JP6843250B2 - エンジンの運転方法及びエンジンシステム - Google Patents
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Description
例えば、図17に示す可変バルブタイミング機構の駆動機構の例では、ロッカアーム127にプッシュロッド128を介して連結された排気バルブスイングアーム103や吸気バルブスイングアーム105が、クランク状のリンクシャフト104のタペット軸106(スイングアームの支点位置)に接続されている。アクチュエータによってクランク状のリンクシャフト104の位相を変更(回動)することによって、吸気バルブスイングアーム105や排気バルブスイングアーム103の支点位置が変わり、その結果、カム軸108への接点位置が変わる。
これにより、カム軸108の偏心カム108aがカム軸108で排気バルブスイングアーム103または吸気バルブスイングアーム105を押圧して進退させるタイミングが可変となるようにしている。
従来の技術では、液体燃料の調速制御による運転モードから、ガス燃料の調速制御による運転モードへの切り換えに時間を要していたため、液体燃料を使用する運転モードへの移行は非常時の手段という位置づけであり、出力変動の激しい条件ではガス燃料の調速制御による運転モードへの復帰は困難であった。
本発明では、第一の運転から第二の運転に移行する際、気体燃料の供給量の調速制御を終了すると共に液体燃料の供給量の調速制御を開始し、かつ、気体燃料の供給量を所定値に下げる。この気体燃料の供給量を所定値に下げる操作は例えば1秒以内程度のごく短時間で行われる。気体燃料の供給量が下がると、液体燃料の調速制御の作用により、エンジンの目標となる回転速度を維持するように液体燃料の供給量が増加する。そのため、エンジンの回転速度に大きな影響を与えずに、第一の運転から第二の運転への移行が実施される。
第二の運転から第一の運転に復帰する際には、液体燃料の供給量の調速制御を終了すると共に気体燃料の供給量の調速制御を開始し、かつ、液体燃料の供給量を連続的に下げる。液体燃料の供給量が連続的に下げられると、気体燃料の調速制御の作用により、エンジンの目標となる回転速度を維持するように気体燃料の供給量が増加する。そのため、エンジンの回転速度に大きな影響を与えずに、第二の運転から第一の運転への復帰が実施される。
第一の運転へ復帰するステップをエンジンの出力が下がる過程において実施することで、短時間での第一の運転への復帰が容易となる。第一の運転への復帰時にはノッキングや失火の発生が課題となるが、エンジンの出力が下がる過程においては、十分な空気量が確保された状態であるため適正な空燃比を維持しやすく、調速制御上は燃料の供給を制限する方向であるため、急激な気体燃料の増加を抑制できてノッキングや失火が生じにくい。そこで、このタイミングにあわせて第一の運転への復帰を行うことで、適正な燃焼を維持しつつ短時間での復帰を可能とする。
液体燃料の供給に機械式燃料噴射ポンプを用いた場合、第二段は機械式燃料噴射ポンプの無噴射領域に相当し、実質的に液体燃料の噴射がされない状態となる。
ここでは、舶用三乗特性線に対して±10%の出力範囲にアシスト・オフラインを設定し、エンジンの出力がアシスト・オフラインの下側の領域(アシスト・オフ領域)に入ると第一の運転への復帰を行う。また、アシスト・オフラインの上側にアシスト・オンラインを設定し、エンジンの出力がアシスト・オンラインの上側の領域(アシスト・オン領域)に入ると第二の運転に移行する。
エンジンの出力が大きい領域においても、第二の運転から第一の運転への復帰を迅速に行うことができる。
本発明のエンジンの運転方法は、第二の運転から第一の運転への移行を迅速に行える。
本発明によれば、アシストモードからガスモードへの復帰が素早く行えることから、エンジンの出力に応じた条件で、ガスモードとアシストモードとの間で定常的に随時、しかも迅速に運転モードの移行と復帰を行う。これにより、ガスモードにおける、ノッキングや失火の発生を未然に回避できるとともに、アシストモードでの運転は出力が大幅に増加した非常時に運用されるトルクリッチ領域に限られ、排ガス規制による環境対策の側面からも好適である。
また、アシストモードによる運転では、エンジンの運転において制御が行われる運転パラメータはガスモードと共通の設定が用いられることが好ましい。
本発明では、運転制御部による第一の運転から第二の運転に移行する際、ガスガバナによる気体燃料の供給量の調速制御を終了すると共に気体燃料の供給量を所定値に下げ、ディーゼルガバナによる液体燃料の供給量の調速制御を開始する。気体燃料の供給量を所定値に下げる操作は例えば1秒以内程度のごく短時間で行われる。気体燃料の供給量が下がると、液体燃料の調速制御の作用により、エンジンの目標となる回転速度を維持するように液体燃料の供給量が増加する。
第二の運転から第一の運転に復帰する際には、ディーゼルガバナによる液体燃料の供給量の調速制御を終了すると共に液体燃料の供給量を連続的に下げ、ガスガバナによる気体燃料の供給量の調速制御を開始する。液体燃料の供給量が下げられると、気体燃料の調速制御の作用により、エンジンの目標となる回転速度を維持するように気体燃料の供給量が増加する。そのため、エンジンの回転速度に大きな影響を与えずに、第一の運転と第二の運転との間の移行と復帰を実施できる。
また、第一の運転ではノッキングや失火の発生を未然に回避できるとともに、第二の運転は非定常時に運用されるトルクリッチ領域に限られるので排ガス規制による環境対策側面からも好適である。
すなわち、本発明者らは、各VIVT角度で燃料ガス供給弁の開弁(供給開始)タイミングを変更して、THC濃度、燃焼状態から最適値を決定し、VIVT角度に応じて燃料ガス供給弁の開弁タイミングを設定することにより、ガス燃料エンジンの出力を上昇させる際に発生するノッキングを抑制して負荷上げ時間を短縮することができ、更にはトルクリッチ領域、トルクプア領域において燃料ガス供給弁の開弁タイミングに起因していた燃焼変動、回転速度ハンチングを改善できることを見いだした。
ミラーサイクルの欠点として、圧縮温度が下がって低負荷域の着火性が悪化するため、起動時や低負荷時には図16Aに示す通常の吸気弁の開弁タイミングに戻し、高負荷時のみ吸気弁の開弁タイミングを早くする必要がある。
図1及び図2に示す舶用のデュアルフューエルエンジン1(以下、単にエンジン1ということがある)は、運転中にディーゼルモードDとガスモードGとアシストモードAsのいずれかに切り換え可能である。図1に示すデュアルフューエルエンジン1は、プロペラ等に連結された出力軸としてクランク軸2の機構を備えており、クランク軸2はシリンダーブロック3内に設置されたピストン4に連結されている。シリンダーブロック3内に設けたピストン4とエンジンヘッド5によって燃焼室6が形成されている。
図2Cに示すアシストモードAsでは、燃料噴射弁10から燃料油を調速制御によって燃焼室6内に噴射すると共に、燃料ガス供給弁15から燃料ガスを吸気管13内に供給する。
アシストモードAsは、ガス燃料と液体燃料の双方を燃料とし、しかも液体燃料の供給量の調速制御を行う運転様式である。液体燃料を用いるアシストモードAsは、環境対策の側面から運転時間を必要最小限とし、アシストモードが必要でなくなった場合にはすぐにガスモードに復帰させることが好ましい。アシストモードAsでは、燃料噴射弁10から燃焼室6内に燃料油を噴射して燃焼させると共に、マイクロパイロット油噴射弁11からも燃焼室6内にパイロット燃料を噴射して燃焼させる。
ディーゼルモードDは、主にエンジンの始動時及び停止時に用いられ、液体燃料のみを燃料として運転を行う運転様式である。
停止の際には再びディーゼルモードDに変更してから停止を行う。始動時と停止時以外はディーゼルモードDとガスモードGを変更可能である。
図1において、クランク軸2には回転速度センサ20とトルクセンサ21とが取付けられており、回転速度センサ20ではクランク軸2の回転速度(回転数)を計測し、トルクセンサ21ではエンジントルクを計測する。トルクセンサ21として、例えば軸にかかるトルクを歪によって検出するセンサが使用可能である。回転速度センサ20とトルクセンサ21で計測した測定データはエンジン1を制御する制御部22にそれぞれ信号出力する。
出力Lo=2πTn/60 (1)
出力(負荷)A=Lo/Lt×100 (2)
回転速度nを一定にした場合には、出力Aとトルク測定値Tは正比例の関係になる。回転速度nが一定の条件においては、出力Aが大きいほど、すなわちトルクデータTが大きいほど、より大きい割合で吸気弁8の閉じるタイミングの進角を設定することが望ましい。
制御部22で設定された開閉タイミングの第二電気信号は電空変換器27に送信され、電空変換器27で開閉タイミングの信号が空気圧力に変換される。この空気圧力はアクチュエータ28に送られて可変吸気弁タイミング機構30の駆動を制御する。アクチュエータ28には第一減圧レギュレータ34と電空変換器27から駆動用と制御用の空気圧力P1,P2が供給される。
電空変換器27を駆動するための空気圧力は、第一減圧レギュレータ34から第二減圧レギュレータ37でさらに減圧されて供給される。電空変換器27は入力される開閉タイミングの第二電気信号に対応する空気圧力を、アクチュエータ28の動作を調整するための空気圧力P2としてアクチュエータ28に供給する。これらの空気圧力P1,P2に基づいてアクチュエータ28のロッド28aを動作して可変吸気弁タイミング機構30を作動させる。
吸気弁8の開弁タイミングと閉弁タイミングの間の時間は変わらないので開弁のタイミングが吸入下死点から進むと閉弁のタイミングも吸入上死点から同一時間進む。しかも、本実施形態ではエンジン1の出力に応じて開弁と閉弁のタイミングを変更することでノッキングを抑制して負荷上げ時間を短縮させるようにした。エンジン1の出力Aと回転速度nに基づいて制御部22内の第一マップ24と第二マップ25により吸気弁8の開閉タイミングを設定し、アクチュエータ28と可変吸気弁タイミング機構30によって吸気弁8の開弁と閉弁のタイミングを、ノッキングを抑制できるように調整している。
吸気弁8の閉開タイミングである進角の大きさは、リンクシャフトのタペット軸に連結された吸気用スイングアームにカム軸の偏心カムが当たり始めるタイミングで決まる。
このガス圧は燃料ガス圧力計43に表示され、ガスレギュレータ42のバルブ開度を変更することによって調整し、燃焼用のガス燃料として燃料ガス供給弁15から吸気管13内に供給される。吸気管13内ではガス燃料とエアクーラ16で冷却された過給の空気とが混合されて燃焼室6に供給される。負荷上げの際は、燃料ガス供給弁15の動作によりガス燃料の供給量を増加させる。
なお、ガスガバナ44は制御部22の外部に設置されていてもよい。燃料ガス供給弁タイミング機構45は第二マップ25からの第二電気信号を受信して吸気弁8の閉じるタイミングの進角に応じて燃料ガス供給弁15の開弁タイミングを進角させることができればよい。
ディーゼルガバナ48は、アシストモードAsにおいて液体燃料の調速制御を行い、目標となるエンジン1の回転速度に合致するように液体燃料の供給量を調速制御する。アシストモードAsからガスモードGに戻る際には液体燃料の調速制御を終了する。
なお、制御部22において、第一マップ24と第二マップ25を含む構成を運転制御部49として、運転制御部49とは別個にガスガバナ44とディーゼルガバナ48とを有している。
実験には、実際に使用する同一機種のデュアルフューエルエンジン1を用いた。
(1)エンジン1を始動し、回転速度(回転数)nを400min-1、出力(負荷)Aを10%、吸気弁8の閉弁タイミングを545deg(構造上、最も遅い閉弁タイミング)に設定する。
(2)エンジン1の駆動時に発生したノッキングと呼ばれる異常燃焼とそのときの排気温度を計測する。ノッキングは、各エンジンヘッド5に取付けた不図示のノックセンサにより発生を検出する。ノッキング現象発生時は,通常の燃焼波形に高周波の圧力変動が重なった波形となる。
(3)上記のノッキング測定時の排気温度の測定終了後、吸気弁8の閉弁タイミングを5deg減少させ、再度(2)の計測を行う。閉弁タイミングを500deg(構造上、最も早い閉弁タイミング)まで変更して計測を行う。
(4)上記(3)の計測が終了したら、出力Aを10%ずつ110%になるまで段階的に増加させて、再度(2)と(3)の計測を繰り返して行う。
(6)上記(5)の計測結果から、X軸が出力A、Y軸が回転速度n、Z軸が開閉タイミングに設定された図4の3次元グラフにおいて、安全に運転可能な計測点に●(黒丸)、安全ではない計測点に×をプロットする。これによって、出力Aと回転数nと閉弁タイミングとの関係におけるノッキング抑制範囲を選定できる。
(7)上記(1)〜(6)の計測工程を、回転速度nを100min-1ずつ900min-1まで上昇して行い、回転速度n毎の安全に運転できる範囲を計測する。
(9)上記(1)〜(8)の実験により計測した図4に示す安全にエンジンを運転できる直線で囲った3次元領域の範囲内で、窒素酸化物(以下、NOxという)が基準値以下であり、熱効率が一番高い設定を探すことを目的に更に実験を行う。
エンジン回転速度nを400min-1、出力Aを10%、吸気弁8の閉弁タイミングを545degに設定する。
熱効率η=360Lo/H/L (3)
但し、H:燃料ガスの低位発熱量(J/Nm3)
Lo:現時点の出力
L:燃料流量
(12)上記(10)と(11)の計測が終了したら出力を10%ずつ110%まで段階的に増加させ、再び(10)及び(11)の計測を繰り返して行う。閉弁タイミングは図4で示す安全に運転できる範囲内で変更する。
(14)NOxが所定値以下であり、熱効率が一番高い、吸気弁8の閉弁タイミングを各回転速度nと出力A毎に設定する。この結果により、図3に示す第一マップの原案が作成される。
(16)上記(15)で検出されたノッキング強さが基準値以上であった計測点の閉弁タイミングを3deg減少させる。
(17)ノッキング強さが基準値以下になるまで、(15)、(16)の工程を繰り返し、ノッキングが抑制された閉弁タイミングを決定する。閉弁タイミングを減少させると熱効率は悪化する。NOx、ノッキング強さが基準値以下で熱効率が一番高い結果が得られた閉弁タイミングの設定を回転速度n、出力Aの設定値とする。
(18)上記(17)よりノッキングが抑制された閉弁タイミングを各回転速度n、出力Aでそれぞれ計測し、その結果により図3に示す最終的な第一マップ24を作成した。
舶用三乗特性線Dで示した良好な負荷上げパターンの1例では、回転速度と出力の小さい図中右下の位置では進角は最少とされ、回転速度と出力が増すに従って進角を大きくする。進角を大きくする比率は一定ではないが、全体として出力が増すほど進角は大きくされる。なお、出力(負荷率)はトルクと回転速度の積で求められるため、出力軸のトルクが増すほど進角を大きくすると表現することもできる。
可変吸気弁タイミング機構30がアクチュエータ28によって回転制御されるとき、次の手順で第二マップ25を作成する。
(1)アクチュエータ28により閉弁タイミングを変更し、各閉弁タイミングに変更する際の圧力を計測する。
(2)電空変換器27の仕様より上記(1)の圧力を供給する為に必要な第二電気信号を調査する。
(3)上記(1)及び(2)の結果から、横軸に上記第一マップ24で選択した第一電気信号、縦軸に閉弁タイミング(第二電気信号)を示す第二マップ25を作成する。
(1)サーボモータに基づいて閉弁タイミングを変更し、各閉弁タイミングに変更する際の第二電気信号を計測する。
(2)上記(1)の結果により横軸に第一電気信号、縦軸に閉弁タイミング(第二電気信号)を示す第二マップ25を作成する。
第二マップ25は閉弁タイミング(第二電気信号)と第一電気信号との関係を表すマップである。
本実施形態において、VIVT指令値の変化に対応して、即ち、各種の吸気弁閉じクランク角度に対して、吸気弁8と排気弁9のバルブオーバーラップ時による未燃焼燃料ガスの排気管14への吹き抜けが少なくなるように燃料ガスを吸気管13に供給する燃料ガス供給弁15の開弁タイミングを設定する。そのために、先ず回転速度と出力に応じたVIVT指令値を設定する。厳密に言えば、空燃比や点火時期も熱効率やNOxを目安として最適な値に設定しておいた方が好ましいが、ここではエンジン1が安定して運転できているとしてこれらの条件は設定しない。
まず、エンジンの出力(負荷率)を25%、50%、75%、100%とした各運転条件において、吸気弁8の開くタイミングを目安として燃料ガス供給弁15から燃料ガスを供給するが、吸気管13内に燃料ガスを供給することから、燃料ガスは瞬時に吸気弁8に到達しない。そのため、燃料ガス供給弁15から吸気弁8までの距離を考慮した燃料ガス供給弁15の開弁タイミングのクランク角度位置を想定する。そして、燃料ガス供給弁15の開弁タイミングにおけるクランク角度位置をその前後で5deg刻みに変更して、その時の過給機17のガスタービン出口の排ガス中の未燃焼ガスであるトータルハイドロカーボン濃度(THC濃度)を測定する。それぞれの運転条件においてTHC濃度の計測を繰り返して実施する。THC濃度は水素炎イオン化法(JIS B 7956)で測定するのが好ましい。
図6に示すように、燃料ガス供給弁15の開弁タイミングは、バルブオーバーラップ時に未燃焼燃料ガスの吹き抜けが少なく、THC濃度が最低になるクランク角度を基準とする。一方、出力変化によって急激に燃料ガス供給弁15の開弁タイミングが変化すると前述した燃焼変動や回転速度変動に繋がる。このため、出力に応じた燃料ガス供給弁15の開弁タイミングの変化量が極力小さい傾きになるように、選定した基準から±5deg.C.Aの範囲内で最適な燃料ガス供給弁15の燃料ガス開弁タイミングとなるクランク角度を選定し、それぞれの条件で最適な燃料ガス供給弁15の開弁タイミングに対応するクランク角度を決定する。
同様に、図3の発電用特性線Cで行われる回転速度一定とした出力における最適VIVT指令値における最適な燃料ガス供給弁15の開弁タイミングのクランク角度と、出力(負荷率)との関係を、図7の「回転速度一定」の折れ線で示す。
図7に示すように、最適な燃料ガス供給弁15の開弁タイミングは、出力が同一であっても回転速度が変化する条件と回転速度一定の条件とでは異なった結果となる。
そのため、ガスガバナ44により、各条件において決定した最適な燃料ガス供給弁15の開弁タイミングのクランク角度を、VIVT指令値を基準として設定することで、VIVT指令値による燃料ガス供給弁15の開弁タイミングの最適化を図ることができる。なお、図8において、計測していないVIVT指令値や燃料ガス供給開始時期等については、測定点前後のデータを結ぶ近似線により決定すればよい。
図9は図1に示すエンジン1の要部構成を示すものである。図9において、制御部22には外部に目標回転速度指令部50が設置され、予め設定された目標回転速度が制御部22に入力される。制御部22のガス供給時間算出部51では回転速度センサ20の測定値により演算された実回転速度と目標回転速度との偏差に基づいて燃料ガス供給弁15の開弁期間を直接的にPID制御する。
ガス供給時間算出部51に接続されたガス供給弁制御部52では、燃料ガス供給弁15の開弁タイミングを起点として開弁すべき時間を演算して燃料ガス供給弁15に出力し、開弁すべき時間だけ燃料ガス供給弁15を開弁させるようにフィードバック制御する。
制御部22内には、目標回転速度指令部50で設定された目標回転速度により図示しないコントロールラックの目標位置を設定するラック目標値設定手段57が配設されている。ラック目標値設定手段57により設定されたラック位置の目標値により、燃料噴射弁10のラック位置をフィードバック制御する。
ガス供給弁制御部52では、燃料ガス供給弁15の開弁タイミングを起点として算出された開弁期間に基づいて各燃料ガス供給弁15の閉弁タイミングの制御を行う。制御部22は、供給する燃料ガス量をあらかじめ演算せずに実回転速度が目標回転速度に一致するように、燃料ガス供給弁15の開弁期間を直接的にPID制御している。
液体燃料の燃料噴射ポンプ12及び燃料噴射弁10の制御は次のように行われる。即ち、図11に示すように、制御部22では目標回転速度指令部50で設定された目標回転速度と実回転速度の偏差に基づいて、燃料噴射ポンプ12のラック位置を直接的にPID制御する。具体的には、目標回転速度と実回転速度の偏差に基づき、ディーゼルガバナ48によって、フィードバック制御により実回転速度が目標回転速度に追従するように燃料噴射ポンプ12のラック位置が変更されることにより、燃料噴射弁10から噴射される液体燃料の噴射量が増加、減少し、これによってエンジン1の回転速度が増加、減少する。
図12において、エンジン1のクランク角度と吸気弁8及び排気弁9のバルブリフトとの関係を示している。吸気弁8の開閉作動を示す曲線において、実線で示すのはVIVT(可変吸気バルブタイミング)指令値が0%の場合であり、一点鎖線で示すのは進角時(VIVT指令値が100%)の場合の開閉作動イメージを示している。そして、VIVT指令値が0%の場合の燃料ガス供給弁15の開弁期間に対して、進角時(VIVT指令値が100%)の燃料ガス供給弁15の開弁期間がより長くなる。
舶用三乗特性線は、固定ピッチプロペラを用いた船舶において、出力が回転速度の3乗に比例する舶用主機関の特性であり、エンジン1の基本的制御出力レベルである。しかし、出力と回転速度との関係が正確に3乗に比例するとは限らず、ある程度のずれを有する場合もある。図において、舶用三乗特性線に対してプラスマイナス10%の範囲を破線で示す。このプラスマイナス10%の範囲で、アシスト・オフラインが設定される。好ましくはアシスト・オフラインは舶用三乗特性線に沿って設定され、本実施形態では図中、長破線で示すように、舶用三乗特性線のやや上方に舶用三乗特性線に沿った線として設定される。このアシスト・オフラインの下側の領域がアシスト・オフ領域とされる。また、アシスト・オフラインの上側にアシスト・オンラインが設定される。好ましくは、アシスト・オンラインは舶用三乗特性線のある程度上方の常用的には運転されない出力においてエンジン1の特性に応じて設定される。本実施形態では、図中一点鎖線で示すように、アイドル回転速度から中間回転速度までは舶用三乗特性線を一定割合で上回り、中間回転速度から定格回転速度に達するにつれて舶用三乗特性線に近づく線として設定される。このアシスト・オンラインの上側の領域がアシスト・オン領域とされる。なお、これらアシスト・オンライン、アシスト・オフライン等は、制御における考え方を示すもので物理的な線を意味せず、好ましくはコンピュータのプログラムにおける機能として実装される。
アシストモードAsでの運転は出力が増大したトルクリッチ領域に限られるため、環境対策の側面からも好適となる。また、アシストモードAsにおいては、図中、ガスガバナの指令イメージの破線で示されるように、回転速度に応じた所定値の気体燃料の供給を行うガスガバナの制御がなされる。
図14は、ガスモードGからアシストモードAsに移行する際の動作を示すタイミングチャートである。荒天時の船舶の運航や急速な進路変更などの操船がなされた場合に、回転速度に対する出力(負荷)が上昇する。出力(負荷)が予め設定されたアシスト・オンラインを超えるとアシストモードAsに移行する。この場合、ガスガバナ44はガス燃料の供給量の調速制御を終了する。これとほぼ同時に、ディーゼルガバナ48で液体燃料の供給量の調速制御を開始し、且つガスガバナ44によるガス燃料の供給量を図13で説明した回転速度に応じた所定値に急速に下げて、低い出力で安定させる。この低い出力のガスガバナ指令値は回転速度に応じて変化する。
アシストモードAsで運転中、回転速度に対する出力(負荷)が低下し、出力(負荷)が予め設定されたアシスト・オフラインより低下するとガスモードGに復帰する。アシストモードAsからガスモードGに復帰する際、ディーゼルガバナ48で液体燃料の供給量の調速制御を終了すると共に、これとほぼ同時にガスガバナ44でガス燃料の供給量の調速制御を開始する。しかも、ディーゼルガバナ48は、液体燃料の供給量を連続的に例えば2段階に下げて、最終的にゼロまたは極めて小さい量とする。
よって、出力に応じて異なるものの、アシストモードAsからガスモードGへの移行において、実質的な液体燃料の供給停止を数秒で行うことが可能である。
エンジン1の始動時に、ディーゼルモードDで起動してガスモードGに移行させる。ガスモードGでは、定常的には舶用三乗特性線上で運転される。制御部22において、ガスガバナ44でガス燃料の供給量の調速制御を行い、図13において、舶用三乗特性線に対してある程度出力のずれがあっても、アシスト・オンラインに到達しない場合には、ガスモードGにおいて回転速度と出力の制御が行われて定常運転される。ガスモードGでは、ガス燃料のみを燃料として用いて点火プラグで点火を行う運転様式、または、熱源の大部分を占めるガス燃料の点火に少量の液体燃料(パイロット油)の噴射を用いる運転様式のいずれかで運転される。少量の液体燃料を含む運転様式の場合、液体燃料の割合は、通常、定格出力の熱量対比で全熱量の1%〜10%程度であるが、排出ガスに対する環境規制を達成する観点から3%以下であることが望ましい。
制御部22では、回転速度センサ20とトルクセンサ21等からの信号に基づいてエンジン1の運転状態の出力を検出する。エンジン1の加減速や海の荒れ等で出力(負荷)が上昇して、出力(負荷)が予め設定されたアシスト・オンラインを超えた場合、ガスモードGからアシストモードAsに移行する(図14参照)。
なお、アシストモードAsでの運転は一定割合の液体燃料を使用するため環境対策の側面から必要最小限の時間だけ運転するものとし、アシストモードAsが必要でなくなった時点で迅速にガスモードに復帰させる。
アシストモードAsからガスモードGに復帰する際、ディーゼルガバナ48で液体燃料の供給量の調速制御を終了すると共に、ほぼ同時にガスガバナ44によってガス燃料の供給量の調速制御を開始する。しかも、ディーゼルガバナ48は、液体燃料の供給量を例えば2段階に亘って連続的に下げ、最終的にゼロまたは極めて小さい量とする。
液体燃料の供給量が連続的に下げられると、ガスガバナ44によるガス燃料の調速制御により、エンジン1の目標となる回転速度を維持するようにガス燃料の供給量が急速に増加する。こうして、エンジン1の回転速度に大きな影響を与えずに、アシストモードAsからガスモードGへの復帰が実施される。
しかも、エンジン1の出力が下がる過程では、調速制御上は燃料の供給を制限する方向であるため、急激なガス燃料の増加を抑制できてノッキングや失火が生じにくい。そこで、エンジン出力低下のタイミングにあわせてガスモードGへの復帰を行うことで、適正な燃焼を維持しつつ短時間でのガスモードGへの復帰を可能とする。アシストモードAsでのガス燃料の供給量は、エンジン1の出力が大きいほど大きい値となる。これにより、エンジン1の出力が大きい領域においても、アシストモードAsからガスモードGへの復帰を迅速に行うことができる。
本実施形態において、ガスモードGとディーゼルモードDでは、エンジン1の運転において制御が行われる運転パラメータ、例えば給気圧力に関する設定値、吸気弁の閉弁タイミングを変更する場合における可変吸気弁タイミング機構30の制御(VIVT指令値)の設定値、点火条件に関する設定値は、それぞれの運転モードに最適化された設定値とされる。一方、アシストモードAsでは、これら運転パラメータ、すなわち給気圧力に関する設定値、吸気弁の閉弁タイミングを変更する場合における可変吸気弁タイミング機構30の制御(VIVT指令値)の設定値、マイクロパイロット噴射弁11や点火プラグなどの点火装置の設定値、のうち少なくとも一つ以上についてガスモードGと共通の設定値が用いられる。
2 クランク軸
8 吸気弁
9 排気弁
10 燃料噴射弁
11 マイクロパイロット油噴射弁
12 燃料噴射ポンプ
13 吸気管
14 排気管
15 燃料ガス供給弁
20 回転速度センサ
21 トルクセンサ
22 制御部
24 第一マップ
25 第二マップ
30 可変吸気弁タイミング機構
44 ガスガバナ
45 燃料ガス供給弁タイミング機構
48 ディーゼルガバナ
Claims (7)
- デュアルフューエルのエンジンの運転方法であって、
気体燃料を熱源の大部分とする第一の運転中に、前記気体燃料の供給量の調速制御を終了して前記気体燃料の供給量を所定値に下げると共に液体燃料の供給量の調速制御を開始することで、前記気体燃料と前記液体燃料の双方を連続して供給する燃料とする第二の運転に移行するステップと、
前記第二の運転の運転中に、前記液体燃料の供給量の調速制御を終了して前記液体燃料の供給量を下げると共に前記気体燃料の供給量の調速制御を開始することで前記第一の運転に復帰するステップと、
を有し、
前記第一の運転に復帰するステップにおいて、前記液体燃料の供給量を下げる工程は、比較的高速で液体燃料の供給量を下げる第一段と、比較的低速で前記液体燃料の供給量を下げる第二段とを有することを特徴とするエンジンの運転方法。 - デュアルフューエルのエンジンの運転方法であって、
気体燃料を熱源の大部分とする第一の運転中に、前記気体燃料の供給量の調速制御を終了して前記気体燃料の供給量を所定値に下げると共に液体燃料の供給量の調速制御を開始することで、前記気体燃料と前記液体燃料の双方を連続して供給する燃料とする第二の運転に移行するステップと、
前記第二の運転の運転中に、前記液体燃料の供給量の調速制御を終了して前記液体燃料の供給量を下げると共に前記気体燃料の供給量の調速制御を開始することで前記第一の運転に復帰するステップと、
を有し、
前記第一の運転に復帰するステップは、前記エンジンの出力が舶用三乗特性線に対して±10%の範囲に設定されたアシスト・オフラインの下側領域に入ると実施され、
前記第二の運転に移行するステップは、前記エンジンの出力が前記アシスト・オフラインの上側に設定されたアシスト・オンラインの上側領域に入ると実施される
ことを特徴とするエンジンの運転方法。 - 前記第一の運転に復帰するステップは、前記エンジンの出力が下がる過程において実施される、請求項1または2に記載されたエンジンの運転方法。
- 前記第二の運転に移行するステップにおける、前記気体燃料の供給量は前記エンジンの出力が大きいほど大きい値とされている請求項1から3のいずれか1項に記載されたエンジンの運転方法。
- デュアルフューエルのエンジンの運転方法であって、
気体燃料を熱源の大部分として前記気体燃料の調速制御を行うガスモードと、
前記気体燃料及び液体燃料の双方を燃料として前記液体燃料の調速制御を行うアシストモードと、
前記液体燃料のみを燃料として調速制御を行うディーゼルモードと、のいずれかを択一的に切り換えてエンジンを運転し、
前記アシストモードによる運転中に前記エンジンの出力が舶用三乗特性線に沿って設定されるアシスト・オフ領域に入ると前記ガスモードに移行し、
前記ガスモードによる運転中に前記エンジンの出力が前記アシスト・オフ領域より出力の高いアシスト・オン領域に入ると前記アシストモードに移行する、
ことを特徴とするエンジンの運転方法。 - 前記アシストモードによる運転では、エンジンの運転において制御が行われる運転パラメータは前記ガスモードと共通の設定が用いられる、請求項5に記載されたエンジンの運転方法。
- デュアルフューエルのエンジンシステムであって、
エンジンの運転制御を行う運転制御部と、
気体燃料の供給量の調速制御を行うガスガバナと、
液体燃料の供給量の調速制御を行うディーゼルガバナと、を有する制御部を備え、
前記運転制御部による前記気体燃料を熱源の大部分とする第一の運転中に、前記ガスガバナによる気体燃料の調速制御を終了して前記気体燃料の供給量を下げると共に、前記ディーゼルガバナによる液体燃料の調速制御を開始することで、前記気体燃料及び液体燃料の双方を連続して供給する燃料とする第二の運転に移行させ、
前記第二の運転中に、前記ディーゼルガバナによる前記液体燃料の調速制御を終了して前記液体燃料の供給量を下げると共に、前記ガスガバナによる気体燃料の調速制御を開始することで前記第一の運転に復帰させ、
前記第一の運転に復帰する際、前記液体燃料の供給量を下げる処理は、比較的高速で液体燃料の供給量を下げる第一段と、比較的低速で前記液体燃料の供給量を下げる第二段とを有することを特徴とするエンジンシステム。
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