JP6868872B2 - 難溶性蛋白質の可溶化剤、難溶性蛋白質の可溶化方法及び難溶性蛋白質のサンプル製造方法 - Google Patents

難溶性蛋白質の可溶化剤、難溶性蛋白質の可溶化方法及び難溶性蛋白質のサンプル製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、加齢やストレスなどにより凝集した難溶性蛋白質を効率的に可溶化するための難溶性蛋白質の可溶化剤と、この可溶化剤を用いた難溶性蛋白質の可溶化方法及びサンプルロスの少ない難溶性蛋白質のサンプル製造方法に関するものである。
蛋白質の凝集現象は、老化や神経変性疾患をはじめとする加齢性疾患の程度(重症度)を評価するための共通の指標になることから、国内外を問わず非常に多くの研究報告がある。蛋白質分析の点では、高精度なレーザーマイクロダイセクション(LMD)法を用いて疾患由来の蛋白質凝集体(封入体)を病理切片から直接切り出し、これを液体クロマトグラフィー質量分析(LC−MS/MS)法によって分析することにより、疾患の原因となる蛋白質の探索や疾患の発症機構の解明につなげようようとする研究が挙げられる。また、超高速な微粒子ソーティング法を用いて、培養細胞などに形成される蛋白質凝集体を細胞溶解後に回収し、これを前記LC−MS/MS法で分析することにより、蛋白質凝集体の形成機構や制御因子をダメージレスに解析しようとする分子マーカーの解析研究も挙げられる。このような技術の発展に伴い、近年、細胞や組織に沈着する極微量な蛋白質凝集体でも、高速かつ比較的容易に分離・回収できるようになってきた。
しかしながら現状では、回収した凝集体を効率よく可溶化し、質量分析計(mass spectrometry :MS)で分析するための高精度なサンプル処理方法は確立されていない。その理由は、蛋白質凝集体は水に不溶な沈殿物(塊、凝集体)を形成するので、例えばプロテアーゼのような消化酵素による消化(ペプチド断片化)が強く抑制されること、またこれと関係して次の工程で行うMS分析に必要な消化ペプチド断片の回収量に大きな損失(サンプルロス)が生じことにある。
このような問題を解決するため、ギ酸や尿素などの変性剤やドデシル硫酸ナトリウム(SDS)などの界面活性剤が蛋白質凝集体の可溶化剤として一般的に用いられている。しかし、これらの従来の可溶化剤の可溶化力は、多くの難溶性の蛋白質凝集体に対して極めて限定的であった。またこれらの従来の可溶化剤は変性効果をもつことから、プロテアーゼ等を用いる消化工程の前にサンプル溶液から完全に除去する必要があるが、そのための手順は様々であり、かつサンプルロスを伴う。従来技術では、細胞や組織に沈着する難溶性の蛋白質凝集体をMS分析することはプロテオミクスにおける最重要課題の一つになっているため、高感度・高精度でMS分析ができるような難溶性の蛋白質凝集体の試料を、少ないサンプルロスで効率的に製造することが強く望まれていた。
以上説明した従来の技術は蛋白質凝集体に関するものであるが、他の難溶性生体試料についても同様の問題が存在する。例えば、難溶性糖含有物質や難溶性脂質含有物質を取り扱うライフサイエンス分野の研究分野においても、MS分析するための高精度なサンプル処理方法は必ずしも確立されておらず、これらの難溶性生体試料のサンプルを、少ないサンプルロスで高精度に製造することが強く望まれていた。
本発明はこうした従来の技術における課題に鑑みてなされたものであり、難溶性生体試料を効率的に可溶化できる可溶化剤と、この可溶化剤を用いた難溶性生体試料の効率的かつ高精度な可溶化方法、そして、この可溶化剤を用いて難溶性生体試料から効率的かつ高精度でサンプルを製造できるサンプル製造方法を提供することを目的としている。
請求項1に記載された難溶性蛋白質の可溶化剤は、
難溶性蛋白質の溶解性に対して塩溶効果が高い陽イオンである1-Butyl-3-methylimidazolium と陰イオンの組み合わせをもつイオン液体と、難溶性蛋白質を可溶化するために十分な濃度を有する水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムの強アルカリ水溶液を20:80 〜60:40 (v/v) の混合比で含むことを特徴としている。
請求項2に記載された難溶性蛋白質の可溶化方法は、
難溶性蛋白質の溶解性に対して塩溶効果が高い陽イオンである1-Butyl-3-methylimidazolium と陰イオンの組み合わせをもつイオン液体と、難溶性蛋白質を可溶化するために十分な濃度を有する水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムの強アルカリ水溶液を20:80 〜60:40 (v/v) の混合比で含む可溶化剤によって難溶性蛋白質を可溶化することを特徴としている。
請求項3に記載された難溶性蛋白質のサンプル製造方法は、
消化工程の終了後に直ちに液体クロマトグラフィー質量分析の対象とすることができる難溶性蛋白質のサンプル製造方法であって、
難溶性蛋白質の溶解性に対して塩溶効果が高い陽イオンである1-Butyl-3-methylimidazolium と陰イオンの組み合わせをもつイオン液体と、難溶性蛋白質を可溶化するために十分な濃度を有する水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムの強アルカリ水溶液を20:80 〜60:40 (v/v) の混合比で含む可溶化剤で可溶化した蛋白質をイオン液体とアルカリ水溶液を吸着しない合成ポリマー系の疎水性マイクロビーズ又は疎水性官能基を結合したアルカリ耐性のビーズ担体に吸着させて抽出する抽出工程と、抽出された蛋白質から前記可溶化剤を選択的に除去する洗浄工程と、前記疎水性マイクロビーズ又は前記ビーズ担体に吸着した蛋白質を消化する消化工程を有し、液体が吸入又は排出される吸排出口に前記疎水性マイクロビーズ又は前記ビーズ担体が予め設けられた容器の内部において、前記全工程を、試料を他の容器に移し替えることなく同一の前記容器内で遠心操作又は液体の排出を行うためのピペティング操作の繰り返しのみの連続操作によって行うことを特徴としている。
なお、本願の明細書及び特許請求の範囲において、「可溶化」とは、固相である難溶性生体試料が溶媒(液体)中に分散して均一系を持続的に形成する現象を指称し、また「可溶化剤」とは固相である難溶性生体試料を可溶化するために難溶性生体試料に加える溶媒を指称する。
請求項1に記載された難溶性蛋白質の可溶化剤によれば、
難溶性蛋白質の溶解性に対して塩溶効果が高い陽イオンである1-Butyl-3-methylimidazolium と陰イオンの組み合わせをもつイオン液体と、難溶性蛋白質を可溶化するために十分な濃度を有する水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムの強アルカリ水溶液を20:80 〜60:40 (v/v) の混合比で含んでおり、従来、例えば難溶性の蛋白質凝集体の可溶化剤として使用されているギ酸や尿素などの変性剤・ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)などの界面活性剤に比べ、難溶性蛋白質を迅速かつ高濃度に可溶化することができる。
請求項2に記載された難溶性蛋白質の可溶化方法によれば、
難溶性蛋白質の溶解性に対して塩溶効果が高い陽イオンである1-Butyl-3-methylimidazolium と陰イオンの組み合わせをもつイオン液体と、難溶性蛋白質を可溶化するために十分な濃度を有する水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムの強アルカリ水溶液を20:80 〜60:40 (v/v) の混合比で含む可溶化剤によって、従来、例えば難溶性の蛋白質凝集体の可溶化剤として使用されているギ酸や尿素などの変性剤・ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)などの界面活性剤に比べ、難溶性蛋白質を迅速かつ高濃度に可溶化することができる。
請求項3に記載された難溶性蛋白質のサンプル製造方法によれば、
難溶性蛋白質の溶解性に対して塩溶効果が高い陽イオンである1-Butyl-3-methylimidazolium と陰イオンの組み合わせをもつイオン液体と、難溶性蛋白質を可溶化するために十分な濃度を有する水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムの強アルカリ水溶液を20:80 〜60:40 (v/v) の混合比で含むことにより、加熱卵白蛋白質を可溶化できる可溶化剤で可溶化した蛋白質をイオン液体とアルカリ水溶液を吸着しない合成ポリマー系の疎水性マイクロビーズ又は疎水性官能基を結合したアルカリ耐性のビーズ担体に吸着させて抽出する抽出工程と、抽出された蛋白質から可溶化剤を選択的に除去する洗浄工程と、前記疎水性マイクロビーズ又は前記ビーズ担体に吸着した蛋白質を消化する消化工程を連続的に行って難溶性蛋白質のサンプルを効率的かつ少ないサンプルロスで製造することができ、直ちに液体クロマトグラフィー質量分析の対象とすることができる。
請求項に記載された難溶性蛋白質のサンプル製造方法によれば
なる容器に試料を移し変える手間が不要となるため操作が簡単になり、作業者に熟練した技術や経験が要求されることがなくなるとともに、サンプルロスが低減化される効果も得られる。
請求項に記載された難溶性蛋白質のサンプル製造方法によれば、
液体が吸入又は排出される吸排出口に前記吸着材料が予め設けられた容器の内部において、前記全工程を、試料を他の容器に移し替えることなく同一の前記容器内で遠心操作又は液体の排出を行うためのピペティング操作の繰り返しのみの連続操作によって行うことができる。このため、作業者や環境に対する試料の感染リスクを最小化でき、従って実験操作の自動化を見据えた基盤技術としても極めて有用である。また、イオン液体とアルカリ水溶液を吸着しない合成ポリマー系の疎水性マイクロビーズ又は疎水性官能基を結合したアルカリ耐性のビーズ担体が吸排出口に予め設けられた容器として、市販されている所謂マイクロチップを利用することができるため、吸着材料の前記ビーズを別材料として取り扱う煩雑さがない。
第1実施形態における難溶性蛋白質(蛋白質凝集体)のサンプルの製造方法を示す説明図である。 第1実施形態のサンプル製造方法で使用される可溶化剤(分図(a))と、従来の可溶化剤であるSDS(分図(b))と、従来の可溶化剤である尿素(分図(c))による難溶性蛋白質(蛋白質凝集体)の可溶化率を比較して示すグラフである。 第1実施形態のサンプル製造方法で使用される可溶化剤(分図(a))と、従来の可溶化剤であるSDS(分図(b))と、従来の可溶化剤である尿素(分図(c))をそれぞれ用いて得られた難溶性蛋白質(蛋白質凝集体)の各サンプルをLC−MSで分析した結果を比較して示すグラフである。 第2実施形態における難溶性蛋白質(蛋白質凝集体)のサンプルの製造方法を示す説明図である。 第3実施形態における難溶性蛋白質(蛋白質凝集体)のサンプルの製造方法を示す説明図である。
本願発明者は、先に説明した従来の課題、すなわち難溶性蛋白質などの難溶性生体試料のサンプル製造における課題に鑑み、難溶性生体試料を効率的に可溶化できる可溶化剤の研究、開発に鋭意努力してきた。その中で多くの物質を用いて難溶性生体試料の可溶化実験を行った結果、難溶性生体試料の可溶化に極めて有効な可溶化剤として、イオン液体とアルカリ水溶液を含む可溶化剤を発明し、さらに、この可溶化剤によって可溶化した難溶性生体試料から分析用のサンプルを効率的かつ高精度で製造する製造方法を発明するに至った。
《第1実施形態》
難溶性生体試料としての難溶性蛋白質の凝集体を可溶化し、分析用のサンプルを効率的かつ高精度で製造する方法について、項目1で説明する。具体的には、まず本願発明者が提案する新規な可溶化剤について(1)で説明し、次に、この可溶化剤で可溶化した難溶性蛋白質を固相で抽出する方法について(2)で説明した後、(3)において図1〜図3を参照して全体の製造工程を説明する。さらに、項目2で本実施形態の効果を説明し、項目3で具体的な実験例について詳細に説明する。
1.難溶性生体試料のサンプル製造方法
(1)可溶化剤
本実施形態の可溶化剤は、イオン液体とアルカリ水溶液を混合した抽出溶媒であり、既存の可溶化剤であるSDSやギ酸などでは溶解できない多くの難溶性生体試料、例えばゆで卵の加熱卵白凝集体のような難溶性蛋白質の凝集体であっても、迅速かつ高濃度に可溶化することができる。
イオン液体としては、様々な有機イオンが使用可能であるが、後述するアルカリ水溶液と混ざり合うもので、難溶性蛋白質の溶解性に対して塩溶効果をもつ陽イオンと陰イオンの組み合わせであることが好ましい。
イオン液体の具体例を挙げれば例えば次の通りである。
1-Butyl-3-methylimidazolium Thiocyanate ([bmin][SCN])
1-Butyl-3-methylimidazolium nitrate ([bmim][NO3])
1-Butyl-3-methylimidazolium tetrafluoroborate ([bmim][BF4])
1-Ethyl-3-methylimidazolium Acetate ([emin][OAc])
ethylammonium nitrate (EAN)
propylammonium nitrate (PAN)
アルカリ水溶液としては、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどの強アルカリの水溶液が好ましい。さらにこの水溶液は、難溶性蛋白質を可溶化するために十分な濃度を持たなければならず、用いるイオン液体との混合比にもよるが、例えば1-BUTYL-3-METHYLIMIDAZOLIUM THIOCYANATE ([bmin][SCN]) の場合、40%(v/v) [bmin][SCN] に対して、60%(v/v) の0.5 M 以上のNaOH水溶液が好ましい。
水酸化ナトリウム(NaOH)と水酸化カリウム(KOH )以外でアルカリ水溶液の具体例を挙げれば例えば次の通りである。
水酸化リチウム(LiOH)
水酸化ルビジウム(RbOH)
水酸化カルシウム(Ca(OH)2)
水酸化バリウム (Ba(OH)2)
イオン液体とアルカリ水溶液の混合比は、用いるアルカリ水溶液の種類と濃度にもよるが、[bmin][SCN] と0.5M NaOH 場合、概ね20:80 〜 60:40 (v/v)間の値が好ましい。その他の組合せにおいても、少なくとも上記混合比の範囲を含む混合比であれば効果が得られる。
(2)難溶性蛋白質の抽出について
マイクロチューブなどの任意の小型容器内に難溶性蛋白質を入れ、これに前記可溶化剤を加えて難溶性蛋白質を可溶化する。小型容器内の可溶化した難溶性蛋白質に、吸着材料としての疎水性マイクロビーズを加え、可溶化した難溶性蛋白質を当該ビーズ表面に吸着させる。イオン液体とアルカリ水溶液は、マイクロビーズに吸着しないため、水や水系緩衝液などの洗浄溶媒でマイクロビーズを洗浄することで除去することができる。また、可溶化剤に不純物が混入していた場合には、有機溶媒と水系緩衝液を用いて洗浄することで、有機溶媒を残存させることなく当該不純物を除去することができる。疎水性マイクロビーズとしては、幅広いpH領域での使用に安定な合成ポリマー系の逆相ポリマービーズが好ましいが、C8やC18 等のアルキル官能基や別の疎水性官能基を結合したアルカリ耐性のシリカやガラス等のビーズ担体も使用できる。
(3)サンプルの製造工程(製造方法)
図1を参照して難溶性蛋白質のサンプルの製造工程を説明する。
以下に詳述するように、本実施形態の製造工程によれば、上述したイオン液体とアルカリ水溶液からなる実施形態の可溶化剤を使用することにより、難溶性蛋白質を可溶化可する可溶化工程1)と、可溶化した難溶性生体試料を吸着材料に吸着させて抽出する抽出工程2)と、抽出された難溶性生体試料から前記可溶化剤を選択的に除去する洗浄工程3)と、難溶性蛋白質をサンプルとして適切な形態とするために消化する消化工程4)のすべての工程を、同一容器内の連続操作によって実現することができる。これによって、超高感度タンパク質分析を行うためのサンプル調製を極めて簡便に行うことが可能となる。
1) 可溶化工程(難溶性蛋白質の凝集体(蛋白質凝集体)の可溶化)
図1において可溶化工程1)で示すように、マイクロチュープなどの小型容器1内に回収した難溶性蛋白質の凝集体2に、前記可溶化剤3を添加する。これに超音波破砕やボルテックス撹拌などの物理的操作を加えて難溶性蛋白質の凝集体2を可溶化する。この際、難溶性蛋白質の非特異的な加水分解を最小化するために、撹拌時間は30分以内とすることが好ましい。また、イオン液体の添加量は、サンプルの蛋白量や使用するイオン液体の種類などに依存するが、例えば、[bmin][SCN] と 0.5MのNaOH水溶液からなる可溶化剤3[40%(v/v) [bmin][SCN] ]の場合、6−7mg加熱卵白蛋白質/mL の可溶化キャパシティーを持つことが見込まれるため、通常は20μL−200μLで十分である。
2) 抽出工程(可溶化した難溶性蛋白質の固相抽出)
図1において抽出工程2)で示すように、同図の可溶化工程1)で説明した可溶化溶液に、吸着材料(担体)である疎水性のマイクロビーズ4(図中では1個のビーズを拡大して示している。)を直接添加し、ボルテックス撹拌でマイクロビーズ4の表面に難溶性蛋白質を吸着させる。通常、ボルテックス撹拌と静止の操作を複数回(3〜4回)繰り返すことで十分な吸着が達成できる。一方、使用するイオン液体によっては、マイクロビーズ4の表面と難溶性蛋白質の吸着を抑制する場合があるので、そのような場合には、マイクロビーズ4を添加した後に可溶化溶液を水で希釈(3〜4倍)してから、撹拌操作を行う。また、可溶化溶液に加えるマイクロビーズ4の量は、可溶化溶液中の蛋白質含有量に依存するが、例えば、ポリスチレン系の逆相ポリマーからなる合成ポリマービーズであるPOROS (パースペクティブ社の商標)R2を使用する場合、当該ビーズ1μl あたり、最大で15μg の蛋白質の結合容量が見込まれるため、通常は1μl で十分である。
3) 洗浄工程(ビーズ洗浄)
図1において洗浄工程3)で示すように、小型容器1を遠心することで蛋白質を吸着したマイクロビーズ4を沈殿させ、上清(イオン液体とアルカリ水溶液を含む)を任意の手段で吸引除去する。沈殿したマイクロビーズ4に、水または水系緩衝液などの洗浄溶媒(100〜500μL)を加え、ボルテックス撹拌し、再度遠心してマイクロビーズ4を沈殿させ、同様に上清を除去する。この操作を複数回(2〜3回)繰り返すことで、可溶化剤3として用いたイオン液体とアルカリ水溶液を難溶性蛋白質のサンプルから除去できる。
本工程では、水系緩衝液を用いた洗浄が基本になるが、例えば、可溶化剤3のイオン液体として市販品を用いた場合、これに混入物が含まれている場合もありうる。このような混入物が存在すると、蛋白質とともにこれらの混入物もビーズに吸着するため、サンプルとなった後で行われるMS分析が妨害される。このため、アセトンや酢酸エチルなどの有機溶媒を用いた洗浄操作を、水系緩衝液を用いる洗浄操作に前に2〜3回程度行うことで除去することが好ましい。
4) 消化工程(トリプシン消化)
一般に蛋白質は分子量が大きいため、MS分析等の対象となる試料とするために、蛋白質の特定の結合を加水分解できるプロテアーゼを用いて消化する必要がある。ここでは、トリプシン消化を行う例を示す。その場合の溶媒としては、少量の有機溶媒―水系緩衝液からなる混合溶媒を用いることが好ましく、様々な有機溶媒と緩衝液の組み合わせが採用可能であるが、具体的には、例えばアセトニトリルと5mM(最終濃度)Tris-HCl緩衝液 (pH 8)からなる混合溶媒の場合であれば、概ね60:40`80:20 (v/v) 間の組み合わせが好ましい。
図1において消化工程4)で示すように、トリプシン消化は、この60%アセトニトリルの混合溶媒にトリプシンを加えた溶液を洗浄後のマイクロビーズ4に加え、37℃で数時間にわたり保持することで達成できる。消化が終了した難溶性蛋白質のサンプルは、その適当量を酸性水溶液で希釈、または溶媒乾燥した後に酸性水溶液に再溶解することで、図1中に示すように直ちに液体クロマトグラフィー質量分析(LC−MS)の対象とすることができる。
以上、図1を参照して説明したように、本実施形態による難溶性蛋白質のサンプルの製造方法によれば、これらすべての工程を単一マイクロチューブ内での連続操作により実現できる。
2.発明の効果
細胞や組織に沈着する蛋白質等の凝集体は一般に難溶性であるため、従来のプロテオミクスの技術・戦略では高感度なMS分析は困難であった。これに対して、本実施形態が提供するイオン液体とアルカリ水溶液の混合溶媒である可溶化剤は、既存の可溶化剤(尿素やSDS等)に不溶である種々の難溶性生体試料の凝集体、例えば、ゆで卵(加熱卵白凝集体2)であっても極短時間で高濃度に可溶化でき、また、疎水性マイクロビーズを担体として用いた洗浄操作によって前記小型容器から簡単に除去できるため、高感度なMS分析用のサンプルが容易に調製できるという効果をもつ。
また本実施形態は、難溶性蛋白質の凝集体の可溶化、固相への抽出、洗浄、消化の全工程を、試料を他の容器に移し替えることなく同一小型容器内で行うことができ、さらにその操作も簡単な遠心操作と、液体の排出を行うためのピペティング操作の繰り返しのみであることから、サンプルロスを低減化するとともに、作業者に熟練した技術・経験を要求しないという効果も併せ持つ。このような労力が低い操作によるMS分析データの取得は、極めて実用的であることから、生命科学の様々な領域の研究に幅広く適用できる。
3.実験例
[実験例1]
第1実施形態の可溶化剤の性能を、既存の可溶化剤の性能と比較した。難溶性蛋白質の凝集体のモデルとしては、今日最も難溶と考えられている鶏卵白蛋白質の熱凝集物を使用した。本実施形態の可溶化剤は、40%(v/v) の[bmin][SCN] と、60%(v/v) の0.5M NaOH からなる。また、既存の可溶化剤としては、8M尿素と10%のSDSを使用した。鶏卵白を10μL(蛋白質の含有量で約1mg)ずつ3本のマイクロチューブ(1.5 mL) にとり、湯浴上で100℃、3分間加熱して蛋白質を凝固させた。次いでそれぞれのマイクロチューブに上記可溶化剤を200μLずつ加えて、2分間超音波撹拌(23kHz)し、1分間ボルテックス撹拌した。さらにこの撹拌操作を2回行った(合計で3回)。その後、同チューブを100,000 gで60分間、遠心操作を加え、上清と沈殿に分けて上清の蛋白量(蛋白質の可溶化量)を蛋白質定量キット Bradford ULTRA (商標)で測定した。
図2に示すように、上記実験の結果、本実施形態の可溶化剤は、ほぼ100%卵白蛋白を可溶化できていることが分かった。これに対し、8M尿素と10%SDSは、ほとんど可溶化できておらず、検出限界以下の値であったことが確かめられた。従って、本実施形態の可溶化剤は、これまで可溶化することが困難であった熱凝集卵白蛋白質を、10分以内に効率よく可溶化できることが確認できた。
[実験例2]
第1実施形態の手順に従って製造した熱凝集卵白蛋白質のサンプルと、第1実施形態と同様の手順であるが可溶化剤として8M尿素を使用して製造した熱凝集卵白蛋白質のサンプルと、第1実施形態と同様の手順であるが可溶化剤として10%SDSを使用して製造した熱凝集卵白蛋白質のサンプルを、それぞれ実際にMS分析し、その結果を比較した。
まず、鶏卵白を1μL(蛋白質の含有量で約0.1 mg)ずつ3本のマイクロチューブ(1.5 mL)に採取し、実験例1の手順に従い、熱凝固させてから、各可溶化剤で可溶化処理を行った。この可溶化溶液のうち20μL分を取り出し、これに1μl のマイクロビーズ(前記POROS (パーセプティブ社の商標)R2)を加え、水で4倍に希釈した後、ボルテックス撹拌(1分)と静止(1分)の操作を3回繰り返して蛋白質をマイクロビーズに吸着させた。マイクロビーズに遠心操作(10,000g、1分)を加えて沈殿させ、上清を吸引除去した。マイクロビーズに100μLのアセトンを加え、数秒間ボルテックス撹拌して再度遠心操作(10,000g、1分)を加えて上清を吸引除去した。この洗浄操作を合計3回行った。次いで、100μl の100mM Tris-HCl 緩衝液 (pH8)で2回、100 μl の水で同様に洗浄した。その後、ビーズを乾燥させてから、10μl のアセトニトリルと Tris-HCl 緩衝液,pH8の混合溶媒(60%(v/v) アセトニトリル) に、0.5μgのトリプシンを含んだ溶液を添加し、37℃で12〜16時間程度のトリプシン消化を行った。それぞれの消化物は、液体クロマトグラフィー/ 質量分析(LC-MS)システム(Waters社製LC-MSnanoACQUITY UPLC Xevo G2-S QTofシステム)で分析した。
図3に示すように、上記実験の結果、本実施形態によれば、鶏卵白蛋白に由来する多数の消化ペプチドを高いシグナル強度で検出できることが明らかとなった(図3(a))。また、同結果をWaters社のProteinLynx Global SERVER (商標)(PLGS)と呼ばれるソフトウエアを用いてデーターベース検索したところ、本実施形態の方法は、多くの鶏卵白蛋白質を特異的に同定できることが示された。従って、本実施形態の方法によれば、熱凝集卵白蛋白質から高精度なMS分析用のサンプルを製造できることが実際に確認できた。これに対し、既存の可溶化剤を使った方法では、10%SDSの場合(図3(b))でも、8M尿素の場合(図3(c))でも、いずれもトリプシンの自己消化物に由来するペプチドシグナル以外、有意なシグナルは観察されなかった。
《第2実施形態》
第2実施形態に係る難溶性蛋白質の凝集体のサンプル製造方法を、図4を参照して説明する。第2実施形態で使用される可溶化剤、洗浄溶媒、蛋白質分解酵素、さらに吸着剤であるマイクロビーズ等の使用材料は、第1実施形態で使用したものと実質的に同一である。従って、可溶化、抽出、洗浄及び消化の各工程における作用も第1実施形態と実質的に同一である。しかし、第1実施形態の各工程がマイクロチューブのような一つの小型容器の内部で行われたのに対し、第2実施形態では、マイクロチューブのような小型容器と、マイクロビーズが予め仕込まれた操作容器である後述するマイクロチップと、液体の出し入れ操作を行う分注器を使用する点が相違している。従って、以下の説明では、可溶化、抽出、洗浄及び消化の各工程における作用については第1実施形態の説明を援用し、各工程を実行する作業上の特徴を中心に説明するものとする。
図4において可溶化工程1)で示すように、難溶性蛋白質の凝集体2を、小型容器1の内部において本実施形態の可溶化剤3で可溶化する。
図4において抽出工程2)で示すように、難溶性蛋白質の凝集体2を操作するための操作容器であるマイクロチップ5を用意する。マイクロチップ5は先細の管状の容器である。その上端は蓋で閉止可能な大径の開口部5aであり、その下端は小径の吸排出口5bである。液体を操作する器具である分注器6の先端を開口部5aから挿入し、分注器6の操作によって吸排出口5bから液体を出し入れすることができる。マイクロチップ5の内部には、吸排出口5bの近傍に所定量のマイクロビーズ4が充填されており、マイクロビーズ4が漏出しないように吸排出口5bには図示しないフィルターが設けられている。マイクロチップ5は、そのサイズ、マイクロビーズ4の量及び種類等にバリエーションがある種々の市販品(固定化チップ)も知られており、これを選択して使用してもよいし、必要な機能を備えたマイクロチップ5を自作して使用してもよい。
図4において抽出工程2)の左側に示すように、マイクロチップ5の開口部5aから分注器6の先端を挿入して分注器6にマイクロチップ5を取り付け、小型容器1に先端を差し込んでピストンを操作して数回のピペッティングを行う。小型容器1の中にある難溶性蛋白質が可溶化した可溶化剤3が、マイクロチップ5の吸排出口5bを出入りしてマイクロビーズ4を通過することにより、可溶化した難溶性蛋白質がマイクロビーズ4に吸着される。図4において抽出工程2)の右側は、抽出工程が終了した後のマイクロチップ5及び分注器6を示す。小型容器1の中で可溶化剤3に溶解した難溶性蛋白質はマイクロビーズ4に吸着され、難溶性蛋白質が含まれていない可溶化剤3はマイクロチップ5から排出され、マイクロチップ5の内部には残っていない。
図4において洗浄工程3)で示すように、別の小型容器1に洗浄溶媒7を入れ、分注器6の先端に取りつけられて抽出工程を経たマイクロチップ5を、小型容器1の洗浄溶媒7の中に挿入する。分注器6のピストンを操作して数回のピペッティングを行う。小型容器1の中にある洗浄溶媒7が、マイクロチップ5の吸排出口5bを出入りしてマイクロビーズ4を通過することにより、マイクロビーズ4が洗浄され、マイクロビーズ4に吸着された難溶性蛋白質から可溶化剤3を除去する。さらに、同様にして水系緩衝液によるピペッティングを行なう。図4において洗浄工程3)の右側は、洗浄工程が終了した後のマイクロチップ5及び分注器6を示す。洗浄溶媒7及び緩衝液はマイクロチップ5から排出され、マイクロチップ5の内部には残っていない。
図4において消化工程4)で示すように、別の小型容器1に消化液として第1実施形態のトリプシン溶液8を入れ、マイクロチップ5を取りつけた分注器6の先端を、小型容器1のトリプシン溶液8中に挿入し、ピペッティングを行い、マイクロチップ5内にトリプシン溶液8を取り込む。その後、マイクロチップ5を分注器6から外して開口部5aと5bに蓋9aと蓋9bをしてマイクロチップ5内でトリプシン消化を進行させる。又は、消化工程4)の右端に図示するように、同トリプシン溶液8を新たな小型容器1に押し出して回収し、蓋10をして小型容器1内でトリプシン消化を進行させてもよい。
第2実施形態の製造方法によれば、マイクロビーズ4が設けられたマイクロチップ5及び小型容器1を用い、分注器6で液体の操作を行うことにより、少なくとも抽出工程と、洗浄工程と、消化工程をマイクロチップ5内で連続して実行することができ、極めて簡便な操作で難溶性蛋白質のサンプルを製造することができる。
《第3実施形態》
第3実施形態に係る難溶性蛋白質の凝集体2のサンプル製造方法を、図5を参照して説明する。第3実施形態で使用される可溶化剤、洗浄溶媒、蛋白質分解酵素、さらに吸着剤であるマイクロビーズ等の使用材料は、第1実施形態で使用したものと実質的に同一である。従って、可溶化、抽出、洗浄及び消化の各工程における作用も第1実施形態と実質的に同一である。しかし、第1実施形態の各工程がマイクロチューブのような単なる一つの小型容器の内部で行われ、マイクロビーズは別体として小型容器に投入されたのに対し、第3実施形態では、マイクロチューブのような小型容器と、マイクロビーズが予め仕込まれた操作容器であるマイクロチップを使用する点が相違している。従って、以下の説明では、可溶化、抽出、洗浄及び消化の各工程における作用については第1実施形態の説明を援用し、各工程を実行する作業上の特徴を中心に説明するものとする。
図5において可溶化工程1)で示すように、難溶性蛋白質の凝集体2を、小型容器1の内部において本実施形態の可溶化剤3で可溶化する。
図5において抽出工程2)の左側の図に示すように、難溶性蛋白質の凝集体2を操作するための操作容器であるマイクロチップ5を用意しておく。同中央の図に示すように、これに難溶性蛋白質を可溶化した可溶化剤3を小型容器1から移し変え、遠心操作を行う。これによって同右側の図に示すように、マイクロチップ5内の可溶化剤3は、マイクロチップ5のマイクロビーズ4を通過して吸排出口5bから排出される。この過程で可溶化した難溶性蛋白質はマイクロビーズ4に吸着されて固相で抽出される。
図5において洗浄工程3)の左側の図に示すように、マイクロチップ5の中に洗浄溶媒7を入れ、遠心操作を行う。マイクロチップ5の中にある洗浄溶媒7が、マイクロビーズ4を通過して吸排出口5bから排出されることにより、マイクロビーズ4が洗浄され、マイクロビーズ4に吸着された難溶性蛋白質から可溶化剤3が除去される。さらに、同様にして水系緩衝液によるピペッティングを行なう。図5において洗浄工程3)の右側は、洗浄工程が終了した後のマイクロチップ5を示す。洗浄溶媒7及び緩衝液はマイクロチップ5から排出され、内部には残っていない。
図5において消化工程4)で示すように、マイクロチップ5に第1実施形態のトリプシン溶液8を入れ、開口部5aと5bに蓋9aと蓋9bをしてマイクロチップ5内でトリプシン消化を進行させる。又は、消化工程4)の右端に図示するように、同トリプシン溶液8を新たな小型容器1に移し変えて、蓋10をして小型容器1内でトリプシン消化を進行させてもよい。
第3実施形態の製造方法によれば、マイクロビーズ4が設けられたマイクロチップ5を用いることにより、少なくとも抽出工程と、洗浄工程と、消化工程をマイクロチップ5内で連続して実行することができ、極めて簡便な操作で難溶性蛋白質のサンプルを製造することができる。
《第4実施形態》
第1〜第3実施形態で使用した可溶化剤3は、難溶性蛋白質以外の難溶性生体試料、具体的には難溶性糖含有物質及び難溶性脂質含有物質にも適用できる。すなわち、実施形態の可溶化剤3は、難溶性糖含有物質及び難溶性脂質含有物質を目的物質とすることができ、従来よりも小さなサンプルロスでこれら目的物質を効率的に可溶化することができるので、これら目的物質をMS分析等に適した状態のサンプルとして効率的に製造するために有用である。
実施形態の可溶化剤3を用いて難溶性糖含有物質及び難溶性脂質含有物質(目的物質)のサンプルを製造する工程では、可溶化工程後の抽出工程において、クロマトグラフィー法により目的物質のみを他の物質から容易に分離して抽出することができる。又は、可溶化後の可溶化剤3に適当な担体を投入して吸着を行い、その後で目的物質以外の物質を担体から除去するようにしてもよい。
また、難溶性糖含有物質及び難溶性脂質含有物質は、一般的に前述した難溶性蛋白質と比べると分子量が小さいので、洗浄工程後に直ちにサンプル化することができる場合もあり、必ずしも消化工程を行う必要はない。消化工程を経る必要がある場合には、各目的物質の種類に対応した特定の消化酵素を用いて消化工程を行う。
実施形態の可溶化剤3を用いたサンプル製造方法によれば、難溶性糖含有物質及び難溶性脂質含有物質を対象とする場合においても、第1〜第3実施形態と同様に、複数の工程を同一容器(例えば小型容器1又はマイクロチップ5等)内で連続して実行する簡便な操作で、効率的かつ高精度でサンプルを製造することができる。
1…小型容器
2…難溶性生体試料の一例である難溶性蛋白質の凝集体
3…可溶化剤
4…吸着材料としてのマイクロビーズ
5…操作容器としてのマイクロチップ
6…分注器(ピペット)
7…洗浄溶媒
8…消化液としてのトリプシン溶液

Claims (3)

  1. 難溶性蛋白質の溶解性に対して塩溶効果が高い陽イオンである1-Butyl-3-methylimidazolium と陰イオンの組み合わせをもつイオン液体と、難溶性蛋白質を可溶化するために十分な濃度を有する水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムの強アルカリ水溶液を20:80 〜60:40 (v/v) の混合比で含む難溶性蛋白質の可溶化剤。
  2. 難溶性蛋白質の溶解性に対して塩溶効果が高い陽イオンである1-Butyl-3-methylimidazolium と陰イオンの組み合わせをもつイオン液体と、難溶性蛋白質を可溶化するために十分な濃度を有する水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムの強アルカリ水溶液を20:80 〜60:40 (v/v) の混合比で含む可溶化剤によって難溶性蛋白質を可溶化する難溶性蛋白質の可溶化方法。
  3. 消化工程の終了後に直ちに液体クロマトグラフィー質量分析の対象とすることができる難溶性蛋白質のサンプル製造方法であって、
    難溶性蛋白質の溶解性に対して塩溶効果が高い陽イオンである1-Butyl-3-methylimidazolium と陰イオンの組み合わせをもつイオン液体と、難溶性蛋白質を可溶化するために十分な濃度を有する水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムの強アルカリ水溶液を20:80 〜60:40 (v/v) の混合比で含む可溶化剤で可溶化した蛋白質をイオン液体とアルカリ水溶液を吸着しない合成ポリマー系の疎水性マイクロビーズ又は疎水性官能基を結合したアルカリ耐性のビーズ担体に吸着させて抽出する抽出工程と、抽出された蛋白質から前記可溶化剤を選択的に除去する洗浄工程と、前記疎水性マイクロビーズ又は前記ビーズ担体に吸着した蛋白質を消化する消化工程を有し、液体が吸入又は排出される吸排出口に前記疎水性マイクロビーズ又は前記ビーズ担体が予め設けられた容器の内部において、前記全工程を、試料を他の容器に移し替えることなく同一の前記容器内で遠心操作又は液体の排出を行うためのピペティング操作の繰り返しのみの連続操作によって行う難溶性蛋白質のサンプル製造方法。
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