以下に添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態を詳細に説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではなく、また、実施形態が複数ある場合には、各実施例を組み合わせて構成するものも含むものである。
(配電システムの構成)
図1は、本実施形態に係る配電システムを示す模式図である。図1に示すように、配電システム1は、発電所10、送電線11、配電用変電所12、三相配電線14、開閉器P、柱上変圧器20、単相変圧器21、負荷部22、単相負荷部24、分岐線26、及び負荷配分決定システム30を有する。配電システム1は、発電所10より送電線11を介して送電される電力を配電用変電所12により降圧し、三相配電線14及び分岐線26により配電し、柱上変圧器20、単相変圧器21を介して家庭等の負荷部22や単相負荷部24に配電する。
発電所10は、例えば火力発電所などの発電設備であり、配電システム1に属する負荷部22及び単相負荷部24に必要な電力を供給する。送電線11は、発電所10が発電した三相交流電力が送電される。送電線11は、例えば66kV(キロボルト)の電圧振幅を有する送電用の三相交流電力が送電される。配電用変電所12は、送電線11と電気的に接続される変圧器を有する設備である。配電用変電所12は、送電線11に送電された66kVの送電用の三相交流電力を、6.6kVの電圧振幅を有する配電用の三相交流電力に降圧する。以下、発電所から送電され、6.6kVに降圧された配電用の三相交流電力により流れる三相交流電流を、三相交流電流Iと記載する。三相交流電流Iは、三相交流電流のうちの第1相であるA相電流Iaと、第2相であるB相電流Ibと、第3相であるC相電流Icとを有する。負荷が三相平衡である場合、A相電流Ia、B相電流Ib、及びC相電流Icは、それぞれ電流値の振幅が等しい。また、B相電流Ibは、A相電流Iaよりも120°位相が遅れている。C相電流Icは、B相電流Ibよりも、120°位相が遅れている。
三相配電線14は、発電所10から配電用変電所12を介して三相交流電流Iが配電される配電線、ここでは幹線である。三相配電線14は、A相電流Iaが配電されるA相配電線14aと、B相電流Ibが配電されるB相配電線14bと、C相電流Icが配電されるC相配電線14cとを有する。
開閉器Pは、三相配電線14に接続されており、三相交流電流Iの流れ方向に沿って、複数設けられている。図1の例では、三相交流電流Iの流れ方向の上流側から、開閉器Pr、Ps、Pt、Pu、Pv、Pwが、この順で三相配電線14に接続されている。開閉器Pは、その箇所を流れる電流を遮断可能な装置である。また、開閉器Pは、三相配電線14に接続された箇所を流れる電流と、その箇所の電圧と、力率とを計測可能となっている。すなわち、開閉器Pは、計測機能付開閉器である。ただし、開閉器Pは、少なくとも一部が計測機能付開閉器であってもよく、他の一部が、計測機能を有さない開閉器であってもよい。なお、三相配電線14に接続される開閉器Pの数は任意である。
柱上変圧器20は、三相配電線14に接続されており、三相交流電流Iの流れ方向に沿って、複数設けられている。柱上変圧器20は、A相配電線14a、B相配電線14b、及びC相配電線14cのうち、いずれか2つの配電線に接続されている。柱上変圧器20は、例えば配電用の三相交流電力の電圧振幅(6.6kV)を、100V又は200Vの電圧振幅を有する負荷用電力に降圧する。負荷部22は、柱上変圧器20を介して三相配電線14に接続されている。負荷部22は、例えば家庭などの電気機器であり、三相配電線14からの電力を消費して仕事を行う。このように、柱上変圧器20及び負荷部22は、2相接続されているが、2相接続に限られず、3相接続であってもよい。
単相変圧器21は、図1の例では、三相交流電流Iの流れ方向に沿った開閉器Psと開閉器Ptとの間の箇所で、三相配電線14に接続されている。単相変圧器21は、A相配電線14a、B相配電線14b、及びC相配電線14cのうちの2つの配電線、ここではA相配電線14a及びB相配電線14bに接続されている。単相負荷部24は、単相変圧器21を介して、三相配電線14、ここではA相配電線14a及びB相配電線14bに接続されている。単相負荷部24は、A相配電線14a及びB相配電線14bに接続された単相の負荷である。単相負荷部24は、例えば工場などの負荷であり、負荷部22よりも多くの電力を消費する。ただし、配電システム1は、必ずしも、このような高負荷の単相負荷部24を有していなくてもよい。
分岐線26は、三相配電線14に接続される3相配電線であり、三相配電線14から分岐される分岐線である。図示は省略するが、分岐線26にも、柱上変圧器20、単相変圧器21、負荷部22、及び単相負荷部24が接続されている。分岐線26には、三相配電線14から分岐された三相交流電力(三相交流電流I)が供給され、負荷部22及び単相負荷部24に電力を供給する。図1の例では、分岐線26は、三相交流電流Iの流れ方向に沿った開閉器Puと開閉器Pvとの間の箇所で、三相配電線14に接続されている。
負荷配分決定システム30は、開閉器Pから、電流、電圧及び力率の測定値を取得して、三相配電線14への負荷配分を決定する。ここでの負荷とは、負荷部22や単相負荷部24により各配電線に接続された負荷を指す。従って、負荷配分とは、A相配電線14a、B相配電線14b、及びC相配電線14cとが、負荷部22及び単相負荷部24によってどれだけの負荷が接続されているかを示すものである。配電システム1は、負荷配分決定システム30が決定した負荷配分となるように、例えば作業者の作業により、負荷部22及び単相負荷部24の接続相、すなわちA相配電線14a、B相配電線14b、及びC相配電線14cへの接続先を変更することができる。配電システム1は、負荷配分決定システム30の決定に従い負荷配分を決定することで、三相配電線14の電圧不平衡を抑制することができる。
(電圧不平衡について)
負荷配分決定システム30の詳細説明については後述し、先に電圧不平衡について説明する。電圧不平衡とは、各線間電圧の振幅が等しく、且つ、線間電圧の位相が120°異なる三相交流電圧において、各線間電圧の振幅が異なったり、線間電圧の位相がずれたりすることである。各線間電圧の振幅が異なるとは、例えばA相電流Iaにおける電圧振幅と、B相電流Ibにおける電圧振幅と、C相電流Icにおける電圧振幅とが3つとも等しくないことをいう。また、線間電圧の位相がずれるとは、例えば、A相電圧とB相電圧との位相差、B相電圧とC相電圧との位相差、C相電圧とA相電圧との位相差の少なくとも1つの位相差が120°とならないことをいう。
配電システム1は、三相配電線14で電圧不平衡が発生すると、柱上変圧器20に供給される電圧が目標の電圧に対してずれてしまう。柱上変圧器20に供給される電圧のずれが大きくなると、柱上変圧器20に接続される負荷部22の誤動作が発生する恐れがある。従って、配電システム1は、三相配電線14における電圧不平衡の値を小さくすることが望ましい。
電圧不平衡率は、正相電圧に対する逆相電圧の割合で示される。ここで、三相配電線14における電圧不平衡率をεとし、正相電圧をVPとし、逆相電圧をVNとしたとき、電圧不平衡率εは、次の式(1)で表される。正相電圧VP、逆相電圧VNは、各線間電圧、すなわちA相配電線14aとB相配電線14bとの電圧差、B相配電線14bとC相配電線14cとの電圧差、及びA相配電線14aとC相配電線14cとの電圧差に基づいた値であり、例えば対称座標法により算出される。
ε(%)=|VN|/|VP|・100 ・・・(1)
電圧不平衡率εは、A相配電線14aとB相配電線14bとC相配電線14cとに接続される負荷が不均衡である場合に大きくなる。すなわち、ある配電線の負荷が他の配電線より大きいと、その配電線での電力消費が高くなり、他の配電線よりも電圧降下が大きくなる。その結果として、電圧不平衡率εが高くなる。また、電圧不平衡率εは、配電線のインピーダンスが不均等な場合にも高くなる。各配電線は、配電線のインピーダンスのうちの抵抗成分が均等になるように設計されている。しかし、配電線のインピーダンスのうちの相互リアクタンス成分は、A相配電線14aとB相配電線14bとC相配電線14cとの相互関係、すなわち互いの距離によって変化する。配電システム1は、A相配電線14aとB相配電線14bとC相配電線14cとの距離関係が異なるような配列(水平装柱や垂直装柱など)とされている区間がある。このような場合、A相配電線14aとB相配電線14bとC相配電線14cとの相互リアクタンスが互いに均等にならず、配電線のインピーダンスが配電線毎に異なったものとなってしまい、電圧不平衡率が高くなる。
このように、電圧不平衡率εは、三相配電線14のそれぞれに接続される負荷、及び三相配電線14のそれぞれの相互リアクタンスに影響される。従って、電圧不平衡率εを抑制するためには、三相配電線14に接続される負荷を均等にしつつ、相互リアクタンスについても均等にすることが望ましい。しかし、負荷を均等にするためには、全ての負荷部22がどの配電線に接続されているかを把握する必要がある。負荷部22は、1つの配電システム1内で膨大な数設置されており、その数も日々変化するため、全ての把握は困難である。さらに、負荷部22毎の大きさ、すなわち柱上変圧器21の利用率が異なるため、負荷部22と配電線との接続関係を把握しても、接続される負荷を正確に反映できない場合もある。また、配電線の配列も区間によって様々であるため、相互リアクタンスについても把握することが困難である。さらに、各配電線に接続される負荷の大きさや配電線の配列を変更させた場合、各部の電圧などが複雑に変動する。そのため、各配電線の負荷を変動させた場合における電圧値は、予め把握することが困難となっている。従って、三相配電線14のそれぞれに接続される負荷を適切に割り当てて、電圧不平衡を解消することは、一般的には、容易に行うことができない。しかし、本実施形態に係る負荷配分決定システム30は、負荷配分を変更した場合の電圧値を、適切に予測することができる。従って、負荷配分決定システム30を用いると、容易に、電圧不平衡を解消することができる。以下、負荷配分決定システム30について説明する。
(負荷配分決定システム)
負荷配分決定システム30は、以下説明する処理を行って、三相配電線14の所定位置における電圧の予測値(電圧予測値)を算出する。以下では、この所定位置を、開閉器Pvが設置された位置として説明する。そして、開閉器Pvよりも下流側の開閉器Pwの位置における電圧不平衡率εを規定値以下とするように、開閉器Pvよりも上流側の負荷配分を決定することを例として説明する。この所定位置は、計測機能を有する開閉器Pが設置された位置であればよく、三相配電線14、すなわち幹線内の位置であることが好ましい。ただし、この所定位置は、電流測定値及び電圧測定値の取得が可能な位置であれば、任意である。また、電圧不平衡率εを規定値以下とする位置も、任意である。また、負荷配分を決定する区間は、開閉器Pvよりも上流側の区間としたが、その区間は任意であってよい。例えば、負荷配分を決定する区間は、開閉器Puと開閉器Pvとの間などの一部の区間であってよい。
図2は、本実施形態に係る負荷配分決定システムの模式的なブロック図である。負荷配分決定システム30は、例えばコンピュータであり、記憶したソフトウェア処理を実行することで、以下説明するような処理を実行する。図2に示すように、負荷配分決定システム30は、電圧予測システム32と、負荷配分決定部34と、を有する。電圧予測システム32は、測定値取得部40と、電圧算出値算出部42と、補正係数算出部44と、電圧予測値算出部46と、を有する。
測定値取得部40は、図1に示す開閉器Pから、所定位置を流れる三相交流電流Iの測定値である電流測定値と、その所定位置での電圧の測定値である電圧測定値とを取得する。具体的には、測定値取得部40は、開閉器Pvから、電流測定値としてのA相電流測定値I1va、B相電流測定値I1vb、及びC相電流測定値I1vcと、電圧測定値としてのA相電圧測定値E1va、B相電圧測定値E1vb、及びC相電圧測定値E1vcと、を取得する。A相電流測定値I1vaは、A相配電線14aの開閉器Pvが接続された位置を流れるA相電流Iaの測定値である。B相電流測定値I1vbは、B相配電線14bの開閉器Pvが接続された位置を流れるB相電流Ibの測定値である。C相電流測定値I1vcは、C相配電線14cの開閉器Pvが接続された位置を流れるC相電流Icの測定値である。A相電圧測定値E1vaは、A相配電線14aの開閉器Pvが接続された位置における電圧の測定値である。B相電圧測定値E1vbは、B相配電線14bの開閉器Pvが接続された位置における電圧の測定値である。C相電圧測定値E1vcは、C相配電線14cの開閉器Pvが接続された位置における電圧の測定値である。また、測定値取得部40は、A相配電線14a及びB相配電線14b及びC相配電線14cの開閉器Pvが接続された位置における力率も取得する。なお、測定値取得部40は、他の開閉器Pからも、その開閉器Pが接続された位置における電流測定値と電圧測定値と力率とを取得してよい。
電圧算出値算出部42は、測定値取得部40が取得した電流測定値に基づき、所定位置、ここでは開閉器Pvが接続された位置の電圧算出値を算出する。電圧算出値算出部42は、予め記憶した計算(シミュレーション)を実行することで、電圧算出値を算出する。この計算は、開閉器Pvが接続された位置の電流値と、後述する設定インピーダンスZとに基づき、開閉器Pvが接続された位置の電圧値を算出する計算モデルである。
図3は、電流算出値の算出方法を説明する模式図である。電圧算出値算出部42は、最初に、電流測定値に基づき、開閉器Pvが接続された位置の電流の算出値である電流算出値を算出する。電圧算出値算出部42は、図3に示すように、A相電流測定値I1vaのベクトルと、B相電流測定値I1vbのベクトルと、C相電流測定値I1vcのベクトルとを形成する。A相電流測定値I1va、B相電流測定値I1vb、及びC相電流測定値I1vcのベクトルの長さ(スカラー)は、それぞれA相電流測定値I1va、B相電流測定値I1vb、及びC相電流測定値I1vcの絶対値である。また、A相電流測定値I1vaのベクトルとB相電流測定値I1vbのベクトルとの間の角度θ1と、B相電流測定値I1vbのベクトルとC相電流測定値I1vcのベクトルとの間の角度θ2と、C相電流測定値I1vcのベクトルとA相電流測定値I1vaのベクトルとの間の角度θ3とは、それぞれ測定値取得部40が取得した力率から算出される。
そして、電圧算出値算出部42は、これらのベクトルに基づき、開閉器で区切られた間にある按分負荷S22を算出する。ここでの按分負荷S22は、開閉器PVと開閉器PWとの間において各配電線14に接続されていると算出された計算上の負荷である。按分負荷S22は、開閉器Pvの電力(pv+jqv)から開閉器Pwの電力(pw+jqw)を差し引いて求める。すなわち、按分負荷S22は、次の式(2A)、(2B)、及び(2C)から算出される負荷按分S22ab、S22bc、S22caの行列式である。負荷按分S22abは、開閉器PVと開閉器PWとの間におけるab間の負荷(A相配電線14aとB相配電線14bとに接続される負荷)である。負荷按分S22bcは、開閉器PVと開閉器PWとの間におけるbc間の負荷(B相配電線14bとC相配電線14cとに接続される負荷)である。負荷按分S22caは、開閉器PVと開閉器PWとの間におけるca間の負荷(C相配電線14cとA相配電線14aとに接続される負荷)である。
式(2A)、(2B)、及び(2C)の各記号は、以下を意味している。すなわち、開閉器Pvのab間の電力(A相配電線14aとB相配電線14bとの間の電力)を、(pvab+jqvab)とする。また、開閉器Pvのbc間の電力(B相配電線14bとC相配電線14cとの間の電力)を、(pvbc+jqvbc)とする。また、開閉器Pvのca間の電力(C相配電線14cとA相配電線14aとの間の電力)を、(pvca+jqvca)とする。同様に、開閉器Pwのab間の電力(A相配電線14aとB相配電線14bとの間の電力)を、(pwab+jqwab)とする。また、開閉器Pwのbc間の電力(B相配電線14bとC相配電線14cとの間の電力)を、(pwbc+jqwbc)とする。また、開閉器Pwのca間の電力(C相配電線14cとA相配電線14aとの間の電力)を、(pwca+jqwca)とする。そして、開閉器Pv、Pwの電力は、以下の式(2D)、(2E)、(2F)、(2G)、(2H)、(2I)から算出できる。
なお、Ivabは、開閉器PVにおけるA相配電線14aとB相配電線14bとの間の線間電流である。Ivbcは、開閉器PVにおけるB相配電線14bとC相配電線14cとの間の線間電流である。Ivcaは、開閉器PVにおけるC相配電線14cとA相配電線14aとの間の線間電流である。電圧算出値算出部42は、これらの線間電流Ivab、Ivbc、Ivacが一意的に求まらないため、不明な場合は以下の式(2J)で算出する。線間電流Ivab、Ivbc、Ivacのベクトルの関係図は、図3に示されている。すなわち、電圧算出値算出部42は、2つの配電線間の線間電流を、1つの配電線の電流測定値のベクトルから他の1つの配電線の電流測定値のベクトルから差し引き、その差し引いた値を予め定めた係数(この式の例では3)で除することにより、算出している。ただし、式(2J)は、一例であり、電圧算出値算出部42は、式(2JA)のように、1つの配電線の電流測定値のベクトルから他の1つの配電線の電流測定値のベクトルから差し引き、その差し引いた値に、それぞれ係数d1、d2、d3を乗じることにより算出してもよい。ただし、この係数d1、d2、d3の合計値は、1となる。すなわち、電圧算出値算出部42は、1つの配電線の電流測定値のベクトルから他の1つの配電線の電流測定値のベクトルから差し引き、その差し引いた値に所定の補正値を乗じて、線間電流Ivab、Ivbc、Ivacを算出する。
なお、Iwab、Iwbc、Iwcaは、開閉器Pwにおける各配電線間の線間電流であり、線間電流Ivab、Ivbc、Ivacと同様の方法で算出される。また、Evabは、開閉器PVにおけるA相配電線14aとB相配電線14bとの間の線間電圧であり、Evbcは、開閉器PVにおけるB相配電線14bとC相配電線14cとの間の線間電圧であり、Evcaは、開閉器PVにおけるC相配電線14cとA相配電線14aとの間の線間電圧である。これらの線間電圧Evab、Evbc、Evcaも、式(2J)の各電流測定値(例えばI1va)を電圧測定値(例えばE1va)に置き換えて、同様の方法で算出される。Ewab、Ewbc、Ewcaは、開閉器Pwにおける各配電線間の線間電圧であり、線間電圧Evab、Evbc、Evcaと同様の方法で算出される。
電圧算出値算出部42は、このように、電流測定値と電圧測定値とに基づき、線間電流及び線間電圧を算出し、その算出した線間電流及び線間電圧を用いて、負荷(ここでは按分負荷S22)を算出する。
電圧算出値算出部42は、この負荷の算出値に基づき、上述した予め記憶した計算、ここでは三相の潮流計算を実行して、電流算出値としてのA相電流算出値I2va、B相電流算出値I2vb、及びC相電流算出値I2vcと、電圧算出値、すなわちA相電圧算出値E2va、B相電圧算出値E2vb、及びC相電圧算出値E2vcとを算出する。A相電流算出値I2vaは、A相配電線14aの開閉器Pvが接続された位置に流れる電流の算出値である。B相配電線14bの開閉器Pvが接続された位置を流れる電流の算出値である。C相電流算出値I2vcは、C相配電線14cの開閉器Pvが接続された位置を流れる電流の算出値である。同様に、A相電圧算出値E2vaは、A相配電線14aの開閉器Pvが接続された位置における電圧の算出値である。B相電圧算出値E2vbは、B相配電線14bの開閉器Pvが接続された位置における電圧の算出値である。C相電圧算出値E2vcは、C相配電線14cの開閉器Pvが接続された位置における電圧の算出値である。
電圧算出値算出部42は、潮流計算として、各開閉器Pi(i=1、・・・、r、s、t、u、v、w)について、設定インピーダンスZに基づいたノード方程式である式(2K)と、按分負荷S22iab,S22ibc,S22icaを指定したPQ指定式である式(2L)とを立てて、反復法により収束計算を実行する。これにより、電圧算出値算出部42は、この潮流計算の実行により収束した値を、各位置の電流算出値及び電圧算出値とする。なお、式(2K)における設定インピーダンスZは、系統の構成から一意に決まる定数、すなわち予め設定された値であり、A相配電線14aとB相配電線14bとC相配電線14cとのそれぞれのインピーダンスの値である。電圧算出値算出部42は、例えば、電線の材質や太さ、また装柱、電線の接続情報に基づき、設定インピーダンスZの値を設定する。
ここで、潮流計算で基準とする電圧E1a、E1b、E1cは、送電側の電圧であり、例えば、配電用変電所12における各配電線の電圧値である。電圧算出値算出部42は、潮流計算時に、初期値として、E21aにE1a、E21bにE1b、E21cにE1cを与えて反復計算を実行する。計算の結果、電流算出値及び電圧算出値は、それぞれの区間において、以下の式(3)の関係式を満たしている。
このように、電圧算出値算出部42は、負荷の算出値と設定インピーダンスZとに基づき、潮流計算を実行することで、電流算出値及び電圧算出値を算出する。ただし、この計算は任意であり、電圧算出値算出部42は、負荷の算出値と設定インピーダンスZとに基づき、電流算出値及び電圧算出値を算出すれば、その計算内容は、任意である。
なお、設定インピーダンスZは、A相配電線14a、B相配電線14b、C相配電線14cのインピーダンスの設定値である。設定インピーダンスZは、抵抗成分とリアクタンス成分とで表すことが可能である。その場合、式(3)は、次の式(4)のように表される。
式(4)において、Rは、設定インピーダンスZにおける抵抗成分であり、各配電線に共通している。ただし、Rは、配電線毎に異なってもよい。jは、虚数である。また、Xaaは、A相配電線14aの自己リアクタンス成分であり、Xbbは、B相配電線14bの自己リアクタンス成分であり、Xccは、C相配電線14cの自己リアクタンス成分である。そして、Xabは、A相配電線14aのB相配電線14bからの相互リアクタンス成分であり、Xacは、A相配電線14aのC相配電線14cからの相互リアクタンス成分である。Xbaは、B相配電線14bのA相配電線14aからの相互リアクタンス成分であり、Xbcは、B相配電線14bのC相配電線14cからの相互リアクタンス成分である。Xcaは、C相配電線14cのA相配電線14aからの相互リアクタンス成分であり、Xcbは、C相配電線14cのB相配電線14bからの相互リアクタンス成分である。
電圧算出値算出部42は、以上説明したように、予め記憶した計算(ここでは潮流計算)を実行して、電圧算出値、すなわちA相電圧算出値E2va、B相電圧算出値E2vb、及びC相電圧算出値E2vcを算出する。
図2に示す補正係数算出部44は、設定インピーダンスZを補正する補正係数kを算出する。補正係数算出部44は、補正係数kで設定インピーダンスZを補正して算出した電圧算出値と、測定値取得部40の取得した電圧測定値との差が所定値以下となるように、補正係数kを算出する。すなわち、補正係数算出部44は、補正係数kで設定インピーダンスZを補正してA相電圧算出値E2va、B相電圧算出値E2vb、及びC相電圧算出値E2vcを算出した場合に、A相電圧算出値E2vaとA相電圧測定値E1vaとの差が所定値以下となり、B相電圧算出値E2vbとB相電圧測定値E1vbとの差が所定値以下となり、かつ、C相電圧算出値E2vcとC相電圧測定値E1vcとの差が所定値以下となるように、補正係数kを算出する。また、補正係数算出部44は、補正係数kとして設定可能な数値範囲の値のうち、その値を補正係数kとして補正した電圧算出値と電圧測定値との差が最小となるような値を、補正係数kとしてもよい。
ここで、補正係数kで設定インピーダンスZを補正した後のA相電圧算出値E2vaをA相電圧補正値E3vaとし、補正した後のB相電圧算出値E2vbをB相電圧補正値E3vbとし、補正した後のC相電圧算出値E2vcをC相電圧補正値E3vcとする。A相電圧補正値E3vaと、B相電圧補正値E3vbと、C相電圧補正値E3vcとは、次の式(5)に示すように、式(4)の右辺の設定インピーダンスZを、補正係数kで乗じて(補正して)算出される値である。
より具体的には、A相電圧補正値E3vaと、B相電圧補正値E3vbと、C相電圧補正値E3vcとは、設定インピーダンスZのうちの相互リアクタンス成分(Xab、Xac、Xba、Xbc、Xca、Xcb)を補正係数kで乗じて(補正して)算出される値である。すなわち、補正係数算出部44は、相互リアクタンス成分を補正係数kで補正して電圧算出値を算出した場合に、電圧算出値と電圧測定値との差が所定値以下となるように、補正係数kを算出する。このように、補正係数kは、設定インピーダンスZのうち相互リアクタンス成分を補正するための係数である。このように、補正係数kは、設定インピーダンスZの他の成分、すなわち自己リアクタンス成分や抵抗成分を補正する係数ではないが、相互リアクタンス成分に加えて、自己リアクタンス成分や抵抗成分についても補正するものであってもよい。
なお、式(5)で示すように、補正係数算出部44は、三相配電線14の複数の相互リアクタンス成分、すなわちA相配電線14a、B相配電線14b、C相配電線14cのそれぞれの相互リアクタンス成分(Xab、Xac、Xba、Xbc、Xca、Xcb)の全てに共通する値として、補正係数kを算出する。すなわち、補正係数kは、相互リアクタンス成分(Xab、Xac、Xba、Xbc、Xca、Xcb)のそれぞれに対して個別に設定された値でなく、全てに共通して設定された1つの値である。
補正係数算出部44は、このように、A相電圧補正値E3vaとA相電圧測定値E1vaとの差が所定値以下となり、B相電圧補正値E3vbとB相電圧測定値E1vbとの差が所定値以下となり、かつ、C相電圧補正値E3vcとC相電圧測定値E1vcとの差が所定値以下となるように、補正係数kを算出する。
図2に示す電圧予測値算出部46は、三相配電線14に接続される負荷を変更した条件で、設定インピーダンスZを補正係数kで補正して、電圧算出値算出部42が行った計算と同じ計算を実行する。この計算は、負荷の値と補正係数kで補正した設定インピーダンスZとに基づき、潮流計算により、電流算出値と、電圧算出値(ここでは電圧予測値)とを算出するものである。電圧予測値算出部46は、この計算を実行することで、三相配電線14に接続される負荷を変更した条件での、開閉器Pvが接続された位置の電圧予測値を算出する。
具体的には、電圧予測値算出部46は、電圧算出値算出部42での負荷の算出値と異なる負荷の値と、設定インピーダンスZと、補正係数kとに基づき、負荷を変更させた条件での電圧予測値を算出する。電圧予測値算出部46は、上述の式(5)と同様に、補正係数kを各相互リアクタンス成分に乗じて、式(5)の左辺に相当する、A相配電線14a、B相配電線14b、及びC相配電線14cのそれぞれの電圧予測値を算出する。これにより、電圧予測値算出部46は、負荷配分を変更した場合において電圧値がどのような値になるかの電圧予測値を、補正係数kで補正した条件で算出することができる。なお、電圧予測値算出部46は、負荷配分の条件(各配電線に接続される負荷の値)を変更させて、それぞれの負荷配分の条件ごとに電圧予測値を算出する。言い換えれば、電圧予測値算出部46は、三相配電線14のそれぞれ(A相配電線14a、B相配電線14b、C相配電線14c)に接続される負荷配分の組み合わせ毎に計算を実行して、負荷配分の組み合わせ毎の電圧予測値を算出する。なお、電圧予測値算出部46は、全ての負荷配分の組み合わせに対し、同じ補正係数kを用いて、電圧予測値を算出する。
図2に示す負荷配分決定部34は、電圧予測値算出部46が算出した電圧予測値に基づき、その電圧値における三相配電線14の電圧不平衡率εを算出する。負荷配分決定部34は、算出した電圧不平衡率εが規定値以下となるような負荷配分を決定する。すなわち、負荷配分決定部34は、電圧予測値算出部46が算出した負荷配分の条件ごとの電圧予測値に基づき、負荷配分の条件ごとの電圧不平衡率εを算出する。負荷配分決定部34は、算出した複数の電圧不平衡率εのうち、値が規定値以下となるような電圧不平衡率εに対応する負荷配分を、三相配電線14のそれぞれ(A相配電線14a、B相配電線14b、C相配電線14c)に接続される負荷として決定する。この規定値は、任意の値であるが、値が小さい方が望ましい。また、負荷配分決定部34は、電圧予測値算出部46が算出した各電圧予測値から電圧不平衡率εを算出し、電圧不平衡率εが最小となる負荷配分の組み合わせを、三相配電線14のそれぞれに接続される負荷として決定することが好ましい。
以上が負荷配分決定システム30の構成である。次に、負荷配分決定システム30による負荷配分の決定フローを、フローチャートを用いて説明する。図4は、本実施形態に係る負荷配分の決定フローを説明するフローチャートである。図4に示すように、負荷配分決定システム30は、最初に、測定値取得部40により、所定位置での電流測定値と電圧測定値とを取得する(ステップS10;測定値取得ステップ)。具体的には、測定値取得部40は、開閉器Pvから、A相電流測定値I1va、B相電流測定値I1vb、及びC相電流測定値I1vcと、A相電圧測定値E1va、B相電圧測定値E1vb、及びC相電圧測定値E1vcと、を取得する。
電流測定値と電圧測定値とを取得した後、負荷配分決定システム30は、電圧算出値算出部42により、電流測定値及び電圧測定値に基づき、各配電線の負荷を算出し(ステップS12)、これらの負荷の算出値と設定インピーダンスとに基づき、電流算出値及び電圧算出値を算出する(ステップS14)。具体的には、電圧算出値算出部42は、ステップS12において、電流測定値及び電圧測定値から、線間電流及び線間電圧を算出し、電力を算出する。そして、電圧算出値算出部42は、算出した電力に基づき、A相配電線14aとB相配電線14bとC相配電線14cとのそれぞれに接続される負荷を算出する。電圧算出値算出部42は、ステップS14において、これらの負荷の算出値に基づき計算(潮流計算)を実行して、電流算出値及び電圧算出値、すなわちA相電流算出値I2va、B相電流算出値I2vb、C相電流算出値I2vc、A相電圧算出値E2va、B相電圧算出値E2vb、及びC相電圧算出値E2vcを算出する。これらのステップS12及びS14が、電圧算出値算出ステップに相当する。
電圧算出値を算出した後、負荷配分決定システム30は、補正係数算出部44により、補正係数kを算出する(ステップS18;補正係数算出ステップ)。補正係数算出部44は、設定インピーダンスZのうちの相互リアクタンス成分を補正係数kで補正して電圧算出値を算出した場合に、電圧算出値と電圧測定値との差が所定値以下となるように、補正係数kを算出する。
補正係数kを算出した後、負荷配分決定システム30は、電圧予測値算出部46により、設定インピーダンスZを補正係数kで補正して、負荷を変更した条件での電圧予測値を算出する(ステップS20;電圧予測値算出ステップ)。電圧予測値算出部46は、電圧算出値算出部42での負荷の算出値と異なる負荷の値と、補正係数kで補正した設定インピーダンスZとを用いて計算を実行することで、上述の式(5)のように補正係数kで各相互リアクタンス成分を補正して、式(5)の左辺に相当する電圧予測値を算出する。電圧予測値算出部46は、三相配電線14のそれぞれに接続される負荷配分の組み合わせ毎に計算を実行して、負荷配分の組み合わせ毎の電圧予測値を算出する。ただし、電圧予測値算出部46は、負荷配分の組み合わせ毎に計算を実行することに限られず、1つの負荷配分の組み合わせ条件における電圧予測値のみを算出してもよい。
電圧予測値を算出した後、負荷配分決定システム30は、負荷配分決定部34により、電圧予測値に基づき、電圧不平衡率εを算出し(ステップS22)、負荷の配分を決定する(ステップS24)。負荷配分決定システム30は、電圧予測値算出部46が算出した負荷配分の組み合わせ毎の電圧予測値に基づき、負荷配分の条件ごとの電圧不平衡率εを算出する。負荷配分決定システム30は、電圧不平衡率εが最小となる負荷配分の組み合わせを、三相配電線14のそれぞれに接続される負荷として決定する。ただし、負荷配分決定システム30は、1つの負荷配分の組み合わせ条件における電圧不平衡率εのみを算出するものであってよい。負荷配分決定部34は、その際の電圧不平衡率εが規定値以下である場合に、その負荷配分を三相配電線14のそれぞれに接続される負荷として決定してもよい。このように負荷の配分を決定したら、本処理は終了する。
図5及び図6は、配電線の各箇所の電圧値の一例を示すグラフである。図5は、電圧測定値と、補正係数kによる補正前の電圧算出値との一例を示している。図5の横軸は、三相交流電流Iの流れに沿った三相配電線14の上流側からの距離を示している。図5の縦軸は、三相配電線14の各位置における電圧値を示している。図5の線分L1aは、A相電圧測定値E1vaすなわち、A相配電線14aの電圧測定値の一例を示している。図5の線分L1bは、B相電圧測定値E1vb、すなわち、B相配電線14bの電圧測定値の一例を示している。図5の線分L1cは、C相電圧測定値E1vc、すなわち、C相配電線14cの電圧測定値の一例を示している。図5の線分L2aは、A相電圧算出値E2va、すなわち、A相配電線14aの電圧算出値(補正係数kによる補正前)の一例を示している。図5の線分L2bは、B相電圧算出値E2vb、すなわち、B相配電線14bの電圧算出値(補正係数kによる補正前)の一例を示している。図5の線分L2cは、C相電圧算出値E2vc、すなわち、C相配電線14cの電圧算出値(補正係数kによる補正前)の一例を示している。
図5に示すように、各配電線の電圧算出値は、補正係数kで設定インピーダンスZを補正せずに算出された値であるため、実際の測定値(電圧測定値)に対し値がずれている箇所がある。
図6は、電圧測定値と、補正係数kによる補正後の電圧補正値との一例を示している。図6の線分L3aは、A相電圧補正値E3va、すなわち、補正係数kによる補正後のA相配電線14aの電圧算出値を示している。図6の線分L3bは、B相電圧補正値E3vb、すなわち、補正係数kによる補正後のB相配電線14bの電圧算出値を示している。図6の線分L3cは、C相電圧補正値E3vc、すなわち、補正係数kによる補正後のC相配電線14cの電圧算出値を示している。図6に示すように、補正係数kで設定インピーダンスZを補正した場合、各配電線の電圧算出値は、補正しない場合よりも、実際の測定値(電圧測定値)に対し全体的に近い値となっている。
図7及び図8は、配電線の各箇所の電圧不平衡率の一例を示すグラフである。図7は、補正係数kによる補正前の電圧算出値を用いて算出した電圧不平衡率εを示している。図7の横軸は、三相交流電流Iの流れに沿った三相配電線14の上流側からの距離を示している。図7の縦軸は、三相配電線14の各位置における電圧不平衡率を示している。図7の線分α1は、図5及び図6に示した電圧測定値(線分L1a、L1b、L1c)を用いて算出した電圧不平衡率εを示している。図7の線分α2は、図5に示した補正係数kによる補正前の電圧算出値(線分L2a、L2b、L2c)を用いて算出した電圧不平衡率εを示している。図7の線分α2に示すように、補正係数kで補正する前の電圧算出値を用いた場合、電圧不平衡率εが、実際の測定値(電圧測定値)を用いた場合からずれた値となっている。
図8は、補正係数kによる補正後の電圧算出値を用いて算出した電圧不平衡率εを示している。図8の線分α3は、図6に示した補正係数kによる補正後の電圧算出値(線分L3a、L3b、L3c)を用いて算出した電圧不平衡率εを示している。図8の線分α3に示すように、補正係数kによる補正後の電圧算出値を用いた場合、電圧不平衡率εが、実際の測定値(電圧測定値)を用いた値に近くなっている。また、図8の線分βは、補正係数kで補正しつつ、負荷配分を変更させて電圧予測値を算出した場合に、電圧不平衡率εが最小となる負荷配分の組み合わせにおける電圧不平衡率εの算出値を示している。線分βに示すように、電圧不平衡率εは、補正係数kで補正した電圧予測値に従い負荷配分を変更した場合に、適切に値が小さくなることが予測される。
以上説明したように、電圧予測システム32が実行する電圧予測方法は、測定値取得ステップと、電圧算出値算出ステップと、補正係数算出ステップと、電圧予測値算出ステップと、を有する。測定値取得ステップは、測定値取得部40により実施され、三相配電線14の所定位置を流れる電流測定値と、所定位置の電圧測定値とを取得する。電圧算出値算出ステップは、電圧算出値算出部42により実施され、電流測定値と予め設定した設定インピーダンスZとに基づき、所定位置での電圧を算出する計算(ここでは潮流計算)を実行することで、所定位置での電圧算出値を算出する。補正係数算出ステップは、補正係数算出部44により実施され、設定インピーダンスZを補正して算出した電圧算出値と電圧測定値との差が所定値以下となるように、設定インピーダンスZを補正する補正係数kを算出する。電圧予測値算出ステップは、電圧予測値算出部46により実施され、三相配電線14に接続される負荷を変更した条件で、設定インピーダンスZを補正係数kで補正して計算を実行することで、三相配電線14に接続される負荷を変更した条件での所定位置の電圧予測値を算出する。
電圧不平衡率εを抑制するためには、各配電線への負荷を適切に配分する必要がある。しかし、上述のように、負荷配分を変更した場合、変更後の電圧値を予め把握することが困難である。特に、配電線のインピーダンスは、装柱状態などによって異なるため、予測が困難となっている。本実施形態に係る電圧予測方法は、電圧算出値算出部42により、現状の負荷配分での電流測定値と、予め設定した設定インピーダンスZとに基づき、その負荷配分での電圧算出値を算出する。さらに、電圧予測方法は、この電圧算出値と、実際の測定値(電圧測定値)とを比較し、その差が大きい(所定値より大きい)場合は、設定インピーダンスZが実際とは異なっていると判断する。電圧予測方法は、補正係数算出部44により、設定インピーダンスZを補正した場合に、電圧算出値と電圧測定値との差が小さくなるような補正係数kを算出する。電圧予測方法は、電圧予測値算出部46により、この補正係数kを用いて設定インピーダンスZを実際の値に近づけた状態で、負荷配分を変更した場合の電圧予測値の計算を実行する。この電圧予測方法によると、補正係数kにより補正した設定インピーダンスZを用いて電圧値の予測(算出)を行うため、負荷配分を変更した場合の電圧値の予測精度を向上させることができる。従って、この電圧予測方法によると、負荷配分を変更した場合の電圧値の予測を適切に行うことができる。なお、設定インピーダンスZは、各配電線に固有の成分であるため、負荷を変更しても変化しない。従って、どのような負荷配分にでも、同じ補正係数kで設定インピーダンスZを補正することができる。
また、電圧算出値算出ステップにおいて、電圧算出値算出部42は、電流測定値及び電圧測定値に基づき三相配電線14に接続される負荷の算出値を算出し、負荷の算出値と設定インピーダンスZとに基づき、電圧算出値を算出する。そして、電圧予測値算出ステップにおいて、電圧予測値算出部46は、負荷の算出値を変更した条件で計算を実行することにより、三相配電線14に接続される負荷を変更した条件での所定位置の電圧予測値を算出する。この電圧予測方法は、電流測定値に基づき三相配電線14に接続される負荷を算出し、それに基づき電流算出値を算出している。この電圧予測方法によると、電圧算出値の計算に用いる電流算出値を、電流測定値を用いて算出しているため、精度よく電圧算出値を算出し、それに伴い、補正係数kを精度よく算出することができる。この電圧予測方法によると、補正係数kを精度よく算出して設定インピーダンスZを実際の値により精度良く近づけることができるため、負荷配分を変更した場合の電圧値の予測を適切に行うことができる。
また、補正係数算出ステップにおいて、補正係数算出部44は、設定インピーダンスZのうちの相互リアクタンス成分を補正して電圧算出値を算出した場合に、電圧算出値と電圧測定値との差が所定値以下となるように、相互リアクタンス成分を補正する補正係数kを算出する。電圧予測値算出ステップにおいて、電圧予測値算出部46は、補正係数kで相互リアクタンス成分を補正して計算を実行する。この電圧予測方法は、電圧算出値と、電圧測定値とを比較し、その差が大きい(所定値より大きい)場合は、設定インピーダンスZのうちの相互リアクタンス成分が実際とは異なっていると判断する。この電圧予測方法は、補正係数算出部44により、相互リアクタンス成分を補正した場合に、電圧算出値と電圧測定値との差が小さくなるような補正係数kを算出する。この電圧予測方法は、そのような補正係数kで相互リアクタンス成分を補正して電圧予測値を算出している。従って、この電圧予測方法によると、補正係数kをより精度よく算出するため、負荷配分を変更した場合の電圧値の予測を適切に行うことができる。
また、補正係数算出ステップにおいて、補正係数算出部44は、補正係数を、三相配電線の複数の相互リアクタンス成分に共通する値として算出する。そして、電圧予測値算出ステップにおいて、電圧予測値算出部46は、複数の相互リアクタンス成分のそれぞれを補正係数で補正して計算を実行する。この電圧予測方法によると、補正係数kを、三相配電線の複数の相互リアクタンス成分に共通する値として算出するため、補正係数kを容易に算出することが可能となる。従って、この電圧予測方法によると、負荷配分を変更した場合の電圧値の予測を、より容易に行うことができる。
また、測定値取得ステップにおいて、測定値取得部40は、所定位置に設けられた計測機能付開閉器による電流測定値及び電圧測定値の測定結果を取得する。測定値取得部40は、計測機能付開閉器の測定値を取得するため、測定値の取得を、精度よく容易に行うことができる。ただし、測定値取得部40は、計測機能付開閉器によらず、例えば必要な箇所に設置された専用の測定装置から、測定値を取得してもよい。なお、測定値取得部40が取得する測定値の測定位置、すなわち所定位置は、三相配電線14内、すなわち幹線であることが好ましく、分岐線26でなくてもよい。また、この所定位置は、高負荷の単相負荷部24の直前又は直後の位置(図1の例では、開閉器Ps又は開閉器Ptの位置)の位置や、分岐線26の直前又は直後の位置(図1の例では、開閉器Pu又は開閉器Pvの位置)であることが好ましい。
また、本実施形態の負荷配分決定システム30による負荷配分決定方法は、上述の電圧予測システム32による電圧予測方法を用いて、三相配電線14のそれぞれに接続される負荷の配分を決定する。この負荷配分決定方法は、負荷配分ステップを有する。負荷配分ステップは、負荷配分決定部34により実行され、電圧予測値算出ステップで算出した電圧予測値に基づき三相配電線14間の電圧不平衡を算出し、電圧不平衡が規定値以下となるように、三相配電線14のそれぞれに接続される負荷の配分を決定する。この負荷配分方法によると、補正係数kによって精度が向上した電圧予測値を用いて、電圧不平衡率εが規定値以下となるような負荷配分を決定している。従って、この負荷配分方法を用いると、電圧不平衡率εを適切に抑制することができる。
また、電圧予測値算出ステップにおいて、電圧予測値算出部46は、三相配電線14のそれぞれに接続される負荷配分の組み合わせ毎に計算を実行して、負荷配分の組み合わせ毎の電圧予測値を算出する。そして、負荷配分ステップにおいて、負荷配分決定部34は、各電圧予測値から算出した電圧不平衡が最小となる負荷配分の組み合わせを、三相配電線14のそれぞれに接続される負荷の配分として決定する。この電圧予測値算出ステップによると、複数の負荷配分の組み合わせから、電圧不平衡が最小となるものを、負荷の配分として決定する。従って、この負荷配分方法を用いると、電圧不平衡率εをより適切に抑制することができる。
なお、本実施形態では、負荷配分決定部34により、電圧不平衡を抑制する負荷配分を決定した。しかし、負荷配分決定部34による負荷配分は必ずしも行う必要はなく、電圧予測システム32のみを用いてもよい。この場合でも、電圧予測システム32は、補正係数kの導入により、電圧予測値の精度を向上させているので、新たに負荷が加わった場合に電圧不平衡を小さくするような接続相を決定したり、電圧不平衡を設定した値にする場合における負荷配分を決定したりすることもできる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、これら実施形態の内容によりこの発明が限定されるものではない。また、前述した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、前述した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。さらに、前述した実施形態の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。