以下、実施形態、変形例では、同一の構成要素に同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、各図面では、説明の便宜のため、構成要素の一部を適宜省略したり、構成要素の寸法を適宜拡大、縮小して示す。
(第1の実施の形態)
図1は、第1実施形態の物体検知センサ12が用いられる電気機器ユニット10を示す構成図である。図2は、電気機器ユニット10の機能ブロックを示す構成図である。本図面での各ブロックは、ハードウェア的にはCPUやメモリをはじめとする素子、回路等で実現でき、ソフトウェア的にはコンピュータプログラム等により実現される。ここでは、それらの連携により実現される機能ブロックを描いている。これらの機能ブロックは、ハードウェア、ソフトウェアの組合せにより様々な態様で実現できる。
本実施形態の電気機器ユニット10は自動水栓である。電気機器ユニット10は、物体検知センサ12と、水栓装置14とを備える。物体検知センサ12は後述する。
水栓装置14は、物体検知センサ12の検知結果に応じて、動作態様を切り替え可能な電気機器である。本実施形態の水栓装置14は、この動作態様として、吐水状態(動作状態)と吐水停止状態(動作停止状態)とを切り替え可能である。水栓装置14は、吐水具16と、電気駆動弁18と、動作制御部20とを有する。
吐水具16は、給水路22から送られる水を吐水口16aから吐出可能である。吐水具16は、キッチン用シンク等の水受槽24の一部に固定される。水受槽24は、吐水具16から吐出された吐水流を受けて排水口(不図示)から排水するためのものである。給水路22は、吐水具16の内部や、吐水具16に接続される給水ホースの内部等に形成される。
電気駆動弁18は、給水路22の途中位置に設置される。本実施形態の電気駆動弁18は電磁弁であるが、電動弁等でもよい。電気駆動弁18は、動作制御部20による制御のもとで給水路22を開閉可能である。
動作制御部20は、物体検知センサ12の検知結果に応じて、水栓装置14の動作を制御する。本実施形態の動作制御部20は、物体検知センサ12の検知結果に応じて、水栓装置14がモーメンタリ動作を行うように制御する。ここでのモーメンタリ動作とは、物体検知センサ12が物体を検知している検知状態にあるとき、水栓装置14を動作状態に維持し、物体検知センサ12が物体を検知していない非検知状態にあるとき、水栓装置14を動作停止作状態に維持する動作である。
詳しくは、動作制御部20は、物体検知センサ12が検知状態にあるとき、電気駆動弁18が給水路22を開くように制御する。電気駆動弁18が給水路22を開くと、吐水具16の吐水口16aから水が吐き出される吐水状態になる。動作制御部20は、物体検知センサ12が非検知状態にあるとき、電気駆動弁18が給水路22を閉じるように制御する。電気駆動弁18が給水路22を閉じると、吐水具16の吐水状態が停止する吐水停止状態となる。
物体検知センサ12は、検知エリア26内の物体を検知するためのものである。本実施形態の検知エリア26は、物体検知センサ12の光モジュール28(後述する)から水受槽24の内側を含む範囲に設定される。物体検知センサ12は、光モジュール28と、センサ制御部30と、を備える。
図3は、光モジュール28を模式的に示す断面図である。光モジュール28は、検知エリア26に発光素子32から検知光を投光し、その反射光を受光素子34により受光するためのものである。この反射光は、検知エリア26内の検知物48に検知光が当たることで生じる。光モジュール28は、ハウジング36と、投光部38と、受光部40とを有する。ハウジング36は、光モジュール28の筐体となり、発光素子32等が内部に収められる。
投光部38は、検知光を投光するためのものである。本実施形態の検知光は赤外光である。投光部38は、検知光を発する発光素子32と、発光素子32が発した検知光を通過させることで検知エリア26に検知光を投光する投光レンズ42とを有する。発光素子32はLED(light emitting diode)等であり、投光レンズ42はコリメートレンズ等である。
受光部40は、受光素子34と、集光レンズ44とを備える。受光素子34は、検知光の反射光を受光するためのものである。受光素子34は、例えば、CCD(charge-coupled device)イメージセンサやCMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)イメージセンサ等の1次元型のイメージセンサである。集光レンズ44は、検知物48からの反射光を受光素子34の受光面34a(後述する)の上に集光するためのものである。
図4は、受光素子34を模式的に示す斜視図である。受光素子34は、図3、図4に示すように、1次元的に配列された複数の画素46が形成する帯状の受光面34aを有する。画素46は、光電変換によって、受けた光を電気信号に変換する機能を持つ。本実施形態の受光素子34は、有効画素として64個の画素46を有する。受光素子34は、発光素子32に対して予め定められたオフセット方向Paにオフセットして配置される。本実施形態のオフセット方向Paは、発光素子32の投光方向とは正反対に見た受光面34aの画素配列方向Pbと一致している。
図5は、水受槽24、光モジュール28、検知物48の位置関係を模式的に示す。ここでは検知物48としてユーザの手を例に示す。受光面34aは、光モジュール28から検知物48までの距離である検知物距離の変化に応じて検知物48の反射光の入射位置が直線状に変化するように設けられる。詳しくは、受光面34aは、検知物距離の減少に伴い、検知物48の反射光の入射位置が画素配列方向Pbの一端34bに近づくように設けられる。また、検知物距離の増加に伴い、検知物48の反射光の入射位置が画素配列方向Pbの他端34cに近づくように設けられる。光モジュール28は、この条件を満たすように、集光レンズ44の焦点等の光学条件、発光素子32と受光素子34のオフセット量、受光素子34の受光面34aの向き等が設定されている。
たとえば、検知物距離La1の第1位置Qa1に検知物48がある場合、検知物48の反射光の入射位置はQb1となる。検知物距離La1より小さい検知物距離La2の第2位置Qa2に検知物48がある場合、検知物48の反射光の入射位置Qb2は、前述の入射位置Qb1よりも、受光面34aの画素配列方向Pbの一端34b寄りとなる。
このように、受光素子34に対する検知物48の反射光の入射位置は、検知物距離と一意に対応しており、検知物48の位置を表す指標として利用できる。本実施形態では、受光素子34の受光面34aの画素配列方向Pbでの範囲に関して、検知エリア26と対応づけられた検知範囲を設定しており、この検知範囲での受光量分布を用いて、検知エリア26内の検知物48を検知している。
ここで、本実施形態の物体検知センサ12を想到するに至った背景を説明する。図6(a)は、光モジュール28から遠い位置にある検知物48の反射光の受光素子34での受光量分布を示す図である。図6(b)は、光モジュール28に非常に近い位置にある検知物48の反射光の受光素子34での受光量分布を示す図である。同図の横軸は画素番号、縦軸は受光量を示す。ここでの画素番号とは、複数の画素46のそれぞれに対して、受光面34aの画素配列方向Pbの一端側の末端画素46(以下、至近画素46−Aという)から他端側の末端画素(以下、最遠画素46−Bという)に向かって昇順で割り当てられた自然数である(図4も参照)。この画素番号は、受光面34aの画素配列方向Pbでの位置を特定する座標値となる。
ユーザの手や食器等の可動体が検知物48の場合、検知物48の反射光の実際の光量分布である実光量分布は、通常、山形の分布パターンとなる。光モジュール28から遠い位置に検知物48がある場合、その反射光の実光量分布の大部分が受光素子34で受光される。この場合、その受光面34aでの受光量分布は、両裾が現われる山形の分布パターンとなる。光モジュール28に近い位置に検知物48がある場合、その反射光の実光量分布の一部のみが受光素子34で受光される。この場合、その受光面34aでの受光量分布は、片裾が現われない不完全な山形の分布パターンとなる。
ここで、かりに、検知エリア26内での検知物48の有無を判定するための判定条件として、反射光の受光面34a上での受光量分布の重心位置Cp1を用いる場合を考える。この受光面34a上での受光量分布の重心位置Cp1は、実光量分布の大部分が受光面34aで受光される場合(図6(a)の場合)、その実光量分布の重心位置Cp2と大きく変わらず、その実光量分布の重心位置Cp2を精度よく表している。よって、この場合、この重心位置Cp1を判定条件に用いることで、検知エリア26内の検知物48を精度よく検知できる。
一方、この受光量分布の重心位置Cp1は、実光量分布の一部しか受光素子34で受光されない場合(図6(b)の場合)、その実光量分布の重心位置Cp2と大きくずれるようになる。このずれ量は、光モジュール28に対する検知物48の検知物距離が小さくなるほど大きくなる。この受光量分布の重心位置Cp1の受光量を所定の閾値と比較することで検知物48の有無を判定する場合を考える。この場合、受光量分布の重心位置Cp1の受光量が小さくなり過ぎることで、実際には近距離エリアに検知物48があるにも関わらず、その検知物48が無いと判定される可能性がある。つまり、近距離エリア内に検知物48がある場合、実光量分布の重心位置Cp2と受光量分布の重心位置Cp1のずれに起因して、検知精度の低下を招いてしまう。
そこで、本実施形態では、検知物48の有無を判定する前に、近距離エリア内に検知物48があることを判別するためのエリア判別条件を満たすか否かを判断している。そして、このエリア判別条件を満たさないと判断した場合、近距離エリアに検知物48がないとみなし、通常判定条件を用いて検知物48の有無を判定する。一方、このエリア判別条件を満たすと判断した場合、近距離エリアに検知物48がある可能性があるとみなし、近距離エリア内では通常判定条件より高い判定精度を得られる近距離判定条件を用いて検知物48の有無を判定する。つまり、エリア判別条件を用いた判断結果に対応する判定条件を用いて、検知物48の有無を判定する。これにより、検知エリア内での検知物48の位置に応じて高い判定精度の判定条件を用いて検知物48の有無を判定でき、広い検知エリアで高い検知精度を得られる。以下、このような知見のもとで得られた物体検知センサ12を詳細に説明する。
図2を参照する。センサ制御部30は、物体検知センサ12を制御するためのものである。センサ制御部30は、受光制御部50と、演算処理部52と、を備える。
受光制御部50は、光モジュール28を制御することで、受光素子34の受光面34aでの受光量分布を示す受光データを取得する。この受光データは、受光素子34の受光面34aに対する検知物48の反射光の入射位置を示す。
受光制御部50は、受光素子34により受光する受光期間と、受光素子34により受光しない非受光期間とを周期的に繰り返す受光動作を行うように光モジュール28を制御する。受光期間において、受光素子34の複数の画素46は、光電変換により受光量に応じた電荷量を蓄積する。非受光期間において、受光素子34は、複数の画素46のそれぞれに蓄積した電荷量を受光データとして出力し、複数の画素46それぞれで蓄積した電荷を排出する。この受光データは、受光素子34から出力される出力信号となる。この受光データは、受光量の度合いを表す階調値が複数の画素46の配列順に並べられた1次元のデジタルデータである。
受光制御部50は、前述の受光動作として第1受光動作と第2受光動作を周期的に繰り返すように光モジュール28を制御する。第1受光動作では、発光素子32を発光させた発光状態のもと、検知光成分を含む反射光を受光素子34により受光する。受光素子34は、発光状態のもとでの受光量分布を示す受光データとして発光時受光データを取得する。第2受光動作では、発光素子32を発光させない無発光状態のもと、検知光成分を含まない反射光を受光素子34により受光する。受光素子34は、無発光状態のもとでの受光量分布を示す受光データとして無発光時受光データを取得する。
演算処理部52は、受光素子34の出力信号を用いて、前述のエリア判別条件を用いた判断処理や、判定条件を用いた検知判定処理を含む演算処理を行う。演算処理部52は、差分演算部54と、ピーク位置特定部56と、代表位置特定部58と、判断部60と、判定部62とを含む。
図7は、差分演算部54が算出する差分受光データを説明するための説明図である。差分演算部54は、発光時受光データL(x)の各画素46の受光量から、無発光時受光データC(x)の各画素46の受光量を減算して、両者の差分の受光量分布を示す差分受光データD(x)を算出する差分演算処理を行う。この差分受光データD(x)は、検知光以外の周囲光の光成分が排除された受光面34aでの受光量分布を示す。
ピーク位置特定部56は、差分受光データD(x)に基づいて、受光面34aの受光量分布の中で受光量がピークとなるピーク位置を特定する。このピーク位置は、たとえば、受光面34aの受光量分布の中で受光量が極大値となる位置である。本実施形態のピーク位置特定部56は、差分受光データD(x)の中で受光量が最大値となる位置をピーク位置として特定する。
代表位置特定部58は、差分受光データD(x)に基づいて、受光面34aの受光量分布を代表する代表位置を特定する。この代表位置は、検知エリア26内での検知物48の位置の特定に用いられる。本実施形態の代表位置は、受光面34aの受光量分布の重心位置を用いる。本実施形態では、計算負荷の軽減のため、この受光量分布の重心位置を簡易的な計算方法により特定する。
図8は、この簡易的な計算方法の手順を示すための説明図である。D(n)は画素番号nの画素46の受光量を示す。代表位置特定部58は、差分受光データD(x)を積算し、受光素子34の全有効画素46の受光量の総和SDを求める。総和SDは、ハッチングで示す領域Saの面積に相当する。代表位置特定部58は、受光面34aの至近画素46−Aから最遠画素46−Bに向かって順番に各画素46の受光量を積算し、その積算値がSD/2に達したときの画素番号Nの画素(黒丸で示す)を差分受光データD(x)の重心位置とする。ここでの積算値はダブルハッチングで示す領域Sbの面積に相当する。この代表位置は、本実施形態では、受光面34aを形成する画素を単位にして特定しているが、その画素を仮想的に分割した副画素を単位にして特定してもよい。
判断部60は、差分受光データD(x)に基づいて、つまり、受光素子34の出力信号に基づいて、前述のエリア判別条件を満たすか否かを判断する判断処理を行う。このエリア判別条件は、検知エリアの中の特定エリア内に検知物48があることを判別するための条件として予め定められたものである。図5に示すように、本実施形態での特定エリアは、検知エリア26の中で光モジュール28に近い側、つまり、光モジュール28の近傍にある近距離エリアである。この近距離エリアは、光モジュール28の検知光が出射する出射面28aから予め定められた距離範囲La3にある。この近距離エリアは、検知エリア26の距離範囲に対して非常に狭い距離範囲として設定される。本実施形態での距離範囲La3は、光モジュール28の出射面28aから0mm〜20mmである。この他にも、この近距離エリアの距離範囲La3は、たとえば、検知エリア26の距離範囲の0.1倍以下の距離範囲として設定されてもよい。
図8に示すように、エリア判別条件は、本実施形態において、受光素子34の受光面34aにおいて近距離エリアに対応づけられた近距離範囲Scに、代表位置特定部58が特定した受光量分布の重心位置があることである。この近距離範囲Scは、受光面34aの画素配列方向Pbの全範囲Sdに対して非常に狭い範囲として設定される。本実施形態での近距離範囲Scは、至近画素46−Aから最遠画素46−B側に向かって5画素目までの範囲、つまり、至近画素46−Aを含む範囲として定められる。この他にも、この近距離範囲Scは、たとえば、受光面34aの画素配列方向Pbの全範囲Sdの0.1倍以下の範囲として設定されてもよい。
判定部62は、差分受光データD(x)に基づいて、つまり、受光素子34の出力信号に基づいて、検知エリア26内の検知物48の有無を判定する検知判定処理を行う。判定部62は、判断部60の判断結果に対応する判定条件を用いて検知判定処理を行う。この判定条件は、判断部60の複数の判断結果のそれぞれに対応する条件として予め定められる。この判定条件には、エリア判別条件を満たさないという判断結果に対応する通常判定条件と、エリア判別条件を満たすという判断結果に対応する近距離判定条件とが含まれる。
通常判定条件は、検知エリア26の中で近距離エリアを除いた他のエリア(以下、通常エリアという)内の検知物48の有無を判定するための条件である。近距離判定条件は、近距離エリア内の検知物48の有無を判定するための条件である。近距離判定条件は、近距離エリアでの検知物48の判定精度が通常判定条件より高い条件が設定される。この条件は、後述する条件の他にも、実験的手法又は統計的手法により適宜に設定されてもよい。
図9(a)は、通常判定条件を説明するための図である。判定部62は、通常判定条件では、代表位置特定部58が特定した代表位置を用いて検知判定処理を行う。通常判定条件は、受光素子34の受光面34aに対して設定された検知範囲Se内に代表位置(重心位置Cp1)が有るか否かを第1条件とする。この検知範囲Seは、検知エリア26と対応づけて予め設定される範囲である。通常判定条件は、代表位置の受光量が予め定められた閾値Ta1(以下、通常判定用閾値Ta1という)を超えるか否かを第2条件とする。通常判定用閾値Ta1は、通常判定用閾値Ta1を超える受光量範囲のなかに、通常エリア内に検知物48があるときに得られると予め想定される受光量が含まれるように設定される。
判定部62は、前述の通常判定条件を満たす場合、つまり、第1条件と第2条件の両方を満たす場合、検知エリア26内に検知物48が有ると判定する。一方、前述の通常判定条件を満たさない場合、つまり、第1条件と第2条件の何れかを満たさない場合、検知エリア26内に検知物48が無いと判定する。
図9(b)は、近距離判定条件を説明するための図である。判定部62は、近距離判定条件では、代表位置特定部58が特定した代表位置を用いずに、ピーク位置特定部56が特定したピーク位置を用いて検知判定処理を実行する。近距離判定条件は、ピーク位置の受光量に関する閾値Ta2(以下、近距離判定用閾値Ta2という)が用いられる。本実施形態の近距離判定用閾値Ta2は、受光量範囲の下限値を定める値として設定される。近距離判定用閾値Ta2は、通常判定用閾値Ta1と同様、近距離判定用閾値Ta2を超える受光量範囲のなかに、近距離エリア内に検知物48があるときに得られると予め想定される受光量が含まれるように設定される。本実施形態では通常判定用閾値Ta1と近距離判定用閾値Ta2とが同じ大きさに設定される。このように、本実施形態の近距離判定用閾値Ta2は、通常判定用閾値Ta1と同じ基準のもとで設定されている。
判定部62は、近距離判定条件を満たす場合、つまり、ピーク位置特定部56が特定したピーク位置の受光量が近距離判定用閾値Ta2を超える場合、検知エリア26内に検知物48が有ると判定する。一方、近距離判定条件を満たさない場合、検知エリア26内に検知物48が無いと判定する。
判定部62は、判定部62の判定結果に応じて検知状態であることを示す検知信号を生成し、生成した検知信号を動作制御部20に出力する。動作制御部20は、判定部62から出力された検知信号に基づき、前述のように、水栓装置14の動作態様を切り替えるように制御する。
図10は、物体検知センサ12の処理の流れを示すフローチャートである。本処理の流れは、物体検知センサ12が非検知状態のもとで行う第1ステップ群(S10〜S24)と、検知物48を検知状態のもとで行う第2ステップ群(S30〜S44)とに分けられる。本処理では、所定の周期期間が経過する毎に第1ステップ群又は第2ステップ群の何れかを開始する。
第1ステップ群を説明する。センサ制御部30の受光制御部50及び演算処理部52は、光モジュール28に受光動作を行わせることで、受光素子34の受光面34aでの受光量分布を示す受光データを取得する(S10)。本例では、センサ制御部30の受光制御部50は、前述の第1受光動作と第2受光動作を光モジュール28に行わせることで、前述の発光時受光データと無発光時受光データを取得する。次に、センサ制御部30の演算処理部52は、発光時受光データと無発光時受光データとを用いた差分演算処理を行い、差分受光データD(x)を取得する。代表位置特定部58は、センサ制御部30が取得した差分受光データに基づき、受光量分布の代表位置として重心位置を特定する(S12)。
判断部60は、センサ制御部30が取得した差分受光データD(x)と、代表位置特定部58が特定した重心位置とに基づき、エリア判別条件を満たすか否かを判断する(S14)。エリア判別条件を満たさないと判断した場合(S14のN)、判定部62は、差分受光データD(x)に基づき、代表位置特定部58が特定した重心位置と、通常判定条件を用いて検知判定処理を行う(S16)。一方、エリア判別条件を満たすと判断した場合(S14のY)、ピーク位置特定部56は、差分受光データに基づき、受光量分布の中のピーク位置を特定する(S18)。続いて、判定部62は、センサ制御部30が取得した差分受光データと、ピーク位置特定部56が特定したピーク位置とに基づき、近距離判定条件を用いて検知判定処理を行う(S20)。
近距離判定条件又は通常判定条件を用いて検知エリア26内に検知物48が有ると判定した場合(S18のY、S20のY)、判定部62は、検知信号を動作制御部20に出力し、動作制御部20は、水栓装置14の動作態様を吐水状態に切り替える(S22)。この場合、次の周期期間では第2ステップ群を開始する。近距離判定条件又は通常判定条件を用いて検知エリア26内に検知物48が無いと判定した場合(S18のN、S20のN)、判定部62は、検知信号を動作制御部20に出力せず、水栓装置14を吐水停止状態のまま継続させる(S24)。この場合、次の周期期間では第1ステップ群を繰り返す。
第2ステップ群を説明する。第2ステップ群では、第1ステップ群のステップS10、S12、S14、S16、S18、S20のそれぞれと同様の処理として、ステップS30、S32、S34、S36、S38、S40を行う。第2ステップ群では、近距離判定条件又は通常判定条件を用いて検知エリア26内に検知物48が有ると判定した場合(S36のY、S40のY)、判定部62は、動作制御部20への検知信号の出力を継続し、動作制御部20は、水栓装置14の動作態様を吐水状態に継続する(S42)。この場合、次の周期期間でも第2ステップ群を開始する。第2ステップ群では、近距離判定条件又は通常判定条件を用いて検知エリア26内に検知物48が無いと判定した場合(S36のN、S40のN)、判定部62は、動作制御部20への検知信号の出力を停止し、動作制御部20は、水栓装置14の動作態様を吐水停止状態に切り替える(S44)。この場合、次の周期期間では第1ステップ群を開始する。これにより、前述のモーメンタリ動作が行われる。
以上の物体検知センサ12の効果を説明する。
物体検知センサ12は、検知エリアの中の特定エリア内に検知物があることを判別するためのエリア判別条件を満たすか否かを判断した後、その判断結果に対応する判定条件を用いて検知物48の有無を判定する。よって、検知エリア内での検知物48の位置に応じて高い判定精度の判定条件を用いて、検知物48の有無を判定でき、広い検知エリアで高い検知精度を得られる。
また、このように広い検知エリア26で高い検知精度を得るための手法として、たとえば、検知物距離に応じた専用の発光素子や受光素子の採用や、受光素子の位置、向きの調整等のハード要素の設計変更が考えられる。この点、本実施形態によれば、同様の目的を果たすうえで、専用の発光素子や受光素子が不要であるうえ、ハード要素の設計変更が不要であり、構造の簡素化を図ることができる。また、同様の目的を果たすうえで、専用の発光素子や受光素子が不要なため、消費電力の増大を抑えられる利点もある。
かりに、受光素子34の受光面34aの近距離範囲にピーク位置があることをエリア判別条件に用いた場合を考える。この場合、近距離エリア以外の通常エリアに検知物48があるとき、ノイズや外乱光の影響を受けて、近距離範囲にピーク位置がある受光量分布が生成されてしまうケースがあり得る。このケースでは、近距離エリアに検知物48がないにもかかわらず、エリア判別条件を満たすという誤判断、つまり、近距離エリアに検知物48があることを示す誤判断の発生が懸念される。この点、判断部60は、受光素子34の受光面34aの近距離範囲に受光量分布の重心位置があることをエリア判別条件に用いている。よって、前述のケースのもとでは、検知エリア26と対応づけられた検知範囲の中で近距離範囲以外の箇所に重心位置がある受光量分布が生成され易くなり、ノイズや外乱光の影響による前述の誤判断の発生を抑制できる。
図6(b)に示すように、近距離エリアに検知物48がある場合、通常、反射光の受光量分布の重心位置Cp1の方が、そのピーク位置Cp3よりも、その受光量が小さくなる。よって、この場合、受光量分布の重心位置Cp1での受光量を用いて検知判定処理を行うと、近距離エリアに検知物48があるにもかかわらず、検知エリア26内に検知物48が無いという誤判定が生じる可能性がある。この点、本実施形態では、近距離エリアでの検知物48の有無に対して、受光量分布の重心位置Cp1よりも、その受光量が敏感に変化し易い受光量分布のピーク位置Cp3を用いて検知判定処理を行っている。よって、近距離エリアに検知物48がある場合に、受光量分布の重心位置Cp1を用いて検知判定処理を行うより、近距離エリア内での検知物48の有無を高い判定精度で判定できる。
(第2実施形態)
第1実施形態では、受光素子34の受光面34aにおいて近距離エリアに対応づけられた近距離範囲Scに受光量分布の重心位置があることをエリア判別条件に用いる例を説明した。本実施形態のエリア判別条件は、図11に示すように、複数の画素46のなかの至近画素46−A上に受光量分布のピーク位置Cp3があることである。これは、近距離エリアの検知物48の反射光が受光素子34の受光面34aに入射する場合であって、その実光量分布のピーク成分Cp4が受光面34aに入射しない場合を想定している。
本実施形態によれば、近距離エリアの検知物48の反射光が受光素子34の受光面34aに入射する場合であって、その実光量分布のピーク成分Cp4が入射しない場合、そのことをエリア判別条件を用いて高精度に判断できる。また、近距離エリア以外の通常エリアに検知物48がある場合に、至近画素46−Aの近傍の他の画素にピーク位置Cp3がある受光量分布が生成されたときでも、エリア判別条件を満たすという誤判断が発生しない利点がある。
図12は、本実施形態の物体検知センサ12の処理の流れを示すフローチャートである。本処理の流れも、第1実施形態と同様、物体検知センサ12が非検知状態のもとで行う第1ステップ群(S10〜S24)と、検知状態のもとで行う第2ステップ群(S30〜S44)とに分けられる。
第1ステップ群のうち、第1実施形態と異なるステップを主に説明する。センサ制御部30は、第1実施形態と同様、受光データを取得する(S10)。ピーク位置特定部56は,センサ制御部30が取得した差分受光データに基づき、受光量分布の中のピーク位置を特定する(S13)。このとき、ピーク位置特定部56は、受光量分布の中で受光量が最大となる位置が至近画素46−A上となる場合、至近画素46−A上をピーク位置として特定する。
判断部60は、センサ制御部30が取得した差分受光データと、ピーク位置特定部56が特定したピーク位置に基づき、エリア判別条件を満たすか否かを判断する(S14)。本実施形態の判断部60は、第1実施形態と異なり、ピーク位置特定部56が特定したピーク位置が、複数の画素46のなかの至近画素46−A上にあるというエリア判別条件を満たすか否かを判断する。
エリア判別条件を満たさないと判断した場合(S14のN)、代表位置特定部58は、差分受光データに基づき、受光量分布の代表位置として重心位置を特定する(S15)。続いて、判定部62は、差分受光データD(x)に基づき、代表位置特定部58が特定した重心位置と、通常判定条件とを用いて検知判定処理を行う(S16)。一方、エリア判別条件を満たすと判断した場合(S14のY)、代表位置特定部58が重心位置を特定することなく、判定部62は、センサ制御部30が取得した差分受光データと、ピーク位置特定部56が特定したピーク位置とに基づき、近距離判定条件を用いて検知判定処理を行う(S20)。
この後、第1実施形態と同様のステップS22、S24が行われる。第2ステップ群も、第1実施形態と同様、第1ステップ群のステップS10、S13、S14、S15、S16、S20のそれぞれと同様の処理として、ステップS30、S33、S34、S35、S36、S40を行う。この後、第1実施形態と同様のステップS42、S44が行われる。
(第3の実施の形態)
図13は、第3実施形態の電気機器ユニット10を示す構成図である。第3実施形態の電気機器ユニット10は洗面化粧台64に用いられる。洗面化粧台64はミラーキャビネット66を備える。ミラーキャビネット66は、複数の収納棚のそれぞれを開閉する複数のミラー扉68を備える。
電気機器ユニット10は、第1実施形態の物体検知センサ12の他に、照明装置70を備える。照明装置70は、照明器72と、動作制御部20(不図示)とを備える。本実施形態の照明器72は、複数のミラー扉68の間に設けられる。照明器72は、ハウジングの内部に光源を収容しており、洗面化粧台64の正面側に向けて照明光を投光する。照明装置70は、照明器72が点灯している点灯状態と、照明器72が消灯している消灯状態とを切り替え可能である。
本実施形態の動作制御部20は、物体検知センサ12の検知結果に応じて、照明装置70がオルタネイト動作を行うように制御する。ここでのオルタネイト動作とは、物体検知センサ12が非検知状態から検知状態に切り替わる度に、照明装置70の動作態様を動作状態と動作停止状態の間で切り替える動作である。詳しくは、動作制御部20は、照明装置70が消灯状態(動作停止状態)にあるとき、物体検知センサ12が非検知状態から検知状態に切り替わると、照明装置70の動作態様を点灯状態(動作状態)に切り替える。また、動作制御部20は、照明装置70が点灯状態にあるとき、物体検知センサ12が非検知状態から検知状態に切り替わると、照明装置70の動作態様を消灯状態に切り替える。
図14は、本実施形態の物体検知センサ12の処理の流れを示すフローチャートである。本処理の流れも、第1実施形態と同様、第1ステップ群(S10〜S24)と、第2ステップ群(S30〜S38)とに分けられる。
第1ステップ群では、S10〜S20に関しては、第1実施形態と同様である。近距離判定条件又は通常判定条件を用いて検知エリア26内に検知物48があると判定した場合(S18のY、S20のY)、判定部62は、検知信号を動作制御部20に出力し、動作制御部20は、照明装置70の動作態様を点灯状態に切り替える(S22)。この場合、次の周期期間では第2ステップ群を開始する。検知エリア26内に検知物48が無いと判定した場合(S18のN、S20のN)、判定部62は検知信号を動作制御部20に出力せず、照明装置70の動作態様を消灯状態のまま継続させる(S24)。この場合、次の周期期間でも第1ステップ群を繰り返す。
第2ステップ群でも、S30〜S40に関しては、第1実施形態と同様である。近距離判定条件又は通常判定条件を用いて検知エリア26内に検知物48があると判定した場合(S38のY、S40のY)、次の周期期間でも第2ステップ群を繰り返す。近距離判定条件又は通常判定条件を用いて検知エリア26内に検知物48がないと判定した場合(S38のN、S40のN)、次の周期期間では第1ステップ群を開始する。これにより、前述のオルタネイト動作が行われる。
このように、物体検知センサ12の検知結果に応じて動作態様を切り替え可能な電気機器として、第1実施形態では水栓装置14を説明し、第2実施形態では照明装置70を説明した。電気機器の具体例はこれに限られない。たとえば、水栓装置14の他にも、温水洗浄機能を持つ便座装置等でもよい。
以上、本発明の実施形態の例について詳細に説明した。前述した実施形態は、いずれも本発明を実施するにあたっての具体例を示したものにすぎない。実施形態の内容は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、請求の範囲に規定された発明の思想を逸脱しない範囲において、構成要素の変更、追加、削除等の多くの設計変更が可能である。前述の実施形態では、このような設計変更が可能な内容に関して、「実施形態の」「実施形態では」等との表記を付して強調しているが、そのような表記のない内容でも設計変更が許容される。また、図面の断面に付したハッチングは、ハッチングを付した対象の材質を限定するものではない。
検知エリア26の中の特定エリアとして、光モジュール28に近い側にある近距離エリアを例に説明したが、これに限られない。この他にも、検知エリア26の中で光モジュール28から遠い側にある遠距離エリアを特定エリアとしてもよい。
第1実施形態では、近距離エリア(特定エリア)内に検知物があることを判別するためのエリア判別条件として、受光素子34の受光面34aの近距離範囲Scに受光量分布の重心位置があることを例に説明した。このエリア判別条件はこれに限られず、たとえば、近距離範囲Scの受光量の総和が所定の閾値を超えること等が用いられてもよい。
近距離判定条件は、受光素子34の近距離範囲Scにおけるピーク位置の受光量に関する近距離判定用閾値Ta2が用いられる例を説明した。この近距離判定条件に用いられる数値は、近距離エリア内の検知物の有無を判定できるものであれば、特に限られない。
近距離判定条件に用いられる数値は、図15(a)に示すように、受光素子34の受光量分布のピーク位置と、受光量が最小となる位置を通る直線Lbの傾きを用いてもよい。この傾きの絶対値は、検知物48が近距離エリアに有る場合、ある程度の大きさになる。また、反射光が外乱光の場合、この傾きの絶対値が非常に大きい大きさになる。そこで、この傾きの絶対値に対して閾値範囲を設定し、その閾値範囲に実際の受光量分布から得られる傾きの絶対値が含まれる場合に、検知物48があると判定するようにしてもよい。これにより、近距離エリア内の検知物48の有無を判定しつつ、外乱光を排除できるようになる。
また、近距離判定条件に用いられる数値は、図15(b)に示すように、受光量分布の中で予め定められた閾値Tb以上の受光量をもつ受光量範囲の幅W1を用いてもよい。この他にも、図15(c)に示すように、受光素子34の全有効画素46の受光量の総和SD1を用いてもよい。この幅W1や総和SD1は、検知物48が近距離エリアに有る場合、ある程度の大きさになる。また、反射光が外乱光の場合、この幅W1や総和SD1が非常に小さい大きさになる。そこで、この幅W1や総和SD1に対して正の閾値を設定し、その閾値を上回る場合に検知物48が有ると判定してもよい。これにより、近距離エリア内の検知物48の有無を判定しつつ、外乱光を排除できるようになる。この幅W1に関する閾値Tbは、たとえば、ピーク受光量の半分以上の大きさで設定される。この閾値Tbをピーク受光量の半分とした場合、前述の幅W1は半値幅として設定される。
受光素子34は、1次元的に配列された複数の画素46を有する例を説明したが、複数の画素46は、2次元的に配列されていてもよい。
代表位置は、受光面34aの受光量分布を度数分布とみなしたときに重心となる位置を用いる例を説明した。この代表位置は、この他にも、受光面34aの受光量分布を度数分布とみなしたときにモード、メジアン等となる位置を用いてもよい。
以上の実施形態、変形例により具体化される発明を一般化すると、以下の技術的思想が導かれる。以下、発明が解決しようとする課題に記載の態様を用いて説明する。
第2態様の物体検知センサは、第1態様において、前記特定エリアは、前記検知エリアの中で前記光モジュールに近い側にある近距離エリアであってもよい。
第3態様の物体検知センサは、第2態様において、前記受光素子は、1次元的に配列された複数の画素が形成し、検知物までの距離の減少に伴い、前記検知物の反射光の入射位置が画素配列方向の一端に近づくように設けられた受光面を有し、前記エリア判別条件は、前記受光面に対して前記近距離エリアと対応づけられた近距離範囲に受光量分布の重心位置があることであってもよい。
本態様によれば、近距離エリア以外の通常エリアに検知物があるにもかかわらず、ノイズや外乱光の影響により、近距離エリアに検知物があることを示す誤判断の発生を抑制できる。
第4態様の物体検知センサは、第2態様において、前記受光素子は、1次元的に配列された複数の画素が形成し、検知物までの距離の減少に伴い、前記検知物の反射光の入射位置が画素配列方向の一端に近づくように設けられた受光面を有し、前記エリア判別条件は、前記複数の画素の中で前記一端側の末端画素上に前記受光量分布のピーク位置があることであってもよい。
この態様によれば、近距離エリアの検知物の反射光が受光素子の受光面に入射する場合であって、その実光量分布のピーク成分が入射しない場合、そのことをエリア判別条件を用いて高精度に判断できる。
第5態様の物体検知センサは、第2態様から第4態様のいずれかにおいて、前記受光素子は、検知物までの距離の変化に応じて前記検知物の反射光の入射位置が直線状に変化するように設けられた受光面を有し、前記エリア判別条件を満たすという判断結果に対応する前記判定条件には、前記受光面に対して前記近距離エリアと対応づけられた近距離範囲におけるピーク位置の受光量に関する閾値が用いられてもよい。
この態様によれば、近距離エリアでの検知物の有無に対して、受光量分布の重心位置よりも、その受光量が敏感に反応し易い受光量分布のピーク位置を用いて、検知エリア内の検知物の有無を判定する検知判定処理を行っている。よって、近距離エリアに検知物がある場合に、受光量分布の重心位置を用いて検知判定処理を行うより、近距離エリア内での検知物の有無を高い判定精度で判定できる。
第6態様は、前述の態様の物体検知センサと、前記物体検知センサの検知結果に応じて、動作態様を切り替え可能な電気機器と、を備える電気機器ユニットである。
第7態様の電気機器ユニットは、第6態様において、前記電気機器は、前記物体検知センサの検知結果に応じて、吐水状態と吐水停止状態とを切り替え可能な水栓装置であってもよい。