≪第1の実施形態≫
〔アンテナ装置の構成〕
本発明の第1の実施形態に係るアンテナ装置1の構成について、図1〜図3を参照して説明する。図1は、アンテナ装置1の斜視図である。図2の(a)は、アンテナ装置1が備える支持体30の上面側斜視図であり、図2の(b)は、この支持体30の下面側斜視図である。図3は、アンテナ装置1が備えるフィルムアンテナ10の平面図である。
アンテナ装置1は、図1に示すように、フィルムアンテナ10と、同軸ケーブル20と、支持体30とを備えている。フィルムアンテナ10は、所定の立体構造を取るように、支持体30に巻き付けられている。また、フィルムアンテナ10の2つの接続点14a,14bからなる給電部14に接続された同軸ケーブル20は、所定の配線経路を通るように、支持体30に保持されている。
支持体30は、第1支持面31と、第1支持面31と交わる(本実施形態においては直交する)第2支持面32と、第1支持面31と対向し、第2支持面32と交わる(本実施形態においては直交する)第3支持面33とを有する構造物である。フィルムアンテナ10は、その表面又は裏面が第1支持面31、第2支持面32、及び第3支持面33と接触するように、支持体30に巻き付けられる。
本実施形態においては、図2に示す箱型の樹脂成形物を支持体30として用い、その上面を第1支持面31、その後側面(図示した座標系においてx軸正方向側の側面)を第2支持面32、その下面を第3支持面33とする。この樹脂成型物は、上面側から肉抜きされているため、肉抜きされずに残った隔壁の上端面(図2の(a)において斜線によるハッチングを付した部分)が第1支持面31を構成する。支持体30の第3支持面33は、第1支持面31よりも前方(図示した座標系においてx軸負方向)に突出しており、第1支持面31が形成された領域に対向する対向領域33aと第1支持面31が形成された領域に対向しない非対向領域33bとに二分される。
支持体30は、所定の配線経路を通るように同軸ケーブル20を保持することによって、同軸ケーブル20の引っ張りに対する耐久性を高めるための保持手段として、第1保持部34、第2保持部35、及び第3保持部36を備えている。
また、支持体30の第3支持面33には第1の凹部37と、この第1の凹部37と連通して第3支持面33の端部へ向かって延びる第2の凹部38とが形成されている。第1及び第2の凹部37,38は、本発明における凹状収容部に相当し、同軸ケーブル20の端部と給電部14との接続部分が収容されるとともに、そこから延びる同軸ケーブル20が挿通する。なお本実施形態において、同軸ケーブル20の端部と給電部14との接続部分は、後述する樹脂モールド部21により覆われている(図4参照)。
第1の凹部37は、第3支持面33のうち、第3支持面33と第2支持面32との境界近傍に形成された凹部であって、第3及び第2支持面の境界に沿う方向(図示した座標系においてy軸方向)に延在する長尺形状の凹部であり、第3支持面33から第1支持面31へ向かう方向(図示した座標系においてz軸正方向)へ凹んだ凹部である。
そして、第1の凹部37は、後述する樹脂モールド部21(同軸ケーブル20の端部と給電部14との接続部分を覆う樹脂成形物)を収容可能な大きさを有する。
第2の凹部38は、第2の凹部38は第1の凹部37よりも幅が小さい凹部であって、一方の端部が第1の凹部37と連通し、他方の端部が第3支持面33の端部まで延びる。また第1の凹部37と同様に、第3及び第2支持面32の境界に沿う方向(図示した座標系においてy軸方向)に延在する凹部であり、第3支持面33から第1支持面31へ向かう方向(図示した座標系においてz軸正方向)へ凹んだ凹部である。
そして、第2の凹部38は、第1の凹部37に収容された樹脂モールド部21から延びる同軸ケーブル20が挿通可能な大きさを有する。
アンテナ装置1において、フィルムアンテナ10は、同軸ケーブル20の端部と給電部14との接続部分が、第3支持面33における第2支持面32との境界近傍に設けられた第1及び第2の凹部37,38に収容されるように、支持体30に取り付けられ、さらに、第1支持面31、第2支持面32及び第3支持面33に接触するように、支持体30に巻き付けられている。このとき、フィルムアンテナ10は、その一端(後述する第1アンテナ導体12側の端辺)が、第1支持面31の第2支持面32側とは反対側の端部に配置されるとともに、その他端が、第3支持面33の第2支持面32側とは反対側の端部よりも前方に向かって延出するようにして、支持体30に巻き付けられている。
第1保持部34は、第1支持面31の第2支持面32側とは反対側の端部から前方に突出した領域に設けられている。すなわち、第3支持面33の非対向領域33bの上面側(図示した座標系においてz軸正方向側)に設けられている。この第1保持部34は、同軸ケーブル20の一部を、第1支持面31及び第2支持面32の双方に対して沿う(本実施形態においては平行な)方向(図示した座標系においてy軸方向)に延在するように保持する。第1保持部34は、フィルムアンテナ10の第1支持面31に接触する領域とフィルムアンテナ10の第3支持面33に接触する領域とに挟まれた空間領域の外部に設けられているので、フィルムアンテナ10を支持体30に巻き付けた後でも同軸ケーブル20を第1保持部34に装着することが可能である。
本実施形態においては、その壁面が第3支持面33及び第2支持面32の双方に対して垂直になるように配置された複数の(本実施形態においては4つの)隔壁34aと、この隔壁34aに形成された上方が開口した凹部34b(スリット)とを保持部34として用いる。この隔壁34aの凹部34bに同軸ケーブル20を嵌め込むことによって、上述したような同軸ケーブル20の保持(挟持)が実現される。また、第1保持部34で保持した同軸ケーブル20を蛇行させ、同軸ケーブル20が第1保持部34から抜け難くするために、本実施形態においては、その壁面が隔壁34aの壁面と平行になるように配置された隔壁34cを用いている。この隔壁34cの前方の端面は、下方に向かうほど前方に迫り出すように傾斜している。このため、同軸ケーブル20を隔壁34aの凹部34bに深く嵌め込むと、同軸ケーブル20は、中央部がこの隔壁34cによって前方に押し出されることによって蛇行し、より強く隔壁34aに押し付けられる。このため、同軸ケーブル20が隔壁34aから受ける摩擦力が大きくなり、同軸ケーブル20が抜け難くなる。
第2保持部35は、支持体30の左側面(図示した座標系においてy軸負方向側の側面)に設けられている。この第2保持部35は、同軸ケーブル20の一部を、第2支持面32に対して垂直な方向(図示した座標系においてx軸方向)に延在するように保持する。そして、第2保持部材35は、第3支持面33の第2支持面32との境界近傍に形成された凹状収容部(第1及び第2の凹部37,38)に収容された樹脂モールド部21から延びる同軸ケーブル20を屈曲させて前方(第2支持面32とは反対側の端部)へ向けてガイドし、同軸ケーブル20を第1保持部材34に導くように機能する。
第2保持部35は、フィルムアンテナ10の第1支持面31に接触する領域とフィルムアンテナ10の第3支持面33に接触する領域とに挟まれた空間領域の外部に設けられているので、フィルムアンテナ10を支持体30に巻き付けた後でも同軸ケーブル20を第2保持部35に装着することが可能である。
本実施形態においては、支持体30の左側面の下端から左方に突出した直方体状の突出部35aを第2保持部35として用いる。この突出部35aには、第2支持面32側の端面からその反対側の端面に至る、下方が開口した凹部35bが形成されており、この凹部35bに同軸ケーブル20を嵌め込むことによって、上述したような同軸ケーブル20の保持が実現される。
第3保持部36は、支持体30の右側面(図示した座標系においてy軸正向側の側面)に設けられている。この第3保持部36は、同軸ケーブル20の一部を、第2支持面32に対して垂直な方向(図示した座標系においてx軸方向)に延在するように保持する。そして、第3保持部材36は、第1保持部材34から延出する同軸ケーブル20を屈曲させて前方へ向けてガイドする。第3保持部36は、フィルムアンテナ10の第1支持面31に接触する領域とフィルムアンテナ10の第3支持面33に接触する領域とに挟まれた空間領域の外部に設けられているので、フィルムアンテナ10を支持体30に巻き付けた後でも同軸ケーブル20を第3保持部36に装着することが可能である。
本実施形態においては、支持体30の右側面の下端から右方に突出した直方体状の突出部36aを第3保持部36として用いる。この突出部36aには、第2支持面32側の端面からその反対側の端面に至る、下方が開口した凹部36bが形成されており、この凹部36bに同軸ケーブル20を嵌め込むことによって、上述したような同軸ケーブル20の保持が実現される。
上述したように、本実施形態においては、支持体30の第3支持面33に、フィルムアンテナ10を巻き付けたときに、同軸ケーブル20の端部と給電部14との接続部分(樹脂モールド部21で覆われた部分)を収容するための第1及び第2凹部37,38が形成されている。そして、支持体30の第3支持面33と反対側の面(第1支持面31側)に、同軸ケーブル20を保持するための第1保持部材34が形成されている。また、支持体30は、更に2つの保持部材(第2及び第3保持部材35,36)を有する。これら第2及び第3保持部材35,36は、第1保持部材34が形成された面と反対側に開口する凹部35b,36bを備え、支持体30の左側面及び右側面にそれぞれ配置されている。
第1支持面31(を構成する隔壁の上端面)には、L型突起31a及びI型突起31bが形成されている。L型突起31aは、第1支持面31から上方に延伸する第1柱状部と、第1柱状部の上端から前方に延伸する第2柱状部とにより構成されている。フィルムアンテナ10に形成された長方形の開口12c(図3参照)にL型突起31aを引っ掛けることによって、支持体30に対するフィルムアンテナ10の位置決めが図られるとともに、フィルムアンテナ10の第1支持面31に接触する部分を後方に引っ張っても(フィルムアンテナ10の第3支持面33に接触する部分を前方に引っ張っても)、フィルムアンテナ10が支持体30から離脱しなくなることが図られる。一方、I型突起31bは、第1支持面31から上方に延伸する柱状部により構成されている。フィルムアンテナ10に形成された円形の開口12d(図3参照)にI型突起31bを嵌合させることによって、支持体30に対するフィルムアンテナ10の位置決めが図られる。
また、図2の(b)に示すようにz軸正方向が紙面の下向きになるように支持体30を配置した場合、第2支持面32の右端には、L型ガイド32aが形成されている。L型ガイド32aは、第2支持面32から後方に延伸する第1板状部と、第1板状部の後端から右方に延伸する第2板状部とにより構成されている。同様に、第2支持面32の左端には、L型ガイド32bが形成されている(図2の(b)参照)。L型ガイド32bは、第2支持面32から後方に延伸する第1板状部と、第1板状部の後端から左方に延伸する第2板状部とにより構成されている。フィルムアンテナ10の右端をL型ガイド32aの第2板状部と第2支持面32との間に挟み込み、フィルムアンテナ10の左端をL型ガイド32bの第2板状部と第2支持面32との間に挟み込むことによって、フィルムアンテナ10を第2支持面31に密着させることができる。
さらに、第3支持面33には、I型突起33dが形成されている。I型突起33dは、第3支持面33から下方に延伸する柱状部により構成されている。フィルムアンテナ10に形成された円形の開口13a(図3参照)にI型突起33dを嵌合させることによって、支持体30に対するフィルムアンテナ10の位置決めが図られる。また、第3支持面33の前端には、ガイドリング33cが形成されている(図2の(a)参照)。フィルムアンテナ10をこのガイドリング33cに通すことによって、フィルムアンテナ10を第3支持面33に沿わせるように支持することができる。すなわち、フィルムアンテナ10は、ガイドリング33cを貫通し、また、ガイドリング33cによって支持されている。
なお、支持体30を構成する材料の一例としては、ポリカーボネート樹脂(PC樹脂)とアクリロニトリル、ブタジエン、スチレン共重合合成樹脂(ABS樹脂)とを混合したPC−ABS樹脂が挙げられるが、これに限定されるものではない。
〔フィルムアンテナ10〕
フィルムアンテナ10は、図3に示すように、誘電体フィルム11と、この誘電体フィルム11の表面にパターンとして形成された1対のアンテナ導体12,13を備えている。
第1アンテナ導体12には、同軸ケーブル20の内側導体(ホット側導体)が接続される第1接続点14aが設けられている。一方、第2アンテナ導体13には、同軸ケーブル20の外側導体(コールド側導体)が接続される第2接続点14bが設けられている。第1接続点14a及び第2接続点14bは、フィルムアンテナ10の給電部14を構成している。なお、図示を省略するが、フィルムアンテナ10の給電部14(第1及び第2接続点14a,14b)には、同軸ケーブル20の端部が接続されている。具体的には、第1接続点14aに同軸ケーブル20の内側導体を半田付けすることにより接続し、第2接続点14bに同軸ケーブル20の外側導体を半田付けすることにより接続している。
第1アンテナ導体12及び第2アンテナ導体13は、前者及び後者を放射素子とするダイポールアンテナ、又は、前者を放射素子とし後者を地板とするモノポールアンテナを構成する。
本実施形態においては、長方形の短辺を介して隣接する2つの角を四分楕円12a,12bで置き換えた釣鐘形の導体箔(例えば、銅箔)を第1アンテナ導体12として用いる。この第1アンテナ導体12の四分楕円12a,12bに挟まれた辺には凸部が設けられており、上述した第1接続点14aは、この凸部に配置される。また、本実施形態においては、長方形の導体箔(例えば、銅箔)を第2アンテナ導体13として用いる。この第2アンテナ導体13の短辺には凹部が設けられており、上述した第2接続点14bは、この凹部の近傍に配置される。第1アンテナ導体12と第2アンテナ導体13とは、前者の凸部が後者の凹部に入り込むように組み合わせられており、第1接続点14aと第2接続点14bとは、第1アンテナ導体12と第2アンテナ導体13との隙間を介して互いに対向する。
なお、第2アンテナ導体13の第1アンテナ導体12に近接する端部には、後述する樹脂モールド部21とフィルムアンテナ10との接着強度を向上させるための開口13bが形成されている。フィルムアンテナ10の給電部14と、この給電部14に接続された同軸ケーブル端部とを覆う樹脂モールド部21を、この開口13bを含む領域に形成することによって、樹脂モールド部21を形成する樹脂材が開口13を介してフィルムアンテナ10の表面及び裏面にいきわたり、樹脂モールド部21とフィルムアンテナ10の接着強度を向上させることができる。
フィルムアンテナ10は、第1アンテナ導体12を横断する直線AA’、及び、第1アンテナ導体12と第2アンテナ導体13との間を横断する直線BB’を稜線としてU字型に折り曲げることによって、支持体30に巻き付けられる。この際、第1アンテナ導体12側の端辺から直線AA’までの領域10a(第1領域:第1アンテナ導体12の主要部)が支持体30の第1支持面31に接触し、直線AA’から直線BB’までの領域10b(第2領域)が支持体30の第2支持面32に接触し、直線BB’から第2アンテナ導体13を横断する直線CC’(第3領域:第2アンテナ導体13の主要部)までの領域10cが支持体30の第3支持面33に接触する。
なお、誘電体フィルム11を構成する材料の一例としては、ポリイミドが挙げられ、1対のアンテナ導体12,13を構成する材料の一例としては、銅が挙げられる。折り曲げられたフィルムアンテナ10を支持体30の第1〜第3支持面31〜33の各々にフィットさせ、フィルムアンテナ10と支持体30との間に隙間が生じることを防止するために、フィルムアンテナ10は、高い柔軟性を有することが好ましい。したがって、誘電体フィルム11及びアンテナ導体12,13の厚さは、何れも薄いことが好ましい。例えば、アンテナ導体12,13として、厚さが20μmである銅箔を採用し、(2)誘電体フィルム11として、一方の表面に接着剤が塗布されたポリイミドフィルムであって、接着剤を含めた厚さが35μmであるポリイミドフィルムを採用することができる。
また、フィルムアンテナ10は、アンテナ導体12,13の表面を覆う誘電体フィルムを更に備えていてもよい。すなわち、フィルムアンテナ10は、アンテナ導体12,13が2枚の誘電体フィルムによって挟持されている構成であってもよい。アンテナ導体12,13の両面を誘電体フィルムで覆うことによって、アンテナ導体12,13の損傷や劣化などを防止することができる。
〔樹脂モールド部21〕
次に、図4を参照して、フィルムアンテナ10の給電部14と、この給電部14に接続された同軸ケーブルの端部とを覆う樹脂モールド部21について説明する。図4の(a)は、アンテナ装置1の斜視図であり、支持体30の図示を省略している。図4の(b)は、図4の(a)に示すアンテナ装置1が備えているフィルムアンテナ10の斜視図である。
図4の(a)に示すように、同軸ケーブル20の端部と給電部14との接続部分、及びその近傍には、同軸ケーブル20の内側導体及び外側導体、並びに、給電部14を隙間なく覆っている樹脂モールド部21が形成されている。樹脂モールド部21は、樹脂成形物からなる。この構成によれば、同軸ケーブル20の内側導体及び外側導体、並びに、給電部14が暴露されることを防止することができる。したがって、樹脂モールド部21によって同軸ケーブル20と給電部との接続部分が防水され、大気中の水分などに起因して給電部14の半田が劣化することを防止し、フィルムアンテナ10の耐水性を向上させることができる。
また、図4の(b)に示すように、第2アンテナ導体13に開口13bが形成されていることによって、樹脂モールド部21の成形時に、樹脂モールド部21を形成する樹脂材が開口13bを介してフィルムアンテナ10の表面及び裏面にいきわたる。その結果、樹脂モールド部21は、フィルムアンテナ10を表面及び裏面から挟み込むとともに、開口13bを介して両面の樹脂が連結した形状に形成される。この構成によれば、樹脂モールド部21とフィルムアンテナ10との接着強度が向上し、フィルムアンテナ10から樹脂モールド部21が剥離するのを抑制することができる。
〔同軸ケーブルの配線経路〕
アンテナ装置1における同軸ケーブル20の配線経路について、図5を参照して説明する。図5の(a)〜(d)は、それぞれ、アンテナ装置1の平面図、正面図、左側面を示す側面図、及び底面図である。図5の(a)〜(d)の各図においては、同軸ケーブル20の配線経路を分かりやすくするために、フィルムアンテナ10の図示を省略している。
同軸ケーブル20が接続されたフィルムアンテナ10が支持体30に巻き付けられ、同軸ケーブル20の端部と給電部14との接続部分が、支持体30の第3支持面33に形成された第1及び第2の凹部37,38に収容される。そして、給電部14から支持体30の左側面側(図示した座標系においてy軸負方向側)に引き出された同軸ケーブル20は、図5の(c)に示すように、支持体30の前方(図示した座標系においてx軸負方向)に屈曲させられたあと、第2保持部35に嵌め込まれる。支持体30の左側面は、第1支持面31、第2支持面32、及び第3支持面33と交わるように構成されている。第2保持部35は、第1支持面31及び第3支持面33に沿うと共に第2支持面32に交わる方向に同軸ケーブル20の一部分が延在するように、同軸ケーブル20を保持する。
第2保持部35に嵌め込まれたあとの同軸ケーブル20は、図5の(b)に示すように、支持体30の上方(図示した座標系においてz軸正方向)に屈曲されるとともに、右方(図示した座標系においてy軸正方向)に屈曲させられ、その後、第1保持部34に嵌め込まれる。第1保持部34は、第1支持面31及び第2支持面32に沿う方向に同軸ケーブル20の一部分が延在するように、同軸ケーブル20を保持する。
第1保持部34に嵌め込まれたあとの同軸ケーブル20は、図5の(a)に示すように、支持体30の前方(図示した座標系においてx軸負方向)に屈曲させられている。
以上のように形成された同軸ケーブル20の配線経路において、第1保持部34は、フィルムアンテナ10の領域10aとフィルムアンテナ10の領域10cとに挟まれた空間領域の外部に設けられていることが好ましい。すなわち、支持体30を平面視した場合、図5の(a)に示すように、第1保持部34は、第1支持面31の外部に設けられていることが好ましい。また、同軸ケーブル20の配線経路において、第2保持部35は、第1支持面31の外部に設けられていることが好ましい。これらの構成によれば、支持体30に対してフィルムアンテナ10を巻き付けたあとであっても、同軸ケーブル20を第1保持部34及び第2保持部35の各々に対して、容易に嵌め込むことができる。したがって、アンテナ装置1の製造に要する手間を削減できるため、アンテナ装置1の製造コストを削減することができる。
同軸ケーブル20の配線経路において特徴的な点の1つは、図5の(b)に示すように、第1保持部34が、同軸ケーブル20において第1支持面31及び第2支持面32に沿う方向に延在する部分を、当該部分から第1支持面31までの距離D1が当該部分から第3支持面33までの距離D2と等しくなるように保持する点である。この構成によれば、同軸ケーブル20の一部が第3支持面33を横断する配線経路を採用した場合であっても、良好な放射特性を得ることができる。この場合の放射特性に関しては、第1実施例において後述する。
なお、第1保持部34は、同軸ケーブル20において第1支持面31及び第2支持面32に沿う方向に延在する部分を、距離D1が距離D2以上になるように保持するように構成されていてもよい。この構成であっても、同軸ケーブル20の一部が第3支持面33を横断する配線経路を採用した場合における、放射特性の悪化を抑制することができる。この場合の放射特性に関しては、第2実施例において後述する。
また、図2の(a)に示すように、第1保持部34の凹部34bは、支持体30の上方(図示した座標系におけるz軸正方向)に開口しており、第2保持部35の凹部35bは、支持体30の下方(図示した座標系におけるz軸負方向)に開口していることが好ましい。また第3保持部36の凹部36bも、支持体30の下方(図示した座標系におけるz軸負方向)に開口していることが好ましい。すなわち、第2及び第3保持部35,36は、第3支持面33に形成された第1及び第2の凹部37,38の開口方向と同じ方向が開口するように各凹部35b,36bが形成され、第1保持部34は、それとは反対側の方向が開口するように凹部34bが形成されていることが好ましい。
この構成によれば、上下一対の金型を用いて第1から第3保持部34,35,36を有する支持体30を容易に成形することができ、アンテナ装置1の製造コストを削減することができる。また、同軸ケーブル20を保持するための各保持部が、支持体30の上方側と下方側にそれぞれ形成されるため、同軸ケーブル20の引っ張りに対する耐久性(同軸ケーブル20と給電部14との接続部分の耐久性)を高めることができる。
また、図5の(b),(c)に示すように、第2保持部35は、第1保持部34よりも支持体30の下方(図示した座標系におけるz軸負方向側)に設けられており、第1保持部34及び第2保持部35により保持された同軸ケーブル20は、第1保持部34と第2保持部35との間で第1及び第3支持面31,33と交わる方向(Z軸方向)に延びるように構成されていることが好ましい。また、図5の(b)に示すように、第3保持部36は、第1保持部34よりも支持体30の下方(図示した座標系におけるz軸負方向側)に設けられており、第1保持部34及び第3保持部36により保持された同軸ケーブル20は、第1保持部34と第3保持部36との間で第1及び第3支持面31,33と交わる方向(Z軸方向)に延びるように構成されていることが好ましい。
すなわち、第1及び第2の凹部37,38に収容された樹脂モールド部21からy軸負方向に延びる同軸ケーブル20は、屈曲してx軸負方向の延びるように第2保持部35で保持される(図5の(d)を参照)。そして、第2保持部35に保持された同軸ケーブル20は、屈曲してz軸正方向に延びて第1保持部34に向かうとともに、屈曲してy軸正方向に延びるように第1保持部34で保持される(図5の(a)〜(c)を参照)。そして、第1保持部34で保持された同軸ケーブル20は、屈曲してz軸負方向に延びて第3保持部36に向かうとともに、屈曲してx軸負方向に延びるように第3保持部36で保持される(図5の(b)(d)を参照)。
この構成によれば、同軸ケーブル20に対してアンテナ装置1から引っ張る方向の力が働いた場合に、同軸ケーブル20の屈曲した部分には、屈曲が伸びる方向の力が働く。その結果、(1)第1保持部34に保持(挟持)されている同軸ケーブル20の一部は、第1保持部34の凹部34bに、より強く押しつけられ、(2)第2保持部35に保持されている同軸ケーブル20の一部は、第2保持部35の凹部35bに、より強く押しつけられる。したがって、同軸ケーブル20に対してアンテナ装置1から引っ張る方向の力が働いた場合であっても、同軸ケーブル20が第1保持部34及び第2保持部35の各々から脱離することを防止することができる。そして、これら保持部材で同軸ケーブル20を保持することによって、同軸ケーブル20に対してアンテナ装置1から引っ張る方向の力が働いた場合であっても、給電部14と同軸ケーブル20との接続部分に引張力の影響が及ぶのを防止できる。
また、第2保持部35において、同軸ケーブル20の屈曲した部分が接触する表面は、滑らかな曲面により構成されていることが好ましい。本実施形態では、図5の(b)に示すように、第2保持部35の支持体30の前方側(図示した座標系におけるx軸負方向側)の端部に面取り加工を施すことによって、同軸ケーブル20の屈曲した部分が接触する表面を曲面としている。この構成によれば、同軸ケーブル20に対してアンテナ装置1から引っ張る方向の力が働いた場合に、第2保持部35の支持体30の前方側の端部が、同軸ケーブル20を傷つけ、やがて断線させることを防止することができる。
〔アンテナ装置の製造方法〕
アンテナ装置1の製造方法は、フィルムアンテナ10の給電部14に同軸ケーブル20を接続する工程と、給電部14及びこの給電部14に接続された同軸ケーブル20の端部を覆う樹脂モールド部21を形成する樹脂モールド部形成工程とを含む。
また、第1支持面31と、第1支持面31に交わる第2支持面32と、第1支持面31と対向し、第2支持面32に交わる第3支持面33とを有する支持体30であって、同軸ケーブル20を保持するための第1及び第2保持部34,35(保持手段)を有するとともに、樹脂モールド部21を収容するための第1及び第2の凹部37,38(凹状収容部)が第3支持面33に設けられた支持体30を用意する工程を含む。
そして、第1及び第2の凹部37,38に樹脂モールド部21が収容されるように、フィルムアンテナ10を支持体30に取り付けるとともに、第1支持面31、第2支持面32及び第3支持面33に接触するように、フィルムアンテナ10を支持体30に巻き付ける巻き付け工程と、第1及び第2保持部34,35に同軸ケーブル20を保持させ、第1支持面31及び第2支持面32に沿う方向に同軸ケーブル20の一部分が延在するように配線する配線工程とを含む。
本実施形態の樹脂モールド部形成工程では、樹脂モールド部21は、樹脂成型用の金型を用いて射出成形法により形成される。
具体的には、給電部14に同軸ケーブル20の端部を接続したフィルムアンテナ10を金型にセットし、金型のキャビティ内に、給電部14を含む給電部近傍領域を収容する。その後、このキャビティ内に高温の溶融樹脂材を充填し、この溶融樹脂材をキャビティ内で冷却し硬化させる。そして、この金型からフィルムアンテナ10を取り出すことにより、給電部14及びこの給電部14に接続された同軸ケーブル20の端部が樹脂モールド部21で覆われたフィルムアンテナ10を取得することができる。
樹脂モールド部21を構成する樹脂材としては、湿気硬化型ウレタン系ホットメルト(例えば、Henkel社のTECHNOMELT PUR 9515)を使用することができるが、これに限定されるものではなく、熱硬化型樹脂や、紫外線硬化型樹脂などを使用することもできる。
また本実施形態では、フィルムアンテナ10の給電部14と同軸ケーブル20の接続部分を樹脂モールド部21で覆ってから、フィルムアンテナ10を支持体30に巻き付けてアンテナ装置1を製造したが、これに限定されるものではない。例えば、フィルムアンテナ10を支持体30に巻き付けるとともに、支持体30の第3支持面33に形成された凹状収容部(第1及び第2の凹部37,38)に、給電部14と同軸ケーブル20との接続部分が収容した後、この凹状収容部に液状樹脂材を充填し、樹脂モールド部を形成することもできる。
〔車体への搭載例〕
上述したアンテナ装置1は、様々な構造物に対して装着可能であるが、例えば自動車の車体に搭載することができる。アンテナ装置1の車体への搭載例について、図6を参照して説明する。図6の(a)は、アンテナ装置1を内蔵するスポイラー52を搭載した車体50の斜視図である。図6の(b)は、スポイラー52の斜視図である。
図6の(a)に示すように、車体50のルーフ51の後端には、スポイラー52が搭載されている。スポイラー52は、一体成形された樹脂部材である。スポイラー52には、ルーフ51の後端に対するスポイラー52の位置を所定の位置に定めるための構造(不図示)や、ルーフ51の所定の位置にスポイラー52を固定するための構造(不図示)を有する。これらの構造を用いて、スポイラー52は、ルーフ51の所定の位置に固定される。
スポイラー52は、車体50の後部における気流の乱れを抑制する(気流を整流する)、車体50の美観を向上させるなどの機能を有する。気流を整流するために、スポイラー52は、後端に近づくにしたがって、天地方向のサイズが徐々に小さくなるように構成されている。そして、スポイラー52の後部には、内側に空隙が形成されるように(中空構造となるように)構成されている(図6の(b)参照)。
本搭載例では、上記空隙にアンテナ装置1を載置することによって、アンテナ装置1を内蔵するスポイラー52を実現している。アンテナ装置1は、支持体30第3支持面33が、車体50に搭載されたスポイラー52の頂面側に向くよう、図1に示すアンテナ装置1の配置状態と上下を逆転させてスポイラー52に載置されている。
≪第2の実施形態≫
続いて、第2の実施形態に係るアンテナ装置1αについて説明する。
上述したように、第1の実施形態に記載のアンテナ装置1は、例えば自動車の車体に搭載することができるが、その搭載の態様によっては、フィルムアンテナ10の端部が風を受けることによって振動し、例えば風切り音のようなノイズを発することが考えられる。また、フィルムアンテナ10の端部が風を受け続けた場合、その端部が変形することも考えられる。
そこで、第2の実施形態に係るアンテナ装置1αは、このようなノイズの発生や変形が生じることを防止することを更なる目的としたアンテナ装置である。
第2の実施形態に係るアンテナ装置1αについて、図7〜図9を参照して以下に説明する。なお、第1の実施形態のアンテナ装置1と同様の部材に関しては、同じ符号を付し、その説明を省略する。図7の(a)は、アンテナ装置1αの斜視図である。図7の(b)は、アンテナ装置1αの分解斜視図である。なお、図7の(a),(b)の各図においては、同軸ケーブル20の樹脂モールド部21α以外の部分(ケーブル部分)の図示を省略している。図8は、アンテナ装置1αが備えるフィルムアンテナ10αの平面図である。図9の(a)は、アンテナ装置1αが備える支持体30αの拡大平面図である。図9の(b)は、支持体30αの拡大斜視図である。
アンテナ装置1αは、フィルムアンテナ10αと、同軸ケーブル20と、支持体30αとを備えている。フィルムアンテナ10αは、第1の実施形態のアンテナ装置1が備えているフィルムアンテナ10に対応する部材である。支持体30αは、第1の実施形態のアンテナ装置1が備えている支持体30に対応する部材である。樹脂モールド部21αは、第1の実施形態のアンテナ装置1が備えている樹脂モールド部21に対応する部材である。
支持体30αは、図7の(b)に示すように、スロット31cが形成されている点が、第1の実施形態のアンテナ装置1における支持体30と異なる。スロット31cは、支持体30αの第1支持面31から第3支持面33(図7に図示せず)に向かう方向(図示した座標系においてz軸負方向)に凹んだ穴部である。第1支持面31に形成されたスロット31cの開口31apの形状は、長辺が図示した座標系のy軸方向に沿い、短辺が図示した座標系のx軸方向に沿う長方形である。長方形の開口31apをz軸負方向に凹ませた形状であるスロット31cは、その内側に形成される空間が直方体であり、4つの側壁、すなわち、開口31apの長辺を含む一対の側壁(互いに対向する一対の側壁)と、開口31apの短辺を含む一対の側壁(互いに対向する一対の側壁)とにより構成されている。
図8に示すように、フィルムアンテナ10αは、第1の実施形態のアンテナ装置1におけるフィルムアンテナ10が備えている誘電体フィルム11を誘電体フィルム11αに置換することによって得られる。誘電体フィルム11αは、第1の実施形態における誘電体フィルム11を給電部14から遠ざかる方向に延伸することによって得られる。したがって、誘電体フィルム11αを含むフィルムアンテナ10αは、領域10a〜10dに加えて、第1アンテナ導体12側の端辺から直線DD’までの領域10e(第4領域:第1アンテナ導体12側の端部)を更に備えている。領域10eには、長方形の開口11aが形成されている。
図7の(b)に示すように、フィルムアンテナ10αは、直線AA’及び直線BB’を稜線としてU字型に折り曲げることによって、支持体30αに巻き付けられている。更に、フィルムアンテナ10αは、直線DD’を稜線として折り曲げることによって、領域10eが支持体30αのスロット31cに挿入することができる。
スロット31cの側壁(開口31apの長辺を含む側壁)には、領域10eがスロット31cから脱離することを防止するための固定手段が、図示した座標系におけるy軸正方向側及びy軸負方向側にそれぞれ1つづつ、計2つ設けられている。図9は、この2つの固定手段のうちy軸負方向側の固定手段を拡大して図示している。y軸負方向側の固定手段は、一対のリブであるリブ31d,31eと、くさび型突起13fとにより構成されている。y軸正方向側の固定手段もy軸負方向側の固定手段と同様に構成されている。
図9の(a)に示すように、リブ31d,31eの各々は、開口31apの長辺を含む一対の側壁のうち、一方の側壁(図示した座標系においてx軸正方向側の側壁)から他方の側壁(図示した座標系においてx軸負方向側の側壁)に向かって突出した突起である。リブ31d,31eの各々は、第1支持面31から第3支持面33に向かう方向(図示した座標系におけるz軸負方向)に直線状に延伸されている。すなわち、リブ31d,31eの各々が延伸されている方向は、互いに平行である。本実施形態において、リブ31d,31eの各々の突出量(x軸正方向側の側壁から測った場合の高さ)は、開口31apの短辺の長さの1/2である。
くさび型突起13fは、開口31apの長辺を含む一対の側壁のうち、x軸負方向側の側壁からx軸正方向側の側壁に向かって突出した突起である。くさび型突起13fは、開口31apを平面視した場合に、図示した座標系におけるy軸方向に関して、リブ31dとリブ31eとの中間に位置する。また、くさび型突起13fは、スロット31cの深さ方向(図示した座標系においてz軸方向)に関して、第1支持面31と第3支持面33との中間に位置する。
くさび型突起13fの形状は、図示した座標系のy軸負方向側から見た場合、台形である(図9の(b)参照)。台形を構成する2つの脚のうち、一方の脚に対応するスロープ部31f1とx軸負方向側の側壁とのなす角は鋭角であり、他方の脚に対応するストッパー部31f2とx軸負方向側の側壁とのなす角は直角である。換言すれば、くさび型突起13fの突出量(x軸負方向側の側壁から測った場合の高さ)は、第1支持面31から第3支持面33に近づくにしたがって徐々に大きくなり、所定の大きさ(台形の高さ)に達したあとはその所定の大きさを保ち、その後急峻にゼロになる。本実施形態において、くさび型突起13fの突出量の最大値、すなわち台形の高さは、開口31apの短辺の長さの1/2又は1/2をわずかに上回ることが好ましい。
くさび型突起13fの第1支持面31側にはスロープ部31f1が形成されているため、スロット31cに対して領域10eをスムースに挿入することができる。領域10eをスロット31cに挿入していき、開口11a(図8参照)がくさび型突起13fに対応する位置に達すると、リブ31d,31eによって、領域10eがスロット31cのx軸正方向側の側壁からx軸負方向側の側壁の方向に押しやられ、開口11aがくさび型突起13fに引っかかる。くさび型突起13fの第3支持面33側には切り立ったストッパー部31f2が形成されているため、領域10eに対して、スロット31cから抜く方向の力を作用させたとしても意図せずに開口11aがくさび型突起13fから外れることはない。すなわち、領域10eがスロット31cから意図せずに抜けることはない。
以上のように構成されたアンテナ装置1αによれば、フィルムアンテナ10αの端部である領域10eがスロット31cの内部に収納され、且つ、抜けることがないため、アンテナ装置1αが風を受けるような位置に搭載されている場合であっても、フィルムアンテナ10αは支持体30αによく密着している。したがって、風を受けてもフィルムアンテナ10αが振動しないため、例えば風切り音のようなノイズの発生を防止することができる。また、フィルムアンテナ10αの端部が変形することを防止することができる。
アンテナ装置1αの製造方法は、アンテナ装置1の製造方法と同様であるが、巻き付け工程の一部に、領域10eをスロット31cに挿入する工程をさらに含む。
≪好ましい同軸ケーブルの配線経路≫
アンテナ装置の放射特性は、そのアンテナ装置の近傍の環境に影響されやすいことが知られている。本願発明の発明者らは、同軸ケーブル20が第2支持面32に沿う方向に第3支持面33を横断するように構成された第1の実施形態に係るアンテナ装置1において、アンテナ装置1の放射特性が、給電部14から延びる同軸ケーブル20の配線経路に依存して変化することを見いだした。具体的には、第1保持部材34で保持された同軸ケーブル20と、第1及び第2アンテナ導体12,13との距離(距離D1と距離D2)の大小関係に依存して、アンテナ装置1の放射特性が変化することを見いだした。
以下では、第1の実施形態に係るアンテナ装置1の第1保持部材34の凹部34bの深さを変えることにより、同軸ケーブル20と第1及び第2アンテナ導体12,13との距離(距離D1と距離D2)の大小関係を変化させ、放射特性を測定した結果を説明する。
第1保持部材34で同軸ケーブル20を保持し、D2=D1である構成を採用したアンテナ装置1(第1実施例)、D2≧D1である構成を採用したアンテナ装置1(第2実施例)、及びD2<D1である構成を採用したアンテナ装置(実施例3)を用いて、各アンテナの放射特性を測定した結果を説明する。
また、各実施例におけるアンテナの放射特性を考察するための参照対象として、給電部から引き出された同軸ケーブルがフィルムアンテナを横断しない構成を採用するアンテナ装置を参考例として用いる。参考例のアンテナ装置では、給電部から引き出された同軸ケーブルは、第2保持部35及び第1保持部34に嵌め込まれることなく、そのままアンテナ装置から遠ざけられるように配置されている。すなわち、本参考例のアンテナ装置では、同軸ケーブルの引っ張りに対する強度がない構造となっている。
なお、参考例のアンテナ装置が備えているフィルムアンテナは、第1の実施形態のアンテナ装置1が備えているフィムルアンテナ10と同一であり、フィルムアンテナ10の支持体30への巻き付け方も同一である。すなわち、同軸ケーブル20が支持体30の第1保持部24に保持されてない点のみが相違する。
まず、参考例に係るアンテナ装置について、図10を参照して説明する。図10は、参考例に係るアンテナ装置のVSWR(Voltage Standing Wave Ratio)及び平均利得の周波数依存性を示すグラフである。この平均利得は、アンテナ装置によって得られたxy平面における放射利得を全360°に渡って平均することによって算出される。
図10に図示されたVSWRのプロットを参照すると、参考例のアンテナ装置は、800MHz帯において2を下回り、700MHz以下の周波数帯域において急激に大きくなるVSWRを示していることが分かる。また、図10に図示された水平面内における全偏波の平均利得のプロットを参照すると、参考例のアンテナ装置は、800MHz帯において−1dBiを上回る良好な平均利得を示していることが分かる。
〔第1実施例〕
次に、アンテナ装置1の第1実施例について、図11を参照して説明する。図11は、第1実施例のアンテナ装置1のVSWR及び平均利得の周波数依存性を示すグラフである。
第1実施例のアンテナ装置1は、アンテナ装置1において、支持体30の高さ(図1に図示した座標系においてz軸方向の長さ)が17.0mmであり、同軸ケーブル20の半径が1.4mmであり、距離D1と距離D2とが何れも8.5mmである構成を採用することによって得られる。すなわち、本実施例のアンテナ装置1は、D2=D1である構成を採用している。なお、本実施例のアンテナ装置1が備えているフィルムアンテナ10は、800MHz帯で好ましい放射特性を得られるように設計されている。
図11に図示されたVSWRのプロットを参照すると、第1実施例のアンテナ装置1は、800MHz帯において2を下回り、700MHz以下の周波数帯域において急激に大きくなるVSWRを示していることが分かる。また、図10に図示された水平面内における全偏波の平均利得のプロットを参照すると、第1実施例のアンテナ装置1は、800MHz帯において−1dBiを上回る良好な平均利得を示していることが分かる。
以上のように、第1実施例のアンテナ装置1によれば、同軸ケーブル20がフィルムアンテナ10を横断する構成を採用しているにも関わらず、同軸ケーブルがフィルムアンテナを横断しないままアンテナ装置から遠ざけられる構成を採用している参考例のアンテナ装置に遜色ない放射特性を示すことが分かった。
〔第2実施例〕
次に、アンテナ装置1の第2実施例について、図12を参照して説明する。図12は、第2実施例のアンテナ装置1のVSWR及び平均利得の周波数依存性を示すグラフである。
第2実施例のアンテナ装置1は、アンテナ装置1において、距離D1として15.6mmを採用し、距離D2として1.4mmを採用することによって得られる。すなわち、第2実施例のアンテナ装置1は、距離D1が距離D2以上となる構成を採用している。第2実施例のアンテナ装置1と第1実施例のアンテナ装置1とは、距離D1及び距離D2の数値以外は、同一である。
図12に図示されたVSWRのプロットを参照すると、第2実施例のアンテナ装置1は、800MHz帯において2程度であり、700MHz以下の周波数帯域において急激に大きくなるVSWRを示していることが分かる。また、図12に図示された水平面内における全偏波の平均利得のプロットを参照すると、第2実施例のアンテナ装置1は、800MHz帯において−1dBiを上回る良好な平均利得を示していることが分かる。
以上のように、第2実施例のアンテナ装置1によれば、同軸ケーブル20がフィルムアンテナ10を横断する構成を採用しているにも関わらず、同軸ケーブルがフィルムアンテナを横断しない構成を採用している参考例のアンテナ装置に遜色ない放射特性を示すことが分かった。
〔第3実施例〕
次に、アンテナ装置1の第3実施例について、図13を参照して説明する。図13は、第3実施例のアンテナ装置1のVSWR及び平均利得の周波数依存性を示すグラフである。
第3実施例のアンテナ装置1は、アンテナ装置1において、距離D1として1.4mmを採用し、距離D2として15.6mmを採用することによって得られる。すなわち、第3実施例のアンテナ装置1は、距離D1が距離D2より小さい構成を採用している。第3実施例のアンテナ装置1と第1及び第2実施例のアンテナ装置1とは、距離D1及び距離D2の数値以外は、同一である。
図13に図示されたVSWRのプロットを参照すると、第3実施例のアンテナ装置1は、800MHz帯において2程度であるものの、700MHz以下の周波数帯域において大きくならないVSWRを示していることが分かる。また、図13に図示された水平面内における全偏波の平均利得は、800MHz帯において−1dBiを大きく下回っている。
以上のように、第3実施例のアンテナ装置1によれば、同軸ケーブルがフィルムアンテナを横断する構成であって、距離D2が距離D1より小さい構成を採用した場合、VSWRが参考例のアンテナ装置と比較して異なる形状になり、平均利得が大きく低下することが分かった。
第1から第3実施例の結果から、同軸ケーブル20が第1保持部34に保持される構成を採用する(同軸ケーブル20がフィルムアンテナ10を横断する)場合、距離D2が距離D1以上となる構成を採用することが好ましいことが分かった。なお、第1保持部材34に保持された同軸ケーブル20がフィルムアンテナ10を横断せずに、途中から前方に引き出される形態(後述する第3の実施形態を参照)についても、同様の結果が成り立つ。
≪第1及び第2の実施形態に係るアンテナ装置のスポイラーへの収納方法≫
第1及び第2の実施形態に係るアンテナ装置1,1αは、自動車のスポイラー52、特に、器部と蓋部とに分割された筐体を有するスポイラー52への収納に適している。以下、このようなスポイラー52に第1の実施形態に係るアンテナ装置1を収納する収納方法について、図14を参照して説明する。図14は、アンテナ装置1をスポイラー52に収納する収納方法を示す図である。なお、図14においては、収納方法を分かり易く図示するために、アンテナ装置1及びスポイラー52の形状を適宜模式化している。
スポイラー52は、図14の(a)に示すように、器部52aと蓋部52bとに分割された筐体を有している。器部52aには、互いに連通した第1収納室52a1と第2収納室52a2とが設けられている。第1収納室52a1は、主にアンテナ装置1の支持体30を収納するための空間であり、第2収納室52a2と比べて深さが深い。第1収容室52a1には、互いに対向する1対の支持板52a3,52a4が設けられている。一方、第2収納室52a2は、主にアンテナ装置1のフィルムアンテナ10を収納するための空間であり、第1収納室52a1と比べて深さが浅い。第1収納室52a1及び第2収納室52a2は、上方が開放されており、アンテナ装置1は、第1収納室52a1及び第2収納室52a2に上方から収納される。
アンテナ装置1の支持体30は、図14の(b)に示すように、第1収納室52a1において支持板52a3,52a4に挟持される。この際、支持体30の左右の側面を構成する側壁に形成された弾性突起39a1,39a2が1対の支持板52a3,52a4に形成された開口に嵌合する。これにより、第1収容室52a1における支持体30の位置が固定され、支持体30が支持板52a3,52a4から脱落し難くなる。支持体30から伸びるフィルムアンテナ10は、図14の(b)に示すように、第1収容室52a1と連通した第2収納室52a2に収納される。また、支持体30から引き出された同軸ケーブル20は、図14(b)に示すように、第1収納室52a1の前側壁に形成された貫通孔(不図示)を通って、第1収納室52a1の外部に引き出される。第1収納室52a1及び第2収納室52a2は、図14の(b)に示すように、アンテナ装置1が収納された後、図14の(c)に示すように、蓋部52bによって閉塞される。
なお、第2の実施形態に係るアンテナ装置1αも、第1の実施形態に係るアンテナ装置1をスポイラー52に収納する方法と同じ方法を用いてスポイラー52に収納することが可能である。
≪第3の実施形態≫
本発明の第3の実施形態に係るアンテナ装置1βの構成について、図15を参照して説明する。図15の(a)は、アンテナ装置1βの斜視図であり、図15の(b)は、アンテナ装置1βの平面図である。アンテナ装置1βは、第1の実施形態に係るアンテナ装置1と同様、フィルムアンテナ10と、同軸ケーブル20と、支持体30とを備えている。
アンテナ装置1βは、第1の実施形態に係るアンテナ1を、以下の点で変更したものである。
第1の変更点:第1の実施形態に係るアンテナ装置1においては、同軸ケーブル20が支持体30内でフィルムアンテナ10を幅方向に横断し、支持体30の側方から引き出されているのに対して、本実施形態に係るアンテナ装置1βにおいては、同軸ケーブル20が支持体30内でフィルムアンテナ10を幅方向に横断することなく、支持体30の前方から引き出されている。このため、本実施形態に係るアンテナ装置1βにおいては、支持体30の前方から同軸ケーブル20を引き出すための通路として、支持体30の前側面を構成する側壁30aの上端中央に凹部30a1が形成されると共に、支持体30の側方から引き出された同軸ケーブル20を保持するための第3保持部36が省略されている。なお、側壁30aの上端中央に凹部30a1を形成し、これを同軸ケーブル20の通路として利用する代わりに、側壁30aの中央に貫通孔を形成し、これを同軸ケーブル20の通路として利用してもよい。
第2の変更点:第1の実施形態に係るアンテナ装置1においては、アンテナ装置1をスポイラー52に固定するための一対の弾性突起39a1,39a2が、支持体30の左右の側面に形成されているのに対して、本実施形態に係るアンテナ装置1βにおいては、アンテナ装置1をスポイラー52に固定するために突起39b1,39b2が、第2保持部35の左側面及び支持体30の右側面の前端から前方に延伸する一対の弾性板39の先端近傍に形成されている。
第3の変更点:第1の実施形態に係るアンテナ装置1においては、支持体30の下面を構成する支持体30の底板が支持体30の前側面で終端しているのに対して、本実施形態に係るアンテナ装置1βにおいては、第3支持面33を構成する支持体30の底板が、フィルムアンテナ10を支持するための支持板33eとして、支持体30の前側面よりも前方にまで延伸されている。支持板33eの左右の辺には、段差33e1,33e2が形成されており、段差33e1,33e2の前方における支持板33eの幅が段差33e1,33e2の後方における支持板33eの幅よりも広くなっている。
第1の実施形態に係るアンテナ装置1が、器部と蓋部とに分割された筐体を有するスポイラー52に収納することを意図して設計されているのに対して、本実施形態に係るアンテナ装置1βは、挿入口が形成された筐体を有するスポイラー52に収納することを意図して設計されている。上記の変更点は、何れもスポイラー52への収納方法の違いに応じたものである。なお、本実施形態に係るアンテナ装置1βを挿入口が形成された筐体を有するスポイラー52に搭載する方法については、参照する図面を代えて後述する。
≪第3の実施形態に係るアンテナ装置のスポイラーへの収納方法≫
第3の実施形態に係るアンテナ装置1βは、自動車のスポイラー52、特に、挿入口が形成された筐体を有するスポイラー52への収納に適している。以下、このようなスポイラー52に第3の実施形態に係るアンテナ装置1βを収納する収納方法について、図16を参照して説明する。図16は、アンテナ装置1βをスポイラー52に収納する収納方法を示す図である。なお、図16においては、収納方法を分かり易く図示するために、アンテナ装置1β及びスポイラー52の形状を適宜模式化している。
スポイラー52は、図16の(a)に示すように、筐体上面を構成する天板52dが筐体前面を構成する側壁よりも前方に迫り出した形状を有している。筐体内には、アンテナ装置1βの支持体30を収納するための収納室が形成されており、筐体前面を構成する側壁には、筐体内にアンテナ装置1βの支持体30を挿入するための挿入口52cが形成されている。また、天板52dの下面には、アンテナ装置1βの支持板33eを保持するためのL型突起52d1,52d2が形成されている。
スポイラー52へのアンテナ装置1βの収納は、以下のように行われる。
まず、図16の(b)に示すように、アンテナ装置1βの支持板33eをスポイラー52の天板52dに接触させる。この際、支持板33eのうち、段差33e1,33e2よりも後方の幅の狭い部分をL型突起52d1,52d2の間に通すことで、支持板33eをL型突起52d1,52d2と干渉させることなく、支持板33eを天板52dに接触させることができる。
次に、図16の(c)に示すように、支持板33eをスポイラー52の天板52dに接触させたまま、アンテナ装置1βを後方に移動し、支持体30をスポイラー52の挿入口52cから筐体内に挿入する。そうすると、アンテナ装置1βの支持体30がスポイラー52の筐体内に収納され、アンテナ装置1βの支持板33eのうち、段差33e1,33e2よりも前方の幅の広い部分がL型突起52d1,52d2によって保持される。一対の弾性板39を内側に撓ませ、突起部39b1,39b2まで含めて支持体30がスポイラー52の筐体内に収納されると、一対の弾性板39の弾性変形がもとの状態に戻り、突起部39b1,39b2がスポイラー52の筐体前面を構成する側壁に掛かり、アンテナ装置1βがスポイラー52から意図せず抜けてしまうことを防ぐ。なお、スポイラー52からアンテナ装置1βを取り出す場合には、弾性板39の突起部39b1,39b2よりも前方の部分39c1,39c2を内側に押して弾性板39を内側に撓ませ、突起部39b1,39b2がスポイラー52の筐体前面を構成する側壁に掛からないようにしてから、スポイラー52からアンテナ装置1βを引き抜けばよい。
≪付記事項≫
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。