JP6852316B2 - 化学反応装置、および、化学反応装置を用いた粒子の製造方法 - Google Patents

化学反応装置、および、化学反応装置を用いた粒子の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、化学反応装置、および、化学反応装置を用いた粒子の製造方法に関する。
近年、携帯電話、ノート型パーソナルコンピュータなどの携帯電子機器の普及に伴い、高いエネルギー密度を有する小型で軽量な二次電池の開発が要求されている。また、ハイブリット自動車を始めとする電気自動車用の電池として、高出力の二次電池の開発も要求されている。このような要求を満たす非水系電解質二次電池として、リチウムイオン二次電池がある。リチウムイオン二次電池は、負極、正極、電解液などで構成され、負極および正極の活物質には、リチウムを脱離および挿入することが可能な材料が用いられている。
リチウム複合酸化物、特に合成が比較的容易なリチウムコバルト複合酸化物を正極材料に用いたリチウムイオン二次電池は、4V級の高い電圧が得られるため、高エネルギー密度を有する電池として期待され、実用化が進んでいる。リチウムコバルト複合酸化物を用いた電池では、優れた初期容量特性やサイクル特性を得るための開発はこれまで数多く行われてきており、すでにさまざまな成果が得られている。
しかしながら、リチウムコバルト複合酸化物は、原料に高価なコバルト化合物を用いるため、このリチウムコバルト複合酸化物を用いる電池の容量あたりの単価は、ニッケル水素電池より大幅に高くなり、適用可能な用途はかなり限定されている。したがって、携帯機器用の小型二次電池についてだけではなく、電力貯蔵用や電気自動車用などの大型二次電池についても、正極材料のコストを下げ、より安価なリチウムイオン二次電池の製造を可能とすることに対する期待は大きく、その実現は、工業的に大きな意義があるといえる。
リチウムイオン二次電池用活物質の新たなる材料としては、コバルトよりも安価なニッケルを用いたリチウムニッケル複合酸化物を挙げることができる、このリチウムニッケル複合酸化物は、リチウムコバルト複合酸化物よりも低い電気化学ポテンシャルを示すため、電解液の酸化による分解が問題になりにくく、より高容量が期待でき、コバルト系と同様に高い電池電圧を示すことから、開発が盛んに行われている。しかし、純粋にニッケルのみで合成したリチウムニッケル複合酸化物を正極材料としてリチウムイオン二次電池を作製した場合、コバルト系に比ベサイクル特性が劣り、また、高温環境下で使用や保存により比較的電池性能を損ないやすいという欠点を有しているため、ニッケルの一部をコバルトやアルミニウムで置換したリチウムニッケル複合酸化物が一般的に知られている。
正極活物質の一般的な製造方法は、(1)まず、中和晶析法によりリチウムニッケル複合酸化物の前駆体であるニッケル複合水酸化物を作製し、(2)その前駆体をリチウム化合物と混合して焼成する方法が知られている。このうち、(1)の中和晶析法によって粒子を製造する方法として、代表的な実施の形態は、撹拌槽を用いたプロセスである。
特許文献1では、撹拌槽内に、ニッケル塩およびコバルト塩を含む混合水溶液と、アンモニウムイオン供給体を含む水溶液と、苛性アルカリ水溶液とを供給して反応させ、ニッケルコバルト複合水酸化物の粒子を析出させている。混合水溶液の供給口当たりの反応水溶液量に対する供給量の割合を0.04体積%/分以下とすることで、粒径が大きく、結晶性が高く、形状が略球状の粒子が得られると記載されている。
特開2011−201764号公報
従来から、撹拌槽を用いて所望の特性の粒子を得るため、様々な検討がなされている。
しかしながら、撹拌翼のタイプや翼径、撹拌槽の容積などの装置構造が変わると、その都度、条件出しが必要であった。
本発明者は、様々な構造の化学反応装置で普遍的に、粒子の品質を向上できる条件を検討し、撹拌槽内の溶液に占める高過飽和領域の体積割合と、撹拌槽内の溶液の加速度とに着目した。
ここで、高過飽和領域とは、溶液中に溶けている粒子成分の濃度が所定値以上の領域を意味する。高過飽和領域では、粒子成分の濃度が溶解度よりも十分に高いので、粒子成分の析出が有意な速さで進む。
本発明者は、撹拌槽内の溶液に占める高過飽和領域の体積割合が小さいほど、粒子成分の析出が緩やかに進むので、粒子の品質を向上できることを見出した。
また、本発明者は、撹拌槽内の溶液の加速度が大きいほど、球状に成長した粒子同士の結合を抑制できることを見出した。各粒子に付与される力が、結合力に打ち勝つようになるためと推定される。
撹拌槽内の溶液に占める高過飽和領域の体積割合と、撹拌槽内の溶液の加速度とは、撹拌翼の回転数によって調整できるが、独立に調整困難であった。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、撹拌槽内の溶液の加速度を一定に維持しながら、撹拌槽内の溶液に占める高過飽和領域の体積割合を調整できる、化学反応装置の提供を主な目的とする。
上記課題を解決するため、本発明の一態様によれば、
金属塩と塩基を含む溶液の中に、前記金属塩を含む原料液を供給しながら、前記溶液の中で中和晶析によって粒子を析出させる、化学反応装置であって、
前記溶液を収容する撹拌槽と、
前記溶液を撹拌する撹拌翼と、
前記溶液の中で前記原料液を吐出する原料液吐出部を含む原料液供給管と、
前記原料液吐出部の付近で前記原料液を分散させる流体を吐出する流体吐出部を含む流体供給管とを備える、化学反応装置が提供される。

本発明の一態様によれば、撹拌槽内の溶液の加速度を一定に維持しながら、撹拌槽内の溶液に占める高過飽和領域の体積割合を調整できる、化学反応装置が提供される。
一実施形態による化学反応装置を示す上面図である。 図1のII−II線に沿った断面図である。 図1の原料液供給管と流体供給管との位置関係を示す断面図である。 変形例による化学反応装置を示す上面図である。 図4の原料液供給管と流体供給管との位置関係を示す断面図である。 一実施形態によるニッケル含有水酸化物の製造方法のフローチャートである。 一実施形態による粒子成長工程の前半で形成される凝集体を模式化した断面図である。 一実施形態による粒子成長工程の後半で形成される外殻を模式化した断面図である。 一実施形態による核生成工程における反応水溶液中の第1高過飽和領域を示す図である。 連続式の撹拌槽内の反応水溶液に占める第1高過飽和領域の体積割合が0.025%である場合に得られた粒子の一例のSEM写真である。 連続式の撹拌槽内の反応水溶液に占める第1高過飽和領域の体積割合が0.100%である場合に得られた粒子の一例のSEM写真である。 一実施形態による粒子成長工程における反応水溶液中の第2高過飽和領域を示す図である。 連続式の撹拌槽内の反応水溶液に占める第2高過飽和領域の体積割合が0.379%である場合に得られた粒子の断面の一例のSEM写真である。 連続式の撹拌槽内の反応水溶液に占める第2高過飽和領域の体積割合が0.624%である場合に得られた粒子の断面の一例のSEM写真である。 一実施形態による撹拌翼の直上に設定される円形の水平面、および当該水平面を通過する流線を示す図である。 連続式の撹拌槽内の流れの平均最大加速度が1395m/sである場合に得られた粒子の一例のSEM写真である。 連続式の撹拌槽内の流れの平均最大加速度が600m/sである場合に得られた粒子の一例のSEM写真である。
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明するが、各図面において、同一の又は対応する構成については同一の又は対応する符号を付して説明を省略する。
図1は、一実施形態による化学反応装置を示す上面図である。図2は、図1のII−II線に沿った断面図である。
化学反応装置10は、溶液の中に原料液を供給しながら、溶液の中で粒子を析出させる。例えば、溶液は金属塩と塩基とを含み、原料液は金属塩を含み、粒子は中和晶析によって析出する。金属塩がニッケル塩を含む場合、粒子はニッケル含有水酸化物である。尚、粒子の種類は、ニッケル含有水酸化物には限定されない。
化学反応装置10は、例えば、撹拌槽20と、撹拌翼30と、撹拌軸40と、バッフル50とを有する。撹拌槽20は、円柱状の内部空間に溶液を収容する。撹拌翼30は、撹拌槽20内の溶液を撹拌させる。撹拌翼30は、撹拌軸40の下端に取付けられる。モータなどが撹拌軸40を回転させることで、撹拌翼30が回転される。撹拌槽20の中心線、撹拌翼30の中心線、および撹拌軸40の中心線は、一致してよく、鉛直とされてよい。バッフル50は、邪魔板とも呼ばれる。バッフル50は、撹拌槽20の内周面から突出しており、回転流を邪魔することで上昇流や下降流を生じさせ、溶液の撹拌効率を向上させる。
本発明者は、様々な構造の化学反応装置で普遍的に、粒子の品質を向上できる条件を検討し、撹拌槽20内の溶液に占める高過飽和領域の体積割合に着目した。
高過飽和領域とは、溶液中に溶けている粒子成分の濃度が所定値以上の領域を意味する。高過飽和領域では、粒子成分の濃度が溶解度よりも十分に高いので、粒子成分の析出が有意な速さで進む。
撹拌槽20内の溶液に占める高過飽和領域の体積割合が小さいほど、粒子成分の析出が緩やかに進むので、粒子の品質を向上できる。ここで、高過飽和領域の数が複数の場合、高過飽和領域の体積とは合計の体積を意味する。
高過飽和領域は、原料液の吐出口付近に形成される。その吐出口は溶液の流れ場に設置されているため、高過飽和領域の体積などは流れ場の影響を受ける。流れ場は、撹拌翼30の回転数の他、撹拌翼30のタイプや翼径、撹拌槽20の容積などの条件により変化する。以下、撹拌槽20内の流れ場に影響を与える条件を撹拌条件と呼ぶ。
撹拌槽20内の流れ場や高過飽和領域の体積は、シミュレーションにより確認できる。以下、連続式の撹拌槽内で、硫酸ニッケルと水酸化ナトリウムとを反応させて、水酸化ニッケルを製造する場合の定常状態の流体解析について主に説明する。流体解析ソフトとしては、ANSYS社製のANSYS CFX Ver15.0(商品名)を用いる。解析条件などを以下に示す。
<座標系>
・流体解析を行う領域(以下、「解析領域」とも呼ぶ。)のうち、撹拌軸や撹拌翼の周りは、撹拌軸や撹拌翼と共に回転する回転座標系で扱う。回転座標系で扱う領域は、円柱状であって、その中心線を撹拌軸や撹拌翼の中心線に重ね、その直径を撹拌翼の翼径の115%に設定し、上下方向の範囲を撹拌槽の内底面から液面までとする。
・解析領域のうち、その他の領域は、静止座標系で扱う。
・回転座標系と静止座標系とは、流体解析ソフトのインターフェース機能を使用して接続する。インターフェース機能としては、オプションの「Frozen Rotor」を用いる。
<乱流モデル>
・撹拌槽内の流れは、層流ではなく、乱流である。その乱流モデルとしては、SST(Shear Stress Transport)モデルを用いる。
<化学反応>
・撹拌槽内で生じる化学反応の式を下記に示す。
NiSO+2NaOH→Ni(OH)+NaSO
・流体解析では、以下の5成分が含まれる単相多成分の流体を扱う。
1)反応成分A:NiSO
2)反応成分B:NaOH
3)生成成分C:NiOH
4)生成成分D:NaSO
5)水
・化学反応の速度の大きさは、渦消散モデルにより計算する。渦消散モデルは、乱流分散によって反応成分Aと反応成分Bとが分子レベルまで混合すると、上記化学反応が生じると仮定した反応モデルである。渦消散モデルの設定は、流体解析ソフトのデフォルトの設定のままとする。
<各成分の質量分率の計算方法>
・解析領域内の任意の位置および任意の時点で、上記5成分の合計の質量分率は1である。そこで、上記5成分のうち水を除く4成分のそれぞれの質量分率は、CFXによって輸送方程式を解いて求める値とし、水の質量分率は、1から、上記4成分の合計の質量分率を引いて得られる値とする。
<境界条件>
・壁境界(流体の出入りのない境界)
撹拌槽や撹拌軸、撹拌翼、バッフルなどの固体との境界では、滑り無しとする。一方、外気との境界(液面)では、滑り有りとする。尚、液面は、撹拌によって変形しないものとし、高さが一定の平面とする。
・流入境界(流体が入ってくる境界)
撹拌槽内の流体中に、反応成分Aを含む水溶液(以下、「水溶液A」と呼ぶ。)が流入する流入境界と、反応成分Bを含む水溶液(以下、「水溶液B」と呼ぶ。)が流入する流入境界とを別々に設ける。
水溶液Aの流入流量や水溶液Aに占める反応成分Aの割合、水溶液Bの流入流量や水溶液Bに占める反応成分Bの割合は一定とする。水溶液Bの流入流量は、撹拌槽内の水溶液のpHが所定値(例えば12.0)に維持されるように、設定する。
・流出境界(流体が出ていく境界)
撹拌槽の内周面の一部に、撹拌槽内の流体が出ていく流出境界を設ける。流出する液体は、生成成分CおよびD、未反応の反応成分AおよびB、並びに水を含むものである。その流出量は、解析領域と系外との圧力差がゼロになるように設定する。
尚、オーバーフロー型の連続式の場合、液面が流出境界である。
<熱条件>
・撹拌槽内の流体の温度は、25℃一定とする。化学反応による熱の生成、流入境界や流出境界での熱の出入りは、無いものと仮定する。
<初期条件>
・撹拌槽内の流体は、初期状態において、均質なものとし、上記5成分のうち反応成分Bと水の2成分のみを含むものとする。具体的には、撹拌槽内の流体のうち、反応成分Aの初期質量分率や生成成分Cの初期質量分率、生成成分Dの初期質量分率はゼロ、反応成分Bの初期質量分率は撹拌槽内の水溶液のpHが上記所定値になるように設定する。
尚、生成成分Cの初期質量分率や生成成分Dの初期質量分率は、ここではゼロに設定するが、定常解を求めるための反復計算の回数(つまり、計算時間)を減らすため、定常状態において到達すると予測される、解析領域全体での平均値に設定してもよい。解析領域全体での平均値は、水溶液Aの流入流量や水溶液Aに占める反応成分Aの割合、水溶液Bの流入流量や水溶液Bに占める反応成分Bの割合、化学反応式で表される量的関係などを基に算出できる。
<収束判定>
・定常解を求めるための反復計算は、解析領域内の任意の位置で、流れの流速成分(m/s)や圧力(Pa)、上記4成分のそれぞれの質量分率の、それぞれの二乗平均平方根の残差が10−4以下となるまで行う。
<高過飽和領域の体積の計算方法>
・高過飽和領域とは、撹拌槽内の水溶液中に溶けている生成成分Cの濃度が所定値以上の領域である。上記所定値は、詳しくは後述するが、核生成工程では5.0mol/m、粒子成長工程では1.7mol/mとする。以下、核生成工程で設定する高過飽和領域を「第1高過飽和領域」、粒子成長工程で設定する高過飽和領域を「第2高過飽和領域」とも呼ぶ。第1高過飽和領域の濃度の下限値が第2高過飽和領域の濃度の下限値よりも高い理由は、核生成が生じる下限濃度は粒子成長が生じる下限濃度よりも高いためである。高過飽和領域は、水溶液Aの流入境界の周囲に形成される。
・ところで、流体解析では、上述の如く、上記5成分を単相多成分の流体として扱うため、生成成分Cの全てを液体として扱う。一方、実際には、生成成分Cの大部分は析出して固体となり、生成成分Cの残りの一部のみが液体として水溶液中に溶けている。
・そこで、高過飽和領域の体積は、上記流体解析により得た生成成分Cの濃度分布を補正することで算出する。その補正では、水溶液Aの流入境界から十分に離れた流出境界において生成成分Cの濃度が溶解度相当になるように、撹拌槽内の流体の全体において一律に生成成分Cの濃度を所定値下げる。
・尚、撹拌槽が連続式ではなくバッチ式の場合、流出境界が存在しない。この場合、濃度分布の補正では、撹拌槽内の水溶液の液面において生成成分Cの濃度が溶解度相当になるように、撹拌槽内の流体の全体において一律に生成成分Cの濃度を所定値下げればよい。ちなみに、オーバーフロー型の連続式の場合、液面が流出境界である。
尚、上記説明では、水酸化ニッケルを得る場合の解析条件を示したが、ニッケル複合水酸化物を得る場合の解析条件も同様に設定できる。例えば、硫酸ニッケルや硫酸マンガンと水酸化ナトリウムとを反応させてニッケルマンガン複合水酸化物を得る場合、流体解析では、以下の7成分が含まれる単相多成分の流体を扱う。
1)反応成分A1:NiSO
2)反応成分A2:MnSO
3)反応成分B:NaOH
4)生成成分C1:NiOH
5)生成成分C2:MnOH
6)生成成分D:NaSO
7)水
ここでは、撹拌槽内で「A1+2B→C1+D」および「A2+2B→C2+D」の2つの化学反応が生じるとし、それぞれの化学反応に対応する渦消散モデルが反応モデルとして用いられる。反応成分A1と反応成分A2とは、均一に水に溶けた状態で、同一の流入境界から供給される。つまり、反応成分A1と反応成分A2の両方を含む水溶液Aが流入境界から供給される。水溶液Aの流入境界の周囲に、高過飽和領域が形成される。高過飽和領域とは、撹拌槽内の水溶液中に溶けている生成成分のうち全ての金属水酸化物(ここでは生成成分C1と生成成分C2)の合計のモル濃度が上記所定値以上の領域のことである。
ここで、生成成分のうち全ての金属水酸化物のモル濃度を合計する理由について説明する。先ず、上述の如く、反応成分A1と反応成分A2とは、均一に水に溶けた状態で、同一の流入境界から流入する。このとき、反応成分A1および反応成分A2は、反応成分Bと速やかに反応して、生成成分C1および生成成分C2を生じる。よって、生成成分C1と生成成分C2とは、生成した時点で、充分に混ざった状態で存在する。その結果、生成成分C1と生成成分C2とは、個別の水酸化物として析出するのではなく、それぞれの成分が複合した水酸化物の固溶体として析出する。
水溶液Aの流入境界の数は複数でもよく、高過飽和領域の数は複数でもよい。高過飽和領域の数が複数である場合、高過飽和領域の体積とは合計の体積を意味する。
ニッケル含有水酸化物の製造方法は、撹拌槽内の水溶液に占める高過飽和領域の体積割合を、シミュレーションにより確認する工程を有してよい。この確認は、製造条件の変更の度に行われてよい。例えば、バッチ式の場合、製造条件が同じ間、確認は一度行われればよく、毎回の確認は不要である。
本発明者は、撹拌条件が同一であって且つ撹拌槽20内への原料液の供給流量が同一である場合に高過飽和領域の体積を小さくできる手段を、シミュレーションによって検討した。その結果、高過飽和領域の体積は、主に(1)原料液の吐出口の数N、および(2)原料液の吐出口付近でのUやK(詳しくは後述する。)に依存することを見出した。Uは流れの速さ(m/s)のことであり、Kは乱流拡散係数(m/s)のことである。
表1は、撹拌条件が同一であって且つ撹拌槽20内への原料液の供給流量が同一である場合の、原料液の吐出口の数Nと、高過飽和領域の体積V1、V2との関係を示す。Nが複数の場合の各吐出口からの供給流量は、Nが1の場合の吐出口からの供給流量の1/Nとした。供給流量とは、単位時間当たりの供給量のことである。また、Nが複数の場合の各吐出口付近でのUやKは、Nが1の場合の吐出口付近でのUやKと略同一とした。また、Nが複数の場合の吐出口同士の間隔は、高過飽和領域同士が重ならないように設定した。
表1において、V1は第1高過飽和領域の体積を、V2は第2高過飽和領域の体積をそれぞれ表す。また、V1はNが1の場合のV1の値を、V2はNが1の場合のV2の値をそれぞれ表す。Nが複数の場合、V1はN個の第1高過飽和領域の合計の体積を意味し、V2はN個の第2高過飽和領域の合計の体積を意味する。
Figure 0006852316
表1から明らかなように、原料液の吐出口の数Nが多いほど、高過飽和領域の体積V1、V2が小さくなる傾向が見られた。この傾向は、撹拌条件を変更しても同様に見られた。また、この傾向は、撹拌槽内への原料液の供給流量を変更しても同様に見られた。本発明者は、原料液を分けて複数の吐出口から撹拌槽内に供給することで、高過飽和領域の体積V1、V2を小さくできることを見出した。
本実施形態の化学反応装置は、撹拌槽20内の溶液中に原料液を吐出する原料液吐出部61(図3参照)を1つ有するが、複数有してもよい。この場合、各原料液吐出部61には吐出口が1つずつ形成される。原料液を分けて複数の原料液吐出部61から撹拌槽20内に供給することで、撹拌槽20内の溶液に占める高過飽和領域の体積V1、V2を小さくでき、得られる粒子の品質を向上できる。
この効果を十分に得るためには、高過飽和領域同士が重ならないように原料液吐出部61同士の間隔が設定されることが好ましい。高過飽和領域同士が重なる程度に原料液吐出部61同士が近いと、原料液吐出部61の数を複数にする意義が薄れる。高過飽和領域同士が重なるか否かは、上記シミュレーションによって判定できる。
核生成工程において第1高過飽和領域同士が重ならないためには、原料液吐出部61の中心同士の間隔は例えば75mm以上である。また、粒子成長工程において第2高過飽和領域同士が重ならないためには、原料液吐出部61の中心同士の間隔は例えば120mm以上である。
(A)核生成工程において第1高過飽和領域同士が重ならないこと、および、(B)粒子成長工程において第2高過飽和領域同士が重ならないことの一方のみが成立してもよいが、両方が成立するように、原料液吐出部61同士の間隔が設定されてよい。
原料液吐出部61同士の間隔は、核生成工程と粒子成長工程とで同じでもよいが、核生成工程と粒子成長工程とが別々に行われる場合、工程に合わせて変更されてもよい。
また、本発明者は、原料液の吐出口を撹拌槽内のUやKが大きい位置に設置することで、高過飽和領域の体積を小さくできることを見出した。Kが大きいほど、原料液が拡散しやすいので、高過飽和領域の体積が小さくなる。また、Uが大きいほど、原料液と溶液との合流地点で溶液の量が相対的に増えるので、原料液が分散しやすく、高過飽和領域の体積が小さくなる。
また、本発明者は、様々な構造の化学反応装置で普遍的に、析出完了時に得られる粒子の球状性の崩れを抑制できる条件を検討し、撹拌槽20内の溶液の加速度に着目した。
溶液中で析出した粒子は、溶液全体に分散しており、撹拌翼30などによって加速され、力を付与される。溶液の加速度が大きいほど、溶液と共に移動する粒子の加速度が大きく、球状に成長した粒子同士の結合を抑制できる。各粒子に付与される力が、結合力に打ち勝つようになるためと推定される。
撹拌翼30の回転数が大きくなるほど、撹拌槽20内の溶液の加速度が大きくなり、溶液と共に移動する粒子の加速度が大きくなる。
尚、撹拌翼30の回転数が大きくなるほど、原料液の吐出口付近における流れの速さUも大きくなり、高過飽和領域の体積が小さくなる。
図3は、図1の原料液供給管と流体供給管との位置関係を示す断面図である。図3において、A1は撹拌翼30の回転によって形成される流れの主流方向を、A2は原料液供給管60からの原料液の吐出方向を、A3は流体供給管70からの流体の吐出方向をそれぞれ表す。図5、図9および図12において同様である。
図1および図3に示すように、化学反応装置10は、溶液の流れの中で原料液を吐出する原料液吐出部61を含む原料液供給管60と、原料液吐出部61の付近で原料液を分散させる流体を吐出する流体吐出部71を含む流体供給管70とを含む。
原料液供給管60は、溶液の流れの中で原料液を吐出する原料液吐出部61を含む。原料液吐出部61には吐出口が形成されており、その吐出口から原料液が吐出される。原料液供給管60は、例えば、溶液の液面から下方に差し込まれ、下端部に原料液吐出部61を有し、原料液吐出部61から下向きに原料液を吐出する。
尚、原料液供給管60は、撹拌槽20の底部から上方に突出し、上端部に原料液吐出部61を有し、原料液吐出部61から上向きに原料液を吐出してもよい。また、原料液供給管60は、上下方向中央部に原料液吐出部61を有し、原料液吐出部61から水平向きに原料液を吐出してもよい。原料液吐出部61の位置や吐出方向A2などは、特に限定されない。
流体供給管70は、原料液吐出部61の付近で原料液を分散させる流体を吐出する流体吐出部71を含む。流体吐出部71には吐出口が形成されており、その吐出口から流体が吐出される。流体吐出部71の位置や吐出方向A3などは、原料液を流体吐出部71からの流体によって分散させることができれば、特に限定されない。例えば、流体吐出部71の吐出方向A3は、撹拌翼30の回転によって形成される溶液の流れの主流方向A1に対し、図3では交差しているが、平行とされてもよい。
本実施形態によれば、上述の如く、撹拌槽20内の溶液を撹拌翼30で撹拌しながら、その溶液の中に吐出される原料液を流体吐出部71からの流体によって分散させる。よって、撹拌翼30の回転数を一定に維持することで撹拌槽20内の溶液の加速度を一定に維持しながら、流体吐出部71からの流体の速さを調整することで溶液に占める高過飽和領域の体積割合を調整できる。
流体吐出部71は、撹拌翼30とは異なり、撹拌槽20内の溶液全体の流れ場を調整するのではなく、原料液吐出部61Aの付近の溶液の流れ場を局所的に調整する。よって、溶液に占める高過飽和領域の体積割合を効率良く小さくできる。
流体吐出部71は原料液吐出部61に向けて流体を吐出してよく、流体吐出部71の吐出方向A3と原料液吐出部61の吐出方向A2とが交差してよい。原料液吐出部61の近傍での流れを乱すことができ、原料液吐出部61の近傍での乱流拡散係数Kを大きくすることができ、高過飽和領域の体積を小さくすることができる。
尚、流体吐出部71の吐出方向A3は、原料液吐出部61の吐出方向A2に対し、図3では斜めに交差するが、垂直に交差してもよい。
流体吐出部71は、図3に示すように、原料液吐出部61よりも上流側から、原料液吐出部61に向けて流体を吐出してよい。ここで、上流側とは、撹拌翼30の回転によって形成される溶液の流れの上流側を意味する。撹拌翼30の回転によって形成される溶液の流れに逆らわずに流体を吐出することで、原料液吐出部61の近傍での流れの速さUを大きくすることができ、高過飽和領域の体積をより小さくすることができる。
流体吐出部71は、流体として、撹拌槽20との間で循環される溶液を吐出してよい。つまり、流体吐出部71は、撹拌槽20の内部から取出される溶液を吐出し、撹拌槽20の内部に戻してよい。これにより、撹拌槽20内の溶液のpH変動を抑制できる。また、撹拌槽20が連続式の場合、液量増加による粒子の槽内平均滞留時間の減少を抑制できる。
流体吐出部71から吐出される流体の流速は、流体の流路に設けられる調整装置80(図1参照)によって調整されてよい。調整装置80は、例えば、ポンプ81と、流量調整弁82とを含む。ポンプ81は、撹拌槽20の内部から溶液を吸い込み、流体供給管70の内部に溶液を送り込む。流量調整弁82は、流量調整弁82を通過する溶液の流量を調整する。ポンプ81の回転数の調整または/および流量調整弁82の開度の調整によって、流体吐出部71から吐出される流体の流速を調整できる。
尚、流体吐出部71は、流体として、不活性ガスを吐出してもよい。不活性ガスとしては、アルゴンガスなどの希ガス、窒素ガスなどが用いられる。不活性ガスは、撹拌槽20内の溶液と反応せずに、気泡として浮上する。よって、撹拌槽20内の溶液のpH変動や液量増加などを抑制できる。流体吐出部71が流体として不活性ガスを吐出する場合、調整装置80はポンプ81の代わりにガスボンベなどのガス供給源を含む。
尚、流体吐出部71は、流体として、撹拌槽20との間で循環される溶液と、不活性ガスとを混ぜたものを吐出してもよい。不活性ガスの気流によって溶液を微細化して吐出することができ、原料液吐出部61の近傍での乱流拡散係数Kをより大きくすることができる。流体吐出部71が流体として溶液と不活性ガスを混ぜたものを吐出する場合、調整装置80は溶液の流量を調整する液体流量調整弁と、不活性ガスの流量を調整する気体流量調整弁とを含んでよい。
図4は、変形例による化学反応装置を示す上面図である。図5は、図4の原料液供給管と流体供給管との位置関係を示す断面図である。上記実施形態では、流体吐出部71の吐出方向A3と原料液吐出部61の吐出方向A2とが交差する。これに対し、本変形例では、流体吐出部71Aの吐出方向A3と原料液吐出部61の吐出方向A2とが平行とされる。以下、相違点について主に説明する。
図4および図5に示すように、化学反応装置10Aは、溶液の流れの中で原料液を吐出する原料液吐出部61Aを含む原料液供給管60Aと、原料液吐出部61Aの付近で原料液を分散させる流体を吐出する流体吐出部71Aを含む流体供給管70Aとを含む。
本変形例によれば、上記実施形態と同様に、撹拌槽20内の溶液を撹拌翼30で撹拌しながら、その溶液の中に吐出される原料液を流体吐出部71Aからの流体によって分散させる。よって、撹拌翼30の回転数を一定に維持することで撹拌槽20内の溶液の加速度を一定に維持しながら、流体吐出部71Aからの流体の速さを調整することで溶液に占める高過飽和領域の体積割合を調整できる。
流体吐出部71Aは、撹拌翼30とは異なり、撹拌槽20内の溶液全体の流れ場を調整するのではなく、原料液吐出部61Aの付近の溶液の流れ場を局所的に調整する。よって、効率良く、溶液に占める高過飽和領域の体積割合を小さくすることができる。
流体供給管70Aは原料液供給管60Aと共に二重管を構成し、流体吐出部71Aの吐出方向A3と原料液吐出部61Aの吐出方向A2とは平行とされる。二重管から吐出される流体の速さと原料液の速さとの差によって流れを乱すことができ、原料液吐出部61Aの近傍での乱流拡散係数Kを大きくすることができ、高過飽和領域の体積を小さくすることができる。
二重管から吐出される流体の速さは、同じ二重管から吐出される原料液の速さと異なればよく、小さくても大きくてもよいが、大きい方が好ましい。原料液を分散させる流体の速さを原料液の速さよりも大きくすることで、原料液吐出部61Aの近傍での流れの速さU、を大きくすることができ、高過飽和領域の体積をより小さくすることができる。
流体供給管70Aは、図5に示すように原料液供給管60Aの内側に配置されてよい。この場合、流体は流体供給管70Aの内部の流路を通り吐出され、原料液は流体供給管70Aと原料液供給管60Aとの間に形成される断面環状の流路を通り吐出される。
尚、流体供給管70Aは、図5では原料液供給管60Aの内側に配置されるが、原料液供給管60Aの外側に配置されてもよい。この場合、流体は原料液供給管60Aと流体供給管70Aとの間に形成される断面環状の流路を通り吐出され、原料液は原料液供給管60Aの内部の流路を通り吐出される。
流体供給管70Aと原料液供給管60Aとの間にはスペーサが設けられてもよい。流体供給管70Aと原料液供給管60Aとの位置関係を固定できる。スペーサは、流体供給管70Aと原料液供給管60Aとの間に形成される流路を完全に塞がないように設けられる。
流体供給管70Aは、原料液供給管60Aと共に二重管を構成し、原料液供給管60Aと一体化されている。よって、配管スペースをコンパクトにまとめることができる。
流体供給管70Aは、流体として、図4では撹拌槽20との間で循環される溶液を吐出するが、不活性ガスを吐出してもよいし、溶液と不活性ガスを混ぜたものを吐出してもよい。
図6は、一実施形態による化学反応装置を用いたニッケル含有水酸化物の製造方法のフローチャートである。図6に示すように、ニッケル含有水酸化物の製造方法は、中和晶析によりニッケル含有水酸化物の粒子を得るものであって、粒子の核を生成させる核生成工程S11と、粒子を成長させる粒子成長工程S12とを有する。以下、各工程について説明するが、その前に、得られるニッケル含有水酸化物について説明する。
(ニッケル含有水酸化物)
ニッケル含有水酸化物は、リチウムイオン二次電池の正極活物質の前駆体として用いられるものである。ニッケル含有水酸化物は、例えば、(1)一般式:Ni1−x−yCoAl(OH)2+α(0≦x≦0.3、0.005≦y≦0.15、0≦α≦0.5)で表されるニッケル複合水酸化物であるか、または、(2)一般式:NiCoMn(OH)2+α(x+y+z+t=1、0.1≦x≦0.7、0.1≦y≦0.5、0.1≦z≦0.8、0≦t≦0.02、0≦α≦0.5、Mは、Ti、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、およびWから選択される1種以上の添加元素)で表されるニッケルコバルトマンガン複合水酸化物である。
ニッケル含有水酸化物は、ニッケルを含有し、好ましくはニッケル以外の金属をさらに含有する。ニッケル以外の金属をさらに含有する水酸化物を、ニッケル複合水酸化物と呼ぶ。ニッケル複合水酸化物の金属の組成比(例えば、Ni:Mn:Co:M)は、得られる正極活物質においても維持されるので、正極活物質に要求される金属の組成比と一致するように調整される。
(ニッケル含有水酸化物の製造方法)
ニッケル含有水酸化物の製造方法は、上述の如く、核生成工程S11と、粒子成長工程S12とを有する。本実施形態では、バッチ式の撹拌槽を用いて、撹拌槽内の水溶液のpH値などを制御することで、核生成工程S11と、粒子成長工程S12とを分けて実施する。
核生成工程S11では、核生成が粒子成長よりも優先して起こり、粒子成長はほとんど生じない。一方、粒子成長工程S12では、粒子成長が核生成よりも優先して起こり新しい核はほとんど生成されない。核生成工程S11と粒子成長工程S12とを分けて実施することで、粒度分布の範囲が狭く均質な核が形成でき、その後に、核を均質に成長させることができる。
以下、核生成工程S11および粒子成長工程S12について説明する。核生成工程S11における撹拌槽内の水溶液と、粒子成長工程S12における撹拌槽内の水溶液とでは、pH値の範囲が異なるが、アンモニア濃度の範囲や温度の範囲は実質的に同じであってよい。
尚、本実施形態では、バッチ式の撹拌槽を用いるが、連続式の撹拌槽を用いてもよい。後者の場合、核生成工程S11と粒子成長工程S12とは、同時に実施される。この場合、撹拌槽内の水溶液のpH値の範囲は当然に同じになり、例えば12.0の近傍に設定されてよい。
(核生成工程)
先ず、原料液を調製しておく。原料液は、少なくともニッケル塩を含み、好ましくはニッケル塩以外の金属塩をさらに含有する。金属塩としては、硝酸塩、硫酸塩、塩酸塩などが用いられる。より具体的には、例えば、硫酸ニッケル、硫酸マンガン、硫酸コバルト、硫酸チタン、ペルオキソチタン酸アンモニウム、シュウ酸チタンカリウム、硫酸バナジウム、バナジン酸アンモニウム、硫酸クロム、クロム酸カリウム、硫酸ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、シュウ酸ニオブ、モリブデン酸アンモニウム、タングステン酸ナトリウム、タングステン酸アンモニウムなどが用いられる。
原料液の金属の組成比(例えば、Ni:Mn:Co:M)は、得られるニッケル複合水酸化物においても維持されるので、ニッケル複合水酸化物に要求される組成比と一致するように調整される。
また、撹拌槽内に、アルカリ水溶液、アンモニア水溶液、および水を供給して混合した水溶液を貯める。混合した水溶液を、以下、「反応前水溶液」と呼ぶ。反応前水溶液のpH値は、液温25℃基準で、12.0〜14.0、好ましくは12.3〜13.5の範囲内に調節しておく。また、反応前水溶液中のアンモニアの濃度は、好ましくは3〜25g/L、より好ましくは5〜20g/L、さらに好ましくは5〜15g/Lの範囲内に調節しておく。さらに、反応前水溶液の温度は、好ましくは20〜60℃、より好ましくは35〜60℃の範囲内に調節しておく。
アルカリ水溶液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物を含むものが用いられる。アルカリ金属水酸化物は、固体として供給してもよいが、水溶液として供給することが好ましい。
アンモニア水溶液としては、アンモニア供給体を含むものが用いられる。アンモニア供給体としては、例えば、アンモニア、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、炭酸アンモニウム、フッ化アンモニウムなどが使用できる。
尚、本実施形態では、非還元性錯化剤として、アンモニア供給体が用いられるが、エチレンジアミン四酢酸、ニトリト三酢酸、ウラシル二酢酸、グリシンなどが用いられてもよい。非還元性錯化剤は、撹拌槽内の水溶液中でニッケルイオンなど結合して錯体を形成可能なものであればよい。
反応前水溶液のpH、アンモニア濃度、温度などの調節後、反応前水溶液を撹拌しながら原料液を撹拌槽内に供給する。これにより、撹拌槽内には、反応前水溶液と原料液とが混合した反応水溶液が形成され、中和晶析によって核が生成され、核生成工程S11が開始される。
核生成工程S11において、反応水溶液のpH値が12.0以上であれば、核生成が粒子成長よりも支配的になる。また、核生成工程S11において、反応水溶液のpH値が14.0以下であれば、核が微細化し過ぎることを防止でき、反応水溶液のゲル化を防止できる。核生成工程S11において、反応水溶液のpH値の変動幅(最大値と最小値の幅)は、好ましくは0.4以下である。
また、核生成工程S11において、反応水溶液中のアンモニア濃度が3g/L以上であると、金属イオンの溶解度を一定に保持でき、形状および粒径が整った核が生成しやすい。また、核生成工程S11において、反応水溶液中のアンモニア濃度が25g/L以下であると、析出せずに液中に残る金属イオンが減り、生産効率が向上する。核生成工程S11において、反応水溶液のpH値の変動幅(最大値と最小値の幅)は、好ましくは5g/L以下である。
また、核生成工程S11において、反応水溶液の温度が20℃以上であれば、ニッケル含有水酸化物の溶解度が大きいため、核発生が緩やかに生じ、核発生の制御が容易である。一方、反応水溶液の温度が60℃以下であれば、アンモニアの揮発が抑制できるため、アンモニア水の使用量が削減でき、製造コストが低減できる。
核生成工程S11では、反応水溶液のpH値やアンモニア濃度、温度が上記範囲内に維持されるように、撹拌槽内に、原料液の他に、アルカリ水溶液、アンモニア水溶液を供給する。これにより、反応水溶液中で、核の生成が継続される。そして、所定の量の核が生成されると、核生成工程S11を終了する。所定量の核が生成したか否かは、金属塩の供給量によって推定できる。
(粒子成長工程)
核生成工程S11の終了後、粒子成長工程S12の開始前に、撹拌槽内の反応水溶液のpH値を、液温25℃基準で、10.5〜12.0、好ましくは11.0〜12.0、かつ、核生成工程S11におけるpH値よりも低く調整する。このpH値の調整は、撹拌槽内へのアルカリ水溶液の供給を停止すること、金属塩の金属を水素と置換した無機酸(例えば硫酸塩の場合、硫酸)を撹拌槽内へ供給することなどで調整できる。
反応水溶液のpH、アンモニア濃度、温度などの調節後、反応水溶液を撹拌しながら原料液を撹拌槽内に供給する。これにより、中和晶析によって核の成長(粒子成長)が始まり、粒子成長工程S12が開始される。尚、本実施形態では、核生成工程S11と粒子成長工程S12とを、同一の撹拌槽で行うが、異なる撹拌槽で行ってもよい。
粒子成長工程S12において、反応水溶液のpH値が12.0以下であってかつ核生成工程S11におけるpH値よりも低ければ、新たな核はほとんど生成せず、核生成よりも粒子成長の方が優先して生じる。
尚、pH値が12.0の場合は、核生成と粒子成長の境界条件であるため、反応水溶液中に存在する核の有無により、優先順位が変わる。例えば、核生成工程S11のpH値を12.0より高くして多量に核生成させた後、粒子成長工程S12でpH値を12.0とすると、反応水溶液中に多量の核が存在するため、粒子成長が優先する。一方、反応水溶液中に核が存在しない状態、すなわち、核生成工程S11においてpH値を12.0とした場合、成長する核が存在しないため、核生成が優先する。その後、粒子成長工程S12においてpH値を12.0より小さくすれば、生成した核が成長する。核生成と粒子成長を明確に分離するためには、粒子成長工程のpH値を核生成工程のpH値より0.5以上低くすることが好ましく、1.0以上低くすることがより好ましい。
また、粒子成長工程S12において、反応水溶液のpH値が10.5以上であれば、アンモニアによる溶解度が低いため、析出せずに液中に残る金属イオンが減り、生産効率が向上する。
粒子成長工程S12では、反応水溶液のpH値やアンモニア濃度、温度が上記範囲内に維持されるように、撹拌槽内に、原料液の他に、アルカリ水溶液、アンモニア水溶液を供給する。これにより、反応水溶液中で、粒子成長が継続される。
粒子成長工程S12は、撹拌槽内の雰囲気を切り換えることで前半と後半とに分けることができる。前半の雰囲気は、核生成工程S11と同様に酸化性雰囲気とされる。酸化性雰囲気の酸素濃度は、1容量%以上、好ましくは2容量%以上、より好ましくは10容量%以上である。酸化性雰囲気は、制御が容易な大気雰囲気(酸素濃度:21容量%)であってよい。酸化性雰囲気の酸素濃度の上限は、特に限定されるものではないが、30容量%以下である。一方、後半の雰囲気は、非酸化性雰囲気とされる。非酸化性雰囲気の酸素濃度は、1容量%以下、好ましくは0.5容量%以下、より好ましくは0.3容量%以下である。非酸化性雰囲気の酸素濃度は、酸素ガスまたは大気と、不活性ガスとを混合することにより制御する。
図7は、一実施形態による粒子成長工程の前半で形成される凝集体を模式化した断面図である。図8は、一実施形態による粒子成長工程の後半で形成される外殻を模式化した断面図である。
粒子成長工程S12の前半では、核が成長することで種晶粒子2が形成され、種晶粒子2がある程度大きくなると、種晶粒子2同士が衝突するようになり、複数の種晶粒子2からなる凝集体4が形成される。一方、粒子成長工程S12の後半では、凝集体4の周りに緻密な外殻6が形成される。その結果、凝集体4と外殻6とで構成される粒子が得られる。
尚、ニッケル含有水酸化物の粒子の構造は、図8に示す構造に限定されない。例えば、核生成工程S11と粒子成長工程S12とが同時に実施される場合、中和晶析の完了時に得られる粒子の構造は、図8に示す構造とは別の構造である。その構造は、例えば種晶粒子2に相当するものと外殻6に相当するものとが混じり合い、容易にその境界が分からない一様な構造となる。
ニッケル含有水酸化物の粒子が所定の粒径まで成長した時点で、粒子成長工程S12を終了させる。その粒径は、核生成工程S11と粒子成長工程S12のそれぞれにおける金属塩の供給量から推測できる。
尚、核生成工程S11の終了後、粒子成長工程S12の途中で、原料液などの供給を停止すると共に反応水溶液の撹拌を停止し、粒子を沈降させ、上澄み液を排出してもよい。これにより、中和晶析によって減少した反応水溶液中の金属イオン濃度を、高めることができる。
図9は、一実施形態による核生成工程における反応水溶液中の第1高過飽和領域を示す図である。図9において、流体供給管70から流体を吐出しない場合の第1高過飽和領域12Aの外縁を二点鎖線で、流体供給管70から流体を吐出する場合の第1高過飽和領域12Aの外縁を実線で示す。
第1高過飽和領域12Aとは、反応水溶液中に溶けているニッケル含有水酸化物のモル濃度が5.0mol/m以上である領域を意味する。第1高過飽和領域12Aでは、ニッケル含有水酸化物のモル濃度が溶解度よりも十分に高いので、核生成が有意な速さで生じる。
ここで、溶解度とは、水100gに溶けるニッケル含有水酸化物の限界量(g/100g−HO)を意味する。水酸化ニッケル(Ni(OH))の溶解度は、例えば10−7(g/100g−HO)である。このようにニッケル含有水酸化物の溶解度は、ゼロに近いので、第1高過飽和領域12Aのモル濃度の下限値5.0mol/mに比べ無視できるほど小さい。
図9に実線で示すように流体供給管70から流体を吐出する場合、図9に二点鎖線で示すように流体供給管70から流体を吐出しない場合よりも、第1高過飽和領域12Aの体積を小さくすることができる。
尚、図9では、第1高過飽和領域12Aの体積を調整するため、図1および図3に示す流体供給管70が用いられるが、図4および図5に示す流体供給管70Aなどが用いられてもよい。
図10は、連続式の撹拌槽内の反応水溶液に占める第1高過飽和領域の体積割合が0.025%である場合に得られた粒子の一例のSEM写真である。図10に示す粒子の外表面は滑らかであり、凸凹はほとんど認められなかった。一方、図11は、連続式の撹拌槽内の反応水溶液に占める第1高過飽和領域の体積割合が0.100%である場合に得られた粒子の一例のSEM写真である。図11に示す粒子の外表面には顕著な凹凸が認められた。
図10および図11から明らかなように、中和晶析の完了時に得られる粒子の外表面の凸凹の発生を抑制する観点から、核生成工程S11における反応水溶液に占める第1高過飽和領域の体積割合(以下、第1体積割合と呼ぶ)が0.100%未満であることが好ましい。第1体積割合が0.100%未満であれば、中和晶析の完了時に得られる粒子の外表面の凹凸の発生を抑制できる理由は下記のように推定される。
核生成工程S11において、核は、主に第1高過飽和領域12Aにおいて生成され、その後、反応水溶液全体に分散する。第1体積割合が0.100%未満であれば、反応水溶液の単位体積当たりの核の発生数が少ない。そのため、粒子成長工程S12の前半において、反応水溶液の単位体積当たりの種晶粒子2の数も相対的に少なく、複数の種晶粒子2からなる凝集体4の数も相対的に少ない。その結果、粒子成長工程S12の後半において、凝集体4の周りに形成される外殻6の厚さが厚くなる。よって、凝集体4の外表面の凸凹を厚い外殻6で被覆でき、最終的に得られる粒子の外表面の凸凹を低減できる。尚、この効果は、核生成工程S11と粒子成長工程S12とが同時に行われる場合にも得られる。
中和晶析の完了時に得られる粒子の外表面の凸凹を低減する観点からは、第1体積割合が小さいほど好ましい。第1体積割合は、原料液吐出部61付近の流れ場のUやKなどに依存する。UやKが大きいほど、第1体積割合が小さい。第1体積割合は、好ましくは0.070%以下、より好ましくは0.050%以下、さらに好ましくは0.030%以下である。但し、UやKは撹拌軸40を回転させるモータの容量などの制約を受けるので、第1体積割合は好ましくは0.004%以上である。
核生成工程S11では、原料液を分けて複数の原料液吐出部61から反応水溶液中に吐出してよい。これにより、効率的に第1体積割合を小さくできる。このとき、複数の原料液吐出部61から吐出される複数の第1高過飽和領域12Aが重ならないように、複数の原料液吐出部61の間隔が設定されることが好ましい。
図12は、一実施形態による粒子成長工程における反応水溶液中の第2高過飽和領域を示す図である。図12において、流体供給管70から流体を吐出しない場合の第2高過飽和領域12Bの外縁を二点鎖線で、流体供給管70から流体を吐出する場合の第2高過飽和領域12Bの外縁を実線で示す。
第2高過飽和領域12Bとは、反応水溶液中に溶けているニッケル含有水酸化物のモル濃度が1.7mol/m以上である領域を意味する。第2高過飽和領域12Bでは、ニッケル含有水酸化物のモル濃度が溶解度よりも十分に高いので、粒子成長が有意な速さで生じる。
尚、上述の如くニッケル含有水酸化物の溶解度は、ゼロに近いので、第2高過飽和領域12Bのモル濃度の下限値1.7mol/mに比べ無視できるほど小さい。
図12に実線で示すように流体供給管70から流体を吐出する場合、図12に二点鎖線で示すように流体供給管70から流体を吐出しない場合よりも、第2高過飽和領域12Bの体積を小さくすることができる。
尚、図12では、第2高過飽和領域12Bの体積を調整するため、図1および図3の流体供給管70が用いられるが、図4および図5に示す流体供給管70Aなどが用いられてもよい。
図13は、連続式の撹拌槽内の反応水溶液に占める第2高過飽和領域の体積割合が0.379%である場合に得られた粒子の断面の一例のSEM写真である。図13に示す粒子の断面には年輪状の構造は認められなかった。一方、図14は、連続式の撹拌槽内の反応水溶液に占める第2高過飽和領域の体積割合が0.624%である場合に得られた粒子の断面の一例のSEM写真である。図14に示す粒子の断面には矢印で示す箇所に年輪状の構造が認められた。
図13および図14から明らかなように、年輪状の構造の発生を抑制する観点から、反応水溶液に占める第2高過飽和領域12Bの体積割合(以下、第2体積割合と呼ぶ)が0.624%未満であることが好ましい。第2体積割合が0.624%未満であれば、年輪状の構造の発生を抑制できる理由は下記のように推定される。
粒子成長工程S12において、粒子は、反応水溶液全体に分散しており、主に第2高過飽和領域12Bを通過する際に成長する。反応水溶液全体に占める第2高過飽和領域12Bの体積割合が0.624%未満であれば、粒子成長が緩やかに生じ、密度の異なる複数の層からなる年輪状の構造の発生が抑制できる。粒子成長を緩やかに生じさせることで、結晶成長方位の変化やその変化に伴う空隙の発生などを抑制できるためと推定される。
年輪状の構造の発生を抑制する観点からは、反応水溶液に占める第2高過飽和領域12Bの体積割合(以下、第2体積割合と呼ぶ)は小さいほど好ましい。第2体積割合は、原料液吐出部61付近の流れ場のUやKなどに依存する。UやKが大きいほど、第2体積割合が小さい。第2体積割合は、好ましくは0.600%以下、より好ましくは0.500%以下、さらに好ましくは0.400%以下である。但し、UやKは撹拌軸40を回転させるモータの容量などの制約を受けるので、第2体積割合は好ましくは0.019%以上である。
粒子成長工程S12では、原料液を分けて複数の原料液吐出部61から反応水溶液中に吐出してよい。これにより、効率的に第2体積割合を小さくできる。このとき、複数の原料液吐出部61から吐出される複数の第2高過飽和領域12Bが重ならないように複数の原料液吐出部61の間隔が設定されることが好ましい。
図15は、一実施形態による撹拌翼の直上に設定される円形の水平面、および当該水平面を通過する流線を示す図である。図15において、流線の速度ベクトルを矢印で示す。尚、流線の速度ベクトルは、紙面垂直方向の成分も有する。
粒子成長工程S12において、粒子は、反応水溶液全体に分散しており、撹拌翼30の直上に設定される円形の水平面32を通過する流線に沿って移動し、水平面32を繰り返し通過する。水平面32は、撹拌翼30の中心線上に中心を有し、且つ、撹拌翼30の翼径と同じ直径を有する。粒子は、撹拌翼30を通過することで加速され、力を付与される。
粒子成長工程S12において、各流線上の流れの最大加速度(>0)を平均化した値(以下、流れの平均最大加速度と呼ぶ)が600m/sよりも大きいと、球状に成長した粒子同士の結合を抑制できる。各粒子に付与される力が、結合力に打ち勝つようになるためと推定される。流れの平均最大加速度は、流線ごとに加速度の大きさの最大値を求め、各最大値を平均化することで求める。
中和晶析の完了時に得られる粒子の球状性の崩れを抑制する観点からは、粒子成長工程S12において、流れの平均最大加速度が大きいほど好ましい。その流れの平均最大加速度は、好ましくは700m/s以上、より好ましくは1000m/s以上、さらに好ましくは1200m/s以上である。但し、流れの平均最大加速度は、撹拌翼30を回転させる回転モータの容量などの制約を受けるので、好ましくは7500m/s以下である。
尚、粒子成長工程S12の前半において、流れの平均最大加速度を制御することで凝集体4の粒径を制御することも可能である。流れの平均最大加速度が大きいほど、凝集体4の粒径が小さくなる。
流れの平均最大加速度は、上記シミュレーションによって求めることができる。シミュレーションにおいて、水平面32を通過する流線の面密度は、3000本/m以上とする。流線の面密度が3000本/m以上であれば、信頼性の高いデータが得られる。
ニッケル含有水酸化物の製造方法は、粒子成長工程において撹拌槽内の水溶液の流れの平均最大加速度が600m/sよりも大きいことを、シミュレーションにより確認する工程を有してよい。この確認は、製造条件の変更の度に行われてよい。例えば、バッチ式の場合、製造条件が同じ間、確認は一度行われればよく、毎回の確認は不要である。
図16は、連続式の撹拌槽内の流れの平均最大加速度が1395m/sである場合に得られた粒子の一例のSEM写真である。図16に示すように、球状性の高い粒子が得られた。一方、図17は、連続式の撹拌槽内の流れの平均最大加速度が600m/sである場合に得られた粒子の一例のSEM写真である。図17に黒い太線で囲んだ粒子のように、球状性の低い粒子が認められた。
図16および図17から明らかなように、流れの平均最大加速度が600m/sよりも大きければ、中和晶析の完了時に得られる粒子の球状性の崩れを抑制できることがわかる。
以上、化学反応装置の実施形態等について説明したが、本発明は上記実施形態等に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形、改良が可能である。
2 種晶粒子
4 凝集体
6 外殻
10 化学反応装置
20 撹拌槽
30 撹拌翼
40 撹拌軸
50 バッフル
60 原料液供給管
61 原料液吐出部
70 流体供給管
71 流体吐出部
80 調整装置
81 ポンプ
82 流量調整弁

Claims (8)

  1. 金属塩と塩基を含む溶液の中に、前記金属塩を含む原料液を供給しながら、前記溶液の中で中和晶析によって粒子を析出させる、化学反応装置であって、
    前記溶液を収容する撹拌槽と、
    前記溶液を撹拌する撹拌翼と、
    前記溶液の中で前記原料液を吐出する原料液吐出部を含む原料液供給管と、
    前記原料液吐出部の付近で前記原料液を分散させる流体を吐出する流体吐出部を含む流体供給管とを備える、化学反応装置。
  2. 前記流体吐出部は前記原料液吐出部に向けて前記流体を吐出し、前記流体吐出部の吐出方向と前記原料液吐出部の吐出方向とが交差する、請求項1に記載の化学反応装置。
  3. 前記流体供給管は前記原料液供給管と共に二重管を構成し、前記流体吐出部の吐出方向と前記原料液吐出部の吐出方向とが平行とされる、請求項1に記載の化学反応装置。
  4. 前記流体吐出部は、前記流体として、前記撹拌槽の内部から取出された前記溶液を吐出し、前記撹拌槽の内部に戻す、請求項1〜3のいずれか1項に記載の化学反応装置。
  5. 前記流体吐出部は、前記流体として、不活性ガスを吐出する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の化学反応装置。
  6. 前記流体吐出部から吐出される前記流体の流速を調整する調整装置を備える、請求項1〜5のいずれか1項に記載の化学反応装置。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の化学反応装置を用いて、前記溶液の中に前記原料液を供給しながら、前記溶液の中で中和晶析によって粒子を析出させる、粒子の製造方法。
  8. 前記溶液はニッケル塩と塩基を含む水溶液であって、前記原料液はニッケル塩を含み、前記粒子はニッケル含有水酸化物である、請求項7に記載の粒子の製造方法。
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