以下、図面を参照して種々の実施形態について詳細に説明する。各図面において同一又は相当の部分に対しては同一の符号を附す。
[プラズマ処理装置]
図1は、一実施形態に係るプラズマ処理装置を示す図である。図1に示されるように、プラズマ処理装置1は、チャンバ本体12、及び、マイクロ波出力装置16を備える。プラズマ処理装置1は、ステージ14、アンテナ18、及び、誘電体窓20を更に備え得る。
チャンバ本体12は、その内部に処理空間Sを提供する。チャンバ本体12は、側壁12a及び底部12bを有する。側壁12aは、略筒形状に形成される。この側壁12aの中心軸線は、鉛直方向に延びる軸線Zに略一致する。底部12bは、側壁12aの下端側に設けられる。底部12bには、排気用の排気孔12hが設けられる。また、側壁12aの上端部は開口である。
側壁12aの上端部の上には誘電体窓20が設けられる。この誘電体窓20は、処理空間Sに対向する下面20aを有する。誘電体窓20は、側壁12aの上端部の開口を閉じている。この誘電体窓20と側壁12aの上端部との間にはOリング19が介在する。このOリング19により、チャンバ本体12がより確実に密閉される。
ステージ14は、処理空間S内に収容される。ステージ14は、鉛直方向において誘電体窓20と対面するように設けられる。また、ステージ14は、誘電体窓20と当該ステージ14との間に処理空間Sを挟むように設けられる。このステージ14は、その上に載置される被加工物WP(例えば、ウエハ)を支持するように構成される。
一実施形態において、ステージ14は、基台14a及び静電チャック14cを含む。基台14aは、略円盤形状を有しており、アルミニウムといった導電性の材料から形成されている。基台14aの中心軸線は、軸線Zに略一致する。この基台14aは、筒状支持部48によって支持される。筒状支持部48は、絶縁性の材料から形成されており、底部12bから垂直上方に延びる。筒状支持部48の外周には、導電性の筒状支持部50が設けられる。筒状支持部50は、筒状支持部48の外周に沿ってチャンバ本体12の底部12bから垂直上方に延びる。この筒状支持部50と側壁12aとの間には、環状の排気路51が形成される。
排気路51の上部には、バッフル板52が設けられる。バッフル板52は、環形状を有する。バッフル板52には、当該バッフル板52を板厚方向に貫通する複数の貫通孔が形成される。このバッフル板52の下方には上述した排気孔12hが設けられる。排気孔12hには、排気管54を介して排気装置56が接続される。排気装置56は、自動圧力制御弁(APC:Automatic Pressure Control valve)と、ターボ分子ポンプといった真空ポンプとを有する。この排気装置56により、処理空間Sを所望の真空度まで減圧することができる。
基台14aは、高周波電極を兼ねる。基台14aには、給電棒62及びマッチングユニット60を介して、高周波バイアス用の高周波電源58が電気的に接続される。高周波電源58は、被加工物WPに引き込むイオンのエネルギーを制御するのに適した一定の周波数、例えば、13.56MHzの高周波を、設定されたパワーで出力する。
さらに、高周波電源58は、パルス生成器を有し、高周波パワー(RFパワー)をパルス変調して基台14aに印加してもよい。この場合、高周波電源58は、HighレベルのパワーとLowレベルのパワーとが周期的に繰り返される高周波パワーとなるようにパルス変調する。高周波電源58は、パルス生成器により生成された同期信号PSS−Rに基づいてパルス調整する。同期信号PSS−Rは、高周波パワーの周期及びデューティ比を決定する信号である。パルス変調時の設定の一例として、パルス周波数は10Hz〜250kHzであり、パルスのデューティ比(パルス周期に対するHighレベルパワー時間の比)は10%〜90%である。
マッチングユニット60は、高周波電源58側のインピーダンスと、主に電極、プラズマ、チャンバ本体12といった負荷側のインピーダンスとの間で整合をとるための整合器を収容する。この整合器の中には自己バイアス生成用のブロッキングコンデンサが含まれる。マッチングユニット60は、高周波パワーがパルス変調される場合、同期信号PSS−Rに基づいて整合をとるように動作する。
基台14aの上面には、静電チャック14cが設けられる。静電チャック14cは、被加工物WPを静電吸着力で保持する。静電チャック14cは、電極14d、絶縁膜14e、及び、絶縁膜14fを含んでおり、概ね円盤形状である。静電チャック14cの中心軸線は軸線Zに略一致する。この静電チャック14cの電極14dは、導電膜によって構成されており、絶縁膜14eと絶縁膜14fとの間に設けられる。電極14dには、直流電源64がスイッチ66及び被覆線68を介して電気的に接続される。静電チャック14cは、直流電源64より印加される直流電圧により発生するクーロン力によって、被加工物WPを吸着保持することができる。また、基台14a上には、フォーカスリング14bが設けられる。フォーカスリング14bは、被加工物WP及び静電チャック14cを囲むように配置される。
基台14aの内部には、冷媒室14gが設けられる。冷媒室14gは、例えば、軸線Zを中心に延在するように形成される。この冷媒室14gには、チラーユニットからの冷媒が配管70を介して供給される。冷媒室14gに供給された冷媒は、配管72を介してチラーユニットに戻される。この冷媒の温度がチラーユニットによって制御されることにより、静電チャック14cの温度、ひいては被加工物WPの温度が制御される。
また、ステージ14には、ガス供給ライン74が形成される。このガス供給ライン74は、伝熱ガス、例えば、Heガスを、静電チャック14cの上面と被加工物WPの裏面との間に供給するために設けられる。
マイクロ波出力装置16は、チャンバ本体12内に供給される処理ガスを励起させるためのマイクロ波を出力する。マイクロ波出力装置16は、マイクロ波の周波数、パワー、及び、帯域幅を可変に調整するよう構成される。マイクロ波出力装置16は、例えば、マイクロ波の帯域幅を略0に設定することによって、単一周波数のマイクロ波を発生することができる。また、マイクロ波出力装置16は、その中に複数の周波数成分を有する帯域幅を有したマイクロ波を発生することができる。これら複数の周波数成分のパワーは同一のパワーであってもよく、帯域内の中央周波数成分のみが他の周波数成分のパワーよりも大きいパワーを有していてもよい。一例において、マイクロ波出力装置16は、マイクロ波のパワーを0W〜5000Wの範囲内で調整することができ、マイクロ波の周波数又は中央周波数を2400MHz〜2500MHzの範囲内で調整することでき、マイクロ波の帯域幅を0MHz〜100MHzの範囲で調整することができる。また、マイクロ波出力装置16は、帯域内におけるマイクロ波の複数の周波数成分の周波数のピッチ(キャリアピッチ)を0〜25kHzの範囲内で調整することができる。
マイクロ波出力装置16は、パルス生成器を有し、マイクロ波のパワーをパルス変調して出力してもよい。この場合、マイクロ波出力装置16は、HighレベルのパワーとLowレベルのパワーとが周期的に繰り返されるパワーとなるようにマイクロ波をパルス変調する。マイクロ波出力装置16は、パルス生成器により生成された同期信号PSS−Mに基づいてパルス調整する。同期信号PSS−Mは、マイクロ波パワーの周期及びデューティ比を決定する信号である。パルス変調時の設定の一例として、パルス周波数は1Hz〜20kHzであり、パルスのデューティ比(パルス周期に対するHighレベルパワー時間の比)は10%〜90%である。マイクロ波出力装置16は、高周波電源58により出力される、パルス変調させた高周波パワーと同期させるように、マイクロ波パワーをパルス変調してもよい。
プラズマ処理装置1は、導波管21、チューナ26、モード変換器27、及び、同軸導波管28を更に備える。マイクロ波出力装置16の出力部は、導波管21の一端に接続される。導波管21の他端は、モード変換器27に接続される。導波管21は、例えば、矩形導波管である。導波管21には、チューナ26が設けられる。チューナ26は、スタブ26a,26b,26cを有する。スタブ26a,26b,26cの各々は、導波管21の内部空間に対するその突出量を調整可能なように構成される。チューナ26は、基準位置に対するスタブ26a,26b,26cの各々の突出位置を調整することにより、マイクロ波出力装置16のインピーダンスと負荷、例えば、チャンバ本体12のインピーダンスとを整合させる。
モード変換器27は、導波管21からのマイクロ波のモードを変換して、モード変換後のマイクロ波を同軸導波管28に供給する。同軸導波管28は、外側導体28a及び内側導体28bを含む。外側導体28aは、略円筒形状を有しており、その中心軸線は軸線Zに略一致する。内側導体28bは、略円筒形状を有しており、外側導体28aの内側で延在する。内側導体28bの中心軸線は、軸線Zに略一致する。この同軸導波管28は、モード変換器27からのマイクロ波をアンテナ18に伝送する。
アンテナ18は、誘電体窓20の下面20aの反対側の面20b上に設けられる。アンテナ18は、スロット板30、誘電体板32、及び、冷却ジャケット34を含む。
スロット板30は、誘電体窓20の面20b上に設けられる。このスロット板30は、導電性を有する金属から形成されており、略円盤形状を有する。スロット板30の中心軸線は軸線Zに略一致する。スロット板30には、複数のスロット孔30aが形成される。複数のスロット孔30aは、一例においては、複数のスロット対を構成する。複数のスロット対の各々は、互いに交差する方向に延びる略長孔形状の二つのスロット孔30aを含む。複数のスロット対は、軸線Z周りの一以上の同心円に沿って配列される。また、スロット板30の中央部には、後述する導管36が通過可能な貫通孔30dが形成される。
誘電体板32は、スロット板30上に設けられる。誘電体板32は、石英といった誘電体材料から形成されており、略円盤形状である。この誘電体板32の中心軸線は軸線Zに略一致する。冷却ジャケット34は、誘電体板32上に設けられる。誘電体板32は、冷却ジャケット34とスロット板30との間に設けられる。
冷却ジャケット34の表面は、導電性を有する。冷却ジャケット34の内部には、流路34aが形成される。この流路34aには、冷媒が供給されるように構成される。冷却ジャケット34の上部表面には、外側導体28aの下端が電気的に接続される。また、内側導体28bの下端は、冷却ジャケット34及び誘電体板32の中央部分に形成された孔を通って、スロット板30に電気的に接続される。
同軸導波管28からのマイクロ波は、誘電体板32内を伝搬して、スロット板30の複数のスロット孔30aから誘電体窓20に供給される。誘電体窓20に供給されたマイクロ波は、処理空間Sに導入される。
同軸導波管28の内側導体28bの内孔には、導管36が通っている。また、上述したように、スロット板30の中央部には、導管36が通過可能な貫通孔30dが形成される。導管36は、内側導体28bの内孔を通って延在しており、ガス供給系38に接続される。
ガス供給系38は、被加工物WPを処理するための処理ガスを導管36に供給する。ガス供給系38は、ガス源38a、弁38b、及び、流量制御器38cを含み得る。ガス源38aは、処理ガスのガス源である。弁38bは、ガス源38aからの処理ガスの供給及び供給停止を切り替える。流量制御器38cは、例えば、マスフローコントローラであり、ガス源38aからの処理ガスの流量を調整する。
プラズマ処理装置1は、インジェクタ41を更に備え得る。インジェクタ41は、導管36からのガスを誘電体窓20に形成された貫通孔20hに供給する。誘電体窓20の貫通孔20hに供給されたガスは、処理空間Sに供給される。そして、誘電体窓20から処理空間Sに導入されるマイクロ波によって、当該処理ガスが励起される。これにより、処理空間S内でプラズマが生成され、当該プラズマからのイオン及び/又はラジカルといった活性種により、被加工物WPが処理される。
プラズマ処理装置1は、制御器100を更に備える。制御器100は、プラズマ処理装置1の各部を統括制御する。制御器100は、CPUといったプロセッサ、ユーザインタフェース、及び、記憶部を備え得る。
プロセッサは、記憶部に記憶されたプログラム及びプロセスレシピを実行することにより、マイクロ波出力装置16、ステージ14、ガス供給系38、排気装置56等の各部を統括制御する。
ユーザインタフェースは、工程管理者がプラズマ処理装置1を管理するためにコマンドの入力操作等を行うキーボード又はタッチパネル、プラズマ処理装置1の稼働状況等を可視化して表示するディスプレイ等を含んでいる。
記憶部には、プラズマ処理装置1で実行される各種処理をプロセッサの制御によって実現するための制御プログラム(ソフトウエア)、及び、処理条件データ等を含むプロセスレシピ等が保存される。プロセッサは、ユーザインタフェースからの指示等、必要に応じて、各種の制御プログラムを記憶部から呼び出して実行する。このようなプロセッサの制御下で、プラズマ処理装置1において所望の処理が実行される。
[マイクロ波出力装置16の構成例]
図2は、マイクロ波出力装置の一例を示す図である。図2に示されるように、マイクロ波出力装置16は、制御器100及び波形発生器161を有する演算装置100aに接続されている。
波形発生器161は、マイクロ波の波形を発生する。波形発生器161は、制御器100により指定された設定周波数及び設定帯域幅にそれぞれ応じた中央周波数及び帯域幅を有するマイクロ波の波形を発生する。波形発生器161は、マイクロ波の波形をマイクロ波出力装置16へ出力する。
マイクロ波出力装置16は、波形発生器161により発生されたマイクロ波の波形を、制御器100の設定に応じてパルス変調し、マイクロ波として出力する。マイクロ波出力装置16は、マイクロ波発生部16a、導波管16b、サーキュレータ16c、導波管16d、導波管16e、第1の方向性結合器16f、第2の方向性結合器16h、測定部16k(測定部の一例)、及び、ダミーロード16jを有する。
マイクロ波発生部16aは、制御器100から指示されたパルス周波数、設定デューティ比、Highレベルの設定パワー及びLowレベルの設定パワーにそれぞれ応じたパルス周波数、デューティ比、Highレベル及びLowレベルとなるようにパワーがパルス変調された該マイクロ波を発生する。
マイクロ波発生部16aは、パワー制御部162、減衰器163、増幅器164、増幅器165、及び、モード変換器166を有する。
波形発生器161は、減衰器163に接続される。減衰器163は、一例として、印加電圧値によって減衰量(減衰率)を変更可能な機器である。減衰器163には、パワー制御部162が接続される。パワー制御部162は、印加電圧値を用いて減衰器163におけるマイクロ波の減衰率(減衰量)を制御する。パワー制御部162は、波形発生器161により出力されたマイクロ波が、制御器100により指示されたパルス周波数、設定デューティ比、Highレベルの設定パワー及びLowレベルの設定パワーに応じたパワーを有するマイクロ波となるように、減衰器163におけるマイクロ波の減衰率(減衰量)を制御する。
パワー制御部162は、一例として、制御部162a及びパルス生成器162bを有する。制御部162aは、プロセッサであり得る。制御部162aは、制御器100から設定プロファイルを取得する。制御部162aは、設定プロファイルの中からパルス変調のために必要な情報(パルス周波数及びデューティ比)をパルス生成器162bへ出力する。パルス生成器162bは、取得した情報に基づいて同期信号PSS−Mを生成する。制御部162aは、同期信号PSS−M、及び、制御器100によって設定された設定プロファイルに基づいてマイクロ波の減衰率(減衰量)を決定する。
制御部162aは、高周波電源58のパルス生成器58aから生成された同期信号PSS−Rを取得してもよい。パルス生成器162bは、同期信号PSS−Rと同期した同期信号PSS−Mを生成してもよい。この場合、マイクロ波パワーのパルス変調と高周波パワーのパルス変調とを同期させることができる。
減衰器163の出力は、増幅器164及び増幅器165を介してモード変換器166に接続される。増幅器164及び増幅器165は、マイクロ波をそれぞれに所定の増幅率で増幅する。モード変換器166は、増幅器165から出力されるマイクロ波の伝搬モードをTEMからTE01に変換する。このモード変換器166におけるモード変換によって生成されたマイクロ波は、マイクロ波発生部16aの出力マイクロ波として出力される。
マイクロ波発生部16aの出力は導波管16bの一端に接続される。導波管16bの他端は、サーキュレータ16cの第1ポート261に接続される。サーキュレータ16cは、第1ポート261、第2ポート262A、及び、第3ポート263Aを有する。サーキュレータ16cは、第1ポート261に入力されたマイクロ波を第2ポート262Aから出力し、第2ポート262Aに入力したマイクロ波を第3ポート263Aから出力するように構成される。サーキュレータ16cの第2ポート262Aには導波管16dの一端が接続される。導波管16dの他端は、マイクロ波出力装置16の出力部16tである。
サーキュレータ16cの第3ポート263Aには、導波管16eの一端が接続される。導波管16eの他端はダミーロード16jに接続される。ダミーロード16jは、導波管16eを伝搬するマイクロ波を受けて、当該マイクロ波を吸収する。ダミーロード16jは、例えば、マイクロ波を熱に変換する。
第1の方向性結合器16fは、導波管16bの一端と他端との間に設けられる。第1の方向性結合器16fは、マイクロ波発生部16aから出力されて、出力部16tに伝搬するマイクロ波(即ち、進行波)の一部を分岐させて、当該進行波の一部を出力するように構成される。
第2の方向性結合器16hは、導波管16eの一端と他端との間に設けられる。第2の方向性結合器16hは、出力部16tに戻されたマイクロ波(即ち、反射波)について、サーキュレータ16cの第3ポート263Aに伝送された反射波の一部を分岐させて、当該反射波の一部を出力するように構成される。
測定部16kは、第1の方向性結合器16fから出力された進行波の一部に基づき、出力部16tにおける進行波のパワーのHighレベル及びLowレベルのそれぞれを示す第1のHigh測定値pf(H)及び第1のLow測定値pf(L)を決定する。また、測定部16kは、第2の方向性結合器16hから出力された反射波の一部に基づき、出力部16tにおける反射波のパワーのHighレベル及びLowレベルのそれぞれを示す第2のHigh測定値pr(H)及び第2のLow測定値pr(L)を決定する。
測定部16kは、パワー制御部162に接続される。測定部16kは、測定値をパワー制御部162に出力する。パワー制御部162は、進行波と反射波との測定値の差、即ちロードパワー(実効パワー)が、制御器100によって指定される設定パワーに一致するように、減衰器163を制御する(パワーフィードバック制御)。
チューナ26は、チューナ制御部260を有する。チューナ制御部260は、制御器100の信号に基づいて、マイクロ波出力装置16側のインピーダンスとアンテナ18側のインピーダンスとを整合するようにスタブ26a、26b,26cの突出位置を調整する。チューナ制御部260は、図示しないドライバ回路及びアクチュエータにより、スタブ26a、26b,26cを動作させる。
チューナ制御部260は、パルス生成器162bにより生成されたマイクロ波パワー用の同期信号PSS−M、及び、高周波電源58のパルス生成器58aにより生成された高周波パワー用の同期信号PSS−Rの少なくとも一方を取得してもよい。例えば、チューナ制御部260は、同期信号PSS−Mを制御部162aから取得する。チューナ制御部260は、同期信号PSS−Rを制御部162aから取得してもよいし、高周波電源58のパルス生成器58aから直接取得してもよい。チューナ制御部260は、同期信号を考慮して、スタブ26a、26b,26cを動作させてもよい。
[波形発生部の詳細]
図3は、波形発生部におけるマイクロ波の生成原理を説明する図である。図3に示されるように、波形発生器161は、例えば、基準周波数と位相を同期させたマイクロ波を発振することが可能なPLL(Phase Locked Loop)発振器と、PLL発振器に接続されたIQデジタル変調器とを有する。波形発生器161は、PLL発振器において発振されるマイクロ波の周波数を制御器100により指定された設定周波数に設定する。そして、波形発生器161は、PLL発振器からのマイクロ波と、当該PLL発振器からのマイクロ波とは90°の位相差を有するマイクロ波とを、IQデジタル変調器を用いて変調する。これにより、波形発生器161は、帯域内において複数の周波数成分を有するマイクロ波、又は、単一周波数のマイクロ波を生成する。
波形発生器161は、例えば、N個の複素データシンボルに対する逆離散フーリエ変換を行って連続信号を生成することにより、複数の周波数成分を有するマイクロ波を生成することが可能である。この信号の生成方法は、ディジタルテレビ放送等で用いられるOFDMA(Orthogonal Frequency−Division Multiple Access)変調方式と同様の方法であり得る(例えば特許5320260号参照)。
一例では、波形発生器161は、予めデジタル化された符号の列で表された波形データを有する。波形発生器161は、波形データを量子化し、量子化したデータに対して逆フーリエ変換を適用することにより、IデータとQデータとを生成する。そして、波形発生器161は、Iデータ及びQデータの各々に、D/A(Digital/Analog)変換を適用して、二つのアナログ信号を得る。波形発生器161は、これらアナログ信号を、低周波成分のみを通過させるLPF(ローパスフィルタ)へ入力する。波形発生器161は、LPFから出力された二つのアナログ信号を、PLL発振器からのマイクロ波、PLL発振器からのマイクロ波とは90°の位相差を有するマイクロ波とそれぞれミキシングする。そして、波形発生器161は、ミキシングによって生成されたマイクロ波を合成する。これにより、波形発生器161は、一又は複数の周波数成分を有するマイクロ波を生成する。
[マイクロ波の一例]
マイクロ波発生部16aから出力されるマイクロ波パワーは、HighレベルのパワーとLowレベルのパワーとを繰り返すようにパルス状に変調された波形となる。図4は、パワーがパルス変調されたマイクロ波の一例である。図4に示されるように、マイクロ波は、制御器100から指示された設定周波数及び設定帯域幅にそれぞれ応じた中央周波数及び帯域幅を有し、制御器100から指示されたパルス周波数、設定デューティ比、Highレベルの設定パワー及びLowレベルの設定パワーにそれぞれ応じたパルス周波数、デューティ比、Highレベルのパワー及びLowレベルのパワーを有する。Lowレベルのパワーは、Highレベルのパワーよりも低いパワーであり、プラズマ生成状態を維持するのに必要な最も低いレベルより高いパワーとされる。
[マイクロ波の同期信号の一例]
図5は、マイクロ波をパルス変調するための同期信号の一例である。図5に示されるように、同期信号PSS−Mは、ON状態(High状態)とOFF状態(Low状態)とが交互に出現するパルス信号である。同期信号PSS−Mのパルス周期PT1は、Highレベルとなるタイミングの間隔で定義する。HighレベルとLowレベルとの差分をΔとすると、High時間HTは、パルスの立ち上がり期間PUにおいて0.5Δとなるタイミングからパルスの立ち下がり期間PDにおいて0.5Δとなるタイミングまでの期間として定義する。パルス周期PT1に対するHigh時間HTの比がデューティ比である。パルス生成器162bは、制御器100により指定されたパルス周波数(1/PT1)及びデューティ比(HT/PT1×100[%])に基づいて、図5に示されるような同期信号を生成する。
[パワーフィードバックの一例]
図6は、マイクロ波のパワーフィードバックに関する構成の一例を示す図である。図6に示されるように、パワーフィードバックは、測定部16k、制御部162a及び減衰器163によって実現する。
図6に示されるように、波形発生器161は、帯域幅を有するマイクロ波を出力する。制御部162a及び減衰器163は、帯域幅を有するマイクロ波をパルス変調する。マイクロ波発生部16aは、パルス変調されたマイクロ波を出力する。測定部16kは、マイクロ波の進行波及び反射波のパワーを計測し、制御部162aへ出力する。制御部162aは、進行波のパワー検出値と反射波のパワー検出値との差分が設定値となるようにパワーフィードバックを行う。このようなフィードバックループによって、制御器100によって指定された設定値を実現する。
ここで、マイクロ波のパワーがパルス変調されている場合においては、Highレベルのパワー及びLowレベルのパワーを、それぞれ個別にフィードバック制御する必要がある。つまり、測定部16kは、第1のHigh測定値pf(H)、第1のLow測定値pf(L)、第2のHigh測定値pr(H)及び第2のLow測定値pr(L)を計測し、計測結果を制御部162aへ出力する。制御部162aは、同期信号PSS−Mに基づいて、HighレベルのパワーのフィードバックとLowレベルのパワーのフィードバックとを切り替える。
制御部162aは、Highレベルのパワーのフィードバック時には、第1のHigh測定値pf(H)、第2のHigh測定値pr(H)及びHighレベルの設定パワーに基づいて、パルス変調されたマイクロ波のHighレベルのパワーを制御する。制御部162aは、Lowレベルのパワーのフィードバック時には、第1のLow測定値pf(L)、第2のLow測定値pr(L)及びLowレベルの設定パワーに基づいて、パルス変調されたマイクロ波のLowレベルのパワーを制御する。
より具体的には、制御部162aは、Highレベルのパワーのフィードバック時には、第1のHigh測定値pf(H)と第2のHigh測定値pr(H)との差を制御器100によって指定された設定Highパワーに近づけるように、マイクロ波出力装置16から出力されるマイクロ波のHighレベルのパワーを制御する。また、制御部162aは、Lowレベルのパワーのフィードバック時には、第1のLow測定値pf(L)と第2のLow測定値pr(L)との差を制御器100によって指定された設定Lowパワーに近づけるように、マイクロ波出力装置16から出力されるマイクロ波のLowレベルのパワーを制御する。これにより、出力部16tに結合される負荷に供給されるマイクロ波のロードパワーが、設定パワーに近づけられる。
[フィードバックの制御モードの切り替え]
制御部162aは、制御モードに応じてフィードバックの演算を変更してもよい。制御モードは、制御器100によって指定され得る。例えば、制御器100から指示された制御モードがPLモード(第1の制御モードの一例)である場合には、制御部162aは、上述したとおり、進行波と反射波とのパワー差分を用いてマイクロ波のパワーを制御する。制御器100から指示された制御モードがPfモード(第2の制御モードの一例)である場合には、制御部162aは、進行波のパワーのみを用いてマイクロ波のパワーを制御する。より具体的な一例として、制御部162aは、制御器100から指示された制御モードがPfモードである場合には、第1のHigh測定値pf(H)がHighレベルの設定パワーに近づくように、パルス変調されたマイクロ波のHighレベルのパワーを制御するとともに、第1のLow測定値pf(L)がLowレベルの設定パワーに近づくように、パルス変調されたマイクロ波のLowレベルのパワーを制御する。
[マイクロ波パワーと高周波パワーとの同期信号の関係]
マイクロ波パワー及び高周波パワーは共にパルス制御されている。図6に示される構成では、高周波パワーの同期信号PSS−Rは、制御部162aに入力されていない。また、マイクロ波の同期信号PSS−Mは高周波電源58に入力されていない。このため、マイクロ波パワー及び高周波パワーは非同期となる。図7は、マイクロ波のパワー変調の同期信号と高周波のパワー変調の同期信号とが同期しない場合の一例を示す図である。図7の信号(A)は、マイクロ波パワーの同期信号PSS−Mであり、図7の信号(B)は、高周波パワーの同期信号PSS−Rである。図7に示されるように、マイクロ波パワーの同期信号PSS−Mのパルス周期PT1と、高周波パワーの同期信号PSS−Rのパルス周期PT2とは同期していない。
一実施形態においては、マイクロ波パワー及び高周波パワーを同期させてもよい。この場合、高周波パワーのパルス変調がマイクロ波の反射波に与える影響を小さくすることができる。図8は、マイクロ波のパワーフィードバックに関する構成の他の例を示す図である。図6に示された非同期のパワーフィードバックの構成と比較すると、他の例においては、マイクロ波出力装置が、高周波パワーと同期するようにパワーがパルス変調されたマイクロ波を発生する点が相違し、その他は同一である。高周波電源58のパルス生成器58aは、高周波パワーの同期信号PSS−Rを制御部162aへ出力する。制御部162aは、パルス生成器162bに対して同期信号PSS−Rと同期するための同期トリガを出力する。パルス生成器162bは、同期トリガに基づいて同期信号PSS−Rと同期するマイクロ波パワーの同期信号PSS−Mを生成する。制御部162aは、同期信号PSS−Mを用いて減衰器163を制御する。これにより、高周波パワーと同期するようにパワーがパルス変調されたマイクロ波が出力される。
[第1同期例]
図9は、マイクロ波のパワー変調の同期信号と高周波のパワー変調の同期信号とが同期する第1同期例を示す図である。図9の信号(A)は、マイクロ波パワーの同期信号PSS−Mであり、図9の信号(B)は、高周波パワーの同期信号PSS−Rである。制御部162aは、同期信号PSS−Rに基づいて、高周波パワーがHighレベルとなるタイミングを取得する(図中矢印)。制御部162aは、高周波パワーがHighレベルとなるタイミングを同期トリガとしてパルス生成器162bへ出力する。パルス生成器162bは、マイクロ波のパワーがHighレベルとなるタイミングを、高周波パワーがHighレベルとなるタイミングに同期させる。これにより、マイクロ波のパルス周期PT1と高周波パワーのパルス周期PT2とを同期させることができる。なお、第1同期例には、同期番号No.1が割り振られている。
[第2同期例]
図10は、マイクロ波のパワー変調の同期信号と高周波のパワー変調の同期信号とが同期する第2同期例を示す図である。図10の信号(A)は、マイクロ波パワーの同期信号PSS−Mであり、図10の信号(B)は、高周波パワーの同期信号PSS−Rである。制御部162aは、同期信号PSS−Rに基づいて、高周波パワーがLowレベルとなるタイミングを取得する(図中矢印)。制御部162aは、高周波パワーがLowレベルとなるタイミングを同期トリガとしてパルス生成器162bへ出力する。パルス生成器162bは、マイクロ波のパワーがLowレベルとなるタイミングを、高周波パワーがLowレベルとなるタイミングに同期させる。これにより、マイクロ波のパルス周期PT1と高周波パワーのパルス周期PT2とを同期させることができる。なお、第2同期例には、同期番号No.2が割り振られている。
[パワーフィードバックに関する詳細構成]
[詳細構成の第1例]
図11は、マイクロ波出力装置のパワーフィードバックに関する詳細構成の第1例を示す図である。図11に示されるように、マイクロ波発生部16aの制御部162aは、制御器100から設定プロファイルを取得する。設定プロファイルは、Highレベルの設定パワーPfH、Lowレベルの設定パワーPfL、パルス周波数、デューティ比、及び、同期番号を少なくとも含む。同期番号は、同期の種別を選択する識別子であり、例えば上述した第1同期例と第2同期例とを識別する番号である。同期番号が指定されない場合には、マイクロ波のパワー変調の同期信号と高周波のパワー変調の同期信号とは非同期となる。あるいは、同期番号の1つを非同期に割り当ててもよい。設定プロファイルは、センター周波数、変調波形、及び、PL/Pfモードの設定を含んでもよい。変調波形は、設定帯域幅である。制御部162aは、制御器100から取得されたパルス周波数及びデューティ比を、パルス生成器162bへ出力する。
制御部162aは、パルス入力器167aを備えている。制御部162aは、パルス入力器167aを介して、高周波パワーの同期信号PSS−Rを取得する。制御部162aは、同期信号PSS−R及び同期番号に基づいて、同期トリガを生成する。なお、制御部162aは、同期番号が指定されない場合には、同期トリガは生成しなくてもよい。制御部162aは、パルス出力器167dを備えている。制御部162aは、パルス出力器167dを介して、同期トリガをパルス生成器162bへ出力する。
パルス生成器162bは、パルス周波数及びデューティ比と、同期トリガとに基づいて、マイクロ波の同期信号PSS−Mを生成する。パルス生成器162bは、マイクロ波のパワー変調の同期信号と高周波のパワー変調の同期信号とが非同期の場合には、パルス周波数及びデューティ比に基づいて、マイクロ波の同期信号PSS−Mを生成する。
制御部162aは、同期信号PSS−Mに基づいて、減衰器163への印加電圧値を決定する。制御部162aは、印加電圧値をD/A変換器167fへ出力する。D/A変換器167fは、出力(設定)された電圧値のデジタル信号をアナログ信号へ変換する。制御部162aは、D/A変換器167fを介して、減衰器163へ電圧を印加する。これにより、パルス変調されたマイクロ波がマイクロ波発生部16aから出力される。
測定部16kは、第1の方向性結合器16f及び第2の方向性結合器16hから出力されたマイクロ波に係る進行波パワー及び反射波パワーを、進行波パワーの測定値pf、反射波パワーの測定値prとして出力する。
制御部162aは、アナログ信号をデジタル信号に変換するA/D変換器167b,167cを備えている。制御部162aは、A/D変換器167b,167cを介して、進行波のパワーの測定値pf及び反射波のパワーの測定値prを測定部16kから取得する。
制御部162aは、記憶部162cを参照可能に構成されている。制御部162aは、記憶部162cに格納された定義データDA1を参照して、測定値(pf,pr)から取得すべきデータを特定することができる。定義データDA1は、例えばデータ点をサンプリングする期間を限定するマスク(フィルタ)を含む。定義データDA1は、例えば、制御部162aが内部設定を入力して記憶部162cに予め格納される。
制御部162aは、定義データDA1を参照して、進行波のパワーの測定値pfに含まれるHighレベルの測定値pfH及びLowレベルの測定値pfLを検出するとともに、反射波のパワーの測定値prに含まれるHighレベルの測定値prH及びLowレベルの測定値prLを検出する。定義データDA1は、一例として、Highレベルとなるタイミングから所定時間経過するまでのH検出マスク時間(第1マスク期間)はHighレベルの測定値(pfH,prH)をサンプリングできないとする定義を含む。定義データDA1は、一例として、Lowレベルとなるタイミングから所定時間経過するまでのL検出マスク時間(第2マスク期間)はLowレベルの測定値(pfL,prL)をサンプリングできないとする定義を含む。定義データDA1は、一例として、H検出マスク時間の終了からLowレベルとなるタイミングまでのH検出区間(第1サンプル期間)においてHighレベルのパワーを測定し、L検出マスク時間の終了からHighレベルとなるタイミングまでのL検出区間(第2サンプル期間)においてLowレベルのパワーを測定するという定義を含む。
制御部162aは、検出された測定値(pfH,pfL,prH,prL)を、記憶部162cに時系列で記憶する。これにより時系列バッファDA2が生成される。時系列バッファDA2は、測定値の平均処理に用いられる。制御部162aは、時系列バッファDA2を参照して、各測定値(pfH,pfL,prH,prL)の移動平均時間を算出する。制御部162aは、各移動平均時間を用いて、平均化された測定値(Pf(H),Pf(L),Pr(H),Pr(L))をそれぞれ算出する。
制御部162aは、平均化された測定値(Pf(H),Pf(L),Pr(H),Pr(L))と、Highレベルの設定パワーPfH及びLowレベルの設定パワーPfLとを用いて、マイクロ波発生部16aの出力が設定パワーに近づくように、減衰器163の印加電圧値を決定する。例えば、制御部162aは、マイクロ波のパワーに第1の減衰量を与えるための第1信号(Highレベルのパワー用の印加電圧値)、及び、マイクロ波のパワーに第2の減衰量を与えるための第2信号(Lowレベルのパワー用の印加電圧値)を決定する。そして、制御部162aは、D/A変換器167fを介して、減衰器163へ電圧を印加する。これにより、パワーフィードバックが行われる。
制御部162aは、平均化された測定値を制御器100へ出力してもよい。平均化された測定値は、装置の稼働情報又はログ情報として制御器100の記憶部に記憶されるか、装置外部へ出力される。
[詳細構成の第2例]
図12は、マイクロ波出力装置のパワーフィードバックに関する詳細構成の第2例を示す図である。図11に示される第1例に係る構成と比較して、第2例に係る構成は、D/A変換器167fの替わりにHigh信号用のD/A変換器167g、及び、Low信号用のD/A変換器167hを備える点、パルス出力器167dから同期信号PSS−Mが制御部162aへ出力されない点が相違し、その他は同一である。このため、図11と重複する説明は省略する。
制御部162aには、Highレベルのパワー用の印加電圧値をD/A変換するD/A変換器167g(第1の変換器)と、Lowレベルのパワー用の印加電圧値をD/A変換するD/A変換器167h(第2の変換器)とが接続されている。D/A変換器167gは、Highレベルのパワー用の印加電圧値に応じたアナログ信号が出力されるように予め設定されている。D/A変換器167hは、Lowレベルのパワー用の印加電圧値に応じたアナログ信号が出力されるように予め設定されている。D/A変換器167g及びD/A変換器167hと減衰器163との間には、D/A変換器167g及び減衰器163の接続と、D/A変換器167h及び減衰器163の接続とを切り替えるソリッドステート・リレーK1(スイッチ)が設けられている。ソリッドステート・リレーK1は、パルス出力器167dから同期信号PSS−Mを直接参照し、接続を切り替える。これにより、第2例の構成は、第1例の構成と比較して、Highレベルのパワー用の印加電圧値とLowレベルのパワー用の印加電圧値とを高速に切り替えることができる。つまり、第2例の構成は、第1例の構成と比較して、より短い周期でマイクロ波のパワーをパルス変調することができる。
[検出区間]
図13は、パワー無変調時におけるマイクロ波の同期信号及びパワーの一例である。図13の信号(A)は同期信号PSS−Mであり、図13の信号(B)は、マイクロ波の進行波パワーである。図13に示されるように、マイクロ波のパワーをパルス変調しない場合、同期信号PSS−Mは一定値となる。そして、マイクロ波パワーも一定であるため、どの期間の移動平均時間を用いても、平均化された測定値(Pf(H),Pf(L))は同一となる。反射波パワーについても同様に、平均化された測定値(Pr(H),Pr(L))は同一となる。
パワー変調時においては、マイクロ波パワーが周期的に変調されている。このため、Highレベルの測定値、及び、Lowレベルの測定値を取得するためには、同期信号PSS−Mに基づいて測定する必要がある。記憶部162cには、定義データDA1として、H検出マスク時間、H検出区間、L検出マスク時間、L検出区間が記憶されている。
検出区間は、進行波パワー及び反射波パワーの何れも同一となる。このため、以下では進行波パワーを例に説明し、反射波パワーの説明は省略する。図14は、パワー変調時におけるマイクロ波の検出区間を説明する図である。図14の信号(A)は同期信号PSS−Mであり、図14の信号(B)は、マイクロ波の進行波パワーである。図14に示されるように、同期信号PSS−MのON区間をHigh区間、OFF区間をLow区間とする。同期信号PSS−Mのパルスの立ち上がりをHトリガポイント(Highレベルとなるタイミング)、パルスの立ち下がりをLトリガポイント(Lowレベルとなるタイミング)とする。
H検出マスク時間は、Hトリガポイントから所定時間経過するまでの時間である。H検出マスク時間は、データの取得が禁止される。H検出マスク時間は、マイクロ波のパワーが不安定となる区間からデータを取得することを回避するために設けられる。H検出区間は、H検出マスク時間終了からLトリガポイントまでの区間である。H検出区間は、進行波のHighレベルの測定値pfHが取得される区間である。
L検出マスク時間は、Lトリガポイントから所定時間経過するまでの時間である。L検出マスク時間は、データの取得が禁止される。L検出マスク時間は、マイクロ波のパワーが不安定となる区間からデータを取得することを回避するために設けられる。L検出区間は、L検出マスク時間終了からHトリガポイントまでの区間である。L検出区間は、進行波のLowレベルの測定値pfLが取得される区間である。
H検出区間及びL検出区間にて検出された測定値(pfH,pfL)に基づいて、平均化された測定値(Pf(H),Pf(L))が算出される。
[パワーの平均値]
図15は、パワー変調時におけるパワーの平均値を説明する図である。図15の(A)は、進行波パワーの測定値pfであり、図15の(B)は、進行波パワーの測定値pfである。
記憶部162cには、時系列バッファDA2として、進行波パワーのHighレベルの測定値pfH、進行波パワーのLowレベルの測定値pfL、反射波パワーのHighレベルの測定値prH、及び、反射波パワーのLowレベルの測定値prLがそれぞれ時系列で記憶されている。
Highレベルの測定値pfHを例に説明すると、記憶部162cの時系列バッファDA2上においては、測定値pfHは複数のH検出区間が繋ぎ合わされた区間における測定値として取り扱うことができる。これらの値は、過去に取得されたデータである。制御部162aは、複数のH検出区間が繋ぎ合わされた期間を用いて、移動平均時間を決定する。そして、制御部162aは、移動平均時間を用いて平均化された測定値Pf(H)を算出する。
制御部162aは、pfL,prH,prLについても同一の手法で、それぞれ移動平均時間を算出し、平均化された測定値Pf(L),平均化された測定値Pr(H)、及び、平均化された測定値Pr(L)を算出する。平均化された測定値を用いてパワーフィードバックの処理が行われる。
[マイクロ波出力装置の動作]
以下、マイクロ波出力装置の動作について説明する。
[パルス変調時のパワー制御処理]
マイクロ波発生部16aの制御部162aは、パルス変調時のパワー制御処理として、マイクロ波の同期信号PSS−Mの生成処理、同期信号PSS−Mに基づいた減衰器163の電圧値のスイッチ処理、進行波パワーPf及び反射波パワーPrの記憶部162cへの書き込み処理、測定値の平均処理、及び、減衰器163の制御電圧の設定処理の5つの処理をマルチタスクで並行して実行する。以下、詳細を説明する。
[マイクロ波の同期信号の生成処理]
図16は、マイクロ波の同期信号の生成処理の一例を示すフローチャートである。図16に示されるフローチャートは、例えばオペレータなどによりパワー制御処理の開始操作がされたタイミングで開始される。
図16に示されるように、マイクロ波発生部16aの制御部162aは、読み込み処理(ステップS10)として、制御器100からパルス周波数、デューティ比及び同期番号を取得する。制御部162aは、パルス周波数及びデューティ比をパルス生成器162bへ出力する。
続いて、制御部162aは、演算処理(ステップS12)として、読み込み処理(ステップS10)で取得されたパルス周波数及びデューティ比に基づいて、同期信号PSS−MがHighレベルとなるHigh時間及びLowレベルとなるLow時間を算出する。
続いて、制御部162aは、判定処理(ステップS14)として、読み込み処理(ステップS10)で取得された同期番号がNo.1であるか否かを判定する。同期番号No.1は、第1同期例に割り振られた番号である。
同期番号がNo.1であると判定された場合(ステップS14:YES)、第1同期例に係る同期信号の生成処理が開始される。第1同期例では、図9に示されるような、高周波パワーの同期信号PSS−Rに同期させた同期信号PSS−Mが生成される。この生成処理については図17を用いて後述する。同期番号がNo.1でないと判定された場合(ステップS14:NO)、制御部162aは、判定処理(ステップS16)として、読み込み処理(ステップS10)で取得された同期番号がNo.2であるか否かを判定する。同期番号No.2は、第2同期例に割り振られた番号である。
同期番号がNo.2であると判定された場合(ステップS16:YES)、第2同期例に係る同期信号の生成処理が開始される。第2同期例では、図10に示されるような、高周波パワーの同期信号PSS−Rに同期させた同期信号PSS−Mが生成される。この生成処理については図18を用いて後述する。同期番号がNo.2でないと判定された場合(ステップS16:NO)、制御部162aは、非同期処理(ステップS18)として、読み込み処理(ステップS10)で取得されたパルス周波数及びデューティ比に基づいて、高周波パワーの同期信号PSS−Rとは非同期の同期信号PSS−Mを生成する。
非同期処理(ステップS18)が終了すると、図16に示されるフローチャートが終了し、制御部162aは、読み込み処理(ステップS10)を再実行する。このように、制御部162aは、例えばオペレータなどによりパワー制御処理の終了操作がなされるまで、図16に示されるフローチャートを繰り返し実行する。なお、図16に示されるフローチャートにおいては、同期番号No.1及びNo.2についてのみ判定しているが、割り振られた同期番号の数に応じて、判定処理を追加することができる。例えば、同期番号No.3に第3同期例が割り振られている場合には、同期番号No.3であるか否かを判定する判定処理を追加することができる。
[第1同期例の同期信号の生成処理]
第1同期例では、図9に示されるように、高周波パワーの同期信号の立ち上がりとマイクロ波パワーの同期信号の立ち上がりとを同期させる。図17は、第1同期例に係る同期信号の生成処理の一例を示すフローチャートである。図17に示されるフローチャートは、図16の判定処理(ステップS14)にて同期番号がNo.1であると判定された場合(ステップS14:YES)に開始される。
図17に示されるように、マイクロ波発生部16aの制御部162aは、読み込み処理(ステップS20)として、高周波パワーの同期信号PSS−Rを、パルス入力器167aを介して取得する。
続いて、制御部162aは、判定処理(ステップS22)として、高周波パワーの同期信号PSS−Rが立ち上がりエッジであるか否かを判定する。高周波パワーの同期信号PSS−Rが立ち上がりエッジであると判定された場合(ステップS22:YES)、制御部162aは、同期するタイミングであるとして、同期トリガをパルス生成器162bへ出力する。
パルス生成器162bは、設定処理(ステップS24)として、マイクロ波のパワーの同期信号PSS−MをHighレベルに設定する。パルス生成器162bは、カウント処理(ステップS26)として、High時間をカウントする。パルス生成器162bは、経過判定処理(ステップS28)として、カウント処理(ステップS26)にてカウントされたHigh時間が図16の演算処理(ステップS12)にて演算された同期信号PSS−MのHigh時間を経過したか否かを判定する。
カウントされたHigh時間が同期信号PSS−MのHigh時間を経過していないと判定された場合(ステップS28:NO)、パルス生成器162bは、設定処理(ステップS24)及びカウント処理(ステップS26)を再実行する。つまり、パルス生成器162bは、カウントされたHigh時間が同期信号PSS−MのHigh時間を経過したと判定されるまで、設定処理(ステップS24)及びカウント処理(ステップS26)を繰り返し実行する。
カウントされたHigh時間が同期信号PSS−MのHigh時間を経過したと判定された場合(ステップS28:YES)、パルス生成器162bは、設定処理(ステップS30)として、同期信号PSS−MをLowレベルに設定する。そして、パルス生成器162bは、リセット処理(ステップS32)として、カウントされたHigh時間をリセットする。
リセット処理(ステップS32)が終了した場合、又は、高周波パワーの同期信号PSS−Rが立ち上がりエッジでないと判定された場合(ステップS22:NO)、図17に示されるフローチャートは終了し、図16の読み込み処理(ステップS10)が再実行される。このように、高周波パワーの同期信号の立ち上がりとマイクロ波パワーの同期信号の立ち上がりとが同期される。
[第2同期例の同期信号の生成処理]
第2同期例では、図10に示されるように、高周波パワーの同期信号の立ち下がりとマイクロ波パワーの同期信号の立ち上がりとを同期させる。図18は、第2同期例に係る同期信号の生成処理の一例を示すフローチャートである。図18に示されるフローチャートは、図16の判定処理(ステップS16)にて同期番号がNo.2であると判定された場合(ステップS16:YES)に開始される。
図18に示されるように、マイクロ波発生部16aの制御部162aは、読み込み処理(ステップS40)として、高周波パワーの同期信号PSS−Rを、パルス入力器167aを介して取得する。
続いて、制御部162aは、判定処理(ステップS42)として、高周波パワーの同期信号PSS−Rが立ち下がりエッジであるか否かを判定する。高周波パワーの同期信号PSS−Rが立ち下がりエッジであると判定された場合(ステップS42:YES)、制御部162aは、同期するタイミングであるとして、同期トリガをパルス生成器162bへ出力する。
続いて実行される設定処理(ステップS44)、カウント処理(ステップS46)、経過判定処理(ステップS48)、設定処理(ステップS50)及びリセット処理(ステップS52)は、図17の設定処理(ステップS24)、カウント処理(ステップS26)、経過判定処理(ステップS28)、設定処理(ステップS30)及びリセット処理(ステップS32)とそれぞれ同一である。
このように、高周波パワーの同期信号の立ち下がりとマイクロ波パワーの同期信号の立ち上がりとが同期される。
[減衰器の電圧値のスイッチ処理]
同期信号PSS−Mに基づいた減衰器163の電圧値のスイッチ処理について説明する。上述したとおり、マイクロ波発生部16aは、制御部162aの出力電圧を制御的に変更する第1例(図11)と、制御部162aの出力電圧をソリッドステート・リレーによって変更する第2例(図12)とが存在する。
[第1例の構成によるスイッチ処理]
図19は、第1例の構成を有するマイクロ波出力装置によるマイクロ波のパワー制御処理の一例である。図19に示されるフローチャートは、例えばオペレータなどによりパワー制御処理の開始操作がされたタイミングで開始される。
図19に示されるように、マイクロ波発生部16aの制御部162aは、読み込み処理(ステップS60)として、パルス生成器162bからマイクロ波の同期信号PSS−Mを取得する。
続いて、制御部162aは、判定処理(ステップS62)として、読み込み処理(ステップS60)で取得されたマイクロ波の同期信号PSS−MがHighレベルであるか否かを判定する。
マイクロ波の同期信号PSS−MがHighレベルであると判定された場合(ステップS62:YES)、制御部162aは、設定処理(ステップS64)として、D/A変換器167f(図11)をHighレベルに対応した電圧値に設定する。これにより、減衰器163によってマイクロ波のパワーがHighレベルに設定される。
マイクロ波の同期信号PSS−MがLowレベルであると判定された場合(ステップS62:NO)、制御部162aは、設定処理(ステップS66)として、D/A変換器167f(図11)をLowレベルに対応した電圧値に設定する。これにより、減衰器163によってマイクロ波のパワーがLowレベルに設定される。
設定処理(ステップS64)及び設定処理(ステップS66)が終了すると、図19に示されるフローチャートが終了し、制御部162aは、読み込み処理(ステップS60)を再実行する。このように、制御部162aは、例えばオペレータなどによりパワー制御処理の終了操作がなされるまで、図19に示されるフローチャートを繰り返し実行し、マイクロ波のパワーをパルス変調する。
[第2例の構成によるスイッチ処理]
図20は、第2例の構成を有するマイクロ波出力装置によるマイクロ波のパワー制御処理の一例である。図20に示されるフローチャートは、例えばオペレータなどによりパワー制御処理の開始操作がされたタイミングで開始される。
図20に示されるように、マイクロ波発生部16aのソリッドステート・リレーK1は、読み込み処理(ステップS70)として、パルス生成器162bからマイクロ波の同期信号PSS−Mを取得する。
続いて、ソリッドステート・リレーK1は、判定処理(ステップS72)として、読み込み処理(ステップS70)で取得されたマイクロ波の同期信号PSS−MがHighレベルであるか否かを判定する。
マイクロ波の同期信号PSS−MがHighレベルであると判定された場合(ステップS72:YES)、ソリッドステート・リレーK1は、設定処理(ステップS74)として、D/A変換器167g(図12)の電圧値にスイッチする。これにより、減衰器163によってマイクロ波のパワーがHighレベルに設定される。
マイクロ波の同期信号PSS−MがLowレベルであると判定された場合(ステップS72:NO)、ソリッドステート・リレーK1は、設定処理(ステップS76)として、D/A変換器167h(図12)の電圧値にスイッチする。これにより、減衰器163によってマイクロ波のパワーがLowレベルに設定される。
設定処理(ステップS74)及び設定処理(ステップS76)が終了すると、図20に示されるフローチャートが終了し、制御部162aは、読み込み処理(ステップS60)を再実行する。このように、制御部162aは、例えばオペレータなどによりパワー制御処理の終了操作がなされるまで、図20に示されるフローチャートを繰り返し実行し、マイクロ波のパワーをパルス変調する。
上述したスイッチ処理は、第1例及び第2例の何れか一方の構成で実現されればよい。
[測定値の記憶処理]
次に、進行波パワーPf及び反射波パワーPrの記憶部162cへの書き込み処理を説明する。図21及び図22は、パワー測定値の記憶処理の一例を示すフローチャートである。図21及び図22に示されるフローチャートは、例えばオペレータなどによりパワー制御処理の開始操作がされたタイミングで開始される。
図21に示されるように、マイクロ波発生部16aの制御部162aは、読み込み処理(ステップS80)として、制御器100からパルス周波数及びデューティ比を取得し、記憶部162cを参照してH検出マスク時間、H検出区間、L検出マスク時間及びL検出区間を取得する。
続いて、制御部162aは、読み込み処理(ステップS82)として、パルス生成器162bからマイクロ波の同期信号PSS−Mを取得する。
続いて、制御部162aは、判定処理(ステップS84)として、読み込み処理(ステップS82)で取得された同期信号PSS−Mの立ち上がりを検出したか否かを判定する。
同期信号PSS−Mの立ち上がりを検出したと判定された場合(ステップS84:YES)、制御部162aは、タイマー処理(ステップS86)として、H期間タイマーをスタートさせる。H期間タイマーは、同期信号PSS−Mの立ち上がりからの時間経過をカウントするタイマーである。
制御部162aは、判定処理(ステップS88)として、Highレベルの区間であるか否かを判定する。制御部162aは、タイマー処理(ステップS86)にてカウントされたH期間タイマーと、読み込み処理(ステップS80)で取得されたパルス周波数及びデューティ比とを用いて、Highレベルの区間であるか否かを判定する。
Highレベルの区間であると判定された場合(ステップS88:YES)、制御部162aは、判定処理(ステップS90)として、H検出期間であるか否かを判定する。制御部162aは、タイマー処理(ステップS86)にてカウントされたH期間タイマーを用いて、H検出期間であるか否かを判定する。
H検出期間であると判定された場合(ステップS90:YES)、制御部162aは、整理処理(ステップS92)として、記憶部162cに格納されたデータのうち最も古いデータを削除する。nをバッファメモリの数とすると、制御部162aは、進行波パワーの測定値pfH(0)及び反射波パワーの測定値prH(0)を削除する。そして、制御部162aは、進行波パワーの測定値pfH(n)、反射波パワーの測定値prH(n)のデータ上の格納位置を、それぞれ測定値pfH(n−1),測定値prH(n−1)の格納位置へシフトさせる。
続いて、制御部162aは、書き込み処理(ステップS94)として、測定値を記憶部162cに記憶する。制御部162aは、A/D変換器167b(図11,図12)により検出される進行波パワーの測定値Pfを記憶部162cのpfH(n)に記憶する。制御部162aは、A/D変換器167c(図11,図12)により検出される反射波パワーの測定値Prを記憶部162cのprH(n)に記憶する。
H検出期間でないと判定された場合(ステップS90:NO)、又は、書き込み処理(ステップS94)が終了すると、制御部162aは、判定処理(ステップS88)を再実行する。このように、Highレベルの区間であって、かつ、H検出区間である場合のみ、整理処理(ステップS92)及び書き込み処理(ステップS94)が実行される。これにより、進行波のHighレベルのパワーの測定値pfH(n)及び反射波のHighレベルのパワーの測定値prH(n)が時系列で記憶部162cに格納される。
Highレベルの区間でないと判定された場合(ステップS88:NO)、制御部162aは、読み込み処理(ステップS80)を再実行する。同期信号PSS−Mの立ち上がりを検出した後に、Highレベルの区間でないと判定された場合は、1つのパルスが終了したことを意味する。このため、読み込み処理(ステップS80)から新たに処理を実行する。
同期信号PSS−Mの立ち上がりを検出しないと判定された場合(ステップS84:NO)、制御部162aは、判定処理(ステップS95)として、同期信号PSS−MがHighレベルであるか否かを判定する。同期信号PSS−MがHighレベルでないと判定された場合(ステップS95:NO)、制御部162aは、リセット処理(ステップS96)として、H期間タイマーを0にリセットする。同期信号PSS−MがHighレベルであると判定された場合(ステップS95:YES)、制御部162aは、リセット処理(ステップS96)をスキップする。
続いて、制御部162aは、図22に示されるように、判定処理(ステップS100)として、読み込み処理(ステップS82)で取得された同期信号PSS−Mの立ち下がりを検出したか否かを判定する。
同期信号PSS−Mの立ち下がりを検出したと判定された場合(ステップS100:YES)、制御部162aは、タイマー処理(ステップS102)として、L期間タイマーをスタートさせる。L期間タイマーは、同期信号PSS−Mの立ち下がりからの時間経過をカウントするタイマーである。
制御部162aは、判定処理(ステップS108)として、Lowレベルの区間であるか否かを判定する。制御部162aは、タイマー処理(ステップS102)にてカウントされたL期間タイマーと、読み込み処理(ステップS80)で取得されたパルス周波数及びデューティ比とを用いて、Lowレベルの区間であるか否かを判定する。
Lowレベルの区間であると判定された場合(ステップS108:YES)、制御部162aは、判定処理(ステップS110)として、L検出期間であるか否かを判定する。制御部162aは、タイマー処理(ステップS102)にてカウントされたL期間タイマーを用いて、L検出期間であるか否かを判定する。
L検出期間であると判定された場合(ステップS110:YES)、制御部162aは、整理処理(ステップS112)として、記憶部162cに格納されたデータのうち最も古いデータを削除する。nをバッファメモリの数とすると、制御部162aは、進行波パワーの測定値pfL(0)及び反射波パワーの測定値prL(0)を削除する。そして、制御部162aは、進行波パワーの測定値pfL(n)、反射波パワーの測定値prL(n)のデータ上の格納位置を、それぞれ測定値pfL(n−1),測定値prL(n−1)の格納位置へシフトさせる。
続いて、制御部162aは、書き込み処理(ステップS114)として、測定値を記憶部162cに記憶する。制御部162aは、A/D変換器167b(図11,図12)により検出される進行波パワーの測定値Pfを記憶部162cのpfL(n)に記憶する。制御部162aは、A/D変換器167c(図11,図12)により検出される反射波パワーの測定値Prを記憶部162cのprL(n)に記憶する。
L検出期間でないと判定された場合(ステップS110:NO)、又は、書き込み処理(ステップS114)が終了すると、制御部162aは、判定処理(ステップS108)を再実行する。このように、Lowレベルの区間であって、かつ、L検出区間である場合のみ、整理処理(ステップS112)及び書き込み処理(ステップS114)が実行される。これにより、進行波のLowレベルのパワーの測定値pfL(n)及び反射波のLowレベルのパワーの測定値prL(n)が時系列で記憶部162cに格納される。
Lowレベルの区間でないと判定された場合(ステップS108:NO)、制御部162aは、読み込み処理(ステップS80)を再実行する。同期信号PSS−Mの立ち下がりを検出した後に、Lowレベルの区間でないと判定された場合は、Highレベルのパルスが新たに開示したことを意味する。このため、制御部162aは、読み込み処理(ステップS80)から新たに処理を実行する。
同期信号PSS−Mの立ち下がりを検出しないと判定された場合(ステップS100:NO)、制御部162aは、判定処理(ステップS115)として、同期信号PSS−MがLowレベルであるか否かを判定する。同期信号PSS−MがLowレベルでないと判定された場合(ステップS115:NO)、制御部162aは、リセット処理(ステップS116)として、L期間タイマーを0にリセットする。同期信号PSS−MがLowレベルであると判定された場合(ステップS115:YES)、制御部162aは、リセット処理(ステップS116)をスキップする。そして、制御部162aは、読み込み処理(ステップS80)を再実行する。このように、制御部162aは、例えばオペレータなどによりパワー制御処理の終了操作がなされるまで、図21及び図22に示されるフローチャートを繰り返し実行する。
[時系列バッファデータ]
図23は、時系列バッファデータの一例である。図23に示される時系列バッファDA2は、図21及び図22のフローチャートを実行することにより得ることができる。図23に示されるように、進行波パワーのHighレベルの測定値pfH、進行波パワーのLowレベルの測定値pfL、反射波パワーのHighレベルの測定値prH、及び、反射波パワーのLowレベルの測定値prLが、現在から数サンプル前までの期間において、時系列で格納される。
[測定値の平均処理]
次に、時系列バッファDA2を用いた測定値の平均処理を説明する。図24は、反射波及び進行波のパワーの平均処理の一例を示すフローチャートである。図24に示されるフローチャートは、例えばオペレータなどによりパワー制御処理の開始操作がされたタイミングで開始される。
図24に示されるように、マイクロ波発生部16aの制御部162aは、決定処理(ステップS120)として、サンプル数mを決定する。制御部162aは、複数のH検出区間を繋ぎ合わせて得られる移動平均時間(図15)と、所定のサンプル時間(サンプリング間隔)とに基づいて、サンプル数mを決定する。
続いて、制御部162aは、読み込み処理(ステップS122)として、記憶部162cを参照して、測定値pfH、pfL、prH、及び、prLを時系列で取得する。
続いて、制御部162aは、算出処理(ステップS124)として、補正係数を算出する。補正係数は、センター周波数、変調波形(設定帯域幅)及びパワーと関連付けられて記憶部(例えばマイクロ波発生部16aの記憶部)に記憶されている。制御部162aは、予め準備された複数の補正係数から、制御器100により指定されたセンター周波数及び変調波形と、読み込み処理(ステップS122)で取得された測定値pfH、pfL、prH、及び、prLのそれぞれとに対応付けられた補正係数を選択する。センター周波数をCF、変調波形をBBとすると、制御部162aは、進行波パワーのHighレベルの補正係数k1(CF,BB,pfH)を記憶部から取得する。同様に、制御部162aは、進行波パワーのLowレベルの補正係数k1(CF,BB,pfL)、反射波パワーのHighレベルの補正係数k2(CF,BB,prH)、反射波パワーのLowレベルの補正係数k2(CF,BB,prL)を取得する。
続いて、制御部162aは、平均化処理(ステップS126)として、読み込み処理(ステップS122)で取得された測定値pfH、pfL、prH及びprLと、算出処理(ステップS124)にて算出された補正係数とを用いて、補正しながら移動平均時間だけ移動平均を算出する。これにより、平均化された測定値Pf(H)、Pf(L)、Pr(H)及びPr(L)が算出される。具体的には、以下の数式で算出する(n>=m)。
平均化処理(ステップS126)が終了すると、図24に示されるフローチャートが終了し、制御部162aは、決定処理(ステップS120)を再実行する。このように、制御部162aは、例えばオペレータなどによりパワー制御処理の終了操作がなされるまで、図24に示されるフローチャートを繰り返し実行する。
[減衰器の制御電圧の設定処理]
次に、平均化された測定値を用いてマイクロ波パワーをパルス変調する処理について説明する。上述したとおり、マイクロ波発生部16aは、制御部162aの出力電圧を制御的に変更する第1例(図11)と、制御部162aの出力電圧をソリッドステート・リレーによって変更する第2例(図12)とが存在する。
[第1例の構成による設定処理]
図25は、第1例の構成を有するマイクロ波出力装置による減衰器の制御処理の一例を示すフローチャートである。図25に示されるフローチャートは、例えばオペレータなどによりパワー制御処理の開始操作がされたタイミングで開始される。
図25に示されるように、マイクロ波発生部16aの制御部162aは、読み込み処理(ステップS140)として、制御器100からHighレベルの設定パワーPfH、Lowレベルの設定パワーPfL、及び、制御モード(PLモード又はPfモード)を取得する。
続いて、制御部162aは、判定処理(ステップS142)として、読み込み処理(ステップS140)で取得された制御モードがPLモードであるか否かを判定する。
制御モードがPLモードでないと判定された場合(ステップS142:NO)、制御部162aは、判定処理(ステップS144)として、平均化された測定値Pf(H)が設定パワーPfHよりも小さいか否かを判定する。
平均化された測定値Pf(H)が設定パワーPfHよりも小さいと判定された場合(ステップS144:YES)、制御部162aは、設定処理(ステップS146)として、減衰器163の減衰量(減衰器163によってマイクロ波に与えている減衰量)が小さくなるように、D/A変換器167f(図11)への印加電圧値を設定する。
平均化された測定値Pf(H)が設定パワーPfHよりも小さくないと判定された場合(ステップS144:NO)、制御部162aは、判定処理(ステップS148)として、平均化された測定値Pf(H)が設定パワーPfHよりも大きいか否かを判定する。
平均化された測定値Pf(H)が設定パワーPfHよりも大きいと判定された場合(ステップS148:YES)、制御部162aは、設定処理(ステップS150)として、減衰器163の減衰量が大きくなるように、D/A変換器167f(図11)への印加電圧値を設定する。
平均化された測定値Pf(H)が設定パワーPfHよりも大きくないと判定された場合(ステップS148:NO)、設定処理(ステップS146)又は設定処理(ステップS150)が終了した場合、制御部162aは、判定処理(ステップS154)として、平均化された測定値Pf(L)が設定パワーPfLよりも小さいか否かを判定する。
平均化された測定値Pf(L)が設定パワーPfLよりも小さいと判定された場合(ステップS154:YES)、制御部162aは、設定処理(ステップS156)として、減衰器163の減衰量が小さくなるように、D/A変換器167f(図11)への印加電圧値を設定する。
平均化された測定値Pf(L)が設定パワーPfLよりも小さくないと判定された場合(ステップS154:NO)、制御部162aは、判定処理(ステップS158)として、平均化された測定値Pf(L)が設定パワーPfLよりも大きいか否かを判定する。
平均化された測定値Pf(L)が設定パワーPfLよりも大きいと判定された場合(ステップS158:YES)、制御部162aは、設定処理(ステップS160)として、減衰器163の減衰量が大きくなるように、D/A変換器167f(図11)への印加電圧値を設定する。
平均化された測定値Pf(L)が設定パワーPfLよりも大きくないと判定された場合(ステップS158:NO)、設定処理(ステップS156)又は設定処理(ステップS160)が終了した場合、図24に示されるフローチャートが終了し、制御部162aは、読み込み処理(ステップS140)を再実行する。このように、制御部162aは、例えばオペレータなどによりパワー制御処理の終了操作がなされるまで、図24に示されるフローチャートを繰り返し実行する。
一方、制御モードがPLモードであると判定された場合(ステップS142:YES)、制御部162aは、判定処理(ステップS164)として、平均化された測定値Pf(H)から平均化された測定値Pr(H)を減算した第1差分値が設定パワーPfHよりも小さいか否かを判定する。
第1差分値が設定パワーPfHよりも小さいと判定された場合(ステップS164:YES)、制御部162aは、設定処理(ステップS166)として、減衰器163の減衰量が小さくなるように、D/A変換器167f(図11)への印加電圧値を設定する。
第1差分値が設定パワーPfHよりも小さくないと判定された場合(ステップS164:NO)、制御部162aは、判定処理(ステップS168)として、第1差分値が設定パワーPfHよりも大きいか否かを判定する。
第1差分値が設定パワーPfHよりも大きいと判定された場合(ステップS168:YES)、制御部162aは、設定処理(ステップS170)として、減衰器163の減衰量が大きくなるように、D/A変換器167f(図11)への印加電圧値を設定する。
第1差分値が設定パワーPfHよりも大きくないと判定された場合(ステップS168:NO)、設定処理(ステップS166)又は設定処理(ステップS170)が終了した場合、制御部162aは、判定処理(ステップS174)として、平均化された測定値Pf(L)から平均化された測定値Pr(L)を減算した第2差分値が設定パワーPfLよりも小さいか否かを判定する。
第2差分値が設定パワーPfLよりも小さいと判定された場合(ステップS174:YES)、制御部162aは、設定処理(ステップS176)として、減衰器163の減衰量が小さくなるように、D/A変換器167f(図11)への印加電圧値を設定する。
第2差分値が設定パワーPfLよりも小さくないと判定された場合(ステップS174:NO)、制御部162aは、判定処理(ステップS178)として、第2差分値が設定パワーPfLよりも大きいか否かを判定する。
第2差分値が設定パワーPfLよりも大きいと判定された場合(ステップS178:YES)、制御部162aは、設定処理(ステップS180)として、減衰器163の減衰量が大きくなるように、D/A変換器167f(図11)への印加電圧値を設定する。
第2差分値が設定パワーPfLよりも大きくないと判定された場合(ステップS178:NO)、設定処理(ステップS176)又は設定処理(ステップS180)が終了した場合、図24に示されるフローチャートが終了し、制御部162aは、読み込み処理(ステップS140)を再実行する。このように、制御部162aは、例えばオペレータなどによりパワー制御処理の終了操作がなされるまで、図24に示されるフローチャートを繰り返し実行する。
図25に示されるフローチャートを実行することにより、パルス変調されたマイクロ波パワーの大きさが制御される。
[第2例の構成による設定処理]
図26は、第2例の構成を有するマイクロ波出力装置による減衰器の制御処理の一例を示すフローチャートである。図26に示されるフローチャートは、例えばオペレータなどによりパワー制御処理の開始操作がされたタイミングで開始される。
図26のフローチャートは、図25のフローチャートと比較すると、設定対象となる変換器が異なり、その他は同一である。
図26の設定処理(ステップS196、ステップS200、ステップS216、ステップS220)では、図25の設定処理(ステップS146、ステップS150、ステップS166、ステップS170)とそれぞれ比較すると、D/A変換器167fではなくD/A変換器167g(図12)を設定する点が相違し、その他は同一である。
図26の設定処理(ステップS206、ステップS210、ステップS226、ステップS230)では、図25の設定処理(ステップS146、ステップS150、ステップS176、ステップS180)と比較すると、D/A変換器167fではなくD/A変換器167h(図12)を設定する点が相違し、その他は同一である。
図26に示されるフローチャートを実行することにより、パルス変調されたマイクロ波パワーの大きさが制御される。
[パワーフィードバックのまとめ]
マイクロ波出力装置16では、帯域幅を有するマイクロ波のパワーがパルス変調される。そして、Prモードにおいては、進行波パワーのHighレベルの平均化された測定値pf(H)(平均化された第1のHigh測定値)及びHighレベルの設定パワーPfHに基づいて、パルス変調されたマイクロ波のHighレベルのパワーが制御される。さらに、進行波パワーのLowレベルの平均化された測定値pf(L)(平均化された第1のLow測定値)及びLowレベルの設定パワーPfLに基づいて、パルス変調されたマイクロ波のLowレベルのパワーが制御される。このように、マイクロ波のパワーがパルス変調され、かつ、Highレベル及びLowレベルのパワーが設定パワーに基づいて制御されることにより、帯域幅を有するマイクロ波のパルス変調されたパワーを制御することができる。
さらに、PLモードにおいては、進行波パワーのHighレベルの平均化された測定値pf(H)、反射波パワーのHighレベルの平均化された測定値pr(H)、及び、Highレベルの設定パワーPfHに基づいて、パルス変調されたマイクロ波のHighレベルのパワーが制御される。さらに、進行波パワーのLowレベルの平均化された測定値pf(L)(平均化された第1のLow測定値)、反射波パワーのLowレベルの平均化された測定値pr(L)(平均化された第2のLow測定値)、及びLowレベルの設定パワーPfLに基づいて、パルス変調されたマイクロ波のLowレベルのパワーが制御される。このように、マイクロ波のパワーがパルス変調され、かつ、Highレベル及びLowレベルのパワーが設定パワーに基づいて制御されることにより、帯域幅を有するマイクロ波のパルス変調されたパワーを制御することができる。
また、マイクロ波出力装置16は、マイクロ波のパワーがパルス変調された場合であっても、H検出区間だけ、又は、L検出区間だけを繋ぎ合わせて移動平均時間を取得することができる。このため、マイクロ波出力装置16は、パルス形状のパワーを適切に平均化することができる。
また、マイクロ波出力装置16は、PrモードとPLモードとを切り替えることができる。つまり、マイクロ波出力装置16は、プロセス条件に応じてロード制御の実行可否を切り替えることができる。
また、マイクロ波出力装置16は、H検出マスク時間、L検出マスク時間、H検出区間及びL検出区間を適切に設定することで、マイクロ波のパワーの変動が大きい期間を回避して進行波及び反射波のパワーを測定することができる。よって、パワーの測定誤差を小さくすることができる。結果として、パワー制御の精度を向上させることができる。
また、マイクロ波出力装置16は、減衰器163へのHighレベル用の電圧と、Lowレベル用の電圧とを、ソリッドステート・リレーK1で高速に切り替えることができる。このため、より短いパルス周期の波形、デューティ比の小さい波形を実現することができる。
また、マイクロ波出力装置16は、高周波パワーのパルス変調と同期させてマイクロ波のパワーのパルス変調をすることにより、高周波パルスがマイクロ波の反射波に与える影響を小さくすることができる。
[チューナの詳細]
図27は、チューナの詳細構成の一例である。図27に示されるように、チューナ26は、3Eチューナとして構成されている。3Eチューナは、3つの分岐導波管を備える。管内波長をλgとすると、3つの分岐導波管は、マイクロ波の進行方向にλg/4間隔で導波管21に設けられている。それらの分岐導波管の中にスタブ26a,26b,26cが配置されている。スタブ26a,26b,26cは、導波管21の内部空間に対する突出量を0〜λg/4の範囲で調整可能である。スタブ26a,26b,26cには、それぞれに対応するモータ261a,261b,261cが接続されている。スタブ26a,26b,26cは、モータ261a,261b,261cを駆動させる駆動回路262の制御信号に基づいて、突出量が調整される。分岐導波管の中でスタブ26a,26b,26cの位置が変更されると、導波管21の特性インピーダンスが変化する。この原理を利用して、負荷にこのチューナ26のインピーダンスを加えた負荷側のインピーダンスをマイクロ波出力装置16のインピーダンスに整合させることができる。
チューナ26は、チューナ検波部263及びチューナ制御部260を備える。チューナ検波部263は、スタブ26a,26b,26cよりもマイクロ波出力装置16側の導波管21に取り付けられている。チューナ検波部263は、一例として三探針検波器であり、3本のダイオード付きプローブ263a,263b,263cを有する。ダイオード付きプローブ263a,263b,263cは、マイクロ波の進行方向にλg/8間隔で導波管21に設けられている。ダイオード付きプローブ263a,263b,263cは、それぞれ電圧信号V1,V2,V3を出力する。電圧信号V1,V2,V3は、対応するA/D変換器264a,264b,264cを介してチューナ制御部260へと出力される。
チューナ制御部260は、演算回路260a及びモータ指令回路260bを備える。演算回路260aは、電圧信号V1,V2,V3に基づいて反射係数の測定値を求める。導波管21の中を伝搬するマイクロ波の定在波(進行波および反射波)についてチューナ検波部263の位置で観測される反射係数(複素反射係数)をΓとすると、電圧信号V1,V2,V3は次の数式で表される。
Kは比例定数(検波感度)、Viは入射波振幅、|Γ|,θは反射係数Γの絶対値および位相である。演算回路260aは、電圧信号V1,V2,V3について、下記の数式で表される演算を行うことにより、反射係数Γに関する余弦積Vc、正弦積Vsを求める。
余弦積Vc、正弦積Vsに基づいてモータ指令回路260bが駆動回路262を動作させ、インピーダンスの調整がフィードバック的に行われる。なお、チューナ制御部260は、マイクロ波のパワーの同期信号PSS−M、高周波パワーの同期信号PSS−Rを入力してもよい。
ここで、パルス変調したマイクロ波を整合する場合の課題を説明する。図28は、マイクロ波の同期信号とチューナ動作との比較の一例である。図28の(A)は、マイクロ波パワーの同期信号PSS−Mであり、図28の(B)は、チューナ動作のタイムチャートである。図28に示されるように、マイクロ波パワーの同期信号PSS−Mのパルスの立ち上がり時においてチューナが整合指令開始を受け取った場合、スタブの位置(チューナボジション)を決定する処理が開始され、そこからスタブが動き出す。一例として、マイクロ波パワーのHigh時間HTは900〜5μsであり、パルス周期PT1は1000〜50μsである。一方、チューナポジションの動作開始は100ms以上必要とする。このため、マイクロ波パワーの同期信号PSS−Mに追従してスタブを動作することが難しい。
さらに、チューナポジションも適切でない場合がある。図29は、マイクロ波及び高周波の同期信号とチューナ動作との比較の一例である。図29の(A)は、マイクロ波パワーの同期信号PSS−Mであり、図29の(B)は、同期信号PSS−Mとは非同期の高周波パワーの同期信号PSS−Rであり、図29の(C)は、チューナ動作のタイムチャートであり、3つのパターンを示している。パターン1は、自動整合(一般的なチューナ動作)の場合である。パターン2は、マイクロ波パワーの同期信号PSS−MのHighレベル時に整合させたチューナポジションを事前に用意し、このチューナポジションに設定する場合である。パターン3は、マイクロ波パワーの同期信号PSS−MのLowレベル時に整合させたチューナポジションを事前に用意し、このチューナポジションに設定する場合である。パターン1では、マイクロ波パワーのHighレベルとLowレベルとを平均的に処理するため、HighレベルとLowレベルとの平均的なチューナポジションに落ち着き、Highレベル及びLowレベルのそれぞれに最適なチューナポジションの算出ができないおそれがある。パターン2,3は予め設定されたチューナポジションを採用しているため、負荷変動を考慮することができない。
上述した課題を解決する構成を説明する。図30は、マイクロ波の同期信号に応じた動作をするチューナの一例を示す図である。図30に示される構成は、図6に示される構成と比較して、パルス生成器162bからマイクロ波パワーの同期信号PSS−Mがチューナ26へと入力される点が相違し、その他は同一である。チューナ26は、同期信号PSS−Mを用いて、チューナ検波部263の測定値を選別することにより、上述した課題を解決する。
図31は、チューナの検波部の検出区間を説明する図である。図31の(A)は、マイクロ波パワーの同期信号PSS−Mであり、図31の(B)は、チューナ検波部263のダイオード付きプローブ263aによって測定された測定値である。図31に示されるように、同期信号PSS−MのON区間をHigh区間、OFF区間をLow区間とする。同期信号PSS−Mのパルスの立ち上がりをHトリガポイント(Highレベルとなるタイミング)、パルスの立ち下がりをLトリガポイント(Lowレベルとなるタイミング)とする。
H検出マスク時間(第1期間)は、Hトリガポイントから所定時間経過するまでの時間である。H検出マスク時間は、データの取得が禁止される。H検出マスク時間は、マイクロ波のパワーが不安定となる区間からデータを取得することを回避するために設けられる。H検出区間(第1測定期間)は、H検出マスク時間終了からLトリガポイントまでの区間である。H検出区間は、進行波のHighレベルの測定値V1Hが取得される区間である。H検出マスク時間及びH検出区間は、チューナ26の記憶部に予め記憶されている。
L検出マスク時間(第2期間)は、Lトリガポイントから所定時間経過するまでの時間である。L検出マスク時間は、データの取得が禁止される。L検出マスク時間は、マイクロ波のパワーが不安定となる区間からデータを取得することを回避するために設けられる。L検出区間(第2測定期間)は、L検出マスク時間終了からHトリガポイントまでの区間である。L検出区間は、進行波のLowレベルの測定値V1Lが取得される区間である。L検出マスク時間及びL検出区間は、チューナ26の記憶部に予め記憶されている。
ダイオード付きプローブ263b,263cについても同一の手法で測定値V2H,V2L,V3H,V3Lを取得する。これらの測定値は、チューナ26の記憶部に記憶される。
[チューナのパルス同期]
図32は、パワー変調時におけるチューナの検波部による測定値の平均化の一例を説明する図である。
チューナ26の記憶部には、時系列バッファとして、マイクロ波パワーのHighレベルの測定値V1H、及び、Lowレベルの測定値V1Lがそれぞれ時系列で記憶されている。
Highレベルの測定値V1Hを例に説明すると、記憶部の時系列バッファにおいては、測定値V1Hは複数のH検出区間が繋ぎ合わされた区間における測定値として取り扱うことができる。これらの値は、過去に取得されたデータである。チューナ制御部260は、複数のH検出区間が繋ぎ合わされた期間を用いて、移動平均時間を決定する。そして、チューナ制御部260は、移動平均時間を用いて平均化された測定値V1Hを算出する。チューナ制御部260は、測定値V1Lについても同一の手法で、移動平均時間を算出し、平均化された測定値V1Lを算出する。平均化された測定値を用いてチューナのパルス同期が行われる。
[マイクロ波パワーのパルス変調時におけるチューナの整合処理]
チューナ26は、マイクロ波パワーのパルス変調時における整合処理として、マイクロ波パワーの測定値の書き込み処理、測定値の平均処理及び反射係数の計算処理、及び、モータ駆動処理の3つの処理をマルチタスクで並行して実行する。なお、モータ駆動処理は従来のモータ駆動処理と同一であるため、以下では、書き込み処理、測定値の平均処理及び反射係数の計算処理について詳細を説明する。
[マイクロ波パワーの測定値の書き込み処理]
図33及び図34は、パワー変調時におけるチューナの記憶部への書き込み処理の一例を示すフローチャートである。図33及び図34に示されるフローチャートは、例えばオペレータなどによりマイクロ波のパワー制御処理の開始操作がされたタイミングで開始される。
図33に示されるように、チューナ制御部260は、読み込み処理(ステップS240)として、制御器100からパルス周波数及びデューティ比を取得し、記憶部を参照してH検出マスク時間、H検出区間、L検出マスク時間及びL検出区間を取得する。
続いて、チューナ制御部260は、読み込み処理(ステップS242)として、パルス生成器162bからマイクロ波の同期信号PSS−Mを取得する。
続いて、チューナ制御部260は、判定処理(ステップS244)として、読み込み処理(ステップS242)で取得された同期信号PSS−Mの立ち上がりを検出したか否かを判定する。
同期信号PSS−Mの立ち上がりを検出したと判定された場合(ステップS244:YES)、チューナ制御部260は、タイマー処理(ステップS246)として、H期間タイマーをスタートさせる。H期間タイマーは、同期信号PSS−Mの立ち上がりからの時間経過をカウントするタイマーである。
チューナ制御部260は、判定処理(ステップS248)として、Highレベルの区間であるか否かを判定する。チューナ制御部260は、タイマー処理(ステップS246)にてカウントされたH期間タイマーと、読み込み処理(ステップS240)で取得されたパルス周波数及びデューティ比とを用いて、Highレベルの区間であるか否かを判定する。
Highレベルの区間であると判定された場合(ステップS248:YES)、チューナ制御部260は、判定処理(ステップS250)として、H検出期間であるか否かを判定する。チューナ制御部260は、タイマー処理(ステップS246)にてカウントされたH期間タイマーを用いて、H検出期間であるか否かを判定する。
H検出期間であると判定された場合(ステップS250:YES)、チューナ制御部260は、整理処理(ステップS252)として、チューナ26の記憶部に格納されたデータのうち最も古いデータを削除する。nをバッファメモリの数とすると、チューナ制御部260は、マイクロ波パワーのHighレベルの測定値V1h(0),V2h(0),V3h(0)を削除する。そして、チューナ制御部260は、測定値V1h(n),V2h(n),V3h(n)のデータ上の格納位置を、それぞれ測定値V1h(n−1),V2h(n−1),V3h(n−1)の格納位置へシフトさせる。
続いて、チューナ制御部260は、書き込み処理(ステップS254)として、測定値をチューナ26の記憶部に記憶する。チューナ制御部260は、A/D変換器264a(図27)により検出されるマイクロ波パワーの測定値V1をチューナ26の記憶部のV1h(n)に記憶する。チューナ制御部260は、A/D変換器264b(図27)により検出されるマイクロ波パワーの測定値V2をチューナ26の記憶部のV2h(n)に記憶する。チューナ制御部260は、A/D変換器264c(図27)により検出されるマイクロ波パワーの測定値V3をチューナ26の記憶部のV3h(n)に記憶する。
H検出期間でないと判定された場合(ステップS250:NO)、又は、書き込み処理(ステップS254)が終了すると、チューナ制御部260は、判定処理(ステップS248)を再実行する。このように、Highレベルの区間であって、かつ、H検出区間である場合のみ、整理処理(ステップS252)及び書き込み処理(ステップS254)が実行される。これにより、マイクロ波のHighレベルのパワーの測定値V1h(n),V2h(n),V3h(n)が時系列でチューナ26の記憶部に格納される。
Highレベルの区間でないと判定された場合(ステップS248:NO)、チューナ制御部260は、読み込み処理(ステップS240)を再実行する。同期信号PSS−Mの立ち上がりを検出した後に、Highレベルの区間でないと判定された場合は、1つのパルスが終了したことを意味する。このため、読み込み処理(ステップS240)から新たに処理を実行する。
同期信号PSS−Mの立ち上がりを検出しないと判定された場合(ステップS244:NO)、チューナ制御部260は、判定処理(ステップS255)として、同期信号PSS−MがHighレベルであるか否かを判定する。同期信号PSS−MがHighレベルでないと判定された場合(ステップS255:NO)、チューナ制御部260は、リセット処理(ステップS256)として、H期間タイマーを0にリセットする。同期信号PSS−MがHighレベルであると判定された場合(ステップS255:YES)、チューナ制御部260は、リセット処理(ステップS256)をスキップする。
続いて、チューナ制御部260は、図34に示されるように、判定処理(ステップS260)として、読み込み処理(ステップS242)で取得された同期信号PSS−Mの立ち下がりを検出したか否かを判定する。
同期信号PSS−Mの立ち下がりを検出したと判定された場合(ステップS260:YES)、チューナ制御部260は、タイマー処理(ステップS262)として、L期間タイマーをスタートさせる。L期間タイマーは、同期信号PSS−Mの立ち下がりからの時間経過をカウントするタイマーである。
チューナ制御部260は、判定処理(ステップS268)として、Lowレベルの区間であるか否かを判定する。チューナ制御部260は、タイマー処理(ステップS262)にてカウントされたL期間タイマーと、読み込み処理(ステップS240)で取得されたパルス周波数及びデューティ比とを用いて、Lowレベルの区間であるか否かを判定する。
Lowレベルの区間であると判定された場合(ステップS268:YES)、チューナ制御部260は、判定処理(ステップS270)として、L検出期間であるか否かを判定する。チューナ制御部260は、タイマー処理(ステップS262)にてカウントされたL期間タイマーを用いて、L検出期間であるか否かを判定する。
L検出期間であると判定された場合(ステップS270:YES)、チューナ制御部260は、整理処理(ステップS272)として、チューナ26の記憶部に格納されたデータのうち最も古いデータを削除する。nをバッファメモリの数とすると、チューナ制御部260は、マイクロ波パワーのLowレベルの測定値V1l(0),V2l(0),V3l(0)を削除する。そして、チューナ制御部260は、測定値V1l(n),V2l(n),V3l(n)のデータ上の格納位置を、それぞれ測定値V1l(n−1),V2l(n−1),V3l(n−1)の格納位置へシフトさせる。
続いて、チューナ制御部260は、書き込み処理(ステップS274)として、測定値をチューナ26の記憶部に記憶する。チューナ制御部260は、A/D変換器264a(図27)により検出されるマイクロ波パワーの測定値V1をチューナ26の記憶部のV1l(n)に記憶する。チューナ制御部260は、A/D変換器264b(図27)により検出されるマイクロ波パワーの測定値V2をチューナ26の記憶部のV2l(n)に記憶する。チューナ制御部260は、A/D変換器264c(図27)により検出されるマイクロ波パワーの測定値V3をチューナ26の記憶部のV3l(n)に記憶する。
L検出期間でないと判定された場合(ステップS270:NO)、又は、書き込み処理(ステップS274)が終了すると、チューナ制御部260は、判定処理(ステップS268)を再実行する。このように、Lowレベルの区間であって、かつ、L検出区間である場合のみ、整理処理(ステップS272)及び書き込み処理(ステップS274)が実行される。これにより、マイクロ波のLowレベルのパワーの測定値V1l(n),V2l(n),V3l(n)が時系列でチューナ26の記憶部に格納される。
Lowレベルの区間でないと判定された場合(ステップS268:NO)、チューナ制御部260は、読み込み処理(ステップS240)を再実行する。同期信号PSS−Mの立ち下がりを検出した後に、Lowレベルの区間でないと判定された場合は、Highレベルのパルスが新たに開示したことを意味する。このため、チューナ制御部260は、読み込み処理(ステップS240)から新たに処理を実行する。
同期信号PSS−Mの立ち下がりを検出しないと判定された場合(ステップS260:NO)、チューナ制御部260は、判定処理(ステップS255)として、同期信号PSS−MがLowレベルであるか否かを判定する。同期信号PSS−MがLowレベルでないと判定された場合(ステップS115:NO)、チューナ制御部260は、リセット処理(ステップS276)として、L期間タイマーを0にリセットする。同期信号PSS−MがLowレベルであると判定された場合(ステップS255:YES)、チューナ制御部260は、リセット処理(ステップS276)をスキップする。そして、チューナ制御部260は、読み込み処理(ステップS240)を再実行する。このように、チューナ制御部260は、例えばオペレータなどによりパワー制御処理の終了操作がなされるまで、図33及び図34に示されるフローチャートを繰り返し実行する。
[時系列バッファデータ]
図35は、時系列バッファデータの一例である。図35に示される時系列データは、図33及び図34のフローチャートを実行することにより得ることができる。図35に示されるように、例えば、マイクロ波のHighレベルの測定値V1H、Lowレベルの測定値V1Lが、現在から数サンプル前までの期間において、時系列で格納される。時系列バッファデータは、V2H,V2L,V3H,V3Lについても同様に時系列で格納している。
[測定値の平均処理及び反射係数の算出処理]
次に、時系列データを用いたチューナ検波部263の測定値の平均処理及び反射係数の算出処理を説明する。図36は、測定値の平均処理及び反射係数の算出処理の一例を示すフローチャートである。図36に示されるフローチャートは、例えばオペレータなどによりマイクロ波のパワー制御処理の開始操作がされたタイミングで開始される。
図36に示されるように、チューナ制御部260は、決定処理(ステップS280)として、サンプル数mを決定する。チューナ制御部260は、複数のH検出区間を繋ぎ合わせて得られる移動平均時間(図32)と、所定のサンプル時間(サンプリング間隔)とに基づいて、サンプル数mを決定する。
続いて、チューナ制御部260は、読み込み処理(ステップS282)として、チューナ26の記憶部を参照して、測定値V1h,V2h,V3h,V1l,V2l,V3lを時系列で取得する。
続いて、チューナ制御部260は、平均化処理(ステップS286)として、読み込み処理(ステップS122)で取得された測定値V1h,V2h,V3h,V1l,V2l,V3lを用いて、移動平均時間だけ移動平均を算出する。これにより、平均化された測定値V1H,V2H,V3H,V1L,V2L,V3Lが算出される。具体的には、以下の数式で算出する(n>=m)。
続いて、チューナ制御部260は、計算処理(ステップS288)として、平均化処理(ステップS286)にて算出された値を用いて、反射係数Γを算出する。具体的には、以下の数式で算出する。
ここで、|ΓinH|は、Highレベルに対応する反射係数の絶対値であり、|ΓinL|は、Lowレベルに対応する反射係数の絶対値であり、θは虚数部の回転角度を表す。なお、kは比例定数である。
計算処理(ステップS288)が終了すると、図36に示されるフローチャートが終了し、チューナ制御部260は、決定処理(ステップS280)を再実行する。このように、チューナ制御部260は、例えばオペレータなどによりパワー制御処理の終了操作がなされるまで、図36に示されるフローチャートを繰り返し実行する。
[高周波パワーを考慮したチューナ整合]
次に、高周波パワーのパルス変調を考慮した場合のチューナ制御について説明する。図37は、マイクロ波及び高周波の同期信号に応じた動作をするチューナの一例を示す図である。図37に示される構成は、図30に示される構成と比較して、制御部162aから高周波パワーの同期信号PSS−Rがチューナ26へと入力される点が相違し、その他は同一である。チューナ26は、同期信号PSS−M及び同期信号PSS−Rを用いて、チューナ検波部263の測定値を選別する。
上述したとおり、同期信号PSS−Mと同期信号PSS−Rとの同期例として、第1同期例(図9)及び第2同期例(図10)が存在する。以下では、その他の同期例として、第3同期例及び第4同期例について説明する。
[第3同期例]
図38は、マイクロ波のパワー変調の同期信号と高周波のパワー変調の同期信号とが同期する第3同期例を示す図である。図38の信号(A)は、マイクロ波パワーの同期信号PSS−Mであり、図38の信号(B)は、高周波パワーの同期信号PSS−Rである。制御部162aは、同期信号PSS−Rに基づいて、高周波パワーがHighレベルとなるタイミングを取得する(図中矢印)。制御部162aは、高周波パワーがHighレベルとなるタイミングを同期トリガとしてパルス生成器162bへ出力する。パルス生成器162bは、マイクロ波のパワーがHighレベルとなるタイミングを、高周波パワーがHighレベルとなるタイミングに同期させる。さらに、高周波パワーがLowレベルとなるタイミングにおいて、マイクロ波パワーの同期信号PSS−MをLowに設定する。これにより、高周波パワーがHighレベルとなるタイミングのみ、マイクロ波パワーの同期信号PSS−Mが出力されるように、同期させることができる。
チューナ制御部260は、高周波パワーの同期信号PSS−RがHighレベル(図中のHT2)であるときに、マイクロ波パワーのHighレベル及びLowレベルに対応した電圧を取得する(図中のH1及びL1)。なお、第3同期例には、同期番号No.3が割り振られている。
[第4同期例]
図39は、マイクロ波のパワー変調の同期信号と高周波のパワー変調の同期信号とが同期する第4同期例を示す図である。図39の信号(A)は、マイクロ波パワーの同期信号PSS−Mであり、図39の信号(B)は、高周波パワーの同期信号PSS−Rである。制御部162aは、同期信号PSS−Rに基づいて、高周波パワーがLowレベルとなるタイミングを取得する(図中矢印)。制御部162aは、高周波パワーがLowレベルとなるタイミングを同期トリガとしてパルス生成器162bへ出力する。パルス生成器162bは、マイクロ波のパワーがLowレベルとなるタイミングを、高周波パワーがLowレベルとなるタイミングに同期させる。さらに、高周波パワーがHighレベルとなるタイミングにおいて、マイクロ波パワーの同期信号PSS−MをLowに設定する。これにより、高周波パワーがLowレベルとなるタイミングのみ、マイクロ波パワーの同期信号PSS−Mが出力されるように、同期させることができる。
チューナ制御部260は、高周波パワーの同期信号PSS−RがLowレベル(図中のLT2)であるときに、マイクロ波パワーのHighレベル及びLowレベルに対応した電圧を取得する(図中のH1及びL1)。なお、第4同期例には、同期番号No.4が割り振られている。
[マイクロ波の同期信号の生成処理]
次に、上述した第3同期例及び第4同期例に係る同期信号の生成処理について説明する。図40は、マイクロ波の同期信号の生成処理の一例を示すフローチャートである。図40に示されるフローチャートは、例えばオペレータなどによりパワー制御処理の開始操作がされたタイミングで開始される。
図40に示されるフローチャートは、図16に示されるフローチャートと比較して、判定処理(ステップS14)及び判定処理(ステップS16)に替えて、判定処理(ステップS315)及び判定処理(ステップS316)を実行する点が相違し、その他は同一である。つまり、読み込み処理(ステップS310)、演算処理(ステップS312)及び非同期処理(ステップS318)は、図16の読み込み処理(ステップS10)、演算処理(ステップS12)及び非同期処理(ステップS18)と同一である。
制御部162aは、判定処理(ステップS315)として、読み込み処理(ステップS310)で取得された同期番号がNo.3であるか否かを判定する。同期番号No.3は、第3同期例に割り振られた番号である。
同期番号がNo.3であると判定された場合(ステップS315:YES)、第3同期例に係る同期信号の生成処理が開始される。第3同期例では、図38に示されるような、高周波パワーの同期信号PSS−Rに同期させた同期信号PSS−Mが生成される。この生成処理については図41を用いて後述する。同期番号がNo.3でないと判定された場合(ステップS315:NO)、制御部162aは、判定処理(ステップS316)として、読み込み処理(ステップS310)で取得された同期番号がNo.4であるか否かを判定する。同期番号No.4は、第4同期例に割り振られた番号である。
同期番号がNo.4であると判定された場合(ステップS316:YES)、第4同期例に係る同期信号の生成処理が開始される。第4同期例では、図39に示されるような、高周波パワーの同期信号PSS−Rに同期させた同期信号PSS−Mが生成される。この生成処理については図42を用いて後述する。その他の処理は図16と同一である。
なお、図40に示されるフローチャートに替えて、図16に示されるフローチャートに、図40の判定処理(ステップS315及びステップS316)を追加したフローチャートを用いてもよい。
[第3同期例の同期信号の生成処理]
第3同期例では、図38に示されるように、高周波パワーがHighレベルとなるタイミングのみ、マイクロ波パワーの同期信号PSS−Mが出力されるように、同期させる。図41は、第3同期例に係る同期信号の生成処理の一例を示すフローチャートである。図41に示されるフローチャートは、図40の判定処理(ステップS315)にて同期番号がNo.3であると判定された場合(ステップS315:YES)に開始される。
図41に示されるように、マイクロ波発生部16aの制御部162aは、読み込み処理(ステップS320)として、高周波パワーの同期信号PSS−Rを、パルス入力器167aを介して取得する。
続いて、制御部162aは、判定処理(ステップS322)として、高周波パワーの同期信号PSS−Rが立ち上がりエッジであるか否かを判定する。高周波パワーの同期信号PSS−Rが立ち上がりエッジであると判定された場合(ステップS322:YES)、制御部162aは、同期するタイミングであるとして、同期トリガをパルス生成器162bへ出力する。
パルス生成器162bは、設定処理(ステップS324)として、マイクロ波のパワーの同期信号PSS−MをHighレベルに設定する。パルス生成器162bは、カウント処理(ステップS326)として、High時間をカウントする。パルス生成器162bは、経過判定処理(ステップS328)として、カウント処理(ステップS326)にてカウントされたHigh時間が図40の演算処理(ステップS412)にて演算された同期信号PSS−MのHigh時間を経過したか否かを判定する。
カウントされたHigh時間が同期信号PSS−MのHigh時間を経過していないと判定された場合(ステップS328:NO)、パルス生成器162bは、設定処理(ステップS324)及びカウント処理(ステップS326)を再実行する。つまり、パルス生成器162bは、カウントされたHigh時間が同期信号PSS−MのHigh時間を経過したと判定されるまで、設定処理(ステップS324)及びカウント処理(ステップS326)を繰り返し実行する。
カウントされたHigh時間が同期信号PSS−MのHigh時間を経過したと判定された場合(ステップS328:YES)、パルス生成器162bは、リセット処理(ステップS332)として、カウントされたHigh時間をリセットする。そして、パルス生成器162bは、設定処理(ステップS334)として、同期信号PSS−MをLowレベルに設定する。パルス生成器162bは、カウント処理(ステップS336)として、Low時間をカウントする。パルス生成器162bは、経過判定処理(ステップS338)として、カウント処理(ステップS336)にてカウントされたLoW時間が図40の演算処理(ステップS412)にて演算された同期信号PSS−MのLow時間を経過したか否かを判定する。
カウントされたLow時間が同期信号PSS−MのLow時間を経過していないと判定された場合(ステップS338:NO)、パルス生成器162bは、設定処理(ステップS334)及びカウント処理(ステップS336)を再実行する。つまり、パルス生成器162bは、カウントされたLow時間が同期信号PSS−MのLow時間を経過したと判定されるまで、設定処理(ステップS334)及びカウント処理(ステップS336)を繰り返し実行する。
カウントされたLow時間が同期信号PSS−MのLow時間を経過したと判定された場合(ステップS338:YES)、パルス生成器162bは、リセット処理(ステップS342)として、カウントされたLow時間をリセットする。
続いて、制御部162aは、読み込み処理(ステップS344)として、高周波パワーの同期信号PSS−Rを、パルス入力器167aを介して取得する。続いて、制御部162aは、判定処理(ステップS346)として、高周波パワーの同期信号PSS−RがHighレベルであるか否かを判定する。
高周波パワーの同期信号PSS−RがHighレベルであると判定された場合(ステップS346:YES)、パルス生成器162bは、設定処理(ステップS324)を再実行する。高周波パワーの同期信号PSS−RがHighレベルでないと判定された場合(ステップS346:NO)、又は、高周波パワーの同期信号PSS−Rが立ち上がりエッジでないと判定された場合(ステップS322:NO)、図41に示されるフローチャートは終了し、図40の読み込み処理(ステップS310)が再実行される。図41に示されるフローチャートを実行することにより、高周波パワーがHighレベルとなるタイミングのみ、マイクロ波パワーの同期信号PSS−Mが出力されるように、同期させることができる。
[第4同期例の同期信号の生成処理]
第4同期例では、図39に示されるように、高周波パワーがLowレベルとなるタイミングのみ、マイクロ波パワーの同期信号PSS−Mが出力されるように、同期させる。図42は、第4同期例に係る同期信号の生成処理の一例を示すフローチャートである。図42に示されるフローチャートは、図40の判定処理(ステップS316)にて同期番号がNo.4であると判定された場合(ステップS316:YES)に開始される。
図42に示されるフローチャートは、図41に示されるフローチャートと比較して、判定処理(ステップS352)及び判定処理(ステップS376)が判定処理(ステップS322)及び判定処理(ステップS346)と相違し、その他は同一である。
判定処理(ステップS352)では、高周波パワーの同期信号PSS−Rが立ち下がりエッジであるか否かを判定する。判定処理(ステップS376)では、高周波パワーの同期信号PSS−RがLowレベルであるか否かを判定する。
図42に示されるフローチャートを実行することにより、高周波パワーがLowレベルとなるタイミングのみ、マイクロ波パワーの同期信号PSS−Mが出力されるように、同期させることができる。
[高周波パワーのパルス変調を考慮した場合の整合処理]
チューナ制御部260は、整合処理として、整合モード決定処理、検出タイマー処理、マイクロ波パワーの測定値の書き込み処理、測定値の平均処理及び反射係数の計算処理、及び、モータ駆動処理の5つの処理をマルチタスクで並行して実行する。なお、モータ駆動処理は従来のモータ駆動処理と同一であるため、以下では、それ以外の処理について詳細を説明する。
[整合モード決定処理]
図43は、整合モード決定処理の一例を示すフローチャートである。図43に示されるフローチャートは、例えばオペレータなどによりマイクロ波のパワー制御処理の開始操作がされたタイミングで開始される。
図41に示されるように、チューナ制御部260は、読み込み処理(ステップS380)として、制御器100からパルス周波数、デューティ比、及び、整合モードを取得し、記憶部を参照して、同期信号PSS−MのH検出マスク時間、H検出区間、L検出マスク時間及びL検出区間、並びに、同期信号PSS−RのH検出マスク時間、H検出区間、L検出マスク時間及びL検出区間を取得する。
整合モードは、整合の種別を識別する識別符号である。整合モードAは、同期信号PSS−Mに対して常に整合するモードであり、同期信号PSS−Rは不要である。整合モードBは、同期信号PSS−MがHighレベルのときに整合するモードであり、同期信号PSS−Rは不要である。整合モードCは、同期信号PSS−MがLowレベルのときに整合するモードであり、同期信号PSS−Rは不要である。整合モードDは、同期信号PSS−MがHighレベルのときであって、同期信号PSS−RがHighレベルのときに整合するモードである。整合モードEは、同期信号PSS−MがHighレベルのときであって、同期信号PSS−RがLowレベルのときに整合するモードである。整合モードFは、同期信号PSS−MがLowレベルのときであって、同期信号PSS−RがHighレベルのときに整合するモードである。整合モードFは、同期信号PSS−MがLowレベルのときであって、同期信号PSS−RがLowレベルのときに整合するモードである。
続いて、チューナ制御部260は、算出処理(ステップS382)として、パルス生成器162bからマイクロ波の同期信号PSS−Mを取得し、制御部162aから高周波パワーの同期信号PSS−Rを取得する。そして、同期信号PSS−M及び同期信号PSS−Rの立ち上がり及び立ち下がりを判定し、読み込み処理(ステップS380)にて取得された情報に基づいて、同期信号PSS−MのパルスのH検出期間及びL検出期間、同期信号PSS−RのパルスのH検出期間及びL検出期間を算出する。
続いて、チューナ制御部260は、判定処理(ステップS384)として、読み込み処理(ステップS380)で取得された整合モードがモードAであるか否かを判定する。整合モードがモードAであると判定された場合(ステップS384:YES)、処理1に移行する。
整合モードがモードAでないと判定された場合(ステップS384:NO)、チューナ制御部260は、判定処理(ステップS386)として、読み込み処理(ステップS380)で取得された整合モードがモードBであるか否かを判定する。整合モードがモードBであると判定された場合(ステップS386:YES)、処理2に移行する。
整合モードがモードBでないと判定された場合(ステップS386:NO)、チューナ制御部260は、判定処理(ステップS388)として、読み込み処理(ステップS380)で取得された整合モードがモードCであるか否かを判定する。整合モードがモードCであると判定された場合(ステップS388:YES)、処理3に移行する。
整合モードがモードCでないと判定された場合(ステップS388:NO)、チューナ制御部260は、判定処理(ステップS390)として、読み込み処理(ステップS380)で取得された整合モードがモードDであるか否かを判定する。整合モードがモードDであると判定された場合(ステップS390:YES)、処理4に移行する。
整合モードがモードDでないと判定された場合(ステップS390:NO)、チューナ制御部260は、判定処理(ステップS392)として、読み込み処理(ステップS380)で取得された整合モードがモードEであるか否かを判定する。整合モードがモードEであると判定された場合(ステップS392:YES)、処理5に移行する。
整合モードがモードEでないと判定された場合(ステップS392:NO)、チューナ制御部260は、判定処理(ステップS394)として、読み込み処理(ステップS380)で取得された整合モードがモードFであるか否かを判定する。整合モードがモードFであると判定された場合(ステップS394:YES)、処理6に移行する。
整合モードがモードFでないと判定された場合(ステップS394:NO)、チューナ制御部260は、判定処理(ステップS396)として、読み込み処理(ステップS380)で取得された整合モードがモードGであるか否かを判定する。整合モードがモードGであると判定された場合(ステップS396:YES)、処理7に移行する。
整合モードがモードGでないと判定された場合(ステップS396:NO)、図43に示されるフローチャートが終了し、チューナ制御部260は、読み込み処理(ステップS380)を再実行する。このように、チューナ制御部260は、例えばオペレータなどによりパワー制御処理の終了操作がなされるまで、図43に示されるフローチャートを繰り返し実行する。
[検出タイマー処理]
図44は、マイクロ波パワーの同期信号の検出タイマー処理を示すフローチャートである。図44に示されるフローチャートは、例えばオペレータなどによりマイクロ波のパワー制御処理の開始操作がされたタイミングで開始される。
図44に示されるように、チューナ制御部260は、読み込み処理(ステップS400)として、パルス生成器162bからマイクロ波の同期信号PSS−Mを取得する。
続いて、チューナ制御部260は、判定処理(ステップS402)として、読み込み処理(ステップS400)で取得された同期信号PSS−Mの立ち上がりを検出したか否かを判定する。
同期信号PSS−Mの立ち上がりを検出したと判定された場合(ステップS402:YES)、チューナ制御部260は、タイマー処理(ステップS404)として、H期間タイマーをスタートさせる。H期間タイマーは、同期信号PSS−Mの立ち上がりからの時間経過をカウントするタイマーである。
同期信号PSS−Mの立ち上がりを検出していないと判定された場合(ステップS402:NO)、チューナ制御部260は、判定処理(ステップS405)として、同期信号PSS−MがHighレベルであるか否かを判定する。同期信号PSS−MがHighレベルでないと判定された場合(ステップS405:NO)、チューナ制御部260は、リセット処理(ステップS406)として、H期間タイマーを0にリセットする。同期信号PSS−MがHighレベルであると判定された場合(ステップS405:YES)、チューナ制御部260は、リセット処理(ステップS406)をスキップする。
タイマー処理(ステップS404)又はリセット処理(ステップS406)が終了した場合、チューナ制御部260は、判定処理(ステップS408)として、読み込み処理(ステップS400)で取得された同期信号PSS−Mの立ち下がりを検出したか否かを判定する。
同期信号PSS−Mの立ち下がりを検出したと判定された場合(ステップS408:YES)、チューナ制御部260は、タイマー処理(ステップS410)として、L期間タイマーをスタートさせる。L期間タイマーは、同期信号PSS−Mの立ち下がりからの時間経過をカウントするタイマーである。
同期信号PSS−Mの立ち下がりを検出していないと判定された場合(ステップS408:NO)、チューナ制御部260は、判定処理(ステップS411)として、同期信号PSS−MがLowレベルであるか否かを判定する。同期信号PSS−MがLowレベルでないと判定された場合(ステップS411:NO)、チューナ制御部260は、リセット処理(ステップS412)として、L期間タイマーを0にリセットする。同期信号PSS−MがLowレベルであると判定された場合(ステップS411:YES)、チューナ制御部260は、リセット処理(ステップS412)をスキップする。
タイマー処理(ステップS410)もしくはリセット処理(ステップS412)が終了した場合、又は、同期信号PSS−MがLowレベルであると判定された場合(ステップS411:YES)、図44に示されるフローチャートが終了し、チューナ制御部260は、読み込み処理(ステップS400)を再実行する。このように、チューナ制御部260は、例えばオペレータなどによりパワー制御処理の終了操作がなされるまで、図44に示されるフローチャートを繰り返し実行する。図44のフローチャートを実行することにより、マイクロ波パワーの同期信号に関してH期間タイマー及びL期間タイマーがセットされる。
図45は、高周波パワーの同期信号の検出タイマー処理を示すフローチャートである。図45に示されるフローチャートは、例えばオペレータなどによりマイクロ波のパワー制御処理の開始操作がされたタイミングで開始される。
図45に示される読み込み処理(ステップS420)、判定処理(ステップS422)、タイマー処理(ステップS424)、判定処理(ステップS425)、リセット処理(ステップS426)、判定処理(ステップS428)、タイマー処理(ステップS430)、判定処理(ステップS431)、リセット処理(ステップS432)は、処理対象が高周波パワーの同期信号PSS−Rとなっている点を除き、図44の読み込み処理(ステップS400)、判定処理(ステップS402)、タイマー処理(ステップS404)、判定処理(ステップS405)、リセット処理(ステップS406)、判定処理(ステップS408)、タイマー処理(ステップS410)、判定処理(ステップS411)、リセット処理(ステップS412)と同一である。図45のフローチャートを実行することにより、高周波パワーの同期信号に関してH期間タイマー及びL期間タイマーがセットされる。
[処理1:モードA]
モードAについての処理は、図33及び図34と同一であるので、説明を省略する。
[処理2:モードB]
図46は、モードBにおける書き込み処理の一例を示すフローチャートである。図46に示されるフローチャートは、図43にて整合モードがモードBであると判定された場合(ステップS386:YES)、開始される。
図46に示されるように、チューナ制御部260は、判定処理(ステップS440)として、マイクロ波の同期信号PSS−MのH検出期間であるか否かを判定する。チューナ制御部260は、図44のタイマー処理にてカウントされたH期間タイマーを用いて、H検出期間であるか否かを判定する。
H検出期間であると判定された場合(ステップS440:YES)、チューナ制御部260は、整理処理(ステップS442)として、チューナ26の記憶部に格納されたデータのうち最も古いデータを削除する。nをバッファメモリの数とすると、チューナ制御部260は、マイクロ波パワーのHighレベルの測定値V1h(0),V2h(0),V3h(0)を削除する。そして、チューナ制御部260は、測定値V1h(n),V2h(n),V3h(n)のデータ上の格納位置を、それぞれ測定値V1h(n−1),V2h(n−1),V3h(n−1)の格納位置へシフトさせる。
続いて、チューナ制御部260は、書き込み処理(ステップS444)として、測定値をチューナ26の記憶部に記憶する。チューナ制御部260は、A/D変換器264a(図27)により検出されるマイクロ波パワーの測定値V1をチューナ26の記憶部のV1h(n)に記憶する。チューナ制御部260は、A/D変換器264b(図27)により検出されるマイクロ波パワーの測定値V2をチューナ26の記憶部のV2h(n)に記憶する。チューナ制御部260は、A/D変換器264c(図27)により検出されるマイクロ波パワーの測定値V3をチューナ26の記憶部のV3h(n)に記憶する。
H検出期間でないと判定された場合(ステップS440:NO)、又は、書き込み処理(ステップS444)が終了すると、チューナ制御部260は、判定処理(ステップS440)を再実行する。このように、H検出区間である場合のみ、整理処理(ステップS442)及び書き込み処理(ステップS444)が実行される。これにより、マイクロ波のパワーがHighレベルとなるときだけ、測定値V1h(n),V2h(n),V3h(n)が時系列でチューナ26の記憶部に格納される。
[処理3:モードC]
図47は、モードCにおける書き込み処理の一例を示すフローチャートである。図47に示されるフローチャートは、整合モードがモードCであると判定された場合(ステップS388:YES)、開始される。
図47に示されるように、チューナ制御部260は、判定処理(ステップS450)として、マイクロ波の同期信号PSS−MのL検出期間であるか否かを判定する。チューナ制御部260は、図44のタイマー処理にてカウントされたL期間タイマーを用いて、L検出期間であるか否かを判定する。
整理処理(ステップS452)及び書き込み処理(ステップS454)は、図46の整理処理(ステップS442)及び書き込み処理(ステップS444)と同一である。このように、L検出区間である場合のみ、整理処理(ステップS452)及び書き込み処理(ステップS454)が実行される。これにより、マイクロ波のパワーがLowレベルとなるときだけ、測定値V1h(n),V2h(n),V3h(n)が時系列でチューナ26の記憶部に格納される。
[処理4:モードD]
図48は、モードDにおける書き込み処理の一例を示すフローチャートである。図48に示されるフローチャートは、整合モードがモードDであると判定された場合(ステップS390:YES)、開始される。
図48に示されるように、チューナ制御部260は、判定処理(ステップS460)として、マイクロ波の同期信号PSS−MのH検出期間であるか否かを判定する。チューナ制御部260は、図44のタイマー処理にてカウントされたH期間タイマーを用いて、H検出期間であるか否かを判定する。
マイクロ波の同期信号PSS−MのH検出期間であると判定された場合(ステップS460:YES)、チューナ制御部260は、判定処理(ステップS461)として、高周波パワーの同期信号PSS−RのH検出期間であるか否かを判定する。チューナ制御部260は、図45のタイマー処理にてカウントされたH期間タイマーを用いて、H検出期間であるか否かを判定する。
H検出期間であると判定された場合(ステップS461:YES)、チューナ制御部260は、整理処理(ステップS462)及び書き込み処理(ステップS464)を実行する。整理処理(ステップS462)及び書き込み処理(ステップS464)は、図46の整理処理(ステップS442)及び書き込み処理(ステップS444)と同一である。
書き込み処理(ステップS464)が終了した場合、又は、H検出期間でないと判定された場合(ステップS460:NO、ステップS461:NO)、チューナ制御部260は、判定処理(ステップS460)を再実行する。このように、マイクロ波パワー及び高周波パワーが共にH検出区間である場合のみ、整理処理整理処理(ステップS462)及び書き込み処理(ステップS464)が実行される。これにより、マイクロ波パワー及び高周波パワーが共にHighレベルとなるときだけ、測定値V1h(n),V2h(n),V3h(n)が時系列でチューナ26の記憶部に格納される。
[処理5:モードE]
図49は、モードEにおける書き込み処理の一例を示すフローチャートである。図49に示されるフローチャートは、整合モードがモードEであると判定された場合(ステップS392:YES)、開始される。
図49に示されるように、チューナ制御部260は、判定処理(ステップS470)として、マイクロ波の同期信号PSS−MのH検出期間であるか否かを判定する。チューナ制御部260は、図44のタイマー処理にてカウントされたH期間タイマーを用いて、H検出期間であるか否かを判定する。
マイクロ波の同期信号PSS−MのH検出期間であると判定された場合(ステップS470:YES)、チューナ制御部260は、判定処理(ステップS471)として、高周波パワーの同期信号PSS−RのL検出期間であるか否かを判定する。チューナ制御部260は、図45のタイマー処理にてカウントされたL期間タイマーを用いて、L検出期間であるか否かを判定する。
L検出期間であると判定された場合(ステップS471:YES)、チューナ制御部260は、整理処理(ステップS472)及び書き込み処理(ステップS474)を実行する。整理処理(ステップS472)及び書き込み処理(ステップS474)は、図46の整理処理(ステップS442)及び書き込み処理(ステップS444)と同一である。
書き込み処理(ステップS474)が終了した場合、又は、H検出期間でないと判定された場合(ステップS470:NO)、L検出期間でないと判定された場合(ステップS471:NO)、チューナ制御部260は、判定処理(ステップS470)を再実行する。このように、マイクロ波パワーがH検出区間であり、かつ、高周波パワーがL検出区間である場合のみ、整理処理整理処理(ステップS472)及び書き込み処理(ステップS474)が実行される。これにより、マイクロ波パワーがHighレベルかつ高周波パワーがLowレベルとなるときだけ、測定値V1h(n),V2h(n),V3h(n)が時系列でチューナ26の記憶部に格納される。
[処理6:モードF]
図50は、モードFにおける書き込み処理の一例を示すフローチャートである。図50に示されるフローチャートは、整合モードがモードFであると判定された場合(ステップS394:YES)、開始される。
図50に示されるように、チューナ制御部260は、判定処理(ステップS480)として、マイクロ波の同期信号PSS−MのL検出期間であるか否かを判定する。チューナ制御部260は、図44のタイマー処理にてカウントされたL期間タイマーを用いて、L検出期間であるか否かを判定する。
マイクロ波の同期信号PSS−MのL検出期間であると判定された場合(ステップS480:YES)、チューナ制御部260は、判定処理(ステップS481)として、高周波パワーの同期信号PSS−RのH検出期間であるか否かを判定する。チューナ制御部260は、図45のタイマー処理にてカウントされたH期間タイマーを用いて、H検出期間であるか否かを判定する。
H検出期間であると判定された場合(ステップS481:YES)、チューナ制御部260は、整理処理(ステップS482)及び書き込み処理(ステップS484)を実行する。整理処理(ステップS482)及び書き込み処理(ステップS484)は、図46の整理処理(ステップS442)及び書き込み処理(ステップS444)と同一である。
書き込み処理(ステップS484)が終了した場合、又は、L検出期間でないと判定された場合(ステップS480:NO)、H検出期間でないと判定された場合(ステップS481:NO)、チューナ制御部260は、判定処理(ステップS480)を再実行する。このように、マイクロ波パワーがL検出区間であり、かつ、高周波パワーがH検出区間である場合のみ、整理処理整理処理(ステップS482)及び書き込み処理(ステップS484)が実行される。これにより、マイクロ波パワーがLowレベルかつ高周波パワーがHighレベルとなるときだけ、測定値V1h(n),V2h(n),V3h(n)が時系列でチューナ26の記憶部に格納される。
[処理7:モードG]
図51は、モードGにおける書き込み処理の一例を示すフローチャートである。図51に示されるフローチャートは、整合モードがモードGであると判定された場合(ステップS396:YES)、開始される。
図51に示されるように、チューナ制御部260は、判定処理(ステップS490)として、マイクロ波の同期信号PSS−MのL検出期間であるか否かを判定する。チューナ制御部260は、図44のタイマー処理にてカウントされたL期間タイマーを用いて、L検出期間であるか否かを判定する。
マイクロ波の同期信号PSS−MのL検出期間であると判定された場合(ステップS490:YES)、チューナ制御部260は、判定処理(ステップS491)として、高周波パワーの同期信号PSS−RのL検出期間であるか否かを判定する。チューナ制御部260は、図45のタイマー処理にてカウントされたL期間タイマーを用いて、L検出期間であるか否かを判定する。
L検出期間であると判定された場合(ステップS491:YES)、チューナ制御部260は、整理処理(ステップS492)及び書き込み処理(ステップS494)を実行する。整理処理(ステップS492)及び書き込み処理(ステップS494)は、図46の整理処理(ステップS442)及び書き込み処理(ステップS444)と同一である。
書き込み処理(ステップS494)が終了した場合、又は、L検出期間でないと判定された場合(ステップS490:NO、ステップS491:NO)、チューナ制御部260は、判定処理(ステップS490)を再実行する。このように、マイクロ波パワー及び高周波パワーが共にL検出区間である場合のみ、整理処理整理処理(ステップS492)及び書き込み処理(ステップS494)が実行される。これにより、マイクロ波パワー及び高周波パワーが共にLowレベルとなるときだけ、測定値V1h(n),V2h(n),V3h(n)が時系列でチューナ26の記憶部に格納される。
[時系列バッファデータ]
図52は、時系列バッファデータの一例である。図52に示される時系列バッファデータは、図46〜図51の何れかのフローチャートを実行することにより得ることができる。図52に示されるように、例えば、マイクロ波のHighレベルの測定値V1H、Lowレベルの測定値V1Lが、現在から数サンプル前までの期間において、時系列で格納される。時系列バッファデータは、V2H,V2L,V3H,V3Lについても同様に時系列で格納している。
[測定値の平均処理及び反射係数の算出処理]
次に、時系列データを用いたチューナ検波部263の測定値の平均処理及び反射係数の算出処理を説明する。図53は、測定値の平均処理及び反射係数の算出処理の一例を示すフローチャートである。図53に示されるフローチャートは、例えばオペレータなどによりマイクロ波のパワー制御処理の開始操作がされたタイミングで開始される。
図53に示される決定処理(ステップS500)、読み込み処理(ステップS502)、平均化処理(ステップS504)及び計算処理(ステップS506)は、図36の決定処理(ステップS280)、読み込み処理(ステップS282)、平均化処理(ステップS286)及び計算処理(ステップS288)と同一である。
[チューナのまとめ]
プラズマ処理装置1では、チューナ検波部263により、導波管21内のマイクロ波のパワーに応じた測定値がパルス周波数に基づいたタイミングで検出される。これにより、Highレベルのパワーの測定値とLowレベルのパワーの測定値とを区別して取り扱うことができる。このため、チューナ26は、Highレベルのパワーの測定値に基づく整合と、Lowレベルのパワーの測定値に基づく整合とを行うことができる。よって、Highレベル及びLowレベルのパワーを全体的に平均化する場合と比べて、マイクロ波出力装置側のインピーダンスとチャンバ側のインピーダンスとを適切に整合することができる。
チューナ26は、マイクロ波のパワーがパルス変調された場合であっても、H検出区間だけ、又は、L検出区間だけを繋ぎ合わせて移動平均時間を取得することができる。このため、マイクロ波出力装置16は、適切にチューナ整合することができる。
また、チューナ26は、H検出マスク時間、L検出マスク時間、H検出区間及びL検出区間を適切に設定することで、マイクロ波のパワーの変動が大きい期間を回避してパワーを測定することができる。よって、パワーの測定誤差を小さくすることができる。結果として、チューナの整合の精度を向上することができる。
また、チューナ26は、マイクロ波パワー及び高周波パワーのパルス変調を考慮して整合することができる。
以上、種々の実施形態について説明してきたが、上述した実施形態に限定されることなく種々の変形態様を構成可能である。
上述した実施形態では、マイクロ波発生部16aと波形発生器161とが分離している例を説明したが、一つの装置として構成されていてもよい。
上述した実施形態では、マイクロ波パワーの同期信号を高周波パワーの同期信号に合わせて生成する例を説明したが、高周波パワーの同期信号をマイクロ波パワーの同期信号に合わせて生成する場合であってもよい。
プラズマ処理装置1がPfモードのみ用いる場合、測定部16kは反射波を測定する構成を備えていなくてもよい。
[パルス生成器の変形例]
マイクロ波のパルス生成器162bはマイクロ波発生部16aを備えていなくてもよい。図54は、変形例に係るマイクロ波出力装置1Aを示す図である。例えば図54に示されるように、制御器100の指令によりマイクロ波パワーの同期信号PSS−Mを発生するパルス発生器1621を演算装置100aが構成してもよい。また、高周波電源58はパルス生成器58aを備えていなくてもよい。例えば図54に示されるように、制御器100の指令により高周波パワーの同期信号PSS−Rを発生するパルス発生器1624を演算装置100aが構成してもよい。また、マイクロ波のチューナ26へのマイクロ波パワーの同期信号PSS−Mの入力と高周波パワーの同期信号PSS−Rの入力との替わりに、例えば図54に示されるように、制御器100の指令によりマイクロ波パワーの同期信号PSS−MTを発生するパルス発生器1622を演算装置100aが構成してもよい。また、高周波のマッチングユニット60へのマイクロ波の同期信号PSS−Mの入力と高周波パワーの同期信号PSS−Rとの入力の替わりに、例えば図54に示されるように、制御器100の指令により高周波パワーの同期信号PSS−RMを発生するパルス発生器1623を演算装置100aが構成してもよい。
パルスの設定であるパルス周波数、設定デューティー、及び、マイクロ波パワーと高周波パワーとの同期タイミング設定を入力して制御器100にて演算をしてマイクロ波パワーの同期信号PSS−Mおよび高周波パワーの同期信号PSS−Rを出力することで、マイクロ波パルスパワーと高周波パルスパワーの同期出力が可能となる。
パルスの設定であるパルス周波数、設定デューティー、及び、マイクロ波パワーと高周波パワーとの同期タイミング設定、整合モード設定を入力して制御器100にて演算をしてマイクロ波パワーの同期信号PSS−MTおよび高周波パワーの同期信号PSS−RMを出力することで、マイクロ波パルスと高周波パルスとを同期整合が可能となり、安定したプラズマ生成が可能となる。