であり、かつ、第2のしきい値以上であることを採用すること好ましい。
上述の説明においては、放電時間差について判定および調整する方法を例示したが、放電時間比(プラス電流成分の放電時間とマイナス電流成分の放電時間との比率)について判定および調整する方法を採用してもよい。この場合においても、放電電流量比がしきい値以下となることを放電条件とするとともに、プラス電流成分およびマイナス電流成分のうちいずれか一方の放電時間がしきい値以上になるように調整するとよい。このような放電条件を採用するのは、上述の第1の調整方法において説明したのと同様の理由である。
本実施の形態に従う測定においては、滞留物がない場合、マイナス電流成分とプラス電流成分とについての放電時間比のVppに対する依存性は低い。そのため、しきい値(第1のしきい値)の設定によっては、滞留物がない場合には、帯電不良の領域であっても、放電状態が良好であると誤って判定されてしまう可能性がある。一方、滞留物がある場合には、しきい値(第2のしきい値)の設定によっては、画像ノイズを解消できるVppよりもさらに高いVppを印加してしまう可能性がある。そこで、上述したように、上限側および下限側の2つのしきい値で放電条件を設定することが好ましい。
(g3:放電条件の選択)
上述したような印加電圧の調整方法において、対象となる管理特性(放電電流量差、放電電流量比、放電時間差、放電時間比)が予め定められた複数の放電条件(典型的には、上述したような1または複数のしきい値で規定される範囲内に入っていること)を満たしていると判定されると、それらの放電条件のうちから、最適なものを選択するようにしてもよい。
例えば、条件を満たしていると判定された放電条件のうち、放電総電流量(放電電流量の絶対値と除電電流量の絶対値との合計)が最小となるものを選択するようにしてもよい。これは、放電電流量が増大するに伴って、感光体1(像担持体)の劣化が促進され、部材寿命が短くなってしまうからである。
例えば、Vppの大きさを変更する場合、条件を満たす複数のVppから最小となるものを選択すればよい。また、他の要素を変更する場合であっても、例えば、それぞれの放電条件ごとの放電総電流量を算出するとともに互いに比較することで、管理特性が指定された放電条件を満たすものであって、かつ、放電総電流量が最小となるものを選択すればよい。
(g4:画像ノイズの検知および印加電圧の調整の実施)
上述したような画像ノイズの検知および印加電圧の調整は、画像形成プロセスにおける印刷期間中(画像形成中)および/または画像間において逐次実施されるようにしてもよい。すなわち、帯電ローラー21から感光体1に流れる電流を計測する計測機能(電流計測部300)、計測された電流に含まれる放電成分を帯電成分および除電成分に分離するとともに、帯電成分と除電成分との関係性を解析する解析機能(制御部50)、ならびに、印加電圧のAC成分を調整する調整機能(制御部50および帯電用電源200)は、画像形成装置100の印刷期間中に動作させるようにしてもよい。
制御部50および電流計測部300が連係することによって、画像ノイズの発生の有無を検知する画像ノイズ検知機能を実現する。感光体1を流れる電流の状態に基づく検知の詳細については、後述する。画像形成装置100は、画像ノイズ検知機能により画像ノイズが発生すると検知されたことに応じて、当該発生する画像ノイズを低減するための印加電圧の調整処理を実施してもよい。印加電圧の調整機能については、典型的には、制御部50が後述するような各部の動作を提供する制御により実現される。
但し、上述したように、画像ノイズの検知および印加電圧の調整の実施中においては、中間転写装置5および露光装置3の少なくとも一方の動作を停止するようにしてもよい。そのため、中間転写装置5および露光装置3の少なくとも一方の動作を停止した上で、画像ノイズの検知処理および印加電圧の調整を実施するための専用のモード(以下、「検知/調整モード」とも称する。)を設けてもよい。このとき、中間転写装置5を中間転写体6から離間するようにしてもよいし、さらに、現像装置4による静電潜像の現像や現像バイアスの印加を停止するようにしてもよい。
画像ノイズの検知および印加電圧の調整を実施するタイミングもしくは条件としては、ニップ部もしくはプレニップ部への異物の滞留度合いが変動する場合に、検知/調整モードを起動するようにしてもよい。すなわち、電流の計測処理、解析処理、調整機能については、予め定められた起動条件が満たされた場合に動作を開始するようにしてもよい。このような起動条件の具体例として、(1)環境が変動した場合、(2)連続した画像形成が実行された場合、(3)形成された画像パターンの履歴に基づいて決定する場合などが想定される。すなわち、起動条件は、環境が変動した場合、部分カバレッジが所定範囲にある場合、全体カバレッジが所定範囲にある場合、印刷枚数が所定数に到達した場合、のうちいずれかを含む。
異物の滞留度合いの変動が生じやすい条件において、検知/調整モードを選択的に起動するようにしてもよい。このような検知/調整モードの選択的な起動を採用することで、検知/制御モードの起動頻度を低減でき、生産性を損なうことなく画像形成(印刷)を実現できる。また、異物の滞留度合いが変動すると判定する条件については、画像形成装置のシステム特性に依存して異なるので、対象のシステムの特性に応じて使い分けるとよい。
(1)環境が変動した場合には、帯電ローラー21の特性、帯電ローラー21の上流側に配置されたクリーニングブレード52の特性、クリーニングブレード52に突入するトナーなどの特性が変化するため、異物の滞留度合いも変動しやすい。
(2)連続した画像形成が実行された場合として、所定の印刷枚数に達した場合や一定の走行距離にした場合などにも、クリーニングブレード52の摩耗や感光体1の表面状態の劣化などに起因して、異物の滞留度合いは変動しやすい。そのため、このような状態になった場合にも、検知/制御モードを起動するようにしてもよい。
(3)形成された画像パターンの履歴に基づいて決定する場合として、現実に形成される画像パターンに依存して、異物の滞留度合いが変動することになる。より具体的には、画像形成時の画像面積率(以下、「カバレッジ」とも称する。)が大きくなると、クリーニングブレード52に突入するトナーの量も増大する。それに伴ってトナーに添加される外添剤等の異物も増大するため、クリーニングブレード52をすり抜ける異物の量も増大して、より多くの異物が帯電ローラー21のニップに突入するようになる。
逆に、カバレッジが小さくなると、潤滑剤を塗布する系においては、クリーニングブレード52において研磨剤の役割を果たすトナーの突入量が低下するので、クリーニングブレード52をすり抜ける潤滑剤の量が増大する。また、図4に示すような直接転写方式の場合には、媒体Sから生じる紙粉成分あるいは繊維成分のすり抜けも増大する。
上述したような現象は、いずれも感光体1の回転軸方向における領域ごとのカバレッジの大きさに依存することになる。
また、上述したような現象は、感光体1の回転軸方向全域についてのカバレッジの大きさにも依存することになる。例えば、形成される画像のカバレッジが低いと、現像装置4でのトナーの消費量が低下し、これに伴ってトナーの補給量も低下する。トナーの補給量が低下、すなわち新しいトナーの補給量が少なくなることで、現像装置4中には同一のトナーがより長い期間保持されることになる。長い期間にわたって現像装置4中に保持されたトナーからは、その保持中のストレスによって徐々に外添剤が離脱していくため、トナーに含まれる外添剤の量が減少する。
以上のような理由によって、カバレッジの低い画像が形成され続けると、クリーニングブレード52に突入する外添剤の量が少なくなる。すなわち、研磨剤として機能する成分が少なくなるため、帯電ローラー21のニップ部に突入する潤滑剤、紙粉成分、繊維成分などの異物の量も多くなる。
逆に、カバレッジの高い画像が形成され続けると、上述とは逆の現象が生じ得る。すなわち、研磨剤として機能する成分が多くなり、潤滑剤、紙粉成分、繊維成分などの異物の量が少なくなる。その結果、クリーニングブレード52をすり抜けるトナーや外添剤が多くなる。
以上のような理由から、(1)部分カバレッジがしきい値以下/しきい値以上である場合、(2)全体カバレッジがしきい値以下/しきい値以上である場合において、検知/制御モードを起動するようにしてもよい。
次に、部分カバレッジの算出方法について説明する。図18は、本実施の形態に従う画像形成装置100における部分カバレッジの算出方法を説明するための模式図である。
図18を参照して、部分カバレッジの算出においては、像担持体である感光体1上に設けられる静電潜像の書き込み領域を、感光体1の周面の回転方向と直交する方向(すなわち、回転軸方向または主走査方向)に分割し、それら分割した各領域(以下、「セグメント」とも称する。)(C1〜Cn)ごとに画像比率が計算される。図18には、感光体1の回転軸方向にN個のセグメントを設定した例を示す。分割されたセグメントごとに静電潜像の書き込み情報からトナーを付着した領域である画像部の面積比率(以下、「画像部比率」とも称する。)が算出される。
例えば、図18に示す画像であれば、Ci〜Cjのセグメントの各々において画像部比率は100%であり、それ以外のセグメントの画像部比率は50%ということになる。このように画像形成領域内の各セグメントの画像部比率に基づいて、各セグメントの部分カバレッジを算出してもよい。
<H.全体処理手順>
図19は、本実施の形態に従う画像形成装置100における全体処理手順を示すフローチャートである。図19に示す各ステップは、典型的には、画像形成装置100の制御部50がプログラムなどを実行することで実現される。図19には、専用のモード(検知/調整モード)を設けた場合の処理を示す。
図19を参照して、画像形成装置100は、検知/調整モードの起動条件が成立したか否かを判定する(ステップS100)。検知/調整モードの起動条件が成立していなければ(ステップS100においてNO)、画像形成装置100は、所定期間後にステップS100の処理を繰返す。
検知/調整モードの起動条件がしていれば(ステップS100においてYES)、画像形成装置100は、感光体1(像担持体)を流れる電流を計測する(ステップS102)とともに、計測された電流波形に対する波形解析を実施する(ステップS104)。すなわち、上述の図7(a)〜(e)に示すそれぞれの波形の算出処理および各種判定処理が実施される。そして、画像形成装置100は、波形解析の結果に基づいて、画像ノイズの発生有無を判定する(ステップS106)。すなわち、帯電装置2が印加する電圧に含まれるAC成分の調整が必要であるか否かが判定される。
図5に示す電流計測部300がステップS102における電流計測を担当し、図5に示す制御部50がステップS104における波形解析およびS106における判定を担当する。
画像ノイズが発生するものであれば(ステップS106においてYES)、画像形成装置100は、印加電圧を調整する処理、すなわち帯電装置2が印加する電圧に含まれるAC成分を調整する処理を実施する(ステップS108)。そして、ステップS102以下の処理を繰返す。
このように、ノイズ画像が発生しないと判定されるまで、言い換えれば、AC成分の調整が不要であると判定されるまで、ステップS102〜S108の処理が繰返される。すなわち、帯電成分と除電成分との関係性を示す指標(例えば、放電電流量差、放電電流量比、放電時間差、放電時間比)が予め定められた条件(例えば、しきい値以上、および/または、しきい値以下)を満たすように、AC成分が調整される。
一方、画像ノイズが発生するものでなければ(ステップS106においてNO)、検知/調整モードを終了する。そして、通常の印刷モードへ復帰する。つまり、AC成分のさらなる調整が不要であると判定されると、検知/調整モードは終了する。
上述したように、AC成分調整を行なう際に複数の条件を適用することが好ましい場合がある。このような場合には、それぞれの条件を適用して、AC成分調整を行なう必要がある。このような場合の処理について説明する。
図20は、本実施の形態に従う画像形成装置100における全体処理手順の変形例を示すフローチャートである。図20に示す各ステップは、典型的には、画像形成装置100の制御部50がプログラムなどを実行することで実現される。図20に示す処理手順は、図19に示す処理手順のステップS106に代えて、ステップS110およびS112を設けたものである。すなわち、図20に示す処理手順においては、ステップS110およびS112において、帯電装置2が印加する電圧に含まれるAC成分の調整が必要であるか否かが判定される。
図20を参照して、計測された電流波形に対する波形解析の実施後(ステップS104)、画像形成装置100は、判定に用いる第1の指標(放電電流量差、放電電流量比、放電時間差、放電時間比のいずれか)が第1のしきい値条件を満たしているか否かを判定する(ステップS110)。第1の指標が第1のしきい値条件を満たしていなければ(ステップS110においてNO)、画像形成装置100は、帯電装置2が印加する電圧に含まれるAC成分を調整する処理を実施する(ステップS108)。そして、ステップS102以下の処理を繰返す。このように、第1の指標が第1のしきい値条件を満たすまで、ステップS102〜S110の処理が繰返される。
第1の指標が第1のしきい値条件を満たしていれば(ステップS110においてYES)、画像形成装置100は、次に、第1の指標に関連する第2の指標が第2のしきい値条件を満たしているか否かを判定する(ステップS112)。第2の指標が第2のしきい値条件を満たしていなければ(ステップS112においてNO)、画像形成装置100は、帯電装置2が印加する電圧に含まれるAC成分を調整する処理を実施する(ステップS108)。そして、ステップS102以下の処理を繰返す。このように、第2の指標が第2のしきい値条件を満たすまで、ステップS102〜S112の処理が繰返される。
第2の指標が第2のしきい値条件を満たしていれば(ステップS112においてYES)、検知/調整モードを終了する。そして、通常の印刷モードへ復帰する。つまり、AC成分のさらなる調整が不要であると判定されると、検知/調整モードは終了する。
なお、第1の指標として選択可能なもの、および、対応する第2の指標を以下の表に示す。併せて、しきい値条件についても示す。
上表に示すように、第1の指標としては、放電電流量差、放電電流量、放電時間差、放電時間比のいずれかを採用することができる。
第1の指標として放電電流量差を採用した場合には、図10に示すように、滞留物がない場合と滞留物がある場合との差分が小さい領域が選択されるように、第1のしきい値以下の条件が設定される。
あるいは、第1の指標として放電電流量比を採用した場合には、図11に示すように、滞留物がない場合と滞留物がある場合との差分が小さい領域が選択されるように、第1のしきい値以上の条件が設定される。
第1の指標として放電電流差または放電電流比が採用された場合には、第1の指標に関連する第2の指標として、帯電電流または除電電流が採用されてもよい。第2の指標として帯電電流が採用された場合には、過剰な帯電放電または除電放電の不足を防止する観点から、帯電電流の絶対値が第2のしきい値以上であるとの条件が設定される。同様の主旨から、第2の指標として除電電流が採用された場合には、除電電流の絶対値が第1のしきい値以上であるとの条件が設定される。
すなわち、帯電成分と除電成分との関係性を示す指標として放電電流量を用いた値が採用された場合には、当該関係性を示す指標が予め定められた第1の条件を満たすように、かつ、帯電電流量および除電電流量の一方が第2の条件を満たすように、交流成分が調整される。
さらに、第1の指標として放電電流差または放電電流比が採用された場合には、上述したように、放電総電流量(放電電流量の絶対値と除電電流量の絶対値との合計)が最小となる放電条件を探索するようにしてもよい。すなわち、帯電成分と除電成分との関係性が所定条件を満たすとともに、帯電電流量と除電電流量との総和がより小さくなるように、AC成分を調整してもよい。
また、第1の指標として放電時間差を採用した場合には、図13に示すように、滞留物がない場合と滞留物がある場合との差分が小さい領域が選択されるように、第1のしきい値以下の条件が設定される。
あるいは、第1の指標として放電時間比を採用した場合には、図14に示すように、滞留物がない場合と滞留物がある場合との差分が小さい領域が選択されるように、第1のしきい値以上の条件が設定される。
第1の指標として放電時間差または放電時間比が採用された場合には、第1の指標に関連する第2の指標として、帯電時間または除電時間が採用されてもよい。第2の指標として帯電時間が採用された場合には、過剰な帯電放電または除電放電の不足を防止する観点から、帯電時間が第2のしきい値以上であるとの条件が設定される。同様の主旨から、第2の指標として除電時間が採用された場合には、除電電流の絶対値が第1のしきい値以上であるとの条件が設定される。
すなわち、帯電成分と除電成分との関係性を示す指標として放電時間を用いた値が採用された場合には、当該関係性を示す指標が予め定められた第1の条件を満たすように、かつ、帯電時間および除電時間の一方が第2の条件を満たすように、交流成分が調整される。
また、上述のいずれかの値を帯電成分と除電成分との関係性を示す指標として採用した場合において、複数のVppが条件を満たすような場合には、それらの条件を満たす複数のVppのうちその値が最小となるものを選択するようにしてもよい。これは、上述したように、感光体1の寿命を延ばすためである。このように、帯電成分と除電成分との関係性が所定条件を満たすとともに、交流電圧の振幅(Vpp)がより小さくなるように、印加電圧のAC成分を調整するようにしてもよい。
上述したような第1の指標と第2の指標との組み合わせについては、任意に選択することができる。
<I.まとめ>
上述したように、本実施の形態に従う画像形成装置は、像担持体である感光体1に接触する帯電ローラー21を有する。感光体1と帯電ローラー21とが接触する部分(ニップ部)の上流側の近傍(プレニップ部)に異物が滞留することに起因する画像ノイズの発生を抑制する。より具体的な解決手段としては、感光体1に流れ込む電流を検知し、その中から放電に関与する電流成分を抽出する。抽出された放電に関与する電流成分を、帯電電流の成分と除電電流の成分とに分離し、両者の関係性を解析することで、画像ノイズの発生有無を判定する。さらに、解析することで得られる情報に基づいて、帯電ローラー21から感光体1に対して印加される電圧に含まれる交流電圧成分(AC成分)を調整し、画像ノイズが発生しない状態を維持する。
このような放電に関与する電流成分の抽出、抽出された電流成分からの帯電電流および除電電流の成分分離、AC成分の調整は、概略すると、以下のような手順で実施される。
1:感光体1のアース側に流れる電流の電流波形を計測する。
2:計測した電流波形から放電電流波形を算出する。
3:算出した放電電流波形からマイナス電流成分およびプラス電流成分の電流量ならびに放電時間をそれぞれ算出する。
4:放電電流量、放電電流量差、放電電流量比、放電時間、放電時間差、放電時間比などの情報に基づいて画像ノイズの発生有無を判定する。
5:判定結果に基づいてAC成分を調整する。
本実施の形態によれば、以下に示すような局面を有する。
A:本実施の形態に従う画像形成装置100は、接触帯電部材(帯電ローラー21)と、感光体1への流れ込み電流を検知できる電流検知構成と、流れ込み電流の放電成分を抽出し、放電成分を帯電成分と除電成分とに分離してそれぞれの成分を解析できる解析機能とを有する。画像形成装置100は、放電成分の解析結果における帯電電流の成分と除電電流の成分との関係性に応じて、接触帯電部材からの印加電圧に含まれるAC成分を調整する。
A1:画像形成装置100は、放電成分の解析結果に含まれる、帯電電流量の絶対値と除電電流量の絶対値との差分に基づいて、AC成分を調整するようにしてもよい。
A11:画像形成装置100は、帯電電流量の絶対値と除電電流量の絶対値との差分が所定範囲内であり、かつ、帯電電流量または除電電流量が所定範囲となるように、AC成分を制御してもよい。
A2:画像形成装置100は、放電成分の解析結果に含まれる、帯電電流量と除電電流量との比率に基づいて、AC成分を調整するようにしてもよい。
A21:画像形成装置100は、帯電電流量と除電電流量との比率が所定範囲内であり、かつ、帯電電流量または除電電流量が所定範囲となるように、AC成分を制御してもよい。
A3:画像形成装置100は、放電成分の解析結果に含まれる、帯電時間と除電時間との差分に基づいて、AC成分を調整するようにしてもよい。
A31:画像形成装置100は、帯電時間と除電時間との差分が所定範囲内であり、かつ、帯電時間または除電時間が所定範囲となるように、AC成分を制御してもよい。
A4:画像形成装置100は、放電成分の解析結果に含まれる、帯電時間と除電時間との比率に基づいて、AC成分を調整するようにしてもよい。
A41:画像形成装置100は、帯電時間と除電時間との比率が所定範囲内であり、かつ、帯電時間または除電時間が所定範囲となるように、AC成分を制御してもよい。
A5:画像形成装置100は、検知された特性が基準範囲内であるもののうち、放電総電流量が最小となるように、AC成分を制御してもよい。
A6:画像形成装置100は、印刷期間中において、流れ込み電流の検知およびAC成分の調整を逐次行なうようにしてもよい。
A7:画像形成装置100は、環境の変動、全体カバレッジ、部分カバレッジ、印刷枚数のいずれかに応じて、流れ込み電流の検知およびAC成分の調整を行なうようにしてもよい。
A8:画像形成装置100は、流れ込み電流の検知およびAC成分の調整を実施する際には、中間転写装置5、露光装置3、および/または、現像装置4の動作を停止するようにしてもよい。
A9:画像形成装置100は、印加する交流電圧の振幅(Vpp)を変更することで、AC成分を調整する。
A10:画像形成装置100は、検知された特性が基準範囲内であるもののうち、Vppが最小となる条件を選択するようにしてもよい。
<J.利点>
本実施の形態に従う画像形成装置は、異物の滞留などが生じた場合であっても、適切な帯電状態を維持することができ、その結果、精度よく画像ノイズを抑制できる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。