JP3814201B2 - 測距装置の軸調整用ターゲット及び軸調整方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両等に搭載され、レーザ光などの波動を利用して先行車等の被検出物の位置情報などを測定する測距装置において、検出エリアの位置調整(軸調整)を行う技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、車両における先行車又は前方障害物の監視や追従走行制御等のためのレーダの開発は広く進められており、方式としては電波方式、或いはレーザ方式が知られている。これは、所定のエリア内の検出対象に対して電波やレーザ光などの波動を照射し、その反射信号との伝搬遅延時間などから検出対象までの距離などを求める装置である。
【0003】
例えば、レーザ方式の測距装置(いわゆるレーザレーダ)の場合、一定のスキャンエリアに対して通常は一つの走査方向(通常は左右方向)にスキャニング(走査)しつつレーザ光を照射し、その反射光との伝搬遅延時間を求めるために、制御回路により発光タイミングをつくり、そのタイミングでカウンタをスタートし、同時にそのタイミングに合わせてレーザダイオード(以下、LDという。)駆動回路によりLDを駆動してレーザの発光を行い、このレーザ光が検出対象に反射して帰ってきた反射光をフォトダイオード(以下、PDという。)で受光し、信号処理部の中で設定した受光スレッシュレベル以上のレベルの反射光が得られた場合、そのタイミングを制御回路で取込み、カウンタをストップして伝搬遅延時間を計測する。
また一方では、レーザ発光のタイミング、或いは反射光受光のタイミングにおけるスキャン角度から、検出対象物が存在する方向を判定する。
【0004】
そして、こうして計測された対象物までの距離データと、方向データと、受光量のデータと、車速センサにより得られた車速のデータをもとに、個々の距離データをグループ化し、過去のデータとの対応づけを行い、対象物との相対速度を算出し、その対象物が何か(車か、バイクか、人か、看板か、路側のリフレクタ(反射体)かなど)を判断し、追従すべき対象物の特定や警報すべき対象物の特定を行うものである。
【0005】
なお、車両における車間距離等の監視のための測距装置としては、例えばCCDカメラなどの画像センサを用いたものもある。これは、車両周辺の所定の検出エリアからの波動(通常は可視光)を画像センサで受信し、この波動の受信信号から得られる検出エリアの画像における明暗の分布等によって、検出エリア内にある先行車等の検出対象の存在や位置を分析判断するものである。
【0006】
ところで、上述したレーザレーダや画像センサよりなる測距装置では、実際に車両などに取付た場合に、先行車両などの検出対象を検出すべき理想的な検出エリア(車両に搭載される一般的な測距装置の場合、通常は車両の進行方向正面の所定高さ位置に左右対称に広がる領域)に対して、装置の実際の検出エリア(反射波を受信して上述の測定を行う一定の領域)がずれていれば、その分測定結果の信頼性が低下するため、当然このようなずれのない状態が維持されるように、検出エリアの中心位置を合わせる位置調整(レーザレーダの場合には、いわゆる光軸調整と称されている作業)が、車両等の生産ラインや、修理工場での点検時などに適宜必要となる。
【0007】
この検出エリアの位置調整(本明細書では、場合により軸調整という。)の従来の手法としては、まず走査方向に直交する直交方向(一般的には上下方向)の軸調整については、例えば図6(a)に示す方法がある。
これは、測距装置が搭載された例えば車両(停止状態)に対して、適正な検出エリアの例えば上側ぎりぎりの位置に基準となる反射体(以下、基準反射体という。)を設置し、この基準反射体以外の被検出物がなるべく検出されない外乱要因のない環境を整えた上で実際に測距装置を作動させて、この基準反射体が検出されている状態から測距装置の検出ヘッドの取付角度(上下方向の角度)や取付け位置を人的作業で下向きに徐々に変化させ、基準反射体が検出されなくなった時点で検出ヘッドの取付角度や取付け位置を人手により固定するというものである。
【0008】
次に、走査方向(一般的には水平方向)の軸調整については、例えば図6(c)に示す方法が通常使用されている。
即ち、測距装置が搭載された例えば車両(停止状態)に対して、理想的な検出エリアの中心位置に基準反射体を配置し、この基準反射体以外の被検出物がなるべく検出されない外乱要因のない環境を整えた上で、実際に測距装置を作動させて、検出される基準反射体の位置データが装置の検出エリアの中心位置に一致するように、例えば測距装置の検出ヘッドの取付角度等を人的作業で物理的に変更するか、或いは制御システム内部のソフト的なパラメータを制御システムの処理で自動的に変更する手法がある。
【0009】
なお、車両に搭載されるレーザレーダなどの測距装置では、図6(c)に例示するように、レーザ光を実際に走査して照射する走査方向の角度領域(スキャンエリア)は、反射波を受信して上述の距離データなどの測定を行う角度領域(走査方向の検出エリア)よりも大きく設定してあり、この検出エリアのスキャンエリア内(実際には余裕をみて検出許容エリア内)におけるデータ処理上の設定位置(ソフト的なパラメータ)を変更することにより、装置の検出ヘッドの取付位置を物理的に変更することなく、検出エリアの走査方向の位置調整がある程度可能となっている。また、走査を実現するスキャン機構の動作範囲(例えば、スキャン用モータの動作範囲)の制御処理上の設定値(ソフト的なパラメータ)を変更することによって、上記スキャンエリアや検出エリアの全体を走査方向にある程度位置調整することも可能である。
また、その他の光軸調整方法としては、基準反射体の代わりにPDや画像センサ等の検出手段を用いてレーザレーダから出力されるレーザ光の位置情報を検知し、この検知結果に基づいてレーザ光の適正位置からの上下左右のずれを判定し、このずれを是正するように検出ヘッドの取付角度や取付け位置を変更するという調整方法もある。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記従来の軸調整方法は、作業性などの点で以下のような問題点があった。
即ち、図6(a),(c)に示した方法では、左右方向の軸調整作業と、上下方向での軸調整作業とを、反射体の設置位置を変えて別個に行わなければならないので、軸調整作業に全体として長時間を要していた。
また、画像センサ等を使用した軸調整は、画像センサ等の特別高価な機器が必要となり、コスト高となる。
【0011】
なお、以上の問題点を解決する軸調整方法として、例えば図6(b)に示すようなターゲット101を使用した軸調整方法が、特願平10−242378号(特開2000−75031号)により提案されている。ここで、ターゲット101は、走査方向中央の中心線上(上下方向の直線上)に配置された中央反射部102と、この中央反射部102の走査方向両側に配置された二つの端側反射部103,104とを有し、検出エリアの中心軸(光軸)が適正位置よりも許容範囲を越えて上下方向にずれているときに、端側反射部103,104の一方のみが検出されるように、端側反射部103,104の上下方向におけるそれぞれの位置が異なっている。このため、適正位置(理想的な光軸の位置)を中心として配置されたターゲット101に対し、測距装置の検出エリアの中心位置が上下方向にずれていた場合には、そのずれの向きとずれ量に応じて反射部103,104のうちの特定の反射部が検出エリア(レーダ視野)から外れて検出されなくなり、各反射部からの反射波に基づいて生成される検出データ(走査方向の受光量分布)がそのずれの向きとずれ量に応じて異なってくる。したがって、測距装置を一つの走査方向(例えば、左右方向)にのみ走査しているにもかかわらず、走査方向に直交する方向(例えば、上下方向)のずれの有無と方向が検知できる。また、走査方向のずれについては、検出データに含まれる走査方向の位置情報(中央反射部102の位置情報)によって、例えば図6(c)と同様の方法で従来どおり検知して調整することができる。
このためこの方法によれば、画像センサ等の特別高価な機器を使用しないで、一方向の走査で、又同一のターゲットで、走査方向とこれに直交する方向のずれを検知することができて、これらのずれを是正するように測距装置(少なくともその検出ヘッド)の取付け位置又は取付け角度を調整するか、測距装置の制御システムにおいて検出エリアを設定するパラメータを変更する作業を行うことにより、短時間かつ低コストに軸調整作業を行うことができる。従って、レーザレーダなどを搭載した車両等を量産する場合の生産性向上に貢献できる。
【0012】
しかしながら、上記軸調整方法は、例えばレーザレーダの場合、レーザビームの幅が十分小さくて相当な分解能のスキャン機能を少なくとも一方向に備える必要がある。レーザビームの幅が大きくスキャン機能の分解能が粗いと、例えば図6(b)における端側反射部103,104の一方が視野から外れたり視野内に入ったりしても、走査方向(左右方向)の受光量分布があまり変化せず、少なくとも走査方向に直交する方向(上下方向)の軸調整が十分な精度でできないからである。また、走査方向のずれ量が大きい場合には、端側反射部103又は104を中央反射部102と誤認して走査方向の軸調整を誤って行ってしまう恐れがある。また、相当な分解能のスキャン機能を備えていたとしても、走査方向に直交する方向の軸ずれを、定量的に把握することができず、その結果、走査方向に直交する方向の軸ずれを高精度に調整できないという欠点があった。
なお近年では、車両等における測距装置においては、低コスト化や距離性能等の向上のために、照射するビームの幅が比較的大きくスキャン機能の分解能が粗いものが一般的なものとして採用される可能性がある。このため、このように分解能の粗い測距装置であっても、軸調整が容易かつ高精度に可能となる技術が要望されている。
そこで本発明は、両方向の軸ずれを定量的に把握して、両方向の軸調整が短時間で容易かつ高精度に行える測距装置の軸調整方法及びそのための軸調整用ターゲットを提供することを主目的としている。またより好ましくは、測距装置の分解能が粗い場合でも、両方向の軸調整が短時間で容易かつ高精度に行える測距装置の軸調整方法及びそのための軸調整用ターゲットを提供することを目的としている。
【0013】
【課題を解決するための手段】
この発明による軸調整用ターゲットは、所定の検出エリアからの波動を受信し、受信した波動の少なくとも受信強度に基づいて、前記検出エリアにある被検出物の少なくとも位置を特定するためのデータを出力する測距装置に関して、前記検出エリアの中心位置の適正位置からのずれ量を、基準方向とこれに直交する直交方向の二方向について検知するための軸調整用ターゲットであって、
波動の反射率の大きな明部と反射率の小さい暗部が所定の明暗パターンで配置された所定外形の検出表面を備え、
前記検出表面に前記測距装置の検出エリアを向けた状態で基準方向に走査して測定動作を行うと、基準方向位置に対する前記受信強度の波形が、前記検出表面の明暗パターンに対応したW字状又は逆W字状となり、この波形から前記ずれ量が前記二方向について算出可能となるように、前記検出表面の明暗パターンが設定され、
前記検出表面には、前記明暗パターンを構成する領域として、前記検出表面の中心位置を直交方向に対して斜めに横断するように配置された帯状領域と、この帯状領域の基準方向両側に位置する反転領域と、さらにこの反転領域の基準方向両側に位置する背景領域とが形成され、
前記帯状領域及び背景領域と、前記反転領域のうち、何れか一方が前記明部とされ、他方が前記暗部とされているとともに、
前記検出表面における基準方向両側に存在する前記反転領域と背景領域の各境界が、直交方向に対して平行に配置され、これら境界間の寸法が前記検出エリアの基準方向の幅よりも小さく設定され、
さらに前記背景領域が前記検出表面の外形部に設けられていることを特徴とするものである。
この発明の軸調整用ターゲットによれば、測距装置の一方向の走査により得られた受信強度の波形から、軸ずれ量が二方向(基準方向と直交方向)について定量的に把握可能となる。また、受信強度の波形に基づいているため、分解能の粗い測距装置であっても、各方向の軸ずれ量が比較的正確に把握できる。
【0014】
ここで、「検出エリアの中心位置」とは、例えばレーザレーダの光軸の位置を意味する。また、「検出エリアの中心位置の適正位置からのずれ量」とは、測距装置の軸ずれの量(ずれの向きを含む)を意味する。
また、「基準方向」とは、一方向にのみ走査を行う測距装置の場合には走査方向を意味し、二方向に走査を行う測距装置の場合には何れか一方の走査方向を意味する。
また、「W字状又は逆W字状」の波形は、少なくとも軸ずれの量が許容値を越えているときにだけ観測されればよい。また、観測された波形の全体が上述の「W字状又は逆W字状」の波形である必要は必ずしもなく、観測された波形の一部に「W字状又は逆W字状」の波形が含まれていてもよい。
【0015】
この発明による軸調整用ターゲットの態様としては、次の態様があり得る。
即ち、後述するターゲット3a,3c(図4(a),図4(c))のように、前記検出表面には、前記明暗パターンを構成する領域として、前記検出表面の中心位置を直交方向に対して斜めに横断するように配置された帯状領域と、この帯状領域の基準方向両側に位置する反転領域と、さらにこの反転領域の基準方向両側に位置する背景領域とが形成され、前記帯状領域及び背景領域と、前記反転領域のうち、何れか一方が前記明部とされ、他方が前記暗部とされているとともに、前記検出表面における基準方向両側に存在する前記反転領域と背景領域の各境界が、直交方向に対して平行に配置され、これら境界間の寸法(例えば、寸法L1)が前記検出エリアの基準方向の幅よりも小さく設定され、さらに前記背景領域が前記検出表面の外形部に設けられているものである。
なお、後述するターゲット3a(図4(a))のように、前記帯状領域の両端部は、直交方向に対して平行になっていてもよい。
【0017】
この態様の軸調整用ターゲットによれば、ターゲットの検出表面を、測距装置の正面に適正位置を中心として配置し、ターゲットの基準方向を測距装置の基準方向に合わせ、次いで測距装置を作動させ基準方向に走査して測定動作を行うことにより、受信強度のW字状又は逆W字状の波形が容易に得られる。なぜなら、例えば前記帯状領域が暗部であり、その両側に位置する反転領域が明部であり、さらにその両側に位置する背景領域が暗部とされた場合、前記帯状領域の位置で受信強度が谷状に落ち込み、その両側の反転領域の位置で受信強度が山状に高まり、さらにその両側の背景領域の位置で受信強度が落ち込むからである。
そして、上述したように観測された波形において、中央側の山状部又は谷状部の頂点に対応する基準方向位置データcと、前記頂点の基準方向両側に位置して前記頂点と同じ受信強度となる点に対応する基準方向位置データa,bから、次式(1),(2)の演算を行うことにより、二方向の軸ずれ量(基準方向ずれ量DX及び直交方向ずれ量DZ)が容易かつ正確に算出できる。
DX=(a+b)/2 (1)
DZ=DX−c (2)
【0018】
ここで、上記式(1)におけるa及びbは、ターゲットの検出表面における反転領域の基準方向外側の端位置(即ち、反転領域と背景領域の境界位置)に対応する基準方向位置データである。このため、a及びbの平均値(上記式(1)の右辺)は、ターゲット検出表面の中心位置(即ち、適正位置)の検出エリア上の基準方向位置データであり、いいかえると基準方向の軸ずれ量に相当する。また、上記式(2)におけるcは、前記帯状領域の検出エリア上の中心位置に相当する基準方向位置データであるため、上記式(2)の右辺は直交方向の軸ずれ量に比例する値となる。なぜなら、前記帯状領域は検出表面の中心を斜めに横断するように配置されているから、ターゲット検出表面の基準方向中心位置のデータ(即ち、基準方向ずれ量DX)と上記基準方向位置データc(帯状領域の検出エリア上の中心位置のデータ)の差は、検出エリアの直交方向におけるずれ量(即ち、直交方向ずれ量DZ)に比例するからである。
【0021】
なお、本発明の軸調整用ターゲットでは、検出表面における反転領域の基準方向外側の外形部には、帯状領域と同等の反射率の領域(即ち、背景領域)が検出表面内の領域として設けられているため、検出表面の周囲環境に無関係に前述の波形を形成することができる。このため、検出表面が比較的大型になるものの、検出表面の外形を特定形状とする必要がなく、さらに周囲環境の反射率を帯状領域と同等に設定する必要もないという利点がある。
【0022】
次に、本発明の軸調整方法は、上述の軸調整用ターゲットを使用して、前記測距装置の検出エリアの中心位置を、前記二方向における適正位置に調整する測距装置の軸調整方法であって、
前記軸調整用ターゲットの検出表面を、前記測距装置の正面に前記適正位置を中心として配置し、前記軸調整用ターゲットの基準方向を前記測距装置の基準方向に合わせる配置作業と、
次いで、前記測距装置を作動させ基準方向に走査して測定動作を行い、これにより得られる前記受信強度のW字状又は逆W字状の波形から前記適正位置に対する前記検出エリアの中心位置のずれ量を前記二方向について算出するずれ検知処理と、
前記ずれ検知処理で算出されたずれ量が許容範囲内でない場合に、この許容範囲内でないずれ量を是正するように前記測距装置の取付け位置又は取付け角度を調整するか、前記検出エリアを設定するパラメータを変更する調整作業とよりなるものである。
【0023】
この軸調整方法によれば、前述した軸調整用ターゲットを使用して、容易かつ正確に二方向の軸ずれ量を把握し、この軸ずれ量を是正するように軸調整を行うため、軸調整の作業性及び信頼性が向上する。また、分解能が粗い測距装置でも、正確な軸調整が容易に可能となる。
なお、上記ずれ検知処理における具体的算出方法は、例えば前述した式(1),(2)による。
なお、本発明の軸調整方法の好ましい態様は、前記測距装置を制御する制御手段を使用して、前記ずれ検知処理を自動で行うとともに、前記測距装置の取付け位置又は取付け角度を自動調整する調整装置、或いは、前記パラメータを自動変更する処理手段を使用して、前記調整作業を自動で行うものである。
この場合作業者は、軸調整用ターゲットを配置する配置作業を行った後、上記制御手段や処理手段に対して上記動作の実行を指令するだけでよく、従来の直交方向の軸調整のような繊細で困難な作業は全く不要であり、人的技能に依存しないで的確な調整が信頼性高く実現できる。従って、測距装置を搭載した車両などを量産する場合の生産性向上により大きく貢献できる。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に対する比較例や、本発明の実施の形態例を図面に基づいて説明する。
まず、比較例の一つ(第1比較例)を説明する。なお、本発明の形態例は、この第1比較例で使用する後述するターゲット3(図1(d))の検出表面に対して枠状の背景領域31(暗部)を追加した構成の軸調整用ターゲット3a,3c(図4(a),(c))を使用したものであり、この第1比較例と基本構成や基本原理が共通するため、この第1比較例をまず説明する。
図1は、本例の軸調整方法を実施する測距装置1を含む設備構成を説明する図であって、図1(a)は設備の全体構成を示す図、図1(b)は測距装置1の構成を示すブロック図、図1(c)は測距装置1の測定原理を説明する図、図1(d)は軸調整用ターゲット等を示す正面図である。
図1(a)において符号1で示すものが、測距装置である。この場合の測距装置1は、左右方向(水平方向)にのみ走査するタイプのもので、図1(a)に示すように、測距装置1の取付け位置又は取付け角度を自動調整する調整装置2により車体等に取付けられている。また、図1(a)において符号3で示すものは、軸調整用ターゲットである。なお本例では、測距装置1の走査方向(即ち、左右方向)が本発明の基準方向に相当し、この走査方向に直交する縦方向(即ち、上下方向)が本発明の直交方向に相当している。
ここで調整装置2は、測距装置1の検出ヘッドの取付け位置又は取付け角度が調整可能になるように、少なくとも前記検出ヘッドを揺動自在又は移動自在に支持する支持機構(例えば、回転軸)と、少なくとも前記検出ヘッドを揺動又は移動させる駆動手段(例えば、減速ギア付きモータ)とを備えるものである。
【0025】
測距装置1は、走査部11、LD12、LD駆動回路13、走査位置検出部14、PD15、信号処理部16、制御回路17(制御手段、処理手段)、及び軸調整指令手段(図示省略)を有する。なお、例えば上述したLD12と走査部11とPD15を含む部分が測距装置1の検出ヘッドを構成している。
ここで走査部11は、LD12により出力されたレーザ光を、揺動駆動される反射ミラー等により左右方向の所定角度にスキャニングしつつスキャンエリアに照射するもので、制御回路17により制御されて所定のタイミング及び周期で作動する。
LD駆動回路13は、制御回路17により制御されて、制御回路17で作られた発光タイミング毎にLD12を作動させてレーザ光を出力させる回路である。走査位置検出部14は、走査部11のスキャン方向を検出してその信号(スキャン方向信号)を制御回路17に入力する要素である。
PD15は、照射されたレーザ光が検出対象に反射して戻ってきた反射光を受光し、その受光量に応じた電気信号(以下、受光量信号という。)を出力するもので、このPD15から出力された受光量信号は信号処理部16を介して制御回路17に入力されるよう構成されている。
【0026】
制御回路17は、例えばCPU,ROM,RAM等よりなるマイクロコンピュータ(以下、マイコンという。)により構成され、装置の通常運転時には、基本的に以下のような制御処理により測距動作を行う。
すなわち、走査部11及びLD駆動回路13を上述したように制御するとともに、発光から受光までの伝搬遅延時間Tから検出対象までの距離を演算し、その際のスキャン方向から検出対象の方向を判定し、さらに受光した光の強度(前記受光量信号の大きさ)により受光量を判定するとともに、これらデータ(距離、方向、受光量)から、後述する如く検出対象物の判別や移動状態などを判定し、検出対象物の種別情報,位置情報,大きさ情報などを含む検出データを出力するものである。なお、一回の発光によって得られる反射光は実際には一つではなく、照射する光ビームが広がりをもっている関係上、受光タイミングや受光量が異なる反射光が複数受光される。そこで、この種の装置では、例えば図1(c)の如くサンプリングされたPD15の出力波形から、平均化処理(例えば、受光量が最大となる付近の複数ポイントの重心を求める処理)を行って伝搬遅延時間Tを求めている。また、例えば、求められた伝搬遅延時間Tに対応する受光量のサンプリング値を受光量のデータとして特定している。
また、前記軸調整指令手段(図示省略)は、光軸調整を行う作業者(車両の出荷時の点検調整や出荷後の修理等を行う作業者)が操作可能に設けられた操作手段(例えば操作スイッチ)であり、後述する光軸自動調整の実行を、制御回路17に対して指令するものである。
【0027】
なお本例の場合も、図6(c)に例示するように、レーザ光を実際に照射する角度領域(スキャンエリア)は、反射波を受信して上述の距離データなどの測定を行う角度領域(検出エリア)よりも大きく設定してあり、この検出エリアのスキャンエリア内(実際には余裕をみて検出許容エリア内)におけるデータ処理上の設定位置(ソフト的なパラメータ)を変更することにより、装置の光学ヘッドの取付位置を物理的に変更することなく、検出エリアの左右方向のある程度の位置調整が可能となっている。
なお、このようなパラメータ変更による調整を、以下ではソフト的光軸調整といい、このソフト的光軸調整によって、検出エリアの中心位置の基準方向(走査方向)の位置調整が可能となる範囲を、以下ではソフト的光軸調整可能範囲という。
また以下では、軸調整用ターゲット3の検出表面を含む平面上における検出エリアの広がりを、レーザレーダ視野という(図1(d)や図2(a)参照)。
【0028】
次に、上記測距装置1の動作について説明する。まず、レーザレーダとしての通常運転時の動作について説明する。
LD12は、制御回路17で作られた発光タイミング毎に、LD駆動回路13により制御されて作動しレーザ光を出力する。そして、このLD12からのレーザ光は、走査部11によりスキャニングされつつ、図6(c)に例示するように検出エリアよりも広いスキャンエリアに照射される。
照射されたレーザ光が検出対象に反射して戻ってくると、この反射光がPD15により受光され、その受光量信号が信号処理部16を介して制御回路17に入力される。制御回路17では、前記受光量信号及び走査位置検出部14から入力されるスキャン方向信号から、前述のデータ(距離、方向、受光量)をまず生成する。
なお、このデータ(距離、方向、受光量)は、例えば前記検出エリア内において発光及び受光が行われる度に生成され、測距装置1の検出処理は検出エリア内にある被検出物についてのみ行われる。
【0029】
そして、制御回路17では、上記データ(距離、方向、受光量)や図示省略した車速センサより入力される自車両の速度データに基づいて以下の処理が所定の周期(この場合、レーザ光がスキャンされる周期)で実行される。
すなわち、まず、対象物までの距離と方向データ(極座標データ)を、X,Y座標(デカルト座標データ)に変換し、受光量のデータとともに各領域ごとに図示省略したメモリに格納する。なおここで、各領域とは、検出エリア内を例えば等分割して区画することにより予め設定された領域である。
【0030】
次に、デカルト座標系に変換され各領域毎に登録された前記メモリ内の距離データをもとに、データのグループ化を行い対象物を抽出するとともに、グループ化された対象物のレーザ発光部からのX方向(例えば左右方向),Y方向(例えば前後方向)の距離とその幅寸法を算出する。
ここで、グループ化とは、各領域の個々のデータの中で隣接する距離が接近しているものを集め一つの対象物とする処理である。具体的には、例えば個々のデータに対して前後方向及び左右方向にそれぞれ一定幅のウインドウ(デカルト座標系上の領域)を設け、このウインドウに含まれる他のデータを相互に同一グループとする。なお、こうしてグループ化したデータ(以下、グループデータ)は、以降の処理では一つの対象物についてのものとして、ひとまとめに取扱う。
【0031】
次に、前回スキャン時に検出した対象物と、今回スキャン時に検出した対象物を対応付けて、さらにその検出対象物の相対速度の算出を行う。
すなわち、前回のグループデータの位置とその相対速度から、今回のスキャン時にそのグループデータが現れると推定される位置を中心にして一定のウインドウを設定する。そして、今回のグループデータがこのウインドウ内にはいっているか否かを判別し、この範囲内にはいっていれば、その前回のグループデータと今回のグループデータを同一対象物についてのものであるとして対応付け、それらの移動距離から相対速度を算出する。
次に、対象物の幅寸法及び相対速度に基づいて対象物の属性判別を行う。
すなわち、例えば予め登録された幅寸法の基準値と比較することにより、対象物が車両であるか、バイクであるか、人であるか、看板であるか、或いは路側のリフレクタ(反射体)であるか等の対象物の種類の判別を行う。また、その対象物の相対速度を自車両の速度と比較することにより、その対象物が停止しているか移動しているかの判別も行う。
【0032】
次いで、上記判別結果に基づいて、前方障害物の監視システムや追従走行制御システムの対象となる先行車等を特定する。そして、この特定された先行車等に関する情報(位置データや相対速度データ等)は、前方障害物の監視システムや追従走行制御システムの制御手段に逐次送信され、それらシステムの運転制御に使用される。
【0033】
次に、上記設備構成により実施される本例の光軸調整について説明する。なお本例の光軸調整は測距装置1を搭載した車両を停止させて行う。
本例の光軸調整は、図1(d)或いは図2(a)に示す軸調整用ターゲット3を測距装置1が取付けられた車両の正面の適正位置を中心として配置し、軸調整用ターゲット3の基準方向(幅方向)を測距装置1の基準方向(走査方向)に合わせるとともに、軸調整用ターゲット3の検出表面の周囲環境を反射率がほとんどゼロの環境(暗部)に設定する(配置作業)。次いで、前述の光軸調整指令手段(図示省略)を操作して、測距装置1による後述の光軸自動調整(図3に示す)を実行するものである。なお、後述する測距装置1による光軸自動調整は、本発明のずれ検知処理と調整作業とを自動的に実行する処理である。
【0034】
この場合の軸調整用ターゲット3は、図1(d)に示すように、上下方向(直交方向)に平行となる辺(端縁)を左右両側に有する直角四辺形状の検出表面(二次元平面)を有するものであり、この検出表面の左右方向(基準方向)の幅L1は、レーザレーダ視野の左右方向の幅L2よりも小さい寸法とされている。また、このターゲット3の上下方向の長さ寸法(符号省略)は、レーダ視野の上下方向の最大位置ずれ量に対応する長さとなっている。具体的には、レーダ視野が上方に最もずれていた場合でも、図2(a)のケースAに示すような位置関係となり、またレーダ視野が下方に最もずれていた場合でも、図2(a)のケースCに示すような位置関係となるように上下方向の長さが設定されている。
そして、このターゲット3の検出表面には、本発明の明暗パターンを構成する領域として、検出表面の中心位置を上下方向に対して斜めに横断するように配置された帯状領域21と、この帯状領域21の左右方向両側に位置する反転領域22,23とが形成され、さらにこの場合、帯状領域21の上端側と下端側に上下方向の帯状領域25,26(斜めでない部分)が形成されている。ここで、帯状領域21,25,26は、光をほとんど反射しない反射率の低い暗部(例えば、黒色に塗られた部分)となっており、また、これら帯状領域21,25,26の両側に位置する反転領域22,23は、光を強く反射する反射率の高い明部(例えば、白色に塗られた部分)となっている。
【0035】
このような明暗パターンを有するターゲット3であると、その検出表面に測距装置1の検出エリアを向けた状態(即ち、前記配置作業を行った状態)で測定動作を行うと、基準方向位置(走査量)に対する反射光の受信強度(受光量)の波形が、例えば図2(b)〜(d)に示す如く前記検出表面の明暗パターンに対応した逆W字状となり、この波形から検出表面の中心位置に対する検出エリアの中心位置のずれ量(即ち、測距装置1の適正位置からの軸ずれ量であり、ずれの向きを含む)が上下左右の二方向について算出可能となる。
具体的には、上記受信強度の逆W字状の波形において、中央側の谷状部の頂点(この場合、最下点)に対応する基準方向位置データ(走査量c)と、前記頂点の走査方向両側に位置して前記頂点と同じ受信強度となる点に対応する基準方向位置データ(走査量a,b)から、既述した式(1),(2)により、適正位置(ターゲット3の中心位置)に対するレーザレーダ視野の中心位置の基準方向ずれ量(DX)及び直交方向ずれ量(DZ)を算出することが可能となる。
【0036】
というのは、上記受信強度の逆W字状の波形は、帯状領域21,25,26(暗部)の位置で受光量が谷状(例えば、V字状又はU字状)に落ち込み、その両側の反転領域22,23(明部)の位置で受光量が高まり、さらにこれら反転領域22,23の外縁(即ち、ターゲット3の検出表面の左右両端縁)より外側(暗部として機能するターゲット3の周囲環境)に向かって受光量が大きく低下することによって生じる。このため、中央の谷状部の頂点と同じ受信強度となる点に対応する走査量a,bの平均値((a+b)/2)は、ターゲット3の検出表面の左右方向中央位置に相当する。したがって、この平均値(又はこの平均値に所定係数を掛けた値)を、基準方向ずれ量(DX)として把握することができる。
ちなみに、上記基準方向ずれ量(DX)がゼロである場合(図2(c)に示すケースBのような場合)には、ターゲット3の検出表面の左右方向中央位置と、走査量のゼロ点位置(測距装置1の光軸の走査方向位置)が一致していることを意味し、測距装置1の光軸が走査方向において適正位置にあること意味する。またこの場合、上記基準方向ずれ量(DX)が正の値である場合(図2(b)に示すケースAのような場合)には、ターゲット3がレーダ視野中心に対して右側にあり、レーダ視野中心(光軸)が左方にずれていることを意味し、逆に上記基準方向ずれ量(DX)が負の値である場合(図2(d)に示すケースCのような場合)には、レーダ視野中心(光軸)が右方にずれていることを意味する。
【0037】
また、上記走査量cは帯状領域21,25,26の中心線が存在する走査方向位置に相当しているため、前記検出表面の左右方向中央位置に相当する基準方向ずれ量(DX)とこの走査量cとの差(DX−c)は、前記検出表面の左右方向中央位置から帯状領域21,25,26の中心線が存在する左右方向位置までの距離DL(図2(a)に示す)に相当する。そして、この距離DLは、帯状領域21が上下方向に対して傾いていることによって、基本的にはレーザレーダ視野の上下方向のずれに相当する直交方向ずれ量(DZ)に比例することになる。したがって、上述の差(DX−c)、或いはこの差に所定係数を掛けた値は、直交方向ずれ量(DZ)として把握することが可能となる。
ちなみに、上述の直交方向ずれ量(DZ)がゼロである場合(図2(c)に示すケースBのような場合)には、ターゲット3の検出表面の上下方向中央位置と、測距装置1の光軸の上下方向位置が一致していることを意味し、測距装置1の光軸が上下方向において適正位置にあること意味する。またこの場合、上記直交方向ずれ量(DZ)が負の値である場合(図2(b)に示すケースAのような場合)には、ターゲット3がレーダ視野中心に対して下方にあり、レーダ視野中心(光軸)が上方にずれていることを意味し、逆に上記直交方向ずれ量(DZ)が正の値の場合(図2(d)に示すケースCのような場合)には、レーダ視野中心(光軸)が下方にずれていることを意味する。
【0038】
なお、帯状領域21の上下両端側の帯状領域25,26は、この場合斜めになっていないため、この部分に関しては、前述の距離DLがレーダ視野の上下位置ずれ量に比例せず、この結果、直交方向ずれ量(DZ)の計算値がこの部分において若干不正確になる(若干小さい値になる)。しかし、上下方向にレーダ視野が大きくずれた部分であるため、誤差の範囲に収まる。或いは、計算された直交方向ずれ量(DZ)に相当する位置調整を行った後、再度その時点で直交方向ずれ量(DZ)を求めて位置調整をもう一度行うことで(例えば、後述する図3の処理を繰り返すことで)、最終的に正確な位置ずれ量の把握と位置調整が可能となり、実用上全く問題ない。
【0039】
次に、上記測距装置の光軸自動調整の動作について説明する。
前述した光軸調整指令手段によって光軸自動調整の実行が指令されると、制御回路17は、例えば図3のフローチャートに示す制御処理を実行する。
まずステップS1では、測距装置1を走査1回分だけ通常運転させて、軸調整用ターゲット3及びその周囲からの反射光の受光量波形(走査量に対する受光量の変化のデータ)を生成する。
次いでステップS2では、上記受光量波形から前述した走査量(c,a,b)を求める。
次にステップS3では、ステップS2で求めた走査量の値を使って前述の式(1)により基準方向ずれ量(DX)を求め、その後のステップS4では、同様に前述の式(2)により直交方向ずれ量(DZ)を算出する。
【0040】
次にステップS5では、ステップS3で求めた基準方向ずれ量(DX)が許容範囲内か否か判定し、許容範囲内である場合にはステップS6に進み、そうでない場合にはステップS7に進む。
そしてステップS6では、ステップS4で求めた直交方向ずれ量(DZ)が許容範囲内か否か判定し、許容範囲内である場合には一連の処理を終了し、そうでない場合にはステップS11に進む。
一方ステップS7では、基準方向ずれ量(DX)が、前述したソフト的光軸調整可能範囲内にあるか否か判定し、範囲内であればステップS8に進み、そうでない場合にはステップS9に進む。
次にステップS8では、前述したソフト的光軸調整によってステップS3で求めた基準方向ずれ量(DX)を是正する。一方ステップS9では、ステップS3で求めた基準方向ずれ量(DX)を是正すべく、前述の調整装置2に制御信号を出力して検出ヘッドを適応量だけ物理的に動かし、検出エリアの中心位置を基準方向(左右方向)に動かす。
そしてステップS8又はS9を経ると、ステップS10において、ステップS6と同様の判定を行い、許容範囲内である場合にはステップS1に戻って処理を繰り返し、そうでない場合にはステップS11に進む。
またステップS11では、ステップS4で求めた直交方向ずれ量(DZ)を是正すべく、前述の調整装置2に制御信号を出力して検出ヘッドを適応量だけ物理的に動かし、検出エリアの中心位置を直交方向(上下方向)に動かす。なお、ステップS11を経ると、ステップS1に戻って処理を繰り返す。
【0041】
以上の一連の処理によれば、ステップS1〜S4の処理によって、本発明のずれ検知処理が自動的に実行される。即ち、測距装置1が作動して左右方向に1回走査がなされて反射光の受光量波形が求められ、この受光量波形に基づいてレーダ視野の中心位置の適正位置からのずれの有無と方向が検知される。
また、ステップS5〜11の処理によって、本発明の調整作業が自動的に実行される。即ち、上記ずれ検知処理で検知された方向のずれを是正するように前述の調整装置2を作動させて測距装置1の少なくとも検出ヘッドの取付け位置又は取付け角度を調整する制御処理が、必要に応じて実行されるか、或いは、検出エリアを設定する前述のパラメータを変更する処理(即ち、ソフト的光軸調整)が、必要に応じて実行される。
なお上記処理例では、ステップS5,S6の処理によって何れの方向においてもレーダ視野中心が適正位置になったことが確認されるまで、ずれ量の把握(ステップS1〜S4)とこれに対する調整動作(ステップS8,S9,S11)が繰り返されるため、一回の調整動作で調整誤差等によって適正な位置調整が実現できなかった場合でも、調整動作が引き続き多段階に行われることによって最終的に確実かつ正確に光軸調整が実現される。
【0042】
以上説明したように本例の軸調整ターゲット3或いは軸調整方法によれば、上下方向(直交方向)及び左右方向(基準方向)の2次元軸調整が、画像センサ等の特別高価な機器を使用しないで、1方向の走査で又同一のターゲットで可能になるため、作業時間の短縮と作業に必要なコストの低減が図れる。
しかも、受信強度の波形が軸調整用ターゲットの相対位置に対応する逆W字状となるような明暗パターンを軸調整用ターゲットの検出表面に形成し、このような受信強度の波形からレーダ視野中心のずれ量を二方向について算出可能とした構成である。このため、レーダ視野中心のずれ量が定性的かつ定量的に把握できるようになり、高精度な光軸調整が前述したような簡素な処理で容易かつ確実に可能となる。また、測距装置1のレーザ光のビーム幅が例えば図1(d)に示すように広くなり、測距装置1の分解能が比較的低くなったとしても、受信強度の波形(走査方向における受光量の連続的変化)によってずれ量を判定しているため、上述した良好なずれ量検知及び光軸調整が問題なく可能となる。
また本例では、本発明のずれ検知処理と調整作業とが、制御回路17の上述した光軸自動調整の処理によって自動的に遂行される。このため作業者は、軸調整用ターゲット3を配置する配置作業を行った後、前述した光軸調整指令手段によって光軸自動調整の実行を指令するだけでよく、従来の上下方向の軸調整のような繊細で困難な作業は全く不要であり、人的技能に依存しないで的確な調整が信頼性高く実現できる。
従って、レーザレーダ(特に分解能の粗いもの)を搭載した車両などを量産する場合の生産性向上や信頼性向上に大きく貢献できる。
【0043】
次に、本発明の形態例について説明する。
本発明の第1形態例は、軸調整用ターゲットとして、図4(a)に示すように、前述のターゲット3の検出表面に対して枠状の背景領域31(暗部)を追加した構成の軸調整用ターゲット3aを使用したものであり、その他の構成は前述の第1比較例と同じである。この第1形態例によれば、前述の第1比較例と同じ効果に加えて、次の効果がある。即ち、ターゲットの周囲環境を必ずしも暗部に設定しなくても、図2(b)〜(d)に示すような良好な受光量波形が得られ易くなる。
次に、本発明の第2形態例は、軸調整用ターゲットとして、図4(c)に示す軸調整用ターゲット3cを使用したものであり、その他の構成は前述の第1比較例と同じである。ここで、軸調整用ターゲット3cは、前述のターゲット3aにおける帯状領域25,26(斜めでない部分)を削除した構成である。なお、このような構成の場合、上下方向のずれ量が大きくターゲットの上下長さが大きくなると、傾斜した帯状領域21の両端がそのまま延長方向に伸びることになるので、ターゲットの幅寸法もそれに比例して大きくなってしまう。その点、前述のターゲット3aのような構成であれば、帯状領域25,26(斜めでない部分)を有する分だけ、ターゲットの幅寸法が低減できるので、ターゲットの小型化という観点からは、前述のターゲット3aのような構成が優れている。
【0044】
次に、その他の比較例について説明する。
図4(b)は、前述のターゲット3における帯状領域25,26(斜めでない部分)を削除した構成の軸調整用ターゲット3b(第2比較例)を示している。
また図5(a)は、第3比較例の軸調整用ターゲット3dを示している。このターゲット3dの検出表面の外形は、上下方向に対して斜めにかつ相互に平行に配置された辺(端縁)を左右方向両側に有する平行四辺形状であり、このターゲット3dの検出表面の左右方向の幅L1は、前記検出エリアの走査方向の幅L2よりも小さい寸法とされている。また、このターゲット3dの検出表面には、本発明の明暗パターンを構成する領域として、検出表面の中心位置を上下方向に横断するように配置された帯状領域41と、この帯状領域41の左右方向両側に位置する反転領域42,43(この場合、三角形状の領域)とが形成され、帯状領域41が暗部とされ、反転領域42,43が明部とされている。このような軸調整用ターゲット3dの場合でも、前述の軸調整用ターゲット3と同様に、逆W字状の受光量波形が得られ、この受光量波形における走査量(c,a,b)から、各方向のずれ量(DX,DZ)が算出でき、同様の光軸調整が可能となる。但し、この場合のずれ量(DX,DZ)を算出する関係式は、下記式(3),(4)となる。
DX=c (3)
DZ=(a+b)/2−c (4)
【0045】
また図5(b)は、第4比較例の軸調整用ターゲット3eを示している。これは、上述のターゲット3dの検出表面に対して枠状の背景領域44(暗部)を追加した構成の軸調整用ターゲット3eである。
また図5(c)は、第5比較例の軸調整用ターゲット3fを示している。これは、中央部が斜めに切断された上下方向の帯状領域51(暗部)と、この帯状領域51の左右両側と内側に配置されたN字状の反転領域52(明部)と、反転領域52や帯状領域51の周囲に形成された四角枠状の背景領域53(暗部)とが、検出表面に形成されたものである。このような軸調整用ターゲット3fであっても、前述の軸調整用ターゲット3と同様の原理で光軸調整が良好に可能となる。
なお、上記軸調整用ターゲット3fにおける背景領域53(暗部)を削除してもよい。
また例えば、以上例示した軸調整用ターゲット3,3a,3b,3c,3d,3fに対して、明部と暗部を反転させた構成の軸調整用ターゲットであってもよい。例えば、軸調整用ターゲット3aにおける帯状領域21,25,26を明部とし、その両側の反転領域22,23を暗部とし、外形部の背景領域31を明部としてもよい。この場合、周囲環境に無関係に、図2(a)〜(d)に例示した受光量波形が上下に反転したような受光量波形(W字状の波形)が得られ、同様の原理で容易かつ正確に光軸調整が可能となる。
【0046】
また、本発明のずれ検知処理や調整作業は、必ずしも上記形態例のように自動で行われる必要はなく、例えば、前述の受光量波形(或いは各方向のずれ量のデータ)を測距装置等に設けた表示部に表示するようにし、この表示を作業者が確認しつつ、作業者が自力で測距装置の検出ヘッドを動かして上記調整作業を実行する態様も有り得る。この場合も、一方向の走査のみで、かつ、一つのターゲットのみで軸調整が可能になって、作業時間の短縮等の効果が得られる。
また、本発明の配置作業をロボットなどの自動機を使用して自動で行う態様としてもよいし、或いは、固定状態に設置された軸調整用ターゲットに対して、測距装置の搭載された車両等をコンベア等で移動させ位置決め装置を使用して自動で位置決めることにより、本発明の配置作業を自動で行うこともできる。
また本発明は、上記形態例のように一方向にのみ走査を行う測距装置に適用してもよいが、例えば上下方向及び左右方向の2方向に走査が行われる測距装置に適用することもできる。
また本発明は、レーザ光を用いた測距装置のみならず、例えば電波や音波を用いた測距装置にも適用できる。また、画像センサを使用した測距装置に応用することも可能である。
【0047】
【発明の効果】
本発明の軸調整用ターゲットによれば、測距装置の一方向の走査により得られた受信強度の波形から、軸ずれ量が二方向(基準方向と直交方向)について定量的に把握可能となる。また、受信強度の波形に基づいているため、分解能の粗い測距装置であっても、各方向の軸ずれ量が比較的正確に把握できる。
また、本発明の軸調整方法によれば、上記軸調整用ターゲットを使用して、容易かつ正確に二方向の軸ずれ量を把握し、この軸ずれ量を是正するように軸調整を行うため、軸調整の作業性及び信頼性が向上する。また、分解能が粗い測距装置でも、正確な軸調整が容易に可能となる。
つまり本発明によれば、画像センサ等の特別高価な機器を使用しないで、一方向の走査で、又同一のターゲットで、基準方向とこれに直交する方向のずれを定量的に検知することができて、このずれを是正するように測距装置(少なくともその検出ヘッド)の取付け位置又は取付け角度を調整するか、測距装置の制御システムにおいて検出エリアを設定するパラメータを変更する作業(調整作業)を行うことにより、分解能が粗い測距装置であっても、従来よりも短時間かつ低コストにさらに正確に軸調整作業を行うことができる。従って、この種の測距装置を搭載した車両などを量産する場合の生産性向上や信頼性向上に貢献できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】光軸調整を実施する測距装置を含む設備構成等を示す図である。
【図2】光軸調整用ターゲットと受信強度の波形を示す図である。
【図3】光軸自動調整の処理を示すフローチャートである。
【図4】光軸調整用ターゲットの他の例を示す図である。
【図5】光軸調整用ターゲットの他の例を示す図である。
【図6】従来の光軸調整を説明する図である。
【符号の説明】
1 レーザレーダ(測距装置)
2 調整装置
3,3a,3b,3c,3d,3f 軸調整用ターゲット
17 制御回路(制御手段、処理手段)
21,25,26,41,51 帯状領域
22,23,42,43,52 反転領域
31,32,44,53 背景領域
Claims (5)
- 所定の検出エリアからの波動を受信し、受信した波動の少なくとも受信強度に基づいて、前記検出エリアにある被検出物の少なくとも位置を特定するためのデータを出力する測距装置に関して、前記検出エリアの中心位置の適正位置からのずれ量を、基準方向とこれに直交する直交方向の二方向について検知するための軸調整用ターゲットであって、
波動の反射率の大きな明部と反射率の小さい暗部が所定の明暗パターンで配置された所定外形の検出表面を備え、
前記検出表面に前記測距装置の検出エリアを向けた状態で基準方向に走査して測定動作を行うと、基準方向位置に対する前記受信強度の波形が、前記検出表面の明暗パターンに対応したW字状又は逆W字状となり、この波形から前記ずれ量が前記二方向について算出可能となるように、前記検出表面の明暗パターンが設定され、
前記検出表面には、前記明暗パターンを構成する領域として、前記検出表面の中心位置を直交方向に対して斜めに横断するように配置された帯状領域と、この帯状領域の基準方向両側に位置する反転領域と、さらにこの反転領域の基準方向両側に位置する背景領域とが形成され、
前記帯状領域及び背景領域と、前記反転領域のうち、何れか一方が前記明部とされ、他方が前記暗部とされているとともに、
前記検出表面における基準方向両側に存在する前記反転領域と背景領域の各境界が、直交方向に対して平行に配置され、これら境界間の寸法が前記検出エリアの基準方向の幅よりも小さく設定され、
さらに前記背景領域が前記検出表面の外形部に設けられていることを特徴とする測距装置の軸調整用ターゲット。 - 前記帯状領域の両端部は、直交方向に対して平行になっていることを特徴とする請求項1に記載の測距装置の軸調整用ターゲット。
- 請求項1乃至2の何れかに記載の軸調整用ターゲットを使用して、前記測距装置の検出エリアの中心位置を、前記二方向における適正位置に調整する測距装置の軸調整方法であって、
前記軸調整用ターゲットの検出表面を、前記測距装置の正面に前記適正位置を中心として配置し、前記軸調整用ターゲットの基準方向を前記測距装置の基準方向に合わせる配置作業と、
次いで、前記測距装置を作動させ基準方向に走査して測定動作を行い、これにより得られる前記受信強度のW字状又は逆W字状の波形から前記適正位置に対する前記検出エリアの中心位置のずれ量を前記二方向について算出するずれ検知処理と、
前記ずれ検知処理で算出されたずれ量が許容範囲内でない場合に、この許容範囲内でないずれ量を是正するように前記測距装置の取付け位置又は取付け角度を調整するか、前記検出エリアを設定するパラメータを変更する調整作業と
よりなることを特徴とする測距装置の軸調整方法。 - 請求項1乃至2の何れかに記載の軸調整用ターゲットを使用して、前記測距装置の検出エリアの中心位置を、前記二方向における適正位置に調整する測距装置の軸調整方法であって、
前記軸調整用ターゲットの検出表面を、前記測距装置の正面に前記適正位置を中心として配置し、前記軸調整用ターゲットの基準方向を前記測距装置の基準方向に合わせる配置作業と、
次いで、前記測距装置を作動させ基準方向に走査して測定動作を行い、これにより得られる前記受信強度のW字状又は逆W字状の波形において、中央側の山状部又は谷状部の頂点に対応する基準方向位置データcと、前記頂点の基準方向両側に位置して前記頂点と同じ受信強度となる点に対応する基準方向位置データa,bから、次式(1),(2)により、前記適正位置に対する前記検出エリアの中心位置の基準方向ずれ量DX及び直交方向ずれ量DZを算出するずれ検知処理と、
DX=(a+b)/2 (1)
DZ=DX−c (2)
前記ずれ検知処理で算出されたずれ量が許容範囲内でない場合に、この許容範囲内でないずれ量を是正するように前記測距装置の取付け位置又は取付け角度を調整するか、前記検出エリアを設定するパラメータを変更する調整作業と
よりなることを特徴とする測距装置の軸調整方法。 - 前記測距装置を制御する制御手段を使用して、前記ずれ検知処理を自動で行うとともに、
前記測距装置の取付け位置又は取付け角度を自動調整する調整装置、或いは、前記パラメータを自動変更する処理手段を使用して、前記調整作業を自動で行うことを特徴とする請求項3乃至4の何れかに記載の測距装置の軸調整方法。
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