JP6855155B2 - 核酸検出カセット - Google Patents

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Description

実施形態は、核酸検査装置のような検査装置に利用される核酸検出カセットに関する。
近年、遺伝子工学の発展に伴い、医療分野では遺伝子による病気の診断或いは予防が可能となりつつある。これは遺伝子診断と呼ばれ、病気の原因となるヒトの遺伝子欠陥或いは遺伝子変化を検出することで病気の発症前もしくは極めて初期段階での病気の診断、或いは予測をすることができる。また、ヒトゲノムの解読とともに、遺伝子型と疫病との関連に関する研究が進み、各個人の遺伝子型に合わせた治療(テーラーメイド医療)も現実化しつつある。従って、遺伝子の検出並びに遺伝子型の決定を簡便に行うことが非常に重要となっている。
このような遺伝子診断には、核酸検出カセットを用いることが知られている(特許文献1)。核酸検出カセットは、軟質材料から作られる流路パッキンと、硬質材料で作られる第1のプレートと、硬質材料で作られる第2のプレートとを備える。流路パッキンは、核酸検出流路と、第1のシリンジと、第2のシリンジと、第3のシリンジと、第1の流路と、第2の流路とを備え、第1の面およびこの第1の面と反対側に位置する第2の面を有する。第1、第2のシリンジは、核酸検出流路と前記第1の流路を通して接続される。第3のシリンジは、核酸検出流路と第2の流路を通して接続される。第1のプレートは、第1の面およびこの第1の面と反対側に位置する第2の面を有し、この第1の面が前記流路パッキンの第1面と相対する。第2のプレートは、第1の面およびこの第1の面と反対側に位置する第2の面を有し、この第1の面が前記流路パッキンの第2面と相対し、前記第1のプレートと共に前記流路パッキンを密封する。各シリンジは、第1の面に液体を装填(注入)するための開口部を備え、第2の面に変形可能な薄膜部を備える容器である。したがって、検体シリンジは薄膜部側への外部からの加圧により、容易に変形して、潰すことが可能である。
このような核酸検出カセットにおいて、ロッド前後機構のロッドを例えば第1のシリンジの薄膜部に押し当てて加圧することにより、当該薄膜部が変形して潰れ、内部の液体を第1の流路に送液できる。
しかしながら、特許文献1の核酸検出カセットは変形可能な薄膜部にロッドを押し当ててシリンジ内の液体を送液する際、シリンジ内の液残りの最小化について全く着目していない。液残りの最小化は、核酸検出カセットの小型化に伴う、シリンジ容積の縮小化の上で、極めて重要な課題である。
特開2013−192521号公報
本実施形態は、膨出部にシリンジロッドを押し込んだ時、液残りの最小化を図ることが可能なシリンジを備えた核酸検出カセットを提供する。
上記の課題を解決するために、本実施例によれば、
硬質材料から作られ、第1貫通孔を有する第1のプレートと、
硬質材料から作られ、細長形状の第1シリンジ窪み及びこのシリンジ窪みに対応して形成された第1流路溝を有する第2のプレートと、及び
前記第2のプレート上に載置され、前記第1のプレートと前記第2のプレートとの間に挟み込まれて加圧固定される弾性材料から作られたパッキンと、
を具備する核酸検出カセットであって、
前記パッキンは、前記第1シリンジ窪みに対して反対方向に突出し、膨出する変形可能な形状を有し、膜厚tEを有する膜で形成される第1膨出部を備え、
この第1膨出部は、前記第1貫通孔内に配置され、前記第1シリンジ窪みを覆うように配置されて前記第1シリンジ窪みの間に変形可能な第1筒状空間を有する第1シリンジを液密に形成し、
前記パッキンが前記第1流路溝を覆い、前記第2のプレートに圧着されて変形されることにより、第1シリンジに連通する第1流路が液密に形成されるとともに前記パッキンが前記第2のプレートに加圧されて固定され、
前記第1貫通孔を介して外部から第1シリンジロッドが挿通されて前記第1膨出部に荷重が加えられ、前記第1シリンジロッドによって前記第1膨出部が押し潰されて前記第1シリンジ内の溶液が前記流路に送出される核酸検出カセットにおいて、
前記第1シリンジロッドは、前記第1シリンジ窪みに対応して幅方向内における端面及び長手方向における両端が湾曲されている細長形状の先端接触面を有し、
前記第1シリンジ窪みの幅で定められる第1シリンジ幅WB1、この第1シリンジ幅WB1に対応して定められる第1シリンジロッド幅WR1、前記膜厚tEは、
下記式(1)
R1+3tE≦WB1≦WR1+4tE … (1)
の関係を満たすように設定されることを特徴とする核酸検出カセットが提供される。
実施の形態に係る核酸検査装置を概略的に示すブロック図である。 図1に示される核酸検査装置に装着される核酸検出カセットの外観を概略的に示す斜視図である。 図2に示される核酸検出カセットを分解して概略的に示す分解斜視図である。 図2に示される核酸検出カセットを透視して内部構造を概略的に示す透視平面図である。 図2に示される核酸検出カセット内に設けられる流路及び流路に連結される各部を概略的示す平面図である。 図2に示される核酸検出カセット内に設けられる流路及び流路に連結される各部を概略的に示す斜視図である。 図2に示される核酸検出カセットの増幅部の形態を概略的に示す平面図である。 図2に示される核酸検出カセットのDNAチップの平面構造を概略的に示す平面図である。 図2に示される核酸検出カセットからキャップ及びカバーを取り外した外観を概略的に示す斜視図である。 図4に示される核酸検出カセットの下部プレートの一部を概略的に示す部分斜視図である。 図4に示される核酸検出カセットのパッキンの一部を概略的に示す部分斜視図である。 図9に示される核酸検出カセットをB−B線に沿って切断した断面を概略的に示す部分断面斜視図である。 図12に示される核酸検出カセットのシリンジとこのシリンジを押し込むシリンジロッドの配置を概略的に示す部分断面図である。 図13に示されるシリンジの膨出部にシリンジロッドを押し込んで変形した様子を概略的に示す部分断面図である。 シリンジの膨出部にシリンジロッドを10回押し込んだ時の荷重分布を示す図である。 挿入剤シリンジおよび第2洗浄液シリンジの膨出部に押し込まれるシリンジロッドを示す斜視図である。 シリンジの膨出部に押し込まれるシリンジロッドの別の形態を示す斜視図である。 図8に示される増幅部の流入及び流出路に設けられる常開バルブの外観構造を概略的に示す平面図である。 図18に示される常開バルブの形態を概略的に示す部分断面図である。 図19に示される、常開バルブ及びこの常開バルブを閉塞動作するバルブロッドの一部を概略的に示す部分断面図である。 図3に示すパッキンの背面の形態を概略的に示す斜視図である。 図3に示される上部プレートの背面にDNAチップを組み込み、上部プレートの背面に図21に示すパッキンを載置する工程を示す斜視図である。 図22に示されるか上部プレート背面にパッキンが載置された構造を概略的に示す斜視図である。 図22に示される上部プレートおよびパッキンの構造体に下部プレートを取り付ける工程を示す斜視図である。 図1に示される核酸検査装置の内部構造を概略的に示す側面図である。 図1に示す核酸検査装置におけるサンプルの電気化学的に検査の過程を示すフローチャートである。 図6に示される核酸検出カセット内の増幅部へのサンプルの供給を概略的に示す平面図である。 図6に示される核酸検出カセット内の増幅部への第1洗浄液の供給及び検出部へのサンプルの供給を概略的に示す平面図である。 図6に示される核酸検出カセット内の検出部への第2洗浄液の供給を概略的に示す平面図である。 図6に示される核酸検出カセット内の検出部への挿入剤の供給を概略的に示す平面図である。
以下、図面を参照して実施の形態に係る核酸検査装置に核酸検出カセットを適用した例を詳細に説明する。
(核酸検査装置の概略構成)
図1は、実施の形態に係る核酸検査装置8のブロックを示している。この核酸検査装置8は、サンプルの増幅からサンプルの電気化学反応の検出までを完全に自動化可能に構成されている。核酸検査装置8は、液密に密閉された核酸検出カセット10と、この核酸検出カセット10と電気的に接続される測定部12、核酸検出カセット10内に設けられた流路系を外部から物理的に駆動制御する送液制御機構16及び核酸検出カセット10の各部を温度制御する温度制御機構14等を備える。核酸検出カセット10は、後に詳述するように、その内部にDNAチップ6が収納されている。このDNAチップ6上には、後に詳細に説明するように、サンプル等の溶液が流れる検出流路が設けられる。DNAチップ6上の検出流路は、例えばSNP(1)〜SNP(N)(一塩基多型:Single Nucleotide Polymorphism)を検出する為の検出用核酸プローブが電極に固定された作用電極が一定間隔で配列されている。また、検出流路には、これらの作用電極に対向されるような配置で少なくとも1つの対向電極及び参照電極が設けられている。図1に示す測定部12は、DNAチップ6に接続され、DNAチップ6内の作用電極及び対向電極間への入力電圧の印加に応じて参照極の電圧をフィードバック(負帰還)させる3電極方式のポテンシオ・スタットとして構成されている。従って、この測定部12によれば、核酸検出カセット10におけるセル内の電極、或いは、溶液などの各種条件の変動によらずに溶液中に所望の電圧を印加することができ、電気化学的反応による電流(以下において「電気化学的電流」と言う。)を電気化学的に測定することができる。
上述した測定部12、温度制御機構14及び送液制御機構16は、装置制御部18に接続され、装置制御部18は、インタフェース(図示せず)を介して核酸検査装置8外のコンピュータ4に接続されている。コンピュータ4からの動作指示等のコマンドに応答して、装置制御部18は、内蔵プログラムに従って測定部12、温度制御機構14及び送液制御機構16を制御している。装置制御部18は、送液制御機構16を制御してサンプル等の溶液を送液させ、温度制御機構14を制御してサンプル溶液の温度を制御してサンプルの電気化学反応を生じさせている。また、装置制御部18は、測定部12を制御してサンプルの電気化学反応を検出し、検出し検出信号を検出データとしてコンピュータ4に転送している。コンピュータ4では、転送された検出データを解析してサンプルのDNAを特定している。図1に示される核酸検査装置8は、サンプルの増幅からサンプルの電気化学反応の検出までを自動化し、サンプルが収納されている核酸検出カセット10の装着のみでサンプルのDNAのデータを獲得することができる。
(核酸検出カセットの基本構造)
図2に示すように、核酸検出カセット10は、矢印5に示す方向で核酸検査装置8に装着され、また、取り出される矩形カッセト形状の外観を有している。ここで、核酸検出カセット10は、核酸検査装置8に装着する際の向きを定める為に、その一部に切欠部22を設けている。図2に示す実施の形態では、装置への挿入(装着)方向5を基準に矩形核酸検出カセット10における前方右側のコーナが切欠されて切欠部22が設けられている。ユーザ(オペレータ)は、この切欠部22を先端側として確認することによって核酸検出カセット10を正しく核酸検査装置8に装着することができる。尚、このようにコーナを切欠する形態に限らず、他の箇所が切欠されて矩形核酸検出カセット10の上面が特定され、核酸検出カセット10の装着方向が特定されても良い。以下の説明において、核酸検出カセット10の切欠部22を先端側とする装着方向を基準に、先端側と反対側を後方と称し、核酸検出カセット10にキャップ20が取り付けられた面を上面と称する。
この核酸検出カセット10は、図3に分解して示すように、内部に流路を備える積層構造体である。核酸検出カセット10は、下部プレート30、パッキン40、上部プレート50、カバープレート60およびキャップ20から構成されている。下部プレート30は、硬質材料、例えば、ポリカーボネート等の硬質樹脂材料で作られ、DNAチップ6が収納されるチップ用窪み130が形成され、核酸プローブ固定化領域を含むように流路が形成される領域である流路形成部100Aの面が上面に向けられるようにDNAチップ6がこの窪み130に嵌め込み固定されている。下部プレート30には、DNAチップ6上に形成される検出流路100に連通される送液系の流路の為の溝132が形成され、また、送液系を定める為のシリンジ用窪み134およびタンク用窪み136が形成されている。
パッキン40は、弾性材料、例えばエラストマ等のゴム弾性材料で作られ、下部プレート30上に載置されている。このパッキン40には、下部プレート30の窪み134に対応して送液系を定める為の膨出部144、送液流路用貫通孔142及び縦長貫通溝146が形成されている。また、このパッキン40には、DNAチップ6の検出流路100を定める為の溝111が設けられている。更に、パッキン40には、液注入孔を定める為の開口突起141、143が設けられ、空気抜き孔を定める為の開口突起145、147が形成されている。更にまた、DNAチップ6の電極パッド部を外部からアクセスすることを可能にする為の縦長貫通溝149が形成されている。
上部プレート50は、硬質材料、例えば、ポリカーボネート等の硬質樹脂材料で作られ、パッキン40上に載置され、パッキン40が上部プレート50および下部プレート30間に加圧されて挟み込まれる。より詳細には、上部プレート50の下面には、複数のスタッドピン156、158が突出して設けられ、上部プレート50の周辺に配置されたスタッドピン156は、下部プレート30の周辺に設けた周辺スタッド孔138Aに直接に挿通される。また、パッキン40に対向するように上部プレート50に設けられたスタッドピン158は、パッキン40の中央部に設けられた挿通孔148を通って下部プレート30の上面に設けたスタッド孔138Bに挿通される。これらスタッドピン156、158の先端は、熱カシメされて抜け止めボスに変形されて下部プレート30に固定される。このスタッドピン156、158によって上部プレート50、パッキン40および下部プレート30が一体化されている。この構造においては、上部プレート50がパッキン40を加圧するように下部プレート30に固定されて、上部プレート50およびパッキン40間に液密な送液系が定められ、下部プレート30およびパッキン40間にも同様に液密な送液系が定められる。上部プレート50には、パッキン40に形成された膨出部144、貫通孔142および縦長溝146等に対応して縦長貫通溝154、貫通孔142に連通する溝(図示せず)および縦長貫通溝149に連通する縦長貫通溝159等が形成されている。また、上部プレート50には、パッキン40の開口突起141、143、145、147が挿通される貫通孔151、153、155、157が形成されている。
上部プレート50は、後方領域150および前方領域152に区分され、後方領域150および前方領域152がステップ169を介して連接されている。上部プレート50の後方領域150には、カバープレート60が取り外し不能に装着されている。カバープレート60は、硬質材料、例えば、ポリカーボネート等の硬質樹脂材料で作られ、キャップ20を嵌め込み可能な切欠部160が形成されている。この切欠部160にキャップ20が取り付けられている。カバープレート60には、上部プレート50の後方領域150に形成されている縦長溝154等に対応し、かつ仕切り165を有する縦長溝164が設けられている。
上部プレート50の後方領域150に対向するカバープレート60の下面周辺には、係合突起162が下方に向けて延出され、この係合突起162は、この係合突起162に対応して設けられた上部プレート50の挿通孔166を通して、下部プレート30に設けられた係合孔131に取り外し不能に係合されている。
(核酸検出カセット内の送液系)
核酸検出カセット内の送液系を図4、図5および図6を参照して説明する。図4は、核酸検出カセット10の内部に設けられる送液系を透視して示している。また、図5および図6は、図4に示す核酸検出カセット10内に形成される送液系の配置を示している。
図4に示すように核酸検出カセット10は、シリンジ部70、増幅部80および検出部90から構成され、その送液系は、シリンジ部70、増幅部80および検出部90を連通するように構成されている。シリンジ部70は、カバープレート60およびキャップ20で覆れ、上部プレート50の後方領域150に対応する核酸検出カセット10中に設けられている。増幅部80および検出部90は、上部プレート50の前方領域152に対応する核酸検出カセット10中に設けられている流路により構成される。
シリンジ部70には、サンプル溶液が入れられたサンプルシリンジ702、第1の洗浄液が充填された第1洗浄液シリンジ704、挿入剤が充填された挿入剤シリンジ706及び第2洗浄液シリンジ708が核酸検出カセット10の短辺方向に沿って配置されている。これらシリンジ702,704、706及び708は、核酸検出カセット10の長手方向に延出した筒状空間として形成され、この筒状空間は、夫々下部プレート30の窪み134をパッキン40の膨出部144で覆うことにより窪み134と膨出部144と間に定められる。
図4に示すようにサンプルシリンジ702は、サンプル液が流入される流路712を介してサンプル液を注入するサンプル注入孔710に連通され、また、空気抜き用の流路714を介して空気抜き開口716に連通されている。また、流路712は、サンプルシリンジ702の流入側で分岐され、常閉バルブ718に連通されている。第1洗浄液シリンジ704も流路724を介して第1洗浄液供給孔720に連通され、また、常閉バルブ728に連通されている流路722から分岐された流路を介して空気抜き開口726に連通されている。第1洗浄液は、第1洗浄液供給孔720から加圧されて第1洗浄液シリンジ704に供給され、第1洗浄液シリンジ704内の空気は、空気抜き開口726を介して外部に放出される。同様に、挿入剤シリンジ706も流路734を介して挿入剤供給孔730に連通され、また、常閉バルブ738に連通されている流路732から分岐された流路を介して空気抜き開口746に連通されている。挿入剤は、挿入剤供給孔730から加圧されて挿入剤シリンジ706に供給され、挿入剤シリンジ706内の空気は、空気抜き開口736を介して外部に放出される。更に、第2洗浄液シリンジ708も流路724を介して第2洗浄液供給孔740に連通され、また、常閉バルブ748に連通されている流路742から分岐された流路を介して空気抜き開口746に連通されている。第2洗浄液は、第2洗浄液供給孔740から加圧されて第2洗浄液シリンジ708に供給され、第2洗浄液シリンジ708内の空気は、空気抜き開口746を介して外部に放出される。ここで、第2洗浄液は、第1洗浄液と同一組成の洗浄液として用意されている。
ここで、シリンジ702、704、706および708は、その内部に充填されたサンプル溶液、洗浄液或いは試薬を保存するタンクとしての機能を有すると共にその内部に充填されたサンプル溶液、洗浄液或いは試薬を流路712、722、732、742に送り出すポンプの機能を有している。即ち、シリンジ702、704、706および708は、弾性を有する膨出部144によってその内部が空洞に形成され、検査装置8の送液制御機構16に設けられたシリンジロッドによって弾性を有する膨出部144を押し潰すことによって、その内部のサンプル溶液、洗浄液或いは試薬を流路712、722、732、742に送り出すことができる。また、常閉バルブ718、728、738、748は、シリンジ702、704、706および708内にサンプル溶液、洗浄液或いは試薬の保存を維持する機能を有し、検査が開始されると、これらの常閉バルブ718、728、738、748は、検査装置8の送液制御機構16に設けられたバルブロッドによって順次開放され、開放されたままに維持される。供給孔710、720、730、740および空気抜き開口716、726,736、746は、パッキン40に設けられた開口突起141、143、145、147で形成され、サンプル溶液、洗浄液或いは試薬をシリンジ702、704、706および708に外部から注入するために設けられている。供給孔720、730、740および空気抜き開口726、736、746は、洗浄液或いは試薬がシリンジ704、706および708に注入された後に、カバープレート60を上部プレートに取り付けられている。カバープレート60はパッキン40に設けられた開口突起141、147を圧縮変形して閉塞する。従って、洗浄液或いは試薬のシリンジ704、706および708への注入後、洗浄液或いは試薬が核酸検出カセット10外に漏れ出ることが防止される。また、サンプル注入孔710および空気抜き開口716は、サンプル溶液がサンプルシリンジ702に注入された後に、キャップ20によりパッキン40の開口突起143、145を圧縮変形して閉塞する。従って、サンプル溶液のサンプルシリンジ702への注入後、サンプル溶液が核酸検出カセット10外に漏れ出ることが防止される。
増幅部80には、入力ポート側および出力ポート側に常開バルブ810、820が設けられている。入力ポート側の常開バルブ810、820は、互いに直列に連通されている増幅流路812、816のうちの増幅流路812の始端側に接続され、出力ポート側の常開バルブ820は増幅流路816の終端側に接続されている。入力ポート側の常開バルブ810は、シリンジ部70の常閉バルブ718および728に共通に連結された流路802に接続されている。また、出力ポート側の常開バルブ820は、流路806に接続されている。シリンジ部70の常閉バルブ738および748は、流路804に共通に連結されている。更に、流路804および流路806は、共通接続されて検出部90の流路908に連通されている。ここで、出力ポートとは、下部プレートから上部プレートへと出るポートであり、入力ポートとは、上部プレートから出て下部プレートへと戻るポートである。
図4の実施形態の増幅部を図7に拡大して示す。そこに示されるように、各増幅流路812、816のパターンは、流路長を大きくする為のメアンダー流路がU字状に折り返された形態に形成されている。そして、このU字状のメアンダーパターン(meander pattern)を有する増幅流路812、816は、両者間の中心軸818に関して線対称に配置されて両者が一方向流通路を形成するように連通されている。増幅流路812、816が対称パターンを有することから、検査装置8内に設けられた温度制御機構14のヒータは、増幅流路812、816を比較的に均一に加熱するように設計することができる。
各増幅流路812、816には、ウェル830が流路に沿って一定長以上の間隔を空けるように配置されている。図7に示した例では、メアンダー状の増幅流路812、816において、略一定の流路長を空けてウェル830が配置されることから、増幅部80内に複数のウェル830が直線上に点在して配置されている。ウェル830が直線上に点在して配置されることから、同様に、温度制御機構14のヒータは、これらのウェル830を比較的に均一に加熱するように設計することができる。
増幅部80内には、複数のウェル830が設けられ、この複数のウェル830には、ウェル毎に互いに異なる種類のプライマーセット832が遊離可能に固定されている。増幅部80内に1又は複数のサンプルDNA(塩基配列)を含むサンプル溶液が供給されると、固定されたプライマーセット832がサンプル溶液中に遊離する。そして、この増幅部80が温度制御機構14のヒータによって加熱されると、複数のサンプルDNAは、複数種類のプライマーセット832によりマルチ増幅される。ここで、各ウェル830には、目的とする1種類のサンプルDNAを増幅するために必要な複数のプライマーにより構成される1種類のプライマーセットが固定されている。このサンプルDNAの増幅に際しては、増幅部80の入力ポート側の常開バルブ810及び出力ポート側の常開バルブ820は、検査装置8内に設けられたバルブロッドで閉鎖される。従って、サンプルDNAの増幅時に増幅部80に与えられる熱によって、膨張されるサンプル溶液が増幅部80の入力ポート或いは出力ポート外の流路802、806に流出して試薬等に混合されるような事態を防止することができる。
このサンプルDNAの増幅に際しては、増幅部80の入力ポート側の常開バルブ810および出力ポート側の常開バルブ820は、検査装置8内に設けられたバルブロッドで閉鎖される。従って、サンプルDNAの増幅時に増幅部80に与えられる熱によって、膨張されるサンプル溶液が増幅部80の入力ポートおよび出力ポートより外側の流路802、806に流出して試薬等に混合されるような事態を防止することができる。
検出部90には、図8に拡大して示すDNAチップ6が配置されている。DNAチップ6には、1対のU字状の流路を連通した検出流路100が設けられている。この検出流路100には、パッキン40に互いに連通する1対のU字状の溝111が設けられている。溝111がDNAチップ6上の検出流路100に重ね合わされ、パッキン40がDNAチップ6に液密に密着されることによって、DNAチップ6とパッキン40との間に検出流路100が定められる。この検出流路100は、DNAチップ6上の入力ポート910および出力ポート914に連結されている。図6に示すように入力ポート910は、流路922を介して出力ポート912に接続され、出力ポート912には、流路908の終端が連結されている。また、出力ポート914は、流路924を介して入力ポート916に接続されて、入力ポート916には流路926の始端が連結されている。従って、増幅部80での増幅反応により生じた増幅産物を含むサンプル溶液は、増幅部80から流路806、908、出力ポート912、流路922および入力ポート910を介してDNAチップ6の検出流路100に流入される。
上述した流路構成において、第1洗浄液シリンジ704に充填された第1洗浄液を増幅流路812、816に送液することにより、増幅産物を含むサンプル溶液が増幅流路812、816から押し出されてDNAチップ6の検出流路100に流入される。図6に示すように、この後、シリンジ706および708に充填された挿入剤および第2洗浄液を夫々流路732および流路742を介して流路804に供給する。流路804に供給された挿入剤或いは第2洗浄液は、流路908、出力ポート912、流路922および入力ポート910を介してDNAチップ6の検出流路100に流入される。
特に、増幅産物を含むサンプル溶液は第1洗浄液の送液で増幅部80の増幅流路812、816を介して流路804が合流される流路908に押し出されてDNAチップ6の検出流路100に流入されている。第1洗浄液の送液は、サンプル溶液を確実に増幅部80の増幅流路812、816からDNAチップ6の検出流路100に送液することができる。しかも、挿入剤および第2洗浄剤が流入する流路804は、増幅流路812、816とは、分離され、流路908で合流されている。従って、挿入剤および第2洗浄剤が増幅流路812、816を介さず検出流路100に流入され、挿入剤が増幅部80のサンプル溶液と混ざることを回避し、同時に増幅部80における残余の熱で加熱されることも防止される。
検出部90には、DNAチップ6からの廃液を溜める廃液タンク930および補助廃液タンク932が設けられている。廃液タンク930は、DNAチップ6の出力ポート914、流路924、入力ポート916および流路926を介して連通されている。また、廃液タンク930は、流路926を介して補助廃液タンク932に連通されている。補助廃液タンク932には、好ましくは、補助廃液タンク932内の空気を排気するための排気孔934が設けられ、DNAチップ6から廃液が廃液タンク930に流入した際に補助廃液タンク932内の空気が排気される。
第2洗浄液が第2洗浄液シリンジ708から送液されると、検出流路100内の未反応サンプルは、この第2洗浄液によって検出流路100から廃液として押し出され、廃液タンク930に流入される。その後、挿入剤が挿入剤シリンジ706からから送液されると、検出流路100内の第2洗浄液は、この挿入剤によって検出流路100から廃液として押し出され、廃液タンク930に同様に流入される。
ここで、一連の検査工程で生ずる廃液は、廃液タンク930に流入されてその内に留められ、補助廃液タンク932には、殆ど流入することがないか、或いは、僅かな廃液が流路926を介して流入するにすぎない。しかも、供給孔710、720、730、740および空気抜き開口716、726、736、746は、サンプル溶液がサンプルシリンジ702に注入された後には、閉塞され、これら供給孔710、720、730、740および空気抜き開口716、726、736、746と補助廃液タンク932の排気孔934との間の送液系は、液密に維持されている。従って、一連の検査工程で送液系が加熱されたとしても、廃液が補助廃液タンク932の排気孔934から漏れ出るような事態を防止することができる。
これら廃液タンク930、932は、下部プレート30に形成された窪み136、パッキン40の縦長溝146および上部プレート50の裏面に形成した窪み136に対応する窪み(図示せず)で定められる縦長の空間として形成される。特に、廃液タンク930は、シリンジ702、704、706および708から押し出されたサンプル溶液、第1洗浄液、挿入剤および第2洗浄液の全てを受け入れることができる容積を有することが好ましい。
上述した送液系における流路712、714、722、724、732、734、742、744、802、804、806、908、926は、下部プレート30に形成された溝132をパッキン40で覆うことによって溝132とパッキン40の平坦な下面との間に定められている流路である。同様に、増幅流路812、816も下部プレート30に形成されたウェル830を有するメアンダー状の溝132をパッキン40で覆うことによって溝132とパッキン40の平坦な下面との間に定められている流路である。DNAチップ6の検出流路100は、ガラス製或いはシリコン製の平坦な基板にU字状流路が電極配列で定められる。この基板上のU字状流路がパッキン40に設けたU字状の溝111に位置合わせされ、平坦な基板をパッキン40で覆うことによって検出流路100がパッキン40のU字状の溝と基板の平坦な上面との間に定められる流路である。
DNAチップ6のポート910および914は、パッキン40に穿けられた貫通孔(符号910および914に相当する。)に対応している。また、流路908の出力ポート912および流路926の入力ポート916もパッキン40に穿けられた貫通孔(符号912および916に相当する。)に対応している。そして、出力ポート912およびポート910間の流路922並びに入力ポート916およびポート914間の流路924は、上部プレート50の下面に形成された溝(図示せず)をパッキン40で覆うことによって、この溝とパッキン40の平坦な上面との間に定められる。従って、DNAチップ6のポート910および914に至る流路は、DNAチップ6の上面側で連通される。DNAチップ6のポート910および914では、上部プレート50が下部プレート30に向けて押し付けられ、パッキン40で両者間が液密とされている。それ故、DNAチップ6が硬質の基板構造であっても、DNAチップ6がパッキン40に密着された状態に維持され、DNAチップ6の検出流路100が下部プレート30とパッキン40との間に形成される送液系流路に確実に連通される。DNAチップ6の検出流路100が加熱されてもDNAチップ6の検出流路100からサンプル溶液等が漏れ出すことが防止される。
(DNAチップ)
DNAチップ6について、図3および図9を参照しながら説明する。図3に示すように、DNAチップ6は、パッキン40の背面の溝111によってガラス製或いはシリコン製の基板の平坦面上の流路形成部100Aを覆うように定められる検出流路100およびこの検出流路100の両側に配置された電極パッド領域110、112を有している。この検出流路100には、図9に示すように、一定間隔で作用電極940が設けられている。また、電極パッド領域110、112には、電極パッド942が配列され、この電極パッド942が夫々対応する作用電極940に電気的に接続されている。また、検出流路100のU字形の頂部には、参照電極944および対向電極946、948が設けられ、夫々対応する電極パッド942に接続されている。図9においては、図を簡略化する目的から、電極パッド942と作用電極940、参照電極944および対向電極946、948との間の結線を省略している。
作用電極940は、検出されるべき核酸の塩基配列に相補的な配列を含む核酸プローブ、例えば、SNP(1)〜SNP(N)(一塩基多型:Single Nucleotide Polymorphism)を検出する為の核酸プローブが、電極、例えば、金電極に種類毎に固定されて構成されている。核酸プローブは、作用電極940毎に種類毎に複数本固定されている。加熱下において、サンプル溶液中に相補的な塩基配列(即ち、ターゲットDNA)があると、それは固定された核酸プローブに対してハイブリダイゼーション反応によって結合される。ハイブリダイゼーション反応によって結合されなかった未反応のサンプル溶液は、上述したように第2の洗浄液によって検出流路100から押し出されて除去され、作用電極940が第2の洗浄液で洗浄される。その後、挿入剤が検出流路100に供給されて第2の洗浄液が除去される。作用電極940が挿入剤中に浸漬された状態で、作用電極940および対向電極946、948間に一定の電圧が印加される。ここで、挿入剤は、作用電極940上にハイブリダイゼーション反応により生じた2本鎖部分を認識してそこに入り込み、電気化学的に活性化する物質を含む。電圧の印加に起因して、ハイブリダイゼーション反応により2本鎖となった核酸プローブの固定されている作用電極940からは、信号電流が検出される。この信号電流は、上述の図1に示す測定部12に含まれる電流プローブが電極パッド942に物理的に接触されて検出される。検出された電流は、増幅されて測定部12のバッファに格納され、外部のコンピュータ4で検出データとして出力される。
ここで、参照電極944は、作用電極940及び対向電極946、948間の印加電圧をモニタし、帰還回路を介して作用電極940及び対向電極946、948間の印加電圧を一定にする作用を有している。
(核酸検出カセットの上面構造)
再び図2を参照し、また、新たに図9を参照して核酸検出カセット10の上面構造について、より詳細に説明する。図9は、図2に示す核酸検出カセット10からカバープレート60が取り外された外観を示している。
図2及び図3を参照して説明したように、核酸検出カセット10の後方領域150には、矩形核酸検出カセット10に嵌め込み固定されたカバープレート60が設けられ、このカバープレート60には、キャップ20が装着されている。このキャップ20は、矩形上面平坦部21及びこの上面平坦部21から核酸検出カセット10の後方側面に沿って延出する側部23を有するL字形に形成されている。また、キャップ20を開閉する為の軸部25が平坦部21の側部に設けられ、側部23には、下部プレート30の係合溝(図示せず)に係合固定される係合部27が設けられている。カバープレート60には、キャップ20の平坦部21を受容する切欠部160が形成され、また、キャップ20の軸部25を軸支するための軸支孔(図示せず)が平坦部21の切欠部側面に形成されている。軸部25を支点としてキャップ20が閉じられると、キャップ20の矩形上面平坦部21がカバープレート60の上面に連接して略平坦な面を核酸検出カセット10に与えるようにキャップ20が核酸検出カセット10に嵌め込まれる。この嵌め込みに際しカバープレート60にキャップ20を押し付けると、キャップ20の係合部27が下部プレート30の係合溝(図示せず)に係合される。その結果、キャップ20が下部プレート30に取り外し不能に固定される。サンプル溶液がサンプル注入孔710を介してサンプルシリンジ702内に注入された後に、キャップ20が嵌め込み装着されると、キャップ20の下面でサンプル注入孔710及び空気抜き開口716が圧接変形されてサンプル注入孔710及び空気抜き開口716が閉塞される。従って、核酸検出カセット10は、液密に密閉され、サンプルの増幅或いはサンプルの電気化学反応の検出において、核酸検出カセット10が加熱されても核酸検出カセット10から外部にサンプルが漏れ出ることが防止される。
このように核酸検出カセット10にサンプルを充填する前においては、キャップ20は、軸部25でカバープレート60に軸支されたまま、カバープレート60に対して開放され、軸部25の周りに回動可能に維持された状態で取り付けられている。核酸検出カセット10にサンプルが充填された後においては、上述したように、キャップ20が核酸検出カセット10に取り外し不能に固定される。キャップ20の核酸検出カセット10への取り外し不能な固定は、ユーザに対して核酸検出カセット10へのサンプルの収納が成されていること明示することとなり、再度サンプルを誤って核酸検出カセット10へ注入するような事態を防止することができる。
カバープレート60には、核酸検出カセット10の幅方向に沿って縦長溝164が並列して配置され、その内部には、シリンジ702、704、706、708が縦長溝164内に膨出するように設けられている。また、カバープレート60には、核酸検出カセット10の幅方向に沿ってT字形窪み41、42、44、46が設けられ、この窪み41、42、44、46の背後に常閉バルブ718、728、738、748の片持ちはり構造が設けられている。送液制御機構16のバルブロッドによってカバープレート60背面側からこの片持ちはり構造が開放操作されると、この窪み41、42、44、46の背後の常閉バルブ718、728、738、748が開放される。シリンジ702、704、706、708が配置される縦長溝164は、指が入り込まないような幅を有し、また、縦長長が大きな縦長溝164には、図2に示すように仕切り165が設けられて長手方向における指の進入を防止するようにしている。
尚、図2に示す核酸検出カセット10は、カバープレート60が設けられた上部プレート50及び下部プレート30の幅方向の両側面に滑り止め用の凹凸溝139が設けられ、ユーザが確実に核酸検出カセット10を把持することを可能としている。
図2に示す核酸検出カセット10のカバープレート60は、図3に示すようにカバープレート60の上面がこの前方領域152に面一となるように上部プレート50に取り付け固定される。上部プレート50の前方領域152には、増幅部領域を固定する為に矩形状の窪み51が形成され、この窪み51の両側に常開バルブ810、820を操作するロッド穴52、54が設けられている。このロッド穴52、54に送液制御機構16のバルブロッドが挿入されて常開バルブ810、820にその先端が押し付けられることによって常開バルブ810、820が開放される。また、DNAチップ6の電極パッドが配列された電極パッド領域110、112に電流プローブを装着する為の縦長なプローブ孔56、58が上部プレート50の前方領域152に並列して形成されている。
カバープレート60が取り外されて露出される、上部プレート50の後方領域150には、パッキン40に設けられた第1洗浄液供給孔720、挿入剤供給孔730、第2洗浄液供給孔740の為の開口突起141の先端および空気抜き開口726、736、746の為の開口突起147の先端が露出されている。核酸検出カセット10の製造工程では、図9に示すようなカバープレート60が取り外された状態で、第1洗浄液供給孔720を介して第1洗浄液が第1洗浄液シリンジ704に注入され、挿入剤供給孔730を介して挿入剤が挿入剤シリンジ706に注入され、第2洗浄液供給孔740を介して第2洗浄液が第2洗浄液シリンジ708に注入される。その後、カバープレート60が上部プレート50の後方領域150に取り外し不能に取り付け固定される。この取り付け固定に際しては、カバープレート60の下面が開口突起141および開口突起147に押し付けられ、開口突起141および開口突起147がカバープレート60の下面に圧接される。従って、カバープレート60が上部プレート50に取り付けられると、第1洗浄液供給孔720、挿入剤供給孔730、第2洗浄液供給孔740および空気抜き開口726、736、746が閉塞される。
(シリンジの構造)
シリンジ部70における4つのシリンジ702、704、706、708の構造を前述した図4および図10〜図14を参照して詳細に説明する。
サンプルシリンジ702、第1洗浄液シリンジ704、挿入剤シリンジ706および第2洗浄液シリンジ708は、図12に示すように核酸検出カセット10の幅方向に左から右に向かってこの順序で形成されている。各シリンジ702、704、706、708は、それぞれ図10図に示す硬質材料で作られる下部プレート30の細長状の窪み134を図11に示す弾性材料で作られるパッキン40の細長状の膨出部144で覆うことにより、窪み134と膨出部144と間に定められた、核酸検出カセット10の長手方向に延出した筒状空間709を有する。
サンプルシリンジ702へのサンプル液の注入、第1洗浄液シリンジ704への第1洗浄液の供給、挿入剤シリンジ706への挿入剤の供給、および第2洗浄液シリンジ708への第2洗浄液の供給の動作は、前述した核酸検出カセット10内の送液系で説明した通りである。
前記構成のシリンジ702、704、706、708の筒状空間709に充填されたサンプル溶液、洗浄液或いは試薬は、図12に示すように検査装置8の送液制御機構16を用いて送出される。すなわち、送液制御機構16にはそれぞれ4つのロッド保持部749が取り付けられ、このロッド保持部749の先端にシリンジロッド750が設けられている。シリンジロッド750の先端面は、細長状で幅方向と奥行方向に沿う両端部とがそれぞれ凸状に湾曲した形状を有する。図13に示すようにシリンジロッド750の先端をカバープレート60の縦長溝164および上部プレート50の縦長溝154を通してシリンジ702(または704、706、708)の弾性材料で作られる膨出部144に当接させる。その後、図14に示すようにシリンジロッド750を膨出部144に対して荷重を加え、膨出部144を押し潰すことにより、筒状空間709に充填されたサンプル溶液、洗浄液或いは試薬を前述した図4に示すように流路712,722,732、742に送出することができる。
このようなシリンジロッド750によりシリンジ702(または704、706、708)の膨出部144を押し潰すに際し、核酸検出カセット10の薬液の有効活用(薬液コストの最小化)のために送液後のシリンジ702(または704、706、708)内の液残りを最小化することが要望されている。
しかしながら、シリンジロッド750でシリンジ702(または704、706、708)の膨出部144を押し潰す際、シリンジの筒状空間内での液残りの最小化を重視すると、膨出部144への圧縮荷重の増大、位置ずれマージンの低下を生じる。
事実、図13に示すシリンジ幅WBを4.0mm、シリンジロッド幅WRを3.0mm、膨出部の膜厚tEを0.5mmに設定した。シリンジ内に試薬を200μL注入し、満充填した。その後、シリンジロッドを液残り量が5〜8μLになるようにシリンジのエラストマ(硬度:60)から作られた膨出部に荷重を加えて押し潰す操作を10回繰り返す試験を行ってシリンジロッドによる荷重を計測した。その結果、図15の(A)に示す。
図15の(A)に示すように1.0kgf前後の高い荷重を加える必要があり、その上荷重が1.0kgf前後にばらついて位置ずれマージンが低下する問題を生じる。このような問題は、押し潰される弾性材料部材が平坦ではなく、図13に示すように下部プレート30の細長状の窪み134に対して反対方向に突出させて膨出させた形状を有するためである。
なお、「シリンジ幅WB」とは図13に示すようにシリンジを構成する細長状の窪み134の開口部の幅方向の長さを意味する。
実施形態は、前述した膨出部144を有するシリンジ702(または704、706、708)において、シリンジ幅をWB、シリンジロッド幅をWR、膨出部の膜厚をtEとすると、当該シリンジ幅WBが次式:
R+3tE≦WB≦WR+4tE… (1)
の関係を満たすように設定している。ここで、膨出部の膜厚はカセット寸法にもよるが、0.1〜1.0mmにする好ましい。このようにシリンジ幅WBを設定することによって、核酸検出カセット10の薬液の有効活用(薬液コストの最小化)のために送液後のシリンジ内の液残りを最小化することができる。
事実、以下の実験によりシリンジロッドによる液残りの最小化を達成できることを確認した。
(実験1)
シリンジロッド幅WRを3.0mm、膨出部の膜厚tEを0.5mmに固定(一定に)し、シリンジ幅WBを4.0mm、4.5mm、5.0mmおよび5.5mmに変化させた(例11〜14)。シリンジ内に試薬を200μL注入し、満充填した。その後、シリンジロッドを1kgfの力で1mm/sの速度でシリンジのエラストマ(硬度:60)から作られた膨出部に荷重を加えて押し潰し、シリンジに接続されている流路からシリンジ内の試薬を押し出した。シリンジロッドが停止した後にシリンジ内に残った試薬の液量を計測した。この計測は、各シリンジ幅WBについて5回行った。その結果を下記表1に示す。
Figure 0006855155
前記表1から明らかなようにシリンジロッド幅WRを3.0mm、膨出部の膜厚tEを0.5mmと一定とし、シリンジ幅WBが前記式(1)を満たすように設定した例12,13ではシリンジ幅WBが前記式(1)から外れる例11,14に比べてシリンジ内の液残り量を顕著に低減できることがわかる。特に、例14,13,12に示すようにシリンジ幅WBを狭くすることによって液残り量は減少する。しかしながら、例11に示すようにシリンジ幅WBを狭くし過ぎると、逆に液残り量が大幅に増加することがわかった。これはシリンジ幅WBが狭くなり、シリンジロッドとの間にズリ荷重が発生し、シリンジロッドが最後までシリンジの弾性材料から作れる膨出部を押し潰すことができないことに起因している。
(実験2)
シリンジロッド幅WRを3.0mm、膨出部の膜厚tEを0.5mmとし、シリンジ幅WBが前記式(1)を満たすように4.5mm、に設定した。シリンジ内に試薬を200μL注入し、満充填した。その後、シリンジロッドを液残り量が5〜8μLになるようにシリンジのエラストマ(硬度:60)から作られた膨出部に荷重を加えて押し潰す操作を10回繰り返す試験を行ってシリンジロッドによる荷重を計測した。その結果、図15の(B)に示す。
図15の(B)から明らかなように約0.6kgfと低い荷重に集中して位置ずれマージンを向上できることが分かった。
なお、シリンジロッド750の先端をシリンジ702(または704、706、708)の弾性材料で作られる膨出部144に当接させる際、前述したようにカバープレート60の縦長溝164および上部プレート50の縦長溝154を通過させる。カバープレート60の縦長溝164の中で、容積の大きい挿入剤シリンジ706および第2洗浄液シリンジ708に対応する縦長溝164は前述した図2および図3に示すように仕切り165が縦長溝164の長さ方向に沿う中間に設けられ、長手方向における指の進入を防止するようにしている。縦長溝164の仕切りに対応して、図16に示すようにシリンジロッド750の長さ方向に仕切り165より大きい幅のスリット751を設けている。このようなシリンジロッド750をカバープレート60の縦長溝164を通過させる際、前記仕切り165がシリンジロッド750のスリット751内を通るため、シリンジロッド750を膨出部144に円滑に押し込むことができる。
実施形態において、図17に示すようにシリンジロッド750の先端面の長手方向に沿って例えば2つの突起部753を設けてもよい。このような構成によれば、シリンジロッド750によるシリンジ702(または704、706、708)の膨出部144に荷重を加える際に、シリンジロッド750と膨出部144の接触面積を前記突起部753により小さくできる。その結果、シリンジロッド750による膨出部144への荷重を低減できる。
(常開バルブの構造)
増幅部80には、既に説明したように、増幅流路812、816の入力ポート側及び出力ポート側には、常開バルブ810、820が設けられている。この常開バルブ810、820は、図18及び図19に示すように上部プレート50のロッド穴52、54内に可撓性パッキン40の筒状部55として形成されている。パッキン40には、上部プレート50のロッド穴52、54に一致される窪み57が形成され、その窪み57内に筒状部55が配置されている。筒状部55とこの筒状部55が配置される下部プレート30の上面との間に常開バルブ810、820の為の空洞部(流路)が形成され、この空洞部は、流路802及び増幅流路812或いは増幅流路816及び流路806を連通している。この構造から明らかなように、筒状部55は、窪み57内にパッキン40と一体に形成されていることから、パッキン40の膜厚T1よりも十分薄く、より好ましくは、膜厚T2(T1>T2)よりも薄く形成される。ここで、膜厚T1は、凸部領域及び凹部領域で形成されるパッキン40の凸部領域膜厚に相当し、膜厚T2は、凹部領域膜厚に相当している。従って、図20に示すように筒状部55の内部に設けた空洞部を外部から挿入されたロッド59で押し潰すことができ、筒状部55を押し潰すことで空洞部を閉塞することができる。空洞部を閉塞によって、流路802と増幅流路812との間の流路或いは増幅流路816と流路806との間の流路が遮断される。また、筒状部55が可撓性を有することから、増幅部80が加熱されてサンプル内のターゲットDNAが増幅された後に、ロッド59を退避することによって、押し潰された筒状部55を再びその内に空洞が形成させるような原形状の筒状部に戻すことができる。従って、この筒状部55内の空洞を介して流路802及び増幅流路812或いは増幅流路816及び流路806を連通させることができる。
(常閉バルブ構造)
常閉バルブ718、728、738、748は、図20に示される常開バルブがカバープレート60の裏面に設けた突起部43によって閉塞されて構成されている。より詳細には、常閉バルブ718、728、738、748は、突起部43が上部プレート50に設けた貫通孔を介してパッキン40に設けた溝に進入され、この溝内の可撓性筒状部を押し潰して筒状部の流路を閉塞するように構成される。カバープレート60の裏面に設けた突起部43は、基部がカバープレート60に枢支固定され、基部から延びる舌片が可動可能にカバープレート60に切欠支持された片持梁構造に形成される。常閉バルブ718、728、738、748の開放時には、片持梁構造の舌片がロッドで持ち上げられて突起部43が筒状部から取り除かれて筒状部に流路が確保されることによって開放される。
(パッキンの構造)
図21を参照してパッキン40の構造を説明する。図21は、パッキン40の背面形状を示している。パッキン40の背面では、膨出部144が窪みとして示され、開口突起141、143、145、147に相当する箇所には、貫通孔141A、143A、145A、147Aが空けられている。また、パッキン40には、上部プレート50の下面に設けたスタッドピン158が挿入される挿通孔148が穿けられている。そして、パッキン40の背面は、流路系に対応して凹凸の領域を有する形状に形成されている。パッキン40の背面の凸部領域は、比較的厚い膜厚T1を有し、凸部領域間の凹部領域は、膜厚T1に比べて薄い膜厚T2を有している。具体的には、シリンジ702、704、706および708を定める膨出部144の周囲を囲むように、厚い膜厚T1を有するフレーム部144Bがパッキン40の背面に形成されている。貫通孔141A、143A、145A、147Aの周囲も、膜厚T1を有するリング状突出部141B、143B、145B、147Bに形成されている。また、下部プレート30の窪み136と共にタンク930、932を定める縦長貫通溝146の周囲にも、厚い膜厚T1を有するフレーム部146Bが形成されている。更にまた、流路712、714、722、724、732、734、742、744、802、804、806、908、926を定める、下部プレート30の溝132が密着される帯状の領域712B、714B、722B、724B、732B、734B、742B、744B、802B、804B、806B、908Bも、厚い膜厚T1を有するように形成されている。従って、下部プレート30が膜厚T1を有する領域に液密に密着され、送液系の液密な密閉を確実に確保することができる。
増幅部80の増幅流路812、816に対応するパッキン40の矩形領域812B、814Bも、増幅部80の増幅流路812、816を覆うことができる矩形の平坦領域に形成され、この平坦領域も周辺領域の膜厚T2に比べて厚い膜厚T1を有している。従って、下部プレート30に形成された増幅部80の増幅流路812、816も下部プレート30が膜厚T1を有する領域に液密に密着され、増幅流路812、816の液密な密閉を確実に確保することができる。この液密な密閉は、増幅部80の加熱に対しても十分に耐えることができる。
更にまた、DNAチップ6の検出流路100に相当するパッキン40の流路形成領域100Bには、互いに連結された一対のU状の貫通溝102が形成されている。このパッキン40の流路形成領域100Bの貫通溝102がDNAチップ6の検出流路100を形成するようにパッキン40がDNAチップ6の平坦な基板に密着される。ここで、作用電極940、参照電極944および対向電極946、948は、溝102内に配置されるようにパッキン40がDNAチップ6に対して位置合わせされて両者が密着される。パッキン40の流路形成領域100Bは、同様にその周辺の領域の膜厚T2に比べて厚い膜厚T1を有している。従って、下部プレート30が膜厚T1を有するパッキン40の流路形成領域100Bに密着されると、DNAチップ6上に検出流路100を液密に形成することができる。
また、上部プレート50がパッキン40を介して下部プレート30に圧着された際に、可撓性を有するパッキン40が変形されるが、その変形に伴う厚み変化は、凸部領域から凹部領域へのはみ出しによって吸収される。
シリンジ702、704、706および708を定めるフレーム部144Bは、上述したように厚い膜厚T1を有しているが、より好ましくは、フレーム部144B間の領域には、パッキン40を貫通するスリット144Cが形成される。このスリット144Cは、上部プレート50がパッキン40を介して下部プレート30に圧着された際の可撓性を有するパッキン40の変形を確実に許容し、パッキン40に生ずる歪みを除去し、下部プレート30とパッキン40との密着をより確実にすることができる。また、パッキン40の変形に伴う厚み変化を吸収するためにシリンジ702、704、706および708の外周に設けられる膜厚T2を有する領域(薄膜領域)は、必要に応じて切除され、除去されても良い。
同様に増幅流路812、816に対応するパッキン40の領域812B、814B間およびその両側にもスリット或いは貫通孔812C、816Cが設けられることが好ましい。このスリット或いは貫通孔812C、816Cは、密着時におけるパッキン40に生ずる歪みを除去することができる。
スタッドピン158が挿入される挿通孔148は、好ましくは、パッキン40の変形を吸収する為にスタッドピン158の径よりも大径に形成され、その周囲は、膜厚T2を有する筒状に形成されている。スタッドピン158が熱カシメによって上部プレート50が下部プレート30に圧着された際に、挿通孔148の筒状部が変形されて挿通孔148内に入り込み、確実にスタッドピン158を保持し、上部プレート50を下部プレート30に確実に固定することができる。
(核酸検出カセットの組み立て)
図22、図23及び図24を参照して図2に示す核酸検出カセットの組み立て工程について説明する。
始めに図22に示すように、上部プレート50の下面が上方に向けられて配置され、この上部プレート50の下面に取り付けられるパッキン40が用意される。上部プレート50の下面に設けたスタッドピン158がパッキン40に設けられた挿通孔148に挿入されて図23に示すように上部プレート50の下面にパッキン40が載置される。ここで、上部プレート50の外周に設けられたスタッドピン156は、図23に示すようにパッキン40の周囲に配置される。
次に、図23に示す上部プレート50とパッキン40の組み立て体が裏返されて、図24に示すように、DNAチップ6が載置された下部プレート30の上面上にパッキン40および上部プレート50が載置される。組み立て体のスタッドピン156、158が下部プレート30のスタッド孔138に挿通される。その後、スタッドピン156、158の先端を下部プレート30に熱カシメすることにより上部プレート50、パッキン40および下部プレート30が一体化される。
(検査装置)
図25は、図2に示される核酸検出カセット10が装着される検査装置の内部構造を示している。この検査装置内には、装着された核酸検出カセット10の背面側に、増幅部80を加熱する為のヒータ850およびDNAチップ6の検出流路100を反応温度に維持する為のペルチェ素子852が夫々リフト機構854,856によって矢印で示すように上下動可能に設けられている。ヒータ850およびペルチェ素子852並びにリフト機構854,856は、図1に示す温度制御機構14を構成している。
また、核酸検出カセット10の上面側に、DNAチップ6の電極パッド領域110、112内の電極パッド942に電気的に接続されて検出電流を取り出す電流プローブ960が上下動可能に設けられている。この電流プローブ960は、信号処理の為のプロセッサを含む回路基板962に電気的に接続され、図1に示す測定部12を構成している。
更に、核酸検出カセット10の上面側には、シリンジ702、704、706、708からサンプル溶液、洗浄液或いは挿入剤を送り出すためのシリンジロッド750が設けられ、また、常開バルブ52、54を閉じる為の常開バルブロッド59が設けられている。核酸検出カセット10の下面側には、常閉バルブ718、728、738および748を開放する為の常閉バルブロッド752が設けられている。これらシリンジロッド750、常開バルブロッド59および常閉バルブロッド752は、送液制御機構16を構成している。
これら測定部12、温度制御機構14および送液制御機構16を構成する各部は、制御部18に格納されたプログラムによって制御されて図15に示されるサンプルの電気化学的な検査が実行される。
(サンプルの電気化学的検査)
図26に示されるフローチャートおよび図27から図30に示される送液動作を参照して、図1に示される核酸検査装置におけるサンプルの電気化学的検査を説明する。
核酸検出カセット10の製造時に、第1洗浄液シリンジ704に第1洗浄液が充填され、挿入剤シリンジ706に挿入剤が充填され、第2洗浄液シリンジ708に第2洗浄液が充填されて核酸検出カセット10が用意される。その後、ユーザ(オペレータ)がサンプル溶液をサンプルシリンジ702に注入する。その後、核酸検出カセット10が核酸検査装置8に装着されて検査が開始される(ステップS10)。サンプル溶液のサンプルシリンジ702への注入に際しては、ユーザ(オペレータ)が核酸検出カセット10を把持し、マイクロシリンジや医療用シリンジ等を利用してサンプル注入孔710にサンプル溶液が注入される。サンプルシリンジ702へのサンプル溶液の注入が完了すると、核酸検出カセット10にキャップ20が取り付けられる。キャップ20は、核酸検出カセット10に取り外し不能に取り付けることによりサンプル注入孔710および空気抜き開口716が閉塞される。
核酸検出カセット10が検査装置8に装着されると、電流プローブ960が核酸検出カセット10に向けて降下され、DNAチップ6の電極パッド領域110、112内の電極パッド942に電気的に接触され、検出流路100における反応電流の検出が可能になる。
検査が開始されると、始めに、常閉バルブロッド752がサンプルシリンジ702に連通されている常閉バルブ718に押し付けられ、この常閉バルブ718が開放される。その後、サンプルシリンジ702がシリンジロッド750で押し潰され、その内部のサンプル溶液が図16に示されるように、流路802を介して増幅流路812、816に供給される(ステップS12)。増幅流路812、816がサンプル溶液で満たされると、常開バルブロッド59が常開バルブ810、820を押し潰してこのロット孔52、54を閉鎖する。また、ヒータ850が核酸検出カセット10の増幅部80に押し付けられて増幅部80の増幅流路812、816がヒータによって加熱され、一定温度に維持される。従って、閉塞された増幅流路812、816内で、サンプル溶液に含まれる複数種類のターゲットDNAは、増幅流路812、816の壁面から遊離した対応する複数種類のプライマーセットによってマルチ増幅される(ステップS14)。
次に、常開バルブロッド59が常開バルブ810、820から離れて元の位置に戻ることにより、この常開バルブ810、820が再び開放される。つづいて、常閉バルブロッド752が第1洗浄液シリンジ704に連通される常閉バルブ728に押し付けられ、この常閉バルブ728が開放される。その後、第1洗浄液シリンジ704がシリンジロッド750で押し潰されてその内部の第1洗浄液が図17に示されるように、流路802を介して増幅流路812、816に供給される。このとき、増幅流路812、816内の増幅産物を含むサンプル溶液は、流路806、908、922を介して検出部90の検出流路100に供給される(ステップS16)。ここで、第1洗浄液が流路722内の空気を押し出して増幅産物を含むサンプル溶液を増幅流路812、816から検出流路100に送液している。従って、増幅産物を含むサンプル溶液と第1洗浄液とは、空気層を介して接することとなり、互いに混じり合うことなく、流路802、増幅流路812、816内を送液される。
増幅産物を含むサンプル溶液が検出流路100に送液されると、核酸検査装置8のペルチェ素子852が核酸検出カセット10に向けて上昇されて検出部90に接触される。そして、ペルチェ素子852によって検出流路100がハイブリダイゼーション反応に最適な温度に制御される。検出流路100内では、サンプル溶液中の増幅産物に含まれるターゲットDNAが核酸プローブとハイブリダイズにより結合する(ステップS18)。その後、常閉バルブロッド752が第2洗浄液シリンジ708に連通されている常閉バルブ748に押し付けられ、この常閉バルブ748が開放される。その後、第2洗浄液シリンジ708がシリンジロッド750で押し潰され、その内部の第2洗浄液が図18に示されるように、流路804、908、922を介して検出流路100に供給される(ステップS20)。従って、検出流路100内のハイブリダイズされない未反応のDNAを含むサンプル溶液は、検出流路100から流路924、926を介して廃液タンク930に送液される。ここで、ペルチェ素子852によって検出流路100が洗浄に最適な温度に制御され、検出流路100内が洗浄される(ステップS22)。尚、第2洗浄液がチャネル804に供給されると、第2洗浄液が空気層を介してサンプル溶液を押し出すこととなる。ここで、流路804と流路806とが流路908で連通されているが、流路804および流路908に送液圧力が空気層を介して付加され、流路806には、逆送圧力が空気層を介して付加される。従って、第1洗浄液が第2洗浄液中に混じることがなく、第2洗浄液が検出流路100に供給され、サンプル溶液は、検出流路100から廃液タンク930に送液される。
洗浄が完了すると、常閉バルブロッド752が挿入剤シリンジ706に連通される常閉バルブ738に押し付けられ、この常閉バルブ738が開放される。その後、挿入剤シリンジ706がシリンジロッド750で押し潰され、その内部の挿入剤が図19に示されるように、流路804、908、922を介して検出流路100に供給される(ステップS24)。ここで、流路804および流路908に送液圧力が空気層を介して付加され、流路806には、逆送圧力が空気層を介して付加される。従って、第1洗浄液が挿入剤中に混じることがなく、挿入剤が検出流路100に供給される。また、検出流路100内の第2洗浄液は、検出流路100から流路924、926を介して廃液タンク930に送液される。
挿入剤の検出流路100への供給後、ペルチェ素子852によって検出流路100が挿入剤反応に最適な温度に制御され、検出流路100内で挿入剤反応が生起される(ステップS26)。ここで挿入剤反応においては、例えば、挿入剤により2本鎖部分が認識され、認識された2本鎖部分に挿入剤が入り込み、電気化学的に活性化され、電気信号が発生する。この挿入剤反応は、電圧の印加の下でDNAチップ6の電極パッド領域110、112内の電極パッド942を介して電流プローブ960で検出される(ステップS28)。電流プローブ960で検出された測定電流は、回路基板962のプロセッサで処理されて測定データとしてコンピュータ4に送られ、解析される。
以上のように、実施形態によれば、高集積化され、サンプルの増幅からサンプルの電気化学反応の検出までを完全に自動化されている核酸検査装置に利用可能な核酸検出用デバイスを提供することができる。
4…コンピュータ、6…DNAチップ、8…核酸検査装置、10…核酸検出カセット、12…測定部、14…温度制御機構、16…送液制御機構、18…装置制御部、20…キャップ、21…矩形上面平坦部、23…側部、22…切欠部、25…軸部、27…係合部、30…下部プレート、40…パッキン、50…上部プレート、51…窪み、52、54…ロッド孔、55…筒状部、57…窪み、56、58…プローブ孔、59…ロッド、60…カバープレート、70…シリンジ部、80…増幅部、90…検出部、100…検出流路、100A…流路形成部、100B…流路形成領域、110、112…電極パッド領域、130…チップ用窪み、131…係合孔、132…溝、134…シリンジ用窪み、136…タンク用窪み、138…スタッド孔、139…凹凸溝、144…膨出部、144C…スリット、141、143、145、147…開口突起、141A、143A、145A、147A…貫通孔、142…送液流路用貫通孔、144B、146B…フレーム部、146、149…縦長貫通溝、148…挿通孔、150…後方領域、151、153、155、157…貫通孔、152…前方領域、155…スタッドピン、154、159…縦長貫通溝、156、158…スタッドピン、169…ステップ、160…切欠部、162…係合突起、164…縦長溝、166…挿通孔、702…サンプルシリンジ、704…第1洗浄液シリンジ、706…挿入剤シリンジ、708…第2洗浄液シリンジ、710…サンプル注入孔、720…第1洗浄液供給孔、730…挿入剤供給孔、740…第2洗浄液供給孔、712、714、722、724、732、734、742、744…チャネル、718、728、738、748…常閉バルブ、750…シリンジロッド、752…常閉バルブロッド、716、726、736、746…空気抜き開口、802、804,806…流路、810、820…常開バルブ、812、816…増幅流路、830…ウェル、832…プライマーセット、902…流路、910、912…入力ポート、914、916…出力ポート、908、922,924、926、928…流路、712B、714B、722B、724B、732B、734B、742B、744B、722B、732B、742B、802B、804B、806B、908B…帯状領域、812B、814B…矩形領域、812C、814C…貫通孔、850…ヒータ、852…ペルチェ素子、854、856…リフト機構、930…廃液タンク、932…補助廃液タンク、940…作用電極、944…参照電極、946、948…対向電極、960…電流プローブ、962…回路基板。

Claims (4)

  1. 硬質材料から作られ、第1貫通孔を有する第1のプレートと、
    硬質材料から作られ、細長形状の第1シリンジ窪み及びこのシリンジ窪みに対応して形成された第1流路溝を有する第2のプレートと、及び
    前記第2のプレート上に載置され、前記第1のプレートと前記第2のプレートとの間に挟み込まれて加圧固定される弾性材料から作られたパッキンとを具備し、
    前記パッキンは、前記第1シリンジ窪みに対して反対方向に突出し、膨出する変形可能な形状を有し、膜厚tEを有する膜で形成される第1膨出部を備え、
    この第1膨出部は、前記第1貫通孔内に配置され、前記第1シリンジ窪みを覆うように配置されて前記第1シリンジ窪みの間に変形可能な第1筒状空間を有する第1シリンジを液密に形成し、
    前記パッキンが前記第1流路溝を覆い、前記第2のプレートに圧着されて変形されることにより、第1シリンジに連通する第1流路が液密に形成されるとともに前記パッキンが前記第2のプレートに加圧されて固定され、
    前記第1貫通孔を介して外部から第1シリンジロッドが挿通されて前記第1膨出部に荷重が加えられ、前記第1シリンジロッドによって前記第1膨出部が押し潰されて前記第1シリンジ内の溶液が前記流路に送出される核酸検出カセットにおいて、
    前記第1シリンジロッドは、前記第1シリンジ窪みに対応して幅方向内における端面及び長手方向における両端が湾曲されている細長形状の先端接触面を有し、
    前記第1シリンジ窪みの幅で定められる第1シリンジ幅WB1、この第1シリンジ幅WB1に対応して定められる第1シリンジロッド幅WR1、前記膜厚tEは、
    下記式(1)
    R1+3tE≦WB1≦WR1+4tE … (1)
    の関係を満たすように設定されることを特徴とする核酸検出カセット。
  2. 前記パッキンは、
    所定の厚み(T1)を有する前記膨出部を囲むフレーム部分に相当する第1領域と、
    前記所定の厚み(T1)を有し、前記流路溝を覆う帯状部分を含む第2領域と、
    前記所定の厚み(T1)よりも薄い第2の厚み(T2)を有し、前記第1領域の周囲に設けられている第3領域と、
    を有し、前記パッキンの第1領域が前記第1のプレートと前記第2のプレートとの間に挟み込まれて加圧固定されて前記シリンジが形成されることを特徴とする請求項1記載の核酸検出カセット。
  3. 前記第1シリンジは、サンプルシリンジとして定められ、
    このサンプルシリンジに加えて他の第2、第3及び第4シリンジとして第1洗浄液シリンジ、挿入剤シリンジ及び第2洗浄液シリンジを更に具備し、
    前記第1のプレートは、前記第1洗浄液シリンジ、前記挿入剤シリンジ及び 前記第2洗浄液シリンジに対応した第2、第3及び第4貫通孔を備え、
    前記第2のプレートは、前記第1洗浄液シリンジ、前記挿入剤シリンジ及び前記第2洗浄液シリンジに対応した細長形状の第2、第3及び第4シリンジ窪み及びこれら第2、第3及び第4シリンジ窪みに対応して形成された第2、第3及び第4流路溝を有し、
    前記パッキンは、前記第2シリンジ窪みに対して反対方向に突出し、膨出する変形可能な形状を有し、膜厚tEを有する膜で形成される第2膨出部と、
    前記第3シリンジ窪みに対して反対方向に突出し、膨出する変形可能な形状を有し、膜厚tEを有する膜で形成される第3膨出部と、及び
    前記第4シリンジ窪みに対して反対方向に突出し、膨出する変形可能な形状を有し、膜厚tEを有する膜で形成される第4膨出部と、
    を具備し、
    前記第2膨出部は、前記第2貫通孔内に配置され、前記第2シリンジ窪みを覆うように配置されて前記第2シリンジ窪みの間に変形可能な第2筒状空間を有し、前記第1洗浄液シリンジ対応する変形可能な第2シリンジを液密に形成し、
    前記第3膨出部は、前記第3貫通孔内に配置され、前記第3シリンジ窪みを覆うように配置されて前記第3シリンジ窪みの間に変形可能な第3筒状空間を有し、前記挿入剤シリンジ対応する変形可能な第3シリンジを液密に形成し、
    前記第4膨出部は、前記第4貫通孔内に配置され、前記第4シリンジ窪みを覆うように配置されて前記第4シリンジ窪みの間に変形可能な第4筒状空間を有し、前記第2洗浄液シリンジに対応する変形可能な第4シリンジを液密に形成し、
    前記パッキンが前記第2、第3及び第4流路溝を覆い、前記第1のプレートと前記第2のプレートとの間に挟み込まれて加圧固定されて第2、第3及び第4シリンジに連通する第2、第3及び第4流路が液密に形成され、
    前記第2、第3及び第4貫通孔の夫々を介して外部から前記第2、第3及び第4シリンジに対応する第2、第3及び第4シリンジロッドが挿通されて前記第2、第3及び第4膨出部の夫々に荷重が加えられ、前記第2、第3及び第4シリンジロッドによって前記第2、第3及び第4膨出部の夫々が押し潰されて前記第2、第3及び第4シリンジ内の溶液が前記流路の夫々に送出される構造を有する核酸検出カセットにおいて、
    前記第2、第3及び第4シリンジロッドの夫々は、夫々前記第2、第3及び第4シリンジ窪みに対応して幅方向内における端面及び長手方向における両端が湾曲されている細長形状の先端接触面を有し、
    前記第2シリンジ、前記第3シリンジ及び前記第4シリンジの夫々において、前記第2、第3及び第4シリンジ窪みの幅で定められる第2、第3及び第4シリンジ幅WB2、B3、WB4この第2、第3及び第4シリンジ幅WB2、B3、WB4に対応して定められる第2、第3及び第4シリンジロッド幅WR2、WR3、WR4前記膜厚tEは、下記式(1)
    R2+3tE≦WB2≦WR4+4tE… (2)
    R3+3tE≦WB3≦WR4+4tE… (3)
    R4+3tE≦WB4≦WR4+4tE… (4)
    の関係を満たすように設定されることを特徴とする請求項1の核酸検出カセット。
  4. 前記膨出部の膜厚tEは、0.1〜1.00mmの範囲で選定されることを特徴とする請
    求項1の核酸検出カセット。
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