以下、本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
(実施の形態1)
本実施の形態では、直方体形状をなす鉄心の5つの面のそれぞれに永久磁石が取り付けられた複数の磁極ブロックを直線方向である可動方向及び可動方向に交差する横方向のそれぞれに並べて構成された可動子と、可動子に対向配置された電機子とを有する横方向磁束型の直動電動機について説明する。
図1は、本実施の形態に係る直動電動機の構成を示す斜視図である。直動電動機100は、電機子110と、可動子120とを備える。なお、以下の説明において、可動子120の可動方向を前後方向、電機子110と可動子120とが並ぶ方向を上下方向、可動方向に直交する水平方向を横方向(左右方向)という。
図2を参照して、電機子110の構成について説明する。図2は、電機子の構成を示す斜視図である。電機子110は、電機子コイル111と、ティース部112と、ヨーク部113とを有する。ヨーク部113は水平な板状をなしており、その上面からは前後方向及び横方向に行列状に並ぶように複数のティース部112が上方に突出している。
ヨーク部113とティース部112とは電機子部材115として一体的に形成されている。かかる電機子部材115は、軟鉄、ソフトフェライト等の軟磁性体によって構成される。また、ティース部112は、直方体形状をなしており、各ティース部112には導線が巻回され電機子コイル111が形成される。電機子コイル111は、横方向に4列ずつ、各列に3個ずつの合計12個設けられている。
次に、可動子120の構成について説明する。図1に示すように、可動子120は、電機子110の上方に配置される。図3は、可動子の構成を示す斜視図である。図3に示すように、可動子120は、水平方向に延びる板状をなしている。かかる可動子120は、複数の磁極ブロック121を有しており、これらの磁極ブロック121が前後方向及び横方向にそれぞれ並べられたマトリックス状の構造となっている。
図4は、磁極ブロック121の構成を示す分解斜視図である。磁極ブロック121は、直方体形状の軟磁性体の鉄心122と、5つの板状の永久磁石123とを有している。各永久磁石123は、鉄心122の一面と同じ又は若干大きい主面を有しており、鉄心122の一面を隠すようにこれに取り付けられる。鉄心122には、その5つの面に永久磁石123が取り付けられる。つまり、鉄心122には、一面を開放して囲繞するように永久磁石123が取り付けられる。また、各永久磁石123は、鉄心122に同一の磁極を向けて配置される。鉄心122の開放された一面は可動子磁極124となる。後述するように、可動子磁極124は、各永久磁石123が鉄心122を向く面の磁極と同一磁極となる。また、各永久磁石123の外側を向く面(鉄心122とは反対側の面)は可動子磁極124の反対磁極となる。
図3を参照する。直方体形状の磁極ブロック121のそれぞれは、面と面とを接して互いに接続される。隣接する2つの磁極ブロック121の可動子磁極124は互いに異なる磁極とされる。つまり、可動子磁極124が交互に反転するように各磁極ブロック121がマトリックス状に並べられる。このため、隣り合う2つの磁極ブロック121の接合面は一方がS極となり他方がN極となる。したがって、隣り合う2つの磁極ブロック121が磁力によって互いに引きつけ合い、複数の磁極ブロック121を容易にマトリックス状に配置することができる。
また、複数の磁極ブロック121が並んだ構造体は、直方体の箱状の軟磁性体からなるヨーク125に収容される。したがって、各磁極ブロック121は可動子磁極124以外の磁極が外部に露出されず、このためヨーク125内に磁路が形成される。
上記のようにして配置された磁極ブロック121は、可動子磁極124が下方を向き、4つの側面のそれぞれが前方、後方、右方、左方を向くように配置される。つまり、可動方向及び横方向のそれぞれに、可動子磁極124が1つずつ反転する。
図5は、可動子120の正面断面図である。図5において、矢印は磁化方向を示しており、極性はS→Nとなっている。鉄心122は、その周囲を取り囲む永久磁石123によって磁化される。S極が鉄心122に面する永久磁石123から出た磁束が鉄心122内を進む。鉄心122には5面に永久磁石123が取り付けられているため、これらの5つの永久磁石のそれぞれから出た磁束が鉄心122の内部を進み、それぞれの磁束が下方に進行して可動子磁極124から外側の空間(電機子110とのギャップ)に出る。かかる磁束は放射状に分岐し、隣の磁極ブロック121のN極の可動子磁極124(隣がヨーク125の場合はヨーク125)から鉄心122の内部に進入する。N極の可動子磁極124には、隣り合う全ての磁極ブロック121からの磁束が進入する。この鉄心122には永久磁石のN極が面しているため、磁束はさらにこの鉄心122の内部を進み、前方、左方、右方、後方、及び上方のそれぞれに分岐して永久磁石123に入る。鉄心122の前方、左方、右方、及び後方のそれぞれに配置された永久磁石123からは隣接する永久磁石123(ヨーク125に隣接する永久磁石123からはヨーク125)へと磁束が進む。また、鉄心122の上方に配置された永久磁石123から出た磁束はヨーク125を進行し、隣の磁極ブロック121の上側の永久磁石123に入る。
可動子磁極124は、当該可動子磁極124を含む鉄心122に面した永久磁石123の磁極と同一極性となる。つまり、鉄心122に永久磁石123のS極が面している場合、当該鉄心122の可動子磁極124はS極となり、鉄心122に永久磁石123のN極が面している場合、当該鉄心122の可動子磁極124はN極となる。
上記のような構成の直動電動機100において、電機子コイル111に電流を流すと、電機子コイル111の周囲に磁界が発生する。図6は、電機子コイル111から生じた磁路を示す正面断面図である。横方向に隣り合う2つの電機子コイル111には、互いに逆向きに電流が流れる。これにより、これらの電機子コイル111が巻回された2つのティース部112と、ヨーク部113と、ティース部112の間の空間とを通る磁路が形成される。このとき、ティース部112の可動子120との対向面が磁極(電機子磁極114)となる。隣り合う2つのティース部112のうち、一方のティース部112の電機子磁極114がS極となり、他方のティース部112の電機子磁極114がN極となる。
各電機子磁極114の横方向の位置と、各可動子磁極124の横方向の位置とは一致している。つまり、正面視において、電機子磁極114と可動子磁極124とが一対一で対向している。したがって、電機子コイル111に電流が流れると、電機子磁極114とこれに対応する可動子磁極124とが磁力によって吸引又は反発される(図6には、電機子磁極114と可動子磁極124とが吸引される場合の磁路を示している。)。電機子コイル111に流れる電流が制御されることで、電機子コイル111によって生じる磁界が変化し、これによって可動子120が前後方向に移動する。
上記のようにして電機子コイル111から生じた磁束は、可動子120の内部を通過する。つまり、S極の電機子磁極114から出た磁束がN極の可動子磁極124に入り、この可動子磁極124を有する鉄心122に接する全ての永久磁石123を通過する。永久磁石123を出た磁束は、隣の磁極ブロック121の永久磁石123に入り、S極の可動子磁極124から出てN極の電機子磁極114に入る。つまり、本実施の形態に係る直動電動機100では、電機子110によって生じた磁束が可動子ブロック121の全ての永久磁石123を通過する。可動子120では、各鉄心122を永久磁石123が取り囲んでいるため、従来型の鉄心の2面にのみ永久磁石が取り付けられた構造の可動子に比べて、可動子磁極124に生じる磁束が増大される。したがって、直動電動機100における磁気効率が向上する。
<評価試験>
発明者は、本実施の形態に係る直動電動機100の性能を評価する試験を行った。試験では、従来型の可動子(以下、「従来手法」という)によって生じるギャップでの磁束密度と、本実施の形態に係る可動子(以下、「本手法」という)によって生じるギャップでの磁束密度とを検証し、両者を比較評価した。まず、従来手法について説明する。図7は、本試験において検証した従来手法における可動子の構成を示す断面図である。複数の板状の永久磁石150を磁化方向が上下方向となり、且つ、隣り合う永久磁石150の磁化方向が互いに逆向きとなるように水平方向に並べて配置し、これらの下側にヨークに相当する軟磁性体151を取り付け、簡易的に従来型の可動子を構成した。また、永久磁石150の上方に1mmの間隙を設けて電機子のティース部に相当する軟磁性体152を配置した。各永久磁石150の大きさは13×8×3[mm3]、永久磁石150の数は6個である。上記構成の場合のギャップに生じる磁束密度を計算すると、その結果は0.95〜1.01Tとなった。また、上記構成の従来手法の実験機におけるギャップの磁束密度を計測したところ、その結果は0.96Tとなった。
他方、複数の磁極ブロック121を作成し、本手法における可動子を構成した。可動子の上方にはティース部に相当する軟磁性体を配置し、ギャップの大きさは上記の従来手法と同じ1mmとした。各永久磁石の大きさは側面に20×20×3[mm3]と底面に25×25×4[mm3]、永久磁石の数は30個である。上記構成の場合のギャップに生じる磁束密度を計算すると、その結果は1.59〜1.76Tとなった。また、上記構成の本手法の実験機におけるギャップの磁束密度を計測したところ、その結果は1.74Tとなった。つまり、本手法では、ギャップにおける磁束密度が従来手法の約1.7倍となることが分かった。
(実施の形態2)
本実施の形態に係る直動電動機は、複数の磁極ブロックを横方向に同極が並び、可動方向に交互に異極が並ぶように配置した可動子を備える縦方向磁束型の直動電動機である。
図8は、本実施の形態に係る直動電動機の構成を示す斜視図であり、図9は、その電機子の構成を示す平面図である。図8に示すように、直動電動機200は、電機子210と、可動子220とを備える。また、図9に示すように、電機子210は、電機子コイル211と、ティース部212と、ヨーク部213とを有する。ヨーク部213は水平な板状をなしており、その上面からは横方向に長く延びたティース部212が上方に突出している。かかるティース部212は、前後方向に並ぶように複数設けられている。
ヨーク部213とティース部212とは電機子部材215として一体的に形成されている。かかる電機子部材215は、軟鉄、ソフトフェライト等の軟磁性体によって構成される。また、ティース部212は、直方体形状をなしており、各ティース部212には導線が巻回され電機子コイル211が形成される。電機子コイル211は、前後方向に3個設けられている。
次に、可動子220の構成について説明する。図8に示すように、可動子220は、電機子210の上方に配置される。図10は、可動子220の構成を示す平面図である。可動子220は、水平方向に延びる板状をなしており、複数の磁極ブロック121を有している。なお、磁極ブロック121の構成は、実施の形態1において説明した磁極ブロック121の構成と同様であるので、同一構成要素については同一符号を付し、その説明を省略する。
実施の形態1と同様に、直方体形状の磁極ブロック121のそれぞれは、面と面とを接して互いに接続される。隣接する2つの磁極ブロック121の可動子磁極124は互いに異なる磁極とされる。各磁極ブロック121は、可動子磁極124が下方を向き、可動子磁極124の1つの対角線が前後方向を向き、もう一つの対角線が左右方向を向くように配置される。即ち、菱形の可動子磁極124が前後左右方向に並ぶような可動子220が構成される。以下の説明では、菱形の可動子磁極124が頂点を突き合わせるようにして横方向に一列に並んだ一群の磁極ブロック121を、磁極ブロック121の「列」という。1つの列に含まれる全ての可動子磁極124は同極とされる。また、隣り合う列は互いに異極とされる。図10に示すように、1列目(最も前方の列)はS極とされ、2列目(前から2番目の列)はN極とされ、3列目はS極とされ、4列目はN極とされ、5列目はS極とされ、6列目はN極とされる。換言すれば、可動子220において、前後方向に1列ずつ可動子磁極124が反転し、一列の左右方向に同一の可動子磁極124が並ぶ。
また、複数の磁極ブロック121が並んだ構造体は、箱状の軟磁性体からなるヨーク225に収容される。したがって、各磁極ブロック121は可動子磁極124以外の磁極が外部に露出されず、このためヨーク225内に磁路が形成される。
上記のような構成の直動電動機200において、電機子コイル211に電流を流すと、電機子コイル211の周囲に磁界が発生する。図11は、電機子コイル211から生じた磁路を示す正面断面図である。なお、図11では、可動子磁極124がN極の列における断面を示している。各電機子コイル211の断面の回りに環状の磁路が形成される。このとき、ティース部212の可動子220との対向面が磁極(電機子磁極214)となる。
電機子コイル211に電流が流れると、電機子磁極214と可動子磁極124とが磁力によって吸引又は反発される。電機子コイル211に流れる電流が制御されることで、電機子コイル211によって生じる磁界が変化し、これによって可動子220が前後方向に移動する。S極の電機子磁極214から出た磁束はN極の可動子磁極124に入り、この可動子磁極124を有する鉄心122に接する全ての永久磁石123を通過する。永久磁石123を出た磁束は、隣の磁極ブロック121の永久磁石123に入り、S極の可動子磁極124から出てN極の電機子磁極114に入る。つまり、本実施の形態に係る直動電動機200では、電機子210によって生じた磁束が可動子ブロック121の全ての永久磁石123を通過する。可動子220では、各鉄心122を永久磁石123が取り囲んでいるため、従来型の鉄心の2面にのみ永久磁石が取り付けられた構造の可動子に比べて、可動子磁極124に生じる磁束が増大される。したがって、直動電動機100における磁気効率が向上する。
(実施の形態3)
本実施の形態では、複数の磁極ブロックを可動方向に交互に異極が並ぶように配置した可動子を備え、可動子を上下に挟むように電機子が配置された横方向磁束型の直動電動機について説明する。
図12は本実施の形態に係る直動電動機の正面図であり、図13はその部分断面側面図である。直動電動機300は、電機子310と、可動子320とを有する。図12に示すように、電機子310は2つの電機子コイル311が上下方向に対向配置され、その間に可動子320が配置される。
電機子310は、電機子コイル311と、ティース部312と、ヨーク部313とを有する。ヨーク部313は四角筒状をなしており、その上側内面及び下側内面からは複数のティース部が前後方向にそれぞれ一列に並ぶように内側に突出している。
ヨーク部313とティース部312とは電機子部材315として一体的に形成されている。かかる電機子部材315は、軟鉄、ソフトフェライト等の軟磁性体によって構成される。また、ティース部312は、直方体形状をなしており、各ティース部312には導線が巻回され電機子コイル311が形成される。電機子コイル311は、上側に3個、下側に3個の合計6個設けられている。
図13に示すように、可動子320は、複数の磁極ブロック121を有しており、これらの磁極ブロック121が前後方向に列状に並べられた構造となっている。なお、磁極ブロック121の構成は、実施の形態1において説明した磁極ブロック121の構成と同様であるので、同一構成要素については同一符号を付し、その説明を省略する。
直方体形状の磁極ブロック121のそれぞれは、前側の磁極ブロック121の背面と後側の磁極ブロック121の正面とを接して互いに接続される。隣接する2つの磁極ブロック121の可動子磁極124は互いに異なる磁極とされる。つまり、可動子磁極124が交互に反転するように各磁極ブロック121が前後に一列に並べられる。また、磁極ブロック121は上下方向にも隣り合う。上側の磁極ブロック121の可動子磁極124が上向きに、下側の磁極ブロック121の可動子磁極124が下向きになるように、2つの磁極ブロック121が上下方向に並べられる。これらの上下方向に隣り合う磁極ブロック121の可動子磁極124は互いに反対とされる。このため、隣り合う2つの磁極ブロック121の接合面は一方がS極となり他方がN極となる。したがって、隣り合う2つの磁極ブロック121が磁力によって互いに引きつけ合い、複数の磁極ブロック121を容易に並べて配置することができる。
また、複数の磁極ブロック121が並んだ構造体は、上下方向に開放された四角枠状の軟磁性体からなるヨーク325に収容される。したがって、各磁極ブロック121は可動子磁極124以外の磁極が外部に露出されず、このためヨーク325内に磁路が形成される。
上記のようにして配置された磁極ブロック121は、可動子磁極124が上方及び下方を向き、上下方向に並んだ一対の磁極ブロック121の可動子磁極124は互いに反対となる。つまり、一方の可動子磁極124がS極となり、他方の可動子磁極124はN極となる。また、前後方向に一列に並んだ磁極ブロック121の各可動子磁極124は可動方向に1つずつ反転する。つまり、上側の可動子磁極124は可動方向に1つずつ反転し、下側の可動子磁極124も可動方向に1つずつ反転する。
図14は可動子320の側面断面図である。図14において、矢印は磁化方向を示しており、極性はS→Nとなっている。鉄心122は、その5つの側面を取り囲む永久磁石123によって磁化される。S極が鉄心122に面する永久磁石123から出た磁束が鉄心122内を進む。鉄心122には5面に永久磁石123が取り付けられているため、これらの5つの永久磁石123のそれぞれから出た磁束が鉄心122の内部を進む。上側に設けられた磁極ブロック121では、それぞれの磁束が上方に進行して上側の可動子磁極124から外側の空間(電機子310との上側のギャップ)に出る。かかる磁束は放射状に水平方向に分岐し、隣の磁極ブロック121の可動子磁極124(N極)から鉄心122の内部に進入する。この鉄心122には、前後方向に隣り合う2つの磁極ブロック121それぞれからの磁束が進入する。この鉄心122には永久磁石123のN極が面しているため、磁束はさらにこの鉄心122の内部を進み、前方、左方、右方、後方のそれぞれに分岐して永久磁石123に入る。鉄心122の左方及び右方に設けられた永久磁石123から出た磁束はヨーク325内に入る。また、鉄心122の前方及び後方に設けられた永久磁石123から出た磁束は、この永久磁石123が隣の磁極ブロック121の永久磁石123に接していれば、その永久磁石123に入り、ヨーク325に接していれば、ヨーク325内に入る。ヨーク325内に入った磁束は、ヨーク325内を進んで隣の磁極ブロック121の永久磁石123に入る。
また、N極の可動子磁極124を有する上側の磁極ブロック121では、鉄心122内で磁束が下方にも進み、下側の永久磁石123に入る。さらに磁束は、この永久磁石123から下方の磁極ブロック121の上側の永久磁石123に入る。この下方の磁極ブロック121は、S極の可動子磁極124を有しており、各永久磁石123のS極が鉄心122に面している。このため、それぞれ永久磁石123から出た磁束が下方に進行して下側の可動子磁極124から外側の空間(電機子310との上側のギャップ)に出る。かかる磁束は放射状に水平方向に分岐し、隣の磁極ブロック121の可動子磁極124(N極)から鉄心122の内部に進入する。
上記のような構成の直動電動機300において、電機子コイル311に電流を流すと、電機子コイル311の周囲に磁界が発生する。図15は、電機子コイル311から生じた磁路を示す正面断面図である。各電機子コイル311の断面の回りに環状の磁路が形成される。このとき、ティース部312の可動子320との対向面が磁極(電機子磁極314)となる。
電機子コイル311に電流が流れると、電機子磁極314と可動子磁極124とが磁力によって吸引又は反発される。電機子コイル311に流れる電流が制御されることで、電機子コイル311によって生じる磁界が変化し、これによって可動子320が前後方向に移動する。S極の電機子磁極314から出た磁束はN極の可動子磁極124に入り、この可動子磁極124を有する鉄心122に接する全ての永久磁石123を通過する。永久磁石123を出た磁束は、隣の磁極ブロック121の永久磁石123に入り、S極の可動子磁極124から出てN極の電機子磁極314に入る。つまり、本実施の形態に係る直動電動機300では、電機子310によって生じた磁束が磁極ブロック121の全ての永久磁石123を通過する。可動子320では、各鉄心122を永久磁石123が取り囲んでいるため、従来型の鉄心の2面にのみ永久磁石が取り付けられた構造の可動子に比べて、可動子磁極124に生じる磁束が増大される。したがって、直動電動機300における磁気効率が向上する。
(実施の形態4)
本実施の形態では、先端が欠落した扇形板状をなす鉄心の外側円弧面以外の5つの面のそれぞれに永久磁石が取り付けられた複数の磁極ブロックが回転軸を中心とした環状方向である可動方向に並べて構成された回転子と、回転子の外側を囲繞するように配置された電機子とを有するラジアルギャップ電動機について説明する。
図16は本実施の形態に係るラジアルギャップ電動機の構成を示す側面断面図であり、図17はその平面断面図である。ラジアルギャップ電動機400は、電機子410と、可動子である回転子420とを備える。回転子420は、軟磁性体の回転軸426を有しており、回転軸426を中心として回転可能である。なお、以下の説明において、回転子420の回転方向を周方向、回転子420の回転半径方向を半径方向、回転軸426の長手方向を軸方向という。
電機子410は、電機子コイル411と、ティース部412と、ヨーク部413とを有する。ヨーク部413は円環状をなしており、その内周面からは周方向に等間隔に並ぶように複数のティース部412が半径方向内側に突出している。
ヨーク部413とティース部412とは電機子部材415として一体的に形成されている。かかる電機子部材415は、軟鉄、ソフトフェライト等の軟磁性体によって構成される。また、ティース部412は、断面視において四角形状をなしており、各ティース部412には導線が巻回され電機子コイル411が形成される。電機子コイル411は、周方向に6個設けられている。
次に、回転子420の構成について説明する。図17に示すように、回転子420は、電機子410の半径方向内側に配置される。回転子420は、円盤乃至円柱状をなしている。かかる回転子420は、複数の磁極ブロック421を有しており、これらの磁極ブロック421が周方向に並べられた構造となっている。
図18は、磁極ブロック421の構成を示す分解斜視図である。磁極ブロック421は、軸方向視において先端が円弧状に欠落した扇形(以下、「円環扇形」という)の板状をなしており、円環扇形の板状をなす軟磁性体の鉄心422と、5つの板状の永久磁石423a〜423eとを有している。永久磁石423a及び423bは、鉄心422の一面と同じ又は若干大きい円環扇形の主面を有しており、鉄心422の円環扇形の2つの面を隠すようにそれぞれに取り付けられる。永久磁石423c及び423dは、鉄心の厚さと同一又は若干大きい幅を有しており、鉄心422の側面を隠すようにそれぞれに取り付けられる(図18では永久磁石423dを示していない。)。また、永久磁石423eは、鉄心422の小さい方の円弧面、即ち内側円弧面と同一の外径の円弧板状をなしており、鉄心422の内側円弧面を隠すようにこれに取り付けられる。つまり、鉄心422には、外側円弧面を開放して囲繞するように永久磁石423a〜423eが取り付けられる。また、各永久磁石423a〜423eは、鉄心422に同一の磁極を向けて配置される。鉄心422の開放された外側円弧面は回転子磁極424となる。後述するように、回転子磁極424は、各永久磁石423a〜423eが鉄心422を向く面の磁極と同一磁極となる。また、各永久磁石423a〜423eの外側を向く面(鉄心422とは反対側の面)は回転子磁極424の反対磁極となる。
図17を参照する。円環扇形板状の磁極ブロック421のそれぞれは、側面同士を接して互いに接続される。隣接する2つの磁極ブロック421の回転子磁極424は互いに異なる磁極とされる。つまり、回転子磁極424が交互に反転するように各磁極ブロック421が周方向に並べられる。このため、隣り合う2つの磁極ブロック421の接合面は一方がS極となり他方がN極となる。したがって、隣り合う2つの磁極ブロック421が磁力によって互いに引きつけ合い、複数の磁極ブロック421を容易に周方向に並べて配置することができる。
また、複数の磁極ブロック421が並んだ構造体は、軸長方向の両側から円盤状の軟磁性体からなるヨーク425に挟まれる。したがって、各磁極ブロック421は回転子磁極424以外の磁極が外部に露出されず、このためヨーク425内に磁路が形成される。
また、図17に示すように、鉄心422における回転子磁極424の面の幅は、ティース部412の幅と同一とされる。このため、電機子410によって生じた磁束の全てが回転子磁極424に漏れることなく出入りする。また、電機子コイル411の半径方向内側に対向するように、永久磁石423a、423b及びヨーク425が配置される。電機子コイル411の半径方向内側の空間は、従来ではトルク発生に寄与しない空間であったが、本実施の形態に係るラジアルギャップ電動機400では、この空間に永久磁石423a、423b及びヨーク425を配置することができ、磁気効率を向上させることができる。
図19は回転子420の磁路を説明するための平面断面図であり、図20は図19のA−A線による断面図である。図19及び図20において、矢印は磁化方向を示しており、極性はS→Nとなっている。鉄心422は、その周囲を取り囲む永久磁石423a〜423eによって磁化される。S極が鉄心422に面する永久磁石423a〜423eから出た磁束が鉄心422内を進む。鉄心422には5面に永久磁石423a〜423eが取り付けられているため、これらの5つの永久磁石423a〜423eのそれぞれから出た磁束が鉄心422の内部を進み、それぞれの磁束が半径方向外向きに進行して回転子磁極424から外側の空間(電機子410とのギャップ)に出る。かかる磁束は放射状に周方向及び軸方向に分岐し、隣の磁極ブロック421のN極の回転子磁極424から鉄心422の内部に進入する。この鉄心422には、隣り合う2つの磁極ブロック421からの磁束が進入する。この鉄心422には永久磁石423a〜423eのN極が面しているため、磁束はさらにこの鉄心422の内部を進み、軸方向、周方向、及び半径方向内向きのそれぞれに分岐して永久磁石423a〜423eに入る。永久磁石423c及び423dからは隣接する永久磁石423c及び423dへと磁束が戻る。永久磁石423a及び423bから出た磁束はヨーク425を進行し、隣の磁極ブロック421の永久磁石423a及び423bに入る。また、永久磁石423eから出た磁束は回転軸426を進行し、隣の磁極ブロック421の永久磁石423eに入る。
回転子磁極424は、当該回転子磁極424を含む鉄心422に面した永久磁石423a〜423eの磁極と同一極性となる。つまり、鉄心422に永久磁石423a〜423eのS極が面している場合、当該鉄心422の回転子磁極424はS極となり、鉄心422に永久磁石423a〜423eのN極が面している場合、当該鉄心422の回転子磁極424はN極となる。
上記のような構成のラジアルギャップ電動機400において、電機子コイル411に電流を流すと、電機子コイル411の周囲に磁界が発生する。図21は、電機子コイル411から生じた磁路を示す断面図である。各電機子コイル411の断面の回りに環状の磁路が形成される。このとき、ティース部412の回転子420との対向面が磁極(電機子磁極414)となる。
電機子コイル411によって生じた磁束は、ギャップを通じて回転子磁極424から鉄心422に入り、永久磁石423a〜423dを通過する。永久磁石423a,423bを通過した磁束はヨーク425から空気中に出て電機子コイル411の外側を通り、ヨーク部413に入る。また、永久磁石423,423dを通過した磁束は、隣の磁極ブロック421の永久磁石423c,423dを介して鉄心422に入り、S極の回転子磁極424からギャップに出て、これに対向するN極の電機子磁極414に入る。なお、電機子コイル411によって生じた磁束が永久磁石423eを通過してもよいし、通過しなくてもよい。当該磁束が永久磁石423eを通過するか否かはラジアルギャップ電動機400の構成による。例えば、鉄心422の半径方向寸法が小さく電機子磁極414と永久磁石423eとの距離が短ければ、電機子磁極414から生じた磁束が永久磁石423eを通過しやすく、鉄心422の半径方向寸法が大きく電機子磁極414と永久磁石423eとの距離が長ければ、電機子磁極414から生じた磁束が永久磁石423eを通過しにくい。本実施の形態に係るラジアルギャップ電動機400は、各鉄心422を永久磁石423a〜423eが取り囲んでいるため、従来型の鉄心の2面にのみ永久磁石が取り付けられた構造の回転子に比べて、回転子磁極424に生じる磁束が増大される。したがって、ラジアルギャップ電動機400における磁気効率が向上する。
(実施の形態5)
本実施の形態では、円環扇形板状をなす鉄心の1つの主面以外の5つの面のそれぞれに永久磁石が取り付けられた複数の磁極ブロックが回転軸を中心とした環状方向である可動方向に並べて構成された回転子と、回転子と軸方向に向き合うように配置された円盤状の電機子とを有するアキシャルギャップ電動機について説明する。
図22は本実施の形態に係るアキシャルギャップ電動機の構成を示す側面断面図である。アキシャルギャップ電動機500は、電機子510と、可動子である回転子520とを備える。回転子520は、軟磁性体の回転軸526を有しており、回転軸526を中心として回転可能である。電機子510と回転子520とのそれぞれは円盤状をなしており、軸方向に所定距離のギャップを介して配置されている。
電機子510は、電機子コイル511と、ティース部512と、ヨーク部513とを有する。図23は、電機子510の構成を示す平面図である。ヨーク部513は円盤状をなしており、その片面からは周方向に等間隔に並ぶように実質的に扇形の複数のティース部512が軸方向に突出している。
ヨーク部513とティース部512とは電機子部材515として一体的に形成されている。かかる電機子部材515は、軟鉄、ソフトフェライト等の軟磁性体によって構成される。また、ティース部512は、平面視において実質的に扇形をなしており、各ティース部512には導線が巻回され電機子コイル511が形成される。電機子コイル511は、周方向に6個設けられている。
次に、回転子520の構成について説明する。図22に示すように、回転子520は、電機子510と軸方向に対向して配置される。かかる回転子520は、複数の磁極ブロック521を有しており、これらの磁極ブロック521が周方向に並べられた構造となっている。
図24は、磁極ブロック521の構成を示す分解斜視図である。磁極ブロック521は、軸方向視において円環扇形の板状をなしており、円環扇形の板状をなす軟磁性体の鉄心522と、5つの板状の永久磁石523a〜523eとを有している。永久磁石523aは、鉄心522の内側円弧面と同一の外径の円弧板状をなしており、鉄心522の内側円弧面を隠すようにこれに取り付けられる。永久磁石523bは、鉄心522の外側円弧面と同一の内径の円弧板状をなしており、鉄心522の外側円弧面を隠すようにこれに取り付けられる。永久磁石523c及び523dは、鉄心の厚さと同一又は若干大きい幅を有しており、鉄心522の側面を隠すようにそれぞれに取り付けられる。永久磁石523eは、鉄心522の一面と同じ又は若干大きい円環扇形の主面を有しており、鉄心522の円環扇形の片面を隠すように取り付けられる。つまり、鉄心522には、円環扇形の1つの主面を開放して囲繞するように永久磁石523a〜523eが取り付けられる。また、各永久磁石523a〜523eは、鉄心522に同一の磁極を向けて配置される。鉄心522の開放された一面は回転子磁極524となる。後述するように、回転子磁極524は、各永久磁石523a〜523eが鉄心522を向く面の磁極と同一磁極となる。また、各永久磁石523a〜523eの外側を向く面(鉄心522とは反対側の面)は回転子磁極524の反対磁極となる。
図25は、回転子520の構成を示す底面図である。円環扇形板状の磁極ブロック521のそれぞれは、側面同士を接して互いに接続される。隣接する2つの磁極ブロック521の回転子磁極524は互いに異なる磁極とされる。つまり、回転子磁極524が交互に反転するように各磁極ブロック521が周方向に並べられる。このため、隣り合う2つの磁極ブロック521の接合面は一方がS極となり他方がN極となる。したがって、隣り合う2つの磁極ブロック521が磁力によって互いに引きつけ合い、複数の磁極ブロック521を容易に周方向に並べて配置することができる。
また、複数の磁極ブロック521が並んだ構造体は、軸方向の一方側が円環凹状に窪んだ円盤状の軟磁性体からなるヨーク525に収容される。したがって、各磁極ブロック521は回転子磁極524以外の磁極が外部に露出されず、このためヨーク525内に磁路が形成される。
また、図22に示すように、鉄心522における回転子磁極524の面の半径方向長さは、ティース部512の半径方向長さと同一とされる。このため、電機子510によって生じた磁束の全てが漏れることなく回転子磁極524に出入りする。また、電機子コイル511と軸方向に対向するように、永久磁石523a及び523bが配置される。電機子コイル511の軸方向に対向する空間は、従来ではトルク発生に寄与しない空間であったが、本実施の形態に係るアキシャルギャップ電動機500では、この空間に永久磁石523a、523bを配置することができ、磁気効率を向上させることができる。
図26及び図27は、回転子520の磁路を説明するための図であり、図26は回転子520の底面図であり、図27は図26におけるB−B線による断面図である。図26及び図27において、矢印は磁化方向を示しており、極性はS→Nとなっている。鉄心522は、その周囲を取り囲む永久磁石523a〜523eによって磁化される。S極が鉄心522に面する永久磁石523a〜523eから出た磁束が鉄心522内を進む。鉄心522には5面に永久磁石523a〜523eが取り付けられているため、これらの5つの永久磁石523a〜523eのそれぞれから出た磁束が鉄心522の内部を進み、それぞれの磁束が軸方向(前方)に進行して回転子磁極524から外側の空間(電機子510とのギャップ)に出る。かかる磁束は放射状に周方向及び半径方向に分岐し、一部は隣の磁極ブロック521のN極の回転子磁極524から鉄心522の内部に進入し、その他はヨーク525に入り、永久磁石523a,523b,及び523eに戻る。N極の回転子磁極524を有する鉄心522には、隣り合う2つの磁極ブロック521からの磁束が進入する。この鉄心522には永久磁石523a〜523eのN極が面しているため、磁束はさらにこの鉄心522の内部を進み、半径方向外側及び内側、周方向両側、後方のそれぞれに分岐して永久磁石523a〜523eに入る。永久磁石523c及び523dからは隣接する永久磁石523c及び523dへと磁束が戻る。永久磁石525a、523b及び523eから出た磁束はヨーク525を進行し、一部は隣の磁極ブロック521の永久磁石525a、523b及び523eに入り、その他はヨーク525から外部へ出て電機子510側へと進行する。
回転子磁極524は、当該回転子磁極524を含む鉄心522に面した永久磁石523a〜523eの磁極と同一極性となる。つまり、鉄心522に永久磁石523a〜523eのS極が面している場合、当該鉄心522の回転子磁極524はS極となり、鉄心522に永久磁石523a〜523eのN極が面している場合、当該鉄心522の回転子磁極524はN極となる。
上記のような構成のアキシャルギャップ電動機500において、電機子コイル511に電流を流すと、電機子コイル511の周囲に磁界が発生する。図28は、電機子コイル511から生じた磁路を示す側面断面図である。各電機子コイル511の断面の回りに環状の磁路が形成される。このとき、ティース部512の回転子520との対向面が磁極(電機子磁極514)となる。
電機子コイル511によって生じた磁束は、ギャップを通じて回転子磁極524から鉄心522に入り、永久磁石523a〜523dを通過する。永久磁石523a,523bを通過した磁束はヨーク525から空気中に出てヨーク部513に入り、電機子コイル511の外側を通ってS極の電機子磁極514に戻る。また、永久磁石523c,523dを通過した磁束は、隣の磁極ブロック521の永久磁石523c,523dを介して鉄心522に入り、S極の回転子磁極524からギャップに出て、これに対向するN極の電機子磁極514に入る。なお、電機子コイル511によって生じた磁束が永久磁石523eを通過してもよいし、通過しなくてもよい。当該磁束が永久磁石523eを通過するか否かはアキシャルギャップ電動機500の構成による。例えば、鉄心522の軸方向寸法が小さく電機子磁極514と永久磁石523eとの距離が短ければ、電機子磁極514から生じた磁束が永久磁石523eを通過しやすく、鉄心522の軸方向寸法が大きく電機子磁極514と永久磁石523eとの距離が長ければ、電機子磁極514から生じた磁束が永久磁石523eを通過しにくい。本実施の形態に係るアキシャルギャップ電動機500は、各鉄心522を永久磁石523a〜523eが取り囲んでいるため、従来型の円環扇形板状の永久磁石が電機子に対向配置された構造の回転子に比べて、回転子磁極524に生じる磁束が増大される。したがって、アキシャルギャップ電動機500における磁気効率が向上する。
(実施の形態6)
本実施の形態では、両面に磁極を有する円盤状の回転子と、その両側にそれぞれギャップを隔てて配置される電機子とを有するダブルステータ型のアキシャルギャップ電動機について説明する。
図29は本実施の形態に係るアキシャルギャップ電動機の構成を示す側面断面図である。アキシャルギャップ電動機600は、電機子510と、可動子である回転子620とを備える。回転子620は、回転軸627を有しており、回転軸627を中心として回転可能である。本実施の形態に係るアキシャルギャップ電動機600は、回転子620の軸方向両側のそれぞれに実施の形態5と同様の構成の電機子510を有する。
回転子620の構成について説明する。図29に示すように、回転子620は、電機子510と軸方向に対向して配置される。かかる回転子620は、複数の磁極ブロック521を有しており、これらの磁極ブロック521が軸方向の両面それぞれにおいて周方向に並べられた構造となっている。なお、磁極ブロック521の構成は、実施の形態5において説明した磁極ブロック521の構成と同様であるので、同一構成要素については同一符号を付し、その説明を省略する。
図30は回転子620の構成を示す平面図であり、図31は図30におけるC−C線による断面図であり、図32は図30におけるD−D線による断面図である。円環扇形板状の磁極ブロック521のそれぞれが側面同士を接して互いに接続され、2つの円盤が構成される。これらの円盤が、互いに永久磁石523e同士を固着することにより接合される。ここで、2つの円盤の一方の永久磁石523eのS極の面と、他方の永久磁石523eのN極の面とが接合される。つまり、実施の形態5において説明した回転子520のヨーク525を取り除いた部分が、互いに背中合わせで接合されたごとき構成となる。かかる2つの円盤が接合された構造体の周囲に環状のヨーク625が配置され、また回転軸627に取り付けられた環状のヨーク626が前記構造体の内側に配置されて、回転子620が構成される。
図30乃至図32に、回転子620の磁路を示す。図30乃至図32において、矢印は磁化方向を示しており、極性はS→Nとなっている。鉄心522は、その周囲を取り囲む永久磁石523a〜523eによって磁化される。S極が鉄心522に面する永久磁石523a〜523eから出た磁束が鉄心522内を進む。鉄心522には5面に永久磁石523a〜523eが取り付けられているため、これらの5つの永久磁石523a〜523eのそれぞれから出た磁束が鉄心522の内部を進み、それぞれの磁束が軸方向(前方)に進行して回転子磁極524から外側の空間(電機子510とのギャップ)に出る。かかる磁束の殆どが周方向に分岐し、隣の磁極ブロック521のN極の回転子磁極524から鉄心522の内部に進入する。N極の回転子磁極524を有する鉄心522には、永久磁石523a〜523eのN極が面しているため、磁束はさらにこの鉄心522の内部を進み、半径方向外側及び内側、周方向両側、軸方向のそれぞれに分岐して永久磁石523a〜523eに入る。永久磁石523c及び523dからは隣接する永久磁石523c及び523dへと磁束が進み、永久磁石523eからは隣接する永久磁石523eへと磁束が進む。永久磁石523a及び523bから出た磁束はヨーク625及び626を進行し、軸方向に隣の永久磁石523a及び523bに入る。
回転子磁極524は、当該回転子磁極524を含む鉄心522に面した永久磁石523a〜523eの磁極と同一極性となる。つまり、鉄心522に永久磁石523a〜523eのS極が面している場合、当該鉄心522の回転子磁極524はS極となり、鉄心522に永久磁石523a〜523eのN極が面している場合、当該鉄心522の回転子磁極524はN極となる。
上記のような構成のアキシャルギャップ電動機600において、電機子コイル511に電流を流すと、電機子コイル511の周囲に磁界が発生する。図33は、電機子コイル511から生じた磁路を示す側面断面図である。各電機子コイル511の断面の回りに環状の磁路が形成される。このとき、ティース部512の回転子620との対向面が磁極(電機子磁極514)となる。
電機子コイル511によって生じた磁束は、ギャップを通じて回転子磁極524から鉄心522に入り、永久磁石523a〜523dを通過する。永久磁石523a,523bを通過した磁束はヨーク625から空気中に出てヨーク部513に入り、電機子コイル511の外側を通ってS極の電機子磁極514に戻る。また、永久磁石523c,523dを通過した磁束は、隣の磁極ブロック521の永久磁石523c,523dを介して鉄心522に入り、S極の回転子磁極524からギャップに出て、これに対向するN極の電機子磁極514に入る。なお、電機子コイル511によって生じた磁束が永久磁石523eを通過してもよいし、通過しなくてもよい。当該磁束が永久磁石523eを通過するか否かはアキシャルギャップ電動機600の構成による。例えば、鉄心522の軸方向寸法が小さく電機子磁極514と永久磁石523eとの距離が短ければ、電機子磁極514から生じた磁束が永久磁石523eを通過しやすく、鉄心522の軸方向寸法が大きく電機子磁極514と永久磁石523eとの距離が長ければ、電機子磁極514から生じた磁束が永久磁石523eを通過しにくい。本実施の形態に係るアキシャルギャップ電動機600は、各鉄心522を永久磁石523a〜523eが取り囲んでいるため、従来型の円環扇形板状の永久磁石が電機子に対向配置された構造の回転子に比べて、回転子磁極524に生じる磁束が増大される。したがって、アキシャルギャップ電動機600における磁気効率が向上する。
(その他の実施の形態)
上記の実施の形態1乃至6においては、磁極ブロックのそれぞれが固有の永久磁石を有する構成について述べたが、これに限定されるものではない。隣り合う磁極ブロックが1つの永久磁石を共有する構成であってもよい。図34はダブルステータ型のアキシャルギャップ電動機における可動子の構成の変形例を示す平面図であり、図35は図34のE−E線による断面図である。図34に示すように、この例に示す回転子720では、半径方向に延びる板状の永久磁石723aが、周方向に隣り合う磁極ブロック721によって共有される。つまり、周方向に隣り合う2つの鉄心722の間には、1つの永久磁石723aが配置される。この永久磁石723aのS極の面は1つの鉄心722に接合されており、この鉄心722の回転子磁極724がS極とされる。他方、永久磁石723aのN極の面はもう一つの鉄心722に接合されており、この鉄心722の回転子磁極724がN極とされる。また図35に示すように、この例に示す回転子720では、円環扇形板状の永久磁石723bもまた、軸方向に隣り合う磁極ブロック721によって共有される。詳細に説明すると、軸方向に隣り合う2つの鉄心722の間に1つの永久磁石723bが配置される。この永久磁石723bのS極の面は1つの鉄心722に接合されており、この鉄心722の回転子磁極724がS極とされる。他方、永久磁石723bのN極の面はもう一つの鉄心722に接合されており、この鉄心722の回転子磁極724がN極とされる。