JP6965718B2 - ニッケル含有水酸化物の製造方法 - Google Patents
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少なくともニッケル塩を含む金属塩を含有する原料液と、前記金属塩の金属イオンと結合して錯体を形成する錯化剤と、前記金属塩および前記錯体と反応して前記金属塩の水酸化物を生成する中和剤とを撹拌槽内で混合して反応させ、中和晶析によりニッケル含有水酸化物の粒子を得るニッケル含有水酸化物の製造方法であって、
前記原料液、前記錯化剤および中和剤を混合した反応水溶液の中で中和晶析によって前記ニッケル含有水酸化物の粒子の核を生成させる核生成工程と、
前記反応水溶液中に生成した前記核を成長させる粒子成長工程と、
を含み、
前記粒子成長工程において、前記中和剤の添加口から前記反応水溶液の中に形成される、前記反応水溶液に溶けている前記ニッケル含有水酸化物のモル濃度が5.0mol/m3以上である高過飽和領域の、前記反応水溶液に占める体積割合が、0.100%未満である、ニッケル含有水酸化物の製造方法が提供される。
ニッケル含有水酸化物は、リチウムイオン二次電池の正極活物質の前駆体として用いられるものである。ニッケル含有水酸化物は、例えば、(1)ニッケル(Ni)とコバルト(Co)とアルミニウム(Al)とを、物質量比(mol比)がNi:Co:Al=1−x−y:x:y(ただし、0≦x≦0.3、0.005≦y≦0.15)となるように含むニッケル複合水酸化物であるか、または(2)ニッケル(Ni)とコバルト(Co)とマンガン(Mn)とM(Mは、Ti、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、およびWから選択される1種以上の添加元素)とを、物質量比(mol比)がNi:Co:Mn:M=x:y:z:t(ただし、x+y+z+t=1、0.1≦x≦0.7、0.1≦y≦0.5、0.1≦z≦0.8、0≦t≦0.02)となるように含むニッケルコバルトマンガン複合水酸化物である。
ニッケル含有水酸化物の製造方法は、上述の如く、核生成工程S11と、粒子成長工程S12とを有する。本実施形態では、バッチ式の撹拌槽を用いて、撹拌槽内の水溶液のpH値などを制御することで、核生成工程S11と、粒子成長工程S12とを分けて実施する。
まず、原料液を調製する。原料液は、少なくともニッケル塩を含み、好ましくはニッケル塩以外の金属塩をさらに含有する。金属塩としては、硫酸塩、硝酸塩、塩酸塩などが用いられる。より具体的には、例えば、硫酸ニッケル、硝酸ニッケル、塩化ニッケル、硫酸マンガン、硫酸コバルト、硫酸アルミニウム、硫酸チタン、ペルオキソチタン酸アンモニウム、シュウ酸チタンカリウム、硫酸バナジウム、バナジン酸アンモニウム、硫酸クロム、クロム酸カリウム、硫酸ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、シュウ酸ニオブ、モリブデン酸アンモニウム、硫酸ハフニウム、タンタル酸ナトリウム、タングステン酸ナトリウム、またはタングステン酸アンモニウムなどが用いられる。
Ni2++2OH-→Ni(OH)2 ・・・(1)
Ni2++6NH3→[Ni(NH3)6]2+ ・・・(2−1)
[Ni(NH3)6]2++2OH-→Ni(OH)2+6NH3 ・・・(2−2)
核生成工程S11の終了後、粒子成長工程S12の開始前に、撹拌槽内の反応水溶液のpH値を、液温25℃基準で、10.5〜12.0、好ましくは11.0〜12.0、かつ、核生成工程S11におけるpH値よりも低く調整する。このpH値の調整は、撹拌槽内への中和剤の供給を停止すること、金属塩の金属を水素と置換した無機酸(例えば、硫酸塩の場合、硫酸)を撹拌槽内へ供給することなどで調整できる。
体積平均粒径MV=Σ(Vn×dn)/Σ(Vn) ・・・(I)
(ただし、式(I)中、Vは粒子の体積、dは粒子の粒子径、nは1以上の整数である。)
・流体解析を行う領域(以下、「解析領域」とも呼ぶ。)のうち、撹拌軸や撹拌翼の周りは、撹拌軸や撹拌翼と共に回転する回転座標系で扱う。回転座標系で扱う領域は、円柱状であって、その中心線を撹拌軸や撹拌翼の中心線に重ね、その直径を撹拌翼の翼径の115%に設定し、上下方向の範囲を撹拌槽の内底面から液面までとする。
・解析領域のうち、その他の領域は、静止座標系で扱う。
・回転座標系と静止座標系とは、流体解析ソフトのインターフェース機能を使用して接続する。インターフェース機能としては、オプションの「Frozen Rotor」を用いる。
・撹拌槽内の流れは、層流ではなく、乱流である。その乱流モデルとしては、SST(Shear Stress Transport)モデルを用いる。
・撹拌槽内で生じる化学反応の式を下記に示す。
2NaOH+NiSO4→Ni(OH)2+Na2SO4
実現象の化学反応のうち着目するのは、上記式(2−2)に示した、ニッケルアンミン錯体とアルカリ水溶液の水酸化物イオン(OH-)との反応により、水酸化ニッケルを生成する反応である。一方、シミュレーションモデルでは、ニッケルアンミン錯体と単体のニッケルイオンとを区別せず、ニッケルイオンとしては同一であるとして扱う。すなわち、ニッケルアンミン錯体として存在するニッケルイオンと同じ濃度の単体のニッケルイオンが撹拌槽内に分散しているものと見なして、単体のニッケルイオンが上記式(1)に基づいてアルカリ水溶液の水酸化物イオン(OH-)と反応して、水酸化ニッケルが生成するものとして扱う。
実際の晶析撹拌槽において化学反応を進行させるためには、まず乱流混合によって、ニッケルイオンとアルカリ水溶液の水酸化物イオン(OH-)とを接触させることが必要である。この乱流混合に依存するイオンの輸送速度は、その次の反応素過程として起こる、ニッケルイオンと水酸化物イオンの衝突合体による化学反応速度に比べて十分に遅いと考えられる。そのため、実際の化学反応速度は、ニッケルイオンと水酸化物イオンとの乱流混合が律速になっていると見做せる。この乱流混合速度は、単体のニッケルイオンとニッケルアンミン錯体のニッケルイオンとでは、ほとんど同一であると見なせる。そのため、シミュレーションモデルでは、ニッケルアンミン錯体と水酸化物イオンとの反応速度は、単体のニッケルイオンと水酸化物イオンとの反応速度と同一であると見なして、ニッケルアンミン錯体と単体のニッケルイオンとを区別せず、すべて上記式(1)に基づいて、水酸化ニッケルが生成するものとして取り扱う。
・流体解析では、以下の5成分が含まれる単相多成分の流体を扱う。
1)反応成分A:NaOH
2)反応成分B:NiSO4
3)生成成分C:Ni(OH)2
4)生成成分D:Na2SO4
5)水
・化学反応の速度の大きさは、渦消散モデルにより計算する。渦消散モデルは、乱流分散によって反応成分Aと反応成分Bとが分子レベルまで混合すると、上記化学反応が生じると仮定した反応モデルである。渦消散モデルの設定は、流体解析ソフトのデフォルトの設定のままとする。
・解析領域内の任意の位置および任意の時点で、上記5成分の合計の質量分率は、1である。そこで、上記5成分のうち水を除く4成分のそれぞれの質量分率は、CFXによって輸送方程式を解いて求める値とし、水の質量分率は、1から上記4成分の合計の質量分率を引いて得られる値とする。
・壁境界(流体の出入りのない境界)
撹拌槽や撹拌軸、撹拌翼、バッフルなどの固体との境界では、滑り無しとする。一方、外気との境界(液面)では、滑り有りとする。なお、液面は、撹拌によって変形しないものとし、高さが一定の平面とする。
撹拌槽内の流体中に、反応成分Aを含む水溶液(以下、「水溶液A」と呼ぶ。)が流入する流入境界を設ける。水溶液Aの流入流量や水溶液Aに占める反応成分Aの割合は、一定とする。水溶液Bは、撹拌槽内の水溶液の反応成分Bの濃度が所定値(例えば、1g/L)に維持されるように、槽全体から均等に生成させるよう流入境界を設定する。
撹拌槽の内周面の一部に、撹拌槽内の流体が出ていく流出境界を設ける。流出する液体は、生成成分CおよびD、未反応の反応成分AおよびB、並びに水を含むものである。その流出量は、解析領域と系外との圧力差がゼロになるように設定する。なお、オーバーフロー型の連続式の場合、液面が流出境界である。
・撹拌槽内の流体の温度は、25℃で一定とする。化学反応による熱の生成、流入境界や流出境界での熱の出入りは、無いものと仮定する。
・撹拌槽内の流体は、初期状態において、均質なものとし、上記5成分のうち反応成分Bと水の2成分のみを含むものとする。具体的には、撹拌槽内の流体のうち、反応成分Aの初期質量分率や生成成分Cの初期質量分率、生成成分Dの初期質量分率はゼロ、反応成分Bの初期質量分率は撹拌槽内の水溶液の反応成分Bの濃度が上記所定値になるように設定する。
・定常解を求めるための反復計算は、解析領域内の任意の位置で、流れの流速成分(m/s)および圧力(Pa)、並びに上記4成分の質量分率のそれぞれの二乗平均平方根の残差が、10-4以下となるまで行う。
・高過飽和領域とは、撹拌槽内の水溶液中に溶けている生成成分Cの濃度が5.0mol/m3以上の領域である。高過飽和領域は、水溶液Aの流入境界の周囲に形成される。
・ところで、流体解析では、上述の如く、上記5成分を単相多成分の流体として扱うため、生成成分Cの全てを液体として扱う。一方、実際には、生成成分Cの大部分は析出して固体となり、生成成分Cの残りの一部のみが液体として水溶液中に溶けている。
・そこで、高過飽和領域の体積は、上記流体解析により得た生成成分Cの濃度分布を補正することで算出する。その補正では、水溶液Aの流入境界から十分に離れた流出境界において生成成分Cの濃度が溶解度相当になるように、撹拌槽内の流体の全体において一律に生成成分Cの濃度を所定値下げる。
・なお、撹拌槽が連続式ではなくバッチ式の場合、流出境界が存在しない。この場合、濃度分布の補正では、撹拌槽内の水溶液の液面において生成成分Cの濃度が溶解度相当になるように、撹拌槽内の流体の全体において一律に生成成分Cの濃度を所定値下げればよい。ちなみに、オーバーフロー型の連続式の場合、液面が流出境界である。
なお、シミュレーションモデルでは、反応水溶液中に生じる錯体は、錯体濃度に相当する硫酸ニッケルや硫酸マンガンのイオンが撹拌槽内に分散しているものと見なして計算する。
1)反応成分A:NaOH
2)反応成分B1:NiSO4
3)反応成分B2:MnSO4
4)生成成分C1:Ni(OH)2
5)生成成分C2:Mn(OH)2
6)生成成分D:Na2SO4
7)水
ここでは、撹拌槽内で「2A+B1→C1+D」および「2A+B2→C2+D」の2つの化学反応が生じるとし、それぞれの化学反応に対応する渦消散モデルが反応モデルとして用いられる。反応成分B1と反応成分B2とは、均一に水に溶けた状態で、水中に分散している。反応成分Aを含む水溶液Aが流入境界から供給される。水溶液Aの流入境界の周囲に、高過飽和領域が形成される。高過飽和領域とは、撹拌槽内の水溶液中に溶けている生成成分のうち全ての金属水酸化物(ここでは、生成成分C1と生成成分C2)の合計のモル濃度が5.0mol/m3以上の領域のことである。
なお、シミュレーションモデルでは、反応水溶液中に生じる錯体は、錯体濃度に相当する硫酸ニッケル、硫酸コバルトおよび硫酸アルミニウムのイオンが撹拌槽内に分散しているものとみなして計算する。
1)反応成分A:NaOH
2)反応成分B1:NiSO4
3)反応成分B2:CoSO4
4)反応成分B3:Al2(SO4)3
5)生成成分C1:Ni(OH)2
6)生成成分C2:Co(OH)2
7)生成成分C3:Al(OH)3
8)生成成分D:Na2SO4
9)水
ここでは、撹拌槽内で「2A+B1→C1+D」、「2A+B2→C2+D」、および「3A+1/2B3→C3+3/2D」の3つの化学反応が生じるとし、それぞれの化学反応に対応する渦消散モデルが反応モデルとして用いられる。反応成分B1、反応成分B2および反応成分B3は、均一に水に溶けた状態で、水中に分散している。反応成分Aを含む水溶液Aが流入境界から供給される。水溶液Aの流入境界の周囲に、高過飽和領域が形成される。高過飽和領域とは、撹拌槽内の水溶液中に溶けている生成成分のうち全ての金属水酸化物(ここでは、生成成分C1、生成成分C2および生成成分C3)の合計のモル濃度が5.0mol/m3以上の領域のことである。
なお、シミュレーションモデルでは、反応水溶液中に生じる錯体は、錯体濃度に相当する硫酸ニッケル、硫酸マンガン、硫酸コバルトのイオンが撹拌槽内に分散しているものとみなして計算する。
1)反応成分A:NaOH
2)反応成分B1:NiSO4
3)反応成分B2:MnSO4
4)反応成分B3:CoSO4
5)生成成分C1:Ni(OH)2
6)生成成分C2:Mn(OH)2
7)生成成分C3:Co(OH)2
8)生成成分D:Na2SO4
9)水
ここでは、撹拌槽内で「2A+B1→C1+D」、「2A+B2→C2+D」、および「3A+1/2B3→C3+3/2D」の3つの化学反応が生じるとし、それぞれの化学反応に対応する渦消散モデルが反応モデルとして用いられる。反応成分B1、反応成分B2および反応成分B3は、均一に水に溶けた状態で、水中に分散している。反応成分Aを含む水溶液Aが流入境界から供給される。水溶液Aの流入境界の周囲に、高過飽和領域が形成される。高過飽和領域とは、撹拌槽内の水溶液中に溶けている生成成分のうち全ての金属水酸化物(ここでは、生成成分C1と生成成分C2と生成成分C3)の合計のモル濃度が5.0mol/m3以上の領域のことである。
実施例1では、オーバーフロー型の連続式の撹拌槽を用い、中和晶析によって、ニッケル複合水酸化物の粒子の核を生成させる核生成工程と、粒子を成長させる粒子成長工程とを同時に行った。撹拌槽の容積は200L、撹拌翼のタイプはディスクタービン翼、撹拌翼の羽根の枚数は6枚、撹拌翼の翼径は250mm、撹拌翼と撹拌槽の内底面との間の上下方向距離は140mm、撹拌翼の回転数は280rpmとした。撹拌槽内の反応水溶液の液量は200L、反応水溶液のpH値は11.3、反応水溶液のアンモニウムイオン濃度は12g/L、反応水溶液の温度は50℃に維持した。反応水溶液の周辺雰囲気は大気雰囲気とした。
実施例2では、実施例1における撹拌翼の回転数を150rpmに変更したこと以外、実施例1と同様にして、ニッケル複合水酸化物の粒子を製造した。反応水溶液に占める高過飽和領域の体積割合は、実施例1と同様にシミュレーションにより算出したところ、0.090%であった。
実施例3では、ニッケル複合水酸化物として、Ni0.88Co0.09Al0.03(OH)2が得られるように原料液を調整したこと以外は実施例1と同様にして、ニッケル複合水酸化物の粒子を製造した。反応水溶液に占める高過飽和領域の体積割合は、実施例1と同様にシミュレーションにより算出したところ、0.025%であった。
実施例4では、撹拌槽の容積は60L、撹拌翼のタイプはディスクタービン翼、撹拌翼の羽根の枚数は6枚、撹拌翼の翼径は168mm、撹拌翼と撹拌槽の内底面との間の上下方向距離は100mm、撹拌翼の回転数は425rpmとした。撹拌槽内の反応水溶液の液量は60Lとした。原料液は、ニッケル複合水酸化物としてNi0.82Co0.15Al0.03(OH)2が得られるように調製した。原料液供給管の本数は1本、1本の原料液供給管からの供給量は120ml/分であった。それ以外は、実施例1と同様にニッケル複合水酸化物の粒子を製造した。反応水溶液に占める高過飽和領域の体積割合は、実施例1と同様にシミュレーションにより算出したところ、0.015%であった。
実施例5では、撹拌槽の容積は60L、撹拌翼のタイプは45°ピッチドパドル翼、撹拌翼の羽根の枚数は4枚、撹拌翼の翼径は168mm、撹拌翼と撹拌槽の内底面との間の上下方向距離は100mm、撹拌翼の回転数は500rpmとした。また、撹拌槽内の反応水溶液の液量は60Lとした。原料液は、ニッケル複合水酸化物としてNi0.82Co0.15Al0.03(OH)2が得られるように調製した。原料液供給管の本数は1本、1本の原料液供給管からの供給量は120ml/分であった。それ以外は、実施例1と同様にニッケル複合水酸化物の粒子を製造した。反応水溶液に占める高過飽和領域の体積割合は、実施例1と同様にシミュレーションにより算出したところ、0.027%であった。
実施例6では、ニッケル複合水酸化物として、Ni0.34Co0.33Mn0.33(OH)2が得られるように原料液を調整したこと以外は、実施例1と同様にして、ニッケル複合水酸化物の粒子を製造した。反応水溶液に占める高過飽和領域の体積割合は、実施例1と同様にシミュレーションにより算出したところ、0.025%であった。
実施例7では、ニッケル複合水酸化物として、Ni0.60Co0.20Mn0.20(OH)2が得られるように原料液を調整したこと以外は、実施例1と同様にして、ニッケル複合水酸化物の粒子を製造した。反応水溶液に占める高過飽和領域の体積割合は、実施例1と同様にシミュレーションにより算出したところ、0.025%であった。
実施例8では、撹拌槽の容積は60L、撹拌翼のタイプはディスクタービン翼、撹拌翼の羽根の枚数は6枚、撹拌翼の翼径は168mm、撹拌翼と撹拌槽の内底面との間の上下方向距離は100mm、撹拌翼の回転数は425rpmとした。撹拌槽内の反応水溶液の液量は60Lとした。原料液は、ニッケル複合水酸化物としてNi0.34Co0.33Mn0.33(OH)2が得られるように調製した。原料液供給管の本数は1本、1本の原料液供給管からの供給量は120ml/分であった。それ以外は、実施例1と同様にして、ニッケル複合水酸化物の粒子を製造した。反応水溶液に占める高過飽和領域の体積割合は、実施例1と同様にシミュレーションにより算出したところ、0.015%であった。
実施例9では、撹拌槽の容積は60L、撹拌翼のタイプは45°ピッチドパドル翼、撹拌翼の羽根の枚数は4枚、撹拌翼の翼径は168mm、撹拌翼と撹拌槽の内底面との間の上下方向距離は100mm、撹拌翼の回転数は500rpmとした。また、撹拌槽内の反応水溶液の液量は60Lとした。原料液は、ニッケル複合水酸化物としてNi0.34Co0.33Mn0.33(OH)2が得られるように調製した。原料液供給管の本数は1本、1本の原料液供給管からの供給量は120ml/分であった。それ以外は、実施例1と同様にして、ニッケル複合水酸化物の粒子を製造した。反応水溶液に占める高過飽和領域の体積割合は、実施例1と同様にシミュレーションにより算出したところ、0.027%であった。
比較例1では、1本の原料液供給管からの供給量を800ml/分としたこと以外、実施例1と同様にニッケル複合水酸化物の粒子を製造した。反応水溶液に占める高過飽和領域の体積割合は、実施例1と同様にシミュレーションにより算出したところ、0.100%であった。
比較例2では、ニッケル複合水酸化物としてNi0.34Co0.33Mn0.33(OH)2が得られるように原料液を調整して、1本の原料液供給管からの供給量を800ml/分としたこと以外、実施例1と同様にニッケル複合水酸化物の粒子を製造した。反応水溶液に占める高過飽和領域の体積割合は、実施例1と同様にシミュレーションにより算出したところ、0.100%であった。
本実施例および比較例から、反応水溶液に占める高過飽和領域の体積割合が0.200%未満であれば、撹拌翼のタイプや翼径、撹拌槽の容積が変わっても、粒子外表面の凸凹を低減できることがわかる。
4 凝集体
6 外殻
10 化学反応装置
12 高過飽和領域
20 撹拌槽
30 撹拌翼
40 撹拌軸
50 バッフル
60 原料液供給管
61、63 供給口
62 中和剤供給管
64 錯化剤供給管
Claims (6)
- 少なくともニッケル塩を含む金属塩を含有する原料液と、前記金属塩の金属イオンと結合して錯体を形成する錯化剤と、前記金属塩および前記錯体と反応して前記金属塩の水酸化物を生成する中和剤とを撹拌槽内で混合して反応させ、中和晶析によりニッケル含有水酸化物の粒子を得るニッケル含有水酸化物の製造方法であって、
前記原料液、前記錯化剤および中和剤を混合した反応水溶液の中で中和晶析によって前記ニッケル含有水酸化物の粒子の核を生成させる核生成工程と、
前記反応水溶液中に生成した前記核を成長させる粒子成長工程と、
を含み、
前記粒子成長工程において、前記中和剤の添加口から前記反応水溶液の中に形成される、前記反応水溶液に溶けている前記ニッケル含有水酸化物のモル濃度が5.0mol/m3以上である高過飽和領域の、前記反応水溶液に占める体積割合が、0.100%未満である、ニッケル含有水酸化物の製造方法。 - 前記ニッケル含有水酸化物が、NiとCoとAlとを、物質量比がNi:Co:Al=1−x−y:x:y(ただし、0≦x≦0.3、0.005≦y≦0.15)となるように含む、請求項1に記載のニッケル含有水酸化物の製造方法。
- 前記ニッケル含有水酸化物が、NiとCoとMnとM(Mは、Ti、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、およびWから選択される1種以上の添加元素)とを、物質量比がNi:Co:Mn:M=x:y:z:t(ただし、x+y+z+t=1、0.1≦x≦0.7、0.1≦y≦0.5、0.1≦z≦0.8、0≦t≦0.02)となるように含む、請求項1に記載のニッケル含有水酸化物の製造方法。
- 前記粒子成長工程は、前記粒子成長工程の前半の雰囲気を、酸素濃度が1容量%以上である酸化性雰囲気とし、
前記粒子成長工程の後半の雰囲気を、酸素濃度が1容量%未満である非酸化性雰囲気とする請求項1〜3の何れか一項に記載のニッケル含有水酸化物の製造方法。 - 前記核生成工程における前記反応水溶液のpH値は、液温25℃基準で、12.0〜14.0である請求項1〜4の何れか一項に記載のニッケル含有水酸化物の製造方法。
- 前記粒子成長工程における前記反応水溶液のpH値は、液温25℃基準で、10.5〜12.0である請求項1〜5の何れか一項に記載のニッケル含有水酸化物の製造方法。
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