JP6640950B2 - エンジンシステムとその制御方法 - Google Patents

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Description

本発明は、天然ガスなどのガス燃料を用いた4ストロークのエンジンシステムとその制御方法に関する。
従来、ガス燃料を用いたエンジンシステムの一例として、天然ガスなどのガス燃料と重油などの液体燃料のいずれにも対応できるデュアルフューエルエンジンが知られている。また、内燃機関において、可変バルブタイミング機構を用いて機関性能を適正に制御する事ができる事が知られており、その制御が混合気の有効圧縮比を下げることによる効果も含まれる。可変バルブタイミング機構を備えた内燃機関として例えば下記の特許文献1〜6に記載されたものが知られている。
例えば特許文献1に記載された、内燃機関における吸気弁の開弁タイミングを変化させるバルブタイミング可変装置はガソリンエンジンに設けられている。この内燃機関は、過給機とバルブタイミング可変装置を有していて、過給機の目標過給圧を設定するとともに、内燃機関の負荷が所定の高負荷領域にあるとき、目標閉弁タイミングは燃焼サイクル中の膨張比が圧縮比を上回り、かつ検出された内燃機関の負荷が高いほど膨張比が圧縮比に近づくように設定される。これにより、過給圧の増大を抑制してノッキングが発生し始める限界を拡大している。そして、主吸気カムと副吸気カムの二つのカムを用いた機構を用い、二つのカムの位相を変更することで、開弁のタイミングと閉弁のタイミングの両方を変更している。
また、特許文献2に記載されたデュアルフューエルエンジンでは、予混合燃焼方式の運転時にはノッキングの発生防止のために圧縮比を抑制しつつ、拡散燃焼方式の運転時には熱効率や燃料の着火性の向上のためにより高い圧縮比で運転する。吸気弁駆動手段とクランク角検出手段を備え、予混合燃焼モード(ガスエンジンモード)の運転時には、拡散燃焼モードの運転時よりも吸気弁の閉弁時期を早める信号を出力する。
特許文献2の予混合燃焼モードでは、吸気弁の閉弁時期を下死点前60°〜70°の所定の位置に設定するものであり、予混合燃焼モードの中で進角を変化させてはいない。
また、特許文献3に記載の内燃機関では、排気バルブの進角により排気バルブの開弁と閉弁の時期を進角させ、燃焼室内の排気ガスの一部を吸気ポートに逆流させることで、内燃機関の燃焼状態を良好にするとしている。機関本体によって出力される出力トルクを検出するトルク検出手段を具備し、検出される出力トルクが限界トルクより小さくなると予想される場合には、排気早閉じ制御の実行を禁止する。これにより、ドライバビリティーの悪化やエンストを招くようなトルク変動が生じるのを防止している。
また、可変バルブタイミング機構の具体的構成の例が下記特許文献4〜6に記載されている。
特許文献4に記載の可変バルブタイミング機構100の駆動機構は、図11A、11Bに示すようにリンク機構101とアクチュエータ102とを備えている。リンク機構101では、エンジンの排気バルブのプッシュロッドに連結された排気バルブスイングアーム103がリンクシャフト104に支持され、吸気バルブのプッシュロッドに連結された吸気バルブスイングアーム105がリンクシャフト104から偏心した偏心軸部のタペット軸106に支持されている。
排気バルブスイングアーム103と吸気バルブスイングアーム105はそれぞれカム軸108の偏心カム108aによって進退可能とされている。また、リンクシャフト104はアクチュエータ102に設けたピストンロッド109に連結されている。
図11Bに示す位置をピストンロッド109の飛び出し動作前とすると、アクチュエータ102によるピストンロッド109の飛び出し動作によって、連結された全てのスイングアーム105,103が一方に回転する。そのため、アクチュエータ102によってリンク機構101を介して全てのスイングアーム105,103の回動角度を制御できる。
また、他の例として特許文献5,6に記載された可変バルブタイミング機構が図12、図13に記載されている。これらを上記図11に示す可変バルブタイミング機構100と同一部分には同一符号を用いて説明する。
図12に示す可変バルブタイミング機構では、アクチュエータ102に連結した扇形ギヤ120の歯部の範囲でリンクシャフト104の回転範囲が規制され、リンクシャフト104に偏心して固定された偏心ディスク123(タペット軸に相当する)が排気バルブスイングアーム103や吸気バルブスイングアーム105の基部に保持されている。
そのため、リンクシャフト104の回転位置に対する各偏心ディスク123の回転角度位置のずれに対して、排気バルブスイングアーム103や吸気バルブスイングアーム105にカム軸108の偏心カム108aが当接して押し上げる位置が変化する。
図13A,Bに示す例では、ロッカアーム127にプッシュロッド128を介して連結された排気バルブスイングアーム103や吸気バルブスイングアーム105が、クランク状のリンクシャフト104のタペット軸106(スイングアームの支点位置)に接続されている。アクチュエータ102によってクランク状のリンクシャフト104の位相を変更(回動)することによって、吸気バルブスイングアーム105や排気バルブスイングアーム103の支点位置が変わり、その結果、カムシャフト108への接点位置が変わる。これにより、カム軸108の偏心カム108aがカム軸108で排気バルブスイングアーム103または吸気バルブスイングアーム105を押圧して進退させるタイミングが可変となるようにしている。
特許第4137704号公報 特開2008−202545号公報 特許第4367532号公報 国際公開第2015/060117号明細書 欧州特許公開第2136054号明細書 特開昭62−99606号公報
ところで、従来のガス燃料エンジンは、急速に負荷を上昇させるためにガス燃料の供給量を早い割合で増やしても、過給機が追従できず必要空気量を供給できない。過給機は排気ガスで駆動されるため、ガス燃料エンジンの負荷が上がって排気ガスが過給機に充分に供給されないと有効に働かないためである。空気量が足りないと空燃比がガスリッチになってノッキングが発生し、機関の故障につながる。そのノッキング抑制のために、過給機が追従できる速度で負荷を上昇させると、負荷上げに10分程度の長時間が必要である。
一方で、船舶用機関においても有害排気ガスの排出規制が年々厳しくなっており、燃料由来による有害排気ガスの排出量が少なく排出規制を満足することができるデュアルフューエルエンジンを導入することが要望されている。しかし、このようなデュアルフューエルエンジンの導入のためには、船舶用機関の運転モードを満たすために負荷上げ時間を20秒程度にまで短縮する必要があった。
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、ガス燃料エンジンの負荷を上昇させる際に発生するノッキングを抑制して負荷上げ時間を短縮できるようにしたエンジンシステムとその制御方法を提供することを目的とする。
本発明によるエンジンシステムは、ガスを燃料とし燃焼室内の燃料ガスと空気の混合気に点火する点火源を有する4ストロークのエンジンを備えたエンジンシステムであって、エンジンの出力軸のトルクを測定するトルクセンサと、出力軸の回転数を測定する回転数センサと、出力軸の負荷が増大した場合にエンジンの吸気弁が閉じるタイミングの変更を設定する制御部と、この制御部で設定された吸気弁の閉じるタイミングに応じて吸気弁が閉じるタイミングを変更させる可変吸気弁タイミング機構と、を備え、トルクセンサによるトルク測定値と回転数センサによる回転数測定値から出力軸の負荷を求めて、制御部における吸気弁が閉じるタイミングの変更を設定し、エンジンの出力軸の負荷の増大に伴って、可変吸気弁タイミング機構によってエンジン内のガスと空気の混合気の圧縮比を下げる制御を行うことを特徴とする。
エンジンのノッキング抑制技術として、可変吸気弁タイミング(Variable Intake Valve Timing,VIVT)機構を用いて有効圧縮比を下げることができる。この点についてノッキング抑制技術を図10A、10Bより説明する。図10Aは通常の4ストロークサイクルの工程を示し、図10Bはミラーサイクルの工程を示している。
例えばガスエンジンにおいて、通常、吸気弁はピストンの下死点に閉まる(図10A参照)。閉まるタイミングを下死点より早くすると(図10B参照)、吸気弁の閉弁後にも混合気の膨張が続くため、筒内温度Tsが図10Aの場合より下がる(Ts<Ts)。その分だけ上死点時の最高圧縮温度も低下することより(Tc<Tc)、自着火を防ぐことができてノッキングが抑制される。
ミラーサイクルの欠点として、圧縮温度が下がって低負荷域の着火性が悪化するため、起動時や低負荷時には図10Aに示す通常の吸気弁の開弁タイミングに戻し、高負荷時のみ吸気弁の開弁タイミングを早くする必要がある。
本発明によるガスエンジンでは、ガス燃料の供給量を増やしてガスエンジンの出力軸の負荷が増大した場合に、吸気弁が閉じるタイミングを吸入下死点から進める(進角)か、または遅らせる(遅角)ことで、エンジンの燃焼室内における混合気の圧縮比を下げる制御を行う。圧縮比を下げることで圧縮時の燃焼室内の温度が低くなるためノッキングを抑制することができる。
なお、燃焼室内で混合気の圧縮比を下げると、起動時や低負荷時では着火性が悪化する上に燃料効率の点で有利な条件から離れてしまい、燃費が悪化するデメリットが生じる。そこで、本発明では、よりノッキングが生じ易い負荷がより増大する運転領域において吸気弁が閉じるタイミングをより大きく変更させて、より大きい割合で圧縮比を下げる制御を行う。これにより、負荷の変化に応じてノッキングを抑制させ、燃費の悪化を防止しつつ負荷上げ時間を短縮させることができる。
また、出力軸のトルクを測定するトルクセンサと、出力軸の回転数を測定する回転数センサとを備えており、トルクセンサによるトルク測定値と回転数センサによる回転数測定値から出力軸の負荷を求めて、制御部における吸気弁が閉じるタイミングの変更を設定することが好ましい。
本発明によるガスエンジンでは、燃料となるガスは弾性体であるため液体燃料に比べて正確な燃料の供給量を得ることが相対的に難しい。そこで、トルクセンサにより実際にトルクの測定を行うことで回転数との関係で負荷を演算するが好ましい。しかも、回転数センサを備えることで得られる出力軸の回転数測定値とトルクセンサによるトルク測定値の積をとることで、エンジンの出力軸の負荷をリアルタイムに求めることができる。
また、可変吸気弁タイミング機構は、吸気弁の閉じるタイミングの下死点からの進角を調整するようにしてもよい。
吸気弁の閉じるタイミングの進角、遅角、いずれの動作であっても圧縮比を下げる効果を得ることができて本発明に適用可能である。しかし、吸気弁の閉じるタイミングの遅角は、混合気を吸気系統へ吹き戻すことによる弊害の可能性があることから、吸気弁の閉じるタイミングの進角を設定することがより望ましい。
また、可変吸気弁タイミング機構における吸気弁の閉じるタイミングの進角の調整は連続的または多段階的に行うようにしてもよい。
吸気弁の閉じるタイミングの進角は、負荷の変化に応じて連続的に可変に設定するか段階的に可変に設定する動作とすることが、ノッキングの抑制と負荷上げ時間の短縮のために好ましい。
また、制御部において決定する進角は、予め測定した複数の出力軸の負荷と回転数のデータをパラメータとして設定した進角の値から設定されるようにしてもよい。
吸気弁の閉じるタイミングの進角の好適な値は、負荷が大きい場合により大きくなるが、これに加えて回転速度にも依存する。そのため、少なくともこれら二種のパラメータを含むマップを予め作成し、エンジンの負荷と回転数の変化に応じて吸気弁の閉じるタイミングの進角を制御することでノッキングをより抑制できる。
また、エンジンの吸気管には、過給を行う過給機と、過給機からの空気を吸気管に供給する前に冷却するエアクーラとを備えていることが好ましい。
負荷が大きい場合ほど吸気弁の閉弁の進角または遅角を大きくして圧縮比を下げることによりノッキングの発生を抑制できるが、燃焼室に吸気できる混合気の量が減少するのでエンジンの負荷上げには不利になる。そのため、エンジンの吸気管に過給機を設けることで混合気の減少を補うと共に、エアクーラによって空気を冷却することで過給による空気の温度上昇を抑制することができ、混合気の量を増大させてエンジンの負荷上げに貢献すると共に空気の温度低減によってノッキングを抑制できるため、負荷上げ時間の短縮を進めることができる。
本発明によるエンジンシステムの制御方法は、ガスを燃料とし燃焼室内の燃料ガスと空気の混合気に点火する点火源を有するエンジンを備えたエンジンシステムの制御方法であって、前記エンジンの出力軸のトルクを測定するトルクセンサと、前記出力軸の回転数を測定する回転数センサとを備え、前記トルクセンサによるトルク測定値と前記回転数センサによる回転数測定値から前記出力軸の負荷を求め、エンジンの出力軸の負荷が増大した場合にエンジンの吸気弁が閉じるタイミングの変更を設定する工程と、設定された吸気弁の閉じるタイミングに応じて吸気弁が閉じるタイミングを機械的に変更させる工程とを備え、エンジンの出力軸の負荷の増大に伴い、吸気弁が閉じるタイミングを機械的に変更させることでエンジン内のガスと空気の混合気の圧縮比をより下げるようにしたことを特徴とする。
本発明によるガスエンジンシステムの制御方法では、ガスエンジンの出力軸の負荷が増大した場合に、吸気弁が閉じるタイミングを吸入下死点から進める(進角)か、または遅らせる(遅角)ことで、エンジンの燃焼室内における混合気の圧縮比を下げる制御を行う。圧縮比を下げることで圧縮時の燃焼室内の温度が低くなるためノッキングを抑制することができる。
本発明によるエンジンシステムとその制御方法によれば、エンジンの出力軸の負荷が増大した場合にエンジン内の混合気の圧縮比を下げることができるため、負荷上げ時のノッキングを抑制すると共に負荷上げ時間を短縮できる。
本発明の実施形態による舶用デュアルフューエルエンジンの要部構成を示すブロック図である。 図1に示すデュアルフューエルエンジンにおけるディーゼルモードとガスモードを示す図である。 負荷と回転数と吸気弁の閉弁タイミングとの関係を示す3次元マップである。 負荷と回転数と吸気弁の閉弁タイミングとの関係でノッキング抑制範囲を示すグラフである。 第一マップで得た閉弁タイミングと第一電気信号との関係を示す第二マップである。 図1に示すデュアルフューエルエンジンの吸気弁開閉タイミングの変更工程を示すフローチャートである。 実施形態によるデュアルフューエルエンジンのアクチュエータに代えてサーボモータを用いた場合の吸気弁開閉タイミングの変更工程を示すフローチャートである。 実施形態によるデュアルフューエルエンジンの負荷上げ時間と負荷との関係を示す試験結果のグラフである。 デュアルフューエルエンジンにおけるクランク軸の角度変化と吸気弁の開閉制御との関係を示す図である。 エンジンの燃焼サイクルの通常のサイクルの工程図である。 エンジンの燃焼サイクルのミラーサイクルの工程図である。 従来の可変吸気弁タイミング機構の一例を示す斜視図である。 従来の可変吸気弁タイミング機構の一例を示す正面図である。 従来の可変吸気弁タイミング機構の他の例を示す斜視図である。 従来の可変吸気弁タイミング機構の更に他の例を示す図である。 図13Aに示す従来の可変吸気弁タイミング機構におけるアクチュエータとリンクシャフトの関係を示す図である。
以下、本発明の実施形態によるエンジンシステムとして、舶用内燃機関として用いるデュアルフューエルエンジン1について添付図面に基づいて説明する。図9により、上述したミラーサイクルに関連してデュアルフューエルエンジンにおけるクランク軸の角度変化と吸気弁の開閉制御との関係を説明する。
図9はエンジンのクランク軸の角度と吸気弁及び排気弁のリフト量との関係を示すものである。横軸に示すクランク角の原点0が圧縮上死点であり、0〜180度が膨張行程、180度〜360度が排気行程、360度〜540度が吸気行程、540度〜720度が圧縮行程である。図中、排気行程における大きな山は排気弁のリフト量であり、幅の小さい山はそれぞれ高負荷時と低負荷時の吸気弁のリフト量を表す。
低負荷では吸気弁の開閉タイミングは吸気行程とほぼ一致しており340度付近で開き始め、540度付近で閉じる。また、高負荷では吸気弁の開閉タイミングはVIVT機構によって進角で進める制御を行い、後述する実施形態において、吸気弁の閉弁タイミングを当初の545度から負荷に応じて進角の制御を無段階で行い、高負荷では閉弁のタイミングが505度になるように制御される。
以下、本発明の実施形態によるエンジンシステムとして、舶用内燃機関として用いるデュアルフューエルエンジンについて添付図面に基づいて説明する。
図1及び図2に示す舶用のデュアルフューエルエンジン1(以下、単にエンジン1ということがある)はディーゼルモードDとガスモードGの各機関を備えており、運転中にディーゼルモードDとガスモードGとに切り換え可能な機関である。図1に示すデュアルフューエルエンジン1は、プロペラ等に連結された出力軸としてクランク軸2の機構を備えており、クランク軸2はシリンダーブロック3内に設置されたピストン4に連結されている。シリンダーブロック3内に設けたピストン4とエンジンヘッド5によって燃焼室6が形成されている。
燃焼室6はエンジンヘッド5に装着されている吸気弁8及び排気弁9と、ディーゼルモードDで使用する燃料噴射弁10とによって密閉されている。また、エンジンヘッド5にはガスモードで使用するマイクロパイロット油噴射弁11が設置されている。エンジンヘッド5の吸気弁8を設置した吸気口には吸気管13が接続され、排気弁9を設置した排気口には排気管14が設置されている。吸気管13にはガス噴射を制御する電磁弁15が設置され、その上流側にはエアクーラ16、排気管14に連通する過給機17が設置されている。
ここで、本実施形態によるデュアルフューエルエンジン1は、図2に示すように、ディーゼルモードDとガスモードGとに切り換えて運転できるようになっている。ディーゼルモードDでは、例えばA重油等を燃料油として燃料噴射弁10から燃焼室6内の圧縮空気に機械的に噴射して着火し燃焼させることができる。また、ガスモードGでは、天然ガス等の燃料ガスを電磁弁15で吸気管13に噴射して空気流と予混合して混合気を燃焼室6内に供給し、混合気の圧縮状態でマイクロパイロット油噴射弁11からパイロット燃料を噴射して着火し燃焼させる。マイクロパイロット油噴射弁11は例えば電子制御されていて強力な点火源としてパイロット燃料を少量噴射する。
エンジン1は、燃料噴射弁10より液体燃料を燃焼室6内に噴射するディーゼルモードDで始動を行う。エンジン1に基準値以上のガス圧力が供給されていることが確認された後、電磁弁15でガス燃料を吸気管13に噴射して空気と混合してから燃焼室6内に流入させ、ガス燃料を燃焼させるガスモードGで運転を行う。
停止の際には再びディーゼルモードDに変更してから停止を行う。始動時と停止時以外はディーゼルモードDとガスモードGを変更可能である。
本実施形態によるデュアルフューエルエンジン1はガスモードGにおいて負荷上昇時の負荷制御を行うガスエンジンシステムを備えている。このガスエンジンシステムの構造について更に説明する。
図1において、クランク軸2には回転数センサ20とトルクセンサ21とが取付けられており、回転数センサ20ではクランク軸2の回転数(回転速度)を計測し、トルクセンサ21ではクランク軸2によってエンジントルクを計測する。トルクセンサ21として、例えば軸にかかるトルクを歪によって検出するセンサが使用可能である。回転数センサ20とトルクセンサ21で計測した測定データはエンジン1を制御する制御部22にそれぞれ信号出力する。
制御部22では、回転数センサ20とトルクセンサ21などからの信号に基づいてエンジン1の運転状態を検出する。即ち、回転数センサ20で計測したクランク軸2の回転数をnとし、トルクセンサ21で計測したトルクをTとして、下記の式(1)と式(2)でエンジン1の負荷Aを演算する。但し、Ltはエンジン1の定格出力とする。
出力Lo=2πTn/60 (1)
負荷A=Lo/Lt×100 (2)
なお、エンジン1の負荷を求める方法として、燃料の供給量その他のエンジン1の運転状態に関する情報から推測する方法と、エンジン1の出力軸の動力伝達系統にトルクセンサを備えて、実際にトルクの測定を行って負荷を求める方法がある。ガスエンジンでは、燃料となるガスは弾性体であるため液体燃料に比べて正確な燃料の供給量を得ることが相対的に難しい。そこで、トルクセンサ21によって実際にトルクの測定を行うことで負荷を演算することが好ましい。
また、回転数nを一定にした場合には、負荷Aとトルク測定値Tは正比例の関係になる。回転数nが一定の条件においては、負荷Aが大きいほど、すなわちトルクデータTが大きいほど、より大きい割合で吸気弁8の閉じるタイミングの進角を設定することが望ましい。
制御部22では、予め作成された吸気弁開閉タイミングの第一電気信号を決定する第一マップ24と第一電気信号に対応する開閉タイミングを決定する第二マップ25とが記憶されている。制御部22では、回転数センサ20とトルクセンサ21によって測定されたエンジン1の負荷Aに対応する回転数データnとトルクデータTに基づいて、上記(1)及び(2)式によりエンジン1の負荷Aを演算する。そして回転数nと負荷Aにより第一マップ24で吸気弁8の開閉タイミングに対応する第一電気信号を選択する。そして、この第一電気信号に基づいて第二マップ25で第一電気信号に対応する吸気弁8の開閉タイミングが決定される。なお、第一マップ24と第二マップ25の作成方法は後述する。
制御部22で設定された開閉タイミングの第二電気信号は電空変換器27に送信され、電空変換器27で開閉タイミングの信号が空気圧力に変換される。この空気圧力はアクチュエータ28に送られて可変吸気弁タイミング機構30の駆動を制御する。アクチュエータ28には第一減圧レギュレータ34と電空変換器27から駆動用と制御用の空気圧力P1,P2が供給される。
なお、アクチュエータ28に供給する空気圧力は空気圧縮機32で圧縮されてエアタンク33に貯められる。エアタンク33内の空気圧力は第一減圧レギュレータ34により必要な圧力に減圧される。この際の圧力は第一減圧レギュレータ34のバルブ開度を変更することより調整し、駆動用の空気圧力P1としてアクチュエータ28に供給される。圧力計36で計測された圧力P1が規定値以下の場合には、エンジン1は始動できない。
電空変換器27を駆動するための空気圧力は、第一減圧レギュレータ34から第二減圧レギュレータ37でさらに減圧されて供給される。電空変換器27は入力される開閉タイミングの第二電気信号に対応する空気圧力を、アクチュエータ28の動作を調整するための空気圧力P2としてアクチュエータ28に供給する。これらの空気圧力P1,P2に基づいてアクチュエータ28のロッド28aを動作して可変吸気弁タイミング機構30を作動させる。
アクチュエータ28は例えば公知のPシリンダ(ポジショナリ付きシリンダ)であり、第一減圧レギュレータ34と電空変換器27から入力される圧力P1、P2に基づいてロッド28aの進退を制御する。アクチュエータ28のロッド28aの移動長さを変化させることで、可変吸気弁タイミング機構30の駆動を制御して吸気弁8の閉じるタイミングを吸入下死点から進める(進角)か、または遅らせる(遅角)させることで、圧縮比を下げて制御を行う。
吸気弁8の開弁タイミングと閉弁タイミングの間の時間は変わらないので、閉弁のタイミングが吸入下死点から進むと開弁のタイミングも吸入上死点から同一時間進む。しかも、本発明ではエンジン1の負荷に応じて開弁と閉弁のタイミングを変更することでノッキングを抑制して負荷上げ時間を短縮させるようにした。エンジン1の負荷Aと回転数nに基づいて制御部22内の第一マップ24と第二マップ25により吸気弁8の開閉タイミングを設定し、アクチュエータ28と可変吸気弁タイミング機構30によって吸気弁8の開弁と閉弁のタイミングを、ノッキングを抑制できるように調整している。
可変吸気弁タイミング機構30の構成は従来公知のものであり、図11乃至図13に示すものと同様な構造を備えている。即ち、可変吸気弁タイミング機構30は例えばアクチュエータ28のロッド28aの移動長さによって扇形ギヤを介して回転角度範囲が設定されるリンクシャフトと偏心カムを備えたカム軸とが平行に配設されている。リンクシャフトには排気用スイングアームが接続され、リンクシャフトの偏心した位置に設けたタペット軸に吸気用スイングアームが接続されている。吸気用スイングアームにはプッシュロッドとロッカアームを介して吸気弁8が接続され、排気用スイングアームにはプッシュロッドとロッカアームを介して排気弁9が接続されている。
リンクシャフトの回転に応じたタペット軸の回転角度によってカム軸と吸気用スイングアームとの距離が変化し、カム軸の偏心カムが当たり始めるタイミングが変化する。これによって閉弁タイミングを進角(または遅角)に変更できる。タペット軸からカム軸中心までの距離が離れるほど吸気弁8の閉弁タイミングが早くなる。タペット軸の回転角度は、アクチュエータ28のロッド28aの移動長さによって変更される。ロッド28aの移動長さは、アクチュエータ28に供給される制御用空気の圧力P1,P2によって任意に変更される。
吸気弁8の閉開タイミングである進角の大きさは、リンクシャフトのタペット軸に連結された吸気用スイングアームにカム軸の偏心カムが当たり始めるタイミングで決まる。
なお、可変吸気弁タイミング機構30におけるタペット軸の回転装置は、アクチュエータ28に代えて、図示しないサーボモータを使用してもよい。この場合、制御部22の第二マップ25から発信された開閉タイミングの信号をサーボモータに入力させる。サーボモータは受けた信号に対応する量だけリンクシャフトを回転させてタペット軸を旋回させることでカム軸に対して接近離間させ、吸気弁8の開閉タイミングを変更することができる。なお、サーボモータを用いた場合、アクチュエータ28と空気圧縮機32〜圧力計38までの構成は不要である。また、電空変換器27に代えてコントローラでサーボモータを駆動させることになる。
また、吸気管13にガス噴射を制御する電磁弁15へのガス燃料の供給機構について説明する。図1において、天然ガス等のガス燃料が貯蔵されたLNGガスタンク40からガス燃料がガス気化器41に供給され、更にガス圧力はガスレギュレータ42により必要なガス圧に減圧される。
この際の圧力は圧力計43に表示され、ガスレギュレータ42のバルブ開度を変更することによって調整し、燃焼用のガス燃料として電磁弁15から吸気管13内に噴射される。吸気管13内ではガス燃料とエアクーラ16で冷却された過給の空気とが混合されて燃焼室6に供給される。負荷上げの際は、電磁弁15の動作によりガス燃料の供給量を増加させる。
次に制御部22内に記憶する第一マップ24と第二マップ25の作成方法について説明する。図3はクランク軸2の回転数nとエンジン1の負荷Aにより吸気弁8の閉弁タイミングを決定する第一マップ24の詳細を示す3次元マップである。
第一マップ24は次の実験手順(1)〜(18)の行程に基づいて作成した。
実験には、実際に使用する同一機種のデュアルフューエルエンジン1を用いた。
(1)エンジン1を始動し、回転数nを400min-1、負荷Aを10%、吸気弁8の閉弁タイミングを545deg(構造上、最も遅い閉弁タイミング)に設定する。
(2)そして、エンジン1の駆動時に発生したノッキングと呼ばれる異常燃焼とそのときの排気温度を計測する。
ノッキングは、各エンジンヘッド5に取付けた不図示のノックセンサにより発生を検出する。ノッキング現象発生時は,通常の燃焼波形に高周波の圧力変動が重なった波形となる。
また、排気管14に取付けた温度センサによりノッキング測定時の排気温度を測定する。
(3)上記のノッキング測定時の排気温度の測定終了後、吸気弁8の閉弁タイミングを5deg減少させ、再度(2)の計測を行う。閉弁タイミングを500deg(構造上、最も早い閉弁タイミング)まで変更して計測を行う。
(4)上記(3)の計測が終了したら、負荷を10%ずつ110%になるまで段階的に増加させて、再度(2)と(3)の計測を繰り返して行う。
(5)上記(1)〜(4)の計測により、ノッキング強さが基準値以下であり、排気温度が500℃以下である場合を、ノッキングが抑制されてエンジン1が安全に運転可能であると判断する。
(6)上記(5)の計測結果から、X軸が負荷A、Y軸が回転数n、Z軸が開閉タイミングに設定された図4の3次元グラフにおいて、安全に運転可能な計測点に●(黒丸)、安全ではない計測点に×をプロットする。これによって、負荷Aと回転数nと開閉タイミングとの関係におけるノッキング抑制範囲を選定できる。
(7)上記(1)〜(6)の計測工程を、回転数nを100min-1ずつ900min-1まで上昇して行い、回転数n毎の安全に運転できる範囲を計測する。
(8)そして、上記(7)の計測結果を回転数n、負荷A、開閉タイミングの3軸で表したグラフが図4である。図4で、直線で囲われた範囲がノッキングが抑制されてエンジン1が安全に運転可能な範囲である。
(9)次に上記(1)〜(8)の実験により計測した図4に示す安全にエンジンを運転できる直線で囲った3次元領域の範囲内で、窒素酸化物(以下、NOxという)が基準値以下であり、熱効率が一番高い設定を探すことを目的に更に実験を行う。
エンジン回転数nを400min-1、負荷Aを10%、吸気弁8の閉弁タイミングを545degに設定する。
(10)次にNOxと熱効率を計測する。NOxは排気管14に取付けた排ガス分析器で計測を行う。熱効率は、燃料配管に取付けた燃料流量計から計測される燃料流量Lとトルクセンサ21の計測結果より計算される出力により下記の(3)式で計算する。
熱効率η=360Lo/H/L (3)
但し、H:燃料ガスの低位発熱量(J/Nm)
Lo:現時点の出力
L:燃料流量
(11)上記(10)の測定終了後、吸気弁8の閉弁タイミングを5degずつ減少させ、再度(10)の計測を行う。閉弁タイミングは505degまで変更して計測を行う(図9参照)。
(12)上記(10)と(11)の計測が終了したら負荷を10%ずつ110%まで段階的に増加させ、再び(10)及び(11)の計測を繰り返して行う。閉弁タイミングは図4で示す安全に運転できる範囲内で変更する。
(13)上記(9)〜(12)の計測を、回転数nを100min-1ずつ段階的に900min-1まで上昇して行い、各回転数毎の最も性能の良い計測点を決定する。
(14)そして、NOxが所定値以下であり、熱効率が一番高い、吸気弁8の閉弁タイミングを各回転数nと負荷A毎に設定する。この結果により、図3に示す第一マップの原案が作成される。
(15)さらに、任意の負荷上げパターンで回転数nと負荷Aを上昇させてノッキングを検出する。負荷上げパターンとは負荷Aと回転数nの時間あたりの変化状態であり、舶用推進装置のプロペラ仕様(形状、回転数)によって変化する。
(16)上記(15)で検出されたノッキング強さが基準値以上であった計測点の閉弁タイミングを3deg減少させる。
(17)つぎに、ノッキング強さが基準値以下になるまで、(15)(16)の工程を繰り返し、ノッキングが抑制された閉弁タイミングを決定する。閉弁タイミングを減少させると熱効率は悪化する。NOx、ノッキング強さが基準値以下で熱効率が一番高い結果が得られた閉弁タイミングの設定を回転数n、負荷Aの設定値とする。
(18)上記(17)よりノッキングが抑制された閉弁タイミングを各回転数n、負荷Aでそれぞれ計測し、その結果により図3に示す最終的な第一マップ24を作成した。
図3には、回転数nと負荷Aに応じた閉弁タイミングが、3次元平面のグラフで示されており、図中上側がより閉弁タイミングが減少する方向である(進角大)。3次元平面上で、二点鎖線で示された領域が実際の船舶推進装置の運転で使用される実用的な運転領域であり、良好な負荷上げパターンの1例を一点鎖線で示す。実用的な運転領域における負荷上げでは、機関の負荷が大きくなるほど閉弁タイミングの進角を大きくする制御を行う。
一点鎖線で示した良好な負荷上げパターンの1例では、回転数nと負荷Aの小さい図中右下の位置では進角は最少とされ、回転数nと負荷Aが増すに従って進角を大きくする。途中で進角が一定となる領域も存在するが、全体として負荷が増すほど進角は大きくされる。なお、負荷はトルクと回転数の積で求められるため、出力軸のトルクが増すほど進角を大きくすると表現することもできる。
次に、第二マップ25を下記の実験で作成した。
可変吸気弁タイミング機構30がアクチュエータ28によって回転制御されるとき、次の手順で第二マップ25を作成する。
(1)アクチュエータ28により閉弁タイミングを変更し、各閉弁タイミングに変更する際の圧力を計測する。
(2)電空変換器27の仕様より上記(1)の圧力を供給する為に必要な第二電気信号を調査する。
(3)上記(1)及び(2)の結果から、横軸に上記第一マップ24で選択した第一電気信号、縦軸に閉弁タイミング(第二電気信号)を示す第二マップ25を作成する。
なお、上記の説明はアクチュエータ28を用いた場合であり、アクチュエータ28に代えてサーボモータによって可変吸気弁タイミング機構30を回転制御する場合には次のように行う。
(1)サーボモータに基づいて閉弁タイミングを変更し、各閉弁タイミングに変更する際の第二電気信号を計測する。
(2)上記(1)の結果により横軸に第一電気信号、縦軸に閉弁タイミング(第二電気信号)を示す第二マップ25を作成する。
なお、図5に第二マップ25の詳細図を示す。第二マップ25は閉弁タイミング(第二電気信号)と第一電気信号との関係を表すマップである。
本実施形態によるデュアルフューエルエンジン1の負荷上げ装置は上述した構成を備えており、次に負荷上げ方法について説明する。
ガスモードGにおいては、過給機17から供給される空気はエアクーラ16で冷却された状態で電磁弁15から噴射されるガス燃料と予混合されてシリンダーブロック3内の燃焼室6内に供給される。吸気工程ではピストン4が下死点に到達する前に吸気弁8が閉弁し、更にピストン4が降下することで燃焼室6内の混合気が負圧になり混合気の温度と圧縮比が下がる。これによってノッキングを抑えることができる。
圧縮工程ではピストン4で燃焼室6内の混合気が圧縮され、膨張行程でマイクロパイロット油噴射弁11から燃料が噴射されて発火され、燃焼ガスが膨張してピストン4を下死点まで押し下げ、排気工程でピストン4が上死点に上がり燃焼ガスを排気する。
このようなガスモードGの制御方法を、図6に示す吸気弁8の開閉タイミング変更方法のフローチャートに沿って説明する。
エンジン1の始動時にアクチュエータ28に必要圧力P1が供給されているか否か圧力計36で計測され、この値が規定値以下の場合にはエンジン1が始動できない。また、エンジン動作中に本圧力P1が規定値以下になる場合は、エンジン1が停止する。吸気弁8の開閉タイミングの制御は、エンジン1の運転モードに関係なく始動したときに開始される。始動時期は、回転数センサ20から回転数nの測定値信号が制御部22に入力されたとき始動したと判断する。
所定間隔毎に回転数センサ20とトルクセンサ21により回転数nとトルクTを計測することでエンジン1の状態を所定間隔で検知する。検知した回転数nとトルクTは制御部22内に入力されて上記(1)、(2)式により負荷Aを計算する。制御部22では、回転数nと負荷Aの計測値を吸気弁開閉タイミングを決定する第一マップ24に入力する。第一マップ24では入力された負荷Aと回転数nに対応する吸気弁開閉タイミングが決定され、第一電気信号として出力される。
第一電気信号は第二マップ25に入力されて、第一電気信号に対応する開閉タイミングが設定され、第二マップ25により開閉タイミングに対応する第二電気信号を決定して電空変換器27に入力する。開閉タイミングはピストン4の吸気下死点と吸気上死点からの吸気弁8の閉弁タイミングと開弁タイミングの進角として設定される。
可変吸気弁タイミング機構30における吸気弁8の閉弁と開弁のタイミングの進角の調整は、エンジン1の回転数nと負荷Aに応じて連続的または多段階的に変化させるように行うものとする。なお、吸気弁8の閉弁と開弁のタイミングの進角は、進角あり「1」と進角なし「0」の二段階でも可能であるが、回転数nと負荷Aをパラメータとして第一マップ24及び第二マップ25によって連続的に可変に設定するか多段階的に可変に設定する動作を採用することで、ノッキングを継続して抑制できる。これによって負荷の増大に応じて負荷上げ速度を促進できるため負荷上げ時間を短縮できる。
電空変換器27では入力された第二電気信号に対応する制御用の空気圧力P2をアクチュエータ28に供給する。アクチュエータ28に供給された制御用の空気圧力P2によってアクチュエータ28のロッド28aの移動長さが変化し、可変吸気弁タイミング機構30のタペット軸が所要角度だけ回転する。ロッド28aの移動長さはアクチュエータ28に供給する制御用の空気圧力P2の量により変化する。
可変吸気弁タイミング機構30では、タペット軸の回転によってタペット軸に連結された吸気弁スイングアームとカム軸との距離が変化し、カム軸に設けた偏心カムが当たり始めるタイミングが変化する。この変化より負荷上げ時における吸気弁8の開閉タイミングが変化する。吸気弁8の開閉タイミングの変化によってノッキングを抑制できる。
本実施形態では、負荷上げ時におけるエンジン1の状態を負荷Aと回転数nによって所定間隔毎に検知して、制御部22の第一マップ24と第二マップ25によってノッキングを抑制できる吸気弁8の開閉タイミングを選定し、アクチュエータ28と可変吸気弁タイミング機構30によって吸気弁8の開閉タイミングを進角させ、ノッキングを抑制して負荷上げ時間を短縮できる。
図7は電空変換器27とアクチュエータ28に代えてサーボモータを用いてタペット軸の回転を制御する場合のフローチャートを示すものである。この場合、図6に示す場合と同様に、所定間隔毎に検知した回転数nとトルクTの計測値を制御部22に入力して第一マップ24と第二マップ25からエンジン1の負荷上げ状態に応じた吸気弁8の開閉タイミングを順次選定する。
第二マップ25から発信された第二電気信号をコントローラを介してサーボモータに入力する。サーボモータは入力した第二電気信号に対応する回転位置を計算し、リンクシャフトを所要角度だけ回転させることでタペット軸を回転させ、吸気弁8の開閉タイミングを下死点及び上死点から変更する。
次に、本発明の実施形態によるデュアルフューエルエンジン1についてガスモードGにおける負荷上げ応答性の試験を行った。
負荷上げ試験に際し、気温を18℃、25℃、36℃、37℃に設定した。そしてエンジン1のガスモードGにおいて、アイドル回転状態の負荷上げ開始から定格負荷(定格回転)に到達するまでエンジン1の回転数nとトルクTと経過時間を所定間隔で測定した。
その結果は図8に示すとおりになった。従来のデュアルフューエルエンジンでは負荷上げ開始時から定格負荷になるまでの負荷上げに約10分要していたが、本実施形態の試験例では気温を18℃、25℃、36℃、37℃のいずれの場合も約20秒で定格負荷に到達した。そのため、負荷上げ速度を著しく向上できた。
上述したように、本実施形態によるデュアルフューエルエンジン1によれば、負荷上げ時にディーゼルモードDからガスモードGに切り替えて、所定間隔で測定したエンジン1の回転数nとトルクTに基づいて第一マップ24及び第二マップ25によってノッキングを抑制するように吸気弁8の開閉タイミングを順次進角させることで負荷上げ時間を短縮できる。
また、本実施形態では図4に示す三次元マップの範囲内で開閉タイミングを選定するため、NOxの発生を低減することができる。
しかも、吸気弁8の開閉タイミングを最適化したことより低負荷での効率を向上できた。
なお、本発明によるガスシステムは、上述した実施形態によるデュアルフューエルエンジン1に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜の変更や置換等が可能である。以下に、本発明の変形例等について説明するが、上述した実施形態で説明した部品や部材等と同一または同様なものについては同一の符号を用いて説明を省略する。
本発明によるガスシステムは、液体燃料を主な燃料とするディーゼルモードDとガスを主な燃料とするガスモードGの切換が可能なデュアルフューエルエンジン1に限定されることなく、ガスを燃料として使用するガスエンジンにも適用できる。その場合、ガスを主な燃料とする発電機にも適用できる。この場合、トルクセンサに替えて出力軸には発電機が接続され、当該発電機で発電する電力により出力軸の負荷を測定するようにしてもよい。
しかも、舶用エンジンの負荷上げパターンに限定されることなく、車両用や非常用発電機などで活用できる負荷上げパターンにも適用できる。
また、上述した実施形態では、負荷上げ時における吸気弁8の開弁タイミングと閉弁タイミングの変更をピストン4の吸気下死点と吸気上死点からの進角によって設定したが、本発明は進角に限定されることなく、遅角で設定してもよい。進角と遅角のいずれの動作であっても混合気の圧縮比を下げる効果を得ることができる。しかしながら、吸気弁8を閉じるタイミングの遅角は、混合気を吸気系統へ吹き戻すことによる弊害の可能性があるため、実際のエンジン1への適用としては吸気弁8の開閉タイミングの進角を採用することがより望ましい。
なお、上述した実施形態では、可変吸気弁タイミング機構30は開弁タイミング及び閉弁タイミングの両方を変更し、吸気弁が開いている時間は変更しなかったが、吸気弁8の閉弁タイミングと開弁タイミングのいずれか一方または両方を選択して変更制御してもよい。
本発明は、ガス燃料と空気の予混合気を用いて負荷上げ時にノッキングを抑制して負荷上げ時間を短縮できるようにしたガスシステムとその制御方法を提供する。
1 デュアルフューエルエンジン
8 吸気弁
9 排気弁
15 電磁弁
20 回転数センサ
21 トルクセンサ
22 制御部
24 第一マップ
25 第二マップ
27 電空変換器
28 アクチュエータ
30 可変吸気弁タイミング機構

Claims (6)

  1. ガスを燃料とし燃焼室内の燃料ガスと空気の混合気に点火する点火源を有する4ストロークのエンジンを備えたエンジンシステムであって、
    前記エンジンの出力軸のトルクを測定するトルクセンサと、
    前記出力軸の回転数を測定する回転数センサと、
    前記出力軸の負荷が増大した場合に前記エンジンの吸気弁が閉じるタイミングの変更を設定する制御部と、
    前記制御部で設定された吸気弁の閉じるタイミングに応じて前記吸気弁が閉じるタイミングを変更させる可変吸気弁タイミング機構と、を備え、
    前記トルクセンサによるトルク測定値と前記回転数センサによる回転数測定値から前記出力軸の負荷を求めて、前記制御部における吸気弁が閉じるタイミングの変更を設定し、
    前記エンジンの出力軸の負荷の増大に伴い、前記可変吸気弁タイミング機構によって前記エンジン内のガスと空気の混合気の圧縮比をより下げる制御を行うことを特徴とするエンジンシステム。
  2. 請求項1に記載のエンジンシステムであって、
    前記可変吸気弁タイミング機構は、前記吸気弁の閉じるタイミングの下死点からの進角を調整するようにしたエンジンシステム。
  3. 請求項2に記載のエンジンシステムであって、
    前記可変吸気弁タイミング機構における前記吸気弁の閉じるタイミングの進角の調整は連続的または多段階的に行うようにしたエンジンシステム。
  4. 請求項3に記載のエンジンシステムであって、
    前記制御部において決定する進角は、予め測定した複数の前記出力軸の負荷と回転数のデータをパラメータとして設定した進角の値から設定されるようにしたエンジンシステム。
  5. 請求項1から4のいずれか1項に記載のエンジンシステムであって、
    前記エンジンの吸気管には、過給を行う過給機と、前記過給機からの空気を前記吸気管に供給する前に冷却するエアクーラとを備えているエンジンシステム。
  6. ガスを燃料とし燃焼室内の燃料ガスと空気の混合気に点火する点火源を有するエンジンを備えたエンジンシステムの制御方法であって、
    前記エンジンの出力軸のトルクを測定するトルクセンサと、
    前記出力軸の回転数を測定する回転数センサと、を備え、
    前記トルクセンサによるトルク測定値と前記回転数センサによる回転数測定値から前記出力軸の負荷を求め、
    前記エンジンの出力軸の負荷が増大した場合に前記エンジンの吸気弁が閉じるタイミングの変更を設定する工程と、
    前記設定された吸気弁の閉じるタイミングに応じて前記吸気弁が閉じるタイミングを機械的に変更させる工程とを備え、
    前記エンジンの出力軸の負荷の増大に伴い、前記吸気弁が閉じるタイミングを機械的に変更させることで前記エンジン内のガスと空気の混合気の圧縮比をより下げるようにしたことを特徴とするエンジンシステムの制御方法。
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