JP6852186B2 - マグネシウム合金およびマグネシウム合金部材 - Google Patents

マグネシウム合金およびマグネシウム合金部材 Download PDF

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Description

本開示は、マグネシウム合金およびマグネシウム合金部材に関する。本出願は、2017年11月17日に出願した日本特許出願である特願2017−221519号および2017年11月17日に出願した日本特許出願である特願2017−221520号に基づく優先権を主張する。当該日本特許出願に記載された全ての記載内容は、参照によって本明細書に援用される。
マグネシウム合金は、実用金属で最も比重が小さく、比強度、比剛性に優れるので、軽量素材として注目されている。特許文献1には、Al,Sr,Ca及びMnを含有し、残部がMg及び不可避不純物であるマグネシウム合金が開示されている。また、特許文献2には、マグネシウム合金からなる鋳造部材(マグネシウム合金部材)において、構成部分の厚みが異なるマグネシウム合金部材が開示されている。
特開2010−242146号公報 特開2017−160495号公報
本開示に係るマグネシウム合金は、
Al、Sr、Ca及びMnを含有し、残部がMg及び不可避不純物であるマグネシウム合金であって、
α−Mg相と、α−Mg相の粒界及びセル境界の少なくとも一方に分散する晶出物相とを有する組織を備え、
晶出物相は、
AlSr相、AlSr相、(Mg,Al)Sr相、及び(Mg,Al)Sr相からなるA群から選択される1種以上と、
AlCa相及び(Mg,Al)Ca相からなるB群から選択される1種以上とを備え、
断面におけるA群の晶出物相とB群の晶出物相との合計の面積割合が2.5%以上30%以下である。
本開示に係るマグネシウム合金部材は、
上記のマグネシウム合金からなり、基部と、基部から突出するように基部に一体成形される板状部とを備えるマグネシウム合金部材であって、
基部は、板状部の突出方向に沿った厚さが、板状部の厚さの5倍以上である。
図1は、マグネシウム合金の組織を示す模式図である。 図2Aは、マグネシウム合金部材を示す概念斜視図である。 図2Bは、図2Aのb−b断面図である。
[本開示が解決しようとする課題]
耐熱強度に優れるマグネシウム合金の開発が望まれている。自動車部品や航空機部品などの部品は、使用環境温度が常温よりも高い場合がある。例えば、エンジンルームの近くに配置される部品は、使用環境温度が100℃〜180℃程度である場合があり、高温下において強度に優れることが望まれる。
そこで、本開示は、耐熱強度に優れるマグネシウム合金を提供することを目的の一つとする。
また、鋳造時に割れが生じ難いマグネシウム合金部材が望まれている。そのために、マグネシウム合金部材として、肉厚変動が大きく、複雑形状の一体成形物とすることが考えられる。例えば、基部と、基部から突出するように基部に一体成形される板状部とを備え、基部と板状部との厚さの差が大きいマグネシウム合金部材とすることが挙げられる。
しかし、肉厚変動が大きく、複雑形状の一体成形物で構成されるマグネシウム合金部材は、鋳造時において、肉厚が変動する部分、例えば、基部と板状部との境界部分に割れが生じ易い。
そこで、本開示は、鋳造時に割れが生じ難いマグネシウム合金部材を提供することを目的の一つとする。
[本開示の効果]
上記マグネシウム合金は、耐熱強度に優れる。また、上記マグネシウム合金部材は、鋳造時に割れが生じ難い。
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施形態の内容を列記して説明する。
(1)本開示の実施形態に係るマグネシウム合金は、
Al、Sr、Ca及びMnを含有し、残部がMg及び不可避不純物であるマグネシウム合金であって、
α−Mg相と、α−Mg相の粒界及びセル境界の少なくとも一方に分散する晶出物相とを有する組織を備え、
晶出物相は、
AlSr相、AlSr相、(Mg,Al)Sr相、及び(Mg,Al)Sr相からなるA群から選択される1種以上と、
AlCa相及び(Mg,Al)Ca相からなるB群から選択される1種以上とを備え、
断面におけるA群の晶出物相とB群の晶出物相との合計の面積割合が2.5%以上30%以下である。
上記A群の晶出物相及びB群の晶出物相は、耐熱強度の向上に寄与する。上記マグネシウム合金は、A群の晶出物相及びB群の晶出物相を特定の範囲で備えることで、耐熱強度に優れる。具体的には、上記マグネシウム合金は、断面におけるA群の晶出物相とB群の晶出物相との合計の面積割合が2.5%以上であることで、実用上十分な耐熱強度を発揮できる。断面におけるA群の晶出物相とB群の晶出物相との合計の面積割合は、大きいほど耐熱強度を向上できるが、大き過ぎると耐熱強度を低下させる晶出物相が存在し易い。よって、断面におけるA群の晶出物相とB群の晶出物相との合計の面積割合が30%以下であることで、耐熱強度を低下させる晶出物相が少ない、又は実質的に存在せず、耐熱強度の低下を抑制できる。
(2)上記マグネシウム合金の一例として、
更に、晶出物相は、Al17Sr相及びMg17Sr相からなるC群から選択される1種以上を備え、
断面におけるC群の晶出物相の面積割合が15%以下であることが挙げられる。
上記C群の晶出物相は、耐熱強度を低下させる。そのため、上記マグネシウム合金は、C群の晶出物相を備える場合、断面におけるC群の晶出物相の面積割合が15%以下であることで、耐熱強度の低下を抑制できる。
(3)C群の晶出物相を備える上記マグネシウム合金の一例として、
断面におけるA群の晶出物相とB群の晶出物相との合計の面積割合が10%以上25%以下であることが挙げられる。
C群の晶出物相を備える場合、断面におけるA群の晶出物相とB群の晶出物相との合計の面積割合が10%以上であることで、C群の晶出物相の面積割合が比較的大きくても、耐熱強度の低下を抑制し易い。また、C群の晶出物相を備える場合、断面におけるA群の晶出物相とB群の晶出物相との合計の面積割合が25%以下であることで、耐熱強度を低下させる晶出物相であるC群の晶出物相の晶出を抑制し易い。
(4)上記マグネシウム合金の一例として、
更に、晶出物相は、Mg17Al12相を備え、
断面におけるMg17Al12相の面積割合が10%以下であることが挙げられる。
Mg17Al12相は、耐熱強度を低下させる。そのため、上記マグネシウム合金は、Mg17Al12相を備える場合、断面におけるMg17Al12相の面積割合が10%以下であることで、耐熱強度の低下を抑制できる。
(5)上記マグネシウム合金の一例として、
更に、晶出物相は、
Al17Sr相及びMg17Sr相からなるC群から選択される1種以上と、
Mg17Al12相とを備え、
断面におけるA群の晶出物相とB群の晶出物相との合計の面積割合が15%以上25%以下、
C群の晶出物相の面積割合が7%以下、
及びMg17Al12相の面積割合が5%以下であることが挙げられる。
上記C群の晶出物相及びMg17Al12相は、耐熱強度を低下させる。そのため、上記マグネシウム合金は、C群の晶出物相及びMg17Al12相の双方を備える場合、断面におけるC群の晶出物相の面積割合が7%以下であり、かつMg17Al12相の面積割合が5%以下であることで、耐熱強度の低下を抑制できる。C群の晶出物相及びMg17Al12相の双方を備える場合、断面におけるA群の晶出物相とB群の晶出物相との合計の面積割合が15%以上であることで、C群の晶出物相やMg17Al12相の面積割合が比較的大きくても、耐熱強度の低下を抑制し易い。また、C群の晶出物相及びMg17Al12相の双方を備える場合、断面におけるA群の晶出物相とB群の晶出物相との合計の面積割合が25%以下であることで、C群の晶出物相の晶出を抑制し易い。
(6)本開示の実施形態に係るマグネシウム合金部材は、
上記マグネシウム合金からなり、基部と、基部から突出するように基部に一体成形される板状部とを備えるマグネシウム合金部材であって、
基部は、板状部の突出方向に沿った厚さが、板状部の厚さの5倍以上である。
すなわち、本開示の実施形態に係るマグネシウム合金部材は、
マグネシウム合金からなり、基部と、基部から突出するように基部に一体成形される板状部とを備えるマグネシウム合金部材であって、
マグネシウム合金は、
Al、Sr、Ca及びMnを含有し、残部がMg及び不可避不純物である組成と、
α−Mg相と、α−Mg相の粒界及びセル境界の少なくとも一方に分散する晶出物相とを有する組織とを備え、
晶出物相は、
AlSr相、AlSr相、(Mg,Al)Sr相、及び(Mg,Al)Sr相からなるA群から選択される1種以上と、
AlCa相及び(Mg,Al)Ca相からなるB群から選択される1種以上とを備え、
断面におけるA群の晶出物相とB群の晶出物相との合計の面積割合が2.5%以上30%以下であり、
基部は、板状部の突出方向に沿った厚さが、板状部の厚さの5倍以上である。
上記A群の晶出物相及びB群の晶出物相は、耐熱強度の向上に寄与する。上記マグネシウム合金は、A群の晶出物相及びB群の晶出物相を特定の範囲で備えることで、耐熱強度に優れ、鋳造時に割れが生じ難い。具体的には、上記マグネシウム合金は、断面におけるA群の晶出物相とB群の晶出物相との合計の面積割合が2.5%以上であることで、実用上十分な耐熱強度を発揮でき、鋳造時に割れが生じ難い。断面におけるA群の晶出物相とB群の晶出物相との合計の面積割合は、大き過ぎると耐熱強度を低下させる晶出物相が存在し易い。よって、断面におけるA群の晶出物相とB群の晶出物相との合計の面積割合が30%以下であることで、耐熱強度を低下させる晶出物相が少ない、又は実質的に存在せず、耐熱強度の低下を抑制でき、鋳造時に割れが生じ難い。
上記マグネシウム合金部材は、耐熱強度の向上に寄与する晶出物相を特定の範囲で備えるマグネシウム合金からなることで、肉厚変動が大きい基部と板状部とが一体成形された複雑形状であっても、鋳造時に割れが生じ難い。
(7)上記マグネシウム合金部材の一例として、
基部は、板状部の突出方向と交差する方向の長さが、板状部の厚さの5倍以上であることが挙げられる。
上記マグネシウム合金部材は、基部と板状部との形状の自由度を高められる。
(8)上記マグネシウム合金部材の一例として、
更に、晶出物相は、Al17Sr相及びMg17Sr相からなるC群から選択される1種以上を備え、
断面におけるC群の晶出物相の面積割合が10%以下であることが挙げられる。
上記C群の晶出物相は、耐熱強度を低下させる。そのため、上記マグネシウム合金は、C群の晶出物相を備える場合、断面におけるC群の晶出物相の面積割合が10%以下であることで、耐熱強度の低下を抑制でき、鋳造時に割れの発生を抑制し易い。上記マグネシウム合金部材は、耐熱強度を低下させ難いマグネシウム合金からなることで、肉厚変動が大きい基部と板状部とが一体成形された複雑形状であっても、鋳造時に割れが生じ難い。
(9)上記マグネシウム合金部材の一例として、
更に、晶出物相は、Mg17Al12相を備え、
断面におけるMg17Al12相の面積割合が5%以下であることが挙げられる。
Mg17Al12相は、耐熱強度を低下させる。そのため、上記マグネシウム合金は、Mg17Al12相を備える場合、断面におけるMg17Al12相の面積割合が5%以下であることで、耐熱強度の低下を抑制でき、鋳造時に割れの発生を抑制し易い。上記マグネシウム合金部材は、耐熱強度を低下させ難いマグネシウム合金からなることで、肉厚変動が大きい基部と板状部とが一体成形された複雑形状であっても、鋳造時に割れが生じ難い。
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の実施形態の詳細を、以下に説明する。
≪マグネシウム合金≫
実施形態に係るマグネシウム合金は、Al、Sr、Ca及びMnを含有し、残部がMg及び不可避不純物である組成と、α−Mg相と、α−Mg相の粒界及びセル境界の少なくとも一方に分散する晶出物相とを有する組織とを備える。実施形態に係るマグネシウム合金は、特定の晶出物相を特定の範囲で備える点を特徴の一つとする。以下、まずマグネシウム合金の組成を説明し、次にマグネシウム合金の組織を説明する。
<組成>
マグネシウム合金は、Al、Sr、Ca及びMnを含有し、残部がMg及び不可避不純物である。
〔アルミニウム(Al)〕
Alは、Srを含む化合物相やCaを含む化合物相を形成して合金組織中に晶出物相として存在することで、耐熱強度を向上する機能を有する。AlとSrとを含み、耐熱強度の向上に寄与する化合物相としては、AlSr相、AlSr相、(Mg,Al)Sr相、(Mg,Al)Sr相が挙げられる(A群の化合物相)。AlとCaとを含み、耐熱強度の向上に寄与する化合物相としては、AlCa相、(Mg,Al)Ca相が挙げられる(B群の化合物相)。上記A群の化合物相及びB群の化合物相が晶出物相として存在するには、Alの含有量は、6.5質量%以上であることが挙げられる。また、Alの含有量は、6.5質量%以上であることで、マグネシウム合金の母材(α−Mg相)の強度を向上できる。更に、Alの含有量は、6.5質量%以上であることで、マグネシウム合金の融点が低下して湯流れ性が良くなるため鋳造性を向上し易い。Alの含有量は、更に7.1質量%以上、特に8.1質量%以上であることが挙げられる。
一方、Alの含有量は、多過ぎると、耐熱強度を低下させる化合物相が晶出され易い。耐熱強度を低下させる化合物相としては、Mg17Al12相が挙げられる。よって、Alの含有量は、13.1質量%以下であることが挙げられる。Alの含有量は、更に12.6質量%以下、特に10.1質量%以下であることが挙げられる。
〔ストロンチウム(Sr)〕
Srは、AlSr相、AlSr相、(Mg,Al)Sr相、(Mg,Al)Sr相といったA群の化合物相を形成して合金組織中に晶出物相として存在することで、耐熱強度を向上する機能を有する。また、Srは、上記A群の化合物相を形成して晶出物相として存在することで、Mg17Al12相といった耐熱強度を低下させる化合物相の形成を抑制する機能も有する。上記A群の化合物相が晶出物相として存在するには、Srの含有量は、1.6質量%以上であることが挙げられる。Srの含有量は、多いほど、上記A群の化合物相が十分に形成されて、粒界やセル境界により多く晶出物相として存在して粒界すべりなどを抑制し易い。Srの含有量は、更に2.6質量%以上、特に2.8質量%以上であることが挙げられる。
一方、Srの含有量は、多過ぎると、上記A群の化合物相が晶出物相として過剰に存在し、更に耐熱強度を低下させる化合物相が晶出され易い。耐熱強度を低下させる化合物相としては、Al17Sr相及びMg17Sr相(C群の化合物相)や、Mg17Al12相が挙げられる。よって、Srの含有量は、3.9質量%以下であることが挙げられる。また、Srの含有量は、3.9質量%以下であることで、鋳造時に鋳造金型への焼付きを抑制し易い。Srの含有量は、更に3.6質量%以下、特に3.4質量%以下であることが挙げられる。
〔カルシウム(Ca)〕
Caは、AlCa相、(Mg,Al)Ca相といったB群の化合物相を形成して合金組織中に晶出物相として存在することで、耐熱強度を向上する機能を有する。また、Caは、上記B群の化合物相を形成して晶出物相として存在することで、Mg17Al12相といった耐熱強度を低下させる化合物相の形成を抑制する機能も有する。上記B群の化合物相が晶出物相として存在するには、Caの含有量は、0.3質量%以上であることが挙げられる。Caの含有量は、多いほど、上記B群の化合物相が十分に形成されて、粒界やセル境界により多く晶出物相として存在して粒界すべりなどを抑制し易い。Caの含有量は、更に0.6質量%以上、特に0.8質量%以上であることが挙げられる。
一方、Caの含有量は、多過ぎると、上記B群の化合物相が晶出物相として過剰に存在し、Mg17Al12相が晶出され易い。よって、Caの含有量は、2.4質量%以下であることが挙げられる。また、Caの含有量は、2.4質量%以下であることで、上記B群の化合物相が晶出物相として過剰に存在して熱間割れなどの欠陥の原因になることを抑制し易い。Caの含有量は、更に1.8質量%以下、特に1.5質量%以下であることが挙げられる。
〔マンガン(Mn)〕
Mnは、Alを含む化合物相を形成して合金組織中に晶出物相として存在することで、Mg17Al12相といった耐熱強度を低下させる化合物相が晶出されることを抑制する機能を有する。また、Mnは、マグネシウム合金中に不純物として存在し得るFeを低減して、耐食性の向上にも寄与する。Mnの含有量は、0.02質量%以上0.50質量%以下、更に0.10質量%以上0.45質量%以下、特に0.20質量%以上0.38質量%以下であることが挙げられる。
〔Sr/Al〕
Sr及びAlの含有量が上述の範囲を満たすことに加えて、Alの含有量に対するSrの含有量の割合(Sr/Al)が、0.23以上0.55以下を満たすことが挙げられる。上記割合が0.23以上を満たすことで、AlSr相、AlSr相、(Mg,Al)Sr相、(Mg,Al)Sr相といったA群の化合物相が合金組織中に晶出物相として特定の範囲で存在でき、耐熱強度を向上できる。上記割合は、大き過ぎるとAlに対してSrの含有量が多過ぎてSrを消費できず、Mg17Al12相といった耐熱強度を低下させる化合物相が形成される。よって、上記割合は、0.55以下であることで、Mg17Al12相の形成を抑制でき、耐熱強度の低下を抑制できる。Alの含有量に対するSrの含有量の割合は、更に0.25以上0.46以下、特に0.27以上0.39以下であることが挙げられる。
〔Sr+Ca〕
Sr及びCaの含有量が上述の範囲を満たすことに加えて、Sr及びCaの合計含有量(Sr+Ca)が、3質量%以上5.5質量%以下を満たすことが挙げられる。上記合計含有量が3質量%以上を満たすことで、耐熱強度を向上し易い。一方、上記合計含有量が5.5質量%以下を満たすことで、鋳造金型への焼付きや熱間割れなどの欠陥を効果的に抑制し易い。Sr及びCaの合計含有量は、更に3.3質量%以上5.3質量%以下、特に3.5質量%以上5.0質量%以下であることが挙げられる。
SrとCaの含有比は、1.5:1〜5:1が挙げられる。SrとCaの含有比が上記範囲を満たすことで、耐熱強度の向上効果と、鋳造金型への焼付きと熱間割れなどの欠陥の抑制効果とをバランスよく得易い。SrとCaの含有比は、更に2.1:1〜4.2:1が挙げられる。
〔その他の元素〕
上記の効果を阻害しない元素として、Bi(ビスマス)、Zn(亜鉛)、Si(ケイ素)、Sn(スズ)、希土類元素(すなわち、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu)が挙げられ、これらの元素が各々2質量%以下であれば上記と同様の効果が得られる。
〔不可避不純物〕
マグネシウム合金は、不純物として、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、及びシリコン(Si)から選択される1種以上の元素を含有し得る。これらの元素は、耐食性を低下させ易いため、少ない方が好ましい。Feの含有量は、質量基準で50ppm以下が挙げられる。Niの含有量は、質量基準で200ppm以下が挙げられる。Cuの含有量は、質量基準で300ppm以下が挙げられる。Siの含有量は、質量基準で1000ppm以下が挙げられる。ここで規定する各元素は、上記含有量を満たすことで、不可避不純物とみなす。
<組織>
マグネシウム合金は、α−Mg相(Mg結晶粒)と、α−Mg相の粒界及びセル境界の少なくとも一方に分散する晶出物相とを有する組織を備える。図1に、マグネシウム合金の組織の模式図を示す。図1では、α−Mg相を右下がりの斜めハッチングで示し、晶出物相を部分的に楕円形状の白抜きで示す。α−Mg相の粒界とは、異なった結晶方位に成長していく母相(α−Mg相)の結晶がぶつかった界面のことであり、図1では、太い点線で示す。セル境界とは、組成の違いにより生じる界面のことであり、図1では、太い実線で示す。図1に示すように、晶出物相は、α−Mg相の粒界やセル境界に分散して存在する。なお、晶出物相は、図1では、模式的に楕円形状で示しているが、実際には、ラメラ状や、粒状、細長い形状、塊状で存在する。
晶出物相は、AlSr相、AlSr相、(Mg,Al)Sr相、及び(Mg,Al)Sr相からなるA群から選択される1種以上と、AlCa相及び(Mg,Al)Ca相からなるB群から選択される1種以上とを備える。晶出物相は、更に、Al17Sr相及びMg17Sr相からなるC群から選択される1種以上や、Mg17Al12相を備えることもある。実施形態に係るマグネシウム合金は、A群の晶出物相とB群の晶出物相とが特定の範囲で比較的多く存在し、C群の晶出物相とMg17Al12相とが比較的少ない又は実質的に存在しない組織を備える点を特徴の一つとする。
〔A群の晶出物相〕
A群の晶出物相は、AlSr相、AlSr相、(Mg,Al)Sr相、及び(Mg,Al)Sr相から選択される1種以上で構成される。A群の晶出物相は、耐熱強度を向上する機能を有する。A群の晶出物相は、融点が1000℃以上であり、C群の晶出物相やMg17Al12相に比較して十分に高い。よって、A群の晶出物相がα−Mg相の粒界やセル境界に分散して存在することで、高温でも強度を維持することができ、鋳造時に割れが生じ難い。A群の晶出物相は、代表的には、ラメラ状や、細長い形状で存在する。
〔B群の晶出物相〕
B群の晶出物相は、AlCa相及び(Mg,Al)Ca相から選択される1種以上で構成される。B群の晶出物相は、耐熱強度を向上する機能を有する。B群の晶出物相は、融点が1000℃以上であり、C群の晶出物相やMg17Al12相に比較して十分に高い。よって、B群の晶出物相がα−Mg相の粒界やセル境界に分散して存在することで、高温でも強度を維持することができ、鋳造時に割れが生じ難い。B群の晶出物相は、代表的には、ラメラ状や、細長い形状で存在する。
〔A群の晶出物相とB群の晶出物相の合計〕
マグネシウム合金の断面におけるA群の晶出物相とB群の晶出物相との合計の面積割合は、2.5%以上30%以下である。上記面積割合が2.5%以上であることで、実用上十分な耐熱強度を発揮でき、鋳造時に割れが生じ難い。上記面積割合は、大きいほど耐熱強度を向上できるため、更に10%以上、特に15%以上であることが挙げられる。一方、上記面積割合は、大き過ぎると耐熱強度を低下させる晶出物相が存在し易いため、更に27%以下、特に25%以下であることが挙げられる。
晶出物相として、耐熱強度を低下させる晶出物相が存在している場合、具体的にはC群の晶出物相やMg17Al12相が存在している場合、上記面積割合は、10%以上25%以下であることが挙げられる。上記面積割合が10%以上であることで、C群の晶出物相やMg17Al12相の面積割合が大きくても、耐熱強度の低下を抑制し易く、鋳造時に割れの発生を抑制し易い。一方、上記面積割合が25%以下であることで、C群の晶出物相の晶出を抑制し易い。特に、耐熱強度を低下させる晶出物相として、C群の晶出物相とMg17Al12相の双方が存在している場合、上記面積割合は、15%以上25%以下であることが挙げられる。
〔C群の晶出物相〕
C群の晶出物相は、Al17Sr相及びMg17Sr相から選択される1種以上で構成される。C群の晶出物相は、耐熱強度を低下させる。よって、晶出物相として、C群の晶出物相を備える場合、断面におけるC群の晶出物相の面積割合は、15%以下であることが挙げられる。特に、耐熱強度を低下させる晶出物相として、C群の晶出物相とMg17Al12相の双方が存在している場合、C群の晶出物相の面積割合は、7%以下であることが挙げられる。C群の晶出物相は、少ないほど耐熱強度の低下を抑制できるため、更に5.5%以下、特に4.5%以下が挙げられ、実質的に存在しないことが好ましい。C群の晶出物相は、代表的には、塊状で存在する。
更に、耐熱強度の低下を抑制しマグネシウム合金部材の鋳造時の割れを抑制するために、断面におけるC群の晶出物相の面積割合は、好ましくは10%以下であることが挙げられる。特に、耐熱強度を低下させる晶出物相として、C群の晶出物相とMg17Al12相の双方が存在している場合、C群の晶出物相の面積割合は、好ましくは7%以下であることが挙げられる。C群の晶出物相は、少ないほど耐熱強度の低下を抑制できマグネシウム合金部材の鋳造時の割れを抑制できるため、更に5.5%以下、特に4.5%以下が好ましく挙げられ、実質的に存在しないことが最も好ましい。
〔Mg17Al12相〕
Mg17Al12相は、耐熱強度を低下させる。よって、晶出物相として、Mg17Al12相を備える場合、断面におけるMg17Al12相の面積割合は、10%以下であることが挙げられる。特に、耐熱強度を低下させる晶出物相として、C群の晶出物相とMg17Al12相の双方が存在している場合、Mg17Al12相の面積割合は、5%以下であることが挙げられる。Mg17Al12相は、少ないほど耐熱強度の低下を抑制できるため、更に3.5%以下、特に2.5%以下が挙げられ、実質的に存在しないことが好ましい。Mg17Al12相は、代表的には、粒状で存在する。
更に、耐熱強度の低下を抑制しマグネシウム合金部材の鋳造時の割れを抑制するために、断面におけるMg17Al12相の面積割合は、好ましくは5%以下であることが挙げられる。特に、耐熱強度を低下させる晶出物相として、C群の晶出物相とMg17Al12相の双方が存在している場合、Mg17Al12相の面積割合は、好ましくは3%以下であることが挙げられる。Mg17Al12相は、少ないほど耐熱強度の低下を抑制できマグネシウム合金部材の鋳造時の割れを抑制できるため、更に2.5%以下が好ましく挙げられ、実質的に存在しないことが最も好ましい。
上述した各晶出物相の組成は、例えば、エネルギー分散X線分析法(EDX)、X線回折(XRD)、オージェ電子分光法(AES)などによって成分分析を行うことで確認できる。
また、上述した各晶出物相において、マグネシウム合金の断面における面積割合は、次のように測定できる。まず、マグネシウム合金の断面の顕微鏡写真を用いて、観察視野Sf中に存在する各晶出物相を、A群の晶出物相とB群の晶出物相との合計、C群の晶出物相、及びMg17Al12相ごとに抽出してその面積を求め、更に各晶出物相の合計面積Smを求める。そして、A群の晶出物相とB群の晶出物相との合計面積SmA+Bを観察視野Sfで除した割合((SmA+B/Sf)×100%)を、A群の晶出物相とB群の晶出物相との合計の面積割合として求める。同様に、C群の晶出物相の合計面積Smを観察視野Sfで除した割合((Sm/Sf)×100%)を、C群の晶出物相の面積割合として求める。Mg17Al12相の合計面積Smを観察視野Sfで除した割合((Sm/Sf)×100%)を、Mg17Al12相の面積割合として求める。観察視野数は、5個以上、更に10個以上とすることが挙げられる。この場合、各晶出物相の面積割合は、観察視野数における平均とする。断面の採取は、市販のクロスセクションポリッシャ(CP)加工装置を用いて行える。各晶出物相の断面積は、画像処理装置によって顕微鏡写真(SEM像)を二値化処理した二値化像などを利用すると容易に測定できる。二値化処理は、測定する晶出物相(例えば、A群の晶出物相とB群の晶出物相)と、α−Mg相及び測定する晶出物相以外の晶出物相(例えば、C群の晶出物相、及びMg17Al12相)とを明度の違いで区別することで行える。このとき、EDXによる点分析を行うことで、α−Mg相及び各晶出物相の種類を確認できる。
≪マグネシウム合金の製造方法≫
上述したマグネシウム合金は、代表的には、上述した組成のマグネシウム合金の溶湯を作製し、鋳造することで製造できる。
マグネシウム合金の溶湯は、以下のように作製することが挙げられる。原料には、純度が99質量%以上、好ましくは99.5質量%以上の純マグネシウムの塊、各添加元素金属の塊又は添加元素を合金化した塊を用いる。
用意した原料塊を用いて、まず純マグネシウムを完全に溶解して、純マグネシウムの溶湯を作製する。雰囲気ガスは、アルゴン(Ar)ガスなどの希ガス、窒素ガス、COガスといった不活性ガスであると、Mgなどの酸化を抑制できる。また、雰囲気ガスは、SFなどの防燃ガスを含むと、発火を防止できる。
純マグネシウムの溶湯に、Al、Sr、Ca及びMnの各添加元素を添加する。各添加元素を添加する際、Alは、Mgの活性度を低下し易いため、最初に添加することが挙げられる。また、Caは、純マグネシウムに溶解し易いため、最後に添加することが挙げられる。Mnは、溶解時間が比較的長いため、Alと同時に添加することが挙げられる。
各添加元素を添加する際、純マグネシウムの溶湯は、温度を680℃以上730℃以下とする。純マグネシウムの溶湯の温度を680℃以上とすることで、各添加元素を完全に溶解できる。純マグネシウムの溶湯の温度は、高いほど添加元素の未溶解を防止できると共に、溶解時間を短縮できるため、690℃以上、更に700℃以上、特に710℃以上とすることが挙げられる。一方、純マグネシウムの溶湯の温度を730℃以下とすることで、Mgの酸化を抑制し易い上に、鉄製の坩堝を用いる場合にFeの溶出に起因するFeの混入を防止し易いため、更に720℃以下とすることが挙げられる。
各添加元素を添加後、十分に撹拌する。撹拌は、棒状の治具や市販の撹拌機などを用いて機械的に行う。撹拌時間は、撹拌方法や溶湯量などにもよるが、例えば5分以上15分以下程度とすると均一的な成分の溶湯が得られる。撹拌後、例えば10分以上30分以下程度静置することで溶湯の介在物を分離でき、その後直ちに鋳造することで添加元素の分離(沈殿又は浮遊)を防止でき、A群の晶出物やB群の晶出物を適切に晶出できる。
鋳造過程における冷却速度は、0.01℃/秒以上500℃/秒以下とすることが挙げられる。冷却速度は、速いほどA群の晶出物やB群の晶出物を適切に晶出できるため、100℃/秒以上、更に300℃/秒、特に400℃/秒とすることが挙げられる。上記冷却速度となるよう冷却条件を適宜調整するとよい。
晶出物相には、安定相と準安定相とがある。安定相には、AlSr相、AlSr相、AlCa相、Al17Sr相、及びMg17Al12相が含まれる。準安定相には、(Mg,Al)Sr相、(Mg,Al)Sr相、(Mg,Al)Ca相、及びMg17Sr相が含まれる。冷却速度が遅い徐冷凝固であればあるほど、安定相の晶出相が増加し、冷却速度が速い急冷凝固であればあるほど、準安定相の晶出相が増加する。
上記冷却過程では、各化合物相が順次晶出する。例えば、680℃以上の温度から560℃以下の温度まで0.01℃/秒〜50℃/秒の冷却速度で降温させると、AlSr相、AlSr相、及びAlCa相の多元共晶が多く生じ、組成によっては、上記多元共晶が生じた温度よりも低温領域にてMg17Al12相及びAl17Sr相の少なくとも1種が多く晶出することが挙げられる。また、680℃以上の温度から560℃以下の温度まで300℃/秒以上の冷却速度で降温させると、(Mg,Al)Sr相、(Mg,Al)Sr相、及び(Mg,Al)Ca相の多元共晶が多く生じ、組成によっては、上記多元共晶が生じた温度よりも低温領域にてMg17Al12相及びMg17Sr相の少なくとも1種が多く晶出することが挙げられる。更に、680℃以上の温度から560℃以下の温度まで50℃/秒〜300℃/秒の冷却速度で降温させると、AlSr相、AlSr相、AlCa相、(Mg,Al)Sr相、(Mg,Al)Sr相、及び(Mg,Al)Ca相から選択される2種以上の多元共晶が多く生じ、組成によっては、上記多元共晶が生じた温度よりも低温領域にてMg17Al12相、Al17Sr相、及びMg17Sr相の少なくとも1種が多く晶出することが挙げられる。なお、冷却過程では、680℃以上の温度から完全凝固するまで実質的に一様な冷却速度で冷却をしている。
≪用途≫
実施形態に係るマグネシウム合金は、各種鋳造部材の素材に好適に利用できる。
≪マグネシウム合金部材≫
実施形態に係るマグネシウム合金部材は、上記マグネシウム合金からなり、基部と、基部から突出するように基部に一体成形される板状部とを備える。実施形態に係るマグネシウム合金部材は、耐熱強度の向上に寄与する晶出物相を特定の範囲で備えるマグネシウム合金からなる点と、肉厚変動が大きい部位を備える点とを特徴の一つとする。肉厚変動が大きい部位とは、板状部と、板状部の厚さの5倍以上の長さを有する基部との境界部分である。板状部の厚さの5倍以上の長さを有する基部とは、基部における板状部の突出方向に沿った厚さが、板状部の厚さの5倍以上である。更に、基部における板状部の突出方向と交差する方向の長さが、板状部の厚さの5倍以上である。
<形状>
図2Aおよび図2Bは、基部としてボス2を備え、板状部としてリブ3を備えるマグネシウム合金部材1を模式的に示す。ボス2とリブ3とは、一体成形された一体成形物である。図2Aは、マグネシウム合金部材1の斜視図であり、図2Bは、図2Aのb−b断面図である。なお、図2Aおよび図2Bでは、分かり易いようにボス2とリブ3との境界部分に角部を有するように図示しているが、実際とは異なることがある。
ボス2は、土台4から突出して設けられる。ボス2は、マグネシウム合金部材1を他の部品に固定や連結するためにボルトやねじ用の雌ねじを形成したり、ピンなどを圧入する挿入孔などを形成したりするものであり、代表的には筒状である。
リブ3は、土台4とボス2とを繋ぐように土台4及びボス2の双方から突出して設けられる。リブ3は、ボス2を補強するものであり、板状である。リブ3は、ボス2の外周に放射状に設けられる。本例では、リブ3は、ボス2の周方向に均等に4つ設けられている。リブ3の配置位置や個数は、適宜選択できる。
<大きさ>
ボス2とリブ3とは、厚さが異なる。具体的には、ボス2は、リブ3の突出方向に沿った厚さT2が、リブ3の厚さT1の5倍以上である。一般的に、リブ3は、ボス2に対して、ボス2の表面に垂直に設けられる。よって、ボス2におけるリブ3の突出方向に沿った厚さT2は、ボス2の径方向に沿った厚さ、つまりボス2の内径と外径との差である。このようなボス2とリブ3との厚さの差が大きい一体成形物は、鋳造時にボス2とリブ3との境界部分で割れが生じ易い形状である。ボス2とリブ3との厚さの差は、大きいほど、鋳造時にボス2とリブ3との境界部分で割れが生じ易い。詳細は後述するが、実施形態のマグネシウム合金部材1は、ボス2とリブ3との厚さの差が大きくても、鋳造時に割れが生じ難い。そのため、実施形態のマグネシウム合金部材1は、ボス2におけるリブ3の突出方向に沿った厚さT2を、リブ3の厚さT1の更に6倍以上、7倍以上、8倍以上とすることができる。しかし、ボス2とリブ3との厚さの差が大き過ぎると、鋳造時に割れが生じる虞がある。そのため、ボス2におけるリブ3の突出方向に沿った厚さT2は、リブ3の厚さT1の15倍未満、13倍以下、12倍以下が好ましい。
なお、リブ3の厚さは、リブ3の突出方向に一様であってもよいし(図1)、リブ3のボス2側から先端側に向かって小さくなってもよい。リブ3の厚さがボス2側から先端側に向かって小さくなる形状としては、例えば、テーパ状や、先端側に向かって厚さが小さくなる湾曲状、段差形状、それらの組み合わせなどが挙げられる。リブ3の厚さがボス2側から先端側に向かって小さくなる場合、そのリブ3の厚さT1は、以下の(A)又は(B)とする。(A)リブ3の厚さT1は、ボス2側の最も大きい厚さとする。(B)リブ3の厚さT1は、ボス2側の最も大きい厚さと、先端側の最も小さい厚さとの平均厚さとする。
また、ボス2は、リブ3の突出方向と交差する方向の長さT3が、リブ3の厚さT1の5倍以上である。一般的に、リブ3は、ボス2に対して、ボス2の表面に垂直に設けられる。つまり、ボス2は、リブ3の突出方向と直交する方向の長さT3が、リブ3の厚さT1の5倍以上である。基部がボス2のような筒状の場合、リブ3の突出方向と交差(直交)する方向の長さT3は、ボス2の外径である。リブ3の厚さT1と、ボス2におけるリブ3の突出方向に沿った厚さT2との差が大きく、更に、リブ3の厚さT1と、ボス2におけるリブ3の突出方向と交差する方向の長さT3との差が大きい一体成形物は、鋳造時にボス2とリブ3との境界部分でより割れが生じ易い形状である。実施形態のマグネシウム合金部材1は、このような割れが生じ易い形状であっても、鋳造時に割れが生じ難い。そのため、実施形態のマグネシウム合金部材1は、ボス2におけるリブ3の突出方向と交差する方向の長さT3を、リブ3の厚さT1の更に6倍以上、7倍以上、8倍以上とすることができる。しかし、リブ3の厚さT1と、ボス2におけるリブ3の突出方向に沿った厚さT2との差が大き過ぎると、鋳造時に割れが生じる虞がある。そのため、ボス2におけるリブ3の突出方向と交差する方向の長さT3は、リブ3の厚さT1の15倍未満、13倍以下、12倍以下が好ましい。
なお、肉厚変動が大きい部位を備えるマグネシウム合金部材は、ボス2及びリブ3を備えるマグネシウム合金部材1以外に、例えば、以下の形態が挙げられる。一方が開口した容器状の本体部と、本体部の開口縁から外方に延設されるフランジと、フランジを補強するリブとを備えるマグネシウム合金部材が挙げられる。本体部は、底部と側壁部とを備える。リブは、側壁部とフランジとを繋ぐように側壁部及びフランジの双方から突出して設けられる。このマグネシウム合金部材では、側壁部又はフランジが基部、リブが板状部であり、側壁部又はフランジの厚さがリブの厚さの5倍以上である。また、一方が開口した容器状の本体部と、本体部の角部を補強するリブとを備えるマグネシウム合金部材が挙げられる。本体部は、底部と側壁部とを備える。リブは、底部と側壁部とを繋ぐように底部及び側壁部の双方から突出して設けられる。このマグネシウム合金部材では、側壁部又は底部が基部、リブが板状部であり、側壁部又は底部の厚さがリブの厚さの5倍以上である。
[試験例1]
マグネシウム合金を用いてマグネシウム合金部材を作製し、そのマグネシウム合金部材の断面観察を行うと共に、耐熱性の評価を行った。
〔試料の作製〕
原料として、純度99.9質量%の純マグネシウムの塊を50kg用意し、Ar雰囲気の溶解炉を用いて690℃で溶解し、純マグネシウムの溶湯を作製した。完全に溶解した純マグネシウムの溶湯中に、以下の1〜4の添加元素の塊を添加して、表1に示す組成のマグネシウム合金の溶湯を作製した。添加元素の添加及び溶解は、湯温を690℃に保持した状態で棒状の治具によって10分間撹拌して行った。
1.純度99.9質量%の純アルミニウム塊
2.純度99質量%のSr塊
3.純度99.5質量%のCa塊
4.アルミニウム母合金(Al−10質量%Mn)
作製した各試料のマグネシウム合金の溶湯を用いて、マグネシウム合金部材を作製した。マグネシウム合金部材の作製には、コールドチャンバーダイカストマシン(宇部興産機械株式会社製、型番UB530iS2)を用いた。鋳造過程の冷却速度を表1に併せて示す。マグネシウム合金部材の形状は、リング状とした。
〔断面観察〕
作製した各試料のマグネシウム合金部材について断面を採取し、走査型電子顕微鏡(SEM)により組織観察を行った。断面の採取は、市販のクロスセクションポリッシャ(CP)加工装置を用いて行った。CP断面について任意に観察視野を採取する。
上記SEM写真を用いて、各晶出物相の面積割合を求めた。具体的には、観察視野Sf(350μm×250μm)中に存在する各晶出物相を、A群の晶出物相とB群の晶出物相との合計、C群の晶出物相、及びMg17Al12相ごとに抽出し、各晶出物相の合計面積Smを求め、(Sm/Sf)×100%をその断面における各晶出物相の面積割合とした。本例では、観察視野数は、10個とし、その10個の観察視野での面積割合の平均を各試料における各晶出物相の面積割合(%)とした。その結果を表1に併せて示す。表1において、「A群+B群」は、A群の晶出物相とB群の晶出物相との合計の面積割合であり、「C群」は、C群の晶出物相の面積割合である。なお、A群の晶出物相は、AlSr相、AlSr相、(Mg,Al)Sr相、及び(Mg,Al)Sr相から選択される1種以上で構成される。B群の晶出物相は、AlCa相及び(Mg,Al)Ca相から選択される1種以上で構成される。C群の晶出物相は、Al17Sr相及びMg17Sr相から選択される1種以上で構成される。各晶出物相の断面積は、画像処理装置によって顕微鏡写真(SEM写真)を二値化処理した二値化像などを利用すると容易に測定できる。
〔耐熱性の評価〕
・残留軸力
作製した各試料のマグネシウム合金部材の残留軸力を測定した。具体的には、各試料のマグネシウム合金部材とアルミニウム製のブロック材とを鉄製のボルトで締結した試験部材に熱処理を施し、熱処理前後のボルトの歪量から残留軸力(%)を求めた。試験部材は、上記ブロック材の適宜な位置に各試料のマグネシウム合金部材の孔と同等径のボルト孔を設け、そのボルト孔と各試料のマグネシウム合金部材の孔とを合わせて、鉄製のボルトを締め付けることで作製した。熱処理の条件は、温度を150℃とし、保持時間を170時間とした。歪量は、ボルトに配置した市販の歪ゲージで求めた。残留軸力は、締結直後であって150℃に加熱する前のボルトの歪量をSo、150℃×170時間の熱履歴を与えた後のボルトの歪量をStとし、[(St−So)/So]×100(%)により算出した。加熱する前の歪量Soは、初期締付軸力を9Nとして締め付けた際の歪量とした。残留軸力の結果とその評価A〜Cを表1併せて示す。評価Aは残留軸力が60%以上、評価Bは残留軸力が50%以上60%未満、評価Cは残留軸力が50%未満とした。
・150℃耐力
作製した各試料のマグネシウム合金部材の150℃耐力を測定した。具体的には、各試料のマグネシウム合金部材から試験片を採取し、150℃での引張試験を実施し、0.2%耐力を測定した。0.2%耐力は、JIS Z 2241(2011)「金属材料引張試験方法」に準拠して、汎用の引張試験機を用いて測定した。150℃耐力の結果とその評価A〜Dを表1に併せて示す。評価Aは150℃耐力が140MPa以上、評価Bは150℃耐力が130MPa以上140MPa未満、評価Cは150℃耐力が120MPa以上130MPa未満、評価Dは150℃耐力が120MPa未満とした。表1に示す「−」は、引張試験における伸びが極端に低下し、0.2%耐力の測定ができなかったことを示す。
Figure 0006852186
表1に示すように、A群の晶出物相とB群の晶出物相との合計の面積割合が10%以上30%以下を満たす試料No.1−1〜試料No.1−9及び試料No.1−11〜試料No.1−19は、残留軸力が高く、150℃耐力も高いことがわかる。特に、C群の晶出物相及びMg17Al12相が存在しない、又はその面積割合が小さい試料No.1−1〜試料No.1−9及び試料No.1−11〜試料No.1−17は、150℃耐力が130MPa以上と非常に高いことがわかる。試料No.1−18は、A群の晶出物相とB群の晶出物相との合計の面積割合が18%と大きいが、C群の晶出物相の面積割合が9%と比較的高いため、耐熱強度が低くなり、150℃耐力が低下したと思われる。また、試料No.1−19は、A群の晶出物相とB群の晶出物相との合計の面積割合が15%と大きいが、Mg17Al12相の面積割合が7%と比較的高いため、耐熱強度が低くなり、150℃耐力が低下したと思われる。
一方、A群の晶出物相及びB群の晶出物相に加えて、C群の晶出物相やMg17Al12相が存在し、かつC群の晶出物相やMg17Al12相の面積割合が大きい試料No.1−101〜試料No.1−103及び試料No.1−111〜試料No.1−113は、150℃耐力が100MPa未満と非常に低いことがわかる。試料No.1−101及び試料No.1−111は、Alに対するSrの含有量が多過ぎるため、C群の晶出物相が多く晶出されたことにより、耐熱強度が低下し、150℃耐力が低下したと思われる。試料No.1−101及び試料No.111において、0.2%耐力の測定ができなかった理由は、A群の晶出物相やB群の晶出物相がラメラ状で存在するのに対して、C群の晶出物相は塊状で存在するため、伸びが極端に低下したからと考えられる。試料No.1−102及び試料No.1−112は、Caが含有されていないため、A群の晶出物相及びB群の晶出物相の面積割合が小さく、Mg17Al12相が多く晶出されたことにより、耐熱強度が低下し、150℃耐力が低下したと思われる。試料No.1−103及び試料No.1−113は、Srが含有されていないため、A群の晶出物相及びB群の晶出物相の面積割合が小さく、Mg17Al12相が多く晶出されたことにより、耐熱強度が低下し、150℃耐力が低下したと思われる。
[試験例2]
試験例2では、鋳造過程の冷却速度を徐冷(1〜50℃/秒)とし、マグネシウム合金部材を作製した。マグネシウム合金部材の作製は、金型を用いた重力鋳造で行った。試験例2では、マグネシウム合金の組成、及び鋳造過程の冷却速度が試験例1と異なり、それ以外の試験条件は試験例1と同様である。マグネシウム合金の組成を表2に示す。
作製した各試料のマグネシウム合金部材について、試験例1と同様に、そのマグネシウム合金部材の断面観察を行うと共に、耐熱性の評価を行った。試験例2では、鋳造過程の冷却速度を徐冷としているため、急冷時の非平衡凝固に比べ平衡凝固に近づく。非平衡凝固時には準安定相の晶出が増加するが、平衡凝固に近づくと、安定相の晶出が増加する。その結果、冷却速度を徐冷とすると、A群の晶出物相とB群の晶出物相との合計の面積割合が小さくなる。そのため、残留軸力及び150℃耐力の双方が、試験例1と比較して低下する。試験例2では、残留軸力の評価として、評価Aは残留軸力が50%以上、評価Bは残留軸力が40%以上50%未満、評価Cは残留軸力が40%未満とした。また、150℃耐力の評価として、評価Aは150℃耐力が60MPa以上、評価Bは150℃耐力が50MPa以上60MPa未満、評価Cは150℃耐力が30MPa以上50MPa未満、評価Dは150℃耐力が30MPa未満とした。各晶出物の面積割合、残留軸力、及び150℃耐力の結果を表2に併せて示す。
Figure 0006852186
表2に示すように、鋳造過程の冷却速度を徐冷とした場合、A群の晶出物相とB群の晶出物相との合計の面積割合が4%以上16%以下を満たす試料No.2−1〜試料No.2−10は、Mg17Al12相の面積割合が大きい試料No.2−102及び試料No.2−103に比較して、残留軸力が高く、150℃耐力も高いことがわかる。なお、試料No.2−101は、Alの含有量が少ないため、室温状態での耐力自体が低く、150℃での0.2%耐力も低くなっていると思われる。
[試験例3]
マグネシウム合金を用いてマグネシウム合金部材を作製し、そのマグネシウム合金部材の断面観察を行うと共に、耐熱性及び割れの状態を評価した。
〔試料の作製〕
原料として、試験例1と同様に、純度99.9質量%の純マグネシウムの塊を50kg用意し、Ar雰囲気の溶解炉を用いて690℃で溶解し、純マグネシウムの溶湯を作製した。完全に溶解した純マグネシウムの溶湯中に、以下の1〜4の添加元素の塊を添加して、表3及び表4に示す組成のマグネシウム合金の溶湯を作製した。添加元素の添加及び溶解は、湯温を690℃に保持した状態で棒状の治具によって10分間撹拌して行った。
1.純度99.9質量%の純アルミニウム塊
2.純度99質量%のSr塊
3.純度99.5質量%のCa塊
4.アルミニウム母合金(Al−10質量%Mn)
作製した各試料のマグネシウム合金の溶湯を用いて、マグネシウム合金部材を作製した。マグネシウム合金部材の作製には、コールドチャンバーダイカストマシン(宇部興産機械株式会社製、型番UB530iS2)を用いた。鋳造過程の冷却速度は、100〜400℃/秒とした。
本例では、耐熱性の評価を行うにあたり、試験例1と同様に、リング状のマグネシウム合金部材を作製した。また、本例では、割れの評価を行うにあたり、ボスと、ボスから突出するリブとを備えるマグネシウム合金部材を作製した(図2Aおよび図2Bを参照)。ボスにおけるリブの突出方向に沿った厚さをT2(mm)、ボスにおけるリブの突出方向と直交する方向の長さをT3(mm)、及びリブの厚さをT1(mm)とするとき、各試料のマグネシウム合金部材におけるT1、T2、及びT3の値を以下とした。試料No.3−1−1〜試料No.3−1−7は、T1を5mm、T2を10mm、T3を35mmとした。試料No.3−2−1〜試料No.3−2−7は、T1を4mm、T2を12mm、T3を34mmとした。試料No.3−3−1〜試料No.3−3−7は、T1を4mm、T2を16mm、T3を42mmとした。試料No.3−4−1〜試料No.3−4−7は、T1を3mm、T2を15mm、T3を40mmとした。試料No.3−5−1〜試料No.3−5−7は、T1を3mm、T2を21mm、T3を52mmとした。試料No.3−6−1〜試料No.3−6−7は、T1を2mm、T2を20mm、T3を50mmとした。試料No.3−7−1〜試料No.3−7−7は、T1を2mm、T2を30mm、T3を70mmとした。表3及び表4に示す「肉厚比」は、上記T2/T1の値である。
〔断面観察〕
試験例1と同様にして、作製した各試料のマグネシウム合金部材について断面を採取し、走査型電子顕微鏡(SEM)により組織観察を行った。断面の採取は、市販のクロスセクションポリッシャ(CP)加工装置を用いて行った。CP断面について任意に観察視野を採取する。
上記SEM写真を用いて、各晶出物相の面積割合を求めた。具体的には、観察視野Sf(350μm×250μm)中に存在する各晶出物相を、A群の晶出物相とB群の晶出物相との合計、C群の晶出物相、及びMg17Al12相ごとに抽出し、各晶出物相の合計面積Smを求め、(Sm/Sf)×100%をその断面における各晶出物相の面積割合とした。本例では、観察視野数は、10個とし、その10個の観察視野での面積割合の平均を各試料における各晶出物相の面積割合(%)とした。その結果を表3及び表4に併せて示す。表3及び表4において、「A群+B群」は、A群の晶出物相とB群の晶出物相との合計の面積割合であり、「C群」は、C群の晶出物相の面積割合である。なお、A群の晶出物相は、AlSr相、AlSr相、(Mg,Al)Sr相、及び(Mg,Al)Sr相から選択される1種以上で構成される。B群の晶出物相は、AlCa相及び(Mg,Al)Ca相から選択される1種以上で構成される。C群の晶出物相は、Al17Sr相及びMg17Sr相から選択される1種以上で構成される。各晶出物相の断面積は、画像処理装置によって顕微鏡写真(SEM写真)を二値化処理した二値化像などを利用すると容易に測定できる。
〔耐熱性の評価〕
・残留軸力
試験例1と同様にして、作製した各試料のマグネシウム合金部材の残留軸力を測定した。具体的には、各試料のマグネシウム合金部材とアルミニウム製のブロック材とを鉄製のボルトで締結した試験部材に熱処理を施し、熱処理前後のボルトの歪量から残留軸力(%)を求めた。試験部材は、上記ブロック材の適宜な位置に各試料のマグネシウム合金部材の孔と同等径のボルト孔を設け、そのボルト孔と各試料のマグネシウム合金部材の孔とを合わせて、鉄製のボルトを締め付けることで作製した。熱処理の条件は、温度を150℃とし、保持時間を170時間とした。歪量は、ボルトに配置した市販の歪ゲージで求めた。残留軸力は、締結直後であって150℃に加熱する前のボルトの歪量をSo、150℃×170時間の熱履歴を与えた後のボルトの歪量をStとし、[(St−So)/So]×100(%)により算出した。加熱する前の歪量Soは、初期締付軸力を9Nとして締め付けた際の歪量とした。残留軸力の結果とその評価A〜Cを表3及び表4に併せて示す。評価Aは残留軸力が60%以上、評価Bは残留軸力が50%以上60%未満、評価Cは残留軸力が50%未満とした。
〔割れの評価〕
作製した各試料のマグネシウム合金部材の割れの状態を評価した。本例では、作製した各試料について10個のマグネシウム合金部材を用意し、目視確認によって各マグネシウム合金部材の割れ個数を調べた。そして、各マグネシウム合金部材の割れ個数の合計数をマグネシウム合金部材の個数(10個)で除した値を、10個のマグネシウム合金部材における割れ個数の平均として算出し、各試料の割れ個数(個)とした。割れ個数の結果とその評価A〜Cを表3及び表4に併せて示す。評価Aは割れ個数が0個、評価Bは割れ個数が0個超1個未満、評価Cは割れ個数が1個以上とした。
〔総合評価〕
残留軸力の評価及び割れの評価の総合評価を表3及び表4に示す。総合評価Aは、残留軸力及び割れの双方の評価がAの場合であり、総合評価Bは、残留軸力及び割れの少なくとも一方の評価がBの場合であり、総合評価Cは、残留軸力及び割れの少なくとも一方の評価がCの場合とした。
Figure 0006852186
Figure 0006852186
まず、割れの評価については、表3及び表4に示すように、肉厚比が大きくなるにつれて、割れが生じ易くなっていることがわかる。例えば、肉厚比が2の場合及び肉厚比が3の場合、試料No.3−1−7及び試料No.3−2−7を除いた全ての試料で割れ個数が0個であったのに対し、肉厚比が10の場合、試料No.3−6−1〜試料No.3−6−4では割れ個数が0個超1個未満、試料No.3−6−5〜試料3−6−7では割れ個数が1個以上となり、肉厚比が15の場合、全ての試料で割れ個数が1個以上となっている。
また、表3及び表4に示すように、肉厚比が大きくなっても、A群の晶出物相とB群の晶出物相との合計の面積割合が2.5%以上30%以下を満たす試料は、割れが生じ難いことがわかる。具体的には、肉厚比が4の場合及び肉厚比が5の場合、試料No.3−3−1〜試料3−3−5及び試料No.3−4−1〜試料3−4−5では割れ個数が0個であり、試料No.3−3−6及び試料No.3−4−6では割れ個数が0個超1個未満であった。肉厚比が7の場合、試料No.3−5−2及び試料No.3−5−4では割れ個数が0個であり、試料No.3−5−1、試料No.3−5−3、及び試料No.3−5−5では割れ個数が0個超1個未満であった。肉厚比が10の場合、試料No.3−6−1〜試料No.3−6−4では割れ個数が0個超1個未満であった。
更に、表3及び表4に示すように、肉厚比が7以上とより肉厚変動が大きくなる場合、A群の晶出物相とB群の晶出物相との合計の面積割合が2.5%以上30%以下を満たし、かつC群の晶出物相及びMg17Al12相が少ない試料は、肉厚比が15未満であれば、割れが確実に生じ難いことがわかる。具体的には、肉厚比が10と大きい場合でも、試料No.3−6−1〜試料No.3−6−4では割れ個数が0個超1個未満であった。
次に、残留軸力の評価については、表3及び表4に示すように、A群の晶出物相とB群の晶出物相との合計の面積割合が2.5%以上30%以下を満たし、かつC群の晶出物相及びMg17Al12相が比較的少ない試料は、残留軸力が比較的高いことがわかる。例えば、試料No.3−1−1〜試料No.3−1−4、試料No.3−2−1〜試料No.3−2−4、試料No.3−3−1〜試料No.3−3−4、試料No.3−4−1〜試料No.3−4−4、試料No.3−5−1〜試料No.3−5−4、試料No.3−6−1〜試料No.3−6−4、及び試料No.3−7−1〜試料No.3−7−4は、残留軸力が50%以上であった。
以上より、耐熱強度の向上に寄与する晶出物相として、A群の晶出物相とB群の晶出物相とを特定の範囲で備えることで、一体成形された肉厚変動が大きい部位を備える複雑形状であっても、鋳造時に割れが生じ難いことがわかる。特に、A群の晶出物相とB群の晶出物相とを特定の範囲で備え、かつ耐熱強度を低下させる晶出物相であるC群の晶出物相やAl17Mg12相が比較的少ないことで、より肉厚変動が大きい複雑形状であっても、鋳造時に割れが確実に生じ難いことがわかる。また、A群の晶出物相とB群の晶出物相とを特定の範囲で備え、かつ耐熱強度を低下させる晶出物相であるC群の晶出物相やAl17Mg12相が比較的少ないことで、残留軸力の低下を抑制できることがわかる。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施の形態および実施例ではなく請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
1 マグネシウム合金部材、 2 ボス(基部)、 3 リブ(板状部)、 4 土台、T1,T2 厚さ、T3 長さ。

Claims (10)

  1. Al、Sr、Ca及びMnを含有し、残部がMg及び不可避不純物であるマグネシウム合金であって、
    Alの含有量が6.5質量%以上13.1質量%以下であり、
    Srの含有量が1.6質量%以上3.9質量%以下であり、
    Caの含有量が0.3質量%以上2.4質量%以下であり、
    α−Mg相と、前記α−Mg相の粒界及びセル境界の少なくとも一方に分散する晶出物相とを有する組織を備え、
    前記晶出物相は、
    AlSr相、AlSr相、(Mg,Al)Sr相、及び(Mg,Al)Sr相からなるA群から選択される1種以上と、
    AlCa相及び(Mg,Al)Ca相からなるB群から選択される1種以上とを備え、
    断面における前記A群の晶出物相と前記B群の晶出物相との合計の面積割合が2.5%以上30%以下であるマグネシウム合金。
  2. 断面における前記A群の晶出物相と前記B群の晶出物相との合計の面積割合が10%以上30%以下である請求項1に記載のマグネシウム合金。
  3. 更に、前記晶出物相は、Al17Sr相及びMg17Sr相からなるC群から選択される1種以上を備え、
    断面における前記C群の晶出物相の面積割合が15%以下である請求項1又は請求項2に記載のマグネシウム合金。
  4. 断面における前記A群の晶出物相と前記B群の晶出物相との合計の面積割合が10%以上25%以下である請求項に記載のマグネシウム合金。
  5. 更に、前記晶出物相は、Mg17Al12相を備え、
    断面における前記Mg17Al12相の面積割合が10%以下である請求項1から請求項のいずれか1項に記載のマグネシウム合金。
  6. 更に、前記晶出物相は、
    Al17Sr相及びMg17Sr相からなるC群から選択される1種以上と、
    Mg17Al12相とを備え、
    断面における前記A群の晶出物相と前記B群の晶出物相との合計の面積割合が15%以上25%以下、
    前記C群の晶出物相の面積割合が7%以下、
    及び前記Mg17Al12相の面積割合が5%以下である請求項1に記載のマグネシウム合金。
  7. 請求項1に記載のマグネシウム合金からなり、基部と、前記基部から突出するように前記基部に一体成形される板状部とを備えるマグネシウム合金部材であって、
    前記基部は、前記板状部の突出方向に沿った厚さが、前記板状部の厚さの5倍以上15倍未満であるマグネシウム合金部材。
  8. 前記基部は、前記板状部の突出方向と交差する方向の長さが、前記板状部の厚さの5倍以上である請求項に記載のマグネシウム合金部材。
  9. 更に、前記晶出物相は、Al17Sr相及びMg17Sr相からなるC群から選択される1種以上を備え、
    断面における前記C群の晶出物相の面積割合が10%以下である請求項又は請求項に記載のマグネシウム合金部材。
  10. 更に、前記晶出物相は、Mg17Al12相を備え、
    断面における前記Mg17Al12相の面積割合が5%以下である請求項から請求項のいずれか1項に記載のマグネシウム合金部材。
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