本実施形態に係る施設状況把握システム1は、ノード301とリンク302とエリア303の組み合わせから構成される空間ネットワーク情報106と、施設の各所に設置されたセンサ111と空間ネットワーク情報106との関連を定義するセンサ空間ネットワーク関連情報105を保持する空間ネットワーク情報記憶部107と、施設の各所に設置されたセンサ111から取得したセンサ情報1111と、センサ空間ネットワーク関連情報105に基づき、リンク状況情報1081とエリア状況情報1082を作成するセンサ設置場所状況情報作成部101と、センサ設置場所状況情報作成部101が作成したリンク状況情報1081とエリア状況情報1082と、推定の対象となる経路情報1092と属性情報1093とに基づき、施設内の各所の移動負荷情報1091を計算する移動負荷情報作成部104と、を備える。
センサ111は、施設内の各所に配置することができる。しかし、施設内の全ての経路を網羅するようにセンサ111が配置される必要はない。本実施形態では、センサ111が施設内の各経路に部分的に設置されている場合に、センサ未設置場所状況情報作成部103が、センサ111の設置されていない場所における人流304を推定する。
「第2状況情報推定部」としてのセンサ未設置場所状況情報作成部103は、「第1状況情報推定部」としてのセンサ設置場所状況情報作成部101の作成した情報1081,1082と状況伝播分析部102の分析した情報とに基づいて、センサ111の設置されていない箇所の人流304を推定する。
状況伝播分析部102は、リンク状況情報1081およびエリア状況情報1082を複数比較することにより、施設内の人流304に変化を生じさせるイベントを検知し、イベントによる人流304の変化が施設内へ伝播する状況を示す状況伝播情報1083(図2参照)を作成する。
状況伝播分析部102は、過去に作成された状況伝播情報1083に基づいて、検知されたイベントによる人流304の変化が生じる範囲を特定し、特定した範囲についてイベントに関する状況伝播情報1083を作成してもよい。
本実施形態の施設状況把握システム1は、推定対象となる所定の経路と、所定の経路を移動する利用者の属性とが入力されると、その属性を持つ利用者が所定の経路を移動する際の負荷(歩きやすさ)を計算する。
所定の経路は、施設内における利用者の出発地と目的地を指定することにより、自動的に選択されてもよい。または、施設内の各経路のうち、利用者の多い主要な経路を予め登録しておき、登録済みの主要経路の一部または全部を推定対象の所定の経路として選択してもよい。
本実施形態の施設状況把握システム1は、利用者の移動予定の所定の経路に関する負荷(移動負荷とも呼ぶ)を、所定の経路に対応づけた画面を移動負荷情報1091の少なくとも一部として作成し、利用者に提供する。
本実施形態によれば、施設内を移動する利用者の流れ(人流)304を推定することができ、利用者が移動する際の負荷を計算することができる。これにより、本実施形態によれば、施設の移動状況を管理することができ、使い勝手が向上する。上記以外の課題、構成および効果は、以下の実施例の説明により明らかにされる。
図2〜図19を用いて第1実施例を説明する。本実施例では、駅という施設において、人の流れという状況を把握し、移動しやすい場所や経路を推定する施設状況把握システム1を説明する。
<ネットワーク構成例>
図2は、本実施例に係る施設状況把握システム1を含むネットワーク構成図である。施設状況把握システム1は、施設の各所に設置されたセンサ111と通信ネットワーク120を介して接続されている。さらに、施設状況把握システム1は、当該システム1を利用する利用者の保持する端末である利用者端末112と、通信ネットワーク121を介して接続されている。通信ネットワーク120と通信ネットワーク121は、共通の通信ネットワークであってもよいし、それぞれ異なるプロトコルを用いるネットワークであってもよい。また、通信ネットワーク120,121は、有線ネットワークまたは無線ネットワークのいずれでもよい。
施設状況把握システム1に接続するセンサ111と利用者端末112は、1台ではなく、センサの数、利用者の数に応じて複数台存在する。
こうしたネットワーク環境における施設状況把握システム1は、その通信部110を介して、センサ111および利用者端末112と、データを送受信する。
図2に示すネットワーク構成のうち、センサ111は、施設内の状況を観測するセンサである。センサ111としては、例えば、監視カメラ、運行管理システム、改札機システムなどを用いることができる。運行管理システムは、駅に発着する列車の運行状態を管理する。改札機システムは、改札を通過する利用者を検出する。これら以外に、例えば、超音波センサ、赤外線センサ、レーザーレーダ等のセンサを使用してもよい。
センサ111は、施設の各所に複数台設置され、施設状況把握システム1に接続されていることを想定する。複数の種類のセンサがシステム1に接続されていてもよい。センサ111は、施設状況把握システム1に直接接続されてもよいし、集約装置や中継装置等を介してシステム1に接続されてもよい。
センサ111は、センサ111で検出した生データをセンサ情報1111としてそのまま施設状況把握システム1へ送信してもよい。あるいは、センサ111内の処理回路により、またはセンサ111とシステム1の間に設置される装置により、センサ111で検出した生データを加工してセンサ情報1111を生成し、加工されたセンサ情報1111をシステム1へ送信してもよい。
利用者端末112は、駅の利用者が個人で保持する端末や、交通事業者が業務で使う端末である。利用者端末112としては、例えば、携帯電話(いわゆるスマートフォンを含む)、携帯情報端末、ゴーグル型や眼鏡型、腕輪型、腕時計型等のいわゆるウェアラブル型端末、ノート型パーソナルコンピュータ、タブレット型パーソナルコンピュータ、デスクトップ型パーソナルコンピュータ等を挙げることができる。
施設状況把握システム1は、図3で後述するサーバコンピュータ上に構築されており、マイクロプロセッサ、メモリ、コンピュータプログラム等のコンピュータ資源を利用することで、各機能101〜109を実現する。
すなわち、施設状況把握システム1は、センサ設置場所状況情報作成部101、状況伝播分析部102、センサ未設置場所状況情報作成部103、移動負荷情報作成部104、通信部110、空間ネットワーク情報記憶部107、状況情報記憶部108、移動負荷情報記憶部109を備えた情報処理システムである。
空間ネットワーク情報記憶部107は、空間ネットワーク情報106と、センサ空間ネットワーク関連情報105と、を格納する。空間ネットワーク情報106は、駅構内の場所や設備といった施設内の経路を構成する経路構成要素を、ノードとリンクとエリアとをネットワーク構成要素とするネットワーク構造としてモデル化した情報である。空間ネットワーク情報106は、ノードとリンクおよびエリアのネットワーク構成要素からモデル化されたネットワーク構造を、ノード情報1061、リンク情報1062およびエリア情報1063として格納する。
センサ空間ネットワーク関連情報105は、施設内の状況を観測するセンサ111が、空間ネットワーク情報106の有するネットワーク構成要素のうち、どのネットワーク構成要素の状況を把握可能であるのかの関連性を示す情報を格納する。
空間ネットワーク情報106とセンサ空間ネットワーク関連情報105とは、センサ111の検出データや利用者端末112からの要求といった外部からの入力情報に依存しない情報であり、システム構築時あるいは改修時に作成する。ただし、工事や通行止めなどにより、突発的に施設の構造や通行可能な場所が変化する場合には、空間ネットワーク情報106およびセンサ空間ネットワーク関連情報105を動的に更新してもよい。これら情報105,106のデータ構成例の詳細は後述する。
センサ設置場所状況情報作成部101は、施設の各所に設置されたセンサ111から取得するセンサ情報1111と、センサ空間ネットワーク関連情報105とに基づき、リンク状況情報1081とエリア状況情報1082とを作成して、状況情報記憶部108に格納する機能モジュールである。こうした機能モジュールは、図3で示すように、施設状況把握システム1を成すコンピュータが、所定のプログラムを実行することで実装される(以下同様)。
なお、センサ情報1111は、センサ111が観測したままの生データであってもよいし、生データを使いやすいように加工したデータであってもよいし、センサ111が直接観測していなくても別手段(運行管理システムや改札システム等)により推定されたデータであってもよいし、複数のセンサ情報を統合したデータであってもよい。センサ設置場所状況情報作成部101での処理の詳細等は後述する。
移動負荷情報作成部104は、利用者が経路を移動する際の負荷(移動負荷)を計算して、移動負荷情報1091を作成する機能モジュールである。移動負荷情報作成部104は、状況情報記憶部108が保持するリンク状況情報1081およびエリア状況情報1082と、移動負荷情報記憶部109が保持する経路情報1092および利用者の属性情報1093とに基づいて移動負荷を計算し、移動負荷情報1091を作成する。
経路情報1092と属性情報1093とは、事前にパターンを作成してもよいし、利用者端末112から入力される利用者要求1121から取得してもよい。移動負荷情報作成部104における処理等の詳細は、後述する。
状況伝播分析部102は、状況伝播情報1083を作成して、状況情報記憶部108に格納する機能モジュールである。状況伝播分析部102は、状況情報記憶部108が有するリンク状況情報1081およびエリア状況情報1082と、移動負荷情報記憶部109が有する移動負荷情報1091とを複数参照して比較することにより、状況伝播情報1083を作成する。状況伝播分析部102の処理の詳細等は、後述する。
センサ未設置場所状況情報作成部103は、リンク状況情報1081およびエリア状況情報1082を作成して、状況情報記憶部108へ格納する機能モジュールである。センサ未設置場所状況情報作成部103は、任意のセンサ111のセンサ情報1111、あるいは状況情報記憶部108が有するリンク状況情報1081とエリア状況情報1082および状況伝播情報1083とに基づいて、センサ111が設置されていない場所におけるリンク状況情報1081およびエリア状況情報1082を作成する。センサ未設置場所状況情報作成部103の処理の詳細等は、後述する。
通信部110は、通信ネットワーク120,121を介して、各センサ111および各利用者端末112といった外部装置と通信処理を行う機能モジュールである。具体的には、通信部110は、施設状況把握システム1を構成するコンピュータが備える、ネットワークインターフェイスカード等の適宜な通信装置により実装される。
<ハードウェア構成例>
図3は、施設状況把握システム1および利用者端末112のハードウェア構成例を示す図である。
施設状況把握システム1は、例えば、記憶装置201、メモリ202、マイクロプロセッサ(図中CPU)203、通信装置204をバス205で通信可能に接続したコンピュータ装置(サーバコンピュータ)を用いて実現される。
記憶装置201は、例えば、SSD(Solid State Drive)やハードディスクドライブなど適宜な不揮発性記憶素子で構成される。メモリ202は、RAMなど揮発性記憶素子で構成される。マイクロプロセッサ203は、記憶装置201に保持されるプログラム2011とデータ2012とをメモリ202に読み出すなどして実行し、コンピュータシステム1の統括制御を行なうとともに、各種判定、演算および制御処理を行なう。通信装置204は、通信部110を実現するもので、ネットワーク120,121を介して外部装置(センサ111、利用者端末112)との通信処理を担う。
記憶装置201内には、本実施例の施設状況把握システム1として必要な機能モジュール101〜104,110を実装するためのコンピュータプログラム2011のほかに、記憶部107〜109が保持する情報も記憶されている。
利用者端末210も、例えば、記憶装置211、メモリ212、マイクロプロセッサ213、通信装置214、ユーザインターフェース装置(UI装置)216をバス215で接続したコンピュータ装置(クライアントコンピュータ)を用いて実現される。マイクロプロセッサ213は、記憶装置211に格納されたコンピュータプログラム2111をメモリ212に読み込んで実行することにより、施設状況把握システム1を使用するための機能を実現する。本実施例では、例えば、ウェブブラウザを介して、施設状況把握システム1のサービスを利用できるようになっている。記憶装置211には、ウェブブラウザ等のコンピュータプログラム2111のほかに、施設状況把握システム1を利用するためのログイン情報や利用者端末112を使用するユーザの属性情報、現在位置などのデータ2112を記憶することができる。
<機能モジュールおよびデータ構成の詳細>
以下、施設状況把握システム1の機能モジュールおよびデータ構成の詳細について、説明する。
<空間ネットワーク情報管理部106の構成要素の概要:図4>
施設状況把握システム1の空間ネットワーク情報106は、駅構内の場所や設備を、ノードとリンクとエリアを構成要素とするネットワーク構造としてモデル化し、ノード情報1061、リンク情報1062、エリア情報1063として格納する。ノード301とリンク302とエリア303とを、図4に模式的に示す。
駅構内の場所や設備の構造を示すネットワークは、ノード301(白丸)、リンク302(実線)、エリア303(点線)を構成要素とする。矢印で表現された人の流れ304は、矢印の向きが移動方向、その太さが人の数、その長さが移動速度を表す。
ノード301は、施設内の任意の地点に割り当てられる。2点のノードを結ぶ線をリンク302と定義する。複数のノードを内部に含む範囲をエリア303と定義する。ノード301は、例えば、駅の出入口、人の流れが変わる点(階段の起終点、改札機等)などに配置する。
複数のノード301を結ぶ場所に、リンク302を割り当てるか、エリア303を割り当てるかは、状況変化(例えば、人の流れ)のパターンに応じて決める。
人の流れ304の方向が決まっている場所には、リンク302を割り当てる。例えば、狭い通路のように、利用者が前に向かって歩くか、後ろに向かって歩くかの2方向の流れしかない場所が該当する。
これに対し、人の流れ304の方向が決まっていない場所には、エリア303を割り当てる。例えば、改札前のコンコースのように、改札に向かって歩く人、券売機に向かって歩く人、階段に向かって歩く人等のように、個々の人がバラバラの速度でバラバラの方向に向かって歩くような場所が該当する。
エリア303は、ノード301同士を結ぶことで形成してもよいし、あるいは、施設の設備(壁など)に合わせてノード301の周りを囲うように設定してもよい。
<空間ネットワーク情報管理部106のデータ構成例>
続いて、ノード情報1061、リンク情報1062、エリア情報1063のデータ構成例を、それぞれ図5、図6、図7を用いて説明する。
<ノード情報1061のデータ構成例:図5>
ノード情報1061のデータ構成は、ノードID10611をキーとして、座標10613、有効期限10615の各値を対応付けた各レコードから構成される。
ノードID10611は、レコードを一意に特定するための名称あるいは識別コードである。座標10613は、施設内におけるノードの位置を一意に特定するための情報であり、例えば、任意の場所を基準としたX座標、Y座標、階層の組合せで表現する。有効期限10615は、ノードの日別や時間別の利用可否を表す情報である。例えば、時間によって封鎖する出口には、封鎖の条件値を有効期限10615に格納する。
<リンク情報1062のデータ構成例:図6>
リンク情報1062のデータ構成は、リンクID10621をキーとして、始点ノードID10622、終点ノードID10623、リンク種別10624、リンク長10625、リンク幅10626、有効期限10627の各値を対応付けた各レコードから構成される。
リンクID10621は、レコードを一意に特定するための名称あるいは識別コードである。始点ノードID10622と終点ノードID10623は、リンクの両端に付与されたノードを一意に特定するための名称あるいは識別コードであり、ノード情報1061にて定義されたノードIDを用いる。
リンク種別10624は、リンクを種類別に分類した情報であり、例えば、通路、階段、エスカレータ、エレベータといったように、移動のしやすさ(バリアフリーなど)に合わせて種類を分類する。リンク長10625は、リンクの長さの情報であり、例えば、長さが長いほど移動に時間が掛かることがわかる。リンク幅10626は、リンクの幅の情報であり、例えば、幅が広いほど多くの人を収容できることがわかる。有効期限10627は、リンクの日別や時間別の利用可否を表す情報である。例えば、時間によって通行止めになる通路には、通行止めの条件値を有効期限10627に格納する。
<エリア情報1063のデータ構成例:図7>
エリア情報1063のデータ構成は、エリアID10631をキーとして、内部ノードID10633、エリア種別10633、エリア面積10635、有効期限10637の各値を対応付けた各レコードから構成される。
エリアID10631は、レコードを一意に特定するための名称あるいは識別コードである。内部ノードID10633は、エリアの内部に存在するノードを一意に特定するための名称あるいは識別コードであり、ノード情報1061にて定義されたノードIDを用いる。なお、内部に存在するノードの数はエリアによって異なる。
エリア種別10633は、エリアを種類別に分類した情報であり、例えば、改札前(改札外)、改札前(改札内)、イベントスペース、ホームといったように、人の流れの違いによって種類を分類する。
エリア面積10635は、エリアの面積の情報であり、例えば、面積が広いほど多くの人を収容できることがわかる。有効期限10637は、エリアの日別や時間別の利用可否を表す情報である。例えば、曜日によってイベントが行われ通行できる面積が限定されるコンコースには、通行できる範囲の条件値を有効期限10637に格納する。
<センサ空間ネットワーク関連情報105のデータ構成例:図8>
センサ空間ネットワーク関連情報105のデータ構成例を、図8を用いて説明する。センサ空間ネットワーク関連情報105のデータ構成は、センサID1053をキーとして、空間ネットワーク種別1055、空間ネットワークID1057から構成される。
センサID1053は、レコードおよびセンサを一意に特定するための名称あるいは識別コードである。空間ネットワーク種別1055は、センサから状況を観測できる場所が、リンクとエリアのどちらであるかを、特定できる名称あるいは識別コードである。空間ネットワークID1057は、センサが状況を観測できるリンクあるいはエリアを一意に特定するための名称あるいは識別コードであり、リンク情報1062にて定義されたリンクID、あるいはエリア情報1063にて定義されたエリアIDを用いる。
センサ空間ネットワーク関連情報105は、センサ1つにつき、ひとつのリンクあるいはエリアを関連付ける。1つのリンクあるいはエリアに対して複数のセンサが関連づく場合には、リンクあるいはエリアを複数に分割してもよいし、複数のセンサから取得するセンサ情報を統合してもよい。上述の通り、センサ111が直接観測していなくても、別手段により推定されたデータをセンサ情報1111として利用することもできる。
<センサ設置場所状況情報作成部101の処理フロー例:図9>
図9を用いて、センサ設置場所状況情報作成部101の処理を説明する。本処理は、センサ111がセンサ情報1111を送信する任意のタイミングで開始されてもよいし、施設状況把握システム1の内部で設定された任意のタイミングで開始されてもよい。図9の処理は、センサ111ごとにそれぞれのタイミングで独立して実行する。
センサ設置場所状況情報作成部101は、各センサ111からセンサ情報1111を取得する(S1011)。本実施例では、センサ情報1111を監視カメラの映像情報と想定する。監視カメラ111から取得するセンサ情報1111は、映像データに、センサ111を一意に特定するセンサIDと映像撮影時間の各値が付与されたデータとして構成される。
センサ設置場所状況情報作成部101は、取得したセンサ情報1111を解析することにより、施設状況を把握するのに扱いやすい、あるいは必要な項目を有するセンサ加工情報に加工する(S1013)。ステップS1013では、例えば、映像情報から人物領域を検出し、人物領域の特徴量を抽出する。本実施例におけるセンサ加工情報のデータの構成は、センサIDと、映像撮影日時と、人物領域の特徴量(人数、人口密度、個々人の移動方向、移動速度など)の各値を対応付けた各レコードから構成される。
ステップS1011およびステップS1013の処理は、施設状況把握システム1の外部で実施してもよい。センサ情報1111を施設状況把握システム1の外部から取得するのではなく、システム1の内部に設置されたセンサから取得してもよい。
センサ設置場所状況情報作成部101は、ステップS1013にて加工されたセンサ加工情報が、施設内の空間ネットワークにおいて、リンクとエリアのどちらに関連付く情報であるかを判定する(S1015)。この判定には、センサ空間ネットワーク関連情報105を用いる。センサ加工情報のセンサIDと、このセンサID1053が一致するセンサ空間ネットワーク関連情報105のレコードとを抽出し、空間ネットワーク種別1055にリンクを示す情報が格納されていればステップS1017へ進み、空間ネットワーク種別1055にエリアを示す情報が格納されていればステップS1018へ進む。
センサ設置場所状況情報作成部101は、ステップS1015で「リンク」と判定された場合、ステップS1013で作成したセンサ加工情報に基づいて、リンク状況情報1081を作成する(S1017)。リンク状況情報1081の詳細は、後述する。
センサ設置場所状況情報作成部101は、ステップS1015で「エリア」と判定された場合、ステップS1013で作成したセンサ加工情報に基づいてエリア状況情報1082を作成する(S1018)。エリア状況情報1082の詳細は、後述する。
センサ設置場所状況情報作成部101は、ステップS1017あるいはステップS1018で作成されたリンク状況情報1081あるいはエリア状況情報1082を、状況情報記憶部108へ記憶させる(S1019)。以上で、センサ設置場所状況情報作成部101の処理を終了する。
<リンク状況情報1081のデータ構成例:図10>
リンク状況情報1081のデータ構成例を、図10を用いて説明する。リンク状況情報1081のデータ構成は、例えば、リンクID10811、日時10813、方向10815、通過人数10816、占有幅10817、速度平均10818、速度分散10814、センサ有無10819から構成される。
リンクID10811は、リンク情報1062にて定義されたリンクIDを用いる。日時10813は、ステップS1013で作成したセンサ加工情報の映像監視日時の値を用いる。
方向10815、通過人数10816、占有幅10817、速度平均10818、速度分散10814は、センサ加工情報の人物領域の特徴量の値(人数、人口密度、個々人の移動方向、移動速度など)から計算する。
方向10815は、人の流れ304の方向が、始点から終点に向かって流れているか、それとも終点から始点に向かって流れているかを識別するための、名称あるいは識別コードである。人が両方向に流れている場合には、リンクID10811と日時10813が同じ値のレコードを方向別に2つ作成する。
通過人数10816は、単位面積・単位時間あたりに、当該方向へ移動する人数の情報である。占有幅10817は、通路の幅全体のうち、当該方向へ移動する人が占有する幅の情報である。幅の最大値は、リンク情報1062の当該リンクID10621のレコードに格納されたリンク幅10626の値となる。速度平均10818は、当該方向に移動する人の速度の平均の情報である。速度分散10814は、当該方向に移動する人の速度の分散の情報である。センサ有無10819は、センサ設置場所状況情報作成部101によって作成されたレコードであるか、センサ未設置場所状況情報作成部103によって作成されたレコードであるかを識別するための、名称あるいは識別コードである。センサ未設置場所状況情報作成部103の処理の詳細は後述する。
<エリア状況情報1082のデータ構成例:図11>
エリア状況情報1082のデータ構成例を、図11を用いて説明する。エリア状況情報1082のデータ構成は、例えば、エリアID10821、日時10823、人口密度10824、動線平均10827、動線乱れ10828、センサ有無10829から構成される。
エリアID10821は、エリア情報1063にて定義されたエリアIDを用いる。日時10823は、ステップS1013で作成したセンサ加工情報の映像監視日時の値を用いる。
人口密度10824、動線平均10827、動線乱れ10828は、センサ加工情報の人物領域の特徴量の値(人数、人口密度、個々人の移動方向、移動速度など)から計算される。
人口密度10824は、単位面積・単位時間あたりに当該エリアに存在する人数の情報である。動線平均10827は、当該エリア内の利用者個々人の移動情報を2軸のベクトルとして表したときの、利用者全体の平均ベクトルである。ベクトルは、ノード情報1061の座標10613で用いた座標表現にて2軸を用い、ベクトルの向きが移動方向、長さを速度として表現できる。動線乱れ10828は、当該エリア内で移動する個々人の動線ベクトルがどれだけ乱れているかを数値化した情報である。動線平均10827および動線乱れ10828の各値は、一般的なベクトルの平均や相関係数によって求めてもよいし、独自の計算式によって求めてもよい。センサ有無10829は、センサ設置場所状況情報作成部101によって作成されたレコードであるか、センサ未設置場所状況情報作成部103によって作成されたレコードであるかを識別するための、名称あるいは識別コードである。センサ未設置場所状況情報作成部103の処理の詳細は後述する。
<移動負荷情報作成部104>
リンク状況情報1081とエリア状況情報1082が作成されると、移動負荷を計算することができる。移動負荷とは、特定の時間、特定の場所、特定の属性の人において、移動にかかる負荷を表す指標である。
<利用者要求1121>
移動負荷情報作成部104の入力となる利用者要求1121について説明する。
<経路情報11211のデータ構成例:図12>
利用者要求1121が保持する経路情報11211は、当該利用者が移動する予定であるリンクおよびエリアの集合である。経路情報11211のデータ構成例を、図12を用いて説明する。
経路情報11211は、例えば、空間ネットワーク種別112111、空間ネットワークID112113、日時112115、始点ノードID112117、終点ノードID112119から構成される。
空間ネットワーク情報種別112111は、利用者が移動する予定の場所がリンクとエリアのどちらであるかを特定できる、名称あるいは識別コードである。空間ネットワークID112113は、当該リンクあるいはエリアを一意に特定するための名称あるいは識別コードであり、リンク情報1062にて定義されたリンクID、あるいはエリア情報1063にて定義されたエリアIDを用いる。日時112115は、当該リンクあるいはエリアを移動する予定の日時の情報である。日時112115は、幅をもった情報(ある一日、ある時間帯など)であってもよい。始点ノードID112117および終点ノードID112119は、当該リンクあるいはエリアを移動するうえでの移動方向を示す情報であり、始点ノード112117から終点ノードID112119に向かって移動することを示す。
<属性情報11212のデータ構成例>
利用者要求1121が保持する属性情報11212は、利用者の属性を保持する情報であり、例えば、一般通勤客、車いす利用者、旅行者、性別、年齢といった移動能力に影響を与えうる属性の情報を格納する。属性の種類は、予め施設状況把握システム1の内部で定義しておき、利用者に選択させてもよい。
<移動負荷情報記憶部109の経路情報1092、属性情報1093>
移動負荷情報記憶部109の経路情報1092は、利用者要求1121の経路情報11211を1つのパターンとしたときの、経路パターンの集合である。移動負荷情報記憶部109の属性情報1093は、利用者要求1121の属性情報11212を1つのパターンとしたときの、属性パターンの集合である。
<移動負荷情報作成部104の処理フロー例:図13>
移動負荷情報作成部104の処理フローについて、図13を用いて説明する。図13に示すフローチャートは、所定のタイミングで開始される。
所定のタイミングとしては、施設状況把握システム1が利用者端末112から利用者要求1121をPUSH型あるいはPULL型で取得したタイミング、あるいは予め定義された経路情報のパターンや属性情報のパターンにおける移動負荷を計算する場合は、施設状況把握システム1の内部で設定された任意のタイミングである。なお、図13に示す処理と、それ以外の処理との同期は不要である。
移動負荷情報作成部104は、利用者端末112から取得する利用者要求1121が保持する経路情報11211および属性情報11212を取得する。あるいは移動負荷情報記憶部109に予め格納された経路情報1092および属性情報1093から、移動負荷計算の対象となる経路情報のパターンと属性情報のパターンを取得する(S1041)。以降、利用者要求1121を取得したものとして、説明する。
移動負荷情報作成部104は、ステップS1041にて取得した経路情報11211の全レコードについて、ステップS1043からステップS1046の処理を繰り返し実行する(S1042)。
移動負荷情報作成部104は、ステップS1041にて取得した経路情報の1レコードに対応する状況情報が、状況情報記憶部108のリンク状況情報1081あるいはエリア状況情報1082に格納されているかを、経路情報11211の各値をキーとして検索する(S1043)。
移動負荷情報作成部104は、対応する状況情報が存在すれば(S1043:YES)、ステップS1044に進み、状況情報が存在しなければ(S1043:NO)、繰り返しを終了して次のループに進む。状況情報が存在する場合、以降のステップでその情報を用いるためにデータを取得する。
ステップS1043で対応する状況情報が存在した場合、そのレコードが、リンクの情報を示すものであるか、それともエリアの情報を示すものであるかを、経路情報11211の空間ネットワーク種別112111をキーにして選択する(S1044)。
レコードがエリアを示す場合(S1044:エリア)、ステップS1046へ進む。レコードがリンクを示す場合(S1044:リンク)、ステップS1045へ進む(S1044)。なお、ステップS1043とステップS1044の順番は逆でもよい。
ステップS1044で当該レコードがリンクの情報であった場合、移動負荷情報作成部104は、ステップS1043で取得したリンク状況情報1081や対応するリンク情報1062に基づき、リンク移動負荷を計算する。移動負荷とは、バリアフリー設備、所要時間、衝突度、滞留度などを数値として表した値である。
バリアフリー設備の場合、当該リンクに対応するリンク情報1062のリンク種別10624から通路、階段、エスカレータ、エレベータといった設備の情報を取得し、例えばポイント制にして、移動負荷を数値化する。例えば、階段のような移動負荷の高い設備は高ポイントを付与したり、通路の幅や傾斜などの数値を用いて独自の計算式を作成したりして、移動負荷を数値として表す。なお、利用者の属性(一般通勤客、車いす利用者など)によって、必要とするバリアフリーの要件は異なるため、ポイントや計算式を属性ごとに変える。
所要時間は、例えば、利用者が分速80mといった速度で移動し、リンクの長さが240mといった所定長である場合、3分(=240/80)などと計算する。人口密度が高くなり混雑してくると、全体的に移動速度が低下するため、利用者は自由歩行できず、既に存在する流れに乗じて進むことになる。
例えば、周囲の人流が分速60mといった速度であれば、所要時間は4分(=240/60)と計算できる。エスカレータなど、リンク上での移動速度が決まっている場合には、その値を用いて計算する。例えば、エスカレータの速度が分速30mであれば、所要時間は8分(=240/30)と計算できる。
ここで、リンクの長さはリンク情報1062のリンク長10625を参照し、周囲の速度はリンク状況情報1081の速度平均の10818を参照する。自由歩行の速度は、利用者の属性ごとの一般的な平均値を事前に記憶しておいてもよいし、利用者独自の値を設定してもよい。自由歩行か、周囲の流れに乗じるかの処理の切り替えは、人口密度(リンク状況情報1081の通過人数10816と占有幅10817から計算)に閾値を設定するか、移動速度に閾値を設定する。エスカレータの速度などの施設による移動速度の制約についても、事前に記憶しておく。
衝突度は、リンク状況情報1081の速度分散10814を用いる。例えば、衝突頻度が多いほど自由歩行ができず、利用者ごとの速度の分散が大きいはずである。そこで、速度分散10814を衝突度として用いる。あるいは、衝突度を計算する独自の計算式を作成してもよい。
滞留度について説明する。例えば、当該リンクのリンク状況情報1081の速度平均10818が分速20mといった低速度に留まっている場合、そのリンクは人が滞留して動かない状態であると想定される。そこで、滞留が解消されるまでの時間が分かる場合(例えば、列車が到着するまでの時間がわかっている場合、改札や窓口の処理能力から計算できる場合等)は、滞留が解消しうる時間を滞留度として用いる。滞留度を計算する独自の計算式を作成してもよい。
滞留しているリンクと隣り合わせのリンクあるいはエリアまで、滞留が波及している(人が溢れている)場合には、隣り合わせのリンクあるいはエリアでの滞留度も合わせて考慮する。滞留度が滞留解消時間である場合、所要時間に滞留時間を加算してもよい。以上が、ステップS1045の処理である。
ステップS1044で当該レコードがエリアの情報であると判定された場合、ステップS1043で取得したエリア状況情報1082や対応するエリア情報1063に基づき、エリア移動負荷を計算する。
エリア内部には複数のノードが存在し、移動方向は事前には定められておらず、状況情報も移動方向と対応付いていない。しかし、経路情報11211の始点ノードID112117と終点ノードID112119とから、エリア内での移動方向を決定することができる。そこで、エリア内での移動負荷を計算するには、始点ノードID112117と終点ノードID112119を両端点とするダミーリンクを設定し、そのダミーリンク上を移動する際の移動負荷を計算する。
ダミーリンクの設定方法を説明する。当該エリアに対応するエリア情報1063を用いて、ダミーリンク長と、ダミーリンク方向を定義する(S1046)。ダミーリンク長は、当該経路情報11211の始点ノードID112117および終点ノードID112119に対応するノード情報1061で定義された座標10613から、2点間の距離を計算する。移動軌跡が明らかに直線でない場合には、その移動距離を予め定義しておいてもよい。ダミーリンク方向は、エリア状況情報1082の動線平均10827、動線乱れ10828と同様に、ベクトルで表す。
移動負荷情報作成部104は、ダミーリンクが設定できたら、ステップS1043で取得したエリア状況情報1082や対応するエリア情報1063、およびステップS1046で設定したダミーリンクに基づいて、エリア移動負荷を計算する。移動負荷は、バリアフリー設備、所要時間、衝突度、滞留度などを数値として表した値であり、基本的な処理の流れはステップS1045と同様である。以下には、ステップS1045との相違点および異なる処理の詳細を説明する。
バリアフリー設備は、設備の情報を取得するための参照先として、エリア情報1063のエリア種別10633を用いる。参照先は、ステップS1045に記載のリンク情報1062のリンク種別10624ではない。それ以外の処理は、ステップS1045と同様である。
所要時間は、自由歩行できる程度の人口密度の場合は、ステップS1045と同様、例えば、利用者が分速80mで移動し、ダミーリンク長リンクが240mである場合、3分(=240/80)などと計算する。
人口密度が高くなり混雑してくると、エリアにおいてはリンクとは異なり、衝突に対する回避行動をするために、個々人の勝手な速度、方向で進むことになる。そこで例えば、センサ設置場所状況情報作成部101は、S1013にて作成したセンサ加工情報の人物領域の特徴量から個々人の移動速度と移動方向を参照し、ステップS1046で設定したダミーリンクの方向ベクトルと相関の高い方向へ移動する利用者群を抽出し、その利用者群の移動速度の平均値から、当該利用者の移動可能な速度を計算する。
あるいは、人口密度や動線平均や動線乱れと移動可能速度との関係を観察やシミュレーション等で求めて、定義しておいてもよい。移動負荷情報作成部104は、移動可能速度を計算できれば、所要時間を計算できる。ステップS1405で説明したエスカレータのように、移動速度に制約がある場合には、その値を用いて計算する。
衝突度について説明する。例えば、衝突頻度が多いほど利用者ごとの動線の乱れが大きいはずであるため、当該エリアに対応するエリア状況情報1082の動線乱れ10828を衝突度として用いる。衝突度を計算する独自の計算式を作成してもよい。
滞留度は、例えば、当該エリアのエリア状況情報1082の動線平均10827の長さが速度を表すため、ステップS1405と同様に処理することができる。以上が、ステップS1047の処理である。
移動負荷情報作成部104は、ステップS1402の繰り返しが全て終了したら、各レコードに対して計算したリンク移動負荷およびエリア移動負荷を、移動負荷項目ごと(所要時間なら所要時間、衝突度なら衝突度)に統合し、移動負荷情報1091として移動負荷情報記憶部109へ格納する(S1408)。あるいは、移動負荷情報作成部104は、移動負荷情報1091を、利用者端末112から受信した利用者要求1121への応答として、利用者端末112へ送信する(S1408)。
移動負荷情報1091のデータ構成例は、経路情報11211の各レコードに、移動負荷項目ごとの統合値を付加したものである。なお、移動負荷の統合に際して、所要時間であれば数値の合計でよい。バリアフリー施設や衝突度や滞留度の場合は、例えば移動負荷の数値の最大値を経路全体の移動負荷として設定するなど、統合の計算式を移動負荷項目ごとに設定する。また、経路全体の移動負荷の値は必ずしもひとつの数値として算出せず、代表的あるいは特徴的なリンクやエリアに関する値を複数ピックアップして表現しても良い。以上で、移動負荷情報作成部104の処理を終了する。
<状況伝播分析部102>
ここまでで、利用者の経路に対する移動負荷を計算することができた。しかし、このままでは、センサ111の設置されていない場所の状況情報を計算することができないため、移動負荷情報作成部104のステップS1403にて「状況情報無し」と判定されるレコードが多くなってしまい、移動負荷情報1091の精度は低くなる。
そこで、本実施例では、状況伝播分析部102が、センサ設置場所の状況情報に基づいて、状況変化が各場所にどのように伝播するかを分析する。そして、状況伝播の分析結果に基づいて、センサ未設置場所状況情報作成部103は、センサ未設置の場所の状況情報を作成する。
<状況伝播分析部102の処理フロー例:図14>
図14は、状況伝播分析部102の実施する処理を示すフローチャートである。この処理は、施設状況把握システム1の内部で設定された任意のタイミングで開始する。それ以外の処理との同期は不要である。
状況伝播分析部102は、任意のセンサ111のセンサ情報を常時監視し(例えば1分ごとのような一定時間おきに監視し)、状況の変化を引き起こしうるイベントを検知する(S1021)。ここでのセンサは、センサ設置場所状況情報作成部101が状況情報を作成するために参照したセンサ111およびセンサ情報1111以外でよい。
例えば、運行管理システムにおける列車着発情報や、改札機システムによる改札人数情報等を監視し、列車の到着、改札人数の急増、といったその場の状況変化を与えるイベントを検知する。
一方、ステップS1021では、センサ設置場所状況情報作成部101が状況情報を作成するために参照したセンサおよびセンサ情報を用いてもよい。この場合は、センサ設置場所状況情報作成部101が作成するリンク状況情報1081およびエリア状況情報1082、あるいはそれらから作成される移動負荷情報1091を常時監視する。リンク状況情報1081であれば、通過人数10816、または占有幅10817、または速度平均10818、または速度分散10814のいずれかが予め定義された閾値を超えた場合に、その状況変化をイベント発生として検知する。あるいは、エリア状況情報1082であれば、人口密度10824、または動線乱れ10828が予め定義された閾値を超えた場合に、その状況変化をイベント発生として検知する。あるいは移動負荷情報1091であれば、移動負荷情報作成部104のステップS1048で作成した移動負荷項目ごとの移動負荷(バリアフリー設備、所要時間、衝突度、滞留度など)の値が、予め定義した閾値を超えた場合に、その状況変化をイベント発生として検知する。以下、これらの状況変化を検知するために用いたデータの項目を、状況項目と呼ぶ。
状況伝播分析部102は、ステップS1021で検知されたイベントが既知のイベントであるか判定する(S1022)。
既知のイベントの場合(S1022:YES)、ステップS1023へ進む。未知のイベントの場合(S1022:NO)、ステップS1024へ進む(S1022)。イベントが既知であるか未知であるかを判定するための判定基準の説明は、後述する。ここではステップS1021が検知したイベントが全て未知であるものとして、ステップS1024以降の処理を説明する。ステップS1023の処理の詳細は後述する。
ステップS1022で未知のイベントと判定された場合、状況伝播分析部102は、ステップS1021でイベントが検知された場所、あるいはイベントの影響を確実に受ける場所を指定し、その周囲の場所(例えば、基準場所から一定距離以内の場所など)を全て抽出する(S1024)。なお、ここで指定する基準場所、および抽出する周囲の場所は、全て、リンク状況情報1081あるいはエリア状況情報1082を有するリンクあるいはエリアとする。
続いて、状況伝播分析部102は、ステップS1024で抽出された全ての場所に対して、ステップS1026以降の処理を繰り返し実行する(S1025)。さらに、ステップS1025の基準場所および抽出場所の状況項目の組合せごとに、ステップS1027以降の処理を繰り返し実行する(S1026)。
例えば、基準場所の人口密度、所要時間、衝突度と、抽出場所の人口密度、所要時間、衝突度とを比較する場合、その組合せは9パターン(=3種類×3種類)となる。比較する状況項目は、場所ごとに自由に設定してよい。
繰り返しのループ内では、状況項目の組合せごとに、基準場所および抽出場所のそれぞれの状況項目の時系列のデータ(例えば、10分前から10分後まで1分おきに作成されたデータ)を比較し、類似度と時間差を計算する(S1027)。類似度と時間差の計算には、例えば、時系列データの相互相関解析などを用いる。
状況伝播分析部102は、ステップS1027で計算した類似度を、予め定義した閾値Thと比較する(S1028)。類似度が閾値Th以上の場合(S1028:YES)、それら2つの組合せの場所の間で状況(人流)が伝播しているため、状況伝播分析部102は、状況伝播情報1083を作成し、状況情報記憶部に格納する(S1029)。
これに対し、類似度が閾値Th未満の場合(S1028:NO)、ステップS1026の繰り返しの次のループに進む。状況伝播情報1083の詳細は後述する。以上で、状況伝播分析部102の処理を終了する。
<状況伝播分析部102のステップS1022、1023の処理>
<イベント影響情報のデータ構成例:図15>
図14に示すステップS1022の判定基準と、ステップS1024の詳細について説明する。
ステップS1022にて、イベントが既知であるか未知であるかを判定するために、図15に示すイベント影響情報を用いる。イベント影響情報は、状況伝播分析部102の過去の処理実績に基づき、イベントのパターンに応じて状況変化が起こりうる影響範囲を特定した情報である。イベント影響情報は、例えば、イベントID901、有効期限903、影響空間ネットワーク種別905、影響空間ネットワークID907、影響状況項目909から構成される。
イベントID901は、ステップS1021で述べたイベントを一意に特定するための名称あるいは識別コードであり、過去の傾向から状況変化の影響を与えうるイベントのIDを格納する。
有効期限903は、当該イベントが当該レコードに格納する範囲に影響を与える曜日や時間帯の情報である。この有効期限に該当する日時のみ、当該レコードを参照することができる。
影響空間ネットワーク種別905は、当該イベントが状況変化の影響を与える場所が、リンクとエリアのどちらであるかを特定できる、名称あるいは識別コードである。
影響空間ネットワークID907は、当該イベントが状況変化の影響を与えるリンクあるいはエリアを一意に特定するための名称あるいは識別コードであり、リンク情報1062にて定義されたリンクID、あるいはエリア情報1063にて定義されたエリアIDを用いる。
影響状況項目909は、当該イベントによって影響を受ける当該リンクあるいは当該エリアの状況項目の情報である。
ステップS1022では、イベント影響情報のイベントID901および有効期限903のうち、ステップS1021で検知したイベントに該当するレコードが存在するかを検索し、該当するレコードが見つかった場合には、既知のイベントであると判定してステップS1023に進む。
ステップS1022で既知のイベントであると判定された場合、ステップS1021で検出したイベントが影響を与える場所と状況項目を、当該イベント影響情報で見つかったレコードに記載されたものだけに限定して抽出する(S1023)。ステップS1025以降の処理では、当該抽出場所および状況項目のみを繰り返しの対象とすればよいため、既知のイベントであるほど、ステップS1025の繰り返しの回数が少なくなる。
<状況伝播情報1083のデータ構成例:図16>
状況伝播情報1083は、状況変化が伝播する場所の組合せと、その伝播の時間差を保持する情報である。状況伝播情報1083のデータ構成は、例えば、イベントID10831、基準空間ネットワーク種別10832、基準空間ネットワークID10833、比較空間ネットワーク種別10834、比較空間ネットワークID10835、基準時刻10836、時間差10837、類似度10838から構成される。
イベントID10831は、状況の変化を引き起こす要因となったイベントを一意に特定するための名称あるいは識別コードである。イベントID10831は、必ずしも具体的なイベントでなくてもよく、例えば、「7時に1番線ホームで発生したイベント」など、時間や場所でイベントを一意に特定できればよい。
基準空間ネットワーク種別10832は、ステップS1027で類似度と時間差を計算する際に、基準場所に設定した場所がリンクとエリアのどちらであるかを特定できる、名称あるいは識別コードである。
基準空間ネットワークID10833は、当該基準場所を一意に特定するための名称あるいは識別コードであり、リンク情報1062にて定義されたリンクID、あるいはエリア情報1063にて定義されたエリアIDを用いる。
比較ネットワーク種別10834は、ステップS1027で類似度と時間差を計算する際に、比較場所(S1027では抽出場所と記述)に設定した場所が、リンクとエリアのどちらであるかを特定できる、名称あるいは識別コードである。
比較空間ネットワークID10835は、当該比較場所を一意に特定するための名称あるいは識別コードであり、リンク情報1062にて定義されたリンクID、あるいはエリア情報1063にて定義されたエリアIDを用いる。
基準時刻10836は、当該基準場所にて状況変化が検知された日時の情報である。時間差10837は、当該基準場所と当該比較場所の状況変化が発生する時間の差の情報である。類似度10838は、当該基準場所と当該比較場所のそれぞれの時系列変化の類似度の情報である。時間差10387と類似度10838には、状況伝播分析部102のステップS1027にて相互相関解析などにより計算された結果が格納される。
<センサ未設置場所状況情報作成部103の処理フロー例:図17>
状況伝播情報1083を用いることにより、センサ未設置場所状況情報作成部103は、センサ未設置場所におけるリンク状況情報1081およびエリア状況情報1082を作成することができる。そこで、図17を用いて、センサ未設置場所状況情報作成部103の実行する処理を説明する。図17に示す処理は、施設状況把握システム1の内部で設定された任意のタイミングで開始する。なお、本処理は、それ以外の処理との同期は不要である。
センサ未設置場所状況情報作成部103は、推定の対象となるセンサ未設置の場所(リンクあるいはエリア)、および時間を決定する(S1031)。推定の対象は、予めそのパターンを施設状況把握システム1の内部で設定しておいてもよいし、例えば利用者端末112の利用者要求1121によって指定してもよい。
センサ未設置場所状況情報作成部103は、ステップS1031で決定した場所の周囲の場所(例えば、基準場所から一定距離以内の場所など)に相当する場所を全て抽出する(S1032)。なお、基準場所および基準場所の周囲の場所は、全て、リンク状況情報1081あるいはエリア状況情報1082を有するリンクあるいはエリアとする。
センサ未設置場所状況情報作成部103は、ステップS1031で決定した推定の対象が、状況伝播の経由点に該当するかを判定する(S1033)。推定対象の場所が経由点に該当する場合(S1033:YES)、ステップS1034へ進む。推定対象の場所が経由点に該当しない場合(S1033:NO)、ステップS1035へ進む。
ステップS1033での判定では、ステップS1032にて抽出した場所および時間と、状況伝播情報1083が持つ場所および時間情報とを比較し、ステップS1031で決定した推定の対象の場所および時間の前後に当てはまる状況伝播情報1083のレコードが存在するかを探す。例えば、地点A、B、Cと順に移動できる経路において、地点Bが推定対象であり、状況伝播情報1083が地点AおよびCに関するレコードを格納していれば、ステップS1033の判定結果は「YES」である。
ステップS1033で推定対象が状況伝播の経由点であると判定された場合、該当する前後の状況伝播情報1083の流れに違反しないようにして、当該場所のリンク状況情報1081あるいはエリア状況情報1082を作成する(S1034)。
ここで、流れに違反しないとは、例えば、上述の地点A,B,Cと順に移動できる経路において、地点Bが推定対象の場合、地点Aから地点C方向へ向かう人が100人、地点Cにいて地点A方向から来た人が50人存在する場合、地点Bには、地点Aから地点C方向へ向かう50人以上100人以下の人が存在する、といった計算をする。実際の計算には、地点Aから地点B、地点Bから地点Cに至るまでの距離や、途中の通路の分岐などを考慮する必要がある。該当する前後の状況伝播情報1083のパターンが複数存在する場合、全てのパターンについて、流れに違反しないように、状況情報を推定する。
一方、ステップS1033で推定対象が状況伝播の経由点ではないと判定された場合、センサ未設置場所状況情報作成部103は、周囲の場所の状況情報とは有意な関係性が見いだせないため、特別な状況変化は無いものと判断して、リンク状況情報1081あるいはエリア状況情報1082を作成する。
センサ未設置場所状況情報作成部103は、例えば、「混雑なし」として自由歩行可能であるように速度平均を設定してもよいし、過去の実績統計があれば、その統計に基づき、当該場所当該時刻の一般的な状況に関する情報を設定してもよい。
なお、センサ未設置場所状況情報作成部103で作成したリンク状況情報1081のセンサ有無10819、およびエリア状況情報1082のセンサ有無10829には、センサ未設置場所状況情報作成部103によって作成されたレコードであることを識別できる名称あるいは識別コードを格納する。センサ未設置場所状況情報作成部103で作成したレコードは、センサ設置場所状況情報作成部101よりも推定できる情報が少ない可能性もあり、その場合は「値なし」を設定する。以上で、センサ未設置場所状況情報作成部103の処理を終了する。
<使用例>
以上に示したデータおよび機能モジュールによって、施設内の場所や経路の移動しやすさを推定することができる。以下では、本実施例の使用例を、図18および図19を用いて説明する。
<画面例1:図18>
図18には、施設状況把握システム1が利用者端末112に提供する画面171,175の例を示す。ここでの利用者端末112は、例えば、駅等の交通を利用する利用者(エンドユーザ)が所持するスマートフォンである。画面171,175は、それぞれ異なる利用者に提供される。
画面171,175は、それぞれ、ユーザ名表示エリア172,176と、経路概要表示エリア173,177と、施設マップエリア174,178とを備える。図18に例示する画面171,175では、施設マップエリア174,178に表示するマップ上に、移動負荷の高い場所を矩形として表示し、移動負荷の値に応じて色などの見た目によって区別し表示する。さらに、経路概要表示エリア173,177には、各移動経路候補を山形矢印で表示し、それぞれリンクあるいはエリアごと(あるいは複数のリンク、エリアをまとめたグループ)ごとに分割し、移動負荷の値に応じて色などの見た目によって区別し表示する。
各利用者は、利用者要求1121として、経路情報11211と属性情報11212を施設状況把握システム1へ送信する。経路情報11211の指定時に、利用者が例えば、現在地(出発地)と目的階(目的地)とを手動で設定すると、現在値から目的階へ至る各経路の候補(画面171,175におけるA、B、Cの3パターン)が検出される。経路候補は、利用者端末112に備えられた機能モジュール、施設状況把握システム1の内部の機能モジュール、あるいは、利用者端末112と施設状況把握システム1の間に設けられた別装置が有する機能モジュールのいずれかにより、検出することができる。
移動負荷情報作成部104は、経路候補のそれぞれにおいて、各利用者の属性情報11212に基づき、移動負荷を計算する。例えば、画面171を利用する一方の利用者が一般通勤客であり、画面175を利用する他方の利用者が車いす利用者である場合、それぞれ異なる移動負荷の値が計算される。従って、一方の利用者の経路概要表示エリア173,174と他方の利用者の経路概要表示エリア177,178とでは、移動可能な経路が異なっていたり、移動負荷の高い場所の色付けの範囲が異なっていたり、所要時間の値が異なっていたりする。
図18に示す画面171,175では、それぞれの利用者への推奨経路も合わせて表示している。経路候補の移動負荷をそれぞれ計算して比較することにより、移動負荷の最も低い経路を推奨経路として利用者に提案することができる。
このように、交通利用者は、図18に示す画面171,175を確認することで、それぞれの経路候補の性質(移動しやすさ、途中の設備等)を容易に認識することができ、移動しやすい場所や経路を簡単に選択でき、使い勝手が向上する。
<画面例2:図19>
図19には、施設状況把握システム1から利用者端末112へ提供される画面181,185を示す。ここでの利用者端末112は、例えば、駅係員や指令員(交通事業者)が業務で操作するパーソナルコンピュータである。
画面181,185は、施設マップエリア184,188を備える。施設マップエリア184,188の構成は、図18に例示した施設マップエリア174,178と同様であり、移動負荷の高い場所を矩形として表示し、移動負荷の値に応じて色などの見た目によって区別し表示する。さらに、画面181,185では、駅員等に利用者の移動に関して注意を促すためのアラートコメント185,189が出力される。
利用者が駅係員や指令員である場合は、操作の度に利用者要求1121を送信するのではなく、移動負荷情報記憶部109に経路情報1092、属性情報1093のパターンを予め設定しておくのが妥当である。予め設定した経路や属性の条件を用いて、定期的に移動負荷情報作成部の処理を実行することで、施設内の状況の変化を随時把握できる。例えば、画面181が一般通勤客モードであり、画面185が車いす利用者モードである場合、それぞれ異なる移動負荷の値が計算され、移動負荷の高い場所の色付けの範囲が異なっている。
図19に示す画面181,185では、それぞれのモードでアラートコメント185,189も合わせて表示している。移動負荷の定義をすることで、具体的な業務内容を提示できる。したがって、例えば通勤客にとって負荷の高い場所があれば、通勤客の誘導をするようにコメントを出したり、車いす利用者にとって負荷の高い場所があれば、車いす利用者の補助をするようにコメントを出したりできる。
このように、駅係員や指令員は、図19に示す画面181,185を確認することで、それぞれの場所におけるエンドユーザの移動危険度を認識し、業務を円滑に行えるようになる。
このように構成される本実施例によれば、利用者が施設内で移動しやすい、あるいは移動しづらい場所や経路を推定することができる。さらに、本実施例によれば、センサ未設置の場所の移動負荷も計算することができる。これにより、本実施例に係る施設状況把握システム1は、交通利用者や交通事業者に対して、施設全体を俯瞰した情報を配信することができ、交通利用者や交通事業者の使い勝手が向上する。
なお、本発明は上記各実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記各実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に記載したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
上記の各構成、機能、処理部、および処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。上記の各構成、機能、処理部、および処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば仮想マシンで設計する等によりクラウドシステムで実現してもよい。
上記の各構成、および機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD等の記録装置、または、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。
制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
本発明の各構成要素は、任意に取捨選択することができ、取捨選択した構成を具備する発明も本発明に含まれる。さらに特許請求の範囲に記載された構成は、特許請求の範囲で明示している組合せ以外にも組み合わせることができる。