JP4268439B2 - 廃石膏ボードを用いた高機能性カルシウムフェライトの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、産業廃棄物である石膏ボード廃材(以下、廃石膏ボードという。)のリサイクル処理方法に関し、詳しくは、廃石膏ボードを用いてカルシウムフェライトを製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、石膏ボードは建築資材として広く普及しており、その年間生産量はこの20年間で2倍以上と飛躍的な伸びを示している。その一方で、建築物の解体時などにおいて発生する廃石膏ボードも年々増加しており、その排出量は2010年までに260万t/年に達すると予測されている。
【0003】
このような廃石膏ボードは主に埋め立て処理されてきたが、その排出量の増加にともなって埋め立て用地の確保が困難となり、また、廃石膏ボードに含有する硫化物に起因して硫化水素発生による環境への影響が懸念され、特に、平成10年6月の廃掃法改正により、安定型から管理型処分が必須となったことなどにより、安価な埋め立て処理は困難となっている。
【0004】
このような埋め立て処理によらず、廃石膏ボードをリサイクル処理する方法も従来から検討され、幾つかの技術が提案されている。
【0005】
例えば、廃石膏ボードをセメント原料としてリサイクル処理する方法として、特許文献1では、廃石膏ボードを石膏部分と紙部分とに分離した後、石膏部分をロータリーキルンにより600〜900℃で焼成することによりセメント原料用の無水石膏として回収し、紙部分をセメントクリンカ焼成用のサスペンションプレヒータまたはロータリーキルンに給養し、紙部分に含有する硫化物をセメント原料中のCaO3により脱硫する方法が提案されている。
【0006】
しかしながら、廃石膏ボードをセメント原料としてリサイクル処理する方法では、廃石膏ボードを焼成処理して回収される無水石膏は結晶粒子が粗大化しているため、再石膏化がしにくいなどの点からセメント原料としての利用は十分進んでいないのが現状である。
【0007】
したがって、廃石膏ボードをセメント原料以外の用途で再資源化し、有効利用できるための廃石膏ボードのリサイクル処理方法が望まれている。
【0008】
一方、従来から環境保全の点から工業用加熱炉やごみ焼却炉などで発生する各種廃ガス中に含有する硫黄酸化物、窒素酸化物およびダイオキシン類等の有機塩素化合物を抑制する技術が種々検討されている。
【0009】
排ガス中の硫黄酸化物または窒素酸化物を除去する方法として、例えば、特許文献2および3などに示されるような活性コークスまたは活性炭を脱硫、脱硝用の吸着剤として充填層を形成し排ガスを通過させるか、排ガス中に吹き込むことにより硫黄酸化物または窒素酸化物を吸着処理する方法が実用化されている。
【0010】
この方法は、活性コークスおよび活性炭の微細な気孔構造による吸着能を利用する方法であり、同様にダイオキシン類等の有機塩素化合物も吸着処理することが可能である。
【0011】
しかしながら、吸着剤として活性コークスまたは活性炭を用いる場合には、強度が低いため磨耗、粉化しやすく、炭塵爆発の危険性がともなうなどの問題があり、脱硫または脱硝性能も充分ではなかった。
【0012】
また、ダイオキシンを吸着処理した場合には、ダイオキシンは自然界で分解されないため処理後の吸着剤を高温分解などにより無害化処理する必要がある。
【0013】
活性炭などによる吸着処理方法以外の排ガス処理方法として、例えば、特許文献4などに示されるような、酸化鉄触媒をゴミ焼却炉の燃焼室または再燃室に吹き込むなどの方法により発生するダイオキシンを抑制する方法が知られている。
【0014】
酸化鉄触媒は活性炭などの吸着剤に比べて強度が高く、高温での吹き込み時にも粉塵爆発の問題は生じない。
【0015】
しかし、酸化鉄触媒は、排ガス中の塩素や硫黄酸化物と結びつきやすく、触媒活性が低下しやすいため長時間使用ができず、触媒の吹き込みによる短時間使用に限られ、また、触媒の分解活性を得るためには、250℃以上の温度が必要であるから、触媒の吹き込み位置が250℃以上の高温域に限られる。
【0016】
また、酸化鉄触媒は、試薬を用いて複雑な工程により製造されるため活性炭などの吸着剤に比べて比較的高価になる。
【0017】
また、排ガス中の窒素酸化物の除去方法として、非特許文献1に示されるように、アンモニア還元脱硝触媒としてV2O5−TiO2触媒を利用した排ガス処理方法も一般に知られている。
【0018】
V2O5−TiO2系あるいはV2O5−TiO2−WO3系の触媒は、酸化鉄の触媒に比べて、塩素や硫黄酸化物と結合による触媒活性の低下は少ない。しかし、触媒の原料として高価なバナジウムを使用するため、その製造コストが非常に高くなる。
【0019】
また、この触媒による排ガス脱硝処理は、アンモニアを還元剤とする窒素酸化物の還元分解反応であり、その反応温度が200〜400℃であるため、200℃以下の排ガスへの適用は困難であった。
【0020】
【特許文献1】
特開2002−87816号公報
【特許文献2】
特開昭58−122042号公報
【特許文献3】
特開平4−219308号公報
【特許文献4】
特開平11−267507号公報
【非特許文献1】
「触媒講座」(触媒学会)第7巻253ページ5行目
【0021】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来技術の実状に鑑みて、本発明は、廃石膏ボードのリサイクル処理により、安価でかつ機能性の高いカルシウムフェライトを製造する方法、さらには、このカルシウムフェライトを排ガス中の硫黄酸化物、窒素酸化物またはダイオキシン類等の有機塩素化合物等を除去するための排ガス処理用触媒、または、製鉄プロセスにおける高炉用原料、転炉用溶剤などの製鉄用原料として有効活用する方法を提供することを目的とする。
【0022】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決するものであり、その要旨とするところは、以下のとおりである。
【0023】
(1) 廃石膏ボードを破砕した後、CaOと酸化鉄の含有量の合計に対する割合で、CaOの含有量が10〜45mass%となるように、酸化鉄含有原料を配合し、混合した後、脱硫し、1000〜1200℃の温度で焼成し、平均気孔径で1μm以下の微細気孔を含有するカルシウムフェライトを製造することを特徴とする廃石膏ボードを用いた高機能性カルシウムフェライトの製造方法。
【0024】
(2) 廃石膏ボードに、CaOと酸化鉄の含有量の合計に対する割合で、CaOの含有量が10〜45mass%となるように、酸化鉄含有原料を配合し、混合した後、破砕し、脱硫し、1000〜1200℃の温度で焼成し、平均気孔径で1μm以下の微細気孔を含有するカルシウムフェライトを製造することを特徴とする廃石膏ボードを用いた高機能性カルシウムフェライトの製造方法。
【0025】
(3) 廃石膏ボードを破砕し、脱硫した後、CaOと酸化鉄の含有量の合計に対する割合で、CaOの含有量が10〜45mass%となるように、酸化鉄含有原料を配合し、混合した後、1000〜1200℃の温度で焼成し、平均気孔径で1μm以下の微細気孔を含有するカルシウムフェライトを製造することを特徴とする廃石膏ボードを用いた高機能性カルシウムフェライトの製造方法。
【0027】
(4) 前記カルシウムフェライトが微細な針状カルシウムフェライトを主体とすることを特徴とする前記(1)〜(3)の何れかに記載の廃石膏ボードを用いた高機能性カルシウムフェライトの製造方法。
【0028】
(5) 前記カルシウムフェライトの含有量が全焼結体の質量に対する割合で80mass%以上であることを特徴とする前記(1)〜(4)の何れかに記載の廃石膏ボードを用いた高機能性カルシウムフェライトの製造方法。
【0029】
(6) 前記焼成は焼結機を用いて行なうことを特徴とする前記(1)〜(5)の何れかに記載の廃石膏ボードを用いた高機能性カルシウムフェライトの製造方法。
【0030】
(7) 前記酸化鉄含有原料が微粉鉄鉱石、製鉄ダスト、スケールおよびショットブラストのうちの1種または2種以上からなることを特徴とする前記(1)〜(6)の何れかに記載の廃石膏ボードを用いた高機能性カルシウムフェライトの製造方法。
【0031】
(8) 前記カルシウムフェライトを排ガス中の硫黄酸化物、窒素酸化物、有機塩素化合物または揮発性有機化合物の1種または2種以上を除去するための排ガス処理剤として用いることを特徴とする前記(1)〜(7)の何れかに記載の廃石膏ボードを用いた高機能性カルシウムフェライトの製造方法。
【0032】
(9) 前記カルシウムフェライトを高炉用原料として用いることを特徴とする前記(1)〜(7)の何れかに記載の廃石膏ボードを用いた高機能性カルシウムフェライトの製造方法。
【0033】
(10) 前記カルシウムフェライトを転炉用溶剤として用いることを特徴とする前記(1)〜(7)の何れかに記載の廃石膏ボードを用いた高機能性カルシウムフェライトの製造方法。
【0034】
【発明の実施の形態】
カルシウムフェライトは、一般に製鉄プロセスにおける粉状鉄鉱石を塊成化するための焼結工程で製造される焼結鉱中に含有し、CaOとFe2O3を主成分とする人工鉱物として知られている。
【0035】
通常の焼結工程で用いられる焼結原料の成分組成は、Fe2O3、CaO、SiO2およびAl2O3の含有量の合計に対する割合で、Fe2O3:78〜82mass%、CaO:8.5〜10.5mass%、SiO2:4.5〜5.5mass%、Al2O3:1.5〜2.2mass%であり、このような成分組成の焼結原料から製造される焼結鉱中には、カルシウムフェライトが30〜50mass%含有されている。
【0036】
このようなカルシウムフェライトは、Fe2O3、CaO、SiO2およびAl2O3を含有する多成分系カルシウムフェライトとして存在している。
【0037】
図1に、CaO−Fe2O3の2成分系状態図(空気中で焼成)を示す。
【0038】
この状態図から、CaO−Fe2O3の2成分系の場合には、2CaO・Fe2O3、CaO・Fe2O3、CaO・2Fe2O3の3種類の2成分系カルシウムフェライトが生成することが分かる。
【0039】
しかしながら、実際の製鉄プロセスにおける焼結工程で製造される焼結鉱中のカルシウムフェライトは、CaO、酸化鉄の他に、SiO2、Al2O3などを含む多成分系カルシウムフェライトである。
【0040】
また、2CaO・Fe2O3、CaO・Fe2O3、CaO・2Fe2O3の2成分系カルシウムフェライトは、多成分系カルシウムフェライトに比べて、その結晶粒径が大きく、被還元性が劣ることが一般に知られている。
【0041】
また、カルシムフェライトの生成量および組織形態は、Fe2O3、CaOなどの原料の成分組成と、焼成温度によって左右される。
【0042】
また、カルシムフェライトの組織形態としては、その形状から、柱状カルシムフェライト、板状カルシムフェライト、針状カルシムフェライトなどが知られており、焼結温度が低い場合には針状カルシムフェライトが多く、焼結温度が高くなるに従って、板状カルシムフェライト、さらには、柱状カルシムフェライトが多くなり、焼結温度が高くなるに従ってそのサイズも大きくなる。
【0043】
一般に、廃石膏ボード中には、Caが約27mass%ほど、CaSO4の形で含有しており、CaSO4は加熱することによりCaOとSO2に熱分解する。
【0044】
また、廃石膏ボード中のSiO2、Al2O3などの不純物の含有量は、それぞれ、0.9mass%以下、0.3mass%以下と少ない。
【0045】
本発明者らは、廃石膏ボードの熱分解により得られるCaOをカルシウムフェライトの原料として活用することを意図した廃石膏ボードのリサイクル方法を検討した。
【0046】
基礎実験として、CaO含有原料としての石膏ボードの適性を調べるために、通常の焼結工程でCaO含有原料として使用している石灰石との比較実験を行い、両者の特性差を検討した。
【0047】
図2および図3は、CaO含有原料としての石膏ボードと、石灰石をそれぞれ用い、これらに試薬のFe2O3を配合し、CaOと酸化鉄の含有量の合計に対する割合で、CaOの含有量を変化させた条件で焼成した後、得られた焼成体中のカルシウムフェライト生成量および焼成体の比表面積を測定した結果を、それぞれ示す図である。
【0048】
なお、石膏ボードは破砕し、脱硫した後、空気中で1200℃の温度で3時間焼成を行った。また、焼成体の比表面積は、BET式N2吸着法により測定した。本測定は、固体表面に吸着したN2ガス量を測定し、既知であるN2分子1個当たりの占有面積から、固体の比表面積を求めるものである。
【0049】
CaO含有原料として石膏ボードを使用した場合と、石灰石を使用した場合とで、焼成体中のカルシウムフェライト生成量に差はなかったが、焼成体の比表面積は、石膏ボードを用いた場合の方が大きいことがわかった。
【0050】
成分組成の分析結果から石膏ボード中には不純物として微量であるがSiO2およびAl2O3を含有するため、電子顕微鏡による焼成体のミクロ組織の断面観察結果において、生成したカルシウムフェライトは、2CaO・Fe2O3、CaO・Fe2O3、CaO・2Fe2O3などのような純粋な2成分系カルシウムフェライトではなく、SiO2、Al2O3を微量に含む多成分系カルシウムフェライトが観察され、その組織形態は、微細な針状カルシウムフェライトを主体とするものであった。
【0051】
しかしながら、石膏ボード中に不純物として含まれるSiO2およびAl2O3の含有量は微量であるため、その多成分系カルシウムフェライトの構造は、比較的2成分系カルシウムフェライトに近いものであり、その結晶粒径は、通常の微針状カルシウムフェライトに比べて粗大であると考えられる。
【0052】
それにも関わらず、石膏ボードを用いた場合の焼成体中のカルシウムフェライトの比表面積が増大する理由は以下のように考えられる。
【0053】
電子顕微鏡による焼成体のミクロ組織の断面観察結果から、石膏ボードを用いた場合の焼成体中のカルシウムフェライトには、石灰石を使用した場合に比べて、平均気孔径で1μm以下の微細気孔が多く存在することを確認している。
【0054】
これは、焼成時に石膏ボードに含まれる紙部が燃焼することにより微細気孔の生成量が増加したものと推測され、この微細気孔量の増加より焼結体の比表面積が増大したものと思われる。
【0055】
また、石膏ボードを使用した場合、焼成体中のカルシウムフェライトの組織形態は、微細な針状カルシウムフェライトを主体とするものであった。
【0056】
以上から、CaO含有原料として石膏ボードを用いて焼成することにより、通常の焼結鉱に含有するカルシウムフェライトに比べて、平均気孔径で1μm以下の微細気孔が多く存在し、比表面積が大きく、微細な針状カルシウムフェライトを主体とするカルシウムフェライトが生成することがわかった。
【0057】
また、上記の微細気孔が多く、比表面積が大きいカルシウムフェライトは、その組織の特徴から、排ガス中に含有する有害物質の吸着性が高いと考えられる。また、カルシウムフェライト(CaO・Fe2O3)は、その鉱物組成からFe2O3酸化鉄を含有するため、その触媒作用も期待される。
【0058】
これらから、排ガス中の硫黄酸化物、窒素酸化物、有機塩素化合物、揮発性有機化合物などの有害物質を除去するための排ガス処理剤としての活用が期待される。
【0059】
また、焼結鉱に比べて微細気孔が多く存在する微細な針状カルシウムフェライトを主体とするカルシウムフェライトは酸化鉄の還元性が高いと考えられるため、製鉄プロセスにおける高炉用原料としての活用も期待される。
【0060】
本発明者らは、上記のように排ガス処理剤、高炉用原料などの機能性に優れた、カルシウムフェライトの生成量を増加させるための製造条件について、実験などにより検討した。その結果を、同様に、図2および図3中に示す。
【0061】
酸化鉄およびCaOの含有量の合計に対する割合で、CaOの含有量が10〜45mass%の条件で焼結体中のカルシウムフェライトの生成量は80mass%以上、焼成体の比表面積は20m2/g以上となり、多量のカルシウムフェライトが生成し、それにより焼成体の比表面積も増大する。
【0062】
電子顕微鏡による焼成体のミクロ組織の断面観察結果から、これらのカルシウムフェライトの組織形態は、平均気孔径で1μm以下の微細気孔が多く存在し、微細な針状カルシウムフェライトが主体のカルシウムフェライトであった。
【0063】
一般に、排ガス処理剤として、排ガス中の硫黄酸化物、窒素酸化物、有機塩素化合物または揮発性有機化合物の吸着性の指標となる焼成体の比表面が10m2/g以上であれば、排ガス処理剤としての吸着性は十分であることが知られている。
【0064】
一方、CaOの含有量が10mass%より低い場合、または、45mass%を越える場合には、カルシウムフェライトの生成量は著しく減少し、それにより焼成体の比表面積も減少する。
【0065】
なお、焼結体中のカルシウムフェライトの生成量が著しく低い場合には、CaO含有量が小さいときは、共存相としてFe2O3(ヘマタイト)と2CaO・SiO2(ダイカルシウムシリケイト)が、CaO含有量が大きいときは、CaO(ライム)が多く存在していた。
【0066】
以上の知見を踏まえて、焼成体中の微細気孔が多く存在し、微細な針状カルシウムフェライトを主体とするカルシウムフェライトの生成量を増加させ、焼成体の比表面積を増大させるために、本発明では、石膏ボードに、酸化鉄含有原料を配合した後の全原料の成分組成を、酸化鉄およびCaOの含有量の合計に対する割合で、CaOの含有量が10〜45mass%とする。
【0067】
なお、本発明において、酸化鉄含有原料とは、Fe2O3、Fe3O4、FeOなどの酸化鉄を含有する原料を意味する(以下、同様である。)。
【0068】
次に、焼成体中のカルシウムフェライト生成量とその組織形態を左右する焼成温度の最適条件について検討した。
【0069】
前述の実験結果を参考にし、CaO含有原料として石膏ボードを破砕し、脱硫した後、酸化鉄含有原料を配合し、酸化鉄およびCaOの含有量の合計に対する割合で、CaOの含有量が10、30、および、45mass%の条件で、空気中で焼成温度を変化させて3時間の焼成を行い、得られた焼成体中のカルシウムフェライト生成量および焼成体の比表面積を測定した。
【0070】
焼成体の比表面積は、N2吸着法(上述の測定方法と同様)により測定した。その結果を、図4および図5に示す。
【0071】
いずれの配合条件においても、焼成温度が1000〜1200℃の条件では、微細な針状カルシウムフェライトが生成するためのカルシウムフェライト固相反応が十分に進み、60mass%以上のカルシウムフェライトが得られ、焼成体の比表面積も20m2/g以上と極めて高い。
【0072】
一方、焼成温度が1000℃より低い条件では、石膏ボードの熱分解反応によるCaOの生成および上記カルシウムフェライト固相反応が遅くなるため、3時間の焼成で得られるカルシウムフェライト生成量は少なく、CaSO4および酸化鉄の未反応残留物の量が多かった。
【0073】
ちなみに、焼成温度が800℃の低温条件で、ほぼ100mass%のカルシウムフェライトの生成量を得るには約30時間の焼成が必要であった。
【0074】
また、焼成温度が1200℃よりも高い条件でも、カルシウムフェライトの生成量は急激に減少し、焼成体中に共存相としてFe2O3(ヘマタイト)とスラグを主体とする組織に変化した。
【0075】
また、焼成温度が1200℃より高い条件では融液量の増加にともない、微細気孔を含有し、微細な針状カルシウムフェライトを主体とするカルシウムフェライトが減少し、焼成体の比表面積が著しく減少した。また、ロータリーキルンなどで製造する場合に、付着が発生することも懸念される。
【0076】
以上の知見を踏まえて、焼成体中の微細気孔が多く存在し、微細な針状カルシウムフェライトを主体とするカルシウムフェライトの生成量を増加させ、焼成体の比表面積を増大させるために、本発明では、石膏ボードに、酸化鉄含有原料を上述の所定量配合した後の焼成時の焼成温度を1000〜1200℃とする。
【0077】
廃石膏ボードを破砕し、脱硫した後、酸化鉄含有原料を配合した後の全原料中には、基本成分としての酸化鉄およびCaOの他の不純物成分が混入する可能がある。
【0078】
このような不純物成分としては、石膏ボードに含まれるSや微量なSiO2、Al2O3、Cl、Na、Kなどのほかに、酸化鉄含有原料の中にも多くの不純物成分の混入が懸念される。
【0079】
本発明者らの実験によれば、カルシウムフェライトの製造の際に使用する全原料中の不純物成分の含有量が過度に多い場合には、上記カルシウムフェライトの生成量は減少し、それにより焼成体の比表面積も減少する傾向になることが分かった。
【0080】
そして、脱硫前の全原料に対する割合で、廃石膏ボード中に含有するS成分および不純物成分の含有量の合計が60mass%より高くなる場合には、融液生成量の増加に伴って焼成体中に含有するカルシウムフェライト中の微細気孔の減少が顕著となり、焼成体の比表面積が著しく低下する。
【0081】
したがって、本発明では、焼成体中の微細気孔が多く存在し、微細な針状カルシウムフェライトを主体とするカルシウムフェライトの生成量を増加させ、焼成体の比表面積を増大させるために、脱硫前の全原料に対する割合で、酸化鉄およびCaOの含有量の合計を40mass%以上とすることが好ましい。
【0082】
なお、廃石膏ボードの脱硫により、約60mass%の質量の減少が見られ、それによりS分の不純物含有量も減少するため、予め石膏ボードを脱硫した後に酸化鉄含有原料を配合する場合と、石膏ボードに酸化鉄含有原料を配合した後に脱硫する場合とで、配合後の原料(配合原料)における不純物含有量の上記影響は厳密には異なるが、いずれの場合でも、配合原料の全質量に対する割合で、酸化鉄およびCaOの含有量の合計が40mass%以上であれば上記効果を得ることができる。
【0083】
なお、効果の点からは、後者(石膏ボードに酸化鉄含有原料を配合した後に脱硫する場合)の方がより好ましい。
【0084】
図6に、本発明の実施態様の一例を示す。
【0085】
本発明の実施態様は、破砕、配合、脱硫の各工程の順序の違いにより主に以下の3つに分けられる。
【0086】
本発明の第1の実施態様(図6a)は、廃石膏ボードを破砕した後、上述の原料の所定成分組成になるように酸化鉄含有原料を配合し、混合した後、脱硫し、上述の所定焼結温度で所定時間加熱、焼成する。
【0087】
本発明の第2の実施態様(図6b)は、廃石膏ボードに、上述の原料の所定成分組成になるように酸化鉄含有原料を配合し、混合した後、破砕し、脱硫し、上述の所定焼結温度で所定時間加熱、焼成する。
【0088】
本発明の第3の実施態様(図6c)は、廃石膏ボードを破砕し、脱硫した後、上述の原料の所定成分組成になるように酸化鉄含有原料を配合し、混合した後、上述の所定焼結温度で所定時間加熱、焼成する。
【0089】
上記破砕工程は、特に廃石膏ボードを約125μm以下の粒度にすることで、熱分解による脱硫反応、焼成時のカルシウムフェライトの固相反応を促進させる目的で行い、ボールミルなどの破砕機が用いられる。
【0090】
また、上記の脱硫工程は、廃石膏ボードを加熱し、CaOとSO2に熱分解させることにより、焼成時のカルシウムフェライトの固相反応を促進させる目的で行い、ロータリーキルン、焼結機などの加熱または焼成機が用いられる。
【0091】
この脱硫工程は、専用の加熱炉により行なっても、あるいは、1台の焼成機を用いて前段を脱硫工程、後段を焼成工程に分けて行なってもよい。
【0092】
また、焼成時のカルシウムフェライトの固相反応の効率をされに高める目的で、焼成工程の前に、成型工程を設け、全原料をペレタイザーなどの造粒機またはロールコンパクター等の成型機を用いて10mm程度の所定粒度に成型を施してもよい。
【0093】
原料の焼成工程では、ロータリーキルンなどの外部加熱式の焼成機、または、焼結機などの内部加熱式の焼成機が用いられる。焼成時の焼結時間は特に規定するものではないが、生産性の観点から3時間以内とすることが望ましい。
【0094】
焼結機などの内部加熱式の焼成機を用いて加熱焼成する場合は、上述の所定成分組成の原料に、熱源として、粉コークス、無煙炭、製鉄ダストなどの炭材を所定量混合する必要がある。
【0095】
炭材の混合割合は特に規定する必要はなく、使用する炭材の種類および焼成時の最高到達温度の設定に応じて調整する。
【0096】
この場合、焼結機は特に限定する必要はなく、例えば、通常の製鉄プロセスの焼結工程で用いられるトラベリンググレート式の焼結機が用いられる。
【0097】
なお、トラベリンググレート式の焼結機は、パレットと称する火格子(グレート)を有する箱型の原料装入台車(パレット台車)を多数エンドレスベルト状に並べ、一方の端部に配置された点火炉によりパレット内の原料充填層の表層に存在する炭材に点火し、その原料充填層の下側から空気を吸引して炭材の燃焼を下方に進行させながら、パレットを移動させて他方の端部で焼成物を排出できる構造を持つ連続的に焼結鉱を製造できる焼結機である。
【0098】
本発明において、CaO含有原料として用いる廃石膏ボードに配合する酸化鉄含有原料は特に限定する必要はないが、例えば、酸化鉄含有原料としては、微粉鉄鉱石、製鋼ダストなどの製鉄ダスト、スケールおよびショットブラストのうちの1種または2種以上からなるものが用いられる。
【0099】
また、本発明では、産業廃棄物である廃石膏ボードをリサイクル処理して安価で高機能のカルシュウムフェライトとして再資源化することを目的とするから、CaO含有原料としては、主として、廃石膏ボードを使用することが好ましいが、原料の成分組成調整のため、その他のCaO含有原料を添加することを制限するものではない。
【0100】
このようなCaO含有原料としては、石灰石、ドロマイト、製鋼(転炉)スラグのうちの1種または2種以上からなるものが用いられる。
【0101】
参考として、表1に酸化鉄含有原料としてのスケール(製鉄プロセスでの発生スケール)、ショットブラストおよび製鋼ダストの主要な成分組成を示す。
【0102】
本発明は、本発明における酸化鉄含有原料を上記原料のみに限定するものではないが、上記原料は、通常の製鉄プロセスで原料として用いられる原料鉱石または副原料鉱石、または、製鉄プロセスで発生する副産物または廃棄物として入手が容易でありかつ安価であるため好ましい。
【0103】
【表1】
【0104】
本発明法で得られるカルシウムフェライトは、上述のように通常の焼結鉱に含有するカルシウムフェライトに比べて、その組織形態として、平均気孔径で1μm以下の微細気孔が多く存在し、微細な針状カルシウムフェライトが主体とし、比表面積が大きいことが挙げられる。
【0105】
また、カルシウムフェライト(CaO・Fe2O3)はその鉱物組織からFe2O3を含有するため、Fe2O3の触媒作用も期待される。
【0106】
これらの特徴から、本発明法で得られるカルシウムフェライトは、排ガス中の硫黄酸化物、窒素酸化物、有機塩素化合物または揮発性有機化合物の1種または2種以上を除去するための排ガス処理剤として活用できる。
【0107】
例えば、工業用加熱炉またはごみ焼却炉において、本発明のカルシウムフェライトを充填層として排ガスを通過させるか、または、排ガスまたはダイオキシン生成領域に吹き込むことにより、ダイオキシン類等の有機塩素化合物はカルシウムフェライト表面の微細気孔に吸着され、ダイオキシンの再合成温度域である約300〜500℃の温度でカルシウムフェライト中のFe2O3酸化鉄の触媒作用によりダイオキシンの再合成を抑制することができる。
【0108】
ダイオキシン等の有機塩素化合物だけでなく、排ガス中の窒素酸化物および硫黄酸化物についても同様な吸着作用および触媒作用によりこれらの有毒物質の除去するための効果は十分に得られる。
【0109】
また、本発明のカルシウムフェライトは、従来から知られている活性炭または活性コークスの吸着剤に比べて、触媒活性温度域の約300〜500℃でも燃焼や粉塵爆発の危険性はなく使用でき、吸着と触媒の相互作用により活性炭または活性コークスなどの従来の吸着剤に比べてより高い有毒物質の除去効果が得られる。
【0110】
また、本発明法で得られるカルシウムフェライトは、ガソリンスタンドや石油精製工場で揮発するブタン等の炭化水素類、印刷工場、塗装工場で揮発するトルエン、ドライクリーニングで揮発するテトラクロロエチレン等の揮発性有機化合物の除去にも有効である。
【0111】
また、本発明法で得られるカルシウムフェライトは、通常の焼結鉱に含有するカルシウムフェライトに比べて酸化鉄の被還元性が高い微細な針状フェライトの含有量が多く、微細気孔が多いことも還元性を向上させるため、製鉄プロセスにおける高炉用原料としての活用も可能である。
【0112】
なお、発明者の調査結果では、本発明法で得られるカルシウムフェライトの被還元性は、JIS−RIの値で約80%であり、通常の焼結鉱の被還元性(JIS−RIの値で67%)に比べて高いことを確認している。
【0113】
しかし、本発明法で得られるカルシウムフェライトの強度は、SIで85%であり、通常の焼結鉱の強度(SIで90%)に比べて低いため、高炉用原料として過度の使用は、高炉操業時に高炉シャフト部の通気性を悪化させる原因となるため好ましくない。
【0114】
さらに、本発明法で得られるカルシウムフェライトは、塩基度(CaO/SiO2)が高いため、高炉用原料として過度の使用は、高炉スラグ中の塩基度を上昇させるためスラグの粘性が向上し、溶銑中の脱硫能が低下するなどの観点から望ましくない。
【0115】
本発明者らの実験結果から、本発明法で得られるカルシウムフェライトを高炉用原料として使用する場合は、全高炉用原料に対する割合で、10mass%以下での配合量では、高炉シャフト部の通気性および溶銑中の脱硫能を良好に維持しつつ被還元性を向上させることができる。
【0116】
したがって、本発明法で得られるカルシウムフェライトを高炉用原料として使用する場合は、全高炉用原料に対する割合で、10mass%以下とするのが好ましい。
【0117】
また、一般に、カルシウムフェライトを転炉用溶剤として利用すると、低融点化により、CaOを単独で使用する場合に比べて脱燐が促進され、未滓化石灰を低減して石灰原単位を改善できることは広く知られている。
【0118】
本発明法で得られるカルシウムフェライトはその組織構造として微細気孔が多く、微細な針状カルシウムフェライトを主体とするものであり、通常のカルシウムフェライトと同等以上の高い脱燐性および溶解性を有するため、製鉄プロセスにおける転炉用溶剤としての活用も可能である。
【0119】
【実施例】
本発明の効果を、実施例を用いて説明する。
【0120】
(実施例1)
表1に示す成分組成の廃石膏ボードと、Al2O3含有原料としてのフライアッシュ、酸化鉄含有原料としてのスケール(製鉄プロセスでの発生スケール)、ショットブラストおよび製鋼ダストを表2に示す原料成分組成になるように配合し、混合した後に、ボールミルで破砕し、ペレタイザーで造粒してからロータリーキルンの前段で脱硫した後、後段で焼成した。
【0121】
【表2】
【0122】
また、一部の実験(表2の発明例2のみ)は、表2に示す原料原料中に熱源として粉コークスを4mass%添加し、ドラムミキサーで造粒後、通常の焼結プロセスと同様な下方吸引式焼結機で焼成し、その後破砕、整粒して、焼成体を製造した。
【0123】
得られた焼成体の組織については、電子顕微鏡により断面観察するとともに、X線回折による分析によりカルシウムフェライトの生成量を測定した。
【0124】
また、焼成体の比表面積は、BET式N2吸着法により測定した。本測定は、固体表面に吸着したN2ガス量を測定し、既知であるN2分子1個当たりの占有面積から、固体の比表面積を求めるものである。
【0125】
また、得られた各焼成体について排ガス中の有害物質として、ダイオキシンの類似物質である1−クロロナフタレンの吸着量の測定、さらには、ダイオキシン、窒素酸化物および硫黄酸化物の除去率の測定により、各有害物質の除去能力を評価した。これらの評価結果を表3に示す。
【0126】
【表3】
【0127】
1−クロロナフタレンの吸着量の測定は以下のように行った。
【0128】
各焼成体の粒度を5〜10mmに調整したものをガラス管に充填し恒温槽内において150℃で保温した状態で、窒素をキャリアとして1−クロロナフタレン濃度を14ppmに調整したガスを通過させ、焼成体の質量変化を調べた。
【0129】
焼成体は、1−クロロナフタレンを吸着するに従ってその質量は増加するが、平衡吸着量に達すると、それ以上質量は増加しない。この平衡吸着量を各焼成体について測定した。
【0130】
また、ダイオキシンの除去実験は以下のように行った。
【0131】
ゴミ焼却炉から排出されるバグフィルター通過後の排ガスから100Nm3/hrの排ガスを分取する。0.01m3の各焼結体を充填し、かつ、150℃に保温した固定層に前記の排ガスを導入し、固定層前後のダイオキシン濃度から、100時間後のダイオキシン除去率を求めた。
【0132】
なお、ダイオキシン除去率は、
(1−固定層出口ダイオキシン濃度/固定層入口ダイオキシン濃度)×100(%)
で定義される。
【0133】
窒素酸化物および硫黄酸化物の吸着実験は以下のように行った。
【0134】
各焼結体の粒度を5〜10mmに調整したものをガラス管に充填し、恒温槽内において150℃で保温した。
【0135】
次に、窒素をキャリアガスとして容量基準で一酸化窒素(NO)200ppm、二酸化硫黄(SO2)200ppm、酸素15%に調整した混合ガスをガス流量1000Ncm3/分で、各焼結体を充填したガラス管に流し、ガラス管出口におけるNO、NO2(二酸化窒素)、SO2濃度変化を調べた。ここでNO2は調整ガス組成には存在しないが、酸素が共存するためにNOの一部がNO2に酸化される。
【0136】
NOx(NO+NO2)は、減圧式化学発光法により、また、SO2は、非分散赤外吸収法により連続測定を行った。
【0137】
NOx、SO2ともに吸着により除去されるため、ガラス管出口濃度は、吸着能力が時間とともに低下するため時間経過とともに上昇する。このため、除去性能の評価には、0〜20時間までの平均除去率を用いた。
【0138】
窒素酸化物または硫黄酸化物の平均除去率は下式により定義される。
【0139】
ここで、20時間は、上記実験条件において吸着性能の差を判別するために必要な時間で実験的に決定した。
【0140】
平均除去率(%)=[{(ガラス管入口濃度)−(20時間平均ガラス管出口
濃度)}/(ガラス管入口濃度)]×100
表2および3において、発明例1〜3は、何れも原料の成分組成および焼成温度が本発明で定める範囲内であり、焼成後に得られた焼成体中の組織を観察した結果、焼成体中に微針状カルシウムフェライトが多量(82mass%以上)に生成し、焼成体の比表面積は十分は大きい(21m2/g以上)ものであった。
【0141】
なお、発明例1〜3の焼成体中のカルシウムフェライト以外の組織は微細なヘマタイトであった。
【0142】
一方、比較例1は、発明例1〜3と同一成分組成の原料であるが、焼成温度が950℃と本発明の範囲より低い条件で焼成したため、カルシウムフェライトの生成反応速度が遅いためその生成量は20mass%と少なかった。
【0143】
また、比較例2は、本発明1〜3と同一成分組成の原料であるが、焼成温度が1400℃と本発明の範囲より高い条件で焼成したため、カルシウムフェライトはほとんど分解溶融し、その大部分がヘマタイトとスラグの共存組織となったため、カルシウムフェライト生成量は非常に少なく、その結果、焼結体の比表面積は通常の焼結鉱(0.7m2/g程度)並みに低かった。
【0144】
また、比較例3は、原料中のCaOと酸化鉄の合計量に対するCaO含有量割合が本発明範囲より低いため、十分なカルシウムフェライト生成量および焼結体の比表面積は得られなかった。
【0145】
なお、発明例のうちで、発明例2は、通常の焼結プロセスと同様な下方吸引式焼結機で焼成した実施例であるが、得られた焼成体は、粉コークスの燃焼による焼成雰囲気の変化と、下方吸引式特有の不均一性の影響により、十分なカルシウムフェライトの生成量が得れたものの、同じ原料を用いてロータリーキルンで焼成した場合の発明例1の焼結体に比べてやや少ない結果であった。
【0146】
また、排ガス中の各種の有害物質の吸着量、除去率の測定結果から、発明例1〜3は、いずれも比較例1〜3に比べて、排ガス中の各種有害物質の除去能力が飛躍的に高いことが判る。
【0147】
次に、上記の発明例1で製造された焼成体を製鉄プロセスにおける高炉用原料として高炉で使用した場合の被還元性を評価した。
【0148】
発明例1の焼成体の被還元性評価を高炉内反応性の指標であるJIS−RIを測定することにより行なった結果、発明例1の焼成体のJIS−RIは75%であり、通常焼結鉱(JIS−RI:65%)よりも高い結果が得られた。
【0149】
さらに、焼結比75%で操業している内容積3200m3の高炉において、装入する焼結鉱の5%を本発明1の焼結体に置換して操業をおこなった。その結果、高炉シャフト部の還元性が改善されて、燃料比が5kg/tp低下した。
【0150】
次に、上記の発明例1で製造された焼成体を脱燐剤として製鉄プロセスにおける転炉で使用した場合の評価を行なった。
【0151】
従来法として、鉄鉱石と生石灰を1:1の割合で混合した粉体を20kg/tでインジェクションした場合と、従来法の鉄鉱石と生石灰の比率と同じ条件になるように、発明例1の焼結体に生石灰を配合した混合物(発明例1の焼結体/生石灰=16/4)を20kg/tでインジェクションした場合とで、脱燐効果を比較した。
【0152】
その結果、従来法では、当初溶銑中0.1%の燐濃度が0.02%まで低下するのに30分かかったのに対して、発明例1の焼結体を用いた場合には、同じ脱燐を20分で行なうことが可能であった。
【0153】
この結果より、本発明法で得られるカルシウムフェライトは、従来の脱燐剤と同様以上の脱燐効果があることが確かめられた。
【0154】
【発明の効果】
以上、本発明によれば、本発明は、産業廃棄物である廃石膏ボードのリサイクル処理により、安価でかつ機能性の高いカルシウムフェライトを製造する方法を提供することができる。
【0155】
本発明方法で得られたカルシウムフェライトは、排ガス中の硫黄酸化物、窒素酸化物またはダイオキシン類等の有機塩素化合物等を除去するための排ガス処理用触媒、または、製鉄プロセスにおける高炉用原料、転炉用溶剤などの製鉄用原料として有効活用することができ、また、安価な製造コストで製造することができるため、産業上の効果は極めて高いものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】CaO−Fe2O32成分系の状態図を示す図である。
【図2】石膏ボードまたは石灰石を原料とした焼成実験によって、生成した焼成体中のCF量を測定した結果を示す図である。
【図3】石膏ボードまたは石灰石を原料とした焼成実験によって、焼成体の比表面積を測定した結果を示す図である。
【図4】石膏ボードを原料とした焼成実験における、焼成温度によるカルシウムフェライト生成量の変化を示す図である。
【図5】石膏ボードを原料とした焼成実験における、焼成温度による焼成体比表面積の変化を示す図である。
【図6】石膏ボードを原料としたカルシウムフェライト製造の実施例を示す図である。
Claims (10)
- 廃石膏ボードを破砕した後、CaOと酸化鉄の含有量の合計に対する割合で、CaOの含有量が10〜45mass%となるように、酸化鉄含有原料を配合し、混合した後、脱硫し、1000〜1200℃の温度で焼成し、平均気孔径で1μm以下の微細気孔を含有するカルシウムフェライトを製造することを特徴とする廃石膏ボードを用いた高機能性カルシウムフェライトの製造方法。
- 廃石膏ボードに、CaOと酸化鉄の含有量の合計に対する割合で、CaOの含有量が10〜45mass%となるように、酸化鉄含有原料を配合し、混合した後、破砕し、脱硫し、1000〜1200℃の温度で焼成し、平均気孔径で1μm以下の微細気孔を含有するカルシウムフェライトを製造することを特徴とする廃石膏ボードを用いた高機能性カルシウムフェライトの製造方法。
- 廃石膏ボードを破砕し、脱硫した後、CaOと酸化鉄の含有量の合計に対する割合で、CaOの含有量が10〜45mass%となるように、酸化鉄含有原料を配合し、混合した後、1000〜1200℃の温度で焼成し、平均気孔径で1μm以下の微細気孔を含有するカルシウムフェライトを製造することを特徴とする廃石膏ボードを用いた高機能性カルシウムフェライトの製造方法。
- 前記カルシウムフェライトが微細な針状カルシウムフェライトを主体とすることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の廃石膏ボードを用いた高機能性カルシウムフェライトの製造方法。
- 前記カルシウムフェライトの含有量が全焼結体の質量に対する割合で80mass% 以上であることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の廃石膏ボードを用いた高機能性カルシウムフェライトの製造方法。
- 前記焼成は焼結機を用いて行なうことを特徴とする請求項1〜5の何れか1 項に記載の廃石膏ボードを用いた高機能性カルシウムフェライトの製造方法。
- 前記酸化鉄含有原料が微粉鉄鉱石、製鉄ダスト、スケールおよびショットブラストのうちの1種または2種以上からなることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の廃石膏ボードを用いた高機能性カルシウムフェライトの製造方法。
- 前記カルシウムフェライトを排ガス中の硫黄酸化物、窒素酸化物、有機塩素化合物または揮発性有機化合物の1種または2種以上を除去するための排ガス処理剤として用いることを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載の廃石膏ボードを用いた高機能性カルシウムフェライトの製造方法。
- 前記カルシウムフェライトを高炉用原料として用いることを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載の廃石膏ボードを用いた高機能性カルシウムフェライトの製造方法。
- 前記カルシウムフェライトを転炉用溶剤として用いることを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載の廃石膏ボードを用いた高機能性カルシウムフェライトの製造方法。
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