以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
≪第1実施形態≫
図1は、本実施形態に係る回転角度検出装置のブロック図である。本例の回転角度検出装置は、レゾルバの出力値を用いてロータ(回転子)の回転角度を検出しつつ、レゾルバを含めた装置内の異常を検出する装置である。
図1に示すように、本例の回転角度検出装置は、励磁信号発生部10と、レゾルバ20と、直列回路30と、コントローラ40とを備えている。
励磁信号発生部10は、正弦波状の励磁信号を発生し、レゾルバ20に出力する。励磁信号はAsinωtにより表される。ただし、Aは振幅を、ωは角度周波数を、tは時間を示す。
レゾルバ20は、図示しないモータの巻き線の近傍に配置され、当該モータに含まれる回転子50の回転角φ(回転角度)を検出するためのセンサである。レゾルバ20は、励磁コイル21と、Cosコイル22と、Sinコイル23とを有している。
励磁コイル21は、モータの回転子に設けられ、励磁信号の供給を受けて磁束を発生する一次コイルである。
Cosコイル22及びSinコイル23は、互いに位相が異なる2つの交流電圧(交流信号)を出力する二次コイルである。Cosコイル22及びSinコイル23は、モータの固定子に設けられ、励磁コイル21との間の電磁誘導により、交流電圧をコントローラ40が備えるRD変換部41及び異常検出部42に、それぞれ出力する。
Cosコイル22及びSinコイル23は、電気角90度に相当する分の位相差をもって、固定子に配置されている。なお、励磁コイル21は固定子に設けられてもよく、Cosコイル22及びSinコイル23は回転子に設けられてもよい。
Cosコイル22の両端には、それぞれ信号線24aと信号線24bが接続されている。信号線24aと24bは、Cosコイル22とRD変換部41及び異常検出部42を接続する信号線(Cosコイル22側の信号線)である。
Sinコイル23の両端には、それぞれ信号線24cと信号線24dが接続されており、信号線24cと24dは、Sinコイル23とRD変換部41及び異常検出部42を接続する信号線(Sinコイル23側の信号線)である。図1では、サイン信号Vsinは、信号線24cと信号線24dの間の電位差を示す。
励磁コイル21に入力された励磁信号(Asinωt)は、レゾルバ20内におけるコイル間の電磁誘導の作用と、Cosコイル22とSinコイル23の位相差によって、回転子50の回転角φに基づき振幅変調される。変調された信号は、コサイン信号Vcos(AKsinωtcosφ)及びサイン信号Vsin(AKsinωtsinφ)として、コントローラ40が備えるRD変換部41及び異常検出部42に出力される。これにより、Cosコイル22及びSinコイル23は、回転子50の回転角φに応じた信号(振幅変調された交流信号)をRD変換部41及び異常検出部42に出力する。ただし、Kは一次コイル(励磁コイル21)と二次コイル(Cosコイル22及びSinコイル23)の変圧比を示す。
直列回路30は、複数の直列回路30a〜30dから構成される。直列回路30a及び直列回路30bはCosコイル22側に設けられている。直列回路30aは信号線24aと電源25の間に、直列回路30bは信号線24bとグランド26の間にそれぞれ電気的に接続されている。直列回路30c及び直列回路30dは、Sinコイル23側に設けられている。直列回路30cは信号線24cと電源25の間に、直列回路30dは信号線24dとグランド26との間にそれぞれ電気的に接続されている。
直列回路30a〜30dは、それぞれスイッチと抵抗の直列接続で構成される。直列回路30aはスイッチSW1と抵抗R1の直列接続の回路であり、直列回路30bはスイッチSW2と抵抗R2の直列接続の回路である。また、直列回路30cはスイッチSW3と抵抗R1の直列接続の回路であり、直列回路30dはスイッチSW4と抵抗R2の直列接続の回路である。
スイッチSW1、SW2は、Cosコイル22側の信号線(信号線24a、24b)と電気的に接続するCosコイル22側のスイッチである。スイッチSW3、SW4は、Sinコイル23側の信号線(信号線24c、24d)と電気的に接続するSinコイル23側のスイッチである。
スイッチSW1〜SW4には、コントローラ40の制御部43から出力される制御信号が入力される。スイッチSW1〜SW4は、この制御信号により、オン又はオフする。スイッチSW1、SW3はそれぞれ信号線24a又は信号線24cと電源25とを接続可能にするスイッチであり、スイッチSW1、SW3には、半導体のスイッチング素子が用いられ、例えば、PNPトランジスタ、Pch MOSFET等が挙げられる。スイッチSW2、SW4はそれぞれ信号線24b又は信号線24dとグランド26とを接続可能にするスイッチであり、スイッチSW2、SW4にも、半導体素子のスイッチング素子が用いられ、例えば、NPNトランジスタ、Nch MOFET等が挙げられる。
抵抗R1は、断線した信号線の電位を電源25に確定させるプルアップ抵抗である。抵抗R2は、断線した信号線の電位をグランド26に確定させるプルダウン抵抗である。抵抗R1及び抵抗R2には、RD変換部41及び異常検出部42における抵抗成分の入力インピーダンスよりも大きい抵抗を用いるのが好ましい。また、抵抗値が同じ抵抗を、抵抗R1及び抵抗R2に用いるのが好ましい。ただし、抵抗R1及び抵抗R2の抵抗値は、上記以外の抵抗値でもよく、特に限定されない。
コントローラ40は、RD変換部41と、異常検出部42と、制御部43とを備える。コントローラ40には、例えば、CPU、MPU等が用いられる。なお、コントローラ40は、CPU等の一つの装置による構成に限定されない。例えば、コントローラ40は、RD変換部41としてRDコンバータ、異常検出部42及び制御部43としてCPUとする複数の構成からなる装置であってもよい。
RD変換部41は、Cosコイル22及びSinコイル23からそれぞれ出力される信号に基づいて、回転子50の回転角(回転角度)を演算する。上記のように、Cosコイル22から出力される信号はAKsinφcosωtで表され、Sinコイル23から出力される信号はAKsinφsinωtで表される。そのため、RD変換部41は、Cosコイル22及びSinコイル23から出力される信号のアークタンジェントをとることで、回転子50の回転角を演算できる。
ただし、上記のアークタンジェントにより回転角を演算する方法では、不連続点があるため、例えば、閉ループ構成による負帰還制御により回転角を演算してもよい。
これにより、RD変換部41は、Cosコイル22の出力信号(コサイン信号Vcos)及びSinコイル23の出力信号(サイン信号Vsin)に含まれる回転角成分を演算により導出することで、回転子50の回転角を演算している。RD変換部41は、演算した回転角θを、制御部43に出力する。
異常検出部42は、Cosコイル22及びSinコイル23から出力される信号に基づいて、回転角度検出装置の異常を検出する。異常検出部42は、装置の異常を検出するための検出閾値(電圧閾値)と、Cosコイル22及びSinコイル23からの出力信号の大きさとを比較することで、異常を検出する。
異常検出部42は、Cosコイル22及びSinコイル23からの出力信号の電圧(交流電圧の振幅に相当)が検出閾値より高い場合には、回転角度検出装置に異常が生じていないと検出する。一方、異常検出部42は、Cosコイル22及びSinコイル23からの出力信号の電圧が検出閾値以下である場合には、回転角度検出装置に異常が生じていると検出する。また、異常検出部42は、回転角度検出装置に異常が生じていると検出した場合には、異常を通知するために、異常を示す信号を制御部43又は他の装置(図示しない)に出力する。なお、Cosコイル22及びSinコイル23からの出力信号の電圧は、図1に示すコサイン信号Vcos及びサイン信号Vsinに相当する。
装置内の異常の一例として、レゾルバ20とRD変換部41の間の信号線に断線異常が生じた場合について説明する。このような場合には、スイッチSW1〜SW4がオンしていることを前提とすると、断線異常の信号線の電圧は、上記抵抗R1により電源25の電圧に固定される、又は上記抵抗R2によりグランド26の電圧(ゼロ電圧)に固定される。そのため、異常検出部42は、Cosコイル22又はSinコイル23からの出力信号の電圧が、検出閾値以下である場合には、信号線24(信号線24a〜24d)で異常が生じたと検出する。なお、異常を検出するための閾値は予め設定されている閾値である。
これにより、異常検出部42は、Cosコイル22及びSinコイル23から出力される信号とを比較し、その比較結果に基づいて、装置内の異常を検出している。ただし、異常検出部42による異常検出の方法は、上記の方法に限定されず、他の方法を用いてもよい。
また、異常検出部42には、制御部43から出力される指令信号が入力され、異常検出部42は、この指令信号に応じて、装置内の異常の検出を開始又は終了する。指令信号には、異常検出可能又は異常検出不可能を示す情報が含まれており、異常検出部42は、異常検出可能な情報を読み取ると、装置内の異常検出を開始し、異常検出不可能な情報を読み取ると、装置内の異常検出を終了する。
後述するが、制御部43は、スイッチSW1〜SW4をオンさせる制御信号と同期させて、異常検出可能の指令信号を、異常検出部42に対して出力する。これにより、異常検出部42は、スイッチSW1〜SW4がオンする期間に、上記のような信号線の断線異常を検出することができる。
制御部43は、スイッチSW1〜SW4を一斉にオン又はオフさせるように制御する。制御部43は、制御信号をスイッチSW1〜SW4に対して出力することで、スイッチSW1〜SW4を一斉に制御する。
また、制御部43は、スイッチSW1〜SW4をオフさせる第1の期間と、スイッチSW1〜SW4をオンさせる第2の期間を設定する。制御部43は、所定の基準期間から、第1の期間と第2の期間を設定する。所定の基準期間としては、例えば、CPUで用いられるクロック周期が挙げられる。例えば、所定のクロックの1周期が100usであれば、制御部43は、クロック1周期のうち30usの期間を第1の期間として、クロック1周期のうち残りの期間である70usの期間を第2の期間として設定する。なお、所定の基準期間は、クロック周期に限定されず、制御部43は、適宜他の基準期間を設定することができる。また、第1の期間と第2の期間を設定する方法は、特に限定されない。
さらに、制御部43は、第1の期間ではスイッチSW1〜SW4をオフさせ、第2の期間ではスイッチSW1〜SW4をオンさせる。制御部43は、第2の期間終了後、再び第1の期間では、スイッチSW1〜SW4をオフさせ、以降、この繰り返し制御を行うことで、所定の期間毎に、スイッチSW1〜SW4のオン又はオフを、することができる。
また、制御部43は、スイッチSW1〜SW4をオフする第1の期間においてRD変換部41が演算した、回転角θを検出する。例えば、制御部43は、第1の期間が経過したか否かをモニタし、第1の期間が終了すると同時に、回転角θを検出することで、第1の期間においてRD変換部41が演算した回転角θを検出することができる。なお、RD変換部41は、第1の期間内に回転角θを演算する必要があるため、制御部43は、RD変換部41が回転角θの演算に要する時間よりも長い期間を、第1の期間として設定するのが好ましい。
一方、制御部43は、スイッチSW1〜SW4をオンする第2の期間において、回転角θを検出せず、異常検出部42に異常検出可能の指令信号を出力することで、異常検出部42に装置内の異常(信号線の断線異常)を検出させる。なお、制御部43は、RD変換部41が第2の期間において回転角θを演算したか否かにかかわらず、第2の期間において、回転角θを検出しない。本実施形態では、RD変換部41は、第2の期間において回転角θを演算しないものとするが、特に限定されない。
例えば、クロック周期が100usであって、制御部43が第1の期間を30us、第2の期間を70usと設定した場合に、制御部43は、30usの期間にRD変換部41が演算した、回転角θを検出する。これにより、コントローラ40は、スイッチSW1〜SW4がオフする状態における回転角θを検出することができる。また、制御部43は、70usの期間において、回転角θを検出せずに、異常検出部42に装置内の異常を検出させる。これにより、コントローラ40は、スイッチSW1〜SW4がオンする状態において、回転角θを検出せず、装置内の異常を検出することができる。
なお、制御部43は、制御信号をスイッチSW1〜SW4に対して出力するタイミングと、指令信号を異常検出部42に対して出力するタイミングを、それぞれ、適宜、調整することができる。例えば、制御部43は、スイッチSW1〜SW4が有する遅延時間(例えば、オフ状態からオン状態までに要する時間)を考慮して、2つの信号の出力タイミングを設定することができる。
このように、本実施形態の回転角度検出装置は、スイッチSW1〜SW4がオフする期間において演算した回転角θを検出することができる。また、回転角度検出装置は、スイッチSW1〜SW4がオンする期間では、回転角θを検出せずに、装置内の異常を検出することができる。
ところで、スイッチSW1〜SW4のオンオフ状態に応じて、RD変換部41は異なる回転角(回転角θと回転角θ’)を演算する。以降、スイッチSW1〜SW4がオン状態における回転角θと、スイッチSW1〜SW4がオフ状態における回転角θ’の違いについて説明する。
スイッチSW1〜SW4がオンすると、信号線24は、抵抗R1又は抵抗R2を介して、所定の電位(電源25とグランド26)と接続した状態になる。この状態において、抵抗R1及び抵抗R2には微小電流(リーク電流)が流れる。そのため、RD変換部41が演算する回転角θ’には、抵抗R1及び抵抗R2に基づく角度誤差が含まれる。以降、式を用いて説明する。
スイッチSW1〜SW4のオン状態では、抵抗R1及び抵抗R2によって、Cosコイル22の出力信号の電圧(コサイン信号Vcos)及びSinコイル23の出力信号の電圧(サイン信号Vsin)には、オフセット電圧が重畳される。コサイン信号Vcosとサイン信号Vsinは、それぞれ下記式(1)、(2)で表される。ただし、VDCはオフセット電圧を、ZRESはレゾルバ20の出力インピーダンスを、R1は抵抗R1の抵抗値を、R2は抵抗R2の抵抗値を、VCCは電源25の電圧を示す。
RD変換部41には、上記式(1)、(2)で表されるコサイン信号Vcosとサイン信号Vsinが入力され、RD変換部41は、コサイン信号Vcosとサイン信号Vsinのアークタンジェントを取ることで、下記式(4)で表される回転角θ’を演算する。ただし、オフセット電圧VDCは、上記式(3)と同様とする。
上記式(4)から、回転角θ’には、抵抗R1及び抵抗R2により重畳されたオフセット電圧VDCが含まれており、回転角θ’は、オフセット電圧VDCによる角度誤差θERRを含んだ回転角となる。角度誤差θERRは、RD変換部11の閉ループ構成による負期間制御により演算され、下記式(5)で表される。
仮に、スイッチSW1〜SW4がオン状態において演算した回転角θ’を検出すると、上記式(4)、(5)で表せるように、検出した回転角θ’には、角度誤差θERRが含まれてしまう。
そこで、回転角θ’から角度誤差θERRを取り除くため、回転角θ’を補正する補正処理が挙げられる。例えば、上記式(3)から予めオフセット電圧を演算して、演算したオフセット電圧と角度誤差θERR ’との関係をマップとして保存する方法がある。そして、このマップから角度誤差θERR ’を参照し、回転角θ’を補正処理する。しかし、この補正処理では、予めオフセット電圧を演算する際に、抵抗R1及び抵抗R2を既知の抵抗値として扱う必要がある。そのため、抵抗R1及び抵抗R2に抵抗誤差が生じる場合、実際に発生する角度誤差θERRとマップに保存された角度誤差θERR ’に差が生じる。この場合には、上記補正処理を行ったとしても、回転角θ’には角度誤差θERRが含まれてしまう。
一方、本実施形態の回転角度検出装置では、スイッチSW1〜SW4がオフする第1の期間においてRD変換部41が演算した、回転角θを検出している。スイッチSW1〜SW4がオフすると、信号線24は、それぞれ、所定の電位(電源25とグランド26)と遮断された状態になる。この状態では、RD変換部41が演算する回転角θには、抵抗R1及び抵抗R2に基づく角度誤差θERRが含まれない。以降、式を用いて説明する。
スイッチSW1〜SW4をオフすると、信号線24と電源25及びグランド26は電気的に遮断された状態になる。この状態において、抵抗R1及び抵抗R2には微小電流(リーク電流)は流れない。そのため、Cosコイル22の出力信号(コサイン信号Vcos)及びSinコイル23の出力信号(サイン信号Vsin)には、抵抗R1及び抵抗R2によるオフセット電圧が重畳されない。コサイン信号Vcosとサイン信号Vsinは、それぞれ下記式(6)、(7)で表される。下記式(6)、(7)は、上記式(1)〜(3)において、R1及びR2をゼロとすることで求められる。
RD変換部41には、上記式(6)、(7)で表されるコサイン信号Vcosとサイン信号Vsinが入力され、RD変換部41は、コサイン信号Vcosとサイン信号Vsinのアークタンジェントを取ることで、下記式(8)で表される回転角θを演算する。
ここで、上記式(8)のアークタンジェントの中は、下記式(9)で表されるため、回転角θは下記式(10)で表される。
上記式(10)から、スイッチSW1〜SW4がオフする期間においてRD変換部41が演算する回転角θは、回転子50の回転角φと一致することになる。これにより、制御部43は、抵抗R1及び抵抗R2に基づく角度誤差を含まない回転角θを検出することができる。
次に、図2を参照して、本実施形態における回転角の検出フローについて説明する。図2は、本実施形態における回転角検出処理を示すフローチャートである。なお、以下に説明する回転角検出処理は、コントローラ40により実行される。ステップS101〜S103では、コントローラ40は、回転角θを検出しない。
ステップS101では、コントローラ40は、スイッチSW1〜SW4をオンする制御信号を出力する。スイッチSW1〜SW4には制御信号が入力され、スイッチSW1〜SW4はオンする。例えば、コントローラ40は、クロック周期から、スイッチSW1〜SW4をオフする第1の期間と、スイッチSW1〜SW4をオンする第2の期間を設定する。そして、コントローラ40は、第2の期間の開始タイミングをステップS101と設定する。
ステップS102では、コントローラ40は、信号線24の断線異常を検出する。スイッチSW1〜SW4は、ステップS101でオン状態となっているため、コントローラ40は、信号線24と所定の電位(電源25、グランド26)とが電気的に接続されている状態で、信号線24の断線異常を検出する。例えば、コントローラ40は、Cosコイル22又はSinコイル23からの出力信号の電圧が、検出閾値以下である場合には、信号線24で断線が生じたとして検出する。信号線24の断線が検出されると、ステップS103へ進み、反対に、信号線24の断線が検出されないと、ステップS104へ進む。なお、ステップS102では、コントローラ40は、回転角θを演算しない。
ステップS103では、コントローラ40は、異常を示す信号を他の装置(図示しない)に出力する。そして、コントローラ40は、回転角検出処理を終了する。これにより、コントローラ40は、信号線24が断線した状態において回転角θを検出することを防ぐことができる。
ステップS104では、コントローラ40は、スイッチSW1〜SW4をオフする制御信号を、SW1〜SW4に対して出力する。スイッチSW1〜SW4には制御信号が入力され、スイッチSW1〜SW4はオフする。例えば、コントローラ40は、第2の期間が経過したことを確認し、以降を第1の期間として設定する。そして、コントローラ40は、第1の期間の開始タイミングで制御信号を出力することができる。
ステップS105では、コントローラ40は、回転角θを演算する。コントローラ40は、Cosコイル22及びSinコイル23からそれぞれ出力される信号に基づいて、回転角θを演算する。スイッチSW1〜SW4は、ステップS104でオフ状態となっているため、コントローラ40は、スイッチSW1〜SW4がオフ状態における回転角θを演算する。
ステップS106では、コントローラ40は、回転角θを検出する。この回転角θは、ステップS105で演算された回転角である。これにより、コントローラ40は、抵抗R1及び抵抗R2に基づく角度誤差θERRを含まない回転角θを検出する。
ステップS106が終了すると、ステップS101へ戻り、ステップS101〜ステップS106の回転角検出処理が繰り返し行われる。例えば、コントローラ40は、クロック周期100usの場合、100us毎に、ステップS101〜ステップS106の回転角検出処理を繰り返し行う。
次に、図3を参照して、図2に示す回転角検出処理の実施形態について説明する。
図3は、回転角検出処理の実施形態の一例を示す図である。図3では、横軸は時間t、縦軸は、コントローラ40が検出する回転角θ、コントローラ40がスイッチSW1〜SW4に対して出力する制御信号(SW)を示している。なお、図3(B)は、図3(A)の点線で示す範囲の拡大図である。図3(B)に示すように、コントローラ40は、周期T(例えば、100us)毎に、スイッチSW1〜SW4をオン又はオフさせて、回転角θを検出している。
時刻t1では、スイッチSW1〜SW4はオン状態である。時刻t1において、コントローラ40は、スイッチSW1〜SW4をオフする制御信号を、スイッチSW1〜SW4に対して出力する。スイッチSW1〜SW4には、制御信号が入力され、スイッチSW1〜SW4はオン状態からオフ状態へ移行し始める。
時刻t2は、時刻t1から時間T1だけ経過した時刻である。時間T1は、スイッチSW1〜SW4がオン状態からオフ状態に移行するまでに要する遅延時間である。時刻t2において、スイッチSW1〜SW4はオフ状態になる。コントローラ40は、時刻t2から回転角θの検出を開始する。
時刻t2〜t3では、スイッチSW1〜SW4はオフ状態の期間であり、コントローラ40は、この期間において演算される回転角θを検出している。
時刻t3では、スイッチSW1〜SW4はオフ状態である。時刻t3において、コントローラ40は、スイッチSW1〜SW4をオンする制御信号を、スイッチSW1〜SW4に対して出力する。スイッチSW1〜SW4には、制御信号が入力され、スイッチSW1〜SW4はオフ状態からオン状態への移行し始める。なお、コントローラ40は、回転角θの検出を終了するとともに、装置内の異常検出(信号線の断線検出)を開始する。
時刻t3〜t4では、スイッチSW1〜SW4はオン状態の期間であり、コントローラ40は、この期間において、装置内の異常を検出している。
時刻t4では、スイッチSW1〜SW4はオン状態である。コントローラ40は、時刻t1と同様に、スイッチSW1〜SW4をオフする制御信号を、スイッチSW1〜SW4に対して出力するとともに、装置内の異常検出を終了する。
図3に示すように、時刻t2〜t3では、コントローラ40は回転角θを検出しており、回転角θが更新されている。また、時刻t3〜t4では、コントローラ40は回転角θを検出しておらず、回転角θは更新されず一定値で推移する。
次に、図4A、図4B、図4Cを参照して、抵抗R1及び抵抗R2の抵抗誤差により発生する、角度誤差θERRについて、比較例を用いて説明する。図4A、図4B、図4Cにおいて、横軸は回転子50の回転角φ(回転角の真値)、縦軸は角度誤差θERRを示す。
図4Aは、比較例1に係る回転角度検出装置において、回転角に含まれる角度誤差θERRを示す図である。比較例1に係る回転角度検出装置は、本実施形態に係る回転角度装置に対して、スイッチSW1〜SW4を備えていない点以外は、同様の構成である。比較例1では、信号線24は、常に抵抗R1及びR2を介して、電源25又はグランド26と電気的に接続した状態となる。
図4Bは、比較例2に係る回転角度検出装置において、回転角に含まれる角度誤差θERRを示す図である。比較例2に係る回転角度検出装置は、コントローラが補正処理の機能を備える点以外は、比較例1に係る回転角度検出装置と同様の構成である。比較例1に係るコントローラは、例えば、既知の抵抗として、抵抗バラツキのTYP条件(TYP条件)を設定する。そして、コントローラは、TYP条件における抵抗R1及び抵抗R2を用いて、オフセット電圧を予め演算する。コントローラは、演算したオフセット電圧と角度誤差との関係をマップ保存することで、補正処理をすることができる。
図4Cは、本実施形態に係る回転角度検出装置において、回転角に含まれる角度誤差θERRを示す図である。
図4A、図4B、図4Cにおいて、点線は、抵抗バラツキMIN条件(MIN条件)での角度誤差θERRを示し、実線は、抵抗バラツキTYP条件(TYP条件)での角度誤差θERRを示し、一転鎖線は、抵抗バラツキMAX条件(MAX条件)での角度誤差θERRを示す。なお、抵抗値のバラツキが最大範囲となる条件を、MAX条件とし、抵抗値のバラツキが最小範囲となる条件を、MIN条件とする。
図4Aに示すように、比較例1では、抵抗R1及び抵抗R2の各条件に応じて、角度誤差θERRが発生している。これは、比較例1における回転角θ’には、上記式(4)で表されるように、オフセット電圧が含まれるからである。
また、図4Bに示すように、比較例2では、TYP条件において、角度誤差は発生していない(角度誤差θERR=0)。これは、比較例2では、TYP条件を既知の抵抗として設定した、上記補正処理を実行しているからである。しかし、TYP条件を既知の抵抗としているため、図4Bに示すように、MIN条件及びMAX条件では、補正処理を実行しても、角度誤差θERRが発生している。
一方、図4Cに示すように、本実施形態の回転角度検出装置では、抵抗がいずれかの条件でばらついたとしても、角度誤差θERRは発生しない。これは、本実施形態の回転角度検出装置では、スイッチSW1〜SW4がオフし、信号線24は電源25及びグランド26と遮断された状態において演算した、回転角θを検出しているためである。
以上のように、本実施形態に係る回転角度検出装置は、回転子50の回転角φに応じた、コサイン信号Vcos及びサイン信号Vsinを出力するレゾルバ20と、信号線24と所定の基準電位(電源25、グランド26)との間に電気的に接続される、直列回路30と、コサイン信号Vcos及びサイン信号Vsinに基づいて回転角θを演算し、かつ、スイッチSW1〜SW4を制御するコントローラ40と、を備える回転角度検出装置である。そして、コントローラ40は、スイッチSW1〜SW4をオフにする第1の期間に演算した、回転角θを検出する。これにより、抵抗R1及び抵抗R2に基づく角度誤差θERRを含まずに、回転角θを検出できる。
また、本実施形態に係る回転角度検出装置において、コントローラ40は、スイッチSW1〜SW4をオンする第2の期間において、回転角θを検出せず、信号線24の電位に基づいて、信号線24の断線を検出する。これにより、角度誤差θERRを含む回転角を検出することなく、信号線24の断線を検出することができる。
≪第2実施形態≫
次に、第2実施形態に係る回転角度検出装置について説明する。図5は、本実施形態に係る回転角度検出装置を示すブロック図である。なお、上述の実施形態と同様の構成には同一の記号を付し、繰り返しの説明は省略して、上述の実施形態においてした説明を援用する。
本実施形態では、上述した第1実施形態に対して、コントローラ140が異常検出部142を備えている点で異なる。また、コントローラ140の制御部143は、第1実施形態の制御部43と異なる機能を備えている。
異常検出部142には、制御部143から出力される指令信号だけでなく、スイッチSW1〜SW4を制御する制御信号が入力される。異常検出部142は、この制御信号に含まれるSW1〜SW4の制御情報を読み取り、信号線24の異常検出を行う。
異常検出部142は、上述した第1実施形態のように、スイッチSW1〜SW4及び信号線24a〜24dをそれぞれ認識するとともに、スイッチSW1〜SW4及び信号線24a〜24dを、それぞれCosコイル22側とSinコイル23側とにまとめて認識する。具体的には、異常検出部142は、スイッチSW1及びスイッチSW2をCosコイル22側のスイッチとして、信号線24a及び信号線24bをCosコイル22側の信号線として認識する。また、異常検出部142は、スイッチSW3及びスイッチSW4をSinコイル23側のスイッチとして、信号線24c及び信号線24dをSinコイル23側の信号線として認識する。
異常検出部142は、制御情報に、Cosコイル22側のスイッチをオフさせ、Sinコイル23側のスイッチをオンさせる情報が含まれている場合、Cosコイル22側の信号線の電圧(コサイン信号Vcos)を測定する。
そして、異常検出部142は、測定した電圧が検出閾値より高い場合、Cosコイル22側の信号線と、Sinコイル23側の信号線に短絡が生じていると検出する。具体的には、異常検出部142は、信号線24aと信号線24cが短絡し、かつ、信号線24bと信号線24dとが短絡した状態であることを検出する。異常検出部142は、回転角度検出装置に異常が生じていると検出した場合には、異常を通知するために、異常を示す信号を制御部143又は他の装置(図示しない)に出力する。
装置内の異常について、上記第1実施形態では、信号線24の断線について説明したが、装置内の異常の他の例として、Cosコイル22側の信号線とSinコイル23側の信号線の短絡が生じた場合について説明する。
ここで、仮に、Cosコイル22側のスイッチがオフすると、短絡異常が生じなければ、Cosコイル22の出力信号(コサイン信号Vcos)には、オフセット電圧VDCは含まれず、コサイン信号Vcosは上記式(6)で表される。また、仮に、Sinコイル23側のスイッチがオンすると、短絡異常が生じなければ、Sinコイル23の出力信号(サイン信号Vsin)には、オフセット電圧は含まれ、サイン信号Vsinは上記式(2)で表される。
上記式(6)と上記式(2)の直流電圧成分について比較すると、サイン信号Vsinはコサイン信号Vcosよりも、オフセット電圧VDCの分だけ高くなる。つまり、短絡異常が生じなければ、Cosコイル22側のスイッチがオフし、Sinコイル23側のスイッチがオンすると、この2つの出力信号には、オフセット電圧VDCの差分が生じる。
しかし、Cosコイル22側の信号線とSinコイル23側の信号線の短絡異常が生じると、信号線24aと信号線24cは同電位となり、かつ、信号線24bと信号線24dは同電位となる。その結果、コサイン信号Vcosには、サイン信号Vsinに含まれる、抵抗R1及び抵抗R2に基づくオフセット電圧VDCが重畳され、コサイン信号Vcosは上記(1)で表される。つまり、上記2つの信号線の短絡後におけるコサイン信号Vcosは、短絡前におけるコサイン信号Vcosと比べて、オフセット電圧VDCの分だけ高い電圧となる。
そのため、異常検出部142は、Cosコイル22側のスイッチをオフさせ、Sinコイル23側のスイッチをオンさせる場合、コサイン信号Vcosを測定し、測定した電圧と検出閾値とを比較することで、Cosコイル22側の信号線とSinコイル23側の信号線の短絡を検出することができる。
例えば、異常検出部142は、測定した電圧が検出閾値よりも高い場合には、Cosコイル22側の信号線とSinコイル23側の信号線の短絡異常が生じたと検出する。異常を検出するための閾値は予め設定されている閾値であり、信号線24の断線検出に用いる閾値と異なる閾値である。異常検出部142は、例えば、抵抗R1及び抵抗R2を既知の抵抗として予めオフセット電圧を演算し、演算したオフセット電圧を検出閾値として設定することができる。なお、異常検出部142は、検出閾値を、適宜設定変更してもよい。
また、異常検出部142は、Cosコイル22側の信号線及びSinコイル23側の信号線のうち、一部の信号線の短絡を検出する。具体的には、異常検出部142は、Cosコイル22側の信号線とSinコイル23側の信号線のうち、電源25と電気的に接続可能な信号線24a及び24cの短絡を検出する。
装置内の異常について、装置内の異常の他の例として、Cosコイル22側の信号線とSinコイル23側の信号線のうち、一部の信号線に短絡が生じた場合について説明する。
Cosコイル22側のスイッチがオフすると、短絡異常が生じなければ、コサイン信号Vcosには、オフセット電圧VDCは含まれない(上記式(6)参照)。また、Sinコイル23側のスイッチがオンすると、短絡異常が生じなければ、サイン信号Vsinには、オフセット電圧VDCが含まれる(上記式(2)参照)。
ここで、Cosコイル22側の信号線とSinコイル23側の信号線のうち、信号線24aと信号線24cの短絡異常が生じると、信号線24aの電位は信号線24cと同電位となる。その結果、コサイン信号Vcosには、サイン信号Vsinから、信号線24cと接続する抵抗R1に基づくオフセット電圧VDC ’が重畳され、コサイン信号Vcosは下記式(11)で表せる。
上記式(6)と上記式(11)とを比較すると、上記2つの信号線のうち、一部の信号線の短絡後におけるコサイン信号Vcosは、短絡前におけるコサイン信号Vcosと比べて、オフセット電圧VDC ’の分だけ高い電圧となる。
また、上記式(12)で表させるように、オフセット電圧VDC ’は、上記式(3)で表されるオフセット電圧VDCとは異なる電圧である。そのため、異常検出部142は、オフセット電圧VDC ’を検出できる閾値を設定することで、信号線24aと信号線24cの短絡を検出することができる。異常検出部142は、例えば、抵抗R1を既知の抵抗として予めオフセット電圧を演算し、演算したオフセット電圧を検出閾値として設定することができる。
さらに、異常検出部142は、Cosコイル22側の信号線とSinコイル23側の信号線のうち、グランド26と電気的に接続可能な信号線24b及び24dの短絡を検出する。
信号線24bと信号線24dの短絡異常が生じると、信号線24bの電位は信号線24dと同電位となる。その結果、コサイン信号V
cosには、サイン信号V
sinから、信号線24dと接続する抵抗R2に基づくオフセット電圧V
DC ’’が重畳される。オフセット電圧V
DC ’’は下記式(12)で表せる。
上記式(13)から、オフセット電圧VDC ’’は、上記式(3)のオフセット電圧VDC、上記式(12)のオフセット電圧VDC’とは異なる電圧である。そのため、異常検出部142は、オフセット電圧VDC ’’を検出できる閾値を設定することで、信号線24bと信号線24dの短絡を検出することができる。異常検出部142は、例えば、抵抗R2を既知の抵抗として予めオフセット電圧を演算し、演算したオフセット電圧を検出閾値として設定することができる。
このように、異常検出部142は、複数の検出閾値を設定することで、Cosコイル22側の信号線とSinコイル23側の信号線の短絡だけでなく、Cosコイル22側の信号線とSinコイル23側のうち、一部の信号線の短絡も検出することができる。
制御部143は、スイッチSW1〜SW4を一斉に制御するだけなく、Cosコイル22側のスイッチと、Sinコイル23側のスイッチを、それぞれ制御する。例えば、図5に示すように、制御部143は、Cosコイル22側のスイッチをオフさせる制御信号と、Sinコイル23側のスイッチをオンさせる制御信号を、同時に出力することができる。なお、制御部143は、Cosコイル22側のスイッチの状態と、Sinコイル23側の状態を入れ替えるように制御することができる。
制御部143は、上述した第1実施形態における第2の期間と、Cosコイル22側のスイッチをオフさせ、Sinコイル23側のスイッチをオンさせる第3の期間を設定する。制御部143は、所定の基準期間から、第2の期間と第3の期間を設定する。第2の期間と第3の期間の設定方法は、上述した第1実施形態と同様の方法とする。なお、設定方法は、第1の実施形態と異なる方法で設定してもよい。
また、制御部143は、設定した第3の期間では、Cosコイル22側のスイッチをオフさせ、Sinコイル23側のスイッチをオンさせ、第2の期間では、スイッチSW1〜SW4をオフさせる。制御部143は、第2の期間終了後、再び第3の期間では、スイッチSW1〜SW4をオフさせ、以降、この繰り返し制御を行うことで、所定の期間毎に、スイッチSW1〜SW4を制御することができる。
さらに、制御部143は、Cosコイル22側のスイッチをオフし、Sinコイル23側のスイッチをオンする第3の期間において、回転角θを検出せず、異常検出部142に異常検出可能の指令信号を出力することで、異常検出部142に装置内の異常(信号線の短絡異常)を検出させる。なお、制御部143は、RD変換部41が第3の期間において回転角θを演算したか否かにかかわらず、第3の期間において、回転角θを検出しない。本実施形態では、RD変換部41は、第3の期間において回転角θを演算しないものとするが、特に限定されない。
次に、図6を参照して、本実施形態における回転角の検出フローについて説明する。図6は、本実施形態における回転角検出処理を示すフローチャートである。なお、以下に説明する回転角検出処理は、コントローラ140により実行される。ステップS201〜S204では、コントローラ140は、回転角θを検出しない。
ステップS201では、コントローラ140は、Cosコイル22側のスイッチをオフする制御信号と、Sinコイル23側のスイッチをオンする制御信号を出力する。例えば、クロック周期から、スイッチSW1〜SW4をオフする第1の期間と、Cosコイル22側のスイッチをオフし、Sinコイル23側のスイッチをオンする第3の期間を設定する。そして、コントローラ140は、第3の期間の開始タイミングをステップS201と設定する。これにより、ステップS201では、Cosコイル22側のスイッチはオフし、Sinコイル23側のスイッチはオンする。
ステップS202では、コントローラ140は、Cosコイル22からの出力信号の電圧(コサイン信号Vcos)を測定する。
ステップS203では、コントローラ140は、Cosコイル22側の信号線とSinコイル23側の信号線の短絡異常を検出する。例えば、コントローラ140は、ステップS202で測定したコサイン信号Vcosが、検出閾値よりも高い場合には、Cosコイル22側の信号線とSinコイル23側の信号線の短絡が生じたとして検出する。信号線の短絡が検出されると、ステップS204へ進み、反対に、信号線の短絡が検出されないと、ステップS205へ進む。なお、ステップS203では、コントローラ140は、回転角θを演算しない。
ステップS204では、コントローラ140は、異常を示す信号を他の装置に出力する。そして、コントローラ140は、回転角検出処理を終了する。これにより、Cosコイル22側の信号線とSinコイル23側の信号線が短絡した状態において演算する、回転角θを検出することを防ぐことができる。
ステップS205〜S207は、上述した第1実施形態におけるステップS104〜S106と同様であるため説明を省略する。
ステップS207が終了すると、ステップS201へ戻り、ステップS201〜ステップS207の回転角検出処理が繰り返し行われる。
以上のように、本実施形態に係る回転角度検出装置において、コントローラ140は、Cosコイル22側のスイッチをオフし、かつ、Sinコイル23側のスイッチをオンする第3の期間において、回転角θを検出しない。また、コントローラ140は、この第3の期間において、Cosコイル22からの出力信号の電圧(コサイン信号Vcos)に基づいて、Cosコイル22側の信号線とSinコイル23側の信号線の短絡を検出する。これにより、Cosコイル22側の信号線とSinコイル23側の信号線の短絡が生じると、コサイン信号Vcosにオフセット電圧VDCが重畳されるため、Cosコイル22側の信号線とSinコイル23側の信号線の短絡を検出することができる。
≪第3実施形態≫
次に、第3実施形態に係る回転角度検出装置について説明する。本実施形態に係る回転角度検出装置は、回転角θを検出しない期間(第2の期間、第3の期間)において、信号線24の断線と、Cosコイル22側の信号線とSinコイル23側の信号線の短絡の2つの異常を検出するコントローラ240(図示しない)を備える。なお、本実施形態では、この点以外は、上述した第1実施形態及び第2実施形態に係る回転角度検出装置と同様であるため、説明を援用する。
コントローラ240は、上述した第1実施形態又は第2実施形態と同様の方法により、第1の期間、第2の期間、及び第3の期間を設定する。コントローラ240は、第2の期間及び第3の期間において、信号線24の断線及びCosコイル22側の信号線とSinコイル23側の信号線の短絡を検出する。コントローラ240は、第2の期間及び第3の期間が経過した後、第1の期間を設定し、回転角θを検出する。
図7を参照して、本実施形態における回転角の検出フローについて説明する。図7は、本実施形態における回転角検出処理を示すフローチャートである。なお、以下に説明する回転角検出処理は、コントローラ240により実行される。コントローラ240は、ステップS301〜S307では、回転角θを検出しない。
以降では、ステップS301〜S310について、上述した第1実施形態における回転角検出処理(ステップS101〜S106)、上述した第2実施形態における回転角検出処理(ステップS201〜S207)で説明した内容を適宜援用する。
ステップS301〜S303は、ステップS101〜S104と同様であるため、説明を省略する。ステップS301〜S303では、コントローラ240により、信号線24の断線の有無が検出される。ステップS302において、信号線24の断線が検出されなければ、ステップS304へ進む。
ステップS304〜S307は、ステップS201〜204と同様であるため、説明を省略する。ステップS304〜S307では、コントローラ240により、Cosコイル22側の信号線とSinコイル23側の信号線の短絡の有無が検出される。ステップS306において、Cosコイル22側の信号線とSinコイル23側の信号線が検出されなければ、ステップS308へ進む。
ステップS308〜S310は、ステップS104〜S106(ステップS205〜S207)と同様であるため、説明を省略する。ステップS310では、コントローラ240により、回転角θの検出が行われる。
以上のように、本実施形態では、コントローラ240は、スイッチSW1〜SW4をオンする第1の期間において、信号線24の断線の有無を検出し、その後、スイッチSW1〜SW4をオフする第2の期間において演算した回転角θを検出する。これにより、信号線24の断線時における回転角θを検出しないため、装置内の異常時における回転角θを検出するのを防ぐことができる。
また、本実施形態では、コントローラ240は、Cosコイル22側のスイッチをオフし、Sinコイル23側のスイッチをオンする第3の期間において、Cosコイル22側の信号線とSinコイル23側の信号線の短絡の有無を検出し、その後、スイッチSW1〜SW4をオフする第2の期間において演算した回転角θを検出する。これにより、Cosコイル22側の信号線とSinコイル23側の信号線の短絡時における回転角θを検出しないため、装置内の異常時における回転角θを検出するのを防ぐことができる。
≪第4実施形態≫
次に、第4実施形態に係る回転角度検出装置について説明する。図8は、本実施形態に係る回転角度検出装置を示すブロック図である。なお、上述の実施形態と同様の構成には同一の記号を付し、繰り返しの説明は省略して、上述の実施形態においてした説明を援用する。
本実施形態では、上述した第1実施形態に対して、コネクタ60を備えている点で異なる。
レゾルバ20と信号線24(信号線24a〜24d)の間はコネクタ60(コネクタ60a、60b)を介して接続されている。図8に示すように、Cosコイル22と信号線24a及び24bを接続するコネクタとしてコネクタ60aが設けられ、Sinコイル23と信号線24c及び24dを接続するコネクタとして設けられている。
コネクタ60は、レゾルバ20とコントローラ40とが互いに異なる機器又は装置の近傍に配置される場合に、レゾルバ20と信号線24とを接続する部品として用いられる。例えば、レゾルバ20が図示しないモータの巻き線の近傍に配置され、コントローラ40が図示しないインバータに配置されることが挙げられる。なお、インバータはモータとの間で電力の授受を行う装置である。
ここで、スイッチSW1、SW2がオンすると、電源25から、抵抗R1、信号線24a、Cosコイル22、信号線24b、及び抵抗R2を通り、グランド26に向かって電流(バイアス電流)が流れる。そのため、図4に示すように、Cosコイル22と信号線24a及び24bをコネクタを介して接続する場合には、コネクタ60aには上記バイアス電流が流れる。同様に、スイッチSW3、SW4がオンすると、コネクタ60bにはバイアス電流が流れる。これらのバイアス電流は、抵抗R1又は抵抗R2の抵抗値の大きさに反比例する。具体的には、抵抗R1又は(及び)抵抗R2の抵抗値が大きい場合に、バイアス電流は小さくなり、抵抗R1又は(及び)抵抗R2の抵抗値が小さい場合に、バイアス電流は大きくなる。
ところで、第1実施形態の説明で用いた比較例に係る回転角度検出装置(スイッチSW1〜SW4を備えていない回転角度検出装置)では、回転角θ’に含まれる角度誤差θERRを小さくするために、抵抗値の大きい抵抗R1及び抵抗R2が使用されている。これは、角度誤差θERRを小さくするには、抵抗R1及び抵抗R2の抵抗値を大きくして、オフセット電圧VDCを小さくすればよいからである(上記式(3)、(5)参照)。
仮に、比較例に係る回転角度検出装置において、レゾルバと信号線の間を接続する部品としてコネクタを用いるとすると、抵抗R1及び抵抗R2の抵抗値が大きいため、コネクタに流れるバイアス電流は小さくなり、コネクタには酸化膜が発生しやすくなる。そこで、比較例では、酸化膜が発生しにくい材質のコネクタを選定する必要があり、その結果、コネクタの選定範囲が狭くなり、回転角度検出装置の設計の自由度が低下する。
一方、本実施形態の回転角度検出装置では、回転角θには抵抗R1及び抵抗R2に基づく角度誤差θERRが含まれないため(上記式(8)参照)、抵抗値の大きい抵抗R1及び抵抗R2を使用する必要はない。そのため、本実施形態の回転検出装置では、抵抗値の小さい抵抗R1及び抵抗R2を使用することができる。抵抗R1及び抵抗R2の抵抗値が小さい場合には、バイアス電流は大きくなり、コネクタ60には酸化膜が発生しにくくなる。これにより、酸化膜の発生を考慮してコネクタの選定範囲を狭くすることなく、コネクタを選定することができる。
以上のように、本実施形態に係る回転角度検出装置において、レゾルバ20と信号線24の間はコネクタ60を介して接続されている。バイアス電流を大きくすることができる本実施形態に係る回転角度検出装置では、酸化膜の発生を考慮してコネクタの選定範囲を狭くすることなく、コネクタを選定することができ、これにより、回転角度検出装置の設計の自由度を向上させることができる。
なお、以上に説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
例えば、上述した実施形態では、クロックを所定の基準期間として、第1の期間〜第3の期間を設定する構成を例示したが、これに限定されない。コントローラは、回転角度検出装置の外部に設置された装置(その他制御装置)から出力される信号を受信する機能を備え、この出力信号を所定の基準期間として、第1の期間、第2の期間及び第3の期間を設定する構成にしてもよい。これにより、回転角度検出装置は、その他制御装置が回転角θを必要とするタイミングに基づいて、角度誤差を含まない回転角θを検出することができる。
また、例えば、上述した実施形態では、信号線24a、24cが接続可能な基準電位はともに電源25の構成を例示したが、これに限定されず、2つの信号線で異なる電圧の電源であってもよい。同様に、信号線24c、24dが接続可能な基準電位はともにグランド26の構成を例示したが、これに限定されず、所定の電圧を有する電源であってもよい。
さらに、例えば、上述した第2実施形態では、Cosコイル22側のスイッチをオフさせ、Sinコイル23側のスイッチをオンさせて、コサイン信号Vcosを測定する。そして、測定した電圧と検出閾値とを比較することで、Cosコイル22側の信号線とSinコイル23側の信号線の短絡異常を検出する構成を例示したが、これに限定されない。例えば、Cosコイル22側のスイッチをオンさせ、Sinコイル23側のスイッチをオフさせて、サイン信号Vsinを測定し、測定した電圧と検出閾値とを比較する構成にしてもよい。
また、例えば、上述した第3実施形態では、コントローラ240は、回転角検出処理として、信号線24の断線の有無を判定してから、Cosコイル22側の信号線とSinコイル23側の信号線の短絡の有無を判定し、いずれの異常も検出されなければ、回転角θを検出する構成を例示したが、これに限定されない。例えば、Cosコイル22側の信号線とSinコイル23側の信号線の短絡の有無を判定してから、信号線24の断線の有無を判定し、いずれの異常も検出されなければ、回転角θを検出してもよい。また、第1の期間、第2の期間及び第3の期間、それぞれの期間を自由に組み合わせるとともに、その順番を自由に変更する構成にしてもよい。
上記の回転子50は本発明の回転体に相当し、上記のコサイン信号Vcos及びサイン信号Vsinは本発明の回転角信号に相当し、上記の信号線24は本発明の信号線に相当し、本発明の電源25及びグランド26は本発明の所定の基準電位に相当し、上記のスイッチSW1〜SW4は本発明のスイッチング素子に相当し、上記の直列回路30は本発明の直列回路に相当し、上記の回転角θは本発明の回転角度に相当し、上記のコントローラ40、140、240は本発明の制御器に相当する。また、上記のCosコイル22は本発明の第1のコイルに相当し、上記のSinコイル23は本発明の第2のコイルに相当し、上記のCosコイル22側の信号線は本発明の第1の信号線に相当し、上記のSinコイル23側の信号線は本発明の第2の信号線に相当し、上記のCosコイル22側のスイッチは本発明の第1のスイッチング素子に相当し、上記のSinコイル23側のスイッチは本発明の第2のスイッチング素子に相当する。