JP6516990B2 - 核酸検出カセット - Google Patents

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Description

実施形態は、電気信号を用いて核酸を検出する核酸検査装置に利用される核酸検出カセットに関する。
近年、遺伝子工学の発展に伴い、医療分野では、遺伝子による病気の診断、或いは、予防が可能となりつつある。これは遺伝子診断と呼ばれ、病気の原因となるヒトの遺伝子欠陥、或いは、遺伝子変化を検出することで病気の発症前、若しくは、極めて初期段階での病気の診断、或いは、予測をすることが出来る。また、ヒトゲノムの解読とともに、遺伝子型と疫病との関連に関する研究が進み、各個人の遺伝子型に合わせた治療(テーラーメイド医療)も現実化しつつある。従って、遺伝子の検出並びに遺伝子型の決定を簡便に行うことが非常に重要となっている。
核酸検査装置として、DNAチップを用いたデバイスが知られている。DNAチップは、核酸プローブが固定化された複数のセンサ部から成る検出領域を基板上に備え、一度に多数の核酸配列を検出できる特徴を備えている。一般的に、核酸プローブは、液体に溶解された状態で、各センサ部上に滴下されることによってセンサ表面に固定化される。また、センサ部毎に互いに異なる核酸プローブを固定化するため、センサ部間で液滴同士が接触することは避けなければならないとされている。
一方、1つのデバイス内において、複数の試薬が関わる複数の反応を順次行うことのできるμ−TASと呼ばれるデバイスが盛んに研究開発されている。μ−TASは、試薬保持領域、核酸の反応領域(増幅領域)、検出領域などから成り、それらをつなぐ流路を備えている。
更に、上記電流検出方式のDNAチップを内蔵した核酸検出カセットを用いて核酸を検出するための核酸検査装置も開発されている。このようなデバイス内で核酸検出を行う場合、複数の試薬を使用し、複数の反応を行う必要がある。例えば、核酸抽出反応、核酸精製反応、核酸増幅反応、核酸ハイブリダイゼーション反応などである。これらの核酸検出用の試薬は、一般的に高価であるため、可能な限り使用量を低減することが望ましいとされている。そのため、デバイス上に流路を形成し、流路内に各センサ部を配置することにより、各センサ部に効率的にサンプル溶液、洗浄液及び試薬を供給できるカード化された核酸検出カセットが実現されることが望まれている。
特開2006−149215号公報 特開2006−78500号公報 特開2013−145217号公報 WO2008/108027号 WO2008/096570号
また、サンプル溶液は、ユーザが注入する必要があるため、サンプル注入口の構造は、簡便である必要がある。送液中に気泡が混入してはならない密閉系のサンプルチャンバの場合、核酸検出カセットは内部が液密である必要があり、サンプル注入口から送液流路内に気泡等が混入しないことが必要とされる。また、サンプル注入口及びサンプルを収納するシリンジは、投入されるサンプル溶液の液量が多少ばらついていても問題ない構造である必要がある。一方、試薬は高価であるため、極力無駄なく投入できることが求められる。さらに、サンプルによる環境汚染を防ぐため、サンプル溶液を投入後には、サンプル注入口付近が触れられない構造でなければならない。加えて、低コスト化のため、工数や部品点数が少ないことが望ましい。
本発明の目的は、簡便なサンプル注入口及びサンプル注入口周辺の液密機構を備える核酸検査装置に利用可能な核酸検出カセットを提供することにある。
実施形態に係る核酸検出カセットは、サンプルを注入する注入部と、このサンプルを貯蔵する貯蔵部と、この貯蔵部を覆う弾性部材と、前記注入部から注入されたサンプルが前記貯蔵部へ流れる流路とを有し、更に、前記注入部は、前記弾性部材から突出するように設けられ、前記流路に連通され、サンプルを注入する開口部と空気抜き用の開口部と、これらの開口部を変形して液密閉塞する密閉部材と、を備える。
図1は、実施の形態に係る核酸検査装置を概略的に示すブロック図である。 図2は、図1に示される核酸検査装置に装着される核酸検出カセットの外観を概略的に示す斜視図である。 図3は、図2に示される核酸検出カセットを分解して概略的に示す分解斜視図である。 図4は、図2に示される核酸検出カセットを透視して内部構造を概略的に示す透視平面図である。 図5は、図2に示される核酸検出カセット内に設けられる流路及び流路に連結される各部を概略的示す平面図である。 図6は、図2に示される核酸検出カセットからキャップ及びカバーを取り外した外観を概略的に示す斜視図である。 図7は、カバーを概略的に示す部分斜視図である。 図8は、図4に示される核酸検出カセットの下部プレートの一部を概略的に示す部分斜視図である。 図9は、図4に示される核酸検出カセットのパッキンの一部を概略的に示す部分斜視図である。 図10は、図6のB−Bに沿った核酸検出カセットの一部断面図である。 図11は、開放された常開バルブ及びこの常開バルブを閉塞動作するバルブロッドの一部を概略的に示す部分断面図である。 図12は、図2に示されるシリンジに連通される常閉バルブの構造を概略的に示す部分断面斜視図である。 図13は、図3に示されるサンプル注入孔の拡大図である。 図14は、図13に示されるC−C線に沿った断面図である。 図15は、図1示される核酸検査装置の内部構造を概略的に示す側面図である。 図16は、常閉バルブの縦断面に示す斜視図である。 図17は、図2のA―A線に沿った核酸検出カセットの一部断面図である。 図18は、図12に示される常閉バルブの構造を概略的に示す斜視断面図である。
以下、実施の形態に係る核酸検出カセットについて、図面を参照して詳細に説明する。
(核酸検査装置の概略構成)
図1は、実施の形態に係る核酸検査装置8のブロックを示している。この核酸検査装置8は、サンプルの増幅からサンプルの電気化学反応の検出までを完全に自動化可能に構成されている。核酸検査装置8は、液密に密閉された核酸検出カセット10と、この核酸検出カセット10と電気的に接続される測定部12、核酸検出カセット10内に設けられた流路系を外部から物理的に駆動制御する送液制御機構16及び核酸検出カセット10の各部を温度制御する温度制御機構14等を備える。核酸検出カセット10は、後に詳述するように、その内部にDNAチップ6が収納されている。このDNAチップ6上には、後に詳細に説明するように、サンプル等の溶液が流れる検出流路が設けられる。DNAチップ6上の検出流路は、SNP(1)〜SNP(N)(一塩基多型:Single Nucleotide Polymorphism)を検出する為の検出用核酸プローブが電極に固定された作用電極が一定間隔で配列されている。また、検出流路には、これらの作用電極に対向されるような配置で少なくとも1つの対向電極及び参照電極が設けられている。図1に示す測定部12は、DNAチップ6に接続され、DNAチップ6内の作用電極及び対向電極間への入力電圧の印加に応じて参照極の電圧をフィードバック(負帰還)させる3電極方式のポテンシオ・スタットとして構成されている。従って、この測定部12によれば、核酸検出カセット10におけるセル内の電極、或いは、溶液などの各種条件の変動によらずに溶液中に所望の電圧を印加することができ、電気化学的反応による電流(以下において「電気化学的電流」と言う。)を電気化学的に測定することができる。
上述した測定部12、温度制御機構14及び送液制御機構16は、装置制御部18に接続され、装置制御部18は、インタフェース(図示せず)を介して核酸検査装置8外のコンピュータ4に接続されている。コンピュータ4からの動作指示等のコマンドに応答して、装置制御部18は、内蔵プログラムに従って測定部12、温度制御機構14及び送液制御機構16を制御している。装置制御部18は、送液制御機構16を制御してサンプル等の溶液を送液させ、温度制御機構14を制御してサンプル溶液の温度を制御してサンプルの電気化学反応を生じさせている。また、装置制御部18は、測定部12を制御してサンプルの電気化学反応を検出し、検出し検出信号を検出データとしてコンピュータ4に転送している。コンピュータ4では、転送された検出データを解析してサンプルのDNAを特定している。図1に示される核酸検査装置8は、サンプルの増幅からサンプルの電気化学反応の検出までを自動化し、サンプルが収納されている核酸検出カセット10の装着のみでサンプルのDNAのデータを獲得することができる。
(核酸検出カセットの基本構造)
図2に示すように、核酸検出カセット10は、矢印5に示す方向で核酸検査装置8に装着され、また、取り出される矩形カード形状の外観を有している。ここで、核酸検出カセット10は、核酸検査装置8に装着する際の向きを定める為に、その一部に切欠部22を設けている。図2に示す実施の形態では、装置への挿入(装着)方向4を基準に矩形核酸検出カセット10における後方左側のコーナが切欠されて切欠部22が設けられている。ユーザ(オペレータ)は、この切欠部22を先端側として確認することによって核酸検出カセット10を正しく核酸検査装置8に装着することができる。尚、このようにコーナを切欠する形態に限らず、他の箇所が切欠されて矩形核酸検出カセット10の上面が特定され、核酸検出カセット10の装着方向が特定されても良い。以下の説明において、核酸検出カセット10の切欠部22を先端側とする装着方向を基準に、先端側と反対側を後方と称し、核酸検出カセット10の装着方向の側を前方と称し、核酸検出カセット10にキャップ(蓋部)20が取り付けられた面を上面と称する。
この核酸検出カセット10は、図3に分解して示すように下部プレート(第1のプレート)30、パッキン40、上部プレート(第2のプレート)50、カバープレート60及びキャップ20から構成されている。下部プレート30は、例えば、ポリカーボネート等の硬質材料で作られ、DNAチップ6が収納されるチップ用窪み130が形成され、核酸プローブ固定化領域を含むように流路が形成される領域である流路形成部100Aの検出流路100の面が上面に向けられるようにDNAチップ6がこの窪み130に嵌め込み固定されている。下部プレート30には、DNAチップ6の検出流路100に連通される送液系の流路流路の為の溝132が形成され、また、送液系を定める為のシリンジ用窪み134及びタンク用窪み136が形成されている。
パッキン40は、例えば、エラストマ等のゴム弾性材料で作られ、下部プレート30上に載置されている。このパッキン40には、下部プレート30の窪み134に対応して送液系を定める為の膨出部144、送液流路用貫通孔142及び縦長貫通溝146が形成されている。また、このパッキン40には、DNAチップ6の検出流路100を定める為の溝111が設けられている。更に、パッキン40には、液注入孔を定める為の開口突起141、143が設けられ、空気抜き孔を定める為の開口突起145、147が形成されている。更にまた、DNAチップ6の電極パッド部を外部からアクセスすることを可能にする為の縦長貫通溝149が形成されている。
上部プレート50は、例えば、ポリカーボネート等の硬質材料で作られ、パッキン40上に載置され、パッキン40が上部プレート50及び下部プレート30間に加圧されて挟み込まれる。より詳細には、上部プレート50の下面には、複数のスタッドピン156、158が突出して設けられ、上部プレート50の周辺に配置されたスタッドピン156は、下部プレート30の周辺に設けたスタッド孔138Aに直接に挿通される。また、パッキン40に対向するように上部プレート50に設けられたスタッドピン158は、パッキン40に設けられた挿通孔148を通って下部プレート30の上面に設けたスタッド孔138Bに挿通される。これらスタッドピン156、158の先端は、熱カシメされて抜け止めボスに変形されて下部プレート30に固定される。このスタッドピン156、158によって上部プレート50、パッキン40及び下部プレート30が一体化されている。この構造においては、上部プレート50がパッキン40を加圧するように下部プレート30に固定されて、上部プレート50及びパッキン40間に液密な送液系が定められ、下部プレート30及びパッキン40間にも同様に液密な送液系が定められる。上部プレート50には、パッキン40に形成された膨出部144、貫通孔142及び縦長溝146等に対応して縦長貫通溝154、貫通孔142に連通する溝(図示せず)及び縦長貫通溝149に連通する縦長貫通溝159等が形成されている。また、上部プレート50には、パッキン40の開口突起141、143、145、147が挿通される貫通孔151、153、155、157が形成されている。
上部プレート50は、後方領域150及び前方領域152に区分され、後方領域150及び前方領域152がステップ169を介して連接されている。上部プレート50の後方領域150には、カバープレート60が取り外し不能に装着されている。カバープレート60は、例えばポリカーボネート等の硬質材料で作られ、キャップ20を嵌め込み可能な切欠部160が形成されている。この切欠部160にキャップ20が取り付けられている。カバープレート60には、上部プレート50の前方領域152に形成されている縦長溝154等に対応し、且つ仕切り165を有する縦長溝164が設けられている。
上部プレート50の後方領域150に対向するカバープレート60の下面周辺には、係合突起162が下方に向けて延出され、この係合突起162は、この係合突起162に対応して設けられた上プレート50の挿通孔166を通して、下部プレート30に設けられた係合孔131に取り外し不能に係合されている。
(核酸検出用カード内の送液系)
核酸検出用カード内の送液系を図4、図5を参照して説明する。図4は、核酸検出カセット10の内部に設けられる送液系を透視して示している。また、図5は、図4に示す核酸検出カセット10内に形成される送液系の配置を示している。
図4に示すように核酸検出カセット10は、シリンジ部70、増幅部80及び検出部90から構成され、その送液系は、シリンジ部70、増幅部80及び検出部90を連通するように構成されている。シリンジ部70は、カバープレート60及びキャップ20で覆れ、上部プレート50の後方領域150に対応する核酸検出カセット10中に設けられている。増幅部80及び検出部90は、上部プレート50の前方領域152に対応する核酸検出カセット10中に設けられている流路より構成される。
シリンジ部70には、サンプル溶液が入れられたサンプルシリンジ(貯蔵部)702、第1の洗浄液が充填された第1洗浄液シリンジ704、挿入剤が充填された挿入剤シリンジ706及び第2洗浄液シリンジ708が核酸検出カセット10の短辺方向に沿って配置されている。これらシリンジ702,704、706及び708は、核酸検出カセット10の長手方向に延出した筒状空間として形成され、この筒状空間は、夫々下部プレート30の窪み134をパッキン40の膨出部144で覆うことにより窪み134と膨出部144と間に定められる。
サンプルシリンジ702は、サンプル液が流入される流路712を介してサンプル液を注入するサンプル注入孔(サンプル注入開口、注入部)710に連通され、また、空気抜き用の流路714を介して空気抜き開口716に連通されている。また、流路712は、サンプルシリンジ702の流入側で分岐され、常閉バルブ718に連通されている。第1洗浄液シリンジ704も流路724を介して第1洗浄液供給孔720に連通され、また、常閉バルブ728に連通されている流路722を介して空気抜き開口726に連通されている。第1洗浄液は、第1洗浄液供給孔720から加圧されて第1洗浄液シリンジ704に供給され、第1洗浄液シリンジ704内の空気は、空気抜き開口726を介して外部に放出される。同様に、挿入剤シリンジ706も流路734を介して挿入剤供給孔730に連通され、また、常閉バルブ738に連通されている流路732を介して空気抜き開口746に連通されている。挿入剤は、挿入剤供給孔730から加圧されて挿入剤シリンジ706に供給され、挿入剤シリンジ706内の空気は、空気抜き開口736を介して外部に放出される。更に、第2洗浄液シリンジ708も流路724を介して第2洗浄液供給孔740に連通され、また、常閉バルブ748に連通されている流路742を介して空気抜き開口736に連通されている。第2洗浄液は、第2洗浄液供給孔740から加圧されて第2洗浄液シリンジ708に供給され、第1洗浄液シリンジ708内の空気は、空気抜き開口746を介して外部に放出される。ここで、第2洗浄液は、第1洗浄液と同一組成の洗浄液として用意されている。
ここで、シリンジ702、704、706及び708は、その内部に充填されたサンプル溶液或いは試薬を保存するタンクとしての機能を有すると共にその内部に充填されたサンプル溶液或いは試薬を流路712,722,736、746に送り出すポンプの機能を有している。即ち、シリンジ702、704、706及び708は、弾性を有する膨出部(弾性部材)144によってその内部が空洞に形成され、核酸検査装置8の送液制御機構16に設けられたシリンジロッドによって弾性を有する膨出部144を押しつぶすことによって、その内部のサンプル溶液或いは試薬を流路712,722,736、746に送り出すことができる。また、常閉バルブ718、728、738、748は、シリンジ702、704、706及び708内にサンプル溶液或いは試薬の保存を維持する機能を有し、検査が開始されると、これらの常閉バルブ718、728、738、748は、核酸検査装置8の送液制御機構16に設けられたバルブロッドによって順次開放され、開放されたままに維持される。供給孔710、720、730、740及び空気抜き開口716、726,736、746は、パッキン40に設けられた開口突起141、143、145、147で形成され、サンプル溶液或いは試薬をシリンジ702、704、706及び708に外部から注入するために設けられている。供給孔720、730、740及び空気抜き開口726,736、746は、試薬がシリンジ704、706及び708に注入された後に、カバープレート60がパッキン40に設けられた開口突起141、147を圧縮変形して閉塞する。従って、試薬のシリンジ704、706及び708への注入後、試薬が核酸検出カセット10外に漏れ出ることが防止される。また、供給孔710及び空気抜き開口716は、サンプル溶液がサンプルシリンジ702に注入された後に、キャップ(密閉部材)20がパッキン40の開口突起143、145を圧縮変形して閉塞する。従って、サンプル溶液のサンプルシリンジ702への注入後、サンプル溶液が核酸検出カセット10外に漏れ出ることが防止される。
増幅部80には、入力ポート側及び出力ポート側に常開バルブ810、820が設けられ、常開バルブ810、820は、直列に連通されている増幅流路812、816に接続されている。入力ポート側の常開バルブ810は、シリンジ部70の常閉バルブ718及び728に共通に連結された流路802に接続されている。また、出力ポート側の常開バルブ820は、流路806に接続されている。シリンジ部70の常閉バルブ738及び748は、流路804に共通に連結されている。更に、流路804及び流路806は、共通接続されて検出部90の流路902に連通されている。
各増幅流路812、816のパターンは、流路長を大きくする為のメアンダー流路がU字状に折り返された形態に形成されている。そして、このU字状のメアンダーパターン(meander pattern)を有する増幅流路812、816は、両者間の中心軸818に関して線対称に配置されて両者が一方向流通路を形成するように連通されている。増幅流路812、816が対称パターンを有することから、核酸検査装置8内に設けられた温度制御機構14のヒータは、増幅流路812、816を比較的に均一に加熱するように設計することができる。
各増幅流路812、816には、ウェル830が流路に沿って一定長以上の間隔を空けるように配置されている。図4に示した例では、メアンダー状の増幅流路812、816において、略一定の流路長を空けてウェル830が配置されることから、増幅部80内にウェル830が直線状に点在して配置されている。ウェル830が直線状に点在して配置されることから、同様に、温度制御機構14のヒータは、これらのウェル830を比較的に均一に加熱するように設計することができる。
増幅部80内には、複数のウェル830が設けられ、この複数のウェル830には、ウェル830毎に互いに異なる種類のプライマーセット832が遊離可能に固定されている。増幅部80内に1又は複数のサンプルDNA(塩基配列)を含むサンプル溶液が供給されると、固定されたプライマーセット832がサンプル溶液中に遊離する。そして、この増幅部80が温度制御機構14のヒータによって加熱されると、複数のサンプルDNAは、複数種類のプライマーセット832によりマルチ増幅される。ここで、各ウェル830には、目的とする1種類のサンプルDNAを増幅するために必要な複数のプライマーにより構成される1種類のプライマーセットが固定されている。このサンプルDNAの増幅に際しては、増幅部80の入力ポート側の常開バルブ810及び出力ポート側の常開バルブ820は、核酸検査装置8内に設けられたバルブロッドで閉鎖される。従って、サンプルDNAの増幅時に増幅部80に与えられる熱によって、膨張されるサンプル溶液が増幅部80の入力ポート或いは出力ポート外の流路802、806に流出して試薬等に混合されるような事態を防止することができる。
検出部90には、DNAチップ6が配置され、DNAチップ6には、1対のU字状の流路を連通した検出流路100が設けられている。この検出流路100には、パッキン40に互いに連通する1対のU字状の溝111が設けられ、溝111がDNAチップ6上の検出流路100に重ね合わされ、パッキン40がDNAチップ6に液密に密着されることによりパッキン40がDNAチップ6との間に定められる。この検出流路100は、DNAチップ6上の入力側ポート910及び出力側ポート914に連結されている。入力側ポート910は、流路922を介して流路908の出力ポート912に接続されている。また、出力側ポート914は、流路924を介して流路926の入力ポート916に接続されている。従って、増幅部80で増幅されたDNAを含むサンプル溶液は、増幅部80から流路806、908、出力ポート912、流路922及び入力側ポート910を介してDNAチップ6の検出流路100に流入される。
上述した流路構成において、第1洗浄液シリンジ704に充填された第1洗浄液を増幅流路812、816に送液することにより、増幅産物を含むサンプル溶液が増幅流路812、816から押し出されてDNAチップ6の検出流路100に流入される。この後、シリンジ706及び708に格納された挿入剤及び第2洗浄液を夫々流路732及び流路742を介して流路804に供給する。流路804に供給された挿入剤或いは第2洗浄液は、流路908、出力ポート912、流路922及び出力側ポート914を介してDNAチップ6の検出流路100に流入される。
特に、増幅産物を含むサンプル溶液は第1洗浄液の送液で増幅部80の増幅流路812、816を介して流路804が合流される流路908に押し出されてDNAチップ6の検出流路100に流入されている。第1洗浄液の送液は、サンプル溶液を確実に増幅部80の増幅流路812、816からDNAチップ6の検出流路100に送液することができる。しかも、挿入剤及び第2洗浄剤が流入する流路804は、増幅流路812、816とは、分離され、流路908で合流されている。従って、挿入剤及び第2洗浄剤が増幅流路812、814を介さず検出流路100に流入され、挿入剤が増幅部80のサンプル溶液と混ざることを回避し、同時に増幅部80における残余の熱で加熱されることも防止される。
検出部90には、DNAチップ6からの廃液を溜める廃液タンク930及び補助廃液タンク932が設けられている。廃液タンク930は、DNAチップ6の出力側ポート914、流路924、入力ポート916及び流路926を介して連通されている。また、廃液タンク930は、流路926を介して補助廃液タンク932に連通されている。補助廃液タンク932には、好ましくは、補助廃液タンク932内の空気を排気するための排気孔934が設けられ、DNAチップ6から廃液が廃液タンク930に流入した際に補助廃液タンク932内の空気が排気される。
第2洗浄液シリンジ706から送液されると、検出流路100内の未反応サンプルは、この第2洗浄液によって検出流路100から廃液として押し出され、廃液タンク930に流入される。その後、挿入剤シリンジ708からから送液されると、検出流路100内の第2洗浄液は、この挿入剤によって検出流路100から廃液として押し出され、廃液タンク930に同様に流入される。
ここで、一連の検査工程で生ずる廃液は、廃液タンク930に流入されてその内に留められ、補助廃液タンク932には、殆ど流入することがないか、或いは、僅かな廃液が流路926を介して流入するにすぎない。しかも、供給孔710、720、730、740及び空気抜き開口716、726、736、746は、サンプル溶液がサンプルシリンジ702に注入された後には、閉塞され、これら供給孔710、720、730、740及び空気抜き開口716、726、736、746と補助廃液タンク932の排気孔934との間の送液系は、液密に維持されている。従って、一連の検査工程で送液系が加熱されたとしても、廃液が補助廃液タンク932の排気孔934から漏れ出るような事態を防止することができる。
これら廃液タンク930、932は、下部プレート30に形成された窪み136、パッキン40の縦長溝146及び上プレート50の裏面に形成した窪み136に対応する窪み(図示せず)で定められる縦長の空間として形成される。特に、廃液タンク930は、シリンジ702、704、706及び708から押し出されたサンプル溶液、第1洗浄液、挿入剤及び第2洗浄液の全てを受け入れることができる容積を有することが好ましい。
上述した送液系における流路712、714、722、724、732、734、742、744、722、732、742、802、804、806、908、926は、下部プレート30に形成された溝132をパッキン40で覆うことによって溝132とパッキン40の平坦な下面との間に定められている。同様に、増幅流路812、816も下部プレート30に形成されたウェル830を有するメアンダー状の溝132をパッキン40で覆うことによって溝132とパッキン40の平坦な下面との間に定められている。DNAチップ6の検出流路100は、ガラス製或いはシリコン製の平坦な基板にU字状流路が電極配列で定められる。この基板上のU字状流路がパッキン40に設けたU字状の溝111に位置合わせされ、平坦な基板をパッキン40で覆うことによって検出流路100がパッキン40のU字状の溝と基板の平坦な上面との間に定められる。
DNAチップ6のポート910及び914は、パッキン40に穿けられた貫通孔(符号910及び914に相当する。)に対応している。また、流路908の出力ポート912及び流路926の入力ポート916もパッキン40に穿けられた貫通孔(符号912及び916に相当する。)に対応している。そして、出力ポート912及びポート910間の流路922並びに入力ポート916及び出力側ポート914間の流路924は、上部プレート50の下面に形成された溝(図示せず)をパッキン40で覆うことによって、この溝とパッキン40の平坦な上面との間に定められる。従って、DNAチップ6のポート910及び914に至る流路は、DNAチップ6の上面側で連通される。DNAチップ6のポート910及び914では、上部プレート50が下部プレート30に向けて押し付けられ、パッキン40で両者間が液密とされている。それ故、DNAチップ6が硬質の基板構造であっても、DNAチップ6がパッキン40に密着された状態に維持され、DNAチップ6の検出流路100が下部プレート30とパッキン40との間に形成される送液系流路に確実に連通される。DNAチップ6の検出流路100が加熱されてもDNAチップ6の検出流路100からサンプル溶液等が漏れ出すことが防止される。
(核酸検出カセットの上面構造)
再び図2を参照し、また、新たに図6を参照して核酸検出カセット10の上面構造について、より詳細に説明する。図6は、図2に示す核酸検出カセット10からカバープレート60が取り外された外観を示している。
図6に示すように、核酸検出カセット10の後方領域150には、シリンジ702、704、706及び708の検出部90の側に、常閉バルブ718、728、738、及び748の為の窪み201、202、203、及び203と、ロッド穴部211、212、213、及び214とが設けられている。図2に示すように、上部プレート50には、窪み201、202、203、及び203を構成する穴部201a、202a、203a、及び204aと、ロッド穴部211,212、213、及び214を構成する穴部211a、212a、213a、及び214aとが形成される。この窪み201、202、203、及び203内に形成される常閉バルブ718、728、738、及び748は、カバープレート60が取り外された際に常開バルブとしての構造を有し、後に説明されるようにカバープレート60が取り付けられてカバープレート60の突起が窪み201、202、203、及び203内に挿入されて常閉バルブとされる構造を有している。
図2及び図3を参照して説明したように、核酸検出カセット10の後方領域150には、矩形核酸検出カセット10に嵌め込み固定されたカバープレート60が設けられ、このカバープレート60には、キャップ20が装着されている。このキャップ20は、矩形上面平坦部21及びこの上面平坦部21から核酸検出カセット10の前方側面に沿って延出する側部23を有するL字形に形成されている。また、キャップ20を開閉する為の軸部25が平坦部21の側部に設けられ、側部23には、下部プレート30の係合溝(図示せず)に係合固定される係合部27が設けられている。カバープレート60には、キャップ20の平坦部21を受容する切欠部160が形成され、また、キャップ20の軸部25を軸支するための軸支孔(図示せず)が平坦部21の切欠部側面に形成されている。軸部25を支点としてキャップ20が閉じられると、キャップ20の矩形上面平坦部21がカバープレート60の上面に連接して略平坦な面を核酸検出カセット10に与えるようにキャップ20が核酸検出カセット10に嵌め込まれる。この嵌め込みに際しカバープレート60にキャップ20を押し付けると、キャップ20の係合部27が下部プレート30の係合溝(図示せず)に係合される。その結果、キャップ20が下部プレート30に取り外し不能に固定される。サンプル溶液がサンプル注入孔710を介してサンプルシリンジ702内に注入された後に、キャップ20が嵌め込み装着されると、キャップ20の下面でサンプル注入孔710及び空気抜き開口716が圧接変形されてサンプル注入孔710及び空気抜き開口716が閉塞される。従って、核酸検出カセット10は、液密に密閉され、サンプルの増幅或いはサンプルの電気化学反応の検出において、核酸検出カセット10が加熱されても核酸検出カセット10から外部にサンプルが漏れ出ることが防止される。
このように、核酸検出カセット10にサンプルを充填する前においては、キャップ20は、軸部25でカバープレート60に軸支されたまま、カバープレート60に対して開放され、軸部25の周りに回動可能に維持された状態で取り付けられている。核酸検出カセット10にサンプルが充填された後においては、上述したように、キャップ20が核酸検出カセット10に取り外し不能に固定される。キャップ20の核酸検出カセット10への取り外し不能な固定は、ユーザに対して核酸検出カセット10へのサンプルの収納が成されていること明示することとなり、再度サンプルを誤って核酸検出カセット10へ注入するような事態を防止することができる。
図7は、カバープレート60の裏面側の構造を概略的に示している。カバープレート60の裏面側には、切欠部160が形成された辺と対向する辺の側には、図2に示す核酸検出カセット10の幅方向に沿って配置されT字形の窪み(T字形窪み)41、42、44、46を形成するようにT字型の舌片(T字形舌片)181、182、184、186がカバープレート60から分離されて可動可能に形成されている。より詳細には、T字型の舌片181、182、184、186は、基部がカバープレート60に枢支固定され、T字型の舌片181、182、184、186が可動可能な片持ちはり構造を構成するように接続基部がカバープレート60に枢支されている。T字型の舌片181、182、184、186には、このT字型の舌片181、182、184、186は、このT字型の舌片181、182、184、186から突出する突起部(ロッド)171、172、173、174を有し、このT字型の舌片181、182、184、186と共に可動される。
カバープレート60には、核酸検出カセット10の幅方向に沿って縦長溝164が並列して配置され、その内部には、シリンジ702、704、706、708が縦長溝164内に膨出するように設けられている。また、カバープレート60には、核酸検出カセット10の幅方向に沿ってT字形窪み41、42、44、46が設けられ、これら舌片181、182、184、186の背後に常閉バルブ718、728、738、748の片持ちはり構造が設けられている。送液制御機構16のバルブロッドによってカバープレート60背面側からこの片持ちはり構造が開放操作されると、舌片181、182、184、186の背後の常閉バルブ718、728、738、748が開放される。シリンジ702、704、706、708が配置される縦長溝164は、指が入り込まないような幅を有し、また、縦長長が大きな縦長溝164には、図2に示すように仕切りが設けられて長手方向における指の進入を防止するようにしている。
尚、図2に示す核酸検出カセット10は、カバープレート60が設けられた上部プレート50及び下部プレート30の幅方向の両側面に滑り止め用の凹凸溝139が設けられ、ユーザが確実に核酸検出カセット10を把持することを可能としている。
図2に示す核酸検出カセット10のカバープレート60は、カバープレート60の上面がこの前方領域152に面一となるように上部プレート50に取り付け固定される。上部プレート50の前方領域152には、増幅部領域を固定する為に矩形状の窪み51が形成され、この窪み50の両側に常開バルブ810、820を操作するロッド穴52、54が設けられている。このロッド穴52、54に送液制御機構16のバルブロッドが挿入されて常開バルブ810、820にその先端が押し付けられることによって常開バルブ810、820が開放される。また、DNAチップ6の電極パッドが配列された電極パッド領域110,112に電流プローブを装着する為の縦長なプローブ孔56、58が上部プレート50の前方領域152に並列して形成されている。
カバー2が取り外されて露出される、上部プレート50の後方領域150には、パッキン40に設けられた第1洗浄液供給孔720、挿入剤供給孔730、第2洗浄液供給孔740の為の開口突起141の先端及び空気抜き開口726、736、746の為の開口突起147の先端が露出されている。核酸検出カセット10の製造工程では、図6に示すようなカバー2が取り外された状態で、第1洗浄液供給孔720を介して第1洗浄液シリンジ704に注入され、挿入剤供給孔730を介して挿入剤シリンジ706に注入され、第2洗浄液供給孔740を介して第2洗浄液シリンジ708に注入される。その後、カバー2が上部プレート50の後方領域150に取り外し不能に取り付け固定される。この取り付け固定に際しては、カバー2の下面が開口突起141及び開口突起147に押し付けられ、開口突起141及び開口突起147がカバー2の下面に圧接される。従って、カバー2が上部プレート50に取り付けられると、第1洗浄液供給孔720、挿入剤供給孔730、第2洗浄液供給孔740口及び空気抜き開口726、736、746が閉塞される。
(核酸検出カセットのサンプル注入口の構造)
図8は、下部プレート30の後方部分の構造を概略的に示している。下部プレート30の後方部分の表面には、流路712、714、802、及び804と、増幅流路812及び816とするための窪みが形成されている。さらに、シリンジ用窪み134(134a、134b、134c、及び134d)が形成されている。シリンジ用窪み134a、134b、134c、及び134は、夫々、シリンジ702、704、706及び708を構成する。下部プレート30には、ロッド穴部211、212、213、及び214を構成する、穴部211c、212c、213c及び214cが形成されている。
図9は、パッキン40の後方部分の構造を概略的に示している。パッキン40には、液注入孔を定める為の開口突起141、143が設けられ、空気抜き孔を定める為の開口突起145、147が形成されている。シリンジ702、704、706及び708を定める膨出部144の前方には、常閉バルブ718、728、738、及び748を構成する窪み201b、202b、203b及び204bが形成されている。これら窪み201b、202b、203b及び204bの周囲には、穴部211c、212c、213c、及び214cと重なる穴部211b、212b、213b、及び214bが形成されている。
図10は、図6のB−Bに沿った、カバープレート60が取り外された際の常閉バルブ718、728、738及び748の形態を示す横断面図である。既に説明したように、上部プレート50がパッキン40を介して下部プレート30に固定されると、窪み201、202、203、及び203と及びロッド穴部211、212、213、及び214とが上部プレート50に設けられる。具体的には、窪み201、202、203、及び203は、上部プレート50の穴部201a、202a、203a、及び204aと、パッキン40の窪み201b、202b、203b及び204bとが位置合わせされて組み立てられて上部プレート50に設けられる。また、ロッド穴部211、212、213、及び214は、下部プレート30の穴部211c、212c、213c、及び214cと、パッキン40の穴部211b、212b、213b、及び214bと、上部プレート50の穴部211a、212a、213a及び214aとが位置合わせされて組み立てられて上部プレート50に設けられる。
それらの窪み201、202、203及び203内には、パッキン40に設けられた筒状部55が配置されている。筒状部55とこの筒状部55が配置される下部プレート30の上面との間に常閉バルブ718、728、738、及び748の為の開放空洞部(流路)が形成され、これらの空洞部は、それぞれ、流路802或いは流路712及び722、流路804或いは流路732及び流路742に連通されている。常開バルブと同様に、筒状部55は、窪み57内にパッキン40と一体に形成されていることから、パッキン40の厚みTPよりも十分薄く形成される。常閉バルブに形成される際には、カバープレート60が上部プレート50に取り付けられてカバープレート60に設けた突起部(ロッド)171、172、173、174が窪み201、202、203及び203に挿入される。そして、突起部171、172、173、174が筒状部55を押し潰して空洞部が閉塞される。空洞部が閉塞されていることによって、流路802或いは流路712及び722の間の流路と、流路804或いは流路732及び流路742の間の流路とが、遮断されている。これら空洞部は、流路802及び流路712或いは流路722と、流路804及び流路732或いは流路742とを連通している。この構造から明らかなように、筒状部55は、窪み201、202、203及び203内にパッキン40と一体に形成されていることから、パッキン40の膜厚T1よりも十分薄く、より好ましくは、膜厚T2(T1>T2)よりも薄く形成される。ここで、膜厚T1は、凸部領域及び凹部領域で形成されるパッキン40の凸部領域膜の厚に相当し、膜厚T2は、凹部領域の膜厚に相当している。筒状部55は、アーチ状に形成され、筒状部の肉厚に対して空洞部は小さい径で形成される。また、筒状部55の上面は、突起部171、172、173及び174が、当接し易いように一部が平坦に形成されている。従って、図11に示すように筒状部55の内部に設けた空洞部を外部から挿入された突起部171、172、173、及び174の先端部で押し潰すことができ、筒状部55を押し潰すことで空洞部が閉塞される。空洞部が閉塞されていることによって、流路802或いは流路712及び722の間の流路と、流路804或いは流路732及び流路742の間の流路とが、遮断されている。
上述した説明から明かであるように、常閉バルブ718、728、738、及び748は、常開バルブとしてのバルブ構造を有し、突起部171、172、173、及び174で常開バルブの筒状部55を閉塞して常閉構造を与えている。
図12は、核酸検出カセット10の後方領域150を概要的に示している。図13には、サンプル注入孔710が斜視図で示されている。また、図14には、サンプル溶液のシリンジ702への注入後における図14のC−C線に沿った断面を示している。
サンプル溶液を注入する際には、図12に示すようにキャップ20が開かれている。図13では、キャップ20が取り外され、サンプル注入孔710が露出されている。サンプル注入口710と空気抜き開口716とは、キャップ20でその開口が閉塞されて同時にロックできるように近接して設けられる。既に説明したように、空気抜き開口716は、サンプル溶液がサンプル注入口710から注入された際に、流路712、シリンジ702、及び流路714内の空気を外部へ抜くために形成されている。サンプル溶液が注入される際には、前述のように、常閉バルブ718が、流路712と流路802との間の流路を遮断しているために、サンプル溶液は、流路802に流出することなく、サンプルシリンジ702に充填される。
サンプル注入孔710は、サンプル溶液を流路712に確実に流入させるために、サンプル溶液を注入するマイクロシリンジの針(図示せず)をガイドするようにすり鉢状に形成されている。
サンプル溶液及び試液を流入後には、図14に示すように、キャップ20が閉じられる。カバープレート60にキャップ20を押し付けると、キャップ20の係合部27が下部プレート30の係合溝20aに係合される。その結果、キャップ20が下部プレート30に取り外し不能に固定される。サンプル溶液がサンプル注入孔710を介してサンプルシリンジ702内に注入された後に、キャップ20が嵌め込み装着されると、キャップ20の下面でサンプル注入孔710及び空気抜き開口716が圧接変形されてサンプル注入孔710及び空気抜き開口716が閉塞される。このとき、サンプル注入孔710の上端部710a及び空気抜き開口716の上端部716aは、上面プレート50の厚みTPP1よりも上部に突出する長さで形成される。なお、上端部710a及び上端部716aの厚さは、係合部27と係合溝20aとが係合するような長さに形成されなければならない。
以上の結果、核酸検出カセット10は、液密に密閉され、サンプルの増幅或いはサンプルの電気化学反応の検出において、核酸検出カセット10が加熱されても核酸検出カセット10から外部にサンプルが漏れ出ることが防止される。
(検査装置)
図15は、図2に示される核酸検出カセット10が装着される検査装置の内部構造を示している。この検査装置内には、装着された核酸検出カセット10の背面側に、増幅部80を加熱する為のヒータ850及びDNAチップ6の検出流路100を反応温度に維持する為のペルチェ素子852が夫々リフト機構854,856によって矢印で示すように上下動可能に設けられている。ヒータ850及びペルチェ素子852並びにリフト機構854,856は、図1に示す温度制御機構14を構成している。
また、核酸検出カセット10の上面側に、DNAチップ6の電極パッド110、112内の電極パッド942に電気的に接続されて検出電流を取り出す電流プローブ960が上下動可能に設けられている。この電流プローブ960は、信号処理の為のプロセッサを含む回路基板962に電気的に接続され、図1に示す測定部12を構成している。
更に、核酸検出カセット10の上面側には、シリンジ702、704、706、708からサンプル溶液、洗浄液或いは挿入剤を送り出すためのシリンジロッド750が設けられ、また、常開バルブのロッド穴52、54を閉じる為の常開バルブロッド59が設けられている。核酸検出カセット10の下面側には、常閉バルブ718,728,738及び748を開放する為の常閉バルブロッド752が設けられている。これらシリンジロッド750、常開バルブロッド59及び常閉バルブロッド752は、送液制御機構16を構成している。
これら測定部12、温度制御機構14及び送液制御機構16を構成する各部は、制御部18に格納されたプログラムによって制御されて図26に示されるサンプルの電気化学的な検査が実行される。
(常閉バルブの動作)
図16は、常閉バルブ748の縦断面の斜視図である。図17は、図2のA―A線に沿った、常閉バルブ718、728、738、及び748の横断面の斜視図である。図18は、常閉バルブロッド752が挿入された際の常閉バルブ718,728、738、及び748の横断面の斜視図である。
カバープレート60には、図16に示すように核酸検出カセット10の幅方向に沿って舌片181、182、184、186が設けられ、これら舌片181、182、184、186の背後に常閉バルブ718、728、738、748の片持ちはり構造が設けられている。送液制御機構16のバルブロッドによってカバープレート60背面側からこの片持ちはり構造が開放操作されると、これら舌片181、182、184、186の背後の常閉バルブ718、728、738、748が開放される。
この常閉バルブ718、728、738、及び748各々は、カバープレート60に基部が枢支され、この基部から舌辺が延出されて片持ち梁構造を形成している。舌辺背面には、突起部171、172、173及び174が設けられ、パッキン40に設けられた溝内に配置されている。パッキン40の溝内には、薄膜の筒状部55が設けられ、この筒状部の空洞が下部プレート表面との間に流路を定めている。上部プレート50にカバープレート60が装着されると、突起部171、172、173及び174が、パッキン40に設けられた溝内に各々の筒状部55を上側から圧接されてその内の空洞部が潰されて、流路が遮断される。
このように常閉バルブ718、728、738、748は、突起部171、172、173及び174で押し潰されない場合には、常開バルブとしての機能を有し、突起部171、172、173及び174で押し潰されて常閉バルブとしての機能が与えられている。
サンプル溶液及び試液をシリンジ702に充填し、キャップをロックした核酸検出カセット10は、図15に示すように検査装置に設置される。このとき、図17に示すように、常閉バルブ718、728、738、及び748は、閉じられている。検査が実行されると、図18に示すように、ロッド穴部211を通って常閉バルブロッド752が、常閉バルブ718の上側のT字形の羽根部を上方向に押し上げる。その結果、図11に示すように筒状部55が開放され、流路712及び流路802の間の流路が開放される。常閉バルブ718は、1度開放されると検査の間は、開放されたままの状態である。検査の進行に従って、このような処理が、常閉バルブ728、738、及び748と、記載の順に繰り返され、全ての常閉バルブ718、728、738、及び748が開放される。
以上のように、実施の形態によれば、簡便なサンプル注入口及びサンプル注入口周辺の液密機構を備える核酸検査装置に利用可能な核酸検出カセットを提供することができる。
4…コンピュータ、6…DNAチップ、8…核酸検査装置、10…核酸検出用カード、12…測定部、14…温度制御機構、16…送液制御機構、18…装置制御部、20…キャップ、21…矩形上面平坦部、23…側部、22…切欠部、25…軸部、27…係合部、30…下部プレート、40…パッキン、50…上部プレート、51…窪み、52、54…ロッド孔、55…筒状部、57…窪み、56、58…プローブ孔、59…ロッド、60…カバープレート、70…シリンジ部、80…増幅部、90…検出部、100…検出流路、100B…流路形成領域、110、112…電極パッド領域、130…チップ用窪み、131…係合孔、132…溝、134…シリンジ用窪み、136…タンク用窪み、138…スタッド孔、139…凹凸溝、144…膨出部、144C…スリット、141、143、145、147…開口突起、141A、143A、145A、147A…貫通突起、142…送液流路用貫通孔、144B、146B…フレーム部、146、149…縦長貫通溝、148…挿通孔、150…前方領域、151、153、155、157…貫通孔、152…後方領域、155…スタッドピン、154、159…縦長貫通溝、156、158…スタッドピン、169…ステップ、160…切欠部、162…係合突起、164…縦長溝、166…挿通孔、171、172、173、174…突起部、181、182、184、186…舌片、201、202、203、203…窪み、211、212、213、214…ロッド穴部、702…サンプルシリンジ、704…第1洗浄液シリンジ、706…挿入剤シリンジ、708…第2洗浄液シリンジ、710…サンプル注入孔、720…第1洗浄液供給孔、730…挿入剤供給孔、740…第2洗浄液供給孔、712、714、722、724、732、734、742、744…流路、718、728、738、748…常閉バルブ、750…シリンジロッド、752…常閉バルブロッド、716、726、736、746…空気抜き開口、802、804,806…流路、810、820…常開バルブ、812、816…増幅流路、830…ウェル、832…プライマーセット、902…流路、910、912…入力側ポート、914、916…出力側ポート、908、922,924、926、928…流路、712B、714B、722B、724B、732B、734B、742B、744B、722B、732B、742B、802B、804B、806B、908B…帯状領域、812B、814B…矩形領域、812C、814C…貫通孔、850…ヒータ、852…ペルチェ素子、854、856…リフト機構、930…廃液タンク、932…補助廃液タンク、960…電流プローブ、962…回路基板

Claims (6)

  1. 剛性を有する第1のプレートと、
    第1のプレート上に載置された可撓性を有するパッキンと、
    前記パッキン上に載置され、このパッキンを圧縮するように、前記第1のプレートに固定される剛性を有する第2のプレートと、
    から構成される核酸検出デバイスにおいて、
    前記第1のプレートに形成されたシリンジ用窪み及び前記パッキンに形成され、前記シリンジ用窪みを覆う膨出部で構成され、前記第2のプレートに設けられたシリンジ溝内に前記膨出部が配置され、前記シリンジ溝を介して外部から変形可能な第1シリンジと、
    前記第1のプレート上に設けられた溝及び前記パッキンの下面との間に形成され、前記第1シリンジに連通されている第1及び第2の流路と、
    前記第2のプレートに穿孔された第1及び第2貫通孔内に夫々挿入配置され、前記パッキンから前記第2のプレート上に突出配置されるように前記パッキンに設けられ、前記第1及び第2の流路に夫々連通されるサンプル注入孔及び空気抜き孔が形成されているサンプル注入開口部及び空気抜き開口部と、
    閉塞面を有し、前記サンプル注入孔及び空気抜き孔に密着可能に前記第2のプレートに開閉可能に設けられ、開状態で前記サンプル注入孔及び空気抜き孔を確保し、状態において、閉塞面で前記サンプル注入開口部及び前記空気抜き開口部を変形して前記サンプル注入孔及び空気抜き孔を液密閉塞するキャップと、
    を備える核酸検出カセット。
  2. 前記サンプル注入開口部及び前記空気抜き開口部は、前記パッキンに一体的に形成されている、請求項の核酸検出カセット。
  3. 前記キャップは、係合部を有し、
    前記第1のプレートは、前記係合部が係合する係合溝を有し、
    前記係合部は、前記キャップが閉じられると前記係合溝に係合されて前記第1のプレート上にロックされる、請求項の核酸検出カセット。
  4. 前記第2のプレートを覆うように取り付け固定され、前記サンプル注入開口部及び前記空気抜き開口部を露出させる切欠部を有するカバープレートと、
    を更に具備し、
    前記キャップが前記カバープレートの前記切欠部に開閉可能に固定されている請求項の核酸検出カセット。
  5. 前記第1のプレート上に設けられた溝及び前記パッキンの下面との間に形成され、前記第1シリンジに連通されている第3の流路に連通される常閉バルブを更に具備し、当該常閉バルブは、
    前記パッキンに設けられ、前記第3の流路に連通する空洞を前記第1のプレートとの間に定める可撓性の筒状部と、
    この筒状部が受容されている前記第2のプレートに空けられている貫通孔と、
    前記カバープレートが前記第2のプレートに取り付けられた際に前記貫通孔内に配置されて前記可撓性の筒状部を押し潰して前記空洞を閉塞する突起部と、
    から構成される、請求項の核酸検出カセット。
  6. 前記常閉バルブは、前記カバープレートに片持ちはり構造を構成するように基部が枢支固定され、自由端が可動可能な舌片を有する可動部であって、前記突起部が前記舌片に設けられている可動部で構成され、外部から前記舌片が可動されて前記押し潰された前記筒状部の空洞が開放される、請求項の核酸検出カセット。
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