JP6842631B2 - 発光膜形成用塗布液及びその調製方法、並びに発光膜の製造方法 - Google Patents

発光膜形成用塗布液及びその調製方法、並びに発光膜の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、発光膜形成用塗布液及びその調製方法、並びに発光膜の製造方法に関する。
従来、高速道路等において、車線の上方に配置されて道路案内等を表示する標識装置が広く利用されている。例えば、標識面を再帰性反射シートにより構成するとともに、路肩に設置された照明装置から照射した可視光線を標識面で反射させることで、当該標識面の夜間における視認性を発現する形式の標識装置が知られている。ところが、このような標識装置にあっては、対向車線のドライバーが照射装置を直視する場合があり、当該照射装置が眩しくて運転の妨げとなる他、標識面から外れた可視光線によって光線が帯状に見え、降雨時や霧の発生によって光が乱反射してドライバーを幻惑させることがある。また、ドライバーが標識面を見る角度によっては、標識面が暗く見えたり、反射光が強くなり過ぎたりして視認性が悪化するという問題もある。
そこで、可視光線を利用しない標識装置として、紫外線照射型の標識装置が開発されている。紫外線照射型の標識装置は、紫外線により蛍光発色する蛍光体を含んだ塗料を用いて標識面を形成し、当該標識面に照射装置からの紫外線を照射することで、可視光線による不都合を回避して夜間における標識面の視認性を改善するようになっている。
高速道路等における標識装置に用いられる蛍光発光シートにおいては、良好な視認性を発現するため高輝度であることが望まれる。
高輝度の白色蛍光体として、酸化バナジウム系の白色蛍光体が知られている。例えば特許文献1には、所定の組成式で表されるバナジウム酸化物からなる、紫外・近紫外線を励起光として白色発光するバナジウム酸化物蛍光体が開示されている。特許文献2には、基板上に形成された、A(AはK(カリウム)、Rb(ルビジウム)及びCs(セシウム)から選ばれる1種又は2種以上の原子である)を含む化合物とV(バナジウム)を含む化合物との混合物を含む薄膜に紫外線レーザ等を照射することによりバナジウム酸化物を結晶化させ、酸化バナジウム蛍光体の薄膜をバインダーを使用せずに基板上に製膜する方法が開示されている。
特許文献2に開示された蛍光体薄膜は、基板上に薄膜を形成した後にバナジウム酸化物を結晶化させて得られるものであることから、薄膜形成に用いる前駆体溶液中の蛍光体成分の濃度や、形成されるバナジウム酸化物結晶の結晶状態の制御における自由度が制限される。そのため、当該蛍光体薄膜を例えば標識装置用の蛍光発光シートに適用するためには、実質的にはさらなる高輝度化が望まれる。
特許文献1に開示されているバナジウム酸化物のような固体の蛍光体を用いて発光膜を形成する方法として、当該蛍光体の懸濁液又は分散液を用いて発光膜を形成することが知られている。例えば特許文献3には、発光輝度が高く、蛍光体懸濁液中での分散性(分散状態)が良好な、所定の組成を有する蛍光体、及び該蛍光体からなる蛍光膜を備えた蛍光ランプが開示されている。特許文献4には、固体状態で発光性を有する多核錯体化合物と高分子とを含む発光性膜、及び、溶媒に高分子を溶解させ、且つ多核錯体化合物の粒子を分散させてなる混合物を塗布する工程を含む発光性膜の製造方法が開示されている。但し特許文献4の開示発明で用いられる発光性の多核錯体化合物は有機溶媒に溶解すると発光強度が減少する有機化合物であり、酸化バナジウム系の白色蛍光体とは諸特性が大きく異なるものである。
特開2009−57434号公報 特開2009−84531号公報 特開平1−234490号公報 特開2008−156594号公報
固体蛍光体の懸濁液や分散液などの塗布液を用いて発光膜を形成する場合、当該塗布液中の固体蛍光体の分散状態が、塗布液の安定性や得られる発光膜の輝度などにも影響を及ぼすことが特許文献3等で知られている。特許文献3では、蛍光体の懸濁液中での分散性(分散状態)が、蛍光体懸濁液の安定性、及び蛍光ランプにおける特性に大きく影響していることを見出し、当該分散状態を、蛍光体懸濁液を超音波処理した場合の粒径の平均値Dと、処理をしない場合の粒径の平均値Dとの比D/Dにより評価している。しかしながら、超音波処理では固体蛍光体の分散に必要十分なエネルギーを与えることができず、また塗工液の温度が著しく上昇するため、性能面、安全面から出力に制限が生じ、工業的には不向きである。特に塗工液中の固体蛍光体の分散が不十分であると、塗工均一性が低下し大面積の支持体への連続塗工が困難になるため、均一で且つ高輝度を発現しうる発光膜を工業的に製造することができない。
本発明は蛍光発色性を有する発光膜の形成に用いられる塗布液であって、分散安定性及び塗工均一性に優れ、高輝度の発光膜を形成しうる発光膜形成用塗布液、その調製方法、並びに発光膜の製造方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、バナジウム酸化物粒子、有機酸バナジウム塩、有機酸バナジウム塩以外の有機酸金属塩、所定の種類の分散剤、並びに有機溶剤を含み、バナジウム酸化物粒子が所定以下の平均粒子径で分散され、且つ該バナジウム酸化物粒子の含有量が所定の範囲にある塗布液が上記課題を解決できることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち、本発明は下記に関する。
[1]発光膜形成用塗布液であって、該塗布液はバナジウム酸化物粒子、有機酸バナジウム塩、有機酸バナジウム塩以外の有機酸金属塩、塩基性分散剤及び酸性分散剤のうち少なくとも1種の分散剤、並びに有機溶剤を含み、該塗布液中、該バナジウム酸化物粒子は平均粒子径が10μm以下の状態で分散され、且つ該バナジウム酸化物粒子の含有量が30質量%以上である、発光膜形成用塗布液。
[2]下記工程(I)〜工程(III)を有する、発光膜形成用塗布液の調製方法。
工程(I):有機酸バナジウム塩、有機酸バナジウム塩以外の有機酸金属塩、及び有機溶剤を混合して混合物(1)を得る工程
工程(II):前記混合物(1)と、バナジウム酸化物粒子と、塩基性分散剤及び酸性分散剤のうち少なくとも1種の分散剤とを混合して、該バナジウム酸化物粒子の含有量が30質量%以上の混合物(2)を得る工程
工程(III):前記混合物(2)を分散処理して、バナジウム酸化物粒子が平均粒子径10μm以下の状態で分散された発光膜形成用塗布液を得る工程
[3]下記工程(I)〜工程(V)を有する、発光膜の製造方法。
工程(I):有機酸バナジウム塩、有機酸バナジウム塩以外の有機酸金属塩、及び有機溶剤を混合して混合物(1)を得る工程
工程(II):前記混合物(1)と、バナジウム酸化物粒子と、塩基性分散剤及び酸性分散剤のうち少なくとも1種の分散剤とを混合して、該バナジウム酸化物粒子の含有量が30質量%以上の混合物(2)を得る工程
工程(III):前記混合物(2)を分散処理して、バナジウム酸化物粒子が平均粒子径10μm以下の状態で分散された発光膜形成用塗布液を得る工程
工程(IV):前記塗布液を支持体に塗布して塗膜を形成する工程
工程(V):前記塗膜を乾燥処理し、次いで紫外線照射する工程
本発明によれば、分散安定性及び塗工均一性に優れ、高輝度の発光膜を形成しうる発光膜形成用塗布液、その調製方法、並びに発光膜の製造方法を提供することができる。当該発光膜は高い蛍光輝度を発現しうることから、例えば白色光を必要とする日常灯などの照明器具、高速道路などの紫外線照射型標識装置、その他の各種表示装置用のバックライト等への使用に適する。
[発光膜形成用塗布液]
本発明の発光膜形成用塗布液(以下、単に「本発明の塗布液」ともいう)は、バナジウム酸化物粒子、有機酸バナジウム塩、有機酸バナジウム塩以外の有機酸金属塩、塩基性分散剤及び酸性分散剤のうち少なくとも1種の分散剤、並びに有機溶剤を含み、該塗布液中、該バナジウム酸化物粒子は平均粒子径が10μm以下の状態で分散され、且つ該バナジウム酸化物粒子の含有量が30質量%以上であることを特徴とする。
本発明の塗布液は上記構成であることにより、分散安定性及び塗工均一性に優れ、高輝度の発光膜を形成することが可能となる。以下、本発明の塗布液に含まれる各成分について説明する。
<バナジウム酸化物粒子>
本発明の塗布液はバナジウム酸化物粒子を含む。バナジウム酸化物粒子は蛍光発色する性質を有しており、当該バナジウム酸化物が粒子の状態で含まれている本発明の塗布液を用いると高輝度の発光膜を形成することができる。
本発明に用いられるバナジウム酸化物としては、バナジウム原子(V)と酸素原子(O)を含む蛍光発色性の無機化合物であれば特に制限なく用いることができる。
高輝度の蛍光発色性を有する発光膜を形成する観点からは、バナジウム酸化物は組成式MVO(Mはカリウム(K)、ルビジウム(Rb)、及びセシウム(Cs)からなる群から選ばれる1種以上の原子である)で示される化合物であることが好ましい。すなわち、好ましいバナジウム酸化物粒子はKVO、RbVO、及びCsVOから選ばれる1種以上の化合物からなる粒子である。これらの中でも、高輝度を発現する観点から、バナジウム酸化物粒子はCsVO粒子であることが好ましい。
バナジウム酸化物粒子の形状には特に制限はなく、例えば球状、板状、針状などが挙げられる。
本発明の塗布液中、バナジウム酸化物粒子は平均粒子径が10μm以下の状態で分散されていることを特徴とする。塗布液中に分散されているバナジウム酸化物粒子の平均粒子径が10μmを超える場合、塗布液中に凝集物が見られたり、該凝集物の沈降などにより塗布液中において透明部と不透明部の分離が見られたりすることがある。また、塗工スジや塗布ムラが発生する場合や、塗膜表面に凝集物による部分的な凹凸が形成される場合もある。そのため塗布液の分散安定性及び塗工均一性が低下し、高輝度の発光膜の形成が困難である。なお本明細書において、塗布液中に分散されたバナジウム酸化物粒子の平均粒子径とは、レーザー回折式粒度分布計により測定されるメジアン径(D50)の値をいう。
塗布液中のバナジウム酸化物粒子の平均粒子径は、分散安定性及び塗工均一性に優れ、高輝度の発光膜を形成する観点から、好ましくは9.5μm以下、より好ましくは9.0μm以下、さらに好ましくは8.5μm以下である。また、上記平均粒子径は好ましくは1.0μm以上、より好ましくは2.0μm以上、さらに好ましくは3.0μm以上である。当該平均粒子径が1.0μm以上であれば、より高輝度の発光膜を得ることができる。
塗布液中のバナジウム酸化物粒子の平均粒子径(D50)は、レーザー回折式粒度分布計により測定することができ、具体的には実施例に記載の方法で測定できる。
なお、粒度分布を表す指標として、体積基準頻度分布で積算10%に相当する粒子径D10、積算50%に相当する粒子径D50、積算90%に相当する粒子径D90が用いられる。
塗布液中、バナジウム酸化物粒子は、粒子径が揃った状態で分散されていることが塗布液の分散安定性及び塗工均一性の観点からは好ましい。この観点から、塗布液中のバナジウム酸化物粒子のD10は、好ましくは0.1〜3.0μm、より好ましくは0.2〜3.0μm、さらに好ましくは0.3〜3.0μmである。また、塗布液中のバナジウム酸化物粒子のD90は、好ましくは8.5〜40μm、より好ましくは8.5〜25μm、さらに好ましくは8.5〜20μmである。塗布液中のバナジウム酸化物粒子のD10及びD90はレーザー回折式粒度分布計により測定することができる。
<有機酸バナジウム塩>
本発明の塗布液に含まれる有機酸バナジウム塩は、有機酸とバナジウムとから形成された塩化合物である。
本発明の塗布液は、有機酸バナジウム塩と、後述する有機酸バナジウム塩以外の有機酸金属塩とを共に含む。
有機酸バナジウム塩を構成する有機酸としては例えば、脂肪酸、及び、カルボキシ基、ヒドロキシ基又はエノール基を有する弱酸の化合物であって有機溶剤に溶解しうる化合物が挙げられる。
上記脂肪酸としては、炭素数6〜30の飽和脂肪酸及び不飽和脂肪酸が挙げられ、飽和脂肪酸が好ましい。
炭素数6〜30の飽和脂肪酸としては、例えば、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクチル酸、ノナン酸、デカン酸、ネオデカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、テトラデカン酸、ヘキサデカン酸、オクタデカン酸、エイコサン酸、ドコサン酸、テトラコサン酸、ヘキサコサン酸、オクタコサン酸、トリアコンタン酸、及びナフテン酸等が挙げられる。なお本明細書において「オクチル酸」とは、2−エチルヘキサン酸、n−オクタン酸、及びイソオクタン酸を包含する概念である。
炭素数6〜30の不飽和脂肪酸としては、例えば、オレイン酸、リノール酸、及びリノレン酸等が挙げられる。
また、上記以外の脂肪酸として、例えば、ロジン酸、アマニ油脂肪酸、大豆油脂酸、トール油酸等も挙げられる。
前記のカルボキシ基を有する化合物としては、例えば、クエン酸、シュウ酸や、胆汁酸、糖酸、12−ヒドロキシステアリン酸、ヒドロキシケイ皮酸、及び葉酸等のヒドロキシ酸、アラニン及びアルギニン等のアミノ酸、安息香酸、及びフタル酸等の芳香族酸が挙げられる。
また、前記のヒドロキシ基又はエノール基を有する化合物としては、例えば、アスコルビン酸、α酸、イミド酸、エリソルビン酸、クロコン酸、コウジ酸、スクアリン酸、スルフィン酸、タイコ酸、デヒドロ酢酸、デルタ酸、尿酸、ヒドロキサム酸、フミン酸、フルボ酸、及びホスホン酸等が挙げられる。
有機酸バナジウム塩を構成する有機酸は、1種のみでもよく、2種以上の組み合わせでもよい。中でも、有機酸バナジウム塩を構成する有機酸は炭素数6〜30の飽和脂肪酸が好ましく、オクチル酸、ノナン酸、デカン酸及びナフテン酸から選ばれる1種以上がより好ましく、オクチル酸がさらに好ましい。
有機酸バナジウム塩を構成する有機酸は、1種のみでもよく、2種以上の組み合わせでもよい。
<有機酸バナジウム以外の有機酸金属塩>
有機酸バナジウム以外の有機酸金属塩は、本発明の塗布液を用いて形成される塗膜中で、前述した有機酸バナジウム塩と作用してバナジウム酸化物結晶を形成するために用いる。以下の記載において「有機酸金属塩」とは、有機酸と金属とから形成された塩化合物をいう。また「有機酸バナジウム以外の有機酸金属塩」を単に「有機酸金属塩」ともいう。
有機酸金属塩を構成する有機酸としては特に制限はなく、前記有機酸バナジウム塩において例示したものと同様のものが挙げられる。
有機酸金属塩を構成する金属はカリウム、ルビジウム、及びセシウムからなる群から選ばれる1種以上が好ましい。すなわち、有機酸金属塩は好ましくは有機酸カリウム塩、有機酸ルビジウム塩、及び有機酸セシウム塩からなる群から選ばれる1種以上であり、形成されるバナジウム酸化物結晶の輝度の観点からは、有機酸セシウム塩であることがより好ましい。
有機酸金属塩としてより好ましい化合物は、オクチル酸セシウム、ノナン酸セシウム、デカン酸セシウム、及びナフテン酸セシウムからなる群から選ばれる1種以上であり、特に好ましい化合物はオクチル酸セシウムである。
有機酸金属塩は1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることもできる。
<分散剤>
本発明の塗布液は、塩基性分散剤及び酸性分散剤のうち少なくとも1種の分散剤(以下、単に「分散剤」ともいう)を含む。本発明の塗布液が上記所定の分散剤を含むことで、有機溶剤中でのバナジウム酸化物粒子の分散安定性、塗布液の塗工均一性が良好になり、高輝度の発光膜を形成することができる。当該分散剤を含まない場合、又は当該分散剤が塩基性分散剤及び酸性分散剤のいずれでもない場合は本発明の効果が得られない。
(塩基性分散剤)
塩基性分散剤は、少なくとも1種の塩基性官能基と疎水性基とを有し、塩基性を呈する化合物であることが好ましい。塩基性官能基としては窒素含有基が好ましく、例えば、第4級窒素含有基、アミノ基、アミド基、イミノ基、ピロリドン基、ピリジン基等が挙げられる。これらの中でも、バナジウム酸化物粒子の分散性及び分散安定性を向上させる観点からは、第4級窒素含有基、アミノ基、アミド基及びイミノ基からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、第4級窒素含有基及びアミノ基からなる群から選ばれる少なくとも1種がより好ましい。
疎水性基としては、例えば炭素数6以上の炭化水素基、炭素数6以上のヒドロキシ炭化水素基などの他、ポリオレフィン、ポリオキシアルキレングリコール、ポリウレタン、アクリル系ポリマー等のポリマー鎖も挙げることができる。当該ポリマー鎖はモノマーの単独重合体でも共重合体でもよく、共重合体の場合はブロック共重合体、ランダム共重合体のいずれでもよい。
本発明に用いる塩基性分散剤としては、有機溶剤中でのバナジウム酸化物粒子の分散安定性、塗布液の塗工均一性が良好になり、高輝度の発光膜を形成する観点から、上記の中でも塩基性官能基とポリマー鎖とを有するポリマー系の塩基性分散剤が好ましい。ポリマー系の塩基性分散剤においては、塩基性官能基としては第4級窒素含有基及びアミノ基からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、ポリマー鎖としてはブロック共重合体が好ましい。
本発明に用いる塩基性分散剤のアミン価は、バナジウム酸化物粒子の分散性及び分散安定性の観点から、好ましくは10〜200mgKOH/g、より好ましくは20〜100mgKOH/g、さらに好ましくは25〜75mgKOH/gである。
市販の塩基性分散剤としては、例えばビッグケミー・ジャパン(株)製「DISPERBYK−2155」、「DISPERBYK−2164」、「DISPERBYK−2522」等が挙げられる。
(酸性分散剤)
酸性分散剤は、少なくとも1種の酸性官能基と疎水性基とを有し、酸性を呈する化合物であることが好ましい。酸性官能基としては、例えばカルボキシ基、スルホン基、リン酸基、ホスホン酸基等が挙げられる。これらの中でも、バナジウム酸化物粒子の分散性及び分散安定性を向上させる観点からは、カルボキシ基及びホスホン酸基からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、カルボキシ基がより好ましい。
疎水性基としては、例えば炭素数6以上の炭化水素基、炭素数6以上のヒドロキシ炭化水素基などの他、塩基性分散剤において例示したポリマー鎖も挙げることができる。
本発明に用いる酸性分散剤としては、有機溶剤中でのバナジウム酸化物粒子の分散安定性及び塗布液の塗工均一性が良好になり、高輝度の発光膜を形成する観点から、上記の中でも酸性官能基とポリマー鎖とを有するポリマー系の酸性分散剤が好ましい。
本発明に用いる酸性分散剤の酸価は、バナジウム酸化物粒子の分散性及び分散安定性の観点から、好ましくは15〜150mgKOH/g、より好ましくは20〜100mgKOH/g、さらに好ましくは25〜80mgKOH/gである。
市販の酸性分散剤としては、例えばビッグケミー・ジャパン(株)製「DISPERBYK−103」、「DISPERBYK−110」、「DISPERBYK−118」等が挙げられる。
塩基性分散剤のアミン価が10mgKOH/g以上、又は、酸性分散剤の酸価が15mgKOH/g以上であれば、バナジウム酸化物粒子への吸着性が良好であり、分散性及び分散安定性が向上する。また、塩基性分散剤のアミン価が200mgKOH/g以下、又は酸性分散剤の酸価が150mgKOH/g以下であれば、塗布液中の他の構成成分との相溶性が阻害されず、バナジウム酸化物粒子に吸着しやすくなるので良好な分散性が得られる。
上記分散剤は1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることもできる。本発明の効果を得る観点からは、本発明に用いる分散剤は塩基性分散剤であることが好ましく、塩基性官能基とポリマー鎖とを有するポリマー系の塩基性分散剤がより好ましい。
なお本発明の塗布液において、分散剤として塩基性分散剤と酸性分散剤とを併用することを排除するものではないが、塩基性分散剤及び酸性分散剤のうちいずれか1種のみを用いることが好ましい。
また本発明の塗布液は、塩基性分散剤及び酸性分散剤以外の分散剤(例えば両性分散剤)をさらに含有することを排除するものではないが、本発明の効果を得る観点、及び経済性の観点からは、塩基性分散剤及び酸性分散剤以外の分散剤をさらに含有する必要はなく、含有しないことがより好ましい。
<有機溶剤>
本発明の塗布液はさらに有機溶剤を含む。有機溶剤としては、バナジウム酸化物粒子の分散が可能で、前述した有機酸バナジウム塩及び有機酸金属塩を溶解しうる化合物であれば特に制限なく用いることができる。当該有機溶剤としては、極性溶剤、非極性溶剤が挙げられる。
極性溶剤としては、炭素数1〜12、好ましくは炭素数3〜10の、脂肪族モノアルコール、アルカンジオール、アルキレングリコール、ジアルキレングリコール、トリアルキレングリコール、ポリアルキレングリコール、グリセリン等のアルコール化合物;上記アルコール化合物のアルキルエーテル及びアセテート;アセトン、ジメチルイソブチルケトン等のケトン化合物;γ−ブチロラクトン等のラクトン化合物;N−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、ε−カプロラクタム等の含窒素複素環化合物;等が挙げられる。
非極性溶剤としては、炭素数5以上、好ましくは炭素数5〜12の炭化水素化合物が挙げられ、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素化合物;n−ペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、イソオクタン等の脂肪族炭化水素化合物;等が挙げられる。これらの中でも、非極性溶剤としては芳香族炭化水素化合物が好ましく、トルエン及びキシレンからなる群から選ばれる少なくとも1種がより好ましく、トルエンがさらに好ましい。
上記有機溶剤は1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることもできる。
<その他の成分>
本発明の塗布液は、前記各成分以外に、本発明の目的を損なわない範囲で、輝度や色度の微調整のために他の一般的な蛍光体や顔料等を含むこともできる。また他にも、粘度調整剤、レベリング剤等を適宜含むこともできる。
<塗布液中の各成分の含有量>
本発明の塗布液中の前記各成分の好ましい含有量は以下の通りである。
本発明の塗布液中のバナジウム酸化物粒子の含有量は、高輝度の発光膜を形成する観点から30質量%以上であり、好ましくは30〜90質量%、より好ましくは35〜80質量%、さらに好ましくは40〜70質量%である。塗布液中のバナジウム酸化物粒子の含有量が30質量%未満であると、塗布液の製造においてバナジウム酸化物粒子の平均粒子径を10μm以下に調整し難く、得られる発光膜の輝度も低くなる。
本発明の塗布液中の有機酸バナジウム塩の含有量は、高輝度を発現する観点から、前記バナジウム酸化物粒子100質量部に対し、好ましくは1〜50質量部、より好ましくは2〜40質量部、さらに好ましくは3〜30質量部である。
本発明の塗布液中の有機酸バナジウム塩以外の有機酸金属塩の含有量は、有機酸バナジウム塩中のバナジウム原子と、有機酸バナジウム塩以外の有機酸金属塩中の金属原子との原子比が、好ましくは1:0.8〜1:1.2、より好ましくは1:0.9〜1:1.1、さらに好ましくは1:1となる量である。
本発明の塗布液中の前記分散剤の含有量は、前記バナジウム酸化物粒子100質量部に対し、好ましくは2〜10質量部、より好ましくは2〜8質量部、さらに好ましくは2.5〜7.5質量部である。当該含有量が2質量部以上であれば塗布液中の酸化バナジウム粒子の分散安定性、塗布液の塗工均一性が良好であり、10質量部以下であれば経済性の点で有利である。
本発明の塗布液中の有機溶剤の含有量は70質量%未満である限り、該塗布液中のバナジウム酸化物粒子の含有量が所望の範囲となる量であればよい。
また本発明の塗布液中のバナジウム酸化物粒子、有機酸バナジウム塩、有機酸バナジウム塩以外の有機酸金属塩、塩基性分散剤及び酸性分散剤からなる群から選ばれる少なくとも1種の分散剤、並びに有機溶剤の合計含有量は、本発明の効果を有効に発現する観点から、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上であり、上限は100質量%である。
[発光膜形成用塗布液の調製方法]
本発明の塗布液を調製する方法としては、例えば、バナジウム酸化物粒子、有機酸バナジウム塩、有機酸バナジウム塩以外の有機酸金属塩、塩基性分散剤及び酸性分散剤のうち少なくとも1種の分散剤、並びに有機溶剤を含む混合物を分散処理する方法が挙げられる。中でも、バナジウム酸化物粒子が平均粒子径10μm以下の状態で分散され且つバナジウム酸化物粒子の含有量が30質量%以上である発光膜形成用塗布液を得る観点から、本発明の塗布液の調製方法は下記工程(I)〜工程(III)を有することが好ましい。以下、当該調製方法を「本発明の塗布液の調製方法」ともいう。
工程(I):有機酸バナジウム塩、有機酸バナジウム塩以外の有機酸金属塩、及び有機溶剤を混合して混合物(1)を得る工程
工程(II):前記混合物(1)と、バナジウム酸化物粒子と、塩基性分散剤及び酸性分散剤のうち少なくとも1種の分散剤とを混合して、該バナジウム酸化物粒子の含有量が30質量%以上の混合物(2)を得る工程
工程(III):前記混合物(2)を分散処理して、バナジウム酸化物粒子が平均粒子径10μm以下の状態で分散された発光膜形成用塗布液を得る工程
<工程(I)>
工程(I)は、有機酸バナジウム塩、有機酸バナジウム塩以外の有機酸金属塩、及び有機溶剤を混合して混合物(1)を得る工程である。初めに上記3成分を混合し、均一な溶液を調製しておくことが工程(III)の分散処理の点から好ましい。混合物(1)の調製方法には特に制限はなく、例えば、攪拌棒などを用いて手動で攪拌してもよいし、ホモミキサー、ホモディスパー、ウエーブローター、ホモジナイザー、ディスパーサー、ペイントコンディショナー、マグネチックスターラー、メカニカルスターラー等の攪拌装置を用いて公知の方法で行うこともできる。
工程(I)で用いる上記3成分の量は、製造する塗布液中の各成分の含有量が所望の範囲となる量であればよく、その好適範囲は前述した「塗布液中の各成分の含有量」に記載した量と同じである。
<工程(II)>
工程(II)は、工程(I)で得られた前記混合物(1)と、バナジウム酸化物粒子と、塩基性分散剤及び酸性分散剤のうち少なくとも1種の分散剤とを混合して、該バナジウム酸化物粒子の含有量が30質量%以上の混合物(2)を得る工程である。バナジウム酸化物粒子を30質量%以上含む混合物(2)を後述する工程(III)の分散処理に供することで、バナジウム酸化物粒子が平均粒子径10μm以下の状態で分散した塗布液を容易に調製できる。
工程(II)で用いるバナジウム酸化物粒子は、1次粒子が凝集した2次粒子の状態であることが得られる発光膜の発光性能の観点からは好ましい。1次粒子の平均粒子径は特に制限はないが、分散容易性の観点から、好ましくは1〜1000nm、より好ましくは5〜500nm、さらに好ましくは10〜250nmである。また、2次凝集粒子の平均粒子径は好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下、さらに好ましくは30μm以下である。
工程(II)で用いるバナジウム酸化物粒子及び分散剤の量は、製造する塗布液中の各成分の含有量が所望の範囲となる量であればよく、その好適範囲は前述した「塗布液中の各成分の含有量」に記載した量と同じである。
工程(II)における混合物(1)、バナジウム酸化物粒子、及び分散剤の混合順序は任意である。また混合物(2)の調製方法には特に制限はなく、例えば、攪拌棒などを用いて手動で攪拌してもよいし、ホモミキサー、ホモディスパー、ウエーブローター、ホモジナイザー、ディスパーサー、ペイントコンディショナー、マグネチックスターラー、メカニカルスターラー等の攪拌装置を用いて公知の方法で行うこともできる。
<工程(III)>
工程(III)は、工程(II)で得られた前記混合物(2)を分散処理して、バナジウム酸化物粒子が平均粒子径10μm以下の状態で分散された発光膜形成用塗布液を得る工程である。当該分散処理により、工程(II)で混合したバナジウム酸化物粒子を平均粒子径が10μm以下の状態で分散させ、分散安定性及び塗工均一性に優れ、高輝度の発光膜を形成しうる塗布液を得ることができる。
工程(III)の分散処理には、分散装置を用いることが好ましい。分散装置としては例えば、ディスパー、ホモミキサー、プラネタリーミキサー等のミキサー類;ホモジナイザー類;ボールミル、サンドミル等のメディア型分散機;湿式ジェットミル等のメディアレス分散機;等が挙げられる。これらの中でも、分散安定性及び塗工均一性に優れる塗布液を得る観点からはメディア型分散機を用いることが好ましく、ボールミルを用いることがより好ましい。
ボールミルの型式としては転動型、振動型、遊星型等が挙げられ、これらの中でも遊星型ボールミルが好ましい。
メディア型分散機に用いる分散メディアは粒子状であることが好ましい。その粒子径は、バナジウム酸化物粒子の分散を効率よく進行させる観点から、好ましくは0.1mm以上、より好ましくは0.3mm以上、さらに好ましくは0.5mm以上である。一方、バナジウム酸化物粒子の分散が過度に進行して再凝集が起こることにより平均粒子径が10μmを超えることを抑制する観点から、分散メディアの粒子径は、好ましくは20mm以下、より好ましくは10mm以下、さらに好ましくは5mm以下である。分散メディアの粒子径が0.1mm以上であれば、バナジウム酸化物粒子との衝突エネルギーが大きくなり分散効率が向上するので、バナジウム酸化物粒子を短時間の分散処理で所望の粒子径にすることができるので、生産性に有利に働く。一方、分散メディアの粒子径が20mm以下であれば、衝突エネルギーが大きくなりすぎてバナジウム酸化物粒子が過度に細かくなりすぎたり、バナジウム酸化物粒子の1次粒子が粉砕されたりするおそれがないので、これらの要因により結晶性低下や蛍光輝度の低下が起こることを回避できる。
用いる分散メディア粒子の材質は特に限定されないが、分散効率の観点、及び塗布液への金属不純物の混入を低減する観点から、アルミナ、ジルコニア、炭化ケイ素、窒化ケイ素等のセラミックス製のメディアが好ましく、ジルコニア製のメディアがより好ましい。
分散処理にメディア型分散機を用いる場合、メディア型分散機に充填する分散メディアの充填率は、分散を効率よく進行させる観点から、好ましくは10体積%以上、より好ましくは20体積%以上、さらに好ましくは25体積%以上である。また、過度の分散を抑制する観点、及び生産性の観点から、分散メディアの充填率は好ましくは70体積%以下、より好ましくは60体積%以下、さらに好ましくは50体積%以下である。
分散処理にメディア型分散機を用いる場合、メディア型分散機の回転速度は、分散を効率よく進行させる観点から、200rpm以上が好ましく、400rpm以上がより好ましく、600rpm以上がさらに好ましい。また、過度の分散を抑制する観点から、メディア型分散機の回転速度は2000rpm以下が好ましく、1500rpm以下がより好ましく、1000rpm以下がさらに好ましい。
分散処理時間は、製造スケールや使用する分散装置の種類、混合物(2)のバナジウム酸化物粒子濃度等にもよるが、例えばメディア型分散機を用いる場合、好ましくは3〜120分、より好ましくは3〜60分、さらに好ましくは5〜30分である。上記範囲であれば、分散を効率よく進行させることができ、且つ、バナジウム酸化物粒子の分散が過度に進行して再凝集が起こることを抑制できる。
以上のように工程(III)において前記混合物(2)を分散処理することで、バナジウム酸化物粒子が平均粒子径10μm以下の状態で分散され、且つバナジウム酸化物粒子の含有量が30質量%以上の発光膜形成用塗布液を効率よく得ることができる。
[発光膜の製造方法]
本発明の発光膜の製造方法は、下記工程(I)〜工程(V)を有することを特徴とする。
工程(I):有機酸バナジウム塩、有機酸バナジウム塩以外の有機酸金属塩、及び有機溶剤を混合して混合物(1)を得る工程
工程(II):前記混合物(1)と、バナジウム酸化物粒子と、塩基性分散剤及び酸性分散剤のうち少なくとも1種の分散剤とを混合して、該バナジウム酸化物粒子の含有量が30質量%以上の混合物(2)を得る工程
工程(III):前記混合物(2)を分散処理して、バナジウム酸化物粒子が平均粒子径10μm以下の状態で分散された発光膜形成用塗布液を得る工程
工程(IV):前記塗布液を支持体に塗布して塗膜を形成する工程
工程(V):前記塗膜を乾燥処理し、次いで紫外線照射する工程
工程(I)〜工程(III)については、発光膜形成用塗布液の調製方法において記載した工程(I)〜工程(III)と同じである。以下、工程(IV)及び工程(V)について説明する。
<工程(IV)>
工程(IV)は、工程(I)〜工程(III)を経て得られた前記塗布液を支持体に塗布して塗膜を形成する工程である。
塗布液を塗布する支持体は、発光膜を形成する対象物の層構成や用途に応じて適宜選択できる。本発明の塗布液は塗工均一性が高いことから、大面積の支持体への塗布に適しており、例えばウェブ状の支持体を用いることが好ましい。
当該支持体の材質としては、熱可塑性樹脂の他、鉄、銅、アルミニウム等の金属箔、紙等も用いることができる。これらの中でも熱可塑性樹脂が好ましい。
熱可塑性樹脂からなるウェブ状の支持体としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブデン、ポリブタジエン、ポリメチルペンテン、低密度ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレン等のポリオレフィン樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル樹脂;ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂;アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂;ポリスルホン樹脂;ポリイミド樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリウレタン樹脂;シクロオレフィン樹脂;ポリ塩化ビニル;塩化ビニル共重合体;エチレン−酢酸ビニル共重合体;エチレン(メタ)アクリル酸共重合体;ポリスチレン;及びフッ素樹脂;等の熱可塑性樹脂からなるフィルムが挙げられる。
これらの中でも、耐候性や耐熱性の観点から、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、及びシクロオレフィン樹脂からなる群から選ばれる1種以上の熱可塑性樹脂からなるフィルムが好ましく、ポリエステル樹脂からなる群から選ばれる1種以上の熱可塑性樹脂からなるフィルムがより好ましい。
ウェブ状の支持体を用いる場合、当該支持体の厚さは特に制限はないが、強度の点から、好ましくは5〜200μm、より好ましくは20〜175μmである。
上記支持体は、必要に応じコロナ処理、プライマー処理等の表面処理が行われていてもよい。また、上述した材質の支持体上にさらに他の層が積層されていてもよい。
塗布液を支持体に塗布する方法には特に制限はなく、支持体の大きさや形状に応じて、従来公知の方法を用いて塗布することができる。塗布方法としては、例えば、バーコート、ワイヤーコート、スピンコート、ロールコート、スプレーコート、エアーナイフコート、スクリーンコート、ブレードコート、ダイコート、スリットコート、グラビアコート等が挙げられる。
塗膜の厚さには特に制限はなく、得られる発光膜が所望の厚さとなるような範囲であればよい。発光膜の厚さについては後述する。
<工程(V)>
工程(V)は、工程(IV)で得られた前記塗膜を乾燥処理し、次いで紫外線照射する工程である。この工程を行うことにより、工程(IV)で得られた塗膜に含まれる有機酸バナジウム塩中のバナジウムと、有機酸バナジウム塩以外の有機酸金属塩中の金属とから形成される、組成式M’VOで示されるバナジウム酸化物結晶(M’は有機酸金属塩中の金属である)が成長する。バナジウム酸化物結晶は蛍光発色性を有するので、バナジウム酸化物粒子と併用することでより高輝度の発光膜を得ることができる。
(乾燥処理)
乾燥処理は、塗膜中の有機溶剤を揮発させるために行われる。塗膜の乾燥温度は、バナジウム酸化物結晶を効率よく形成、成長させ、着色や輝度低下を抑制する観点から、好ましくは10〜300℃、より好ましくは30〜200℃、さらに好ましくは40〜120℃である。乾燥処理には、必要に応じ熱風乾燥機やホットプレート等を用いることができる。
塗膜の乾燥時間は有機溶剤の種類や塗膜の厚さ等により適宜選択できるが、生産性の観点、及び着色や輝度低下を抑制する観点からは、好ましくは10秒〜30分、より好ましくは30秒〜20分、さらに好ましくは1分〜10分である。
(紫外線照射)
前記塗膜は乾燥処理され、次いで紫外線照射される。この工程を行うことにより、工程(IV)で得られた塗膜に含まれる有機酸バナジウム塩中のバナジウムと、有機酸バナジウム塩以外の有機酸金属塩中の金属とから形成される、組成式M’VOで示されるバナジウム酸化物結晶(M’は有機酸金属塩中の金属である)を成長させ、より高輝度を発現しうる発光膜を効率よく得ることができる。照射される紫外線の波長は400nm以下であることが好ましい。
紫外線照射においては、紫外線レーザ及び/又は紫外線ランプを用いることが好ましい。
紫外線レーザとしては、エキシマレーザ、パルスレーザ等を用いることができる。また紫外線ランプとしては、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、カーボンアーク等を用いることができる。
紫外線レーザを用いる場合、例えば、工程(IV)で得られた塗膜を乾燥処理し、次いで、バナジウム酸化物結晶の結晶化を促進するために、照射エネルギー10〜50J/mの条件で紫外線レーザ光を照射することが好ましい。
また紫外線ランプを用いる場合には、工程(IV)で得られた塗膜を乾燥処理し、次いで、バナジウム酸化物結晶の結晶化を促進するために、照射エネルギー5〜20J/mの条件で紫外線を照射することが好ましい。
本発明の製造方法においては、紫外線レーザと、紫外線ランプとを併用してもよい。本発明においては、結晶化時間の短縮を目的とする場合には、工程(IV)で得られた塗膜に紫外線ランプにより短時間紫外線照射した後、紫外線レーザ光を照射することが好ましい。
以上のようにして得られた発光膜は高輝度の蛍光発光性を有する。形成される発光膜の厚さは特に制限はないが、好ましくは1nm〜2000μm、より好ましくは0.1〜100μm、さらに好ましくは1.0〜30μm、よりさらに好ましくは5.0〜25μmである。発光膜の厚さは、定圧厚さ測定器(株式会社テクロック製「PG−02」)により測定できる。
<蛍光発光シート>
前記工程(IV)で用いた支持体が例えば前述したウェブ状の支持体である場合、当該支持体と発光膜とを有するシートは、そのまま蛍光発光シートとして用いることができる。なお当該蛍光発光シートには、必要に応じてさらに防汚層、反射層、意匠層、粘着層等の他の層を積層してもよい。
<用途>
本発明により製造される発光膜はバナジウム酸化物蛍光体を含むため、白色LEDの励起光源である紫外−近紫外LEDによって励起できる250〜390nmの範囲に励起スペクトルを有する。この励起光によって発せられる蛍光スペクトルは390〜680nmに広がり、白色に発光する。そのため、例えば紫外線以外にも白色LED用の蛍光体としても好適である。発光スペクトルのピークは490〜502nmの範囲にあるため比較的色温度は高いが、長波長側に強い発光を持つ蛍光体との組み合わせによって暖色系の白色を得ることもできる。また水銀や鉛などを含まないため、環境や人体への悪影響も少ない。
したがって当該発光膜は、例えば白色光を必要とする日常灯などの照明器具、高速道路などの紫外線照射型標識装置、その他の各種表示装置用のバックライト等に利用することができる。
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。なお、各例で得られた発光膜形成用塗布液又は発光膜における諸特性を、下記に示す方法によって求めた。
<塗布液中に分散されたバナジウム酸化物粒子の粒子径の測定>
各例で得られた塗布液を測定試料として、レーザー回折式粒度分布計(マルバーンインストルメンツ社製「マスターサイザー3000」)によりD10、D50及びD90の値を測定した。D50の測定値を、塗布液中に分散されたバナジウム酸化物粒子の平均粒子径とした。
<分散安定性の評価>
各例で得られた分散処理直後の塗布液10mLを内径27mm×高さ55mmのガラス瓶に入れ、室温で60分静置後の状態を目視観察し、以下の基準で評価した。
5:凝集物が見られず、液全体で一様に黄濁
4:凝集物がごく僅かに見られ、液の表層部に僅かに透明層が見られる
3:凝集物が僅かに見られ、液表層に透明層が見られる
2:凝集物が見られ底部に沈降し、凝集物堆積層付近は薄い黄濁、表層に向かうにつれて徐々に透明性向上
1:凝集物が大量に見られ底部に沈降し、凝集物堆積層以外は液全体が透明
<塗工面状態の評価>
各例で得られた塗布液を、乾燥処理後の厚さが約10μmとなるようにフィルム基材に塗布して得られた乾燥後の塗膜を目視観察し、以下の基準で評価した。
5:一様な塗工面が得られる
4:塗膜のごく一部に僅かに塗布ムラ(白色の濃淡)が見られる
3:塗膜の一部に塗布スジや塗布ムラが見られる
2:塗膜の大部分に塗布スジや塗布ムラ、凝集物が見られる
1:塗膜全体に強い塗布スジ、塗布ムラ、大量の凝集物が見られる
<蛍光輝度の測定>
各例で得られた発光膜の発光面に、0.1Wの紫外線を照射した状態で輝度計(コニカミノルタ株式会社製「LS−100」)を用いて蛍光輝度を測定した。
<総合評価>
分散安定性により大量生産への適性、塗工面状態により発光膜の外観及び発光度合いへの影響、及び、蛍光輝度により発光性能を、以下の基準で総合的に評価した。
5:非常に良好
4:良好
3:やや悪い
2:悪い
1:非常に悪い
各例において、発光膜形成用塗布液の製造に使用した原料は下記である。
<有機酸バナジウム塩>
オクチル酸バナジウム溶液(日本化学産業(株)製「ニッカオクチックスバナジウム」、固形分濃度:23質量%、溶剤:トルエン)
<有機酸バナジウム塩以外の有機酸金属塩>
オクチル酸セシウム溶液(日本化学産業(株)製「ニッカオクチックスセシウム」、固形分濃度:23質量%、溶剤:トルエン、へキシレングリコール)
<バナジウム酸化物粒子>
セシウムバナデート(CsVO)粒子(N−ルミネッセンス社製、1次粒子の平均粒子径:25nm、2次凝集粒子の平均粒子径:24μm)
<分散剤>
塩基性分散剤(塩基性基を有するブロック共重合物(ポリマー系塩基性分散剤)、ビッグケミー・ジャパン(株)製「DISPERBYK−2155」、固形分濃度:100質量%、アミン価:48mgKOH/g)
酸性分散剤(ビッグケミー・ジャパン(株)製「DISPERBYK−103」、固形分濃度:40質量%、溶剤:メトキシプロピルアセテート)
両性分散剤(ビッグケミー・ジャパン(株)製「DISPERBYK−180」、固形分濃度:81質量%)
実施例1
(発光膜形成用塗布液の製造)
オクチル酸バナジウム溶液12.6g、オクチル酸セシウム溶液6.6g、及び、有機溶剤であるトルエン6.2gを混合した溶液(混合物(1A))を調製した。この溶液中に、セシウムバナデート(CsVO)粒子を17.4g、及び、塩基性分散剤を0.9g配合して混合物(2A)を調製した。混合物(2A)中のCsVO粒子濃度は40質量%であり、CsVO粒子100質量部に対する分散剤の配合量は5質量部であった。なお以下の記載において「CsVO粒子100質量部に対する分散剤の配合量」とは、CsVO粒子100質量部に対する分散剤の有効成分の配合量(質量部)を意味する。
遊星型ボールミル(フリッチュ社製「premium−line P−7」)に、分散メディアとしてφ1mmのジルコニアボールを、ボールミルの分散室容積に対して32体積%となるよう充填した。ここに上記混合物(2A)を35mL添加し、800rpmで回転させながら10分間分散処理を行い、発光膜形成用塗布液を得た。得られた塗布液を回収し、前述の方法で各種評価を行った。結果を表1に示す。
(発光膜の作製)
得られた塗布液を、乾燥後の塗膜厚さが10μmとなるようにマイヤーバーを用いてポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡(株)製「コスモシャインA4100」、厚さ50μm)に塗工した。この塗膜を80℃で5分間乾燥処理した後、高圧水銀ランプ(岩崎電気(株)製高圧水銀ランプ(HID投光器、ランプ:HT175−G12))を用いて照度25mW/mで8分間紫外線照射し、さらにエキシマレーザ(浜松ホトニクス(株)製エキシマランプ「FLAT EXCIMER EX−mini」)を用いて照度50mW/mで10分間紫外線レーザ光を照射して発光膜を作製した。得られた発光膜について、前述の方法で各種評価を行った。結果を表1に示す。
実施例2
オクチル酸バナジウム溶液12.1g、オクチル酸セシウム溶液6.3g、トルエン5.9gを混合した溶液(混合物(1B))を調製した。この溶液中に、CsVO粒子を20.4g、及び、塩基性分散剤を0.6g配合して混合物(2B)を調製した。混合物(2B)中のCsVO粒子濃度は45質量%であり、CsVO粒子100質量部に対する分散剤の配合量は3質量部であった。
前記混合物(2A)に代えて、この混合物(2B)を用いて分散処理を行ったこと以外は、実施例1と同様の方法で発光膜形成用塗布液を得た。得られた塗布液を回収し、前述の方法で各種評価を行った。結果を表1に示す。
実施例3
オクチル酸バナジウム溶液12.1g、オクチル酸セシウム溶液6.3g、トルエン5.9gを混合した溶液(混合物(1C))を調製した。この溶液中に、CsVO粒子を20.4g、及び、塩基性分散剤を1.0g配合して混合物(2C)を調製した。混合物(2C)中のCsVO粒子濃度は45質量%であり、CsVO粒子100質量部に対する分散剤の配合量は5質量部であった。
前記混合物(2A)に代えて、この混合物(2C)を用いて分散処理を行ったこと以外は、実施例1と同様の方法で発光膜形成用塗布液を得た。得られた塗布液を回収し、前述の方法で各種評価を行った。結果を表1に示す。得られた塗布液のD10は0.7μm、D90は13.5μmであった。
実施例4
オクチル酸バナジウム溶液9.1g、オクチル酸セシウム溶液4.8g、トルエン4.5gを混合した溶液(混合物(1D))を調製した。この溶液中に、CsVO粒子を37.6g、及び、塩基性分散剤1.9gを配合して混合物(2D)を調製した。混合物(2D)中のCsVO粒子濃度は65質量%であり、CsVO粒子100質量部に対する分散剤の配合量は5質量部であった。
前記混合物(2A)に代えて、この混合物(2D)を用いて分散処理を行ったこと以外は、実施例1と同様の方法で発光膜形成用塗布液を得た。得られた塗布液を回収し、前述の方法で各種評価を行った。結果を表1に示す。
実施例5
実施例3において分散処理時間を30分に変更したこと以外は、実施例3と同様の方法で発光膜形成用塗布液を得た。得られた塗布液を回収し、前述の方法で各種評価を行った。結果を表1に示す。
実施例6
実施例3において、分散メディアをφ3mmのジルコニアボールに変更したこと以外は、実施例3と同様の方法で発光膜形成用塗布液を得た。得られた塗布液を回収し、前述の方法で各種評価を行った。結果を表1に示す。
実施例7
実施例3において、分散処理装置を転動型卓上ボールミル(日本コークス工業(株)製「パウダーラボ」)に変更したこと以外は、実施例3と同様の方法で発光膜形成用塗布液を得た。得られた塗布液を回収し、前述の方法で各種評価を行った。結果を表1に示す。
実施例8
実施例3において、塩基性分散剤に代えて、酸性分散剤を2.5g用いたこと以外は、実施例3と同様の方法で発光膜形成用塗布液を得た。得られた塗布液を回収し、前述の方法で各種評価を行った。結果を表1に示す。
比較例1
実施例3において分散剤を配合せず、且つ遊星型ボールミルを使用せずに手動で攪拌して分散処理を行ったこと以外は、実施例3と同様の方法で発光膜形成用塗布液を得た。具体的には下記の通りである。
オクチル酸バナジウム溶液12.1g、オクチル酸セシウム溶液6.3g、トルエン5.9gを混合した溶液(混合物(1e))を調製した。この溶液中に、CsVO粒子を20.4g配合して混合物(2e)を調製した。混合物(2e)中のCsVO粒子濃度は45質量%であった。
この混合物(2e)を、プラスティック棒を用いて手動で10分間攪拌することにより分散処理を行い、発光膜形成用塗布液を得た。得られた塗布液を回収し、前述の方法で各種評価を行った。結果を表1に示す。得られた塗布液のD10は9.9μm、D90は46.3μmであった。
比較例2
実施例3において分散剤を配合しなかったこと以外は、実施例3と同様の方法で発光膜形成用塗布液を得た。得られた塗布液を回収し、前述の方法で各種評価を行った。結果を表1に示す。
比較例3
実施例1においてCsVO粒子濃度を25質量%に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で発光膜形成用塗布液を得た。具体的には下記の通りである。
オクチル酸バナジウム溶液14.0g、オクチル酸セシウム溶液7.3g、トルエン6.8gを混合した溶液(混合物(1f))を調製した。この溶液中に、CsVO粒子を9.5g、塩基性分散剤を0.5g配合して混合物(2f)を調製した。混合物(2f)中のCsVO粒子濃度は25質量%であり、CsVO粒子100質量部に対する分散剤の配合量は5質量部であった。
前記混合物(2A)に代えて、この混合物(2f)を用いて分散処理を行ったこと以外は、実施例1と同様の方法で発光膜形成用塗布液を得た。得られた塗布液を回収し、前述の方法で各種評価を行った。結果を表1に示す。
比較例4
実施例3において分散処理時間を2分に変更したこと以外は、実施例3と同様の方法で発光膜形成用塗布液を得た。得られた塗布液を回収し、前述の方法で各種評価を行った。結果を表1に示す。
比較例5
実施例3において分散処理時間を150分に変更したこと以外は、実施例3と同様の方法で発光膜形成用塗布液を得た。得られた塗布液を回収し、前述の方法で各種評価を行った。結果を表1に示す。
比較例6
実施例3において、塩基性分散剤に代えて、両性分散剤を1.23g用いたこと以外は、実施例3と同様の方法で発光膜形成用塗布液を得た。得られた塗布液を回収し、前述の方法で各種評価を行った。結果を表1に示す。
表1より、実施例1〜8の塗布液は分散安定性に優れ、該塗布液を用いて形成された発光膜は塗工面状態が良好で且つ蛍光輝度も高いことがわかる。
これに対し、比較例1の塗布液は所定の分散剤を含まず、且つ、塗布液中に分散されたバナジウム酸化物粒子のD50が10μmを超えるため、塗布液の分散安定性、発光膜の塗工面状態及び蛍光輝度のいずれにも劣る結果となった。所定の分散剤を含まない比較例2の塗布液は、塗布液中に分散されたバナジウム酸化物粒子のD50が10μm以下であっても、分散安定性、発光膜の塗工面状態及び蛍光輝度のいずれにも劣る結果となった。
比較例3の塗布液は、塗布液中のバナジウム酸化物粒子の含有量が30質量%未満であり、また、塗布液中に分散されたバナジウム酸化物粒子のD50が10μmを超えることから、得られる発光膜の蛍光輝度が十分に向上しなかった。
比較例4,5は、いずれも実施例3と塗布液の配合が同一で分散処理時間のみを変更した例である。比較例5のように分散処理時間を過度に長くした場合はバナジウム酸化物粒子の再凝集が起こり、得られる塗布液中のバナジウム酸化物粒子のD50が10μmを超えたと考えられる。
また、所定の分散剤に代えて、塩基性分散剤及び酸性分散剤のいずれにも属さない両性分散剤のみを使用した比較例6の塗布液も、分散安定性、発光膜の塗工面状態及び蛍光輝度のいずれにも劣る結果となった。
本発明によれば、分散安定性及び塗工均一性に優れ、高輝度の発光膜を形成しうる発光膜形成用塗布液、その調製方法、並びに発光膜の製造方法を提供することができる。当該発光膜は高い蛍光輝度を発現しうることから、例えば白色光を必要とする日常灯などの照明器具、高速道路などの紫外線照射型標識装置、その他の各種表示装置用のバックライト等への使用に適する。

Claims (3)

  1. 発光膜形成用塗布液であって、
    該塗布液はバナジウム酸化物粒子、有機酸バナジウム塩、有機酸バナジウム塩以外の有機酸金属塩、塩基性分散剤及び酸性分散剤のうち少なくとも1種の分散剤、並びに有機溶剤を含み、
    該塗布液中、該バナジウム酸化物粒子は平均粒子径が10μm以下の状態で分散され、且つ該バナジウム酸化物粒子の含有量が30質量%以上である、発光膜形成用塗布液。
  2. 下記工程(I)〜工程(III)を有する、発光膜形成用塗布液の調製方法。
    工程(I):有機酸バナジウム塩、有機酸バナジウム塩以外の有機酸金属塩、及び有機溶剤を混合して混合物(1)を得る工程
    工程(II):前記混合物(1)と、バナジウム酸化物粒子と、塩基性分散剤及び酸性分散剤のうち少なくとも1種の分散剤とを混合して、該バナジウム酸化物粒子の含有量が30質量%以上の混合物(2)を得る工程
    工程(III):前記混合物(2)を分散処理して、バナジウム酸化物粒子が平均粒子径10μm以下の状態で分散された発光膜形成用塗布液を得る工程
  3. 下記工程(I)〜工程(V)を有する、発光膜の製造方法。
    工程(I):有機酸バナジウム塩、有機酸バナジウム塩以外の有機酸金属塩、及び有機溶剤を混合して混合物(1)を得る工程
    工程(II):前記混合物(1)と、バナジウム酸化物粒子と、塩基性分散剤及び酸性分散剤のうち少なくとも1種の分散剤とを混合して、該バナジウム酸化物粒子の含有量が30質量%以上の混合物(2)を得る工程
    工程(III):前記混合物(2)を分散処理して、バナジウム酸化物粒子が平均粒子径10μm以下の状態で分散された発光膜形成用塗布液を得る工程
    工程(IV):前記塗布液を支持体に塗布して塗膜を形成する工程
    工程(V):前記塗膜を乾燥処理し、次いで紫外線照射する工程
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