JP6939499B2 - ニッケル含有水酸化物の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、リチウムイオン二次電池の正極活物質の前駆体として用いられる、ニッケル含有水酸化物の製造方法に関する。
近年、携帯電話、ノート型パーソナルコンピュータなどの携帯電子機器の普及に伴い、高いエネルギー密度を有する小型で軽量な二次電池の開発が要求されている。また、ハイブリット自動車を始めとする電気自動車用の電池として、高出力の二次電池の開発も要求されている。このような要求を満たす非水系電解質二次電池として、リチウムイオン二次電池がある。リチウムイオン二次電池は、負極、正極、電解液などで構成され、負極および正極の活物質には、リチウムを脱離および挿入することが可能な材料が用いられている。
リチウム複合酸化物、特に合成が比較的容易なリチウムコバルト複合酸化物を正極材料に用いたリチウムイオン二次電池は、4V級の高い電圧が得られるため、高エネルギー密度を有する電池として期待され、実用化が進んでいる。リチウムコバルト複合酸化物を用いた電池では、優れた初期容量特性やサイクル特性を得るための開発はこれまで数多く行われてきており、すでにさまざまな成果が得られている。
しかしながら、リチウムコバルト複合酸化物は、原料に高価なコバルト化合物を用いるため、このリチウムコバルト複合酸化物を用いる電池の容量あたりの単価は、ニッケル水素電池より大幅に高くなり、適用可能な用途はかなり限定されている。したがって、携帯機器用の小型二次電池についてだけではなく、電力貯蔵用や電気自動車用などの大型二次電池についても、正極材料のコストを下げ、より安価なリチウムイオン二次電池の製造を可能とすることに対する期待は大きく、その実現は、工業的に大きな意義があるといえる。
リチウムイオン二次電池用活物質の新たなる材料としては、コバルトよりも安価なニッケルを用いたリチウムニッケル複合酸化物を挙げることができる。このリチウムニッケル複合酸化物は、リチウムコバルト複合酸化物よりも低い電気化学ポテンシャルを示すため、電解液の酸化による分解が問題になりにくく、より高容量が期待でき、コバルト系と同様に高い電池電圧を示すことから、開発が盛んに行われている。しかし、純粋にニッケルのみで合成したリチウムニッケル複合酸化物を正極材料としてリチウムイオン二次電池を作製した場合、コバルト系に比ベサイクル特性が劣り、また、高温環境下で使用や保存により比較的電池性能を損ないやすいという欠点を有している。そのため、ニッケルの一部をコバルトやアルミニウムで置換したリチウムニッケル複合酸化物が一般的に知られている。
正極活物質の一般的な製造方法は、(1)まず、中和晶析法によりリチウムニッケル複合酸化物の前駆体であるニッケル複合水酸化物を作製し、(2)その前駆体をリチウム化合物と混合して焼成する方法が知られている。このうち、(1)の中和晶析法によってニッケル複合水酸化物の粒子を製造する方法として、代表的な実施の形態は、撹拌槽を用いたプロセスである。
特許文献1では、撹拌槽内に、ニッケル塩およびコバルト塩を含む混合水溶液と、アンモニウムイオン供給体を含む水溶液と、苛性アルカリ水溶液とを供給して反応させ、ニッケルコバルト複合水酸化物の粒子を析出させている。混合水溶液の供給口当たりの反応水溶液量に対する供給量の割合を0.04体積%/分以下とすることで、粒径が大きく、結晶性が高く、形状が略球状の粒子が得られると記載されている。
特開2011−201764号公報
従来から、所望の特性のニッケル含有水酸化物の粒子を得るため、様々な検討がなされている。
しかしながら、撹拌翼のタイプや翼径、撹拌槽の容積などの装置構造が変わると、その都度、条件出しが必要であった。
中和晶析法によってニッケル複合水酸化物の粒子を製造する際、撹拌槽内に供給されたニッケル塩やコバルト塩などの金属塩がアルカリ水溶液と反応してニッケル複合水酸化物に中和されることで、核が生成される。また、ニッケル塩やコバルト塩などの金属塩の一部は、アンモニウムイオン供給体を含む水溶液と反応して、金属錯体を形成したあと、この錯体とアルカリ水溶液が反応してニッケル複合水酸化物となって核が生成される。生成した核は、撹拌槽内に供給される金属塩によって成長することにより、ニッケル複合水酸化物の粒子が得られる。このとき、撹拌槽内に供給される苛性アルカリ水溶液の拡散が不十分であると、苛性アルカリ水溶液の添加口付近には、局所的に、極端にpHの高い領域が形成され、ニッケル複合水酸化物の濃度が高い領域が形成されやすい。ニッケル複合水酸化物の濃度が高い領域では、新たな核生成を生じやすい。新たに生成した核は、ニッケル複合水酸化物の粒子に付着するか、十分成長しないで微粒子として撹拌槽内に留まる可能性がある。
そこで、苛性アルカリ水溶液の添加口付近に形成されるニッケル複合水酸化物の濃度が高い領域の体積を低減するため、添加される苛性アルカリ水溶液の拡散を十分行う方法などがある。苛性アルカリ水溶液を拡散させる方法としては、例えば、撹拌翼の回転数を増大させる方法などがある。
しかしながら、撹拌翼の回転数を増大させると、その分だけ撹拌翼を回転させるための動力(以下、「撹拌動力」と呼ぶ。)が増大する。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、撹拌動力の増大を抑えつつ、外表面の凸凹を低減した粒子を製造できる、ニッケル含有水酸化物の製造方法の提供を主な目的とする。
上記課題を解決するため、本発明の一態様によれば、
少なくともニッケル塩を含む金属塩と、前記金属塩の金属イオンと結合して錯体を形成する錯化剤と、前記金属塩および前記錯体と反応して金属水酸化物を生成する中和剤とを混合した反応水溶液の中で、中和晶析によりニッケル含有水酸化物の粒子を得るニッケル含有水酸化物の製造方法であって、
前記ニッケル含有水酸化物の粒子を生成した後、前記反応水溶液に前記中和剤を添加して前記反応水溶液のpH値を上げて、前記ニッケル含有水酸化物を析出させ、前記反応水溶液の中に残留する前記金属イオンを固相の前記ニッケル含有水酸化物として回収する回収工程を含み、
前記回収工程において、前記反応水溶液の流速uと乱流拡散係数Kとの積uKの値が前記uKの最大値uKmaxに対して30%以上となる領域に設けられる添加口から前記中和剤を添加する、ニッケル含有水酸化物の製造方法が提供される。
本発明の一態様によれば、撹拌動力の増大を抑えつつ、外表面の凸凹を低減した粒子を製造できる、ニッケル含有水酸化物の製造方法が提供される。
一実施形態によるニッケル含有水酸化物の製造方法のフローチャートである。 一実施形態によるニッケル含有水酸化物の製造方法に用いられる化学反応装置を示す上面図である。 図2のI−I線に沿った化学反応装置の断面図である。 一実施形態による回収工程における反応水溶液中の高過飽和領域を示す図である。 反応水溶液の流れの一例を示す図である。 撹拌槽内の反応水溶液のuKの分布の一例を示す図である。 実施例1で得られたニッケル複合水酸化物の粒子のSEM写真である。 実施例1で得られたニッケル複合水酸化物の粒子の粒度分布の測定結果を示す図である。 比較例1で得られたニッケル複合水酸化物の粒子のSEM写真である。 比較例1で得られたニッケル複合水酸化物の粒子の粒度分布の測定結果を示す図である。
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明するが、各図面において、同一のまたは対応する構成については同一のまたは対応する符号を付して説明を省略する。
図1は、一実施形態によるニッケル含有水酸化物の製造方法のフローチャートである。図1に示すように、ニッケル含有水酸化物の製造方法は、中和晶析によりニッケル含有水酸化物の粒子を得るものであって、ニッケル含有水酸化物からなる核を生成させる核生成工程S11と、核を成長させる粒子成長工程S12と、反応水溶液中に残留する金属イオンをニッケル含有水酸化物として回収する回収工程S13とを有する。以下、各工程について説明するが、その前に、得られるニッケル含有水酸化物について説明する。
<ニッケル含有水酸化物>
ニッケル含有水酸化物は、リチウムイオン二次電池の正極活物質の前駆体として用いられるものである。ニッケル含有水酸化物は、例えば、(1)ニッケル(Ni)とコバルト(Co)とアルミニウム(Al)とを、物質量比(mol比)がNi:Co:Al=1−x−y:x:y(ただし、0≦x≦0.3、0.005≦y≦0.15)となるように含むニッケル複合水酸化物であるか、または(2)ニッケル(Ni)とコバルト(Co)とマンガン(Mn)とM(Mは、Ti、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、およびWから選択される1種以上の添加元素)とを、物質量比(mol比)がNi:Co:Mn:M=x:y:z:t(ただし、x+y+z+t=1、0.1≦x≦0.7、0.1≦y≦0.5、0.1≦z≦0.8、0≦t≦0.02)となるように含むニッケルコバルトマンガン複合水酸化物である。
一実施形態によるニッケル含有水酸化物に含まれる水酸化物イオンの量は、通常、化学量論比を持つが、本実施形態に影響のない程度で過剰でもよいし、欠損していてもよい。また、本実施形態に影響のない程度で水酸化物イオンの一部は、アニオン(例えば、炭酸イオンや硫酸イオンなど)に置き換わっていてもよい。
なお、一実施形態によるニッケル含有水酸化物は、X線回折(XRD)測定によって、ニッケル含有水酸化物の単相(または、主成分がニッケル含有水酸化物)であればよい。
ニッケル含有水酸化物は、ニッケルを含有し、好ましくはニッケル以外の金属をさらに含有する。ニッケル以外の金属をさらに含有する水酸化物を、ニッケル複合水酸化物と呼ぶ。ニッケル複合水酸化物の金属の組成比(例えば、Ni:Co:Mn:M)は、得られる正極活物質においても維持されるので、正極活物質に要求される金属の組成比と一致するように調整される。
<ニッケル含有水酸化物の製造方法>
ニッケル含有水酸化物の製造方法は、上述の如く、核生成工程S11と、粒子成長工程S12と、回収工程S13とを含む。本実施形態では、各工程は、バッチ式の撹拌槽または連続式の撹拌槽のいずれを用いてもよい。各工程は、同一の撹拌槽で行ってもよいし、異なる撹拌槽で行ってもよい。核生成工程S11と粒子成長工程S12とは、同時に実施されてもよい。この場合、回収工程S13は、核生成工程S11と粒子成長工程S12とが同時に実施された後に実施される。
以下、核生成工程S11、粒子成長工程S12、および回収工程S13について説明する。
(核生成工程・粒子成長工程)
核生成工程S11では、撹拌槽内では、ニッケル塩を含む原料液、錯化剤、中和剤、および水(反応水溶液)とを攪拌しながら混合して、反応させる。核生成工程S11から粒子成長工程S12にかけて、原料液、錯化剤、および中和剤を撹拌槽内に連続して供給しながら反応させる。
原料液は、少なくともニッケル塩を含み、好ましくはニッケル塩以外の金属塩をさらに含有する。金属塩としては、硫酸塩、硝酸塩、塩酸塩などが用いられる。より具体的には、例えば、硫酸ニッケル、硝酸ニッケル、塩化ニッケル、硫酸マンガン、硫酸コバルト、硫酸アルミニウム、硫酸チタン、ペルオキソチタン酸アンモニウム、シュウ酸チタンカリウム、硫酸バナジウム、バナジン酸アンモニウム、硫酸クロム、クロム酸カリウム、硫酸ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、シュウ酸ニオブ、モリブデン酸アンモニウム、硫酸ハフニウム、タンタル酸ナトリウム、タングステン酸ナトリウム、またはタングステン酸アンモニウムなどが用いられる。なお、原料液の金属の組成比(例えば、Ni:Co:Mn:M)は、得られるニッケル複合水酸化物においても維持されるので、ニッケル複合水酸化物に要求される組成比と一致するように調整される。
錯化剤は、撹拌槽内の水溶液中でニッケルイオンなどの金属イオンと結合して錯体を形成できるものであればよい。錯化剤としては、アンモニウムイオン供給体を含む水溶液が用いられる。アンモニウムイオン供給体は、撹拌槽内の水溶液中でニッケルアンミン錯体([Ni(NH362+)を形成するものが用いられる。アンモニウムイオン供給体としては、例えば、アンモニア、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、炭酸アンモニウム、またはフッ化アンモニウムなどが使用できる。なお、本実施形態では、錯化剤として、アンモニウムイオン供給体を含む水溶液が用いられるが、エチレンジアミン四酢酸、ニトリト三酢酸、ウラシル二酢酸、またはグリシンなどが用いられてもよい。これらのうち、取り扱いの容易性などの点から、錯化剤としては、アンモニアを含む水溶液(アンモニア水)を用いることが好ましい。
中和剤は、金属塩および金属塩から生成される錯体と反応して金属水酸化物を生成するものであればよい。また、中和剤は、水溶液のpHを調整するpH調整剤としても用いられる。中和剤としては、アルカリ水溶液を含むものが用いられる。アルカリ水溶液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物を含むものが用いられる。アルカリ金属水酸化物は、固体として供給してもよいが、水溶液として供給することが好ましい。
核生成工程S11および粒子成長工程S12では、以下の2通りの経路で、ニッケル含有水酸化物が生成される。1つ目の経路では、原料液に含まれるニッケル塩を含む金属塩が中和剤であるアルカリ水溶液と反応して、ニッケル含有水酸化物が生成される。例えば、原料液に含まれるニッケルイオンが水酸化ナトリウムの水酸基と下記式(1)のように反応して、ニッケル水酸化物が生成される。2つ目の経路では、まず、原料液に含まれるニッケル塩のニッケルなどのイオンや金属塩の金属イオンが錯化剤のアンモニアなどと結合して、錯体を形成する。その後、錯体が中和剤であるアルカリ水溶液と反応して、ニッケル含有水酸化物が生成される。例えば、原料液に含まれるニッケルイオンが反応水溶液中のアンモニアと下記式(2−1)のように反応して、ニッケルアンミン錯体([Ni(NH362+)が形成される。その後、ニッケルアンミン錯体が水酸化ナトリウムの水酸基と下記式(2−2)のように反応して、ニッケル水酸化物が生成される。
Ni2++2OH-→Ni(OH)2 ・・・(1)
Ni2++6NH3→[Ni(NH362+ ・・・(2−1)
[Ni(NH362++2OH-→Ni(OH)2+6NH3 ・・・(2−2)
核生成工程S11および粒子成長工程S12では、中和晶析によってニッケル含有水酸化物からなる微細な核が析出して、その核が成長(粒子成長)することで、ニッケル含有水酸化物の粒子が得られる。ニッケル含有水酸化物の粒子の粒径は、核生成工程S11と粒子成長工程S12のそれぞれにおける金属塩の供給量から推測できる。
(回収工程)
粒子成長工程S12の終了後、回収工程S13では、反応水溶液の撹拌を継続したまま、撹拌槽内への原料液、および錯化剤の供給を停止し、中和剤の供給を継続する。回収工程S13では、粒子成長工程S12に比べて撹拌槽内の反応水溶液のpH値を大きくする。これにより、ニッケル含有水酸化物の溶解度が下がり、ニッケル含有水酸化物の粒子が析出し易くなるため、反応水溶液中に溶解している、ニッケルイオンなどの金属イオンを回収できる。具体的には、反応水溶液のpH値を、液温25℃基準で、12.0〜14.0、好ましくは12.3〜13.5の範囲内に調整する。なお、反応水溶液のpH値は、公知のpH計などを用いて測定できる。
回収工程S13では、中和剤を反応水溶液中に最初に添加して、反応水溶液のpH値を大きくすることで、ニッケル含有水酸化物の粒子を析出し易くする。特に、中和剤が供給される中和剤供給管62(図2および図3参照)の添加口63(図2および図3参照)付近は、反応水溶液中のpH値が最も高いため、ニッケル含有水酸化物の溶解度はより下がって、ニッケル含有水酸化物の粒子が析出し易い。
反応水溶液の温度は、好ましくは20〜60℃、より好ましくは35〜60℃の範囲内に調整する。なお、反応水溶液の温度は、公知の温度計などを用いて測定できる。
反応水溶液のpH値の調整後、撹拌槽内への中和剤の供給を停止する。そして、反応水溶液の温度を維持したまま、反応水溶液を、60分、好ましくは15分〜30分、継続して撹拌する。これにより、粒子成長工程S12までに、錯化剤との反応により形成した錯体の金属イオンは、中和剤と反応して、ニッケル含有水酸化物を反応水溶液中に析出させる。これにより、錯体の金属イオンは、固相のニッケル含有水酸化物として回収される。
ここで、一実施形態によるニッケル含有水酸化物の製造方法に用いられる化学反応装置の一例を説明する。図2は、一実施形態によるニッケル含有水酸化物の製造方法に用いられる化学反応装置を示す上面図である。図3は、図2のI−I線に沿った化学反応装置の断面図である。図2および図3に示すように、化学反応装置10は、撹拌槽20と、撹拌翼30と、撹拌軸40と、バッフル50とを有する。撹拌槽20は、円柱状の内部空間に反応水溶液を収容する。撹拌翼30は、撹拌槽20内の反応水溶液を撹拌させる。撹拌翼30は、撹拌軸40の下端に取付けられる。モータなどが撹拌軸40を回転させることで、撹拌翼30が回転される。撹拌槽20の中心線、撹拌翼30の中心線、および撹拌軸40の中心線は、一致してよく、鉛直とされてよい。バッフル50は、邪魔板とも呼ばれる。バッフル50は、撹拌槽20の内周面から突き出しており、回転流を邪魔することで上昇流や下降流を生じさせ、反応水溶液の撹拌効率を向上させる。
また、化学反応装置10は、原料液供給管60と、中和剤供給管62と、錯化剤供給管64とを有する。原料液供給管60は、添加口61から撹拌槽20内に原料液を供給する。中和剤供給管62は、添加口63から撹拌槽20内に中和剤を供給する。錯化剤供給管64は、撹拌槽20内に錯化剤を供給する。
本発明者は、様々な構造の化学反応装置で、普遍的に、中和晶析の完了時に得られる粒子の外表面の凸凹を低減できる条件を検討した結果、以下の2点に着目した。1点目は、回収工程S13において、粒子成長工程S12で形成された錯体が反応水溶液中に溶解して残っていることである。2点目は、中和剤供給管62の添加口63から中和剤を撹拌槽20内の反応水溶液に添加することで、添加口63から反応水溶液の中に、pHの高い領域が形成されることである。錯体が添加口63付近に形成される反応水溶液のpHの高い領域を通り、錯体が中和剤と反応すると、ニッケル含有水酸化物を生成して高過飽和領域12(図4参照)を形成し、新たに核が生成されてしまう。生成された核がニッケル含有水酸化物の粒子の表面に付着すると、ニッケル含有水酸化物の粒子の外表面の凹凸が大きくなる。また、新たに生成された核は、十分に粒子成長せず、微粒子となってしまう。
そこで、回収工程S13において、反応水溶液に占める、中和剤供給管62の添加口63から反応水溶液の中に形成される高過飽和領域12(図4参照)の体積割合を調整することで、新たに核が生成されることを抑制できることを見出した。
図4は、一実施形態による回収工程S13における反応水溶液中の高過飽和領域を示す図である。図4中、矢印方向は、中和剤供給管62の添加口63付近における流れの方向を表す。中和剤供給管62の添加口63から中和剤を撹拌槽20内の反応水溶液に添加すると、添加口63の近傍の反応水溶液のpH値は、局所的に上昇し、反応水溶液の中でも、特にpH値が高くなる。そのため、添加口63付近で、錯体が中和剤と反応してニッケル含有水酸化物を生成し、高過飽和領域12が形成されると、反応水溶液中に核が生成し易くなる。そのため、回収工程S13において、反応水溶液に占める高過飽和領域12が広いと、その分、反応水溶液中により多くの核が生成する可能性が高くなる。また、核の粒子成長が十分されなかった微粒子の発生する割合が増える可能性が高くなる。
高過飽和領域12とは、反応水溶液中に溶けているニッケル含有水酸化物のモル濃度が5.0mol/m3以上である領域を意味する。高過飽和領域12では、ニッケル含有水酸化物のモル濃度が溶解度よりも十分に高いので、核生成が有意な速さで生じる。
ここで、溶解度とは、水100gに溶けるニッケル含有水酸化物の限界量(g/100g−H2O)を意味する。水酸化ニッケル(Ni(OH)2)の溶解度は、例えば、10-7(g/100g−H2O)である。このようにニッケル含有水酸化物の溶解度は、ゼロに近いので、高過飽和領域12のモル濃度の下限値5.0mol/m3に比べ無視できるほど小さい。
高過飽和領域12は、図4に示すように、中和剤供給管62の添加口63から反応水溶液の中に形成される。その添加口63は反応水溶液の流れ場に設置されているため、高過飽和領域12の体積などは流れ場の影響を受ける。流れ場は、撹拌翼30の回転数の他、撹拌翼30のタイプや翼径、撹拌槽20の容積などにより変化する。撹拌槽20内の流れ場に影響を与える条件を、撹拌条件という。
なお、図2〜図4では、添加口63の数が1つであるが複数でもよく、高過飽和領域12の数は1つではなく複数でもよい。高過飽和領域12の数が複数である場合、高過飽和領域12の体積とは合計の体積を意味する。
回収工程S13においては、中和剤供給管62の添加口63から反応水溶液にアルカリ水溶液を供給することで、添加口63付近に存在する反応水溶液にpHの高い領域が形成される。錯体が、添加口63付近に存在する反応水溶液のpHの高い領域を通ると、錯体がアルカリ水溶液など中和剤と反応してニッケル含有水酸化物を生成する。これにより、添加口63から反応水溶液の中に、ニッケル含有水酸化物のモル濃度が高い高過飽和領域12(図4参照)が形成される。高過飽和領域12(図4参照)の体積割合を、反応水溶液全体に対して、0.100%未満とすることで、反応水溶液中に新たに核を生じさせることなく、粒子成長工程までに生成した、ニッケル含有水酸化物の粒子の表面に析出させることができる。この結果、生成された核がニッケル含有水酸化物の粒子の表面に付着することを抑制することができるので、最終的に得られる、ニッケル含有水酸化物の粒子の外表面の凹凸を低減することができる。また、新たに核が生成することを抑制することで、微粒子の発生を抑制することができる。
中和晶析の完了時に得られる粒子の外表面の凸凹を低減する観点から、回収工程S13における、反応水溶液に占める高過飽和領域12の体積割合は、小さいほど好ましい。上記体積割合は、好ましくは0.070%以下、より好ましくは0.050%以下、さらに好ましくは0.030%以下である。但し、上記体積割合は好ましくは0.004%以上である。これは、上記体積割合は、後述するように、添加口63付近の反応水溶液の流速uおよび乱流拡散係数Kに依存し、反応水溶液の流速uおよび乱流拡散係数Kは撹拌軸40を回転させるモータの容量などの制約を受けるためである。
ところで、反応水溶液は、撹拌槽20内で撹拌翼30によって撹拌されているが、撹拌条件が同一であっても、反応水溶液の場所によって、反応水溶液の流れ場が異なる。反応水溶液に占める高過飽和領域12(図4参照)の体積割合は、反応水溶液の流れ場による影響を受けるため、上記体積割合は、中和剤の添加口63付近の反応水溶液の流れ場により変動する。本発明者は、反応水溶液の流れ場のパラメータとして、反応水溶液の流れの速さ(流速)u(単位:m/s)および乱流拡散係数K(単位:m/s)に注目した。そして、中和剤が添加される領域の、反応水溶液の流速uと乱流拡散係数Kとの積uKが、上記体積割合に影響を与えることに着目した。uKの値が小さい領域に中和剤を添加すると、上記体積割合は大きくなるため、反応水溶液中にニッケル含有水酸化物の核が新たに生成され易い。生成された核がニッケル含有水酸化物の粒子の表面に付着すると、ニッケル含有水酸化物の粒子の外表面の凹凸が大きくなる。また、新たに生成された核は、十分に粒子成長せず、微粒子となってしまう。
そこで、回収工程S13において、uKの値が大きな領域に添加口63を配置して、中和剤を添加口63から反応水溶液に添加することにより、添加口63付近に形成される高過飽和領域12(図6参照)の体積割合を小さくできることを見出した。
反応水溶液のuKの値の大きさと高過飽和領域12の大きさとの関係について説明する。反応水溶液のuKの値、および高過飽和領域12(図4参照)の体積は、後述するように、シミュレーションを実施することにより求めることができる。
反応水溶液の所定の位置に添加口63を設けた場合の、添加口63付近のuKの値と、高過飽和領域12の体積との関係を表1〜表3に示す。表1は、反応水溶液の乱流拡散係数Kが同じであって流速uが異なる条件となる場合の、添加口63付近のuKの値と、高過飽和領域12(図4参照)の体積Vとの関係を示す。表2は、反応水溶液の流速uが同じであって乱流拡散係数Kが異なる条件となる場合の、添加口63付近のuKの値と、高過飽和領域12(図4参照)の体積Vとの関係を示す。表3は、反応水溶液の流速uおよび乱流拡散係数Kが異なるが、uKの値が同じ値になる条件となる場合の、添加口63付近のuKと、高過飽和領域12(図4参照)の体積Vとの関係を示す。表1〜表3中、例1〜例10は、撹拌槽20内の反応水溶液の所定の流れ場の位置である。例1の反応水溶液の流速u、乱流拡散係数K、uK、および高過飽和領域12(図6参照)の体積Vは、それぞれ、流速u、乱流拡散係数K、u、および体積Vとして、基準値(1.0)とする。例2〜例10の反応水溶液の流速u、乱流拡散係数K、uK、および高過飽和領域12(図6参照)の体積Vは、それぞれ、流速u、乱流拡散係数K、u、および体積Vで規格化して表す。
Figure 0006939499
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表1〜表3から明らかなように、中和剤の添加口63付近の領域のuKの値が大きいほど、添加口63付近の高過飽和領域12(図6参照)の体積Vが小さくなる傾向が見られる。中和剤の添加口63付近の領域のuKの値が同じ時は、添加口63付近の高過飽和領域12(図6参照)の体積Vも殆ど同じ値になる傾向が見られる。より詳細には、高過飽和領域12(図6参照)の体積Vは、添加口63付近の領域のuKに、誤差±5%の範囲内で反比例する。なお、この傾向は、反応水溶液の流速uまたは乱流拡散係数Kを変更しても同様に見られる。
本実施形態では、添加口63を、反応水溶液のuKの値が反応水溶液のuKの最大値uKmaxに対して30%以上の領域に設け、中和剤は、添加口63より、反応水溶液のuKの値が反応水溶液のuKの最大値uKmaxに対して30%以上の領域に添加する。これにより、撹拌動力を高めなくても、添加口63付近に形成される高過飽和領域12(図4参照)の体積割合を小さくできる。
添加口63は、好ましくはuKの値がuKの最大値uKmaxに対して35%以上となる領域、より好ましくはuKの値がuKの最大値uKmaxに対して40%以上となる領域、さらに好ましくはuKの値がuKの最大値uKmaxに対して50%以上となる領域に設け、中和剤を添加する。これにより、反応水溶液に占める高過飽和領域12の体積割合をより小さくできる。
uKの値がuKの最大値uKmaxに対して30%以上となる領域は、撹拌槽20内を循環している反応水溶液の水流の方向によって異なる。撹拌槽20内の反応水溶液が撹拌翼30の回転により撹拌されることで、図5に示すように、撹拌軸40に沿って反応水溶液の上面から撹拌翼30側に向かって下降流が生じ、バッフル50に沿って撹拌槽20の底部から反応水溶液の上面側に向かって上昇流が生じるとする。
この場合の反応水溶液のuKの分布の一例を図6に示す。図6中、uK比とは、uKの最大値uKmaxに対するuKの値をいう。撹拌槽20内の反応水溶液のuKの分布は、シミュレーションにより求められる。このシミュレーションでは、撹拌槽20の容積は2L、撹拌翼30のタイプはディスクタービン翼、撹拌翼30の羽根の枚数は6枚、撹拌翼30の翼径は80mm、撹拌翼30と撹拌槽20の底部との間の上下方向距離は5mm、撹拌翼30の回転数は850rpmとする。
この場合には、uKの値がuKの最大値uKmaxに対して30%以上となる領域は、例えば、図6に示すように、撹拌翼30の上側や下側の近傍、または撹拌翼30よりも径方向外側などに形成される。そのため、添加口63は、下降流の中であって、撹拌翼30よりも上側の近傍に配置されることが好ましい。これにより、添加口63から添加された中和剤を効率良く反応水溶液中に撹拌させることができるため、添加口63付近に形成される高過飽和領域(図4参照)の体積割合を小さくすることができる。
撹拌槽20内のuKの値は、場所により異なり、撹拌翼30の上側や下側の近傍、または撹拌翼30よりも径方向外側などにおいて特に大きくなる傾向にある。また、撹拌翼30のタイプや翼径、撹拌槽20の容積などの撹拌条件を変更しても、撹拌槽20内の反応水溶液のuKの分布には、同様の傾向が見られる。
このように、回収工程S13において、反応水溶液のuKの値がuKの最大値uKmaxに対して30%以上となる領域に設けた添加口63から中和剤を反応水溶液中に添加する。これにより、反応水溶液の撹拌動力を高めることなく、添加口63付近に形成される高過飽和領域12(図4参照)の体積割合を小さくできる。この結果、反応水溶液中に、新たに生じた核をニッケル含有水酸化物の粒子まで粒子成長させることができるので、反応水溶液中に新たに核が生じることを抑制し、新たに生成された核がニッケル含有水酸化物の粒子の表面に付着することを抑制することができる。よって、反応水溶液を撹拌させるために要する撹拌動力の増大を抑えつつ、外表面の凹凸を低減したニッケル含有水酸化物の粒子を製造することができる。また、新たに核が生成することを抑制することで、微粒子の発生を抑制することができる。
また、原料液供給管60の添加口61は、反応水溶液中のいずれの場所に設けてもよいが、中和剤供給管62の添加口63と同様、反応水溶液のuKの値がuKの最大値uKmaxに対して30%以上となる領域に設けることが好ましい。回収工程S13では、原料液の供給は停止されているため、原料液供給管60は使用されていない状態にある。そのため、添加口61が上記領域に設けられている場合、核生成工程S11および粒子成長工程S12で反応水溶液への原料液の供給用として使用されていた添加口61を、回収工程S13では、中和剤の供給用として使用できる。添加口61を上記領域に設けておくことは、例えば、添加口63が上記領域に設けられていない場合や上記領域からずれてしまった場合などに有効である。このような場合でも、添加口61を中和剤の供給用として使用することで、中和剤を上記領域に安定して添加することができる。また、添加口61および添加口63の両方が上記領域に設けられている場合には、中和剤を添加口61および添加口63の両方から上記領域に添加してもよい。
添加口61の位置は、中和剤供給管62の添加口63と同様、反応水溶液の流れに応じて設計される。例えば、図5に示すように、攪拌槽20内において撹拌軸40に沿って反応水溶液の下降流が生じている場合には、添加口61は、中和剤供給管62の添加口63と同様、撹拌翼30の上側の近傍であって、uKの値がuKの最大値uKmaxに対して30%以上となる領域に設ける。
撹拌槽20内のuK、および高過飽和領域12の体積は、汎用の流体解析ソフトを用いたシミュレーションによって求めることができる。
以下、連続式の撹拌槽内で、水酸化ナトリウムとニッケルアンミン錯体を反応させて、水酸化ニッケルを製造する場合の定常状態の流体解析について主に説明する。流体解析ソフトとしては、ANSYS社製のANSYS CFX Ver15.0(商品名)を用いる。解析条件などを以下に示す。
<座標系>
・流体解析を行う領域(以下、「解析領域」とも呼ぶ。)のうち、撹拌軸や撹拌翼の周りは、撹拌軸や撹拌翼と共に回転する回転座標系で扱う。回転座標系で扱う領域は、円柱状であって、その中心線を撹拌軸や撹拌翼の中心線に重ね、その直径を撹拌翼の翼径の115%に設定し、上下方向の範囲を撹拌槽の内底面から液面までとする。
・解析領域のうち、その他の領域は、静止座標系で扱う。
・回転座標系と静止座標系とは、流体解析ソフトのインターフェース機能を使用して接続する。インターフェース機能としては、オプションの「Frozen Rotor」を用いる。
<乱流モデル>
・撹拌槽内の流れは、層流ではなく、乱流である。その乱流モデルとしては、SST(Shear Stress Transport)モデルを用いる。
<化学反応>
・撹拌槽内で生じる化学反応の式を下記に示す。
2NaOH+NiSO→Ni(OH)2+Na2SO4
実現象の化学反応のうち着目するのは、上記式(2−2)に示した、ニッケルアンミン錯体とアルカリ水溶液の水酸化物イオン(OH-)との反応により、水酸化ニッケルを生成する反応である。一方、シミュレーションモデルでは、ニッケルアンミン錯体と単体のニッケルイオンとを区別せず、ニッケルイオンとしては同一であるとして扱う。すなわち、ニッケルアンミン錯体として存在するニッケルイオンと同じ濃度の単体のニッケルイオンが撹拌槽内に分散しているものと見なして、単体のニッケルイオンが上記式(1)に基づいてアルカリ水溶液の水酸化物イオン(OH-)と反応して、水酸化ニッケルが生成するものとして扱う。
実際の晶析撹拌槽において化学反応を進行させるためには、まず乱流混合によって、ニッケルイオンとアルカリ水溶液の水酸化物イオン(OH-)とを接触させることが必要である。この乱流混合に依存するイオンの輸送速度は、その次の反応素過程として起こる、ニッケルイオンと水酸化物イオンの衝突合体による化学反応速度に比べて十分に遅いと考えられる。そのため、実際の化学反応速度は、ニッケルイオンと水酸化物イオンとの乱流混合が律速になっていると見做せる。この乱流混合速度は、単体のニッケルイオンとニッケルアンミン錯体のニッケルイオンとでは、ほとんど同一であると見なせる。そのため、シミュレーションモデルでは、ニッケルアンミン錯体と水酸化物イオンとの反応速度は、単体のニッケルイオンと水酸化物イオンとの反応速度と同一であると見なして、ニッケルアンミン錯体と単体のニッケルイオンとを区別せず、すべて上記式(1)に基づいて、水酸化ニッケルが生成するものとして取り扱う。
・流体解析では、以下の5成分が含まれる単相多成分の流体を扱う。
1)反応成分A:NaOH
2)反応成分B:NiSO4
3)生成成分C:Ni(OH)2
4)生成成分D:Na2SO4
5)水
・化学反応の速度の大きさは、渦消散モデルにより計算する。渦消散モデルは、乱流分散によって反応成分Aと反応成分Bとが分子レベルまで混合すると、上記化学反応が生じると仮定した反応モデルである。渦消散モデルの設定は、流体解析ソフトのデフォルトの設定のままとする。
<各成分の質量分率の計算方法>
・解析領域内の任意の位置および任意の時点で、上記5成分の合計の質量分率は、1である。そこで、上記5成分のうち水を除く4成分のそれぞれの質量分率は、CFXによって輸送方程式を解いて求める値とし、水の質量分率は、1から上記4成分の合計の質量分率を引いて得られる値とする。
<境界条件>
・壁境界(流体の出入りのない境界)
撹拌槽や撹拌軸、撹拌翼、バッフルなどの固体との境界では、滑り無しとする。一方、外気との境界(液面)では、滑り有りとする。なお、液面は、撹拌によって変形しないものとし、高さが一定の平面とする。
・流入境界(流体が入ってくる境界)
撹拌槽内の流体中に、反応成分Aを含む水溶液(以下、「水溶液A」と呼ぶ。)が流入する流入境界を設ける。水溶液Aの流入流量や水溶液Aに占める反応成分Aの割合は、一定とする。水溶液Bは、撹拌槽内の水溶液の反応成分Bの濃度が所定値(例えば、1g/L)に維持されるように、槽全体から均等に生成させるよう流入境界を設定する。
・流出境界(流体が出ていく境界)
撹拌槽の内周面の一部に、撹拌槽内の流体が出ていく流出境界を設ける。流出する液体は、生成成分CおよびD、未反応の反応成分AおよびB、並びに水を含むものである。その流出量は、解析領域と系外との圧力差がゼロになるように設定する。なお、オーバーフロー型の連続式の場合、液面が流出境界である。
<熱条件>
・撹拌槽内の流体の温度は、25℃で一定とする。化学反応による熱の生成、流入境界や流出境界での熱の出入りは、無いものと仮定する。
<初期条件>
・撹拌槽内の流体は、初期状態において、均質なものとし、上記5成分のうち反応成分Bと水の2成分のみを含むものとする。具体的には、撹拌槽内の流体のうち、反応成分Aの初期質量分率や生成成分Cの初期質量分率、生成成分Dの初期質量分率はゼロ、反応成分Bの初期質量分率は撹拌槽内の水溶液の反応成分Bの濃度が上記所定値になるように設定する。
なお、生成成分Cの初期質量分率や生成成分Dの初期質量分率は、ここではゼロに設定するが、定常解を求めるための反復計算の回数(つまり、計算時間)を減らすため、定常状態において到達すると予測される、解析領域全体での平均値に設定してもよい。解析領域全体での平均値は、水溶液Aの流入流量や水溶液Aに占める反応成分Aの割合、水溶液Bの流入流量や水溶液Bに占める反応成分Bの割合、化学反応式で表される量的関係などを基に算出できる。
<収束判定>
・定常解を求めるための反復計算は、解析領域内の任意の位置で、流れの流速成分(m/s)および圧力(Pa)、並びに上記4成分の質量分率のそれぞれの二乗平均平方根の残差が、10-4以下となるまで行う。
<uKの計算方法>
uKは、反応水溶液の流速uと乱流拡散係数Kとの積である。uおよびKは、撹拌槽の流れ場のシミュレーションを実施することで求められる。
<高過飽和領域の体積の計算方法>
・高過飽和領域とは、撹拌槽内の水溶液中に溶けている生成成分Cの濃度が5.0mol/m以上の領域である。高過飽和領域は、水溶液Aの流入境界の周囲に形成される。
・ところで、流体解析では、上述の如く、上記5成分を単相多成分の流体として扱うため、生成成分Cの全てを液体として扱う。一方、実際には、生成成分Cの大部分は析出して固体となり、生成成分Cの残りの一部のみが液体として水溶液中に溶けている。
・そこで、高過飽和領域の体積は、上記流体解析により得た生成成分Cの濃度分布を補正することで算出する。その補正では、水溶液Aの流入境界から十分に離れた流出境界において生成成分Cの濃度が溶解度相当になるように、撹拌槽内の流体の全体において一律に生成成分Cの濃度を所定値下げる。
・なお、撹拌槽が連続式ではなくバッチ式の場合、流出境界が存在しない。この場合、濃度分布の補正では、撹拌槽内の水溶液の液面において生成成分Cの濃度が溶解度相当になるように、撹拌槽内の流体の全体において一律に生成成分Cの濃度を所定値下げればよい。ちなみに、オーバーフロー型の連続式の場合、液面が流出境界である。
上記説明では、水酸化ニッケルを得る場合の解析条件を示したが、ニッケル複合水酸化物を得る場合の解析条件も同様に設定できる。例えば、硫酸ニッケルや硫酸マンガンと水酸化ナトリウムとを反応させてニッケルマンガン複合水酸化物を得る場合、流体解析では、以下の7成分が含まれる単相多成分の流体を扱う。
なお、シミュレーションモデルでは、反応水溶液中に生じる錯体は、錯体濃度に相当する硫酸ニッケルや硫酸マンガンのイオンが撹拌槽内に分散しているものと見なして計算する。
1)反応成分A:NaOH
2)反応成分B1:NiSO4
3)反応成分B2:MnSO4
4)生成成分C1:Ni(OH)2
5)生成成分C2:Mn(OH)2
6)生成成分D:Na2SO
7)水
ここでは、撹拌槽内で「2A+B1→C1+D」および「2A+B2→C2+D」の2つの化学反応が生じるとし、それぞれの化学反応に対応する渦消散モデルが反応モデルとして用いられる。反応成分B1と反応成分B2とは、均一に水に溶けた状態で、水中に分散している。反応成分Aを含む水溶液Aが流入境界から供給される。水溶液Aの流入境界の周囲に、高過飽和領域が形成される。高過飽和領域とは、撹拌槽内の水溶液中に溶けている生成成分のうち全ての金属水酸化物(ここでは、生成成分C1と生成成分C2)の合計のモル濃度が5.0mol/m以上の領域のことである。
生成成分のうち全ての金属水酸化物のモル濃度を合計する理由について、以下、説明する。先ず、上述の如く、反応成分B1と反応成分B2とは、均一に水に溶けた状態で、水中に分散している。このとき、反応成分B1および反応成分B2は、反応成分Aの添加口付近で、反応成分Aと速やかに反応して、生成成分C1および生成成分C2を生じる。よって、生成成分C1と生成成分C2とは、生成した時点で、充分に混ざった状態で存在する。その結果、生成成分C1と生成成分C2とは、個別の水酸化物として析出するのではなく、それぞれの成分が複合した水酸化物の固溶体として析出する。
また、硫酸ニッケル、硫酸コバルトおよび硫酸アルミニウムを用いて、ニッケル、コバルトおよびアルミニウムを含むニッケル複合水酸化物を得る場合、流体解析では、以下の9成分が含まれる単相多成分の流体を扱う。
なお、シミュレーションモデルでは、反応水溶液中に生じる錯体は、錯体濃度に相当する硫酸ニッケル、硫酸コバルトおよび硫酸アルミニウムのイオンが撹拌槽内に分散しているものと見なして計算する。
1)反応成分A:NaOH
2)反応成分B1:NiSO
3)反応成分B2:CoSO4
4)反応成分B3:Al2(SO43
5)生成成分C1:Ni(OH)
6)生成成分C2:Co(OH)
7)生成成分C3:Al(OH)
8)生成成分D:Na2SO
9)水
ここでは、撹拌槽内で「2A+B1→C1+D」、「2A+B2→C2+D」、および「3A+1/2B3→C3+3/2D」の3つの化学反応が生じるとし、それぞれの化学反応に対応する渦消散モデルが反応モデルとして用いられる。反応成分B1、反応成分B2および反応成分B3は、均一に水に溶けた状態で、水中に分散している。反応成分Aを含む水溶液Aが流入境界から供給される。水溶液Aの流入境界の周囲に、高過飽和領域が形成される。高過飽和領域とは、撹拌槽内の水溶液中に溶けている生成成分のうち全ての金属水酸化物(ここでは、生成成分C1、生成成分C2および生成成分C3)の合計のモル濃度が5.0mol/m以上の領域のことである。
生成成分のうち全ての金属水酸化物のモル濃度を合計する理由について、以下、説明する。先ず、上述の如く、反応成分B1、反応成分B2および反応成分B3は、均一に水に溶けた状態で、分散している。このとき、反応成分B1、反応成分B2および反応成分B3は、反応成分Aの添加口付近で、反応成分Aと速やかに反応して、生成成分C1、生成成分C2および生成成分C3を生じる。よって、生成成分C1、生成成分C2および生成成分C3は、生成した時点で、充分に混ざった状態で存在する。その結果、生成成分C1、生成成分C2および生成成分C3は、個別の水酸化物として析出するのではなく、それぞれの成分が複合した水酸化物の固溶体として析出する。
さらに、硫酸ニッケル、硫酸マンガン、および硫酸コバルトを用いてニッケルコバルトマンガン複合水酸化物を得る場合、流体解析では、以下の9成分が含まれる単相多成分の流体を扱う。
なお、シミュレーションモデルでは、反応水溶液中に生じる錯体は、錯体濃度に相当する硫酸ニッケル、硫酸マンガン、硫酸コバルトのイオンが撹拌槽内に分散しているものと見なして計算する。
1)反応成分A:NaOH
2)反応成分B1:NiSO4
3)反応成分B2:MnSO4
4)反応成分B3:CoSO4
5)生成成分C1:Ni(OH)2
6)生成成分C2:Mn(OH)2
7)生成成分C3:Co(OH)2
8)生成成分D:Na2SO4
9)水
ここでは、撹拌槽内で「2A+B1→C1+D」、「2A+B2→C2+D」、および「3A+1/2B3→C3+3/2D」の3つの化学反応が生じるとし、それぞれの化学反応に対応する渦消散モデルが反応モデルとして用いられる。反応成分B1、反応成分B2および反応成分B3は、均一に水に溶けた状態で、水中に分散している。反応成分Aを含む水溶液Aが流入境界から供給される。水溶液Aの流入境界の周囲に、高過飽和領域が形成される。高過飽和領域とは、撹拌槽内の水溶液中に溶けている生成成分のうち全ての金属水酸化物(ここでは、生成成分C1と生成成分C2と生成成分C3)の合計のモル濃度が5.0mol/m以上の領域のことである。
生成成分のうち全ての金属水酸化物のモル濃度を合計する理由については、上述のニッケル、コバルトおよびアルミニウムを含むニッケル複合水酸化物を得る場合において、生成成分のうち全ての金属水酸化物のモル濃度を合計する場合と同様であるため、説明は省略する。
水溶液Aの流入境界の数は複数でもよく、高過飽和領域の数は複数でもよい。高過飽和領域の数が複数である場合、高過飽和領域の体積とは合計の体積を意味する。
ニッケル含有水酸化物の製造方法は、核生成工程または粒子成長工程において、uKの値がuKの最大値uKmaxに対して30%以上となる領域に添加口が設けられていることを、シミュレーションにより確認する工程を有してよい。この確認は、製造条件の変更の度に行われてよい。この製造条件の変更とは、例えば、撹拌槽の容量や形状、撹拌翼の個数、形状、寸法もしくは設置場所、撹拌翼の回転数、中和剤の流量や濃度、または中和剤を供給するノズルの形状、本数もしくは配置などが挙げられる。例えば、撹拌槽がバッチ式の場合、製造条件が同じ間、確認は一度行われればよく、毎回の確認は、不要である。
[実施例1]
実施例1では、オーバーフロー型の連続式の撹拌槽を用い、中和晶析によって、ニッケル複合水酸化物の粒子の核を生成させる核生成工程と、粒子を成長させる粒子成長工程とを同時に行った。撹拌槽の容積は200L、撹拌翼のタイプはディスクタービン翼、撹拌翼の羽根の枚数は6枚、撹拌翼の翼径は250mm、撹拌翼と撹拌槽の内底面との間の上下方向距離は140mm、撹拌翼の回転数は280rpmとした。撹拌槽内の反応水溶液の液量は200L、反応水溶液のアンモニウムイオン濃度は12g/L、反応水溶液の温度は50℃に維持した。反応水溶液の周辺雰囲気は大気雰囲気とした。
原料液は、ニッケル複合水酸化物としてNi0.82Co0.15Al0.03(OH)2が得られるように調製した。原料液供給管の本数は1本、1本の原料液供給管からの供給量は400ml/分であった。
核生成工程および粒子成長工程の間、撹拌槽内に、原料液の他に、中和剤として水酸化ナトリウム水溶液および錯化剤としてアンモニア水を供給して、反応水溶液のアンモニウムイオン濃度などを維持した。
核生成工程および粒子成長工程の後、反応水溶液中に残留する原料液の金属イオン(ニッケルイオン、コバルトイオン、およびアルミニウムイオン)を前記反応水溶液中に回収する回収工程を行った。回収工程では、撹拌槽内に原料液およびアンモニア水を供給するのを停止して、水酸化ナトリウム水溶液を、反応水溶液のpH値が12.6になるまで、200ml/分の割合で継続して供給した。このとき、水酸化ナトリウム水溶液を、水酸化ナトリウムの添加場所におけるuKが反応水溶液のuKの最大値uKmaxに対して40%となるような場所に添加した。
反応水溶液に占める、水酸化ナトリウム水溶液の添加場所付近のニッケル含有水酸化物のモル濃度が5.0mol/m3以上である高過飽和領域の体積割合は、シミュレーションにより算出したところ、0.075%であった。なお、解析条件は、上述の解析条件と同様に設定した。
得られたニッケル複合水酸化物の粒子を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した。図7に、実施例1で得られたニッケル複合水酸化物の粒子のSEM写真を示す。図7に示すように、中和晶析の完了時に得られた粒子の外表面は滑らかであり、凸凹はほとんど認められなかった。
得られたニッケル複合水酸化物の粒子の粒度分布を測定した。図8に、実施例1で得られたニッケル複合水酸化物の粒子の粒度分布の測定結果を示す。図8に示すように、得られた粒子の粒度分布は、単一のピークを有するものであった。
[実施例2]
実施例2では、水酸化ナトリウム水溶液を、水酸化ナトリウムの添加場所におけるuKが反応水溶液のuKの最大値uKmaxに対して33%となるような場所に添加したこと以外は、実施例1と同様にニッケル複合水酸化物の粒子を製造した。
このときの反応水溶液に占める、水酸化ナトリウム水溶液の添加場所付近のニッケル含有水酸化物のモル濃度が5.0mol/m3以上である高過飽和領域の体積割合は、実施例1と同様にシミュレーションにより算出したところ、0.091%であった。
得られたニッケル複合水酸化物の粒子は、実施例1で得られたニッケル複合水酸化物の粒子と同様に、粒子の外表面は滑らかであり、凸凹はほとんど認められなかった。また、得られたニッケル複合水酸化物の粒子の粒度分布についても、図8に示した実施例1の粒子と同様に、ピークを1つ有するものであった。
[実施例3]
実施例3では、原料液をニッケル複合水酸化物としてNi0.88Co0.09Al0.03(OH)2が得られるように調製としたこと以外は、実施例1と同様にニッケル複合水酸化物の粒子を製造した。
このときの反応水溶液に占める、水酸化ナトリウム水溶液の添加場所付近のニッケル含有水酸化物のモル濃度が5.0mol/m3以上である高過飽和領域の体積割合は、実施例1と同様にシミュレーションにより算出したところ、0.075%であった。
得られたニッケル複合水酸化物の粒子は、実施例1で得られたニッケル複合水酸化物の粒子と同様に、粒子の外表面は滑らかであり、凸凹はほとんど認められなかった。また、得られたニッケル複合水酸化物の粒子の粒度分布についても、図8に示した実施例1の粒子と同様に、ピークを1つ有するものであった。
[実施例4]
実施例4では、原料液を、ニッケル複合水酸化物としてNi0.34Mn0.33Co0.33(OH)2が得られるように調製したこと以外は、実施例1と同様にニッケル複合水酸化物の粒子を製造した。
このときの反応水溶液に占める、水酸化ナトリウム水溶液の添加場所付近のニッケル含有水酸化物のモル濃度が5.0mol/m3以上である高過飽和領域の体積割合は、実施例1と同様にシミュレーションにより算出したところ、0.075%であった。
得られたニッケル複合水酸化物の粒子像は、実施例1で得られたニッケル複合水酸化物の粒子と同様に、粒子の外表面は滑らかであり、凸凹はほとんど認められなかった。また、得られたニッケル複合水酸化物の粒子の粒度分布についても、図8に示した実施例1の粒子と同様に、ピークを1つ有するものであった。
[実施例5]
実施例5では、原料液を、ニッケル複合水酸化物としてNi0.40Mn0.30Co0.30(OH)2が得られるように調製したこと以外は、実施例1と同様にニッケル複合水酸化物の粒子を製造した。
このときの反応水溶液に占める、水酸化ナトリウム水溶液の添加場所付近のニッケル含有水酸化物のモル濃度が5.0mol/m3以上である高過飽和領域の体積割合は、実施例1と同様にシミュレーションにより算出したところ、0.075%であった。
得られたニッケル複合水酸化物の粒子は、実施例1で得られたニッケル複合水酸化物の粒子と同様に、粒子の外表面は滑らかであり、凸凹はほとんど認められなかった。また、得られたニッケル複合水酸化物の粒子の粒度分布についても、図8に示した実施例1の粒子と同様に、ピークを1つ有するものであった。
[比較例1]
比較例1では、水酸化ナトリウム水溶液の添加場所を、反応水溶液のuKの値が撹拌槽内の反応水溶液のuKの最大値uKmaxに対して20%となるような場所に変更したこと以外は、実施例1と同様にニッケル複合水酸化物の粒子を製造した。反応水溶液に占める高過飽和領域の体積割合は、実施例1と同様にシミュレーションにより算出したところ、0.150%であった。
図9に、比較例1で得られたニッケル複合水酸化物の粒子をSEMで観察した結果を示す。図9に示すように、中和晶析の完了時に得られる粒子の外表面に顕著な凹凸が認められた。これは、中和剤添加場所付近の核生成が抑制できなかったため、粒子が微細化し、粒の外表面に顕著な凹凸ができたと考えられる。
得られたニッケル複合水酸化物の粒子の粒度分布を測定した。図10に、実施例1で得られたニッケル複合水酸化物の粒子の粒度分布の測定結果を示す。図10に示すように、得られた粒子の粒度分布は、大小2つのピークを有するものであった。
[比較例2]
比較例2では、水酸化ナトリウム水溶液を、水酸化ナトリウムの添加場所におけるuKが反応水溶液のuKの最大値uKmaxに対して27%となるような場所に添加したこと以外は、実施例1と同様にニッケル複合水酸化物の粒子を製造した。
このときの反応水溶液に占める、水酸化ナトリウム水溶液の添加場所付近のニッケル含有水酸化物のモル濃度が5.0mol/m3以上である高過飽和領域の体積割合は、実施例1と同様にシミュレーションにより算出したところ、0.012%であった。
比較例2で得られたニッケル複合水酸化物の粒子についても、図9に示した比較例1の粒子と同様に、ニッケル複合水酸化物の外表面に顕著な凹凸が認められた。また、得られたニッケル複合水酸化物の粒子の粒度分布についても、図10に示した比較例1の粒子と同様に、ピークを2つ有するものであった。
[まとめ]
本実施例および比較例から、uKの値が反応水溶液中のuKの最大値uKmaxに対して30%以上の領域に中和剤を添加すれば、撹拌翼のタイプや翼径、撹拌槽の容積が変わっても、撹拌動力の増大を抑えながら、粒子外表面の凸凹を低減した粒子を製造できることがわかる。
以上、ニッケル含有水酸化物の製造方法の実施形態等について説明したが、本発明は上記実施形態等に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形、改良が可能である。
10 化学反応装置
12 高過飽和領域
20 撹拌槽
30 撹拌翼
40 撹拌軸
50 バッフル
60 原料液供給管
61、63 添加口
62 中和剤供給管
64 錯化剤供給管

Claims (3)

  1. 少なくともニッケル塩を含む金属塩と、前記金属塩の金属イオンと結合して錯体を形成する錯化剤と、前記金属塩および前記錯体と反応して金属水酸化物を生成する中和剤とを混合した反応水溶液の中で、中和晶析によりニッケル含有水酸化物の粒子を得るニッケル含有水酸化物の製造方法であって、
    前記ニッケル含有水酸化物の粒子を生成した後、前記反応水溶液に前記中和剤を添加して前記反応水溶液のpH値を上げて、前記ニッケル含有水酸化物を析出させ、前記反応水溶液の中に残留する前記金属イオンを固相の前記ニッケル含有水酸化物として回収する回収工程を含み、
    前記回収工程において、前記反応水溶液の流速uと乱流拡散係数Kとの積uKの値が前記uKの最大値uKmaxに対して30%以上となる領域に設けられる添加口から前記中和剤を添加する、ニッケル含有水酸化物の製造方法。
  2. 前記ニッケル含有水酸化物が、NiとCoとAlとを、物質量比がNi:Co:Al=1−x−y:x:y(ただし、0≦x≦0.3、0.005≦y≦0.15)となるように含む、請求項1に記載のニッケル含有水酸化物の製造方法。
  3. 前記ニッケル含有水酸化物が、NiとCoとMnとM(Mは、Ti、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、およびWから選択される1種以上の添加元素)とを、物質量比がNi:Co:Mn:M=x:y:z:t(ただし、x+y+z+t=1、0.1≦x≦0.7、0.1≦y≦0.5、0.1≦z≦0.8、0≦t≦0.02)となるように含む、請求項1に記載のニッケル含有水酸化物の製造方法。
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