JP6844392B2 - 焼結鉱の還元粉化性評価方法 - Google Patents
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Description
まず、鉱石、石灰石等の副原料、炭材、水をミキサーあるいは混錬機を用いて造粒して、焼結原料を得る。
焼結鉱が粉化すると、高炉内の通気性を悪化させて、荷下がりの不調や、棚吊りを引き起こし、高炉操業を不安定化させる恐れがある。
高炉操業を安定して行うためには、焼結鉱の還元粉化性を評価するのが重要である。
しかしながら、還元粉化性試験は、試料を加熱する炉、試料を還元するガス、および試料を粉化させるドラムが必要であり、簡便性に欠けるという問題があった。
しかしながら気孔量は、焼結鉱内でのばらつきが大きく、少量の試験試料では代表値を得るのが困難であるという問題があった。
しかしながら、2次ヘマタイトは、1次ヘマタイトとの区別が困難であり、還元粉化性を正確に評価することは困難であった。
しかしながら、特許文献5ではカルシウムフェライトの総量から特性を評価しており、カルシウムフェライトの組成の違いを考慮していないため、評価精度が十分でないという問題があった。また、特許文献5では、焼結鉱の特性として、具体的には強度しか評価しておらず、還元粉化性を定量的に評価することはできなかった。
前記粉末試料をX線回折法によって分析し回折パターンを得るX線回折パターン測定工程と、
前記回折パターンにリートベルト解析を適用して鉱物相の相分率を求めるリートベルト解析工程と、
前記鉱物相のうち、Fe、Ca、Alを含むカルシウムフェライト相である、SFCA−I(Silico-ferrite of calcium and aluminum - I)の相分率から前記焼結鉱の還元粉化性を評価する還元粉化性評価工程と、
を実施する焼結鉱の還元粉化性評価方法であって、
前記リートベルト解析工程は、
Fe、Ca、Si、Alを含み、Fe含有量が前記SFCA−Iより少ないカルシウムフェライト相である、SFCAと、前記SFCA−Iとを分離して、前記SFCA−Iの相分率を定量することを特徴とする。
また、この発明によれば、SFCA−IとSFCAを分離してリートベルト解析を行うため、従来よりも高精度に焼結鉱の還元粉化性を評価できる。
まず、本発明を創出するに至った経緯について、説明する。
非特許文献1に記載のように、焼結反応中に生成されるカルシウムフェライトが、焼結鉱の特性に影響を与えることは、公知である。
擬似粒子の焼結の際に、擬似粒子中の炭材である粉コークスの燃焼により、焼結層内の温度が1200℃近くまで上昇すると、Fe2O3とCaOの界面で固相拡散が進行し、固体のCaO−Fe2O3が生成する。
さらに温度が上昇するとCaO−Fe2O3が融液になる。焼結層内の温度が1200℃〜1300℃に上昇すると、融液量はさらに増加し、融液の拡散が活性化することで周りの原料を焼結させる。焼結が進むとCaO−Fe2O3系融液は冷却され、カルシウムフェライト、2次ヘマタイト、マグネタイト等の鉱物相に変化する。
本出願人は、これら鉱物相の相分率と焼結鉱の還元粉化性との間に、相関があるか否かを検討した。
SFCA−Iとは、Fe、Ca、Alを含むカルシウムフェライト相である。SFCA−Iには、Mgが固溶している場合もある。
SFCAとは、Fe、Ca、Si、Alを含み、Fe含有量がSFCA−Iより少ないカルシウムフェライト相である。
以上が、本発明を創出するに至った経緯である。
まず、図1を参照して本実施形態に係る還元粉化性評価方法の概要について、説明する。
まず、焼結原料を造粒し、焼成して得られた焼結鉱を粉末状に粉砕して粉末試料を得る(図1のS1、試料粉砕工程)。
次に、粉末試料をX線回折法によって分析し回折パターンを得る(図1のS2、X線回折パターン測定工程)。
次に、回折パターンにリートベルト解析を適用して鉱物相の相分率を求める(図1のS3、リートベルト解析工程)。
最後に、SFCA−Iの相分率から焼結鉱の還元粉化性を評価する(図1のS4、還元粉化性評価工程)。
以上が本実施形態に係る還元粉化性評価方法の概要の説明である。
まず、鉄鉱石や返鉱等の鉄含有原料、石灰石等の副原料、およびコークス等の炭材を造粒した後、焼成して焼結鉱を得る。焼結装置としてはDL(ドワイトロイド)式が例示できるが、焼結鍋を用いてもよい。
次に、焼結鉱試料を焼結ケーキまたは、鍋試験で得られた焼結鉱塊から採取する。以下の説明では焼結ケーキから採取した場合について説明する。
採取の際には、鉱物相の相分率以外の還元粉化性因子の影響を抑制するような採取を行う必要がある。具体的には、焼結ケーキからの採取部位を統一して、焼結鉱の粒度や焼結反応の熱履歴などに、差が無い試料を採取するのが好ましい。
次にXRDの測定方法について記述する。前述した手法で粉砕した焼結鉱試料をサンプルホルダーに詰める。XRD測定に影響がなければ、サンプルホルダーの材質は限定しないが、一般にはガラス製である。試料粉末をサンプルホルダーに詰める際には、必要以上に強く詰めないのが好ましい。強く詰めると焼結鉱の結晶方位が揃って、正確なXRDパターンが測定され難くなる(すなわち配向が起こる)。詰めた後の試料の表面は平滑にするのが好ましい。これは、表面に凹凸があると侵入深さが一定でなくなり、XRDパターンに悪影響が生じるためである。焼結鉱の粉末は、特に配向が起こりやすい試料ではないため、配向を防ぐための特別な構造や方法は必要ない。
XRDのリートベルト解析について説明する。リートベルト解析は、XRD測定によって得られたXRDパターン(実測XRDパターン)に一致するように、計算XRDパターンの因子を最小二乗法によって最適化する方法である。これによって、一般的なピーク強度比較以上の精度で鉱物相の決定と定量ができる。リートベルト解析による定量には、標準物質を混合しないで鉱物相の定量が可能なWPPF(Whole Powder Pattern Fitting)法を利用するのが好ましい。
以下の説明は解析ソフトウェアとしてPDXL-2を、結晶相のデータベースとして、ISDD-PDFの2012年版を利用した場合を例に説明するが、解析ソフトウェアと結晶相のデータベースはこれらに限定されない。
この時点では焼結鉱中の鉱物相の正確な存在分率はわからないが、基本的には前述したヘマタイト、マグネタイト、多成分系カルシウムフェライト、シリケートスラグの順番での鉱物相の精密化を実施すると良い。また、微量のウスタイトや2元系カルシウムフェライトについても精密化対象にしても良いが、これらの相を先に精密化してしまうと、正確な結果が得られない可能性がある。なお、本発明において、これらの微量(約3mass%以下)な相の有無は結果にほとんど影響がないため、必ずしも選択する必要はなく、解析対象外としても問題ない。
SFCA−Iも連続固溶体であるため、Ca3(Ca,Fe)(Fe,Al)16O28の構造式を満たした結晶構造を有しつつ、異なる組成の相が複数存在するが、組成が明瞭に変わらない限りは定量値に大きな影響はない。そのため、本実施形態では、化学式:Ca3.18Fe15.48Al1.34O28、No:00-052-1258を選択する。
シリケートスラグはダイカルシウムシリケート(Ca2SiO4)が大部分を占めるため、この組成の結晶相を選択するとよい。中でも2θ=32°付近に強い回折ピークをもつ、Lernite(Ca2SiO4)が焼結鉱のXRDパターンに適合している。特に問題がなければこの相を選択するのが好ましい。Lerniteもヘマタイトやマグネタイトと同じく、似た結晶構造をもつ鉱物相が存在するため、XRDパターンとFOMを参考にしながら、最も適したLerniteを候補の相に選択する。
具体的には、選択した候補の鉱物相に対して、リートベルト解析の条件を設定する。
リートベルト解析で計算XRDパターンに利用する理論回折強度の計算式を式(1)に示す。
s:尺度因子
SR(θi):試料表面粗さの補正因子
A(θi):吸収因子
D(θi):一定照射補正因子
K:ブラッグ反射強度に寄与する反射の番号
mk:ブラッグ反射の多重度
Fk:結晶構造因子、
Pk:選択配向関数、
L(θk):ローレンツ偏光因子
θk:ブラッグ角
Φ(Δ2θik):プロファイル関数
yb(2θi):バックグラウンド関数
これらの因子は、式(1)中では以下の式(2)〜(5)で表される。
フィッティングする因子は、格子定数、プロファイル関数、結晶構造の3つがある。まず、格子定数とプロファイル関数の精密化を同時に実施する。その後、結晶構造の精密化を行うとよい。なお、微量相においては結晶構造の精密化は対象外で良い。
本実施形態では、ヘマタイト、マグネタイト、SFCA、SFCA−I、Ca2SiO4の順番に、格子定数とプロファイル関数を同時に精密化する。一番初めのヘマタイトとマグネタイトの精密化は同時でも良い。これが完了したら、条件に応じて、ヘマタイト、マグネタイト、SFCA、SFCA−I、Ca2SiO4の結晶構造の精密化を実施する。
yi:回折強度
Wi=1/yi
N :全データ数
P :精密化するパラメータの数
一般的な焼結鉱の場合、S値が2〜3であれば、十分に高精度に鉱物相の決定と定量がされたと判断できる。ただし、焼結鉱試料によってはフィッティングが妥当であっても、S値が3以上になることがある。
S値を確認して、リートベルト解析で十分な解析結果が得られたと判断したら、SFCA−Iの定量値を比較する。SFCA−Iの定量値が高い焼結鉱は還元粉化性が低いと推定できる。
比較対象である還元粉化性は、焼結鉱の還元粉化性として、JISで定められた代表的な還元粉化指数である、RDI(Reduction-Disintegration index)を用いるのが好ましい。
そのため、還元粉化性試験を行わなくても、焼結鉱の還元粉化性を評価できる。
複数の焼結鉱試料に対して、還元粉化性とSFCA−I相分率との相関を評価した。具体的な手順は以下の通りである。
この造粒物をDL焼結機で焼結し、パレット抜きした焼結ケーキを用意し、焼結ケーキを破砕して、直径5mm以下に整粒したものを試料として採取した。
採取した焼結鉱の量は1kgである。その焼結鉱をJIS M 8720に従って、還元粉化指数RDIを測定した。
還元粉化指数RDI評価後の粉砕された焼結鉱試料から、それぞれ約1kg採取して、振動ミルによる粉砕を行った。その後、XRDパターンを評価した。XRDの測定条件は以下の通りである。
管球:CuKα (40kV、40mA)
検出器:1次元検出器D/tex(Rigaku製)
2θ:10〜140deg
Δ2θ:0.02deg
スキャン速度:1deg/min
リートベルト解析結果から、決定されたSFCA−I相分率と還元粉化指数RDIとの相関を求めた。
さらに、焼結鉱試料から約20mmφの焼結鉱粒を3個採取して、Micrometarics社製ポロシメータ装置(オートポア9520)を用いて、3個の焼結鉱粒に水銀を圧入して気孔率を算出し、得られた各気孔率の平均値を各水準に対する気孔率とした。
鉱物相の定量値、還元粉化指数RDI、気孔率を表2に示す。SFCA―Iと還元粉化指数RDIの相関を評価したグラフを図2に示す。気孔率と還元粉化指数RDIの相関を評価したグラフを図3に示す。
参考までに、SFCAと還元粉化指数RDIの相関を評価したグラフを図4に示す。
図3に示すように、気孔率は還元粉化指数RDIと相関が見られなかった。これは、気孔率の焼結鉱中のばらつきが大きく代表性が不十分であるためと考えられる。
図4に示すように、SFCAは還元粉化指数RDIと相関が見られなかった。このことは、カルシウムフェライトは必ずしも全てが還元粉化指数RDIと相関を示すとは限らず、特定の組成のみが還元粉化指数RDIと相関を示すことを示している。
以上の結果から、SFCA−IをSFCAと分離してリートベルト解析を行い、焼結鉱中のSFCAの相分率を測定することにより、SFCAと還元粉化性の間に強い相関が得られ、得られた相関から還元粉化性を精度よく評価できることが分かった。
Claims (3)
- 鉄含有原料、副原料、炭材を含む原料を造粒し、焼成した焼結鉱を粉末状に粉砕して粉末試料を得る試料粉砕工程と、
前記粉末試料をX線回折法によって分析し回折パターンを得るX線回折パターン測定工程と、
前記回折パターンにリートベルト解析を適用して鉱物相の相分率を求めるリートベルト解析工程と、
前記鉱物相のうち、Fe、Ca、Alを含むカルシウムフェライト相である、SFCA−I(Silico-ferrite of calcium and aluminum - I)の相分率から前記焼結鉱の還元粉化性を評価する還元粉化性評価工程と、
を実施する焼結鉱の還元粉化性評価方法であって、
前記リートベルト解析工程は、
Fe、Ca、Si、Alを含み、Fe含有量が前記SFCA−Iより少ないカルシウムフェライト相である、SFCAと、前記SFCA−Iとを分離して、前記SFCA−Iの相分率を定量することを特徴とする焼結鉱の還元粉化性評価方法。 - 請求項1に記載の焼結鉱の強度評価方法であって、
前記SFCA−Iの相分率を還元粉化指数RDI(Reduction-Disintegration index)との近似直線式に代入することで前記焼結鉱の還元粉化性を評価する焼結鉱の還元粉化性評価方法。 - 請求項1または請求項2に記載の焼結鉱の還元粉化性評価方法であって、
前記リートベルト解析工程は、
前記SFCA−IとしてCa3(Ca,Fe)(Fe,Al)16O28の構造式を満たした結晶相を選択し、
前記SFCAとしてCa2(Ca,Fe,Al)6(Fe,Al,Si)6O20の構造式を満たした結晶相を選択して、前記回折パターンにリートベルト解析を適用して前記鉱物相の相分率を求める工程であることを特徴とする、焼結鉱の還元粉化性評価方法。
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