JP6860591B2 - 歯科用組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、特定の重合性化合物を含む重合性歯科用組成物に関する。更に本発明は、歯科用組成物を調製するための特定の重合性化合物の使用方法に関する。本発明の重合性化合物は、従来の(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド及びアリルエーテルと共重合性多官能性重合性モノマーであり、低粘度で生体適合性に優れた歯科用組成物を提供する。
重合性化合物を含有する重合性歯科用組成物が知られている。従来、重合性歯科用組成物は、広範囲の用途に提供されており、したがって、多様な要件を満たさなければならない。例えば、重合性歯科用組成物は、歯科用接着剤組成物、結合剤、小窩裂溝封鎖材、歯科用減感作用組成物、パルプキャッピング組成物、歯科用複合材、歯科用グラスアイオノマーセメント、歯科用セメント、又は歯科用根管シーラー組成物、又は歯科用インフィルトラントを含む。
典型的には、(メタ)アクリレートは、ΔH=−80〜−120kJ/molの範囲の重合エンタルピーに基づいて示され得るラジカル重合における優れた反応性のため、重合性歯科用組成物中の重合性成分として使用される。架橋能を付与するために、多官能性(メタ)アクリレート、例えばビス−GMAが、早くも1962年に歯科用用途に使用された。
欧州特許出願公開第2895138A1号は、必要に応じて炭素−炭素二重結合を含むが、アルキレン基内の炭素−炭素二重結合の位置を一般的に定義するものではない、二価のC〜C20アルキレン基の形態のリンカー基を有するN−置換アクリル酸アミド化合物を含む重合性歯科用組成物を開示している。欧州特許出願公開第2895138A1号は、このような重合性化合物、即ちN,N’−ジアリル−1,4−ビスアクリルアミド−(2E)−ブタ−2−エン(BAABE)の一例を開示しているに過ぎない。更に、欧州特許出願公開第2895138A1号の重合性化合物は、重合性(メタ)アクリルアミド基の窒素原子に結合するアリル基を含み、アリル基は、有利なシクロ重合反応を提供することが教示されている。
出願番号EP15178515及びEP15188969を有する欧州特許出願は、第54条(3)EPCに従って従来技術を示し、2つのN−置換アクリル酸アミド基がリンカーを介して結合している重合性化合物を含んでいてもよい重合性歯科用組成物を開示する。該リンカーは、C〜C12又はC18アルケニレン基を表していてもよく、該アルケニレンリンカー基における炭素−炭素二重結合の位置は一般に定義されていない。該アルケニレンリンカーを有する重合性化合物の具体例として、欧州特許第15178515号及び欧州特許第15188969号には、N,N’−ジアリル−1,4−ビスアクリルアミド−(2E)−ブタ−2−エン(BAABE)が開示されている。
本発明の課題は、従来の(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、及びアリルエーテルと共重合可能であり、好ましい重合エンタルピー、低粘度、及び優れた生体適合性を有する特定の重合性化合物を含む重合性歯科用組成物を提供することである。
本発明は、
(a) 下記の式(I):
X’−L−X”
(I)
[式中、
X’は下記式(II)又は(III):
Figure 0006860591

Figure 0006860591

{式中、
点線は
二重結合又は三重結合を表し、三重結合が存在する場合には、R及びRは存在せず;
ギザギザの線は、式(II)及び(III)が任意の(E)又は(Z)異性体を含むことを示し、
Z’及びZ”は同一でも異なっていてもよく、互いに独立して酸素原子、硫黄原子、又は>N−Rを表し、ここで、
Rは水素原子、アルコキシ基若しくは酸性基で置換されていてもよい、直鎖状、分枝状、若しくは環状のアルキル基若しくはアルケニル基、又は下記式(IV):
Figure 0006860591

(式中、
ギザギザの線は、式(IV)が任意の(E)又は(Z)異性体を含むことを示し、
11及びR12は、
同一でも異なっていてもよく、互いに独立して水素原子、又はアルコキシ基若しくは酸性基で置換されていてもよい、直鎖状、分枝状、若しくは環状のアルキル基若しくはアルケニル基を表し;
13及びR14は、
同一でも異なっていてもよく、互いに独立して水素原子、若しくはアルコキシ基若しくは酸性基で置換されていてもよい、直鎖状、分枝状、若しくは環状のアルキル基若しくはアルケニル基を表し、又はR13及びR14は共に、隣接する炭素原子と共に互いに結合してカルボニル基を形成する酸素原子を表す)の基であり;
及びRは、
同一でも異なっていてもよく、互いに独立して水素原子、又はヒドロキシル基、アルコキシ基、及び酸性基からなる群から選択される少なくとも1つの基で置換されていてもよい、直鎖状、分枝状、若しくは環状のアルキル基若しくはアルケニル基を表し;
は、水素原子、又はアルコキシ基若しくは酸性基で置換されていてもよい、直鎖状、分枝状、若しくは環状のアルキル基若しくはアルケニル基を表し;
及びRは、
同一でも異なっていてもよく、互いに独立して水素原子、又はアルコキシ基若しくは酸性基で置換されていてもよい、直鎖状、分枝状、若しくは環状のアルキル基若しくはアルケニル基を表し;
は、水素原子、又はアルコキシ基で置換されていてもよい、直鎖状、分枝状、若しくは環状のアルキル基若しくはアルケニル基を表す}の基を表し、
X”は、ヒドロキシル基、チオール基、アルコキシ基、及び酸性基からなる群から選択される基、又は以下の式(V)又は(VI);
Figure 0006860591

Figure 0006860591

(式中、
ギザギザの線は、式(V)が任意の(E)又は(Z)異性体を含むことを示し、
及びZ**同一でも異なっていてもよく、互いに独立して酸素原子、硫黄原子又は>N−R’を表し、
ここで、R’は、水素原子、アルコキシ基若しくは酸性基で置換されていてもよい、直鎖状、分枝状、若しくは環状のアルキル基若しくはアルケニル基を表し、又はR’は、互いに独立して、Rについて定義された式(IV)の基であり;
及びRは、
同一でも異なっていてもよく、互いに独立して水素原子、ヒドロキシル基、チオール基、アルコキシ基、及び酸性基からなる群から選択される少なくとも1つの部分で置換されていてもよい、直鎖状、分枝状、又は環状のアルキル基若しくはアルケニル基を表し;
は、水素原子、又はアルコキシ基若しくは酸性基で置換されていてもよい、直鎖状、分枝状、若しくは環状のアルキル基若しくはアルケニル基を表し;
10は、水素原子、又はアルコキシ基で置換されていてもよい、直鎖状、分枝状、若しくは環状のアルキル基若しくはアルケニル基を表し;
あるいは、
、R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R’、並びに存在する場合にはR11、R12、R13、及びR14のうちの任意の2つの残基は共に、アルコキシ基、酸性基、又は−NR基で置換されていてもよいアルキレン基若しくはアルケニレン基を表すことができ、ここで、R及びRが互いに独立して水素原子若しくはアルキル基を表し;又は、
ジェミナル基でもビシナル基でもないR、R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R’、並びに存在する場合にはR11、R12、R13、及びR14のうちの任意の2つの残基は共に単結合を表し、
該単結合又は該置換されていてもよいアルキレン基若しくはアルケニレン基は、残基が結合する架橋原子と共に3〜8員の飽和又は不飽和環を形成してもよく、
式(I)の重合性化合物が、該3〜8員の飽和又は不飽和環のうちの1つ又は複数を含んでいてもよい)の基を表し、
Lは存在していても存在しなくてもよく、存在する場合、二価のリンカー基を表し、存在しない場合、X’及びX”は、単結合によって直接結合される]の重合性化合物と、
(b) 光増感剤と、
(c) ヨードニウム塩と、を含む重合性歯科用組成物を提供する。
本発明はまた、歯科用組成物の調製のための式(I)の重合性化合物の使用方法を提供する。
本発明は、式(I)の重合性化合物が、従来の(メタ)アクリレート、(メタ)アシルアミド及びアリルエーテルの重合エンタルピーに匹敵する又はそれより良い重合エンタルピーを有するという認識に基づいている。更に、本発明は、式(I)の化合物の粘度が、歯科用組成物の分野において典型的に用いられる(メタ)アクリレートの範囲内にあるという認識に基づいている。更に、式(I)の重合性化合物は有利な最大重合速度及び望ましい機械的特性、例えば曲げ強さを提供する。
図1は、(Ib)及び(Ic)で示される本発明による式(I)の化合物並びに比較化合物(C1)、(C2)及び(C3)について20℃で測定したパラメータ屈折率(RI)(n 20)及び23℃で測定した粘度η(η23℃)の棒グラフを示す。化合物(Ib)はN,N’−ビスアクリロイル−N,N’−ビスアリル−2,4−ペンタ−2−エンジアミンであり、化合物(Ic)はN,N’−ビスアクリロイル−N,N’−ビスプロピル−1,4−ブタ−2−エンジアミンである。比較化合物(C1)はN,N’−ビスアセチル−N,N’−ビスアリル−1,4−ブタ−2−エンジアミンであり、(C2)はN,N’−ビスアクリロイル−N,N’−ビスアリル−1,4−ブタンジアミンであり、C(3)はN,N’−ビスアクリロイル−N,N’−ビスプロピル−1,4−ブタンジアミンである。図1において、RIは濃い灰色のバーで示され、粘度ηは明るい灰色の斜線バーで示される。比較化合物(C1)については、この化合物は固体であるので、粘度ηは測定されなかった(「*」で示される)。 図2は、重合エンタルピー(ΔH)の棒グラフを示す。 図3は、最大熱流(tmax)の時間の、即ち最高重合速度に達するのに要した時間の棒グラフを示す。式(Ib)、(Ic)の化合物、又は比較化合物(C1)、(C2)、若しくは(C3)、0.22〜0.35モル%の安定剤、光増感剤として0.3重量%のカンファーキノン(CQ)、及び共開始剤としての0.4重量%の4−(ジメチルアミノ)安息香酸エチルエステル(DMABE)をそれぞれ含有する組成物についてΔH及びtmaxの両方を測定した。式(C1)の化合物について、ΔH及びtmaxは検出されなかった(「*」で示される)。 図4は、図3の硬化組成物について測定されたE弾性率及び曲げ強度(FS)の棒グラフを示す。図4において、E弾性率は濃い灰色のバーで示され、曲げ強度(FS)は明るい灰色の斜線バーで示される。式(C3)及び(C1)の化合物について、E弾性率及び曲げ強度は、予備試験の失敗のために測定されなかった(「*」で示す)。 図5〜9は、式(Ib)(図5参照)及び(Ic)(図6参照)、並びに比較化合物(C2)(図7参照)、(C3)(図8参照)、及び(C1)(図9参照)に示される化合物の重合前後のFT−IRスペクトルを示す。図5〜9のそれぞれにおいて、重合前に下のスペクトルが記録され、重合後に上のスペクトルが記録される。 同上。 同上。 同上。 同上。
「重合」及び「重合性」という用語は、多数のより小さい分子、例えばモノマーの共有結合によって化合させて、より大きな分子、即ち、巨大分子又はポリマーを形成することに関する。モノマーを化合させると、単に直鎖状の巨大分子が形成することができるか、又は、それらを化合させると一般に架橋ポリマーと呼ばれる三次元の巨大分子が形成することができる。例えば、単官能性モノマーは直鎖状ポリマーを形成するが、少なくとも2つの官能基を有するモノマーはネットワークとしても知られている架橋ポリマーを形成する。重合性モノマーの変換率がより高い場合には、多官能性モノマーの量が減り、即ち、浸出問題が軽減され得る。
本明細書で使用する「(E)又は(Z)異性体」という用語は、一般式(II)、(III)、(IV)及び(V)において、結合する置換基がギザギザの線の形で表され、(E)又は(Z)配置であることができることを意味する。(E)又は(Z)配置は以下のように決定される。第一に、順位は、有機化学の分野において十分に定義された意味を有するCahn−Ingold−Prelog順位則に従って、炭素−炭素二重結合に結合する全ての置換基に割り当てられる。第二に、結合がギザギザの線の形で示されている置換基の配置は、炭素−炭素二重結合の炭素原子に隣接して位置する置換基に対して決定される。例えば、結合がギザギザの線の形で示されている置換基は、(E)位置に、即ち、炭素−炭素二重結合の炭素に隣接して位置する置換基に対して反対の二重結合の側(trans配置)にあることができ、そこで最も高い順位を有する。あるいは、結合がギザギザの線の形で示されている置換基は、(Z)位置に、即ち、炭素−炭素二重結合の炭素に隣接して位置する置換基と同じ二重結合側(cis配置)にあることができ、そこで最も高い順位を有する。
「硬化」及び「光硬化」という用語は、架橋ポリマーネットワークへの官能性オリゴマー及びモノマー、又は更にはポリマーの重合を意味する。硬化は、架橋剤の存在下における不飽和モノマー又はオリゴマーの重合である。
「化学線」は、光化学的に作用することができる、少なくとも150nmから1250nm以下の、典型的には少なくとも300nmから750nm以下の波長を有し得る、任意の電磁放射線である。
「光増感剤」という用語は、例えば、光化学プロセスにおいて、光に被曝することにより、又は共開始剤との相互作用により活性化される場合、フリーラジカルを形成する任意の化学物質である。
「共開始剤」という用語は、別の分子へと化学変化を生じさせる分子、例えば光化学プロセスでの光増感剤を指す。共開始剤は、光増感剤又は電子供与体であってもよい。
本明細書で使用する「電子供与体」という用語は、光化学プロセスにおいて電子を供与することができる化合物を意味する。適切な例としては、孤立電子対を有するヘテロ原子を有する有機化合物、例えばアミン化合物が挙げられる。
本発明は、ラジカル重合によって重合性又は共重合性である重合性歯科用組成物を提供する。重合性歯科用組成物は、口腔内で使用される歯科用材料であることができる。好ましくは、本発明の重合性歯科用組成物は、歯科用接着剤、歯科用プライマー、歯科用樹脂改質グラスアイオノマーセメント、小窩裂溝封鎖材、歯科用複合材、又は歯科用流動性材から選択される。歯科用組成物は、化学線の照射によって硬化され得る。
式(I)の重合性化合物:
本発明の重合性歯科用組成物は、式(I)の重合性化合物を含む。重合性歯科用組成物は、1つ又は複数の式(I)の重合性化合物を含むことができる。
本発明の重合性歯科用組成物は、重合性歯科用組成物の総重量に基づいて1〜70重量%の量の式(I)の重合性化合物を含む。好ましくは、重合性歯科用組成物は、すべての重合性歯科用組成物の総重量に基づいて10〜60重量%の、最も好ましくは20〜60重量%の量の1つ又は複数の式(I)の化合物を含む。
式(I)の化合物の量は、意図する使用目的を考慮して適宜選択することができる。例えば、歯科用接着剤は、すべての重合性歯科用組成物の総重量に基づいて1〜70重量%、好ましくは20〜60重量%を構成することができる。歯科用プライマーは、すべての重合性歯科用組成物の総重量に基づいて1〜70重量%、好ましくは5〜25重量%を構成することができる。小窩裂溝封鎖材は、すべての重合性歯科用組成物の総重量に基づいて1〜70重量%、好ましくは5〜20重量%を構成することができる。歯科用グラスアイオノマーセメントは、すべての重合性歯科用組成物の総重量に基づいて1〜30重量%、好ましくは2〜10重量%を構成することができる。
重合性化合物は下記の式(I):
X’−L−X”
(I)、を有する。
式(I)において、X’は二価のリンカー基Lによって基X”に結合する特定の重合性基である。基X”は重合性であることができる。
本発明によれば、X’は下記の式(II)又は(III):
Figure 0006860591

Figure 0006860591

の基である。
式(II)及び(III)において、点線は二重結合又は三重結合、好ましくは二重結合を表す。三重結合が存在する場合、R及びRは存在しない。
ギザギザの線は、式(II)及び(III)が任意の(E)又は(Z)異性体を含むことを示す。式(III)中の点線が三重結合を表す場合、CR=CR基には(E)異性体も(Z)異性体も存在しない。
具体的には、式(II)及び(III)において、Rは、例えばカルボニル基に対して(E)又は(Z)配置であることができる。更に、CRとCRとの間の結合が二重結合である場合、ギザギザの線/線は、例えば−CHR−基に対して、(E)又は(Z)配置であることができる。好ましくは、Rは、Cahn−Ingold−Prelog順位則に従う最も順位が高い炭素−炭素二重結合の炭素原子に隣接する、R又はカルボニル基のいずれかである置換基に対して(E)配置である。更に、CRとCRとの間の結合が二重結合である場合、ギザギザの線/結合によって炭素−炭素二重結合に結合する置換基は、置換基Rよりも順位が高く、Cahn−Ingold−Prelog順位則に従う最も順位の高い炭素−炭素二重結合の炭素原子に隣接する置換基に対して、ギザギザの線/結合は(E)配置であり、この置換基はR又はCHR−基であることが好ましい。
したがって、式(I)のいずれかの化合物は、式(II)及び/若しくは(V)の(メタ)アクリル基、又は式(III)及び/若しくは(VI)の反転(メタ)アクリル基、並びに隣接基−CHR−の水素原子にC−H酸性度を付与する二重若しくは三重結合であることを特徴とする。理論に束縛されることを望まないが、(反転)(メタ)アクリル基の重合性C−C二重結合と組み合わせたこのC−H酸性度は、式(I)の化合物の特に有利な重合エンタルピー及び粘度を提供すると考えられる。更に、上記のC−H酸性度により、式(I)の化合物は有利な最大重合速度及び望ましい機械的特性、例えば曲げ強度を提供する。
C−H酸性度は、内部及び外部のN−アリル基によって損なわれる可能性がある。驚くべきことに、例えばCR及びCRと共に表される二重結合又は三重結合がZ’=N−RとZ=N−R’との間に位置する場合、基−CHR−の水素原子のC−H酸性度は、内部及び外部N−アリル基により障害を起こしにくいことが見出された。したがって、本発明の式(I)において、有利なCH−酸性度をもたらすために、上記の二重又は三重結合は、N−R及びZ=N−Rを表す場合、N−アリル基を形成し得るZとZとの間に位置する。
先行技術の欧州特許出願公開第2895138A1号では、上記のC−H酸性度の効果が認められなかったので、重合性化合物のリンカー中のC−C二重結合の位置に関する一般的な教示はない。代わりに、欧州特許出願公開第2895138A1号は、有利な環化重合反応を可能にするために、アリル基が重合性(メタ)アクリルアミド単位の窒素に必ず結合しなければならないことを教示する。
式(II)及び(III)のR及びRは、同一でも異なっていてもよく、互いに独立して水素原子、又は、ヒドロキシル基、アルコキシ基、及び酸性基からなる群から選択される少なくとも1つの基で置換されていてもよい、直鎖状、分枝状、若しくは環状のアルキル基若しくはアルケニル基を表す。
式(II)及び(III)のRは、水素原子、又は、アルコキシ基若しくは酸性基で置換されていてもよい、直鎖状、分枝状、若しくは環状のアルキル基若しくはアルケニル基を表す。
式(II)及び(III)のR及びRは、同一でも異なっていてもよく、互いに独立して水素原子、又は、アルコキシ基若しくは酸性基で置換されていてもよい、直鎖状、分枝状、若しくは環状のアルキル基若しくはアルケニル基を表す。
式(II)及び(III)のRは、水素原子、又は、アルコキシ基で置換されていてもよい、直鎖状、分枝状、若しくは環状のアルキル基若しくはアルケニル基を表す。
Z’及びZ”は、同一でも異なっていてもよく、互いに独立して酸素原子、硫黄原子、又は>N−Rを表し、ここでRは水素原子、アルコキシ基若しくは酸性基で置換されていてもよい、直鎖状、分枝状、又は環状の、アルキル基若しくはアルケニル基である。あるいは、Rは以下の式(IV):
Figure 0006860591

の基である。
好ましくは、Z’及び/又はZ”は>N−Rを表し、Rは式(IV)の基、最も好ましくは式(IV)の基を表し、ここでR11、R12、R13、及びR14は水素原子を表し、即ち基(IV)は非置換アリル基である。なぜならば、式(IV)の該基又はアリル基は、以下のスキーム1による環化重合反応における式(II)の(メタ)アクリル基又は式(III)の反転(メタ)アクリル基の重合性炭素−炭素二重結合と共に互いに結合し得るからである。
Figure 0006860591

スキーム1:式(I)の化合物の分子内環化重合、(X’=式(II)の基、式(II)中、Z’=>N−Rであり、R=式(IV)の基R、ここで、R11、R12、R13、R14=水素原子)
上記の環化重合による環の形成を、例えば、赤外分光法(IR)のみにより又は更なる分析方法、例えば核磁気共鳴分光法(NMR)と組み合わせて確認することができる。
N−アリルアクリルアミドの分子内環化重合は化学の分野で知られており、例えば、L.Trossarelliらにより、「Free Radical Polymerization of Unconjugated Dienes:III.N−Allylacrylamide in Methanol」, Die Makromolekulare Chemie,1967,vol100、147〜155ページに、又は、W.Fukudaによる「Cyclopolymerization of N−Alkyl−N−allylacrylamides」,Polymer Journal,1988,vol.20, no.4、337〜344ページに記載されている。
理論に束縛されることを望まないが、上記の環化重合により、減少した数の高分子網目点が形成し、即ち、式(IV)の基のようなアルキレン基の形態の基Rを持たない式(I)の化合物と比較して、架橋密度の低下をもたらし得る。同様に、このことは、同一モル質量及び同一量の重合性二重結合を有するが、基Z’を待たない及び/又はZ”が>N−R(ここでRは式(IV)の基、具体的にはアリル基を表す)である式(I)の同等の化合物と比較して、重合ストレスの減少をもたらし得る。
ギザギザの線は、式(IV)が任意の(E)又は(Z)異性体を含むことを示す。具体的には、R11は、例えばCR1314基に対して(Z)又は(E)配置であってもよい。好ましくは、R11は、Cahn−Ingold−Prelog順位則に従う最も順位が高い炭素−炭素二重結合の炭素原子に隣接する、R12又はCR1314基のいずれかであってもよい置換基に対して(E)配置である。
式(IV)のR11及びR12は、同一でも異なっていてもよく、互いに独立して水素原子、又は、アルコキシ基若しくは酸性基で置換されていてもよい、直鎖状、分枝状、若しくは環状のアルキル基若しくはアルケニル基を表す。
式(IV)のR13及びR14は、同一でも異なっていてもよく、互いに独立して水素原子、又は、アルコキシ基若しくは酸性基で置換されていてもよい、直鎖状、分枝状、若しくは環状のアルキル基若しくはアルケニル基を表す。あるいは、式(IV)のR13とR14は共に、隣接する炭素原子と共に互いに結合してカルボニル基を形成する酸素原子を表す。
式(I)において、X”は、ヒドロキシル基、チオール基、アルコキシ基、及び酸性基からなる群から選択される基、又は以下の式(V)又は(VI):
Figure 0006860591

Figure 0006860591

の基を表す。
ギザギザの線は、式(V)が任意の(E)又は(Z)異性体を含むことを示す。具体的には、式(V)において、Rは、Cahn−Ingold−Prelog順位則に従う最も順位が高い炭素−炭素二重結合の炭素原子に隣接する、R又はカルボニル基のいずれかであってもよい置換基に対して(Z)又は(E)配置である。
式(V)及び(VI)のR及びRは、同一でも異なっていてもよく、互いに独立して水素原子、又は、ヒドロキシル基、チオール基、アルコキシ基、及び酸性基からなる群から選択される少なくとも1つの基で置換されていてもよい、直鎖状、分枝状、若しくは環状のアルキル基若しくはアルケニル基を表す。
式(V)及び(VI)のRは、水素原子、又は、アルコキシ基若しくは酸性基で置換されていてもよい、直鎖状、分枝状、若しくは環状のアルキル基若しくはアルケニル基を表す。
式(V)及び(VI)のR10は、水素原子、又は、アルコキシ基で置換されていてもよい、直鎖状、分枝状、若しくは環状のアルキル基若しくはアルケニル基を表す。
式(V)及び(VI)のZ及びZ**は、同一でも異なっていてもよく、互いに独立して酸素原子、硫黄原子、又は>N−R’を表し、ここでR’は水素原子、アルコキシ基若しくは酸性基で置換されていてもよい、直鎖状、分枝状、若しくは環状のアルキル基若しくはアルケニル基である。あるいは、R’は、式(II)及び(III)のZ’及びZ”のRについて定義された式(IV)の基であり、式(II)及び(III)のZ’及びZ”のRから互いに独立して選択される。好ましくは、式(V)及び(VI)のR’の式(IV)は、式(II)及び式(III)のRの式(IV)と同一である。
好ましくは、Z及び/又はZ**は>N−R’を表し、ここでR’は式(IV)の基、最も好ましくは、式(IV)の基を表し、ここでR11、R12、R13、及びR14は水素原子を表し、即ち基(IV)は、非置換アリル基である。なぜならば、式(IV)の該基又はアリル基は、Z’及びZ”と結合する上記の環化重合反応における式(IV)のメタクリル基又は式(V)の反転メタクリル基の重合性炭素−炭素二重結合と共に互いに結合してもよいからである。
Z’及びZ”について定義される「>N−R」及び「>N−R’」基は、第三級アミン基を意味し、残基R又はR’は、式(II)、(III)、(V)、及び(VI)に組み込まれる窒素原子に、「>」によって示される2つの結合/原子価を介して結合する。あるいは、「>N−R」及び「>N−R’」の代わりに、「−N(−R)−」及び「−N(−R’)−」の表記を用いてもよい。
式(II)及び(III)のR、R、R、R、R、R、R、R11、R12、R13、R14、並びに式(V)及び(VI)のR、R、R、R10、R11、R12、R13、R14、R’の「直鎖、分枝、又は環状アルキル基若しくはアルケニル基」は、特に限定されない。この「直鎖状、分枝状、又は環状の、アルキル基若しくはアルケニル基」は、好ましくは、直鎖状のC1−16、若しくは分枝状若しくは環状のC3−8アルキル基、又は直鎖状のC2−16、若しくは分枝状若しくは環状のC3−8アルケニル基を表し、更に好ましくは、直鎖状のC1−8、若しくは分枝状若しくは環状のC3−6アルキル基、又は直鎖状のC2−8、若しくは分枝状若しくは環状のC3−6アルケニル基を表し、最も好ましくは、直鎖状のC1−4、若しくは分枝状若しくは環状のC4−6アルキル基、又は直鎖状のC2−4、若しくは分枝状若しくは環状のC4−6アルケニル基を表す。
直鎖又は分枝アルキル基の実例は、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、sec−ブチル、ペンチル又はヘキシルであり、直鎖又は分枝アルケニル基の実例は、エテニル、n−プロペニル、i−プロペニル、n−ブテニル、イソブテニル、tert−ブテニル、sec−ブテニル、ペンテニル又はヘキセニルである。
式(II)及び(III)のR、R、R、R、R、R、R、R11、R12、R13、R14、並びに式(V)及び(VI)のR、R、R、R10、R11、R12、R13、R14、R’に関連して本明細書で使用する「アルケニル」という用語は、上で定義された炭素数を有する炭化水素から誘導される一価の基を意味する。このアルケニル基は、好ましくは、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合、より好ましくは1〜3つの炭素−炭素二重結合、更により好ましくは1又は2つの炭素−炭素二重結合、最も好ましくは1つの炭素−炭素結合を含む。更に、アルケニル基の少なくとも1つの炭素−炭素二重結合は、アルケニル基を式(I)の化合物に結合させる第1の炭素に隣接する第2の炭素原子と第3の炭素原子との間に位置することが好ましい。
同一でも異なってもよい、式(II)及び(III)のR、R、R、R、R、R、R、R11、R12、R13、R14、並びに式(V)及び(VI)のR、R、R、R10、R11、R12、R13、R14、R’の最も好ましいアルケニル基は、アリル、1シクロプロパン−1−イル、2−シクロプロパン−1−イル、1−シクロブタン−1−イル、2−シクロブタン−1−イル、1−シクロペンタン−1−イル、2−シクロペンタン−1−イル、3−シクロペンタン−1−イル、1,3−シクロペンタジエン−1−イル、2,4−シクロペンタジエン−1−イル、1−シクロシエン(cycloxene)−1−イル、2−シクロシエン−1−イル、3−シクロシエン−1−イル、1,3−シクロヘキサジエン−1−イル、2,5−シクロヘキサジエン−1−イルからなる群から互いに独立して選択される。
式(II)及び(III)のR、R、R、R、R、R、R、R11、R12、R13、R14、並びに式(V)及び(VI)のR、R、R、R10、R11、R12、R13、R14、R’について定義される「アルコキシ基」は、特に限定されない。該アルコキシ基は、好ましくは直鎖状のC1−16、又は分枝状若しくは環状のC3−8アルコキシ基、より好ましくは直鎖状のC1−8、又は分枝状若しくは環状のC3−6アルコキシ基、最も好ましくは直鎖状のC1−4、又は分枝状若しくは環状のC4−6アルコキシ基である。C1−6アルコキシ基の実例は、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロピルオキシ、シクロプロピルオキシ、シクロブチルオキシ、シクロペンチルオキシ及びシクロヘキシルオキシである。
式(II)及び(III)のR、R、R、R、R、R、R、R11、R12、R13、R14、並びに式(V)及び(VI)のR、R、R、R10、R11、R12、R13、R14、R’に関連して本明細書で使用する「酸性基」という用語は、式(I)の化合物へのプロトン供与能力の点で酸性度を付与する任意の基を意味する。好ましくは、この酸性基は、カルボン酸基、スルホン酸基、ホスホン酸基及びリン酸モノエステル基(−O−P(=O)(OH))から互いに独立して選択される。
以下は、式(II)及び(III)の好ましい基であり、式中、R及びRは、上記のように定義される:
Figure 0006860591
式(IIa)、(IIb)、(IIc)、(IId)、(IIe)、(IIf)、(IIIa)、(IIIb)、(IIIc)、(IIId)において、R3は好ましくは水素原子であり、及びRは、好ましくは水素原子、必要に応じて酸性基、アリル、2−シクロプロパン−1−イル、2−シクロブタン−1−イル、2−シクロペンタン−1−イル、2,4−シクロペンタジエン−1−イル、2−シクロシエン−1−イル、及び2,5−シクロヘキサジエン−1−イルで置換されていてもよいメチル、エチル、又はn−プロピル基を表す。
式(IIa)及び(IIIa)の基が特に好ましい。
以下は、式(V)及び(VI)の好ましい基であり、式中、R’及びR9は、上記のように定義される:
Figure 0006860591
式(Va)、(Vb)、(Vc)、(Vd)、(Ve)、(Vf)、(VIa)、(VIb)、(VIc)、(VId)において、Rは好ましくは水素原子であり、及びR’は、好ましくは水素原子、必要に応じて酸性基、アリル、1−シクロプロペン−3−イル、1−シクロブテン−3−イル、1−シクロペンテン−3−イル、1,3−シクロペンタジエン−5−イル、1−シクロシエン−3−イル、及び1,4−シクロヘキサジエン−6−イルで置換されていてもよいメチル、エチル、又はn−プロピル基を表す。
式(Va)及び(VIa)の基が特に好ましい。
好ましくは、式(I)の化合物のX’が式(II)の基を表す場合、X”は式(V)の基を表し、X’が式(III)の基を表す場合、X”は式(VI)の基を表す。
式(II)及び(III)のR、並びに/又は式(V)及び(VI)のR’におけるR13及びR14は、共に酸素原子を表し、隣接する炭素原子と共に互いに結合してカルボニル基を形成することが好ましい。
式(I)において、残基R、R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R’、R11、R12、R13及びR14についての上記定義とは別に、これらの残基のうちの任意の2つは、残基が結合する架橋原子と共に互いに結合して環を形成してもよい。具体的には、R、R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R’、及び存在する場合にはR11、R12、R13、及びR14のうちの任意の2つの残基は共に、アルコキシ基、及び酸性基又は−NR基(ここで、R及びRが互いに独立して水素原子若しくはアルキル基を表す)で置換されていてもよいアルキレン基若しくはアルケニレン基を表すことができる。
あるいは、ジェミナル基でもビシナル基でもない、R、R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R’、及び存在する場合にはR11、R12、R13、及びR14のうちの任意の2つの残基は共に、単結合を表すことができる。
上記単結合又は上記必要に応じて置換されてもいてもよいアルキレン基若しくはアルケニレン基は共に、残基が結合する架橋原子共に互いに結合して、3〜8員の飽和又は不飽和環を形成してもよく、式(I)の重合性化合物は、該3〜8員の飽和又は不飽和環のうちの1つ又は複数を含んでいてもよい。
残基R、R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R’、R11、R12、R13、及びR14のうちの任意の2つの上記環の形成と共に、これらの残基のうちの2つによって形成されるアルキレン基又はアルケニレン基が置換されていてもよい「アルコキシ基」は、好ましくはC1−6のアルコキシ基であり、より好ましくはC1−3アルコキシ基、例えばメトキシ、エトキシ、n−又はイソ−プロポキシ基であり、「−NR基」の「アルキル基」は好ましくはC1−6アルキル基であり、より好ましくはC1−3アルキル基、例えばメチル、エチル、n−又はイソプロピル基である。
本明細書で使用する「存在する場合にはR11、R12、R13、及びR14」という語句は、Z’又はZ”が>N−Rを表し、Rが式(IV)である場合、及び/又はZ又はZ**が>N−R’を表し、R’が式(IV)である場合、式(IV)の残基R11、R12、R13、及びR14は、R、R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R’のいずれか1つで上記のように環を形成してもよい。しかし、式(IV)で表されるRは、それ自体で、即ちその残基R11、R12、R13及びR14と共に環を形成することができないことは容易に理解される。このことは、式(IV)で表されるR’にも同様にあてはまる。
本明細書で使用する「ジェミナル基」という用語は、2つの残基が同じ原子に結合していることを意味する。
本明細書で使用する「ビシナル基」という用語は、2つの残基が隣接する原子にそれぞれ結合していることを意味する。
好ましくは、式(I)の化合物の式(II)又は(III)において、R、R、R、R、R、R、Rの任意の2つの残基は共に、それらが結合する架橋原子と共に互いに結合して、3〜8員の飽和又は不飽和環を形成するアルキレン基又はアルケニレン基を表し、アルキレン基又はアルケニレン基は、アルコキシ基、酸性基、又は−NR基(ここで、R及びRが互いに独立して水素原子若しくはアルキル基を表す)で置換されていてもよい。
同様に、式(I)の化合物の式(V)又は(VI)については、R、R、R、R10、R’の任意の2つの残基は共に、それらが結合する架橋原子と共に互いに結合して、3〜8員の飽和又は不飽和環を形成するアルキレン基又はアルケニレン基を表すことが好ましく、アルキレン基又はアルケニレン基は、アルコキシ、酸性基、又は−NR基(ここで、R及びRは、互いに独立して、水素原子又はアルキル基を表す)で置換されていてもよい。
式(II)又は(III)、及び式(V)又は(VI)の上記好ましい環形成の他に、ジェミナル基でもビシナル基でもない残基は共に、残基が結合する架橋原子と共に互いに結合して3〜8員の飽和又は不飽和環を形成する単結合を表してもよい。具体的には、Z’の残基R、R、R、及びRのうちのいずれか1つと結合する残基R、R、若しくはR、ZのR若しくはR’と結合する残基R、R、若しくはR10、又は残基RとR、RとR、R11とR13若しくはR14は、それらが結合する架橋原子と共に互いに結合して、3〜8員の飽和又は不飽和環を形成する単結合を形成してもよい。
より好ましくは、式(I)において、1つ又は複数の環が式(II)/(III)及び/又は式(V)/(VI)内に形成され、1つの環が式(II)又は(III)において形成され、1つの環が式(V)又は(VI)において形成されることが好ましい。具体的には、式(II)若しくは(III)のR、R、R、R、R、R、Rのうちの任意の2つの残基、及び/又は式(V)若しくは(VI)のR、R、R、R10、R’のうちの任意の2つの残基は共に、それらが結合する架橋原子と共に互いに結合して、3〜8員の飽和又は不飽和環を形成するアルキレン基又はアルケニレン基を表してもよく、アルキレン基又はアルケニレン基は、アルコキシ基、酸性基、又は−NR基(ここで、R及びRが互いに独立して水素原子若しくはアルキル基を表す)で置換されていてもよい。
更に、式(II)/(III)、及び式(V)/(VI)の上記のより好ましい環形成の代わりに又はそれに加えて、環は式(II)/(III)の残基と、式(V)/(VI)の残基との間で形成されてもよい。具体的には、残基R、R、又はRは、Z’の残基R、R、R、及びRのうちのいずれか1つと共に、単結合又は上記のような必要に応じて置換されていてもよいアルキレン基若しくはアルケニレン基を表し、該残基は、それらが結合する架橋原子と共に互いに結合して、3〜8員の飽和又は不飽和環を形成する。
式(I)の化合物において、Lは存在しても存在しなくてもよい。Lが存在する場合、Lは二価のリンカー基を表し、Lが存在しない場合、X’及びX”は単結合によって直接結合する。
好ましくは、Lは、下記式(VII)の基である。
Figure 0006860591
式(VII)において、m、n、及びoは、同一であっても異なっていてもよく、0〜3の整数であり、pは0、1、又は2である。好ましくは、pは0又は1である。更に、nは0であることが好ましい。m及びoについては、m又はoが0であることが好ましい。好ましくは、式(VII)において、mは0であり、nは0又は1であり、oは0〜3であり、より好ましくはmは0であり、nは0又は1であり、oは0又は1である。最も好ましくは、式(VII)において、m=n=o=0、即ちLは存在せず、X’及びX”は単結合によって直接結合されている。
例えば、スキーム2に示す合成経路によって、式(I)の化合物を容易に調製することができる。
Figure 0006860591

スキーム2:式(1)の化合物を調製するための例示的な合成経路
スキーム1において、合成経路が、式(I)の化合物の調製のために例示されているが、X’は、式(II)を表し、ここでR、R、R、R、及びRは水素原子であり、X”は式(V)の基を表し、ここでR、R、及びRが水素原子であり、R’とRは同一であり、そしてLは単結合である。X及びX’は、例えばハロゲン、例えばCl、Br、I、アルコキシ、ヒドロキシル、アルキル−又はアリールスルホン酸エステル、例えばメシラート、トシレート及びトリフレートであってもよい適切な脱離基を表し、X”はハロゲン原子、例えばCl、Br、Iであってもよい。水素原子を表す基R、R、R、R、R、R、R、及びRの代わりに、これらの基は変えられて水素原子以外の残基、即ち該基について上記で定義された基などを表すこともできると考えられている。更に、RがRとは異なり、及び/又はRがRと異なり、及び/又はRがR’と異なる式(I)の化合物を得るためには、脱離基X及びX’のうちの1つは、脱離基X及びX’の一方を適切に保護してもよいし、異なる反応性を有する2つの脱離基X及びX’を提供してもよい。次に、式HN−Rの第1のアミン化合物と第1の(メタ)アクリル酸誘導体X”−C(=O)−CR=CHRとのその後の反応の後、保護された脱離基X又はX’は脱保護されていてもよく、あるいは、反応性の低い、実質的に未反応の脱離基X又はX’を式HN−R’の第2アミン化合物及び第2の(メタ)アクリル酸誘導体X”−C(=O)−CR=CHRと反応させる。(必要に応じて)保護された脱離基X又はX’の保護基又は異なる反応性を有する保護基は、特に限定されず、例えばP.G.M.Wuts及びT.W.Greeneによる「Greene’s Protective Groups in Organic Synthesis,4th Edition,John Wiley and Sons Inc.,2007」に記載される任意の従来の保護基であってもよい。
式(I)の化合物において、Lは単結合を表し、CRとCRとの間の点線は二重結合を表し、X’は式(II)の基を表しX”は式(V)の基を表し、又はX’は式(III)の基を表しX”は式(VI)の基を表すことが、特に好ましい。更に、このような式(I)の化合物において、Zは基N−Rを表し、Z’は基N−R’を表すことが好ましい。
最も好ましくは、式(I)の化合物において、式(II)及び(III)のR、R、R、R、R、R、R11、R12、R13、R14、Z’、Z”の選択は、式(V)及び(VI)のR、R、R、R10、R11、R12、R13、R14、Z、Z**の選択と同一である。
好ましくは、残基RとR及び/又は残基R’とR5は共に単結合を表し、アルキレン基又はアルケニレン基はそれらが結合する架橋原子と共に互いに結合して、3〜6員の飽和又は不飽和環を形成する。この環は、1H−アジリン−1,3−ジイル、1−アゼチン−1,3−ジイル、1−ピロリン−1,4−ジイル、1−ピロリン−1,4−ジイル、2−ピロリン−1,4−ジイル、1,2−ジヒドロピリジン−1,5−ジイル、2,3−ジヒドロピリジン−1,5−ジイル、又は3,4−ジヒドロピリジン−1,5−ジイルであり、より好ましくは、1−ピロリン−1,4−ジイル、2−ピロリン−1,4−ジイル、1,2−ジヒドロピリジン−1,5−ジイル、2,3−ジヒドロピリジン−1,5−ジイル、又は3,4−ジヒドロピリジン−1,5−ジイルの形態であることができる。好ましい環は、1−ピロリン−1,4−ジイル、1−ピロリン−1,4−ジイル、2−ピロリン−1,4−ジイル、1,2−ジヒドロピリジン−1,5−ジイル、2,3−ジヒドロピリジン−1,5−ジイル、又は3,4−ジヒドロピリジン−1,5−ジイルであり、より好ましくは1−ピロリン−1,4−ジイル、2−ピロリン−1,4−ジイル、1,2−ジヒドロピリジン−1,5−ジイル、2,3−ジヒドロピリジン−1,5−ジイル、又は3,4−ジヒドロピリジン−1,5−ジイルの形態の4〜6員の飽和又は不飽和環の形態である。最も好ましいのは、3,4−ジヒドロピリジン−1,5−ジイルである。更に、残基RとR、並びに残基R’とRがそれらが結合する架橋原子と共に結合して形成する環は同一であることが好ましい。
式(I)の残基RとR、及び/又は残基R’とRの上記環形成とは別に、残基RとR、又は残基RとRは共に、単結合を表し、アルキレン又はアルケニレン基は、それらが結合する架橋原子と共に互いに結合して、3〜8員の飽和又は不飽和環を形成することができ、ここで、1つ又は2つの炭素−炭素二重結合を有する3〜6員の不飽和環が形成されることが好ましい。好ましくは、残基RとR、又は残基RとRは、単結合又はアルキレン基若しくはアルケニレン基を表すLと共に互いに結合して、シクロブテン−ジイル、シクロペンテン−ジイル、シクロヘキセン−ジイル、及びシクロヘキサジエン−ジイルからなる群から選択される不飽和環を形成し、RとRはまた、シクロプロペン−ジイルの形態で3員環を形成することができる。
残基RとR、残基R’とR、残基RとR、残基RとRの上記環形成とは別に又はこれらに加えて、存在する場合には、R11、R12、R13、及び14のうちの任意の2つの残基が環を形成してもよい。好ましくは、R11は、R13又はR14と共に互いに結合して、単結合、又はそれらが結合する架橋原子と共に互いに結合して、3〜8員の飽和若しくは不飽和環を形成するアルキレン若しくはアルケニレン基を表すことができ、ここで、1つ又は2つの炭素−炭素二重結合を有する3〜6員の飽和又は不飽和環が形成されることが好ましい。最も好ましくは、R11は、R13又はR14と共に互いに結合して、それらが結合する架橋原子と共に、1−シクロプロペン−3−イル、1−シクロブテン−3−イル、1−シクロペンテン−3−イル、1,3−シクロペンタジエン−5−イル、1−シクロシエン−3−イル、及び1,4−シクロヘキサジエン−6−イルを形成する。
例えば、式(1)の化合物は、以下の構造式を有してもよく、ここで、R、R、R、R10、R、R’、Z’、Z”、Z、Z**及びOは上記で定義された同じ意味を有する:
Figure 0006860591

Figure 0006860591
好ましくは、式(I)の化合物は、以下の構造式を有する:
Figure 0006860591
より好ましくは、式(I)の化合物は、以下の構造式を有し:
Figure 0006860591

、最も好ましくは、
Figure 0006860591

を有する。
好ましくは、下記式(I)の重合性化合物は、1.500〜1.580の範囲の屈折率を有する。
本発明による歯科用組成物は、下記式(A)のアクリル酸アミド化合物を含有しないことが好ましく:
Figure 0006860591

式中、R、R**、R、及びR◆◆は同一でも異なっていてもよく、互いに独立して水素原子、又は直鎖状、分枝状、若しくは環状の、酸性基で置換されていてもよいアルキル基を表し、R及びR##は、同一でも異なっていてもよく、互いに独立して水素原子、又は、酸性基で置換されていてもよい、直鎖状、分枝状、若しくは環状のアルキル若しくはアルケニル基を表し、好ましくは、R及びR##のうちの少なくとも1つはアルケニル基、より好ましくはアリル基であり、Rは、アルケニレン基、好ましくはC〜C20アルケニレン基、より好ましくはC〜C20アルケニレン基の形態の二価のリンカーを表し、炭素−炭素二重結合は、第1の炭素原子が式(A)の化合物の窒素原子のいずれか1つに結合するアルケニレン基の第2の炭素原子と第3の炭素原子との間に位置する。
最も好ましくは、本発明による歯科用組成物は、以下の構造式
Figure 0006860591

を有するN,N’−ジアリル−1,4−ビスアクリルアミド−(2E)−ブタ−2−エン(BAABE)及び/又はN,N’−ジアリル−1,4−ビスメタクリルアミド−(2E)−ブタ−2−エンの形態の式(A)の化合物を含有しない。
(b)光増感剤
本発明による重合性歯科用組成物は、(b)光増感剤を更に含む。重合性歯科用組成物は、(b)1つ又は複数の光増感剤を含むことができる。光増感剤はヨードニウム塩とは異なる。
光増感剤は、特に限定されない。好ましくは、光増感剤を、ノリッシュI型光増感剤及びノリッシュII型光増感剤から選択することができる。
ノリッシュI型光増感剤は、エネルギー吸収により励起され、その後化合物が1つ又は複数のラジカルに分解する化合物である(ノリッシュI型)。典型的なノリッシュI型増感剤は、例えばホスフィンオキシドである。
ノリッシュII型光増感剤は、励起され、励起された光増感剤化合物は、エネルギー移動又は酸化還元反応のいずれかによって第2の化合物と相互作用して、いずれかの化合物からフリーラジカルを形成する化合物である。典型的なノリッシュII型増感剤は、ジケトン、例えば1,2−ジケトンである。
光増感剤は、1,2−ジケトン、ホスフィンオキシド、及びアシルシラン又はアシルゲルマニウム化合物から選択することができる。
好適なホスフィンオキシド光増感剤は、好ましくは、2,4−6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルホスフィンオキシド(Irgacure(登録商標)TPO)、2,4−6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルホスフィネート(Irgacure(登録商標)TPO−L,TPO−L)、ビス(2,4−6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシド(Irgacure(登録商標)BAPO−X)からなる群から選択される。好ましくは、ホスフィンオキシド光増感剤は、2,4−6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルホスフィンオキシド(Irgacure(登録商標)TPO)である。
好適な1,2−ジケトンの例は、好ましくは、カンファーキノン、ベンジル、2,2’−、3,3’−及び4,4’−ジヒドロキシベンジル、2,3−ブタンジオン、2,3−ペンタンジオン、2,3−ヘキサンジオン、3,4−ヘキサンジオン、2,3−ヘプタンジオン、3,4−ヘプタンジオン、2,3−オクタンジオン、4,5−オクタンジオンフリル、ビアセチル、1,2−シクロヘキサンジオン、1,2−ナフタキノン、及びアセナフタキノンからなる群から選択される。好適な1,3−ジケトンの例は、ジベンゾイルメタン、ベンゾイルアセトン、及びアセチルプロピオニルメタンである。好ましくは、ジケトン光増感剤はカンファーキノンである。
更に、光増感剤は、以下の式(VIII)を有するアシルシラン又はアシルゲルマニウム化合物によってもよい。
R#
(VIII)
[式中、
は、以下の式(IX)の基である:
Figure 0006860591

(式中、
MはSi又はGe;
15は、置換又は非置換ヒドロカルビル又はヒドロカルビルカルボニル基を表す;
16は、置換又は非置換ヒドロカルビル又はヒドロカルビルカルボニル基を表す;
17は、置換又は非置換ヒドロカルビル基を表す);
は、(i)Xと同じ意味を有し、これにより式(VIII)の化合物は対称又は非対称であってもよい;又は
(ii) 以下の式(X)の基である;
Figure 0006860591

(式中、
18は、置換又は非置換ヒドロカルビル基、トリヒドロカルビルシリル基、モノ(ヒドロカルビルカルボニル)ジヒドロカルビルシリル基、又はジ(ヒドロカルビルカルボニル)モノヒドロカルビルシリル基を表し、
Yは、単結合、酸素原子、又は基NR19を表し、ここでR19は置換又は非置換ヒドロカルビル基を表す);
又は
(iii) MがSiである場合、Rは置換又は非置換ヒドロカルビル基であってもよい)]
驚くべきことに、式(VIII)の化合物は、歯科用組成物に特に好適な重合開始剤をであることが見出された。式(VIII)の化合物では、高い重合効率が達成され、着色の問題が生じず、又は従来の光増感剤、例えばカンファーキノンを含む重合系では、着色が効果的に抑制される。更に、式(VIII)の化合物は、歯科適用において典型的に適用される波長範囲内で光吸収を有し、それらは歯科用組成物の成分と適合性があり、更に生理学的に無害であると考えられている。
式(VIII)の化合物に関連して、本明細書で使用する「置換された」という用語は、R15、R16、R17、R18、及びR19が、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシ基、アミノ基、C1−6アルキル基、C1−6アルコキシ基、及び−NR基(ここで、R及びRは互いに独立してC1−6アルキル基を表す)からなる群から選択される置換基で置換されていてもよいことを意味する。ここで、ハロゲン原子の例は、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素であることができる。C1−6アルキル基は、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、及びn−ブチル基である。C1−6アルコキシ基の例は、例えば、メトキシ、エトキシ、及びプロポキシ基である。これらの置換基におけるアルキル基は、直鎖状、分枝状、又は環状であってもよい。好ましくは、置換基は、塩素原子、ニトロ基、C1−4アルコキシ基及び−NR基(ここで、R及びRは互いに独立してC1−4アルキル基を表す)から選択される。
15、R16及びR17が置換される場合、それらは1〜3個の置換基、より好ましくは1個の置換基で置換されることが好ましい。
式(VIII)の化合物において、基R15、R16、及びR17は、以下のように定義され得る:
15及びR16は、互いに独立して、置換又は非置換ヒドロカルビル又はヒドロカルビルカルボニル基を表し、R18は、置換又は非置換ヒドロカルビル基を表す。
19はR17について定義された同じ意味を有し、互いに独立してそれから選択される。
ヒドロカルビル基は、アルキル基、シクロアルキル基、シクロアルキルアルキル基、アリールアルキル基、又はアリール基であってもよい。
アルキル基は、直鎖又は分枝状C1−20アルキル基、典型的にはC1−8アルキル基であってもよい。C1−6アルキル基の例としては、1〜6個の炭素原子、好ましくは、1〜4個の炭素原子を有する直鎖又は分枝アルキル基、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、及びn−ヘキシルを挙げることができる。
シクロアルキル基は、C3−20シクロアルキル基、典型的にはC3−8シクロアルキル基であってもよい。シクロアルキル基の例としては、3〜6個の炭素原子を有する基、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル及びシクロヘキシルを挙げることができる。
シクロアルキルアルキル基は、4〜20個の炭素原子を有し、1〜6個の炭素原子を有する直鎖又は分枝アルキル基と3〜14個の炭素原子を有するシクロアルキル基との組み合わせを含むことができる。シクロアルキルアルキル(−)基の例としては、例えば、メチルシクロプロピル(−)メチルシクロブチル(−)、メチルシクロペンチル(−)、メチルシクロヘキシル(−)、エチルシクロプロピル(−)、エチルシクロブチル(−)、エチルシクロペンチル(−)、エチルシクロヘキシル(−)、プロピルシクロプロピル(−)、プロピルシクロブチル(−)、プロピルシクロペンチル(−)、プロピルシクロヘキシル(−)を挙げることができる。
アリールアルキル(−)基は、C7−20アリールアルキル(−)基、典型的には、1〜6個の炭素原子を有する直鎖又は分枝アルキル基と6〜10個の炭素原子を有するアリール(−)基との組み合わせであってもよい。アリールアルキル(−)基の具体例は、ベンジル(−)基又はフェニルエチル(−)基である。
アリール基は、6〜10個の炭素原子を有するアリール基を含むことができる。アリール基の例は、フェニル及びナフチルである。
15及びR16のヒドロカルビルカルボニル基は、有機残基Rorgが上記で定義されたヒドロカルビル残基であるアシル基(Rorg−(C=O)−)を表す。
式(VIII)の化合物は、1個又は2個のヒドロカルビルカルボニル基を含んでもよく、即ちR15又はR16のいずれか一方がヒドロカルビルカルボニル基であるか、又はR15及びR16の両方がヒドロカルビルカルボニル基である。好ましくは、式(VIII)の化合物は、1個のヒドロカルビルカルボニル基を含む。
好ましくは、ヒドロカルビルカルボニル基はアリールカルボニル基であり、より好ましくはベンゾイル基である。
好ましくは、R15及びR16は、直鎖又は分枝状C1−6アルキル基、及びフェニル又はベンゾイル基からなる群から互いに独立して選択され、これらの基は、ハロゲン原子、ニトロ基、C1−4アルコキシ基及び−NR基から選択される1〜3個の置換基で必要に応じて置換されていてもよく、ここでR及びRは互いに独立してC1−4アルキル基を表し、R17は直鎖又は分枝状C1−6アルキル基又はフェニル基を表す。
最も好ましくは、R15及びR16は、直鎖又は分枝状C1−4アルキル基、及びフェニル又はベンゾイル基からなる群から互いに独立して選択され、これらの基は、ハロゲン原子、ニトロ基、C1−4アルコキシ基及び−NR基からなる群から選択される1個の置換基で必要に応じて置換されていてもよく、ここでR及びRは互いに独立してC1−4アルキル基を表し、R17は直鎖又は分枝状C1−4アルキル基を表す。
式(VIII)の化合物において、RはXと同じ意味を有してもよく、それにより式(VIII)の化合物は対称又は非対称であってもよい。あるいは、Rは、置換又は非置換ヒドロカルビル基、又は式(X)の基を表してもよい。好ましくは、RがXと同じ意味を有する場合、式(VIII)の化合物は非対称である。Rが置換又は非置換ヒドロカルビル基を表す場合、ヒドロカルビル基は、R15について上記で定義されたものと同じ意味を有し、及びそれから互いに独立して選択される。
式(VIII)の化合物の式(X)の基において、R18は、置換又は非置換ヒドロカルビル基、トリヒドロカルビルシリル基、モノ(ヒドロカルビルカルボニル)ジヒドロカルビルシリル基、又はジ(ヒドロカルビルカルボニル)モノヒドロカルビルシリル基を表す。
式(X)のR18がトリヒドロカルビルシリル基、モノ(ヒドロカルビルカルボニル)−ジヒドロカルビルシリル基、又はジ(ヒドロカルビルカルボニル)モノヒドロカルビルシリル基である場合、ヒドロカルビル及びヒドロカルビルカルボニル基の各々は、R15、R16及びR17について定義されたものと同じ意味を有し、及びそれらから互いに独立して選択される。
式(VIII)の化合物においてMがSiである場合、Rはまた、置換又は非置換ヒドロカルビル基であってもよく、ここで、ヒドロカルビル基は、R17について上記で定義されたものと同じ意味を有し、及びそれから互いに独立して選択される。
例えば、RがXと同じ意味を有し、かつ対称である式(VIII)の化合物は、以下の構造式を有することができる:
Figure 0006860591
例えば、Rが式(X)(ここでYは結合、酸素原子、又はNR19基であり、及びR18は置換若しくは非置換ヒドロカルビル基である)の基を表す式(VIII)の化合物は、以下の構造式を有することができる:
Figure 0006860591
例えば、Rが式(X)の基を表し、R18がトリヒドロカルビルシリル基を表す式(VIII)の化合物は、以下の構造式を有する:
Figure 0006860591
例えば、MがSiであり、Rが置換又は非置換ヒドロカルビル基を表す式(VIII)の化合物は、以下の構造式を有することができる:
Figure 0006860591
好ましくは、式(VIII)の化合物は、
Figure 0006860591

からなる群から選択され、ここで、M=Siである式(VIII)の化合物が特に好ましい。
最も好ましくは、式(VIII)の化合物は、
Figure 0006860591

からなる群から選択され、ここで、特に好ましくは、M=Siである。
式(VIII)の化合物は、市販されているか、又は公表された手順に従って調製され得る既知の化合物であることができる。
MがSiであり、及びRが置換又は非置換ヒドロカルビル基を表す式(VIII)の化合物は、例えば、Yamamoto K.ら,J.Tetrahedron Lett.,1980,vol.21,1653〜1656ページに記載されているように、例えばジシランとの1段階Pd触媒反応によって容易に調製されることができる。
Figure 0006860591

スキーム3 アシルシランの調製
スキーム3において、ジシランとしてヘキサメチルシランを用いる反応が、例示的に示されており、反応によりR15、R16、及びR17がメチル基を表す式(VIII)の化合物が得られる。メチル以外の炭化水素置換基を有するジシランを用いることにより、R15、R16、及びR17を変えることができると考えられている。
が式(X)の基を表し、式中、Yが酸素原子であり、R18がヒドロカルビル基を表す式(VIII)の化合物は、例えば、Org.Synth.,2008,85,278−286ページにNicewicz D.A.らにより説明される三段階合成により調製されることができる。この3段階合成では、アセトアセテートがアジド化合物に変換され、そしてアジド化合物をトリヒドロカルビルシリルトリフルオロメタン−スルホネートと反応させてトリヒドロカルビルシリルジアゾアセテートを得て、これを最後にペルオキシ一硫酸カリウムと反応させて目的化合物に到達する:
Figure 0006860591

スキーム4 シリルグリオキシレートの調製
スキーム4において、この反応は、式(VIII)(式中、基(X)のR18はtert−ブチルの形態でヒドロカルビル基を表す)の化合物を得るために例示的に示されている。tert−ブチルアセトアセテート以外のアセトアセテートを用いることにより、R18を変えることができると考えられている。
あるいは、MがSiであり、Rが式(X)の基を表し、Yが酸素原子を表す式(VIII)の化合物は、J.Am.Chem.Soc.,2005,127(17),6170〜6171ページにNicewicz D.A.により説明されるZnI及びEtNの存在下でシリルグリオキシレート、末端アルキン、及びアルデヒドのワンポット3成分カップリング反応(a single−pot three−component coupling reaction)により調製されることができる。シリルグリオキシレート化合物の更なる合成は、例えばJ.Org.Chem.,2012,77(10),4503〜4515ページ、Boyce G.R.ら、及びOrg.Lett.,2012,14(2),652〜655ページにBoyce G.R.らにより説明されている。
例えば、式(VIII)の以下の化合物が知られており、市販されており、それらのケミカルアブストラクト(CAS)No.は括弧内に記載されている:ベンゾイルトリフェニルシラン(1171−49−9)、ベンゾイルトリメチルシラン(5908−41−8)、1−[(トリメチルシリル)カルボニル]−ナフタレン(88313−80−8)、1−メトキシ−2−[(トリメチルシリル)−カルボニル]−ベンゼン(107325−71−3)、(4−クロロベンゾイル)(トリフェニル)シラン(1172−90−3)、(4−ニトロベンゾイル)(トリフェニル)シラン(1176−24−5)、(メチルジフェニルシリル)フェニル−メタノン(18666−54−1)、(4−メトキシベンゾイル)トリフェニルシラン(1174−56−7)、及びtert−ブチル(tert−ブチルジメチルシリル)グリオキシレート(852447−17−7)。
式(VIII)の全ての化合物は式(IX)の基を含み、
Figure 0006860591

式中、M、R15、R16、及びR17は上記で定義される。Mの選択に応じて、式(IX)の基は、アシルシラン又はアシルゲルマン基を表す。UV−VIS光に被曝すると、Mとアシル基との間の結合は切断され、それによりシリル/ゲルマニル及びアシルラジカルが重合開始構造として形成されるが、ラジカルへの開裂と競合して、カルベン構造が形成され得る:
Figure 0006860591

スキーム5:カルベン形成対ラジカル形成
重合開始ラジカルの形成とカルベン形成との間の競合は、アシルシランについて、Current Trends in Polymer Science,2011,vol.15,1−13ページに、El−Roz,M.らにより説明されている。
更に、RがXと同じ意味を有するか、又はR#が式(X)の基である式(VIII)の化合物の場合、1,2−ジケトン基(−C(=O)−C(=O)−)は、UV−VIS光に曝されると2つのアシルラジカルに開裂され得る。この開裂は、Rが式(X)の基であり、Yが酸素原子である式(VIII)の化合物について、即ちグリオキシルレート(−O−C=O)−C(=O)−)化合物について、例示的に示されている:
Figure 0006860591

スキーム6:グリシレートの−O−C(=O)−C(=O)−基の開裂
更に、式(VIII)の化合物では、Rが、式(X)(式中、Yが酸素原子であり、R18が置換又は非置換ヒドロカルビル基である)の化合物である場合には、ラジカル開裂の第3の可能性がある。即ち、分子内又は分子間の水素引き抜きが起こり、水素ラジカルが抽出される:
Figure 0006860591

スキーム7:水素引き抜き(分子内又は分子間)
グリオキシレート基の開裂と水素引き抜き機構の両方は、ケイ素もゲルマニウムも含まない光増感剤、例えばエチルフェニルグリオキシレート(Irgacure(登録商標)MBF)で知られている。
がXと同じ意味を有するか、又はR#が式(X)の基である式(VIII)の化合物では、本発明者らは分子モデリング計算を実施し、計算から−C(=O)−C(=O)−基のC−C結合はSi−C又はGe−C結合よりも弱いために、Si−C又はGe−C結合の開裂が除外され得ると思われる。
式(VIII)の化合物は光増感剤を表す。具体的には、それらはノリッシュI型光増感剤として作用することができ、したがって、単独で、又は任意の共開始剤と組み合わせて使用されることができる。
好ましくは、光増感剤はカンファーキノン、2,4−6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルホスフィンオキシド(Irgacure(登録商標)TPO)又は式(VIII)の化合物である。最も好ましくは、光増感剤は、式(VIII)の化合物である。
光増感剤は共開始剤としてのヨードニウム塩と共に使用される。ヨードニウム塩の例は、下記式を有する:
Figure 0006860591

式中、同一でも互いに異なっていてもよいR20は、置換されていてもよいアリール基を表し、Yはヘキサフルオロアンチモネート、トリフルオロメチルサルフェート、ヘキサフルオロホスフェート、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロアルセネート、及びテトラフェニルボレートから選択されるアニオンである。ヨードニウム塩において、R20は、好ましくは、ハロゲン原子、シアノ基、水酸基、アミノ基、C1−6アルキル基、及びC1−6アルコキシ基から選択される1〜3個の置換基で置換されていてもよいフェニル基である。置換基としてC1−6アルキル基が好ましい。
特に、(b)光増感剤が上記で定義されたヨードニウム塩と組み合わされる場合、典型的に相乗効果がある。好ましいヨードニウム塩は、下記式:のジアリールヨードニウム塩、例えばジフェニルヨードニウムクロリド、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、
Figure 0006860591

下記式:のジフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、及びトリルクミルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
Figure 0006860591

及び、下記式:のヨードニウム塩を含む。
Figure 0006860591
最も好ましいヨードニウム塩は、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、(4−メチルフェニル)[4−(2−メチルプロピル)フェニル]ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート(BASF SEから市販されている製品、Irgacure(登録商標)250)である。
更なる重合性化合物
式(I)の重合性化合物の他に、本発明の重合性歯科用組成物は、式(I)の化合物以外の重合性二重結合を有する1つ又は複数の重合性化合物を更に含んでもよい。好ましくは、重合性二重結合を有する1つ又は複数の化合物は、それぞれ1つ又は2つのラジカル重合性基を含む。
重合性二重結合を有する更なる化合物は、好ましくは、(メタ)アクリレートの群から選択される。
好適な(メタ)アクリレートは、例えば、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルアクリレート、イソプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、2−プロペン酸2−メチル1,1’−[(1−メチルエチリデン)ビス[4,1−フェニレンオキシ(2−ヒドロキシ−3,1−プロパンジイル)]エステル、別名ビスフェノールAグリセロレートジメタクリレート(「ビス−GMA」、CAS−No.1565−94−2)、4,4,6,16(又は4,6,6,16)−テトラメチル−10,15−ジオキソ−11,14−ジオキサ−2,9−ジアザヘプタデク−16−エン酸2−[(2−メチル−1−オキソ−2−プロぺン−1−イル)オキシ]エチルエステル(CASno.72869−86−4)(UDMA)、グリセロールモノアクリレート及びグリセロールジアクリレート)、グリセロールモノメタクリレート及びグリセロールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート(エチレンオキシド繰り返し単位の数は2〜30で変化する)、ポリエチレングリコールジメタクリレート(エチレンオキシド繰り返し単位の数は2〜30で変化する、特にトリエチレングリコールジメタクリレート(「TEGDMA」)、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトール並びにジペンタエリスリトールのモノアクリレート及びモノメタクリレート、ジアクリレート及びジメタクリレート、トリアクリレート及びトリメタクリレート並びにテトラアクリレート及びテトラメタクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ジ−2−メタクリロイルオキシエチルヘキサメチレンジカルバメート、ジ−2−メタクリロイルオキシエチルトリメチルヘキサンエチレンジカルバメート、ジ−2−メタクリロイルオキシエチルジメチルベンゼンジカルバメート、メチレン−ビス−2−メタクリルオキシエチル−4−シクロヘキシルカルバメート、ジ−2−メタクリルオキシエチル−ジメチルシクロヘキサンジカルバメート、メチレン−ビス−2−メタクリルオキシエチル−4−シクロヘキシルカルバメート、ジ−1−メチル−2−メタクリルオキシエチル−トリメチル−ヘキサメチレンジカルバメート、ジ−1−メチル−2−メタクリルオキシエチル−ジメチルベンゼンジカルバメート、ジ−1−メチル−2−メタクリルオキシエチル−ジメチルシクロヘキサンジカルバメート、メチレン−ビス−1−メチル−2−メタクリルオキシエチル−4−シクロヘキシルカルバメート、ジ−1−クロロメチル−2−メタクリルオキシエチル−ヘキサメチレンジカルバメート、ジ−1−クロロメチル−2−メタクリルオキシエチル−トリメチルヘキサメチレンジカルバメート、ジ−1−クロロメチル−2−メタクリルオキシエチル−ジメチルベンゼンジカルバメート、ジ−1−クロロメチル−2−メタクリルオキシエチル−ジメチルシクロヘキサンジカルバメート、メチレン−ビス−2−メタクリルオキシエチル−4−シクロヘキシルカルバメート、ジ−1−メチル−2−メタクリルオキシエチル−ヘキサメチレンジカルバメート、ジ−1−メチル−2−メタクリルオキシエチル−トリメチルヘキサメチレンジカルバメート、ジ−1−メチル−2−メタクリルオキシエチル−ジメチルベンゼンジカルバメート、ジ−1−メチル−2−メタクリルオキシエチル−ジメチルシクロヘキサンジカルバメート、メチレン−ビス−1−メチル−2−メタクリルオキシエチル−4−シクロヘキシルカルバメート、ジ−1−クロロメチル−2−メタクリルオキシエチル−ヘキサメチレンジカルバメート、ジ−1−クロロメチル−2−メタクリルオキシエチル−トリメチルヘキサメチレンジカルバメート、ジ−1−クロロメチル−2−メタクリルオキシエチル−ジメチルベンゼンジカルバメート、ジ−1−クロロメチル−2−メタクリルオキシエチル−ジメチルシクロヘキサンジカルバメート、メチレン−ビス−1−クロロメチル−2−メタクリルオキシエチル−4−シクロヘキシルカルバメート、2,2’−ビス(4−メタクリルオキシフェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−アクリルオキシフェニル)プロパン、2,2’−ビス[4(2−ヒドロキシ−3−メタクリルオキシ−フェニル)]プロパン、2,2’−ビス[4(2−ヒドロキシ−3−アクリルオキシ−フェニル)]プロパン、2,2’−ビス(4−メタクリルオキシエトキシフェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−アクリルオキシエトキシフェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−メタクリルオキシプロポキシフェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−アクリルオキシプロポキシフェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−メタクリルオキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−アクリルオキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2’−ビス[3(4−フェノキシ)−2−ヒドロキシプロパン−1−メタクリレート]プロパン、並びに2,2’−ビス[3(4−フェノキシ)−2−ヒドロキシプロパン−1−アクリレート]プロパン、から選択されることができ、及び、を挙げることができる。
上記の(メタ)アクリレートの他に、重合性歯科用組成物はまた、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、及びポリオール(メタ)アクリレートを含んでいてもよい。
重合性二重結合を有する化合物の他の好適な例は、イソプロペニルオキサゾリン、ビニルアザラクトン、ビニルピロリドン、スチレン、及びジビニルベンゼンである。
式(I)の1つ又は複数の重合性化合物及び重合性二重結合を有する更なる1つ又は複数の化合物の量は、重合性歯科用組成物全体に対して5〜80重量%、より好ましくは10〜60重量%である。
共開始剤
本発明による重合性歯科用組成物は、光増感剤(b)の光重合効率を向上させるための1つ又は複数の共開始剤を更に含んでいてもよい。
好ましくは、本発明による重合性歯科用組成物は、アミンの形態の共開始剤を含む。歯科用組成物は、1つ又は複数のアミン共開始剤を含んでいてもよい。
アミン共開始剤は、例えば孤立電子対を用いて、光化学プロセスにおいて電子を供与することができる限り、特に限定されない。
好ましくは、アミン共開始剤は、トリアルカノールアミン、4−N,N−ジアルキルアミノベンゾニトリル、アルキルN,N−ジアルキルアミノベンゾエート、アルキルN,N−ジアルキルアミノベンゾエート、N,N−ジアルキルアミノエチルアルキルアクリレート、及びイソアミル4−N,N−ジアルキルアミノベンゾエート、N,N−ジアルキルアニリン、N,N−ジアルキルトルイジン、N,N−ジアルキロールトルイジン、ジアルキルアミノアニソール、1又は2−ジアルキルアミノナフタレンからなる群から選択される第三級アミンである。特に、第三級アミンは、トリエタノールアミン、アルキル4−N,N−ジアルキルアミノベンゾエート、エチル4−N,N−ジアルキルアミノベンゾエート、4−N,N−ジアルキルアミノエチルメタクリレート、イソアミル4−N,N−ジアルキルアミノベンゾエート、及び4,4’−N,N−ビス(ジアルキルアミノ)ベンゾフェノンからなる群から選択される。これらのアミン化合物において、アルキル基は直鎖状、分枝状、又は環状アルキル基を表す。更に、2つ以上のアルキル基が存在するアミン化合物では、アルキル基は同じであっても異なっていてもよく、好ましくは同じである。好ましくは、アルキル基はC1−6アルキル基であり、より好ましくはC1−4アルキル基である。最も好ましくは、アルキル基はメチル又はエチル基である
特に好ましいアミン共開始剤は、トリエタノールアミン、4−N,N−ジメチルアミノベンゾニトリル、メチルN,N−ジメチルアミノベンゾエート、エチルN,N−ジメチルアミノベンゾエート(DMABE)、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート及びイソアミル4−N,N−ジメチルアミノベンゾエート、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジメチルトルイジン、N,N−ジエタノールトルイジン、ジメチルアミノアニソール、1又は2−ジメチルアミノナフタレンからなる群から選択される第三級アミンである。より好ましいアミン共開始剤は、トリエタノールアミン、メチル4−N,N−ジメチルアミノベンゾエート、エチル4−N,N−ジメチルアミノベンゾエート(DMABE)、4−N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、イソアミル4−N,N−ジメチルアミノベンゾエート、及び4,4’−N,N−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノンからなる群から選択される第三級アミンである。最も好ましくは、アミン共開始剤はエチル4−N,N−ジメチルアミノベンゾエート(DMABE)である。
更に、本発明による重合性歯科用組成物は、上記のアミン共開始剤以外の共開始剤を代替的に又は追加的に含んでいてもよい。
例えば、その共開始剤は、アミド、エーテル、チオエーテル、ウレア、チオウレア、フェロセン、スルフィン酸及びそれらの塩、フェロシアニドの塩、アスコルビン酸及びその塩、ジチオカルバミン酸及びその塩、キサントゲン酸の塩、エチレンジアミン四酢酸の塩、及びテトラフェニルボロン酸の塩、シラン、及びゲルマンからなる群より選択され得る。
アミン、シラン、及びゲルマン以外の共開始剤の上記の群から、特にトリヒドロカルビルシラン又はトリヒドロカルビルゲルマンが好ましく、それらの3つのヒドロカルビル基は、式(VIII)の化合物のR15、16、及びR17について定義したのと同じ意味を有する。これらから、トリフェニルシリシウムハイドライド(PhSiH)又はトリフェニルゲルマニウムハイドライド(PhGeH)が好ましく、トリフェニルゲルマニウムハイドライド(PhGeH)が最も好ましい。
更に、(b)光増感剤が式(VIII)のアシルシラン又はアシルゲルマニウム化合物である場合、共開始剤は、式(VIII)の化合物以外の光増感剤、例えば上記のジケトン及びホスフィンオキシド光開始剤であってもよい。このような共開始剤は、例えば、歯科用LEDの発光スペクトルと光開始剤系の吸収とを一致させることを改善するために加えられてもよい。例えば、式(VIII)の化合物が450〜500nmの範囲の光を吸収しないか、又は十分に吸収しない場合、この範囲内に良好な吸収を有する光増感剤を添加することが好ましい。好ましくは、式(VIII)の化合物以外の光増感剤である共開始剤は、1,2又は1,3ジケトン、より好ましくは1,2ジケトン、最も好ましくはカンファーキノンである。
更なる構成成分
必要に応じて、本発明の歯科用組成物は、更なる構成成分、例えば安定剤、溶媒及び/又は微粒子状充填剤を含んでもよい。
歯科用組成物は、1つ又は複数の安定剤を含んでもよい。
本明細書で使用する「安定剤」という用語は、歯科用組成物に含まれる重合性化合物を保存中の自然重合から防ぐことができるあらゆる化合物を意味する。しかし、安定剤は、使用中に歯科用組成物の意図した重合硬化を妨害も防止もしない。
2つの群の安定剤、即ち好気性及び嫌気性安定化剤が知られている。
嫌気性安定化剤は、安定なラジカル、例えば2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシ(TEMPO)、ニトロン又はアルコキシアミンラジカル、フェノチアジン又はガルバノキシルラジカルである。
好気性安定化剤は、ヒドロキノン、ヒドロキノンモノアルキルエーテル、tert−ブチルヒドロキノン、tert−ブチルヒドロキシアニソール、プロピルガレート、及び2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾールからなる群から選択されてもよい。これらの従来の安定化剤から、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾールが好ましい。
好ましくは、安定剤は好気性安定剤であり、より好ましくは下記式(XI)及び/又は(XII)の化合物である:
Figure 0006860591

(式中、
22は、同一でも異なっていてもよく、互いに独立して、分枝状C3−8アルキル基若しくはアルケニル、又はC3−8シクロアルキル若しくはシクロアルケニル基を表し、
23は、C1−6アルキル若しくはC2−6アルケニル基、又はC1−6フルオロアルキル基若しくはC2−6フルオロアルケニル基を表し、
X*は、C1−8アルキル基又はC3−8クロアルキル基から選択される基を表し、
n*は、0、1、又は2である)。
驚くべきことに、式(XI)及び/又は(XII)の安定剤のクラスは、保存時及び/又は光硬化中の変色を完全に回避させる又は少なくとも実質的に回避させることが見出された。特に、このクラスの安定剤は、酸性水溶性混合物中で驚くべき安定化効果を提供する結果、早期重合に対する耐性の向上により保存時に変色が全くないか、又は実質的にない、かつ優れた貯蔵安定性を有する、pHが7未満の歯科用組成物を提供することができる。
より好ましくは、安定剤は、式(XI)及び/又は(XII)の化合物であり、R22は、同一でも異なっていてもよく、互いに独立して、分枝状C3−8アルキル基又はC3−8シクロアルキル基を表し、R23はC1−6アルキル基、又はC1−6フルオロアルキル基を表し、nは0又は1である。更により好ましくは、安定剤は、式(XI)及び/又は(XII)の化合物であり、R22は同一でも異なっていてもよく、互いに独立して分枝状C3−8アルキル基を表し、R23はC1−6アルキル基を表し、nは0である。最も好ましくは、安定剤は、次式(XIa)、(XIb)又は(XIIa)の化合物である:
Figure 0006860591
(式中、R、R○○、R○○○、RΔ、RΔΔ、及びRΔΔΔは、同一でも異なっていてもよい、互いに独立してアルキル又はエチル基を表す)。式(XIa)、(XIb)、又は(XIIa)の安定剤は、次式:
Figure 0006860591

の化合物であり、好ましくはDTBHQであることが特に好ましい。
この安定剤DTBHQは、実験的試験より、この安定剤は変色問題の観点で最良の結果をもたらす、即ち50℃において30日間の貯蔵時に本歯科用組成物に変色が生じない、又はほとんど生じないようなので特に好ましい。
貯蔵時の変色及び/又は光硬化中の変色は、ISO7491:2000(en)に従って測定されることができる。
本発明による歯科用組成物は、安定剤を組成物の総重量に基づいて0.001〜1重量%、好ましくは0.005〜0.8重量%含む。安定剤の量が上記の下限の0.001未満である場合、安定剤の量が少なすぎて安定化効果が得られないため、歯科用組成物の貯蔵安定性が不十分となり得る。しかし、安定剤の量が1重量%の最大閾値を超えると、多量の安定剤は、使用中に歯科用組成物の意図した重合硬化の妨害、又は実質的な抑制になり得るため、歯科用組成物の適用性が悪影響を受けることがある。
更に、本発明による重合性歯科用組成物は、好適な溶媒を含む。これらの好適な溶媒は、水、アルコール、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール(n−、i−)、ブタノール(n−、イソ−、tert−)、ケトン、例えばアセトン等から選択され得る。
本発明の歯科用組成物は、好ましくは、溶媒の組成物の総重量に基づき5〜75重量%を含むことができる。
更に、本発明による重合性歯科用組成物は、好適な微粒子状充填剤を含むことができる。これらの微粒子状充填剤は、歯科用組成物に現在使用されている充填剤から選択されることができる。充填剤は、微細に分割されていなければならず、好ましくは約10μm未満の最大粒子径及び約1μm未満の平均粒子径を有する。充填剤は、単峰性又は多峰性(例えば、二峰性)の粒子径分布を有し得る。
充填剤は無機材料であってもよい。充填剤はまた、重合性樹脂に不溶性であり、所望により無機充填剤で充填される架橋有機材料であってもよい。充填剤は放射線不透過性であることができる。適切な微粒子状無機充填剤の例は、石英、窒化ケイ素のような窒化物、例えばCe、Sb、Sn、Zr、Sr、Ba及びAlから誘導されるガラス、コロイダルシリカ、長石、ホウケイ酸ガラス、カオリン、タルク、チタニア、及び亜鉛ガラスのような天然材料又は合成材料、及び焼成シリカのようなサブミクロンシリカ粒子である。適切な非反応性有機充填剤粒子の例としては、充填又は非充填粉砕ポリカーボネート又はポリエポキシドが挙げられる。好ましくは、充填剤粒子の表面は、充填剤とマトリックスとの間の結合を強化するためにカップリング剤で処理される。適切なカップリング剤の使用としては、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
微粒子状充填剤はまた、1〜70μmまでのメジアン粒子径(D50)を有する複合充填剤粒子を提供するため、
(a) コーティング層を形成する被膜形成剤を含有するコーティング組成物を用いて1〜1200nmのメジアン粒子径(D50)を有する微粒子状充填剤を微粒子状充填剤の表面上にコーティングし、該コーティング層は、該コーティング層の表面上に反応性基を示し、該反応性基は、付加重合性基及び逐次重合性基から選択され、それによりコーティングされた微粒子状充填剤を形成することと、続いて又は同時に、
(b) 必要に応じて更なる架橋剤の存在下で、必要に応じて反応性基を示さない更なる微粒子状充填剤の存在下で、コーティングされた微粒子状充填剤の顆粒を提供するために、コーティングされた微粒子状充填剤を凝集させることと、を含み、顆粒は、微粒子状充填剤粒子、及び少なくとも1つのコーティング層によって互いに分離され、結合された任意の更なる微粒子状充填剤粒子を含み、それにより、少なくとも1つのコーティング層は、反応性基と、必要に応じて更なる架橋剤と反応させることによって得られた架橋性基によって架橋されることができ、方法は、更に、
(c) 必要に応じて、コーティングされた微粒子状充填剤の顆粒を粉砕、分級及び/又はふるい分けすることと、
(d) 必要に応じて、コーティングされた微粒子状充填剤の顆粒を更に架橋することと、
を含む複合充填剤粒子の製造方法であって、反応性基が反応性基と所望により追加の架橋剤の反応により得られた架橋基に変換され、且つ、微粒子状充填剤が欧州特許出願公開第2604247(A)号明細書に更に記載されるように体積ベースで複合充填剤粒子の主成分である製造方法によって得られる充填剤であってもよい。
本発明の歯科用組成物は、好ましくは、微粒子状充填剤の組成物の総重量に基づいて0.1〜85重量%を含み得る。
本発明の歯科用組成物は保存剤、顔料、フリーラジカルスカベンジャー、反応性及び非反応性希釈剤、充填剤の反応性を高めるためのカップリング剤、レオロジー調整剤、及び界面活性剤、を更に含み得る。
好適な保存剤は、還元剤、例えばビタミンC、無機硫化物、及び多硫化物等から選択され得る。
好ましい実施形態
好ましい実施形態によれば、本発明による重合性歯科用組成物は、
(a) 下記の式(I):
X’−L−X”
(I)
[式中、
X’は下記式(II)又は(III):
Figure 0006860591

Figure 0006860591

{式中、
点線は
二重結合又は三重結合、好ましくは二重結合を表し、三重結合が存在する場合には、R及びRは存在せず;
ギザギザの線は、式(II)及び(III)が任意の(E)又は(Z)異性体を含むことを示し、
Z’及びZ”は同一でも異なっていてもよく、互いに独立して酸素原子、又は>N−Rを表し、ここで、
Rは、水素原子、又は酸性基、好ましくはリン酸モノエステル基(−O−P(=O)(OH))で置換されていてもよい、直鎖状C1−4アルキル若しくはC2−4アルケニル基、又は分枝状若しくは環状C3−6アルキル若しくはアルケニル基、又は下記式(IV):
Figure 0006860591

(式中、
ギザギザの線は、式(IV)が任意の(E)又は(Z)異性体を含むことを示し、
好ましくは、Rは式(IV)の基であり、
11は、水素原子、又は直鎖状C1−4アルキル若しくはC2−4アルケニル基、又は分枝状若しくは環状C3−6アルキル若しくはアルケニル基、好ましくは水素原子、又は直鎖状C1−4若しくは分枝状C3−6アルキル基を表し、
12は、水素原子を表し、
13及びR14は、
同一でも異なっていてもよく、それぞれ独立に水素原子、又は直鎖状C1−4アルキル若しくはC2−4アルケニル基、又は分枝状若しくは環状C3−6アルキル若しくはアルケニル基であり、好ましくは水素原子、又は直鎖状C1−4若しくは分枝状C3−6アルキル基であり、又はR13及びR14は共に、隣接する炭素原子と共に互いに結合してカルボニル基を形成する酸素原子を表す)の基であり;
は、水素原子を表し;
は、水素原子、又はヒドロキシル基、C1−6アルコキシ基、及び酸性基からなる群から選択される少なくとも1つの基、好ましくはC1−6アルコキシ基で置換されていてもよい、直鎖状C1−4若しくは分枝状C3−6アルキル基を表し;
は、水素原子、又は直鎖状C1−4アルキル若しくはC2−4アルケニル基、又は分枝状若しくは環状C3−6アルキル若しくはアルケニル基、好ましくは水素原子、又は直鎖状C1−4若しくは分枝状C3−6アルキル基を表し;
及びR は、
同一でも異なっていてもよく、互いに独立して水素原子、又は直鎖状C1−4若しくは分枝状C3−6アルキル基を表し、好ましくはR及びRはそれぞれ水素原子を表し;
は水素原子、又は直鎖状C1−4アルキル若しくはC2−4アルケニル基、又は分枝状若しくは環状C3−6アルキル若しくはアルケニル基を表し、好ましくはC1−6アルコキシ基で置換されていてもよい直鎖状C1−4、又は分枝状若しくは環状C3−6アルキル基を表す}の基を表し、
X”は下記式(V)又は(VI):
Figure 0006860591

Figure 0006860591

{式中、
ギザギザの線は、式(V)が任意の(E)又は(Z)異性体を含むことを示し、
及びZ**は、同一でも異なっていてもよく、互いに独立して酸素原子、又は>N−R’を表し、ここで、
R’はRについて上記で定義したのと同じ意味を有し、好ましくはR’は基(IV)であり;
は、水素原子を表し;
は水素原子、又はヒドロキシル基、チオール基、C1−6アルコキシ基、及び酸性基からなる群から選択される少なくとも1つの基で、好ましくはC1−6アルコキシ基で置換されていてもよい、直鎖状C1−4若しくは分枝状C3−6アルキル基を表し;
は、水素原子、又は直鎖状C1−4アルキル若しくはC2−4アルケニル基、又は分枝状若しくは環状C3−6アルキル若しくはアルケニル基、好ましくは水素原子、又は直鎖状C1−4若しくは分枝状C3−6アルキル基を表し;
10は、水素原子、又は直鎖状C1−4アルキル若しくはC2−4アルケニル基、又は分枝状若しくは環状C3−6アルキル若しくはアルケニル基、好ましくは水素原子、又は直鎖状C1−4若しくは分枝状C3−6アルキル基を表し;
これにより、RとR、及び/又はR11とR13は共に、それらが結合する架橋原子と共に互いに結合して、3〜6員の飽和又は不飽和環を形成するアルキレン又はアルケニレン基を表し;
これにより、RとR’、及び/又はR11とR13は共に、それらが結合する架橋原子と共に互いに結合して、3〜6員の飽和又は不飽和環を形成するアルキレン又はアルケニレン基を表し;
これにより、RとRは、それらが結合する架橋原子と共に互いに結合して、4〜6員の不飽和環を形成するアルキレン又はアルケニレン基を表す)の基を表し、
Lは、存在しても存在しなくてもよく、存在する場合、式(VII):
Figure 0006860591

(式中、mは0であり、nは0又は1であり、oが0又は1であり、pが1であり、Lが存在しない場合、X’及びX”は単結合により直接結合し;好ましくは、Lは単結合である)の二価のリンカー基を表し;
X’が式(II)の基を表し、X”が式(V)の基である場合、及びX’が式(III)の基を表す場合、X”は式(VI)の基である}の重合性化合物と、
(b) 光増感剤と、
(c) ヨードニウム塩と、を含む。
特に好ましい実施形態によれば、本発明による重合性歯科用組成物は、
(a) 下記の式(I):
X’−L−X”
(I)
{式中、
X’は下記式(II)又は(III):
Figure 0006860591

Figure 0006860591

(式中、
点線は、二重結合を表し;
ギザギザの線は、式(II)及び(III)が任意の(E)又は(Z)異性体を含むことを示し、
Z’及びZ”は、同一でも異なっていてもよく、互いに独立して>N−Rを表し、ここで、
Rは、水素原子、又は酸性基、好ましくはリン酸モノエステル基(−O−P(=O)(OH))で置換されていてもよい直鎖状C1−4アルキル若しくはC2−4アルケニル基、又は分枝状若しくは環状C3−6アルキル若しくはアルケニル基であり、
は、水素原子を表し、
は、水素原子、又はC1−6アルコキシ基で置換されていてもよい、直鎖状C1−4若しくは分枝状C3−6アルキル基であり;
は、水素原子、又は直鎖状C1−4若しくは分枝状C3−6アルキル基を表し;
及びR は、それぞれ水素原子を表し;
は、C1−6アルコキシ基で置換されていてもよい、直鎖状C1−4、又は分枝状若しくは環状C3−6アルキル基を表す)の基を表し、
X”は下記式(V)又は(VI):
Figure 0006860591

Figure 0006860591

(式中、
ギザギザの線は、式(V)が任意の(E)又は(Z)異性体を含むことを示し、
及びZ**は、同一でも異なっていてもよく、互いに独立して酸素原子、又は>N−R’を表し、ここで、
R’はRについて上記で定義されたものと同じ意味を有し;
は、水素原子であり、
は、
水素原子、又はC1−6アルコキシ基で置換されていてもよい直鎖状C1−4若しくは分枝状C3−6アルキル基を表し;
は、水素原子、又は直鎖状C1−4若しくは分枝状C3−6アルキル基を表し;
10は、水素原子又は直鎖状C1−4アルキル基を表し;
あるいは、
これにより、残基RとR、及び/又は残基R’とR、好ましくは残基RとR、及び残基R’とRは共に、それらが結合する架橋原子と共に互いに結合して、4〜6員の飽和又は不飽和環を形成するアルキレン又はアルケニレン基を表し;
残基RとR、又は残基RとRは共に単結合を表し、アルキレン基又はアルケニレン基はそれらが結合する架橋原子と共に互いに結合して、4〜6員の不飽和環を形成し、

残基R11は、残基R13又はR14と共に互いに結合して、単結合、又はそれらが結合する架橋原子と共に互いに結合して、1つ又は2つの炭素−炭素二重結合を有する3〜6員の不飽和環を形成するアルキレン基若しくはアルケニレン基を表す)の基を表し、
Lは、単結合であり、
X’が式(II)の基を表し、X”が式(V)の基である場合、及びX’が式(III)の基を表す場合、X”は式(VI)の基である}の重合性化合部物と、
(b) 光増感剤と、
(c) ヨードニウム塩と、を含む。
請求項1で定義される式(I)の重合性化合物は、歯科用組成物、好ましくは上記本発明による歯科用組成物の調製のために使用され得る。
本発明を以下の実施例により更に説明する。
調製例
以下の構造式を有する本発明による式(I)の化合物を試験した:
Figure 0006860591

スキーム8:試験された式(I)の化合物の化学構造
更に、比較のために、本発明によらない以下の構造式を有する化合物を試験した:
Figure 0006860591

スキーム9:試験された比較重合性化合物の化学構造
式(Ib)及び(Ic)の化合物並びに比較化合物(C1)、(C2)、及び(C3)の概略の合成手順:
A)N,N’−ビスアルキル−1,4−ブテンの合成:
炭酸カリウム(2.5当量)をアルキルアミン(15当量)に添加し、0〜5℃に冷却した。対応するジブロミド(1当量)を少しずつ加え、得られた混合物を室温で3〜5時間撹拌した。その後、残ったアミンを蒸留により除去し、得られた残渣をアセトンに懸濁させた。塩の濾過後、アセトンを蒸発させた。
B) N,N’−ビスアルキル−1,4−ブタンの合成:
対応する塩化アルキル(2.1当量)を、1,4−ジアミノブタン(1当量)のメタノール溶液に50℃で滴下した。得られた混合物を60℃で24時間撹拌した。次いで、メタノールを蒸留により除去し、残渣を2MのNaOHで希釈し、DCMで抽出した。有機層を乾燥させ(NaSO)、溶媒を蒸発させた。
N,N’−ビスアルキル−1,4−ブテン及びN,N’−ビスアルキル−1,4−ブタンのアクリル化:
得られた粗ジアミンをTHFに溶解し、トリエチルアミン(3.5当量)を添加した。アクリロイルクロライド(2.2当量)を0〜5℃で滴下し、その後、得られた混合物を室温で2.5時間撹拌した。次にTHFを蒸発させ、酢酸エチルを加え、得られた混合物を2NのHClで3回、水で1回洗浄した。有機層を乾燥し(NaSO)、溶媒を蒸発させ、残渣をフラッシュクロマトグラフィー(溶離液:酢酸エチル)により精製した。
N,N’−ビスアクリロイル−N,N’−ビスアリル−2,4−ペント−2−エンジアミン(Ib)
歩留まり:14%;η23°C=409±0 Pa*s; nD 20=1.526
1H NMR (CDCl3): δ (ppm) = 6.50-6.26 (m, 5 H, 2x H 2CCHC(O)), 5.84-5.70 (m, 2 H, H2CCHCH2), 5.68-5.60 (m, 2 H, H2CCHC(O)), 5.61-5.51 (m, 2 H, H2CHCCHCH2), 5.31 (m, 1 H, HC(CH3)HCCHCH2), 5.25-5.08 (m, 4 H, H 2CCHCH2), 4.06-3.71 (m, 6 H, HC(CH3)HCCHCH 2, 2x H2CCHCH 2);
13C NMR (CDCl3): δ(ppm) = 166.4, 166.3, 166.1 (C(O)CHCH2), 135.1-132.8 (H2CCHCH2), 128.5-126.5 (H2 CCHC(O), HC(CH3)HCCHCH2), 117.5-116.4 (H2 CCHCH2), 50.0 (HC(CH3)HCCHCH2), 49.1-45.5 (H2CCHCH2, H 2 CHCCHCH2), 18.7, 17.1, 16.8 (HC(CH3)HCCHCH2);
Figure 0006860591
N,N’−ビスアクリロイル−N,N’−ビスプロピル−1,4−ブタ−2−エンジアミン(Ic)
歩留まり:33%;η23°C=428±3 Pa*s; nD 20=1.5095
1H NMR (CDCl3): δ (ppm) = 6.54-6.47 (m, 2 H, H 2CCHC(O)), 6.33-6.25 (m, 2 H, H 2CCHC(O)), 5.66-5.58 (m, 2 H, H2CCHC(O)), 5.56-5.51 (m, 2 H, H2CHCCHCH2), 3.99-3.89 (m, 4 H, H 2 CHCCHCH 2), 3.30-3.18 (m, H3CCH2CH 2), 1.54(「クイント」,J=7.0,4H,H3CC 2CH2), 0.85 (t, J = 7.3, 6 H, H 3CCH2CH2);
13C NMR (CDCl3): δ(ppm) = 166.1, 165.9 (C(O)CHCH2), 128.1-127.3 (H2 CCHC(O), H2CHCCHCH2), 117.5-116.7 (H2 CCHCH2), 49.1-47.4 (H3CCH2 CH2, H2 CHCCHCH2), 22.5-20.9 (H2CH2 CCH2CH2, H3CCH2CH2), 11.2-11.0 (H3 CCH2CH2);
Figure 0006860591
比較例
N,N’−ビスアセチル−N,N’−ビスアリル−1,4−ブタ−2−エンジアミン(C1)
歩留まり:24%;Tm=32°C; nD 20=1.505
1H NMR (CDCl3): δ (ppm) = 5.69-5.61 (m, 2 H, H2CCHCH2), 5.43 (m, 2 H, H2CHCCHCH2), 5.12-4.98 (m, 4 H, H 2CCHCH2) 3.88-3.74 (m, 8 H, H 2 CHCCHCH 2, H2CCHCH 2), 2.00 (s, 6 H, C(O)CH 3)
13C NMR (CDCl3): δ(ppm) = 170.3-169.4 (C(O)CH3), 132.9-132.3 (H2CCHCH2), 127.9-127.0 (H2CHCCHCH2), 116.7-116.2 (H2 CCHCH2), 49.9-46.2 (H2CCHCH2, H 2 CHCCHCH2) 21.1-21.0 (C(O)CH3);
Figure 0006860591
N,N’−ビスアクリロイル−N,N’−ビスアリル−1,4−ブタンジアミン(C2)
歩留まり:35%;η23°C=382±1 Pa*s; nD 20=1.515
1H NMR (CDCl3): δ (ppm) = 6.58-6.28 (m, 4 H, H 2CCHC(O)), 5.80-5.71 (m, 2 H, H2CCHCH2), 5.68-5.60 (m, 2 H, H2CCHC(O)), 5.21-5.10 (m, 4 H, H 2CCHCH2), 4.02-3.93 (m, 4 H, H2CCHCH 2), 3.41-3.40 (m, 4 H, H 2CH2CCH2CH 2), 1.55 (m, 4 H, H2CH 2CCH 2CH2);
13C NMR (CDCl3): δ(ppm) = 166.6, 166.0 (C(O)CHCH2), 133.3, 133.0 (H2CCHCH2), 128.2-127.5 (H2 CCHC(O)), 117.1-116.7 (H2 CCHCH2), 50.1-48.6 (H2CCHCH2), 46.9-45.9 (H2 CH2CCH2 CH2), 26.5-25.0 (H2CH2 CCH2CH2);
Figure 0006860591
N,N’−ビスアクリロイル−N,N’−ビスプロピル−1,4−ブタンジアミン(C3)
歩留まり:26%;η23°C=486±1 Pa*s; nD 20=1.515
1H NMR (CDCl3): δ (ppm) = 6.40-6.33 (m, 2 H, H 2CCHC(O)), 6.16-6.09 (m, 2 H, H 2CCHC(O)), 5.49-5.43 (m, 2 H, H2CCHC(O)), 3.21-3.05 (m, 8 H, H 2CH2CCH2CH 2, H3CCH2CH 2), 1.38 (m, 8 H, H3CCH 2CH2, H2CH 2CCH 2CH2), 0.70 (m, H3CCH 2CH2);
13C NMR (CDCl3): δ(ppm) = 165.5, 165.4 (C(O)CHCH2), 127.5-126.9 (H2 CCHC(O)), 49.1-45.3 (H3CCH2 CH2, H2 CH2CCH2 CH2), 26.3-20.5 (H2CH2 CCH2CH2, H3CCH2CH2), 10.9-10.6 (H3 CCH2CH2);
Figure 0006860591
示差走査熱量測定(DSC)実験
DSC実験のために、式(Ib)、(Ic)、(C1)、(C2)、又は(C3)の化合物を含む組成物、0.22〜0.35モル%の安定剤、光増感剤として0.3重量%のカンファーキノン(CQ)、及び共開始剤としての0.4重量%の4−(ジメチルアミノ)安息香酸エチルエステル(DMABE)を含有する組成物についてΔH及びtmaxの両方を用意した。これらの組成物において、表示モル%は、式(Ib)、(Ic)、(C1)、(C2)、又は(C3)の化合物のモル量に基づき、表示重量%は組成物の総重量に基づき、組成物の残りの質量/重量は、式(Ib)、(Ic)、(C1)、(C2)、又は(C3)の化合物から構成される。組成物は、100mW/cmの強度のDentsply製SmartLite Focus LED硬化光を用いて37℃で照射し、DSCは装置Perkin Elmer DSC7/DPA7を用いて行った。
結果:
表1に記載され、図2に示されるDSC測定結果は、本発明による式(Ia)、(Ib)、及び(Ic)の化合物が、典型的にはおおよそΔH=−80〜−120kJ/molである、歯科用組成物で従来使用される(メタ)アクリレートの重合エンタルピーに匹敵する好ましい重合エンタルピーを有することを示す。更に、下記の表1及び2から得られるように、式(Ia)、(Ib)、及び(Ic)の化合物は、重合性歯科用組成物の調製に使用するのに有利な粘度、色、臭気、溶解性、及び屈折率を有する。パラメータ屈折率(RI)及び粘度を図1に示す。
Figure 0006860591
表1に記載の特性の他に、化合物(Ia)、(Ib)、及び(Ic)について、パラメータの重合最大速度(Rpmax)、最大熱流時間(tmax)(化合物(Ib)及び(Ic)については図3を参照)、曲げ強度、及びe−弾性率(化合物(Ib)及び(Ic)については図4を参照)を測定し、それらを下記表2に記載した。
Figure 0006860591
比較化合物(C1)、(C2)、及び(C3)について得られたDSC測定結果を以下の表3に記載する。結果は、比較化合物(C2)が、歯科用組成物中で典型的に使用される(メタ)アクリレートの重合エンタルピーに匹敵する好ましい重合エンタルピーを有することができ、比較化合物(C3)の重合エンタルピーは、従来の(メタ)アクリレートとの相溶性が得られるための−80〜−120kJ/molの所望の値の範囲外である。比較化合物(C1)では、この化合物はE弾性率及び曲げ強度を決定するための予備試験に失敗したため重合エンタルピーは測定されなかった。更に、下記の表4から得られるように、比較化合物(C2)及び(C3)は、本発明による式(Ia)、(Ib)、及び(Ic)の化合物と比較して著しく低い最大重合速度(Rpmax)を有する。更に、比較化合物(C2)及び(C3)の最大熱流(tmax)の時間は、本発明による式(Ia)、(Ib)、及び(Ic)の化合物のtmaxと比較して著しく長い。更に、比較化合物(C2)に基づく硬化した歯科用組成物のE弾性率は、本発明による化合物(Ia)、(Ib)、及び(Ic)に基づく硬化した歯科用組成物のE弾性率と比較して著しく低い。更に、比較化合物(C2)はアルコール、例えばエタノールにもイソプロパノールにも溶けないが、試験された溶媒のアセトン及びメタクリル酸にのみ溶解するという欠点を有する。
比較化合物(C1)、(C2)及び(C3)について得られた特性の詳細は、以下の表3及び4から得られることができる。
Figure 0006860591
表3に記載する特性の他に、式(C2)及び(C3)の比較化合物について、パラメータの重合最大速度(Rpmax)、最大熱流時間(tmax)(tmax)(図3を参照)、曲げ強度、及びe−弾性率(図4を参照)を測定し、それらを下記表4に記載した。
Figure 0006860591
図5に示す式(Ib)の化合物及び図7に示す比較化合物(C2)のIRスペクトルは、重合前に記録された上側のスペクトルには、ν=1.500〜1800cm−1の範囲の約1.650cm−1及び約1.610cm−1に2つのバンドが存在する。重合後、図5及び7の下側のスペクトルから得られるように、1つのバンドがν=1.500−1800cm−1の範囲に現れ、3つのバンドが、約1.660cm−1(C=O)、約1.620cm−1(アリルC=C)、及び約1.600(アクリロイルC=C)に残存する。約1.650cm−1のバンドはアミドIバンド(C=O)のようであり、約1.610のバンドはアミドII(N−H)である。理論に拘束されることを望まないが、アミドI及びIIの結合は、環化重合の形成、即ちスキーム1に関連して上述したδ−ラクタム環の形成を示すと考えられる。
結論として、上記実験例は、本発明の式(I)の重合性化合物は、歯科用組成物に典型的に使用される従来の(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、及びアリルエーテルと共に互いに結合してそれらの重合を可能にする重合エンタルピーを有することを支持する。更に、式(I)の化合物は、重合性歯科用組成物の調製において使用するのに特に好適にする有利な粘度、色、臭気、溶解性、及び屈折率を有している。
実施例1
・M−BAABE(ビス−N,N’−メタクリロイル−、ロット:MS1261)、歩留まり:29%
Figure 0006860591
1H NMR (CDCl3): δ (ppm) = 5.79-5.68 (m, 2 H, H2CCHCH2), 5.59-5.46 (m, 2 H, H2CHCCHCH2), 5.23-5.09 (m, 4 H, H 2CCHCH2), 5.14 (s, 2 H, H2CC(CH 3)C(O)) 5.04 (s, 2 H, H2CC(CH 3)C(O)), 4.00-3.89 (m, 8 H, H 2 CHCCHCH 2, H2CCHCH 2); 1.95 (s, 6 H, 2 x Me)
13C NMR (CDCl3): δ(ppm) = 162.5 (C(O)C(CH3)CH2), 140.6 (2 x H2CCHCH2), 133.5-132.6 (H2 CC(CH3)C(O)), 128.7-128.1 (H2CHCCHCH2), 117.7-116.2 (H2 CCHCH2), 50.5-48.6 (H2CCHCH2), 46.7-45.2 (H 2 CHCCHCH2), 20.6 (Me)
・ Me2DPI
Figure 0006860591
配合物
表5に示す個々の成分を混合することによって接着剤配合物1及び2を調製した。
Figure 0006860591

Figure 0006860591
調製
液体を表1に示される割合で混合し、密閉容器内及び黄色光条件下22℃で2時間撹拌した。
応用
(プリエッチングを行わない)セルフエッチと(プリエッチング用のリン酸を用いる)エッチ&リンスモードの両方で、以下の工程:アプリケーターマイクロブラシを用いて広げること、20秒間静かに攪拌すること、溶媒を少なくとも5秒間完全に蒸発させること、最後に青色光で10秒間(最低出力レベル800mW/cm2)硬化させること、を使用して、ヒトの大臼歯の、プリコンディショニングされ、粗面化された表面(エナメル質及び象牙質)上に全ての溶液を塗布した。Spectrum TPH3(A2)複合ポストをそれぞれの表面上に配置し、使用説明書に従って青色光で硬化させた。試験片を37℃の水中に24時間保存し、続いてZwick試験機を用いてせん断接着強度(表4)を測定した。算術平均及び標準偏差は、各組成物の6個の試料及び各テンプレート(エナメル/象牙質)からそれぞれ算出した。
Figure 0006860591

・ 三成分カンファーキノン/アミン/ヨードニウム塩(BAABE、Me2DPI;適用例1)開始剤系対二成分カンファーキノン/アミン開始剤系(比較例1)
配合物
表6に示す個々の成分を混合することによって接着剤配合物1及び2を調製した。
Figure 0006860591

Figure 0006860591

Figure 0006860591

Claims (5)

  1. 重合性歯科用組成物であって、
    (a) 下記の式(I):
    X’−L−X”
    (I)
    [式中、
    X’は下記式(II)
    Figure 0006860591

    {式中、
    点線は二重結合を表し
    ギザギザの線は、式(II)任意の(E)又は(Z)異性体を含むことを示し、
    Z’ >N−Rを表し、ここで、R下記式(IV):
    Figure 0006860591

    (式中、
    ギザギザの線は、式(IV)が任意の(E)又は(Z)異性体を含むことを示し、
    11及びR12水素原子表し;
    13及びR14水素原子
    及びR水素原子表し;
    直鎖状、分枝状、若しくは環状のアルキル基表し;
    及びR水素原子表し
    X”は以下の式(V)
    Figure 0006860591

    式中、
    ギザギザの線は、式(V)が任意の(E)又は(Z)異性体を含むことを示し、
    は、>N−R’を表し、ここで、R’はRについて定義された式(IV)の基であり;
    及びR水素原子表し;
    は、水素原子、又は直鎖状、分枝状、若しくは環状のアルキル基若しくはアルケニル基を表し;
    LはX’及びX”直接結合する単結合を表す]の重合性化合物と、
    (b) 光増感剤と、
    (c) ヨードニウム塩と、
    を含、重合性歯科用組成物。
  2. (d) 共開始剤、好ましくはアミン共開始剤を更に含む、請求項1記載の歯科医用組成物。
  3. 安定剤、溶媒、及び/又は微粒子状充填剤を更に含む、請求項1又は2に記載の歯科用組成物。
  4. 歯科用接着剤、歯科用プライマー、歯科用樹脂改質グラスアイオノマーセメント、小窩裂溝封鎖材、歯科用複合材、又は歯科用流動性材から選択される、請求項1〜のいずれか一項に記載の歯科用組成物。
  5. 式(I)の重合性化合物は、1.500〜1.580の範囲の屈折率を有する、請求項1〜のいずれか一項に記載の歯科用組成物。
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