JP5289824B2 - 蛍光体 - Google Patents
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高い色再現性を実現するためには、赤色、緑色、青色の光の三原色の色純度が高いことが求められる。色純度が高い光とは、究極的には単色光すなわちレーザー光のように単一の波長のみで構成されている光となるが、一般的な光源では、実際にこのような単色光を容易に得ることは難しい。例えば蛍光体からの発光では、蛍光体の種類によって、発光ピークの幅が異なり、または複数の発光ピークを有するものもあるため、任意の発光色で色純度の高い光を得ることは難しい。
例えばPDPに用いられる蛍光体では、緑色を発光する蛍光体としてZnSiO4:Mn2+蛍光体、青色を発光する蛍光体としてBaMgAl10O17:Eu2+蛍光体、赤色を発光する蛍光体として(Y,Gd)BO3:Eu3+が代表的に用いられており、これらのPDP用蛍光体は、真空紫外線(VUV)領域の光の照射により、効率よく励起され良好な輝度を示すと供に、好適な寿命特性を有する。しかしながら、赤色蛍光体の(Y,Gd)BO3:Eu3+蛍光体の発光スペクトルは図2の比較例1に示すように592nm付近、610nm付近および626nm付近に強い発光ピークを有する。592nmに強い発光ピークを持つために、色度は(x=0.639、y=0.360)と橙赤色となり、色再現域の点で好ましくない。
このほかに、PDP用蛍光体に顔料等の着色剤を用い、コントラストの改善を図る技術が開示されている(例えば特許文献2参照。)。しかしながら、発光色の改善を図るものではない。
そして、上記の3価のユウロピウム(Eu3+)付活希土類ホウ酸塩蛍光体に上記のネオジム(Nd)化合物を付着させることにより、蛍光体の発光色が調整され、より色純度の向上した蛍光体となる。
そして、3価のユウロピウム(Eu3+)付活希土類ホウ酸塩蛍光体にこれらのネオジム(Nd)化合物を付着させることにより、蛍光体の発光色が調整され、より色純度の向上した蛍光体となる。
そして、3価のユウロピウム(Eu3+)付活希土類ホウ酸塩蛍光体に付着させるネオジム(Nd)化合物の粒度を、平均粒径D50で0.05μm以上1μm以下の微粒子とすることにより、より効果的に蛍光体の発光色が調整され、より色純度の向上した蛍光体となる。
この(Y,Gd)BO3:Eu3+蛍光体は、610nm付近および626nm付近の赤色発光の他に592nm付近に強い橙色発光ピークを有するため、その発光色は、色度が例えばx=0.639、y=0.360と、橙赤色となり、色純度も悪く、PDP用の赤色光源としては橙色成分が多く好ましくない。
このNd化合物フィルター材料微粒子を上記のEu3+付活蛍光体の表面に付着させることにより、592nm付近のピークはNd化合物フィルター材料微粒子のフィルター効果により吸収され抑制されるが、残りの610nm付近および630nm付近のピークはほぼ吸収されないため、発光輝度をほとんど損なうことなく、色純度が高まり、PDP用として好ましい蛍光体となる。
Nd化合物のフィルター材料微粒子は、例えばボールミルやビーズミルなどの手段によりその粒度を小さくする。
このとき、効果的に付着させるため、例えば水ガラス系のような無機バインダを加えても良い。また、代替として、水酸化亜鉛や水酸化アルミニウムのようにコロイド状態となる水酸化物を用いても良く、このほかゼラチンやアラビアゴム等の粘着性のある有機物を用いても良い。
懸濁液中にて蛍光体が充分に攪拌された後、攪拌を停止し蛍光体を沈降させる。上澄み液を除いた後、洗浄、ろ過、乾燥、篩別を経て、フィルター材料微粒子が表面に付着した蛍光体を得る。
こうして得られた微粒子が付着した蛍光体は、フィルター材料微粒子等が付着していない通常の蛍光体と同様に扱うことができる。
また、これらネオジム化合物のうち、ネオジム元素の一部をエルビウム(Er)元素で置換してもよい。このとき、エルビウム元素で置換する量は50モル%程度までが好ましい。このとき、置換量が50モル%を超えると、ネオジムに特徴的な吸収が弱くなるという問題がある。
このほか、例えば上記エルビウムのように、ネオジム化合物の特徴的な吸収を阻害しない物質であれば、フィルター材料微粒子中に他の物質が同時に含まれていてもよい。
原料として、77.7gの酸化イットリウム(Y2O3)(Yとして0.688モル)、46.6gの酸化ガドリニウム(Gd2O3)(Gdとして0.257モル)、9.7gの酸化ユウロピウム(Eu2O3)(Euとして0.055モル)及び74.1gのホウ酸(H3BO3)(Bとして1.2モル)とを十分よく混合した後、石英ルツボに充填し、1060℃で3時間焼成し、その後過剰なホウ酸を除去するために、得られた焼成体を温水で数回洗浄し、ボールミル工程を経て(Y,Gd)BO3:Eu3+蛍光体を得た。この(Y,Gd)BO3:Eu3+蛍光体は、(Y0.688,Gd0.257)BO3:Eu3+ 0.055で表される組成を有している。
このNdVO4微粒子は、原料として336.5gの酸化ネオジム(Nd2O3)(Ndとして2モル)と181.9gの五酸化バナジウム(V2O5)(Vとして2モル)とを十分よく混合した後、石英ルツボに充填し1200℃で4時間焼成した後に、洗浄、ボールミル工程を経て微粒子化して得た。
得られたNdVO4微粒子をレーザー回折式粒度分布測定装置(型式:SALD−2100 株式会社島津製作所製)で粒度分布を測定したところ、平均粒径D50は0.75μm、最大粒径D100は4.45μmであった。
得られた上記NdVO4微粒子3gを、純水500ml中に加え、攪拌して分散させて懸濁液をつくる。この懸濁液500mlに、(Y,Gd)BO3:Eu3+蛍光体(平均粒径D50は2.6μm)100gを加え攪拌混合し、さらに1M−塩化亜鉛(ZnCl2)水溶液を10ml加え攪拌混合する。充分に混合された後に、さらに希アンモニア水(約14%)を少しずつ添加してpH9になるように調整する。その後、攪拌を停止し、蛍光体を沈降させる。上澄み液を除去後に、数回純水洗浄を行い、ろ過後、乾燥工程、篩別工程を経て、目的のNdVO4微粒子を3質量%付着させた蛍光体を得る。この得られたNdVO4微粒子付着蛍光体を実施例1とした。
また、この発光スペクトルから比較例1のピーク強度を1としたときの相対ピーク比を、輝度とともに表1に示す。
また、図2および表1に示すように、実施例1では592nmの発光ピークを効果的に抑制しつつ、他の610nmおよび626nmの発光ピークへの影響は小さいことがわかる。しかし、比較例2では、いずれの発光ピークも一様に抑制してしまっている。
すなわち、本発明の蛍光体の実施例1は、592nmのピークに対する特異的なフィルター効果が顕著であることがわかり、これに対して比較例2すなわち従来の赤色顔料であるべんがらを付着させた蛍光体では、592nm,610nm,626nmの3つの発光ピーク強度は、顔料なしの比較例1の蛍光体に比べて、いずれも一様に小さくなっており、592nmのピークに対する特異的なフィルター効果はほとんど無いことがわかる。
次に、(Y,Gd)BO3:Eu3+蛍光体に、さまざまなフィルター材料微粒子を用いた例を示す。
このとき、Nd2W3O12微粒子は、原料として168.3の酸化ネオジム(Nd2O3)(Ndとして1モル)と347.8gの三酸化タングステン(WO3)(Wとして1.5モル)とを十分よく混合した後、石英ルツボに充填し1000℃で4時間焼成した後に、洗浄、ボールミル工程を経て微粒子化して得たもので、実施例1と同様に粒度分布そ測定したところ、平均粒径D50は0.50μm、最大粒径D100は1.28μmであった。
このとき、(Nd0.5Er0.5)VO4微粒子は、原料として168.3gの酸化ネオジム(Nd2O3)(Ndとして1モル)と191.3gの酸化エルビウム(Er2O3)(Erとして1モル)と181.9gの五酸化バナジウム(V2O5)(Vとして2モル)とを十分よく混合した後、石英ルツボに充填し1200℃で4時間焼成した後に、洗浄、ボールミル工程を経て微粒子化して得たもので、実施例1と同様に粒度分布を測定したところ、平均粒径D50は0.63μm、最大粒径D100は1.93μmであった。
このとき、NdAlO3微粒子は、原料として336.5gの酸化ネオジム(Nd2O3)(Ndとして2モル)と102.0gのアルミナ(Al2O3)(Alとして2モル)とを十分よく混合した後、石英ルツボに充填し1420℃で5時間焼成した後に、洗浄、ボールミル工程を経て微粒子化して得たもので、実施例1と同様に粒度分布を測定したところ、平均粒径D50は0.80μm、最大粒径D100は3.61μmであった。
原料として、106.7gの酸化イットリウム(Y2O3)(Yとして0.945モル)、9.7gの酸化ユウロピウム(Eu2O3)(Euとして0.055モル)及び74.1gのホウ酸(H3BO3)(Bとして1.2モル)とを十分よく混合した後、石英ルツボに充填し、1060℃で3時間焼成し、その後過剰なホウ酸を除去するために、得られた焼成体を温水で数回洗浄し、ボールミル工程を経てYBO3:Eu3+蛍光体を得た。このYBO3:Eu3+蛍光体は、Y0.945BO3:Eu3+ 0.055で表される組成を有している。
得られた実施例5の発光特性を実施例1と同様に評価し、その結果を表3に示す。なおお、このときの輝度および相対ピーク比は、微粒子を付着させていないYBO3:Eu3+蛍光体を基準とした相対値で表す。
このほか、同じく真空紫外線励起で発光する例えばキセノン(Xe)ランプのような用途であって、色純度の向上が望まれるものにも好適に利用可能である。
Claims (3)
- 少なくともネオジム(Nd)化合物が付着していることを特徴としたYBO 3 :Eu 3+ または(Y,Gd)BO 3 :Eu 3+ で表される3価のユウロピウム(Eu3+)付活希土類ホウ酸塩蛍光体であって、
前記ネオジム(Nd)化合物は、バナジン酸塩、タングステン酸塩、モリブデン酸塩、アルミン酸塩、酸硫化物の少なくとも1つ以上からなることを特徴とした蛍光体。 - 上記ネオジム(Nd)化合物は、NdVO4、Nd2W3O12、KNdW2O8、Nd2Mo3O12、KNdMo2O8、NdAlO3,Nd2O2 Sの少なくとも1つ以上で表される化合物からなることを特徴とした請求項1記載の蛍光体。
- 上記ネオジム(Nd)化合物は、平均粒径D50が0.05μm以上1μm以下の微粒子であることを特徴とした請求項1または2記載の蛍光体。
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