JP6857050B2 - 構造物評価方法及び構造物評価システム - Google Patents
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Description
特許文献1には、既設の構造物の疲労寿命の評価を行う技術について提案されている。この技術では、先ず、構造物の欠陥部を探傷し、欠陥部を採取して試験片を作成する。次に、構造物の中で欠陥部に生じる荷重条件が計算され、この荷重条件を用いて試験片の疲労試験が実施される。そして、疲労試験の結果から、既設の構造物の疲労寿命が評価される。
また、本発明に関連する技術として、特許文献2には、3次元スキャナを用いて取得されたデータに基づいて立体物の3Dモデリングを行う技術が示されている。
また、特許文献1の評価技術では、構造物の欠陥部分を採取して疲労試験が行われる。このような手法を、耐力を低下させる要因が多数存在する構造物に適用すると、複数の要因箇所の各々について疲労試験が必要になるなど、作業に膨大な時間及びコストが費やされる。また、構造物の欠陥部分を採取する行為は、構造物の部分的な破壊を伴い、構造物の耐久性を低下させるため、好ましくない。
本発明は、膨大な作業時間又は膨大な作業コストを要さずに構造物の正確な耐力評価を行える構造物評価方法及び構造物評価システムを提供することを目的とする。
構造物の少なくとも外形を測定する測定ステップと、
前記測定ステップの測定結果によって特定できない前記構造物の非測定部分の形態及び前記構造物の物性を、前記構造物の設計データから補完する補完ステップと、
前記測定ステップの測定結果と補完ステップとによって特定された前記構造物の各部の形態及び各部の物性を反映させたシミュレーションモデルを作成するモデル化ステップと、
前記シミュレーションモデルを用いて前記構造物の耐力を評価する評価ステップと、
を含む構造物評価方法とした。
構造物の少なくとも外形を測定可能な測定装置と、前記構造物の設計データが格納される記憶装置を有しデータ処理を行う情報処理装置とを備える構造物評価システムであって、
前記情報処理装置は、
前記測定装置の測定結果によって特定できない前記構造物の非測定部分の形態及び前記構造物の物性を、前記構造物の設計データから補完する補完処理部と、
前記測定装置の測定結果と補完処理部の補完とによって特定された前記構造物の各部の形態及び各部の物性を反映させたシミュレーションモデルを作成するモデル化処理部と、
前記シミュレーションモデルを用いて前記構造物の耐力を評価する評価処理部と、
を備える構成とした。
さらに、本発明に係る構造物評価方法は、前記損傷予測に基づき前記構造物の補修計画を策定する補修計画策定ステップを含んでもよい。
3次元スキャナを用いた外形測定と、さらに、非破壊検査装置を用いた付加測定(例えば音あるいは振動を用いた計測に基づく内部欠陥測定、応力歪み測定、光学的な計測に基づく腐食度合測定、及び電位計測に基づく腐食度合測定など)を行い、
前記外形測定の結果により前記構造物の外形を特定し、前記付加測定により前記構造物の不可視な部分の少なくとも一部の状態を特定する方法とするとよい。
この方法によれば、外形測定により構造物の各部の欠損、製作誤差及び施工誤差などをシミュレーションモデルに反映することができる。また、付加測定により、構造物の不可視部の状態をシミュレーションモデルに反映することができる。そして、これらを反映した構造物の耐力評価が可能となる。
前記測定ステップの測定結果から形態が特定される前記構造物の測定部分が、前記設計データに示される前記構造物のいずれの部分であるかを対応づけるマッチングステップと、
前記設計データに示される形態のうち前記マッチングステップで対応づけられていない非対応部分の形態を表わすデータを、前記測定ステップにより取得された前記構造物の外形の測定結果に基づいて修正する修正ステップと、
を含み、
前記修正ステップで修正されたデータを用いて、前記構造物の前記非測定部分の形態が補完されるようにするとよい。
前記モデル化ステップは、前記複数種類の補完に対応する複数のシミュレーションモデルを作成し、
前記評価ステップは、前記複数種類のシミュレーションモデルの各評価を行うようにするとよい。
この方法によれば、構造物の非測定部分について複数の誤差を加えた耐力評価を行うことができる。これにより、構造物の非測定部分に不確実性があっても、例えばベストケースの構造物の耐力評価とワーストケースの構造物の耐力評価など、不確実性を考慮した耐力評価を行うことができる。
図1は、本発明の実施形態に係る構造物評価システムを示すブロック図である。
本実施形態の構造物評価システム1は、既設の構造物の耐力の評価を行うシステムであり、3次元スキャナ11と、物性測定装置12と、コンピュータである情報処理装置20とを備える。情報処理装置20は、記憶装置21と、画像表示が可能な表示装置22と、ユーザの操作を入力可能なキーボード又はマウスなどの操作入力装置23と、耐力評価に関する様々なデータ処理を行うデータ処理部30とを備える。
データ処理部30は、CPU(Central Processing Unit)がプログラムを実行して機能する機能モジュールである。データ処理部30は、測定処理部31と、補完処理部32と、シミュレーションモデル作成部33と、シミュレーション処理部と、評価計算部35と、補修計画策定部36とを備える。シミュレーションモデル作成部33は、本発明に係るモデル化処理部の一例に相当する。シミュレーション処理部34と評価計算部35とは、本発明に係る評価処理部の一例に相当する。
3次元スキャナ11は、モーションセンサを内蔵したハンディタイプであり、測定中に自らの位置及び向きを測定するとよい。さらに、3次元スキャナ11は、測定対象物の反射光から三角法方式、タイム・オブ・フライト方式又は位相差方式の測定法を用いて、3次元スキャナ11と物体の反射面との距離を測定する。そして、3次元スキャナ11の自らの位置及び向きと、反射点までの距離とから、物体の外面を表わす各走査点の3次元座標内の位置を計算する。このような走査を測定対象物の外面全体にわたって行うことで、測定対象物の外形を三次元座標内で点群、もしくは面データとして表わすことができる。なお、3次元スキャナ11は、据え置いて測定対象物の外形を測定するタイプであっても、レール上などの所定の経路を移動しながら周囲の測定対象物の外形を計測するタイプであってもよい。
情報処理装置20の記憶装置21には、評価対象の構造物の設計データが格納される設計データ格納部21aが設けられる。
続いて、データ処理部30によって実行される、本発明の構造物評価方法が適用された構造物の評価処理について説明する。図2は、評価対象の一例である鋼構造物を示すもので、(a)はその斜視図であり、(b)はその一部を示す拡大図である。図3は、構造物評価システムを用いた評価処理の手順を示すフローチャートである。
図2(a)、(b)に示した評価対象の構造物100は、複数の部材h(例えば鋼材)がボルト及び溶接などにより締結されて構成される。構造物100は、既設のものであり、経年による欠損(例えば腐食による欠損など)、傷及び変形などを有する。さらに、構造物100には、設計データに含まれない製作誤差(例えばH型鋼のウェブの角度誤差、スチフナと梁材との取付け角度の誤差など)が含まれる場合がある。また、製作誤差により構造物100を施工する位置又は角度などが設計と異なる施工誤差を有する場合がある。製作誤差および施工誤差により、例えば構造物に鉄道車両の荷重が加わったときに、荷重が構造物の中心からずれてゆがみが生じたりする。
3次元スキャナ11を用いた外形測定は、構造物100の全体にわたって実行されるのが好ましい。しかし、構造物に、3次元スキャナ11を挿入できないような部分、或は、光線が届かないような隠れた部分がある場合には、外形の一部が測定できなくてもよい。物性測定装置12を用いた物性の測定では、構造物の何れの部分であるかが特定できるように構造物の位置情報と測定データとが対応づけられて記録される。ステップS1は、本発明に係る測定ステップの一例に相当する。
次に、データ処理部30では、補完処理部32が補完処理を実行する(ステップS2)。補完処理は、測定処理部31が収集した測定結果によって特定できない構造物100の一つ又は複数の部分の形態及び物性を、設計データから補完して、構造物100の全ての部分の形態および全ての部分の物性を特定する処理である。図2(b)に示すように、構造物100の外形の特定だけでは、例えば構造物100の任意の部分C1が、一体的に成形された構成なのか、複数の部材hが締結された構成なのか識別できない場合がある。さらに、複数の部材hが締結されている場合には、部材h同士の合わせ面の位置及び形状は識別できない。これらの識別できない箇所が、本発明に係る非測定部分の一例に相当する。補完処理部32は、これらについて設計データを用いて特定する。ステップS2は、本発明に係る補完ステップの一例に相当する。
補完処理が開始されると、先ず、補完処理部32は、マッチング処理を行う(ステップS11)。マッチング処理において、補完処理部32は、ステップS1の測定処理の結果から得られる構造物の外形と、設計データから得られる構造物の外形とを比較して、両方の外形の各面及び各頂点を対応づける。なお、マッチング処理では、補完処理部32が自動的に全部の対応づけを行うようにしてもよいし、ユーザが画像表示を見ながら対応関係を指示入力する補助操作を用いて行うようにしてもよい。このマッチング処理により、測定結果に示された構造物の外形の各部と、設計データから求められる構造物の外形の各部とが一対一に対応づけられる。ステップS11は、本発明に係るマッチングステップの一例に相当する。
具体的に説明すれば、構造物100の外形を表わす測定結果には、各部材hの外界に接した面のみが表わされている。補完処理部32は、設計データに含まれる複数の部材hの形状及び大きさと、複数の部材hの配置とから、構造物100の外形面の内側の領域中に、各部材hが占める領域を割り当てる。この割り当てにより、測定結果から識別できない部材h同士の合わせ面又は部材h間の空間など、不可視な部分の境界面(本発明の非対応部分の一例に相当)を表わすデータが、構造物100の測定結果のデータに付加される。
以上のような補完処理により、構造物100の現状が反映され、構造物100を構成する各部材hの形態及び物性が特定された構造物100のデータが得られる。
図5は、シミュレーションモデルの一例を説明する図である。
シミュレーションモデルとしては、図5に示すように、FEM(Finite Element Method)解析モデルを適用できる。ステップS3のシミュレーションモデルの作成処理により、構造物100の各部材hが物性データに合致する剛性及び強度で結合された複数の構造要素(図5の線分の交点)から表わされ、各部材hが締結状態に応じた拘束条件で拘束されたFEM解析モデルが作成される。ステップS3は、本発明に係るモデル化ステップの一例に相当する。
図6は、シミュレーション処理中に実行される再帰処理の手順を示すフローチャートである。図7は、再帰処理の一例を説明する図である。
この再帰処理は、荷重を加えて構造物に変状を発生させるシミュレーションの過程において、構造物の一部に変状発生限界の応力が発生した場合に、この部分が抽出されて実行される。図7(A)は、構造物の一部のFEM解析モデルであり、線分の交点が1つの構造要素を表わす。図7(B)は、シミュレーションの過程で領域R1、R2に変状発生限界の応力が発生した状況を示している。
そして、先の解析で計算された変状発生限界の応力を、再度の要素分割を行った領域R1、R2の境界に与えて、各要素に生じる応力を再計算する(ステップS22)。この再計算により、より詳細に、変状発生限界の応力に達した領域R11と、それより小さい応力が発生した領域R12とが計算される。また、また、応力が変状発生限界を超える領域が計算される場合もある。
再帰処理が終了したら、部分的に詳細に計算された変状の発生をシミュレーションモデルに適用して、さらに、構造物全体のシミュレーションが継続される。
なお、ステップS23、S24では、変状発生限界を超えた要素を除外する例を示した。しかし、要素を除外する処理の代わりに、変状発生限界を超えた要素と、この要素の片側に隣接する他の要素との間を分離させる処理を行ってもよい。このような分離処理によっても、上記と同様に、変状発生箇所で亀裂が発生した状況をより細分化して模擬したシミュレーション解析を行うことができる。
図8は、評価対象の一例である鉄筋コンクリート構造物を示す図である。
本実施形態の構造物評価システムは、鉄筋コンクリートの構造物200など、内部構造が不可視な構造物に対しても、比較的に正確な耐力評価を行うことができる。
このような構造物の場合、3次元スキャナ11により、コンクリート部201の外面部に生じた亀裂、欠損又はゆがみなどを測定することができる。さらに、物性測定装置12として、電位計を用いて内部の鉄筋部202の腐食度合を計測することができる。鉄筋部202は、腐食度合に応じて電位が生じる性質を有する。また、物性測定装置12として、振動又は音波による非破壊計測器を利用して、コンクリート部201の内部の亀裂等を計測してもよい。その他、例えば電磁波・電磁誘導を利用した配筋状況の検査、X線を利用した鉄筋径の計測など、種々の測定を併用することもできる。
そして、このモデルを用いてシミュレーション処理を行うことで、鉄筋コンクリート構造の正確な耐力評価を行うことができる。
11 3次元スキャナ(測定装置)
12 物性測定装置(測定装置)
20 情報処理装置
21 記憶装置
21a 設計データ格納部
22 表示装置
23 操作入力装置
30 データ処理部
31 測定処理部
32 補完処理部
33 シミュレーションモデル作成部
34 シミュレーション処理部
100、200 構造物
Claims (5)
- 構造物の少なくとも外形を測定する測定ステップと、
前記測定ステップの測定結果によって特定できない前記構造物の非測定部分の形態及び前記構造物の物性を、前記構造物の設計データから補完する補完ステップと、
前記測定ステップの測定結果と補完ステップとによって特定された前記構造物の各部の形態及び各部の物性を反映させたシミュレーションモデルを作成するモデル化ステップと、
前記シミュレーションモデルを用いて前記構造物の耐力を評価する評価ステップと、
を含み、
前記補完ステップは、前記構造物の設計データに複数種類の誤差を加えて複数種類の補完を行い、
前記モデル化ステップは、前記複数種類の補完に対応する複数のシミュレーションモデルを作成し、
前記評価ステップは、前記複数のシミュレーションモデルの各評価を行うことを特徴とする構造物評価方法。 - 前記評価ステップは、前記シミュレーションモデルを用いたシミュレーションを行って前記構造物の損傷予測を行い、
さらに、前記損傷予測に基づき前記構造物の補修計画を策定する補修計画策定ステップを含むことを特徴とする請求項1記載の構造物評価方法。 - 前記測定ステップは、
3次元スキャナを用いた外形測定と、非破壊検査装置を用いた付加測定とを行い、
前記外形測定の結果により前記構造物の外形を特定し、前記付加測定により前記構造物の不可視な部分の少なくとも一部の状態を特定することを特徴とする請求項1又は2に記載の構造物評価方法。 - 前記補完ステップは、
前記測定ステップの測定結果から形態が特定される前記構造物の測定部分が、前記設計データに示される前記構造物のいずれの部分であるかを対応づけるマッチングステップと、
前記設計データに示される形態のうち前記マッチングステップで対応づけられていない非対応部分の形態を表わすデータを、前記測定ステップにより取得された前記構造物の外形の測定結果に基づいて修正する修正ステップと、
を含み、
前記修正ステップで修正されたデータを用いて、前記構造物の前記非測定部分の形態が補完されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の構造物評価方法。 - 構造物の少なくとも外形を測定可能な測定装置と、前記構造物の設計データが格納される記憶装置を有しデータ処理を行う情報処理装置とを備える構造物評価システムであって、
前記情報処理装置は、
前記測定装置の測定結果によって特定できない前記構造物の非測定部分の形態及び前記構造物の物性を、前記構造物の設計データから補完する補完処理部と、
前記測定装置の測定結果と補完処理部の補完とによって特定された前記構造物の各部の形態及び各部の物性を反映させたシミュレーションモデルを作成するモデル化処理部と、
前記シミュレーションモデルを用いて前記構造物の耐力を評価する評価処理部と、
を備え、
前記補完処理部は、前記構造物の設計データに複数種類の誤差を加えて複数種類の補完を行い、
前記モデル化処理部は、前記複数種類の補完に対応する複数のシミュレーションモデルを作成し、
前記評価処理部は、前記複数のシミュレーションモデルの各評価を行うことを特徴とする構造物評価システム。
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JP2017037836A JP6857050B2 (ja) | 2017-03-01 | 2017-03-01 | 構造物評価方法及び構造物評価システム |
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