JP6870293B2 - 燃料容器 - Google Patents

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Description

本発明は、低級アルコールの含有量が20質量%以上の燃料を収容するための燃料容器に関するものである。
近年、環境汚染に対する規制強化の実施や、大気汚染防止及びガソリン消費節約の観点から、ガソリンのオクタン価改良や排気ガス中の未燃焼炭化水素量の削減のために、メタノール、エタノール等の低級アルコールをブレンドしたガソリンが米国を中心に使用されている。
また、再生可能な自然エネルギーである点や、その燃焼によって大気中の二酸化炭素量を増やさない点から、ガソリン燃料代替物として、サトウキビやトウモロコシなどのバイオマスを発酵させ、蒸留して生産されるバイオマスエタノールが注目されている。バイオマスエタノールは、ガソリンと混合されることなく用いられるか、混合されて用いられる場合であっても高比率で配合される。
しかし、従来のガソリンに使用されている燃料容器では、上記の様なエタノール等の低級アルコールの含有率が高い燃料を使用する際、容器の燃料バリア性が十分とは言えず、改善の余地があった。
そこで、上記問題点を解決するため、例えば、特許文献1では、エチレン−ビニルアルコール共重合体(c)層の内外層に接着性樹脂(b)層を介して、高密度ポリエチレン(a)層を有し、かつ(c)層の内側にある各層の厚みの合計をIとし、(c)層の外側にある各層の厚みの合計をOとしたときの厚み比(I/O)が50/50より小さい燃料容器が開示されている。
特開平9―29904号公報
しかし、特許文献1では、燃料容器の透過防止性能に関しては、燃料としてエタノールを15重量%配合したガソリンを使用した場合の評価はなされているが、エタノールをそれ以上配合したガソリンの場合、燃料容器の透過防止性能は不明である。
本発明は、上記従来の実情を鑑みてなされたものであって、エタノール等の低級アルコールの含有率が高い燃料を使用する際でも、優れた燃料バリア性を有する燃料容器を提供することを解決すべき課題としている。
本発明者は、鋭意検討を重ねた結果、熱可塑性樹脂層間に燃料バリア層が配置された多層構造体を有し、前記燃料バリア層がエチレン−ビニルエステル系共重合体ケン化物及び無機層状化合物を含む樹脂組成物を有する層である燃料容器によって、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は下記<1>〜<2>に関するものである。
<1>低級アルコールの含有量が20質量%以上の燃料を収容するための燃料容器であって、熱可塑性樹脂層間に燃料バリア層が配置された多層構造体から形成され、前記燃料バリア層が、エチレン−ビニルエステル系共重合体ケン化物及び無機層状化合物を含む樹脂組成物からなることを特徴とする燃料容器。
<2>前記無機層状化合物の平均粒子径が、1〜30μmである<1>に記載の燃料容器。
本発明によれば、エタノール等の低級アルコールの含有率が高い燃料を使用する際でも、優れた燃料バリア性を有する燃料容器を提供することができる。
以下、本発明について詳述するが、これらは望ましい実施態様の一例を示すものであり、本発明はこれらの内容に特定されるものではない。
[燃料容器]
本発明の燃料容器は、熱可塑性樹脂層間に燃料バリア層が配置された多層構造体から形成される。また、前記燃料バリア層が、エチレン−ビニルエステル系共重合体ケン化物(以下、「EVOH樹脂」と称することがある。)及び無機層状化合物を含む樹脂組成物からなることを特徴とする。
[熱可塑性樹脂層]
本発明の燃料容器の熱可塑性樹脂層で用いる熱可塑性樹脂としては、直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、ポリプロピレン、プロピレン−α−オレフィン(炭素数4〜20のα−オレフィン)共重合体、ポリブテン、ポリペンテン等のオレフィンの単独又は共重合体、或いはこれらのオレフィンの単独又は共重合体を不飽和カルボン酸又はそのエステルでグラフト変性したものなどの広義のポリオレフィン系樹脂、ポリエステル、ポリアミド、共重合ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、アクリル系樹脂、ポリスチレン、ビニルエステル系樹脂、ポリエステルエラストマー、ポリウレタンエラストマー、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、芳香族または脂肪族ポリケトン、更にこれらを還元して得られるポリアルコール類等が挙げられる。
これらの中でも、燃料容器の成形性や強度等の実用性の点から、ポリオレフィン系樹脂が好ましく、その中でも特に高密度ポリエチレン(HDPE)が好ましい。
また、熱可塑性樹脂には、本発明の目的を阻害しない範囲において、各種添加剤、改質剤、他樹脂等を配合しても良い。
[燃料バリア層]
本発明の燃料容器の燃料バリア層は、エチレン−ビニルエステル系共重合体ケン化物(「EVOH樹脂」)及び無機層状化合物を含む樹脂組成物からなることを特徴とする。
(EVOH樹脂)
本発明で用いるEVOH樹脂は、通常、エチレンとビニルエステル系モノマーとの共重合体(エチレン−ビニルエステル系共重合体)をケン化させることにより得られる樹脂であり、非水溶性の熱可塑性樹脂である。
重合法としては、公知の任意の重合法、例えば、溶液重合、懸濁重合、エマルジョン重合を用いて行うことができるが、一般的には、メタノールを溶媒とする溶液重合が用いられる。
得られたエチレン−ビニルエステル系共重合体のケン化も、公知の方法を用いて行うことができる。
このようにして製造されるEVOH樹脂は、エチレン由来の構造単位とビニルアルコール構造単位を主とし、ケン化されずに残存した若干量のビニルエステル構造単位を含む。
上記ビニルエステル系モノマーとしては、市場入手性や製造時の不純物処理効率がよい観点から、代表的には、酢酸ビニルが用いられる。
他のビニルエステル系モノマーとしては、例えば、ギ酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、バーサチック酸ビニル等の脂肪族ビニルエステル、安息香酸ビニル等の芳香族ビニルエステル等が挙げられ、通常炭素数3〜20、好ましくは炭素数4〜10、さらに好ましくは炭素数4〜7の脂肪族ビニルエステルを用いることができる。
これらのビニルエステル系モノマーは通常単独で用いるが、必要に応じて複数種を同時に用いてもよい。
EVOH樹脂におけるエチレン構造単位の含有量は、ISO 14663に基づいて測定した値で、通常10〜50モル%、好ましくは15〜40モル%、さらに好ましくは20〜30モル%である。
かかる含有量が低すぎる場合は、溶融成形性が低下する傾向があり、高すぎる場合は、ガソリン透過性が不足する傾向がある。
EVOH樹脂におけるビニルエステル成分のケン化度は、JIS K6726(ただし、EVOH樹脂は水/メタノール溶媒に均一に溶解した溶液にて)に基づいて測定した値で、通常90〜100モル%、好ましくは95〜100モル%、さらに好ましくは99〜100モル%である。
かかるケン化度が低すぎる場合は、ガスバリア性、熱安定性、耐湿性等が低下する傾向がある。
EVOH樹脂のメルトフローレート(MFR)(210℃、荷重2,160g)は、通常0.5〜100g/10分であり、好ましくは1〜50g/10分、さらに好ましくは3〜35g/10分である。
かかるMFRが大きすぎる場合は、製膜性が不安定となる傾向があり、小さすぎる場合は、粘度が高くなり過ぎて溶融押出しが困難となる傾向がある。
EVOH樹脂には、エチレン構造単位、ビニルアルコール構造単位(未ケン化のビニルエステル構造単位を含む。)の他、以下に示すコモノマーに由来する構造単位が、さらに含まれていてもよい。
前記コモノマーとしては、プロピレン、イソブテン、α−オクテン、α−ドデセン、α−オクタデセン等のα−オレフィン;3−ブテン−1−オール、4−ペンテン−1−オール、3−ブテン−1、2−ジオール等のヒドロキシ基含有α−オレフィン類やそのエステル化物、アシル化物などのヒドロキシ基含有α−オレフィン誘導体;2−メチレンプロパン−1,3−ジオール、3−メチレンペンタン−1,5−ジオール等のヒドロキシアルキルビニリデン類;1,3−ジアセトキシ−2−メチレンプロパン、1,3−ジプロピオニルオキシ−2−メチレンプロパン、1,3−ジブチロニルオキシ−2−メチレンプロパン等のヒドロキシアルキルビニリデンジアセテート類;不飽和カルボン酸又はその塩、部分アルキルエステル、完全アルキルエステル、ニトリル、アミド若しくは無水物;不飽和スルホン酸又はその塩;ビニルシラン化合物;塩化ビニル;スチレン等が挙げられる。
さらに、ウレタン化、アセタール化、シアノエチル化、オキシアルキレン化等の後変性されたEVOH系樹脂を用いることもできる。上記変性物の中でも、共重合によって一級水酸基が側鎖に導入されたEVOH樹脂は、延伸処理や真空・圧空成形などの二次成形性が良好になる点で好ましく、特に、1,2−ジオール構造を側鎖に有するEVOH樹脂が好ましい。
EVOH樹脂には、本発明の効果を阻害しない範囲において、一般にEVOH樹脂に配合する配合剤、例えば、熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、着色剤、紫外線吸収剤、滑剤、可塑剤、光安定剤、界面活性剤、抗菌剤、乾燥剤、アンチブロッキング剤、難燃剤、架橋剤、硬化剤、発泡剤、結晶核剤、防曇剤、生分解用添加剤、シランカップリング剤、酸素吸収剤などが配合されていてもよい。
また、EVOH樹脂は、異なる他のEVOH樹脂との混合物であってもよく、他のEVOH樹脂としては、エチレン含有率が異なるもの、ケン化度が異なるもの、重合度が異なるもの、他の共重合成分が異なるもの、1,2−ジオール構造単位の含有量が異なるものなどを挙げることができる。
(無機層状化合物)
本発明で用いる無機層状化合物は、原子が共有結合などによって強く結合して密に配列したシート状物を形成し、例えば、酸化ケイ素等の四面体シート状物や、アルミ等の金属水酸化物等の八面体シート状物が挙げられ、これらシート状物がファンデルワールス力、静電気力などによってほぼ平行に積み重なった構造を有する無機化合物をいう。一般的には、層状ケイ酸塩とも呼ばれる。
かかる無機層状化合物は、例えば1枚の四面体シートの頂点酸素を1枚の八面体シートが共有する結晶構造を持った1:1型、1枚の四面体シートの頂点酸素を2枚の八面体シートが共有する結晶構造を持った2:1型が挙げられる。
例えば、1:1型の具体例としてはカオリナイト、蛇紋岩、ディッカイト、ナクライト、ハロイサイト、クリソタイル、リザルタイト、ハロイサイト等のカオリナイト類が挙げられ、2:1型の具体例としてはタルク、パイロフィライト等のタルク類、イライト、白雲母、黒雲母などの雲母類、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、スチブンサイト等のスメクタイト類、バーミキュライト類などが挙げられる。
無機層状化合物は、天然品であっても合成品であってもよい。
上記無機層状化合物の中でも、入手の容易さの観点から、好ましくはカオリナイト類、スメクタイト類、特に好ましくはカオリナイト、モンモリロナイトを使用することが望ましい。
無機層状化合物の平均粒子径(μm)は、通常1〜30μm、好ましくは2〜20μm、さらに好ましくは3〜10μmである。
かかる平均粒子径が大きすぎると、水分散液における分散安定性が悪化するとともに、成形品の外観が悪くなる傾向がある。
かかる平均粒子径は、レーザー散乱法により得ることができ、例えば、蒸留水を用いて0.1質量%濃度の無機層状化合物水分散液を作成し、かかる分散液を、レーザー散乱粒度分布アナライザー(HORIBA製のLA―950)を用いて分析することにより得られる。
無機層状化合物のBET比表面積(m/g)は、特に限定されないが、通常1m/g以上、好ましくは3m/g以上、さらに好ましくは5m/g以上である。
かかるBET比表面積が小さすぎると、水分散液における分散安定性が悪化する傾向がある。
無機層状化合物は、シランカップリング剤などの反応剤によって表面処理されていてもよい。
シランカップリング剤としては、従来公知のものを使用することが可能である。シランカップリング剤は、一般式RSiXで表され、Rはビニル基、スチリル基、エポキシ基、グリシジル基、グリシドキシ基、メタクリル基、アミノ基、メルカプト基などの有機官能性基であり、Xは主に塩素およびアルコキシ基である。
具体的には、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。
(混合方法)
本発明の燃料容器の燃料バリア層は、EVOH樹脂及び無機層状化合物を含む樹脂組成物(以下、「EVOH樹脂組成物」と称することがある。)からなる。
本発明において、EVOH樹脂及び無機層状化合物を溶融混練または溶液混合することで、EVOH樹脂組成物を得ることができる。中でも生産性の点から溶融混練が好ましい。以下、溶融混練について説明する。
混練に供されるEVOH樹脂と無機層状化合物の配合割合は、EVOH樹脂100質量部(固形分)に対して、無機層状化合物が0.1〜100質量部(固形分)であることが好ましく、より好ましくは0.1〜50質量部(固形分)、さらに好ましくは1〜20質量部(固形分)、特に好ましくは5〜15質量部(固形分)である。
かかる配合割合が低すぎると、ガソリン透過性の改善効果が少ない傾向があり、配合割合が高すぎると、成形物の外観が悪化するおそれがあり好ましくない傾向がある。
EVOH樹脂及び無機層状化合物を混練するに当たっては、用いる装置や方法等に特に制限はなく、例えば、押出機、ニーダー、ミキシングロール、バンバリーミキサー、プラストミル、ブラベンダーなどの公知の混練装置を使用して公知の方法を用いることができる。これらの混練装置は単独で使用してもよいが、2種類以上の装置を組み合わせて使用してもよい。
また、用いる装置は、EVOH樹脂及び無機層状化合物の種類、性質、形状等によって適宜選択すればよく、通常は工業的に広く用いられている一軸押出機または二軸押出機等の押出機が好適に用いられ、特に樹脂中の無機化合物の分散性の観点から、二軸押出機が好ましい。
二軸押出機としては、特に限定されないが、そのスクリュー内径は好ましくは20mm以上、より好ましくは30〜150mmである。
かかるスクリュー内径が小さすぎると、生産性に乏しいため好ましくない。
二軸押出機のL/D{二軸押出機のスクリューの有効長(L)とスクリュー内径(D)の比}は、好ましくは20以上、より好ましくは30以上である。
かかるL/Dが小さすぎると、混練時間が短く、EVOH樹脂中の無機化合物の分散性が低下するため好ましくない。
EVOH樹脂及び無機層状化合物を二軸押出機に供給する際に、特に制限はないが、EVOH樹脂中への無機層状化合物の均一分散の観点から、事前に無機層状化合物の水分散液を作製してから、EVOH樹脂へ配合することが好ましい。
例えば、(1)EVOH樹脂と無機化合物水分散液を予めブレンドした混合物を該押出機のホッパーに供給する方法、(2)EVOH樹脂と無機化合物水分散液を直接該押出機のホッパーに供給する方法、(3)EVOH樹脂を該押出機のホッパーに供給し、無機化合物水分散液を該押出機のバレルの一部から供給する(すなわち、サイドフィードする)方法等が挙げられる。
(3)の方法を行うにあたっては、無機層状化合物の水分散液をベント口から重力を利用して供給したり、或いは圧力をかけて供給したりすることも可能である。
これらの中でも生産性の点から、(3)の方法が好ましい。
上記で得られるEVOH樹脂組成物には、その目的に応じて、原材料の混合時又は混練時に、もしくは成形時に、従来公知の可塑剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、老化防止剤、顔料、着色剤、天然繊維、各種無機粒子、各種フィラー、帯電防止剤、離型剤、可塑剤、香料、滑剤、架橋(加硫)剤、架橋(加硫)促進剤、結晶核剤、結晶化促進剤、難燃剤、発泡剤、軟化剤、防腐剤、抗菌・抗力ビ剤等の各種漆加剤を配合しても良い。
なお、EVOH樹脂組成物を製造するにあたって、EVOH樹脂の含水率は通常60質量%以下、好ましくは40質量%以下、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下、特に好ましくは0.5質量%以下である。
かかる含水率の下限は、特に限定されないが、含水率が高すぎると、脱水が不十分となり、発泡による押出機のホッパー部への蒸気の逆流が起こり、ホッパー内で樹脂が固着し、供給不良が発生する傾向がある。
EVOH樹脂に水を含有させる方法としては、特に制限されないが、EVOH樹脂の溶液を水中で析出させ充分に水洗して溶剤を除去し水を含有させる方法、加圧熱水中でEVOH樹脂を1〜3時間程度処理する方法、EVOH樹脂の製造時にケン化後のペーストを水中で析出させて水を含有させる方法等の公知の方法が挙げられる(例えば、特開2002−003611号公報参照)。
上記の中でも、特に、EVOH樹脂製造時にケン化後のペーストを水中で析出させる方法が好ましく用いられる。
[燃料容器の製造方法]
本発明の燃料容器、即ち、熱可塑性樹脂層/EVOH樹脂組成物層/熱可塑性樹脂層等の層構成を有する燃料容器を製造するに当たっては、EVOH樹脂組成物及び熱可塑性樹脂を、射出成形機、ダイレクトブロー成形機(連続式、アキュムレーター式)、射出ブロー成形機等に供して直接本発明の燃料容器を得る方法の他、EVOH樹脂組成物及び熱可塑性樹脂を共押出して得られた多層シートを真空成形する方法、熱可塑性樹脂フィルムにEVOH樹脂組成物/熱可塑性樹脂を共押出ラミネートして得た積層シートを真空成形する方法、熱可塑性樹脂フィルムとEVOH樹脂組成物フィルムを接着剤にてドライラミネートして得られた多層シートを真空成形する方法等を挙げることができ、好適には、ダイレクトブロー、射出ブロー等のブロー成形方法が採用される。
例えば、EVOH樹脂組成物と熱可塑性樹脂を共押出して得られたパリソンを金型で挟んで空気を吹き込んでブロー成形することにより、本発明の燃料容器が得られる。
なお、本発明においては、EVOH樹脂組成物層をa、熱可塑性樹脂層をbとするとき、上記b/a/bの層構成だけでなく、b/b/a/b/b、b/a/b/a/b等や、さらには少なくともEVOH樹脂組成物と熱可塑性樹脂の混合物(スクラップ再生品)からなるリグラインド層をRとするとき、b/R/a/b、b/R/a/R/b、b/a/R/a/b、b/R/a/R/a/R/b等とすることも可能である。
好適には、b/a/b、b/b/a/b/b、b/R/a/b、b/R/a/R/bの層構成が採用され、また、これらの層構成のbには必要に応じて、該リグラインド層に用いられる該混合物や後述の接着性樹脂を配合することも可能である。
さらに、これらの積層体においては、必要に応じて各層間には接着性樹脂が使用される。
接着性樹脂としては、不飽和カルボン酸またはその無水物をオレフィン系重合体(上述の広義のポリオレフィン系樹脂)に、付加反応やグラフト反応等により化学的に結合させて得られたカルボキシル基を含有する変性オレフィン系重合体を挙げることができる。
具体的には、無水マレイン酸グラフト変性ポリエチレン、無水マレイン酸グラフト変性ポリプロピレン、無水マレイン酸グラフト変性エチレン−プロピレン(ブロックまたはランダム)共重合体、無水マレイン酸グラフト変性エチレン−エチルアクリレート共重合体、無水マレイン酸グラフト変性エチレン−酢酸ビニル共重合体等から選ばれた1種または2種以上の混合物が好適なものとして挙げられる。
このときの、変性オレフィン系重合体に含有される不飽和カルボン酸又はその無水物の含有量は、好ましくは0.001〜3質量%、より好ましくは0.01〜1質量%、さらに好ましくは0.03〜0.5質量%である。
変性オレフィン系重合体中の変性量が少なすぎると、層間接着性や成形性、耐衝撃性が不充分となることがあり、多すぎると、架橋反応を起こし、成形性が悪くなることがあり好ましくない。
これらの変性オレフィン系重合体には、EVOH樹脂組成物や他のEVOH、ポリイソブチレン、エチレン−プロピレンゴム等のゴム・エラストマー成分、さらには他の熱可塑性樹脂等を配合することも可能である。
特に、変性オレフィン系重合体の母体のオレフィン系重合体とは異なるオレフィン系重合体を配合することにより、接着性が向上することがあり有用である。
また、各層の厚みとしては、用途・容器形態や要求される物性などにより一概には言えないが、例えば、自動車の燃料用タンクに用いられる場合は、EVOH樹脂組成物層の厚みは、好ましくは30〜500μm、より好ましくは50〜400μm、さらに好ましくは80〜300μmである。
熱可塑性樹脂層の厚みは、好ましくは100〜10000μm、より好ましくは200〜5000μm、さらに好ましくは300〜3000μmである。
リグラインド層の厚みは、好ましくは100〜10000μm、より好ましくは200〜5000μm、さらに好ましくは300〜3000μmである。
接着性樹脂層の厚みは、好ましくは30〜500μm、より好ましくは50〜400μm、さらに好ましくは80〜300μmである。
燃料容器全体の厚みは、好ましくは300〜10000μm、より好ましくは1000〜8000μm、さらに好ましくは2000〜6000μmである。
[燃料]
上記で得られた本発明の燃料容器は、低級アルコールの含有量が20質量%以上の燃料を収容するためのものであり、該燃料に対するバリア性に優れている。
ここで、低級アルコールとは、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等の炭素数1〜4のアルコール及びそれらの混合物のことをいい、これらの中でも危険性や環境負荷の観点から、エタノールが好ましい。
また、本発明の燃料容器に使用される燃料の低級アルコールの含有量は20質量%以上であるが、好ましくは50質量%以上、より好ましくは80質量%以上である。
低級アルコールの含有量が20質量%未満の燃料を使用すると、本発明の燃料容器のような燃料バリア性の顕著な向上は見られない。
通常、EVOHは上記低級アルコールに対して親和性を有するため、上記低級アルコールはEVOHと相互作用を示し、EVOHの非晶部分の運動性が上がり、非晶部分の運動性が上がることで燃料バリア性が低下する。
本発明の燃料容器は、無機層状化合物とEVOHを配合することで、無機層状化合物とEVOHとが相互作用し、EVOHと上記低級アルコールとの相互作用を弱めて非晶部分の運動性の向上を抑制できるものと推測される。このことにより、本発明の燃料容器では、低級アルコールの含有量が多い燃料における燃料バリア性が、特に顕著に得られるものと推測される。
本発明の燃料容器は、上記燃料を使用する限り、自動車のガソリン等の燃料用タンクをはじめ、オートバイ、船舶、航空機、発電機および工業用や農業用機器に搭載される燃料容器や、これら燃料の補給用の携帯用容器、さらにこれら燃料の輸送・保管・貯蔵用のボトル、タンク、ドラム等各種の容器として有用である。
以下に実施例を挙げ、本発明を具体的に説明するが、本発明は何らこれらに限定されるものではない。なお、実施例中「部」とあるのは特に断りのない限り質量基準を示す。
[多層フィルム1の作製]
EVOH樹脂(エチレン含有量25モル%、ケン化度99.7 モル%、MFR4.0g/10分)100部を、分散液圧入部、サイドフィーダー及び真空ベントが付属した二軸押出機(L/D=56、スクリュー内径=32mm)の原料供給部より投入し、温度230℃にてEVOH樹脂を溶融状態にした後、カオリナイト{Imerys社製、(Al・SiO・2HO、平均粒子径6.0μm)の水分散液(固形分濃度:73質量%)}16部を分散液圧入部より連続的に圧入し、混練した。
なお、かかるカオリナイトの平均粒子径は、蒸留水を用いてカオリナイト0.1質量%濃度の水分散液を作成し、かかる分散液を、レーザー散乱粒度分布アナライザー(HORIBA製のLA―950)を用いて分析することにより得られた値である。
混練後のEVOH樹脂組成物をストランド状に水槽中に押出し、ペレタイザーで切断することによって、EVOH樹脂組成物ペレットを作製した。
なお、サイドフィーダーはL/D=8.3、スクリュー内径=28mmのものを、25℃の下、大気解放状態で使用した。サイドフィーダースクリューの回転数は、100rpmであった。
得られたEVOH樹脂組成物ペレットを、3種5層キャスト製膜機(押出機:L/D=28、スクリュー内径=40mm、フルフライトタイプスクリュー、押出温度:220℃)に導入し、高密度ポリエチレン/ポリオレフィン系接着性樹脂/EVOH樹脂組成物/ポリオレフィン系接着性樹脂/高密度ポリエチレン(80/10/20/10/80μm)の多層フィルム1を作製した。
高密度ポリエチレンとしては、日本ポリエチレン株式会社製「NOVATEC HD HB431」を使用した。また、ポリオレフィン系接着性樹脂としては、三菱化学株式会社製「MODIC−AP H511V」を使用した。
引き取り速度は2.5m/minであった。
[多層フィルム2の作製]
上記多層フィルム1の作製時にカオリナイトを使用しなかった以外は、多層フィルム1と同様にして、多層フィルム2を作製した。
[実施例1]
得られた多層フィルム1及び2を、それぞれ11cm×11cmに2枚切り出し、エタノール100%燃料を15cc封入された二つのパウチを得た。該パウチを端から5mmをヒートシールし、10cm角とした。該パウチを40℃、0%Rh条件下で20日間静置した。
多層フィルム1及び2を使用した際の、エタノール100%燃料の燃料透過度(g・20μm/m・day)をそれぞれ測定した。結果を表1に示す。
なお、かかる燃料透過度は、パウチを20日間静置後、(前日のパウチ重量−当日のパウチ重量)を21日目から63日目まで計算し、21日目から63日目までの燃料透過量の平均値を1日あたりの燃料透過量とし、かかる値を単位面積で除することにより得た。
また、燃料バリア層にカオリナイトを有する多層フィルム1を使用することによるエタノール100%燃料の質量減少改善率(1−多層フィルム1の燃料透過度/多層フィルム2の燃料透過度×100)を計算した。結果を表1に示す。
[比較例1、2]
比較例1ではFuelC(トルエン/イソオクタン=50/50容積比)をパウチに封入し、比較例2ではE10(FluelC/エタノール=90/10容積比)をパウチに封入した以外は、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表1に示す。
Figure 0006870293
上記結果より、従来のEVOHを燃料バリア層に用いた多層フィルム2を使用したパウチに比べ、EVOHにカオリナイトを配合した燃料バリア層を用いた多層フィルム1を使用した場合は、エタノール100%燃料を使用した実施例1では、質量減少改善率は58%であった。
一方、燃料としてFluelC及びE10を用いた場合(比較例1及び2)は、質量減少改善率は33%及び43%に留まり、いずれも燃料透過度の値に大きな差は見られなかった。
かかる結果より、熱可塑性樹脂層間に燃料バリア層が配置された多層構造体から形成され、前記燃料バリア層が、EVOH及び無機層状化合物を含む樹脂組成物からなることを特徴とする燃料容器は、低級アルコールを豊富に有する燃料に対する燃料バリア性に顕著に優れることがわかる。
したがって、本発明の燃料容器は、特に低級アルコールを豊富に有する燃料用の容器として有用である。

Claims (2)

  1. 低級アルコールの含有量が50質量%以上の燃料を収容するための燃料容器であって、
    熱可塑性樹脂層間に燃料バリア層が配置された多層構造体から形成され、
    前記燃料バリア層が、エチレン−ビニルエステル系共重合体ケン化物及び無機層状化合物を含む樹脂組成物からなることを特徴とする燃料容器。
  2. 前記無機層状化合物の平均粒子径が、1〜30μmである請求項1に記載の燃料容器。
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