JP6835118B2 - 鋼管およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、鋼管およびその製造方法に関し、特に、表面に微細な組織を有することにより機械的特性が優れる鋼管およびその製造方法に関する。
金属材料は、その組織の結晶サイズを変化させることにより、その特性が大きく変化する。特に、結晶粒径が10μm以下となるように結晶粒を微細化することにより、構造用部材として有用な材料の引張強度や疲労強度を上昇させたり、低温靱性を向上させたりすることができる。材料の結晶粒を微細化するために、材料の加工と熱処理をうまく組み合わせる手法が多く研究されており、材料を加工する際に、材料全体に大きなひずみを与えることが必要とされている。
従来、材料の結晶粒を微細化するために材料全体に大きなひずみを与える手法として、Equal channel angular pressing(ECAP)や異形等断面積の金型による繰り返し鍛造法、Accumulative Roll Bonding法(繰り返し板圧延法)が提案されている。
例えば、特許文献1には、丸棒鋼材の製造技術として、温度範囲を350〜800℃として、オーバル形状の孔型を有する水平圧延機を用いて2〜6パスの圧延を行い、大きなひずみを与えることで結晶粒を微細化し、降伏強さ、引張強さを上昇させ、かつ、通常材料の強度と相反する特性であるシャルピー試験における吸収エネルギーを上昇させる手法が開示されている。
また、特許文献2には、金属管の一部を加熱する加熱部と、前記金属管を中心軸線回りに回転させる回転部と、前記金属管の加熱された部位を曲げる曲げ部と、を備える装置により、加熱部を回転させながら曲げることで結晶粒を微細化する方法が開示されている。
また、特許文献3には、400℃〜Ac3の間の温度域で1パス当たりの縮径率が6%以上の圧延パスを少なくとも1パス以上含む累積縮径率20%以上の絞り圧延を行うことで結晶粒を微細化し、強度‐延性バランスに優れた鋼管を製造する方法が開示されている。
また、最近では、円盤板状に加工した鉄鋼材料の上下面をダイスで固定し、ダイスに高圧を与えながら回転させることで円盤板状の材料に大きなせん断変形ひずみを与え結晶粒を微細化する手法として、High−pressure torsion(HPT)法が報告されている。
特許第4221497号公報 特開2009−233731号公報 特許第3760640号公報
従来から知られているEqual channel angular pressing(ECAP)や異形等断面積の金型による繰り返し鍛造法、Accumulative Roll Bonding法(繰り返し板圧延法)、High−pressure torsion(HPT)法などの種々の手法は、いずれの方法もバッチ式の加工となるため、大きなひずみを与える目的で繰り返しひずみを与えるには生産性が悪く、加えて、対象とする材料の形状は、薄板材や棒材に限定される。
特許文献1に記載のオーバル型の孔型を有する水平圧延機による2〜6パスの圧延を行う手法は、2パス目以降の圧延に圧延前の材料の長辺側を圧下することで圧下と幅広がりに伴うせん断変形を効率よく与え、かつ圧延であるため連続化が可能であり、生産効率を向上させることが可能であると考えられる。しかし、この手法は、あくまで水平圧延であるため、材料の圧延方向への変形が避けがたく、微細粒組織を得るためのひずみ量を確保するために圧延を繰り返すと、断面積が小さくなるので、大型の構造部材を得ることが難しい。また、圧下による変形を利用しているため、材料にひずみを与えるには、材料が中実であることが要求される。さらに、ロール圧延では静水圧応力場の発生が避けられず、特に低温で圧延する際には、温度低下に伴う高い変形抵抗に対抗可能な巨大な設備が必要になり、動力に多大なエネルギーを要するという問題がある。
特許文献2に記載の方法では、金属管を加熱する加熱部と、管軸中心軸周りに回転させる回転部と、連続的に組織を微細化するには、管軸方向に管を押し出す押し出し部と、が必要となる。つまり、この方法では、金属管を軸方向に曲げるための2か所の掴み部と加熱部が必須であり、連続的に加工するには押し出し部が必要となる。掴み部は、金属管を回転させるために必要となり、また、掴み部と加熱部は、管径に合わせて適切な大きさを有するものを別途準備する必要がある。さらに、金属管の径が大きくなると、掴み部の大きさのみならず、配置する距離すら変更する必要がある。したがって、加工する管形状が変化すると、各構成要素の大幅な交換が必要となり、設備コストが増加するという問題がある。また、特許文献2に記載の方法では、金属管の掴み部が必要なため、金属管の端部は原理的に加工できず、この部分において、所望の硬度、疲労強度、および低温靭性を実現することができないという問題がある。さらに、大型の金属管になるほど、上記特性が得られない端部部分の重量が増加してしまう。
特許文献3に記載の方法では、管軸方向に垂直な回転軸を持つ孔型ロール(孔型ロールによる水平圧延)を管周方向に配置し、鋼管をロール間に引き込んでAc3変態点〜400℃で累積縮径率が20%以上となる絞り圧延を行うことで微細な結晶粒を得ており、ロールにより鋼管を管軸方向に送るので、連続した加工が可能である。しかし、この方法では、微細化に必要なひずみを得るために縮径を利用しており、微細化に必要な大きなひずみを得るためには20%以上の大きな縮径と、それに伴う大きな断面減少が発生するため、製造可能なサイズが限定されるという問題がある。また、基本的に水平圧延であるため、入側の素管外径の最大値は、孔型ロールでロールバイト内に引き込める範囲までとなるため、一度に絞り加工を行うことが可能な縮径量の範囲が狭く、累積縮径率を20%以上とするには、圧延機を多段とすることが普通であり、設備の巨大化や設備コストの増加が発生するという問題がある。
また、特許文献1、3に記載の方法は原理的に圧延であるため、圧延方向(軸方向)に延びた組織(集合組織)が発達する。そのため、周方向と軸方向の特性が大きく異なり、特に低温靭性の特性の差が問題になる。すなわち、延びた組織の延び方向に対して垂直方向への亀裂伝播は抑制されるが、平行方向へのき裂は延びた組織の界面を伝って伝播しやすい。鋼管の場合、周方向への引張応力や、周断面へ垂直に衝撃が加わると、竹状に亀裂が伸展してしまう。つまり、微細粒鋼であっても方向によって低温靭性が劣ってしまう。また、鋼管の場合、様々な用途で使用される際に曲げ加工や偏平加工による変形を受ける。これらの変形では、管周方向に引張応力が発生することは避けがたく、軸方向に竹割れが発生する。また、強度の特性の差は、低温靭性ほど発生しないが、管周方向に発生する引張応力は、管全体が微細粒化で高強度化した鋼管を変形させるほど大きくなるため、微細化で強度を高めるほど、低温靭性の特性の差との乖離が起き、変形時において軸方向に割れるリスクが高まってしまう。
さらに、上述した方法は、材料全体を微細粒化することを目的としており、材料全体に大きなひずみを与える必要性から、材料に大きなエネルギーを与えている。
本発明は、上記課題に鑑み、所望の硬度、疲労強度、および低温靭性を有する鋼管を提供することを目的とする。また、本発明は、所望の引張強度、疲労強度、および低温靭性を有する鋼管を、所望の引張強度、疲労強度、および低温靭性を有する鋼管を、大型の設備や多大なエネルギー、工具の交換、設備の配置換えを必要とせずとも、単一の設備により連続して製造することが可能な製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決する本発明の要旨構成は以下のとおりである。
[1]鋼管の内外表面からそれぞれ、肉厚に対し10%以上30%以下の厚さまでの平均結晶粒径が10μm以下であることを特徴とする鋼管。
[2]前記平均結晶粒径が10μm以下である領域の厚さは、前記鋼管の前記内外表面からそれぞれ3000μm以下である、上記[1]に記載の鋼管。
[3]加工温度を300℃以上Ac3変態点以下として、鋼管外面側の2か所以上を工具で挟み、鋼管を偏平形状に変形させる温間加工において、前記鋼管を偏平させた状態で前記工具を管周接線方向へ移動させて、鋼管周方向へ1回以上の曲げ曲げ戻し加工を行うことを特徴とする鋼管の製造方法。
[4]前記温間加工後、150℃以上Ac3変態点以下に加熱する熱処理を行う、上記[3]に記載の鋼管の製造方法。
[5]前記温間加工後および/または前記熱処理後、0.5℃/s以上の冷却速度で冷却する、上記[3]または[4]に記載の鋼管の製造方法。
本発明によれば、大型の設備や多大な動力を必要とせずとも微細結晶粒を有する鋼管または棒鋼材の製造が可能となり、所望の強度や靭性を得ることができる。また、製造時に必要となる加工ひずみは主に曲げによるせん断であるため、加工中の材料内部への静水圧応力場発生を抑制でき、小さな加工力で加工可能である。さらに、曲げ加工は容易に連続化することが可能なため、生産効率が高い。さらにまた、得られた鋼管や棒鋼材は加工前後で大きな減厚変化をしないことから、工業製品として用いる際のサイズ制約が少ない。
本発明の製造方法における、曲げ曲げ戻し加工の一例を示す模式図である。 図1Aの鋼管の圧延方向に垂直な断面図である。 図1AのB−B矢視断面図である。 図1A〜Cのロール3に替えて用いることが可能なロールの模式図である。 鋼管の変形時における中立線の位置の変化を示す模式図である。 本発明の製造方法における、変形加工の一例を示す模式図である。 本発明の製造方法における、変形加工の一例を示す模式図である。 本発明の製造方法における、変形加工の一例を示す模式図である。 水平圧延機を用いて板圧延を実施した場合と、本発明の扁平加工の場合における、ひずみと圧延荷重との関係を示すグラフである。
以下、図面を適宜参照して、本発明の一実施形態を説明する。
[鋼管]
本実施形態による鋼管は、その内外表面からそれぞれ、肉厚に対し10%以上30%以下の厚さまでの平均結晶粒径が10μm以下であることを特徴とする。これにより、硬度、疲労強度、及び低温靭性を向上させることができる。以下、この技術的意義を説明する。なお、本明細書において「平均結晶粒径(dave)」とは、以下の方法にて定義される。すなわち、走査型電子顕微鏡(測定倍率:1000倍)で、深さt〜t+δでの鋼管断面における結晶粒径(円相当直径)を複数視野観察して、これらの算術平均をd(t)とする。同様の操作を表面(t=0)から深さt=t1まで繰り返す。続いてd(t)を用いて、積分(1/t1)∫d(t)dtを実行し(積分区間はt:0〜t1)、得られた積分値を「表面から深さt1までの平均結晶粒径dave」とする。また、「平均結晶粒径が10μm以下である領域」を「微細化領域」とも称する。
結晶粒の微細化による材料の特性変化は、結晶粒径と強度の関係を示す一般的な式であるホールペッチの関係に基づくと、結晶粒径が10μmを下回ることで硬度、疲労強度、及び低温靭性の向上が期待できることが知られている。一方、実用上で最も過酷な使用環境に曝されるのは鋼管の内外表面であることが多く、構造材の破壊や損傷の程度は内外表面に発生した損傷起点に依存することが多い。つまり、鋼管全体を微細化しなくとも、内外表面層を微細化すれば、上述した損傷起点の発生を抑制することができる。本発明は、このような着想に基づくものであり、本発明者らは、内外表面における損傷起点の発生を抑制するためには、鋼管の内外表面からそれぞれ所定の厚さまでを微細化領域とすることが重要であることを知見した。すなわち、本発明では、鋼管の内外表面からそれぞれ、肉厚に対し10%以上、30%以下の厚さまでを微細化領域とすることが重要である。10%未満の場合、結晶粒の微細化が不十分で、十分な硬度、疲労強度、低温靱性が得られない。一方、30%超えの場合、鋼管全体が硬質化し、伸び(均一延び性)が低下する。つまり、同じ形状へ成形するにも大きな加工荷重が必要になり、また、均一伸び性の低下に伴う加工時の割れ欠陥の発生につながる。このように、本発明では、内外表面を微細化することで過酷な環境での損傷を防ぐことができるという特性を鋼管に与えることができるとともに、微細化領域の厚さを適切に制御することで、同時に用途別への成形性も向上する。
微細化領域の厚さは、鋼管の内外表面からそれぞれ3000μm以下とすることが好ましい。3000μm以下であれば、加工荷重を大きくする必要がないので工具寿命が低下することもなく、設備制約の上限を超えることもなく、また、十分な成形性が得られる。
本実施形態による鋼管の成分組成は、特に限定されず、例えばS15C、SS400などの一般的な炭素鋼管やCrやNi、Moが添加された一般的なステンレス鋼管を挙げることができる。
[鋼管の製造方法]
以下では、上述した鋼管の製造方法の一例を説明する。本実施形態による鋼管の製造方法は、加工温度を300℃以上Ac3変態点以下として、鋼管外面側の2か所以上を工具で挟み、鋼管を偏平形状に変形させる温間加工において、前記鋼管を偏平させた状態で前記工具を管周接線方向へ移動させて、鋼管周方向へ1回以上の曲げ曲げ戻し加工を行うことを特徴とする。
本明細書における「曲げ曲げ戻し加工」とは、素管の初期曲率に対して、素管の一部、または全体が素管の初期曲率と異なる曲率を有するように、素管を周方向に変形させる加工を意味する。本実施形態では、図1A〜Cに示すように「曲げ曲げ戻し加工」を行いつつ、素管1を全長分だけ回転させながら管軸方向に移動させる。なお、鋼管2の外径は、素管1の外径からさほど変化しない。ロール3としては、図1A〜Cに示すものの他、図1Dに示す樽型ロール又はコーン型ロールを用いることもできる。上述した曲げ曲げ戻し加工では、加工後の曲率が初期曲率よりも大きくなった部分では、管内面周方向に圧縮、外面周方向に引張が生じる。一方、加工後の曲率が初期曲率よりも小さくなった部分では、管内面周方向に引張、外面周方向に圧縮が生じる。すなわち、「工具を管周接線方向へ移動させる」とは、曲げ曲げ戻し加工前後で、工具に対して鋼管を相対的に移動させることにより、鋼管を管周接線方向の異なる位置に移動させることに対応する。
図2に、曲げ曲げ戻し加工を行う際に生じる、鋼管の肉厚方向で引張と圧縮とが入れ替わる点線(中立線)を示す。鋼管の曲げ曲げ戻し加工では、図2に示すように閉断面であるため、一部を偏平させると連続体である鋼管が様々な曲率で変形する。中立線の位置は曲率により変化し、中立線を境にして、引張と圧縮の応力の値が一度でも反転すれば、曲げ曲げ戻し加工によるひずみが鋼管に与えられたということになり、そのひずみの量は鋼管の中立線から内外表面に近づくほど大きくなるため、鋼管の内外表面の組織を効率的に微細化できるのである。さらに、本加工法は、特許文献1、3のような圧延とは異なっており、繰り返しせん断変形となるので組織の延伸が発生せず、加工後の鋼管における特性の差が抑制される。
図4に、特許文献1に記載されているような水平圧延機を用いて板圧延を実施した場合と、本発明の曲げ曲げ戻し加工を実施した場合における、ひずみと圧延荷重との関係を示す。図4において、曲げ曲げ戻し加工に用いた鋼管は、φ70mm、肉厚8mmとし、板圧延に用いた鋼板は、肉厚20mm、幅100mmとして、それぞれの荷重は圧延機に取り付けたロードセルで直接測定した。なお、熱間加工では大きなひずみを与えると加工中にひずみの回復や再結晶が発生しやすく、これらが発生すると冶金的な理由で荷重が変動するため、異なる圧延手法間での、ひずみの増加に伴う荷重増加の関係を定量的に比較することが難しくなる。そこで、本検討ではひずみの回復が無い冷間鋼材を用いて実験を行った。また、板圧延のひずみ量については、圧延理論の公知の式である1.15×ln(1−r)×(−1)を用いて求めた。なお、rは圧下率であり、r=(入側肉厚−出側肉厚)/入側肉厚である。扁平加工のひずみ量については、変形を有限要素法により計算し、肉厚全体を平均化したひずみの量を使用した。
図4に示されるとおり、本発明では小さな圧延荷重でより効率的にひずみを与えられる。これは、本発明の曲げ曲げ戻し加工が、鋼材をより小さな力で変形させることができるせん断ひずみを主体とした加工になるためである。また、従来のように鋼管全体を微細化するのではなく、素管に対して機械的特性の向上効果が顕著な内外表面層のみを微細化するため、ひずみ付与に必要な投入エネルギーが少なくて済み、コストダウンに繋がる。さらに、通常の板圧延では、ひずみ量に応じて圧延後の肉厚、断面積が小さくなるのに対し、本発明では、繰り返しせん断変形を与えるが、肉厚を減ずることは無いので、加工前後の形状変化が少ない。
鋼管外面側から鋼管を曲げ曲げ戻し変形させる加工を行うことにより、鋼管の内外表面に効率的にひずみが蓄積され、結晶粒を微細化することができる。鋼管の管周方向への曲げ曲げ戻し加工は1回以上であればよく、2回以上行ってもよい。本発明によれば、加工前後の鋼管の形状変化が少ないため、複数回の加工が行いやすく、加工時外径/初期外径、加工温度、及び加工回数を適宜制御することにより、粒径10μm以下の結晶粒径を有する厚さを調整することができる。
図3A〜Cは、本実施形態における温間加工について、工具を用いて鋼管を鋼管外面から曲げ曲げ戻し加工する例を示す模式図である。図3A、Bは、工具の接触箇所を2か所とする場合の断面図であり、図3Cは、工具の接触箇所を3か所とする場合の断面図である。なお、図3A〜Cにおける太い矢印は、鋼管に曲げ曲げ戻し加工を行う際に力が掛かる方向を示す。図3A〜Cに示すように、2回目の曲げ曲げ戻し加工を行う際、1回目の曲げ曲げ戻し加工を施していない箇所に工具が接触するように、鋼管を回転させるように工具を動かしたり、工具の位置をずらしたりなどの工夫をすればよい。なお、図3A〜C中の斜線部は1回目の曲げ箇所を示す。
図3A〜Cのように、鋼管を曲げ曲げ戻しさせる温間加工を、管周方向の全体に間欠的、または連続的に与えることで、鋼管の曲率の最大値付近で曲げによるひずみが加えられ、鋼管の曲率の最小値に向けて曲げ戻しによるひずみが加わる。その結果、鋼管の結晶粒微細化に必要な曲げ曲げ戻し変形によるひずみが効率よく鋼管の内外表面に蓄積される。また、この加工形態を用いる場合、鋼管の肉厚や外径を圧縮して行う加工形態とは異なり、多大な動力を必要とせず、曲げ曲げ戻しによる変形であるため、加工前後の形状変化を最小限にとどめながら加工可能な点が特徴的である。
図3A〜Cのような鋼管の曲げ曲げ戻しに用いる工具の形状について、ロールを用いてもよく、鋼管周方向に2個以上配置したロール間で鋼管を回転させれば、容易に繰り返し曲げ曲げ戻し変形によるひずみを与えることが可能である。さらにロールの回転軸を管の回転軸に対し、90°以内で傾斜させれば、鋼管は偏平加工を受けながら管回転軸方向に進行するため、容易に加工の連続化が可能となる。また、このロールを用いて連続的に行う加工は、例えば、鋼管の進行に対して曲げ曲げ戻し量を変化させるように、適切にロールの間隔を変化させれば、容易に一度目、二度目の鋼管の曲率を変更でき、内外表面層における組織の微細化に必要なひずみ量を制御することができる。
なお、ロールを用いて、鋼管を軸方向に送りながら加工する装置として矯正機があるが、通常の矯正機による加工では微細組織は得られない。すなわち、矯正機では、いわゆる3点曲げの原理を利用して鋼管の曲りを矯正するため、軸方向に3つのロール対を有する設備のパスラインを僅かに曲げて鋼管へ曲げモーメントを与える。その際にロール間隔を鋼管外径より小さくして鋼管を挟み込むことで鋼管を扁平させる。ただし、あくまで矯正を目的にしたロール間隔は、高々鋼管外径の5%程度である。さらに、ロールの傾斜角も搬送速度を向上させる目的でパスラインに対し20〜40°程度であり、らせん状に管軸方向にひずみ量のムラが生じる。そのため、十分に扁平させることができず、かつ、低ひずみ部で結晶粒微細化に必要なひずみが不足するので、外内表面に微細粒を有する鋼管を得ることができない。本発明を達成するには、少なくともロール間隔(クラッシュ)を管外径に対し6%以上小さく設定し、加えて、傾斜角度を10°未満とすることが必要である。微細粒の厚みを最適化しつつ、生産性を確保する観点では、ロール間隔を管外径に対し10%以上とし、傾斜角度を3〜5°とすることが好ましい。なお、ロール間隔が過剰に狭いと内周部の割れや形状に問題が生じるおそれがあるため、ロール間隔を30%未満とすることが好ましい。
また、鋼管にひずみを与える温度(加工温度)は、金属材料がひずみにより再結晶を起こすために必要な温度範囲で管理する必要がある。本実施形態では、結晶粒の再結晶による微細化と更に相変態や高温保持時の粒成長を抑制するため、加工温度を300℃以上Ac3変態点(Ac3変態点:加熱時にフェライト相がオーステナイト相に完全に変態する温度)以下として温間加工することが重要である。なお、Ac3変態点は材料により異なり、Ac3変態点はフォーマスタ試験により求めることが可能である。
また、上述した温間加工後に熱処理を行うこともでき、その場合、150℃以上Ac3変態点以下に加熱する熱処理を行うことが好ましい。熱処理を行うことで、曲げ曲げ戻し変形によるひずみの導入で微細結晶化した組織内にたまった余剰なひずみを解放し、製品に残留する応力を、成形後に得られる機械的特性を変化させることなく除去することができ、ねじり疲労強度および低温靱性の向上に効果的である。熱処理温度を150℃以上とすることで余剰なひずみの活動が活発化し、解放することができる。一方で、熱処理温度をAc3変態点以上とすると、オーステナイト相変態が生じ、温間加工で与えたひずみがすべてリセットされてしまうため、Ac3変態点以下が好ましい。なお、熱処理時の加熱速度は、遅すぎると造り込んだ組織の粗大化や不要な析出物発生により、機械的特性に悪い影響を与える。このため、加熱速度は0.2℃/s以上が好ましく、IHなどを用いた急速加熱方式による加熱が好ましい。一方で、加熱速度が速くなりすぎると、設備が高額化することに加え、高温での温度制御が困難になるため、加熱速度は100℃/s以下とすることが好ましい。なお、温間加工後に150℃以下の温度まで冷却し、その後熱処理を行ってもよい。
本発明は、鋼板や棒鋼に対する水平ロール圧延のように、主に肉厚圧下を用いた大減面によりひずみを導入する加工形態と異なり、加工前後に肉厚を積極的に減じない。したがって、加工前後で、肉厚が大きく減厚変化しないので、加工前の素材サイズや加工後の材料の形状制約が少ない。また、工具の接触位置を工夫することで、結晶粒微細化に必要な曲げ曲げ戻し変形によるひずみを与えつつ、加工後の管肉厚を増加させることも可能である。例えば、図3Cに示すように、3つのロールを用いて管周方向全体に圧縮応力を付与しながら曲げ曲げ戻し変形によるひずみを与えることにより、周断面の管外径を減じ、その分の体積を肉厚方向へ流動させることが可能になり、最終製品時にさらに形状自由度が増える効果がある。
また、温間加工後や熱処理後の冷却について、通常の大気放冷で問題ないものの、冷却速度が遅すぎると造り込んだ組織の粗大化や不要な析出物発生により機械的特性に悪い影響を与える。本発明では、温間加工後および/または熱処理後に強制空冷や水冷などの急冷をすることが好ましく、冷却速度は、0.5℃/s以上とすることが好ましく、3.0〜15.0℃/sとすることがより好ましい。なお、冷却には、圧縮した空気や水などの流体、または空気と流体を混合したミスト状のものが利用可能である。
なお、上記した温間加工以外の製造条件については特に限定されない。温間加工する鋼管については、素材となる金属棒を機械加工による切削により穴あけする手法や、圧延による塑性変形を利用した穴あけの手法により得られる鋼管を用いることができ、さらに、板を丸め、端部を溶接でつないだ鋼管も利用できる。
以下、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明する。
S15C(機械構造用炭素鋼鋼板JIS G 4051相当、C量:0.15mass%)に対して機械加工を施し、外径が58mmであり、肉厚が2mm、5mm、10mmであり、長さが250mmである素管(鋼管)を得た。
表1に示す加工条件にて素管に加工を施した。温間加工については、対向設置した一対のロール、または周断面で120°間隔で配置した3つのロールを、各ロールの回転軸が加工進行方向に対して4°傾くように配置し、各ロールで素管を挟み込んだ状態で、素管を回転させつつ、進行させる(通管速度:1.2m/s)ことで、管全長にわたって連続的に曲げ曲げ戻し加工を与えた。なお、温間加工時の曲げ量の評価として、曲げ曲げ戻し時の最小外径(最小ロール間隔)を初期外径で除した値を使用し、その量はロールギャップを変化させることで調整した。また、一部については温間加工後に熱処理を行い、一部については空冷または水冷(冷却速度;25℃/s)も行った。
なお、表1における「加工回数」とは、鋼管が単スタンドを通過する回数を指し、複数回の加工を行う場合は、加工温度を保ちながら、鋼管を単スタンド通過後に再び単スタンドの入側に配置し、再び単スタンドを通過させる場合を指す。
[組織の観察]
得られた鋼管の組織を以下の方法により観察して、平均結晶粒径daveを算出した。まず、走査型電子顕微鏡(測定倍率:1000倍)で、深さt〜t+δでの鋼管断面における結晶粒径(円相当直径)を複数視野観察して、これらの算術平均をd(t)とする。同様の操作を表面(t=0)から深さt=t1まで繰り返す。なお、δは100μmとした。続いてd(t)を用いて、積分(1/t1)∫d(t)dtを実行し(積分区間はt:0〜t1)、得られた積分値を「表面から深さt1までの平均結晶粒径dave」とした。表1に結果を示す。
[機械的特性の評価]
以下の方法により、ビッカース硬度、ねじり疲労強度、低温靱性、及び伸びを測定することにより、鋼管の機械的特性を評価した。
得られた鋼管の内外表面からそれぞれ500μmの深さ位置におけるビッカース硬度(HV)を、JIS Z 2244に準拠して、荷重:4.9N(500g)で測定した。測定結果を表1に示す。ビッカース硬度が200HV以上であれば、硬度に優れると評価することができる。
得られた鋼管のねじり疲労強度(MPa)をISO 1352:2011に準拠して、応力比(=最小応力/最大応力)−1の条件で測定した。測定結果を表1に示す。ねじり疲労強度が200MPa以上であれば、疲労強度に優れると評価することができる。
鋼管と試験片の長手方向が一致するように、得られた鋼管から全肉厚の試験片を採取して、JIS Z 2242に準拠するシャルピー衝撃試験を−120℃〜常温(25℃)の範囲で行い、靱性が急激に低下する温度である遷移温度(℃)を測定した。測定結果を表1に示す。遷移温度が0℃を下回る温度であれば、低温靱性に優れると評価することができる。
得られた鋼管の伸びをJIS G 4051に準拠して破断までの公称伸びで測定した。測定結果を表1に示す。S15Cでは、伸びが30%超えであれば均一伸び性に優れると評価することができる。
[生産性の評価]
本発明による投入エネルギーの低減効果を確認するため、本発明により結晶粒組織を微細化するのに必要な投入エネルギーと、板圧延により結晶粒組織を微細化するのに必要な投入エネルギーを比較した。投入エネルギーは、[加工時の投入電力(kW)]×[加工に要した時間(s)]と定義した。比較した結果、曲げ加工を主体とし、かつ鋼管の内外表面に着目した本発明は、板圧延に比べて、投入エネルギーを10〜30%に抑えることができていた。
Figure 0006835118
表1の結果から、結晶粒組織を微細化することができなかった比較例に対して、発明例は、硬度、疲労強度、および低温靱性を向上させることができており、また、投入エネルギーが少なく、コストを抑えることができることがわかった。

Claims (5)

  1. 平均結晶粒径が10μm以下である領域が、鋼管の内外表面からそれぞれ、肉厚に対し10%以上の厚さでかつ30%以下の厚さまでに限定して存在することを特徴とする鋼管。
  2. 前記平均結晶粒径が10μm以下である領域の厚さは、前記鋼管の前記内外表面からそれぞれ3000μm以下である、請求項1に記載の鋼管。
  3. 加工温度を300℃以上Ac3変態点以下として、鋼管外面側の2か所以上を工具で挟み、鋼管を偏平形状に変形させる温間加工において、前記鋼管を偏平させた状態で前記工具を管周接線方向へ移動させて、鋼管周方向へ1回以上の曲げ曲げ戻し加工を行い、平均結晶粒径が10μm以下である領域を、鋼管の内外表面からそれぞれ、肉厚に対し10%以上の厚さでかつ30%以下の厚さまでに限定して形成することを特徴とする鋼管の製造方法。
  4. 前記温間加工後、150℃以上Ac3変態点以下に加熱する熱処理を行う、請求項3に記載の鋼管の製造方法。
  5. 前記温間加工後および/または前記熱処理後、0.5℃/s以上の冷却速度で冷却する、請求項3または4に記載の鋼管の製造方法。

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