JP6850955B2 - ショウガオール含有エマルション - Google Patents

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Description

本発明は、ショウガオール含有エマルション及びその製造方法等に関する。
ショウガ(Zingiber officinale)は、熱帯アジア原産のショウガ科の多年草であり、その根茎が古くから食用や薬用として世界各地で用いられてきた。ショウガに含まれる辛味成分である、ショウガオールやジンゲロールには、血行促進作用や抗炎症作用等の様々な機能性があることが知られている。また、ショウガオールには冷え性改善効果があることが報告されている。しかしながら、ショウガオールやジンゲロールは脂溶性成分であるため、例えば飲料や水性食品に使用した場合、安定性や透明性等に問題が生じる。そこで、ショウガオールやジンゲロールの安定性を向上させることを目的として種々の検討がなされている。
例えば、安定なショウガ抽出物製剤であって、ショウガ抽出物とプロトン捕捉物質の群からの少なくとも1種の安定化補助剤とを含むことを特徴とする製剤が開示されている(特許文献1)。
一方、乳化技術については、可食性油性材料、乳化剤、多価アルコール及び水を減圧条件下で乳化処理し、平均乳化粒子径を0.2ミクロン以下とする飲食品用乳化液組成物の製法が知られていた(特許文献2)。
特表2005−511641号公報 特許第2741093号公報
本発明は、ショウガオール含有水中油型乳化物であって、微細な乳化粒子径を有し、乳化安定性に優れたショウガオール含有エマルションを提供する。
発明者らは、ショウガオール含有水中油型乳化物について、ショウガ抽出物、リン脂質、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオール及び水を乳化処理することで、微細な乳化粒子径を有し、水に添加した際の透明性が耐熱性試験前後でほとんど変化することのない、乳化安定性に優れたショウガオール含有エマルションが得られることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[8]の態様に関する。
[1](a)ショウガ抽出物、(b)リン脂質、(c)ポリグリセリン脂肪酸エステル、(d)ポリオール及び(e)水を含む、ショウガオール含有エマルション。
[2]エマルション100重量%に対し、a)ショウガ抽出物0.2〜40重量%、b)リン脂質0.1〜20重量%、c)ポリグリセリン脂肪酸エステル0.1〜20重量%、d)ポリオール10〜75重量%及びe)水15〜85重量%を含む、[1]記載のショウガオール含有エマルション。
[3](b)リン脂質が酵素分解レシチンである、[1]又は[2]記載のショウガオール含有エマルション。
[4](c)ポリグリセリン脂肪酸エステルがHLB10以上である、[1]〜[3]の何れかに記載のショウガオール含有エマルション。
[5]ショウガオール含有エマルション100重量%に対し、ショウガオールを0.1〜5重量%含む、[1]〜[4]の何れかに記載のショウガオール含有エマルション。
[6]ショウガオール含有エマルションの平均粒子径が10〜200nmである、[1]〜[5]の何れかに記載のショウガオール含有エマルション。
[7][1]〜[6]の何れかに記載のショウガオール含有エマルションの製造方法。
[8][1]〜[6]の何れかに記載のショウガオール含有エマルションを含む食品。
本発明によって、微細な乳化粒子が均一に分散したショウガオール含有エマルションを提供でき、該ショウガオール含有エマルションは、微細な乳化粒子径を有し、耐熱性試験によって乳化が壊れず、該試験後も透明性を保つことができ、乳化安定性に優れている。そのため、液状食品に使用した場合においても、濁り等による製品価値の低下を招きにくい。さらに、常圧下で乳化処理できるため、減圧条件下で乳化処理する必要がなく、特殊な減圧装置等を必要としないため、製造コストが安く、容易にショウガオール含有エマルションを製造することが可能である。
本発明は、(a)ショウガ抽出物、(b)リン脂質、(c)ポリグリセリン脂肪酸エステル、(d)ポリオール及び(e)水を含む、ショウガオール含有エマルションである。製造方法は特に限定されないが、前記(a)〜(e)を含む原料を乳化処理することで、水中油型乳化物であるショウガオール含有エマルションが得られる。本発明のショウガオール含有エマルションは、前記(a)〜(e)を含んでいればよく、好ましくは前記(a)〜(e)からなるショウガオール含有エマルションである。
本発明に記載の(a)ショウガ抽出物は、ショウガを原料として得られる抽出物であって、ショウガオールを含む抽出物あれば特に限定されず、抽出法としては、超臨界抽出法、水蒸気蒸留法、溶媒抽出法等が例示でき、市販品を使用できる。ショウガ抽出物中のショウガオール含有量は、1〜50重量%が好ましく、5〜40重量%がより好ましい。ショウガ抽出物は、抽出前後に加熱等の処理を行ってショウガオール含有量を高めたものを使用してもよい。また、ショウガ抽出物は、ジンゲロールを含有していてもよい。
原料全体を100重量%とした場合又はショウガオール含有エマルション全体を100重量%とした場合に(a)ショウガ抽出物を0.2〜40重量%含むのが好ましく、0.5〜30重量%含むのがより好ましく、1〜20重量%含むのがさらに好ましい。ショウガ抽出物を用いることで、本発明のショウガオール含有エマルションが得られる。ショウガオール含有エマルション中のショウガオールは特に限定されないが、0.1〜5重量%含むのが好ましく、0.15〜4重量%含むのがより好ましい。
本発明に記載の(b)リン脂質は、大豆レシチン、ひまわりレシチン、卵黄レシチン等のレシチンが例示できる。本発明のショウガオール含有エマルションが得られるリン脂質であれば特に限定されないが、ホスホリパーゼ等の酵素で分解することによって得られる酵素分解レシチンが好ましく、市販品を使用できる。レシチン中のリン脂質含有量は、本発明のショウガオール含有エマルションが得られれば特に限定されないが、40重量%以上が好ましく、60重量%以上がより好ましく、80重量%以上がさらに好ましい。
原料全体を100重量%とした場合又はショウガオール含有エマルション全体を100重量%とした場合に(b)リン脂質を0.1〜20重量%含むのが好ましく、0.5〜15重量%含むのがより好ましく、1〜10重量%含むのがさらに好ましい。原料中のリン脂質含有量が0.1〜20重量%、0.5〜15重量%又は1〜10重量%になるように、酵素分解レシチンを含むのがより好ましい。前記(a)、(c)、(d)及び(e)と共にリン脂質を含むショウガオール含有エマルションは乳化粒子径が小さく、耐熱性及び耐冷凍性を有し、乳化安定性に優れている。リン脂質として酵素分解レシチンを用いることで、さらに耐酸性に優れたショウガオール含有エマルションが得られる。
本発明に記載の(c)ポリグリセリン脂肪酸エステルは、本発明のショウガオール含有エマルションが得られれば特に限定されず、市販の食品用乳化剤を使用することができる。デカグリセリンモノカプレート、テトラグリセリンモノラウレート、ペンタグリセリンモノラウレート、ヘキサグリセリンモノラウレート、デカグリセリンモノラウレート、ペンタグリセリンモノミリステート、デカグリセリンモノミリステート、ペンタグリセリンモノステアレート、デカグリセリンモノステアレート、デカグリセリンジステアレート、ペンタグリセリンモノオレエート、ヘキサグリセリンモノオレエート、デカグリセリンモノオレエート等が例示でき、一種又は二種類以上を使用できる。ポリグリセリン脂肪酸エステルのHLB値(Hydrophile−Lipophile Balance Value)は、10〜20が好ましく、12〜18がより好ましい。
原料全体を100重量%とした場合又はショウガオール含有エマルション全体を100重量%とした場合に(c)ポリグリセリン脂肪酸エステルを0.1〜20重量%含むのが好ましく、0.5〜15重量%含むのがより好ましく、1〜10重量%含むのがさらに好ましい。前記(a)、(b)、(d)及び(e)と共にポリグリセリン脂肪酸エステルを含むショウガオール含有エマルションは乳化粒子径が小さく、耐熱性、耐冷凍性及び耐酸性を有し、乳化安定性に優れている。
本発明に記載の(d)ポリオールは、二価以上のアルコールであれば特に限定されず、グリセリン、プロピレングリコール、1、3−ブタンジオール、エリスリトール、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、イノシトール、マルチトール、ラクチトール、還元水あめ、還元澱粉分解物、フルクトース、グルコース、ガラクトース、マンノース、スクロース、ラクトース、マルトース、トレハロース、澱粉分解物、水溶性食物繊維等が例示でき、一種又は二種類以上を使用できる。
原料全体を100重量%とした場合又はショウガオール含有エマルション全体を100重量%とした場合に(d)ポリオールを10〜75重量%含むのが好ましく、15〜70重量%含むのがより好ましく、20〜70重量%含むのがさらに好ましい。(a)、(b)、(c)及び(e)と共にポリオールを好ましい範囲で含むショウガオール含有エマルションは乳化粒子径が小さく、耐熱性及び耐酸性を有し、乳化安定性に優れている。ポリオールを20重量%以上用いることで、さらに耐冷凍性に優れたショウガオール含有エマルションが得られる。
本発明に記載の(e)水は、水道水、天然水、イオン交換水、蒸留水、RO水等、何れを用いてもよい。
原料全体を100重量%とした場合又はショウガオール含有エマルション全体を100重量%とした場合に(e)水を15〜85重量%含むのが好ましく、20〜80重量%含むのがより好ましい。
乳化処理は、前記成分を混合し、均質化すればよく、一般的な乳化方法で行うことができる。例えば、水にリン脂質及びポリグリセリン脂肪酸エステルを溶解させた後、ポリオールを混合することで水相部を調製し、この水相部とショウガ抽出物とを、公知の乳化方法により乳化処理することで製造できる。乳化処理に用いる乳化装置としては、ホモジナイザー、ホモミキサー、コロイドミル等の高速回転型乳化装置、高圧ホモジナイザー、マイクロフルイダイザー、ナノマイザー等の高圧乳化装置、超音波式乳化装置、膜式乳化装置等を例示でき、二種類以上の装置を組み合わせてもよい。本発明は、常圧下での乳化処理で、微細な乳化粒子が均一に分散した乳化物を得ることが可能なため、特殊な減圧装置等を必要とせず、製造コストが安く、容易にショウガオール含有エマルションを製造することが可能である。
本発明のショウガオール含有エマルションは、微細な乳化粒子径を有していれば特に限定されないが、平均粒子径は10〜200nmが好ましく、10〜160nmがより好ましく、10〜100nmがさらに好ましい。乳化粒子の平均粒子径は、市販の粒度分布計等で測定することができる。本発明のショウガオール含有エマルションは微細な乳化粒子径を有することで、乳化が壊れにくく、乳化安定性に優れている。さらに、通常、乳化物添加により白濁するようなクリアな液状食品に添加した際でも、白濁せず透明性を保持できる。
また、本発明のショウガオール含有エマルションは、耐熱性を有する。詳細には、[評価試験3]に記載の条件で耐熱性試験を行った後も乳化状態を維持でき、1%水溶液の試験後の濁度は、好ましくはOD650が0.10以下、より好ましくは0.095以下、さらに好ましくは0.90以下である。
本発明のショウガオール含有エマルションを各食品へ添加することで、ショウガオール含有エマルションを含む食品を製造できる。添加する食品は特に限定されないが、ソース、ドレッシング等の調味料、非アルコール飲料、アルコール飲料等の飲料、スープ等の液状食品が例示できる。特に前記(a)〜(e)を好ましい範囲で含むショウガオール含有エマルションは、耐酸性を有することから、乳化が壊れやすい酸性食品への添加も可能である。各食品への添加量は特に限定されないが、好ましくは0.01〜20%、より好ましくは0.05〜10%、さらに好ましくは0.1〜5%である。
以下、実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の例によって限定されるものではない。尚、本発明において、%は別記がない限り全て重量%である。
[実施例1]
超臨界抽出法で得られたショウガ抽出物である“Ginger Soft Extract 40%”(ショウガオール含有量:4.54%、ジンゲロール含有量:22.87%、バイオアクティブズジャパン株式会社製)500gを、オートクレーブを用いて130℃で4時間加熱処理し、加熱処理ショウガ抽出物(ショウガオール含有量:20.53%、ジンゲロール含有量:5.57%)490gを得た。なお、加熱処理ショウガ抽出物をショウガ抽出物Aとし、Ginger Soft Extract 40%をショウガ抽出物Bとした。
水道水12.2gに、リン脂質として酵素分解レシチンであるSLP−ホワイトリゾ(リン脂質含有量:92%以上、辻製油株式会社製)0.6g、ポリグリセリン脂肪酸エステルとしてサンソフトQ−14S(HLB:14.5、太陽化学株式会社製)0.6gを溶解させた後、ポリオールとしてグリセリン(食品添加物、阪本薬品工業株式会社製)6gを混合し、さらにショウガ抽出物A(実施例1−1)又はショウガ抽出物B(実施例1−2)0.6gを加えて、ホモジナイザー(ヒスコトロンNS−20、株式会社マイクロテック・ニチオン製)を用いて乳化処理(15,000rpm、1分間)することにより、ショウガオール含有エマルション各18gを得た。原料割合を表1に示した。また、酵素分解レシチン中のリン脂質についても、原料に占める割合を示した。
[実施例2]
ポリグリセリン脂肪酸エステルとして、サンソフトQ−14Sの代わりにサンソフトQ−17S(HLB:12.0、太陽化学株式会社製)(実施例2−1)、サンソフトA−171E(HLB:13.0、太陽化学株式会社製)(実施例2−2)又はSYグリスターMM−750(HLB:15.7、阪本薬品工業株式会社製)(実施例2−3)を用い、それ以外は実施例1−1と同様に処理して、ショウガオール含有エマルション各18gを得た。原料割合を表1に示した。また、酵素分解レシチン中のリン脂質についても、原料に占める割合を示した。
[評価試験1]
(ショウガオール及びジンゲロール含有量の測定)
実施例1−1、1−2及び2−1〜2−3の各ショウガオール含有エマルション中のショウガオール及びジンゲロール含有量について、HPLCを用いて下記測定条件で測定し、結果を表1に示した。
<HPLCの測定条件>
・検出器:UV検出器(282nm)
・カラム:InertSustain C18(内径4.6mm、長さ250mm)
・移動相:50%アセトニトリル水溶液から100%アセトニトリルへグラジエント
・流速:0.8ml/分
・カラム温度:40℃
・標品:局方生薬試験用試薬のショウガオール及びジンゲロール(何れも和光純薬工業株式会社製)を50%アセトニトリル水溶液に溶解して、検量線を作成した。
・検体:各試料をジメチルスルホキシドで、室温下30分間抽出したもの。
[評価試験2]
(平均粒子径の測定)
実施例1−1、1−2及び2−1〜2−3の各ショウガオール含有エマルションについて、粒度分布測定装置(SALD−2200、株式会社島津製作所製)を用いて乳化粒子の平均粒子径を測定し、結果を表1に示した。
[評価試験3]
(1%水溶液の耐熱性試験、耐冷凍性試験又は耐酸性試験前後の濁度)
実施例1−1、1−2及び2−1〜2−3の各ショウガオール含有エマルションについて、(1)耐熱性試験、(2)耐冷凍性試験又は(3)耐酸性試験を行い、試験前後の濁度を測定し、結果を表1に示した。なお、各試験は、各ショウガオール含有エマルション1%水溶液を調製して検体とし、調製直後、(1)耐熱性試験後、(2)耐冷凍性試験後又は(3)耐酸性試験後に、分光光度計(V−660:日本分光株式会社製)を用いて、光路長1cm、波長650nmの条件で光学密度650(OD650)を測定した。(1)耐熱性試験は、検体を121℃、20分間加熱処理した。(2)耐冷凍性試験は、検体を−20℃で24時間冷凍保存後、解凍した。(3)耐酸性試験は、検体を酸性(pH4)条件下で121℃、20分間加熱処理した。
Figure 0006850955
ショウガオール含有量が異なるショウガ抽出物を各々使用して調製した実施例1−1及び1−2、並びに異なるHLB値のポリグリセリン脂肪酸エステルを各々使用して調製した実施例2−1〜2−3のショウガオール含有エマルションは、何れもショウガオールを0.15%以上含有するとともに、乳化粒子の平均粒子径が200nm未満であった。また、各ショウガオール含有エマルションの1%水溶液の調製直後、耐熱性試験後、耐冷凍性試験後及び耐酸性試験後の液は何れも透明度が高く、OD650は何れも0.05未満であったことから、耐熱性、耐冷凍性及び耐酸性に優れていることが明らかになった。
以上より、ショウガオール含有量が異なるショウガ抽出物を用いても、本発明のショウガオール含有エマルションが得られることが分かった。また、異なるHLB値のポリグリセリン脂肪酸エステルを用いても、平均粒子径が小さく、耐熱性、耐冷凍性及び耐酸性に優れたショウガオール含有エマルションが得られることが分かった。
[実施例3]
水道水10gに、リン脂質として酵素分解レシチンであるSLP−ホワイトリゾを0.3g(実施例3−1)、0.4g(実施例3−2)、0.5g(実施例3−3)、0.8g(実施例3−4)又は1.0g(実施例3−5)、ポリグリセリン脂肪酸エステルとしてサンソフトQ−14S 0.6gを溶解させた後、ポリオールとしてグリセリン6gを混合し、さらに、それぞれの総重量が19.4gとなるように水道水を加えて混合した。次に、ショウガ抽出物A0.6gをそれぞれに加えて、ホモジナイザーを用いて乳化処理(15,000rpm、1分間)することにより、ショウガオール含有エマルション各18gを得た。原料割合を表2に示した。また、酵素分解レシチン中のリン脂質についても、原料に占める割合を示した。
[実施例4]
リン脂質としてレシチンであるSLP−ホワイト(リン脂質含有量:96%以上、辻製油株式会社製)0.6gを用い、それ以外は実施例1−1と同様に処理して、ショウガオール含有エマルション18gを得た。原料割合を表2に示した。また、レシチン中のリン脂質についても、原料に占める割合を示した。
[比較例1]
実施例3記載の方法から、酵素分解レシチンを除き、それ以外は実施例3と同様に処理して、ショウガオール含有エマルション18gを得た。原料割合を表2に示した。
[評価試験4]
実施例3−1〜3−5、4及び比較例1の各ショウガオール含有エマルションについて、前記評価試験1〜3と同様に評価試験を実施し、結果を表2に示した。
Figure 0006850955
ショウガオール含有エマルション中の酵素処理レシチンがリン脂質含有量として1.38〜4.60%となるように配合して調製した実施例3−1〜3−5及びレシチンをリン脂質含有量として3%となるように配合して調製した実施例4のショウガオール含有エマルションは、何れもショウガオールを0.60%以上含有するとともに、乳化粒子の平均粒子径が100nm未満であった。また、実施例3−1〜3−5の各ショウガオール含有エマルションでは、1%水溶液の調製直後、耐熱性試験後、耐冷凍性試験後及び耐酸性試験後の液は何れも透明度が高く、OD650は何れも0.1未満であったことから、耐熱性、耐冷凍性及び耐酸性に優れていることが明らかになった。また、レシチンを使用して調製した実施例4のショウガオール含有エマルションでは、1%水溶液の調製直後、耐熱性試験及び耐冷凍性試験後の液は何れも透明度が高く、OD650は何れも0.05未満であったことから、耐熱性及び耐冷凍性に優れていることが明らかになった。
一方、リン脂質を配合せずに調製した比較例1のショウガオール含有エマルションでは、乳化粒子の平均粒子径が1481nmと大きく、1%水溶液の調製直後のOD650は0.3を超えており、透明な液ではなかった。
以上より、リン脂質を含むことで、平均粒子径が小さく、かつ耐熱性及び耐冷凍性に優れたショウガオール含有エマルションが得られることが分かった。さらに、酵素処理レシチンをリン脂質として1.38〜4.60%程度含むことで、耐酸性にも優れたショウガオール含有エマルションが得られることが分かった。
[実施例5]
水道水10gに、リン脂質として酵素分解レシチンであるSLP−ホワイトリゾを0.6g、ポリグリセリン脂肪酸エステルとしてサンソフトQ−14S 0.4g(実施例5−1)、0.5g(実施例5−2)、0.8g(実施例5−3)又は1.0g(実施例5−4)を溶解させた後、ポリオールとしてグリセリン6gを混合し、さらに、それぞれの総重量が19.4gとなるように水道水を加えて混合した。次に、ショウガ抽出物A0.6gをそれぞれに加えて、ホモジナイザーを用いて乳化処理(15,000rpm、1分間)することにより、ショウガオール含有エマルション各18gを得た。原料割合を表3に示した。また、酵素分解レシチン中のリン脂質についても、原料に占める割合を示した。
[比較例2]
実施例5記載の方法から、ポリグリセリン脂肪酸エステルを除き、それ以外は実施例5と同様に処理して、ショウガオール含有エマルション18gを得た。原料割合を表3に示した。また、酵素分解レシチン中のリン脂質についても、原料に占める割合を示した。
[評価試験5]
実施例5−1〜5−4及び比較例2の各ショウガオール含有エマルションについて、前記評価試験1〜3と同様に評価試験を実施し、結果を表3に示した。
Figure 0006850955
ショウガオール含有エマルション中のポリグリセリン脂肪酸エステル含有量が2〜5%となるように配合して調製した実施例5−1〜5−4のショウガオール含有エマルションは、何れもショウガオールを0.58%以上含有するとともに、乳化粒子の平均粒子径が100nm未満であった。また、各ショウガオール含有エマルションの1%水溶液の調製直後、耐熱性試験後、耐冷凍性試験後及び耐酸性試験後の液は何れも透明度が高く、OD650は何れも0.04未満であり、耐熱性、耐冷凍性及び耐酸性に優れていることが明らかになった。
一方、ポリグリセリン脂肪酸エステルを配合せずに調製した比較例2のショウガオール含有エマルションでは、乳化粒子の平均粒子径が441nmと大きく、1%水溶液の調製直後のOD650は0.15を超えており、透明な液ではなかった。
以上より、ポリグリセリン脂肪酸エステルを少なくとも2〜5%程度含むことで、平均粒子径が小さく、かつ耐熱性、耐冷凍性及び耐酸性に優れたショウガオール含有エマルションが得られることが分かった。
[実施例6]
ポリオールとしてグリセリン2g(実施例6−1)、4g(実施例6−2)又は14g(実施例6−3)に、それぞれの総重量が18.2gとなるように水道水を加えた混合液に、リン脂質として酵素分解レシチンであるSLP−ホワイトリゾ0.6g、ポリグリセリン脂肪酸エステルとしてサンソフトQ−14S 0.6gを溶解させた後、ショウガ抽出物A0.6gを加えて、ホモジナイザーを用いて乳化処理(15,000rpm、1分間)することにより、ショウガオール含有エマルション各18gを得た。原料割合を表4に示した。また、酵素分解レシチン中のリン脂質についても、原料に占める割合を示した。
[実施例7]
ポリオールとして、グリセリンの代わりに還元麦芽糖水飴(商品名:アマルティシロップ、マルチトール含有量:76%、三菱商事フードテック株式会社製)14gを用い、それ以外は実施例6−2と同様に処理して、ショウガオール含有エマルション18gを得た。原料割合を表4に示した。また、還元麦芽糖水飴中のマルチトール及び酵素分解レシチン中のリン脂質についても、原料に占める割合を示した。
[比較例3]
ポリオールとしてグリセリン無し(比較例3−1)又は16g(比較例3−2)に、それぞれの総重量が18.2gとなるように水道水を加え、それ以外は実施例6と同様に処理して、ショウガオール含有エマルション各18gを得た。原料割合を表4に示した。また、酵素分解レシチン中のリン脂質についても、原料に占める割合を示した。
[評価試験6]
実施例6−1〜6−3、7及び比較例3−1〜3−2の各ショウガオール含有エマルションについて、前記評価試験1〜3と同様に評価試験を実施し、結果を表4に示した。
Figure 0006850955
ショウガオール含有エマルション中のポリオール含有量が10〜70%となるようにグリセリンを配合して調製した実施例6−1〜6−3及びポリオール含有量がマルチトールとして53%となるように還元麦芽糖水飴を配合して調製した実施例7のショウガオール含有エマルションは、何れもショウガオールを0.60%以上含有するとともに、乳化粒子の平均粒子径が100nm未満であった。また、実施例6−2、6−3及び7の各ショウガオール含有エマルションでは、1%水溶液の調製直後、耐熱性試験後、耐冷凍性試験後及び耐酸性試験後の液は何れも透明度が高く、OD650は何れも0.05未満であったことから、耐熱性、耐冷凍性及び耐酸性に優れていることが明らかになった。また、実施例6−1のショウガオール含有エマルションでは、1%水溶液の調製直後、耐熱性試験及び耐酸性試験後の液は何れも透明度が高く、OD650は何れも0.05未満であったことから、耐熱性及び耐酸性に優れていることが明らかになった。
一方、ポリオールを配合せずに調製した比較例3−1のショウガオール含有エマルションでは、乳化粒子の平均粒子径が300nm以上と大きく、1%水溶液の調製直後、耐熱性試験及び耐酸性試験後の液は透明度が高かったが、耐冷凍性試験後の液は濁りが生じ、透明さを失っており、OD650は0.4を超えたことから、耐冷凍性が不十分であることが明らかになった。また、ショウガオール含有エマルション中のポリオール含有量が80%となるようにグリセリンを配合して調製した比較例3−2のショウガオール含有エマルションでは、乳化粒子の平均粒子径が900nm以上と大きく、1%水溶液の調製直後のOD650は0.3を超えており、透明な液ではなかった。
以上より、グリセリンやマルチトールといったポリオールを10〜70%程度含むことで、平均粒子径が小さく、かつ耐熱性及び耐酸性に優れたショウガオール含有エマルションが得られることが分かった。さらに、ポリオールを20〜70%程度含むことで、耐酸性にも優れたショウガオール含有エマルションが得られることが分かった。

Claims (6)

  1. (a)ショウガ抽出物、(b)酵素分解レシチン、(c)HLB10以上であるポリグリセリン脂肪酸エステル、(d)ポリオール及び(e)水からなる、ショウガオール含有エマルション。
  2. エマルション100重量%に対し、a)ショウガ抽出物0.2〜40重量%、b)酵素分解レシチン0.1〜20重量%、c)ポリグリセリン脂肪酸エステル0.1〜20重量%、d)ポリオール10〜75重量%及びe)水15〜85重量%を含む、請求項1記載のショウガオール含有エマルション。
  3. ショウガオール含有エマルション100重量%に対し、ショウガオールを0.1〜5重量%含む、請求項1又は2記載のショウガオール含有エマルション。
  4. ショウガオール含有エマルションの平均粒子径が10〜200nmである、請求項1〜の何れか1項に記載のショウガオール含有エマルション。
  5. ショウガ抽出物、酵素分解レシチン、HLB10以上であるポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオール及び水を乳化処理することを特徴とする、請求項1〜の何れか1項に記載のショウガオール含有エマルションの製造方法。
  6. 請求項1〜の何れか1項に記載のショウガオール含有エマルションを含む食品。
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