ところで、ワーク材が高張力鋼、ステンレス鋼等の鉄系金属材料からなる場合には、ワーク材に向かってレーザビームを照射する試験を行うと、ワーク材の表面から板厚方向に沿ってワーク材の母材硬度(母材の硬度)よりも高硬度の領域が生成されることが確認された。その現象は、鉄系金属材料からなるワーク材の特有の現象であり、アルミニウム合金等の非鉄系金属材料からなるワーク材には生じないものである。
そのため、ワーク材が鉄系金属材料からなる場合に、ワーク材の被曲げ部の板厚方向における表面から板厚の半分を超える領域がワーク材の母材硬度よりも高硬度に熱処理されると、ワーク材の被曲げ部の引張強度が高くなって、ワーク材の被曲げ部の延伸性が低下する。その結果、加工力としての曲げ加工機の曲げ荷重を低減することが困難になると共に、ワーク材の被曲げ部の割れ等が発生し易く、曲げ加工の加工品質の低下を招くことになる。
なお、前述の問題は、鉄系金属材料からなるワークの被加工部に向かってレーザ光を照射して、ワーク材の被加工部に曲げ加工以外のプレス加工を行う際においても、同様に生じるものである。
そこで、本発明の一態様は、ワーク材が鉄系金属材料からなる場合であっても、曲げ加工機の曲げ荷重等のプレス機械のプレス荷重を低減しかつ曲げ加工等のプレス加工の加工品質の向上を図ることである。
本発明の第1の態様は、板状のワーク材(金属板)に対してレーザ加工を行うレーザ加工機であって、ワーク材を支持する加工テーブルと、レーザビームを出力するレーザ発振器と、前記加工テーブルの上方に設けられ、前記レーザ発振器から出力されたレーザビームをワーク材に向かって照射するレーザ加工ヘッドと、前記レーザ加工ヘッド(前記レーザ加工ヘッドの照射位置)をワーク材に対して相対的に水平方向へ移動させるヘッド移動部(照射移動部)と、前記レーザ発振器から出力されたレーザビームをレーザ加工ヘッドに伝送するビーム伝送部(伝送光学系)と、前記レーザ発振器の出力状態及び前記ヘッド移動部の駆動を制御する制御部と、を具備し、前記制御部は、ワーク材が鉄系金属材料からなりかつ次工程でプレス加工される被加工部を有している場合に、前記レーザ加工ヘッドからワーク材の被加工部或いは被加工部に対して水平方向にオフセットした箇所に向かってレーザビームを照射しながら、前記レーザ加工ヘッドをワーク材に対して相対的に被加工部に沿って水平方向へ移動させて、ワーク材の被加工部の板厚方向における裏面側或いは表面側の領域がワーク材の母材硬度(母材の硬度)よりも低硬度に局所的に熱処理(アニーリング処理)されるように、前記レーザ発振器の出力状態及び前記ヘッド移動部の駆動を制御すると共に、前記レーザ加工ヘッドの動作及び前記ビーム伝送部の動作のうち少なくともいずれかを制御することである。
本発明の第1の態様によると、ワーク材が鉄系金属材料からなる場合に、前記制御部は、前述のように、前記レーザ発振器の出力状態及び前記ヘッド移動部の駆動を制御すると共に、前記レーザ加工ヘッドの動作及び前記ビーム伝送部の動作のうち少なくともいずれかを制御する。これにより、次工程でワーク材の被加工部をプレス加工する前に、ワーク材の被加工部の板厚方向における裏面側或いは表面側の領域の引張強度を低下させて、その領域の延伸性(伸び性)を高めることができる。
本発明の第2の態様は、板状のワーク材(金属板)に対してレーザ加工を行うレーザ加工機であって、ワーク材を支持する加工テーブルと、レーザビームを出力するレーザ発振器と、前記加工テーブルの上方に設けられ、前記レーザ発振器から出力されたレーザビームをワーク材に向かって照射するレーザ加工ヘッドと、前記レーザ加工ヘッド(前記レーザ加工ヘッドの照射位置)をワーク材に対して相対的に水平方向へ移動させるヘッド移動部(照射移動部)と、前記レーザ発振器から出力されたレーザビームをレーザ加工ヘッドに伝送するビーム伝送部(伝送光学系)と、前記レーザ発振器の出力状態及び前記ヘッド移動部の駆動を制御する制御部と、を具備し、前記制御部は、ワーク材が鉄系金属材料からなりかつ次工程で曲げられる被曲げ部を有している場合に、前記レーザ加工ヘッドからワーク材の被曲げ部或いは被曲げ部に対して水平方向にオフセットした箇所に向かってレーザビームを照射しながら、前記レーザ加工ヘッドをワーク材に対して相対的に被曲げ部に沿って水平方向へ移動させて、ワーク材の被曲げ部の板厚方向における裏面側或いは表面側の領域がワーク材の母材硬度よりも低硬度に局所的に熱処理(アニーリング処理)されるように、前記レーザ発振器の出力状態及び前記ヘッド移動部の駆動を制御すると共に、前記レーザ加工ヘッドの動作及び前記ビーム伝送部の動作うち少なくともいずれかを制御することである。
本発明の第2の態様によると、ワーク材が鉄系金属材料からなる場合に、前記制御部は、前述のように、前記レーザ発振器の出力状態及び前記ヘッド移動部の駆動を制御すると共に、前記レーザ加工ヘッドの動作及び前記ビーム伝送部の動作のうち少なくともいずれかを制御する。これにより、次工程でワーク材の被曲げ部を曲げる前に、ワーク材の被曲げ部の板厚方向における裏面側或いは表面側の領域の引張強度を低下させて、その領域の延伸性(伸び性)を高めることができる。
本発明の第3の態様は、板状のワーク材(金属板)に対してレーザ加工を行うレーザ加工機であって、ワーク材を支持する加工テーブルと、レーザビームを出力するレーザ発振器と、前記加工テーブルの上方に設けられ、前記レーザ発振器から出力されたレーザビームをワーク材に向かって照射するレーザ加工ヘッドと、前記レーザ加工ヘッド(前記レーザ加工ヘッドの照射位置)をワーク材に対して相対的に水平方向へ移動させるヘッド移動部と、前記レーザ発振器から出力されたレーザビームをレーザ加工ヘッドに伝送するビーム伝送部(伝送光学系)と、前記レーザ発振器の出力状態及び前記ヘッド移動部の駆動を制御する制御部と、を具備し、前記制御部は、ワーク材が鉄系金属材料からなりかつ次工程でプレス加工される被加工部を有している場合に、前記レーザ加工ヘッドからワーク材の被加工部に対して水平方向にオフセットした箇所に向かってレーザビームを照射しながら、前記レーザ加工ヘッドをワーク材に対して相対的に被加工部に沿って水平方向へ移動させて、ワーク材の被加工部の板厚方向における表面から裏面にかけての領域がワーク材の母材硬度よりも低硬度に局所的に熱処理されるように、前記レーザ発振器の出力状態及び前記ヘッド移動部の駆動を制御すると共に、前記レーザ加工ヘッドの動作及び前記ビーム伝送部の動作のうち少なくともいずれかを制御することである。
本発明の第3の態様によると、ワーク材が鉄系金属材料からなる場合に、前記制御部は、前述のように、前記レーザ発振器の出力状態及び前記ヘッド移動部の駆動を制御すると共に、前記レーザ加工ヘッド及び前記ビーム伝送部のうち少なくともいずれかの動作を制御する。これにより、次工程でワーク材の被加工部をプレス加工する前に、ワーク材の被加工部の板厚方向における表面から裏面にかけての領域の引張強度を低下させて、その領域の延伸性(伸び性)を高めることができる。
ることができる。
本発明の第4の態様は、板状のワーク材(金属板)に対してレーザ加工を行うレーザ加工機であって、ワーク材を支持する加工テーブルと、レーザビームを出力するレーザ発振器と、前記加工テーブルの上方に設けられ、前記レーザ発振器から出力されたレーザビームをワーク材に向かって照射するレーザ加工ヘッドと、前記レーザ加工ヘッド(前記レーザ加工ヘッドの照射位置)をワーク材に対して相対的に水平方向へ移動させるヘッド移動部(照射移動部)と、前記レーザ発振器から出力されたレーザビームをレーザ加工ヘッドに伝送するビーム伝送部(伝送光学系)と、前記レーザ発振器の出力状態及び前記ヘッド移動部の駆動を制御する制御部と、を具備し、前記制御部は、ワーク材が鉄系金属材料からなりかつ次工程で打ち抜かれる被打ち抜き部を有している場合に、前記レーザ加工ヘッドからワーク材の被打ち抜き部に対して水平方向にオフセットした箇所に向かってレーザビームを照射しながら、前記レーザ加工ヘッドをワーク材に対して相対的に被打ち抜き部に沿って水平方向へ移動させて、ワーク材の被打ち抜き部の板厚方向における表面から裏面にかけての領域がワーク材の母材硬度よりも低硬度に局所的に熱処理(アニーリング)されるように、前記レーザ発振器の出力状態及び前記ヘッド移動部の駆動を制御すると共に、前記レーザ加工ヘッド及び前記ビーム伝送部のうち少なくともいずれかの動作を制御することである。
本発明の第4の態様によると、ワーク材が鉄系金属材料からなる場合に、前記制御部は、前述のように、前記レーザ発振器の出力状態及び前記ヘッド移動部の駆動を制御すると共に、前記レーザ加工ヘッド及び前記ビーム伝送部のうち少なくともいずれかの動作を制御する。これにより、次工程でワーク材の被打ち抜き部を打ち抜く前に、ワーク材の被打ち抜き部の板厚方向における表面から裏面にかけての領域の引張強度を低下させて、その領域の延伸性(伸び性)を高めることができる。
本発明の第5の態様は、板状のワーク材(金属板)に対してレーザ加工を行うレーザ加工機であって、ワーク材を支持する加工テーブルと、レーザビームを出力するレーザ発振器と、前記加工テーブルの上方に設けられ、前記レーザ発振器から出力されたレーザビームをワーク材に向かって照射するレーザ加工ヘッドと、前記レーザ加工ヘッド(前記レーザ加工ヘッドの照射位置)をワーク材に対して相対的に水平方向へ移動させるヘッド移動部(照射移動部)と、前記レーザ発振器から出力されたレーザビームをレーザ加工ヘッドに伝送するビーム伝送部(伝送光学系)と、前記レーザ発振器の出力状態及び前記ヘッド移動部の駆動を制御する制御部と、を具備し、前記制御部は、ワーク材が鉄系金属材料からなる場合に、前記レーザ加工ヘッドからワーク材の被打ち抜き部に向かってレーザビームを照射しながら、前記レーザ加工ヘッドをワーク材に対して相対的に被打ち抜き部に沿って水平方向へ移動させて、ワーク材の被打ち抜き部の板厚方向における表面から裏面にかけての領域がワーク材の母材硬度よりも高硬度に局所的に熱処理(焼入れ処理)されるように、前記レーザ発振器の出力状態及び前記ヘッド移動部の駆動を制御すると共に、前記レーザ加工ヘッド及び前記ビーム伝送部のうち少なくともいずれかの動作を制御することである。
本発明の第5の態様によると、ワーク材が鉄系金属材料からなりかつ次工程で打ち抜かれる被打ち抜き部を有している場合に、前記制御部は、前述のように、前記レーザ発振器の出力状態及び前記ヘッド移動部の駆動を制御すると共に、前記レーザ加工ヘッド及び前記ビーム伝送部のうち少なくともいずれかの動作を制御する。これにより、次工程でワーク材の被打ち抜き部を打ち抜く前に、ワーク材の被打ち抜き部の板厚方向における表面から裏面にかけての領域の引張強度を高めて、その領域の延伸性(伸び性)を低下させることができる。
本発明の第6の態様は、鉄系金属材料からなる板状のワーク材(金属板)の被加工部をプレス加工するためのプレス加工方法であって、レーザ加工ヘッドからワーク材の被加工部或いは被加工部に対して水平方向にオフセットした箇所に向かってレーザビームを照射しながら、前記レーザ加工ヘッドをワーク材に対して相対的に被加工部に沿って水平方向へ移動させて、ワーク材の被加工部の板厚方向における裏面側或いは表面側の領域がワーク材の母材硬度よりも低硬度になるように、ワーク材の被加工部に対して局所的に熱処理(アニーリング処理)を行い、その後に、プレス工機における上部金型と下部金型の協働によりワーク材の被加工部をプレス加工することである。
本発明の第6の態様によると、ワーク材の被加工部をプレス加工する前に、ワーク材の被曲げ部の板厚方向における裏面側或いは表面側の領域がワーク材の母材硬度よりも低硬度になるように、ワーク材の被加工部に対して局所的に熱処理を行っている。これにより、ワーク材の被加工部の板厚方向に裏面側或いは表面側の領域の引張強度を低下させて、その領域の延伸性(伸び性)を高めることができる。
本発明の第7の態様は、鉄系金属材料からなる板状のワーク材(金属板)の被曲げ部を曲げるための曲げ加工方法であって、レーザ加工ヘッドからワーク材の被曲げ部或いは被曲げ部に対して水平方向にオフセットした箇所に向かってレーザビームを照射しながら、前記レーザ加工ヘッドをワーク材に対して相対的に被曲げ部に沿って水平方向へ移動させて、ワーク材の被曲げ部の板厚方向における裏面側或いは表面側の領域がワーク材の母材硬度よりも低硬度になるように、ワーク材の被曲げ部に対して局所的に熱処理(アニーリング処理)を行い、その後に、ワーク材の被曲げ部の低硬度側が曲げ外側になるように、曲げ加工機における曲げ加工用の上部金型と下部金型の協働によりワーク材の被曲げ部を曲げることである。
本発明の第7の態様によると、ワーク材の被曲げ部を曲げる前に、ワーク材の被曲げ部の板厚方向における裏面側或いは表面側の領域がワーク材の母材硬度よりも低硬度になるように、ワーク材の被曲げ部に対して局所的に熱処理を行っている。これにより、ワーク材の被曲げ部の板厚方向における裏面側或いは表面側の領域の引張強度を低下させて、その領域の延伸性(伸び性)を高めることができる。
本発明の第8の態様は、鉄系金属材料からなる板状のワーク材(金属板)の被加工部をプレス加工するためのプレス加工方法であって、レーザ加工ヘッドからワーク材の被加工部に対して水平方向にオフセットした箇所に向かってレーザビームを照射しながら、前記レーザ加工ヘッドをワーク材に対して相対的に被加工部に沿って水平方向へ移動させて、ワーク材の被加工部の板厚方向における表面から裏面にかけての領域がワーク材の母材硬度よりも低硬度になるように、ワーク材の被加工部に対して局所的に熱処理(アニーリング)を行い、その後に、プレス機械における上部金型と下部金型の協働によりワーク材の被加工部をプレス加工することである。
本発明の第8の態様によると、ワーク材の被加工部をプレス加工する前に、ワーク材の被加工部の板厚方向における表面から裏面にかけての領域がワーク材の母材硬度よりも低硬度になるように、ワーク材の被加工部に対して局所的に熱処理を行っている。これにより、ワーク材の被加工部の板厚方向における表面から裏面にかけての領域の引張強度を低下させて、その領域の延伸性(伸び性)を高めることができる。
本発明の第9の態様は、鉄系金属材料からなる板状のワーク材(金属板)の被打ち抜き部を打ち抜くための打ち抜き加工方法であって、レーザ加工ヘッドからワーク材の被打ち抜き部に対して水平方向にオフセットした箇所に向かってレーザビームを照射しながら、前記レーザ加工ヘッドをワーク材に対して相対的に被打ち抜き部に沿って水平方向へ移動させて、ワーク材の被打ち抜き部の板厚方向における表面から裏面にかけての領域がワーク材の母材硬度よりも低硬度になるように、ワーク材の被打ち抜き部に対して局所的に熱処理(アニーリング)を行い、その後に、パンチプレスにおける打ち抜き加工用の上部金型と下部金型の協働によりワーク材の被打ち抜き部を打ち抜くことである。
本発明の第9の態様によると、ワーク材の被打ち抜き部を打ち抜く前に、ワーク材の被打ち抜き部の板厚方向における表面から裏面にかけての領域がワーク材の母材硬度よりも低硬度になるように、ワーク材の被打ち抜き部に対して局所的に熱処理を行っている。これにより、ワーク材の被打ち抜き部の板厚方向における表面から裏面にかけての領域の引張強度を低下させて、その領域の延伸性(伸び性)を高めることができる。
本発明の第10の態様は、板状のワーク材が鉄系金属材料からなるワーク材(金属板)の被打ち抜き部を打ち抜くための打ち抜き加工方法であって、レーザ加工ヘッドからワーク材の被打ち抜き部に向かってレーザビームを照射しながら、前記レーザ加工ヘッドをワーク材に対して相対的に被打ち抜き部に沿って水平方向へ移動させて、ワーク材の被打ち抜き部の板厚方向における表面から裏面にかけての領域がワーク材の母材硬度よりも高硬度になるように、ワーク材の被打ち抜き部に対して局所的に熱処理(焼入れ処理)を行い、その後に、パンチプレスにおける打ち抜き加工用の上部金型と下部金型の協働によりワーク材の被打ち抜き部を打ち抜くことである。
本発明の第10の態様によると、ワーク材の被打ち抜き部を打ち抜く前に、ワーク材の被打ち抜き部の板厚方向における表面から裏面にかけての領域がワーク材の母材硬度よりも高硬度になるように、ワーク材の被打ち抜き部に対して局所的に熱処理を行っている。これにより、ワーク材の被打ち抜き部の板厚方向における表面から裏面にかけての領域の引張強度を高めて、その領域の延伸性(伸び性)を低下させることができる。
本発明によれば、ワーク材が鉄系金属材料からなる場合であっても、そのワーク材の引張強度に必要なプレス荷重を低減して、従来のプレス機械で容易にプレス加工できると共に、プレス加工の加工品質の向上を図ることができる。
以下、本発明の実施形態(第1実施形態から第3実施形態)について図1から図12(a)(b)を参照して説明する。
ここで、本願の明細書及び特許請求の範囲において、「プレス加工」とは、曲げ加工、剪断加工、及び絞り加工等を含む意であり、「剪断加工」とは、打ち抜き加工を含む意である。「プレス加工される被加工部」とは、曲げられる被曲げ部、及び打ち抜かれる被打ち抜き部等を含む意である。「レーザ発振器の出力状態」とは、単にレーザビームのパワー(出力)だけではなく、パルス周波数指令やデューティー等を総合した状態のことをいう。「高張力鋼」とは、High Tensile Strength Steel(HTSS)を指しており、最も一般的なSS400材の引張強度の保証値である400MPaよりも大きい引張強度で、おおむね490MPa程度以上の引張強度の鋼材のことをいう。「引張強度の低い鋼材」とは、引張強度の保証値が400Paよりも小さい鋼材のことをいう。
また、本願の明細書及び特許請求の範囲において、「設けられる」とは、直接的に設けられることの他に、別部材を介して間接的に設けられることを含む意であり、「備えられる」と同義である。「備える」とは、直接的に備えることの他に、別部材を介して間接的に備えることを含む意であり、「設ける」と同義である。図1において、「X軸方向」とは、水平方向の1つである左右方向のことをいい、「Y軸方向」とは、水平方向の1つである前後方向のことをいい、「Z軸方向」とは、上下方向(鉛直方向)のことをいう。
(第1実施形態)
図1に示すように、本発明の実施形態(第1実施形態から第3実施形態)に係るレーザ加工機10は、板状のワーク材(金属板)Wに対してレーザ加工(切断加工)を行う加工機である。そして、本発明の実施形態に係るレーザ加工機10の具体的な構成は、以下の通りである。
レーザ加工機10は、ワーク材Wを支持する加工テーブル(支持フレーム)12を具備しており、この加工テーブル12は、X軸方向(左右方向)へ延びている。加工テーブル12は、その適宜位置に、ワーク材Wを把持する複数のクランプ部材(図示省略)を備えている。また、加工テーブル12は、その上側に、門型の可動フレーム14をX軸方向へ移動可能に備えている。可動フレーム14は、X軸用モータ16の駆動によりX軸方向へ移動するようになっている。
レーザ加工機10は、1μm帯の波長のレーザビームLBを出力するファイバレーザ発振器18を具備しており、ファイバレーザ発振器18は、加工テーブル12に対して離隔した位置に配置されている。また、ファイバレーザ発振器18は、例えば、特開2012−24778号公報等に示すように公知の構成からなるレーザ発振器であり、その構成の詳細については省略する。なお、レーザ発振器としてファイバレーザ発振器18を用いる代わりに、CO2レーザ発振器、YAGレーザ発振器、ディスクレーザ発振器、又はダイレクトダイオードレーザ発振器(DDL発振器)等を用いてもよい。
可動フレーム14は、その水平部14aに、キャリッジ20をY軸方向(前後方向)へ移動可能に備えている。キャリッジ20は、Y軸用モータ22の駆動によりY軸方向へ移動するようになっている。また、キャリッジ20は、そのX軸方向の一側に、ファイバレーザ発振器18から出力されたレーザビームLBをワーク材Wに向かって照射する筒状のレーザ加工ヘッド24をZ軸方向(上下方向)へ移動可能に備えている。換言すれば、可動フレーム14における加工テーブル12の上方には、レーザ加工ヘッド24がキャリッジ20を介してY軸方向及びZ軸方向へ移動可能に設けられている。レーザ加工ヘッド24は、Z軸用モータ26の駆動によりZ軸方向へ移動するようになっている。
レーザ加工ヘッド24(レーザ加工ヘッド24の照射位置)は、X軸用モータ16の駆動により可動フレーム14と一体的にX軸方向へ移動しかつY軸用モータ22の駆動によりキャリッジ20と一体的にY軸方向へ移動するようになっている。換言すれば、X軸用モータ16及びY軸用モータ22は、レーザ加工ヘッド24をワーク材Wに対して相対的にX軸方向及びY軸方向へ移動させるヘッド移動部(照射移動部)に相当する。なお、図示はしないが、レーザ加工ヘッド24をX軸方向及び/又はY軸方向に移動不能に固定した場合には、ワーク材WをX軸方向及び/又はY軸方向へ移動させるワーク用移動アクチュエータ(ワーク用移動機構)をヘッド移動部として用いてもよい。
図1及び図2(a)に示すように、レーザ加工ヘッド24は、キャリッジ20のX軸方向の一側にZ軸方向に移動可能に設けられた筒状の加工ヘッド本体28と、加工ヘッド本体28の先端部に着脱可能に設けられかつレーザビームLBを照射するためのノズル30とを有している。レーザ加工ヘッド24(加工ヘッド本体28)は、鉛直方向に対して傾斜可能に構成してもよく、ノズル30は、例えば、特許第4177343号公報に示す公知のノズル交換装置(図示省略)によって適宜に交換できるようになっている。
レーザ加工ヘッド24は、加工ヘッド本体28内に入射されかつ発散角を持ったレーザビームLBをコリメートするコリメートレンズ32を有している。また、レーザ加工ヘッド24は、コリメートされたレーザビームLBをワーク材Wに向かって集束する集束レンズ34を有している。なお、レーザビームのLBの集束位置をZ軸方向に調整するため、集束レンズ34は、集束レンズ用モータ36の駆動により光軸方向(Z軸方向)に位置調整可能になっている。レーザビームLBの集束位置をワーク材Wの表面Faに対して上方向へデフォーカスさせ又は下方向へインフォーカスさせることによって、レーザビームLBの照射径(照射面積)やビームプロファイルを変更することができる。
図2(a)(b)に示すように、加工ヘッド本体28内にコリメートレンズ32を備える代わりに、正レンズ38と負レンズ40とを備えてもよい。この場合には、負レンズ40から出射されたレーザビームLBをコリメートしかつ集束レンズ34への所定の入射径になるように調整することにより、集束レンズ34を透過したビームLBの集束径(ウェストビーム)と発散角を変更することができる。そのため、正レンズ38が正レンズ用モータ42の駆動により光軸方向に位置調整可能になっており、負レンズ40が負レンズ用モータ44の駆動により光軸方向に位置調整可能になっている。
図1及び図2(a)(b)に示すように、レーザ加工機10は、ファイバレーザ発振器18から出力されたレーザビームLBをレーザ加工ヘッド24に伝送するビーム伝送部(伝送光学系)46を具備している。また、ビーム伝送部46は、ファイバレーザ発振器18からレーザビームLBを取り出すためのフィーディングファイバ48と、レーザ加工ヘッド24にレーザビームLBを伝送するためのプロセスファイバ50と、フィーディングファイバ48の出射端とプロセスファイバ50の入射端との間でレーザビームLBを光結合するビームカプラ52とを有している。
ビームカプラ52は、カプラケース54を有しており、カプラケース54の一端側(入射側)には、フィーディングファイバ48の出射端が接続されている。カプラケース54の他端側(出射側)には、プロセスファイバ50の入射端が接続されている。また、ビームカプラ52は、フィーディングファイバ48の出射端から出射されたレーザビームLBをコリメートするコリメートレンズ56を有している。更に、ビームカプラ52は、コリメートされたレーザビームLBをプロセスファイバ50の入射端に向かって集束する集束レンズ58を有している。
なお、ファイバレーザ発振器18の代わりに、レーザ発振器としてCO2レーザ発振器やDDL発振器を採用した場合は、レーザ発振器からレーザ加工ヘッド24へのレーザビームLBの伝送を空間伝送してもよく、その場合は、適宜の公知技術を用いてワーク材WまでのレーザビームLBの光路長を一定に保つようにすることができる。
図2(a)(b)及び図3(a)(b)に示すように、レーザ加工ヘッド24は、レーザビームLBのビーム形状を円形状からレーザ加工ヘッドの移動方向(進行方向)MDの反対側へ延びる尾を有した形状に整形するビーム整形光学系(図示省略)を有してもよい。
図1及び図4に示すように、レーザ加工機10は、加工プログラム及び熱処理プログラムに基づいて、ファイバレーザ発振器18の出力状態、X軸用モータ16の駆動、Y軸用モータ22の駆動、レーザ加工ヘッド24の動作、及びZ軸用モータ26の駆動を制御する制御部(制御装置)60を具備している。制御部60は、1つ又は複数のコンピュータによって構成されており、制御部60は、加工プログラム及び熱処理プログラム等を記憶するメモリと、加工プログラム及び熱処理プログラムを解釈して実行するCPU(Central Processing Unit)とを備えている。ここで、レーザ加工ヘッド24の動作には、集束レンズ用モータ36の駆動、正レンズ用モータ42の駆動、及び負レンズ用モータ44の駆動の動作が含まれている。
そして、図5に示すように、ワーク材Wが高張力鋼、ステンレス鋼の鉄系金属材料からなりかつ次工程で曲げられる被曲げ部Wbを有している場合には、制御部60は、次のような構成を有している。なお、ワーク材Wの被曲げ部Wbは、ワーク材Wにおける製品展開形状の中に含まれている。
図1、図4、図5、及び図6(a)に示すように、制御部60は、レーザ加工ヘッド24の先端部からワーク材Wの被曲げ部Wbに向かってレーザビームLBを照射しながら、レーザ加工ヘッド24をワーク材Wに対して相対的に被曲げ部Wbに沿ってX軸方向及びY軸方向へ移動させるように、X軸用モータ16の駆動、Y軸用モータ22の駆動、ファイバレーザ発振器18の出力状態、及びレーザ加工ヘッド24の動作を制御するようになっている。制御部60は、その際に、ワーク材Wの被曲げ部Wbの板厚方向における裏面Fbから少なくとも板厚の半分までの領域がワーク材Wの母材硬度(母材の硬度)よりも低硬度に局所的に熱処理(アニーリング処理)されるように、X軸用モータ16の駆動、Y軸用モータ22の駆動、及びファイバレーザ発振器18の出力状態等を制御するようになっている。具体的には、制御部60は、前述のようにワーク材Wの被曲げ部Wbの内部組織(材料組織:microstructure)を変化させるため、レーザビームLBの照射位置の照射速度(レーザ加工ヘッド24の照射位置の相対的な移動速度)、レーザビームLBの照射面積、及びレーザビームLBの出力状態等を制御して、ワーク材Wに被曲げ部Wbに投入されるレーザビームLBの単位時間当たりのパワー密度を調整している。一例として、高張力鋼からなるワーク材W(板厚1.2mm)の被曲げ部Wbに対して局所的に熱処理を行う際のレーザ条件は、レーザビームLBの出力:0.8kW、レーザビームLBのビームウェイスト:φ4.7mm、レーザビームLBの照射位置の照射速度:1.5m/分と設定した。なお、比較例として、同じワーク材Wの切断を行う際のレーザ条件は、レーザビームLBの標準的な出力:4kW又は2kW、レーザビームLBの照射位置の照射速度(切断速度):40m/分又は24m/分になっている。また、図6(a)(b)において、ワーク材Wの母材硬度よりも低高度になっている領域には、点ハッチングが施してあり、ワーク材Wの母材硬度よりも高硬度になっている領域には、斜線ハッチングが施してある。
図2(a)(b)、図3(a)(b)、及び図4に示すように、制御部60は、ワーク材に対してレーザ切断加工を行う際におけるレーザビームLBの照射径よりも、ワーク材Wの被曲げ部Wbに対して局所的に熱処理を行う際におけるレーザビームLBの照射径が大きくなるように、集束レンズ用モータ36の駆動(正レンズ用モータ42の駆動及び負レンズ用モータ44の駆動)を制御するようになっている。
制御部60は、各種アシストガスのガス圧、ガス種等も前記局所的な熱処理用に適応するように制御している。制御部60は、レーザビームLBがワーク材Wの表面Faに与える単位時間当たりのパワー密度とレーザビームLBの照射面積とを制御している。
また、制御部60は、レーザ加工ヘッド24がビーム整形光学系を有している場合には、ワーク材Wの被曲げ部Wbに対して局所的に熱処理を行う際におけるレーザ光のビーム形状を前記尾を有した形状に整形するように、ビーム整形光学系の動作を制御してもよい。これにより、ワーク材Wの被曲げ部Wbの表面Fa側の領域において、レーザビームLBの照射が急に途切れると急冷却されて焼入れされる傾向にあるものを、レーザビームLBの照射を徐々に減少させるようにすることができる。その結果、ワーク材Wの被曲げ部Wbの表面Fa側の領域において、ワーク材Wの内部の熱伝導と共に徐々に放熱されて焼入れされ難くなる。
続いて、第1実施形態の作用について、第1実施形態に係る曲げ加工方法を含めて説明する。ここで、第1実施形態に係る曲げ加工方法は、鉄系金属材料からなる板状のワーク材Wの被曲げ部Wbを曲げるための方法である。
図1、図4、図5、及び図6(a)に示すように、制御部60は、前述のように、X軸用モータ16の駆動、Y軸用モータ22の駆動、及びファイバレーザ発振器18の出力状態等を制御する。これにより、レーザ加工ヘッド24の先端部からワーク材Wの被曲げ部Wbに向かってレーザビームLBを照射しながら、レーザ加工ヘッド24をワーク材Wに対して相対的に被曲げ部Wbに沿ってX軸方向及びY軸方向へ移動させることができる。すると、ワーク材Wの被曲げ部Wbの板厚方向における裏面Fbから少なくとも板厚の半分までの領域がワーク材Wの母材硬度よりも低硬度になるように、ワーク材Wの被曲げ部Wbに対して局所的に熱処理(アニーリング処理)を行うことができる。また、同様に、ワーク材Wの他の被曲げ部Wbに対しても局所的に熱処理を行う。ワーク材Wの被曲げ部Wbの板厚方向における表面Fa側の領域は、ワーク材Wの母材硬度よりも高硬度になっている。
その後、レーザ加工ヘッド24をワーク材Wにおける製品展開形状の輪郭線に沿ってレーザビームLBを照射しながらX軸方向及びY軸方向へ移動させる。これにより、ワーク材Wに対してレーザ加工(切断加工)を行って、元形状のワーク材Wから製品展開形状のワーク材Wを取り出すことができる。
更に、図6(b)に示すように、ワーク材Wの被曲げ部Wbの低硬度側が曲げ外側になるように、曲げ加工機における曲げ加工用の上部金型62と下部金型64の協働によりワーク材Wの被曲げ部Wbを曲げる。また、同様に、ワーク材Wの他の被曲げ部Wbの低硬度側が曲げ外側になるように、曲げ加工機における曲げ加工用の上部金型62と下部金型64の協働によりワーク材Wの他の被曲げ部Wbを曲げる。これにより、ワーク材Wから曲げ製品を製作することができる。
前述のように、ワーク材Wの被曲げ部Wbを曲げる前に、ワーク材Wの被曲げ部Wbの板厚方向における裏面Fbから少なくとも板厚の半分までの領域がワーク材Wの母材硬度よりも低硬度になるように、ワーク材Wの被曲げ部Wbに対して局所的に熱処理を行っている。これにより、ワーク材Wの被曲げ部Wbを曲げる前に、ワーク材Wの被曲げ部Wbの板厚方向における半分以上の領域の引張強度を低下させて、その領域の延伸性(伸び性)を高めることができる。
従って、第1実施形態によれば、ワーク材Wが例えば高張力鋼等の鉄系金属材料からなる場合であっても、そのワーク材Wの引張強度に必要な曲げ荷重を従来よりも低減して、従来の曲げ加工機で容易に曲げ加工できると共に、ワーク材Wの被曲げ部Wbの割れ等を抑えて、曲げ加工の加工品質の向上を図ることができる。
(第1実施形態の変形例1)
第1実施形態の変形例1について図1、図4、図5、及び図7(a)(b)を参照して説明する。
図4及び図5に示すように、第1実施形態の変形例1においては、ワーク材Wが高張力鋼、ステンレス鋼の鉄系金属材料からなりかつ次工程で曲げられる被曲げ部Wbを有している場合に、制御部60は、次のような構成を有している。
図5及び図7(a)に示すように、制御部60は、レーザ加工ヘッド24の先端部からワーク材Wの被曲げ部Wbに対して水平方向にオフセットした箇所に向かってレーザビームLBを照射しながら、レーザ加工ヘッド24をワーク材Wに対して相対的に被曲げ部Wbに沿ってX軸方向及びY軸方向へ移動させるように、X軸用モータ16の駆動、Y軸用モータ22の駆動、ファイバレーザ発振器18の出力、及びレーザ加工ヘッド24の動作を制御するようになっている。制御部60は、その際に、ワーク材Wの被曲げ部Wbの板厚方向における表面Faから少なくとも板厚の半分までの領域がワーク材Wの母材硬度よりも低硬度に局所的に熱処理(アニーリング処理)されるように、X軸用モータ16の駆動、Y軸用モータ22の駆動、及びファイバレーザ発振器18の出力状態等を制御するようになっている。具体的には、制御部60は、前述の実施形態の場合と同様に、レーザビームLBの照射位置の照射速度、レーザビームLBの照射面積、及びレーザビームLBの出力状態等を制御するようになっている。なお、図7(a)(b)において、ワーク材Wの母材硬度よりも低高度になっている領域には、点ハッチングが施してあり、ワーク材Wの母材硬度よりも高硬度になっている領域には、斜線ハッチングが施してある。
続いて、第1実施形態の変形例1の作用について、第1実施形態の変形例1に係る曲げ加工方法を含めて説明する。ここで、第1実施形態の変形例1に係る曲げ加工方法は、鉄系金属材料からなる板状のワーク材Wの被曲げ部Wbを曲げるための方法である。
図1、図4、図5、及び図7(a)に示すように、制御部60は、前述のように、X軸用モータ16の駆動、Y軸用モータ22の駆動、及びファイバレーザ発振器18の出力状態等を制御する。これにより、レーザ加工ヘッド24の先端部からワーク材Wの被曲げ部Wbに対して水平方向にオフセットした箇所に向かってレーザビームLBを照射しながら、レーザ加工ヘッド24をワーク材Wに対して相対的に被曲げ部Wbに沿ってX軸方向及びY軸方向へ移動させることができる。すると、ワーク材Wの被曲げ部Wbの板厚方向における表面Faから少なくとも板厚の半分までの領域がワーク材Wの母材硬度よりも低硬度になるように、ワーク材Wの被曲げ部Wbに対して局所的に熱処理(アニーリング処理)を行うことができる。また、同様に、ワーク材Wの他の被曲げ部Wbに対しても局所的に熱処理を行う。ここで、ワーク材Wの被曲げ部Wbに対して水平方向にオフセットした箇所の表面Fa側の領域は、ワーク材Wの母材硬度よりも高硬度になっている。
その後、レーザ加工ヘッド24をワーク材Wにおける製品展開形状の輪郭線に沿ってレーザビームLBを照射しながらX軸方向及びY軸方向へ移動させる。これにより、ワーク材Wに対してレーザ加工(切断加工)を行って、元形状のワーク材Wから製品展開形状のワーク材Wを取り出すことができる。
更に、図7(b)に示すように、ワーク材Wを反転させた状態で、ワーク材Wの被曲げ部Wbの低硬度側が曲げ外側になるように、曲げ加工機における曲げ加工用の上部金型62と下部金型64の協働によりワーク材Wの被曲げ部Wbを曲げる。また、同様に、ワーク材Wを反転させた状態で、ワーク材Wの他の被曲げ部Wbの低硬度側が曲げ外側になるように、曲げ加工機における曲げ加工用の上部金型62と下部金型64の協働によりワーク材Wの他の被曲げ部Wbを曲げる。これにより、ワーク材Wから曲げ製品を製作することができる
。
前述のように、ワーク材Wの被曲げ部Wbを曲げる前に、ワーク材Wの被曲げ部Wbの板厚方向における裏面Fbから少なくとも板厚の半分までの領域がワーク材Wの母材硬度よりも低硬度になるように、ワーク材Wの被曲げ部Wbに対して局所的に熱処理を行っている。これにより、ワーク材Wの被曲げ部Wbを曲げる前に、ワーク材Wの被曲げ部Wbの板厚方向における半分以上の領域の引張強度を低下させて、その領域の延伸性(伸び性)を高めることができる。
従って、第1実施形態の変形例1によれば、前述の第1実施形態の効果と同様の効果を奏するものである。
(第1実施形態の変形例2)
第1実施形態の変形例2について図1及び図8(a)を参照して説明する。
図1及び図8(a)に示すように、第1実施形態の変形例2においては、第1実施形態の場合に比べてファイバレーザ発振器18の出力を十分に下げた状態で、レーザ加工ヘッド24の先端部からワーク材Wの被曲げ部Wbに向かってレーザビームLBを照射しながら、レーザ加工ヘッド24をワーク材Wに対して相対的に被曲げ部Wbに沿ってX軸方向及びY軸方向へ移動させることができる。すると、ワーク材Wの被曲げ部Wbの板厚方向における表面Fa側の領域のみがワーク材Wの母材硬度よりも低硬度になるように、ワーク材Wの被曲げ部Wbに対して局所的に熱処理(アニーリング処理)を行うことができる。なお、図8(a)において、ワーク材Wの母材硬度よりも低高度になっている領域には、点ハッチングが施してある。
(第1実施形態の変形例3)
第1実施形態の変形例3について図1及び図8(b)を参照して説明する。
図1及び図8(b)に示すように、第1実施形態の変形例2においては、第1実施形態の場合と同様に、レーザ加工ヘッド24の先端部からワーク材Wの被曲げ部Wbに向かってレーザビームLBを照射しながら、レーザ加工ヘッド24をワーク材Wに対して相対的に被曲げ部Wbに沿ってX軸方向及びY軸方向へ移動させる。そして、再度、レーザ加工ヘッド24の先端部からワーク材Wの被曲げ部Wbに向かってレーザビームLBを照射しながら、レーザ加工ヘッド24をワーク材Wに対して相対的に被曲げ部Wbに沿ってX軸方向及びY軸方向へ移動させる。すると、ワーク材Wの被曲げ部Wbの板厚方向における表面Faから裏面Fbにかけての領域がワーク材Wの母材硬度よりも低硬度になるように、ワーク材Wの被曲げ部Wbに対して局所的に熱処理(アニーリング処理)を行うことができる。なお、図8(b)において、ワーク材Wの母材硬度よりも低高度になっている領域には、点ハッチングが施してある。
(第1実施形態の変形例4)
第1実施形態の変形例4について図1及び図8(c)を参照して説明する。
図1及び図8(c)に示すように、レーザ加工ヘッド24の先端部からワーク材Wの被曲げ部Wbを含む近傍に向かってレーザビームLBを照射しながら、レーザ加工ヘッド24をワーク材Wに対して相対的に被曲げ部Wbに沿って蛇行しながらX軸方向及びY軸方向へ移動させる。換言すれば、レーザ加工ヘッド24の先端部から照射されるレーザビームLBの照射軌跡Tは、ワーク材Wの被曲げ部Wbに沿って蛇行状になっている。これにより、ワーク材Wの母材硬度よりも低硬度になる領域を被曲げ部Wbに沿って不連続に形成することができる。
(第2実施形態)
第2実施形態について図1から図4、図9、及び図10(a)(b)を参照して説明する。
図4及び図9に示すように、第2実施形態においては、ワーク材Wが高張力鋼、ステンレス鋼の鉄系金属材料からなりかつ次工程で打ち抜かれる被打ち抜き部Wpを有している場合に、制御部60は、次のような構成を有している。なお、第2実施形態においては、ワーク材Wにおける被打ち抜き部Wpの内側部分(被打ち抜き部Wpによって囲まれる部分)は、製品に相当する部分Wmになっており、ワーク材Wにおける被打ち抜き部Wpの外側部分は、残材に相当する部分Wcになっている。
図1、図4、及び図10(a)に示すように、制御部60は、レーザ加工ヘッド24の先端部からワーク材Wの被打ち抜き部Wpに対して水平方向にオフセットした箇所に向かってレーザビームLBを照射しながら、レーザ加工ヘッド24をワーク材Wに対して相対的に被打ち抜き部Wpに沿ってX軸方向及びY軸方向へ移動させるように、X軸用モータ16の駆動、Y軸用モータ22の駆動、ファイバレーザ発振器18の出力、及びレーザ加工ヘッド24の動作を制御するようになっている。制御部60は、その際に、ワーク材Wの被打ち抜き部Wpの板厚方向における表面Faから裏面Fbにかけての領域がワーク材Wの母材硬度よりも低硬度に局所的に熱処理(アニーリング処理)されるように、X軸用モータ16の駆動、Y軸用モータ22の駆動、及びファイバレーザ発振器18の出力状態等を制御するようになっている。具体的には、制御部60は、前述のようにワーク材Wの被打ち抜き部Wpの内部組織(材料組織:microstructure)を変化させるため、レーザビームLBの照射位置の照射速度(レーザ加工ヘッド24の照射位置の相対的な移動速度)、レーザビームLBの照射面積、及びレーザビームLBの出力状態等を制御して、ワーク材Wに被打ち抜き部Wpに投入されるレーザビームLBの単位時間当たりのパワー密度と照射面積を調整している。一例として、高張力鋼からなるワーク材W(板厚1.2mm)の被曲げ部Wbに対して局所的に熱処理を行う際のレーザ条件は、レーザビームLBの出力:0.8kW、レーザビームLBのビームウェイスト:φ4.7mm、レーザビームLBの照射位置の照射速度:1.5m/分と設定した。なお、比較例として、同じワーク材Wの切断を行う際のレーザ条件は、レーザビームLBの標準的な出力:4kW又は2kW、レーザビームLBの照射位置の照射速度(切断速度):40m/分又は24m/分になっている。また、図10(a)(b)において、ワーク材Wの母材硬度よりも低高度になっている領域には、点ハッチングが施してあり、ワーク材Wの母材硬度よりも高硬度になっている領域には、斜線ハッチングが施してある。
制御部60は、各種アシストガスのガス圧、ガス種等も前記局所的な熱処理用に適応するように制御している。制御部60は、レーザビームLBがワーク材Wの表面Faに与える単位時間当たりのパワー密度とレーザビームLBの照射面積とを制御している。
図2(a)(b)、図3(a)(b)、及び図4に示すように、制御部60は、ワーク材に対してレーザ切断加工を行う際におけるレーザビームLBの照射径よりも、ワーク材Wの被打ち抜き部Wpに対して局所的に熱処理を行う際におけるレーザビームLBの照射径が大きくなるように、集束レンズ用モータ36の駆動(正レンズ用モータ42の駆動及び負レンズ用モータ44の駆動)を制御するようになっている。
続いて、第2実施形態の作用について、第2実施形態に係る打ち抜き加工方法を含めて説明する。ここで、第2実施形態に係る打ち抜き加工方法は、鉄系金属材料からなる板状のワーク材Wの被打ち抜き部Wpを打ち抜くための方法である。
図1、図4、図9、及び図10(a)に示すように、制御部60は、前述のように、X軸用モータ16の駆動、Y軸用モータ22の駆動、及びファイバレーザ発振器18の出力状態等を制御する。これにより、レーザ加工ヘッド24の先端部からワーク材Wの被打ち抜き部Wpに対してオフセットした箇所に向かってレーザビームLBを照射しながら、レーザ加工ヘッド24をワーク材Wに対して相対的に被打ち抜き部Wpに沿ってX軸方向及びY軸方向へ移動させることができる。すると、ワーク材Wの被打ち抜き部Wpの板厚方向における表面Faから裏面Fbにかけての領域がワーク材Wの母材硬度よりも低硬度になるように、ワーク材Wの被曲げ部Wbに対して局所的に熱処理(アニーリング処理)を行うことができる。ここで、レーザ加工ヘッド24は、鉛直方向に対して傾斜させてもよい。ワーク材Wのうち残材に相当する部分Wcにのみワーク材Wの母材硬度よりも高硬度の領域が生成されるようになっている。
その後に、図10(b)に示すように、ワーク材Wをパンチプレスにおける打ち抜き加工用の上部金型66と下部金型68に対して相対的に被打ち抜き部Wpに沿って水平方向へ移動位置決めしながら、打ち抜き加工用の上部金型66と下部金型68の協働によりワーク材Wの被打ち抜き部Wpを打ち抜く。これにより、ワーク材Wから製品(図示省略)を取り出すことができる。
前述のように、ワーク材Wの被打ち抜き部Wpを打ち抜く前に、ワーク材Wの被打ち抜き部Wpの板厚方向における表面Faから裏面Fbにかけての領域がワーク材Wの母材硬度よりも低硬度になるように、ワーク材Wの被打ち抜き部Wpに対して局所的に熱処理を行っている。これにより、ワーク材の被打ち抜き部Wpを打ち抜く前に、ワーク材Wの被打ち抜き部Wpの板厚方向における表面Faから裏面Fbにかけての領域の引張強度を低下させて、その領域の延伸性(伸び性)を高めることができる。
従って、第2実施形態によれば、ワーク材Wが例えば高張力鋼等の鉄系金属材料からなる場合であっても、そのワーク材Wの引張強度に必要な打ち抜き荷重を低減して、従来のパンチプレスで容易に打ち抜き加工することができる。
(第2実施形態の変形例)
第2実施形態の変形例について図2(a)(b)及び図11(a)(b)を参照して説明する。
図2(a)(b)及び図11(a)(b)に示すように、第2実施形態の変形例においては、レーザ加工ヘッド24がビーム整形光学系(図示省略)を有した場合に、ビーム整形光学系によってレーザビームLBのビーム形状を円形状(図3(a)参照)からツイン型の楕円形状に整形している。そして、レーザ加工ヘッド24の先端部からワーク材Wの被打ち抜き部Wpに向かってレーザビームLBを照射しながら、レーザ加工ヘッド24をワーク材Wに対して相対的に被打ち抜き部Wpに沿ってX軸方向及びY軸方向へ移動させることができる。すると、ワーク材Wの被打ち抜き部Wpの板厚方向における表面Faから裏面Fbにかけての領域がワーク材Wの母材硬度よりも低硬度になるように、ワーク材Wの被曲げ部Wbに対して局所的に熱処理(アニーリング処理)を行うことができる。なお、図11(a)において、ワーク材Wの母材硬度よりも低高度になっている領域には、点ハッチングが施してあり、ワーク材Wの母材硬度よりも高硬度になっている領域には、斜線ハッチングが施してある。
また、ビーム整形光学系によってレーザビームLBのビーム形状をツイン型の楕円形状に整形する代わりに、2つのレーザ加工ヘッド24を用いてもよい。この場合には、各レーザ加工ヘッド24の先端部からワーク材Wの被打ち抜き部Wpに向かってレーザビームLBを照射することになる。
(第3実施形態)
第3実施形態について図1、図4、図9から図12(a)(b)を参照して説明する。
図4及び図9に示すように、第3実施形態においては、ワーク材Wが引張強度の低い鋼材等の鉄系金属材料からなりかつ次工程で打ち抜かれる被打ち抜き部Wpを有している場合に、制御部60は、次のような構成を有している。
図1、図4、及び図12(a)に示すように、制御部60は、レーザ加工ヘッド24の先端部からワーク材Wの被打ち抜き部Wpに箇所に向かってレーザビームLBを照射しながら、レーザ加工ヘッド24をワーク材Wに対して相対的に被打ち抜き部Wpに沿ってX軸方向及びY軸方向へ移動させるように、X軸用モータ16の駆動、Y軸用モータ22の駆動、ファイバレーザ発振器18の出力、及びレーザ加工ヘッド24の動作を制御するようになっている。制御部60は、その際に、ワーク材Wの被打ち抜き部Wpの板厚方向における表面Faから裏面Fbにかけての領域がワーク材Wの母材硬度よりも高硬度に局所的に熱処理(焼入れ処理)されるように、X軸用モータ16の駆動、Y軸用モータ22の駆動、及びファイバレーザ発振器18の出力状態等を制御するようになっている。具体的には、制御部60は、前述のようにワーク材Wの被打ち抜き部Wpの内部組織(材料組織:microstructure)を変化させるため、レーザビームLBの照射位置の照射速度(レーザ加工ヘッド24の照射位置の相対的な移動速度)、レーザビームLBの照射面積、及びレーザビームLBの出力状態等を制御して、ワーク材Wに被打ち抜き部Wpに投入されるレーザビームLBの単位時間当たりのパワー密度を調整している。一例として、引張強度の低い鋼材からなるワーク材W(板厚1.2mm)の被曲げ部Wbに対して局所的に熱処理を行う際のレーザ条件は、レーザビームLBの出力:0.8kW、レーザビームLBのビームウェイスト:φ4.7mm、レーザビームLBの照射位置の照射速度:1.5m/分と設定した。なお、比較例として、同じワーク材Wの切断を行う際のレーザ条件は、レーザビームLBの標準的な出力:4kW又は2kW、レーザビームLBの照射位置の照射速度(切断速度):40m/分又は24m/分になっている。また、図12において、ワーク材Wの母材硬度よりも低高度になっている領域には、点ハッチングが施してあり、ワーク材Wの母材硬度よりも高硬度になっている領域には、斜線ハッチングが施してある。
制御部60は、各種アシストガスのガス圧、ガス種等も前記局所的な熱処理用に適応するように制御している。制御部60は、レーザビームLBがワーク材Wの表面Faに与える単位時間当たりのパワー密度とレーザビームLBの照射面積とを制御している。
図4及び図12(a)(b)に示すように、制御部60は、ワーク材に対してレーザ切断加工を行う際におけるレーザビームLBの照射径よりも、ワーク材Wの被打ち抜き部Wpに対して局所的に熱処理を行う際におけるレーザビームLBの照射径が大きくなるように、集束レンズ用モータ36の駆動(正レンズ用モータ42の駆動及び負レンズ用モータ44の駆動)を制御するようになっている。
続いて、第3実施形態の作用について、第3実施形態に係る打ち抜き加工方法を含めて説明する。ここで、第3実施形態に係る打ち抜き加工方法は、鉄系金属材料からなる板状のワーク材Wの被打ち抜き部Wpを打ち抜くための方法である。
図1、図4、図9、及び図12(a)に示すように、制御部60は、前述のように、X軸用モータ16の駆動、Y軸用モータ22の駆動、及びファイバレーザ発振器18の出力状態等を制御する。これにより、レーザ加工ヘッド24の先端部からワーク材Wの被打ち抜き部Wpに向かってレーザビームLBを照射しながら、レーザ加工ヘッド24をワーク材Wに対して相対的に被打ち抜き部Wpに沿ってX軸方向及びY軸方向へ移動させることができる。すると、ワーク材Wの被打ち抜き部Wpの板厚方向における表面Faから裏面Fbにかけての領域がワーク材Wの母材硬度よりも高硬度になるように、ワーク材Wの被曲げ部Wbに対して局所的に熱処理(焼入れ処理)を行うことができる。
その後に、図12(b)に示すように、ワーク材Wをパンチプレスにおける打ち抜き加工用の上部金型66と下部金型68に対して相対的に被打ち抜き部Wpに沿って水平方向へ移動位置決めしながら、打ち抜き加工用の上部金型66と下部金型68の協働によりワーク材Wの被打ち抜き部Wpを打ち抜く。これにより、ワーク材Wから製品(図示省略)を取り出すことができる。
前述のように、ワーク材Wの被打ち抜き部Wpを打ち抜く前に、ワーク材Wの被打ち抜き部Wpの板厚方向における表面Faから裏面Fbにかけての領域がワーク材Wの母材硬度よりも高硬度になるように、ワーク材Wの被打ち抜き部Wpに対して局所的に熱処理を行っている。これにより、ワーク材の被打ち抜き部Wpを打ち抜く前に、ワーク材Wの被打ち抜き部Wpの板厚方向における表面Faから裏面Fbにかけての領域の引張強度を高めて、その領域の延伸性(伸び性)を低下させることができる。
従って、第3実施形態によれば、ワーク材Wが引張強度の低い鋼材等の鉄系金属材料からなる場合に、ワーク材Wの打ち抜き加工によってワーク材Wにバリが生じること抑えて、打ち抜き加工の加工品質の向上を図ることができる。
なお、本発明は、前述の実施形態の説明に限られるものではなく、例えば、次のように、種々の態様で実施可能である。即ち、第2実施形態においてワーク材Wの被打ち抜き部Wpに対して行う熱処理(アニーリング処理)を、ワーク材Wの被曲げ部Wbを曲げる前に、ワークWの被曲げ部Wbに対して局所的に行ってもよい。
そして、本発明に包含される権利範囲は、前述の実施形態に限定されないものである。