JP6851762B2 - 光学材料用ポリチオール化合物の製造方法 - Google Patents

光学材料用ポリチオール化合物の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、光学材料用ポリチオール化合物の製造方法に関する。
プラスチックレンズは、無機レンズに比べて軽量で割れ難く、染色が可能であるという利点を有する。このため、現在、眼鏡レンズやカメラレンズ等の光学材料用途ではプラスチックレンズが主流となっている。
プラスチックレンズに求められる特性としては、無色透明で高屈折率低分散であり、かつ、衝撃性、染色性、加工性等に優れることが挙げられる。これらの要求を満足する樹脂として、ポリウレタン系樹脂の中で最も代表的な樹脂であるポリチオール化合物とポリイソ(チオ)シアナート化合物とを反応させて得られる樹脂が知られている。
その樹脂の原料となるポリチオール化合物は、各種の方法で製造することができ、例えば、特許文献1には、2−メルカプトエタノールと、エピハロヒドリン化合物とを反応させて、ポリアルコールを経由して、ポリチオール化合物を製造する方法において、2−メルカプトエタノール中に含まれるビス(2−ヒドロキシエチル)ジスルフィドの含有量が、0.5重量%以下である、光学材料用ポリチオール化合物の製造方法が記載されている。
国際公開WO2007/129449号
しかしながら、従来の2−メルカプトエタノールと、エピハロヒドリン化合物との反応を経由する方法にて製造されるポリチオール化合物が着色する問題や、この(ポリ)チオール化合物を用いて得られるポリ(チオ)ウレタン樹脂が、着色する問題が発生する場合があった。
本発明の一実施例は、着色が抑制されたポリチオール化合物の製造方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、鋭意検討の結果、原料である2−メルカプトエタノール中に、原料合成の段階で混入し得る、ビスメルカプトエチルスルフィド、ビスメルカプトエチルトリスルフィド、ビスメルカプトエチルテトラスルフィド、3,9−ジオキサ−6−チア−1,11−ジヒドロキシウンデカン、3−オキサ−6−チア−1,8−ジヒドロキシオクタン、エチレングリコールのいずれかの不純物が多く含まれると、上述の着色の原因となることを見出した。
すなわち本発明は、エピクロロヒドリンと2−メルカプトエタノールとを反応させる段階を含むポリチオール化合物の製造方法であって、2−メルカプトエタノールはビスメルカプトエチルスルフィド、ビスメルカプトエチルトリスルフィド、ビスメルカプトエチルテトラスルフィド、3,9−ジオキサ−6−チア−1,11−ジヒドロキシウンデカン、3−オキサ−6−チア−1,8−ジヒドロキシオクタン、及びエチレングリコールから構成される不純物の総含有量が0.5質量%以下である、光学材料用ポリチオール化合物の製造方法に関する。
上述した一実施例によれば、着色が抑制されたポリチオール化合物の製造方法を提供するこができる。
[ポリチオール化合物の製造方法]
本発明の一実施例に係るポリチオール化合物の原料となる2−メルカプトエタノールは、ビスメルカプトエチルスルフィド、ビスメルカプトエチルトリスルフィド、ビスメルカプトエチルテトラスルフィド、3,9−ジオキサ−6−チア−1,11−ジヒドロキシウンデカン、3−オキサ−6−チア−1,8−ジヒドロキシオクタン、及びエチレングリコールから構成される不純物(以下、「特定の不純物」ともいう)の総含有量が、0.5質量%以下である。
2−メルカプトエタノール中の特定の不純物の総含有量は、得られるポリチオール化合物の着色を抑制する観点から、好ましくは0.45質量%以下、より好ましくは0.35質量%以下、更に好ましくは0.30質量%以下である。2−メルカプトエタノール中の特定の不純物の総含有量は、例えば、好ましくは0.01質量%以上である。
特定の不純物の総含有量が0.5質量%以下であれば、着色の少ないポリチオール化合物及びポリウレタン系樹脂を得ることができる。特定の不純物の含有量は、例えば、高速液体クロマトグラフィーによって測定することができる。
2−メルカプトエタノール中には合成時に混入した水分の影響によりエチレングリコールが生成する場合がある。このエチレングリコールが2−メルカプトエタノールと反応して3−オキサ−6−チア−1,8−ジヒドロキシオクタン等の特定の不純物が生成する場合がある。そこで、2−メルカプトエタノールは空気を遮断した窒素やアルゴンなど不活性ガスの雰囲気下で、金属分を含まない容器にて、30℃以下にて反応に用いる直前まで保管しておくことが好ましい。あるいは、蒸留、カラムクロマトグラフィー等の手段により2−メルカプトエタノールを分離精製して、3−オキサ−6−チア−1,8−ジヒドロキシオクタン等の特定の不純物の含有量を低減させてもよい。
本発明の光学材料用ポリチオール化合物の製造方法は、エピクロロヒドリンと2−メルカプトエタノールとを反応させる段階を含む。
光学材料用ポリチオール化合物の製造方法は、特に限定されないが、例えば、以下の工程A〜工程Eを備える。
〔工程A〕
工程Aでは、2−メルカプトエタノールとエピクロロヒドリンをアミン触媒の存在下に反応させ、式(1):
Figure 0006851762

で表される化合物を得る。
2−メルカプトエタノールとエピクロロヒドリンとのモル比は、好ましくは60/40〜40/60、より好ましくは55/45〜45/55である。
アミン触媒としては、例えば、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミンなどが挙げられる。
アミン触媒の配合量は、2−メルカプトエタノールとエピクロロヒドリンの合計100質量部に対して、好ましくは0.1〜10質量部、より好ましくは0.3〜7質量部、更に好ましくは0.5〜5質量部である。
工程Aにおいて、反応温度は、好ましくは0〜60℃、より好ましくは10〜55℃、更に好ましくは20〜50℃である。
工程Aにおいて反応時間は、例えば、30分〜2時間である。
〔工程B〕
工程Bでは、工程Aで得られた化合物を硫化ナトリウムと反応させることにより、式(2):
Figure 0006851762

で表される化合物を得る。
硫化ナトリウムの使用量は、工程Aで得られた化合物100モル%に対して、好ましくは30.0モル%以上、より好ましくは40.0モル%以上、より好ましくは45.0モル%以上であり、好ましくは55.0モル%以下、より好ましくは53.0モル%以下、更に好ましくは52.0モル%以下である。
硫化ナトリウムは水溶液として添加されることが好ましく、その場合、硫化ナトリウム水溶液の濃度は、好ましくは40〜80質量%、より好ましくは45〜70質量%、更に好ましくは50〜60質量%である。
工程Bにおいて、反応温度は、好ましくは0〜60℃、より好ましくは10〜55℃、更に好ましくは20〜50℃である。
工程Bにおいて反応時間は、例えば、30分〜2時間程度である。
〔工程C〕
工程Cでは、工程Bで得られた化合物を鉱酸の存在下にチオ尿素と反応させ、イソチウロニウム塩を得る。
鉱酸としては、例えば、塩酸、硝酸、硫酸等が挙げられる。
鉱酸は水溶液として添加されることが好ましく、その場合、鉱酸水溶液の濃度は、好ましくは10〜50質量%、より好ましくは20〜45質量%、更に好ましくは30〜40質量%である。
鉱酸の配合量は、工程Aの2−メルカプトエタノールとエピクロロヒドリンの配合量の合計100モル%に対して、好ましくは100〜500モル%、より好ましくは130〜400モル%、更に好ましくは200〜450モル%である。
工程Cにおいて、反応温度は、好ましくは80〜130℃、より好ましくは90〜120℃、更に好ましくは100〜115℃である。
工程Cにおいて反応時間は、例えば、5〜15時間程度である。
〔工程D〕
工程Dでは、工程Cで得られたイソチウロニウム塩を塩基性物質で加水分解し、化合物1−1、化合物1−2及び化合物1−3の混合物を得る。
Figure 0006851762
塩基性物質は、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられ、好ましくは水酸化ナトリウムである。
塩基性物質は水溶液として添加されることが好ましく、その場合、塩基性物質水溶液の濃度は、好ましくは10〜50質量%、より好ましくは20〜45質量%、更に好ましくは25〜45質量%である。
工程Dにおいて、反応温度は、好ましくは40〜100℃、より好ましくは50〜90℃、更に好ましくは55〜80℃である。
工程Dにおいて反応時間は、例えば、1〜8時間程度である。
〔工程E〕
工程Eでは、工程Dで得られた混合物を鉱酸及び水で洗浄し、混合物を精製する。
鉱酸の好適例は、工程Cで例示したものと同様である。
水での洗浄は常法により行われる。なお、必要に応じて、洗浄又は先の工程で使用した有機溶媒を除去してもよい。
工程Eで得られた混合物は、目的のチオール化合物であり、当該チオール化合物とポリイソ(チオ)シアネート化合物とを重合反応させることでウレタン樹脂を合成することができる。
[プラスチックレンズの製造方法]
プラスチックレンズの製造方法は、ポリチオール化合物と、ポリイソ(チオ)シアネート化合物とを混合し重合組成物を重合してプラスチックレンズを得る工程を含む。
<ポリイソ(チオ)シアネート化合物>
ポリイソ(チオ)シアネート化合物とは、ポリイソシアネート化合物及びポリイソチオシアネート化合物から選ばれる少なくとも1種を意味する。ポリイソ(チオ)シアネート化合物は、好ましくはポリイソシアネート化合物である。
ポリイソ(チオ)シアネート化合物としては、例えば、芳香環を1個以上有するポリイソ(チオ)シアネート化合物、脂環式ポリイソ(チオ)シアネート化合物、直鎖又は分岐鎖の脂肪族ポリイソ(チオ)シアネート化合物が挙げられる。
芳香環を1個以上有するポリイソ(チオ)シアネート化合物としては、例えば、ジイソシアナトベンゼン、2,4−ジイソシアナトトルエン、エチルフェニレンジイソシアネート、イソプロピルフェニレンジイソシアネート、ジメチルフェニレンジイソシアネート、ジエチルフェニレンジイソシアネート、ジイソプロピルフェニレンジイソシアネート、トリメチルベンゼントリイソシアネート、ベンゼントリイソシアネート、ビフェニルジイソシアネート、トルイジンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(フェニルイソシアネート)、4,4’−メチレンビス(2−メチルフェニルイソシアネート)、ビベンジル−4,4’−ジイソシアネート、ビス(イソシアナトフェニル)エチレン、キシリレンジイソシアネート、ビス(イソシアナトエチル)ベンゼン、ビス(イソシアナトプロピル)ベンゼン、α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ビス(イソシアナトブチル)ベンゼン、ビス(イソシアナトメチル)ナフタリン、ビス(イソシアナトメチルフェニル)エーテル、2−イソシアナトフェニル−4−イソシアナトフェニルスルフィド、ビス(4−イソシアナトフェニル)スルフィド、ビス(4−イソシアナトメチルフェニル)スルフィド、ビス(4−イソシアナトフェニル)ジスルフィド、ビス(2−メチル−5−イソシアナトフェニル)ジスルフィド、ビス(3−メチル−5−イソシアナトフェニル)ジスルフィド、ビス(3−メチル−6−イソシアナトフェニル)ジスルフィド、ビス(4−メチル−5−イソシアナトフェニル)ジスルフィド、ビス(3−メトキシ−4−イソシアナトフェニル)ジスルフィド、ビス(4−メトキシ−3−イソシアナトフェニル)ジスルフィド、ジイソチオシアナトベンゼン、2,4−ジイソチオシアナトトルエン、2,5−ジイソチオシアナト−m−キシレン、4,4’−メチレンビス(フェニルイソチオシアネート)、4,4’−メチレンビス(2−メチルフェニルイソチオシアネート)、4,4’−メチレンビス(3−メチルフェニルイソチオシアネート)、4,4’−ジイソチオシアナトベンゾフェノン、4,4’−ジイソチオシアナト−3,3’−ジメチルベンゾフェノン、ビス(4−イソチオシアナトフェニル)エーテル等が挙げられる。
脂環式ポリイソ(チオ)シアネート化合物としては、ジイソシアナトシクロヘキサン、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ビス(イソシアナトシクロヘキシル)メタン、ビス(イソシアナトメチル)ビシクロヘプタン、2,5−ジイソシアナト−1,4−ジチアン、2,5−ビス(イソシアナトメチル)−1,4−ジチアン、4,5−ジイソシアナト−1,3−ジチオラン、4,5−ビス(イソシアナトメチル)−1,3−ジチオラン、4,5−ビス(イソシアナトメチル)−2−メチル−1,3−ジチオラン等が挙げられる。
直鎖又は分岐の脂肪族ポリイソ(チオ)シアネート化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2−ジメチルペンタンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサンジイソシアネート、ブテンジイソシアネート、1,3−ブタジエン−1,4−ジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,6,11−ウンデカントリイソシアネート、1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアネート、1,8−ジイソシアネート−4−イソシアナトメチルオクタン、ビス(イソシアナトエチル)カーボネート、ビス(イソシアナトエチル)エーテル、リジンジイソシアナトメチルエステル、リジントリイソシアネート、ビス(イソシアナトメチル)スルフィド、ビス(イソシアナトエチル)スルフィド、ビス(イソシアナトプロピル)スルフィド、ビス(イソシアナトヘキシル)スルフィド、ビス(イソシアナトメチル)スルホン、ビス(イソシアナトメチル)ジスルフィド、ビス(イソシアナトエチル)ジスルフィド、ビス(イソシアナトプロピル)ジスルフィド、ビス(イソシアナトメチルチオ)メタン、ビス(イソシアナトエチルチオ)メタン、ビス(イソシアナトメチルチオ)エタン、ビス(イソシアナトエチルチオ)エタン、1,5−ジイソシアネート−2−イソシアナトメチル−3−ペンタン、1,2,3−トリス(イソシアナトメチルチオ)プロパン、1,2,3−トリス(イソシアナトエチルチオ)プロパン、3,5−ジチア−1,2,6,7−ヘプタンテトライソシアネート、2,6−ジイソシアナトメチル−3,5−ジチア−1,7−ヘプタンジイソシネート、2,5−ジイソシアネートメチルチオフェン、4−イソシアナトエチルチオ−2,6−ジチア−1,8−オクタンジイソシアネート、1,2−ジイソチオシアナトエタン、1,6−ジイソチオシアナトヘキサンが挙げられる。
ポリイソ(チオ)シアネート化合物は、1種又は2種以上を使用してもよい。
ポリイソ(チオ)シアネート化合物は、耐熱性を向上させるため、好ましくは、キシリレンジイソシアネート、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ビス(イソシアナトシクロヘキシル)メタン、及びビス(イソシアナトメチル)ビシクロヘプタンから選ばれる少なくとも1種である。
ポリイソ(チオ)シアネート化合物とポリチオール混合物との配合割合は、イソ(チオ)シアネート基/メルカプト基のモル比が、通常0.5〜2.0であり、好ましくは0.95〜1.05である。
プラスチックレンズを得る工程においては、ポリイソ(チオ)シアネート化合物とポリチオール混合物の他、ジメチル錫ジクロライドなどの有機錫等の重合触媒、ブトキシエチルアシッドホスフェート等の離型剤、抗酸化剤、紫外線安定化剤、着色防止剤、ブルーイング剤、蛍光増白剤等の各種添加剤を配合してもよい。上記各種成分を通常の方法により混合することで、重合組成物が得られる。
プラスチックレンズが眼鏡レンズである場合、重合は、注型重合法であることが好ましい。眼鏡レンズは、例えば、重合組成物を、ガラス又は金属製のモールドと、テープ又はガスケットとを組み合わせたモールド型に注入して重合を行うことで得られる。
重合条件は、重合組成物に応じて、適宜設定することができる。
重合開始温度は、通常0〜50℃、好ましくは20〜40℃である。重合開始温度から昇温し、その後、加熱して硬化形成することが好ましい。例えば、昇温温度は、通常110〜130℃である。
重合終了後、眼鏡レンズを離型して、アニール処理を行ってもよい。アニール処理の温度は、好ましくは100〜150℃である。
[プラスチックレンズ]
プラスチックレンズとしては、眼鏡レンズが挙げられる。
眼鏡レンズの表面形状は特に限定されず、平面、凸面、凹面等のいずれであってもよい。
眼鏡レンズは、単焦点レンズ、多焦点レンズ、累進屈折力レンズ等のいずれであってもよい。例えば、一例として、累進屈折力レンズについては、通常、近用部領域(近用部)及び累進部領域(中間領域)が、下方領域に含まれ、遠用部領域(遠用部)が上方領域に含まれる。
眼鏡レンズは、フィニッシュ型眼鏡レンズであってもセミフィニッシュ型眼鏡レンズであってもよい。
眼鏡レンズの厚さ及び直径は、特に限定されるものではないが、厚さは通常1〜30mm程度、直径は通常50〜100mm程度である。
眼鏡レンズの屈折率neは、好ましくは1.53以上、より好ましくは1.55以上、より好ましくは1.58以上、更に好ましくは1.60以上、更に好ましくは1.67以上であり、好ましくは1.80以下、より好ましくは1.70以下である。
本発明は、上記各成分の例、含有量、各種物性については、発明の詳細な説明に例示又は好ましい範囲として記載された事項を任意に組み合わせてもよい。
また、実施例に記載した組成に対し、発明の詳細な説明に記載した組成に調整を行えば、クレームした組成範囲全域にわたって実施例と同様に発明を実施することができる。
以下、具体的な実施例を示すが、本特許請求の範囲は、以下の実施例によって限定されるものではない。
ポリチオール化合物のb値、プラスチックレンズのYI値(黄色度)は以下の方法で評価した。
〔b値〕
分光光度計「U−3500」(株式会社日立製作所製)を用いて光路長10mmで測定を行った。
〔YI値〕
分光透過率測定器「DOT−3」(株式会社村上色彩技術研究所製)を用いて測定を行った。測定には0.00D、肉厚1.8mmのプラスチックレンズを使用した。
実施例1(ビスメルカプトメチル−3,6,9−トリチア−ウンデカンジチオールを主成分とするポリチオール化合物の合成)
2−メルカプトエタノール78.1g(1.0モル)とトリエチルアミン2.0gの混合液にエピクロロヒドリン92.5g(1.0モル)を内温35〜40℃に保ちながら1時間かけて滴下し、40℃で1時間熟成を行った。使用した2−メルカプトエタノールは、ビスメルカプトエチルスルフィド、ビスメルカプトエチルトリスルフィド、ビスメルカプトエチルテトラスルフィド、3,9−ジオキサ−6−チア−1,11−ジヒドロキシウンデカン、3−オキサ−6−チア−1,8−ジヒドロキシオクタン、及びエチレングリコールから構成される不純物(以下、「特定の不純物」という)の総含有量が0.1質量%である純度99.9質量%のものであった。
次に上記の反応液にあらかじめ硫化ナトリウム9水和物125.0g(0.5モル)を純水100gに溶解した水溶液を内温40〜45℃に保ちながら1時間かけて滴下し、さらに45℃で1時間熟成を行った。
さらに上記反応液にチオ尿素190.3g(2.5モル)と36質量%塩酸303.8g(3.0モル)を加えて110℃で9時間加熱撹拌した。室温まで冷却後、トルエン400mlを加え、30質量%水酸化ナトリウム水溶液600.4g(4.5モル)を徐々に加え60℃で4時間加水分解を行った。
得られた有機層を36質量%塩酸100ml、水100mlで2回、順次洗浄後、ロータリーエバポレーターにて、トルエンを留去し、目的とするポリチオール化合物168.0gを得た。
(プラスチックレンズの作製)
キシリレンジイソシアナート50.6質量部、硬化触媒としてジメチルスズジクロライド0.01質量部、離型剤として酸性リン酸エステル「JP−506H」(城北化学工業株式会社製)0.20質量部、紫外線吸収剤「シーソーブ701」(シプロ化成株式会社製)0.5質量部を混合、溶解させた。
さらに、上記で得られたポリチオール化合物49.4質量部を添加混合し、混合均一液とした。
この混合均一液を200Paにて1時間脱泡を行った後、5.0μmPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)フィルターにて濾過を行った。次いで直径75mm、−4.00Dおよび0.00Dのガラスモールドとテープからなるレンズ用モールド型へ注入した。このモールド型を電気炉へ投入し、15℃から120℃まで20時間かけて徐々に昇温し、2時間保持した。重合終了後、電気炉からモールド型を取り出し、離型してレンズを得た。得られたレンズをさらに120℃で3時間アニールを行った。
実施例2−3、比較例1−3
実施例1と同様に特定の不純物の総含有量の異なった2−メルカプトエタノールを用いて、ポリチオール化合物の合成およびそのポリチオール化合物を用いたプラスチックレンズの作製を行った。結果を表にまとめた。
Figure 0006851762
最後に、本発明の実施の形態を総括する。
本発明の一実施の形態は、エピクロロヒドリンと2−メルカプトエタノールとを反応させる段階を含むポリチオールの製造方法であって、2−メルカプトエタノールはビスメルカプトエチルスルフィド、ビスメルカプトエチルトリスルフィド、ビスメルカプトエチルテトラスルフィド、3,9−ジオキサ−6−チア−1,11−ジヒドロキシウンデカン、3−オキサ−6−チア−1,8−ジヒドロキシオクタン、及びエチレングリコールから構成される不純物の総含有量が0.5質量%以下である、光学材料用ポリチオール化合物の製造方法である。
上述した一実施例によれば、着色が抑制されたポリチオール化合物の製造方法を提供することができる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。

Claims (1)

  1. エピクロロヒドリンと2−メルカプトエタノールとを反応させる段階を含む、下記化合物1−1、化合物1−2及び化合物1−3の混合物であるポリチオール化合物の製造方法であって、前記2−メルカプトエタノールはビスメルカプトエチルスルフィド、ビスメルカプトエチルトリスルフィド、ビスメルカプトエチルテトラスルフィド、3,9−ジオキサ−6−チア−1,11−ジヒドロキシウンデカン、3−オキサ−6−チア−1,8−ジヒドロキシオクタン、及びエチレングリコールから構成される不純物の総含有量が0.5質量%以下であり、光路長10mmで測定した前記ポリチオール化合物のb 値が1.1以上である、光学材料用ポリチオール化合物の製造方法。
    Figure 0006851762
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