JP6851511B2 - 光学薄膜、光学素子および光学系 - Google Patents

光学薄膜、光学素子および光学系 Download PDF

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Description

本開示は、反射防止膜または透明導電膜等の光学薄膜、光学薄膜を備えた光学素子およびその光学素子を備えた光学系に関する。
従来、ガラスおよびプラスチックなどの透光性部材を用いたレンズなどの透明基材においては、表面反射による透過光の損失を低減するために光入射面に反射防止膜が設けられている。
可視光に対し、非常に低い反射率を示す反射防止膜として、可視光の波長よりも短いピッチの微細凹凸構造や多数の孔が形成されてなるポーラス構造を最上層に備えた構成が知られている。微細凹凸構造やポーラス構造などの構造層を低屈折率層として最上層に有する反射防止膜を用いれば可視光域の広い波長帯域において非常に低い反射率を得ることができる(特開2015−94878号公報、特開2015−4919号公報、国際公開2016−031133号(以下において、それぞれ特許文献1、2、3という。)等)。
一方、表面に構造層を備えていない反射防止膜として、誘電体膜の積層体中に銀(Ag)を含有する金属層を含む反射防止膜が特開2006−184849号公報(以下において、特許文献4という。)、特開平08−054507号公報(以下において、特許文献5という。)、特開2003−255105号公報(以下において、特許文献6という。)等に提案されている。
特許文献4には、透明基材上に高屈折率透明薄膜層と金属薄膜層とが交互に設けられてなる導電性反射防止層が開示されている。また、特許文献4には金属薄膜層の上下層に、腐食から保護するための層として保護層を備えてもよい旨開示されている。保護層としては、亜鉛、シリコン、ニッケル、クロム、金、白金…などの金属、これらの合金、これらの金属の酸化物、弗化物、硫化物および窒化物が挙げられている。
特許文献5には、前被覆層と後被覆層との間にはさまれ、保護窒化珪素層により引掻きから保護された薄い金属層を備えた反射防止膜が開示されている。そして、被覆層としては、ニッケル、クロム、ロジウム、白金、タングステン、モリブデンおよびタンタル、ニッケルとクロムの合金等が挙げられている。
特許文献6には、基材上に金属薄膜層と金属酸化物薄膜層とが積層されてなる反射防止膜が開示されており、金属薄膜層の安定化のために、基板と金属薄膜層との間に下地層を設け、金属薄膜層と金属酸化物薄膜層との間に中間層を設けることが開示されている。この下地層、および中間層としてはシリコン、チタンなどの金属薄膜層が挙げられている。
しかしながら、金属薄膜層として、銀を主成分とする層を形成しようとした場合において、特許文献4〜6に記載のように、金属薄膜層の上下層に保護層もしくは被覆層等として銀以外の金属の層が設けられると、その金属による着色により、光学薄膜の透明性が低下するという問題がある。また、特許文献4のように酸化物や窒化物を設ける場合は、その上に極薄い、例えば、10nm以下のような銀膜を平坦な膜状に形成するのは非常に難しい。銀の凝集が生じて粒状化するためである。このように、高い透明性と高い平坦性を有する超薄膜の銀膜を含む光学薄膜を得るのは非常に難しかった。
なお、薄膜化して透明性を向上させた銀を主成分とする層を有する光学薄膜は、上述のような反射防止膜として利用に限るものではなく、透明導電膜などへの適用も考えられ、高いニーズがある。
本開示は、上記事情に鑑みてなされたものであって、平坦性の高い金属薄膜層を備え、かつ光透過率が高い光学薄膜を提供することを目的とする。また、本開示はその光学薄膜を備えた光学素子および光学系を提供することを目的とする。
本開示の光学薄膜は、基材上に設けられる光学薄膜であって、
基材側から、中間層、銀を含有する銀含有金属層、および誘電体層を順に備え、
銀含有金属層の中間層側の界面領域に、アンカー金属の酸化物を含むアンカー領域を備え、
銀含有金属層の誘電体層側の界面領域に、アンカー金属の酸化物を含むキャップ領域を備え、
アンカー領域およびキャップ領域を含む銀含有金属層の膜厚が6nm以下であり、
銀含有金属層は、標準電極電位が銀より高い金属である高標準電極電位金属を含有し、かつ、銀含有金属層の膜厚方向において、高標準電極電位金属の濃度分布のピーク位置が、銀の濃度分布のピーク位置よりも中間層側に位置している。
ここで「銀を含有する」とは、銀含有金属層中において銀を50原子%以上含むこととする。
本開示の光学薄膜においては、銀含有金属層に含有される高標準電極電位金属が金であることが好ましい。
本開示の光学薄膜においては、中間層と銀含有金属層との間に、Hamaker定数が7.3×10−20J以上であるアンカー金属拡散制御層を備えていることが好ましい。
本開示の光学薄膜においては、アンカー金属拡散制御層が、金属酸化物、金属窒化物、金属酸窒化物または金属炭化物を含むことが好ましい。
本開示の光学薄膜においては、アンカー金属拡散制御層が、Hf酸化物を含有することが好ましい。
ここで、「Hf酸化物を含有する」とは、アンカー金属拡散制御層中の20mol%以上がHf酸化物であることを意味する。アンカー金属拡散制御層中におけるHf酸化物の占有割合は50mol%以上であることがより好ましく、Hf酸化物のみで構成されている(占有割合100%である)ことが特に好ましい。Hf酸化物は酸素欠陥が含まれてもよく、HfO2−xで示した場合、Xが0〜1.5の間が好ましい。なお、以下においてはHf酸化物を酸素欠陥が含まれている場合も含めHfOと記載している。
本開示の光学薄膜においては、アンカー領域は、酸化されていない未酸化アンカー金属を含み、アンカー金属の酸化物の含有割合が、未酸化アンカー金属の含有割合よりも大きいことが好ましい。
本開示の光学薄膜においては、アンカー金属がGe、Sn、In、GaまたはZnであることが好ましい。
本開示の光学薄膜においては、誘電体層の表面に、アルミナの水和物を主成分とする微細凹凸層をさらに備えていてもよい。
本開示の光学薄膜においては、上記微細凹凸層を備えた場合、銀含有金属層の膜厚が3.5nm未満であることが好ましい。
本開示の光学素子は、本発明の光学薄膜からなる反射防止膜を備えている。
本開示の光学系は、本発明の光学素子の反射防止膜が設けられた面が最表面に配置されてなる組レンズを備えている。
ここで、最表面とは、複数のレンズからなる組レンズの端に配置されるレンズの一面であって、組レンズの端面となる面をいう。
本開示の光学薄膜は、平坦性の高い銀含有金属層を備え、かつ光透過性に優れる。
本発明の第1の実施形態に係る光学薄膜を備えた光学素子の概略構成を示す断面模式図である。 銀含有金属層の膜厚方向構成および膜厚方向における銀および銀より高い標準電極電位を有する金属の濃度分布を模式的に示した図である。 本発明の第2の実施形態に係る光学薄膜を備えた光学素子の概略構成を示す断面模式図である。 第2の実施形態に係る光学薄膜の製造工程図である。 本発明の第3の実施形態に係る光学薄膜を備えた光学素子の概略構成を示す断面模式図である。 本発明の一実施形態の光学素子を備えた組レンズからなる光学系の構成例を示す図である。 As−depoサンプルについての、積層体表面側から基板方向に向かう膜厚方向における元素分布を示す図である。 アニール処理後のサンプルについての、銀含有金属層の表面から基板方向に向かう膜厚方向における元素分布を示す図である。 実施例5の断面TEM(Transmission Electron Microscope:透過型電子顕微鏡)像である。 サンプル11〜17についての吸収率の波長依存性を示す図である。 サンプル11〜17について、アンカー金属拡散制御層のHamaker定数と銀膜の電気抵抗率との関係を示す図である。 サンプル11およびサンプル17についての、銀含有金属層の表面側から基板方向に向かう膜厚方向における元素の濃度分布を示す図である。 実施例10の反射防止膜についてシミュレーションにより得られた反射率の波長依存性を示す図である。 実施例11の反射防止膜についてシミュレーションにより得られた反射率の波長依存性を示す図である。
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る光学薄膜1を備えた光学素子10の概略構成を示す断面模式図である。本実施形態の光学薄膜1は、基材2上に形成されており、基材2側から中間層3、銀(Ag)を含有する銀含有金属層4、および誘電体層5をこの順に備えている。さらに、光学薄膜1は、銀含有金属層4の中間層3側の界面領域に、アンカー金属の酸化物を含むアンカー領域8を備え、銀含有金属層4の誘電体層5側の界面領域に、アンカー金属の酸化物を含むキャップ領域9を備えている。すなわち、ここでは、銀含有金属層4がその銀含有金属層本体領域40と、アンカー領域8と、キャップ領域9とからなるものとして取り扱っている。本実施形態において、アンカー領域8は銀含有金属層本体領域40と中間層3との間に存在し、キャップ領域9は誘電体層5と銀含有金属層本体領域40との間に存在する。
基材2の形状は特に限定なく、平板、凹レンズまたは凸レンズなど、主として光学装置において用いられる透明な光学部材(透明基材)であり、正または負の曲率を有する曲面と平面の組合せで構成された基材であってもよい。また、基材2として可撓性フィルムを用いてもよい。基材2の材料としては、ガラスやプラスチックなどを用いることができる。本明細書において、「透明」とは、波長400nm〜800nmの波長域の光、すなわち可視光に対して内部透過率が10%以上であることを意味する。
基材2の屈折率は、特に問わないが、1.45以上であることが好ましい。基材2の屈折率は1.61以上、1.74以上、さらには1.84以上のものであってもよい。基材2としては、例えば、カメラの組レンズの第1レンズなどの高パワーレンズであってもよい。なお、本明細書において、特に断らない限り屈折率は波長550nmの光に対する屈折率で示している。
中間層3は、単層であっても複数層からなるものであってもよい。中間層3は、用途に応じて適宜設けられるものであるが、基本的に可視光に対し、透明な材料で構成される。
光学薄膜1が反射防止膜である場合、中間層3は、図1中の(a)、(b)に示すように、高屈折率層11と低屈折率層12とが交互に積層されてなる複数層から構成されていることが好ましい。このとき、図1中の(a)に示すように基材2側から低屈折率層12、高屈折率層11の順に積層されていてもよいし、図1中の(b)に示すように基材2側から高屈折率層11、低屈折率層12の順に積層されていてもよい。また、中間層3の層数に制限はないが、16層以下とすることがコスト抑制の観点から好ましい。
高屈折率層11と低屈折率層12とは、高屈折率層11が低屈折率層12よりも高い屈折率を有するものであればよいが、高屈折率層11の屈折率が基材2の屈折率よりも高く、低屈折率層12の屈折率が基材2の屈折率よりも低いものであることがより好ましい。
高屈折率層11同士、または低屈折率層12同士は、同一の屈折率でなくても構わないが、同一材料で同一屈折率とすれば、材料コストおよび成膜コスト等を抑制する観点から好ましい。
低屈折率層12を構成する材料としては、酸化シリコン(SiO)、酸窒化シリコン(SiON)、酸化ガリウム(Ga)、酸化アルミニウム(Al)、酸化ランタン(La)、フッ化ランタン(LaF)、フッ化マグネシウム(MgF)、フッ化ナトリウムアルミニウム(NaAlF)などが挙げられる。
高屈折率層11を構成する材料としては、五酸化ニオブ(Nb)、酸化チタン(TiO)、酸化ジルコニウム(ZrO)、五酸化タンタル(Ta)、酸窒化シリコン(SiON)、窒化シリコン(Si)および酸化シリコンニオブ(SiNbO)などが挙げられる。
いずれの化合物も化学量論比の組成比からずれた構成元素比となるように制御したり、成膜密度を制御したりして成膜することにより、屈折率をある程度変化させることができる。なお、低屈折率層および高屈折率層を構成する材料としては、上述の屈折率の条件を満たすものであれば、上記化合物に限らない。また、不可避不純物が含まれていてもよい。
中間層3の各層の成膜には、真空蒸着、プラズマスパッタ、電子サイクロトロンスパッタおよびイオンプレーティングなどの気相成膜法を用いることが好ましい。気相成膜によれば多様な屈折率および層厚の積層構造を容易に形成することができる。
誘電体層5の構成材料には特に制限はない。光学薄膜1が反射防止膜である場合には、屈折率が1.35以上1.51以下であることが好ましい。このとき、誘電体層5の構成材料としては、例えば、酸化シリコン(SiO2)、酸窒化シリコン(SiON)、フッ化マグネシウム(MgF)およびフッ化ナトリウムアルミニウム(NaAlF)などが挙げられ、特に好ましいのは、SiOあるいはMgFである。いずれの化合物も化学量論比の組成比からずれた構成元素比となるように制御したり、成膜密度を制御したりして成膜することにより、屈折率をある程度変化させることができる。
誘電体層5の膜厚は対象とする波長をλ、誘電体層の屈折率をnとしたとき、λ/4n程度であることが好ましい。具体的には70nm〜100nm程度である。
銀含有金属層4は、銀が50原子%以上含まれる金属層である。銀含有金属層4において銀が85原子%以上であることが好ましく、90原子%以上であることがより好ましい。既述の通り、銀含有金属層4は隣接する層との界面領域にアンカー領域8およびキャップ領域9を有し、銀含有金属層4中にはアンカー金属が含まれている。また、銀含有金属層4は、標準電極電位が銀より高い金属M(以下において、高標準電極電位金属M、あるいは単に金属Mともいう。)を含有する。銀含有金属層4は、金属Mを含むことにより、銀のみで形成される層と比較して高い耐久性を有するものとなる。なお、銀含有金属層4は、銀、アンカー金属および高標準電極電位金属M以外の他の金属を含んでいてもよい。
高標準電極電位金属Mとしては、金(Au)、パラジウム(Pd)および白金(Pt)が挙げられる。これらの金属のうち、金が最も標準電極電位が大きく腐食防止に適している。また、屈折率および消光係数の観点からも金が好ましい。金の屈折率は銀同様に小さいため、反射防止性能への影響は小さい。
高標準電極電位金属Mは、少量でも含まれれば防食効果が得られ、量が多いほど耐久性は向上する。一方で、金属Mの量(以下において、「添加金属量」という。)と光吸収量とに相関があり、添加金属量が増加すると吸収量が増加して透過率が低下する。本実施形態の光学薄膜1を反射防止膜として用いることを想定する場合、波長550nmの光吸収率が10%以下であることが望ましい。
高い透明性を得る観点から、添加金属量は銀含有金属層4において20原子%以下であることが好ましく、10原子%以下とすることがより好ましい。他方、腐食防止性および銀含有金属層4の平坦性を向上させる観点から、添加金属量は銀含有金属層4において3原子%以上であることが好ましく、5原子%以上とすることがより好ましい。
また、図2の銀含有金属層4の膜厚方向における構成元素の濃度分布に示すように、膜厚方向に沿った金属Mの濃度分布におけるピークの位置(金属Mの濃度分布のピーク位置)Pが、膜厚方向に沿った銀の濃度分布におけるピークの位置(銀の濃度分布のピーク位置)Pよりも中間層3側に位置している。そして、金属Mは、銀含有金属層4において全体的に中間層3側に寄った濃度分布を有している。このように、薄く、かつ平坦な銀含有金属層4においては、銀含有金属層4の膜厚方向において、金属Mの濃度分布のピーク位置が、銀の濃度分布のピーク位置よりも中間層3側に位置する金属Mの濃度分布を有することを本発明者らは見出した。
アンカー金属は、平坦な銀含有金属層4を形成するため、銀膜成膜時の下地層(アンカー金属層)に用いられる金属である。アンカー金属は銀含有金属層の粒状化を抑制する機能を有し、銀含有金属層4の平坦化に寄与する。アンカー金属層は、中間層よりも銀含有金属層の表面エネルギーとの差が小さい表面エネルギーを有することが好ましい。
光学薄膜1中における、アンカー領域8およびキャップ領域9を含む銀含有金属層4の膜厚は6nm以下、好ましくは5nm以下、特に好ましくは4nm以下である。また、銀含有金属層4の膜厚は0.5nm以上であることがより好ましい。さらには、1.0nm以上が好ましい。銀含有金属層は、X線反射率測定により求めた値とする。具体的には、例えば、RIGAKU RINTULTIMAIII(CuKα線40kV40mA)を用いて、臨界角近傍の信号を測定し、得られる振動成分を抽出し、フィッティングして得ることができる。製造過程において、アンカー金属は銀含有金属層中およびその界面領域に拡散するため、光学的に一体的に扱われ、膜厚も上述の通りアンカー領域、銀含有金属層本体領域およびキャップ領域の合計膜厚として測定される。
アンカー領域8は、アンカー金属からなる0.2nm〜2nm厚のアンカー金属層7(後述の製造方法参照)が製造過程において変質して構成された領域である。ここで、変質するとは、中間層や銀含有金属層の他の構成元素との混合や、金属元素の酸化などが生じて、アンカー金属層が成膜時の状態とは異なる状態となることを意味する。
同様にキャップ領域9は、アンカー金属層7を構成するアンカー金属が製造過程において、銀含有金属層4中を通り抜け、銀含有金属層4表面に移動して形成された領域である。このキャップ領域9は環境下の酸素により酸化されたアンカー金属の酸化物を含む。
なお、アンカー金属層7がアンカー領域8およびキャップ領域9へと変質した後には、アンカー金属の酸化に伴い、アンカー金属層7の膜厚に対して、両領域8および9の合計膜厚は2倍程度に増加する場合もある。
アンカー領域8およびキャップ領域9は、隣接層との界面領域であるため、アンカー金属およびその酸化物に加えて、隣接層に存在する元素が混在している。銀含有金属層4の深さ方向(膜厚方向)におけるアンカー金属の濃度分布を測定したとき、2つのピークが観察され、そのうち基材に近い側がアンカー領域であり、基材から遠い側がキャップ領域のピークである。
アンカー金属からなるアンカー金属層は、アンカー金属拡散制御層の表面エネルギーよりも銀含有金属層の表面エネルギーとの差が小さい表面エネルギーを有する。本明細書において、表面エネルギー(表面張力)γは、金属データブック日本金属学会編改訂4版p16よりγ=γ+(t−t)(dγ/dt)を用いて算出した表面エネルギーで定義する。
以下、上記手法により算出した種々の金属元素についての室温における表面エネルギーを列挙しておく。
Figure 0006851511

銀含有金属層が銀膜である場合、上記表によると表面エネルギーは1053mN/mである。これに対し、中間層あるいは後述のアンカー金属拡散制御層としては、具体的には、金属の酸化物、窒化物、酸窒化物あるいは炭化物が用いられ、これらは概ね金属の表面エネルギーよりも小さい表面エネルギーを有する。例えば、TiO、HfOおよびTaの表面エネルギーはそれぞれ350mN/m、330mN/mおよび280mN/m程度であり、銀膜の表面エネルギーとの差は700mN/m超えである。
酸化物や窒化物膜のように銀膜の表面エネルギー差が大きい膜上に銀の超薄膜(6nm以下)を直接成膜する場合、銀は酸化物や窒化物と結合するより銀同士で結合している方が安定するため、銀の粒成長が促進されてしまう。そのため、平滑な超薄膜を形成することが難しい。本発明者らが検討を進めていく中で、平滑な銀の超薄膜を得るためには、金属の酸化物、あるいは、窒化物等の銀膜の表面エネルギーと近い表面エネルギーを有するアンカー金属層を銀膜の形成面に備えることが有効であることが分かってきた。アンカー金属層を備えることにより、銀の結晶粒の成長を抑制し、平坦な超薄膜を得ることが可能となる。
アンカー金属としては、表1に列挙した金属元素のうち、概ね表面エネルギーが350mN/m超1500mN/mを満たす、ビスマス(Bi)、鉛(Pb)、錫(Sn)、インジウム(In)、マグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)、Ga(ガリウム)、ゲルマニウム(Ge)、シリコン(Si)、アルミニウム(Al)、マンガン(Mn)および銅(Cu)から、アンカー金属拡散制御層の構成材料に応じて適宜選択して用いることができる。
アンカー金属の表面エネルギーは350mN/m超え1500mN/m以下であることが好ましく、500mN/m以上であることがより好ましい。したがって、Pb、Sn、In、Mg、Zn、Ga、Si、Cu、およびGeなどが好ましい。なお、本発明者らの検討によれば、Agの粒径増大を抑制する観点で、In、GaおよびGeが好ましく、Geが特に好ましい。なお、アンカー金属としては単独の金属ではなく、2種以上の金属を含むものであってもよい。
アンカー金属層成膜時において、2種以上の金属からなる合金層として成膜してもよいし、アンカー金属層成膜時において、それぞれ単一の金属からなる層を複数積層してもよい。
一方で、このようなアンカー金属層を構成する金属による透明性の低下が懸念されるが、アンカー金属を効率よく酸化させ、金属酸化物とすることにより、透明性が向上することができる。
本開示の光学薄膜を製造する際には、アンカー金属からなるアンカー金属層の成膜後、酸素に暴露させることなく銀膜を形成するため、銀含有金属層の平坦化が図れる。
なお、アンカー領域には酸化されたアンカー金属(アンカー金属酸化物)、酸化されていないアンカー金属(未酸化アンカー金属)が混在している場合もあるが、アンカー金属酸化物の含有割合が未酸化アンカー金属の含有割合よりも大きいことが望ましく、アンカー領域に含まれているアンカー金属が全て酸化されていることが特に好ましい。アンカー領域におけるアンカー金属の酸化物の含有割合および未酸化アンカー金属の含有割合の大小関係は、X線光電子分光法(X-ray Photoelectron Spectroscopy :XPS)に測定における信号強度比で確認することができる。
キャップ領域は、アニール処理が施されている間に銀が凝集して粒状になるのを抑制する効果もあると考えられる。アンカー金属層上に他の金属層が形成されている成膜の段階で、アンカー金属の積層表面への移動が生じ始め、アンカー金属が積層表面に存在する状態で大気中に曝露されることによりアンカー金属の酸化が生じる。
アンカー金属は酸化物となることにより安定なものとなり、銀の移動抑制、凝集抑制、長期安定性、耐水性および耐湿性等のキャップ性能が向上すると考えられる。なお、酸素存在下にてアニール処理が施されることにより、キャップ領域のアンカー金属の大部分が酸化物となる。この場合、キャップ領域に含まれているアンカー金属の80%以上が酸化されていることが好ましく、全て酸化され、アンカー金属酸化物となっていることが好ましい。例えば、アンカー金属がGeである場合Ge/O≦1/1.8であることが好ましく、Ge/O=1/2であることが特に好ましい。
上記のようなアンカー金属層を備えることにより、10nm以下の銀含有金属層を形成することが可能である。一方で、銀含有金属層4の膜厚を6nm以下とするためには、アンカー金属層を構成するアンカー金属の拡散を制御しなくてはならないことを本発明者らは見出した。銀含有金属層が薄くなるにつれて、アンカー金属が銀含有金属層の表面側に移動しやすくなってしまう。銀含有金属層の中間層側に残留するアンカー金属が減ると、銀含有金属層の膜としての安定性が低下し、平坦性が保たれず、一部凝集等が生じる場合があることを見出した。しかし、本開示の技術によれば、粒状化を抑制した平坦な6nm以下の銀含有金属層を得ることができる。銀含有金属層の膜厚方向における濃度分布において銀の濃度のピークよりも中間層側に濃度のピークを有する、高標準電極電位金属が、アンカー金属の拡散を抑制する効果を奏していると考えられる。
なお、高標準電極電位金属を導入することによるアンカー金属の拡散抑制のメカニズムは明らかではない。本発明者らは、例えば、アンカー金属がGe、金属MがAuの場合について、GeとAuはGeとAgと比較して両金属間の液体−液体相互作用が強いという点がアンカー金属の拡散抑制に寄与していると推測している。
本実施形態の光学薄膜1の銀含有金属層4は、銀膜を成膜する前に中間層上にアンカー金属層および高標準電極電位金属からなる金属層を成膜し、アンカー金属層もしくは高標準電極電位金属からなる金属層上に銀膜を成膜した後に、酸素含有雰囲気下でアニール処理を行う工程を経て得られる。アンカー金属層と高標準電極電位金属からなる金属層の積層順は問わないが、アンカー金属層を先に、高標準電極電位金属からなる金属層をその後に積層する順がより好ましい。このような成膜工程およびアニール処理工程後に得られる銀含有金属層においては、膜厚方向における高標準電極電位金属の濃度のピーク位置が銀の濃度のピーク位置よりも中間層側に位置している。なお、銀含有金属層の膜厚方向における高標準電極電位金属の濃度分布および銀の濃度分布はいずれも単一のピークを示す。
図3は、本発明の第2の実施形態に係る光学薄膜21を備えた光学素子20の概略構成を示す断面図である。
光学薄膜21において、第1の実施形態に係る光学薄膜1と異なる点について言及し、同様の要素には同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
本実施形態の光学薄膜21は、中間層3と銀含有金属層4との間に、Hamaker定数が7.3×10−20J以上であるアンカー金属拡散制御層6を備え、アンカー領域8がアンカー金属拡散制御層6と銀含有金属層本体領域40との間に位置している点で光学薄膜1と相違する。アンカー金属拡散制御層6を備えることにより、アンカー金属の拡散をさらに抑制し、銀含有金属層4の平坦性をさらに向上させることができる。
アンカー金属拡散制御層6としては、アンカー金属を引きつける力が重要である。物質同士を引き合う力として知られているファンデルワールス力の指標であるHamaker定数に着目し検討した。その結果、Hamaker定数が7.3×10-20J以上であるアンカー金属拡散制御層6を備えることにより、アンカー金属の拡散をさらに抑制し、高い均一性を有する数nmのオーダーの超薄膜な銀含有薄膜層を形成できることを見出した。銀含有金属層の中に、その銀含有金属層の膜厚方向において銀の濃度分布のピーク位置よりも中間層側に濃度分布のピーク位置を有する、高標準電極電位金属を備え、さらに、銀含有金属層の成膜面にアンカー金属拡散制御層6を備えれば、より平坦性の高い4nm以下、3nm以下、さらには2nm以下の超薄膜の銀含有金属層を得ることができる。
Hamaker定数は、van Ossの理論に基づき、以下のようにして求めることができる。表面エネルギーγをγ=γLW+2(γγ1/2 としてLifshitz vdW(van der Waals)項(γLW)とドナー項(γ)とアクセプター項(γ)の3成分に分けて算出する。水、ジヨードメタンおよびエチレングリコールの3液の接触角を測定し、薄膜の表面エネルギーにおけるLifshitz vdW項(γLW)を算出する。そして、Hamaker定数A11を、A11=24πD γLWより算出する。なお、分子間力と表面力(第3版)朝倉書店J.N.イスラエルアチヴィリ 著/大島広行 訳を参照してD=0.165nmを採用(経験則より)する。
なお、既述の通り、ある程度のアンカー金属の拡散は、キャップ領域形成のために好ましく、Hamaker定数は30.0×10−20J以下であることが好ましい。
アンカー金属拡散制御層6は、Hamaker定数が7.3×10−20J以上を満たすものであれば、構成材料に制限はないが、可視光に対して透明であることが好ましく、十分な透明性を得るために金属酸化物、金属窒化物、金属酸窒化物あるいは金属炭化物を含有することが好ましい。具体的な構成材料としては、Si、Nb、Hf、Zr、Ta、Mg、Al、La、Y、またはTiの酸化物、窒化物、酸窒化物あるいは炭化物、およびそれらの混合物などが挙げられる。一般に、金属の窒化物は同一金属の酸化物よりもHamaker定数が大きいことから、アンカー金属の拡散を抑制する効果は高い。一方で、金属の酸化物は窒化物よりも透明性に優れる。より具体的には、MgO(A11=7.3×10−20J)、Ta(A11=9.5×10−20J)、Al(A11=9.6×10−20J)、TiO(A11=10×10−20J)、HfO(A11=11.2×10−20J)、ZrO(A11=11.8×10−20)、Si(A11=9.5×10−20J)およびNb(A11=12×10−20J)等があげられる。かっこ内はHamaker定数A11である。アンカー金属拡散制御層は、特に、Hf酸化物(HfO)を含有することが好ましい。アンカー金属拡散制御層中におけるHf酸化物の占有割合は50mol%以上であることがより好ましく、HfOのみで構成されている(占有割合100mol%である)ことが特に好ましい。アンカー金属拡散制御層としてHfOを用いることにより、銀含有金属層の均一性(平坦性)を高めることができる。
アンカー金属拡散制御層6の膜厚としては銀含有金属層4との密着性向上のために5nm以上100nm以下が好ましい。
なお、中間層3の最も銀含有金属層側に積層される層が、Hamaker定数が7.3×10−20J以上であれば、アンカー金属拡散制御層を兼ねてもよい。この場合、アンカー金属拡散制御層としての条件を満たせば、中間層3における低屈折率層であっても、高屈折率層であってもよい。
なお、本開示の光学薄膜においては、上記各実施形態の光学薄膜に備えられている層の他、銀含有金属層の酸化を抑制する保護機能を有する保護層など、他の機能層を備えていてもよい。また、光学薄膜を構成する各層の成膜において、銀含有金属層以外の層に関し、nmオーダーの極薄い層を形成する場合には、一様膜に形成しがたく、現実には凹凸膜あるいは海島状に部分的に形成されていない部分(海)があってもよい。
図3に示した第2の実施形態の光学薄膜21の製造方法について説明する。図4は光学薄膜21の製造工程を示す図である。
基材2上に、中間層3を成膜し、さらに、アンカー金属拡散制御層6を成膜する(Step1)。
その後、アンカー金属からなるアンカー金属層7を成膜し、高標準電極電位金属からなる金属層42、さらに銀膜44を順に成膜する(Step2の(2−a))。あるいは、高標準電極電位金属からなる金属層42を成膜した後に、アンカー金属層7、銀膜44を順に成膜する(Step2の(2−b))。
アンカー金属層7、高標準電極電位金属からなる金属層42および銀膜44の成膜は酸素が存在しない雰囲気下で行う。
その後、中間層3、アンカー金属拡散制御層6、アンカー金属層7、高標準電極電位金属からなる金属層42および銀膜44が積層された基材2を大気中に曝露し、大気中にてアニール処理を行う(Step3)。アニール温度は100℃以上400℃以下が好ましく、200℃以上350℃以下がより好ましく、250〜300℃が特に好ましい。加熱時間は特に限定されないが、膜厚方向に沿った場合の高標準電極電位金属の濃度分布におけるピーク位置が銀の濃度分布におけるピーク位置よりも中間層側となる程度の加熱時間とする。例えば、1分以上10分以下、好ましくは5分以下、より好ましくは5分未満である。
上記成膜(Step2)の工程においてアンカー金属の拡散は始まっており、積層体の成膜表面まで移動したアンカー金属は、基材2を大気中に曝露した段階で酸化され始める。アニール処理の開始時には、既にアンカー金属層7中のアンカー金属の一部が銀膜44あるいは銀膜44および高標準電極電位金属からなる金属層42を通過して表面にキャップ領域の前駆領域が形成されつつあり、一方でアンカー金属層7はアンカー領域への変質途中の領域となっている。
そして、上記アニール処理(Step3)によりアンカー金属の拡散および酸化が促進され、このアニール処理後には、アンカー金属層7はアンカー領域8に変質し、積層体の表面にキャップ領域9が形成される(Step4)。
その後、積層体の最表面となるキャップ領域9上に誘電体層5の成膜を行う(Step5)。
以上の工程により、図3に示した実施形態の光学薄膜21を作製することができる。
上記第1および第2の実施形態の光学薄膜は、透明導電膜や反射防止膜として用いることができる。反射防止膜として特に適し、種々の光学部材の表面に適用することができる。第1の実施形態および第2の実施形態の光学薄膜は凹凸構造やポーラス構造を有していないので、機械的強度が高く、ユーザの手が触れる面への適用も可能である。また、高屈折率のレンズ表面への適用も可能であるため、例えば、特開2011−186417号公報等に記載の公知のズームレンズの最表面に好適である。
次に、本発明の第3の実施形態に係るは光学薄膜について説明する。
図5は、第3の実施形態に係る光学薄膜31を備えた光学素子30の概略構成を示す断面模式図である。本実施形態においても、光学薄膜31において、第1の実施形態に係る光学薄膜1と異なる点について詳細に説明することとし、同様の要素には同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。図5に示すように、本実施形態の光学薄膜31は、基材2上に中間層3と、銀を含有する銀含有金属層4と、誘電体層5とがこの順に積層されてなる。本光学薄膜31は、中間層3と銀含有金属層4との間に、Hamaker定数が7.3×10−20J以上であるアンカー金属拡散制御層6を備えている。さらに、本光学薄膜31は、銀含有金属層4のアンカー金属拡散制御層6側の界面領域に、アンカー金属の酸化物を含むアンカー領域8を備え、銀含有金属層4の誘電体層5側の界面領域に、アンカー金属の酸化物を含むキャップ領域9を備えている。ここまでの構成は第2の実施形態の光学薄膜21と同様であるが、本第3の実施形態の光学薄膜31は、誘電体層5の表面にさらに微細凹凸層32を備えている。なお、アンカー金属拡散制御層6を備えていない構成としてもよい。
微細凹凸層32は、アルミナの水和物を主成分とする。ここで、主成分とは、微細凹凸層の構成成分のうちの80質量%以上の成分とする。ここでアルミナの水和物とは、アルミナ1水和物であるベーマイト(Al・HOあるいはAlOOHと表記される。)、およびアルミナ3水和物であるバイヤーライト(Al・3HOあるいはAl(OH)と表記される。)などである。
微細凹凸層32は、透明であり、凸部の大きさ(頂角の大きさ)および向きは様々であるが、おおむね鋸歯状の断面を有している。この微細凹凸層32の凸部間の距離とは凹部を隔てた最隣接凸部の頂点同士の距離である。その距離は反射防止すべき光の波長以下である。数10nm〜数100nmのオーダーであることが好ましく、200nm以下、さらには、150nm以下がより好ましい。
微細凹凸層32は、アルミニウムを含む化合物の薄膜を形成し、アルミニウムを含む化合物の薄膜を70℃以上の温水で1分以上浸漬させて温水処理することで得られる。特に、真空蒸着、プラズマスパッタ、電子サイクロトロンスパッタ、イオンプレーティングなどの気相成膜でアルミニウム膜を成膜後、温水処理することが好ましい。
本実施形態の光学薄膜31は、反射防止膜として特に適し、可視光に対し非常に低い反射率を示す。反射防止性能をさらに高める観点から、アンカー領域8およびキャップ領域9を含む銀含有金属層4の膜厚は3.5nm未満であることが好ましい。また、銀含有金属層4の膜厚は0.5nm以上が好ましく、1.0nm以上がより好ましい。
上記膜厚は3.5nm以上であっても、表面に微細凹凸層を備えることにより、反射防止膜として非常に低い反射率を実現できる。しかし、微細凹凸層を備えた構成において、銀含有金属層4を備えることによる反射率の低減効果は、上記膜厚を3.5nm未満とすることにより格段に高まる。
上記第3の実施形態の光学薄膜31のように、ベーマイトの微細凹凸層を備えた構成では、第1および第2の実施形態の光学薄膜1および21のような微細凹凸層を備えない構成と比較して非常に低い反射率が得られる。一方で、擦り耐性は微細凹凸層を備えていないものの方が格段に高い。したがって、本開示の光学薄膜を反射防止膜として用いる場合には、用途に応じて適宜、微細凹凸層を備えた構成または微細凹凸層を備えない構成とすればよい。
次に、本発明の光学系の実施形態を説明する。
本実施形態の光学系は、レンズを基材とし、レンズの表面に上述の第1の実施形態の光学薄膜1が備えられた光学素子を含む組レンズを備えている。ここでは、光学薄膜1は反射防止膜(以下において反射防止膜1とする。)として設けられている。
図6の(A),(B),(C)は、本発明の光学系の一実施形態であるズームレンズの構成例を示している。ズームレンズは複数のレンズからなる組レンズである。図6の(A)は広角端(最短焦点距離状態)での光学系配置、図6の(B)は中間域(中間焦点距離状態)での光学系配置、図6の(C)は望遠端(最長焦点距離状態)での光学系配置に対応している。
このズームレンズは、光軸Z1に沿って物体側から順に、第1レンズ群G1と、第2レンズ群G2と、第3レンズ群G3と、第4レンズ群G4と、第5レンズ群G5とを備えている。光学的な開口絞りS1は、第2レンズ群G2と第3レンズ群G3との間で、第3レンズ群G3の物体側近傍に配設されていることが好ましい。各レンズ群G1〜G5は1枚または複数のレンズLijを備えている。符合Lijは第iレンズ群中の最も物体側のレンズを1番目として結像側に向かうに従い順次増加するようにして符号を付したj番目のレンズを示す。
このズームレンズは、例えばビデオカメラ、およびデジタルスチルカメラ等の撮影機器のほか、情報携帯端末にも搭載可能である。このズームレンズの像側には、搭載されるカメラの撮影部の構成に応じた部材が配置される。例えば、このズームレンズの結像面(撮像面)には、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の撮像素子100が配置される。最終レンズ群(第5レンズ群G5)と撮像素子100との間には、レンズを装着するカメラ側の構成に応じて、種々の光学部材GCが配置されていても良い。
このズームレンズは、少なくとも第1レンズ群G1、第3レンズ群G3、および第4レンズ群G4を光軸Z1に沿って移動させて、各群間隔を変化させることにより変倍を行うようになされている。また第4レンズ群G4を合焦時に移動させるようにしても良い。第5レンズ群G5は、変倍および合焦の際に常時固定であることが好ましい。開口絞りS1は、例えば第3レンズ群G3と共に移動するようになっている。より詳しくは、広角端から中間域へ、さらに望遠端へと変倍させるに従い、各レンズ群および開口絞りS1は、例えば図6において(A)の状態から(B)の状態へ、さらに(C)の状態へと、図に実線で示した軌跡を描くように移動する。
このズームレンズの最表面は、第1レンズ群G1のレンズL11の外側面(物体側面)および最終レンズ群である第5レンズ群G5のレンズL51に反射防止膜1が備えられている。すなわちレンズL11およびレンズL51が基材であり、その表面に反射防止膜1が備えられてなる光学部材の実施形態である。なお、本ズームレンズにおいては、他のレンズ面にも同様に反射防止膜1を備えていてもよい。
第1の実施形態の反射防止膜1は機械的強度が大きいので、ユーザが触れる可能性のあるズームレンズの最表面に備えることができ、非常に反射防止性能の高いズームレンズを構成することができる。
以下、本開示の光学薄膜の要部構成およびその効果について説明する。
[実施例1]
SiOガラス基板上にアンカー金属層としてGe膜(膜厚0.68nm)を成膜し、大気に曝露することなく引き続き、高標準電極電位金属からなる金属層として金膜(膜厚0.125nm)を成膜し、さらに、銀膜(膜厚2nm)を成膜した。その後、大気中にて300℃、5分の条件でアニール処理を行って光学薄膜の要部構成例(実施例1)を作製した。ここでは、銀よりも高い標準電極電位を有する高標準電極電位金属として金を採用した。
各膜の成膜には、芝浦メカトロニクス社製スパッタ装置(CFS-8EP)を用いた。各膜の成膜条件は下記の通りとした。以下において、室温とは20℃以上30℃以下である。
−アンカー金属層成膜条件−
DC(直流)投入電力=20W、
Ar:20sccm、Depo圧(成膜圧力):0.45Pa
成膜温度:室温
−金膜成膜条件−
DC投入電力=5W、
Ar:30sccm、Depo圧:0.8Pa
成膜温度:室温
−銀膜の成膜条件−
DC投入電力=80W、
Ar:15sccm、Depo圧:0.27Pa
成膜温度:室温
実施例1の作製工程において得られたAs−depoサンプルと、アニール処理後の実施例1について、深さ方向(膜厚方向)における含有元素の濃度分布を測定した。As−Depoサンプルとは、Ge膜、金膜および銀膜の積層体が基板上に成膜形成されてなるアニール処理前のサンプルである。濃度分布の測定は、X線光電子分光法(X-ray Photoelectron Spectroscopy:XPS)を用いて行った。測定装置としてPHI社製Quantera SXMを用いた。結果を図7および図8に示す。
図7は、As−depoサンプルについての、積層体表面側から基板方向に向かう膜厚方向における元素分布を示すグラフであり、図8は、アニール処理後のサンプルについての、銀含有金属層の表面から基板方向に向かう膜厚方向における元素分布を示すグラフである。横軸はアルゴンイオンスパッタ時間(ArSputter Time)を示し、これが膜厚方向位置を意味する。
図7および図8において、基板と積層体、基板と銀含有金属層とのそれぞれの境界は、銀とSiの含有量が逆転する膜厚方向位置と規定した。
図7と図8の比較により、アニール処理後に、銀含有金属層の表面側にGeが部分的に移動していることが分かる。しかし、図8に示すように、アニール処理後においてもGeは銀含有金属層の基板との界面領域に緩やかなピークを保っている。すなわち、アニール処理後の実施例1においても、Geの表面側への移動が抑制されており、銀含有金属層の基板側にアンカー領域が形成されている。また、図8において、図7と比較して表面における酸素原子が増加している。この酸素原子の増加は、Geが酸化されてGeOが形成されていることを示す。
また、図8に示すように、銀含有金属層の膜厚方向において、金の濃度分布のピーク位置PAuは銀の濃度分布のピーク位置PAgよりも基板側に位置していた。
[実施例2、3]
実施例2、3は、実施例1と金膜の厚みが異なるのみであり、実施例1と同様の手順で作製した。
[実施例4]
実施例4は、実施例1の作製工程において、金膜とアンカー金属層との成膜順序を変更して作製した。すなわち、ガラス基板上に金膜を成膜し、金膜上にアンカー金属層、銀膜の順に成膜した。その後、実施例1と同じ条件でアニール処理を行って実施例4の光学薄膜の要部構成例を作製した。
[実施例5〜9]
ガラス基板上に、後記の表2に記載の材料からなるアンカー金属拡散制御層を成膜し、アンカー金属拡散制御層上にアンカー金属層、金膜および銀膜の順に成膜した。その後、大気中にてアニール処理を行って実施例5〜9の光学薄膜の要部構成例を作製した。実施例5〜8はいずれもアンカー金属拡散制御層がHfOから構成される一方、銀膜の厚みが互いに異なる。また、実施例9は、アンカー金属拡散制御層をNbから構成した。アンカー金属拡散制御層の作製条件は下記の通りとした。HfOのHamaker定数は11.2×10−20J、NbのHamaker定数はA11=12×10−20Jである。
−アンカー金属拡散制御層成膜条件−
RF(交流)投入電力=400W、
Ar:40sccm、O:2.5sccm、Depo圧(成膜圧力):0.21Pa
成膜温度:室温
[比較例1]
比較例1は、実施例1において、金膜を備えない構成とした。アンカー金属層上に銀膜を成膜し、実施例1と同じ条件でアニール処理を行い、比較例1の光学薄膜の要部構成例を作製した。
[比較例2]
実施例1の作製工程において、金膜と銀膜の成膜順序を変更した。すなわち、アンカー金属層の上に銀膜を成膜し、銀膜上に金膜を成膜した。その後、実施例1と同様にアニール処理を行い、比較例2の光学薄膜の要部構成例を作製した。
[比較例3]
実施例8において、金膜を備えない構成とした。すなわち、ガラス基板上に、アンカー金属拡散制御層を成膜し、アンカー金属拡散制御層上にアンカー金属層および銀膜の順に成膜した。その後、実施例1と同様にアニール処理を行って比較例3の光学薄膜の要部構成例を作製した。
<平坦性の評価>
上記のようにして作製した実施例および比較例について銀含有金属層の膜の平坦性について評価した。
−可視光の吸収率による評価−
分光光度計により可視域である波長400nm〜800nmにおける光の吸収率を測定した。具体的には、分光光度計(HITACHI U−4000)を用いて、波長400nm〜800nmの範囲でスキャンスピード600nm/minで測定した。可視域におけるプラズモン吸収が生じると吸収率が上昇する。銀は粒状化すると可視域におけるプラズモン吸収が生じることから、可視光の吸収率が上昇することは粒状化している部分が増加することを意味する。すなわち、吸収率が小さいほど、銀の粒状化が小さく、膜の平坦性が高いことを示す。ここでは、波長400nm〜800nmの範囲において吸収率10%超を示したものにはプラズモン吸収が「有」、吸収率10%以下であったものにはプラズモン吸収が「無」として評価し、表2中に示した。
表2に、各実施例および比較例の構成、成膜膜厚および平坦性についての評価を纏めて示す。
Figure 0006851511

表2に示す通り、実施例1〜9の光学薄膜要部構成においては、比較例1〜3のものと比較して、プラズモン吸収が小さく、すなわち、銀含有金属層の平坦性が高く粒状化が抑制されていた。図9は、実施例5の断面TEM(Transmission Electron Microscope:透過型電子顕微鏡)像である。図9から、非常に平坦な銀含有金属層が形成されていることが明らかである。
なお、2nm未満の膜厚の銀含有金属層を、平坦な膜として備えた光学薄膜を実現するのは非常に困難であるが、アンカー金属拡散制御層を備えた実施例6〜8においては粒状化を十分に抑制した2nm未満の厚みの銀含有金属層を得ることができた。一方で、比較例3のようにアンカー金属拡散制御層を備えていても銀含有金属層中にAuを含まない場合には、膜厚1nmの銀含有金属層の十分な平坦化が実現できなかった。
比較例2は、銀含有金属層中にAuを含んでいるが、銀膜形成後に金膜を形成したために、銀膜下層のGeとの相互作用が効かず、Geの拡散が広がったために、銀含有金属層の十分な平坦化が実現できなかったと考えられる。
なお、国際公開2016/189848号明細書において、本出願人により、反射防止膜を実際に作製する際には、銀含有金属層の形成精度によって、反射防止特性が大きく異なることが報告されている。国際公開2016/189848号明細書によれば、銀含有金属層の平坦性(均一性)が高いほど、反射防止特性についてのシミュレーション値との乖離が小さく、設計仕様により近い反射防止性能が得られる。すなわち、既述の実施例のように、高い平坦性を有する銀含有金属層を備えた光学薄膜を用いて反射防止膜を作製することにより、設計値に沿った反射防止特性を得ることが可能となる。
次に、アンカー金属拡散制御層を備えたことによる効果を検証した結果を説明する。ここでは、銀よりも高い標準電極電位を有する金属を含んでいない構成として、アンカー金属拡散制御層による平坦化の効果を検証した。
ガラス基板上にアンカー金属拡散制御層と、アンカー領域およびキャップ領域を含む銀含有金属層とを備えたサンプル11〜17を作製し、その透明性および銀含有金属層の平坦性について評価した。
<サンプルの作製方法>
まず、ガラス基板上に、表3に記載の材料からなるアンカー金属拡散制御層を成膜した。芝浦メカトロニクス社製スパッタ装置(CFS-8EP)を用いて下記条件にて成膜した。なお、Geからなるアンカー金属層および銀膜も同一のスパッタ装置を用いて成膜した。
−アンカー金属拡散制御層成膜条件−
RF(交流)投入電力=400W、
Ar:40sccm、O:2.5sccm、Depo圧(成膜圧力):0.21Pa
成膜温度:室温
アンカー金属拡散制御層の成膜後、大気に曝露することなく、引き続き、Geからなるアンカー金属層を順次成膜した。
−アンカー金属層成膜条件−
DC(直流)投入電力=20W、
Ar:20sccm、Depo圧(成膜圧力):0.45Pa
成膜温度:室温
さらに、アンカー金属層の成膜後、大気に曝露することなく引き続き銀膜を成膜した。
−銀膜の成膜条件−
DC投入電力=80W、
Ar:15sccm、Depo圧:0.27Pa
成膜温度:室温
上記各層の成膜において、アンカー金属拡散制御層は20nm、アンカー金属層は0.68nm、銀膜は2nmの膜厚とした。
その後、各実施例および比較例について、それぞれ、大気中にて300℃、5minの条件でアニール処理を行った。
上記のようにして得られたサンプル11〜17について、膜の平坦性の評価を行った。
<平坦性の評価>
−可視光の吸収率による評価−
上記実施例および比較例について説明した評価と同様の評価を行った。図10は、各例についての測定結果であり、吸収率の波長依存性を示すグラフである。
−銀含有金属層の電気抵抗率による評価−
各サンプルについて、四端子法による電気抵抗率(Ωcm)の測定を三菱化学製ロレスタGP、ESPプローブを用いて行った。測定結果を表3中に示した。
銀含有金属層の電気抵抗率は、銀含有金属層に不連続な部分や、膜厚が変化する部分における部分的な抵抗上昇などにより上昇することから、膜の均一性(平坦性)の指標となる。電気抵抗率は、膜の平坦性が高いほど小さく、平坦性が低いほど大きくなる。
なお、表3におけるHamaker定数は、既述の測定方法に基づいて求めたものである。
表3に上記方法によって作製し、評価したサンプル11〜17についての膜構成および測定(評価)結果を纏めて示す。
Figure 0006851511

表3に示すように、アンカー金属拡散制御層のHamaker定数が7.3×10−20J以上であるサンプル11〜16は、サンプル17と比べて可視光のプラズモン吸収が抑制されており、かつ、電気抵抗率が低いという結果が得られた(図11参照)。すなわち、サンプル11〜16は平坦性の高い銀含有金属層を備えていると考えられる。
さらに、Hfを含むアンカー金属拡散制御層の効果について検証した結果を説明する。上記のようにして得られたアンカー金属拡散制御層としてHfOを用いたサンプル11および、SiOを用いたサンプル17の銀含有金属層について、深さ方向(膜厚方向)におけるGe量の分布を計測した。計測にはPHI社製Quantera SXMを用いたXPSを用いた。
図12は、サンプル11、サンプル17について、XPSにより取得された積層方向表面側からアンカー金属拡散制御層に向かう深さ方向におけるGe元素分布を示すグラフである。Arスパッタにより掘削し、深さ方向の元素分析を行った。図12において、横軸0がサンプル表面位置である。
図12に示す通り、アンカー金属拡散制御層にHfOを用いた場合、銀含有金属層域とアンカー金属拡散制御層との界面領域にアンカー金属であるGeの量が増大する領域を備えており、アンカー領域が形成されていることがわかる。一方、アンカー金属拡散制御層にSiOを用いた場合、銀含有領域とアンカー金属拡散制御層との界面においてGeが少なくなっており、アンカー金属拡散制御層上に成膜されたアンカー金属層のGeの多くが銀含有金属層の表面側に移動していることが分かる。
本結果により、Hamaker定数の高いHfOはGeの拡散を効果的に抑制することができることが確認できた。Geの拡散が抑制されているために、アンカー金属による銀含有金属層の粒状化を抑制する効果が維持されており、銀含有金属層の平坦化が実現できたと推察される。
次に、本開示の光学薄膜である、表面に微細凹凸層を備えた反射防止膜についての効果を示すための実施例を説明する。
[実施例10]
下記表4に、実施例10の反射防止膜の層構成、膜厚、および反射率の波長依存性のシミュレーションに用いた各層の屈折率、消衰係数を示す。
Figure 0006851511
実施例10の反射防止膜を以下のようにして作製した。
基材として、硝材オハラS−LAH53を用いた。表4における屈折率は、全て波長540nmにおける屈折率で示している。ラジカルアシストスパッタ(RAS:Radical Assisted Sputtering)装置にて基材のレンズ曲面にNbとSiONを交互に7層を順次成膜し、中間層を形成した。最後に成膜したNbがアンカー金属拡散制御層として機能する。さらにアンカー金属層としてのGe膜、高標準電極電位金属からなる層としてのAu膜、および銀膜を順次積層した。表4中に記載の銀含有金属層の膜厚は、アンカー金属層、Au膜および銀膜の合計である。合計膜厚を、1.89nm、2nm、2.5nm、3nm、3.2nm、3.5nmとする実施例10−1〜10−6の反射防止膜を作製した。6例の反射防止膜においては、いずれもGe膜の膜厚が0.68nm、Au膜の膜厚が0.125nmであり、銀膜の膜厚のみが異なる。そして、大気中にて300℃、5minの条件でアニール処理を行った。その後、真空蒸着でMgFを6nm成膜し、Alを16nm成膜した。
最上層のAlを成膜後に沸騰水に5分間浸漬し温水処理を行った。温水処理後に最上層Alは凹凸ベーマイト層(微細凹凸層)を表面に有するベーマイト層となった。
なお、上記のようにして作製した反射防止膜における微細凹凸層の屈折率を分光エリプソメータで測定した。ベーマイト層の屈折率は表面側から銀含有金属層側に向かって1−1.36に変化するものであった。
上記構成の反射防止膜について、シミュレーションにより得られた波長400nm〜800nmにおける反射率の波長依存性を図13に示す。本シミュレーションにおいては、微細凹凸層の屈折率として前述の分光エリプソメータで測定して得られたデータを用いた。以下の例においても、微細凹凸層の屈折率のデータは共通とした。
図13に示すように、実施例10−1〜10−6のいずれの反射防止膜についても波長450nm〜700nmに亘って反射率0.35%以下という良好な反射率が得られた。銀含有金属層の膜厚が3.5nmである実施例10−6と、膜厚が3.2nmである実施例10−5とで大きく反射率が変化している。銀含有金属層の膜厚は、3.5nm未満が好ましいと考えられる。また、銀含有金属層の膜厚が3.2nm以下(実施例10−1〜10−5)であれば波長450nm〜700nmに亘って反射率を0.2%以下とすることができた。さらに、銀含有金属層の膜厚が3.0nm以下(実施例10−1〜10−4)であれば波長450nm〜700nmに亘って反射率を0.15%以下とすることができた。また、銀含有金属層の膜厚が2.5nm以下(実施例10−1〜10−3)であれば波長450nm〜700nmに亘って反射率を0.05%以下と非常に低い反射率とすることができた。なお、銀含有金属層の膜厚が2.0nm以下(実施例10−1、10−2)では、波長450nm〜700nmに亘って反射率を0.02%以下と特に低い反射率を得ることができた。
[実施例11]
実施例11の層構成を表5に示す。
Figure 0006851511

実施例11の反射防止膜を以下のようにして作製した。
基材として、硝材オハラS−LAH53を用いた。表5における屈折率は、全て波長540nmにおける屈折率で示している。ラジカルアシストスパッタ(RAS:Radical Assisted Sputtering)装置にて基材のレンズ曲面にNbとSiONを交互に6層を順次成膜し、最後の積層したSiONの上にSiを積層して中間層を形成した。最後に成膜したSiがアンカー金属拡散制御層として機能する。さらにアンカー金属層としてのGe膜、高標準電極電位金属からなる層としてのAu膜、および銀膜を順次積層した。ここで、Ge膜を0.68nm、Au膜を0.125nmとし、銀含有金属層としての膜厚が3nmとなるようにした。そして、大気中にて300℃、5minの条件でアニール処理を行った。その後、真空蒸着でMgFを6nm成膜し、Alを16nm成膜した。
最上層のAlを成膜後に沸騰水に5分間浸漬し温水処理を行った。温水処理後に最上層Alは凹凸ベーマイト層(微細凹凸層)を表面に有するベーマイト層となった。
上記構成の実施例11の反射防止膜について、シミュレーションにより得られた反射率の波長依存性を図14に示す。なお、図14には、上記実施例10−4の結果を併せて示している。銀含有金属層が同じ厚みである実施例11と実施例10−4では、アンカー金属拡散制御層が異なる。図14に示すように、アンカー金属拡散制御層がSiである実施例11よりもNbである実施例10−4の方が可視光域において、より低い反射率を得ることができた。
2018年1月30日に出願された日本出願特願2018−013884の開示はその全体が参照により本明細書に取り込まれる。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、および技術規格は、個々の文献、特許出願、および技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。

Claims (11)

  1. 基材上に設けられる光学薄膜であって、
    前記基材側から、中間層、銀を含有する銀含有金属層、および誘電体層を順に備え、
    前記銀含有金属層の前記中間層側の界面領域に、アンカー金属の酸化物を含むアンカー領域を備え、
    前記銀含有金属層の前記誘電体層側の界面領域に、前記アンカー金属の酸化物を含むキャップ領域を備え、
    前記アンカー領域および前記キャップ領域を含む前記銀含有金属層の膜厚が6nm以下であり、
    前記銀含有金属層は、標準電極電位が銀より高い金属である高標準電極電位金属を含有し、かつ、前記銀含有金属層の膜厚方向において、前記高標準電極電位金属の濃度分布のピーク位置が、銀の濃度分布のピーク位置よりも前記中間層側に位置している光学薄膜。
  2. 前記高標準電極電位金属が金である請求項1に記載の光学薄膜。
  3. 前記中間層と前記銀含有金属層との間に、Hamaker定数が7.3×10−20J以上であるアンカー金属拡散制御層を備えた請求項1または2に記載の光学薄膜。
  4. 前記アンカー金属拡散制御層が、金属酸化物、金属窒化物、金属酸窒化物または金属炭化物を含む請求項3に記載の光学薄膜。
  5. 前記アンカー金属拡散制御層が、Hf酸化物を含有する請求項3に記載の光学薄膜。
  6. 前記アンカー領域は、酸化されていない未酸化アンカー金属を含み、前記アンカー金属の酸化物の含有割合が、前記未酸化アンカー金属の含有割合よりも大きい請求項1から5のいずれか1項に記載の光学薄膜。
  7. 前記アンカー金属がGe、Sn、In、GaまたはZnである請求項1から6のいずれか1項に記載の光学薄膜。
  8. 前記誘電体層の表面に、アルミナの水和物を主成分とする微細凹凸層を備えた請求項1から7いずれか1項に記載の光学薄膜。
  9. 前記銀含有金属層の膜厚が3.5nm未満である請求項8に記載の光学薄膜。
  10. 請求項1から9のいずれか1項に記載の光学薄膜からなる反射防止膜を備えた光学素子。
  11. 請求項10に記載の光学素子の前記反射防止膜が設けられた面が最表面に配置されてなる組レンズを備えた光学系。
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