JP5216343B2 - 歯科材料に好適な重合性単量体 - Google Patents

歯科材料に好適な重合性単量体 Download PDF

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本発明は、新規な重合性単量体に関する。本発明の重合性単量体は、接着剤、インク、塗料、印刷製版、フォトレジスト材料、光学用プラスチック材料等の光学材料、歯科材料等に用いられ、特に歯科材料に好適に使用される。
従来、(メタ)アクリル酸エステルに代表されるラジカル重合性単量体は、良好な硬化性、透明性等の特性を利用して、塗料、印刷製版、光学材料、歯科材料等のさまざまな分野で広く使用されている。
中でも、歯科材料の分野においては、天然歯牙の齲蝕や破折等の修復に用いられるコンポジットレジンに代表される歯科修復材料、コンポジットレジンと歯牙とを接着させるために用いられる種々の歯科用接着材、さらには人工歯や義歯床材料等に幅広く用いられている。
特に、コンポジットレジンは、天然歯に近い審美性と優れた操作性を有することから、従来使用されてきた金属材料に代わって近年広く用いられるようになって来た。これらコンポジットレジンは、一般に重合性単量体、重合開始剤、及びフィラーから主に構成されるが、重合性単量体としては、これまで、生体内における安全性、硬化物の機械的強度や耐磨耗性の観点から、ラジカル重合性の多官能性(メタ)アクリレートが用いられている。中でも、2,2−ビス〔4−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕プロパン(通称、Bis−GMAと称する)や2,2,4−トリメチルヘキサメチレンビス(2−カルバモイルオキシエチル)ジメタクリレート(通称、UDMAと称する)が幅広く用いられている。特に、Bis−GMAは1962年にBowenが初めて歯科材料への応用を提案して以来、現在もほとんどの歯科用コンポジットレジンの重合性単量体として使われている。
歯科用コンポジットレジンは、今日広く臨床に用いられるようになってきたものの、以下の点で改良が望まれている。即ち、硬化物の曲げ強度・弾性率・耐磨耗性の向上、吸水・変着色の低減、硬化時の重合収縮の低減、天然歯と同様の透明性と審美性などは未だに改良の余地が大きいと指摘されている。特に近年、重合収縮は、歯科用コンポジットレジンが接着面から剥がれて生じるコントラクションギャップの発生を招くため、可能な限り低減することが強く望まれている。コントラクションギャップの発生は、二次齲蝕、歯髄刺激、着色、修復物脱落などの原因となる。また、審美性に対する要求が高まっており、歯科用コンポジットレジンには、X線造影性を付与するために高屈折率のフィラーがよく用いられていることから、コンポジットレジンに天然歯に近い透明性を付与するために、使用する重合性単量体の屈折率が高いことが望まれている。また、口腔内での耐久性(耐衝撃性及び耐破折性)の観点から、曲げ強度が高いことが望まれている。
これに対し、特許文献1には、透明性を向上し、重合収縮を低減させるために、下記一般式(3)で示されるような含硫黄不飽和カルボン酸エステル化合物を歯科材料に用いることが開示されている。しかしながら、該含硫黄不飽和カルボン酸エステル化合物を用いた歯科材料は、曲げ強度が低いといった問題がある。
Figure 0005216343
〔上記式中、R11は二価の有機基を表し、X11はそれぞれ独立に、酸素原子又は硫黄原子、−COO−基又は(CH2q12−基(X12は酸素原子又は硫黄原子を表し、qは1〜3の整数を表す)を表し、R12は、それぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表し、R13は、それぞれ独立に、硫黄原子を含有する置換基を表し、R14は、それぞれ独立に水素原子又はメチル基を表す。〕
また、特許文献2には、高屈折率及び高強度の重合硬化体を与え、歯科用修復材のマトリックスモノマーとして好適に使用できる重合性単量体として、下記一般式(4)に代表されるような分子構造中にアミド結合を有する重合性不飽和結合含有N−置換アミド化合物が開示されている。しかしながら、この重合性単量体は、重合収縮特性に問題がある。
Figure 0005216343
また、特許文献3には、重合収縮特性、機械的強度及び透明性等を改善するものとして、下記一般式(5)で示されるような(メタ)アクリル基を有するマクロモノマーの重合性単量体が開示されている。これらは架橋密度が小さくなることで、重合収縮も低減されているが、機械的強度の中でも硬化物の曲げ強度に関しては低下が避けられないという欠点がある。
Figure 0005216343
(式中、各Eは独立にヒドロキシル基、又はエステル残基であり、少なくとも一つのEはエステル残基であり、Rはジエーテル含有残基等であり、R21は水素又は1乃至12の炭素原子をもつアルキル等であり、R22は2官能性の1乃至12の炭素原子をもつアルキル等であり、nは少なくとも1の整数である。)
一方、ケイ素原子を分子構造中に導入した(メタ)アクリレート系重合性単量体を歯科用コンポジットレジンに応用する検討がなされている。ケイ素原子を分子中に導入することで機械的強度の向上、重合収縮の低減、及び硬化物の吸水量の低減が可能であるといわれている。
例えば、非特許文献1及び非特許文献2には、下記一般式(6)のような重合性単量体が報告されている。しかしながら、この重合性単量体を含む重合性組成物から得られた硬化物は、強度が低く、重合収縮の改善はほとんど見られなかった。また、これらの重合性単量体の屈折率は低く、歯科用コンポジットレジンに用いた場合、その透明性が極端に低くなるという問題がある。
Figure 0005216343
また、特許文献4や非特許文献3には、下記一般式(7)で示されるようなシロキサン骨格を持つ重合性単量体の歯科材料への応用が開示されている。しかしながら、これらの重合性単量体を歯科用コンポジットレジンとして用いた場合においても、硬化物の強度は従来用いられている重合性単量体と比べて低いレベルにある。また、重合収縮の改善も顕著なものではない。
Figure 0005216343
国際公開第2002/034207号パンフレット 特開2000−204069号公報 国際公開第96/19179号パンフレット 米国特許第5,081,164号明細書 J.S.Kuo,et al., 「Journal of Dental Research Abstracts」,6A,Abstract No.30 (1985) Antonucci,J.M,et al., 「Polymeric Materials Science and Engineering」, 59, 388−391(1988) J.H.Lai,et al., 「Dental Materials」, 20, 570−578 (2004)
本発明は、硬化時の重合収縮が小さく、硬化物の曲げ強度に優れ、かつ高い屈折率を有し、特に歯科用修復材料に有用な重合性単量体を提供することを目的とするものである。
上記課題は、下記一般式(1)で示される化合物を提供することによって解決される。すなわち、本発明は、下記一般式(1)
Figure 0005216343
{式中、R1、R2、R3及びR4は、下記一般式(2)
Figure 0005216343
(式中、Y1、Y2、Y3、Y4及びY5はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子又は炭素数1〜6のアルキル基を示す)
で表される基、又は炭素数1〜6のアルキル基であって、少なくとも1つは前記一般式(2)で表される基あり、
5及びR6はそれぞれ独立に水素原子又はメチル基であり、
1及びX2はそれぞれ独立に酸素原子、硫黄原子又はNHであり、
k及びlはそれぞれ独立に2〜12の整数である}
で表わされる、重合性単量体である。
この時、R1とR3の少なくとも1つと、R2とR4の少なくとも1つが一般式(2)で表される基であることが好適であり、さらに、R1=R3、かつR2=R4であることがより好適である。また、Y1、Y2、Y3、Y4及びY5が水素原子であることが好適であり、X1及びX2が酸素原子であることが好適であり、k及びlがそれぞれ独立に2〜6の整数であることが好適である。
本発明の重合性単量体は、硬化物の曲げ強度が高く、また重合硬化時の重合収縮率が小さいという特徴を有する。したがって、歯科用組成物に適しており、特に齲蝕窩洞を治療するための充填修復用コンポジットレジンに特に好適である。本発明の重合性単量体を含む歯科用組成物を用いたコンポジットレジン等の歯科材料は、口腔内での耐久性に優れ、また歯科材料と接着面との間にコントラクションギャップが発生しにくく、二次齲蝕、歯髄刺激、修復物の脱落といった懸念が低減されたものとなる。また、本発明の重合性単量体及びその重合体は、屈折率が高く、近年用いられている歯科用フィラーの屈折率とほぼ同じ屈折率を有する。従って、本発明の重合性単量体を含む歯科用組成物をコンポジットレジン等の歯科材料に応用した際に、透明性を確保することができ、審美性に優れた歯科材料を提供することができる。
本発明の重合性単量体は、上記一般式(1)で示されるものであり、重合性基として(メタ)アクリロイル基を2つ有する二官能性の重合性単量体である。そして、その分子構造的な最大の特徴は、2つの(メタ)アクリロイル基を連結する有機基中に以下の分子構造を有していることにある。即ち、少なくとも1つの芳香族基(置換又は無置換のフェニル基)が直接置換した、2個のケイ素原子がシロキサン結合でつながった構造である。
Figure 0005216343
さらに、(メタ)アクリロイル基には、酸素原子、硫黄原子、又はNHが結合し、それらが、これら2個のケイ素原子と、直鎖状のスペーサーを介して連結されている。該スペーサーは以下の分子構造を有しており、該スペーサーとケイ素原子は、Si−C結合により結合している。
Figure 0005216343
上記一般式(1)において、R1、R2、R3及びR4は、下記一般式(2)
Figure 0005216343
(式中、Y1、Y2、Y3、Y4及びY5はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子又は炭素数1〜6のアルキル基を示す)
で表される基、又は炭素数1〜6のアルキル基であって、少なくとも1つは前記一般式(2)で表される基あり、R5及びR6はそれぞれ独立に水素原子又はメチル基であり、X1及びX2はそれぞれ独立に酸素原子、硫黄原子又はNHであり、k及びlはそれぞれ独立に2〜12の整数である。
上記一般式(2)のY1〜Y5で表されるハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子である。また、Y1〜Y5で表される炭素数1〜6のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、n−ヘキシル基等が挙げられる。
具体的な一般式(2)で表される基としては、以下に示すものが挙げられ、
Figure 0005216343
{R7a、R7b、R7c、R7d、及びR7eは、それぞれ独立に、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、又はn−ヘキシル基を示す。}
より具体的には、以下に示すものが挙げられる。
Figure 0005216343
上記R1〜R4で選択され得る炭素数1〜6のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、n−ヘキシル基等が挙げられ、原料の入手の容易さや縮合反応の際の立体障害を考慮するとメチル基であることが好ましい。
この観点から本発明の重合性単量体において例示される連結基
Figure 0005216343
の具体例としては、以下に示すものが挙げられる。
Figure 0005216343
Figure 0005216343
Figure 0005216343
さらに、歯科材料用途においての十分な曲げ強度と高い屈折率、さらなる重合収縮の低減のためには、R1とR3の少なくとも1つと、R2とR4の少なくとも1つが一般式(2)で表される基であることが好ましく、これに加えて、R1=R3、R2=R4であり、その結果、それぞれのケイ素原子に2つの芳香族基(置換又は無置換のフェニル基)が結合している、即ち、芳香族基が4つ分子構造中に導入されていることがより好ましい。かかる観点から特に好適な連結基として例示される構造としては、例えば、以下に示すものが挙げられる。
Figure 0005216343
また、この中でも原料の入手のしやすさ、合成の容易さから、Y1、Y2、Y3、Y4及びY5が水素原子である、即ち一般式(2)で表される基がフェニル基であることがより好ましい。
5及びR6はそれぞれ独立に水素原子又はメチル基であり、加水分解が起こった場合に脱離する基の生体に対する安全性の観点からは、メチル基が好ましい。
1及びX2は、特に、酸素原子であることが好ましい。
歯科材料において、テンポラリークラウン、義歯床用軟質裏装材、印象材等は、機械的特性として、高い曲げ強度が要求され、弾性率については必要以上に高くないことが望まれる。テンポラリークラウンは、歯を削った空洞にクラウンなどの補綴物を被せるまで暫間的に入れておく材料であり、これを取り外す際の簡便性を考慮すると弾性率が高くないことが好ましい。そのため、本発明の重合性単量体をテンポラリークラウンに適用する場合には、k及びlはそれぞれ独立に4〜12の整数であることが好ましく、k及びlが7〜12であることがさらに好ましい。一方、コンポジットレジン、義歯床用レジン、CAD/CAM用レジンブロック等の用途については、弾性率が高いことが要求される。本発明の重合性単量体をコンポジットレジン等に適用して高い弾性率を得るという観点からは、k及びlはそれぞれ独立に2〜6の整数であることが好ましく、k及びlが3であることがさらに好ましい。この場合には曲げ強度及び弾性率が共に優れたものとなる。
一般式(1)で示される本発明の重合性単量体としては、以下の化合物が例示される(式中、s及びtはそれぞれ、k及びlの定義と同じである)。
Figure 0005216343
Figure 0005216343
Figure 0005216343
Figure 0005216343
本発明の重合性単量体の製造方法は特に限定されないが、ケイ素原子に有機基を結合させるに当たり、以下の2つのスキームに従い合成する方法が好ましく用いられる。即ち一つは、下記スキーム(8)に示すようなSi−H基を有するジシロキサン化合物(原料)に、末端不飽和結合を有する(メタ)アクリレート様化合物をヒドロシリル化反応によって結合させる方法であり、もう一つは、下記スキーム(9)に示されるような加水分解性のシリル基を持つ(メタ)アクリレート様化合物を、縮合させる方法である。
Figure 0005216343
Figure 0005216343
スキーム(8)において、Si−H基を有する原料の合成は、公知の方法により合成することができる。例えば、D.Straus, et al,J.Am.Chem.Soc.,112,2673−2681(1990)に記載されているように、アセトニトリル中で芳香族クロロシランを縮合することにより、Si−H基を有する原料を得ることができる。
また、ヒドロシリル化反応の反応条件は特に限定されない。ヒドロシリル化反応に用いられる有機溶剤は、原料をこれと反応することなく容易に溶解するものであれば特に制限はない。有機溶剤の好ましい例は、脂肪族炭化水素(例:ヘキサン及びヘプタン)、芳香族炭化水素(例:トルエン及びキシレン)、及び環状エーテル(例:テトラヒドロフラン及びジオキサン)である。原料の溶解性を考慮するとトルエンが最も好適である。
ヒドロシリル化反応における好ましい反応温度は、用いる溶剤の沸点以下である。原料と反応させる化合物は、末端に不飽和結合を有するため、ヒドロシリル化反応中に自発的に重合する虞がある。これを防止するために、好ましい反応温度は20〜80℃である。また、(メタ)アクリロイル基の重合反応を抑制する目的で、フェノール誘導体、フェノチアジン誘導体、N−ニトロソフェニルアミン塩誘導体等の重合禁止剤を用いてもよい。最も好ましい重合禁止剤はヒドロキノンモノメチルエーテルである。その好ましい使用量は、反応液の総重量を基準として1〜20000ppmである。この使用量の更に好ましい範囲は、100〜10000ppmである。
また、スキーム(8)において、好適なヒドロシリル化触媒としては、公知のものが何ら制限なく用いられ、例えば、白金系、パラジウム系及びロジウム系の触媒が好適に用いられる。
かかる好適な触媒の例としては、白金系触媒については、クロロ白金酸、クロロ白金酸とアルコールの錯体、白金とオレフィンの錯体、白金とケトンの錯体、白金とビニルシロキサンの錯体、コロイド状白金、コロイド状白金とビニルシロキサンの錯体などが、パラジウム系触媒については、パラジウム、パラジウムブラックとトリフェニルホスフィンの混合物などが、ロジウム系触媒については、ロジウム、ロジウム化合物などが挙げられる。中でも、白金と1,1,3,3−テトラメチルジビニルジシロキサンとの錯体が最も好ましい。
スキーム(9)において、縮合反応を行う加水分解性基Zとしては、−OH、−Clが好ましい。また、加水分解性基Zが−OHの(メタ)アクリレート様化合物を用いる場合は、酸触媒が必要となる。酸としては、公知のものを何ら制限なく用いることができ、例えば、塩酸、硫酸が好適に用いられる。また、有機溶剤の好ましい例は、脂肪族炭化水素(例:ヘキサン及びヘプタン)、芳香族炭化水素(例:トルエン及びキシレン)である。
本発明の重合性単量体は、硬化物の曲げ強度が高く、また重合硬化時の重合収縮率が小さいという特徴を有する。したがって、歯科用組成物に適しており、特に齲蝕窩洞を治療するための充填修復用コンポジットレジンに特に好適である。本発明の重合性単量体を含む歯科用組成物を用いたコンポジットレジン等の歯科材料は、硬化時の重合収縮が小さく、硬化物の曲げ強度に優れるため、口腔内での耐久性に優れ、また歯科材料と接着面との間にコントラクションギャップが発生しにくく、二次齲蝕、歯髄刺激、修復物の脱落といった懸念が低減されたものとなる。また、本発明の重合性単量体及びその重合体は、屈折率が高く、近年用いられている歯科用フィラーの屈折率とほぼ同じ屈折率を有する。従って、本発明の重合性単量体を含む歯科用組成物をコンポジットレジン等の歯科材料に応用した際に、透明性を確保することができ、審美性に優れた歯科材料を提供することができる。さらに、本発明の重合性単量体は、同分子量の従来のメタアクリレート重合性単量体と比較すると、粘度が低く、コンポジットレジンに配合されるフィラーとの馴染みがよくなるため、コンポジットレジンのフィラー含有量を高くすることができ、より高い曲げ強度を持つ硬化物を得ることができる。
次に、本発明の重合性単量体の使用態様について説明する。本発明の重合性単量体は、歯科用組成物の成分として好適に使用でき、本発明の重合性単量体を含む歯科用組成物は、歯科材料、具体的には例えば、歯科用コンポジットレジン(齲蝕窩洞充填用コンポジットレジン、支台築造用コンポジットレジン、歯冠用コンポジットレジン)、義歯床用レジン、義歯床用裏装材、印象材、合着用材料(レジンセメント、レジン添加型グラスアイオノマーセメント)、歯科用接着材(歯列矯正用接着材、窩洞塗布用接着材)、歯牙裂溝封鎖材、CAD/CAM用レジンブロック、テンポラリークラウン、人工歯材料等、に用いることができる。
特に、本発明の重合性単量体、重合開始剤、及びフィラーを含む歯科用組成物は、最も好ましい使用形態の一つであり、かかる歯科用組成物は、歯科用コンポジットレジンとして好適に用いられる。
上記重合開始剤としては、公知の重合開始剤を使用することができ、通常、重合性単量体の重合性と重合条件を考慮して選択する。
常温重合を行う場合には、例えば、酸化剤及び還元剤を組み合わせたレドックス系の重合開始剤が好適に用いられる。レドックス系重合開始剤を使用する場合、酸化剤と還元剤が別々に包装された包装形態をとり、使用する直前に両者を混合する必要がある。酸化剤としては、ジアシルパーオキサイド類、パーオキシエステル類、ジアルキルパーオキサイド類、パーオキシケタール類、ケトンパーオキサイド類、ハイドロパーオキサイド類などの有機過酸化物を挙げることができる。具体的には、ジアシルパーオキサイド類としてはベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、m−トルオイルパーオキサイド等が挙げられる。パーオキシエステル類としては、例えば、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ビス−t−ブチルパーオキシイソフタレート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネートが挙げられる。ジアルキルパーオキサイド類としては、例えば、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイドが挙げられる。パーオキシケタール類としては、例えば、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンが挙げられる。ケトンパーオキサイド類としては、例えば、メチルエチルケトンパーオキサイドが挙げられる。ハイドロパーオキサイド類としては、例えば、t−ブチルハイドロパーオキサイドが挙げられる。還元剤としては、通常第三級アミンが用いられ、例えば、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ジメチル−m−トルイジン、N,N−ジエチル−p−トルイジン、N,N−ジメチル−3,5−ジメチルアニリン、N,N−ジメチル−3,4−ジメチルアニリン、N,N−ジメチル−4−エチルアニリン、N,N−ジメチル−4−i−プロピルアニリン、N,N−ジメチル−4−t−ブチルアニリン、N,N−ジメチル−3,5−ジ−t−ブチルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−p−トルイジン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3,5−ジメチルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3,4−ジメチルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−4−エチルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−4−i−プロピルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−4−t−ブチルアニリン、N,N−ジ(2−ヒドロキシエチル)−3,5−ジ−i−プロピルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3,5−ジ−t−ブチルアニリン、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸n−ブトキシエチル、4−ジメチルアミノ安息香酸(2−メタクリロイルオキシ)エチル、トリメチルアミン、トリエチルアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、N−n−ブチルジエタノールアミン、N−ラウリルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、(2−ジメチルアミノ)エチルメタクリレート、N,N−ビス(メタクリロイルオキシエチル)−N−メチルアミン、N,N−ビス(メタクリロイルオキシエチル)−N−エチルアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−N−メタクリロイルオキシエチルアミン、N,N−ビス(メタクリロイルオキシエチル)−N−(2−ヒドロキシエチル)アミン、トリス(メタアクリロイルオキシエチル)アミン等が挙げられる。これら有機過酸化物/アミン系の他には、クメンヒドロパーオキサイド/チオ尿素系、アスコルビン酸/Cu2+塩系、有機過酸化物/アミン/スルフィン酸(又はその塩)系等のレドックス系重合開始剤を用いることができる。また、重合開始剤として、トリブチルボラン、有機スルフィン酸なども好適に用いられる。
可視光線照射による光重合を行う場合には、α−ジケトン/第3級アミン、α−ジケトン/アルデヒド、α−ジケトン/メルカプタン等のレドックス系開始剤が好ましい。光重合開始剤としては、例えば、α−ジケトン/還元剤、ケタール/還元剤、チオキサントン/還元剤等が挙げられる。α−ジケトンの例としては、カンファーキノン、ベンジル、2,3−ペンタンジオンなどが挙げられる。ケタールの例としては、ベンジルジメチルケタール、ベンジルジエチルケタール等が挙げられる。チオキサントンの例としては、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン等が挙げられる。還元剤の例としては、ミヒラ−ケトン等;2−(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート、N,N−ビス〔(メタ)アクリロイルオキシエチル〕−N−メチルアミン、N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸ブチル、4−ジメチルアミノ安息香酸ブトキシエチル、N−メチルジエタノールアミン、4−ジメチルアミノベンゾフェノン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−p−トルイジン、ジメチルアミノフェナントール等の第三級アミン;シトロネラール、ラウリルアルデヒド、フタルジアルデヒド、ジメチルアミノベンズアルデヒド、テレフタルアルデヒド等のアルデヒド類;2−メルカプトベンゾオキサゾール、デカンチオール、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、4−メルカプトアセトフェノン、チオサリチル酸、チオ安息香酸等のチオール基を有する化合物等をあげることができる。これらのレドックス系に有機過酸化物を添加したα−ジケトン/有機過酸化物/還元剤の系も好適に用いられる。
紫外線照射による光重合を行う場合には、ベンゾインアルキルエーテル、ベンジルジメチルケタール等が好適である。さらに、(ビス)アシルフォスフィンオキサイド類の光重合開始剤も好適に用いられる。(ビス)アシルホスフィンオキサイド類のうち、アシルフォスフィンオキサイド類としては、例えば、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,6−ジメトキシベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,6−ジクロロベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルメトキシフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルエトキシフェニルホスフィンオキサイド、2,3,5,6−テトラメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ベンゾイルジ−(2,6−ジメチルフェニル)ホスホネートなどが挙げられる。ビスアシルフォスフィンオキサイド類としては、例えば、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−4−プロピルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−1−ナフチルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、(2,5,6−トリメチルベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイドなどが挙げられる。これら(ビス)アシルフォスフィンオキサイド類の光重合開始剤は、単独もしくは各種アミン類、アルデヒド類、メルカプタン類、スルフィン酸塩等の還元剤と併用することもできる。上記可視光線の光重合開始剤とも好適に併用することができる。
上記重合開始剤は単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができ、配合量は組成物全体に対して、通常0.01〜20重量%の範囲、好ましくは0.1〜5重量%の範囲で使用される。
本発明の重合性単量体を含む歯科用組成物を用いて歯科用コンポジットレジンを作製する場合、さらにフィラーが配合される。かかるフィラーとしては、無機フィラーと有機フィラーに大別される。
有機フィラーの例としては、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、メタクリル酸メチル−メタクリル酸エチル共重合体、架橋型ポリメタクリル酸メチル、架橋型ポリメタクリル酸エチル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体等のフィラーが挙げられる。
無機フィラーの例としては、各種ガラス類(二酸化珪素を主成分とし、必要に応じ、重金属、ホウ素、アルミニウム等の酸化物を含有する)、各種セラミック類、珪藻土、カオリン、粘土鉱物(モンモリロナイト等)、活性白土、合成ゼオライト、マイカ、フッ化カルシウム、フッ化イッテルビウム、リン酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化ジルコニウム、二酸化チタン、ヒドロキシアパタイト等の従来公知の物が使用できる。また、これら無機フィラーに重合性単量体を予め添加し、ペースト状にした後、重合硬化させ、粉砕して得られる有機無機複合フィラーを用いても差し支えない。これらのフィラーは1種類又は数種類の組み合わせで用いられ、その配合量は、ペーストの操作性(粘稠度)や機械的強度を考慮して適宜決定すればよく、歯科用組成物のフィラー以外の全成分100重量部に対して、10〜2000重量部、好ましくは50〜1000重量部、さらに好ましくは100〜600重量部である。
かかる無機フィラーの中でも、屈折率が1.5〜1.6のX線造影性を有する無機フィラーを配合すると、歯冠修復材料として有用な歯科用コンポジットレジンとなる。歯冠用コンポジットレジンに望まれる重要な物性として、天然歯と同様の透明性とX線造影性がある。透明性は無機フィラーと重合性単量体の硬化後の屈折率をできるだけ一致させることで達成される。X線造影性の付与のためには、無機フィラーとしてジルコニア、バリウム、チタン、ランタン等の重金属元素を有する無機酸化物が用いられるようになってきている。この様な重金属元素を含む無機フィラーの屈折率は通常高く、1.5〜1.6の範囲にある。本発明の重合性単量体は、分子内にベンゼン骨格を1個以上有するために硬化後の屈折率は比較的高く、1.52以上の屈折率を有する。従ってこの様なX線造影性を有する屈折率の高い無機フィラーと組み合わせると屈折率差を小さくすることができるので、高い透明性を得やすい。
かかる無機フィラーとしては、例えば、バリウムボロシリケートガラス(例えばキンブルレイソーブT3000、ショット8235、ショットGM27884、ショットGM39923)、ストロンチウムボロアルミノシリケートガラス(例えばレイソーブT4000、ショットG018−093、ショットGM32087)、ランタンガラス(ショットGM31684)、フルオロアルミノシリケートガラス(例えばショットG018−091、ショットG018−117)等が上げられる。
上記歯科用組成物において、粒径が0.1μm以下のミクロフィラーが配合された組成物は、歯科用コンポジットレジンに好適な態様の一つである。かかる粒径の小さなフィラーの材質としては、シリカ(例えば、商品名アエロジル)、アルミナ、ジルコニア、チタニアなどが好ましい。このような粒径の小さい無機フィラーの配合は、コンポジットレジンの硬化物の研磨滑沢性を得る上で有利である。
これらのフィラーに対しては、目的に応じてシランカップリング剤などにより表面処理が施される場合がある。かかる表面処理剤としては、公知のシランカップリング剤、例えば、γ−メタクリルオキシアルキルトリメトキシシラン(メタクリルオキシ基とケイ素原子との間の炭素数:3〜12)、γ−メタクリルオキシアルキルトリエトキシシラン(メタクリルオキシ基と珪素原子との間の炭素数:3〜12)、ビニルトリメトキシシラン、ビニルエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン等の有機珪素化合物が使用される。表面処理剤の濃度は、フィラーに対して通常0.1〜20重量%の範囲、好ましくは1〜5重量%の範囲で使用される。
上記歯科用組成物においては、これまで述べたような本発明の重合性単量体に加えて、公知の重合性単量体を必要に応じて組み合わせて用いることができる。
かかる公知の重合性単量体としては、具体的には例えば、α−シアノアクリル酸、(メタ)アクリル酸、α−ハロゲン化アクリル酸、クロトン酸、桂皮酸、ソルビン酸、マレイン酸、イタコン酸等のエステル類、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミド誘導体、ビニルエステル類、ビニルエーテル類、モノ−N−ビニル誘導体、スチレン誘導体等が挙げられ、中でも(メタ)アクリル酸エステルが好適に用いられる。かかる重合性単量体の例を以下に示す。
本発明において、1つのオレフィン性二重結合を有する単量体を一官能性単量体とする。同様に、オレフィン性二重結合が2つのものについて二官能性単量体、3つのものについて三官能性単量体とする。
(イ)一官能性単量体:メチル(メタ)アクリレート、iso−ブチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、2,3−ジブロモプロピル(メタ)アクリレート、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、10−ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、エリトリトールモノ(メタ)アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N、N−(ジヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルオキシドデシルピリジニウムブロマイド、(メタ)アクリロイルオキシドデシルピリジニウムクロライド、(メタ)アクリロイルオキシヘキサデシルピリジニウムクロライド等が挙げられる。
(ロ)二官能性単量体:エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルメタクリレート(2,2−ビス〔4−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕プロパン;通称BisGMA)、2,2−ビス〔4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(メタ)アクリロイルオキシポリエトキシフェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕プロパン、1,2−ビス〔3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ〕エタン、ペンタエリトリトールジ(メタ)アクリレート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンビス(2−カルバモイルオキシエチル)ジメタクリレート(通称UDMA)等が挙げられる。
(ハ)三官能性以上の単量体:トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、N,N’−(2,2,4−トリメチルヘキサメチレン)ビス〔2−(アミノカルボキシ)プロパン−1,3−ジオール〕テトラメタクリレート、1,7−ジアクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラアクリロイルオキシメチル−4−オキシヘプタン等が挙げられる。
また上記歯科用組成物を歯科用接着材として使用する場合、共重合する単量体として各種の接着性単量体、特に分子内に酸性基を有する単量体がさらに配合される。酸性基を有する単量体とは、酸性基及び重合性基を同一分子内に持つ化合物であって、酸性基として例えばリン酸残基、ピロリン酸残基、チオリン酸残基、カルボン酸残基又はスルホン酸残基等を有し、重合性基として例えばアクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、スチレン基等を有する化合物が挙げられる。
リン酸残基を有する重合性単量体としては、例えば、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルジハイドロジェンホスフェート、9−(メタ)アクリロイルオキシノニルジハイドロジェンホスフェート、10−(メタ)アクリロイルオキシデシルジハイドロジェンホスフェート、11−(メタ)アクリロイルオキシウンデシルジハイドロジェンホスフェート、20−(メタ)アクリロイルオキシエイコシルジハイドロジェンホスフェート、1,3−ジ(メタ)アクリロイルオキシプロピル−2−ジハイドロジェンホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルリン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル 2’−ブロモエチルリン酸、(メタ)アクリロイルオキシエチル フェニルホスホネート等、及びこれらの酸塩化物が挙げられる。
ピロリン酸残基を有する重合性単量体としては、例えば、ピロリン酸ジ(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)等及びこれらの酸塩化物が挙げられる。チオリン酸残基を有する重合性単量体としては、例えば、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルジハイドロジェンジチオホスフェート、10−(メタ)アクリロイルオキシデシルジハイドロジェンチオホスフェート等、及びこれらの酸塩化物が挙げられる。
カルボン酸残基を有する重合性単量体としては、例えば、4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシカルボニルフタル酸、5−(メタ)アクリロイルアミノペンチルカルボン酸、11−(メタ)アクリロイルオキシ−1,1−ウンデカンジカルボン酸等及びこれらの酸塩化物又は酸無水物等が挙げられる。
スルホン酸残基を有する重合性単量体としては、例えば、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−スルホエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの酸性基を有する重合性単量体は1種類又は数種類の組み合わせで用いられる。
これらの重合性単量体の配合量は、本発明の重合性単量体100重量部に対して、通常は100重量部を超えない範囲で用いられる。
上記歯科用組成物は、重合性単量体、重合開始剤、及びフィラー以外に、重合禁止剤、紫外線吸収剤、蛍光剤、顔料等の添加剤を、本発明の効果を阻害しない範囲で含有してもよい。
重合禁止剤としては、例えば、2,6−ジブチルヒドロキシトルエン、ハイドロキノン、ジブチルハイドロキノン、ジブチルハイドロキノンモノメチルエーテル、ハイドロキノンモノメチルエーテル、2,6−ジ−t−ブチルフェノール等が挙げられ、これらを1種又は2種以上配合してもよい。
次に本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、本文中、並びに実施例中に使用した化合物の略称は以下の通りである。
重合性単量体
2,2−ビス〔4−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕プロパン(以下Bis−GMAと略す)
2,2,4−トリメチルヘキサメチレンビス(2−カルバモイルオキシエチル)ジメタクリレート(以下UDMAと略す)
トリエチレングリコールジメタクリレート(以下3Gと略す)
1,3−ビス(3−メタクリロイルオキシプロピル)−1,1,3,3−テトラフェニルジシロキサン(以下Bis−TPSと略す)
Figure 0005216343
1,3−ビス(3−メタクリロイルオキシプロピル)−1,3−ジメチル−1,3−ジフェニルジシロキサン(以下Bis−DPDMSと略す)
Figure 0005216343
1,3−ビス(3−メタクリロイルオキシプロピル)−1,3−ジエチル−1,3−ジフェニルジシロキサン(以下Bis−DPDESと略す)
Figure 0005216343
1,3−ビス(3−メタクリロイルオキシプロピル)−1,1,3,3−テトラキス(4−メチルフェニル)ジシロキサン(以下Bis−TMPSと略す)
Figure 0005216343
1,3−ビス(3−メタクリロイルオキシプロピル)−1,1,3,3−テトラキス(4−ブロモフェニル)ジシロキサン(以下Bis−TBPSと略す)
Figure 0005216343
1,3−ビス(3−メタクリロイルオキシプロピル)−1,1,3,3−テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ジシロキサン(以下Bis−TFPSと略す)
Figure 0005216343
1,3−ビス(6−メタクリロイルオキシヘキシル)−1,1,3,3−テトラフェニルジシロキサン(以下Bis−TPHSと略す)
Figure 0005216343
1,3−ビス(11−メタクリロイルオキシウンデシル)−1,1,3,3−テトラフェニルジシロキサン(以下Bis−TPUSと略す)
Figure 0005216343
1,3−ビス(3−メタクリロイルオキシプロピル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン(以下Bis−TMSと略す)
Figure 0005216343
1,3−ビス〔(p−アクリロキシメチル)フェネチル〕−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン(以下Bis−TMPSAと略す)
Figure 0005216343
重合開始剤
カンファ−キノン(以下CQと略す)
アミン
N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチル(以下PDEと略す)
重合禁止剤
ハイドロキノンモノメチルエーテル(以下MEHQと略す)
2,6−ジブチルヒドロキシトルエン(以下BHTと略す)
また、実施例及び比較例における物性の評価方法(1H−,13C−核磁気共鳴スペクトル、屈折率、硬化体強度(曲げ強度)、稠度、及び線重合収縮)は、以下の通りである。
(1)核磁気共鳴(NMR)スペクトル
1H−NMR及び13C−NMRスペクトルは日本電子(株)製JNM−GSX270スペクトロメーターを用い、それぞれ270MHz及び68MHzで測定した。溶媒には重水素化クロロホルムを用い、内部標準としてテトラメチルシラン(TMS)を加えた。
(2)屈折率
(株)アタゴ製アッベ屈折率計を用いて、屈折率を測定した。中間液として、ブロモナフタレンを用いた。モノマー(液状)は、そのまま測定した。また、ポリマーは、モノマーに対してTMDPO(2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド)を0.5wt%配合して円形のモールドに流し込み、三分間光照射(モリタ製、αライトIIN)して重合させたものを測定した。測定は、25℃の恒温室で行った。
(3)硬化体の機械的強度の測定(曲げ強度)
コンポジットレジンペーストをステンレス製の金型(寸法2mm×2mm×30mm)に充填後、上下をスライドガラスで圧接し、光照射器(モリタ製、αライトIIN)で両面から各2分間ずつ光を照射して硬化させた。各実施例及び比較例について、硬化物を5本ずつ作製し、硬化物は、金型から取り出した後、37℃の蒸留水中に24時間保管した。(株)島津製作所製オートグラフAG−I 100KNを用いて、スパン:20mm、クロスヘッドスピ−ド:1mm/minの条件下で曲げ強度を測定し、各試験片の測定値の平均値を算出し、曲げ強度とした。
(4)ペーストの稠度
コンポジットレジンペースト0.5ccを測りとり、その上にガラス板を介して1kgの荷重を30秒間かけ、ペーストを押しつぶした。展延された円板状のペーストの最大直径及び最小直径を測定し、2点の平均値(mm)を稠度とした。稠度が大きいほどペーストが柔らかいことを示し、コンポジットレジンのフィラー含有量をさらに上げられることを示している。
(5)透明度
ガラス板上にコンポジットレジンペーストを置き、ペーストの両側に1mm厚の金属スペーサーを置き、上から別のガラス板を置いて圧接した後ペーストを硬化させた。1mm厚の硬化物に対し、背景に標準白板及び標準黒板を置き、光源にD65/2を用いて、それぞれの背景でL*a*b*表色系によって色差計(日本電色工業社製:Σ90)を用いて測色した。明度をあらわすL*において、背景白をL*(白)、背景黒をL*(黒)とするとき、ΔL*=L*(白)―L*(黒)と定義する。透明度が高いほどΔL*の値は大きくなるため、ΔL*を透明度を表す指標とした。
(6)線重合収縮率測定
渡辺昭彦,永井正洋,秋吉一成,歯科材料・器械,25,120(2005)を参考に次のように測定を行った。カバーガラスの上にモールドとしてステンレス製の金型(厚さ3mm、直径6mmの孔)を乗せ、モールドの孔の壁にココアバター(ジーシー社製)を塗った。モールドの孔にコンポジットレジンを充填し、カミソリを用いて表面が水平になるようにした。充填したレジンの真ん中に、直径3mmのアルミニウム盤(レーザー光の反射板)を置き、セッティングした台(スライドガラス)の上に乗せた。反射板の中心部に変位測定用の赤色レーザー光を照射し、測定値が安定するまでしばらく静置した。測定値が安定後、スライドガラス下方よりジェットライトにより60秒間光照射した。反射板の変位を記録しながら測定を、光照射開始から15分間行った。測定終了後、金型よりレジンを取り外し、厚さを測定した。反射板の光照射後の変位と硬化後のレジンの厚さより線収縮率を算出した。測定は4回以上行い、その平均値を線重合収縮率とした。Δlをレーザー変位計で測定したレジンの変位、lを重合後のレジンの厚さとすると、線重合収縮率は以下の式より算出することができる。
Figure 0005216343
[合成例1]
メタクリル酸ウンデセニルの合成
合成は、特開2004−210665号公報を参考に以下のように行った。攪拌機、空気バブリング管、脱水管、及び冷却管を備えた2L容の四つ口フラスコにウンデセノール(豊国製油社製)34gとメタクリル酸(和光純薬社製)21gを入れ、さらにトルエン200g、パラトルエンスルホン酸1.2g、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.1gを加え、130〜140℃で脱水反応を行った。反応は約2時間で終了した。反応粗液をアルカリ水溶液で洗浄し、さらに水洗を2回行った後、空気でバブリングしながらエバポレーターで脱溶剤化することにより、精製物を得た。1H−NMR測定を行い、ケミカルシフト値及び積分値から、得られた無色透明の液体が目的とする化合物であることを確認した。収量は37.1g、収率は78%であった。
Figure 0005216343
[合成例2]
メタクリル酸ヘキセニルの合成
合成例1記載のウンデセノールの代わりに5−へキセン−1−オール(和光純薬社製)を用いて合成例1と同様の合成操作を行うことでメタクリル酸ヘキセニルを得た。本合成例の化学反応式を以下に示す。
Figure 0005216343
[実施例1]
Bis−TPSの合成
200mLナスフラスコにアリルメタクリレート15.13g(120mmol)を秤量し、MEHQ200mgを加えて攪拌した。そこに触媒(Platinum−DivinylTetramethyl Disiloxane Complex)をスポイトで一滴加え、D.Straus, et al,J.Am.Chem.Soc.,112,2673−2681(1990)を参考に合成したPh2HSiOSiHPh211.48g(0.03mol)を、ほぼ4分の1ずつ4回に分けて15分おきに投入した。Ph2HSiOSiHPh2の3回目の投入後と4回目の投入後にそれぞれ触媒を1滴加え、室温(23℃)で攪拌しながら反応を行った。その後、反応開始から3日後及び6日後に触媒をそれぞれ2滴ずつ加えた。7日間室温で攪拌を行った後、反応溶液をヘキサンに溶解させ、1N−HClで触媒を失活させることで反応を終了させた。反応混合物を300mL分液ロ−トに移し、有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、及び飽和食塩水で洗浄した。次いで、洗浄後の有機層に無水硫酸ナトリウムを加えて乾燥した後、溶媒をロータリーエバポレーターを用いて減圧留去することで、黄色液状の濃縮残渣を得た。得られた濃縮残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:n−へキサン/酢酸エチル=10/1)を用いて精製し、前記残渣に混入していたオイル状の不純物を除去した。前記カラム精製後、溶媒をロータリーエバポレーターを用いて減圧留去することで、無色透明の液体が得られた。1H−NMR測定を行い、ケミカルシフト値及び積分値から、得られた無色透明の液体が目的とする化合物であることを確認した。収量は4.21g、収率は22%であった。本実施例の化学反応式を以下に示す。
Figure 0005216343
上記方法により得られた化合物の1H−NMR、13C−NMR、屈折率のデータは、以下の通りであった。
1H−NMR(270MHz CDCl3):δ1.08 (m, 4H), 1.58 (m, 4H), 1.87 (s, 6H), 3.94 (dd, 4H), 5.48 (s, 2H), 6.00 (s, 2H), 7.30 (m, 12H), 7.44 (m, 8H) (ppm)
13C−NMR(100MHz CDCl3):δ11.8, 18.2, 22.7, 66.8, 124.8, 127.8, 129.8, 134.4, 135.9, 136.6, 157.2 (ppm)
屈折率:(モノマー) 1.564
(ポリマー) 1.599
Bis−TPSを含むコンポジットレジンの調製
合成したBis−TPS100重量部に、光重合触媒として、CQ0.5重量部、BHT0.05重量部及びPDE1.0重量部を均一に溶解して、光重合性の重合性単量体組成物を調製した。さらに、重合性単量体組成物100重量部を、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(以下、γ−MPS)でシラン処理したシリカ粉末(日本アエロジル社製、アエロジル130、平均粒径0.020μm)40重量部及びγ−MPSでシラン処理したバリウムガラス(ショット社製、ショット8235、平均粒径2.5μm)530重量部と混練して歯科用組成物を得、これを歯科用コンポジットレジンとした。なお、シラン処理は、シリカ粉末については、シリカ粉末100g、γ−MPS40.0g、酢酸0.16g、及び蒸留水80mLをビーカーに入れ、1時間室温下で攪拌し、水を凍結乾燥により除去した後、90℃で3時間加熱することにより行った。また、バリウムガラスについては、バリウムガラス100g、γ−MPS1.0g、酢酸0.16g、及び蒸留水80mLを用いてシリカ粉末のシラン処理と同様に行った。この歯科用コンポジットレジンについて、稠度を測定し、その硬化物について、曲げ強度、弾性率、透明度、線重合収縮率を測定した。測定結果を表1に示す。
[実施例2]
Bis−DPDMSの合成
実施例1記載のPh2HSiOSiHPh2の代わりにPh(CH3)HSiOSiH(CH3)Phを用いて実施例1と同様の合成操作を行うことでBis−DPDMSを得た。本実施例の化学反応式を以下に示す。
Figure 0005216343
上記方法により得られた化合物の1H−NMR、13C−NMR、屈折率のデータは、以下の通りであった。
1H−NMR(270MHz CDCl3): δ0.66 (s, 6H),δ1.08 (m, 4H), 1.58 (m, 4H), 1.87 (s, 6H), 3.94 (dd, 4H), 5.48 (s, 2H), 6.00 (s, 2H), 7.30 (m, 6H), 7.44 (m, 4H) (ppm)
13C−NMR(100MHz CDCl3): δ1.6,11.8, 18.2, 22.7, 66.8, 124.8, 127.8, 129.8, 134.4, 135.9, 136.6, 157.2 (ppm)
屈折率:(モノマー) 1.533
(ポリマー) 1.559
[実施例3]
Bis−DPDESの合成
実施例1記載のPh2HSiOSiHPh2の代わりにPh(CH2CH3)HSiOSiH(CH2CH3)Phを用いて実施例1と同様の合成操作を行うことでBis−DPDESを得た。本実施例の化学反応式を以下に示す。
Figure 0005216343
上記方法により得られた化合物の1H−NMR、13C−NMR、屈折率のデータは、以下の通りであった。
1H−NMR(270MHz CDCl3): δ0.90 (m, 6H),δ1.06 (m, 4H), 1.49(s, 6H),1.57 (m, 4H), 1.88 (s, 6H), 3.96 (dd, 4H), 5.48 (s, 2H), 6.03 (s, 2H), 7.31 (m, 6H), 7.45 (m, 4H) (ppm)
13C−NMR(100MHz CDCl3): δ5.4, 8.4, 11.7, 18.3, 22.7, 67.0, 124.9, 127.6, 129.7, 134.5, 136.0, 136.7, 157.4 (ppm)
屈折率:(モノマー) 1.527
(ポリマー) 1.552
[実施例4]
Bis−TMPSの合成
実施例1記載のPh2HSiOSiHPh2の代わりに[Ph(CH3)]2HSiOSiH[Ph(CH3)]2を用いて実施例1と同様の合成操作を行うことでBis−TMPSを得た。本実施例の化学反応式を以下に示す。
Figure 0005216343
上記方法により得られた化合物の1H−NMR、13C−NMR、屈折率のデータは、以下の通りであった。
1H−NMR(270MHz CDCl3):δ1.07 (m, 4H), 1.58 (m, 4H), 1.88 (s, 6H), 2.05(s, 3H), 3.93 (dd, 4H), 5.48 (s, 2H), 6.02 (s, 2H), 7.25 (m, 8H), 7.39 (m, 8H) (ppm)
13C−NMR(100MHz CDCl3):δ11.8, 18.2, 20.9, 22.7, 66.8, 124.8, 127.8, 129.8, 134.4, 135.9, 138.6, 157.2 (ppm)
屈折率:(モノマー) 1.555
(ポリマー) 1.587
[実施例5]
Bis−TBPSの合成
実施例1記載のPh2HSiOSiHPh2の代わりに[Ph(Br)]2HSiOSiH[Ph(Br)]2を用いて実施例1と同様の合成操作を行うことでBis−TBPSを得た。本実施例の化学反応式を以下に示す。
Figure 0005216343
上記方法により得られた化合物の1H−NMR、13C−NMR、屈折率のデータは、以下の通りであった。
1H−NMR(270MHz CDCl3):δ1.06 (m, 4H), 1.59 (m, 4H), 1.88 (s, 6H), 3.96 (dd, 4H), 5.48 (s, 2H), 6.04 (s, 2H), 7.44 (m, 8H), 7.54 (m, 8H) (ppm)
13C−NMR(100MHz CDCl3):δ11.8, 18.2, 22.9, 66.7, 124.5, 127.8, 129.8, 134.4, 135.9, 138.1, 157.2 (ppm)
屈折率:(モノマー) 1.571
(ポリマー) 1.606
[実施例6]
Bis−TFPSの合成
実施例1記載のPh2HSiOSiHPh2の代わりに[Ph(F5)]2HSiOSiH[Ph(F5)]2を用いて実施例1と同様の合成操作を行うことでBis−TBPSを得た。本実施例の化学反応式を以下に示す。
Figure 0005216343
上記方法により得られた化合物の1H−NMR、13C−NMR、屈折率のデータは、以下の通りであった。
1H−NMR(270MHz CDCl3):δ1.08 (m, 4H), 1.59 (m, 4H), 1.86 (s, 6H), 3.94 (dd, 4H), 5.48 (s, 2H), 5.99 (s, 2H) (ppm)
13C−NMR(100MHz CDCl3):δ11.6, 18.2, 22.7, 66.8, 124.8, 132.9, 134.4, 135.9, 136.6, 140.6, 157.2 (ppm)
屈折率:(モノマー) 1.576
(ポリマー) 1.608
[実施例7]
Bis−TPHSの合成
実施例1記載のアリルメタクリレートの代りに合成例2で得られたメタクリル酸ヘキセニルを用いて実施例1と同様の合成操作を行うことでBis−TPHSを得た。本実施例の化学反応式を以下に示す。
Figure 0005216343
上記方法により得られた化合物の1H−NMR、13C−NMR、屈折率のデータは、以下の通りであった。
1H−NMR(270MHz CDCl3):δ0.75 (m, 4H), 1.24 (s, 12H), 1.66 (m, 4H), 1.92 (s, 6H), 4.11 (dd, 4H), 5.53 (s, 2H), 6.11 (s, 2H), 7.29 (m, 12H), 7.44 (m, 8H) (ppm)
13C−NMR(100MHz CDCl3):δ14.6, 18.4, 22.5, 23.9, 26.0, 28.8, 29.4, 29.5, 33.5, 65.0, 67.4, 124.6, 127.7, 128.9, 129.1, 133.3, 134.2, 136.7, 136.6, 167.5(ppm)
屈折率:(モノマー) 1.558
(ポリマー) 1.586
[実施例8]
Bis−TPUSの合成
実施例1記載のアリルメタクリレートの代りに合成例1で得られたメタクリル酸ウンデセニルを用いて実施例1と同様の合成操作を行うことでBis−TPUSを得た。本実施例の化学反応式を以下に示す。
Figure 0005216343
上記方法により得られた化合物の1H−NMR、13C−NMR、屈折率のデータは、以下の通りであった。
1H−NMR(270MHz CDCl3):δ0.73 (m, 4H), 1.23 (s, 32H), 1.66 (m, 4H), 1.93 (s, 6H), 4.13 (dd, 4H), 5.53 (s, 2H), 6.10 (s, 2H), 7.30 (m, 12H), 7.44 (m, 8H) (ppm)
13C−NMR(100MHz CDCl3):δ14.4, 18.2, 22.3, 23.9, 26.1, 28.8, 29.3, 29.6, 33.7, 64.9, 67.1, 124.7, 127.7, 128.6, 129.2, 133.3, 134.4, 136.6, 136.8, 167.3(ppm)
屈折率:(モノマー) 1.551
(ポリマー) 1.578
実施例2〜8の重合性単量体を含むコンポジットレジンの調製
実施例1のコンポジットレジンの調製において、Bis−TPSの代わりに、Bis−DPDMS(実施例2)、Bis−DPDES(実施例3)、Bis−TMPS(実施例4)、Bis−TBPS(実施例5)、Bis−TFPS(実施例6)、Bis−TPHS(実施例7)、Bis−TPUS(実施例8)を用いた以外は、実施例1と同様の組成の歯科用コンポジットレジンを調製した。該コンポジットレジンの稠度を測定し、その硬化物について、曲げ強度、弾性率、透明度、線重合収縮率を測定した。測定結果を表1に示す。
[比較例1]
実施例1において、Bis−TPSの代わりにBis−TMS(Gelest社)を用いた以外は、実施例1と同様の組成の歯科用コンポジットレジンを調製した。該コンポジットレジンの稠度を測定し、その硬化物について、曲げ強度、弾性率、透明度、線重合収縮率を測定した。測定結果を表1に示す。
[比較例2]
比較例1において、Bis−TMSの代わりにBis−TMPSA(United Chemical Technologies社)を用いた以外は、比較例1と同様の組成の歯科用コンポジットレジンを調製した。該コンポジットレジンの稠度を測定し、その硬化物について、曲げ強度、弾性率、透明度、線重合収縮率を測定した。測定結果を表1に示す。
[比較例3〜5]
比較例1において、Bis−TMSの代わりにBis−GMA(比較例3)、Bis−GMA(50重量部)と3G(50重量部)(比較例4)、UDMA(比較例5)を用いた以外は比較例1と同様の組成の歯科用コンポジットレジンを調製した。該コンポジットレジンの稠度を測定し、その硬化物について、曲げ強度、弾性率、透明度、線重合収縮率を測定した。測定結果を表1に示す。
Figure 0005216343
表1より、実施例1のBis−TPSを重合性単量体として用いた歯科用コンポジットレジンは、曲げ強度が124MPa、弾性率が14.5Mpaと優れた機械的性質を示した。また、線重合収縮率も小さく、稠度も良好な範囲にあった。すなわち、機械的強度、重合収縮及び粘性についてバランスよく良好な物性を有していた。従って、Bis−TPSは、歯科用コンポジットレジンの重合性単量体として有用であることが分かる。
同様にBis−DPDMS(実施例2)、Bis−DPDES(実施例3)、Bis−TMPS(実施例4)、Bis−TBPS(実施例5)、Bis−TFPS(実施例6)、Bis−TPHS(実施例7)、Bis−TPUS(実施例8)についても、それらを用いたコンポジットレジンがバランスの取れた物性を有しており、歯科用コンポジットレジンの重合性単量体として有用であることが分かる。
また、屈折率についても、実施例1〜8の重合性単量体は屈折率が高く、その重合体は、いずれも屈折率が1.55以上であった。このことから、これらの重合性単量体を、バリウムガラスなどのX線造影性を有する屈折率の高い無機フィラーと組み合わせると、屈折率差を小さく調節することができ、その結果、コンポジットレジンの高い透明性を得ることができると言える。実際に、実施例1〜8の重合性単量体を含むコンポジットレジンについて透明度を評価した結果を見ても、高い透明度が得られている。よって、歯科用コンポジットレジンの重合性単量体として有用であることが示された。
これに対し、同様にケイ素を持った重合性単量体であるBis−TMSを用いた比較例1では、曲げ強度、弾性率がいずれも大きく劣り、線重合収縮率も実施例のものと比較して大きかった。Bis−TMPSAを用いた比較例2においても、線重合収縮率が実施例のものと比較して大きく、屈折率も低いことから高い透明度を得ることができなかった。
また、従来歯科用コンポジットレジンに使われているBis−GMA、UDMAについては、それ単独では、フィラーと混合してもモノマーとフィラーの馴染みが悪く、ペースト状の組成物を得ることはできず、歯科用コンポジットレジンを作製することができなかった。
希釈剤として3Gを、Bis−GMAと併用して作製した歯科用コンポジットレジン(比較例4)は、曲げ強度は実施例1〜8と同等であるものの、線重合収縮率が1.49(lin%)と非常に大きく、歯科用コンポジットレジンとしては実施例の重合性単量体を用いたものの方がバランス的に優れていた。
以上のように、本発明の重合性単量体は、高屈折率であり、硬化時の重合収縮が小さく、かつ硬化物の曲げ強度に優れるものであり、該重合性単量体を含有した歯科用組成物をコンポジットレジンに用いると、重合収縮率が低く、審美性及び機械的性質に優れた硬化物を与えることができることが示された。

Claims (5)

  1. 下記一般式(1)
    Figure 0005216343
    {式中、R1、R2、R3及びR4は、下記一般式(2)
    Figure 0005216343
    (式中、Y1、Y2、Y3、Y4及びY5はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子又は炭素数1〜6のアルキル基を示す)
    で表される基、又は炭素数1〜6のアルキル基であって、少なくとも1つは前記一般式(2)で表される基あり、
    5及びR6はそれぞれ独立に水素原子又はメチル基であり、
    1及びX2酸素原子であり、
    k及びlはそれぞれ独立に2〜12の整数である}
    で表わされる、重合性単量体。
  2. 1とR3の少なくとも1つと、R2とR4の少なくとも1つが一般式(2)で表される基である、請求項1記載の重合性単量体。
  3. 1=R3、かつR2=R4である、請求項2記載の重合性単量体。
  4. 1、Y2、Y3、Y4及びY5が水素原子である、請求項1〜3のいずれかに記載の重合性単量体。
  5. k及びlがそれぞれ独立に2〜6の整数である、請求項1〜のいずれかに記載の重合性単量体。
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