JP6835876B2 - レーザピーニング加工装置及びレーザピーニング加工方法 - Google Patents

レーザピーニング加工装置及びレーザピーニング加工方法 Download PDF

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Description

本発明の実施形態は、レーザピーニング加工装置及びレーザピーニング加工方法に関する。
従来、物体の表面に残留応力を与えて改質する方法としてレーザピーニング加工が知られている(例えば特許文献1、特許文献2及び特許文献3参照)。レーザピーニング加工は、液体で覆われた状態で被加工物の被加工面にレーザビームを集光照射することによって行われる。液体で覆われた被加工物の被加工面にレーザビームが集光照射されると、レーザビームの照射によって発生するプラズマを液体中に閉じ込めることができる。この結果、衝撃波の圧力が被加工面に付与される。これにより、被加工物内部に生じた圧縮応力を残留応力として残留させることができる。
レーザピーニング加工では、液体中における気泡の発生を抑制することが重要である。これは、気泡によって被加工面に到達するレーザビームのエネルギが減衰してしまうためである。そこで、レーザピーニング用の液体を供給するための配管上に、液体から気泡を除去するための弁を設ける技術が提案されている。また、液体の流速及び流量を制御することによってキャビテーションによる気泡の発生を抑止する技術も提案されている。
特開2008−238260号公報 特開2006−137998号公報 特開2008−049367号公報
しかしながら、被加工面に向けてノズルから噴射される液体の流れが乱れると、空気が巻込まれて気泡が発生する。レーザの光路上に気泡が存在すると、レーザ光が気泡によって乱反射し、レーザの照射エネルギが十分に得られない場合がある。すなわち、気泡によってレーザビームの光路が遮られ、レーザビームのエネルギが減衰してしまうという問題がある。この場合、厳密には設定したレーザビームのエネルギでレーザピーニング加工を行うことができない。その結果、レーザピーニングによる十分な効果を施工対象部品に与えることができない場合がある。
そこで、本発明は、レーザピーニング加工において、気泡によるレーザビームのエネルギの減衰を低減できるようにすることを目的とする。
本発明の実施形態に係るレーザピーニング加工装置は、被加工物の被加工面を改質するために前記被加工面に圧縮応力を残留させるレーザピーニング加工を行うものであって、レーザ光を発振するレーザ発振器と、被加工物の被加工面に向けて液体を流しながら前記レーザ光を集光して照射するノズルであって、前記液体の流出方向及び前記レーザ光の照射方向を鉛直下方として前記液体を流す一方、前記レーザ光を照射するように構成されたノズル、前記ノズルに設けられる整流部であって、前記液体中に発生し得る気泡の量が低減されるように前記液体の流れを整える整流部とを備え、前記整流部として、前記ノズルの先端に、前記液体が通過する空隙の横断面の形状が星形である整流板を設けたものである。
また、本発明の実施形態に係るレーザピーニング加工装置は、被加工物の被加工面を改質するために前記被加工面に圧縮応力を残留させるレーザピーニング加工を行うものであって、レーザ光を発振するレーザ発振器と、前記被加工物の被加工面に向けて液体を流しながら前記レーザ光を集光して照射するノズルであって、前記液体の流出方向及び前記レーザ光の照射方向を鉛直下方として前記液体を流す一方、前記レーザ光を照射するように構成されたノズルと、前記ノズルに設けられる整流部であって、前記液体中に発生し得る気泡の量が低減されるように前記液体の流れを整える整流部とを備え、前記整流部として、横断面が円形である前記液体の流路を形成する前記ノズルの先端の内側に、前記ノズルの先端側に向かって徐々に前記流路の直径が大きくなるようにテーパする部分を形成したものである。
また、本発明の実施形態に係るレーザピーニング加工方法は、被加工物の被加工面を改質するために前記被加工面に圧縮応力を残留させるレーザピーニング加工を行うものであって、レーザ光を発振するステップと、ノズルから前記被加工物の被加工面に向けて、流出方向を鉛直下方として液体を流しながら前記レーザ光を集光して照射方向を鉛直下方として照射することによって製品又は半製品を製造するステップと、前記ノズルに整流構造を設けて前記液体を整流することによって、前記液体中に発生し得る気泡の量を低減するステップとを有し、前記整流構造として、前記ノズルの先端に、前記液体が通過する空隙の横断面の形状が星形である整流板を設けるものである。
また、本発明の実施形態に係るレーザピーニング加工方法は、被加工物の被加工面を改質するために前記被加工面に圧縮応力を残留させるレーザピーニング加工を行うものであって、レーザ光を発振するステップと、ノズルから前記被加工物の被加工面に向けて、流出方向を鉛直下方として液体を流しながら前記レーザ光を集光して照射方向を鉛直下方として照射することによって製品又は半製品を製造するステップと、前記ノズルに整流構造を設けて前記液体を整流することによって、前記液体中に発生し得る気泡の量を低減するステップとを有し、前記整流構造として、横断面が円形である前記液体の流路を形成する前記ノズルの先端の内側に、前記ノズルの先端側に向かって徐々に前記流路の直径が大きくなるようにテーパする部分を形成するものである。
本発明の第1の実施形態に係るレーザピーニング加工装置の構成図。 図1に示す整流部の第1の詳細構造例を示す部分縦断面図。 図1に示す整流部の第2の詳細構造例を示す部分縦断面図。 図1に示す整流部の第3の詳細構造例を示す部分縦断面図。 図2乃至4に示す整流板の下面図。 図5に示す整流板との比較例の下面図。 本発明の第2の実施形態に係るレーザピーニング加工装置の構成図。 従来のレーザピーニング加工方法を示す図。 図7に示す第2の実施形態におけるレーザピーニング加工装置の変形例を示す構成図。
実施形態
本発明の実施形態に係るレーザピーニング加工装置及びレーザピーニング加工方法について添付図面を参照して説明する。
(第1の実施形態)
(構成及び機能)
図1は本発明の第1の実施形態に係るレーザピーニング加工装置の構成図である。
レーザピーニング加工装置1は、金属等の被加工物Wの被加工面に水等の任意の液体Lを流しながらレーザビームを照射することによってレーザピーニング加工を施す装置である。レーザピーニング加工は、被加工物Wの被加工面に液体Lを付着させた状態でレーザビームを集光照射することによって被加工物Wの被加工面に衝撃波の圧力を付与する加工である。レーザピーニング加工を行うと、衝撃波の圧力によって被加工物Wの被加工面に反力として圧縮残留応力を付与させることができる。被加工物Wの被加工面に圧縮残留応力を付与させると、形成された圧縮残留応力によって、被加工面の表面における亀裂の発生を抑制することができる。これにより、被加工物Wの疲労特性を向上させることができる。
レーザピーニング加工装置1は、図1に例示されるように、レーザ発振器2、ノズル3、液体供給系4及び移動機構5で構成することができる。
レーザ発振器2は、レーザ光を発振し、発振したレーザ光をノズル3に向けて照射する装置である。レーザ発振器2とノズル3との間には、ノイズフィルタ等の所望の光学系を設けることができる。レーザピーニング加工用のレーザ光としては、YAGパルスレーザ光が代表的である。
ノズル3は、被加工物Wの被加工面に向けてレーザピーニング加工用の液体Lを流しながら被加工面にレーザ光を集光して照射するように構成されている。ノズル3は、集光レンズ7、光学素子8及び液槽9を用いて構成することができる。
集光レンズ7は、レーザ発振器2から出射したレーザ光を入射して集光するための光学素子である。このため、集光レンズ7は、レーザ発振器2から出射したレーザ光をカバーするための筒状構造体の内部に、レーザ光の光軸上となるように配置される。
ノズル3には、集光レンズ7以外に、集光レンズ7を透過したレーザ光の進行方向を変えて被加工物Wの被加工面にレーザ光を照射するための光学素子8を設けることができる。レーザ光の進行方向を変える光学素子8を設ければ、レーザ光を所望の方向に向けて照射することが可能となる。
図示された例では、光軸を直角に曲げるプリズムが光学素子8として設けられている。プリズムは、光の入射側及び出射側における屈折率と異なる屈折率を有するガラスや水晶等の透明な媒質でできた多面体である。もちろん、プリズムの代わりにミラーを用いてもよい。或いは光ファイバでレーザ光の進行方向を変えるようにしても良い。
液槽9は、被加工物Wのレーザピーニング加工用の液体Lを一時的に貯留して流すための容器である。液槽9には、液体Lの供給口と流出口が設けられ、供給口から供給された液体Lを流出口から被加工物Wの被加工面に向けて流出させることができる。
また、液槽9には、入射窓が設けられ、光学素子8を経由して入射窓を透過したレーザ光が液体Lの流出方向と同じ方向に出射される。すなわち、液体Lの流出口はレーザ光の出口を兼ねており、レーザ光は、液体Lの流出口から被加工物Wの被加工面に向けて照射される。
従って、レーザ光の光軸と、液体Lの流出方向は概ね同一となる。すなわち、ノズル3は、液体Lの流出方向とレーザ光の照射方向とを同一の方向として液体Lを流出する一方、レーザ光を照射するように構成されている。このため、液槽9の入射窓と流出口はレーザ光の光軸上となるように配置される。
また、プリズム等の光学素子8を設けることによって、液体Lの流出方向及びレーザ光の照射方向を鉛直下方として液体Lを流す一方、レーザ光を照射することが可能となる。この場合、液圧に加えて重力を利用して液体Lの噴射を行うことが可能となる。重力を利用して液体Lを流出させる場合には、液体Lを噴射させるための液圧を低く設定することができる。その場合には、水道圧程度の低い圧力で水等の液体Lを被加工物Wの被加工面に向けて流すことによってレーザーピーニング加工を行うことができる。
以降では、液圧を利用してノズル3から液体Lを噴射させることによって液体Lを被加工物Wの被加工面に向けて流す場合について説明するが、主として重力を利用してノズル3から液体Lを被加工物Wの被加工面に向けて流すようにしてもよい。
液体Lの流出口のサイズは、レーザ光のビーム径よりも大きいサイズとすることが好適である。これは、液体Lの流れの直径が、レーザ光のビーム径よりも大きくなり、レーザ光が液体L中を透過して被加工物Wの被加工面に照射されるためである。つまり、レーザ光が、液体Lの流れによって形成される液柱内を透過するようにすることが好適である。
従って、レーザ光のエネルギを維持するためには、安定した液体Lの流れを形成することが重要である。理想的には、レーザ光の光路上に気泡が存在しない安定した液柱を形成することが重要である。これは、レーザ光の光路上に気泡が存在するとレーザ光が気泡に乱反射するためである。液体L中に気泡を発生させないためには、液体Lの流れの乱れによる空気の巻込みを防止することが効果的である。すなわち、液体Lの流れを安定させることが重要である。
そこで、ノズル3の先端に、液体Lの流れを整えるための整流部10が設けられる。整流部10は、円筒状の構造体10A及び整流板10Bの少なくとも一方で構成することができる。図1に示す例では、ノズル3の先端に整流部10として、円筒状の構造体10A及び整流板10Bの双方が設けられている。
図2は図1に示す整流部10の第1の詳細構造例を示す部分縦断面図、図3は図1に示す整流部10の第2の詳細構造例を示す部分縦断面図、図4は図1に示す整流部10の第3の詳細構造例を示す部分縦断面図である。また、図5は図2乃至4に示す整流板10Bの下面図であり、図6は図5に示す整流板10Bとの比較例の下面図である。
図2乃至図4に示すような円筒状の構造体10Aを試作して液体Lの整流効果の確認試験を行った。具体的には、図2に示すような内径が一定の円筒状の構造体10A、図3に示すように液体Lの出口が徐々に広くなるように先端の内側をテーパさせた円筒状の構造体10A、図4に示すように液体Lの出口が徐々に狭くなるように先端の内側をテーパさせた円筒状の構造体10Aをそれぞれ試作した。
その結果、図5に例示されるようにノズル3の先端に、液体Lが通過する空隙の横断面の形状が星形である整流板10Bを設けた場合と、図3に例示されるように横断面が円形である液体Lの流路を形成するノズル3の先端の内側に、ノズル3の先端側に向かって徐々に流路の直径が大きくなるようにテーパする部分を形成した場合において、特に良好な液体Lの整流効果が確認された。
液体供給系4は、ノズル3の液槽9にレーザピーニング加工用の液体Lを供給するシステムである。液体供給系4は、レーザピーニング加工用の液体Lを貯留するタンク11、ポンプ12及び配管13で構成することができる。配管13には、必要に応じて開閉弁14を設けることができる。
配管13は、タンク11と液槽9との間における液体Lの流路を形成する。ポンプ12及び開閉弁14は、配管13上に設けられる。従って、ポンプ12を作動すると、タンク11内の液体Lを液槽9に供給することができる。また、開閉弁14の開閉によって、液圧を調整することができる。従って、開閉弁14は、被加工物Wの被加工面に向けて噴射される液体Lの圧力を制御する圧力制御機構としての役割を担っている。
移動機構5は、ノズル3及び被加工物Wの少なくとも一方を他方に対してスライドさせる装置である。すなわち、移動機構5は、ノズル3を被加工物Wに対して相対的に移動させる機能を有している。移動機構5は、例えば、互いに直交するX軸、Y軸及びZ軸の3軸方向にノズル3を平行移動させることが可能な3軸スライド機構で構成することができる。もちろん、傾斜機構や回転機構を用いて移動機構5を構成してもよい。移動機構5の駆動によって、施工点を変えながらレーザピーニング加工を連続的に行うことが可能となる。
(動作及び作用)
次にレーザピーニング加工装置1を用いたレーザピーニング加工方法について説明する。
まず、被加工物Wがテーブル15にセットされた治具Tに固定される。或いは、被加工物Wが直接テーブル15に固定される。そして、ノズル3から照射されるレーザ光の焦点が被加工物Wの被加工面上におけるレーザピーニング加工の開始位置となるように、移動機構5の駆動によって被加工物Wの位置決めが行われる。
次に、レーザ発振器2がレーザ光を発振する。すなわち、レーザ発振器2からレーザ光が出射される。出射されたレーザ光は任意の光学系を経由してノズル3内の集光レンズ7に入射する。集光レンズ7に入射したレーザ光は集光されつつ集光レンズ7を透過する。集光レンズ7を透過したレーザ光は光学素子8に入射する。光学素子8に入射したレーザ光の進行方向は、光学素子8において鉛直下方に変えられて出射する。
一方、液体供給系4のポンプ12が作動し、タンク11内のレーザピーニング加工用の液体Lが配管13を通って液槽9内に供給される。その結果、液槽9の下方に形成された開口部から被加工物Wの被加工面に向けて液体Lが流出される。このため、光学素子8を出射したレーザ光は液体Lの内部を透過して被加工物Wの被加工面に向けて集光照射される。つまり、ノズル3は、被加工物Wの被加工面に向けて液体Lを流しながらレーザ光を集光して照射する。
このため、被加工物Wの被加工面においてプラズマが発生する。これにより、衝撃波の圧力が被加工物Wの被加工面に付与される。そうすると、残留応力によって被加工面の強度を増加させることができる。
この時、液体Lは、ノズル3から流出される際に、整流部10において整流される。このため、液体Lの流れの乱れによる空気の巻込みが防止され、液体L中に発生し得る気泡の量を十分に低減させることができる。
従って、被加工物Wの被加工面には、多数の気泡によってレーザ光が遮られることなく照射される。すなわち、十分なエネルギ密度を有するレーザ光が被加工物Wの被加工面に照射される。その結果、被加工面の強度の向上を確実に行うことができる。
被加工物Wの被加工面が広い場合には、移動機構5の駆動によって被加工物Wを相対的に移動させながら順次レーザピーニング加工を行うことができる。そして、全ての被加工面に対するレーザピーニング加工が終了すると、加工品を得ることができる。すなわち、レーザピーニング加工が施された製品又は半製品を製造することができる。
つまり以上のようなレーザピーニング加工装置1及びレーザピーニング加工方法は、液体Lの流れの乱れに起因する気泡の発生を防止するために、ノズル3の先端に、液体Lの流れを整えるための整流部10を設けたものである。
(効果)
このため、レーザピーニング加工装置1及びレーザピーニング加工方法によれば、ノズル3の先端から滑らかに液体Lを流出させることができる。このため、安定した液柱を形成し、レーザ光の乱反射の原因となる空気の巻込みによる気泡の発生を防止することができる。その結果、気泡によるレーザビームのエネルギの減衰を低減させることができる。すなわち、より好適な条件でレーザピーニング加工を行うことができる。
(第2の実施形態)
図7は本発明の第2の実施形態に係るレーザピーニング加工装置の構成図である。
図7に示された第2の実施形態におけるレーザピーニング加工装置1Aでは、被加工物Wを傾斜させる傾斜機構16を設けた構成が第1の実施形態におけるレーザピーニング加工装置1と相違する。第2の実施形態におけるレーザピーニング加工装置1Aの他の構成及び作用については第1の実施形態におけるレーザピーニング加工装置1と実質的に異ならないため同一の構成又は対応する構成については同符号を付して説明を省略する。
傾斜機構16は、レーザピーニング加工用の液体Lの流出方向と被加工物Wの被加工面の法線方向とが異なる方向となるように被加工物Wを傾斜させる装置である。つまり、傾斜機構16は、レーザ光の焦点が被加工物Wの被加工面上におけるレーザピーニング加工位置となるように、レーザピーニング加工位置とノズル3との間における距離を一定に保ちながら、液体Lが被加工物Wの被加工面に垂直に噴射されないように、被加工物Wを傾斜させる装置である。
レーザピーニング加工を行うと、液体Lと被加工面との衝突やレーザ光が被加工物Wの被加工面に照射されることによる衝撃によってレーザ光が照射された被加工面からも気泡が発生する。気泡がレーザピーニング加工用の液体L中に溜まると、レーザ光の光路が遮られ、レーザ光の散乱又は減衰に繋がる恐れがある。従って、レーザピーニング加工において十分な衝撃波の圧力を被加工面に与えるためには、レーザピーニング加工用の液体L中から気泡を除去することが重要である。
レーザピーニング加工を観察した結果、レーザ光の照射によって生じた気泡は、液体Lの流れが滞ったよどみに溜まる傾向があることが判明した。このため、レーザ光の照射エリアにおけるよどみを低減させれば、気泡がレーザ光の照射エリアに局所的に留まることを回避することができることになる。
図8は、従来のレーザピーニング加工法によって生じるよどみの様子を示す図である。
図8に示すように、レーザピーニング加工用の液体Lが被加工物Wの被加工面に垂直に噴射されると、液体Lのよどみがレーザ光の被加工面への照射スポット周辺に生じる。従って、レーザ光の照射によって生じた気泡が、照射スポット周辺に留まることになる。その結果、レーザ光の光路が気泡によって遮られ、レーザ光の散乱又は減衰に繋がる。
そこで、図7に例示されるように傾斜機構16で被加工物Wを傾斜させることによって、液体Lに生じるよどみがレーザ光の照射エリア近傍に集中することを回避することができる。すなわち、被加工物Wを傾斜させると、液体Lは斜め下方に向かって流れる。すなわち、液体Lの流れが形成される。その結果、液体L中におけるよどみの発生量を低減させることができる。また、仮によどみが生じても、よどみも液体Lの流れに沿って、レーザ光の照射エリアから斜め下方に向かって流れることになる。その結果、液体Lと被加工面との衝突及びレーザ光が被加工物Wの被加工面に照射されることによる衝撃によって生じる気泡を、よどみに留めることなく液体Lとともに斜め下方に流すことができる。
尚、図7に示す例では、液体Lの流出方向及びレーザ光の照射方向が鉛直下方であるが、被加工物Wの構造によっては、液体Lの流出方向及びレーザ光の照射方向を鉛直下方と異なる方向としてもよい。その場合においても、傾斜機構16によって、液体Lの流出方向と被加工物Wの被加工面の法線方向とが異なる方向となるように被加工物Wを傾斜させれば、液体Lの流出方向に対する被加工面の傾斜方向に応じた特定の方向に液体Lを流すことができる。従って、レーザピーニング加工によって生じる気泡を、液体Lとともに液体Lの流出方向に対する被加工面の傾斜方向に応じた方向に流すことができる。
傾斜機構16は、例えば、レーザ光の焦点を被加工物Wの被加工面上に維持しながらレーザピーニング加工用の液体Lの流出方向に対する被加工物Wの被加工面の傾斜角度を可変制御することが可能なロボットアーム17と、ロボットアーム17を制御する制御装置18で構成することができる。ロボットアーム17は、必要な数の回転機構及び伸縮機構を用いて構成することができる。2方向の傾斜角度を調節できるように、複数の回転機構を用いてロボットアーム17を構成してもよい。一方、ロボットアーム17を制御する制御装置18は、コンピュータ等の電子回路で構成することができる。
図7に示す例では、被加工物Wが治具Tに取付けられており、ロボットアーム17で治具Tが保持されている。もちろん、被加工物Wを直接ロボットアーム17で保持するようにしてもよい。すなわち、被加工物W又は被加工物Wを取付けるための治具Tを保持するロボットアーム17で傾斜機構16を構成することができる。
また、ロボットアーム17に限らず、被加工物W又は被加工物Wを取付けるための治具Tを傾斜させることが可能な回転軸を備えた起倒機構で傾斜機構16を構成してもよい。その場合には、起倒機構を制御するための制御装置が備えられる。
また、被加工物Wの被加工面は、平面とは限らない。例えば、被加工物Wが航空機の部品であれば、被加工面に凹凸が存在する場合や被加工面が曲面である場合もある。従って、移動機構5の駆動によってノズル3と被加工物Wとの相対位置を変えながらレーザピーニング加工を行うと、液体Lの流出方向と被加工面の法線方向とのなす角度が変化する場合がある。そこで、被加工面の形状を表す3次元情報に基づいて、ノズル3及び被加工物Wの少なくとも一方のスライド中において液体Lの流出方向に対する被加工面の傾斜角度が一定又は所定の範囲内となるように被加工物Wを傾斜させることができる。
被加工物Wの被加工面の傾斜角度を変化させながらレーザピーニング加工を行う場合には、被加工物Wの回転軸がレーザピーニング加工位置と重ならない限り、レーザ光の焦点を被加工物Wの被加工面上に維持するために、被加工物Wの回転移動に加えて平行移動が必要となる。例えば、図7に示すように、ロボットアーム17で被加工物Wの傾斜角度を変化させる場合であれば、被加工物Wの鉛直方向への平行移動を行うことが必要となる。そこで、被加工物Wの平行移動を行うことができるように、ロボットアーム17に複数の回転軸を設けるか、或いは、シリンダ機構等で構成される伸縮機構を設けることができる。
また、移動機構5によるノズル3の平行移動を被加工物Wの回転移動と連動して行うようにしてもよい。その場合には、移動機構5も被加工面の形状を表す3次元情報に基づいて制御装置18により制御することができる。従って、移動機構5も傾斜機構16の一部として機能すると言うこともできる。
被加工面の形状を表す3次元情報は、予め制御装置18に備えられる記憶装置に保存しておくことができる。そして、制御装置18による被加工面の3次元情報を参照したロボットアーム17の制御によって、液体Lの流出方向に対する被加工面の傾斜角度が一定又は所定の範囲内となるように維持することができる。また、被加工面の3次元情報を参照することによって、レーザ光の焦点が被加工面上となるように、ロボットアーム17及び移動機構5の少なくとも一方を制御装置18で制御することができる。
液体Lと被加工面との衝突によって生じる液体Lのよどみの量は、液体Lの液圧によっても変化する。そこで、液体Lの圧力を制御する圧力制御機構としての開閉弁14によって、よどみが低減されるように液体Lの圧力を制御することができる。すなわち、開閉弁14の開度を調節することによって、よどみの発生量を低減することができる。よどみを低減させるために適切な開閉弁14の開度は、試験によって経験的に求めることができる。
尚、液体Lの液圧を制御することが可能であれば、開閉弁14以外の装置を圧力制御機構として用いることができる。その場合においても、よどみの発生量が低減されるように、圧力制御機構で液体Lの液圧を制御することができる。
以上のように、第2の実施形態におけるレーザピーニング加工装置1Aでは、液体Lの流れの乱れに起因する気泡の発生のみならず、液体Lの液圧及び被加工面の傾斜角度を調節することによって、よどみ中の気泡がレーザ光の照射エリア近傍に留まることを回避することができる。このため、第2の実施形態におけるレーザピーニング加工装置1Aよれば、気泡の存在によるレーザ光の減衰を一層低減させることができる。
(第2の実施形態の変形例)
図9は図7に示す第2の実施形態におけるレーザピーニング加工装置の変形例を示す構成図である。
図9に示すレーザピーニング加工装置1Bの傾斜機構16Aはノズル3と連結される。このため、被加工物Wの被加工面に対するノズル3の傾斜角度を可変制御させることができる。傾斜機構16Aは、例えば図9に示すように回転軸20及び伸縮する複数のシリンダ機構21を用いて構成することができる。すなわち、移動機構5の一部を兼ねるテーブル22の一端の下方を伸縮する複数のシリンダ機構21で支持し、テーブル22の他端を回転軸20で回転可能に支持することによって、ノズル3の傾斜角度を可変制御させることが可能な傾斜機構16Aを構成することができる。従って、傾斜機構16Aを、移動機構5の構成要素としてもよい。
一方、レーザ光の焦点が被加工物Wの被加工面上におけるレーザピーニング加工位置となるように、被加工物Wの治具T又は被加工物Wを設置するためのテーブル23の高さを調節するための高さ調節機構24を設けることができる。高さ調節機構24は、制御装置18により制御することができる。従って、高さ調節機構24も、レーザピーニング加工位置とノズル3との間における距離を一定に保ちながら液体Lが被加工物Wの被加工面に垂直に流出されないように被加工物Wを傾斜させる傾斜機構16Aの一部を構成していると言うことができる。高さ調節機構24は、シリンダ機構やボールねじ等を用いて構成することができる。もちろん、被加工物Wの治具Tを設置するためのテーブル23の高さを調節する代わりに、移動機構5でノズル3の高さを調節するようにしてもよい。また、テーブル23及びノズル3の双方の高さを調節するようにしてもよい。
図9に示すように、被加工物Wを傾斜させる代わりにノズル3を傾斜させることができる。そうすると、特に、被加工物Wが大型である場合や被加工物Wの重量が大きい場合には、被加工物Wの傾斜を不要にできるため、大掛かりな装置を不要にすることができる。
逆に、被加工物Wが小型である場合や被加工物Wの重量が小さい場合には、図7に示すように被加工物W側を傾斜させることによって液体Lの流出方向を常に鉛直下方とすることができる。このため、重力を利用して液体Lを流出させることが可能となる。また、ノズル3及び移動機構5の傾斜を不要にすることによって、大掛かりな装置を不要にすることができる。
(他の実施形態)
以上、特定の実施形態について記載したが、記載された実施形態は一例に過ぎず、発明の範囲を限定するものではない。ここに記載された新規な方法及び装置は、様々な他の様式で具現化することができる。また、ここに記載された方法及び装置の様式において、発明の要旨から逸脱しない範囲で、種々の省略、置換及び変更を行うことができる。添付された請求の範囲及びその均等物は、発明の範囲及び要旨に包含されているものとして、そのような種々の様式及び変形例を含んでいる。
例えば、第2の実施形態において、ノズル3及び被加工物Wの双方の傾斜角度を制御できるようにしてもよい。従って、傾斜機構は、ノズル3及び被加工物Wの少なくとも一方を傾斜させるように構成することができる。

Claims (6)

  1. 被加工物の被加工面を改質するために前記被加工面に圧縮応力を残留させるレーザピーニング加工を行うレーザピーニング加工装置であって、
    レーザ光を発振するレーザ発振器と、
    前記被加工物の被加工面に向けて液体を流しながら前記レーザ光を集光して照射するノズルであって、前記液体の流出方向及び前記レーザ光の照射方向を鉛直下方として前記液体を流す一方、前記レーザ光を照射するように構成されたノズル
    前記ノズルに設けられる整流部であって、前記液体中に発生し得る気泡の量が低減されるように前記液体の流れを整える整流部と、
    を備え、
    前記整流部として、前記ノズルの先端に、前記液体が通過する空隙の横断面の形状が星形である整流板を設けたレーザピーニング加工装置。
  2. 被加工物の被加工面を改質するために前記被加工面に圧縮応力を残留させるレーザピーニング加工を行うレーザピーニング加工装置であって、
    レーザ光を発振するレーザ発振器と、
    前記被加工物の被加工面に向けて液体を流しながら前記レーザ光を集光して照射するノズルであって、前記液体の流出方向及び前記レーザ光の照射方向を鉛直下方として前記液体を流す一方、前記レーザ光を照射するように構成されたノズルと、
    前記ノズルに設けられる整流部であって、前記液体中に発生し得る気泡の量が低減されるように前記液体の流れを整える整流部と、
    を備え、
    前記整流部として、横断面が円形である前記液体の流路を形成する前記ノズルの先端の内側に、前記ノズルの先端側に向かって徐々に前記流路の直径が大きくなるようにテーパする部分を形成したレーザピーニング加工装置。
  3. 前記被加工物又は前記被加工物を取付けるための治具を保持し、前記液体の流出方向と前記被加工面の法線方向とが異なる方向となるように前記被加工物を傾斜させることによって、前記液体と前記被加工面との衝突及び前記レーザ光が前記被加工面に照射されることによる衝撃の少なくとも一方によって生じる気泡を、前記液体とともに前記液体の流出方向に対する前記被加工面の傾斜方向に応じた方向に流す傾斜機構であって、前記液体の流出方向に対する前記被加工面の傾斜角度を可変制御することが可能な傾斜機構と、
    前記ノズルを前記被加工物に対して平行移動させる移動機構と、
    前記レーザ光の焦点が前記被加工面上となるように、前記移動機構による前記ノズルの平行移動と、前記傾斜機構による前記被加工物の傾斜が連動して行われるように前記移動機構及び前記傾斜機構を制御する制御装置と、
    前記レーザ光の焦点が前記被加工物の前記被加工面上における加工位置となるように、前記被加工物又は前記被加工物を取付けるための治具の高さを調節するための高さ調節機構と、
    を更に備え
    前記傾斜機構は、前記被加工面の形状を表す3次元情報に基づいて、前記ノズルの平行移動中において前記液体の流出方向に対する前記被加工面の傾斜角度が一定又は所定の範囲内となるように前記被加工物を傾斜させるように構成される請求項1又は2記載のレーザピーニング加工装置。
  4. 請求項1乃至のいずれか1項に記載のレーザピーニング加工装置を用いて前記被加工物の被加工面に向けて前記液体を流しながら前記レーザ光を集光して照射することによって製品又は半製品を製造するレーザピーニング加工方法。
  5. 被加工物の被加工面を改質するために前記被加工面に圧縮応力を残留させるレーザピーニング加工を行うレーザピーニング加工方法であって、
    レーザ光を発振するステップと、
    ノズルから前記被加工物の被加工面に向けて、流出方向を鉛直下方として液体を流しながら前記レーザ光を集光して照射方向を鉛直下方として照射することによって製品又は半製品を製造するステップと、
    前記ノズルに整流構造を設けて前記液体を整流することによって、前記液体中に発生し得る気泡の量を低減するステップと、
    を有し、
    前記整流構造として、前記ノズルの先端に、前記液体が通過する空隙の横断面の形状が星形である整流板を設けるレーザピーニング加工方法。
  6. 被加工物の被加工面を改質するために前記被加工面に圧縮応力を残留させるレーザピーニング加工を行うレーザピーニング加工方法であって、
    レーザ光を発振するステップと、
    ノズルから前記被加工物の被加工面に向けて、流出方向を鉛直下方として液体を流しながら前記レーザ光を集光して照射方向を鉛直下方として照射することによって製品又は半製品を製造するステップと、
    前記ノズルに整流構造を設けて前記液体を整流することによって、前記液体中に発生し得る気泡の量を低減するステップと、
    を有し、
    前記整流構造として、横断面が円形である前記液体の流路を形成する前記ノズルの先端の内側に、前記ノズルの先端側に向かって徐々に前記流路の直径が大きくなるようにテーパする部分を形成するレーザピーニング加工方法。
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