以下、図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。まず、本実施形態に係る画像形成装置1のハードウェア構成について図1を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る画像形成装置1のハードウェア構成を模式的に示すブロック図である。尚、画像形成装置1は、図1に示すハードウェア構成に加えて、プリンタ、スキャナ、ファクシミリを実現するためのエンジンを備える。
図1に示すように、本実施形態に係る画像形成装置1は、一般的なサーバやPC(Personal Computer)等と同様の構成を含む。即ち、本実施形態に係る画像形成装置1は、CPU(Central Processing Unit)10、RAM(Random Access Memory)20、ROM(Read Only Memory)30、HDD(Hard Disk Drive)40及びI/F50がバス90を介して接続されている。また、I/F50には表示部60、操作部70及び専用デバイス80が接続されている。
CPU10は演算手段であり、画像形成装置1全体の動作を制御する。RAM20は、情報の高速な読み書きが可能な揮発性の記憶媒体であり、CPU10が情報を処理する際の作業領域として用いられる。ROM30は、読み出し専用の不揮発性記憶媒体であり、ファームウェア等のプログラムが格納されている。HDD40は、情報の読み書きが可能な不揮発性の記憶媒体であり、OS(Operating System)や、印加電圧制御プログラムなどの各種の制御プログラム、アプリケーション・プログラム等が格納される。
I/F50は、バス90と各種のハードウェアやネットワーク等を接続し制御する。表示部60は、ユーザが画像形成装置1の状態を確認するための視覚的ユーザインタフェースであり、LCD(Liquid Crystal Display)等の表示装置によって実現される。操作部70は、キーボードやマウス等、ユーザが画像形成装置1に情報を入力するためのユーザインタフェースである。専用デバイス80は、プリンタ、スキャナ、ファクシミリにおいて専用の機能を実現するためのハードウェアである。
このようなハードウェア構成において、ROM30やHDD40若しくは図示しない光学ディスク等の記憶媒体に格納されたプログラムがRAM20に読み出され、CPU10がRAM20にロードされたプログラムに従って演算を行うことにより、ソフトウェア制御部が構成される。このようにして構成されたソフトウェア制御部と、ハードウェアとの組み合わせによって、本実施形態に係る画像形成装置1の機能を実現する機能ブロックが構成される。
次に、本実施形態に係る画像形成装置1の機能構成について、図2を参照して説明する。図2は、本実施形態に係る画像形成装置1の機能構成を模式的に示すブロック図である。尚、図2においては、電気的接続を実線の矢印で示しており、転写紙若しくは文書束の流れを破線の矢印で示している。
図2に示すように、本実施形態に係る画像形成装置1は、コントローラ100、給紙テーブル200、プリントエンジン300、プリント用排紙トレイ400、ADF(Auto Document Feeder:原稿自動搬送装置)500、スキャナエンジン600、スキャン用排紙トレイ700、ディスプレイパネル800、ネットワークI/F900を有する。また、コントローラ100は、主制御部110、エンジン制御部120、画像処理部130、操作表示制御部140及び入出力制御部150を有する。
給紙テーブル200は、画像形成部であるプリントエンジン300に転写紙を給紙する。プリントエンジン300は、給紙テーブル200から搬送されてきた転写紙に対して画像形成出力を実行することにより画像を描画する画像形成部である。本実施形態に係るプリントエンジン300の具体的態様としては、電子写真方式による画像形成機構である。このプリントエンジン300により画像が描画された画像形成済みの転写紙は、プリント用排紙トレイ400に排紙される。プリントエンジン300は、図1に示す専用デバイス80によって実現される。
ADF500は、原稿読取部であるスキャナエンジン600に原稿を自動搬送する。スキャナエンジン600は、光学情報を電気信号に変換する光電変換素子を含む原稿読取部であり、ADF500により自動搬送されてきた原稿、若しくは、図示しない原稿台ガラスにセットされた原稿を光学的に走査して読み取って画像情報を生成する原稿読取部である。ADF500により自動搬送されてスキャナエンジン600により読み取られた原稿は、スキャン用排紙トレイ700に排紙される。ADF500及びスキャナエンジン600は、図1に示す専用デバイス80によって実現される。
ディスプレイパネル800は、画像形成装置1の状態を視覚的に表示する出力インタフェースであると共に、タッチパネルとしてユーザが画像形成装置1を直接操作し若しくは画像形成装置1に対して情報を入力する際の入力インタフェースでもある。即ち、ディスプレイパネル800は、ユーザによる操作を受けるための画像を表示する機能を含む。ディスプレイパネル800は、図1に示す表示部60及び操作部70によって実現される。
ネットワークI/F900は、画像形成装置1がネットワークを介して管理者用端末やPC(Personal Computer)等の他の機器と通信するためのインタフェースであり、Ethernet(登録商標)やUSB(Universal Serial Bus)インタフェース、Bluetooth(登録商標)、Wi−Fi(Wireless Fidelity)(登録商標)、FeliCa(登録商標)等のインタフェースが用いられる。このように、本実施形態に係る画像形成装置1は、ネットワークI/F900を介して接続された端末から印刷依頼の画像データや、印刷要求などの各種制御コマンドを受信する。ネットワークI/F900は、図1に示すI/F50によって実現される。
コントローラ100は、ソフトウェアとハードウェアとの組み合わせによって構成される。具体的には、ROM30やHDD40等の不揮発性記憶媒体に格納されたファームウェア等の制御プログラムが、RAM20にロードされ、それらのプログラムに従ってCPU10が演算を行うことにより構成されるソフトウェア制御部と集積回路などのハードウェアとによってコントローラ100が構成される。コントローラ100は、画像形成装置1全体を制御する制御部として機能する。そのため、本実施形態においては、コントローラ100が印加電圧制御装置として機能する。
主制御部110は、コントローラ100に含まれる各部を制御する役割を担い、コントローラ100の各部に命令を与える。また、主制御部110は、入出力制御部150を制御し、ネットワークI/F900及びネットワークを介して他の装置にアクセスする。エンジン制御部120は、プリントエンジン300、スキャナエンジン600等の駆動部を制御し若しくは駆動させる。
画像処理部130は、主制御部110の制御に従い、PDL(Page Description Language)等により記述された画像情報、例えば、入力された印刷ジョブに含まれる文書データ若しくは画像データに基づいて描画情報を出力情報として生成する。この描画情報とは、CMYKのビットマップデータ等の情報であり、画像形成部であるプリントエンジン300が画像形成動作において形成すべき画像を描画するための情報である。
また、画像処理部130は、スキャナエンジン600から入力される撮像データを処理し、画像データを生成する。この画像データとは、スキャナ動作の結果物として画像形成装置1に格納され若しくはネットワークI/F900及びネットワークを介して他の機器に送信される情報である。尚、本実施形態に係る画像形成装置1は、画像情報の代わりに描画情報が直接入力され、直接入力された描画情報に基づいて画像形成出力を実行することも可能である。
操作表示制御部140は、ディスプレイパネル800に情報表示を行い若しくはディスプレイパネル800を介して入力された情報を主制御部110に通知する。入出力制御部150は、ネットワークI/F900及びネットワークを介して入力される信号や命令を主制御部110に入力する。
次に、本実施形態に係るプリントエンジン300の詳細な構成について、図3〜図5を参照して説明する。図3は、本実施形態に係る画像形成装置1の主走査方向からの断面図である。図4は、本実施形態に係る画像形成装置1に取り付けられている作像ユニット320の主走査方向からの断面図である。図5は、本実施形態に係る画像形成装置1に取り付けられている作像ユニット320の斜め上からの透過図である。
図3に示すように、本実施形態に係る画像形成装置1は、給紙テーブル200から給紙された転写紙2に対してプリントエンジン300により画像を形成した後、プリント用排紙トレイ400に排紙する構成を備えるものである。
また、図3に示すように、本実施形態に係るプリントエンジン300は、無端状搬送手段310に沿って各色の各作像ユニット320が並べられた構成を備えるものであり、所謂タンデムタイプといわれるものである。即ち、本実施形態に係るプリントエンジン300は、駆動ローラ312と従動ローラ313とに架け渡された搬送ベルト311に沿って、この搬送ベルト311の搬送方向の上流側から順に、複数の作像ユニット、C版作像ユニット320C、M版作像ユニット320M、Y版作像ユニット320Y、K版作像ユニット320Kが配列されて構成されている。
これら複数の作像ユニット320C、320M、320Y、320Kは、形成するトナー画像の色が異なるだけで内部構成は共通である。C版作像ユニット320Cはシアンの画像を、M版作像ユニット320Mはマゼンタの画像を、Y版作像ユニット320Yはイエローの画像を、K版作像ユニット320Kはブラックの画像をそれぞれ形成する。尚、以下の説明においては、C版作像ユニット320Cについて具体的に説明するが、他の作像ユニット320M、320Y、320KはC版作像ユニット320Cと同様であるので、その他の作像ユニット320M、320Y、320Kの各構成要素については、C版作像ユニット320Cの各構成要素に付したCに替えて、M、Y、Kによって区別した符号を図に表示するにとどめ、説明を省略する。
搬送ベルト311は、ポリイミドやポリアミド等の耐熱性材料により構成され、回転駆動される駆動ローラ312と従動ローラ313とに架け渡されたエンドレスのベルト、即ち、無端状ベルトであって、各作像ユニット、C版作像ユニット320C、M版作像ユニット320M、Y版作像ユニット320Y、K版作像ユニット320Kによって中間転写画像が形成される中間転写ベルトである。駆動ローラ312は、不図示の駆動モータにより回転駆動させられ、この駆動モータと、駆動ローラ312と、従動ローラ313とが搬送ベルト311を移動させる。
C版作像ユニット320Cは、搬送ベルト311にシアンの中間転写画像を作像する。尚、図4及び図5に示すように、C版作像ユニット320Cは、感光体としての感光体ドラム321C、この感光体ドラム321Cの周囲に配置された帯電ユニット322C、現像ユニット323C、除電器324C、トナー回収ユニット325C、潤滑剤塗布ユニット326C、潤滑剤均一化ブレード327Cを備える。このC版作像ユニット320Cは、それぞれが独立して構成されていても良いが、帯電ユニット322C、現像ユニット323C、除電器324C、トナー回収ユニット325C、潤滑剤塗布ユニット326C、潤滑剤均一化ブレード327Cの少なくとも一つと感光体ドラム321Cとが一体的に構成され、画像形成装置1から着脱自在なプロセスカートリッジとして構成されていても良い。図4、図5は、図3の各版の作像ユニット320を切り出した図である。
このように構成されたC版作像ユニット320Cは、画像形成に先だって、潤滑剤塗布ユニット326Cにより潤滑剤を感光体ドラム321Cの表面上に塗布し、塗布された潤滑剤を潤滑剤均一化ブレード327Cにより均一な厚さになるように均して感光体ドラム321Cの表面上に定着させる。
このように、画像形成に先だって感光体ドラム321Cの表面上に潤滑剤を塗布する理由としては、感光体ドラム321Cの表面上とこれに接触する機構部との間の摩擦係数を低下させて、感光体ドラム321Cと上記機構部との上記接触部の摩耗を低減させたり、トナー回収ユニット325Cが感光体ドラム321Cの表面上に残留したトナーを回収する際の効率を向上させたり、像担持体の表面とクリーニングブレードのエッジ部分とで摩擦音が発生することを防止したりするためである。
また、この他、画像形成に先だって感光体ドラム321Cの表面上に潤滑剤を塗布する理由としては、帯電ユニット322Cが感光体ドラム321Cの表面を帯電させる際の電流からその表面を保護することで、その際の帯電電流により感光体ドラム321Cの表面が消耗するといった問題を防止するためである。
そして、感光体ドラム321Cの表面上に塗布された潤滑剤は、継時的に、若しくは、感光体ドラム321Cの駆動に伴って劣化や消耗が進行するが、その分は新たに潤滑剤塗布ユニット326Cから塗布されることで、継続的に潤滑剤塗布による効果が得られる。
尚、図4に示すように、本実施形態に係る潤滑剤塗布ユニット326Cは、感光体ドラム321Cの回転方向においてトナー回収ユニット325よりも下流側に配置され、現像ユニット323Cよりも上流側に配置されている。また、図4に示すように、本実施形態に係る潤滑剤塗布ユニット326Cは、固形潤滑剤326a、潤滑剤塗布ローラ326b、固形潤滑剤押圧スプリング326cを備える。
潤滑剤塗布ローラ326bは、感光体ドラム321Cに対向する位置に配置され、感光体ドラム321C及び固形潤滑剤326aに接触しながら回転することで固形潤滑剤326aを削り取り、削り取った潤滑剤を感光体ドラム321に塗布する。固形潤滑剤押圧スプリング326cは、固形潤滑剤326aを潤滑剤塗布ローラ326bに押し付けるための押圧力を発生する圧縮スプリングである。
そして、上記のようにして感光体ドラム321Cの表面上に潤滑剤が塗布されると、C版作像ユニット320Cは、画像形成に際してシアンの中間転写画像を搬送ベルト311に形成する。即ち、C版作像ユニット320Cは、画像形成に際してまず、感光体ドラム321Cの表面を暗中にて帯電ユニット322Cにより一様に帯電させる。そして、C版作像ユニット320Cは、一様に帯電した感光体ドラム321Cへ光書き込み装置330Cからシアン画像に対応した光を照射させることにより静電的に書き込みを行い、感光体ドラム321Cの表面にシアン画像に対応した静電潜像を形成する。
また、図4に示すように、本実施形態に係る帯電ユニット322Cは、帯電ローラ322a、帯電ローラクリーナ322bを備える。帯電ローラ322aは、帯電バイアスが印加されて感光体ドラム321Cの表面に近接することで、印加された帯電バイアスの作用により感光体ドラム321Cの表面を一様に帯電させる。
帯電ローラクリーナ322bは、帯電ローラ322aに当接することで、帯電ローラ322aの表面上の汚れを除去する。このように、帯電ローラ322aの表面上の汚れを除去する理由として、帯電ローラ322aの表面が汚れた場合、汚れが付着した部分の帯電能力が落ち、感光体ドラム321Cを狙いの電位に帯電させることができなくなり、帯電不良による異常画像が発生することを防ぐためである。
そして、上記のようにして感光体ドラム321Cの表面にシアン画像に対応した静電潜像が形成されると、C版作像ユニット320Cは、現像ユニット323Cによりこの静電潜像をシアントナーで可視像化することにより感光体ドラム321Cの表面上にシアンのトナー画像を形成する。
尚、図4及び図5に示すように、本実施形態に係る現像ユニット323Cは、第一の現像剤搬送スクリュー323a、第二の現像剤搬送スクリュー323b、現像ローラ323cを備える。現像ローラ323cは、感光体ドラム321Cと対向する位置に配置され、内部で電界を発生することで、感光体ドラム321Cに付着させるためのトナーを担持するトナー担持体としての役割を担う。このとき、現像ローラ323cは、図4に破線で示すP1〜P5の5か所の法線方向の磁束密度に磁力が及ぶように電界を発生させる。
第一の現像剤搬送スクリュー323a及び第二の現像剤搬送スクリュー323bは、現像ローラ323cの下方に配置され、夫々が互いに反対の方向に回転することにより、トナーボトル350Cから不図示のトナー供給機構により供給されるシアントナーをキャリアと共に攪拌しながら主走査方向(スクリュー回転軸方向)の全体に行き渡るように搬送する。このとき、第一の現像剤搬送スクリュー323aにより現像ユニット323Cの端部まで搬送されたトナー及びキャリアは、他方の第二の現像剤搬送スクリュー323bに受け渡され、第二の現像剤搬送スクリュー323bにより現像ユニット323Cのもう一方の端部まで搬送されたトナー及びキャリアは、他方の第一の現像剤搬送スクリュー323aに受け渡されることで現像ユニット323C内において主走査方向の全体に行き渡るように循環搬送される。
そして、第二の現像剤搬送スクリュー323bにより搬送されている現像剤は、現像ローラ323c内部で発生する電界によりその表面に汲み上げられて付着し、現像ローラ323cの回転に伴って搬送され、ドクターブレードにより所定の層厚に規制された後、感光体ドラム321Cと対向する対向領域、即ち、静電潜像を現像する領域(以下、「現像領域」とする)まで搬送される。即ち、本実施形態においては、現像ローラ323cが現像剤担持部として機能する。
このようにして、現像領域まで搬送されてきた現像剤中のトナーは、現像ローラ323cと感光体ドラム321Cとの間で発生する現像バイアスの作用により、現像領域において、感光体ドラム321Cの表面に形成されたシアン画像に対応した静電潜像へ静電的に移動して感光体ドラム321Cの表面に付着する。このようにして、現像ユニット323Cは、静電潜像をシアントナーで可視像化することにより感光体ドラム321Cの表面上にシアンのトナー画像を形成する。即ち、本実施形態においては、感光体ドラム321が画像担持部として機能する。
尚、本実施形態においては、二成分現像方式の例について説明するが、一成分現像方式であっても良い。即ち、本実施形態に係る画像形成装置1は、トナーとキャリアとから成る二成分現像剤に限らず、トナー中に磁性粉を含有する磁性トナーから成る一成分現像剤を用いる画像形成装置であっても良い。
C版作像ユニット320Cは、このトナー画像を、感光体ドラム321Cと搬送ベルト311とが当接若しくは最も接近する位置(以下、「前段転写位置」とする)で、一次転写ローラ340Cを付勢部材によって感光体ドラム321Cに押し当てることで搬送ベルト311上に転写する。
この転写により、搬送ベルト311上にはシアンのトナーによる画像、即ち、シアンの中間転写画像が形成される。尚、このとき、一次転写ローラ340Cには転写バイアスが印加され、その転写バイアスによって前段転写位置における感光体ドラム321Cと一次転写ローラ340Cの間で転写電界が形成されており、この転写電界の作用により感光体ドラム321Cから搬送ベルト311にトナー画像が転写される。
C版作像ユニット320Cは、シアンの中間転写画像を搬送ベルト311に形成し終えると、感光体ドラム321Cの表面上に残留したトナー(以下、「残留トナー」とする)をトナー回収ユニット325Cにより回収した後、感光体ドラム321Cの表面を除電器324Cにより除電し、次の画像形成のための準備、例えば、トナーボトル350Cから不図示のトナー供給機構により現像ユニット323Cへシアンのトナーの補給等を行って待機する。このトナーボトル350Cは、画像形成装置1の上部に形成されるプリント用排紙トレイ400を開くことにより、画像形成装置1から脱着可能なように構成されている。尚、トナーボトル350Cから現像ユニット323Cへのトナーの補給は、画像形成動作の直後でなくとも所定のタイミングで必要に応じて行われる。
尚、図4に示すように、本実施形態に係るトナー回収ユニット325Cは、クリーニングブレード325a、回収トナー搬送スクリュー325b、回収トナー搬送路325cを備える。
クリーニングブレード325aは、ウレタンゴム等の弾性を有する素材により構成されたエッジ部分が、感光体ドラム321Cの回転方向に対向する向きからその表面に押し当てられることにより、そのエッジ部分で感光体ドラム321Cの表面上に残留したトナーを掻きとり、掻きとったトナーを回収トナー搬送路325c内に回収する。
回収トナー搬送スクリュー325bは、回収トナー搬送路325c内に回収されたトナー(以下、「回収トナー」とする)を回収トナー搬送路325cに沿って搬送する。このようにして搬送される回収トナーは、廃棄されたトナーを収納するための容器である不図示の廃棄トナー収納容器に向かって搬送されて廃棄され、若しくは、現像ユニット323Cに向かって搬送されて再利用される。
以上のようにして、C版作像ユニット320Cにより搬送ベルト311上に転写されたシアンのトナーによる画像、即ち、シアンの中間転写画像は、駆動モータと駆動ローラ312と従動ローラ313とにより搬送ベルト311を移動させることで次のM版作像ユニット320Mに搬送される。M版作像ユニット320Mは、C版作像ユニット320Cでの画像形成プロセスと同様のプロセスにより感光体ドラム321M上にマゼンタのトナー画像を形成し、そのマゼンタのトナー画像を既に形成されたシアンの中間転写画像に重畳して搬送ベルト311上に転写する。この転写により、搬送ベルト311上にはマゼンタのトナーによる画像、即ち、マゼンタの中間転写画像が形成される。このようにして、搬送ベルト311上にシアンとマゼンタとの中間転写画像が形成される。
搬送ベルト311上に形成されたシアン、マゼンタの中間転写画像は、さらに次の作像ユニット、Y版作像ユニット320Y、K版作像ユニット320Kに順次搬送され、同様の動作により、感光体ドラム321Y上に形成されたイエローのトナー画像と、感光体ドラム321K上に形成されたブラックのトナー画像とが、既に形成されている中間転写画像に重畳されて搬送ベルト311上に転写される。この転写により、搬送ベルト311上にはイエローのトナーによる画像とブラックのトナーによる画像、即ち、イエローとブラックとの中間転写画像が形成される。こうして、搬送ベルト311上にフルカラーの中間転写画像が形成される。
このようにして搬送ベルト311上にフルカラーの中間転写画像が形成されると、給紙テーブル200に収納された転写紙2が最も上のものから順に給紙ローラ210と分離ローラ対220とにより分離給紙されてレジストローラ対230に向かって送り出される。そして、転写紙2は、レジストローラ対230でスキューが修正された後、レジストローラ対230により搬送ベルト311の搬送タイミングに合わせてその搬送経路上において転写紙2と搬送ベルト311とが接触する位置若しくは最も接近する位置(以下、「後段転写位置」とする)に搬送される。
このようにして搬送された転写紙2は、後段転写位置において二次転写ローラ360が付勢部材によって従動ローラ313に押し当てられることで、搬送ベルト311上に形成されているフルカラーの中間転写画像が転写される。これにより、転写紙2の紙面上に画像が形成される。紙面上に画像が形成された転写紙2は、更に搬送されて定着ユニット370にて画像形成面に垂直な方向から挟み込まれて加熱されながら加圧されることにより画像が定着された後、排紙ローラ対410によりプリント用排紙トレイ400に排紙される。
尚、本実施形態に係る定着ユニット370は、画像形成面に垂直な方向から転写紙2を挟み込みながら回転することにより転写紙2を搬送しつつ加圧するための定着ローラ対371を備える。また、定着ローラ対371の定着面上には加熱素子が備えられており、本実施形態に係る定着ユニット370は、この定着ローラ対371により転写紙2を加熱するようになっている。このように、本実施形態に係る定着ユニット370は、定着ローラ対371により転写紙2を画像形成面に垂直な方向から挟み込むことで加熱しながら加圧し、画像を定着するようになっている。
ベルトクリーナー380は、後段転写位置の下流側であってC版作像ユニット320Cよりも上流側において搬送ベルト311に押し当てられたクリーニングブレード325aにより搬送ベルト311の表面に付着したトナーを掻きとることで、搬送ベルト311をクリーニングする。
このように、本実施形態においては、無端状搬送手段310、作像ユニット320、光書き込み装置330、一次転写ローラ340、トナーボトル350、二次転写ローラ360、定着ユニット370、ベルトクリーナー380によりプリントエンジン300が構成される。
また、図3に示したように、本実施形態においては、中間転写画像が搬送ベルト311上に形成されてその中間転写画像が転写紙に転写される方式、即ち、間接転写方式の画像形成装置を例にして説明するが、図6に示すように、転写紙に画像が直接形成される方式、即ち、直接転写方式の画像形成装置であっても適用可能である。
図3〜図5を参照して説明したように、本実施形態に係る画像形成装置1は、画像を形成する際にはまず、感光体ドラム321の表面を帯電させることで静電潜像を形成し、帯電した現像剤であるトナーをその静電潜像に沿って付着させることにより現像する。これにより、本実施形態に係る画像形成装置1は、上記感光体ドラム321の表面に現像剤画像であるトナー画像を作像する。そして、本実施形態に係る画像形成装置は、感光体ドラム321の表面に形成されたトナー画像を転写紙上に転写し、トナー画像が転写された転写紙を加熱しながら加圧することにより、付着されたトナーを上記転写紙に定着させることで画像を形成するようになっている。
また、図3〜図5を参照して説明したように、本実施形態に係る画像形成装置1は、内部で発生した磁力による静電的引力により表面にトナーを担持しながら回転することで、感光体ドラムに対向する領域、即ち、静電潜像を現像する領域(現像領域)までトナーを搬送する現像ローラ323cを備えている。
その上で、本実施形態に係る画像形成装置1は、静電潜像を現像する際にはまず、表面にトナーが担持された状態の現像ローラ323cを回転させることで現像領域までトナーを搬送すると共に、現像領域において現像ローラ323cに現像バイアスを印加する。そして、本実施形態に係る画像形成装置1は、上記現像バイアスがトナーと現像ローラ323c表面との静電気的引力を上回ることで、現像ローラ323cの表面からトナーを離脱させ、離脱させたトナーを回転する感光体ドラム321表面に形成された静電潜像に向けて静電的に移動させる。このようにして本実施形態に係る画像形成装置1は、静電潜像を現像するようになっている。
このとき、本実施形態に係る画像形成装置1は、現像バイアスとして、直流電圧であるDC(Direct Current)電圧に対して交流電圧であるAC(Alternating Current)電圧(矩形波、のこぎり波等)を重畳して現像ローラ323cに印加するAC現像(交流現像)により静電潜像を現像するように構成されている。
ここで、本実施形態に係る画像形成装置1が、感光体ドラム321に形成された静電潜像を現像する際のAC現像の原理について、図7を参照して説明する。図7は、本実施形態に係る画像形成装置1が、現像ローラ323cに印加する現像バイアスの経時変化を示す図である。
このとき、本実施形態に係る画像形成装置1は、AC電圧の最大電圧値と最小電圧値との電位差(以下、「Vpp」とする)がPa−Pbボルト(V)となるように、最大電圧値がPaV、最小電圧値がPbVのAC電圧とDC電圧を現像バイアスとして現像ローラ323cに印加するように構成されている。
また、このとき、本実施形態に係る画像形成装置1は、最大電圧値(PaV)と最小電圧値(PbV)とがAms周期で繰り返されるように、周波数が1/AkHzのAC電圧を現像バイアスとして現像ローラ323cに印加するように構成されている。このときのAC電圧1周期における最大電圧値(PaV)の印加時間の割合(以下、「Duty」とする)は、最大電圧値(PaV)の印加時間をBmsとすると、B/Aにより算出され、図7においてはα%である。従って、図7においては、AC現像の平均電圧Vaveは、(α/100)・Pa+(1−α/100)・Pb(V)となる。この平均電圧がAC現像における現像バイアスのDC電圧(成分)であり、この平均電圧と感光体ドラム321の露光部の電位との差の絶対値が後述する現像ポテンシャルである。
そして、このようなAC現像の現像バイアスとして静電潜像が現像される際、本実施形態に係る画像形成装置1においては、現像バイアスが最小電圧値(PbV)のときに現像ローラ323cから感光体ドラム321へトナーが移動し、一方、現像バイアスが最大電圧値(PaV)のときには感光体ドラム321に一度付着したトナーの一部が現像ローラ323cへ引き戻されることになる。
このように、本実施形態に係る画像形成装置1においては、現像バイアスが最小電圧値のときに静電潜像が現像され、一方、現像バイアスが最大電圧値のときには感光体ドラム321に一度付着したトナーの一部が現像ローラ323cへ引き戻されることになる。以下では、現像バイアスにおける最小電圧値を「現像時のバイアス」、最大電圧値を「引き戻し時のバイアス」と呼称する。
このようにして静電潜像が現像された場合の現像領域付近における感光体ドラム321表面の単位面積当たりのトナー付着量を図8に示す。図8は、本実施形態に係る画像形成装置1において、現像時及び引き戻し時のバイアスが現像ローラ323cに印加されているときの現像領域付近における感光体ドラム321表面の単位面積当たりのトナー付着量を示すグラフである。
尚、図8においては、現像時のバイアスのときの感光体ドラム321表面の単位面積当たりのトナー付着量を実線で示し、引き戻し時のバイアスのときの感光体ドラム321表面の単位面積当たりのトナー付着量を破線で示している。また、図8においては、感光体ドラム321表面と現像ローラ323c表面との最近接位置からの感光体ドラム321の周回方向における距離を横軸としている。また、図8の横軸においては、感光体ドラム321の回転方向上流側、即ち、現像領域への入口側を−(マイナス)で表し、回転方向下流側、即ち、現像領域からの出口側を+(プラス)で表している。また、図8においては、感光体ドラム321表面の1cm2当たりのトナー付着量(mg/cm2)を示している。
図8に示すように、本実施形態に係る画像形成装置1においては、現像時のバイアスのとき、引き戻し時のバイアスのとき共に、現像領域への入口側から現像領域からの出口側に向けて、感光体ドラム321表面の単位面積当たりのトナー付着量は増加する傾向にある。この理由として、感光体ドラム321表面は、現像領域への入口側においては、現像領域を通過する前に位置しており、現像領域からの出口側においては、現像領域を通過した後に位置するためである。
また、図8に示すように、本実施形態に係る画像形成装置1において、現像ローラ323cに引き戻し時のバイアスが印加されているときの感光体ドラム321表面の単位面積当たりのトナー付着量は、現像時のバイアスが印加されているときよりも少なくなっている。これは、本実施形態に係る画像形成装置1において、現像ローラ323cに引き戻し時のバイアスが印加されると、感光体ドラム321に一度付着したトナーの一部が現像ローラ323cへ引き戻されるためである。
ところで、通常、現像領域における現像ローラ323c表面と感光体ドラム321表面との間の距離(以下、「現像ギャップ」とする)は、現像ローラ323c及び感光体ドラム321の偏心等により、現像ローラ323c及び感光体ドラム321の回転に伴って周期的に変動する。そして、このように現像ギャップが変動すると、現像ローラ323cに印加されている現像バイアスによる電界は、現像ギャップが小さいときには強くなり、一方、現像ギャップが大きいときには弱くなる。
そのため、このように、現像ギャップが変動する画像形成装置においては、現像ギャップが小さいときには静電潜像に移動するトナー量が増えてその部分に対応する画像の濃度は濃くなり、一方、現像ギャップが大きいときには静電潜像に移動するトナー量が減ってその部分に対応する画像の濃度は薄くなるといった現象が生じる。その結果、このように、現像ギャップが変動する画像形成装置においては、現像ギャップの変動に由来して、周期的な画像濃度ムラが発生してしまうといった問題がある。
このような現像ギャップの変動に由来して発生する周期的な画像濃度ムラは、図9、図10及び図11に示すように、AC現像よりも、現像バイアスとしてDC電圧のみを現像ローラ323cに印加することで静電潜像を現像するDC現像の方が顕著に表れる。
図9は、DC現像により静電潜像を現像する画像形成装置において、DC電圧が現像バイアスとして現像ローラ323cに印加されているときの現像領域付近における感光体ドラム321表面の単位面積当たりのトナー付着量を示すグラフである。図10は、AC現像により静電潜像を現像する画像形成装置において、現像時のバイアスが現像ローラ323cに印加されているときの現像領域付近における感光体ドラム321表面の単位面積当たりのトナー付着量を示すグラフである。図11は、AC現像により静電潜像を現像する画像形成装置において、引き戻し時のバイアスが現像ローラ323cに印加されているときの現像領域付近における感光体ドラム321表面の単位面積当たりのトナー付着量を示すグラフである。尚、図10、図11においては、現像バイアスとして高周波数のAC電圧が用いられているときについて示している。
また、図9、図10及び図11においては、現像ギャップが0.2mmの場合を実線で示し、0.225mmの場合を点線で示し、0.26mmの場合を破線で示し、0.3mmの場合を長破線で示している。また、図9、図10及び図11においては、感光体ドラム321表面と現像ローラ323c表面との最近接位置からの感光体ドラム321の周回方向における距離を横軸としている。また、図9、図10及び図11の横軸においては、感光体ドラム321の回転方向上流側、即ち、現像領域への入口側を−(マイナス)で表し、回転方向下流側、即ち、現像領域からの出口側を+(プラス)で表している。また、図9、図10及び図11においては、感光体ドラム321表面の1cm2当たりのトナー付着量(mg/cm2)を示している。
図9と図10、図9と図11との比較からわかるように、DC現像により静電潜像を現像する画像形成装置においては、現像領域からの出口付近における感光体ドラム321表面の単位面積当たりのトナー付着量の現像ギャップの変動による変化は、AC現像に比べて大きくなっている。即ち、AC現像により静電潜像を現像する画像形成装置においては、現像領域からの出口付近における感光体ドラム321表面の単位面積当たりのトナー付着量の現像ギャップの変動による変化は、DC現像に比べて小さくなっている。
このように、現像ギャップの変動に由来して発生する周期的な画像濃度ムラは、図10、図11に示すように、AC現像においても現れるが、図9に示すように、DC現像の方がより顕著に表れる。例えば、感光体ドラム321表面と現像ローラ323c表面との最近接位置からの感光体ドラム321の周回方向における距離が0.001〜0.002のときで比較すると、DC現像(図9)では、AC現像(図10、図11)よりも、現像ギャップの変動によるトナー付着量の変化は大きくなっている。そのため、本実施形態に係る画像形成装置1は、AC現像により静電潜像を現像するようになっている。
但し、AC現像において、現像ギャップの変動に由来して周期的な画像濃度ムラが発生してしまうといった問題は、所定の周波数を超える高周波数のAC電圧が現像バイアスとして現像ローラに印加された場合にのみ生じ、本実施形態に係る画像形成装置1のように、周波数が所定の周波数以下の低周波数のAC電圧が現像バイアスとして現像ローラ323cに印加される場合には生じない。
現像ギャップの変動に由来して周期的な画像濃度ムラが高周波数のAC電圧の場合にのみ生じる理由について説明する。そのためにまず、現像ギャップと感光体ドラム321へのトナー付着量との関係について説明する。現像ローラ323cに印加されている現像バイアスによる電界は、現像ギャップが小さいときには強くなり、反対に、現像ギャップが大きいときには弱くなる。
従って、現像ギャップが小さいときには、現像時のバイアスが印加されている間は、現像ローラ323cから感光体ドラム321へ移動するトナー量(以下、「現像量」とする)も多くなるが、引き戻し時のバイアスが印加されている間は、感光体ドラム321に一度付着して現像ローラ323cへ引き戻されるトナー量(以下、「引き戻し量」とする)も多くなる。そのため、現像ギャップが小さいときであっても、感光体ドラム321に過剰のトナーが付着するといったことがなく、適正量のトナーが付着することになる。
反対に、現像ギャップが大きいときには、現像時のバイアスが印加されている間は現像量も少なくなるが、引き戻し時のバイアスが印加されている間は引き戻し量も少なくなる。そのため、現像ギャップが大きいときであっても、感光体ドラム321に過少のトナーしか付着しないといったことがなく、適正量のトナーが付着することになる。
このように、現像量と引き戻し量とのバランスがうまくとれている場合には、現像ギャップの変動によらず、感光体ドラム321に適正量のトナーを付着させることが可能となる。
ところが、現像量と引き戻し量とのバランスは、高周波数のAC電圧が現像バイアスとして現像ローラに印加された場合、現像領域における感光体ドラム321と現像ローラ323cとの最近接部分で感光体ドラム321に一度付着したトナーが、引き戻し時のバイアスの印加時でも現像ローラ323cに引き戻されず、感光体ドラム321表面でホッピングするのみでうまくとれない。そのため、高周波数のAC電圧の場合には、現像量と引き戻し量とのバランスがうまくとれず、現像ギャップの変動に由来して、周期的な画像濃度ムラが発生してしまうことになる。
従って、本実施形態に係る画像形成装置1は、図7及び図8を参照して説明したように、低周波数のAC電圧を現像バイアスとして現像ローラ323cに印加するように構成されている。但し、現像バイアスとして印加されるAC電圧は、周波数が低すぎると、現像時のバイアスと引き戻し時のバイアスとの切り替え周期で、視認できるほどの画像濃度ムラが発生するため、低すぎない程度の周波数が好適である。
ここで、現像バイアスとして印加されるAC電圧の周波数が低すぎる場合に、現像時のバイアスと引き戻し時のバイアスとの切り替え周期で、視認できるほどの画像濃度ムラが視認されやすい理由について説明する。この画像濃度ムラの範囲は、現像時のバイアスと引き戻し時のバイアスとが切り替えわる間に感光体ドラム321がどの程度の距離だけ回転したかを表すものとして定義され、画像濃度ムラの範囲(mm)=感光体ドラム321の回転線速(mm/s)/現像バイアスの周波数(Hz)により算出される。そのため、このように定義された画像濃度ムラの範囲(mm)は、現像バイアスとして印加されるAC電圧の周波数が高いほど短くなるため視認されにくくなるが、周波数が低ければ低いほど長くなるため視認されやすくなる。
このような理由により、本実施形態に係る画像形成装置1は、低すぎない程度の低周波数のAC電圧を現像バイアスとして現像ローラ323cに印加するように構成されている。但し、上記画像濃度ムラの範囲(mm)は、上述したように、感光体ドラム321の回転線速に依存するため、本実施形態に係る画像形成装置1は、感光体ドラム321の回転線速に応じて、現像バイアスとして現像ローラ323cに印加するAC電圧の周波数を変更する。
ここまで説明したように、本実施形態に係る画像形成装置1は、現像ギャップの変動に由来して発生する周期的な画像濃度ムラを抑制するために、低すぎない程度の低周波数のAC電圧を現像バイアスとして現像ローラ323cに印加するAC現像を行うように構成されている。
但し、現像バイアスとして現像ローラ323cに印加されるAC電圧が低周波数の場合、現像バイアスのDuty及びVppが適正値でなければ、現像ローラ323cに引き戻し時のバイアスが印加されて感光体ドラム321に一度付着したトナーが現像ローラ323cに引き戻される際に画像がボソつきやすくなる。そのため、現像バイアスとして低周波数のAC電圧を現像ローラ323cに印加する画像形成装置においては、現像バイアスのDuty及びVppが重要となる。
具体的には、現像バイアスとして低周波数のAC電圧を現像ローラ323cに印加する画像形成装置においては、画像のボソつきを抑制するために、現像バイアスのDuty及び引き戻し時のバイアスを共に小さくする。このとき、画像のボソつきを抑制するための現像バイアスのDuty及び引き戻し時のバイアスは、トナー帯電量により変動する。そのため、現像バイアスのDuty及び引き戻し時のバイアスを共に小さくするというのは、同一のトナー帯電量で比較した場合において小さくするというものである。
このように、現像バイアスのDuty及び引き戻し時のバイアスを共に小さくすることで、現像領域における感光体ドラム321と現像ローラ323cとの最近接部分を主として、感光体ドラム321に一度付着したトナーが引き戻されるようになる。このため、画像のボソつきを抑制することが可能となる。但し、Dutyは、小さ過ぎると、上記最近接部分においても、感光体ドラム321に一度付着したトナーが引き戻されなくなる値以上であることが好ましい。
このような理由により、現像バイアスとして低周波数のAC電圧を現像ローラ323cに印加する画像形成装置においては、現像バイアスのDuty及びVppが重要となる。先に説明したように、Duty及び引き戻し時のバイアスに影響するVppの適正値は、現像ユニット323内におけるトナー帯電量に応じて変化する。
そこで、本実施形態に係る画像形成装置1は、画像のボソつきを抑制するために、現像ユニット323内におけるトナー帯電量に基づいてDuty及びVppを決定するように構成されている。
このように、本実施形態に係る画像形成装置1は、低周波数のAC電圧を現像バイアスとして現像ローラ323cに印加するAC現像を行うように構成されると共に、現像ユニット323内におけるトナー帯電量に基づいてDuty及びVppを決定するように構成されている。そのため、本実施形態に係る画像形成装置1は、現像ギャップの変動に由来して発生する周期的な画像濃度ムラを抑制することが可能となると共に、画像のボソつきを抑制することが可能となる。これにより、本実施形態に係る画像形成装置1は、形成される画像の品質を向上させることが可能となる。
この低周波数のAC電圧が印加されているときの現像領域付近における感光体ドラム321表面の単位面積当たりのトナー付着量を図12及び図13に示す。図12は、本実施形態に係る画像形成装置1において、現像時のバイアスが現像ローラ323cに印加されているときの現像領域付近における感光体ドラム321表面の単位面積当たりのトナー付着量を示すグラフである。図13は、本実施形態に係る画像形成装置1において、引き戻し時のバイアスが現像ローラ323cに印加されているときの現像領域付近における感光体ドラム321表面の単位面積当たりのトナー付着量を示すグラフである。尚、図10、図11においては、現像バイアスとして高周波数のAC電圧が用いられているときについて示しているのに対して、図12、図13においては、現像バイアスとして低周波数のAC電圧が用いられているときについて示しているのに対している。
また、図12及び図13においては、現像ギャップが0.2mmの場合を実線で示し、0.225mmの場合を点線で示し、0.26mmの場合を破線で示し、0.3mmの場合を長破線で示している。また、図12及び図13においては、感光体ドラム321表面と現像ローラ323c表面との最近接位置からの感光体ドラム321の周回方向における距離を横軸としている。また、図12及び図13の横軸においては、感光体ドラム321の回転方向上流側、即ち、現像領域への入口側を−(マイナス)で表し、回転方向下流側、即ち、現像領域からの出口側を+(プラス)で表している。また、図12及び図13においては、感光体ドラム321表面の1cm2当たりのトナー付着量(mg/cm2)を示している。
図10と図12、図11と図13との比較からわかるように、本実施形態に係る画像形成装置1、即ち、低周波数のAC電圧を現像バイアスとしてAC現像を行う画像形成装置1においては、高周波数のAC電圧を現像バイアスとして現像ローラ323cに印加する場合に比較して、現像ギャップの変動に由来する周期的な画像濃度ムラが抑制されている。
その結果、図14に示すように、本実施形態に係る画像形成装置1、即ち、低周波数のAC電圧を現像バイアスとしてAC現像を行う画像形成装置1は、DC現像、及び、高周波数のAC電圧を現像バイアスとしたAC現像に比べて、現像ギャップの変動に由来する周期的な画像濃度ムラが抑制される。図14は、各方法で静電潜像が現像される場合において、現像バイアスが現像ローラ323cに印加されているときの感光体ドラム321表面の単位面積当たりのトナー付着量の現像ギャップの変動による変化を示すグラフである。尚、図14において、縦軸は、感光体ドラム321表面の1cm2当たりのトナー付着量(mg/cm2)を示し、横軸は、現像ギャップ(mm)を示している。
また、図14においては、低周波数のAC電圧を現像バイアスとしたAC現像により静電潜像が現像された場合、即ち、本実施形態に係る画像形成装置1より静電潜像が現像された場合を実線で示し、高周波数のAC電圧を現像バイアスとしたAC現像により静電潜像が現像された場合を点線で示し、DC現像により静電潜像が現像された場合を破線で示している。
次に、本実施形態に係る画像形成装置1がトナー帯電量に基づいてDuty及びVppを決定する方法について図15を参照して説明する。図15は、本実施形態に係る画像形成装置1により静電潜像が現像される場合において、現像時のバイアスが現像ローラ323cに印加されているときの感光体ドラム321表面の単位面積当たりのトナー付着量の現像ギャップの変動による変化を、Duty及びVppの組み合わせ毎に示すグラフである。
尚、図15においては、現像ユニット323内におけるトナー濃度がS3(wt%)である場合を示している。また、図15の各グラフにおいて、トナー帯電量がE2μC/gの場合を◆を結ぶ線で示し、トナー帯電量がE4μC/gの場合を■を結ぶ線で示し、トナー帯電量がE8μC/gの場合を×を結ぶ線で示している。また、感光体ドラム321表面の単位面積当たりのトナー付着量をM/A(mg/cm2)で示し、現像ギャップをGAP(mm)で示している。また、図15においては、トナー帯電量は、E2<E4<E8であり、Dutyは、α1<α2<α5<α7<α8であり、Vppは、P1<P3<P5<P6である。
図15に示すように、感光体ドラム321表面の単位面積当たりのトナー付着量の現像ギャップの変動による変化は、現像ユニット323内におけるトナー帯電量に応じて変動し、さらに、Duty及びVppの組み合わせに応じて変動する。
そのため、本実施形態に係る画像形成装置1は、感光体ドラム321表面の単位面積当たりのトナー付着量の現像ギャップの変動による変化が極力小さくなるようなDuty及びVppの組み合わせをトナー帯電量に応じて選択するように構成されている。このように、本実施形態に係る画像形成装置1は、現像ユニット323内におけるトナー帯電量に基づいてDuty及びVppを決定するように構成されている。
例えば、図15においては、トナー帯電量がE2μC/gの場合には、感光体ドラム321表面の単位面積当たりのトナー付着量の現像ギャップの変動による変化は、Duty=α7%、Vpp=P3Vのときが最も小さくなっている。また、図15においては、トナー帯電量がE4μC/gの場合には、感光体ドラム321表面の単位面積当たりのトナー付着量の現像ギャップの変動による変化は、Duty=α5%、Vpp=P3Vのときが最も小さくなっている。また、図15においては、トナー帯電量がE8μC/gの場合には、感光体ドラム321表面の単位面積当たりのトナー付着量の現像ギャップの変動による変化は、Duty=α2%、Vpp=P3Vのときが最も小さくなっている。
従って、本実施形態に係る画像形成装置1は、トナー濃度がS3%のとき、トナー帯電量がE2μC/gの場合には、Duty=α7%、Vpp=P3Vとして決定し、トナー帯電量がE4μC/gの場合には、Duty=α5%、Vpp=P3Vとして決定し、トナー帯電量がE8μC/gの場合には、Duty=α2%、Vpp=P3Vとして決定する。
尚、図15においては、例えば、トナー帯電量がE8μC/gの場合、Duty=α5%、Vpp=P6Vの方が、上記で決定されたDuty=α2%、Vpp=P3Vよりも、感光体ドラム321表面の単位面積当たりのトナー付着量の現像ギャップの変動による変化が小さくなっている。ところが、本実施形態に係る画像形成装置1は、トナー帯電量がE8μC/gの場合、Duty=α5%、Vpp=P6Vとして決定しない。
なぜならば、上述したように、現像バイアスとして低周波数のAC電圧を現像ローラ323cに印加する画像形成装置においては、画像のボソつきを抑制するために、現像バイアスのDuty及び引き戻し時のバイアスを共に小さくしなければならないが、Vpp=P6Vという値ではVppが大きすぎて引き戻し時のバイアスも大きくなるため画像のボソつきを抑制することができないためである。
また、図15においては、例えば、トナー帯電量がE2μC/gの場合、Duty=α8%、Vpp=P3Vの方が、上記で決定されたDuty=α4%、Vpp=P3Vよりも、感光体ドラム321表面の単位面積当たりのトナー付着量の現像ギャップの変動による変化が小さくなっている。ところが、本実施形態に係る画像形成装置1は、トナー帯電量がE2μC/gの場合、Duty=α8%、Vpp=P3Vとして決定しない。
なぜならば、上述したように、現像バイアスとして低周波数のAC電圧を現像ローラ323cに印加する画像形成装置においては、画像のボソつきを抑制するために、現像バイアスのDuty及び引き戻し時のバイアスを共に小さくしなければならないが、Duty=α8%という値ではDutyが大きすぎて画像のボソつきを抑制することができないためである。
このように、本実施形態に係る画像形成装置1は、現像ユニット323内におけるトナー帯電量に基づいてDuty及びVppの適正値を決定するように構成されているが、現像ユニット323内におけるトナー帯電量が同一であっても、現像ユニット323内におけるトナー濃度が異なると、Duty及びVppの適正値も異なる。
そこで、本実施形態に係る画像形成装置1は、現像ユニット323内におけるトナー帯電量だけではなく、現像ユニット323内におけるトナー濃度にも基づいてDuty及びVppを決定するように構成されている。
そのために、本実施形態に係る画像形成装置1は、現像ユニット323内におけるトナー濃度とトナー帯電量とを計測した後、図16に示すような、現像ユニット323内におけるトナー濃度とトナー帯電量との組み合わせ毎にDutyとVppが対応付けられたDuty−Vpp決定テーブルを参照することで、Duty及びVppを決定するように構成されている。図16は、本実施形態に係るDuty−Vpp決定テーブルの一例を示す図である。このようなテーブルは、図1に示すROM30やHDD40等の記憶媒体に記憶されている。
従って、本実施形態に係る画像形成装置1は、現像ユニット323内におけるトナー濃度とトナー帯電量とが判れば、図16に示すようなDuty−Vpp決定テーブルを参照することでDuty及びVppを決定することが可能となる。本実施形態に係る画像形成装置1は、図16に示すようなDuty−Vpp決定テーブルをROM30やHDD40等の不揮発性の記憶媒体に記憶しているため、いつでも参照することが可能である。尚、図16においては、トナー濃度は、S1<S2<S3<S4<S5であり、トナー帯電量は、E1<E2<E3<E4<E5<E6<E7<E8であり、Dutyは、α1<α2<α3<α4<α5<α6<α7<α8であり、Vppは、P1<P2<P3<P4<P5<P6<P7である。
尚、本実施形態に係る画像形成装置1は、現像ユニット323内におけるトナー濃度を検知するためのトナー濃度検知センサを備えているため、現像ユニット323内におけるトナー濃度(wt%)を直接計測することができる。但し、本実施形態に係る画像形成装置1は、現像ユニット323内におけるトナー帯電量を直接計測することはできない。そこで、本実施形態に係る画像形成装置1は、現像γ(mg/cm2・V)及び現像ユニット323内におけるトナー濃度に基づいて、現像ユニット323内におけるトナー帯電量を予測するように構成されている。
従って、本実施形態に係る画像形成装置1は、現像ユニット323内におけるトナー帯電量を予測する際にはまず、現像γ(mg/cm2・V)を計測する。ここで、現像γ(mg/cm2・V)とは、感光体ドラム321の単位面積当たりのトナー付着量の現像ポテンシャルの変化による変化量のことであって、トナーの感光体ドラム321への付着しやすさを示す指標である。尚、ここで、現像ポテンシャルとは、現像ローラ323cに印加される現像バイアスのDC成分の電位と感光体ドラム321の露光部の電位との差の絶対値のことである。
本実施形態に係る画像形成装置1は、この現像γを計測するにはまず、感光体ドラム321の単位面積当たりのトナー付着量を、現像ポテンシャルを変化させて各現像ポテンシャルにおいて計測する。このように、本実施形態に係る画像形成装置1は、感光体ドラム321の単位面積当たりのトナー付着量を計測する必要があるため、そのためのトナー付着量検知センサを備えている。
そして、本実施形態に係る画像形成装置1は、図17に示すように、横軸が現像ポテンシャル、縦軸が感光体ドラム321の単位面積当たりのトナー付着量であるグラフ上に、各現像ポテンシャルにおいて計測された感光体ドラム321の単位面積当たりのトナー付着量をプロットする。図17は、本実施形態に係る画像形成装置1において、感光体ドラム321表面の単位面積当たりのトナー付着量の現像ポテンシャルによる変化を示すグラフである。本実施形態に係る画像形成装置1は、プロットされた点に基づく近似直線の傾きを最小二乗法により算出し、その算出結果を現像γとする。本実施形態に係る画像形成装置1は、このような処理を、図1に示すCPU10やRAM20を用いて行う。
尚、本実施形態においては、感光体ドラム321の単位面積当たりのトナー付着量の現像ポテンシャルの変化による変化量としたが、搬送ベルト311に作像される中間転写画像の単位面積当たりのトナー量の現像ポテンシャルの変化による変化量を現像γとしても良い。この場合、本実施形態に係る画像形成装置1は、現像γを計測するにはまず、上記中間転写画像の単位面積当たりのトナー量を、現像ポテンシャルを変化させて各現像ポテンシャルにおいて計測する。このように、本実施形態に係る画像形成装置1は、搬送ベルト311に作像される中間転写画像の単位面積当たりのトナー付着量を計測する必要があるため、そのためのトナー付着量検知センサを備えている。
そして、本実施形態に係る画像形成装置1は、横軸が現像ポテンシャル、縦軸が上記中間転写画像の単位面積当たりのトナー量であるグラフ上に、各現像ポテンシャルにおいて計測された上記中間転写画像の単位面積当たりのトナー量をプロットする。本実施形態に係る画像形成装置1は、プロットされた点に基づく近似直線の傾きを最小二乗法により算出し、算出結果を現像γとする。本実施形態に係る画像形成装置1は、このような処理を、図1に示すCPU10やRAM20を用いて行い、算出結果の現像γを、図1に示すHDD40に格納している。
このようにして現像γが計測されると、本実施形態に係る画像形成装置1は、計測された現像γ及びトナー濃度に基づいて、図18に示すような、現像γとトナー濃度との組み合わせ毎にトナー帯電量が対応付けられたトナー帯電量決定テーブルを参照することで、現像ユニット323内におけるトナー帯電量を決定する。図18は、本実施形態に係るトナー帯電量決定テーブルの一例を示す図である。尚、図18においては、現像γは、γ1>γ2>γ3>γ4>γ5である。このようなテーブルは、図1に示すROM30やHDD40に記憶されている。
このようにしてトナー帯電量が決定されると、本実施形態に係る画像形成装置1は、図16を参照して説明したように、計測されたトナー濃度及び決定されたトナー帯電量に基づいて、Duty−Vpp決定テーブルを参照することで、Duty及びVppを決定する。
このとき、本実施形態に係る画像形成装置1は、主制御部110がAC電圧の周波数を決定し、決定した周波数となるようにエンジン制御部120がAC電圧を制御するようになっている。また、本実施形態に係る画像形成装置1は、主制御部110がDuty及びVppを決定し、決定したDuty及びVppとなるようにエンジン制御部120がAC電圧を制御するようになっている。即ち、本実施形態においては、エンジン制御部120が印加電圧制御部として機能する。
尚、本実施形態に係る画像形成装置1は、図16を参照して説明したように、現像ユニット323内におけるトナー濃度及びトナー帯電量を計測し、トナー濃度とトナー帯電量とを計測した後、Duty−Vpp決定テーブルを参照することで、Duty及びVppを決定するように構成されている例について説明した。トナー帯電量を計測することが可能な場合、本実施形態に係る画像形成装置1は、現像γ及び現像ユニット323内におけるトナー帯電量を計測し、現像γとトナー帯電量とを計測した後、図19に示すような、現像γとトナー帯電量との組み合わせ毎にDutyとVppとの適正値が対応付けられたDuty−Vpp決定テーブルを参照することで、Duty及びVppの適正値を決定するように構成されていても良い。図19は、本実施形態に係るDuty−Vpp決定テーブルの一例を示す図である。
従って、本実施形態に係る画像形成装置1は、現像γと現像ユニット323内におけるトナー帯電量とが判れば、図19に示すようなDuty−Vpp決定テーブルを参照することでDuty及びVppの適正値を決定することが可能となる。
また、この他、本実施形態に係る画像形成装置1は、トナー帯電量の算出/予測をせずに、現像γ及び現像ユニット323内におけるトナー濃度を計測し、現像γ及びトナー濃度を計測した後、図20に示すような、現像γとトナー濃度との組み合わせ毎にDutyとVppが対応付けられたDuty−Vpp決定テーブルを参照することで、Duty及びVppの適正値を決定するように構成されていても良い。図20は、本実施形態に係るDuty−Vpp決定テーブルの一例を示す図である。
従って、本実施形態に係る画像形成装置1は、このように構成された場合、現像γと現像ユニット323内におけるトナー濃度とが判れば、図20に示すようなDuty−Vpp決定テーブルを参照することでDuty及びVppの適正値を決定することが可能となる。
尚、図16及び図19においては、トナー帯電量が大きくなるほど、Duty及びVppが小さくなる傾向にある。これは、トナー帯電量が大きいほど、引き戻し時のバイアス及びDutyが小さくても、感光体ドラム321に一度付着したトナーが現像ローラ323cに引き戻されやすくなるため、引き戻し時のバイアスに影響するVpp及びDutyを大きくする必要がないためである。
そして、上述したように、現像バイアスとして低周波数のAC電圧を現像ローラ323cに印加する画像形成装置においては、現像ローラ323c及び感光体ドラム321の偏心等による現像ギャップが変動に由来して発生する周期的な画像濃度ムラや画像のボソつきを抑制するためには、現像バイアスのDuty及び引き戻し時のバイアスを共に小さくしなければならないが、トナー帯電量が大きいほど、Vpp及びDutyを小さくすることができるので、本実施形態に係る画像形成装置1は、より画像のボソつきを抑制することが可能となる。
以上、説明したように、本実施形態に係る画像形成装置1は、低周波数のAC電圧を現像バイアスとして現像ローラ323cに印加するように構成されると共に、現像ユニット323内におけるトナー帯電量に基づいてDuty及びVppの適正値を決定するように構成されている。そのため、本実施形態に係る画像形成装置1は、現像ギャップの変動に由来して発生する周期的な画像濃度ムラを抑制することが可能となると共に、画像のボソつきを抑制することが可能となる。これにより、本実施形態に係る画像形成装置1は、形成される画像の品質を向上させることが可能となる。
尚、本実施形態に係る画像形成装置1は、図16、図19、図20に示したDuty−Vpp決定テーブルのいずれかを参照することで、DutyとVppを決定するように構成されている例について説明した。この他、本実施形態に係る画像形成装置1は、図16、図19、図20に示したDuty−Vpp決定テーブルを、温度や湿度等の使用環境に応じて複数記憶しておき、計測された温度や湿度等の使用環境に応じたDuty−Vpp決定テーブルを選択して使用するように構成されていても良い。これは、現像γやトナー帯電量は温度や湿度等の使用環境に応じて変化するためである。
従って、本実施形態に係る画像形成装置1は、このように構成された場合、使用環境に応じてDuty及びVppを決定することが可能となる。そのため、本実施形態に係る画像形成装置1は、現像ギャップの変動に由来して発生する周期的な画像濃度ムラを抑制することが可能となると共に、画像のボソつきを抑制することが可能となる。これにより、本実施形態に係る画像形成装置1は、形成される画像の品質をさらに向上させることが可能となる。
また、本実施形態に係る画像形成装置1は、図18で説明したように、現像γ及び現像ユニット323内におけるトナー濃度に基づいて現像ユニット323内におけるトナー帯電量を予測するように構成されている例について説明したが、図19で説明したように、現像ユニット323内におけるトナー帯電量を直接計測するように構成されていても良い。
また、本実施形態に係る画像形成装置1は、C、M、Y、Kの全色について、Duty−Vppの適正値を決定するように構成されている例ついて説明したが、画像濃度ムラ及びボソつきが目立ちやすい色についてのみ、Duty−Vppを決定し、画像濃度ムラ及びボソつきが目立ちにくい色については、DC現像を行うように構成されていても良い。このように構成されることで、本実施形態に係る画像形成装置1は、コストの低減を図ることが可能となる。
ところで、本実施形態に係る画像形成装置1では、転写紙に付着させたいトナーの目標付着量は、転写紙の凹凸や転写紙の色による発色の違いから、紙種によって異なる。また、ユーザ設定により変更されることがある。ここで、トナーの目標付着量とは、転写紙にベタ画像を転写する際に転写紙に付着してほしい目標となる単位面積当たりのトナーの付着量のことである。
紙種について、例えば、トナーの目標付着量は、普通紙では、0.45mg/cm2、コート紙では、0.4mg/cm2、色紙では、0.5mg/cm2、白紙では、0.8mg/cm2といった具合である。
また、ユーザ設定にいて、例えば、トナーの目標付着量は、ユーザが濃い色が好みである場合には、デフォルト値から0mg/cm2〜+0.15mg/cm2の範囲で変更され、ユーザが薄い色が好みである場合には、デフォルト値から0mg/cm2〜+0.15mg/cm2の範囲で変更されるといった具合である。
そして、本実施形態に係る画像形成装置1は、トナーの目標付着量の制御を、現像ポテンシャルを制御することで行なっている。具体的には、本実施形態に係る画像形成装置1は、トナーの目標付着量を多くする場合には、現像ポテンシャルを大きくし、トナーの目標付着量を少なくする場合には、現像ポテンシャルを小さくする。
図21は現像ポテンシャルと引き戻し時のバイアスの電位(以下、「引き戻し電位」とする)との関係を示している。尚、引き戻し電位とは、感光体ドラム321の露光部の電位と現像バイアスの最大電圧値(PaV)との電位差のことである。図21の左図は、トナーの目標付着量の制御を行う前の状態であり、感光体ドラム321の露光部の電位より現像ローラ323cの平均電位(Vave)がマイナス側の電位であるのでトナーが感光体ドラム321に現像される。現像領域(現像ニップ)中央で現像ローラ323c上のキャリアと感光体ドラム321との間でトナーの往復運動が起き、現像領域(現像ニップ)出口付近でトナーが感光体ドラム321近傍のみをホッピングするので、画像濃度ムラが低下し画像の粒状性が向上(ボソつき回避)している。ところが、図21の左図の状態からVppが一定で現像ポテンシャルが変化すると、同じVppであっても、引き戻し時のバイアスが変化してしまう。図21の中央図に示すように、現像ポテンシャルを大きくすると、引き戻し電位が小さくなって、トナーの引き戻しが起こらず、画像濃度ムラの抑制効果が弱くなる。図2の右図に示すように、現像ポテンシャルが小さいと、引き戻し時のバイアスが大きくなって、現像領域の出口付近においてもトナーの引き戻しが起こり、画像のボソつきの抑制効果が弱くなる。
尚、図21において、AC現像の平均電圧、即ち、AC現像における現像バイアスのDC成分の電位をVaveとし、感光体ドラム321の露光部の電位をVphとしている。トナーの帯電量はマイナス側である。また、低周波数とは10kHz以下で、図21左図では5.3kHz、0.189ms、Duty50%、Vave350V、Vpp1200V、露光電位100V、現像ポテンシャル(|(−350)−(−100)|=250V)であり、これが基準値の一例である。
このように、画像形成装置1は、図16、図19、図20を参照して説明したような方法でDuty及びVppを決定するが、現像ポテンシャルが変化した際には、画像濃度ムラや画像のボソつきの抑制効果が弱くなってしまう。
そこで、本実施形態に係る画像形成装置1は、現像ポテンシャルに応じて現像バイアスのVppを変化させるように構成されている。図22は、本実施形態に係る画像形成装置1における現像ポテンシャルと引き戻し時のバイアスとの関係について説明するための図である。図22の左図の条件は図21左図と同じである。具体的には、本実施形態に係る画像形成装置1は、図22の中央図に示すように、トナーの目標付着量が多いとき、即ち、現像ポテンシャルが大きいときには、現像バイアスのVppを大きくし、図22に右図に示すように、トナーの目標付着量が少ないとき、即ち、現像ポテンシャルが小さいときには、現像バイアスのVppを小さくするように構成されている。このように現像ポテンシャルが小さくとも引き戻し時のバイアスが大きくならず一定なので、現像領域の出口付近においてトナーは感光体近傍のみでホッピングすることとなり、画像のボソつきの抑制効果が得られ画像の粒状性が向上する。
本実施形態に係る画像形成装置1は、このように構成されることで、トナーの目標付着量によらず、引き戻し時のバイアスを一定にすることが可能となる。そのため、本実施形態に係る画像形成装置1は、現像ギャップの変動に由来して発生する周期的な画像濃度ムラを抑制することが可能となると共に、画像のボソつきを抑制することが可能となる。これにより、本実施形態に係る画像形成装置1は、形成される画像の品質を向上させることが可能となる。
次に、本実施形態に係る画像形成装置1が現像バイアスのVppを決定する際の処理について、図23を参照して説明する。図23は、本実施形態に係る画像形成装置1が現像バイアスのVppを決定する際の処理を説明するためのフローチャートである。主制御部110は、事前に測定してある付着量と現像ポテンシャルから現像γを定めている。事前の測定は、画像形成装置1中のトナー付着量検知センサ等によりトナー付着量が複数回検出され、各々の現像ポテンシャルから傾き(現像γ)算出することができる(図17を参照)。尚、現像ポテンシャルはAC現像の電圧の平均電位と静電潜像における電位との差の絶対値である。
本実施形態に係る画像形成装置1が紙種情報およびユーザ設定情報を加味して現像バイアスのVppを決定する際には、主制御部110は、現像ポテンシャルVd1を決定する。現像ポテンシャルVd1は現像γのときの普通紙でユーザ設定がない状態としてトナー付着量が0.45mg/cm2となる現像ポテンシャルである。また、現像γが算出されているので、図18、図19、図20を参照して説明したいずれかの方法によりVpp1を決定する(S2301)。
即ち、本実施形態においては、主制御部110が電位差基準値決定部、現像ポテンシャル基準値決定部として機能し、Vd1が現像ポテンシャルの基準値として決定され、Vpp1が電位差の基準値として決定される。
紙種情報およびユーザ設定情報と共にプリント要求(ジョブ)があるとトナーの目標付着量を決定する。普通紙でユーザ設定がない場合、現像ポテンシャルVdはVd1、VppはVpp1から変更しないが、それ以外の場合、目標付着量に合わせた現像ポテンシャルVd2やVpp2を決定し変更する。そして、主制御部110は、ユーザ設定情報、若しくは、使用する紙種情報に応じたトナーの目標付着量を算出し(S2302)、算出したトナーの目標付着量を作像するために必要な現像ポテンシャルを現像γから決定する(S2303)。尚、ここで決定された現像ポテンシャルをVd2とする。即ち、本実施形態においては、主制御部110が現像ポテンシャル変更部として機能する。
そして、主制御部110は、Vpp2を「Vpp2=Vpp1−(Vd1−Vd2)×2」として決定し、Vpp2をVppとする(S2304)。S2303において決定した現像ポテンシャルVd2をVdとし、S2304において決定したVppとなるように引き戻し時のバイアスを変更することなく作像条件を変更する(S2305)。即ち、本実施形態においては、主制御部110が電位差決定部として機能する。その後、変更した作像条件で作像しジョブが終了すると、VppをもともとのVpp1に、現像ポテンシャルVdをVd1に戻し次のジョブの投入を待つ。
以上、説明したように、本実施形態に係る画像形成装置1は、現像ポテンシャルに応じて現像バイアスのVppを変化させるように構成されている。具体的には、本実施形態に係る画像形成装置1は、図22に示すように、トナーの目標付着量が多いとき、即ち、現像ポテンシャルが大きいときには、引き戻し時のバイアスを変更することなく現像バイアスのVppを大きくし、トナーの目標付着量が少ないとき、即ち、現像ポテンシャルが小さいときには、引き戻し時のバイアスを変更することなく現像バイアスのVppを小さくするように構成されている。このとき、本実施形態に係る画像形成装置1は、Vppを「Vpp=Vpp1−(Vd1−Vd2)×2」となるように変化させる。
本実施形態に係る画像形成装置1は、このように構成されることで、トナーの目標付着量によらず、引き戻しバイアスを一定にすることが可能となる。そのため、本実施形態に係る画像形成装置1は、現像ギャップの変動に由来して発生する周期的な画像濃度ムラを抑制することが可能となると共に、画像のボソつきを抑制することが可能となる。これにより、本実施形態に係る画像形成装置1は、形成される画像の品質を向上させることが可能となる。
尚、通常、イエロー、シアン、マゼンダ、ブラックのトナーよりも、特色のトナー、例えば、クリアトナー、白色トナー等の方がトナーの目標付着量が変更される頻度が高い。これは、画像形成装置は、一般的には、クリアトナーの付着量を上げて作像することで、画像に立体感を与えることが可能となり、白色トナーの付着量を上げて作像することで、転写紙の地の色を隠した鮮やかな画像を作像することが可能となるためである。
従って、本実施形態に係る画像形成装置1は、特色のトナーのように、付着量を変更する頻度が高い作像ユニットについてのみ、現像ポテンシャルに応じて現像バイアスのVppを変化させるように構成されていても良い。本実施形態に係る画像形成装置1は、このように構成されることで、低コストで効果的に形成される画像の品質を向上させることが可能となる。