JP6973451B2 - スラグからのSeの溶出量推定方法、スラグの判定方法、スラグの出荷管理方法およびスラグの製造方法 - Google Patents

スラグからのSeの溶出量推定方法、スラグの判定方法、スラグの出荷管理方法およびスラグの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、金属の精錬時に産生するスラグ、とりわけ鉄鋼スラグから溶出するSeの溶出量を簡易かつ迅速に推定するスラグからのSeの溶出量推定方法に関する。また、本発明は、スラグからのSeの溶出量の推定結果に基づいて、スラグが環境基準を満足するか否かを判定するスラグの判定方法に関する。また、本発明は、スラグの判定方法を用いたスラグの出荷管理方法およびこの出荷管理方法を用いた工程を有するスラグの製造方法に関する。
鋼材品質に対する要求水準の高度化に伴い、鋼中の燐や硫黄、水素等の不純物や、アルミナ等の非金属介在物の含有量を下げることが必要となってきている。製鋼プロセスでは、前述のような不純物等を除去するための精錬処理が行われるが、不純物の精錬処理の過程で副産物であるスラグ(鉄鋼スラグ)が発生する。
鉄鋼スラグは、生成過程で1200〜1400℃もしくは1400℃以上の高温を経るため、有機化合物や水銀、ヒ素、カドミウム等の低沸点の重金属はほとんど含まれず、溶出試験で検出もされない。そのため、JIS規格「JIS A5015:2013(道路用鉄鋼スラグ)」では、環境項目として鉛、六価クロム、セレン、フッ素、ホウ素の5物質を規定している。その溶出量基準は土壌の汚染に係る環境基準(平成3年環境庁告示第46号:以下、単に環告46号という。)と同等である。
鉄鋼スラグの中には、硫黄(S)を含有するスラグがある。この理由は、鉄鋼製造プロセスにおける製錬工程や精錬工程で、溶銑または溶鋼中のSなどの不純物をスラグに移行させて吸収させているためである。例えば、高炉で発生する高炉スラグ、とりわけ高炉で発生する溶融スラグを冷却ヤードで徐冷した高炉徐冷スラグや、脱硫剤を用いて溶銑の脱硫を行なう際に発生する脱硫スラグ、あるいは低硫鋼を製造するために脱炭後の溶鋼に脱硫を行なう脱硫工程で発生する二次精錬スラグなどは、比較的多くの硫黄を含有している。
Sを含有する鉄鋼スラグでは、その同族元素であるセレン(Se)が含まれ、基準値を超えるSeが溶出する可能性がある。そこで、特に硫黄を含む鉄鋼スラグは、Seの溶出量を測定し、その結果に基づいて土木建材として製品出荷する(溶出量0.01mg/L以下)、製鉄所内で再利用する(溶出量0.01mg/L超)等、適切な向け先に振り分けている。
スラグからのSeの溶出量の分析法(単に溶出試験法と称することもある。)として、一般に環告46号または非特許文献1の分析法が用いられる。
環告46号では、検液(溶出液)に用いるスラグの粒径を2mm以下と規定しているため、まずスラグを粉砕し篩分け等によりスラグ粒径を2mm以下に調整し、次いで篩分け後のスラグ50gに対し、塩酸又は水酸化ナトリウムでpH5.8〜6.3に調整した水500mLを加えて200回/分の振とうを6時間行う。その後ろ過し、溶出液とする必要がある。この溶出液を、非特許文献1や非特許文献2に記載の水素化物発生−原子吸光分析法や水素化物発生−ICP発光分光分析法によって分析する。
JIS K 0058−1 JIS K 102 67.2、67.3、67.4
しかしながら、環告46号または非特許文献1の分析法は、Seを溶出させるために6時間の振とう操作に加え、成分分析のための試料の前処理を含めると、分析結果を得るまでに最短でも2日程度を要する。また、水素化物発生法は、Seを還元し水素化物として気化して検出する方法であり、極めて煩雑であるうえ他の元素とは別に分析しなければならない。このため、分析結果の報告を受けるまでに数日以上かかる場合もある。分析結果の報告を受けるまでの間、スラグの向け先(製品出荷するか、製鉄所内で再利用するか、エージング処理(大気中への曝露)するか)が確定しないため、スラグの製造現場では向け先が定まらないスラグを仮置きする必要がある。このような場合、仮置き場所を設ける必要があるだけでなく、仮置き場所までのスラグ搬送費用も発生する。
スラグを製品出荷するためには、上述の非特許文献1または2の試験方法でSeの溶出量が基準値以下であることを確認する必要がある。一次スクリーニングとしてSeの溶出量を迅速に分析し、溶出試験に回すスラグを選別することができれば、事業所内のスラグ管理の効率化が可能となり、スラグの物流コストも低減できる。
また、スラグは一定期間大気中でエージングすることで、水溶性のSeが、水に不溶性あるいは難溶性のSe酸化物に変化することにより溶出量が低下することが知られている。このことから、スラグをエージング処理してSeの溶出量を上記の基準値以下とした後に製品出荷する場合もある。その際、エージング期間は過去のエージング実績に基づいて決定するため、エージング不足が生じないように長めにエージング期間を設ける(通常は3ヶ月)傾向にある。これが、スラグ置場の逼迫をさらに助長する要因となっていた。
本発明は係る問題に鑑みてなされたものであり、スラグからのSeの溶出量を短時間で推定することが可能なスラグからのSeの溶出量推定方法、および、このスラグからのSeの溶出量推定方法を利用したスラグの判定方法、ならびに、スラグの出荷管理方法およびスラグの製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、スラグからのSeの溶出量を迅速に分析する方法として、上記の溶出試験法の試験時間を短くする方法を詳細に検討した。
溶出試験の試験時間が長くなる主な理由は、Seの溶出作業と溶出液中のSeの分析作業である。そこで、溶出液中のSeを分析する代わりに、Se以外の元素を分析することを検討した。Seと共に溶出したSe以外の元素の溶出量に、溶出Se量との相関関係があれば、相関のあるSe以外の元素を分析することにより、上記の煩雑な前処理を省略できる可能性がある。
まず環告46号に準拠したスラグの溶出試験を行い、ICP発光分光分析法を用いて溶出液中の種々の元素の溶出量と、Seの溶出量との関係を調査した。しかしながら、溶出Se量と相関を示す元素は存在しなかった。次にこのスラグの成分を底質調査方法により定量し、Seの溶出量との相関についても比較したが、相関を示す元素は存在しなかった。
そこでSeの溶出作業を省略する方法、すなわちスラグを直接分析する方法を検討した。前処理が簡便で比較的精度が高く、しかも多元素を同時に分析できる蛍光X線分析を用いて、Seの溶出量が既知であるスラグ中に存在する、Seの蛍光X線強度を測定するとともに、Se以外の種々の元素とSeとの間に相関性が存在するかについて調査した。
まず、スラグ中のSeの蛍光X線強度(スラグ中のSe量)と、Seの溶出量との関係を調査した。しかしながら、スラグ中のSe量は極めて微量であり、蛍光X線分析では感度が不足するため、Seの溶出量との相関を評価することができなかった。
一方で、スラグ中に存在するSe以外の種々の元素Xとの関係を調査した。その結果、図1に示すように、元素Xとしてスラグ中のS、Cuのそれぞれの蛍光X線強度と、Seの溶出量との間には正の相関関係があることを見出した。さらに検討した結果、スラグ中のS、CuのみならずZnやMnの蛍光X線強度とSeの溶出量との間にも相関関係があることがわかった。
Seの溶出量が、前述の溶出試験や含有量分析などとは軒並み相関が認められなかったにも関わらず、スラグ中のS、Zn、CuおよびMnの蛍光X線強度と相関関係が得られる理由については、以下のように考えられる。
SeはSの同族元素であることから、Sと共存している可能性が高いことがあげられる。またZn、CuおよびMnについては、いずれも硫化物を形成しやすい元素である。これらの硫化物(硫化亜鉛、硫化銅および硫化マンガン)のSの一部がSeに置換し、Seを含有している可能性が高い。蛍光X線分析で得られる元素情報は、強い酸を加熱して供試スラグの粒子内部まで抽出する底質調査方法とは異なり、スラグの表面近傍に限られている。すなわちS、Zn、CuおよびMnの蛍光X線強度は、スラグの表面近傍に存在するSがSeに置換された硫化物に由来する。Seの溶出量は、水がスラグ表面から内部へ向かって浸透する過程で、スラグ表面から溶出するSeを抽出したものであると考えられる。以上がSeの溶出量とS、Zn、CuおよびMnの蛍光X線強度が正の相関を示す理由であると考えられる。
本発明は、以上の知見にさらに検討を加えてなされたものであり、その要旨は以下のとおりである。
[1]スラグ中のSe以外の含有元素Xを分析し、前記含有元素Xの分析結果に基づいてSeの溶出量を推定する、スラグからのSeの溶出量推定方法。
[2]Seの溶出量が既知であるスラグ中のSe以外の含有元素Xを分析することにより、既知であるSeの溶出量と前記含有元素Xとの検量線を予め求めておき、
Seの溶出量が未知であるスラグ中のSe以外の含有元素Xを分析し、分析結果を前記検量線に当てはめることで、Seの溶出量が未知であるスラグからのSeの溶出量を推定する、スラグからのSeの溶出量推定方法。
[3]前記含有元素Xは、S、Zn、CuおよびMnのうちのいずれか1つ以上である、[1]または[2]に記載のスラグからのSeの溶出量推定方法。
[4]前記含有元素Xを蛍光X線分析で分析する、[1]〜[3]のいずれかに記載のスラグからのSeの溶出量推定方法。
[5]前記含有元素Xを蛍光X線分析で分析するに際し、粒径が2mm以下のスラグを用いる、[4]に記載のスラグからのSeの溶出量推定方法。
[6][1]〜[5]のいずれかに記載のスラグからのSeの溶出量推定方法により得られた推定結果に基づいて、スラグが環境基準を満足するか否かを判定する、スラグの判定方法。
[7]環境基準を満足しないと判定されたスラグをエージング処理した後、該エージング処理後のスラグが環境基準を満足するか否かを再度判定する、[6]に記載のスラグの判定方法。
[8]スラグが環境基準を満足すると判定されるまで、エージング処理とスラグの判定を繰り返す、[7]に記載のスラグの判定方法。
[9][6]〜[8]のいずれか1つに記載のスラグの判定方法を用いて、環境基準を満足すると判定されたスラグを出荷可能とする、スラグの出荷管理方法。
[10][9]に記載の出荷管理方法を用いた工程を有するスラグの製造方法。
本発明によれば、スラグからのSeの溶出量を短時間で推定できる。また、本発明によれば、スラグからのSeの溶出量の推定結果を、例えば出荷判定の一次スクリーニングに用いて分析待ちのスラグを少なくすることができ、スラグを仮置き場所へ運搬するための物流コストも削減できる等、事業所内のスラグ管理を効率化が可能となる。
図1は、スラグ中のSe以外の含有元素XとSeの溶出量との正の相関関係を示す図であり、図1(a)はスラグ中のSの蛍光X線強度とSeの溶出量との相関関係を示す図であり、図1(b)はスラグ中のCuの蛍光X線強度とSeの溶出量との相関関係を示す図である。 図2は、本発明の出荷管理方法の一例を示すフローチャートである。 図3は、Sの蛍光X線強度を横軸とし、環告46号の溶出試験により求めたSeの溶出量を縦軸としてプロットした、Seの溶出量を推定するための検量線である。 図4は、Cuの蛍光X線強度を横軸とし、環告46号の溶出試験により求めたSeの溶出量を縦軸としてプロットした、Seの溶出量を推定するための検量線である。 図5は、図3の検量線から求めたSeの溶出量推定値と環告46号の溶出試験により求めたSeの溶出量との関係を示す図である。 図6は、エージング期間とSeの溶出量との関係を示す図である。
本発明の方法を以下に述べる。本発明は、分析対象のスラグにおける、Se以外の含有元素Xを分析し、含有元素Xの分析結果に基づいてSeの溶出量を推定する。含有元素Xとしては、S、もしくはSと化合物を形成する金属元素であればよく、Sと化合物を形成する金属元素として、例えばZn、CuおよびMnをあげることができる。したがって、含有元素Xとしては、S、Zn、CuおよびMnのうちのいずれか1つ以上であることが好ましく、Sがより好ましい。
分析方法は、試料調整を含めた分析時間が短い分析方法が好ましい。さらに、定量下限が、Seの溶出量の環境基準値とされる0.01mg/L以下であり、0.01mg/L付近の繰り返し精度が、相対標準偏差で10%以下程度である分析方法であれば特に限定はない。本発明では、蛍光X線分析(蛍光X線法)を用いることが好ましい。
蛍光X線分析を用いる場合、Seの溶出試験に用いるのと同じく、粒径が2mm以下のスラグを用いることが分析精度の上からも好ましく、スラグの粒径を小さくするほど分析精度を向上させることができる。なお、スラグの粉砕方法に制約はなく、スラグを2mm以下の粒径に粉砕することができればよい。例えば、ジョークラッシャーのギャップ幅を適切な設定値に調節して粉砕し篩分けすることにより、2mm以下の粒径のスラグを得ることができる。
蛍光X線分析を行うにあたり、スラグサンプルは、加圧成型したブリケットサンプルまたは、X線透過率の高い薄膜を張ったサンプルカップなどに充填するなどの手法が挙げられるが、合理的に蛍光X線強度を求めることができれば、その他試料調製に特段の制約はない。蛍光X線の分析条件も、本法に特有なものはなく、スラグを分析する際に用いる測定条件(たとえばJIS R 5204)であればよい。
このようにして求めた分析対象スラグの元素Xの蛍光X線強度は、あらかじめSeの溶出量が既知のスラグからSe以外の含有元素Xを分析することにより、既知であるSeの溶出量とSe以外の含有元素Xとの検量線を予め求めておき、この検量線に基づいてSeの溶出量が未知であるスラグからのSeの溶出量を算出することができる。すなわち、Seの溶出量が既知であるスラグ中のSe以外の含有元素Xを分析することにより、既知であるSeの溶出量と含有元素Xとの検量線を予め求めておき、Seの溶出量が未知であるスラグ中のSe以外の含有元素Xを分析し、この分析結果を検量線に当てはめることで、Seの溶出量が未知であるスラグからのSeの溶出量を推定することができる。
ここで、検量線に用いるスラグは、分析対象のスラグと基本組成が近いスラグであることが好ましい。たとえば鉄鋼スラグであれば、高炉徐冷スラグ、高炉水砕スラグ、製鋼脱硫スラグ、製鋼脱燐スラグなどが挙げられるが、同じ工程のスラグであることが好ましい。また、分析に際しては、分析対象であるスラグと同一の測定条件で蛍光X線強度を測定し、検量線を求めることが望ましい。検量線作成に必要なスラグからのSeの溶出量は、前述のJIS K 0058−1や、環境庁告示46号法等の溶出試験方法により求めることができる。
また、本発明では、本発明のSeの溶出量推定方法により得られた推定結果に基づいて、スラグが環境基準を満足するか否かを判定することができる。スラグが環境基準を満足するか否かを判定することができれば、例えば、スラグからのSeの溶出量を推測し、その結果に基づいて土木建材として製品出荷する(溶出量0.01mg/L以下)、製鉄所内で再利用する(溶出量0.01mg/L超)等、適切な向け先に振り分けるといった出荷判定の一次スクリーニングが可能となる。したがって、本発明のスラグの判定方法を一次スクリーニングに用いることにより、溶出試験に回すスラグを選別することができる。
環境基準を満足しないと判定されたスラグをエージング処理した後、エージング処理後のスラグが環境基準を満足するか否かを、再度本発明のスラグの判定方法を用いて判定することもできる。さらに、環境基準を満足するまでエージング処理と本発明のスラグの判定方法を繰り返し、環境基準を満足すると判定されたスラグを出荷可能とすることも可能である。例えば、図2に示すようなフローチャートにしたがって、スラグ製品の出荷管理方法として活用することができる。また、エージング処理と本発明の判定方法を繰り返すことにより、エージング処理の進行状況を評価することにより、従来よりエージング期間を短縮することができる。このように、本発明によれば、環境基準値を超えないスラグのみスラグ製品として効率的に出荷することができ、事業所内のスラグ管理の効率化が可能となり、スラグの物流コストも低減できる。
さらにまた、上述したスラグの出荷管理方法をスラグの製造方法の1工程として用いることも可能である。例えば、高炉で鉄鉱石にコークス、石灰石を加えて還元し、シリカやアルミナ等を除去する際に排出される高炉スラグ、溶銑予備処理、転炉や電気炉での精錬工程で排出される製鋼スラグを、出荷に向けてスラグヤードでエージング処理する際に本発明の出荷管理方法を適用することができる。
以下、実施例によって、本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
鉄鋼製造プロセス中の、溶銑予備処理で産出される脱硫スラグで、セメント原料向けスラグ30チャージについて、スラグ鍋から各2kgを採取した。採取したスラグを2つに分け、一方をSeの溶出量測定用、もう一方を蛍光X線分析用とし、以下の手順でSeの溶出量の測定および蛍光X線分析を行い、検量線を作成した。
<Seの溶出量の測定>
粉砕および篩分けによりスラグ全量を2mm以下に調製した後、環告46号の溶出試験を実施し、水素化物発生−原子吸光法によりSeの溶出量を求めた。
<蛍光X線分析>
粉砕および篩分けによりスラグ全量を0.5mm以下に調整し、専用のサンプルホルダ(ポリエチレン製、X線照射面はプロレン膜)内に試料を充てんした後、蛍光X線分装置によりS−Kαの蛍光X線強度を求めた。なお、蛍光X線分析の測定は、Rhターゲット、管電圧50kV、管電流1mA、積分時間600秒で実施した。
Seの溶出量を縦軸とし、Sの蛍光X線強度を横軸としてプロットし、Seの溶出量を推定するための検量線を作成した(図3)。
次に、同種の脱硫スラグを別途5チャージ採取し(S1、S2、S3、S4およびS5と称する。)、蛍光X線分析を行い、スラグ中のSの蛍光X線強度を求めた。次いで、上記で得られた検量線から、Seの溶出量を推定した。
なお、5チャージ分(S1〜S5)についても、環告46号の溶出試験を行ってSeの溶出量を求め(Seの溶出量Ci)、上記の検量線を用いて蛍光X線強度から求めたSeの溶出量の推定値(Seの溶出量推定値Xi)と比較した。
表1に、Seの溶出量推定値Xiと環告46号により求めたSeの溶出量Ciの値を示す。
Figure 0006973451
表1の結果から、本発明の分析方法により求めたSeの溶出量推定値Xiと、環告46号により求めたSeの溶出量Ciの値はほぼ一致している。したがって、本発明の分析方法を用いることにより、Seの溶出量を推定することが可能である。
本発明のスラグからのSeの溶出量推定方法を用いて、出荷判定を行った。具体的には、実施例1と同じ脱硫スラグ30チャージ分について、実施例1と同様の手順により検量線を作成した。なお、検量線の作成については、Cu−Kαの蛍光X線強度を測定し、Seの溶出量とCuの蛍光X線強度との関係式(検量線)を求めた。
次に、同種の脱硫スラグを別途10チャージ採取し、スラグ中のCuの蛍光X線強度を求めた。次いで、上記で得られた検量線によりSeの溶出量を推定した。なお、蛍光X線分析用の試料調整および測定条件は、実施例1と同じとした。Seの溶出量の推定値として、0.01mg/L以下を合否の境界濃度として、このSeの溶出量の推定値から当該10サンプルについて出荷判定のための一次スクリーニングを行った。なお、当該10チャージについても実施例1と同様に環告46号の溶出試験を行い、Seの溶出量をそれぞれ求め、Seの溶出量の推定値と比較した。
図4に、Cuの蛍光X線強度を横軸とし、環告46号の溶出試験により求めたSeの溶出量を縦軸とした、Seの溶出量推測値を求めるための検量線を示す。また、図5に、図4の検量線から求めたSeの溶出量推定値と環告46号の溶出試験により求めたSeの溶出量との関係を示す。
図5の結果から、Seの溶出量推定値は、環告46号の溶出試験により求めたSeの溶出量とほぼ正の直線関係を示した。また、脱硫スラグ10チャージのうち、Seの溶出量推定値で不合格となったスラグは2チャージあり、これは環告46号の溶出試験によって判定した結果と合致した。
また、合否判定評価にあたり、本発明の判定方法に要した時間は1時間50分であったのに対し、従来の環告46号の溶出試験を用いた判定では9時間30分を要した。
以上より、本発明の判定方法を用いることで、スラグからのSeの溶出量を迅速に推定することができる。また、本発明の判定方法は、従来の環告46号の溶出試験を用いた判定方法と同等の合否判定を行うことが可能である。
本発明のスラグからのSeの溶出量推定方法に基づき、Seの溶出量の一次スクリーニングにて、環境基準を満たさなかった7チャージ分のスラグを、仮置き場に大気暴露して1週間エージング処理を行い、エージング処理後のスラグのSeの溶出量を評価した。評価方法は、実施例1ないし2に記載と同様の検量線法を用いた。この操作を12回繰返し行い、合計12週(3ヶ月)間エージング処理したときのSeの溶出量の推移を測定した。
その結果を図6に示す。スラグによって程度に差はあるものの、検討したスラグの全てで12週よりも短い期間で環境基準値以下(0.01mg/L以下)となっていた。
本発明により評価したSeの溶出量(推定値)が環境基準値以下となったタイミングでの、実際のSeの溶出量(分析値)を表2に示す。実際の分析値についても、全ての試料で漏れなく環境基準値以下であることが確認された。なお、実際のSeの溶出量(分析値)は、実施例1に記載の環告46号の溶出試験を行ってSeの溶出量を求めた場合と同様の方法で求めた。
Figure 0006973451
したがって、本発明の判定方法を用いてエージング処理とスラグの判定を繰り返すことにより、無駄なエージング期間を省略することが可能であることが示された。これにより、更なる事業所内のスラグ管理の効率化が可能である。

Claims (8)

  1. スラグ中のSe以外の含有元素Xである、S、Zn、CuおよびMnのうちのいずれか1つ以上を蛍光X線分析で分析し、前記含有元素Xの分析結果に基づいてSeの溶出量を推定する、スラグからのSeの溶出量推定方法。
  2. Seの溶出量が既知であるスラグ中のSe以外の含有元素Xである、S、Zn、CuおよびMnのうちのいずれか1つ以上を蛍光X線分析で分析することにより、既知であるSeの溶出量と前記含有元素Xとの検量線を予め求めておき、
    Seの溶出量が未知であるスラグ中のSe以外の含有元素Xを分析し、分析結果を前記検量線に当てはめることで、Seの溶出量が未知であるスラグからのSeの溶出量を推定する、スラグからのSeの溶出量推定方法。
  3. 前記含有元素Xを蛍光X線分析で分析するに際し、粒径が2mm以下のスラグを用いる、請求項1又は2に記載のスラグからのSeの溶出量推定方法。
  4. 請求項1〜のいずれかに記載のスラグからのSeの溶出量推定方法により得られた推定結果に基づいて、スラグが環境基準を満足するか否かを判定する、スラグの判定方法。
  5. 環境基準を満足しないと判定されたスラグをエージング処理した後、該エージング処理後のスラグが環境基準を満足するか否かを再度判定する、請求項に記載のスラグの判定方法。
  6. スラグが環境基準を満足すると判定されるまで、エージング処理とスラグの判定を繰り返す、請求項に記載のスラグの判定方法。
  7. 請求項4〜6のいずれか1つに記載のスラグの判定方法を用いて、環境基準を満足すると判定されたスラグを出荷可能とする、スラグの出荷管理方法。
  8. 請求項に記載の出荷管理方法を用いた工程を有するスラグの製造方法。
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