以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しつつ説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る架線とパンタグラフの相対位置監視装置1と、この監視装置1による監視対象となる車両100の主要部を示す模式的な側面図である。図2は、車両100と架線L1,L2,L3との接触状態を説明するための斜視図である。図3は、車両100のパンタグラフ101,102,103と架線L1,L2,L3との接触状態の一例を示す主要部の模式的な斜視図であり、架線L1,L2,L3の下側から見た状態を示している。図4は、架線L1,L2,L3を検出する構成について説明するための主要部の平面図である。
図1~図4を参照して、架線とパンタグラフの相対位置監視装置1(以下、単に監視装置1ともいう)。は、架線L1,L2,L3とパンタグラフ101,102,103との相対位置を監視するために用いられる。架線L1,L2,L3は、複数本(本実施形態では、3本)設けられており、図示しない支柱に支持されて略水平に配置されている。架線L1,L2,L3は、略同じ高さに配置されており、互いに略平行に延びている。架線L1,L2,L3は、細長い導線であり、撓み、水平方向の傾き、および、垂直方向の傾きが生じやすい傾向にある。架線L1,L2,L3は、例えば、車両100の原動機としてのモータ(図示せず)を駆動する電力を車両100に供給するために架けられている。架線L1,L2,L3の下方を車両100が走行する。
車両100は、例えば鉄道車両であり、工場等に敷設された線路上を走行する。本実施形態では、車両100の屋根104に架台105が設置されている。架台105に、複数(本実施形態では、3つ)のパンタグラフ101,102,103が設置されている。パンタグラフ101,102,103は、本実施形態では、架線L1,L2,L3の延びる方向に対して傾斜するように配置されている。パンタグラフ102は、中央の架線L2の下方に配置されている。パンタグラフ101,103は、左右両側の架線L1,3の下方に配置されている。
パンタグラフ101には、ステー101aに支持されたローラ101bが設けられている。パンタグラフ101のうちローラ101bが架線L1に接触して架線L1から電力を受ける。同様に、パンタグラフ102,103には、それぞれ、対応するステー102a,103aに支持されたローラ102b,103bが設けられている。パンタグラフ102,103のうちローラ102b、103bが対応する架線L2,L3に接触して架線L2,L3から電力を受ける。
監視装置1は、架線L1とパンタグラフ101のローラ101bとの相対位置、架線L2とパンタグラフ102のローラ102bとの相対位置、および、架線L3とパンタグラフ103のローラ103bとの相対位置を監視する。本実施形態では、監視装置1は、車両100に設置されている。
監視装置1は、エリアセンサ2と、エリアセンサ2に接続された処理装置3と、処理装置3に接続された入力装置(入力部)4および表示装置(表示部)5と、を有している。
なお、本実施形態では、処理装置3、入力装置4および表示装置5が車両100に設置される形態を例に説明するけれども、この通りでなくてもよい。例えば、処理装置3、入力装置4および表示装置5の少なくとも一つが車両100の外側に設けられた制御室(図示せず)等に設置され、エリアセンサ2と有線通信または無線通信可能に構成されてもよい。
エリアセンサ2は、上述したように、並行して配列された複数の架線L1,L2,L3に個別に接触する複数のパンタグラフ101,102,103を有する車両100に設置されている。エリアセンサ2は、複数のパンタグラフ101,102,103と接触している複数の架線L1,L2,L3へ指向性を有するビームを送信するとともにこのビームを送信することで生じる反射波を受信する。エリアセンサ2は、本実施形態では、当該エリアセンサ2から検出対象としての架線L1,L2,L3までの距離を測定するセンサである。本実施形態では、エリアセンサ2は、測域センサであり、LiDAR(Light Detection and Ranging)センサとも称される。
本実施形態のエリアセンサ2は、発光部および受光部を含み、発光部でレーザー光をビームB1,B2,B3として送信し、このビームB1,B2,B3を送信することで生じる反射光を受光部で受信する。ビームB1,B2,B3およびこの反射波は、エリアセンサ2の受発光窓部2eを通過する。本実施形態では、エリアセンサ2は、1つ設けられており、1つのエリアセンサ2から複数の架線L1,L2,L3に向けてビームB1,B2,B3が送信される。エリアセンサ2は、各架線L1,L2,L3および対応する架線L1,L2,L3に接触するローラ101b,102b,103bの少なくとも一方に向けてレーザー光のビームB1,B2,B3を照射してスキャニングする。エリアセンサ2は、所定のステップ角度(例えば、0.1°程度)を有しており、このステップ角度毎にレーザー光を発射する角度を異ならせながらビームB1,B2,B3を発射する。これにより、エリアセンサ2は、エリアセンサ2に対する方位と信号反射箇所までの距離とを検出できる。エリアセンサ2は、スキャニング動作を繰り返すことで、複数の方位のそれぞれにおける信号反射箇所までの距離を検出する。本実施形態では、エリアセンサ2は、複数のパンタグラフ101,102,103のうち車両100車幅方向Xにおける中央寄りのパンタグラフ102と車両100の車長方向Zに並んで配置されている。エリアセンサ2の測定結果は、処理装置3へ出力される。
なお、エリアセンサ2は、マイクロ波またはミリ波等の電波を発射するレーダーセンサ等であってもよい。
処理装置3は、本実施形態では、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)を含むコンピュータである。なお、処理装置3は、FPGA(Field Programmable Gate Array)を含む構成であってもよいし、PLC(Programmable Logic Controller)を用いて形成されていてもよいし、シーケンス回路等を用いて形成されていてもよい。処理装置3は、ROMまたはハードディスク(HDD)等の記憶装置に格納されたプログラムをCPUが実行することで、プログラム的に各種機能を発揮する。
図5は、監視装置1の電気的な構成を示すブロック図である。図1~図5を参照して、処理装置3は、エリアセンサ2と、キーボードおよびマウスを含む入力装置4と、液晶ディスプレイ等の表示装置5と、に電気的に接続されている。また、処理装置3は、前述したように、CPUがプログラムを実行することで、制御部31、エリア設定部32、および、架線位置検出部33としての機能を発揮する。
制御部31は、処理装置3における制御を司る。エリア設定部32は、エリアセンサ2からの信号のうち、所定のエリアAR1,AR2,AR3からの信号を選択するために設けられている。エリア設定部32は、各架線L1,L2,L3と対応するパンタグラフ101,102,103との接触位置を含むエリアAR1,AR2,AR3を、架線L1,L2,L3それぞれについて設定する。
図6は、エリア設定部32で設定されるエリアAR1,AR2,AR3について説明するための概念図である。図1~図6を参照して、エリアAR1,AR2,AR3は、エリアセンサ2から見たエリアである。
エリアAR1は、中心点AR1aを中心とする、2次元の矩形状エリアである。中心点AR1aは、例えば、架線L1が車両100の車長方向Zと平行で且つローラ101bの幅方向中央に接触しているときにおける架線L1の中心点である。エリア設定部32は、中心点AR1aを中心とし、且つ、矩形のエリアAR1の4つのコーナー点を設定する。
エリアAR2は、中心点AR2aを中心とする、2次元の矩形状エリアである。中心点AR2aは、例えば、架線L2が車両100の車長方向Zと平行で且つローラ102bの幅方向中央に接触しているときにおける架線L2の中心点である。エリア設定部32は、中心点AR2aを中心とし、且つ、矩形のエリアAR2の4つのコーナー点を設定する。
エリアAR3は、中心点AR3aを中心とする、2次元の矩形状エリアである。中心点AR3aは、例えば、架線L3が車両100の車長方向Zと平行で且つローラ103bの幅方向中央に接触しているときにおける架線L3の中心点である。エリア設定部32は、中心点AR3aを中心とし、且つ、矩形のエリアAR3の4つのコーナー点を設定する。エリアAR1,AR2,AR3は、作業員が入力装置4を操作することに応じて設定されてもよいし、所定のプログラムに沿って自動的に設定されてもよい。
架線位置検出部33は、エリアセンサ2で得られた受信データから各架線L1,L2,L3の位置を検出する。本実施形態では、架線位置検出部33は、エリア設定部32で設定されたエリアAR1,AR2,AR3内における架線L1,L2,L3の位置を検出する。すなわち、架線位置検出部33は、エリアAR1,AR2,AR3毎にエリアAR1,AR2,AR3内における架線L1,L2,L3の位置を検出する。具体的には、まず、架線位置検出部33は、エリアセンサ2で得られた、スキャン角度(平面視におけるエリアセンサ2回りの角度およびエリアセンサ2から信号反射点までの仰角)と信号反射点までの距離と、を特定する検出データを読み込む。検出データは、複数の検出点Pの座標データを含んでいる。そして、このデータを基に所定の処理を行うことで、架線L1,L2,L3の輪郭形状および中心点L1a,L2a,L3aの座標を推測する。
図7は、架線位置検出部33が架線L1,L2,L3を検出する手順を説明するための概念的な説明図である。図1~図7を参照して、架線位置検出部33は、上述したように、検出データを読み込む。このときの検出データは、エリアセンサ2が1回の検出動作(平面視におけるエリアセンサ2回りの1周分のスキャン動作)で得られたデータである。次に、架線位置検出部33は、架線L1を検出するために、エリアAR1における検出データの検出点Pの座標データを検出する。すなわち、架線位置検出部33は、架線L1について、エリアセンサ2からの受信データに含まれる複数の座標データを用いて、架線L1の位置を検出する。
図4に示すように、架線L2の下方に配置されるエリアセンサ2からの複数のビームによって、架線L1,L2,L3は、楕円形状の切断面が現れるような検出が行われる。さらに、架線L1,L2,L3のうち、エリアセンサ2から見て背面側部分には、ビームが届かない。よって、検出データで特定される複数の検出点のうち、エリアAR1内での検出点Pは、図7に示すように、エリアセンサ2と向かい合っている箇所に集中している。架線位置検出部33は、予め架線L1,L2,L3の形状が楕円形である前提で検出を行うので、複数の検出点Pが楕円形状の一部を検出した結果であるとの前提で処理を行う。
本実施形態では、架線位置検出部33は、架線L1について、受信データに含まれる複数の座標データで特定される複数の検出点Pと所定の近似式とを用いて架線L1の輪郭形状を検出する。本実施形態では、近似式として、最小二乗法の式を用いて、複数の検出点Pから架線L1の楕円の輪郭形状を算出する。複数の検出点Pから最小自乗法を用いて楕円の楕円形状を検出する方法は公知であるので、詳細な説明は省略する。
なお、上記の近似式として、最小二乗法の式以外の式が用いられてもよい。例えば、長径と短径の比率が一定であって長径が異なる複数の楕円を検出点Pに重ね合わせ、最も多くの検出点Pと重なる楕円を架線L1の輪郭形状と推定する近似式が用いられてもよい。
架線位置検出部33は、架線L1の楕円形状を算出するとともに、この楕円の中心点L1aの座標を算出する。架線位置検出部33は、この中心点L1aを架線L1の位置として規定する。
架線位置検出部33は、上述した架線L1の楕円形状の算出および楕円の中心点L1aaの算出と同様の手順を、エリアAR2,AR3に対しても行う。これにより、架線位置検出部33は、架線L2,L3の楕円形状の算出および楕円の中心点L2a,L3aの算出を行う。
架線位置検出部33は、架線L1,L2,L3のそれぞれの中心点L1a,L2a,L3aを検出した後、各エリアAR1,AR2,AR3毎に、エリアAR1,AR2,AR3内における架線L1,L2,L3の位置が所定の許容エリア内であるか否かを検出する。
架線位置検出部33は、例えば、架線L1に関して、エリア中心点AR1aからの車幅方向Xにおける中心点L1aの距離としてのずれ量Δを判定する。この架線L1に関するずれ量Δがゼロまたはゼロ以上所定の第1しきい値未満であれば、架線位置検出部33は、架線L1が許容エリア内であると判定する。また、この架線L1に関するずれ量Δが所定の第1しきい値以上で且つ所定の第2しきい値未満であれば、架線位置検出部33は、架線L1は許容エリア内に存在しているけれども許容エリアから外れるおそれがあると判定する。また、この架線L1に関するずれ量Δが所定の第2のしきい値以上であれば、架線位置検出部33は、架線L1は許容エリアから外れていると判定する。架線位置検出部33は、エリアAR1内における架線L1の位置が許容エリア外である場合に、異常を示すエラー信号を生成する。
架線位置検出部33は、架線L1と同じ判定基準で、架線L2,L3についても判定を行う。
架線位置検出部33は、架線L1,L2,L3についての上述した判定結果を特定するデータを、表示装置5へ出力する。
表示装置5は、架線位置検出部33の検出結果等を表示する。表示装置5は、例えば、液晶モニターである。表示装置5は、処理装置3から出力されたデータに基づいて表示を行う。図8は、表示装置5の表示画面の一例を示す図である。図1~図8を参照して、表示画面には、表示ランプ51と、座標表示部52と、説明文表示部53と、を有している。
表示ランプ51は、架線L1,L2,L3のそれぞれの状態をランプで示す。表示ランプ51は、架線L1の状態を示すランプとしての左架線ランプ511と、架線L2の状態を示すランプとしての中架線ランプ512と、架線L3の状態を示すランプとしての右架線ランプ513と、を有している。これらのランプ511,512,513は、架線位置検出部33の検出結果に応じた表示を行う。
表示ランプ51は、例えば、エリア中心点からの車幅方向Xへの架線中心点のずれ量Δがゼロまたは第1しきい値未満の場合に緑色を表示し、ずれ量Δが第1しきい値以上第2しきい値未満の場合に黄色を表示し、ずれ量Δが第2しきい値以上の場合に赤色を表示する。前述したように、ずれ量Δが第2しきい値以上の場合には、架線位置検出部33は、異常を示すエラー信号を生成する。表示ランプ51は、このエラー信号を受信したときにエラー表示として、上述した例えば赤色の表示を行う。すなわち、表示装置5は、架線位置検出部33から架線とパンタグラフの相対位置に関する異常を示すエラー信号を受信したときにエラー表示を行う。
図8では、左架線L1のずれ量Δが第2しきい値以上であり左架線ランプ511が赤色表示されている状態を、クロスハッチングで示している。また、右架線L3のずれ量Δが第1しきい値以上且つ第2しきい値未満であり右架線ランプ513が黄色表示されている状態を、ハッチングで示している。また、中架線L2のずれ量Δがゼロまたは第1しきい値未満であり中架線ランプ512が緑色表示されている状態を、ハッチング無しで示している。
座標表示部52は、エリア中心点(AR1a,AR2a,AR3a)からの対応する架線中心点(L1a,L2a,L3a)の車幅方向Xおよび垂直方向(Y方向)のずれ量を示している。図8では、車幅方向において、左架線L1のずれ量Δが第2しきい値以上の大きい値であり、右架線L3のずれ量Δが第1しきい値以上第2しきい値未満の値であり、中架線L2のずれ量Δが第1しきい値未満である例が示されている。表示ランプ51は、このずれ量Δに応じた表示をしていることとなる。
説明文表示部53は、車幅方向Xにおける架線L1,L2,L3のずれ量Δに応じた表示を行う。図8では、一例として、左架線L1が許容エリアから外れたことと、中架線L2が許容エリア内にあることと、右架線L3が許容エリアから外れるおそれがあることと、が示されている。
図9は、監視装置1における処理動作の流れの一例を示すフローチャートである。図9を参照して説明するときは、図9以外の図も適宜参照しながら説明する。
図9を参照して、監視装置1における監視動作では、まず、エリアセンサ2による、エリアセンサ2回りの検出範囲におけるスキャン動作が行われる(ステップS1)。これにより、エリアセンサ2は、エリアAR1,AR2,AR3を含む領域にビームB1,B2,B3を照射し、このビームB1,B2,B3の反射波を受信する。
次に、検出結果を示す座標データをエリアセンサ2から処理装置3が受信する(ステップS2)。エリアセンサ2から座標データを受信した処理装置3の架線位置検出部33は、エリアAR1,AR2,AR3について、対応する架線L1,L2,L3の楕円形状を算出する(ステップS3)。次に、架線位置検出部33は、算出した楕円形状から、架線L1,L2,L3の中心点AR1a,AR2,AR3の座標を算出する(ステップS4)。次に、架線位置検出部33は、車幅方向における、エリアAR1,AR2,AR3の中心点AR1a,AR2a,AR3aの座標と架線L1,L2,L3の対応する中心点AR1a,AR2,AR3の座標とのずれ量Δを判定する(ステップS5)。そして、架線位置検出部33は、架線L1,L2,L3について、ずれ量Δに応じた表示を行うように表示装置5へデータを出力し、表示装置5に表示を行わせる(ステップS6)。監視装置1は、この処理を繰り返し行う。
以上説明したように、本実施形態によると、監視装置1は、複数のパンタグラフ101,102,103がそれぞれ異なる架線L1,L2,L3と接触する車両100において、各パンタグラフ101,102,103と対応する架線L1,L2,L3との相対位置を検出できる。幅の狭いパンタグラフ101,102,103を有する車両100においては、特に、架線L1,L2,L3からのパンタグラフ101,102,103の外れが生じやすい。よって、このような監視装置1を用いることにより、架線L1,L2,L3からパンタグラフ101,102,103が外れるおそれを早期に発見できる。その結果、車両100の操業停止による不利益をゼロまたは最小限にできる。
また、本実施形態によると、1つのエリアセンサ2から複数の架線L1,L2,L3に向けてビームが送信される。この構成によると、エリアセンサ2を複数用いる必要がなく、コスト安価に監視装置1を製造できる。
また、本実施形態によると、エリアセンサ2は、車両100の車幅方向Xにおける中央寄りのパンタグラフ102と車両100の車長方向Zに並んで配置されている。この構成によると、エリアセンサ2による架線L1,L3の検出精度をより高くできる。
また、本実施形態によると、架線位置検出部33は、エリアセンサ2で得られた複数の座標データを用いて架線L1,L2,L3の位置を検出する。この構成によると、架線位置検出部33は、複数の座標データを利用してより高精度に架線L1,L2,L3の形状を認識できる。
また、本実施形態によると、架線位置検出部33は、架線L1,L2,L3のうちの中心位置(中心点L1a,L2a,L3a)を検出する。この構成によると、架線L1,L2,L3の位置判定に必要な演算負荷を小さくできる。
また、本実施形態によると、架線位置検出部33は、エリアセンサ2で得られた複数の座標データで特定される複数の点と所定の近似式とを用いて架線L1,L2,L3の輪郭形状を検出する。この構成によると、架線位置検出部33が架線L1,L2,L3の形状を推定するのに必要な演算負荷を小さくできる。
また、本実施形態によると、架線位置検出部33は、エリアAR1,AR2,AR3毎にエリアAR1,AR2,AR3内における架線L1,L2,L3の位置を検出する。この構成によると、エリアAR1,AR2,AR3毎に区切って架線L1,L2,L3の位置判定を行うことで、1つのエリアセンサ2で複数の架線L1,L2,L3を精度よく検出できる。
また、本実施形態によると、架線位置検出部33は、エリアAR1,AR2,AR3毎に、エリアAR1,AR2,AR3内における架線L1,L2,L3の位置が所定の許容エリア内であるか否かを検出する。この構成によると、複数のエリアAR1,AR2,AR3について互いに切り離して検出動作を行うので、演算負荷をより低くできるとともに、架線L1,L2,L3の位置の誤検出を抑制できる。
また、本実施形態によると、架線位置検出部33は、エリアAR1,AR2,AR3内における架線L1,L2,L3の位置が許容エリア外である場合に、異常を示すエラー信号を生成する。そして、エラー信号を与えられた表示装置5が、エラー表示を行う。この構成によると、架線L1,L2,L3の位置ずれが大きい場合に警告を行うことができ、架線L1,L2,L3からパンタグラフ101,102,103が外れることをより確実に抑制できる。
以上、本発明の実施形態について説明した。しかしながら、本発明は上述の実施形態に限定されない。本発明は、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能である。なお、以下では、上述の実施形態と異なる点を主に説明し、同様の構成には図に同様の符号を付して詳細な説明を省略する。
<変形例>
図10は、変形例にかかるエリアセンサ2および保護カバー10の周辺の配置を示す斜視図である。図11は、保護カバー10を示す図面であり、図11(A)は、平面図であり、図11(B)は正面図であり、図11(C)は側面図である。図12は、エリアセンサ2およびステー14を示す図面であり、図12(A)は斜視図であり、図12(B)は側面図である。
図10~図12(B)を参照して、変形例では、エリアセンサ2を保護する保護カバー10を有している点が、実施形態と主に異なっている。架線L1,L2,L3から受電するパンタグラフ101,102,103を有する車両100に設置されパンタグラフ101,102,103と接触している架線L1,L2,L3に向けてビームB1,B2,B3を送信するセンサとしてのエリアセンサ2が、保護カバー10によって風雨から保護されている。
変形例では、エリアセンサ2は、車両100の屋根に設置された梁106,106上に設置された保護カバー10に収容されている。保護カバー10は、車幅方向Xにおける車両100の中央において梁106,106に固定されており、架線L2の下方に位置している。本実施形態では、保護カバー10は、円筒状に形成されている。なお、保護カバー10は、エリアセンサ2を収容可能な形状であればよく、例えば、多角形の筒状であってもよい。
保護カバー10は、ベース11と、窓部22が形成されたカバー本体12と、カバー本体12の上部を覆う蓋13と、カバー本体12内に設置されたステー14と、を有している。
ベース11は、カバー本体12の下端形状に沿う形状に形成されており、本実施形態では、円板状に形成されている。ベース11は、車両100の車長方向Zに離隔して配置された梁106,106に載せられており、図示しないねじ部材等の固定部材を用いて梁106,106に固定されている。ベース11には、エリアセンサ2に接続されたケーブル15が通過する貫通孔11aが形成されている。ベース11に、カバー本体12が取り付けられている。
カバー本体12は、エリアセンサ2を収容する収容空間を形成している。カバー本体12は、ベース11上に設置されており、ベース11とは一体成形されていてもよいし、接着剤またはねじ等によってベース11に固定されていてもよい。
カバー本体12は、エリアセンサ2を収容している。カバー本体12は、エリアセンサ2の周囲を取り囲むようにして配置されている。
カバー本体12は、エリアセンサ2の下部2aを取り囲む下筒部16と、エリアセンサ2の上部2bを取り囲む上筒部17と、を有している。
下筒部16は、本実施形態では円筒状に形成されている。下筒部16の下部は、ベース11に固定されている。上筒部17は、本実施形態では、円筒状に形成されている。上筒部17の下部は、下筒部16の例えば外周部に嵌合されており、上筒部17が下筒部16に対して着脱可能である。本実施形態では、上筒部17の下部と下筒部16の上部とは、ねじ部材18等の固定部材を用いて着脱可能に構成されている。ねじ部材18は、本実施形態では、カバー本体12の円周方向に等間隔に複数(3つ)設けられている。ねじ部材18は、例えば下筒部16内に配置され下筒部16に固定されたナット(図示せず)にねじ結合している。ねじ部材18は、このナットにねじ結合した状態において、カバー本体12の外側に突出している。ねじ部材18を作業員が指で回して、ねじ部材18をナット、下筒部16および上筒部17から取り外すことで、上筒部17を下筒部16から取り外すことができる。
上筒部17の上端には、蓋13が取り付けられている。蓋13は、カバー本体12内の空間を上方から覆うために設けられており、例えば、円板状に形成されている。蓋13は、本実施形態のように上筒部17と一体成形されていてもよいし、上筒部17に対して着脱可能に構成されていてもよい。
上記の構成を有するカバー本体12内において、エリアセンサ2はステー14によって支持されている。ステー14は、本実施形態では、板金部材であり、ベース11に設置される。
ステー14は、下板19と、この下板19の一縁部から斜め上方に延びる傾斜部20と、傾斜部20を補強するリブ21と、を有している。
下板19は、ベース11上に載せられた矩形状の部分であり、ねじ等の固定部材を用いてベース11に固定されている。下板19は、傾斜部20と一体成形されている。傾斜部20は、車両100の車長方向Zの例えば前方に向かうに従い上側に延びる傾斜形状に形成されている。この傾斜部20のうち、架線L1,L2,L3と向かい合う上面に、エリアセンサ2が取り付けられている。エリアセンサ2は、傾斜部20に、例えばねじ等の固定部材を用いて固定されている。この構成により、エリアセンサ2の下端部2cを含む下部2aが下筒部16に取り囲まれ、上端部2dを含む上部2bが上筒部17に取り囲まれる。また、エリアセンサ2の受発光窓2eが、車両100の後斜め上方を向いており、架線L1,L2,L3と向かい合っている。受発光窓2eは、円筒の一部を含む形状に形成されている。エリアセンサ2の下面からケーブル15が延びて貫通孔11aを通っている。
リブ21は、傾斜部20と下板19とを繋ぐ、車幅方向Xと直交して延びる板部材であり、これら傾斜部20および下板19に例えば溶接によって固定されている。
エリアセンサ2の受発光窓2eは、カバー本体12に形成された窓部22と向かい合っている。窓部22は、エリアセンサ2からのセンシング用ビームB1,B2,B3が通過するとともにエリアセンサ2がビームB1,B2,B3を送信することで生じる反射波が通過する部分である。窓部22は、エリアセンサ2の受発光窓2eから架線L1,L2,L3へ照射されるビームB1,B2,B3を保護カバー10が遮らないように、且つ、エリアセンサ2が保護カバー10の外部に露呈する面積が最小限となるように構成されていることが好ましい。本実施形態では、窓部22は、車両100に設置されたエリアセンサ2から見て円弧状に形成された貫通孔である。窓部22は、架線L2の下方に位置する箇所の高さが、架線L1,L3の下方に位置する箇所の高さよりも高い円弧状に形成されている。また、窓部22の厚み(上下方向のスリット幅)は、ビームB1,B2,B3およびこれらのビームB1,B2,B3の反射波が通過可能な値に設定されており、例えば数mmに設定されている。
以上説明したように、保護カバー10によると、カバー本体12にエリアセンサ2が収容されているので、エリアセンサ2が直接風雨に曝されることを抑制できる。よって、エリアセンサ2を風等の外部環境から保護することができる。また、ビームB1,B2,B3およびその反射波が通過することのできる窓部22が形成されているので、エリアセンサ2による架線L1,L2,L3の計測が妨げられずに済む。以上の次第で、架線L1,L2,L3から受電するパンタグラフ101,102,103を有する車両100に設置されパンタグラフ101,102,103と接触している架線L1,L2,L3に向けてビームB1,B2,B3を送信するエリアセンサ2に関して、風雨等の外部環境から保護しつつ、エリアセンサ2の検出精度を確保できる。
また、保護カバー10によると、窓部22は、エリアセンサ2からみて円弧状に形成されている。この構成によると、ビームB1,B2,B3およびその反射波の通過を許容しつつ保護カバー10がエリアセンサ2を覆うことのできる領域をより多くできる。
また、保護カバー10によると、カバー本体12の上筒部17は、下筒部16に対して着脱可能に構成されている。この構成によると、上筒部17を取り外すことで、エリアセンサ2の運用に伴いエリアセンサ2に付着した埃を容易に掃除できる等、メンテナンス性を向上できる。
また、保護カバー10によると、ベース11によって、カバー本体12およびエリアセンサ用ステー14の双方を堅固に支持することができる。