JP6852996B2 - 酸化亜鉛化合物膜の成膜方法、および、酸化亜鉛化合物膜 - Google Patents

酸化亜鉛化合物膜の成膜方法、および、酸化亜鉛化合物膜 Download PDF

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Description

本発明は、酸化亜鉛化合物膜の成膜方法、および、酸化亜鉛化合物膜に関する。
透明導電膜である酸化亜鉛化合物膜には、酸化亜鉛膜、アルミニウムを含む酸化亜鉛膜、および、ガリウムを含む酸化亜鉛膜が知られている(例えば、特許文献1参照)。こうした酸化亜鉛化合物膜は、各種デバイス、例えば、フラットパネルディスプレイ、エレクトロクロミック表示装置、および、太陽電池などが備える電極の形成材料として用いられている。
特開2008−97969号公報
ところで、酸化亜鉛化合物膜が有する導電性や表面の平坦性は、酸化亜鉛化合物膜が結晶配向性を有することによって実現される膜特性であり、近年では、こうした酸化亜鉛化合物膜の結晶配向性を高めることが求められている。
本発明は、結晶配向性を高めることを可能とした酸化亜鉛化合物膜の成膜方法、および、酸化亜鉛化合物膜を提供することを目的とする。
上記課題を解決するための酸化亜鉛化合物膜の成膜方法において、酸化亜鉛化合物は、酸化亜鉛、アルミニウムを含む酸化亜鉛、および、ガリウムを含む酸化亜鉛から構成される群から選択されるいずれか1つであり、成膜対象を加熱しながら、窒素を含むガスから生成されたプラズマ中で酸化亜鉛化合物を主成分とするターゲットをスパッタして、窒素と酸化亜鉛化合物とを含む初期層である第1層を形成することと、前記成膜対象を加熱しながら、希ガスから生成されたプラズマ中で前記ターゲットをスパッタし、それによって、前記第1層の酸化亜鉛化合物を含み、かつ、結晶化した第2層を前記第1層上に形成することと、を含む。
上記課題を解決するための酸化亜鉛化合物膜において、酸化亜鉛化合物は、酸化亜鉛、アルミニウムを含む酸化亜鉛、および、ガリウムを含む酸化亜鉛から構成される群から選択されるいずれか1つであり、窒素と酸化亜鉛化合物とを含む初期層である第1層と、前記第1層に含まれる酸化亜鉛化合物を含み、前記第1層上に積み重なる第2層と、を備える。
本願発明者らは、酸化亜鉛化合物膜の成膜方法について鋭意研究する中で、窒素を含む初期層である第1層を形成することで、酸化亜鉛化合物膜の結晶配向性が高まることを見出した。この点で、上記構成によれば、第1層と第2層とを含む酸化亜鉛化合物膜の結晶配向性を高めることができる。
上記酸化亜鉛化合物膜の成膜方法において、前記第1層を形成することでは、0nmよりも大きく20nm以下の厚さを有する前記第1層を形成することが好ましい。
本願発明者らは、第1層が厚くなるほど、第1層の透過率が低下し、かつ、酸化亜鉛化合物膜全体の透過率に対する第1層の透過率の影響が大きくなることを見出した。また、本願発明者らは、第1層の厚さが20nmを超えることで、第1層の厚さが20nm以下であるときと比べて、酸化亜鉛化合物膜の透過率が大幅に低下することを見出した。
この点で、上記構成によれば、酸化亜鉛化合物膜の結晶配向性を高めつつ、酸化亜鉛化合物膜の透過率の低下を抑えることができる。
上記酸化亜鉛化合物膜の成膜方法において、前記酸化亜鉛化合物膜の厚さに対する前記第1層の厚さの比が膜厚比であり、前記第1層の厚さと、前記膜厚比とによって定められる二次元空間において、前記第1層の厚さが8nmであり、かつ、前記膜厚比が8%である点が第1点であり、前記第1層の厚さが14nmであり、かつ、前記膜厚比が3.5%である点が第2点であり、前記第1層を形成すること、および、前記第2層を形成することによって、前記二次元空間において、前記第1層の厚さが0nmよりも大きく、かつ、前記第1点と前記第2点とを通る直線以下の領域に前記第1層の厚さと前記膜厚比とが含まれるように、前記酸化亜鉛化合物膜を形成することが好ましい。
本願発明者らは、酸化亜鉛化合物膜の結晶配向性について鋭意研究する中で、以下のことを見出した。すなわち、本願発明者らは、第1層の厚さを厚くし過ぎると、酸化亜鉛化合物膜の結晶配向性が低下し始め、また、第2層の厚さを薄くし過ぎても、すなわち膜厚比を大きくし過ぎても、酸化亜鉛化合物膜の結晶配向性が低下することを見出した。言い換えれば、本願発明者らは、酸化亜鉛化合物膜の結晶配向性を高める範囲は、第1層の厚さが薄く、かつ、第2層の厚さが厚い範囲であることを見出した。
この点で、上記構成によれば、第1層の厚さが0nmよりも大きく、かつ、第1点と第2点とを通る直線以下の領域に第1層の厚さと膜厚比とが含まれるように、酸化亜鉛化合物膜を形成するため、酸化亜鉛化合物膜の結晶配向性を確実に高めることができる。
酸化亜鉛化合物膜の成膜装置の側面構造を示すブロック図。 本発明の酸化亜鉛化合物膜の成膜方法を具体化した一実施形態の手順を示すフローチャート。 酸化亜鉛化合物膜の成膜方法を説明するためのタイミングチャート。 本発明の酸化亜鉛化合物膜を具体化した一実施形態における断面構造を酸化亜鉛化合物膜が形成される成膜対象とともに示す断面図。 膜厚と膜厚比との関係を示すグラフ。 SIMSによる窒素元素の測定結果を示すグラフ。 膜厚と半値幅との関係を示すグラフ。 膜厚と比抵抗値との関係を示すグラフ。 膜厚と表面粗さとの関係を示すグラフ。
図1から図9を参照して、酸化亜鉛化合物膜の成膜方法、および、酸化亜鉛化合物膜を具体化した一実施形態を説明する。以下では、酸化亜鉛化合物膜の成膜方法が実施されるスパッタ装置の構成、酸化亜鉛化合物膜の成膜方法、酸化亜鉛化合物膜の構成、および、実施例を順番に説明する。
[スパッタ装置の構成]
図1を参照してスパッタ装置の構成を説明する。図1は、スパッタ装置を側面視した構造を示している。
図1が示すように、スパッタ装置10は、搬出入チャンバ11とスパッタチャンバ12とを備え、搬出入チャンバ11とスパッタチャンバ12とが1つの方向である搬送方向に沿って並んでいる。スパッタ装置10は、搬出入チャンバ11とスパッタチャンバ12との間に位置するゲートバルブ13を備えている。ゲートバルブ13が開くことによって、搬出入チャンバ11の区画する空間とスパッタチャンバ12の区画する空間とが繋がり、ゲートバルブ13が閉じることによって、搬出入チャンバ11とスパッタチャンバ12とがゲートバルブ13によって隔てられる。
スパッタ装置10は、搬送方向に沿って延びる搬送部21を備えている。搬送部21は、搬出入チャンバ11からスパッタチャンバ12までにわたって延び、キャリアCによって支持された成膜対象の一例である基板Sを搬送方向に沿って搬送する。搬送部21は、例えば、搬出入チャンバ11の壁部に位置するレールと、レールに沿って並ぶ複数のローラとを含んでいる。
搬出入チャンバ11は排気部22を備え、排気部22は、搬出入チャンバ11の区画する空間を所定の圧力まで減圧する。スパッタチャンバ12も同じく排気部23を備え、排気部23は、スパッタチャンバ12の区画する空間を所定の圧力まで減圧する。
スパッタチャンバ12は、第1ヒータ24、第2ヒータ25、および、第3ヒータ26を備えている。スパッタチャンバ12の内部において、第1ヒータ24と第2ヒータ25とは、搬送部21を挟んで互いに対向し、第1ヒータ24と第3ヒータ26とは、搬送部21に対して第2ヒータ25の位置する側とは反対側に位置し、かつ、搬送方向に沿って並んでいる。
なお、スパッタチャンバ12は、第1ヒータ24および第2ヒータ25の少なくとも一方を備えていればよい。ただし、基板Sの加熱に要する時間を短くする上では、スパッタチャンバ12が、第1ヒータ24と第2ヒータ25との両方を備えることが好ましい。
スパッタチャンバ12は、カソード27を備え、スパッタチャンバ12の内部において、カソード27は、搬送部21を挟んで第3ヒータ26と対向している。カソード27は、ターゲット27aとバッキングプレート27bとを含み、ターゲット27aがバッキングプレート27bに固定されている。
ターゲット27aは、酸化亜鉛化合物を主成分とし、酸化亜鉛化合物は、酸化亜鉛(ZnO)、アルミニウムを含む酸化亜鉛(AZO)、および、ガリウムを含む酸化亜鉛(GZO)から構成される群から選択されるいずれか1つである。ターゲット27aの主成分がZnOであるとき、ターゲット27aにおいて、ZnOは98質量%以上の割合で含まれ、99質量%以上の割合で含まれることが好ましい。
ターゲット27aの主成分がAZOであるとき、ターゲット27aにおいて、アルミニウム(Al)は、例えば1質量%以上4質量%以下の割合で含まれ、ZnOは、例えば95質量%以上の割合で含まれ、97質量%以上の割合で含まれることが好ましい。ターゲット27aの主成分がGZOであるとき、ターゲット27aにおいて、ガリウム(Ga)は、例えば1質量%以上6質量%以下の割合で含まれ、ZnOは、例えば93質量%以上の割合で含まれることが好ましい。
スパッタチャンバ12は、バッキングプレート27bに接続される電源28を備え、電源28は、例えば直流電圧を出力する。電源28が直流電圧をバッキングプレート27bに印加することで、ターゲット27aに直流電圧が印加される。
スパッタチャンバ12は、ガス供給部29を備えている。ガス供給部29は、窒素を含むガスと希ガスとをスパッタチャンバ12が区画する空間内に供給する。ガス供給部29は、例えば、窒素(N)ガスとアルゴン(Ar)ガスとを空間に供給することが可能であり、窒素を含むガスの一例であるNガスと、希ガスの一例であるArガスとを混合しながら空間に供給する。
スパッタ装置10は、制御部10Cを備えている。制御部10Cは、搬送部21、排気部22,23、第1ヒータ24、第2ヒータ25、第3ヒータ26、電源28、および、ガス供給部29の各々に電気的に接続している。制御部10Cは、搬送部21、排気部22,23、第1ヒータ24、第2ヒータ25、第3ヒータ26、電源28、および、ガス供給部29の駆動を制御している。
こうしたスパッタ装置10では、搬出入チャンバ11が、成膜前の基板Sであって、キャリアCによって支持された基板Sを搬入し、搬送部21が、成膜前の基板Sを搬出入チャンバ11からスパッタチャンバ12に搬送する。スパッタチャンバ12は、成膜前の基板Sに酸化亜鉛化合物膜を形成し、その後、搬送部21が、成膜後の基板Sをスパッタチャンバ12から搬出入チャンバ11に搬送する。そして、搬出入チャンバ11が、成膜後の基板Sをスパッタ装置10の外部に搬出する。
なお、スパッタ装置10は、少なくともスパッタチャンバ12を備えていればよく、搬出入チャンバ11を備えていなくてもよい。また、スパッタ装置10は、基板Sに酸化亜鉛化合物膜を形成する前に基板Sに処理を行うためのチャンバ、および、基板Sに酸化亜鉛化合物膜を形成した後に基板Sに処理を行うためのチャンバの少なくとも一方を備えてもよい。
[酸化亜鉛化合物膜の成膜方法]
図2および図3を参照して、酸化亜鉛化合物膜の成膜方法を説明する。
図2が示すように、酸化亜鉛化合物膜の成膜方法は、初期層である第1層を形成すること、すなわち第1層形成工程(ステップS11)と、第2層を形成すること、すなわち第2層形成工程(ステップS12)とを含んでいる。
このうち、第1層形成工程では、基板Sを加熱しながら、窒素を含むガスから生成されたプラズマ中で酸化亜鉛化合物を主成分とするターゲットをスパッタして、窒素と酸化亜鉛化合物とを含む初期層である第1層を形成する。
第2層形成工程では、基板Sを加熱しながら、希ガスから生成されたプラズマ中でターゲットをスパッタし、それによって、第1層の酸化亜鉛化合物を含み、かつ、結晶化した第2層を第1層上に形成する。
これにより、窒素を含む第1層を有しない酸化亜鉛化合物膜と比べて、第1層と第2層とを備える酸化亜鉛化合物膜の結晶配向性を高めることができる。
第1層を形成することでは、0nmよりも大きく20nm以下の厚さを有する第1層を形成することが好ましい。
第1層を構成する窒素を含む酸化亜鉛化合物膜は、第2層を構成する窒素を含まない酸化亜鉛化合物膜に比べて透過率が低い。また、第1層が厚くなるほど、第1層の透過率が低下し、かつ、酸化亜鉛化合物膜全体の透過率に対する第1層の透過率の影響が大きくなる。
そして、第1層の厚さが20nmを超えることで、第1層の厚さが20nm以下であるときと比べて、酸化亜鉛化合物膜の透過率が大幅に低下する。この点で、第1層の厚さが0nm以上20nm以下であれば、酸化亜鉛化合物膜の結晶配向性を高めつつ、酸化亜鉛化合物膜の透過率の低下を抑えることができる。
酸化亜鉛化合物膜の厚さに対する第1層の厚さの比が膜厚比である。第1層の厚さと、膜厚比とによって定められる二次元空間において、第1層の厚さが8nmであり、かつ、膜厚比が8%である点が第1点であり、第1層の厚さが14nmであり、かつ、膜厚比が3.5%である点が第2点である。第1層を形成すること、および、第2層を形成することによって、上述した二次元空間において、第1層の厚さが0nmよりも大きく、かつ、第1点と第2点とを通る直線以下の領域に第1層の厚さと膜厚比とが含まれるように、酸化亜鉛化合物膜を形成することがさらに好ましい。
酸化亜鉛化合物膜において、第1層の厚さを厚くし過ぎると、酸化亜鉛化合物膜の結晶配向性が低下し始め、また、第2層の厚さを薄くし過ぎても、すなわち膜厚比を大きくし過ぎても、酸化亜鉛化合物膜の結晶配向性が低下する。言い換えれば、酸化亜鉛化合物膜の結晶配向性を高める範囲は、第1層の厚さが薄く、かつ、第2層の厚さが厚い範囲である。
この点で、第1層の厚さが0nmよりも大きく、かつ、第1点と第2点とを通る直線以下の領域に第1層の厚さと膜厚比が含まれるように、酸化亜鉛化合物膜を形成することによって、酸化亜鉛化合物膜の結晶配向性を確実に高めることができる。
図3を参照して、酸化亜鉛化合物膜の成膜方法の一例をより詳しく説明する。なお、以下において、スパッタ装置10の動作を説明するときには、図1を用いて先に説明されたスパッタ装置10の構成を用いる。
基板Sに酸化亜鉛化合物膜を形成するときには、制御部10Cが、排気部23を駆動して、初期流量Fo0でスパッタチャンバ12が区画する空間を排気している状態で、制御部10Cが、搬送部21を駆動して、成膜前の基板Sを搬出入チャンバ11からスパッタチャンバ12に搬送する。このとき、制御部10Cは、搬送部21に、成膜前の基板Sを第1ヒータ24と第2ヒータ25とに挟まれる位置まで搬送させ、この位置にて基板Sの位置を固定させる。
そして、図3が示すように、タイミングt1にて、制御部10Cは、第1ヒータ24および第2ヒータ25を駆動し、基板Sの加熱を開始する。そして、タイミングt2にて、基板Sの温度が初期温度T0から成膜温度T1まで加熱されると、制御部10Cは、搬送部21を駆動して、搬送部21に、基板Sを第1ヒータ24および第2ヒータ25と対向する位置から、第3ヒータ26およびターゲット27aと対向する位置まで搬送させ、この位置にて基板Sの位置を固定させる。成膜温度T1は、130℃以上250℃以下であることが好ましい。
なお、搬送方向における第1ヒータ24と第3ヒータ26との間の距離は、搬送部21による基板Sの搬送によって基板Sの温度がほぼ下がらない程度の距離であり、搬送部21による基板Sの搬送速度は、搬送部21による基板Sの搬送によって基板Sの温度がほぼ下がらない程度の速度である。
また、制御部10Cが、搬送部21に基板Sを第3ヒータ26と対向する位置まで搬送させるときには、制御部10Cは、第3ヒータ26を駆動している。そのため、搬送部21が基板Sを第1ヒータ24と対向する位置から第3ヒータ26と対向する位置まで搬送する間において、基板Sの温度はほぼ成膜温度T1に保たれる。
タイミングt3にて、制御部10Cは、ガス供給部29を駆動し、ガス供給部29にNガスの供給とArガスの供給とを開始させ、タイミングt4にて、Nガスの流量が所定の設定流量Fnに到達し、Arガスの流量が所定の設定流量Faに到達する。Nガスの設定流量Fnは、例えば16sccm以上40sccm以下であり、Arガスの設定流量Faは、例えば80sccm以上200sccm以下であることが好ましい。また、タイミングt3にて、制御部10Cは、排気部23に排気流量を変えさせ、タイミングt4にて、排気部23の排気流量が所定の流量である第1設定流量Fo1に到達する。
これにより、スパッタチャンバ12が区画する空間の圧力が、初期圧力P0から設定圧力P1まで高まる。設定圧力P1は、Arガスの分圧とNガスの分圧との和であり、Arガスの分圧は、例えば0.3Pa以上1.3Pa以下であることが好ましく、Nガスの分圧は、例えば0.01Pa以上0.1Pa以下であることが好ましい。
また、タイミングt4にて、制御部10Cは、電源28を駆動し、電源28に設定値Pwの直流電力をターゲット27aに供給させる。これにより、ターゲット27aの周りに供給されたNガスとArガスとの混合ガスからプラズマが生成され、第1層の成膜が開始される。
そして、第1層の形成が所定の時間にわたって継続されると、タイミングt5にて、制御部10Cは、電源28に直流電力の出力を停止させるとともに、ガス供給部29にNガスの供給と、Arガスの供給とを停止させる。つまり、タイミングt4からタイミングt5までの間が、第1層形成工程である。また、タイミングt5にて、制御部10Cは、排気部23に排気流量を変えさせる。
これにより、タイミングt6にて、ガス供給部29からスパッタチャンバ12に供給されるNガスの流量が0sccmになり、かつ、ガス供給部29からスパッタチャンバ12に供給されるArガスの流量が0sccmになる。また、タイミングt6にて、排気部23の排気流量が初期流量Fo0に到達する。そのため、スパッタチャンバ12が区画する空間の圧力が、設定圧力P1から初期圧力P0まで低下する。
タイミングt7にて、制御部10Cは、ガス供給部29にArガスの供給を開始させ、タイミングt8にて、Arガスの流量が所定の設定流量Faに到達する。また、タイミングt7にて、制御部10Cは、排気部23に排気流量を変えさせ、タイミングt8にて、排気部23の排気流量が第1設定流量Fo1よりも低い第2設定流量Fo2に到達する。
タイミングt8にて、制御部10Cは、電源28を駆動し、電源28に設定値Pwの直流電力をターゲット27aに供給させる。これにより、ターゲット27aの周りに供給されたArガスからプラズマが生成され、第2層の成膜が開始される。
このように、第1層形成工程と第2層形成工程とでは、制御部10Cは、ガス供給部29にArガスの流量を設定流量Faに維持させる一方で、排気部23に、排気流量を第1設定流量Fo1から第2設定流量Fo2に変えさせる。これにより、スパッタチャンバ12が区画する空間の圧力は、第1層形成工程と第2層形成工程とにおいて設定圧力P1に保たれる。
第2層の形成が所定の時間にわたって継続されると、タイミングt9にて、制御部10Cは、電源28に直流電力の出力を停止させ、また、ガス供給部29にArガスの供給を停止させる。これにより、ターゲット27aのスパッタが停止され、結果として、第2層形成工程が終了する。
第1層形成工程および第2層形成工程では、第3ヒータ26による加熱に加えて、プラズマからの入熱などによっても基板Sが加熱される。そのため、基板Sの温度は第1層形成工程および第2層形成工程の間に上昇する場合があるが、この場合でも基板温度が130℃以上250℃以下の範囲になればよいし、この範囲に基板Sの温度が入るように第3ヒータ26を制御してもよい。つまり、図3に示される基板温度の値は、第3ヒータ26の設定温度と見なしてもよい。
[酸化亜鉛化合物膜の構成]
図4を参照して、酸化亜鉛化合物膜の構成を説明する。
図4が示すように、酸化亜鉛化合物膜30は、窒素と酸化亜鉛化合物とを含む初期層である第1層31と、第1層31に含まれる酸化亜鉛化合物を含み、第1層31上に積み重なる第2層32とを備えている。
上述したように、酸化亜鉛化合物は、ZnO、AZO、および、GZOから構成される群から選択されるいずれか1つである。そのため、第1層31が窒素とZnOとを含むときには、第2層32は、酸化亜鉛化合物としてZnOを含み、第1層31が、窒素と、AZOとを含むときには、第2層32は、酸化亜鉛化合物としてAZOを含む。第1層31が、窒素と、GZOとを含むときには、第2層32は、酸化亜鉛化合物としてGZOを含む。第1層31の厚さは、0nmよりも大きく20nm以下であることが好ましい。
また、酸化亜鉛化合物膜30において、第1層31の厚さと膜厚比とは、第1層31の厚さと上述した膜厚比とによって定められる二次元空間において、第1層31の厚さが0nmよりも大きく、かつ、上述した第1点と第2点とを通る直線以下の領域に含まれる大きさであることがさらに好ましい。
酸化亜鉛化合物膜30が形成される基板Sは、例えば、ガラス基板、樹脂基板、および、シリコン基板などのいずれかである。
[実施例]
図5から図9を参照して、実施例を説明する。
[AZO膜]
以下の条件にて100nmの厚さを有するAZO膜、200nmの厚さを有するAZO膜、400nmの厚さを有するAZO膜、および、800nmの厚さを有するAZO膜を形成した。このうち、100nmの厚さを有するAZO膜では、第1層の厚さが0nm(膜厚比0%)、7nm(膜厚比7%)、および、14nm(膜厚比14%)であるAZO膜を形成した。
200nmの厚さを有するAZO膜では、第1層の厚さが0nm(膜厚比0%)、5nm(膜厚比2.5%)、10nm(膜厚比5%)、14nm(膜厚比7%)、および、20nm(膜厚比10%)であるAZO膜を形成した。
400nmの厚さを有するAZO膜では、第1層の厚さが0nm(膜厚比0%)、14nm(膜厚比3.5%)、20nm(膜厚比5%)、および、28nm(膜厚比7%)であるAZO膜を形成した。
800nmの厚さを有するAZO膜では、第1層の厚さが0nm(膜厚比0%)、14nm(膜厚比1.75%)、20nm(膜厚比2.5%)、および、56nm(膜厚比7%)であるAZO膜を形成した。
[成膜条件]
上述した各AZO膜は以下の条件で成膜した。
・基板 :ガラス基板
・基板温度(成膜温度) :200℃
・ターゲット :AZO(2質量%Al
・スパッタチャンバ内の圧力 :0.3Pa/0.67Pa
・窒素含有ガス :N
・希ガス :Ar
・窒素含有ガス流量 :16sccm(0.3Pa)
:200sccm(0.67Pa)
・希ガス流量 :80sccm(0.3Pa)
:40sccm(0.67Pa)
なお、200nmの厚さを有するAZO膜のみ、0.3Paの圧力と0.67Paの圧力とにて成膜し、他の厚さを有するAZO膜は、いずれも0.3Paの圧力にて成膜した。
[ZnO膜]
ターゲットをZnOに変更し、成膜温度を150℃に変更し、かつ、スパッタチャンバ内の圧力を0.3Paとした以外は、上述した条件と同じ条件で、100nmの厚さを有するZnO膜を形成した。なお、第1層の厚さが8nm(膜厚比が8%)、14nm(膜厚比が14%)、および、20nm(膜厚比20%)であるZnO膜を形成した。
[X線回折スペクトルの測定]
上述したAZO膜、および、ZnO膜の各々について、X線回折装置((株)リガク製、SmartLab)(SmartLabは登録商標)を用いて、回折角2θが20°から80°である範囲において、X線回折スペクトルを測定した。
各AZO膜、および、各ZnO膜において、回折角2θが30°から40°までの間に、半値幅が小さく、かつ、強度の高いピークであって、(002)面におけるピークが認められた。
100nmの厚さを有するAZO膜の各々、および、200nmの厚さを有するAZO膜の各々において、ピーク強度は、以下の表1に示す値であった。
Figure 0006852996
表1が示すように、100nmの厚さを有するAZO膜において、第1層の厚さが0nmであるときのピーク強度が2.4×10であり、第1層の厚さが7nmであるときのピーク強度が3.6×10であり、第1層の厚さが14nmであるときのピーク強度が9.4×10であることが認められた。
200nmの厚さを有するAZO膜であって、0.3Paにて形成されたAZO膜において、第1層の厚さが0nmであるときのピーク強度が1.8×10であり、第1層の厚さが5nmであるときのピーク強度が1.5×10であることが認められた。また、第1層の厚さが10nmであるときのピーク強度が2.9×10であり、第1層の厚さが14nmであるときのピーク強度が2.3×10であり、第1層の厚さが20nmであるときのピーク強度が8.4×10であることが認められた。
200nmの厚さを有するAZO膜であって、0.67Paにて形成されたAZO膜において、第1層の厚さが0nmであるときのピーク強度が2.0×10であり、第1層の厚さが5nmであるときのピーク強度が1.1×10であることが認められた。また、第1層の厚さが10nmであるときのピーク強度が2.8×10であり、第1層の厚さが14nmであるときのピーク強度が2.4×10であり、第1層の厚さが20nmであるときのピーク強度が1.0×10であることが認められた。
400nmの厚さを有するAZO膜の各々、および、800nmの厚さを有するAZO膜の各々において、ピーク強度は、以下の表2に示す値であった。
Figure 0006852996
表2が示すように、400nmの厚さを有するAZO膜において、第1層の厚さが0nmであるときのピーク強度が6.6×10であり、第1層の厚さが14nmであるときのピーク強度が6.6×10であることが認められた。また、第1層の厚さが20nmであるときのピーク強度が6.5×10であり、第1層の厚さが28nmであるときのピーク強度が2.3×10であることが認められた。
800nmの厚さを有するAZO膜において、第1層の厚さが0nmであるときのピーク強度が5.6×10であり、第1層の厚さが14nmであるときのピーク強度が2.9×10であることが認められた。また、第1層の厚さが20nmであるときのピーク強度が2.6×10であり、第1層の厚さが56nmであるときのピーク強度が7.7×10であることが認められた。
100nmの厚さを有するZnO膜の各々において、ピーク強度は、以下の表3に示す値であった。
Figure 0006852996
100nmの厚さを有するZnO膜において、第1層の厚さが0nmであるときのピーク強度が9.6×10であり、第1層の厚さが8nmであるときのピーク強度が1.6×10であることが認められた。また、第1層の厚さが14nmであるときのピーク強度が8.0×10であり、第1層の厚さが20nmであるときのピーク強度が2.1×10であることが認められた。
このように、酸化亜鉛化合物がAZOであれ、ZnOであれ、第1層を有しない酸化亜鉛化合物膜と比べて、第1層を有する酸化亜鉛化合物膜によれば、(002)面のピーク強度が高まる、すなわち、酸化亜鉛化合物膜の結晶配向性が高まることが認められた。
なお、酸化亜鉛化合物がGZOであるときにも、酸化亜鉛化合物がAZOであるとき、および、ZnOであるときと同様の傾向を有することが認められている。
図5は、酸化亜鉛化合物膜の膜厚と、上述した膜厚比とによって定められる二次元空間に、表1から表3の各々に示される各酸化亜鉛化合物膜をプロットしたグラフである。図5では、0.3Paの圧力にて成膜されたAZO膜が実線で示され、0.67Paの圧力にて成膜されたAZO膜が一点鎖線で示され、かつ、ZnO膜が破線で示されている。
なお、各酸化亜鉛化合物膜をプロットするにあたり、同一の厚さを有し、かつ、第1層の厚さが互いに異なる酸化亜鉛化合物の中で、第1層の厚さが大きくなるに従いピーク強度が増加傾向にある酸化亜鉛化合物膜を「○」によって示し、第1層の厚さが大きくなるに従いピーク強度が減少傾向にある酸化亜鉛化合物膜を「△」によって示している。
ここで、100nmの厚さを有するAZO膜およびZnO膜は、図5上の「膜厚100nm」のライン上に、200nmの厚さを有するAZO膜は同様に「膜厚200nm」のライン上に、それぞれプロットされている。また、400nmの厚さを有するAZO膜は同様に「膜厚400nm」のライン上に、800nmの厚さを有するAZO膜は同様に「膜厚800nm」のライン上に、それぞれプロットされている。
すなわち、図5が示すように、100nmの厚さを有するAZO膜のうち、第1層の厚さが7nm(膜厚比7%)であるAZO膜を「実線の○」で示し、第1層の厚さが14(膜厚比14%)であるAZO膜を「実線の△」で示している。
200nmの厚さを有するAZO膜であって、0.3Paの圧力にて成膜されたAZO膜のうち、第1層の厚さが5nm(膜厚比2.5%)、および、10nm(膜厚比5%)であるAZO膜をそれぞれ「実線の○」で示している。また、第1層の厚さが14nm(膜厚比7.5%)、および、20nm(膜厚比10%)であるAZO膜をそれぞれ「実線の△」で示している。
200nmの厚さを有するAZO膜であって、0.67Paの圧力にて成膜されたAZO膜のうち、第1層の厚さが5nm(膜厚比2.5%)、および、10nm(膜厚比5%)であるAZO膜をそれぞれ「一点鎖線の○」で示している。また、第1層の厚さが14nm(膜厚比7.5%)、および、20nm(膜厚比10%)であるAZO膜をそれぞれ「一点鎖線の△」で示している。
400nmの厚さを有するAZO膜のうち、第1層の厚さが14nm(膜厚比3.5%)であるAZO膜を「実線の○」で示し、第1層の厚さが20nm(膜厚比5%)、および、28nm(膜厚比7%)であるAZO膜をそれぞれ「実線の△」で示している。
800nmの厚さを有するAZO膜のうち、第1層の厚さが14nm(膜厚比1.75%)であるAZO膜を「実線の○」で示し、第1層の厚さが20nm(膜厚比2.5%)、および、56nm(膜厚比7%)であるAZO膜をそれぞれ「実線の△」で示している。
100nmの厚さを有するZnO膜のうち、第1層の厚さが8nm(膜厚比8%)であるZnO膜を「破線の○」で示し、第1層の厚さが14nm(膜厚比14%)、および、20nm(膜厚比20%)であるZnO膜をそれぞれ「破線の△」で示している。
図5が示すように、第1層の厚さが8nmであり、かつ、膜厚比が8%である点が第1点Pt1であり、第1層の厚さが14nmであり、かつ、膜厚比が3.5%である点が第2点Pt2である。第1層の厚さと膜厚比とによって定められる二次元空間において、各点の座標を(第1層の厚さ,膜厚比)で示すとき、第1点Pt1は、Pt1(8,8)であり、第2点Pt2は、Pt2(14,3.5)である。
二次元空間において、第1点Pt1と第2点Pt2とを通る直線Lを設定すると、直線Lは、以下の一次式で表すことができる。
(直線L) y=−0.75x+14
そして、二次元空間にプロットされた点において、第1層の厚さが0nmよりも大きく、かつ、直線L以下の領域に、全ての「○」が含まれる一方で、全ての「△」が直線Lを超えた領域に含まれることが認められた。
このように、第1層の厚さを厚くし過ぎると、酸化亜鉛化合物膜の結晶配向性が低下し始め、また、第2層の厚さを薄くし過ぎても、すなわち膜厚比を大きくし過ぎても、酸化亜鉛化合物膜の結晶配向性が低下し始めることが認められた。言い換えれば、酸化亜鉛化合物膜の結晶配向性を高める傾向の見られる範囲は、第1層の厚さが薄く、かつ、第2層の厚さが厚い範囲であることが認められた。
具体的には、図5が示すように、Pt1(8,8)とPt2(14,3.5)とを通る直線Lであって、y=−0.75x+14で示される直線L以下の領域であって、かつ、第1層の厚さが0nmよりも大きい領域であることが認められた。
[SIMSによる窒素原子の測定]
上述した成膜条件のうち、スパッタチャンバ内の圧力を0.67Paとする条件にて、第1層の厚さが0nmであり、第2層の厚さが200nmであるAZO膜をガラス基板に形成し、試験例1のAZO膜を得た。また、同じ成膜条件にて、第1層の厚さが20nmであり、第2層の厚さが180nmであるAZO膜をガラス基板に形成し、試験例2のAZO膜を得た。
そして、SIMS(Secondary Ion Mass Spectrometer )により、試験例1のAZO膜、および、試験例2のAZO膜の各々に含まれる窒素原子の測定を行った。なお、窒素原子は、窒素原子と酸素原子との和として測定した。このうち、酸素原子はターゲットに含まれる酸素に由来し、窒素原子はスパッタチャンバに供給される窒素ガスに由来する。また、窒素原子の測定において、一次イオンとしてCsを用い、かつ、加速電圧を1keVに設定した。
図6が示すように、試験例1では、SIMSによる測定を開始した直後を除いて、窒素原子と酸素原子との検出数がほぼ一定であることが認められた。一方で、試験例2では、経過時間が2000秒から3000秒の間において、窒素原子と酸素原子との検出数が大幅に増えることが認められた。
なお、AZO膜の成膜過程において、ターゲットから放出される酸素原子の数、すなわち、ガラス基板に到達する酸素原子の数はほぼ一定であるため、試験例2において認められた窒素原子と酸素原子との検出数の大幅な増加は、窒素原子の増加に由来している。また、窒素原子と酸素原子との検出数が大幅に増えた後に、窒素原子と酸素原子とが検出されないことから、窒素原子は、AZO膜のうちガラス基板の近傍に位置する部分、すなわち第1層に含まれると考えられる。
このように、SIMSによる測定の結果から、第1層には、窒素原子が含まれることが認められた。なお、試験例2のAZO膜に限らず、AZO膜の厚さと第1層の厚さとが、先に参照した表1から表2の各々に示される厚さであるAZO膜の各々、および、ZnO膜の厚さと第1層の厚さとが、先に参照した表3に示される厚さであるZnOの各々においても同様の傾向が認められている。
[AZO膜の半値幅]
200nmの厚さを有するAZO膜のうち、0.67Paの圧力にて成膜されたAZO膜において、(002)面に対応するピークにおける半値幅(full width at half maximum:FWMH)を測定した。
図7が示すように、第1層の厚さが0nmであるときの半値幅が0.42°であり、第1層の厚さが5nnであるときの半値幅が0.36°であり、第1層の厚さが10nmであるときの半値幅が0.30°であることが認められた。また、第1層の厚さが14nmであるときの半値幅が0.30°であり、第1層の厚さが20nmであるときの半値幅が0.36°であることが認められた。
このように、第1層の厚さが0nmよりも大きく、20nm以下の範囲では、第1層を有しないAZO膜と比べて、(002)面に対応するピークにおける半値幅が小さいこと、言い換えればAZO膜の結晶粒が大きいことが認められた。なお、AZO膜の結晶粒が大きいほど、表面粗さRaの小さいAZO膜が得られやすい。
[AZO膜の比抵抗値]
第1層の厚さが200nmであるAZO膜のうち、0.67Paの圧力にて成膜されたAZO膜において比抵抗値を測定した。
図8が示すように、第1層の厚さが0nmであるときの比抵抗値が631μΩ・cmであり、第1層の厚さが5nmであるときの比抵抗値が542μΩ・cmであり、第1層の厚さが10nmであるときの比抵抗値が428μΩ・cmであることが認められた。また、第1層の厚さが14nmであるときの比抵抗値が446μΩ・cmであり、第1層の厚さが20nmであるときの比抵抗値が776μΩ・cmであることが認められた。
このように、第1層の厚さが0nmよりも大きく、14nm以下の範囲であれば、第1層を有しないAZO膜と比べて、AZO膜の比抵抗値が低下すること、言い換えれば、AZO膜の導電性が高まることが認められた。
そのため、200nmの厚さを有するAZO膜において、0nmよりも大きく14nm以下の厚さを有する第1層を備えるAZO膜は、第1層を有しないAZO膜と比べて、AZO膜を各種デバイスの電極などの導電膜として用いる上で好ましい特性を有すると言える。
[AZO膜の表面粗さ]
第1層の厚さが200nmであるAZO膜のうち、0.67Paの圧力にて成膜されたAZO膜において表面粗さRa、すなわち算術平均粗さRaを測定した。
図9が示すように、第1層の厚さが0nmであるAZO膜の表面粗さRaは2.808nmであり、第1層の厚さが5nmであるAZO膜の表面粗さRaは1.968nmであり、第1層の厚さが10nmであるAZO膜の表面粗さRaは1.561nmであることが認められた。また、第1層の厚さが14nmであるAZO膜の表面粗さRaは2.421nmであり、第1層の厚さが20nmであるAZO膜の表面粗さRaは5.092nmであることが認められた。
このように、第1層の厚さが0nmよりも大きく、14nm以下の範囲であれば、第1層を有しないAZO膜と比べて、AZO膜の表面粗さRaが低下すること、言い換えれば、AZO膜の表面における平坦性が高まることが認められた。
AZO膜では、AZO膜の表面粗さRaが小さいほど、AZO膜の表面に接触する導電物とAZO膜との間での電気的な接続が確保されやすい。この点で、0nmよりも大きく、14nm以下の厚さを有する第1層を備えるAZO膜は、AZO膜を各種デバイスの電極などの導電膜として用いる上で好ましい特性を有すると言える。
[結晶配向性とその他の膜特性]
図7から図9を参照して先に説明したように、第1層を有することによって結晶配向性の高められたAZO膜には、第1層を有しないAZO膜に比べて、導電性、および、表面の平坦性の各々が高められたAZO膜が含まれることが認められた。
以上説明したように、酸化亜鉛化合物膜の成膜方法、および、酸化亜鉛化合物膜によれば、以下に列挙する効果を得ることができる。
(1)窒素を含む初期層である第1層31を形成するため、第1層31と第2層32とを含む酸化亜鉛化合物膜30の結晶配向性を高めることができる。
(2)第1層31の厚さが、0nmよりも大きく20nm以下であれば、酸化亜鉛化合物膜30の結晶配向性を高めつつ、酸化亜鉛化合物膜30の透過率の低下を抑えることができる。
(3)第1層31の厚さが0よりも大きく、かつ、第1点Pt1と第2点Pt2とを通る直線L以下の領域に、第1層31の厚さと膜厚比とが含まれるように、酸化亜鉛化合物膜30を形成することによって、酸化亜鉛化合物膜30の結晶配向性を確実に高めることができる。
なお、上述した実施形態は、以下のように適宜変更して実施することができる。
・第2層を形成するときに用いる希ガスは、Arガスに限らず、他の希ガス、例えばHeガス、Neガス、Krガス、および、Xeガスなどのいずれかであってもよい。
・窒素含有ガスは、Nガスに限らず、窒素原子を構成原子として含むガスであればよく、例えばNOおよびNHなどのいずれかであればよい。また、窒素含有ガスを希釈する希釈ガスは、例えば上述した希ガスのいずれかであればよい。
10…スパッタ装置、10C…制御部、11…搬出入チャンバ、12…スパッタチャンバ、13…ゲートバルブ、21…搬送部、22,23…排気部、24…第1ヒータ、25…第2ヒータ、26…第3ヒータ、27…カソード、27a…ターゲット、27b…バッキングプレート、28…電源、29…ガス供給部、30…酸化亜鉛化合物膜、31…第1層、32…第2層、C…キャリア、S…基板。

Claims (4)

  1. 酸化亜鉛化合物は、酸化亜鉛、アルミニウムを含む酸化亜鉛、および、ガリウムを含む酸化亜鉛から構成される群から選択されるいずれか1つであり、
    成膜対象を加熱しながら、窒素を含むガスから生成されたプラズマ中で酸化亜鉛化合物を主成分とするターゲットをスパッタして、窒素原子と酸化亜鉛化合物とを含む初期層である第1層を形成することと、
    前記成膜対象を加熱しながら、希ガスから生成されたプラズマ中で前記ターゲットをスパッタし、それによって、前記第1層の酸化亜鉛化合物を含み、かつ、結晶化した第2層を前記第1層上に形成することと、を含み、
    窒素原子と酸化亜鉛化合物とを含む前記第1層と、前記第1層上に位置し、前記第1層の酸化亜鉛化合物を含み、かつ、結晶化した前記第2層とを有した酸化亜鉛化合物膜を形成する
    酸化亜鉛化合物膜の成膜方法。
  2. 前記第1層を形成することでは、0nmよりも大きく20nm以下の厚さを有する前記第1層を形成する
    請求項1に記載の酸化亜鉛化合物膜の成膜方法。
  3. 前記酸化亜鉛化合物膜の厚さに対する前記第1層の厚さの比が膜厚比であり、
    前記第1層の厚さと、前記膜厚比とによって定められる二次元空間において、
    前記第1層の厚さが8nmであり、かつ、前記膜厚比が8%である点が第1点であり、
    前記第1層の厚さが14nmであり、かつ、前記膜厚比が3.5%である点が第2点であり、
    前記第1層を形成すること、および、前記第2層を形成することによって、前記二次元空間において、前記第1層の厚さが0nmよりも大きく、かつ、前記第1点と前記第2点とを通る直線以下の領域に前記第1層の厚さと前記膜厚比とが含まれるように、前記酸化亜鉛化合物膜を形成する
    請求項1または2に記載の酸化亜鉛化合物膜の成膜方法。
  4. 酸化亜鉛化合物は、酸化亜鉛、アルミニウムを含む酸化亜鉛、および、ガリウムを含む酸化亜鉛から構成される群から選択されるいずれか1つであり、
    窒素原子と酸化亜鉛化合物とを含む初期層である第1層と、
    前記第1層に含まれる酸化亜鉛化合物を含み、前記第1層上に積み重なる第2層と、を備える
    酸化亜鉛化合物膜。
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