以下、本発明の各実施形態について、添付の図面を参照しながら説明する。なお、各実施形態に係る明細書及び図面の記載に関して、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重畳した説明を省略する。
<第1実施形態>
第1実施形態に係るワイヤレス電力伝送システムSについて、図1〜図6を参照して説明する。本実施形態に係るワイヤレス電力伝送システムSは、給電装置1が受電装置2に対してワイヤレスで電力を伝送するシステムである。ワイヤレス電力伝送システムSの電力伝送方式として、電力を電磁波(マイクロ波)に変換して給電する方式と、電界結合の共振現象を利用した方式と、磁界結合による方式とがある。以下では、電力伝送方式が磁界結合方式である場合を例に説明する。
図1は、ワイヤレス電力伝送システムSのハードウェア構成の一例を示す図である。図1に示すように、ワイヤレス電力伝送システムSは、給電装置1と、受電装置2と、を備える。以下、給電側と受電側それぞれの構成について説明する。
給電側である給電装置1は、直流電源18、制御回路11、インバータ回路12、給電コイルL1、初期電圧制御回路13、無線モジュールM1、降圧回路Re1、操作部19、及び報知部10を含んで構成される。
制御回路11は、初期電圧制御回路13や無線モジュールM1が出力する信号に基づき、ゲート信号G1〜G4を生成してインバータ回路12を制御する。このゲート信号G1〜G4は、インバータ回路12を制御する駆動制御信号である。この制御回路11の電源端子VDCは、直流電源18に接続されており、直流電圧Vdcが印加されることにより制御回路11が動作する。また、制御回路11は、定電圧端子VREGから所定の定電圧Vregを初期電圧制御回路13に印加する。この制御回路11は、無線モジュールM1が受信した整流電圧情報に基づき、パルス電力のオンデューティを可変制御するようにゲート信号G1〜G4を生成し、インバータ回路12を制御する。
インバータ回路12は、例えば、P型のMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)(以下「PMOS」という。)(Q1,Q2)と、N型のMOSFET(以下「NMOS」という。)(Q3,Q4)と、で構成されたフルブリッジ回路であり、受電装置2側の共鳴周波数で駆動するためのパルス電力を給電コイルL1に出力する。このインバータ回路12は、直流電源18に接続されており、直流電圧Vdcが印加されて動作する。インバータ回路12は、給電コイルL1に矩形波電圧を印加して、この給電コイルL1を駆動する。給電コイルL1には三角波(鋸歯状)の電流が流れ、受電装置2にワイヤレスで電力を送信する。なお、インバータ回路12は、全てNMOSで構成してもよい。
初期電圧制御回路13は、初期電圧を設定する初期電圧設定回路14と、初期電圧の設定を解除する初期電圧設定解除回路15と、を備える。具体的にいうと、初期電圧設定回路14は、分圧抵抗R1,R2を含んで構成される。初期電圧設定解除回路15は、トランジスタ(バイポーラトランジスタ)Q5を含んで構成され、分圧抵抗R1,R2の接続点である初期電圧のノードを、グランドの電位に落とす機能を有する。この初期電圧制御回路13は、制御回路11の定電圧端子VREGから所定の定電圧Vregが印加されて動作し、初期駆動制御信号Ssを端子FB1に出力する。制御回路11は、初期駆動制御信号Ssに基づき、ゲート信号G1〜G4のオンデューティの初期値を設定する。このとき、ワイヤレス給電はアイドル状態となり、後記する受電装置2の2次側電源部28は、無線モジュールM2が動作可能な第1の所定電圧Va1(例えば5V)を供給する。
無線モジュールM1は、例えば、Bluetooth(登録商標) Low Energyに準拠した無線ユニット16と、プロセッサ17と、入出力回路171と、D/Aコンバータ172と、RAM(Random Access Memory)173(第1の記憶装置)と、ROM(Read Only Memory)174と、を含んで構成される。入出力回路171、D/Aコンバータ172、RAM173、及びROM174については後述する。
無線ユニット16(第1の無線ユニット)は、受電装置2の無線ユニット26との間で無線通信路を介して信号を送受信する機能を有する。なお、無線ユニット16の電界強度と、後記する無線ユニット26の電界強度は、例えば、いずれも35μV/m以下である。
なお、無線ユニット16と無線ユニット26との間の通信は、電波通信に限られず、可視光通信や赤外線通信や超音波通信などの無線通信であってもよく、限定されない。
プロセッサ17は、給電装置1の上位システムである、操作スイッチやタッチパネル等で構成される操作部19から操作情報を取得する。プロセッサ17は、操作部19から取得した操作情報を、無線ユニット16を介して受電装置2に送信する。これによりユーザは、負荷29を操作することができる。また、プロセッサ17は、予め設定された制御信号を、無線ユニット16を介して受電装置2に送信する。これによりプロセッサ17は、負荷29に予め設定された動作を実行させることができる。この負荷29は、受電装置2の上位システムに相当し、例えば、LED(Light Emitting Diode)照明、センサ、マイコンなどであるが、これに限られない。
また、プロセッサ17は、給電装置1の上位システムである、液晶ディスプレイやスピーカ等で構成される報知部10にアラームを出力する。これにより、ワイヤレス給電に係るエラーをユーザに報知することができる。
この無線モジュールM1は、降圧回路Re1から駆動電圧V1(例えば、3.3V)の電力が供給されて動作する。降圧回路Re1は、直流電圧Vdcが印加されて駆動電圧V1の電力を供給する素子である。
受電側である受電装置2は、共鳴回路21、整流回路22、DC/DCコンバータ(直流変換回路;負荷の一例)23、分圧回路24、無線モジュールM2、及び降圧回路Re2を含んで構成される。
共鳴回路21は、受電コイルL2と共鳴コンデンサC1とが並列接続されたLC共鳴回路である。この共鳴回路21は、給電装置1の給電コイルL1からワイヤレスで電力を受信し、共鳴電圧を発生する。
整流回路22は、入力された交流を直流に整流するダイオードブリッジDBと、整流した電圧を平滑化する平滑コンデンサC2と、を含んで構成される。これにより整流電圧Vaの電力が出力され、DC/DCコンバータ23、分圧回路24、及び降圧回路Re2に供給される。2次側電源部28は、共鳴回路21と、整流回路22と、を含んで構成される。
無線モジュールM2は、例えば、Bluetooth(登録商標) Low Energyに準拠した無線ユニット26と、プロセッサ27と、入出力回路271と、A/Dコンバータ272と、RAM273と、ROM274(第2の記憶装置)と、を含んで構成される。入出力回路271、A/Dコンバータ272、RAM273、及びROM274については後述する。無線モジュールM2は、降圧回路Re2から駆動電圧V2(例えば、3.3V)の電力が供給されて動作する。
無線ユニット26(第2の無線ユニット)は、給電装置1との間で無線通信路を介して信号を送受信する機能を有する。プロセッサ27(第2のプロセッサ)は、例えばCPUであり、不図示の受電制御プログラムを実行してDC/DCコンバータ23を制御する。また、プロセッサ27は、検出電圧V3を計測して整流電圧情報を生成し、この整流電圧情報を無線ユニット26によって給電装置1に送信する。また、プロセッサ27は、制御信号S4をDC/DCコンバータ23に出力して、このDC/DCコンバータ23を起動または停止させる。
プロセッサ27はまた、給電装置1の操作部19から入力された操作情報を、無線ユニット26を介して受信し、この操作情報に基づきDC/DCコンバータ23や負荷29を制御する。
DC/DCコンバータ23は、2次側電源部28から第2の所定電圧Va2(例えば、12V)の電力が供給されると、これを別の出力電圧Voutの電力に変換する回路である。DC/DCコンバータ23の出力電圧Voutにより負荷29が駆動される。DC/DCコンバータ23は、第2の所定電圧Va2が変動しても出力電圧Voutが一定となるように動作する。よって負荷29を安定に動作させることができる。DC/DCコンバータ23と負荷29とは、この受電装置2における負荷部25に相当する。このDC/DCコンバータ23は、無線モジュールM2から出力される制御信号S4により起動または停止する。
分圧回路24は、分圧抵抗R3,R4を含んで構成され、整流電圧Vaを分圧した検出電圧V3を、無線モジュールM2のプロセッサ27に印加する。
この無線モジュールM2は、降圧回路Re2から駆動電圧V2(例えば、3.3V)の電力が供給されて動作する。降圧回路Re2は、整流電圧Vaが印加されて駆動電圧V2の電力を供給する素子であり、ここでは無線モジュールM2に供給している。
図2は、制御回路11の具体例を示す図である。
制御回路11は、降圧回路111、オペアンプ112,113、比較器114、ロジック回路115、及び発振回路116を含んで構成される。この制御回路11は、電源端子VDC、グランド端子GND、定電圧Vregを出力する定電圧端子VREGと、入力側の端子FB1,FB2及び端子SDと、出力側の端子G1,G2,G3,G4と、を含んでいる。
電源端子VDCには直流電圧Vdcが印加され、グランド端子GNDはグランドに接続される。
降圧回路111は、定電圧Vregを生成する回路であり、例えばレギュレータが電源端子VDCとグランド端子GNDに接続されて、直流電圧Vdcから生成した定電圧Vregを定電圧端子VREGに出力する。
オペアンプ112と抵抗R7とコンデンサC5とは、積分回路を構成する。抵抗R7の一端は、端子FB1を介してオペアンプ112の反転入力端子に接続される。コンデンサC5の一端は端子FB1を介してオペアンプ112の反転入力端子に接続され、他端はオペアンプ112の出力端子に接続される。オペアンプ112の非反転入力端子には、基準電圧Vref1が印加される。
この積分回路は、抵抗R7の他端に初期駆動制御信号Ssが入力されたとき、基準電圧Vref1と初期駆動制御信号Ssとの電位差を積分した出力信号SsCを出力する。この積分回路は、初期駆動制御信号Ssが基準電圧Vref1と等しくなるように積分時定数τsをもって制御する。初期駆動制御信号Ssは、初期電圧制御回路13の初期電圧設定回路14から入力される。
オペアンプ113と抵抗R6とコンデンサC4とは、積分回路を構成する。抵抗R6の一端は、端子FB2を介してオペアンプ113の反転入力端子に接続される。コンデンサC4の一端は端子FB2を介してオペアンプ113の反転入力端子に接続され、他端はオペアンプ113の出力端子に接続される。オペアンプ113の非反転入力端子には、基準電圧Vref2が印加される。
この積分回路は、抵抗R6の他端に制御信号S1が入力されたとき、基準電圧Vref2と制御信号S1の電位差を積分した出力信号S1Cを出力する。この積分回路は、制御信号S1が基準電圧Vref2と等しくなるように積分時定数τ1をもって制御する。制御信号S1は、無線モジュールM1のプロセッサ17から入力される。なお、これらオペアンプ112,113はコレクタ出力であり、それぞれの出力端子が接続されている。
比較器114の反転入力端子には、これらオペアンプ112,113の出力端子が接続されて出力信号SsCまたは出力信号S1Cのうち電圧の低い方が入力される。比較器114の非反転入力端子には、発振回路116の三角波信号Stが入力される。これにより、反転入力端子に印加された電圧に応じたオンデューティのパルス信号を生成することができる。
ロジック回路115は、入力側に比較器114の出力端子と、三角波信号Stと、端子SDとが接続され、出力側にゲート信号の出力端子が接続される。このロジック回路115は、三角波信号Stの上限ピーク、下限ピークと比較器114から入力されたパルス信号の立ち下がりからゲート信号G1,G2とゲート信号G3,G4とをそれぞれ生成する。ロジック回路115は、端子SDに無線モジュールM1のプロセッサ17から制御信号S3が入力されると、ゲート信号G1〜G4の出力動作を停止する。
発振回路116は、抵抗R5とコンデンサC3とに接続されて発振し、三角波を出力する。
図3は、ワイヤレス電力伝送システムSのハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
図3に示すワイヤレス電力伝送システムSは、図1に示した各部を模式化して示したものである。ワイヤレス電力伝送システムSは、給電装置1と受電装置2を含んで構成される。
給電装置1は、直流電源18、オペアンプ113、ロジック回路115、インバータ回路12、給電コイルL1、無線モジュールM1、降圧回路Re1、操作部19、及び報知部10を含んで構成される。なお、無線モジュールM1は、"BLEモジュール"と記載されている。
直流電源18は、降圧回路Re1、インバータ回路12、操作部19、報知部10に直流電圧Vdcを印加する。降圧回路Re1は、無線モジュールM1に駆動電圧V1を印加する。
無線モジュールM1は、プロセッサ17、無線ユニット16、入出力回路171、D/Aコンバータ172、RAM173、及びROM174を備える。プロセッサ17は、この無線モジュールM1を統括制御する。入出力回路171は、操作部19から操作情報を取得し、報知部10にアラームを出力する。D/Aコンバータ172は、オペアンプ113にアナログの制御信号S1を出力する。なお、入出力回路171及びD/Aコンバータ172は、プロセッサ17に含まれてもよい。また、D/Aコンバータ172は、無線モジュールM1には含まれずに、給電装置1に含んで構成されてもよい。RAM173は、プロセッサ17に作業領域を提供する。
ROM174は、不揮発性メモリである。ROM174は、例えば、フラッシュメモリであるが、これに限られない。ROM174は、プロセッサ17が実行する給電制御プログラムを永続的に記憶する。給電制御プログラムは、CD(Compact Disk)、DVD、フラッシュメモリなどの、コンピュータ読み取り可能な任意の記録媒体に記録され得る。
また、ROM174は、各種のデータを永続的に記憶する。本実施形態において、ROM174は、給電装置1の識別情報と、現在の処理値と、処理値Xの初期値及び終了値と、を永続的に記憶する。RAM173は、起動時にROM174から読み出された現在の処理値と、起動時に初期化された次の処理値と、を作業領域の変数として一時的に記憶する。
識別情報は、無線モジュールM1が無線モジュールM2と無線通信プロトコルに従って無線通信するための任意の情報を含む。
現在の処理値は、給電装置1が現在接続を行うべき受電装置2の処理番号Yと対応する値である。プロセッサ17は、給電装置1の給電範囲に進入した、現在の処理値と対応する処理番号Yを有する受電装置2を接続対象として、接続を実施する。
次の処理値は、給電装置1が、現在の処理値と対応する処理番号Yを有する受電装置2の次に接続を実行するべき受電装置2の処理番号Yと対応する値である。
処理値Xの初期値及び終了値は、予め設定された任意の値である。初期値及び終了値の一方が処理値Xの最小値であり、他方が処理値Xの最大値となる。処理値X及び処理番号Yについては、詳しくは後述する。
受電装置2は、受電コイルL2、整流回路22、分圧回路24、無線モジュールM2、降圧回路Re2、負荷部25を含んで構成される。なお、無線モジュールM2は、"BLEモジュール"と記載されている。整流回路22は、分圧回路24、降圧回路Re2、負荷部25に整流電圧Vaを供給する。降圧回路Re2は、無線モジュールM2に駆動電圧V2を供給する。
無線モジュールM2は、プロセッサ27、無線ユニット26、入出力回路271、A/Dコンバータ272、RAM273、及びROM274を備える。分圧回路24は、整流電圧Vaを分圧する分圧抵抗である。分圧回路24は、整流電圧Vaを分圧した検出電圧V3を、無線モジュールM2のA/Dコンバータ272に出力する。なお入出力回路271及びA/Dコンバータ272は、プロセッサ27に含まれてもよい。また、A/Dコンバータ272は、無線モジュールM2には含まれずに、受電装置2に含んで構成されてもよい。RAM273は、プロセッサ27に作業領域を提供する。
ROM274は、不揮発性メモリである。ROM274は、例えば、フラッシュメモリであるが、これに限られない。ROM274は、プロセッサ27が実行する受電制御プログラムを永続的に記憶する。受電制御プログラムは、CD、DVD、フラッシュメモリなどの、コンピュータ読み取り可能な任意の記録媒体に記録され得る。
また、ROM274は、各種のデータを永続的に記憶する。本実施形態において、ROM274は、受電装置2の識別情報と、処理番号と、を記憶する。
識別情報は、無線モジュールM2が無線モジュールM1と無線通信プロトコルに従って無線通信するための任意の情報を含む。
処理番号は、受電装置2ごとに予め設定された値である。本実施形態では、1つの給電装置1により、複数の受電装置2に対して、予め設定された所定の順番で接続することを想定している。受電装置2がn個である場合、1番目の受電装置2からn番目の受電装置2まで、給電装置1により順番に接続される。
このため、本実施形態では、給電装置1及び受電装置2には、それぞれ接続の順番に対応する処理値X及び処理番号Yが設定される。具体的には、給電装置1には、i番目(順番i)に対応する処理値Xiとしてf(i)が設定され、i番目に接続される受電装置2には処理番号Yiとしてg(i)が設定される。関数f及び関数gは、いずれもiが1からn+1までの範囲(1≦i≦n+1)で単調増加又は単調減少する関数であり、iが1からn+1までの範囲で一意の値となる。関数fは、例えば、f(i)=Ai+Bで表される。同様に、関数gは、例えば、g(i)=Ci+Dで表される。係数A,Cは0以外の任意の値であり、係数B,Dは、任意の値である。
上記のように、iが1からnまでの範囲で、処理値Xi及び処理番号Yiは一意の値となるため、処理値Xiと処理番号Yiとは一対一に対応する。処理値の初期値は、1番目に対応する処理番号Y1に相当し、処理値の終了値は、n番目に対応する処理番号Ynに相当する。また、現在の処理値及び次の処理値は、いずれも処理番号Y1〜Ynのいずれかに相当する。以下、処理値Xの初期値を初期値X1と称し、処理値Xの終了値を終了値Xnと称する。
例えば、f(i)=g(i)=iである場合、初期値X1は1、終了値Xnはn、現在の処理値及び次の処理値は1〜nのいずれかとなる。また、i番目に接続される受電装置2には、処理番号Yiとしてiが設定される。この場合、対応する処理値Xi及び処理番号Yiは、同一の値となる。
また、f(i)=n+1−i、g(i)=2×iである場合、初期値X1はn、終了値Xnは1、現在の処理値及び次の処理値は1〜nのいずれかとなる。また、i番目に接続される受電装置2には、処理番号Yiとして2×iが設定される。この場合、対応する処理値Xi及び処理番号Yiは、異なる値となり得る。
次に、ワイヤレス電力伝送システムSの動作について説明する。
まず、受電装置2の動作について説明する。図4は、受電装置2の動作の一例を示すフローチャートである。受電装置2は、無給電時において電源がオフになっている。受電装置2は、給電装置1の給電範囲に進入し、給電装置1から給電されると、図4の動作を開始する。
受電装置2は、給電装置1から給電されると、給電された電力により起動する(ステップS101)。受電装置2が起動すると、プロセッサ27がROM274から受電装置2の識別情報及び処理番号Yを読み出し(ステップS102)、RAM273に一時的に記憶する。
プロセッサ27は、識別情報及び処理番号Yを読み出すと、無線ユニット26を介して、識別情報及び処理番号Yを含む接続要求を、給電装置1に無線で送信する(ステップS103)。その後、プロセッサ27は、給電装置1から接続応答を受信するまで待機する(ステップS104)。プロセッサ27は、所定時間の間に接続応答を受信できなかった場合(ステップS104:NO)、再び接続要求を送信する(ステップS103)。以降、プロセッサ27は、接続応答を受信するか、給電装置1からの給電が終了するまで、所定時間毎に接続要求を送信する。
一方、プロセッサ27は、給電装置1から接続応答を受信した場合(ステップS104:YES)、接続処理を実行し、給電装置1との通信を接続する(ステップS105)。これにより、プロセッサ27は、給電装置1とデータ通信が可能となる。
プロセッサ27は、給電装置1と接続すると、受電装置2の上位システム(負荷29)に接続中信号を出力する(ステップS106)。受電装置2の上位システムは、接続中信号を入力されると、データ通信可能な状態に遷移する。上位システムは、接続中信号が入力されるまで、電源がオフでもよいし、スリープ状態であってもよい。なお、受電装置2の上位システムは、接続処理後に電源が供給されても良い。
以降、プロセッサ27は、無線ユニット26を介して、給電装置1とデータ通信を実行する(ステップS107)。当該データ通信により、例えば、受電装置2の上位システムから給電装置1へのデータの送信や、受電装置2の上位システムの検査及び更新などのデータ処理が行われる。また、当該データ通信により、受電装置2の上位システムが起動されてもよい。
プロセッサ27は、データ通信の実行中に給電装置1と通信不能になった場合(ステップS108:YES)、切断処理を実行し、給電装置1との通信を切断する(ステップS111)。プロセッサ27は、給電装置1から所定時間以上データを受信できなかった場合、通信不能と判断すればよい。給電装置1と通信不能になる場合として、障害物や電磁ノイズなどの外部環境による通信障害や、受電装置2が給電範囲から退出したことによる受電電圧の低下などが考えられる。プロセッサ27は、給電装置1と切断すると、上位システムへの接続中信号の出力を停止する(ステップS112)。受電装置2の上位システムは、接続中信号が停止すると、電源がオフになってもよいし、スリープ状態になってもよい。
また、プロセッサ27は、ROM274に予め設定されたプログラムや受電装置2の上位システムの判断によりデータ通信が完了した場合(ステップS109:YES)、無線ユニット26を介して、給電装置1に切断要求を無線で送信する(ステップS113)。その後、プロセッサ27は、切断処理を実行し、給電装置1との通信を切断し(ステップS111)、上位システムへの接続中信号の出力を停止する(ステップS112)。
また、プロセッサ27は、データ通信の実行中に給電装置1から切断要求を受信した場合(ステップS110:YES)、切断処理を実行し、給電装置1との通信を切断し(ステップS111)、上位システムへの接続中信号の出力を停止する(ステップS112)。なお、受電装置2の上位システムは、接続処理後に電源が切断されても良い。
次に、給電装置1の動作について説明する。図5は、給電装置1の動作の一例を示すフローチャートである。給電装置1は、ユーザにより起動されると、図5の動作を開始する。
給電装置1が起動すると、まず、プロセッサ17がROM174から給電装置1の識別情報と、現在の処理値と、初期値X1及び終了値Xnと、を読み出し(ステップS201)、RAM173に一時的に記憶する。この際、プロセッサ17は、RAM173に、次の処理値の初期値(例えば、空値)を記憶する。プロセッサ17は、現在の処理値が設定されていない場合、現在の処理値を初期値X1に設定すればよい。以下では、現在の処理値が処理値Xiであるものとする。また、制御回路11がインバータ回路12を制御して、所定の電力の給電を開始する(ステップS202)。以降、プロセッサ17は、受電装置2から接続要求を受信するまで待機する(ステップS203)。
プロセッサ17は、受電装置2から接続要求を受信した場合(ステップS203:YES)、受信した接続要求に含まれる処理番号Yが、現在の処理値(処理値Xi)と対応するか確認する(ステップS204)。これは、現在の処理値(処理値Xi)に対応する順番iと、処理番号Yに対応する順番と、が一致するか確認することに相当する。
プロセッサ17は、受信した接続要求に含まれる処理番号Yが現在の処理値(処理値Xi)と対応しない場合(ステップS204:NO)、当該接続要求を送信した受電装置2は、接続対象ではないと判断し、ステップS203の動作に戻る。
一方、プロセッサ17は、受信した接続要求に含まれる処理番号Yが現在の処理値(処理値Xi)と対応する場合(ステップS204:YES)、すなわち、接続要求を送信した受電装置2がi番目に接続する受電装置2である場合、当該接続要求を送信した受電装置2が接続対象であると判断する。そして、プロセッサ17は、無線ユニット16を介して、給電装置1の識別情報を含む接続応答を受電装置2に無線で送信する(ステップS205)。その後、プロセッサ17は、接続処理を実行し、受電装置2との通信を接続する(ステップS206)。これにより、プロセッサ17は、受電装置2とデータ通信が可能となる。
プロセッサ17は、受電装置2と接続すると、給電装置1の上位システム(操作部19など)に接続中信号を出力する(ステップS207)。給電装置1の上位システムは、接続中信号を入力されると、データ通信可能な状態に遷移する。上位システムは、接続中信号が入力されるまで、電源がオフでもよいし、スリープ状態であってもよい。
また、プロセッサ17は、現在の処理値(処理値Xi)に対応する順番iの次の順番i+1に対応する処理値Xi+1を算出し、処理値Xi+1が初期値X1から終了値Xnまでの範囲内であるか確認する(ステップS208)。具体的には、プロセッサ17は、処理値Xが単調増加する場合、すなわち、終了値Xnが処理値Xの最大値である場合、処理値Xi+1が終了値Xn以下であるか確認する。また、プロセッサ17は、処理値Xが単調減少する場合、すなわち、終了値Xnが処理値Xの最小値である場合、処理値Xi+1が終了値Xn以上であるか確認する。
プロセッサ17は、処理値Xi+1が範囲外である場合(ステップS208:NO)、次の処理値を初期値X1に更新する(ステップS209)。処理値Xi+1が範囲外である場合とは、接続中の受電装置2がn番目に接続する受電装置2である場合に相当する。一方、プロセッサ17は、処理値Xi+1が範囲内である場合(ステップS208:YES)、次の処理値を処理値Xi+1に更新する(ステップS210)。このように、本実施形態では、現在の処理値が循環するように更新される。この結果、n番目の受電装置2の次に接続される受電装置2は、1番目の受電装置2となる。
以降、プロセッサ17は、無線ユニット16を介して、受電装置2とデータ通信を実行する(ステップS211)。当該データ通信により、プロセッサ17は、例えば、受電装置2の上位システムからのデータの受信や、受電装置2の上位システムの検査及び更新などを行うことができる。また、プロセッサ17は、当該データ通信により、受電装置2の上位システムを起動させてもよい。
ここで、給電装置1から接続対象となる受電装置2への接続について説明する。
給電装置1のインバータ回路12は、給電コイルL1を駆動する。受電装置2は、電磁誘導により受電コイルL2で電力が発生する。この電力は整流回路22で整流された整流電圧Vaとなったのち、分圧回路24で分圧されて検出電圧V3となり、定期的にA/Dコンバータ272で測定される。受電装置2のプロセッサ27は、無線ユニット26により、A/Dコンバータ272で測定した検出電圧V3を給電装置1に送信する。
給電装置1のプロセッサ17は、無線ユニット16を介して受信した整流電圧値をD/Aコンバータ172でアナログ電圧である制御信号S1に変換する。D/Aコンバータ172は、新たな整流電圧値を受信するまでは、直前の整流電圧値に基づくアナログ電圧を継続してオペアンプ113に出力する。オペアンプ113は、入力されるアナログ電圧を積分した出力信号S1Cを、三角波との比較器114を介してロジック回路115に出力する。ロジック回路115は、出力信号S1Cに応じたデューティでインバータ回路12を駆動する。ワイヤレス電力伝送システムSは、このように給電電力を制御することで、受電装置2の整流電圧Va(受電電圧)が12V(目標値)の電圧で安定するように制御することができる。
ここで、図5のフローチャートに戻る。プロセッサ17は、データ通信の実行中に受電装置2と通信不能になった場合(ステップS212:YES)、切断処理を実行し、受電装置2との通信を切断する(ステップS218)。プロセッサ17は、受電装置2から所定時間以上データを受信できなかった場合、通信不能と判断すればよい。受電装置2と通信不能になる場合として、障害物や電磁ノイズなどの外部環境による通信障害や、受電装置2が給電範囲から退出したことによる受電電圧の低下などが考えられる。プロセッサ17は、受電装置2と切断すると、上位システムへの接続中信号の出力を停止する(ステップS219)。給電装置1の上位システムは、接続中信号が停止すると、電源がオフになってもよいし、スリープ状態になってもよい。
また、プロセッサ17は、データ通信の実行中に受電装置2から切断要求を受信した場合(ステップS213:YES)、すなわち、データ通信が完了した場合、現在の処理値(処理値Xi)を次の処理値(初期値X1又は処理値Xi+1)に更新する(ステップS217)。その後、プロセッサ17は、切断処理を実行し、受電装置2との通信を切断し(ステップS218)、上位システムへの接続中信号の出力を停止する(ステップS219)。
なお、図4及び図5の例では、データ通信の完了を受電装置2が判断しているが、データ通信の完了は給電装置1が判断してもよい。この場合、データ通信が完了すると、給電装置1が受電装置2に切断要求を送信すればよい。
また、プロセッサ17、データ通信の実行中に新たな受電装置2から接続要求を受信した場合(ステップS214:YES)、受信した接続要求に含まれる処理番号Yが、次の処理値(初期値Xi又は処理値Xi+1)と対応するか確認する(ステップS215)。これは、次の処理値(初期値Xi又は処理値Xi+1)に対応する順番(1又はi+1)と、処理番号Yに対応する順番と、が一致するか確認することに相当する。
プロセッサ17は、受信した接続要求に含まれる処理番号Yが次の処理値(初期値X1又は処理値Xi+1)と対応しない場合(ステップS215:NO)、当該接続要求を送信した受電装置2は、次の接続対象ではないと判断し、ステップS211の動作に戻る。
一方、プロセッサ17は、受信した接続要求に含まれる処理番号Yが次の処理値(初期値X1又は処理値Xi+1)と対応する場合(ステップS215:YES)、すなわち、接続要求を送信した受電装置2が1番目又はi+1番目に接続する受電装置2である場合、当該接続要求を送信した受電装置2が次の接続対象であると判断する。そして、プロセッサ17は、無線ユニット16を介して、接続中の受電装置2に切断要求を無線で送信し(ステップS216)、現在の処理値(処理値Xi)を次の処理値(初期値X1又は処理値Xi+1)に更新し(ステップS217)、切断処理を実行し、接続中の受電装置2との通信を切断し(ステップS218)、上位システムへの接続中信号の出力を停止する(ステップS219)。
プロセッサ17は、ユーザにより給電装置1が起動されて以降、ステップS203〜S219の動作を繰り返し実行する。プロセッサ17は、ユーザにより給電装置1の電源がオフにされると、ステップS203〜S219の動作により更新された現在の処理値を、ROM174に保存し(ステップS221)、給電を終了する(ステップS222)。
給電装置1が次に起動された際には、ステップS221において保存された現在の処理値がプロセッサ17により読み出される。なお、以上では、現在の処理値が、給電を終了する際にROM174に保存される場合を想定して説明したが、現在の処理値は、更新されるたびにROM174に保存されてもよい。この場合、ステップS221は不要である。
次に、ワイヤレス電力伝送システムSの動作の具体例について説明する。図6は、ワイヤレス電力伝送システムSの動作の具体例を説明する図である。図6の例では、10個の受電装置2a〜2jが、順番に給電装置1の給電範囲を通過するように、コンベア3により搬送される場合を想定している(n=10)。また、図6の例ではi=Xi=Yiであり、給電装置1は、初期値X1として1を設定され、終了値X10として10を設定され、受電装置2a〜2jは、それぞれ処理番号1〜10を設定されているものとする。また、給電装置1は、現在の処理値が初期値X1である1に設定されているものとする。
給電装置1の給電範囲に受電装置2が存在しない場合、いずれの受電装置2も電源がオフであるため、接続要求を送信しない。給電装置1は、接続要求を受信できないため(ステップS203:NO)、接続要求の受信を待機する。
図6に示すように、コンベア3が進み、1番目の受電装置2aが給電範囲に進入すると、給電装置1からの給電により受電装置2aが起動し(ステップS101)、プロセッサ27が受電装置2aの処理番号「1」を読み出し(ステップS102)、給電装置1に接続要求を送信する(ステップS103)。給電装置1のプロセッサ17は、この接続要求を受信すると(ステップS203:YES)、接続要求に含まれる処理番号「1」と現在の処理値「1」とが対応するため(ステップS204:YES)、受電装置2aに接続応答を送信し(ステップS205)、受電装置2aと接続し(ステップS206)、上位システムに接続中信号を出力する(ステップS207)。また、プロセッサ17は、次の順番「2」に対応する処理値「2」は、終了値「10」以下であるため(ステップS208:YES)、次の処理値「1」を2に更新する(ステップS210)。以降、給電装置1は、受電装置2aとデータ通信を実行する(ステップS211)。
一方、受電装置2aのプロセッサ27は、給電装置1から接続応答を受信すると(ステップS104:YES)、給電装置1と接続し(ステップS105)、上位システムに接続中信号を出力する(ステップS106)。以降、受電装置2aは、給電装置1とデータ通信を実行する(ステップS107)。
データ通信が完了すると(ステップS109:YES)、受電装置2aのプロセッサ27は、給電装置1に切断要求を送信し(ステップS113)、給電装置1と切断し(ステップS111)、接続中信号を停止する(ステップS112)。
給電装置1は、受電装置2aから切断要求を受信すると(ステップS213:YES)、現在の処理値「1」を次の処理値「2」に更新し(ステップS217)、受電装置2aと切断し(ステップS218)、接続中信号を停止する(ステップS219)。
以降、給電装置1は、接続要求の受信を待機する(ステップS203)。また、受電装置2aは、給電範囲から退出するまで、所定時間毎に接続要求を送信する(ステップS103)。この時点で、現在の処理値は2に設定され、次の処理値は2に設定されているため、プロセッサ17は、処理番号が1に設定された受電装置2aから接続要求を受信しても(ステップS203:YES)、受電装置2aは接続対象ではないと判断する(ステップS204:NO)。
コンベア3が進み、新たな受電装置2が給電範囲に進入するたびに、ワイヤレス電力伝送システムSは、上記と同様の動作を行う。9番目の受電装置2iに対する接続が終了した時点で、現在の処理値及び次の処理値はいずれも10に設定される。
コンベア3が進み、10番目の受電装置2jが給電範囲に進入すると、給電装置1からの給電により受電装置2jが起動し(ステップS101)、プロセッサ27が受電装置2jの処理番号「10」を読み出し(ステップS102)、給電装置1に接続要求を送信する(ステップS103)。給電装置1のプロセッサ17は、この接続要求を受信すると(ステップS203:YES)、接続要求に含まれる処理番号「10」と現在の処理値「10」とが対応するため(ステップS204:YES)、受電装置2jに接続応答を送信し(ステップS205)、受電装置2jと接続し(ステップS206)、上位システムに接続中信号を出力する(ステップS207)。ただし、プロセッサ17は、次の順番「11」に対応する処理値「11」は、終了値「10」より大きいため(ステップS208:NO)、次の処理値「10」を初期値「1」に更新する(ステップS209)。以降、給電装置1は、受電装置2jとデータ通信を実行する(ステップS211)。
一方、受電装置2jのプロセッサ27は、給電装置1から接続応答を受信すると(ステップS104:YES)、給電装置1と接続し(ステップS105)、上位システムに接続中信号を出力する(ステップS106)。以降、受電装置2jは、給電装置1とデータ通信を実行する(ステップS107)。
データ通信が完了すると(ステップS109:YES)、受電装置2jのプロセッサ27は、給電装置1に切断要求を送信し(ステップS113)、給電装置1と切断し(ステップS111)、接続中信号を停止する(ステップS112)。
給電装置1は、受電装置2jから切断要求を受信すると(ステップS213:YES)、現在の処理値「10」を次の処理値「1」に更新し(ステップS217)、受電装置2jと切断し(ステップS218)、接続中信号を停止する(ステップS219)。
以降、給電装置1は、接続要求の受信を待機する(ステップS203)。また、受電装置2jは、給電範囲から退出するまで、所定時間毎に接続要求を送信する(ステップS103)。この時点で、現在の処理値は1に設定され、次の処理値は1に設定されているため、プロセッサ17は、処理番号が10に設定された受電装置2jから接続要求を受信しても(ステップS203:YES)、受電装置2jは接続対象ではないと判断する(ステップS204:NO)。
コンベア3が循環型のコンベアであり、受電装置2a〜2jが再び給電範囲に進入する場合、受電装置2a〜2jが給電範囲に進入するたびに、ワイヤレス電力伝送システムSは上記の動作を実行する。受電装置2a〜2jが給電範囲に進入するたび、給電装置1が実行するデータ処理の内容を変化させることで、受電装置2a〜2jの順番を維持したまま、各受電装置2a〜2jに対してバッチ処理を実行できる。
また、受電装置2a〜2jとは異なる10個の受電装置2k〜2tの処理番号をそれぞれ1〜10に設定することにより、受電装置2k〜2tに対して、受電装置2a〜2jと同様の処理を実行させることができる。
ここでさらに、給電装置1と受電装置2とが通信不能になった場合、及び2つの受電装置2が同時に給電範囲に進入した場合についてそれぞれ説明する。
まず、給電装置1と受電装置2とが通信不能になった場合について説明する。ここでは、給電装置1と受電装置2aとがデータ通信中であるものとする(ステップS107,S211)。この時点では、上述の通り、現在の処理値は1に設定され、次の処理値は2に設定されている。
受電装置2aは、給電装置1と通信不能になると(ステップS108:YES)、給電装置1と切断し(ステップS111)、上位システムへの接続中信号を停止する(ステップS112)。この時点で、受電装置2aがいまだ給電範囲に含まれる場合、プロセッサ27は、接続要求の送信を再開する(ステップS103)。この際、受電装置2aは起動済みであり、処理番号「1」は読み出し済みであるため、ステップS101,S102は省略される。
給電装置1は、受電装置2aと通信不能になると(ステップS212:YES)、受電装置2aと切断し(ステップS218)、上位システムへの接続中信号を停止し(ステップS219)、接続要求の受信の待機を再開する(ステップS203)。すなわち、給電装置1と受電装置2aとが通信不能になっても、現在の処理値「1」は更新されない。
その後、給電装置1と受電装置2aとが通信可能になると、給電装置1は、受電装置2aから接続要求を受信する(ステップS203:YES)。この時、現在の処理値は1であるため、給電装置1は、受電装置2aが接続対象であると判断する(ステップS204:YES)。結果として、給電装置1と受電装置2aとのデータ通信が再開される。
このように、本実施形態によれば、データ通信を実行中の給電装置1と受電装置2と通信不能になった場合であっても、通信状態の回復後に、給電装置1と受電装置2とのデータ通信を自動的に再開させることができる。
次に、2つの受電装置2が同時に給電範囲に進入した場合について説明する。ここでは、受電装置2a,2bが給電範囲に同時に進入したものとする。受電装置2bが給電範囲に進入した時点では、上述の通り、現在の処理値は1に設定され、次の処理値は2に設定されている。
コンベア3が進み、給電装置1と受電装置2aとのデータ通信中に、2番目の受電装置2bが給電範囲に進入すると、給電装置1からの給電により受電装置2bが起動し(ステップS101)、プロセッサ27が受電装置2bの処理番号「2」を読み出し(ステップS102)、給電装置1に接続要求を送信する(ステップS103)。給電装置1のプロセッサ17は、この接続要求を受信すると(ステップS214:YES)、接続要求に含まれる処理番号「2」と次の処理値「2」とが対応するため(ステップS215:YES)、受電装置2aに切断要求を送信し(ステップS216)、現在の処理値「1」を次の処理値「2」に更新し(ステップS217)、受電装置2aと切断し(ステップS218)、接続中信号を停止し(ステップS219)、接続要求の受信の待機を再開する(ステップS203)。
受電装置2bは、所定時間ごとに接続要求を送信するため、プロセッサ17は、接続要求の受信の待機を再開すると、受電装置2bからの接続要求を再び受信する(ステップS203:YES)。この時、現在の処理値は2であるため、給電装置1は、受電装置2bが接続対象であると判断する(ステップS204:YES)。結果として、給電装置1と受電装置2bとのデータ通信が開始される。
このように、本実施形態によれば、給電装置1が受電装置2とデータ通信を実行している間に、次に接続する他の受電装置2が給電範囲に進入した場合、給電装置1は、他の受電装置2と自動的にデータ通信を開始することができる。
以上説明した通り、本実施形態に係る給電装置1は、現在の処理値及び次の処理値と、受電装置2の処理番号Yと、に基づいて、受電装置2を所定の順番で接続対象として選択し、選択した受電装置2とデータ通信を実行することができる。すなわち、給電装置1が接続対象となる受電装置2を所定の順番で選択可能なワイヤレス電力伝送システムSを提供できる。これにより、給電装置1は、受電装置2の所定の順番を維持したまま、受電装置2の受電電圧を安定させつつ、当該受電装置2の上位システムからのデータの受信や、受電装置2の上位システムの検査及び更新などを行うことができる。
また、本実施形態に係る給電装置1は、複数の受電装置2を集中的に管理するためのテーブルを必要としないため、RAM173及びROM174の記憶容量を小さくすることができる。
<第2実施形態>
第2実施形態に係るワイヤレス電力伝送システムSについて、図7及び図8を参照して説明する。本実施形態に係るワイヤレス電力伝送システムSのハードウェア構成は、第1実施形態と同様である。以下、第1実施形態との相違点を中心に説明する。
本実施形態において、ROM174は、給電装置1の識別情報と、現在の処理値と、初期値X1と、を記憶する。すなわち、RAM173(第1の記憶装置)及びROM174は、終了値Xnを記憶しない。
また、本実施形態において、ROM274(第2の記憶装置)は、受電装置2の識別情報と、処理番号Yと、次の処理番号yと、を記憶する。次の処理番号yは、当該受電装置2の次に接続するべき受電装置2の処理番号Yである。
処理番号は、受電装置2ごとに予め設定された値である。本実施形態では、1つの給電装置1により、複数の受電装置2に対して、予め設定された所定の順番で接続することを想定している。受電装置2がn個である場合、1番目の受電装置2からn番目の受電装置2まで、給電装置1により順番に接続される。
本実施形態では、接続する受電装置2の順番は、次の処理番号yにより指定される。このため、給電装置1及び受電装置2には、それぞれランダムな処理値X及び処理番号Yが設定され得る。例えば、i番目に接続される受電装置2にはランダムな処理番号Yiが設定され、i+1番目に接続される受電装置2にはランダムな処理番号Yi+1が設定される。この場合、i番目に接続される受電装置2には、次の処理番号yとしてYi+1が設定される。また、現在の処理値及び次の処理値は、受電装置2から受信した処理番号Y及び次の処理番号yにより更新される。このため、現在の処理値及び次の処理値と、いずれかの受電装置2の処理番号Y及び次の処理番号yと、は一致する。なお、第1実施形態と同様に、給電装置1及び受電装置2には、それぞれ接続する順番に対応する処理値X及び処理番号Yが設定されてもよい。
次に、本実施形態におけるワイヤレス電力伝送システムSの動作について説明する。
まず、受電装置2の動作について説明する。図7は、受電装置2の動作の一例を示すフローチャートである。図7のステップS301,S304〜S313は、図4のステップS101,S104〜S113とそれぞれ同様である。
受電装置2は、給電装置1から給電されると、給電された電力により起動する(ステップS301)。受電装置2が起動すると、プロセッサ27がROM274から受電装置2の識別情報、処理番号Y、及び次の処理番号yを読み出し(ステップS302)、RAM273に一時的に記憶する。
プロセッサ27は、識別情報、処理番号Y、及び次の処理番号yを読み出すと、無線ユニット26を介して、識別情報、処理番号Y、及び次の処理番号yを含む接続要求を、給電装置1に無線で送信する(ステップS303)。その後、プロセッサ27は、給電装置1から接続応答を受信するまで待機する(ステップS304)。プロセッサ27は、所定時間の間に接続応答を受信できなかった場合(ステップS304:NO)、再び接続要求を送信する(ステップS303)。以降、プロセッサ27は、接続応答を受信するか、給電装置1からの給電が終了するまで、所定時間毎に接続要求を送信する。
一方、プロセッサ27は、給電装置1から接続応答を受信した場合(ステップS304:YES)、接続処理を実行し、給電装置1との通信を接続する(ステップS305)。これにより、プロセッサ27は、給電装置1とデータ通信が可能となる。以降の動作は、第1実施形態と同様である。
次に、給電装置1の動作について説明する。図8は、給電装置1の動作の一例を示すフローチャートである。図8のステップS402,S404〜S407,S409〜S420は、図5のステップS202,S204〜S207,S211〜S222とそれぞれ同様である。
給電装置1が起動すると、まず、プロセッサ17がROM174から給電装置1の識別情報と、現在の処理値と、初期値X1と、を読み出し(ステップS401)、RAM173に一時的に記憶する。この際、プロセッサ17は、RAM173に、次の処理値の初期値(例えば、空値)を記憶する。プロセッサ17は、現在の処理値が設定されていない場合、現在の処理値を初期値X1に設定すればよい。以下では、現在の処理値が処理値Xであるものとする。また、制御回路11がインバータ回路12を制御して、所定の電力の給電を開始する(ステップS402)。以降、プロセッサ17は、受電装置2から接続要求を受信するまで待機する(ステップS403)。
プロセッサ17は、受電装置2から接続要求を受信した場合(ステップS403:YES)、受信した接続要求に含まれる処理番号Yが、現在の処理値(処理値X)と一致するか確認する(ステップS404)。
プロセッサ17は、受信した接続要求に含まれる処理番号Yが現在の処理値(処理値X)と一致しない場合(ステップS404:NO)、当該接続要求を送信した受電装置2は、接続対象ではないと判断し、ステップS403の動作に戻る。
一方、プロセッサ17は、受信した接続要求に含まれる処理番号Yが現在の処理値(処理値X)と一致する場合(ステップS404:YES)、当該接続要求を送信した受電装置2が接続対象であると判断する。そして、プロセッサ17は、無線ユニット16を介して、給電装置1の識別情報を含む接続応答を受電装置2に無線で送信する(ステップS405)。その後、プロセッサ17は、接続処理を実行し、受電装置2との通信を接続する(ステップS406)。これにより、プロセッサ17は、受電装置2とデータ通信が可能となる。
プロセッサ17は、受電装置2と接続すると、給電装置1の上位システム(操作部19など)に接続中信号を出力する(ステップS407)。給電装置1の上位システムは、接続中信号を入力されると、データ通信可能な状態に遷移する。上位システムは、接続中信号が入力されるまで、電源がオフでもよいし、スリープ状態であってもよい。
また、プロセッサ17は、次の処理値を、受電装置2から受信した接続要求に含まれる次の処理番号yに更新する(ステップS408)。
以降、プロセッサ17は、無線ユニット16を介して、受電装置2とデータ通信を実行する(ステップS409)。当該データ通信により、プロセッサ17は、例えば、受電装置2の上位システムからのデータの受信や、受電装置2の上位システムの検査及び更新などを行うことができる。また、プロセッサ17は、当該データ通信により、受電装置2の上位システムを起動させてもよい。以降の動作は、第1実施形態と同様である。
以上説明した通り、本実施形態に係る給電装置1は、現在の処理値及び次の処理値と、受電装置2の処理番号Y及び次の処理番号yと、に基づいて、受電装置2を所定の順番で接続対象として選択し、選択した受電装置2とデータ通信を実行することができる。すなわち、給電装置1が接続対象となる受電装置2を所定の順番で選択可能なワイヤレス電力伝送システムSを提供できる。これにより、給電装置1は、受電装置2の所定の順番を維持したまま、受電装置2の受電電圧を安定させつつ、当該受電装置2の上位システムからのデータの受信や、受電装置2の上位システムの検査及び更新などを行うことができる。
また、本実施形態に係る給電装置1は、複数の受電装置2を集中的に管理するためのテーブルを必要としないため、RAM173及びROM174の記憶容量を小さくすることができる。
また、本実施形態によれば、新たな受電装置2を、所望の順番に容易に追加および削除することができる。例えば、第1実施形態では、k番目に新たな受電装置2を追加する場合、k+1番目以降の受電装置2に設定された処理番号と、給電装置1に設定された終了値Xnと、を更新する必要がある。これに対して、本実施形態では、k−1番目の受電装置2に設定された次の処理番号yを新たな受電装置2の処理番号Yに更新し、新たな受電装置2の次の処理番号yを、新たな受電装置2を追加する前のk番目の受電装置2の処理番号Yに設定することにより、新たな受電装置2をk番目の受電装置2として追加することができる。
(変形例)
本発明は、上記実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変更実施が可能であり、例えば、次の(a)〜(j)のようなものがある。
(a) 受電装置2にDC/DCコンバータ23は必須ではなく、負荷29が直接に接続されていてもよい。
(b) 給電装置1の上位システムから制御する対象は、DC/DCコンバータ23に限られず、例えば負荷29を直接に制御してもよい。
(c) 給電装置1と受電装置2との間の無線通信プロトコルは、Bluetooth(登録商標) Low Energyに限定されず、Wi-Fi(登録商標)やZIGBEE(登録商標)などであってもよい。
(d) 給電装置1と受電装置2との間の無線通信は、電波通信に限定されず、適切な無線通信路を確立できれば、例えば赤外線通信、可視光通信、超音波通信などの無線方式であってもよく、限定されない。
(e) フィードバック制御は、上記実施形態に示した比例制御(古典制御)に限定されず、PI制御やPID制御などの古典制御、または現代制御であってもよく、限定されない。
(f) 制御回路11が備える積分回路の代わりに、デジタルシグナルプロセッサを用いて積分処理を行ってもよい。
(g) プロセッサ17,27は、上位システムに接続中信号を出力しなくてもよい。
(h) 図6において、受電装置2の搬送手段は、コンベア3に限られず、ロボットアーム、ドローン、無人搬送車などであってもよい。また、受電装置2の代わりに、給電装置1が搬送されてもよい。
(i) 図3において、D/Aコンバータ172、オペアンプ113、ロジック回路115の代わりに、BLEモジュールM1に内蔵のPWM制御部を使用して、インバータ回路12を直接駆動しても良い。
(j)ワイヤレス電力伝送方式は、電磁誘導の代わりに磁気共鳴方式を利用しても良い。