JP6835106B2 - 水処理剤 - Google Patents

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Description

本発明は、水処理剤に関する。
蓄熱水系、紙パルプ工程水系、集塵水系、スクラバー水系等の種々の水系に次亜ハロゲン酸(例えば、次亜塩素酸、次亜臭素酸等)を使用して、当該次亜ハロゲン酸によって、水系の配管内や濾過膜等への生物付着防止、スライム防止、除菌、殺微生物(例えば、細菌、真菌、藻類等)等を行っている。例えば、冷却水の開放循環冷却水等に、次亜ハロゲン酸を流して上述の効果を得ており、次亜ハロゲン酸のうちでも次亜塩素酸よりもより高い殺菌力を有する次亜臭素酸が着目されている。
例えば、特許文献1には、水に、塩素系酸化剤と、安定化次亜臭素酸組成物とをそれぞれ添加する水の殺菌方法であって、前記安定化次亜臭素酸組成物が、臭素系酸化剤、または臭素化合物と塩素系酸化剤との反応物と、スルファミン酸化合物と、を含む水の殺菌方法であることが記載されている。
特開2016-209837号公報
さらに、本発明は、水系に添加したときに次亜臭素酸の効果が良好に発揮すると共に他の化合物の薬剤効果も良好に発揮できる一液型の水処理剤を提供することを主な目的とする。
一般的に、カルボキシル基を有するポリマー(以下、「カルボキシル基ポリマー」ともいう)は、スライムコントロール用、防食用やスケール防止用等の薬剤として用いられているので、クロラミン化合物及び臭化物塩に、カルボキシル基ポリマー(例えば、マレイン酸系やアクリル酸系のポリマー)を配合して一液型の水処理剤を調製し、この水処理剤を水系に添加したときに次亜臭素酸が良好に発揮する効果に加えてカルボキシル基ポリマーの薬剤効果も発揮できると本発明者は期待した。
しかしながら、クロラミン化合物及び臭化物塩に、カルボキシル基ポリマーを配合した水処理剤を水系に添加した場合、カルボキシル基ポリマーによって水系中の次亜臭素酸の分解が急速に進行し、水系中の次亜臭素酸の経時安定性が低下し、次亜臭素酸の効果持続性に欠けることを本発明者は見出した(図1参照)。しかしながら、敢えて、本発明者は、水系において次亜臭素酸が発揮する効果に加えてカルボキシル基ポリマーの薬剤効果も発揮できる一液型の水処理剤について、鋭意検討を行った。
その結果、本発明者は、クロラミン化合物及び臭化物塩を含む水処理剤において、カルボキシル基ポリマーの特性及び含有量を調整することで、水系に添加したときに良好な経時安定性を得ることができる一液型の水処理剤を得ることができることを見出した。そして、当該次亜臭素酸の効果が良好に発揮できることに加えてカルボキシル基ポリマーの薬効効果も良好に発揮できることを本発明者は見出し、本発明を完成させた。本発明は、以下のとおりである。
本発明は、次の成分(a)〜(c)
(a)クロラミン化合物 6〜24質量%
(b)臭化物塩
(c)ポリマー中のカルボキシル基含有率が0.71g−COOH/g−ポリマー以下であるカルボキシル基ポリマー 1〜18質量%
を含有し、当該(c)カルボキシル基ポリマーが、マレイン酸系重合体及び/又は(メタ)アクリル酸系重合体であり、pH10以上である、水処理剤;を提供するものである。
前記クロラミン化合物と臭化物塩のモル比が、1:0.1〜1.0であることが好適である。
前記水処理剤が、スライムコントロール用、防食用又はスケール防止用の少なくともいずれかであることが好適である。
本発明によれば、水系に添加したときに次亜臭素酸の効果が良好に発揮すると共に他の化合物の薬剤効果も良好に発揮できる一液型の水処理剤を提供することができる。
なお、ここに記載された効果は必ずしも限定されるものではなく、本明細書中に記載されたいずれかの効果であってもよい。
各試料1〜4を添加したときの水系(pH8〜9)中の全酸化剤濃度の経時的変化を示す。試料1:クロラミン化合物(×)、試料2:クロラミン化合物+臭化物(△)、試料3:クロラミン化合物+カルボキシル基ポリマー(□)、試料4:クロラミン化合物+カルボキシル基ポリマー+臭化物(◇)。当該カルボキシル基ポリマーのカルボキシル基量は0.77g−COOH/g−ポリマー。クロラミン化合物のみを添加した際の濃度を100%とした。 水処理剤中のカルボキシル基ポリマーのカルボキシル基含有率(g−COOH/g−ポリマー)を変化させ、各水処理剤を水系(pH8〜9)に添加したときの水系中の次亜臭素酸濃度(%)及び全酸化剤濃度(%)との関係を示す。カルボキシル基ポリマーの水系中の濃度は5mg−ポリマー/Lであり、添加後48時間のときの測定。カルボキシル基ポリマーを加えない場合の次亜臭素酸濃度を100%とした。 水処理剤中のカルボキシル基ポリマーのカルボキシル基含有率(g−COOH/g−ポリマー)を変化させ、各水処理剤を水系(pH8〜9)に添加したときの水系中の次亜臭素酸濃度(%)及び全酸化剤濃度(%)との関係を示す。カルボキシル基ポリマーの水系中の濃度は30mg−ポリマー/Lであり、添加後48時間のときの測定。カルボキシル基ポリマーを加えない場合の次亜臭素酸濃度を100%とした。 水処理剤中のカルボキシル基ポリマーの含有量を変化させ、各水処理剤を水系(pH8〜9)に添加したときの水系中のカルボキシル基ポリマーの濃度(mg/L)及び次亜臭素酸濃度(%)との関係を示す。カルボキシル基ポリマーを加えない場合の次亜臭素酸濃度を100%とした。 本発明の水処理剤を水系(pH8〜9)に添加したときの水系中の次亜臭素酸濃度(mg/L as Cl2)の経時的変化を示す。
以下、本発明を実施するための形態について説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が限定されて解釈されることはない。
本発明は、次の成分(a)〜(c)を含有し、pH10以上である、水処理剤を提供することができる。
(a)クロラミン化合物
(b)臭化物塩
(c)ポリマー中のカルボキシル基含有率が0.8g−COOH/g−ポリマー以下であるカルボキシル基ポリマー1〜18質量%
本発明の水処理剤は、次亜臭素酸を生成するクロラミン化合物及び臭化物塩を含み、さらに特定のカルボキシル基ポリマーを特定量を含みつつ、当該水処理剤をアルカリ領域に調整することで、一液型の水処理剤でありながら、当該水処理剤中で次亜臭素酸が経時的に生成されにくくなる。これにより、本発明の水処理剤は、薬剤品質の経時安定性に優れているので、一液型として市場流通させても安定的な品質を維持することができ、一定期間保管した後に本発明の一液型の水処理剤を水系に使用した場合でも良好な効果を期待することができる。
さらに、本発明の水処理剤は特定のカルボキシル基ポリマーを特定量含有させることによって、本発明の水処理剤を水系に添加したときに、水系中の次亜臭素酸の生成を制御できる。よって、本発明の水処理剤は、水系において次亜臭素酸を短期間に急激に生成させないように制御することができる。そして、本発明の水処理剤は、水系中で次亜臭素酸を経時的に徐々に生成させることができるので、水系における次亜臭素酸の効果をより長期間に亘りより持続的に維持することができる。本発明の水処理剤の別の側面として、一液型の剤でありながら、徐放性の水処理剤としても使用可能である。水系内で次亜臭素酸が急激に放出されると水系内の腐食又は劣化に繋がり易いが、本発明の水処理剤は次亜臭素酸の発生速度を緩やかになるように制御できるので、水系内の腐食又は劣化を低減することができると共に、長期間に亘り持続的に次亜臭素酸に起因する効果(例えば、除菌作用等)を得ることができる。このため、本発明の水処理剤は、冷却水系や蓄熱水系、集塵水系、スクラバー水系等を有する開放循環式装置等に適用することがより有益である。
さらに、本発明で用いられるカルボキシル基ポリマーは、スライムコントロール剤、防食剤やスケール防止剤等の用途に用いることが可能な成分である。このため、本発明の水処理剤は、水系に添加したときに次亜臭素酸の効果が良好に発揮できると共に他の化合物であるカルボキシル基ポリマーの薬剤効果も良好に発揮できる。
本発明者は、本発明の水処理剤を用いたときに、水系内で次亜臭素酸を生成させる機構について以下のような仮説を立てているが、本発明の作用機序についてはさらに鋭意検討している。
本発明の水処理剤は、一液型の剤であることが好適であり、スルファミン酸化合物と次亜塩素酸とが結合したクロラミン化合物(以下、クロラミン化合物)と臭化物イオンとの形で存在し、前記特定のカルボキシル基ポリマーを特定量含有するように設計することが好適である。本発明では、カルボキシル基ポリマーの特性を調整したものを使用することが重要であり、このためカルボキシル基ポリマー中のカルボキシル基含有率を所定の範囲に調整している。また、このような特定のカルボキシル基ポリマーを一液型の剤中に特定量含有させ、水系に使用することが重要である。本発明は、pHを高くし過剰量のスルファミン酸を共存させた状態の水処理剤に調整することが好適であり、これにより、クロラミン化合物から次亜臭素酸を生成する反応がほとんど起きないように制御することができる。
そして、本発明の水処理剤を水系に加えると、クロラミン化合物及び臭化物塩とが反応して、スルファミン酸及び次亜臭素酸等が生成される。これにより、水系において生成された次亜臭素酸等による除菌効果等を発揮させることができると共に、従来の一液型水処理剤で難しかったカルボキシル基ポリマーの薬効効果も発揮させることができ、さらに次亜臭素酸の効果も持続的に発揮させることができる。
(a)クロラミン化合物
本発明に用いられるクロラミン化合物は、特に限定されないが、例えば、以下の反応式(1),(2)に示すような反応で次亜塩素酸(HOCl)と1級アミノ基を有する化合物(XNH)とを反応させて得られる、アミノ基の水素原子が塩素原子に置換した化合物(XNHCl)であるものが好ましい。この化合物は、水系内の金属又は膜等に対して酸化作用が弱いため、腐食や膜劣化の進行を抑えることができ、連続的に及び/又は持続的に水系に使用することができる。
XNH+HOCl⇔XNHCl+HO (1)
XNH+OCl−⇔XNHCl+OH (2)
本発明に用いられるクロラミン化合物は、特に限定されないが、1級アミノ基を有する化合物、アンモニア、及びアンモニウム塩のいずれか(以下、これらを「NH系化合物」ともいう)と、次亜塩素酸及び/又は次亜塩素酸塩とを混合することにより生成させて得られるものが好ましい。
前記1級アミノ基を有する化合物として、特に限定されないが、例えば、脂肪族アミン、芳香族アミン、スルファミン酸、スルファニル酸、スルファモイル安息香酸、アミノ酸等が挙げられる。また、前記アンモニウム塩としては、例えば、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
これらのNH系化合物の中でもスルファミン酸(より好適には、NHSOOH)が好ましい。スルファミン酸を用いてモノクロロスルファミンを生成させると安定なクロラミン化合物となる。
前記スルファミン酸化合物としては、下記一般式[1]で表される化合物又はその塩が挙げられる。
(ただし、一般式[1]において、R及びRは、各々独立に、水素又は炭素数1〜8の炭化水素である。)
このようなスルファミン酸化合物として、例えば、RとRがともに水素であるスルファミン酸のほかに、N−メチルスルファミン酸、N,N−ジメチルスルファミン酸、N−フェニルスルファミン酸等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
本発明で用いられる化合物の塩として、特に限定されず、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;カルシウム塩、ストロンチウム塩、バリウム塩等のアルカリ土類金属塩;マンガン塩、銅塩、亜鉛塩、鉄塩、コバルト塩、ニッケル塩等の他の金属塩;アンモニウム塩及びグアニジン塩等のアミン塩やアミノ酸塩等が挙げられ、これらを適宜1種又は2種以上組み合わせてもよい。
前記これら塩は、スルファミン酸化合物の塩として用いることができる。
本発明で用いられるスルファミン酸化合物として、例えば、スルファミン酸ナトリウム、スルファミン酸カリウム、スルファミン酸カルシウム、スルファミン酸ストロンチウム、スルファミン酸バリウム、スルファミン酸鉄、スルファミン酸亜鉛等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
本発明において、スルファミン酸及びこれらのスルファミン酸塩は、1種を単独で用いることもでき、また2種以上を組み合わせて用いることもできる。
一方、NH系化合物と反応させる次亜塩素酸塩としては、次亜塩素酸ナトリウム等の次亜塩素酸のアルカリ金属塩;次亜塩素酸カルシウム等の次亜塩素酸のアルカリ土類金属塩等を用いることができる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
NH系化合物と次亜塩素酸及び/又は次亜塩素酸塩を混合してクロラミン化合物を生成させる場合、NH系化合物と次亜塩素酸及び/又は次亜塩素酸塩とは、次亜塩素酸及び/又は次亜塩素酸塩由来の有効塩素(Cl)と、NH系化合物由来の窒素原子Nとのモル比であるCl/Nモル比が、0.1〜1となるように用いることが、クロラミンの生成効率と安定性の観点において好ましい。Cl/Nモル比が、上記上限以下であると遊離塩素が生成するのを抑えることができ、上記下限以上であると使用したNH系化合物に対してクロラミンの生成効率が低くなるのを抑えることができる。
前記クロラミン化合物の含有量は、水処理剤中に、その下限値として、好適には4質量%以上、より好適には6質量%以上、さらに好適には8質量%以上であり、その上限値として、好適には24質量%以下、より好適には22質量%以下、さらに好適には20質量%以下である。当該数値範囲として、好適には4〜24量%、より好適には6〜22質量%であり、さらに好適には8〜20質量%である。
(b)臭化物塩
本発明に用いられる臭化物塩は、特に限定されず、例えば、臭化アルカリ金属塩、臭化アンモニウム塩、臭化水素酸及び臭化アミン塩等が挙げられ、これらから選ばれる1種又は2種以上のものを使用することができる。
前記臭化アルカリ金属塩として、例えば、臭化ナトリウム、臭化カリウム、臭化リチウム等が挙げられるが、これに限定されない。
前記臭化アミン塩(炭素数1〜6の直鎖、分岐鎖、環状のアルキル基又はアルケニル基)として、ジエチルアミン臭化水素、アリルアミン臭化水素、シクロヘキシルアミン臭化水素、モノメチルアミン臭化水素、ジメチルアミン臭化水素、トリメチルアミン臭化水素、ノルマル−ブチルアミン臭化水素、或いは、エチルアミン臭化水素等が挙げられるが、これに限定されない。
本発明の臭化物塩は、これらから選ばれる1種又は2種以上のものを使用することができる。
前記臭化物塩の含有量は、水処理剤中に、臭化物換算で、その下限値として、好適には0.1質量%以上、より好適には0.5質量%以上、さらに好適には1.0質量%以上であり、その上限値として、好適には10質量%以下、より好適には9質量%以下、さらに好適には8質量%以下である。当該数値範囲として、好適には0.1〜10質量%、より好適には0.5〜9質量%であり、さらに好適には1.0〜8質量%である。
<臭化物(Br)測定方法>
本発明において、臭化物(Br)は、JIS-K0101 (1998) 28.4の方法を基に分析して濃度を測定する。
(c)カルボキシル基ポリマー
本発明で用いられるカルボキシル基ポリマーは、特定量のカルボキシル基を有する高分子化合物であれば特に限定されない。
そして、本発明で用いられるカルボキシル基ポリマーは、当該カルボキシル基ポリマー中(以下、「ポリマー中」ともいう)にカルボキシル基含有率を特定率にすることが好適である。これにより、本発明の水処理剤を水系に添加したときに当該カルボキシル基ポリマー特有の作用を発現させることができると共に水系内で発生する次亜臭素酸をあまり分解させることなく次亜臭素酸の作用も有効に発現させることができる。
ここで、本発明者は、カルボキシル基ポリマー中のカルボキシル基含有率と水系中のカルボキシル基濃度とを制御することによって、水系中の次亜臭素酸が分解されないように制御することができることを見出した。さらに、本発明者は、カルボキシル基ポリマー中のカルボキシル基含有率と水系中のカルボキシル基濃度との関連性を検討することで、水処理薬剤中に含有させるカルボキシル基ポリマーの含有量を特定することができることも見出した。
これにより、本発明者は、成分(a)クロラミン化合物及び成分(b)臭化物塩を含み、成分(c)特定のカルボキシル基ポリマーを特定量含有させた一液型の水処理剤を設計することができた。この水処理剤は、一液型でありながら、混ぜた成分によって他の成分が分解等を生じるのを抑制することができる。この水処理剤は、品質を安定的に維持することができるとともに、水系に添加されたときに、次亜臭素酸及びカルボキシル基ポリマーのそれぞれの効果を良好に発揮させることができる。さらに、当該特定のカルボキシル基ポリマーを特定量で水系に使用することで、次亜臭素酸の効果を持続的により長期間発揮させることができる。このようなことから、本発明の水処理剤は、徐放性による水系への添加回数の低減化の観点、一液型使用による作業工程の簡略化の観点、次亜臭素酸の分解低減によって持続的に効果を発現できる観点又はコスト低減の観点等からも優れている。
このようなことから、本発明のカルボキシル基ポリマーは、ポリマー中のカルボキシル基含有率が0.8g−COOH/g−ポリマー以下であり、当該カルボキシル基ポリマーは、水処理剤中に1〜18質量%するものであることが好適である。
〔ポリマー中のカルボキシル基含有率〕
本発明の水処理剤において、前記ポリマー中のカルボキシル基の含有率は、その上限値として、好適には0.8g−COOH/g−ポリマー以下であり、より好適には0.77g−COOH/g−ポリマー以下であり、さらに好適には0.72g−COOH/g−ポリマー以下である。当該数値範囲は、より好適には、0.8〜0.1g−COOH/g−ポリマー、さらに好適には、0.77〜0.2g−COOH/g−ポリマーである。
<カルボキシル基含有率の測定方法(g−COOH/g−ポリマー)>
13C−NMRスペクトル測定(炭素13核磁気共鳴)を用い、カルボキシル基由来の炭素(180〜182ppm)を定量する(測定温度30℃)。標準物質として3−(トリメチルシリル)プロピオン酸ナトリウムを使用し、3−(トリメチルシリル)プロピオン酸ナトリウム濃度からカルボキシル基由来の炭素を定量する。また、ゲートつきデカップリング(1J(C,H))で、NOEの影響を除去する。
前記カルボキシル基ポリマーにおける水処理剤中の含有量は、その下限値として、好適には0.5質量%以上、より好適には0.75質量%以上、さらに好適には1.0質量%以上、より好適には1.5質量%以上であり、その上限値として、好適には25質量%以下、より好適には20質量%以下、さらに好適にはより好適には18質量%以下、さらに好適には15質量%以下である。当該数値範囲として、コスト面、作業効率や効果発揮等の観点から、好適には0.5〜25質量%、より好適には0.75〜20質量%であり、さらに好適には1〜18質量%である。
<水溶性ポリマーの重量平均分子量の測定方法>
本発明に用いられる水溶性ポリマーの重量平均分子量は、標準ポリスチレンを標準物質として、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)分析により、測定する(例えば、参考文献1:特開2014−140056号公報等参照)。
本発明において用いるカルボキシル基ポリマーの種類として、特に限定されないが、カルボキシル基を有する水溶性ホモポリマー及び/又はコポリマー等が挙げられ、さらに具体的には、例えば、マレイン酸系重合体、(メタ)アクリル酸系重合体が挙げられる。なお、当該「重合体」には、モノポリマー及びコポリマーを含む意味である。
前記カルボキシル基ポリマーとして、より具体的には、例えば、ホモマレイン酸重合体、ホモ(メタ)アクリル酸重合体、マレイン酸又は(メタ)アクリルと共重合可能な不飽和単量体との共重合体等が挙げられ、これらを1種又は2種以上組み合わせて使用することができる。
本発明におけるカルボキシル基ポリマーは、マレイン酸系重合体及び/又は(メタ)アクリル酸系重合体を含むものが好適である。当該カルボキシル基ポリマー中の、マレイン酸系重合体及び/又は(メタ)アクリル酸系重合体の含有割合(含有量)は、好適には50質量%以上、より好適には80質量%以上、さらに好適には90質量%以上であり、より好適には95質量%以上、さらに好適には99質量%以上であり、カルボキシル基ポリマー中の含有割合が高い方が、本発明の期待する効果を得やすい。
また、マレイン酸又は(メタ)アクリルの単量体と共重合可能な不飽和単量体として、例えば、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−ヒドロキシ−3−アリロキシ−1−プロパンスルホン酸、スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸、アクリルアミド、エチレン、プロピレン、イソプロピレン、ブチレン、イソブチレン、ヘキセン、2−エチルヘキセン、ペンテン、イソペンテン、オクテン、イソオクテン、ビニルアルコール、ビニルメチルエーテル、及びビニルエチルエーテル等及びそれらの塩等が挙げられる。
これらから選ばれる1種又は2種以上の単量体を用いて得られた、ホモポリマー、コポリマー、及び前記単量体とイソブチレンとのコポリマー等から選ばれる1種又は2種以上のポリマーが挙げられる。
前記カルボキシル基ポリマーは、防食作用等の薬剤効果を期待する場合、重量平均分子量が、10の3乗オーダー〜4乗オーダーであることが好ましく、より具体的には200〜50,000の範囲にあるものが好ましく、500〜30,000の範囲にあるものがより好ましく、800〜30,000の範囲にあるものがさらに好ましく、より好ましくは1,000〜20,000である。防食効果等の薬剤効果を得るために重量平均分子量が500以上が好ましく、ハンドリング性の観点から水溶液の粘度が少ないように重量平均分子量が20,000以下が好ましく、より好ましくは16,000以下である。
前記カルボキシル基ポリマーの重量平均分子量は、<水溶性ポリマーの重量平均分子量の測定方法>によって測定する。
前記カルボキシル基ポリマーの水系に対する添加量は、防食効果等の薬剤効果を得る観点から、水系中の濃度が1〜100mg−ポリマー/Lになる量が好ましく、より好ましくは2〜50mg−ポリマー/L、さらに好ましくは5〜30mg−ポリマーになる量がより好適である。
<水処理剤のpH>
本発明の水処理剤のpHは、薬剤の経時的安定性の観点から、アルカリ領域であり、より好適には10以上、さらに好適には11以上、よりさらに好適には12以上、より好適には13以上である。pH調整剤(特にアルカリ剤)で薬剤をアルカリ領域に調整することで、水処理剤中での次亜臭素酸の発生を抑制することができ、経時的安定性を維持又は向上させることができる。
<水処理剤中の各成分の含有量及び質量含有比等>
〔前記クロラミン化合物と臭化物塩のモル比〕
本発明の水処理剤において、前記クロラミン化合物と臭化物塩のモル比を調整することが好ましく、前記クロラミン化合物と臭化物塩のモル比は、クロラミン化合物を1としたときに、好適には1:0.05〜3.0、より好適には1:0.1〜1.5、さらに好適には1:0.1〜1.0、よりさらに好適には1:0.2〜1.0である。
本発明の水処理剤において、ポリマー中のカルボキシル基含有率の好適な範囲は、上述した〔ポリマー中のカルボキシル基含有率〕のとおりであるが、より好適には、0.3〜0.72(g−COOH/g−ポリマー)である。
上述したポリマー中のカルボキシル基含有率の好適な範囲内において、水系中の次亜臭素酸濃度(%)は、特に限定されないが、好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上になるように、本発明の水処理剤を調製すること又は本発明の水処理剤を添加することが好ましい。
上述したポリマー中のカルボキシル基含有率の好適な範囲内において、水系中の全酸化剤濃度(%)は、特に限定されないが、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上になるように、本発明の水処理剤を調製すること又は本発明の水処理剤を添加することが好ましい。
本発明の水処理剤は、上述のように、特定のカルボキシル基ポリマーを特定量用いることを見出したことによって、経時安定性に優れている。本発明の水処理剤の一定期間経過後の全酸化剤濃度は、恒温槽静置保存において、20℃で20日保管したときに好適には98%以上、より好適には99%以上にすることができ、また、50℃で20日保管したときに好適には85%以上、より好適には90%以上にすることができる。
また、本発明の水処理剤は、上述のように、カルボキシル基ポリマーの特性及び特定使用量等を調整することによって、優れた徐放性を得ることができる。本発明の水処理剤は、水系添加後48時間経過したときの次亜臭素酸濃度が、好適には0.25〜1.5mg/L as CL、より好適には0.5〜1mg/L as CLになるように調整することができる。
<1−3.任意成分>
なお、本技術の水処理剤は、本技術の効果を損なわない範囲で、任意の薬剤と併用することができる。任意の薬剤として、防食剤(腐食抑制剤)、スケール防止剤、スライムコントロール剤、水等の溶媒又は分散媒体、分散剤酵素、殺菌剤及び消泡剤等が挙げられるが、これに限定されるものではなく、また一般的に水処理に使用できる各種薬剤を使用してもよい。これらから1種又は2種以上を適宜選択することができる。
<防食剤(腐食抑制剤)>
上記のカルボキシル基ポリマー以外の防食剤(腐食抑制剤)として、特に限定されないが、冷却水系用の防食剤が好適である。
ベンゾトリアゾールやトリルトリアゾール等のアゾール類が好適である。
<スケール防止剤>
上記のカルボキシル基ポリマー以外のスケール防止剤としては、特に限定されないが、例えば、リン酸系スケール防止剤及び/又はホスホン酸系スケール防止剤等が知られている。
前記スケール防止剤としては、例えば、オルトリン酸、トリポリリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、2−ホスホノ−1,2,4−トリカルボキシブタン、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、及びアミノトリメチレンホスホン酸、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸(別称:1−ヒドロキシエタン−1,1−ジイルビスホスホン酸、HEDP)、2−ホスホノブタン−1,2,4−トリカルボン酸(PBTC)等が挙げられるがさらに好ましい。
本発明の水処理剤中の防食剤及び/又はスケール防止剤の含有量は、特に限定されないが、0.5〜30質量%が好ましく、1〜20質量%がさらに好ましい。
<水処理剤の使用方法、及び当該水処理剤を使用する水処理方法>
本発明の水処理剤は、上述のとおり、次亜臭素酸の効果(例えば、除菌作用、スライムコントロール作用等)の他、前記特定のカルボキシル基ポリマーの薬効効果も期待して、例えば、スライムコントロール用、防食用又はスケール防止用等の少なくともいずれかとして使用することができる。
本発明は、本発明の水処理剤の使用又は使用方法を提供することができ、当該使用目的として、例えば、水系における水処理、水系内の殺菌方法、水系内のスライムコントロール方法、水系内の防食方法、又は水系内の膜スケール防止方法等が挙げられる。
また、本発明は、本発明の水処理剤を水系に添加する、水処理方法、殺菌方法、スライムコントロール方法、防食方法、又はスケール防止方法を提供することもできる。なお、上述の本発明の水処理剤で説明した構成と重複する構成については適宜省略する。
本発明の方法における水系のpHは、経時的安定性の観点から、アルカリ領域であり、より好適には7〜10、さらに好適には8〜9である。
また、本発明の別の側面として、次の成分(a)〜(c)を、同時期若しくは別々の時期に、及び/又は、同一場所若しくは異なる場所で、水系に添加する、水処理方法、殺菌方法、スライムコントロール方法、防食方法、又はスケール防止方法を提供することができる。
(a)クロラミン化合物;(b)臭化物塩;(c)ポリマー中のカルボキシル基含有率が0.8g−COOH/g−ポリマー以下であるカルボキシル基ポリマー1〜18質量%。
水系における薬剤又は各成分の添加時期は、特に限定されず、同時期に又は別々に添加してもよい。及び/又は、水系における薬剤又は各成分の添加場所は、特に限定されず、同一場所又は異なる場所に添加してもよい。
例えば、膜に対するスライムコントロール又はスケール防止であれば、膜処理の前に薬剤を添加することが好ましい。また、水系内の配管等に対するスライムコントロール又は殺菌、防食であれば、水系のいずれの時期、いずれの場所であっても、本発明の効果を得ることができる。
本発明の対象は、冷却水系であることが好適であり、好適には、当該冷却水系が、冷却槽、冷却塔、熱交換器等の金属又は金属管を備える冷却水系であることがより好適である。
また、本発明の方法において、前記成分(a)クロラミン化合物と前記成分(b)臭化物塩のモル比が、1:0.1〜1.0になるように添加することが好適である。当該モル比は、前記水処理剤中のモル比と同じ構成を採用することができる。
本発明の方法において、前記成分(c)カルボキシル基ポリマーは、水系中に所定の濃度になるように添加することが好適である。当該水系中の所定の濃度として、特に限定されないが、その下限値として、好適には0.5mg/L以上、より好適には1mg/L以上、さらに好適には2mg/L以上であり、その上限値として、好適には500mg/L以下、より好適には80mg/L以下、さらに好適には60mg/L以下、よりさらに好適には50mg/L以下、さらに好適には40mg/L以下である。
また、本発明の方法において、前記成分(c)カルボキシル基ポリマーの水系中の濃度は、好適には1〜80mg/L、より好適には2〜60mg/L、さらに好適には2〜50mg/Lになるように添加することである。
本技術は、以下の構成を採用することも可能である。
〔1〕
次の成分(a)〜(c)を含有し、pH10以上である、水処理剤。
(a)クロラミン化合物
(b)臭化物塩
(c)ポリマー中のカルボキシル基含有率が0.8g−COOH/g−ポリマー以下であるカルボキシル基ポリマー1〜18質量%
〔2〕
前記クロラミン化合物と臭化物塩のモル比が、1:0.1〜1.0である、前記〔1〕記載の水処理剤。
〔3〕
前記水処理剤が、スライムコントロール用、防食用又はスケール防止用の少なくともいずれかである、前記〔1〕又は〔2〕記載の水処理剤。
〔4〕
前記カルボキシル基ポリマーが、マレイン酸系重合体及び/又は(メタ)アクリル酸系重合体を含むものであり、好適には、前記カルボキシル基ポリマー中に50質量%以上含むである、前記〔1〕〜〔3〕のいずれか記載の水処理剤。
〔5〕
前記水処理剤のpHが、13以上である、前記〔1〕〜〔4〕のいずれか記載の水処理剤。
〔6〕
前記臭化物塩が、臭化アルカリ金属塩、臭化アンモニウム塩、臭化水素酸及び臭化アミン塩から選ばれる1種又は2種以上のものである、前記〔1〕〜〔5〕のいずれか記載の水処理剤。
〔7〕
前記〔1〕〜〔6〕のいずれかの水処理剤を水系に添加する、水処理方法、殺菌方法、スライムコントロール方法、防食方法、又はスケール防止方法。
〔8〕
前記水処理剤を、水系中のカルボキシル基濃度が1〜100mg/Lになるように、水系に添加する、前記〔7〕記載の方法。
〔9〕
次の成分(a)〜(c)を、同時期若しくは別々の時期に、及び/又は、同一場所若しくは異なる場所で、水系に添加する、水処理方法、殺菌方法、スライムコントロール方法、防食方法、又はスケール防止方法。
(a)クロラミン化合物
(b)臭化物塩
(c)ポリマー中のカルボキシル基含有率が0.8g−COOH/g−ポリマー以下であるカルボキシル基ポリマー1〜18質量%
〔10〕
前記成分(a)クロラミン化合物と前記成分(b)臭化物塩のモル比が、1:0.1〜1.0になるように添加する、及び/又は
前記成分(c)が、水系中のカルボキシル基濃度が5〜50mg/Lになるように添加する、前記〔8〕〜〔9〕のいずれかの方法。
〔11〕
前記水系が、冷却水系であり、好適には、当該冷却水系が、冷却槽、冷却塔、熱交換器等の金属又は金属管を備える冷却水系である、前記〔8〕〜〔10〕のいずれかの方法。
以下の試験例、実施例及び比較例等を挙げて、本発明の実施形態について説明をする。なお、本発明の範囲は試験例、実施例等に限定されるものではない。
〔試験例1〜4:各成分の組み合わせ:試料1〜4〕
図1に、開放循環式の冷却水(pH8〜9)に対し、各試料1〜4を試料(水処理剤)0.8g/水Lになるように添加し、水系中の全酸化剤濃度の経時的変化を示す。
試験例1における試料1の水処理剤(×)は、クロラミン化合物濃度9%を含むものである。
試験例2における試料2の水処理剤(△)は、クロラミン化合物濃度9%と臭化物濃度3.9%を含むものである。
試験例3における試料3の水処理剤(□)は、クロラミン化合物濃度9%、カルボキシル基ポリマー濃度1.6%を含むものである。
試験例4における試料4の水処理剤(◇)は、クロラミン化合物濃度9%、カルボキシル基ポリマー濃度1.6%、臭化物濃度3.9%を含み、pH13である。
なお、試験例1〜28で使用したクロラミン化合物は、次亜塩素酸及びスルファミン酸(HNSOOH)とを反応させて得られたものであり、Cl/Nモル比が0.1〜1になるように調製されている。
また、試験例1〜28で使用した臭化物塩は、臭化カリウムである。
また、試験例1〜4で使用したカルボキシル基ポリマーは、マレイン酸ポリマー(99質量%以上)であり、当該ポリマー中のカルボキシル基含有量は0.77g−COOH/g−ポリマーであり、カルボキシル基ポリマーの重量平均分子量は、3,900である。
カルボキシル基ポリマー中のカルボキシル基の含有率は、上記<カルボキシル基含有率の測定方法(g−COOH/g−ポリマー)>で測定を行った。
カルボキシル基ポリマーの重量平均分子量は、上記<水溶性ポリマーの重量平均分子量の測定方法>で測定を行った。
各〔試験例〕において使用した各測定方法について下記に示す。
<全酸化剤濃度>: クロラミン、次亜塩素酸、次亜臭素酸の合計をDPD total試薬で測定した。全酸化剤濃度は塩素で換算し、mg/L,as Clで示す。
<次亜臭素酸>: 遊離塩素をグリシンと反応させた後、残った次亜臭素酸をDPDfree試薬で測定した。次亜臭素酸濃度は塩素で換算し、mg/L,as Clで示す。
なお、本発明で用いるDPD法は、JIS K 0400−33−10:1999 N,N−ジエチル−1,4−フェニレンジアミンを用いるDPD法に準じて行う。
クロラミン化合物のみを添加した際の濃度を100%とし、カルボキシル基ポリマー、臭化物を共存させた際の、全酸化剤濃度の経時変化を図1に示す。
クロラミン化合物にカルボキシル基ポリマー、臭化物をそれぞれ単独で添加した場合には残留率に違いは見られなかったが、クロラミン化合物にカルボキシル基ポリマーと臭化物の両方を添加した際には残留率が10%以上低下した。
クロラミン化合物と臭化剤、カルボキシル基ポリマーが共存したときのみ、残留率が顕著に低下していることから、水系内で生成した次亜臭素酸がカルボキシル基ポリマーと反応し分解されたと考えた。
このように試料4の水処理剤では、カルボキシル基ポリマーの薬理効果が期待できる。しかし、試料4は、次亜塩素酸よりも強い次亜臭素酸を利用しようと設計しているにもかかわらず、試料4は、水系において次亜臭素酸の経時的安定性があまり良くないため、次亜臭素酸の効果(例えば、除菌効果等)も持続性に欠けると考えた。このため、試料4では、水系に添加したときに次亜臭素酸の効果が良好に発揮すると共に他の化合物の薬剤効果も良好に発揮できる一液型の水処理剤を提供することが難しいと考えた。
〔試験例5〜16:カルボキシル基ポリマーのカルボキシル基含有率〕
試験例5〜16で使用した各水処理剤は、クロラミン化合物濃度9%、カルボキシル基ポリマー濃度1.6%、臭化物濃度3.9%を含み、pH13であるものをベースにして、調製したものを使用した。
試験例5〜16で使用した各水処理剤で使用したカルボキシル基ポリマーは、マレイン酸ポリマーであり、重量平均分子量1,000〜16,000の範囲内のものを使用した。
このとき、各水処理剤のカルボキシル基ポリマーは、表1及び表2に示すような、カルボキシル基ポリマー中のカルボキシル基含有率(g−COOH/g−ポリマー)のものを使用した。
具体的には、試験例5〜16の各水処理剤における、カルボキシル基ポリマー中のカルボキシル基含有率を測定したところ、試験例5及び11:0.63g−COOH/g−ポリマー、試験例6及び12:0.43g−COOH/g−ポリマーで、試験例7及び13:0.49g−COOH/g−ポリマー、試験例8及び14:0.52g−COOH/g−ポリマー、試験例9及び15:0.71g−COOH/g−ポリマー、試験例10及び16:0.77g−COOH/g−ポリマーであった。
さらに、水処理剤中のカルボキシル基ポリマー濃度が、水1Lに添加したときにカルボキシル基ポリマー濃度5mg−ポリマー/Lになるように、各水処理剤を調製し、それぞれを試験例5〜10で使用した。
また、水処理剤中のカルボキシル基ポリマー濃度が、水1Lに添加したときにカルボキシル基ポリマー濃度30mg−ポリマー/Lになるように、各水処理剤を調製し、それぞれを試験例11〜16で使用した。
試験例5〜16に使用する各水処理剤のクロラミン化合物と臭化物塩のモル比は、クロラミン化合物を1としたときに、1:0.2〜1.0であった。
試験例5〜10において、開放循環式の冷却水(pH8〜9)に対し、各水処理剤をカルボキシル基ポリマー濃度5mg−ポリマー/Lになるように添加し、48時間後における、水系中の次亜臭素酸濃度(mg/L as CL)を測定した。この結果を図2及び表1に示した。
試験例11〜16において、開放循環式の冷却水(pH8〜9)に対し、各水処理剤をカルボキシル基ポリマー濃度30mg−ポリマー/Lになるように添加し、48時間後における、水系中の次亜臭素酸濃度(mg/L as CL)を測定した。この結果を図3及び表2に示した。
〔試験例17〜27:水系中のカルボキシル基ポリマー濃度〕
試験例5で使用した水処理剤をベースに、表3に示す水系中のカルボキシル基ポリマー濃度になるように変更し、試験例17〜29に使用する各水処理剤を得た。
試験例17〜27において、開放循環式の冷却水(pH8〜9)に対し、各水処理剤を、下記表3の水系中のカルボキシル基ポリマー濃度(mg−ポリマー/L)になるように添加した。各水処理剤を添加した後、48時間後における、水系中の次亜臭素酸濃度(mg/L as CL)を測定した。この結果を図4及び表3に示す。
試験例5〜16の結果を図2及び図3、表1及び表2に示す。試験例17〜27の結果を図4及び表3に示す。
水処理剤で使用するカルボキシル基ポリマーは、ポリマー中のカルボキシル基含有率が0.77のとき、添加した水系の次亜臭素酸濃度を約80%は維持できる。さらに、当該ポリマー中のカルボキシル基含有率は、添加した水系の次亜臭素酸濃度を90%以上にできる観点から、より好適には0.35〜0.75のときより良好であった。
また、水処理剤を水系に添加したときの水系中のカルボキシル基ポリマーの濃度が5〜30mg−ポリマー/Lのとき、水系中の全酸化剤濃度(%)及び次亜臭素酸濃度(%)が高く、良好であった。
さらに、水系に対する水処理剤の添加量は、効果及びコストの観点から、40〜200mg/Lが好ましい。さらに、上述の如く、水処理剤を水系に添加したときの水系中のカルボキシル基ポリマーの濃度が5〜30mg−ポリマー/Lが好ましいことを考慮すると、水処理剤中に含有させるカルボキル基ポリマー濃度は、18質量%以下(より好適には15質量%以下)に設定することが望ましく、また1質量%以上(より好適には1.5質量%以上)にすることが、コスト面、作業効率や効果発揮等の観点から望ましい。これは、例えば、〔水系中のポリマー濃度30mg−ポリマー/L〕/〔水系に対する水処理剤の添加量200mg/L〕=水処理剤中のポリマー含有量0.15mg−ポリマー/mg(すなわち、15質量%)を求めることができる。
また、試験例7の水処理剤で使用したマレイン酸ポリマーを、アクリル酸ポリマー(ポリマー中のカルボキシル基含有率0.5g−COOH/g−ポリマー;重量平均分子量1,000〜16,000)に代えた水処理剤でも、試験例7の水処理剤と同様の効果を得ることができた。
〔試験例28:徐放性及びカルボキシル基ポリマーの重量平均分子量〕
表4に示すように、開放循環式の冷却水(pH8〜9)に対し、試験例5で使用した水処理剤を、カルボキシル基ポリマー濃度0.2g/Lになるように添加し、水系中の次亜臭素酸濃度(mg/L as CL)を経時的に測定した。
また、試験例5の水処理剤で使用した重量平均分子量3,900のカルボキシル基ポリマーを、重量平均分子量が800、14,000、20,000のものに、それぞれ置き換えて同様の試験を行った。これらの10の3乗オーダー〜4乗オーダーの範囲の重量平均分子量のカルボキシル基ポリマーであっても、重量平均分子量3,900のカルボキシル基ポリマーのときとほぼ同程度の次亜臭素酸濃度を得ることができた。重量平均分子量約1,000〜20,000のカルボキシル基ポリマーを用いたときに、より優れた次亜臭素酸濃度(約40〜60%)にすることができた。
ポリマー中のカルボキシル基の含有量は、上記<カルボキシル基含有率の測定方法(g−COOH/g−ポリマー)>で測定を行った。
カルボキシル基ポリマーの重量平均分子量は、上記<水溶性ポリマーの重量平均分子量の測定方法>で測定を行った。
本発明の水処理剤は、水系添加後48時間経過したときの次亜臭素酸濃度が、好適には0.25〜1.5mg/L as CL、より好適には0.5〜1mg/L as CLになるように調整することができる。
試験例5〜16の各水処理剤の全酸化剤濃度は、恒温槽静置保存において、20℃で20日保管したときに98%以上であり、また、50℃で20日保管したときに90%以上であった。

Claims (3)

  1. 次の成分(a)〜(c)
    (a)クロラミン化合物 6〜24質量%
    (b)臭化物塩
    (c)ポリマー中のカルボキシル基含有率が0.71g−COOH/g−ポリマー以下であるカルボキシル基ポリマー 1〜18質量%
    を含有し、当該(c)カルボキシル基ポリマーが、マレイン酸系重合体及び/又は(メタ)アクリル酸系重合体であり、pH10以上である、水処理剤。
  2. 前記クロラミン化合物と臭化物塩のモル比が、1:0.1〜1.0である、請求項1記載の水処理剤。
  3. 前記水処理剤が、スライムコントロール用、防食用又はスケール防止用の少なくともいずれかである、請求項1又は2記載の水処理剤。
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