JP6852555B2 - 逐次成形方法 - Google Patents

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Description

本発明は、金属板に工具を押し付けて移動させることにより金属板を次第に変形させて三次元形状に成形する逐次成形方法に関し、とくに、底部の両側が傾斜面である凹状部を有する成形品を成形するのに用いられる逐次成形方法に関するものである。
従来の逐次成形方法としては、例えば特許文献1に記載されているものがある。特許文献1に記載の逐次成形方法は、板材(金属板)の周囲を固定する支持枠と、板材の下面側に配置した型状押圧部材と、板材の上面側に配置した棒状の工具を使用する。型状押圧部材は、要するに、板材の最終形状に対応した表面形状を有する成形型である。
上記の逐次成形方法は、周囲を固定した板材の下面に型状押圧部材を押し付けて、板材を型状押圧部材により初期的に変形させ、その後、板材の上面に工具の先端を押し付けて所定経路を移動させることにより、板材をその厚さ方向に次第に変形させる。そして、逐次成形方法は、工具を所定経路に沿って移動させる度に、工具の前進量(下降量)を増すことで、最終的に、板材を型状押圧部材の表面に沿った形状に成形する。
特開2003−236618号公報
しかしながら、上記したような従来の逐次成形方法は、成形型を用いることで、金属板の板厚減少を抑制したり、金属板を凹状だけでなく凸状に成形したりすることが可能であるものの、成形型の制作費が製造コストの多くの部分を占めているという問題点があり、このような問題点を解決することが課題であった。
本発明は、上記従来の課題に着目して成されたもので、底部の両側が傾斜面である凹状部を有する成形品を成形するのに用いられる逐次成形方法であって、成形型を廃止して製造コストの低減を実現すると共に、成形型を使用せずに、金属板の板厚減少の抑制や、凸状部の成形が可能である逐次成形方法を提供することを目的としている。
本発明に係わる逐次成形方法は、周囲を保持した金属板に工具の先端を押し付けて移動させることにより、金属板を厚さ方向に次第に変形させて三次元形状に成形する方法であって、底部の両側が傾斜面である凹状部を有する成形品を成形する。この逐次成形方法は、金属板の最終形状である成形品に対して工具の軸線が一方の傾斜面側に傾斜した状態に設定すると共に、工具の軸線と同方向に傾斜した加工経路面を設定する。
そして、逐次成形方法は、一方の傾斜面を含む前半領域では、加工経路面の傾斜に合わせて設定した往復移動経路に沿って工具を往復移動させて前半領域を成形し、その後、他方の傾斜面を含む後半領域では、加工経路面の傾斜に合わせて設定した周回移動経路に沿って工具を周回移動させて後半領域を成形することを特徴としている。
上記構成の逐次成形方法において、加工経路面は、工具の移動経路を決定するための設定上の面である。そして、逐次成形方法は、前半領域での工具の往復移動経路、及び後半領域での工具の周回移動経路を、加工経路面の傾斜に合わせて設定する。換言すれば、工具の各移動経路を、傾斜した加工経路面上に設定する。これにより、逐次成形方法では、一方の傾斜面から他方の傾斜面に至る方向において、傾斜した加工経路面(移動経路)が平行移動するように成形が進行し、金属板に対しては斜めに成形が進行し、成形領域全体をむらなく成形する。
この際、逐次成形方法では、成形品に対して工具の軸線を一方の傾斜面側に傾斜させた状態にし、工具の軸線と同方向に傾斜した加工経路面を設定しているので、工具の軸線と金属板の成形面とが成す見かけ上の成形角度が充分に確保され、金属板の板厚減少も微小である。また、逐次成形方法は、成形品が複数の凹状部を有する場合、最初の凹状部を成形した後、金属板及び工具の位置関係を変更せずに、次の凹状部を形成することで、両凹状部の間が凸状部として形成される。
本発明に係わる逐次成形方法は、底部の両側が傾斜面である凹状部を有する成形品を成形するに際し、成形型を廃止して製造コストの低減を実現すると共に、成形型を使用せずに、金属板の板厚減少の抑制や、凸状部の成形が可能になる。
本発明に係わる逐次成形方法の第1実施形態において、金属板の成形過程を順次説明する各々断面図(A)〜(D)及び平面図(E)である。 本発明に係わる逐次成形方法の第2実施形態において、成形品の一例である自動車用エンジンフードのアウタパネルを示す斜視図である。 成形角度と成形品の斜面角度を説明する断面図(A)、及び成形角度と板厚との関係を示すグラフ(B)である。 金属板の成形過程を順次示す各々断面説明図(A)(B)である。 図4に続いて金属板の成形過程を順次示す各々断面説明図(A)(B)である。 金属板の成形過程を示す各々平面図(A)〜(D)である。 本発明に係わる逐次成形方法の第3実施形態を示す断面説明図である。 本発明に係わる逐次成形方法の第4実施形態を示す断面説明図である。
〈第1実施形態〉
図1は、本発明に係わる逐次成形方法の第1実施形態を説明する図である。
逐次成形方法は、周囲を保持した金属板に工具の先端を押し付けて所定の移動経路を移動させることにより、金属板を厚さ方向に次第に変形させて三次元形状に成形する方法である。また、本発明に係わる逐次成形方法では、とくに、底部の両側が傾斜面である凹状部を有する成形品を成形する。図1(A)〜(D)に示す断面は、同図(E)中のA−A線矢視に基づく断面図である。
逐次成形方法では、図1(A)〜(D)に示すように、水平にした金属板Aの周囲を保持する治具1と、金属板Aの上側に配置した工具2を用いる。治具1は、金属板Aの周囲に対応した枠状を成すと共に、下側の固定具1Aと上側の可動具1Bとを備え、金属板Aの周囲を挟持して可動具1Bを固定することで、金属板Aの周囲を強固に拘束する。
工具2は、球面状の先端を有する丸棒状の工具であって、その先端を金属板Aに向けた状態にして配置される。本発明の逐次成形方法は、金属板Aと工具2とが相対的に移動すれば良いので、治具1及び工具2の少なくとも一方が移動可能であれば実施することができる。具体的には、多軸制御型の作業ロボットやNC工作機械を用いることができる。
この実施形態では、工具2が、直交する水平な2軸方向(X,Y方向)及び垂直方向(Z方向)に移動可能に保持してあると共に、金属板Aに対して傾斜させるために回動可能である。この場合、工具2の保持装置としては、多軸制御型の作業ロボットを用いることが望ましく、装置の占有面積が比較的小さくなると共に、工具2の姿勢制御も容易であるなどの利点がある。
図1(A)〜(D)には、成形前の金属板Aを実線で示し、成形後の金属板Aすなわち成形品Fを仮想線で示している。成形品Fは、図1(E)に示すように、概略矩形の凹状部Hを有している。凹状部Hは、底部Bの両側に傾斜面C1,C2を有しており、図1中で左側の一方の傾斜面C1の斜面角度θ1よりも、他方の傾斜面C2の斜面角度θ2の方が大きい(θ1<θ2)形状である。
また、成形品Fは、凹状部Hの全周にわたって枠状部Dを有している。この枠状部Dは、治具1により挟持される金属板Aの周囲部分である。なお、図示の金属板Aは、成形領域(凹状部H)を含む部分が扁平な凹状を成すように初期成形が施してある。この初期成形には、逐次成形やプレス加工などを用いることができる。
上記の治具1及び工具2を用いる逐次成形方法は、図1(A)に示すように、成形品Fに対して、工具2の軸線2Aが一方の傾斜面C1側に傾斜した状態に設定すると共に、工具2の軸線2Aと同方向に傾斜した加工経路面Pを設定する。成形品Fの形状は予め判っているので、これに基づいて軸線2Aの傾斜角度を設定することができる。
これにより、工具2は、図中左側の成形開始位置Stから成形終了位置Edに至る方向において、先端が成形終了位置Ed側に向く方向(反時計回り方向)に傾斜している。また、加工経路面Pは、工具2の移動経路(P1,P2)を決定するための設定上の面であり、成形終了位置Ed側に上り勾配を成すように傾斜している。このとき、工具2の軸線2Aと加工経路面Pとの成す角度は、直角若しくは直角に近い角度である。
上記の設定後、逐次成形方法は、図1(A)及び(E)に示すように、一方の傾斜面C1を含む前半領域では、加工経路面Pの傾斜に合わせて設定した往復移動経路P1に沿って工具2を往復移動させて前半領域を成形する。その後、図1(C),(D)及び(E)に示すように、他方の傾斜面C2を含む後半領域では、加工経路面Pの傾斜に合わせて設定した周回移動経路P2に沿って工具2を周回移動させて後半領域を成形する。
より具体的には、前半領域では、加工経路面P上に工具2の往復移動経路P1を設定し、凹状部Hの外周に相当する部分に工具2の先端を押し付けて、その工具2を往復移動経路P1に沿って往復移動させる。この際、逐次成形方法では、より望ましい実施形態として、往復移動経路P1の往路と復路の長さを等しいものとしている。
そして、前半領域では、工具2を往復移動経路P1に沿って往復移動させた後、工具2を前進(下降)させると共に、往復移動経路P1を所定ピッチ分だけ内周側に移動させる。この際、移動した往復移動経路P1の設定にあっても、成形開始時と同様に、加工経路面Pの傾斜に合わせて往復移動経路P1を設定する。
それ以降、逐次成形方法は、往復移動経路Pに沿う工具2の往復移動と、工具2の前進及び往復移動経路P1の移動(再設定)とを繰り返し行うことにより、図1(A)から図1(B)を経て図1(C)に至るように、一方の傾斜面C1を含む前半領域を成形する。
また、後半領域では、前半領域と同様に、加工経路面P上に工具2の周回移動経路P2を設定し、工具2を周回移動経路P2に沿って周回移動させる。この後半領域においても、工具2を周回移動経路P2に沿って周回移動させた後、工具2を前進(下降)させると共に、周回移動経路P2を所定ピッチ分だけ内周側に移動させる。そして、周回移動経路P2に沿う工具2の周回移動と、工具2の前進及び周回移動経路P2の移動(再設定)とを繰り返し行うことにより、図1(C)から図1(D)に至るように、他方の傾斜面C2を含む後半領域を成形する。
このようにして、逐次成形方法は、傾斜した加工経路面P(移動経路P1,P2)が平行移動するように、前半領域及び後半領域の成形が連続的に進行し、金属板Aに対しては斜めに成形が進行し、凹状部Hの全体をむらなく成形する。
また、逐次成形方法では、成形品Fに対して工具2の軸線2Aが一方の傾斜面側に傾斜した状態にし、工具2の軸線2Aと同方向に傾斜した加工経路面Pを設定している。これにより、逐次成形方法では、工具2の軸線2Aと金属板の成形面とが成す見かけ上の成形角度が充分に確保され、金属板の板厚減少も微小である。
さらに、逐次成形方法は、成形品Fが複数の凹状部Hを有する場合、最初の凹状部Hを成形した後、金属板A及び工具2の位置関係を変更せずに、次の凹状部Hを形成することができ、両凹状部H,Hの間が凸状部として形成される。複数の凹状部Hの成形については、後記する実施形態で詳述する。
上記実施形態で説明した逐次成形方法によれば、底部Bの両側が傾斜面C1,C2である凹状部Hを有する成形品Fを成形するに際し、成形型を廃止して製造コストの低減を実現すると共に、成形型を使用せずに、金属板Aの板厚減少の抑制や凸状部の成形が可能になる。
さらに、上記の逐次成形方法では、前半領域における工具2の往復移動経路P1において、往路と復路の長さを等しくしているので、加工漏れを起こすことなく全体を確実に成形することができる。また、後半領域においては、工具2の移動経路が周回移動経路P2となるので、同様に、加工漏れを起こすことなく全体を確実に成形することができる。
さらに、上記の逐次成形方法では、工具2の軸線2Aと加工経路面Pとの成す角度を直角(若しくは実質的に直角)にしたので、工具2の軸線と金属板Aの成形面とが成す見かけ上の成形角度をより充分に確保して、金属板Aの板厚減少をより軽減し得る。
さらに、上記の逐次成形方法において、前半領域の往復移動と後半領域の周回移動との切換は、成形品Fの形状が予め判っているので、作業ロボットの数値制御で行うことが可能である。また、上記の切換は、成形中の金属板Aを測定し、その測定値に基づいて行うこともできる。具体例としては、金属板A上に設定した所定位置を非接触式の距離センサ等の機器類で測定する。これにより、金属板Aの変形量(凹部の深さ)を検出することがきるので、測定値が所定値に達した時点で作業ロボットに指令を与え、往復移動から周回移動に切り換える。
図2〜図8は、本発明に係わる逐次成形方法の第2〜第4の実施形態を説明する図である。以下の各実施形態では、第1実施形態と同一の構成部位に同一符号を付して、詳細な説明を省略する。
〈第2実施形態〉
図2に示す成形品Fは、自動車用エンジンフードを構成するアウタパネルの前駆体であって、その裏面側から三次元形状に成形される。この成形品Fは、底部Bの両側が傾斜面C1,C2である凹状部Hを有しており、一方の傾斜面C1がアウタパネルの主体部に相当し、他方の傾斜面C2がアウタパネルの前部に相当する。
この逐次成形方法では、金属板Aを水平に保持して上記の成形品Fを成形するので、主体部の末端(後端)と前部の末端(下端)が同じ高さになる。このため、凹状部Hでは、アウタパネルの主体部及び前部が傾斜した状態になり、これらが一方及び他方の傾斜面C1,C2に相当する。
上記の凹状部Hは、第1実施形態と同様に、一方の傾斜面C1の斜面角度よりも、他方の傾斜面C2の斜面角度が大きい形状である。また、成形品Fは、全周にわたって枠状部Dを有すると共に、底部B及び傾斜面C1,C2の縁部から枠状部Dに至る斜面部E,Eを有している。
この実施形態の逐次成形方法は、第1実施形態と同様に、成形品Fに対して工具2の軸線2Aが傾斜した状態に設定する。この際、逐次成形方法は、凹状部Hの一方の傾斜面C1の斜面角度よりも、他方の傾斜面C2の斜面角度が大きいので、他方の傾斜面C2と工具2の軸線2Aとが成す成形角度θsを所定の閾値以上とし、前記成形角度θsを維持して前半領域及び後半領域の成形を行う。その理由を以下に述べる。
一般に、逐次成形方法では、工具の軸線と金属板Aの成形面との成す成形角度がゼロに近づくほど、板厚が減少することが理論的に知られている。具体的には、図3(A)に示すように、成形品Fの斜面角度(金属板Aの成形前に対する成形後の角度)θfが大きい場合、図3中に仮想線で示す如く工具2を垂直に配置すると、成形角度θ3(θs)が小さくなり、板厚減少が生じ易くなる。
また、図3(B)は、成形角度θsと板厚との関係を示すグラフであって、成形角度θsが小さくなるほど板厚が減少することが明らかである。この実施形態のように、成形品Fが自動車用パネル部品である場合には、強度上、板厚減少率の範囲が規定されており、一定以上の板厚を確保しなければならない。一例として、図3(B)に示すように、0.7(mm)以上の板厚が必要であり、その板厚を確保するには成形角度θsを概ね45度以上にする必要がある。
そこで、この実施形態の逐次成形方法では、後半領域に含まれる他方の傾斜面C2の斜面角度の方が大きいので、図3中に実線で示すように、工具2を一方の傾斜面側(図3中で左側)に傾斜させて、その成形角度θsが、軸線2Aを垂直にした場合の成形角度θ3よりも大きく(θs>θ3)なるようにする。
そして、上記の逐次成形方法では、成形角度θsを概ね45度以上にする必要があるので、これを所定の閾値にする。これにより、逐次成形方法では、成形品Fにおける斜面角度が大である他方の傾斜面C2に対して、工具2の成形角度θsを所定の閾値以上とし、前記成形角度θsを維持した状態で前半領域及び後半領域の成形を行う。
この実施形態の逐次成形方法では、図4(A)に示すように、成形品Fに対して工具2の軸線2Aが一方の傾斜面C1側に傾斜した状態に設定し、この際、工具2の成形角度θsを所定の閾値以上にする。また、工具2の軸線2Aと同方向に傾斜した加工経路面Pを設定する。このとき、工具2の軸線2Aと加工経路面Pとの成す角度は、直角若しくは直角に近い角度である。
上記の設定後、逐次成形方法は、図4及び図6(A)(B)に示すように、一方の傾斜面C1を含む前半領域では、加工経路面Pの傾斜に合わせて設定した往復移動経路P1に沿って工具2を往復移動させて前半領域を成形する。そして、逐次成形方法は、第1実施形態と同様に、往復移動経路P1に沿う工具2の往復移動と、工具2の前進及び往復移動経路P1の移動(再設定)とを繰り返し行う。これにより、図4(A)及び図6(A)から図4(B)及び図6(C)に至るように前半領域を成形する。
その後、逐次成形方法は、図5及び図6(C)(D)に示すように、他方の傾斜面C2を含む後半領域では、加工経路面Pの傾斜に合わせて設定した周回移動経路P2に沿って工具2を周回移動させて後半領域を成形する。そして、逐次成形方法は、第1実施形態と同様に、周回移動経路P2に沿う工具2の周回移動と、工具2の前進及び周回移動経路P2の移動(再設定)とを繰り返し行う。これにより、図4(A)及び図6(A)から図4(B)及び図6(C)に至るように後半領域を成形する。
このようにして、逐次成形方法は、傾斜した加工経路P面(移動経路P1,P2)が平行移動するように、前半領域及び後半領域の成形が連続的に進行し、金属板Aに対しては斜めに成形が進行し、凹状部Hの全体をむらなく成形する。なお、この実施形態の成形品Fは、枠状部D及び斜面部E,Eの切除等の仕上げ加工を施してアウタパネルになる。
上記の逐次成形方法は、第1実施形態と同様に、底部Bの両側が傾斜面C1,C2である凹状部Hを有する成形品Fを成形するに際し、成形型を廃止して製造コストの低減を実現すると共に、成形型を使用せずに、金属板Aの板厚減少の抑制や金属板Aの凸状部の成形が可能になる。
また、上記の逐次成形方法は、前半領域では、工具2の往復移動経路P1における往路と復路の長さを等しくすることで、加工漏れを起こすことな全体を確実に成形することができる。また、後半領域においては、工具2の移動経路が周回移動経路P2であるから、全体を確実に成形することができる。さらに、工具2の軸線2Aと加工経路面Pとの成す角度を直角(若しくは実質的に直角)にすることで、工具2の軸線と金属板Aの成形面とが成す見かけ上の成形角度をより充分に確保して、金属板Aの板厚減少をより軽減し得る。
そして、上記実施形態の逐次成形方法は、凹状部Hの他方の傾斜面C2が、一方の傾斜面C1の傾斜角度よりも大きい傾斜角度を有しており、他方の傾斜面C2と工具2の軸線2Aとが成す成形角度θsを所定の閾値以上として、前半領域及び後半領域の成形を行うものとしている。これにより、上記の逐次成形方法は、全過程において工具2の傾きを変更せずに、より安定した成形を行うことができると共に、金属板Aの板厚減少を充分に抑制することができる。
〈第3実施形態〉
図7に示す逐次成形方法は、複数(図示例では2つ)の凹状部H,Hを有する成形品Fを成形する場合を示している。各凹状部Hは、底部Bの両側に傾斜面C1,C2を有している。図示例の場合、両傾斜面C1,C2は、同等の斜面角度を有している。この成形品Fは、自動車用エンジンフードのインナパネルであって、その裏面側から工具2による成形が施されている。
この実施形態の逐次成形方法にあっても、成形品Fに対して工具2の軸線2Aが一方の傾斜面C1側に傾斜した状態に設定すると共に、工具2の軸線2Aと同方向に傾斜した加工経路面Pを設定する。そして、一方の傾斜面C1を含む前半領域では、加工経路面Pの傾斜に合わせて設定した往復移動経路に沿って工具2を往復移動させて成形する。その後、他方の傾斜面C2を含む後半領域では、加工経路面Pの傾斜に合わせて設定した周回移動経路に沿って工具2を周回移動させて成形する。
そして、この実施形態の逐次成形方法は、上述の要領で図中で左側の凹状部Hを成形した後、次の凹状部Hを成形する。これにより、両凹状部H,Hの間には、凸状部Tが形成されることとなる。
このように、上記の逐次成形方法では、第1及び第2の実施形態と同様の効果を得ることができるうえに、金属板Aの片側に配置した工具2により、成形型を用いることなく凸状部Tを成形することができる。
〈第4実施形態〉
図8に示す逐次成形方法は、第3実施形態と同様に、複数の凹状部Hを有する成形品Fを成形する場合を示している。なお、第3実施形態では、成形品Fが水平な姿勢になるように成形した。これに対して、第4実施形態では、成形品Fが傾斜した姿勢になるように成形する。この場合、治具1により保持される金属板Aは、先の各実施形態の場合よりも面積が大きいものを使用し、工具2の軸線2Aを垂直(鉛直)にする。
これにより、逐次成形方法は、実質的に、成形品Fに対して工具2の軸線2A一方の傾斜面C1側に傾斜させた状態に設定し、工具2の軸線2Aと同方向に傾斜した加工経路面Pも設定される。
その後、逐次成形方法は、第3実施形態と同じ要領で、凹状部H,Hを順次成形すると共に、両凹状部H,Hの間に凸状部Tを成形する。但し、この実施形態の逐次成形方法では、面積の大きい金属板Aを用い、成形品Fが傾斜した姿勢となるように成形するので、成形品Fよりも先の部分に余剰部Gが成形される。
これにより、金属板Aは、全体が深い凹状を成すように成形され、各凹状部Hの他方の傾斜面C2が水平になるように成形される。また、金属板Aは、凸状部Tの頂面が傾斜して、見かけ上凸状部Tがない状態で、等高線を減少する方向のみに成形が進行する。これにより、最終的に、成形品Fを傾斜した姿勢にして成形することができる。
上記の逐次成形方法は、先の実施形態と同様の効果を得ることができるうえに、金属板Aの片側に配置した工具2により、成形型を用いることなく凸状部Tを成形することが可能になる。また、上記の逐次成形方法では、工具2の角度を変更することなく、板厚減少を抑制しつつ凹状部H及び凸状部Tを有する成形品Fを得ることができる。
なお、上記実施形態のように成形品Fを傾斜した姿勢に成形する場合、治具1とともに金属板Aを傾斜させて、金属板A及び工具2の相互の位置関係を設定しても良く、この場合、金属板Aは、第3実施形態と同等の大きさで構わない。
本発明に係わる逐次成形方法置は、上記各実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の細部を適宜変更することが可能である。上記各実施形態では、金属板Aの上側に配置した工具2で成形を行う場合を例示したが、金属板Aを立てた状態にし、横方向や下方向から工具2を押し付けて成形することも可能である。
また、本発明に係わる逐次成形方法は、自動車用エンジンフードのアウタパネルやインナパネルに限らず、底部の両側が傾斜面である凹状部を有するものであれば、様々な成形品に適用することが可能である。
さらに、本発明に係わる逐次成形方法は、金属板Aと工具2との位置関係や移動経路を設定するものとしたが、工具2,3の押圧力や移動速度の制御を行うこともあり得る。さらに、工具2は、必ずしも先端が球面状でなくても良く、先端の曲率や直径等が異なるものを使用することも可能である。
2 工具
2A 工具の軸線
A 金属板
B 底部
C1 一方の傾斜面
C2 他方の傾斜面
F 成形品
H 凹状部
P 加工経路面
P1 往復移動経路
P2 周回移動経路
T 凸状部
θs 成形角度
θf 斜面角度

Claims (4)

  1. 周囲を保持した金属板に工具の先端を押し付けて移動させることにより、金属板を厚さ方向に次第に変形させて三次元形状に成形する逐次成形方法であって、
    底部の両側が傾斜面である凹状部を有する成形品を成形するに際し、
    成形品に対して工具の軸線が一方の傾斜面側に傾斜した状態に設定すると共に、工具の軸線と同方向に傾斜した加工経路面を設定し、
    一方の傾斜面を含む前半領域では、加工経路面の傾斜に合わせて設定した往復移動経路に沿って工具を往復移動させて前半領域を成形し、
    その後、他方の傾斜面を含む後半領域では、加工経路面の傾斜に合わせて設定した周回移動経路に沿って工具を周回移動させて後半領域を成形することを特徴とする逐次成形方法。
  2. 前半領域における工具の往復移動経路は、往路と復路の長さが等しいことを特徴とする請求項1に記載の逐次成形方法。
  3. 凹状部の他方の傾斜面が、一方の傾斜面の傾斜角度よりも大きい傾斜角度を有し、
    他方の傾斜面と工具の軸線とが成す成形角度を所定の閾値以上とし、前記成形角度を維持して前半領域及び後半領域の成形を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の逐次成形方法。
  4. 工具の軸線と加工経路面との成す角度が、直角であることを特徴とする請求項3に記載の逐次成形方法。
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