図1は、本実施形態に係る画像形成システムの構成を模式的に示す正面図である。画像形成システムは、搬送経路を搬送される用紙Pに、画像形成を含む所定の処理を行うシステムであり、複数の装置が直列的に並んで構成されている。本実施形態の画像形成システムは、画像形成装置100と、大容量給紙装置200とで構成されている。これらの装置は、用紙搬送方向の上流側から下流側にかけて、大容量給紙装置200、画像形成装置100の順番で配列されている。
画像形成装置100は、大容量給紙装置200から供給された用紙P、又は、自己が保有する用紙Pに画像を形成する装置である。画像形成装置100は、例えば電子写真方式の画像形成装置であり、複数の感光体を一本の中間転写ベルトに対面させて縦方向に配列することによりフルカラーの画像を形成する、いわゆる、タンデム型カラー画像形成装置である。画像形成装置100は、原稿読取装置SCと、4組の画像形成部10Y,10M,10C,10Kと、定着装置40とを主体に構成されており、これらの要素が一つの筐体内に収容されている。
原稿読取装置SCは、走査露光装置の光学系により原稿の画像を走査露光し、その反射光をラインイメージセンサーにより読み取り、これにより、画像信号を得る。この画像信号は、A/D変換、シェーディング補正、圧縮等の処理が施された後、画像データとして制御部50に入力される。なお、制御部50に入力される画像データとしては、原稿読取装置SCで読み取ったものに限らず、例えば、画像形成装置100に接続されたパーソナルコンピューターや他の画像形成装置から受信したものや、半導体メモリといった可搬性の記録媒体から読み込んだものであってもよい。
4組の画像形成部10Y,10M,10C,10Kは、イエロー(Y)の画像を形成する画像形成部10Y、マゼンダ(M)の画像を形成する画像形成部10M、シアン(C)の画像を形成する画像形成部10C及びブラック(K)の画像を形成する画像形成部10Kで構成されている。
画像形成部10Yは、感光体ドラム11Y並びにその周辺に配置された帯電部、光書込部、現像装置及びドラムクリーナーで構成されている。感光体ドラム11Yは、帯電部によりその表面が一様に帯電させられており、光書込部による走査露光により、感光体ドラム11Yには潜像が形成される。さらに、現像装置は、トナーで現像することによって感光体ドラム11Y上の潜像を顕像化する。これにより、感光体ドラム11Y上には、イエローに対応する画像(トナー画像)が形成される。感光体ドラム11Y上に形成された画像は、1次転写ローラーにより、無端ベルトである中間転写ベルト15上の所定位置へと逐次転写される。
画像形成部10M,10C,10Kは、感光体ドラム11M,11C,11K、並びにその周辺に配置された帯電部、光書込部、現像装置及びドラムクリーナーで構成されており、これらの要素の詳細は、画像形成部10Yのそれと同様である。
中間転写ベルト15上に転写された各色よりなる画像は、2次転写ローラー16により、後述する用紙搬送部20により所定のタイミングで搬送される用紙Pに対して転写される。この2次転写ローラー16は中間転写ベルト15と圧接して配置されており、2次転写ローラー16と中間転写ベルト15との間に転写ニップが形成される。
用紙搬送部20は、給紙ユニット21から給紙された用紙P、又は、大容量給紙装置200から供給された用紙Pを一連の搬送経路に従って搬送する。
定着装置40は、画像が転写された用紙P、すなわち、転写ニップから送り出された用紙Pに定着処理を施す装置である。定着装置40は、例えば、互いに圧接されて定着ニップを形成する一対の定着ローラーと、当該定着部材の一方を加熱するヒーターとで構成されている。この定着装置40は、用紙Pが定着ニップを通過することで、一対の定着ローラーによる加圧と当該定着ローラーの有する熱との作用を通じて、転写された画像を用紙Pに定着させる。定着装置40により定着処理が施された用紙Pは、排紙ローラー23により機外へと排出される。
用紙Pの裏面にも画像形成を行う場合、用紙表面に対する画像形成を終えた用紙Pは、切換ゲート24により、再給紙搬送経路に搬送される。再給紙搬送経路では、搬送された用紙Pの後端が反転ローラーにより挟持された後、逆送することによって用紙Pの表裏が反転させられる。表裏が反転された用紙Pは、複数の搬送ローラーによって搬送され、他方の面に対する画像形成に供するために、2次転写ローラー16よりも上流側の搬送経路に合流させられる。
制御部50は、画像形成装置100の動作を制御する。制御部50としては、CPU、ROM、RAM、I/Oインターフェースを主体に構成されたマイクロコンピュータを用いることができる。CPUは、各種プログラムを実行することにより、画像形成装置100の動作を制御する(プロセッサー)。ROMは、CPUが実行する各種プログラムを、当該CPUが読み取り可能なプログラムコードの形態で格納する。また、ROMは、プログラムの実行に必要となるデータを記憶する。RAMは、作業用の記憶領域となるメモリである。ROMに格納されたプログラム及びデータは、CPUにより読み出されると、RAM上に展開される。そして、CPUは、RAM上に展開したプログラム及びデータに基づいて、各種の処理を行う。
操作パネル60は、ディスプレイ上に表示される情報に従い、所望の情報を入力することが可能な入力部である。操作パネル60としては、タッチパネル方式等を採用することができる。ユーザーは、操作パネル60に対する操作を通じて、ジョブの設定条件(用紙Pに関する情報(坪量など)、画像の濃度や倍率、給紙元となる給紙ユニットなどの情報)を設定することができる。設定された情報は、制御部50によって取得される。また、操作パネル60は、制御部50に制御されることにより、ユーザーに種々の情報を表示する表示部としても機能する。
大容量給紙装置200は、画像形成装置100に用紙Pを給紙するための給紙装置であり、画像形成装置100の上流側に配置されている。大容量給紙装置200は、1つ以上の給紙ユニット210、例えば上段、中段及び下段に配置された3つの給紙ユニット210と、制御部250とを備えており、これらの要素が一つの筐体内に収容されている。
図2は、給紙ユニット210の構成を模式的に示す正面図である。給紙ユニット210は、1枚以上の用紙Pを収容し、当該収容した用紙Pを1枚ずつ供給する。給紙ユニット210は、用紙載置台211、先端規制部材212、後端規制部材213、吸引搬送部220、先端送風部230及び側端送風部240を主体に構成されている。
給紙ユニット210において、積層された複数枚の用紙P(用紙束)は、用紙載置台211に載置される。用紙載置台211には、電動式の昇降機構が設けられており、上下方向に沿って昇降可能に構成されている。また、用紙載置台211は、ガイドレール214により、大容量給紙装置200から引き出し可能に構成されている。
先端規制部材212は、用紙載置台211上の用紙束の先端位置を規制するものであり、大容量給紙装置200の本体に固設されている。
後端規制部材213は、用紙載置台211上の用紙束の後端位置を規制するものであり、用紙搬送方向に変位可能に大容量給紙装置200の本体に支持されている。
後端規制部材213には、用紙載置台211上に積載された用紙束の高さを検知する高さセンサー(図示せず)が配置されている。制御部250は、高さセンサーの信号に基づいて昇降機構を駆動させ、用紙載置台211を昇降する制御を行っている。この制御により、用紙載置台211上に積載された用紙束の最上面の用紙Pが一定の高さに維持される。
吸引搬送部220は、用紙載置台211の上方に、当該用紙載置台211と対向して配置されており、用紙載置台211に載置された用紙束のうち最上面の用紙Pを吸引して搬送するものである。
吸引搬送部220は、搬送部221と、吸引部226とを主体に構成されている。図3は、吸引搬送部220の構成を示す上面図である。図4は、吸引搬送部220の構成を示す説明図であり、用紙搬送方向の下流側から吸引搬送部220を眺めた断面状態を模式的に示す説明図である。
搬送部221は、用紙Pを搬送するものであり、複数の無端状のベルト部材から構成されている。本実施形態において、搬送部221は、用紙搬送方向と平行に並べられた4つのベルト部材221a〜221dから構成されており、各ベルト部材221a〜221dは、用紙幅方向(用紙搬送方向と直交する方向)に隣り合うように配列されている。
個々のベルト部材221a〜221dは、駆動源222と接続された大径の駆動ローラー223a〜223dと、2個の従動ローラー224a〜224d,225a〜225dとに掛け渡されている。駆動ローラー223a〜223dは、用紙搬送方向の上流側に配置され、2個の従動ローラー224a〜224d,225a〜225dは、用紙搬送方向の下流側に、上下に隔てて配置されている。
個々のベルト部材221a〜221dは、駆動ローラー223a〜223dが回転駆動することにより回動し、用紙Pと対向する面が用紙搬送方向に移動する。各駆動ローラー223a〜223dは同期して回転駆動し、個々のベルト部材221a〜221dも同期して回動する。個々のベルト部材221a〜221dには、それぞれ小径からなる複数の貫通孔(図示せず)が設けられている。
本実施形態において、中央のベルト部材221b,221cに対応する下側の従動ローラー225b,225cは、両側のベルト部材221a,221dに対応する下側の従動ローラー225a,225dよりも下側にオフセットした位置に配置されている。この配置関係により、両側のベルト部材221a,221dは、中央のベルト部材221b,221cよりも相対的に上方に配置される。これにより、両端のベルト部材221a,221dと用紙Pとの間の距離は第1距離D1となり、一方で、中央のベルト部材221b,221cと用紙Pとの間の距離は、第1距離D1よりも小さい第2距離D2となる。
吸引部226は、搬送部221を隔てて用紙Pと向き合うように配置されている。本実施形態では、吸引部226は、搬送部221であるベルト部材221a〜221dの内側に配置されている。吸引部226は、搬送部221を介して空気を吸引し、用紙載置台211に載置された用紙P(用紙束の最上面に位置する用紙P)をベルト部材221a〜221dに吸着させる。
吸引部226は、吸引ファン227と、ダクト228とを主体に構成されている。
吸引ファン227は、空気を吸引するファンである。
ダクト228は、搬送部221から吸引ファン227へと空気を導くダクトである。ダクト228は、中央のベルト部材221b,221cと、両側のベルト部材221a,221dとに対応して、それぞれが通路となる2つのダクト部228a,228bに分割されている。具体的には、ダクト228の内部には空気の流れ方向に沿って隔壁228cが設けられており、この隔壁228cを隔てて2つのダクト部228a,228bが構成されている。もっとも、ダクト228の構成は、単一のダクトの内部を隔てて分割する以外にも、予め分割されている2つのダクトを利用するものであってもよい。
2つのダクト部228a,228bのうち、用紙搬送方向の下流側のダクト部228aは、両側のベルト部材221a,221dに対応するダクト部である。このダクト部228aには、各ベルト部材221a,221dと向かい合うように開口された開口部228a1,228a2が設けられている。一方、用紙搬送方向の上流側のダクト部228bは、中央のベルト部材221b,221cに対応するダクト部である。このダクト部228bには、各ベルト部材221b,221cと向かい合うように開口された開口部228b1,228b2が設けられている。両側のベルト部材221a,221dに対応する開口部228a1,228a2は、中央のベルト部材221b,221cに対応する開口部228b1,228b2よりも用紙搬送方向の下流側に配置されている。
中央のベルト部材221b,221cに対応するダクト部228bには、吸引ファン227と開口部228b1,228b2との間に、ダクト内通路を遮断するシャッター部材229が設けられている。シャッター部材229は、図示しない駆動機構により移動可能となっており、ダクト内通路を遮断する遮断位置と、ダクト内通路を開放する開放位置とを切り替えることができる。シャッター部材229の動作は、制御部250によって制御される。
この吸引搬送部220では、吸引部226により空気を吸引し、用紙束の最上面の用紙Pを搬送部221に吸着させ、搬送部221を回動することで、用紙Pを搬送経路へと送り出すことができる。すなわち、搬送部221は、吸引部226と協働することにより、用紙載置台211に載置された用紙Pを吸引して搬送する吸引搬送部として機能する。この場合、両側のベルト部材221a,221d及び吸引部226は、用紙Pとの間の距離が第1距離D1に設定された第1吸引搬送部に相当し、用紙幅方向における用紙Pの端部領域を吸引する。これに対して、中央のベルト部材221b,221c及び吸引部226は、用紙Pとの間の距離が第2距離D2に設定された第2吸引搬送部に相当し、両側のベルト部材221a,221dよりも用紙Pの中央を含む領域を吸引する。このように本実施形態の吸引搬送部220は、中央とその両側で高さが異なる段差形状に設定されている。
再び図1及び図2を参照する。先端送風部230は、用紙載置台211の前方かつ吸引搬送部220の近傍に配置されており、用紙載置台211に載置された用紙束において用紙幅方向と平行する先端部に風を吹き付ける機能を担っている。先端送風部230は、送風機231と、送風口232とを主体に構成されている。
送風機231は、用紙束のうち最上面の用紙Pを浮揚させたり、当該最上面の用紙Pをその下の用紙Pから捌いたりするための風を出力するものであり、例えば多翼ファン(シロッコファン)を用いることができる。送風口232は、送風機231から出力される風を、用紙束に向けて吹き付けるためのダクトである。この送風口232には、出力される風の向きを切り替えるルーバー233が設けられている。このルーバー233により、送風口232から吹き出される風の向きを、用紙面と平行する方向と、上向き方向とで切り替えることができる。
側端送風部240は、用紙載置台211の側方にそれぞれ配置されており、用紙載置台211に載置された用紙束において用紙搬送方向と平行する側端部に風を吹き付ける機能を担っている。本実施形態では、一組の側端送風部240が用意されており、これらの側端送風部240は、用紙束を間に挟んで互いに対向するように配置されている。個々の側端送風部240は、先端送風部230と同様の構成であり、送風機241と、送風口242とを主体に構成されている。なお、側端送風部240は、用紙束の片側だけに設ける構成であってもよい。
送風機241は、用紙束のうち最上面の用紙Pを浮揚させたり、当該最上面の用紙Pをその下の用紙Pから捌いたりするための風を出力するものであり、例えば多翼ファン(シロッコファン)を用いることができる。送風口242は、送風機241から出力される風を、用紙束に向けて吹き付けるためのダクトである。この送風口242には、出力される風の向きを切り替えるルーバー243が設けられている。このルーバーにより、送風口242から吹き出される風の向きを、用紙面と平行する方向と、上向き方向とで切り替えることができる。
このような構成の給紙ユニット210において、用紙Pに係る給紙動作を説明する。まず、先端送風部230及び側端送風部240から出力される風の向きは、用紙面と平行する方向に設定されている。これらの送風部230,240から風が出力されることにより、用紙載置台211に載置された用紙束のうちの最上面から数枚の用紙Pが用紙Pの自重に抗して浮き上がる。加えて、吸引部226による空気の吸引により、最上面の用紙Pが搬送部221に吸着される。なお、搬送部221による用紙Pの吸着動作の詳細については後述する。
搬送部221に用紙Pが吸着されると、先端送風部230及び側端送風部240の風の向きが上向きに変更される。これにより、最上面の用紙Pとその下の用紙P(上から2番目の用紙P)との間に風が流入し、最上面の用紙Pがその下の用紙Pから分離される。その結果、用紙束の最上面の用紙Pのみが搬送部221により搬送される。吸引搬送部220から給紙された用紙Pは、搬送経路に沿って配置された搬送ローラーにより搬送され、機外へと排出される。そして、下流に接続された装置である画像形成装置100に用紙Pが供給される。
制御部250は、大容量給紙装置200の動作を制御する。制御部250としては、CPU、ROM、RAM、I/Oインターフェースを主体に構成されたマイクロコンピュータを用いることができる。CPUは、各種プログラムを実行することにより、大容量給紙装置200の動作を制御する(プロセッサー)。ROMは、CPUが実行する各種プログラムを、当該CPUが読み取り可能なプログラムコードの形態で格納する。また、ROMは、プログラムの実行に必要となるデータを記憶する。RAMは、作業用の記憶領域となるメモリである。ROMに格納されたプログラム及びデータは、CPUにより読み出されると、RAM上に展開される。そして、CPUは、RAM上に展開したプログラム及びデータに基づいて、各種の処理を行う。
本実施形態との関係において、制御部250は、第1吸引搬送部である両側のベルト部材221a,221dの吸引量である第1吸引量と、第2吸引搬送部である中央のベルト部材221b,221cの吸引量である第2吸引量とをそれぞれ独立して制御している。制御部250は、このような独立制御を通じて、中央とその両側とで高さが異なる段差形状の吸引搬送部220に対して用紙Pを適切に追従させることができる。
具体的には、制御部250は、吸引部226を動作させて吸引を開始すると、第1移行条件をトリガーとして、第1吸引量が第2吸引量よりも大きくなるような制御を行う。また、制御部250は、第2移行条件をトリガーとして、先端送風部230及び側端送風部240から出力される風の向きを切り替える。そして、制御部250は、搬送部221を回転させて用紙Pの搬送を行う。
制御部250には、各種センサーからの検出信号が入力されている。図3に示すように、用紙吸着センサー251aは、中央のベルト部材221b,221cに対応して設けられており、ベルト部材221b,221cへの用紙Pの吸着を検出するセンサーである。一方、用紙吸着センサー251bは、両側のベルト部材221a,221dに対応して設けられており、ベルト部材221a,221dへの用紙Pの吸着を検出するセンサーである。
以下、本実施形態に係る画像形成システムの大容量給紙装置200の動作を説明する。ここで、図5は、大容量給紙装置200の動作手順を示すフローチャートである。このフローチャートに示す処理は、用紙1枚の給紙に関する吸引搬送部220の動作を示すものであり、ジョブの入力をトリガーとして呼び出されると、制御部250により用紙1枚毎に実行される。また、図6は、用紙Pの吸着状態の推移を模式的に示す説明図である。
まず、ステップ1(S1)において、制御部250は、ジョブが予め定められた条件に該当するか否かを判断する。この条件は、ジョブにおいて給紙する用紙Pの坪量が規定値以上であることである。この規定値は、腰の弱い用紙P(薄紙など)と腰の強い用紙P(厚紙など)とを切り分けるパラメータであり、実験やシミュレーションを通じて最適値が予め設定されている。制御部250は、ジョブの実行にあたりユーザーが指定した設定条件から用紙Pの坪量を把握することで、ステップ1の判断を行うことができる。
このステップ1で肯定判定された場合、すなわち、ジョブが条件に該当する場合には、ステップ2(S2)に進む。一方、ステップ1で否定判定された場合、すなわち、ジョブが条件に該当しない場合には、後述するステップ9(S9)に進む。
腰の弱い用紙Pにあっては、吸引搬送部220の段差形状に追従することで、皺や折れ跡が発生してしまう可能性がある。ステップ1における条件は、吸引搬送部220の段差形状に追従させることで用紙Pに皺や折れ跡が発生するかどうかを判定するためのものである。したがって、このような状態を判定することができるのであれば、用紙Pの坪量以外にも、用紙Pの厚み又は用紙Pの剛性といった条件を利用してもよい。これらの条件は、ジョブの実行にあたりユーザーが指定した設定条件から取得することができる。
また、空気中に含まれる水分量が多い状況では、用紙Pの腰が弱くなる傾向にあることから、湿度や温度といった環境を単独で、或いは、用紙Pの坪量、用紙Pの厚み又は用紙Pの剛性と組み合わせて、前述の条件としてもよい。環境に関する情報は、用紙Pの給紙先である画像形成装置100から、当該画像形成装置100が備える温度センサー及び湿度センサーにより検出される情報を取得することができる。
ステップ2において、制御部250は、吸引部226を動作させて吸引を開始する。吸引開始のタイミングにおいて、制御部250は、シャッター部材229を開放位置に制御している。そのため、各ベルト部材221a〜221dに対応する開口部228a1〜228b2から空気がそれぞれ吸引される。本実施形態の構成の場合、吸引開始時、中央に対応する第1吸引量と、両側に対応する第2吸引量とは同じとなる。
また、このステップ2において、制御部250は、先端送風部230及び側端送風部240を動作させて用紙端面(先端面及び側端面)へ風を出力し、用紙Pを浮上させる。この場合、先端送風部230及び側端送風部240から出力される風の向きは、用紙面と平行する方向に設定されている。
ステップ3(S3)において、制御部250は、第1移行条件が成立したか否かを判断する。腰の強い用紙Pにあっては、ほぼ平面状態のまま浮上するので、用紙Pとの距離が近い中央のベルト部材221b,221cに吸着される(図6(a))。制御部250は、中央のベルト部材221b,221cに用紙Pが吸着されたことを、第1移行条件として判断する。この判断は、用紙吸着センサー251aの検出結果に基づいて行われる。
第1移行条件が成立した場合、すなわち、中央のベルト部材221b,221cに用紙Pが吸着された場合には、ステップ3で肯定判定され、ステップ4(S4)に進む。一方、第1移行条件が成立しない場合、すなわち、中央のベルト部材221b,221cに用紙Pが吸着されない場合には、否定判定され、ステップ3に戻る。
ただし、第1移行条件は、用紙Pがベルト部材221b,221cに吸着されたタイミングを厳密に判断することを要するものでない。そのため、第1移行条件を、吸引開始から、ベルト部材221b,221cに用紙Pが吸着されたと見なせる所定の時間が経過したこと、としてもよい。この所定の時間には、実験やシミュレーションを通じて最適値を予め設定することができる。また、第1移行条件は、中央のベルト部材221b,221cへの用紙Pの吸着を判断し、かつ用紙Pの吸着から一定時間以内に両端のベルト部材221a,221dに用紙Pが吸着されないこと、としてもよい。
ステップ4において、制御部250は、中央に対応する第2吸引量を低下させる。具体的には、制御部250は、シャッター部材229を遮断位置に移動させて、ダクト部228bを遮断する。したがって、ダクト部228bに設けられた開口部228b1,228b2から吸引される空気がストップし、第2吸引量がゼロとなる。これにより、両側に対応する第1吸引量が、中央に対応する第2吸引量よりも大きい状態となる。
加えて、本実施形態では、2つのダクト部228a,228bが吸引ファン227を共用した構成となっている。そのため、シャッター部材229の動作により、吸引ファン227により吸い込まれる空気が残りのダクト部228aに集中し、ステップ4以前の制御状態と比較して、ダクト部228aに設けられた開口部228a1,228a2の吸引量が増加する。このため、両側に対応する第1吸引量は、ステップ4の制御を行う以前の状態よりも大きい状態となる。
このように、ステップ4の制御は、両側に対応する第1吸引量が、中央に対応する第2吸引量よりも大きくなるような制御に対応する。第1吸引量が相対的に増加することで、用紙Pの両端へ作用する吸引力が増すこととなる。これにり、用紙Pの両端が持ち上げられることとなる(図6(b)参照)。
ステップ5(S5)において、制御部250は、第2移行条件が成立したか否かを判断する。この第2移行条件は、両側のベルト部材221a,221dに用紙Pが吸着されたことである。この判断は、用紙吸着センサー251bの検出結果に基づいて行われる。
第2移行条件が成立した場合、すなわち、両側のベルト部材221a,221bに用紙Pが吸着された場合には、ステップ5で肯定判定され、ステップ6(S6)に進む。一方、第2移行条件が成立しない場合、すなわち、両側のベルト部材221a,221dに用紙Pが吸着されない場合には、否定判定され、ステップ5に戻る。
ただし、第2移行条件は、用紙Pが両側のベルト部材221a,221dに吸着されたタイミングを厳密に判断することを要するものではない。そのため、第2移行条件を、ステップ4の制御の開始から、両側のベルト部材221a,221dに用紙Pが吸着されたと見なせる時間が経過したこととしてもよい。この経過時間には、実験やシミュレーションを通じた最適値を予め設定することができる。
ステップ6において、制御部250は、中央に対応する第2吸引量を増加させる。具体的には、制御部250は、シャッター部材229を開放位置に移動させて、ダクト部228bを開放する。これにより、ダクト部228bに設けられた開口部228b1,228b2から空気が吸引される。この空気の吸引により、中央のベルト部材221b,221cに用紙Pが吸着されることとなる(図6(c)参照)。
ステップ7(S7)において、制御部250は、先端送風部230及び側端送風部240から出力される風の向きを、用紙面と平行する方向から上向きに切り替える。この風向きの切り替えにより、両端が持ち上げられた状態の最上面の用紙Pと、その下にある用紙Pとの間に、先端送風部230及び側端送風部240から出力される風が効果的に進入する。これにより、最上面の用紙Pからその下に位置する用紙Pが捌かれ、2番目の用紙Pを最上面の用紙Pから分離させることができる(図6(c)参照)。
ステップ8(S8)において、制御部250は、駆動ローラー223a〜223dを同期して回転駆動し、個々のベルト部材221a〜221dを回動させ、これにより、用紙Pの搬送を開始する。
一方で、ステップ9において、制御部250は、吸引部226を動作させて吸引を開始する。この吸引開始時、制御部250は、シャッター部材229を開放位置に制御している。そのため、各ベルト部材221a〜221dに対応する開口部228a1〜228b2から空気がそれぞれ吸引される。本実施形態の構成の場合、吸引開始時、中央に対応する第1吸引量と、両側に対応する第2吸引量とは同じとなる。そして、このステップ9の処理を行った後に、上述したステップ7に進む。
制御部250は、このような一連の処理を用紙1枚毎に行い、用紙載置台211に載置された用紙Pを順次給紙する。
このように本実施形態に係る大容量給紙装置200は、1枚以上の用紙Pが載置された用紙載置台211から用紙Pを給紙する給紙装置であり、用紙載置台211に載置された用紙Pを吸引して搬送する吸引搬送部220と、吸引搬送部220の吸引量を制御する制御部250と、を有している。ここで、吸引搬送部220は、用紙載置台211に載置された用紙Pまでの距離が第1距離D1に設定された第1吸引搬送部と、用紙載置台211に載置された用紙Pまでの距離が第1距離D1よりも小さい第2距離D2に設定された第2吸引搬送部と、を備えており、第1吸引搬送部及び第2吸引搬送部は用紙搬送方向と平行に配置され、第1吸引搬送部が用紙Pにおける用紙幅方向の端部領域を吸引し、第2吸引搬送部が第1吸引搬送部よりも用紙Pにおける用紙幅方向の中央領域を吸引する。この場合において、制御部250は、第1吸引搬送部と第2吸引搬送部とをそれぞれ独立した吸引量で制御する。
この構成によれば、吸引搬送部220が、用紙Pの端部領域に臨む第1吸引搬送部と、この第1吸引搬送部よりも用紙Pの中央領域を吸引する第2吸引搬送部とからなる段差形状とされている。そして、第1吸引搬送部の吸引量(第1吸引量)と第2吸引搬送部の吸引量(第2吸引量)とをそれぞれ独立して制御することができるので、用紙Pの吸引を第1吸引搬送部と第2吸引搬送部とで切り分けて行うことができる。これにより、吸引搬送部220の段差形状に対して用紙Pを適切に追従させることができる。このため、用紙幅方向の端部領域が持ち上がるように用紙Pを変形させることができるので、最上面の用紙Pとその下の用紙Pとの隙間に用紙Pを捌くための風を送ることができる。その結果、用紙P同士を適切に分離することが可能となり、重送の発生を抑制することができる。よって、用紙載置台211に積載された用紙Pを良好に吸着して適切に搬送することができる。
また、本実施形態において、吸引搬送部220は、両側に配置された一対の第1吸引搬送部と、これらの第1吸引搬送部に挟まれた第2吸引搬送部と、で構成されている。この場合、一対の第1吸引搬送部は、両側のベルト部材221a,221d及び吸引部226からなり、第2吸引搬送部は、中央のベルト部材221b,221c及び吸引部226からなる。
この構成によれば、吸引搬送部220は、用紙幅方向にかけて中央が下向きに凸型となる段差形状に構成されている。このため、用紙幅方向の両方の端部領域において、最上面の用紙Pとその下の用紙Pとの間に隙間を生じさせることができる。そのため、両側の隙間から、最上面の用紙Pとその下の用紙Pとの間に空気が流れることで、両者を効果的に分離することができる。
また、本実施形態において、制御部250は、吸引搬送部220による吸引開始後、第2吸引搬送部に用紙Pが吸着されたことを判断した後に、第1吸引量が第2吸引量よりも大きくなるような制御を行っている。
この構成によれば、用紙Pの端部領域を吸引する第1吸引搬送部の吸引力が相対的に増加することになる。この吸引力の増加により、吸引搬送部220の段差形状に対して用紙Pを適切に追従させることができるので、端部領域が持ち上がるように用紙Pを変形させることができる(図6(b)参照)。その結果、用紙幅方向の端部領域において、最上面の用紙Pとその次の用紙Pとの間に隙間を生じさせることができる。そして、この隙間から、最上面の用紙Pとその次の用紙Pとの間に空気が流れることで、両者を効果的に分離することができる。
なお、本実施形態では、制御部250は、用紙吸着センサー251a,251bに基づいて用紙Pの吸着を判断している。しかしながら、制御部250は、予め定められた時間経過に基づいて、搬送部221に用紙Pが吸着されたことを判断してもよい。また、制御部250は、第2吸着搬送部への用紙Pの吸着を判断し、かつ一定時間以内に第1吸着搬送部に用紙Pが吸着されないことを判断した場合に、第1吸引量が第2吸引量よりも大きくなるような制御を行うことであってもよい。このように、ステップ3に示す第1移行条件は、種々の変形が可能である。
また、本実施形態では、用紙Pが第2吸着搬送部に吸着された後に、第1吸引量が第2吸引量よりも大きくなるような制御を行っているが、吸引搬送部220の吸引開始と同時に、第1吸引量が第2吸引量よりも大きくなるような制御を行ってもよい。
また、本実施形態では、用紙載置台211に載置された用紙束において用紙搬送方向と平行する側端部に風を吹き付ける側端送風部240をさらに有している。この場合、制御部250は、第1吸引搬送部に用紙Pが吸着されたことを判断した場合に、側端送風部240の風向きを用紙面と平行する方向から上向きに切り替える。
この構成によれば、側端送風部240の風向きを、用紙Pを浮上させるための方向(用紙面と平行する方向)から、最上面の用紙Pからその下の用紙Pから捌くための方向(上向き方向)へと切り替えることができる。これにより、側端送風部240から出力される風が、最上面の用紙Pとその次の用紙Pとの間の隙間に効果的に流入することとなる。その結果、最上面の用紙Pとその次の用紙Pとの間に空気が流れることで、両者を効果的に分離することができる。
さらに、本実施形態では、用紙載置台211に載置された用紙束において用紙幅方向と平行する先端部に風を吹き付ける先端送風部230をさらに有している。この場合、制御部250は、第1吸引搬送部に用紙Pが吸着されたことを判断した場合に、先端送風部230の風向きを用紙面と平行する方向から上向きに切り替える。
この構成によれば、先端送風部230の風向きを、用紙Pを浮上させるための方向(用紙面と平行する方向)から、最上面の用紙Pからその下の用紙Pから捌くための方向(上向き方向)へと切り替えることができる。これにより、先端送風部230から出力される風が、最上面の用紙Pとその次の用紙Pとの間の隙間に効果的に流入することとなる。その結果、最上面の用紙Pとその次の用紙Pとの間に空気が流れることで、両者を効果的に分離することができる。
なお、本実施形態では、先端送風部230及び側端送風部240の両者について風向きを変更している。しかしながら、先端送風部230及び側端送風部240のいずれか一方について風向きを変更するものであってもよい。この場合、先端送風部230及び側端送風部240の一方のみ風向きを変更するのか、それとも両方の風向きを変更するのかといった制御態様を、用紙Pの種類に応じて決定してもよい。また、先端送風部230及び側端送風部240の風向きを変更するタイミングを、用紙Pの種類に応じて変更してもよい。
また、本実施形態において、制御部250は、ジョブが予め設定された条件に該当する場合に、第1吸引量が第2吸引量よりも大きくなるような制御を行っている。
この構成によれば、必要なジョブに対してのみ当該制御を行うこととなるので、不要な制御の実行やこれに伴う不都合を抑制することができる。
また、本実施形態において、予め設定された条件は、用紙Pの坪量、用紙Pの厚み、用紙Pの剛性のいずれか一つ以上を含んでいる。
薄紙などの場合、吸引搬送部220の段差形状に用紙Pが追従することで、皺や折れ跡が用紙Pに発生することがある。そこで、本実施形態に示すように、用紙Pに関する条件を考慮することで、用紙Pに皺や折れ跡が発生するようなジョブであるか否かを適切に判定することができる。これにより、薄紙などの腰の弱い用紙Pに本制御が実行され、用紙Pに皺や折れ跡が発生するといった不都合を抑制することができる。
なお、本実施形態では、ジョブが予め定められた条件に該当する場合には、第1吸引量が第2吸引量よりも大きくなるような制御を行っている。しかしながら、薄紙などの腰の弱い用紙Pに該当するか否かを制御部250自身が判断し、当該制御の実行の可否を判断してもよい。
具体的には、吸引搬送部220による吸引開始後、第2吸引搬送部に用紙Pが吸着されたことを判断し、かつ、この吸着後一定時間以内に第1吸引搬送部に用紙Pが吸着されない場合には、薄紙ではないと判断し、第1吸引量が第2吸引量よりも大きくなるような制御を行う。一方、吸引搬送部220による吸引開始後、第2吸引搬送部に用紙Pが吸着されたことを判断し、かつ、この吸着後一定時間以内に第1吸引搬送部に用紙Pが吸着された場合には、薄紙であると判断し、第1吸引量が第2吸引量よりも大きくなるような制御を行わない、といった如くである。
また、制御部250は、(1)ジョブの開始を受けて所定枚数分の用紙Pを吸着、搬送しながら、本制御(第1吸引量が第2吸引量よりも大きくなるような制御)を行うか否かを判断し、(2)当該制御を行うと判断した場合には、以降の用紙Pに対しては、第1吸引量が第2吸引量よりも大きくなるような制御を適用してもよい。
この構成によれば、用紙Pの種類が設定情報に存在しない、或いは、設定情報と異なる紙種の用紙Pが搬送される場合であっても、ジョブを実行する過程において制御の要否を判断することができる。
また、上述した実施形態では、第1吸引量が第2吸引量よりも大きくなるような制御として、第2吸引量をゼロとする形態を示した。しかしながら、第1吸引量が第2吸引量よりも大きい状態となるのであれば、(1)第2吸引量をゼロとせずに、制御前の状態よりも減少させる方法であってもよいし、(2)第2吸引量を維持したままに、第1吸引量をその制御前の状態よりも増加させる方法であってもよい。
また、本実施形態において、吸引搬送部220は、一つの吸引ファン227と、ダクト228と、シャッター部材229とで構成されている。ここで、ダクト228は、第1吸引搬送部と第2吸引搬送部とに対応して分割され、それぞれ開口された開口部228a1〜228b2を備えている。そして、シャッター部材229は、両側のベルト部材221a,221dに対応するダクト内通路を遮断する。
この構成によれば、シャッター部材229を動作させることで、本制御を容易に実現することができる。
なお、シャッター部材229は、両側のベルト部材221a,221dに対応するダクト内通路について遮断と開放とを切替可能とする構成以外にも、ダクト内通路に設定される可変開口部の面積を調整するようなものであってもよい。
また、本実施形態では、一つの吸引ファン227を共用する構成としている。しかしながら、分割されたダクト毎に吸引ファンを設け、当該吸引ファンの風量調整により吸引量に関する制御を行ってもよい。
また、本実施形態において、第1吸引搬送部に面して開口された開口部228a1,228a2は、第2吸引搬送部に面して開口された開口部228b1,228b2よりも用紙搬送方向の下流側に配置されている。
この構成によれば、用紙Pの両側の吸着を、用紙Pの先端側において行うことができる。このため、第2吸引量を増加した際に、用紙Pの先端が吸い上げられるので、用紙Pの先端が垂れ下がったままの状態で搬送されることが抑制される。その結果、用紙Pが用紙ガイドなどと干渉し、搬送不良が発生するといった事態を抑制することができる。
以上、本発明の実施形態にかかる画像形成システムについて説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、その発明の範囲内において種々の変形が可能であることはいうまでもない。また、画像形成システムのみならず、画像形成システムを構成する給紙装置(大容量給紙装置)それ自体も本発明の一部として機能する。さらに、画像形成装置に内蔵される給紙ユニットに対して本発明を適用してもよく、この場合、当該画像形成装置も本発明の一部として機能することができる。また、画像形成システムの一部として給紙装置が組み込まれる場合、当該給紙装置が備える制御部の機能を、画像形成装置が備える制御部が実現してもよい。
また、本実施形態では、搬送部を複数のベルト部材で構成したが、幅広な1本のベルト部材で構成してもよい。また、ベルト部材以外の部材で搬送部を構成してもよい。また、本実施形態では、吸引搬送部は、中央が凹型となる段差形状を備えるものであるが、これ以外の段差形状であってもよい。例えば、用紙幅方向の一方の端部領域のみ第1距離となり、用紙幅方向の残りの領域(中央領域及び他方の端部領域)が第2距離となるような段差形状であってもよい。