JP6506579B2 - 回転駆動装置または回転駆動装置を備える遠心式ポンプ装置 - Google Patents

回転駆動装置または回転駆動装置を備える遠心式ポンプ装置 Download PDF

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Description

本発明は、固定子と回転子の間に隔壁を備えたキャンドモータに関し、特に、磁石スペースに磁性体を有効に配置することにより磁力を強め、高トルク化や高効率化、耐熱性の向上を図るキャンドモータまたはキャンドモータ構造を用いたクリーンポンプに関する。
水中ポンプやケミカル(化学薬品)リーンポンプ等に用いられるキャンドモータは、ハウジングのモータの固定子と回転子の間にキャン(隔壁)を備えている。このような構造のキャンドモータまたはキャンドモータ構造を用いた遠心式ポンプ装置は、隔壁によってモータの固定子側をポンプ部(回転子側)から隔離密閉することができる。
このような構成とすることにより、遠心式ポンプ装置は、流体にモータの固定子が接触せず、衛生の面で有利である。しかしながら、モータの固定子と回転子の間に隔壁を備えると、モータギャップが広くなる。モータギャップの拡大は、固定子と回転子との間で有効に作用する磁束密度の低下につながり、モータ効率、モータ出力の低下を招いてしまう可能性がある。
特開2002−354721号公報(特許文献1)には、隣接する磁石の極性の配向を異ならせることによって磁力強化を図り、モータ効率や出力の低下を抑えるように構成されたロータ磁石配列が開示されている。
キャンドモータに限らず、一般的に磁力強化の方法として、たとえば、特許第4474547号(特許文献2)、国際公開第2011/013483号明細書(特許文献3)に見られるようにロータ磁石配列をハルバッハ型配列とする方法が知られている。ハルバッハ型配列を採用することにより磁力がより遠方まで届き、さらに磁極の切替わり方が正弦波状となることで、高トルク化や高効率化、低コギングトルク化を図ることができる。このうち、特に特許文献3には、磁石スペースの一部で隔壁と反対側に磁性体を配置した構造が開示されている。この磁性体により、空気中への漏れ磁束が減少し、それによって永久磁石が持つ吸着力を増幅して磁力強化を行なうことができる。
特許第4482708号(特許文献4),特許第5046051号(特許文献5)には、固定子を二重構造とした特徴を有しているモータが記載されている。このうち、特に特許文献5には、アキシアルギャップ型モータにおいて、ロータ磁石の一部に磁性体を配置して磁力の集束性を高める構造が開示されている。
特開2002−354721号公報 特許第4474547号公報 国際公開第2011/013483号明細書 特許第4482708号公報 特許第5046051号公報
固定子と回転子の間に隔壁を備えたキャンドモータでは、この目的を達成する手段としてたとえば、上述のようにロータ磁石をハルバッハ型配列とする構造や、さらにその一部に磁性体を配置して磁力の集束性を高めた構造が採用される。キャンドモータにおいては、隔壁により生じるモータギャップが広いため、隔壁の反対側に位置するコイルまで、有効に磁力が到達する永久磁石をロータに配設することが望まれる。
しかしながら、キャンドモータの場合は、ロータの永久磁石(回転子側)をポンプ部の羽根車等に埋め込む構造が採用される場合が多く、寸法や重量等の制約により磁石体積をさらに増加させて磁力強化を図ることが困難となる場合がある。
また、ハルバッハ型配列を採用する場合は、磁力強化の効果がある一方で、隣接配置される永久磁石同士の接合部分では、常に強い反磁界が干渉し合い、お互いの磁場を弱める方向へ作用する。このため、パーミアンス係数が低下する傾向がある。パーミアンス係数とは、永久磁石の熱減磁に対する耐性を示す係数であり、値が大きくなる程、耐性が高くなる。パーミアンス係数が低下すると永久磁石は温度の上昇とともに熱減磁が生じる比率が増大するため、温度上昇を伴う場合には、磁力強化の効果が低減される場合がある。
さらに、キャンドモータにおいては、機器全体のサイズの制約により、設計上、磁石形状は扁平型に近い形状となってしまう場合が多い。永久磁石は一般的に着磁(以下、磁化とも称する。)方向に対し磁石厚が薄くなるほど、パーミアンス係数が低くなる傾向にある。そのため、キャンドモータでのハルバッハ配列を用いた場合、十分なパーミアンス係数が達成できない場合がある。
そこで、本願発明の主たる目的は、上記課題に鑑み、複数の永久磁石間の磁力の干渉による影響を減少させて、高トルク化、高効率化を実現することが可能な、回転駆動装置および回転駆動装置を備える遠心式ポンプ装置を提供することである。
本発明による回転駆動装置は、隔壁で仕切られた第1の室および第2の室を含むハウジングと、第1の室において隔壁に沿って回転可能に設けられたロータと、隔壁を介してロータを駆動させる駆動手段とを備える。ロータは、回転方向に配列された複数の第1の永久磁石と、回転方向に隙間を開けて配列される複数の第2の永久磁石とを含む。各第1の永久磁石は、ロータの回転方向と直交する方向に着磁され、隣接する2つの第1の永久磁石の磁極は互いに異なる。各第2の永久磁石は、ロータの回転方向に着磁されるとともに、隣接する他の第2の永久磁石は、同じ磁極が対向するように配置される。各第1の永久磁石は、隙間に当該第1の永久磁石の隔壁側が面するように配置される。各第1の永久磁石の隔壁側の磁極は、対応する隙間に面する第2の永久磁石の磁極と同じとされ、隙間には、それぞれ第1の磁性体が設けられる。
好ましくは、ロータは、第1の永久磁石の隔壁側と反対側に配置される第2の磁性体をさらに備える。
さらに好ましくは、隔壁は、ロータの回転軸方向と直交する平面状に形成される。
さらに好ましくは、隔壁は、ロータの回転軸方向に軸方向を有する円筒状に形成されている。
さらに好ましくは、第1の永久磁石の周方向の長さ寸法が、第2の永久磁石の周方向の長さ寸法に比して大きく設定される。
さらに好ましくは、第1の永久磁石の両磁極間の寸法は、第2の永久磁石の隔壁側から反対側までの寸法に比して、小さく設定される。
この発明は、他の局面では、遠心式ポンプ装置のロータは、回転時の遠心力によって液体を送るインペラである。
本発明の回転駆動装置または回転駆動装置を備える遠心式ポンプ装置によれば、第2の永久磁石の磁極が対向する隙間に、第1の永久磁石の隔壁側の磁極が第2の永久磁石と同じ磁極で面するとともに、この隙間に第1の磁性体が配置される。この隙間により、第1の永久磁石および第2の永久磁石において、従来のハルバッハ配列構造のように直接接触する部分で磁界同士が干渉しあう箇所が減少するため、磁力の減衰が抑制できる。さらに、第1の永久磁石および第2の永久磁石の隙間に第1の磁性体を設けることによって、第1の磁性体を設けない場合と比較して磁力強化を図るとともにパーミアンス係数の低下が防止される。
この発明の実施の形態1による遠心式ポンプ装置のポンプ部の外観を示す正面図および側面図である。 図1のAA−AA線断面図である。 図1のBB−BB線に沿った要部を拡大した断面図である。 図2のCC−CC線断面図である。 図2のDD−DD線断面図からインペラを取り外した状態を示す断面図である。 図2のEE−EE線断面図からインペラを取り外した状態を示す断面図である。 図2のFF−FF線断面図である。 比較例としてのハルバッハ型配列された永久磁石によって構成されるロータ構造において、発生する磁力を表す図である。 図8のGG部の拡大図である。 図3のロータ構造における磁力を示す図である。 図10のHH部の拡大図である。 比較例としてのハルバッハ型配列された永久磁石によって構成されるインペラの浮上位置を示す図である。 実施の形態1のポンプ部のインペラの浮上位置を説明するための図である。 実施の形態1における、ロータ構造の第1の変形例を説明する図である。 実施の形態1における、ロータ構造の第2の変形例を示す図である。 図15のII部の拡大断面図である。 実施の形態1における、ロータ構造の第3の変形例を示す図である。 図17のJJ部の拡大断面図である。 実施の形態1における、駆動手段の第1の変形例を示す図である。 実施の形態1における、駆動手段の第2の変形例を示す図である。 円筒状の隔壁を有する実施の形態2における、ロータ構造を示す図である。 実施の形態2における、ロータ構造の第1の変形例を示す図である。 実施の形態2における、ロータ構造の第2の変形例を示す図である。 実施の形態2における、ロータ構造の第3の変形例を示す図である。 実施の形態3における、ラジアル方向の動圧力を発生する動圧溝が設けられたポンプ部の構造の第1の例を説明する図である。 実施の形態3における、動圧溝の第2の例を示す図である。 実施の形態3における、動圧溝の第3の例を示す図である。 実施の形態3における、動圧溝の第4の例を示す図である。 実施の形態3における、動圧溝の第5の例を示す図である。 実施の形態3における、インペラの永久磁石を減らした変形例を示す図である。 実施の形態3における、ポンプ部の変形例を示す図である。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
[実施の形態1]
図1は、本実施の形態に従う回転駆動装置を備える遠心式ポンプ装置の外観を示す二面図である。
図1を参照して、遠心式ポンプ装置のポンプ部(以下、回転駆動装置とも称する)1は、非磁性材料で形成されたハウジング2と、ハウジング2内に回転可能に収納されたインペラ10と、コイル20とを備えている。
ポンプ部1のハウジング2は、円柱状の本体部3と、本体部3の一方の端面の中央部からほぼ垂直に設けられた円筒状の流入ポート4と、本体部3の外周面に設けられた円筒状の流出ポート5とを含む。流出ポート5は、本体部3の外周面の接線方向に延在している。
図2は、ハウジング2内の構成を説明する図1のAA−AA線に沿う断面図である。ハウジング2内には、隔壁6が設けられている。この隔壁6によりハウジング2は、主にポンプ室(「第1の室」、とも称する。)7およびモータ室(「第2の室」、とも称する。)8に仕切られている。このうち、ポンプ室7内には、インペラ10が回転可能に設けられている。また、モータ室8には、コア18およびコイル20が設けられている。
インペラ10は、ロータ100,シュラウド11,12およびベーン13を有している。2枚のシュラウド11,12は、それぞれの中央に貫通孔10aが形成された円板状に形成されている。シュラウド11は、流入ポート4側に配置され、シュラウド12は隔壁6側に配置される。シュラウド11,12およびベーン13は、非磁性材料で形成されている。
2枚のシュラウド11,12の間には、複数(この場合は6枚)のベーン13で仕切られた複数(この場合は6つ)の液体通路14が形成されている。液体通路14は、後述する図4に示すように、インペラ10の中央部の貫通孔10aと連通しており、インペラ10の貫通孔10aを始端とし、外周縁まで徐々に幅が広がるように延びている。そして、複数のベーン13が同一形状に形成されて等角度間隔で設けられることにより、複数の液体通路14は等角度間隔で、かつ同じ形状に形成されている。
インペラ10が回転中心軸S0を中心として回転駆動されると、流入ポート4から流入した液体は、遠心力によって貫通孔10aから液体通路14を介してインペラ10の外周部に送られ、流出ポート5から流出する。
また、シュラウド11には永久磁石15が埋め込まれており、シュラウド11に対向するポンプ室7の内壁には、永久磁石15を吸引する永久磁石16が埋め込まれている。永久磁石15,16は、インペラ10をモータ室8と反対側、換言すれば流入ポート4側に吸引(付勢)して、インペラ10の軸方向位置を所望の位置に保持している。
なお、シュラウド11およびポンプ室7の内壁にそれぞれ永久磁石15,16を設ける代わりに、シュラウド11およびポンプ室7の内壁の一方に永久磁石を設け、他方に磁性体を設けてもよい。また、シュラウド11自体を永久磁石15または磁性体で形成してもよい。また、磁性体としては軟質磁性体と硬質磁性体のいずれを使用してもよい。
また、永久磁石16は、1つでもよいし、複数でもよい。永久磁石16が1つの場合は、永久磁石16はリング状に形成される。また、永久磁石16が複数の場合は、複数の永久磁石16は等角度間隔で同一の円に沿って配置される。永久磁石15も、永久磁石16と同様であり、1つでもよいし、複数でもよい。
このインペラ10のシュラウド12側には、ロータ100が設けられている。ロータ100には、複数の第1の永久磁石110と、第2の永久磁石120とが周状に配列されている。
図3は、図1のBB−BB線に沿ったインペラ10の隔壁6側の要部を拡大した断面図である。
ロータ100は、回転方向に配列された複数の第1の永久磁石110と、第1の永久磁石110の列の隔壁側111に回転方向に隙間を設けて配列される複数の第2の永久磁石120とを備える。各第1の永久磁石110は、ロータ100の回転方向と直交する方向に着磁され、隣接する2つの第1の永久磁石110の磁極は互いに異なる。
また、各第2の永久磁石120は、ロータ100の回転方向に着磁され、各第2の永久磁石120は、隣接する他の第2の永久磁石120と同じ磁極、すなわち、N極とN極または、S極とS極同士が対向するように配設される。2つの第2の永久磁石120の対向する磁極(N極とN極またはS極とS極)の間には、所定間隔の隙間130が形成される。この隙間130には、第1の永久磁石110の隔壁側111が面している。第2の永久磁石120のN極同士が対向する隙間130には、第1の永久磁石110のN極が面し、また、第2の永久磁石120のS極同士が対向する隙間130には、第1の永久磁石110のS極が面している。そして、各隙間130は、隔壁6側に対向する一つの側面が開放された凹状に形成されている。
実施の形態1では、第1の永久磁石110の数と第2の永久磁石120の数とは同じである。第2の永久磁石120の周方向の寸法L2は、第1の永久磁石110の周方向の寸法L1より短い。そして、第2の永久磁石120の周方向の中央部120c(L2/2)を、第1の永久磁石110の周方向に隣り合う磁石同士の境界と一致させると、第2の永久磁石120,120間には、周方向に一定間隔を置いて複数の隙間130が形成される。
各隙間130の周方向の長さは、所定寸法W1であり、この隙間には第1の磁性体140が設けられる。実施の形態1では、第1の磁性体140は、たとえば、鉄などの透磁率の高い材料(軟磁性体)で形成される。
図3の構成の例では、第1の磁性体140の隔壁6に対向する側面141は、両側に隣接配置される第2の永久磁石120の側面121に対して、同一平面となるように配置されている。
図4は、図2のCC−CC線断面図である。図4を参照して、ポンプ装置のハウジング2を構成する本体部3には、ポンプ室7側にインペラ10が回転可能に設けられている。
図5は、図4において本体部3からインペラ10を取り除いた状態における図2のDD−DD線位置でのポンプ室7内部の平面図である。また、図6は、本体部3からインペラ10を取り除いた状態における図2のEE−EE線位置でのポンプ室7内部の平面図である。図5,図6を参照して、ポンプ室7の内壁には、インペラ10のシュラウド11,12と対向する位置に、それぞれ動圧溝21,22が設けられている。
本体部3のインペラ10に対向する内側面に複数本(ここでは10本)形成された動圧溝21,22は、インペラ10の中心軸に対して等角度で配置される。動圧溝21,22は、いわゆる内向スパイラル溝形状となっている。このため、インペラ10が一定方向に回転すると、動圧溝21,22の外径部から内径部に向けて液体の圧力が高くなる。これによって、インペラ10とポンプ室7の両側に位置する内側面との間に動圧力が発生し、インペラ10の回転が所定の回転数を超えると、インペラ10との間で上昇する動圧力がインペラ10の軸方向両側から加えられて、動圧軸受効果を発生させる。動圧軸受効果が生じると、インペラ10は、支持用の軸受け部などを必要とせずに、ポンプ室7内において浮上しながら非接触状態で回転することが可能となる。
図7は、図2のFF−FF線断面図である。図7を参照して、モータ室8内には、複数(たとえば9個)のコア18が設けられている。各コア18は、たとえば磁性体により構成される三角柱形状に形成され、インペラ10の複数の永久磁石に対向して、等角度間隔で同一の円に沿って配置される。ここで、図2を再び参照して、複数のコア18の基端18aは、円板状の1つの磁性体19に接合されている。各コア18には、コイル20が巻回されている。複数のコア18の周囲には、コイル20を巻回するためのスペースが均等に確保され、各隣接する2つのコア18の互いに対向する面は略平行である。
このような構成とすることにより、コア18に巻回されたコイル20によって発生する磁束の形状を、ロータ100の第1の永久磁石110,第2の永久磁石120の配列に適合させることが可能となる。これによって大きなトルクを発生させることができ、インペラ10の回転駆動におけるエネルギ効率を高めることができる。なお、複数のコア18は、積層鋼板であってもよいし、圧紛磁心やその他の磁性体であってもよい。また、形状も実施の形態の三角柱形状でなくても、たとえば円柱形状でもよい。コイル20は、通電により電圧が印加されることにより界磁磁界を形成することができ、複数のコア18とインペラ10の複数の第1の永久磁石110および第2の永久磁石120との吸引力および反発力により、インペラ10を回転させることができる。
上述のような一般的なキャンドモータ構造では、ポンプ室7とモータ室8との間に隔壁6が備えられているため、隔壁6がないモータに比べてコイル20とロータ100との間のモータギャップが広くなる。モータギャップの拡大は、コイル20とロータ100の永久磁石との間で有効に作用する磁束の密度の低下につながり、モータ効率、モータ出力の低下を招いてしまう可能性がある。このため、限られた設置スペースに設けられても、配列された複数の永久磁石から所望の磁力を発生させることができる配列を有する永久磁石が用いられる。
このような磁束密度の低下を抑制するための構造として、図8に示すような永久磁石の配列をハルバッハ型配列としたロータ構造が知られている。このハルバッハ型配列構造のロータ150は、同一の円に沿って等角度間隔で交互に並べられた複数の第1の永久磁石9a,第2の永久磁石9bを有している。これらの複数の第1の永久磁石9a,第2の永久磁石9bは、隣接配置される第1の永久磁石9a,第2の永久磁石9bのN極,S極の極性が90度ずつ入れ替えられて配置されている。
そして、このハルバッハ型配列構造のロータ150においては、第1の永久磁石9a,第2の永久磁石9bのN極からコア18およびコイル20に向かいS極に戻る磁束c1,c2、および、隔壁6とは反対側の側面のN極からS極に戻る磁束c3が生じる。ハルバッハ型配列構造のロータ150を用いることで、隣接する磁石の極性の配向を異ならせた配列構造のロータ(たとえば、上記特許文献1参照。)を用いる場合と比べて、同じ磁石体積で比較して、磁力を増大させることができる。
しかしながら、ハルバッハ型配列構造のロータ150にも、以下のような課題があり、さらなる改善の余地がある。図9は、図8のGG部の拡大断面図であり、第1の永久磁石9a,第2の永久磁石9b内の着磁方向を示す全体としての磁力線の方向を矢印a1,a2で、また、磁石内部の局所的な磁力線の方向を矢印b3〜b6で示している。また、図9では、第1の永久磁石9a,第2の永久磁石9bのN極から出て、S極に戻る磁束c1,c2が矢印を用いて示されている。図9を参照して、ハルバッハ型配列のロータ150では、第1の永久磁石9aの磁力線の方向の矢印b3と、隣接配置される第2の永久磁石9bの磁力線の方向の矢印b4とが反対となる領域P1が、第2の永久磁石9bのS極からN極までの寸法のほぼ半分の広い範囲にわたり存在する。第2の永久磁石9bの着磁方向a2が第1の永久磁石9aの側面に直交するように向けられていても、この領域P1の磁力線の方向の矢印b4に示すように、第1の永久磁石9a内の磁力線の方向の矢印b3と反対方向となり、反磁場の干渉により打消し合ってしまう。
そして、第2の永久磁石9bからの磁束は、磁力線の方向の矢印b5,b6に示すように、領域P1の上方から、領域P1を避けて隣接する第1の永久磁石9aに廻り込む。
このように、ハルバッハ型配列構造のロータ150においては、隣接配置される第1の永久磁石9a,第2の永久磁石9bの接合部分で強い反磁界が干渉しあい、お互いの磁場を弱める方向へ作用する。磁石の境界における磁力の打消し合いが生じると、ロータ150の全体の磁束密度も低下してしまうため、所望の磁力を得るためには、一定以上の磁石体積が必要となる。
キャンドモータの場合は、ロータ150の永久磁石(回転子側)9a,9bをポンプ部1の羽根車等に埋め込む構造が採用される場合が多く、寸法や重量等の制約により磁石体積をさらに増加させて磁力強化を図ることが困難となる場合が生じやすい。さらに、設計上、磁石形状はロータ150の環状形状の一部として構成されるような扁平型の形状となりやすい。
ここで磁石の熱減磁に対する耐性を示すパーミアンス係数は、磁石(磁性体)の形状によって決まり、一般的には、磁化方向と垂直な断面積が小さいほど、また磁化方向の厚みが厚いほど大きくなり、磁化方向と垂直な断面積が大きいほど、また、磁化方向の厚みが薄いほど小さくなることが知られている。このため、扁平型の磁石形状となりやすいキャンドモータにおいては、パーミアンス係数が低くなる傾向にある。
そこで、本実施の形態1のポンプ部1を備える遠心式ポンプ装置においては、図3に示すように、2つの第2の永久磁石120の対向する磁極(N極とN極またはS極とS極)の間に、所定間隔の隙間130を形成して、この隙間130に、第1の永久磁石110の隔壁側111が同じ磁極(N極またはS極)にて面するように第1の永久磁石110を配置する。さらに、この隙間130に第1の磁性体140を設ける。
このような構成とすることによって、隣接配置された磁石の接触部分の近傍での磁力線の干渉による打消しあいを減少させることができるとともに、磁性体によって、各磁石からの磁束を効果的に集めることができる。このため、磁力を増加させるとともに、パーミアンス係数の低下による熱減磁を抑制することができる。
図10は、実施の形態1のロータ100の構造において生じる磁束を説明する図であり、図3と同様に図1のBB−BB線に沿った要部に相当する位置を拡大した断面図である。
図10を参照して、第1の永久磁石110のN極と第2の永久磁石120の一対のN極とから、第1の磁性体140を介して隔壁6に向けて磁力線(磁束)c4,c5が矢印で示す方向に向かう。磁束c4,c5は、コア18およびコイル20位置まで到達して、隣接配置された他の第1の磁性体140を通過して、第1の永久磁石110のS極と第2の永久磁石120の一対のS極とへと至る。磁束c4,c5は、上記3つの第1の永久磁石110、第2の永久磁石120,120の磁極からの磁力が集められている。
一方、ロータ100における隔壁6とは反対側の側面では、第1の永久磁石110のN極から、隣接する他の第1の永久磁石110のS極へと至る磁束c6が矢印にて示されている。隔壁6と反対側へ向かう磁束c6は、1つの第1の永久磁石110の磁極からの磁力となり、上記3つの磁極を集束させた磁束c4,c5と比較して磁力が弱い。
図10のHH部の拡大図である図11を用いて、実施の形態1のロータ100の磁力についてさらに詳細に説明する。図11では、磁束c4〜c6に加えてさらに、第1の磁性体140が外部磁場により磁化されている状態における内部の磁化方向をe1,e2として示す。さらに、図11では、第1の永久磁石110,第2の永久磁石120が着磁されている方向(以下、着磁方向とも称する)a1,a2および第1の磁性体140に向かう磁束の方向が矢印b1,b2により示されている。
ここで、第1の永久磁石110の磁極から第1の磁性体140の内部に入る磁力線の方向が矢印b1で示され、第2の永久磁石110の磁極から第1の磁性体140の内部に入る磁力線の方向が矢印b2で示される。
第1の永久磁石110および第2の永久磁石120によって、第1の磁性体140の内部に形成される磁場は影響を受ける。磁化方向e1,e2は、配列により他の第1の永久磁石110,第2の永久磁石120の磁力線の影響を受けて矢印の方向が同方向となると、磁束密度が増大して磁力を強める。
本実施の形態1のロータ100には、隙間130が形成されている。このため、図9で説明したような、隣設配置された永久磁石の接合部分における磁場の打消し合いを少なくすることができるので、磁力の減衰を抑制できる。さらに隙間130に第1の磁性体140を設けることにより、第1の永久磁石110および第2の永久磁石120からの磁場により第1の磁性体140が磁化されるため、第1の磁性体140は、磁力の強い磁石となる。すなわち、第1の永久磁石110および第2の永久磁石120の磁場が効果的に足し合わされて、強力な磁場を生じさせることができる。このように、効果的に磁力強化されるので、たとえば、図9よりも少ない磁石体積で同等の磁力を得ることができる。
また、第1の永久磁石110および第2の永久磁石120における反磁界同士の打消し合いが減少するため、パーミアンス係数も改善する。
さらに、隔壁6側の側面141と第2の永久磁石120の側面121とが同一平面に配置されるため、ロータ100の隔壁6側に凹凸が存在せず、平滑面とすることができる。このため、たとえば、液体を送り出す遠心式ポンプ装置として、この実施の形態1のポンプ部1を用いる際には、ポンプ部1内の液体が滞留する箇所を減少させることができる。
次に、図12,図13を用いて、ロータにより生じる磁力の違いによるインペラに作用する力とインペラの浮上位置との関係について説明する。図12は、図8に示したハルバッハ配列のロータ150を有するインペラの浮上位置を示す図である。図12の横軸は、インペラ10の位置(図12中左側が隔壁6側)を示し、縦軸は、インペラに対する作用力を示している。
図12を参照して、ポンプ部1のインペラへの軸方向に沿った作用力は、ロータの磁力による吸引力F1と、インペラを挟んで隔壁6と反対側の永久磁石15,16の磁力による吸引力F2と、インペラの回転により発生する動圧力F3と、動圧力F4とを合わせた合力F5となる。インペラは、正味の力である合力F5がゼロとなる位置に浮上して留まる。ポンプ部1では、インペラの軸方向の両側に位置する内側面に対してインペラが接触することを防止するために合力F5がゼロとなる浮上位置K0は、一般的にポンプ室7内のインペラの浮上範囲の中央付近に設定される。
ここで、磁力による吸引力F1,吸引力F2が小さいと、インペラの軸方向に作用してインペラを留まらせている保持力も小さくなる。そうすると、インペラの位置変動幅D1は、十分な大きさの吸引力F1,F2による位置変動幅D2と比べて大きくなり、内側面に接触する可能性が高くなる。このため、インペラの保持力を向上させるためにロータの磁力および永久磁石15,16の磁力による吸引力F1,F2を強化させる必要がある。
しかしながら、ロータの磁力を向上させるため、磁石体積を増大させると、ロータの重量の増加に伴って、ポンプ部の重量および容積も増大してしまうため、好ましくない。
実施の形態1のロータ100を用いると、図13のように磁石体積を維持したまま、ロータ100の磁力を強化することができる。永久磁石15,16の磁力をこのロータ100の磁力に合わせて調整すれば、インペラ10の保持力を向上させることができる。そうすると、インペラ10は、外乱力による位置変動幅D3(<D2)を減少させることができる。
<変形例>
図14〜図18は、実施の形態1の変形例の回転駆動装置を説明するものである。なお、実施の形態1の回転駆動装置と同一部分には、同一符号を付して、説明を繰り返さない。
(変形例1)
図14は、実施の形態1のロータ構造の第1の変形例を説明する図である。
図14を参照して、この第1の変形例のロータ170には、実施の形態1のロータ100に加えてさらに、第1の永久磁石110の隔壁側111と反対側の端面112に、第2の磁性体114が配置されている。第2の磁性体114は、鉄などの透磁率の高い軟磁性体を材料として用いて構成されている。この第1の変形例の第2の磁性体114は、第1の永久磁石の全ての端面112を覆う一枚の平板体であり、かつ平面視リング状に形成されている。そして、鎖交磁界を生成している第1の永久磁石110,第2の永久磁石120の背部に、この第2の磁性体114が配置されることにより、漏れ磁束がなくなり、磁束c7は、第2の磁性体114の内部を通過する。このため、磁束密度の増加により、第1の永久磁石110を磁力強化することができる。結果として第1の磁性体1140も磁力強化することができる。
この実施の形態1の第1の変形例のロータ170では、実施の形態1の作用効果に加えて、第2の磁性体114の内部に磁束c7を通過させて、磁束密度の増加を図り、さらに磁力強化することができる。このため、ロータ170の安定性を向上させて、トルクアップを図りながら小型化することができる。
(変形例2)
図15,図16は、実施の形態1の第2の変形例の回転駆動装置を示す図である。
図15を参照して、この第2の変形例のキャンドモータは、隔壁6を挟んでコイル20の反対側にロータ200を備えている。ロータ200は、回転軸方向に着磁された第1の永久磁石210と、周方向に着磁された第2の永久磁石220とを、1つずつ交互に等角度間隔で同一の円に沿って配列したハルバッハ型配列構造を有している。
ただし、ロータ200の配列においては、図8に示したハルバッハ型配列構造と比較すると、第1の永久磁石210の両磁極の間の軸方向の寸法h1が、第2の永久磁石220の軸方向の寸法h2に比べて、小さくなるように設定されている。そして、2つの第2の永久磁石220,220の間に隙間230が設けられ、その隙間230に第3の磁性体240がそれぞれ設けられている。
図16には、この第2の変形例の図15における、II部を拡大した断面図が示されている。図16を参照して、この第2の変形例のロータ200において、図8および図9に示したハルバッハ型配列構造のロータ150と比較すると、第3の磁性体240によって図9の領域P1の磁力の打消し合い部分が減少している。その結果として、第3の磁性体240が図9の通常のハルバッハ配列と比べて、より強力に磁化される。それにより、図9のハルバッハ配列に比較して、小型化できるとともに、パーミアンス係数の改善が可能となる。
なお、図15に示す第2の変形例のロータ200において、図14に示す第1の変形例のロータ170と同様に、隔壁側の端面213の反対側の端面212に、第2の磁性体214を配置し、さらに磁力強化を行なってもよい。
(変形例3)
図17,図18は、本実施の形態1の第3の変形例の回転駆動装置を示す図である。第3の変形例のロータ250は、図15に示す第2の変形例のロータ200の構成における第3の磁性体240の軸方向寸法が大きく設定され、端面213から突出した態様となっている。
図18は、図17のJJ部の拡大断面図である。第3の変形例のロータ250は、隔壁6に向けて寸法h5、第3の磁性体260の端面261が突き出されている。そして、第3の磁性体260の端面261からの磁束c21〜c23は、端面261から隔壁6へ向かい、隣接配置された磁性体261の端面261に至る。ロータ250は、図15に示す第2の変形例のキャンドモータのロータ200と比較して、端面261が突き出された寸法h5分、磁性体260のN極相当部分が第2の永久磁石220のN極の中心から離れている。このため、第3の変形例のロータ250では、図16に示すロータ200の磁力線の方向b12,b13のような廻り込む磁力線が減少して、図18の矢印に示す、第3の磁性体260に直接至る方向b12,b13の磁力線が増大するため、磁力強化を行なうことができる。
また、ロータ250に第2の磁性体214のバックヨークを設けることによって、第1の永久磁石210の隔壁6側をさらに磁力強化することができる。
さらに、第3の磁性体260端面261が所定の寸法h5、突き出されているため、図16の領域P3では、第2の永久磁石220の隔壁6側の反磁界による打消し合いが減少して、パーミアンス係数の改善が可能となる。
なお、上記図15および図16に示す第2の変形例のロータ200では、遠心式ポンプ装置のように、液体の滞留を防止するために、隔壁6側の側面を同一平面とすることが必要とされるが、液体の滞留についての制約がなく、強い磁力を優先して必要とする用途のポンプ部においては、第3の変形例のロータ250のように、第3の磁性体260の端面261を突出させた構成とすることができる。
図19および図20は、実施の形態1の駆動手段の第1,第2の変形例を示す。図19,図20は、実施の形態1に従う遠心式ポンプ装置の図1中のAA−AA線断面に相当する位置での断面図である。なお、実施の形態1の回転駆動装置と同一部分には、同一符号を付して、説明を繰り返さない。
図19を参照して、ポンプ部101のコイル20に設けられたコア18の先端部には、ティース109が一体となるように設けられている。このように構成された駆動手段の第1の変形例のポンプ部101は、コア18の先端部に一体に設けられているティース109によって、コア18のロータ100と対向する側面の面積が拡大する。このため、ロータ100の第1の永久磁石110,第2の永久磁石120との間の対向面積を広く確保できるので、コイル20に流す電流が同じであっても、より強い磁力を発生させることができる。
図20は、実施の形態1の駆動手段の第2の変形例を示す図である。図20を参照して、この第2の変形例においては、ポンプ部102は、本体部3の固定子におけるコイル内部のコア18を無くした構造(コアレス構造)を採用する。第2の変形例では、駆動手段をコアレス構造とすることにより、コギングトルクをゼロにすることができ、スムーズな起動、回転が可能となる。
[実施の形態2]
実施の形態1では、アキシアルギャップ型のモータの場合について説明した。本発明は、ラジアルギャップ型のモータにも適用可能であり、図21〜図24においては、各実施例のモータの軸方向から見た断面図が示されている。
図21〜図24に示すモータ構造では、第1の永久磁石110,第2の永久磁石120,第1の磁性体140を径方向に積層させて円環状に配列した構造としている。
図21は、図10に示す実施の形態1に対応するロータ構造である。ロータ300は、周方向に配列された複数の第1の永久磁石310と、第2の永久磁石320とを有する。第2の永久磁石320は、第1の永久磁石310の列の隔壁6側に隙間330を設けて配列されるとともに、配列方向と直交する径方向に着磁されている。そして、周方向に対向された各第2の永久磁石320,320の磁極は、隙間330に面する第1の永久磁石310と同じ極(N極またはS極)となるように構成されている。そして、各隙間330には、第1の磁性体340が設けられる。
図22は、実施の形態2における、ロータ構造の第1の変形例を示す図であり、図14に示す実施の形態1の変形例に対応するロータ構造である。すなわち、ロータ400は、図21のロータ300の構成における第1の永久磁石310の内面に第2の磁性体450を配置したものである。このような構成とすることによって、第2の磁性体450の内部に磁束を通過させることができるので、図21のロータ300に比べて、第1の永久磁石410の隔壁6側における磁力強化を行なうことができる。
図23は、実施の形態2における、ロータ構造の第2の変形例を示す図であり、ロータ500は、図15に示す実施の形態1の第2の変形例におけるロータ200に対応している。
図23を参照して、ロータ500は、回転軸方向に着磁された第1の永久磁石510と、周方向に着磁された第2の永久磁石520とを交互に複数、周状に配列している。さらにロータ500の隣接配置される2つの第2の永久磁石520,520の隙間530には、第3の磁性体540が設けられている。
図24は、実施の形態2において、ロータ構造の第3の変形例を示す図であり、図15に示す実施の形態1の第3の変形例において、バックヨークとしての第2の磁性体214を設けたロータ250に対応している。このため、第2の磁性体650の内部に磁束を通過させることにより、図23のロータ500に比べて、磁束密度を増大させて第1の永久磁石610の隔壁6側における磁力強化を行なうことができる。
[実施の形態3]
図25〜図31に示す実施の形態3は、実施の形態1のアキシアルギャップ型のモータ構造において、ラジアル方向の動圧力を発生する動圧溝が設けられる構造のバリエーションについて説明する。
図25は、実施の形態3に従うラジアル方向の動圧を発生させる動圧溝が設けられたポンプ構造の第1の例を示す図である。
図25を参照して、この実施の形態3のポンプ部900は、図19に示したポンプ部101において、インペラ10が収納されるポンプ室7の内側面のうち、インペラ10の外周面が対向する部分に動圧溝23が環状に形成されている。
ポンプ部900は、インペラ10の回転の際に動圧溝21,22により生じる軸方向の動圧力F3,F4に加えて動圧溝23によりラジアル方向の動圧力がインペラ10に加えられる。これにより、インペラ10の軸中心位置の安定性が向上し、インペラ10の対外乱性を向上させることが可能となる。
図26は、実施の形態3に従う動圧溝の第2の例を説明する図である。図26を参照して、この第2の変形例による遠心式ポンプ装置のポンプ部1200は、インペラ1210の外周面に、動圧溝1211,1212が形成されている。動圧溝1211,1212は、インペラ1210の外周面のうち、ポンプ室7の円筒内周面と対向する部分に、平面視V字型でかつ、凹溝状に形成されている。また、動圧溝1211,1212は、インペラ1210の回転方向に所定のピッチで形成されている。V字型の動圧溝1211,1212の先端(鋭角部)1211a,1212aはインペラ1210の回転方向Rとは反対方向に向けられている。
そして、インペラ1210が図26中の回転方向Rに回転すると、動圧溝1211,1212の先端部1211a,1212aに向けて液体の圧力が高くなる。このため、インペラ1210とポンプ室7の内周面との間に反発力が発生して動圧力となり動圧軸受効果を生じさせてインペラ1210の回転を安定させる。
図27は、実施の形態3に従う動圧溝の第3の例を説明する図である。図27を参照して、この第3の変形例のポンプ部1200は、平面視V字型の複数の動圧溝1323,1324を有している。動圧溝1323,1324は、ポンプ室7の内周面のうちのインペラ1310の外周面1321,1322に対向する領域に設けられて、インペラ1310の回転方向に所定のピッチで平面視V字型となるように形成されている。V字型の動圧溝1323,1324の先端(鋭角部)1323a,1324aは、インペラ1310の回転方向に向けられている。そして、インペラ1310の回転により、動圧溝1323,1324は、先端部1323a,1324aに向けて液体の圧力が高くなる。このため、ポンプ室7の内周面とインペラ1310の外周面1321,1322との間に反発力が発生して動圧力となり動圧軸受効果を生じさせてインペラ1310の回転を安定させる。
図28は、実施の形態3に従う動圧溝の第4の例を説明する図である。図28を参照して、第4の例のロータ構造では、ポンプ部1400に備えられるインペラ1410には、シュラウド11,12が設けられている。シュラウド11,12の外周面には、動圧溝1431,1432が形成されている。第4の例の動圧溝1431,1432は、帯状にインペラ1410の回転方向に延在して、一定間隔(たとえば、90度〜120度など)を開けて凹状に形成されている。動圧溝1431,1432の各々の深さは、インペラ1410の回転方向Rの前方の前端部1431a,1432aから後方の後端部1431b,1432bに向かって徐々に浅くなっている。
図28に示す第4の例のポンプ部1400は、インペラ1410が回転すると、動圧溝1431,1432の前方の前端部1431a,1432aから、後方の後端部1431b,1432bに向けて液体の圧力が高くなる。このため、インペラ1410とポンプ室7の内周面との間に反発力が発生し、この反発力がラジアル方向への動圧力となる。
図29は、実施の形態3に従う動圧溝の第5の例を説明する図である。図29を参照して、第5の例のロータ構造のポンプ部1500では、動圧溝1541,1542が、シュラウド11,12の外周面に対向するポンプ室7の内周面側に形成されている。動圧溝1541,1542の各々の深さは、インペラ1510の回転方向Rの前方の前端部1541a,1542aから後方の後端部1541b,1541bに向かって徐々に深くなっている。
図29に示す第5の例のポンプ部1500は、インペラ1510が回転すると、回転方向Rに対して動圧溝1541,1542の前方に位置する前端部1541a,1542aでは、後方に位置する後端部1541b,1542bと比較して浅く形成されているため、液体の圧力が高くなる。このため、インペラ1510とポンプ室7の内周面との間に反発力が発生し、この反発力がラジアル方向への動圧力となる。
図30は、実施の形態3のインペラの変形例を示す図である。図30を参照して、この実施の形態3のインペラの変形例のポンプ部1000は、上記図25のポンプ部900と比較して、シュラウド11に永久磁石15が設けられておらず、シュラウド11に対向するポンプ室7の内壁にも、リング状の永久磁石15を吸引するリング状の永久磁石16が設けられていない。
永久磁石15,16を設けなくても、軸方向の偏った浮上位置からいずれかの側面への接触が生じないような場合には、永久磁石15,16を省略して部品点数を削減することにより、ポンプ部1000の小型化、軽量化、低コスト化を図ることができる。
図31は、実施の形態3に従うポンプ部1600のさらなる変形例を示す図である。図31を参照して、この実施の形態3の変形例のポンプ部1600は、インペラ10の回転中心軸S0には、インペラ10の回転中心軸S0方向でインペラ10を挟むようにモータ固定子が設けられたダブルステータ構造を有する。このような構成では、ポンプ部1600は、回転トルクを増大させて、モータ出力をさらに増加させることができる。
上述してきたように、本実施の形態のポンプ部に用いられるロータは、2つの第2の永久磁石の磁極が対向する隙間に、第1の永久磁石の隔壁側の磁極が第2の永久磁石と同じ磁極により面するように設けられるとともに、この隙間に第1の磁性体が設けられた構成を有している。このため、従来のハルバッハ型配列構造のような隣り合う永久磁石同士の磁力の干渉を減少させることができるので、磁力の減衰が抑制されて、ロータを効率的に駆動させることができる。
また、第1の永久磁石,第2の永久磁石の間の反磁力同士の干渉が減少するためにパーミアンス係数の低下が抑制され、熱減磁特性が改善される。
したがって、本願発明の実施の形態1〜3に記載された回転駆動装置または回転駆動装置を備える遠心式ポンプでは、磁石体積の増加を抑制しつつ、高トルク化、高効率化することができる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
本実施の形態では、遠心式ポンプに用いられたものを示して説明してきたが、特にこれに限らず、モータの固定子と回転子の間に隔壁を備えているものであれば、水中ポンプやケミカル(化学薬品)ポンプ、クリーンポンプ等に用いられるものに適用してもよい。
1,101,102,900,1000,1100,1200,1300,1400,1500,1600 ポンプ部、3 本体部、4 流入ポート、5 流出ポート、6 隔壁、7 ポンプ室、8 モータ室、9a,9b,15,16,110,120 永久磁石、10,1210,1310,1410,1510 インペラ、10,100,150,170,200,250,300,400,500,600 ロータ、10a 貫通孔、12 シュラウド、13 ベーン、14 液体通路、18 コア、19 磁性体、20,200 コイル、21,22,23,1211,1212,1223,1224,1322,1323,1324,1431,1432,1541,1542 動圧溝、109 ティース、110,120,210,310,410,510,610 第1の永久磁石、11隔壁側、112,212,213,261,262 端面、114,214 第2の磁性体、121,141,211,214,223,241 側面、120,121,220,320,420,520,620 第2の永久磁石、120c 中央、140,260,340,430,630 第1の磁性体、230,330,530 隙間、240,540 第3の磁性体、1321,1322 外周面、1541 ,1542 動圧溝。

Claims (5)

  1. 隔壁で仕切られた第1の室および第2の室を含むハウジングと、
    前記第1の室において前記隔壁に沿って回転可能に設けられたロータと、
    前記隔壁を介して前記ロータを駆動させる駆動手段とを備え、
    前記隔壁が前記ロータの回転軸方向と直交する平面状に形成されるアキシアルギャップ型の回転駆動装置であって、
    前記ロータは、回転方向に配列された複数の第1の永久磁石と、
    前記回転方向に隙間を開けて配列される複数の第2の永久磁石とを含み、
    前記複数の第1の永久磁石および前記複数の第2の永久磁石は、扁平型の磁石形状を有し、
    各第1の永久磁石は、ロータの回転方向と直交する方向に着磁され、隣接する2つの第1の永久磁石の磁極は互いに異なり、
    各第2の永久磁石は、前記ロータの回転方向に着磁されるとともに、隣接する他の第2の永久磁石と、同じ磁極が対向するように配置され、
    各第1の永久磁石は、前記隙間に当該第1の永久磁石の隔壁側が面するように配置され、各第1の永久磁石の隔壁側の磁極は、対応する隙間に面する前記第2の永久磁石の磁極と同じとされ、
    前記隙間には、それぞれ第1の磁性体が設けられる、回転駆動装置。
  2. 前記ロータは、前記第1の永久磁石の隔壁側と反対側に配置される第2の磁性体をさらに備える、請求項1に記載の回転駆動装置。
  3. 前記第1の永久磁石の周方向の長さ寸法が、前記第2の永久磁石の周方向の長さ寸法に比して大きく設定される、請求項1または2に記載の回転駆動装置。
  4. 前記第1の永久磁石の両磁極間の寸法は、前記第2の永久磁石の前記隔壁側から反対側までの寸法に比して、小さく設定される、請求項1〜のいずれか1項に記載の回転駆動装置。
  5. 請求項1〜のいずれか1項に記載の回転駆動装置を備え、
    前記ロータは、回転時の遠心力によって液体を送るインペラである、遠心式ポンプ装置。
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