JP6793824B2 - エンジンの制御方法及びエンジンシステム - Google Patents
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Description
図20及び図21に示すように、特許文献1に記載の可変バルブタイミング機構100の駆動機構は、リンク機構101とアクチュエータ102とを備えている。リンク機構101では、エンジンの排気バルブのプッシュロッドに連結された排気バルブスイングアーム103がリンクシャフト104に支持され、吸気バルブのプッシュロッドに連結された吸気バルブスイングアーム105がリンクシャフト104から偏心した偏心軸部のタペット軸106に支持されている。
排気バルブスイングアーム103と吸気バルブスイングアーム105はそれぞれカム軸108の偏心カム108aによって進退可能とされている。また、リンクシャフト104はアクチュエータ102に設けたピストンロッド109に連結されている。
図21に示す位置をピストンロッド109の飛び出し動作前とすると、アクチュエータ102によるピストンロッド109の飛び出し動作によって、連結された全てのスイングアーム105,103が一方に回転する。そのため、アクチュエータ102によってリンク機構101を介して全てのスイングアーム105,103の回動角度を制御できる。
図22に示す可変バルブタイミング機構では、アクチュエータ102に連結した扇形ギヤ120の歯部の範囲でリンクシャフト104の回転範囲が規制され、リンクシャフト104に偏心して固定された偏心ディスク123(タペット軸に相当する)が排気バルブスイングアーム103や吸気バルブスイングアーム105の基部に保持されている。
そのため、リンクシャフト104の回転位置に対する各偏心ディスク123の回転角度位置のずれに対して、排気バルブスイングアーム103や吸気バルブスイングアーム105にカム軸108の偏心カム108aが当接して押し上げる位置が変化する。
これにより、カム軸108の偏心カム108aがカム軸108で排気バルブスイングアーム103または吸気バルブスイングアーム105を押圧して進退させるタイミングが可変となるようにしている。
例えばガス燃料エンジンにおいて、通常、吸気弁はピストンの下死点に閉まる(図19A参照)。一方、図19Bに示すように閉まるタイミングを下死点より早くすると、吸気弁の閉弁後にも混合気の膨張が続くため、筒内温度Tsが図19Aの場合より下がる(Ts*<Ts)。その分だけ上死点時の最高圧縮温度も低下することより(Tc*<Tc)、自着火を防ぐことができてノッキングが抑制される。
ミラーサイクルの欠点として、圧縮温度が下がって低負荷域の着火性が悪化するため、起動時や低負荷時には図19Aに示す通常の吸気弁の開弁タイミングに戻し、高負荷時のみ吸気弁の開弁タイミングを早くする必要がある。
なお、燃焼室内で混合気の圧縮比を下げると、起動時や低出力時では着火性が悪化する上に燃焼効率の点で有利な条件から離れてしまい、燃費が悪化するデメリットが生じる。そこで、本発明では、よりノッキングが生じ易い出力がより高い運転領域において吸気弁が閉じるタイミングをより大きく変更させて、より大きい割合で圧縮比を下げる制御を行う。これにより、出力の変化に応じてノッキングを抑制させ、燃費の悪化を防止しつつ負荷上げ時間を短縮させることができる。しかも、吸気弁の進角の変化に対応して燃料ガス供給弁の開弁タイミングを進角させることで、吸気弁と排気弁のバルブオーバーラップ時に未燃焼燃料ガスの吹き抜けを少なくすることができる。
エンジンの目標回転速度と実回転速度の偏差に基づいて例えばPID制御などのフィードバック制御によって燃料ガス供給弁の開弁期間を算出する。燃料ガス供給弁の開弁タイミングを起点としてこの開弁期間を設定することで、燃料ガス供給弁の閉弁タイミングを決定することができる。
吸気弁の閉弁タイミングの進角に応じて燃料ガスの供給圧力を高くすることで出力を維持するための適正なガス燃料の量を開弁期間内に供給することができる。
吸気弁の閉弁タイミングの進角に応じ、NOxが所定値に収まる範囲において点火タイミングを進角することで、熱効率を高くすることができる。
この場合でも、吸気弁が閉じるタイミングを進角する前よりも舶用三乗特性線をピークとしてトルクリッチ領域とトルクプア領域の前領域内で点火タイミングが進角するため、全体にNOxを規制範囲内に抑えると共に熱効率が高くなるという利点がある。なお、「舶用三乗特性」とは、出力が回転速度の三乗に比例する舶用主機関の特性であるが、実船では正確に三乗に比例するとは限らず、ある程度のずれが生ずる。
本発明によるエンジンでは、燃料となるガスは弾性体であるため液体燃料に比べて正確な燃料の供給量を得ることが相対的に難しい。そこで、トルクセンサにより実際にトルクの測定を行うことで回転速度との関係で出力を演算するが好ましい。しかも、回転速度センサを備えることで得られる出力軸の回転速度の測定値とトルクセンサによるトルク測定値の積をとることで、エンジンの出力軸の出力(負荷)をリアルタイムに求めることができる。そのため、エンジンの吸気弁の閉じるタイミングの進角と燃料ガス供給弁の開弁タイミングの進角とを精度良く設定できるため、出力が増大しても燃焼効率を向上させて適切にガス燃料エンジンの運転が行える。
吸気弁の閉じるタイミングの進角の好適な値は、出力が大きい場合により大きくなるが、これに加えて回転速度にも依存する。そのため、少なくともこれら二種のパラメータを含むマップを予め作成し、エンジンの出力と回転速度の変化に応じて吸気弁の閉じるタイミングの進角を制御することでノッキングをより抑制できる。
本発明によるエンジンシステムの制御方法では、ガス燃料の供給量を増やしてエンジンの出力軸の出力が増大した場合に、吸気弁が閉じるタイミングを吸入下死点から進角することで、エンジンの燃焼室内における混合気の圧縮比を下げる制御を行う。圧縮比を下げることで圧縮時の燃焼室内の温度が低くなるためノッキングを抑制することができる。
しかも、本発明では、よりノッキングが生じ易い出力がより高い運転領域において吸気弁が閉じるタイミングをより大きく変更させて、より大きい割合で圧縮比を下げる制御を行う。これにより、出力の変化に応じてノッキングを抑制させ、燃費の悪化を防止しつつ負荷上げ時間を短縮させることができる。しかも、吸気弁の進角の変化に対応して燃料ガス供給弁の開弁タイミングを進角させることで、吸気弁閉じのクランク角度に対して吸気弁と排気弁のバルブオーバーラップ時に未燃焼燃料ガスの吹き抜けを少なくすることができる。
本発明によるガス燃料エンジンでは、燃料となるガスは弾性体であるため液体燃料に比べて正確な燃料の供給量を得ることが相対的に難しい。そこで、トルクセンサにより実際にトルクの測定を行うことで回転速度との関係で出力を演算するが好ましい。しかも、回転速度センサを備えることで得られる出力軸の回転速度測定値とトルクセンサによるトルク測定値の積をとることで、エンジンの出力軸の出力をリアルタイムに求めることができる。
しかも、吸気弁の進角の調整に対応して燃料ガス供給弁の開弁タイミングを進角させるため、燃料ガス供給弁の開弁タイミングに起因していた燃焼変動、回転速度ハンチングを改善し、適切にガス燃料エンジンの運転を行うことができる。
図1及び図2に示す舶用のデュアルフューエルエンジン1(以下、単にエンジン1ということがある)はディーゼルモードDとガスモードGの各機関を備えており、運転中にディーゼルモードDとガスモードGとに切り換え可能な機関である。図1に示すデュアルフューエルエンジン1は、プロペラ等に連結された出力軸としてクランク軸2の機構を備えており、クランク軸2はシリンダーブロック3内に設置されたピストン4に連結されている。シリンダーブロック3内に設けたピストン4とエンジンヘッド5によって燃焼室6が形成されている。
停止の際には再びディーゼルモードDに変更してから停止を行う。始動時と停止時以外はディーゼルモードDとガスモードGを変更可能である。
図1において、クランク軸2には回転速度センサ20とトルクセンサ21とが取付けられており、回転速度センサ20ではクランク軸2の 回転速度(回転数)を計測し、トルクセンサ21ではエンジントルクを計測する。トルクセンサ21として、例えば軸にかかるトルクを歪によって検出するセンサが使用可能である。回転速度センサ20とトルクセンサ21で計測した測定データはエンジン1を制御する制御部22にそれぞれ信号出力する。
制御部22では、回転速度センサ20とトルクセンサ21などからの信号に基づいてエンジン1の運転状態を検出する。即ち、回転速度センサ20で計測したクランク軸2の回転速度(回転数)をnとし、トルクセンサ21で計測したトルクをTとして、下記の式(1)と式(2)でエンジン1の出力(負荷)Aを演算する。但し、Ltはエンジン1の定格出力とする。
出力Lo=2πTn/60 (1)
出力(負荷)A=Lo/Lt×100 (2)
また、回転速度nを一定にした場合には、出力Aとトルク測定値Tは正比例の関係になる。回転速度nが一定の条件においては、出力Aが大きいほど、すなわちトルクデータTが大きいほど、より大きい割合で吸気弁8の閉じるタイミングの進角を設定することが望ましい。
制御部22で設定された開閉タイミングの第二電気信号は電空変換器27に送信され、電空変換器27で開閉タイミングの信号が空気圧力に変換される。この空気圧力はアクチュエータ28に送られて可変吸気弁タイミング機構30の駆動を制御する。アクチュエータ28には第一減圧レギュレータ34と電空変換器27から駆動用と制御用の空気圧力P1,P2が供給される。
電空変換器27を駆動するための空気圧力は、第一減圧レギュレータ34から第二減圧レギュレータ37でさらに減圧されて供給される。電空変換器27は入力される開閉タイミングの第二電気信号に対応する空気圧力を、アクチュエータ28の動作を調整するための空気圧力P2としてアクチュエータ28に供給する。これらの空気圧力P1,P2に基づいてアクチュエータ28のロッド28aを動作して可変吸気弁タイミング機構30を作動させる。
吸気弁8の開弁タイミングと閉弁タイミングの間の時間は変わらないので開弁のタイミングが吸入下死点から進むと閉弁のタイミングも吸入上死点から同一時間進む。しかも、本発明ではエンジン1の出力に応じて開弁と閉弁のタイミングを変更することでノッキングを抑制して負荷上げ時間を短縮させるようにした。エンジン1の出力Aと回転速度nに基づいて制御部22内の第一マップ24と第二マップ25により吸気弁8の開閉タイミングを設定し、アクチュエータ28と可変吸気弁タイミング機構30によって吸気弁8の開弁と閉弁のタイミングを、ノッキングを抑制できるように調整している。
吸気弁8の閉開タイミングである進角の大きさは、リンクシャフトのタペット軸に連結された吸気用スイングアームにカム軸の偏心カムが当たり始めるタイミングで決まる。
この際のガス圧は燃料ガス圧力計43に表示され、ガスレギュレータ42のバルブ開度を変更することによって調整し、燃焼用のガス燃料として燃料ガス供給弁15から吸気管13内に供給される。吸気管13内ではガス燃料とエアクーラ16で冷却された過給の空気とが混合されて燃焼室6に供給される。負荷上げの際は、燃料ガス供給弁15の動作によりガス燃料の供給量を増加させる。
なお、燃料ガス供給タイミング手段44は制御部22の外部に設置されていてもよい。燃料ガス供給弁タイミング機構45は第二マップ25からの第二電気信号を受信して吸気弁8の閉じるタイミングの進角に応じて燃料ガス供給弁15の開弁タイミングを進角させることができればよい。
図3において、常用的(実用的)に運転される領域Bを破線で示している。これに対して、発電で行われる回転速度を一定にした場合の出力の変化に対するVIVT指令値の変化(進角)を矢印線Cで示し、舶用で行われる回転速度と出力(負荷率)が同時に変化する場合のVIVT指令値の変化(進角)を矢印線Dで示す。矢印線Dは舶用三乗特性を示している。舶用三乗特性は出力が回転速度の3乗に比例する舶用主機関の代表的な特性を示すものであり、機関の定格回転速度、定格出力によって決定する回転速度と出力の特性曲線である。そして、常用的な運転領域Bの領域内で舶用三乗特性線Dよりも出力(負荷率)が高い領域はトルクリッチ領域を示し、出力(負荷率)が低い領域はトルクプア領域を示す。
実験には、実際に使用する同一機種のデュアルフューエルエンジン1を用いた。
(1)エンジン1を始動し、回転速度(回転数)nを400min-1、出力(負荷)Aを10%、吸気弁8の閉弁タイミングを545deg(構造上、最も遅い閉弁タイミング)に設定する。
(2)そして、エンジン1の駆動時に発生したノッキングと呼ばれる異常燃焼とそのときの排気温度を計測する。
ノッキングは、各エンジンヘッド5に取付けた不図示のノックセンサにより発生を検出する。ノッキング現象発生時は,通常の燃焼波形に高周波の圧力変動が重なった波形となる。
(3)上記のノッキング測定時の排気温度の測定終了後、吸気弁8の閉弁タイミングを5deg減少させ、再度(2)の計測を行う。閉弁タイミングを500deg(構造上、最も早い閉弁タイミング)まで変更して計測を行う。
(4)上記(3)の計測が終了したら、出力Aを10%ずつ110%になるまで段階的に増加させて、再度(2)と(3)の計測を繰り返して行う。
(6)上記(5)の計測結果から、X軸が出力A、Y軸が回転速度n、Z軸が開閉タイミングに設定された図4の3次元グラフにおいて、安全に運転可能な計測点に●(黒丸)、安全ではない計測点に×をプロットする。これによって、出力Aと回転数nと閉弁タイミングとの関係におけるノッキング抑制範囲を選定できる。
(7)上記(1)〜(6)の計測工程を、回転速度nを100min-1ずつ900min-1まで上昇して行い、回転速度n毎の安全に運転できる範囲を計測する。
(9)次に上記(1)〜(8)の実験により計測した図4に示す安全にエンジンを運転できる直線で囲った3次元領域の範囲内で、窒素酸化物(以下、NOxという)が基準値以下であり、熱効率が一番高い設定を探すことを目的に更に実験を行う。
エンジン回転速度nを400min-1、出力Aを10%、吸気弁8の閉弁タイミングを545degに設定する。
熱効率η=360Lo/H/L (3)
但し、H:燃料ガスの低位発熱量(J/Nm3)
Lo:現時点の出力
L:燃料流量
(12)上記(10)と(11)の計測が終了したら出力を10%ずつ110%まで段階的に増加させ、再び(10)及び(11)の計測を繰り返して行う。閉弁タイミングは図4で示す安全に運転できる範囲内で変更する。
(14)そして、NOxが所定値以下であり、熱効率が一番高い、吸気弁8の閉弁タイミングを各回転速度nと出力A毎に設定する。この結果により、図3に示す第一マップの原案が作成される。
(16)上記(15)で検出されたノッキング強さが基準値以上であった計測点の閉弁タイミングを3deg減少させる。
(17)つぎに、ノッキング強さが基準値以下になるまで、(15)(16)の工程を繰り返し、ノッキングが抑制された閉弁タイミングを決定する。閉弁タイミングを減少させると熱効率は悪化する。NOx、ノッキング強さが基準値以下で熱効率が一番高い結果が得られた閉弁タイミングの設定を回転速度n、出力Aの設定値とする。
(18)上記(17)よりノッキングが抑制された閉弁タイミングを各回転速度n、出力Aでそれぞれ計測し、その結果により図3に示す最終的な第一マップ24を作成した。
舶用三乗特性線Dで示した良好な負荷上げパターンの1例では、回転速度と出力の小さい図中右下の位置では進角は最少とされ、回転速度と出力が増すに従って進角を大きくする。進角を大きくする比率は一定ではないが、全体として出力が増すほど進角は大きくされる。なお、出力(負荷率)はトルクと回転速度の積で求められるため、出力軸のトルクが増すほど進角を大きくすると表現することもできる。
可変吸気弁タイミング機構30がアクチュエータ28によって回転制御されるとき、次の手順で第二マップ25を作成する。
(1)アクチュエータ28により閉弁タイミングを変更し、各閉弁タイミングに変更する際の圧力を計測する。
(2)電空変換器27の仕様より上記(1)の圧力を供給する為に必要な第二電気信号を調査する。
(3)上記(1)及び(2)の結果から、横軸に上記第一マップ24で選択した第一電気信号、縦軸に閉弁タイミング(第二電気信号)を示す第二マップ25を作成する。
(1)サーボモータに基づいて閉弁タイミングを変更し、各閉弁タイミングに変更する際の第二電気信号を計測する。
(2)上記(1)の結果により横軸に第一電気信号、縦軸に閉弁タイミング(第二電気信号)を示す第二マップ25を作成する。
第二マップ25は閉弁タイミング(第二電気信号)と第一電気信号との関係を表すマップである。
本実施形態において、VIVT指令値の変化に対応して、即ち、各種の吸気弁閉じクランク角度に対して、吸気弁8と排気弁9のバルブオーバーラップ時による未燃焼燃料ガスの排気管14への吹き抜けが少なくなるように燃料ガスを吸気管13に供給する燃料ガス供給弁15の開弁タイミングを設定する。そのために、先ず回転速度と出力に応じたVIVT指令値を設定する。厳密に言えば、空燃比や点火時期も熱効率やNOxを目安として最適な値に設定しておいた方が好ましいが、ここではエンジン1が安定して運転できているとしてこれらの条件は設定しない。
まず、エンジンの出力(負荷率)を25%、50%、75%、100%とした各運転条件において、吸気弁8の開くタイミングを目安として燃料ガス供給弁15から燃料ガスを供給するが、吸気管13内に燃料ガスを供給することから、燃料ガスは瞬時に吸気弁8に到達しない。そのため、燃料ガス供給弁15から吸気弁8までの距離を考慮した燃料ガス供給弁15の開弁タイミングのクランク角度位置を想定する。そして、燃料ガス供給弁15の開弁タイミングにおけるクランク角度位置をその前後で5deg刻みに変更して、その時の過給機17のガスタービン出口の排ガス中の未燃焼ガスであるトータルハイドロカーボン濃度(THC濃度)を測定する。それぞれの運転条件においてTHC濃度の計測を繰り返して実施する。THC濃度は水素炎イオン化法(JIS B 7956)で測定するのが好ましい。
図6に示すように、燃料ガス供給弁15の開弁タイミングは、バルブオーバーラップ時に未燃焼燃料ガスの吹き抜けが少なく、THC濃度が最低になるクランク角度を基準とする。一方、出力変化によって急激に燃料ガス供給弁15の開弁タイミングが変化すると前述した燃焼変動や回転速度変動に繋がる。このため、出力に応じた燃料ガス供給弁15の開弁タイミングの変化量が極力小さい傾きになるように、選定した基準から±5deg.C.Aの範囲内で最適な燃料ガス供給弁15の燃料ガス開弁タイミングとなるクランク角度を選定し、それぞれの条件で最適な燃料ガス供給弁15の開弁タイミングに対応するクランク角度を決定する。
同様に、図3の発電用特性線Cで行われる回転速度一定とした出力における最適VIVT指令値における最適な燃料ガス供給弁15の開弁タイミングのクランク角度と、出力(負荷率)との関係を、図7の「回転速度一定」の折れ線で示す。
図7に示すように、最適な燃料ガス供給弁15の開弁タイミングは、出力が同一であっても回転速度が変化する条件と回転速度一定の条件とでは異なった結果となる。
そのため燃料ガス供給タイミング手段44により、各条件において決定した最適な燃料ガス供給弁15の開弁タイミングのクランク角度を、VIVT指令値を基準として設定することで、VIVT指令値による燃料ガス供給弁15の開弁タイミングの最適化を図ることができる。なお、図8において、計測していないVIVT指令値や燃料ガス供給開始時期等については、測定点前後のデータを結ぶ近似線により決定すればよい。
図9は図1に示すエンジン1の要部構成を示すものである。図9において、制御部22には外部に目標回転速度指令部50が設置され、予め設定された目標回転速度が制御部22に入力される。制御部22のガス供給時間算出部51では回転速度センサ20の測定値により演算された実回転速度と目標回転速度との偏差に基づいて燃料ガス供給弁15の開弁期間を直接的にPID制御する。
ガス供給時間算出部51に接続されたガス供給弁制御部52では、燃料ガス供給弁15の開弁タイミングを起点として開弁すべき時間を演算して燃料ガス供給弁15に出力し、開弁すべき時間だけ燃料ガス供給弁15を開弁させるようにフィードバック制御する。
ガス供給弁制御部52では、燃料ガス供給弁15の開弁タイミングを起点として算出された開弁期間に基づいて各燃料ガス供給弁15の閉弁タイミングの制御を行う。制御部22は、供給する燃料ガス量をあらかじめ演算せずに実回転速度が目標回転速度に一致するように、燃料ガス供給弁15の開弁期間を直接的にPID制御している。
図11において、エンジン1のクランク角度と吸気弁8及び排気弁9のバルブリフトとの関係を示している。吸気弁8の開閉作動を示す曲線において、実線で示すのはVIVT(可変吸気バルブタイミング)指令値が0%の場合であり、一点鎖線で示すのは進角時(VIVT指令値が100%)の場合の開閉作動イメージを示している。そして、VIVT指令値が0%の場合の燃料ガス供給弁15の開弁期間に対して、進角時(VIVT指令値が100%)の燃料ガス供給弁15の開弁期間がより長くなる。
図12は出力と燃料ガス供給弁15の開弁期間と圧力ΔPとの関係を示す図である。エンジン1の運転条件を出力(負荷率)と回転速度をパラメータとして変化させて、各条件において圧力ΔPを変更し、各出力における圧力ΔPと燃料ガス供給弁15の開弁期間を得る。出力と回転速度に基づいて圧力ΔPを低く設定すると燃料ガス供給弁15の開弁期間は長くなり、開弁期間が長すぎると吸気弁8が開いている間に適正なガス燃料を供給できなくなる。逆に、圧力ΔPを高く設定すると燃料ガス供給弁15の開弁期間は短くなり、供給量の制御性が悪化してしまう。したがって、圧力ΔPはエンジン1の運転状態に対して悪影響を与えない圧力ΔPに設定する。
なお、燃料ガスの供給圧力により混合気の分布は変化するため、燃焼状態にも注意を払う必要がある。図12において、計測していない条件については計測点前後のデータを結ぶ近似線により決定すればよい。
なお、燃料ガス供給圧力は圧力ΔPにより決定されるため、給気圧力が変化した場合は燃料ガスの供給圧力も変化する。すなわち、燃料ガス供給弁15の上流と下流の差圧を設定していることを示し、燃料ガスの量は燃料ガス供給弁15の前後の差圧と開弁期間により定まるため、給気圧力が変化した場合であっても、ここで決定した燃料ガス供給圧力と燃料ガス供給弁15の開弁期間の関係に大きな影響はない。
図13から明らかなように、エンジン1の出力(負荷率)が大きくなれば、すなわち吸気弁8が閉じるタイミングの進角に伴って、圧力ΔPを含む燃料ガスの供給圧力も高くなる。
上述した本実施形態によるVIVT指令値(吸気弁閉じクランク角度)の変化に対応して、吸気管13から吸気弁8に供給される給気圧力は、予め測定したエンジン1の出力と回転速度をパラメータとして設定した目標給気圧力によって、図9に示す過給機17の例えばコンプレッサ側及びタービン側それぞれにバイパスラインを設けた流量調整弁を制御して、給気圧力を制御するようにした(例えば特願2016−027359号出願に示すもの参照)。なお、給気圧力の制御はこの制御方式に限定されない。従来公知の給気圧力制御方式でもよい。
空燃比のベースとなる燃料の量は、上述した図12、図13に示す燃料ガスの供給圧力と燃料ガス供給弁15の開弁期間との関係で決定されるものであり、エンジン1の所定の出力(負荷率)と回転速度で好適な燃料の量が定まる。空燃比は空気量と燃料ガス量の比で決定される。そのため、給気圧力を変更することで、燃焼室6に供給する空気量を変化させる。すなわち、空燃比は給気圧力によって調整する。
空燃比の設定の仕方は、エンジン1の運転条件を出力(負荷率)と回転速度をパラメータとして変化させて、例えば出力(負荷率)を25%、50%、75%、100%などに設定し、各種の空燃比(給気圧力)における熱効率とNOxデータを測定して得る。そして、任意の出力及び回転速度において、空燃比を変更した場合におけるNOxのデータ例を図14に示す。
ここで、NOxの値は用途により基準値が異なる。基準値は、例えば舶用では改正MARPOL条約附属書VI規則13に基づくIMO NOx規制に基づき、陸用は大気汚染防止法などにより示されるNOx排出量により上限値と下限値が規制される。
空燃比の下限値は上述したNOx排出量の法規制に基づく上限値により制限される。ただし、NOxデータが上限の規制値に達する前にノッキングなどの異常燃焼が起こる場合には、異常燃焼が起こる直前の空燃比を下限値に設定する。
他方、空燃比を大きくしていくとNOxは低下するものの、失火などによりエンジン1が安定運転できなくなる。そのため、安定運転を継続できる空燃比の上限を上限値に設定する。これらにより設定可能な空燃比の範囲が定まる。
図15は出力と回転速度に対応して設定した吸気圧力をプロットした三次元マップである。図中、破線で示す領域が常用的(実用的)な運転領域のイメージであり、その範囲内に実線で示す舶用三乗特性が設定されている。なお、計測していない条件については、計測点前後のデータを結ぶ近似線により決定すればよい。
図15から明らかなように、エンジン1の出力が大きくなれば、すなわち吸気弁8が閉じるタイミングの進角に伴って、必要な給気圧力も高くなる。
以上述べたように、燃料ガス供給弁15の供給開始及び終了のタイミング制御と燃料ガスの供給圧力制御と給気圧力制御によって、空燃比制御がなされる。
エンジン1の運転条件を出力(負荷率)と回転数をパラメータとして変化させて、例えば負荷率25%、50%、75%、100%等の各種の点火タイミングの熱効率、NOxデータを得る。任意の出力、回転速度において、点火タイミングを変更した時の熱効率とNOxのデータ例を示すと図18のようになる。図18に実線で示すように、点火タイミングを進角させていくとNOxは増加し、熱効率は向上する関係にある。そのため、熱効率とNOxとはトレードオフの関係にある。
上述したようにNOxは所定の基準値があるため、給気圧力と同様の基準となるNOxを満たす設定範囲内において、熱効率が最も高くなるように進角した点火タイミングを好適なタイミングとして設定する。
また、エンジン1は出力が高くなるほど、空燃比に対する運転可能範囲が狭くなるため、安定した運転状態の維持は、特に舶用三乗特性よりも出力が高いトルクリッチ領域の運転範囲拡大に対して効果を得られる。
また、エンジン1の出力軸の出力が増大した場合にエンジン1内の混合気の圧縮比を下げることができるため、負荷上げ時のノッキングを抑制すると共に負荷上げ時間の短縮もできる。
しかも、舶用エンジンの負荷上げパターンに限定されることなく、車両用や非常用発電機などで活用できる負荷上げパターンにも適用できる。
2 クランク軸
8 吸気弁
9 排気弁
13 吸気管
14 排気管
15 燃料ガス供給弁
17 過給機
20 回転速度センサ
21 トルクセンサ
22 制御部
24 第一マップ
25 第二マップ
27 電空変換器
28 アクチュエータ
30 可変吸気弁タイミング機構
42 ガスレギュレータ
44 燃料ガス供給タイミング手段
45 燃料ガス供給弁タイミング機構
Claims (13)
- ガスを燃料とするエンジンの制御方法であって、
該エンジンの出力の増加に伴い、吸気弁が閉じるタイミングを吸入下死点からの進角を調整することで燃焼室内における混合気の圧縮比を下げる制御を行うと共に、
前記進角の変化に対応して燃料ガス供給弁の開弁タイミングを、前記吸気弁の開くタイミング及び前記燃料ガス供給弁から前記吸気弁までの距離に応じて設定された角度まで進角させ、
前記吸気弁が閉じるタイミングの進角が進むほど、前記燃料ガス供給弁の開弁タイミングの進角の度合いが、より大きくなり、
前記燃料ガス供給弁の閉弁タイミングは、前記燃料ガス供給弁の開弁タイミングを起点として開弁期間を設定することで決定されることを特徴とするエンジンの制御方法。 - ガスを燃料とするエンジンの制御方法であって、
該エンジンの出力の増加に伴い、吸気弁が閉じるタイミングを吸入下死点からの進角を調整することで燃焼室内における混合気の圧縮比を下げる制御を行うと共に、
前記進角の変化に対応して燃料ガス供給弁の開弁タイミングを進角させ、
前記吸気弁が閉じるタイミングの進角が進むほど、前記燃料ガス供給弁の開弁タイミングの進角の度合いが、より大きくなり、
前記燃料ガス供給弁の閉弁タイミングは、前記燃料ガス供給弁の開弁タイミングを起点として開弁期間を設定することで決定され、
前記吸気弁が閉じるタイミングの進角に伴って、前記エンジンの点火タイミングを進角させることを特徴とするエンジンの制御方法。 - 燃料ガス供給弁の前記開弁期間は、目標回転速度と実回転速度の偏差に基づいて算出されることを特徴とする請求項1または2に記載されたエンジンの制御方法。
- 前記吸気弁が閉じるタイミングの進角に伴って、燃料ガスの供給圧力を高くすることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載されたエンジンの制御方法。
- 前記点火タイミングの進角度合いは、予め測定した前記エンジンの出力と回転速度とをパラメータとして設定したトルクリッチ領域とトルクプア領域の境界である舶用三乗特性線をピークとし、
前記トルクリッチ領域においては前記舶用三乗特性線より進角度合いが減じられることを特徴とする請求項2に記載されたエンジンの制御方法。 - 前記エンジンの出力は、前記エンジンの出力軸のトルクをトルクセンサで測定したトルク測定値と、前記エンジンの出力軸の回転速度を回転速度センサで測定した回転速度測定値と、から求めた出力軸の出力値であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載されたエンジンの制御方法。
- 前記吸気弁が閉じるタイミングの進角は、予め測定した複数の出力軸の出力及び回転速度のデータをパラメータとして設定した進角の値から設定されるようにしたことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載されたエンジンの制御方法。
- ガスを燃料とする4ストロークのエンジンを備えたエンジンシステムであって、
前記エンジンの出力軸の出力が増大した場合に前記エンジンの吸気弁が閉じるタイミングを進角させると共に、その進角の変化に対応して、燃料ガス供給弁の開弁タイミングを、吸気弁の開くタイミング及び燃料ガス供給弁から吸気弁までの距離に応じて設定された角度まで進角させる制御部と、
前記制御部で設定された前記吸気弁の閉じるタイミングに応じて前記吸気弁が閉じるタイミングを変更させる可変吸気弁タイミング機構と、
前記制御部で設定された前記吸気弁の進角の変化に対応して前記燃料ガス供給弁の開弁タイミングを進角させる燃料ガス供給弁タイミング機構と、を備え、
前記エンジンの出力軸の出力の増大に伴い、前記可変吸気弁タイミング機構によって前記エンジン内のガスと空気の混合気の圧縮比をより下げる制御を行い、
前記燃料ガス供給弁の閉弁タイミングは、
前記燃料ガス供給弁の開弁期間を算出するガス供給時間算出部と、
前記燃料ガス供給弁の開弁タイミングを起点として前記開弁期間に基づいて前記燃料ガス供給弁による燃料ガスの閉弁タイミングを指示するガス供給弁制御部と、によって設定されたことを特徴とするエンジンシステム。 - ガスを燃料とする4ストロークのエンジンを備えたエンジンシステムであって、
前記エンジンの出力軸の出力が増大した場合に前記エンジンの吸気弁が閉じるタイミングを進角させると共に、その進角の変化に対応して、燃料ガス供給弁の開弁タイミングを進角させる制御部と、
前記制御部で設定された前記吸気弁の閉じるタイミングに応じて前記吸気弁が閉じるタイミングを変更させる可変吸気弁タイミング機構と、
前記制御部で設定された前記吸気弁の進角の変化に対応して前記燃料ガス供給弁の開弁タイミングを進角させる燃料ガス供給弁タイミング機構と、を備え、
前記エンジンの出力軸の出力の増大に伴い、前記可変吸気弁タイミング機構によって前記エンジン内のガスと空気の混合気の圧縮比をより下げる制御を行い、
前記燃料ガス供給弁の閉弁タイミングは、
前記燃料ガス供給弁の開弁期間を算出するガス供給時間算出部と、
前記燃料ガス供給弁の開弁タイミングを起点として前記開弁期間に基づいて前記燃料ガス供給弁による燃料ガスの閉弁タイミングを指示するガス供給弁制御部と、によって設定され、
前記吸気弁が閉じるタイミングの進角に伴って、前記エンジンの点火タイミングを進角させることを特徴とするエンジンシステム。 - 請求項8または9に記載されたエンジンシステムであって、
前記エンジンの出力軸のトルクを測定するトルクセンサと、
前記エンジンの出力軸の回転速度を測定する回転速度センサとを備え、
前記トルクセンサによるトルク測定値と前記回転速度センサによる回転速度測定値から前記出力軸の出力を求めて、前記制御部における吸気弁の閉じるタイミングの変更を設定するようにしたエンジンシステム。 - 請求項8から10のいずれか1項に記載されたエンジンシステムであって、
前記燃料ガス供給弁の開弁期間は、目標回転速度と実回転速度の偏差に基づいて算出するエンジンシステム。 - 請求項8から11のいずれか1項に記載されたエンジンシステムであって、
前記吸気弁が閉じるタイミングの進角に伴って、燃料ガスの供給圧力を高くするように設定されたエンジンシステム。 - 請求項9に記載されたエンジンシステムであって、
前記吸気弁が閉じるタイミングの進角に伴う前記エンジンの点火タイミングの進角度合いは、予め測定した前記エンジンの出力値と回転数とをパラメータとして設定したトルクリッチ領域とトルクプア領域の境界である舶用三乗特性線をピークとし、前記トルクリッチ領域においては進角度合いが減じられるエンジンシステム。
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