JP6855405B2 - トロリ線測定方法及びトロリ線測定装置 - Google Patents

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Description

本発明は、鉄道車両に電力を供給するトロリ線の測定方法及び測定装置に関し、特に、撮像装置で撮像した画像からトロリ線の位置を特定しかつ摩耗量を算出できるトロリ線の測定方法及び測定装置に関する。
鉄道車両に電力を供給するトロリ線は、車両の走行時におけるパンタグラフとの相対的な摺動によって摩耗する。このため、パンタグラフとの接触がトロリ線の一部分のみに集中することを避けるように、トロリ線を線路の幅方向に交互に偏位させる等の措置が取られている。しかしながら、トロリ線自体が摩耗する状況には変わりはないため、定期的に摩耗の状況を測定し、必要に応じて交換する等の保守管理が必要である。
例えば、特許文献1には、トロリ線の摩耗部の形状を走行する車両から簡易に測定する方法として、スリット状のレーザ光束を左右下側からトロリ線を横断するように略垂直に投光し、投光されたレーザ光束の反射光から光切断像を得て、該トロリ線の側面を含む左右下側の形状を示す画像を取得する方法が開示されている。車両の屋根上には、第1及び第2のトロリ線測定手段が設けられ、更に、車両の屋根上のほぼ中央付近には、レーザ測長センサ手段が設置され、トロリ線の偏位方向にレーザ光を走査し、レーザ測長センサ手段からの信号に基づいてトロリ線の高さ偏位座標を検出する。この検出されたトロリ線の高さ偏位座標に応じてトロリ線と上記した第1及び第2のトロリ線測定手段との距離をそれぞれ算出する。そして、算出された距離に基づいて取得されたトロリ線の側面を含む左右下側の形状を示す画像のサイズが互いに等しくなるように処理して、測定対象のトロリ線の摺動面及び左右側面の断面形状を示すデータを生成するのである。
特許第6206957号公報
特許文献1に開示されているトロリ線の測定方法では、トロリ線の画像を取得する第1及び第2のトロリ線測定手段に加えて、トロリ線の高さ偏位座標を検出するためにレーザ測長センサ手段を用いており、トロリ線を測定するための構成が複雑になる上に、測長データを取得するサンプリング間隔が大きくなってしまうという問題があった。また、取得されたトロリ線の画像データを基準となるトロリ線の基準プロファイルとマッチング処理を行う際に、実際のトロリ線の摺動面が単一の平面でない場合に、摺動面以外の部分と長円弧との区別が困難になり、マッチング誤差を生じる一因となっていた。
本発明は、以上のような状況に鑑みてなされたものであって、その目的は、画像を取得する撮像手段以外のトロリ線の位置を測定するための追加的な手段を用いることなく、摺動面の形状が平面でなくても精度良くトロリ線の中心位置を特定することができるトロリ線測定方法及びトロリ線測定装置を提供することにある。
本発明によるトロリ線測定方法は、光源からトロリ線に投光された光の反射画像を撮像する撮像工程と、前記反射画像を画像処理して画素毎の輝度データを演算する画像処理工程と、前記画像処理工程で得られた前記輝度データの強度及び分布に基づいて、前記反射画像内の前記トロリ線の外形線に対応する前記画素の前記輝度データを抽出する抽出工程と、前記抽出工程で抽出された前記外形線に対応する前記輝度データにおいて摩耗領域及び円弧領域を識別し、識別された前記円弧領域に含まれる2点の座標位置から前記円弧領域を含む仮想円の中心位置を特定する中心位置特定工程と、を含むことを特徴とする。
また、本発明によるトロリ線測定装置は、トロリ線の下方を前記トロリ線に沿って移動するベースと、前記ベースの上面に配置され、前記トロリ線に向けて光を投光する光源と、前記光源から前記トロリ線に投光された光の反射画像を撮像する撮像装置と、前記光源及び前記撮像装置の動作を制御するとともに、前記撮像装置で撮像された前記反射画像を処理する制御装置と、を備えることを特徴とする。このとき、上記したトロリ線測定装置の発明では、前記ベースは、車両の上面にとりつけられている、あるいは車両の上面として構成されていてもよい。
かかる発明によれば、撮像装置で撮像されたトロリ線近傍の反射画像を画像処理して輝度データを抽出し、この輝度データから識別される円弧領域に含まれる2点の座標位置から当該円弧領域を含む仮想円とその中心位置を特定するため、画像を取得する撮像手段以外のトロリ線の位置を測定するための追加的な手段を用いることなく、摺動面の形状が平面でなくても精度良くトロリ線の中心位置を特定することが可能となる。
上記したトロリ線測定方法の発明では、前記撮像工程を、前記トロリ線に沿って移動しつつ連続的に撮像を実施してもよい。また、前記中心位置特定工程において、前記2点の座標位置を2以上の複数の組選択し、これら選択された複数の組の前記2点の座標位置毎の中心位置を特定し、特定された複数の中心位置の分布の重心位置を前記仮想円の中心位置として特定してもよい。さらに、前記撮像工程において、それぞれ異なる複数位置から複数の反射画像を撮像し、前記抽出工程において、前記複数位置で取得された前記複数の反射画像を合成して前記トロリ線に対応する前記輝度データとするようにしてもよい。かかる動作により、データの冗長性を確保できるとともに、中心位置を特定する精度を向上させることができる。
上記したトロリ線測定方法の発明では、前記抽出工程において、前記トロリ線の外形線に対応する前記輝度データが複数ある場合に、これら複数の輝度データを別々に抽出し、前記中心位置特定工程において、前記複数の輝度データ毎に複数の仮想円の中心位置を特定するようにしてもよい。かかる動作により、オーバーラップ区間等でトロリ線が2本同時に撮像されるような場合であっても、それぞれのトロリ線の中心位置を特定することが可能となる。
さらに、上記したトロリ線測定方法の発明では、前記中心位置特定工程で特定された中心位置に中心を有しかつ新品のトロリ線と同一の直径となる仮想円を重ね合わせ、この重ね合わせた前記仮想円の上端から前記輝度データの前記摩耗領域に至る前記仮想円の中心を通る線分の長さを測定し、前記線分の長さを前記トロリ線の残存直径とする残存直径測定工程をさらに含む、あるいは、前記中心位置特定工程で特定された中心位置に中心を有しかつ新品のトロリ線と同一の形状となる仮想トロリ線を重ね合わせ、この重ね合わせた前記仮想トロリ線の下端と前記輝度データの前記摩耗領域とで囲まれる部分の面積を測定し、前記面積を前記トロリ線の摩耗量とする摩耗量測定工程をさらに含む、ようにしてもよい。かかる動作を実行することにより、トロリ線の中心位置を特定するだけでなく、摩耗したトロリ線の残存直径や摩耗量を得ることが可能となる。
また、上記したトロリ線測定装置の発明では、前記光源は、前記トロリ線と交差する線状光を投光する構成や、レーザビームを前記トロリ線に向けて投光する構成、あるいは、前記ベースの上に複数配置される構成としてもよい。さらに、前記撮像装置は、前記ベースの上に複数配置される構成や、前記ベースの幅方向にずれた位置に配置される構成としてもよい。かかる構成により、取得する画像データの冗長性を確保できるとともに、死角をなくして中心位置の特定精度を向上させることができる。
本発明の実施例1によるトロリ線測定装置を用いて、トロリ線近傍の画像データを取得する動作の概要を示す側面図である。 本発明の実施例1によるトロリ線測定装置の概要を示す図であって、図2(a)は上面図を示し、図2(b)は前方から見た正面図を示す。 本発明の実施例1による画像処理工程で得られた2次元の画像データ及びこれに対する抽出工程の動作の概要を説明する図であって、図3(a)は画像処理された所定位置での画像データの一例を示し、図3(b)は抽出処理後の画像データの一例を示す。 本発明の実施例1によるトロリ線測定方法が実行するトロリ線の中心位置を決定する動作の概要を説明する模式図であって、図4(a)は抽出工程で得られた輝度データの一例を示し、図4(b)は図4(a)で示した輝度データを用いてトロリ線の外形線を識別する動作の一例を示し、図4(c)は図4(c)で識別された外形線から所定の2点の組合せによる中心位置を推定する動作の一例を示し、図4(d)は特定された仮想円及び中心位置の結果の一例を示す。 本発明の実施例1によるトロリ線測定方法の変形例を示す模式図であって、図5(a)は残存直径測定工程の概要を示し、図5(b)は摩耗量測定工程の概要を示す。 本発明の実施例2によるトロリ線測定装置の概要を示す図であって、図6(a)は上面図を示し、図6(b)は前方から見た正面図を示す。 本発明の実施例2によるトロリ線測定装置の制御装置が実行する抽出工程の概要を説明する図であって、図7(a)は図6に示した3つの撮像装置でそれぞれ取得された画像データの一例を示し、図7(b)は抽出処理後の画像データの一例を示す。 本発明の実施例3によるトロリ線測定方法における2次元の画像データである。
以下、本発明によるトロリ線測定方法及び測定装置の具体的な実施態様について、図1乃至図8を用いて説明する。
<実施例1>
図1は、本発明の実施例1によるトロリ線測定装置を用いて、トロリ線近傍の画像データを取得する動作の概要を示す側面図である。
図1に示すように、本発明の実施例1によるトロリ線測定装置100は、その一例として、一対のレール(図示せず)上を走行する車両10の屋根部12の上面に設けられ、車両10の走行とともに上側に対向するトロリ線20の下側領域を撮像する。トロリ線20は、その延長方向を挟んで一対の溝部20aが形成されており、この溝部20aを挟持する態様で、所定の間隔で設けられた固定具22により固定支持されている。また、車両10の屋根部12には、集電舟14aを有するパンタグラフ14が設けられており、集電舟14aの上面がトロリ線20の下部と摺接する。
トロリ線測定装置100は、車両10の屋根部12に取り付けられるベース110と、このベース110の上面に配置され、トロリ線20に向けて光Lを投光する光源120と、同じくベース110の上面に配置され、トロリ線20の下側に投光された光Lの反射画像を撮像する撮像装置130と、上記した光源120及び撮像装置130の動作を制御するとともに、撮像装置130で撮像された反射画像を処理する制御装置140と、により構成されている。図1に示す例では、撮像装置130は、ベース110上において光源120より後側に配置されており、その視野Vはトロリ線20に対して斜め前方を撮像領域とするように配向されている。なお、視野Vの領域で光Lの反射画像を撮像できる位置関係であれば、光源120と撮像装置130との前後関係は問わない。
図2は、本発明の実施例1によるトロリ線測定装置の概要を示す図であって、図2(a)は上面図を示し、図2(b)は前方から見た正面図を示している。
図2(a)に示すように、本発明の実施例1によるトロリ線測定装置100において、ベース110は、車両10の屋根部12に取り付けられ、当該車両10の走行とともにトロリ線20に沿って走行する。また、ベース110の上面110aには、光源120と撮像装置130とが配置されており、本実施例1の一例として、ベース110の後面110bには、制御装置140が取り付けられており、図示しない配線等で光源120及び撮像装置130と接続されている。
光源120は、トロリ線20に向けて光Lを発する投光面122aを含む投光機122と、当該投光機122をベース110の上面110aに固定する投光機ステー124と、により構成されている。このとき、投光機122は、その一例として、ベース110の前後方向に沿って回動自在となるように、投光機ステー124に固定されるのが好ましい。また、投光機122は、トロリ線20の下側領域に当該トロリ線20と交差する線状光を投光するものが好ましく、その一例として、例えば線状のレーザビームを照射するビーム照射機等が例示できる。
撮像装置130は、トロリ線20の下側領域に向けて視野Vを有する受像部132aを含む撮像部本体132と、当該撮像部本体132をベース110の上面110aに固定する本体ステー134と、により構成されている。このとき、撮像部本体132は、光源120の投光機122と同様に、その一例として、ベース110の前後方向に沿って回動自在となるように、本体ステー134に固定されるのが好ましい。また、撮像部本体132は、トロリ線20の下側領域を走行しつつ連続的に撮像できるものが好ましく、その一例として、例えばCCDカメラや動画を撮影できるビデオカメラ等が例示できる。
制御装置140は、上述のとおり、光源120及び撮像装置130と電気的に接続されており、これらの光源120及び撮像装置130の動作を制御するとともに、撮像装置130で取得された画像データを画像処理する機能を有する。制御装置140は、図示を省略する演算部や記憶部等を備えており、記憶部に記憶されたプログラムのアルゴリズムを用いて演算部が画像データの画像処理を実行するように構成されている。
図2(b)に示すように、光源120から投光された線状の光Lは、トロリ線測定装置100とトロリ線20との間の空間を伝搬し、光Lがトロリ線20の下部に達すると、トロリ線20の外形線に対応した領域に輝線部Bを形成する。このとき、撮像装置130がこの輝線部Bの領域の反射画像を撮像し(撮像工程)、その画像が制御装置140に転送されると、制御装置140は、反射画像内の輝度を画素ごとに演算して2次元の画像データに画像処理する(画像処理工程)。そして、このような2次元の画像データを、車両10をトロリ線20に沿って走行させつつ連続的に取得すると、所定の距離にわたるトロリ線20の3次元画像データとなる。
図3は、本発明の実施例1による画像処理工程で得られた2次元の画像データ及びこれに対する抽出工程の動作の概要を説明する図であって、図3(a)は画像処理された所定位置での画像データの一例を示し、図3(b)は抽出処理後の画像データの一例を示している。図3(a)に示すように、撮像装置130で撮像された生画像データは、上述の手法で制御装置140により画像処理されて、視野内の画素のうち輝度の高い画素は明るく(白く)表示され、輝度の低い画素は暗く(黒く)表示される強度に基づいた画像データとなる。
このように画像処理された画像データは、制御装置140において、さらにトロリ線20の近傍の輝度データを抽出するためのアルゴリズムによる抽出処理が実行される。すなわち、図3(a)に示すように、取得された画像データのうち、輝度の近い画素ごとに領域を例えば領域A1乃至A6までグループ化し、輝度が小さいグループや密集度が低い領域を除去する。これにより、例えば領域A3乃至A6はトロリ線20ではないと認識される。続いて、領域内の輝度の高い画素の配置(並び)や位置(より画像全体の下側に近い方がトロリ線20である可能性が高い)を考慮することにより領域A2を除去して、図3(b)に示すように、最終的に領域A1をトロリ線20の輝線部Bが含まれる領域として抽出される。
図4は、本発明の実施例1によるトロリ線測定方法が実行するトロリ線の中心位置を決定する動作の概要を説明する模式図であって、図4(a)は抽出工程で得られた輝度データの一例を示し、図4(b)は図4(a)で示した輝度データを用いてトロリ線の外形線を識別する動作の一例を示し、図4(c)は図4(c)で識別された外形線から所定の2点の組合せによる中心位置を推定する動作の一例を示し、図4(d)は特定された仮想円及び中心位置の結果の一例をそれぞれ示している。制御装置140によって抽出されたトロリ線20の特定の位置(断面)における輝度データDは、図4(a)に示すように、輝度の高い複数の画素が連続的に分布する態様で得られる。
本発明の実施例1によるトロリ線測定方法において、制御装置140は、続いて中心位置特定工程を実施する。すなわち、図4(b)に示すように、制御装置140は、輝度データDのうち、まず初めにパンタグラフとの接触で摩耗した摺動面PLを直線で近似して摩耗領域W1を特定する。そして、摩耗領域W1の両側に位置する曲線部分をトロリ線20の外形線に対応する第1円弧領域C1及び第2円弧領域C2と識別する。
続いて、制御装置140は、第1円弧領域C1あるいは第2円弧領域C2に含まれるいずれかの2点(P1、P2)を選択した後、これらの2点を結ぶ線分を底辺としかつ新品のトロリ線20の半径RTに等しい長さの線分R1を2辺とする二等辺三角形T1を作図する。このときの二等辺三角形T1の第3の頂点を第1の重心G1と定義する。そして同様に、第1円弧領域C1あるいは第2円弧領域C2に含まれる2点(P3、P4)を結ぶ線分を底辺とし、半径RTに等しい長さの線分R2を2辺とする二等辺三角形T2を作図して、第2の重心G2を定義する。
ここで、輝度データDの第1の円弧領域C1及び第2の円弧領域C2に含まれる画素が、トロリ線20の外形線と完全に一致する場合、上記定義された第1の重心G1と第2の重心G2とが一致する。これに対して、これらの重心位置が完全に一致しない場合には、上記定義された第1の重心G1及び第2の重心G2の中点を仮想円CVの中心GVと再定義する。これにより、図4(d)に示すように、輝度データDに対して半径RTの仮想円CVとその中心GVの位置を特定される。
かかる構成及び動作により、本発明の実施例1によるトロリ線測定方法及びトロリ線測定装置は、撮像装置130で撮像されたトロリ線20近傍の反射画像を画像処理して輝度データDを抽出し、この輝度データDから識別される円弧領域C1、C2に含まれる2点の座標位置から当該円弧領域を含む仮想円CVとその中心位置GVを特定するため、画像を取得する撮像手段以外のトロリ線の位置を測定するための追加的な手段を用いることなく、また摺動面の形状が平面でなくても精度良くトロリ線の中心位置を特定することが可能となる。なお、図3において、中心位置を特定するために2つの二等辺三角形を定義する場合を例示したが、3つ以上の二等辺三角形を定義して処理を行ってもよい。
図5は、本発明の実施例1によるトロリ線測定方法の変形例を示す模式図であって、図5(a)は残存直径測定工程の概要を示し、図5(b)は摩耗量測定工程の概要をそれぞれ示している。図5(a)に示すように、本発明の実施例1によるトロリ線測定方法においては、その変形例として、図4に示した中心位置特定工程の後に、特定された中心位置GVに中心を有しかつ直径RTとなる仮想円CVを重ね合わせ、この重ね合わせた仮想円CVの上端から輝度データDの摩耗領域W1に至る仮想円CVの中心GVを通る線分の長さを測定し、この線分の長さをトロリ線20の残存直径RDとする残存直径測定工程をさらに実行してもよい。これにより、撮像装置130で取得したトロリ線20近傍の反射画像のみで、摩耗したトロリ線20の残存直径RDを推定することもできる。
また、図5(b)に示すように、本発明の実施例1によるトロリ線測定方法においては、他の変形例として、図4に示した中心位置特定工程の後に、特定された中心位置GVに中心を有しかつ新品のトロリ線と同一の形状となる仮想トロリ線TVを重ね合わせ、この重ね合わせた仮想トロリ線TVの下端と輝度データDの摩耗領域W1とで囲まれる部分の面積を測定し、この面積をトロリ線20の摩耗量Sとする摩耗量測定工程をさらに実行してもよい。これにより、撮像装置130で取得したトロリ線20近傍の反射画像のみで、トロリ線20の摩耗量Sを推定することもできる。
<実施例2>
図6は、本発明の実施例2によるトロリ線測定装置の概要を示す図であって、図6(a)は上面図を示し、図6(b)は前方から見た正面図を示している。なお、本発明による実施例2において、実施例1で説明したものと同一の構成については、同一の符号を付して再度の説明を省略する。図6(a)に示すように、本発明の実施例2によるトロリ線測定装置200において、ベース210は、車両10の屋根部12に取り付けられ、当該車両10の走行とともにトロリ線20に沿って走行する。また、ベース210の上面110aには、本実施例2の一例として、3つの光源220A乃至220Cと3つの撮像装置230A乃至230Cとが配置されており、ベース210の後面210bには、制御装置240が取り付けられている。
3つの光源220A乃至220Cは、それぞれが実施例1で示した光源120と同一の構成を有しており、ベース210の幅方向に互いに異なる位置に配置されている。一方、3つの撮像装置230A乃至230Cは、それぞれが実施例1で示した撮像装置130と同一の構成を有しており、同様にベース210の幅方向に互いに異なる位置に配置されている。
制御装置240は、実施例1と同様に、光源220A乃至220C及び撮像装置230A乃至230Cと電気的に接続されており、これらの光源220A乃至220C及び撮像装置230A乃至230Cの動作を制御するとともに、撮像装置230A乃至230Cのそれぞれで取得された画像データを画像処理する機能を有する。また、制御装置240は、図示を省略する演算部や記憶部等を備え、撮像した画像データの画像処理を実行するように構成されている。
図6(b)に示すように、光源220Aから投光された線状の光LAは、トロリ線測定装置200とトロリ線20との間の空間を伝搬し、光LAがトロリ線20の下部に達すると、トロリ線20の外形線に対応した領域に輝線部BAを形成する。同様に、光源220B、220Cからもそれぞれ線状の光LB、LCが投光され、トロリ線20の下部で輝線部BB、BCを形成する。
このとき、光源220Aに対応付けられた撮像装置230Aが輝線部BAの領域の反射画像を撮像し(撮像工程)、その画像を制御装置240に転送する。同様に、撮像装置230B、230Cは光源220B、220Cに対応付けられており、これらの撮像装置230B、230Cが輝線部BB、BCの領域の反射画像をそれぞれ撮像して、それらの画像を制御装置240に転送する。
図7は、本発明の実施例2によるトロリ線測定装置の制御装置が実行する抽出工程の概要を説明する図であって、図7(a)は図6に示した3つの撮像装置でそれぞれ取得された画像データの一例を示し、図7(b)は抽出処理後の画像データの一例を示している。図7(a)に示すように、3つの撮像装置230A乃至230Cで撮像された反射画像は、それぞれ制御装置240で画像処理されて、それぞれ輝線部BA乃至BCを視野内に含む3つの画像データIA乃至ICとなる。
ここで、図6(a)に示すように、3つの3つの撮像装置230A乃至230Cは、ベース210の上面210aにおいて互いに異なる位置に固定配置されていることから、それらの受像部の相対的な位置も固定の位置関係にある。そこで、制御装置240は、ベース210の走行速度や上記の撮像装置230A乃至230Cの互いの位置関係等に基づいて、トロリ線20の同一位置における画像データを選択し、これらの画像データを合成してトロリ線20の特定位置における画像データI1を作成する。
その後、制御装置240は、画像データI1に含まれる3つの輝線部BA乃至BCの輝度が合成された合成輝度部Bについて、実施例1の場合と同様に、合成輝度部Bの輝度データを抽出し、その輝度データに基づいて中心位置特定工程を実行する。ここで、実施例2によるトロリ線測定装置200では、複数の光源220A乃至220Cを用いて光LA乃至LCをトロリ線20に向けて投光する構成であるため、トロリ線20の下側領域において光が照射されない領域が生じるのを低減できる。また、複数の撮像装置230A乃至230Cを用いて反射画像を撮像する構成であるため、取得する画像データの冗長性を確保できるとともに、死角の発生を抑制できる。
かかる構成により、本発明の実施例2によるトロリ線測定方法及びトロリ線測定装置は、実施例1で得られた効果に加えて、ベース210上に複数の光源220A乃至220C及び複数の撮像装置230A乃至230Cを配置してトロリ線20における反射画像を撮像する構成を用いたことにより、取得する画像データの冗長性を確保できるとともに、死角の発生を抑制できる。その結果として、中心位置を特定するためのサンプルデータが増えるため、中心位置の特定精度を向上させることができる。なお、図6では、光源及び撮像装置をそれぞれ3つずつ配置した場合を例示したが、4つ以上の光源及び撮像装置を配置して画像データを取得するように構成してもよい。
<実施例3>
図8は、本発明の実施例3によるトロリ線測定方法における2次元の画像データの一例を示す。なお、本発明による実施例3においては、実施例1及び2に対して取得された画像データの処理手法が異なるものであるため、トロリ線測定装置の構成については、実施例1あるいは実施例2で示したものと同一のものを用い得るものとして、再度の説明を省略する。
実施例3では、例えば軌道上のわたり区間やオーバーラップ区間等で、同一区間内にトロリ線が2本同時に存在するような場合、反射画像の中に2本のトロリ線が撮像されているものとして、これら2本のトロリ線のそれぞれの中心位置の特定を行うことを特徴とする。すなわち、図8に示すように、オーバーラップ区間で撮像した画像データI2には、輝度の高い2つの輝線部B1、B2が存在する。
このとき、トロリ線測定装置100の制御装置140は、この画像データI2がオーバーラップ区間内で撮像されたものであるとのデータを予め保有しており、上述した抽出工程において、画像データI2に2本のトロリ線が存在するものとして、2つの輝線部B1、B2のそれぞれの輝度データを別々に抽出する。その後、制御装置140は、抽出された2つの輝度データのそれぞれについて、上述した中心位置特定工程を並列して処理し、個々のトロリ線ごとの中心位置を特定する。
かかる構成及び動作により、本発明の実施例3によるトロリ線測定方法及びトロリ線測定装置は、実施例1及び2で得られた効果に加えて、同一の撮像視野内に複数のトロリ線が存在する場合であっても、それらのトロリ線における個別の中心位置を特定することが可能となる。
以上、本発明による代表的な実施例及びこれに伴う変形例について述べたが、本発明は必ずしもこれに限定されるものではなく、適宜、当業者によって変更され得る。すなわち、当業者であれば、添付した特許請求の範囲を逸脱することなく、種々の代替実施例及び改変例を見出すことができるであろう。
例えば、上記実施例においては、本発明によるトロリ線測定装置を車両(鉄道車両)の屋根部の上面に配置した場合を例示したが、トロリ線に沿って移動するものであれば、その一例として、鉄道車両ではなく走行台車等の上面に配置してもよい。また、トロリ線測定装置の光源及び撮像装置をベース上に配置した場合を例示したが、当該ベースを車両の屋根部として構成し、車両の屋根部に光源及び撮像装置を直接取り付けるように配置してもよい。
また、上記実施例においては、中心位置特定工程を実施した後に、残存直径測定工程あるいは摩耗量測定工程をそれぞれ実施する変形例を例示したが、これらの追加的な工程は単独で実施してもよく、あるいは連続的に(重複して)実施してもよい。さらに、実施例2においては、複数の光源及び撮像装置を設けるにあたり、光源と撮像装置との数が同じ場合を例示したが、例えば1つの光源に対して複数の撮像装置を配置する等の任意の数を採用してもよい。
10 車両(鉄道車両)
12 屋根部
14 パンタグラフ
20 トロリ線
22 固定具
100、200 トロリ線測定装置
110、210 ベース
120、220A、220B、220C 光源
122 投光機
122a 投光面
124 投光機ステー
130、230A、230B、230C 撮像装置
132 撮像部本体
132a 受像部
140、240 制御装置


Claims (14)

  1. 光源からトロリ線に投光された光の反射画像を撮像する撮像工程と、
    前記反射画像を画像処理して画素毎の輝度データを演算する画像処理工程と、
    前記画像処理工程で得られた前記輝度データの強度及び分布に基づいて、前記反射画像内の前記トロリ線の外形線に対応する前記画素の前記輝度データを抽出する抽出工程と、
    前記抽出工程で抽出された前記外形線に対応する前記輝度データにおいて摩耗領域及び円弧領域を識別し、識別された前記円弧領域に含まれる2点の座標位置から前記円弧領域を含む仮想円の中心位置を特定する中心位置特定工程と、を含むことを特徴とするトロリ線測定方法。
  2. 前記撮像工程は、前記トロリ線に沿って移動しつつ連続的に撮像を実施することを特徴とする請求項1記載のトロリ線測定方法。
  3. 前記中心位置特定工程において、前記2点の座標位置を2以上の複数の組選択し、これら選択された複数の組の前記2点の座標位置毎の中心位置を特定し、特定された複数の中心位置の分布の重心位置を前記仮想円の中心位置として特定することを特徴とする請求項1又は2に記載のトロリ線測定方法。
  4. 前記撮像工程において、それぞれ異なる複数位置から複数の反射画像を撮像し、
    前記抽出工程において、前記複数位置で取得された前記複数の反射画像を合成して前記トロリ線に対応する前記輝度データとすることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のトロリ線測定方法。
  5. 前記抽出工程において、前記トロリ線の外形線に対応する前記輝度データが複数ある場合に、これら複数の輝度データを別々に抽出し、
    前記中心位置特定工程において、前記複数の輝度データ毎に複数の仮想円の中心位置を特定することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のトロリ線測定方法。
  6. 前記中心位置特定工程で特定された中心位置に中心を有しかつ新品のトロリ線と同一の直径となる仮想円を重ね合わせ、この重ね合わせた前記仮想円の上端から前記輝度データの前記摩耗領域に至る前記仮想円の中心を通る線分の長さを測定し、前記線分の長さを前記トロリ線の残存直径とする残存直径測定工程をさらに含むことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のトロリ線測定方法。
  7. 前記中心位置特定工程で特定された中心位置に中心を有しかつ新品のトロリ線と同一の形状となる仮想トロリ線を重ね合わせ、この重ね合わせた前記仮想トロリ線の下端と前記輝度データの前記摩耗領域とで囲まれる部分の面積を測定し、前記面積を前記トロリ線の摩耗量とする摩耗量測定工程をさらに含むことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のトロリ線測定方法。
  8. トロリ線の下方を前記トロリ線に沿って移動するベースと、
    前記ベースの上面に配置され、前記トロリ線に向けて光を投光する光源と、
    前記光源から前記トロリ線に投光された光の反射画像を撮像する撮像装置と、
    前記光源及び前記撮像装置の動作を制御するとともに、前記撮像装置で撮像された前記反射画像を処理する制御装置と、を備えるトロリ線測定装置であって、
    前記制御装置は、前記反射画像を画像処理して画素毎の輝度データを演算し、前記輝度データの強度及び分布に基づいて、前記反射画像内の前記トロリ線の外形線に対応する前記画素の前記輝度データを抽出して摩耗領域及び円弧領域を識別し、識別された前記円弧領域に含まれる2点の座標位置から前記円弧領域を含む仮想円の中心位置を特定する処理部を含むことを特徴とするトロリ線測定装置。
  9. 前記ベースは、車両の上面により構成又は取付けられていることを特徴とする請求項8記載のトロリ線測定装置。
  10. 前記光源は、前記トロリ線と交差する線状光を投光することを特徴とする請求項8又は9に記載のトロリ線測定装置。
  11. 前記光源は、レーザビームを前記トロリ線に向けて投光することを特徴とする請求項8乃至10のうちの1つに記載のトロリ線測定装置。
  12. 前記光源は、前記ベースの上に複数配置されることを特徴とする請求項8乃至11のいずれか1つに記載のトロリ線測定装置。
  13. 前記撮像装置は、前記ベースの上に複数配置されることを特徴とする請求項8乃至12のいずれか1つに記載のトロリ線測定装置。
  14. 前記撮像装置は、前記ベースの幅方向にずれた位置に配置されることを特徴とする請求項13記載のトロリ線測定装置。
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